(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023552
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】電池パックおよび電動車両
(51)【国際特許分類】
H01M 50/271 20210101AFI20240214BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20240214BHJP
H01M 50/317 20210101ALI20240214BHJP
H01M 50/325 20210101ALI20240214BHJP
H01M 50/383 20210101ALI20240214BHJP
H01M 50/227 20210101ALI20240214BHJP
H01M 50/236 20210101ALI20240214BHJP
H01M 50/213 20210101ALI20240214BHJP
【FI】
H01M50/271 B
H01M50/204 101
H01M50/317 201
H01M50/325
H01M50/383
H01M50/204 401F
H01M50/227
H01M50/271 S
H01M50/236
H01M50/213
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023205785
(22)【出願日】2023-12-06
(62)【分割の表示】P 2022512111の分割
【原出願日】2021-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2020060780
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003236
【氏名又は名称】弁理士法人杉浦特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 正知
(72)【発明者】
【氏名】坂内 喜幸
(57)【要約】
【課題】電池セルからのガス噴出速度が速い場合にも電池パックの爆発を防止でき、ガスを逃がした際における電池パック内への外気の流入による炎上を抑制することができる電池パックを提供する。
【解決手段】電池パックが、電池セルと、頭部とネジ部と、頭部とネジ部の間にネジ部の外径よりも大きく頭部の外径よりも小さい中間部とを有する1または複数の段付きネジと、1または複数の段付きネジで互いに締結される上ケースと下ケースを備えた外装ケースとを備える。頭部と上ケースの間に弾性部材が圧縮して配置され、弾性部材は中空円柱状の弾性樹脂である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セルと、
頭部とネジ部と、前記頭部と前記ネジ部の間に前記ネジ部の外径よりも大きく前記頭部の外径よりも小さい中間部とを有する1または複数の段付きネジと、
前記1または複数の段付きネジで互いに締結される上ケースと下ケースを備えた外装ケースとを備え、
前記頭部と前記上ケースの間に弾性部材が圧縮して配置され、
前記弾性部材は中空円柱状の弾性樹脂である、
電池パック。
【請求項2】
前記弾性部材の内面と前記段付きネジの中間部の外面が接している、
請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記弾性部材は弾性樹脂であり前記上ケースに一体的に設けられている、
請求項1又は2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記上ケースには前記段付きネジの挿入孔が設けられ、
該挿入孔には、前記段付きネジの前記頭部と前記中間部の外径差に応じた段差部が形成されており、
前記段差部の上面が、前記弾性部材の受け面となっている、
請求項1から3のいずれかに記載の電池パック。
【請求項5】
前記段付きネジを複数有し、
少なくとも一つの前記段付きネジの中間部の長さが、他の前記段付きネジの中間部の長さとは異なっている、
請求項1から4のいずれかに記載の電池パック。
【請求項6】
前記弾性部材を複数有し、
少なくとも1つの前記弾性部材の非圧縮時の長さが、他の前記弾性部材の非圧縮時の長さとは異なる、
請求項1から5のいずれかに記載の電池パック。
【請求項7】
前記弾性部材を複数有し、
少なくとも1つの前記弾性部材の硬度が、他の前記弾性部材の硬度とは異なる、
請求項1から6のいずれかに記載の電池パック。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の電池パックを備えた電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パックおよび電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の電池セルを複数個接続した電池セル群を外装ケースに収納した電池パックは、電動車両や電動工具などに広く利用される。電池パックの内部に水分が侵入すると、電池セルの電極端子部の破損の原因となるため、電池パックには防水性を高める技術が施されている。
【0003】
特許文献1には、ケースと蓋との間に配置するシール材により密閉する電池パックにおいて、ケースと蓋との締結に段付きネジを用い、シール材の疲労によるケースと蓋との締結のゆるみを抑制する技術が提案されている。この技術には、電池セルの異常に伴い電池セルからガスが噴出した場合に、電池パックから外部にガスを逃がして電池パックの爆発を防止する点で改善の余地がある。
【0004】
特許文献2には電池パックケースに予め形成されたスリット開口を電池から放出された可燃性ガスにより上昇した電池パック内の温度で融解するような閉塞部材で閉塞する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-226518号公報
【特許文献2】特開2016-119155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に提案された技術では、電池セルからのガス噴出速度が速い場合にも電池パックから外部にガスを逃がして電池パックの爆発を防止する点、及びガスを逃がした際における電池パック内への外気の流入による炎上を防止する点で改善の余地がある。
【0007】
本発明の目的の一つは、電池セルからのガス噴出速度が速い場合にも電池パックの爆発を防止でき、ガスを逃がした際における電池パック内への外気の流入による炎上を抑制することができる電池パックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
電池セルと、
頭部とネジ部と、頭部とネジ部の間にネジ部の外径よりも大きく頭部の外径よりも小さい中間部とを有する1または複数の段付きネジと、
1または複数の段付きネジで互いに締結される上ケースと下ケースを備えた外装ケースとを備え、
頭部と上ケースの間に弾性部材が圧縮して配置され、
弾性部材は中空円柱状の弾性樹脂である、
電池パックである。
【0009】
また、本発明の電池パックは、電動車両に備えられてよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の少なくとも実施形態によれば、電池セルからのガス噴出速度が速い場合にも電池パックの爆発を防止でき、ガスを逃がした際における電池パック内への外気の流入による炎上を抑制することができる電池パックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1の実施形態にかかる電池パックの構成の一例を示す分解斜視図である。
【
図2】
図2Aは、第1の実施形態にかかる電池パックの一例を示す斜視図である。
図2Bは、第1の実施形態にかかる電池パックの一例を示す平面図である。
【
図3】
図3は、電池パックに収納される電池ホルダの一例を示す分解斜視図である。
【
図4】
図4Aは、
図2BのIVA-IVA線断面における要部を説明するための断面図である。
図4Bは、
図2BのIVB-IVB線断面における要部を説明するための断面図である。
【
図5】
図5は、段付きネジと第2の弾性部材の組み合わせの例を示す分解斜視図である。
【
図6】
図6Aから
図6Cは、段付きネジと第2の弾性部材を組み合わせた状態の一例を示す図である。
【
図7】
図7Aは、電池パックの外装ケースの内圧が上昇した場合の段付きネジの取り付け位置の状態の一例を示す断面図である。
図7Bは、電池パックの外装ケースの内圧が上昇した場合の段付きネジの取り付け位置以外の状態の一例を示す断面図である。
【
図8】
図8Aは、第2の実施形態にかかる電池パックの一例を示す平面図である。
図8Bは、
図8AのVIIIB-VIIIB線断面における要部を説明するための断面図である。
【
図9】
図9は、第3の実施形態から第5の実施形態を説明するための斜視図である。
【
図10】
図10は、電池パックを備えた電動自転車の構成の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について以下の順序で説明する。
1 第1の実施形態
2 第2の実施形態
3 第3の実施形態
4 第4の実施形態
5 第5の実施形態
6 応用例
7 変形例
なお、本発明は、以下に説明する実施の形態等に限定されない。以下の説明において、説明の便宜を考慮して前後、左右、上下等の方向を示すが、本開示の内容はこれらの方向に限定されるものではない。
【0013】
[1 第1の実施形態]
図1~
図3等を参照しつつ、第1の実施形態にかかる電池パック(電池パック1)に関して説明する。
図1は、電池パック1の構成例を説明するための分解斜視図である。
図2Aは電池パック1の外観を説明するための図である。
図2Bは、電池パック1の概略平面図である。
図3は、
図1の電池パック1の外装ケース2内に収容される電池ホルダ12の分解斜視図である。電池パック1は、例えば、
図1、
図2A、
図2B等に示すように、段付きネジ14で上ケース2aと下ケース2bを締結される外装ケース2を備える。外装ケース2内には、回路基板3と、電池ホルダ12に収められた電池セル4と、電池セル4の電極端子部15に接合された金属板とが収納される。
【0014】
(電池ホルダ)
外装ケース2の内部空間Spには、電池ホルダ12が収納される。電池ホルダ12には、
図1、
図3等に示すように、複数の電池セル収納部13が形成されている。
図1、
図3の例における電池ホルダ12には、電池セル収納部13が筒型形状に形成されている。電池セル収納部13の軸線方向は、外装ケース2に電池ホルダ12を収容した状態で左右方向(+Y方向、-Y方向)となっている。電池ホルダ12では、各電池セル収納部13は、上下方向(+Z方向、-Z方向)および前後方向(+X方向、-X方向)に並んで形成されている。
図1、
図3の例では電池セル収納部13は、前後方向に3列、上下方向に2列並んでおり、それぞれの電池セル4が収納される。なお、ここに示したのは一例である。電池セル収納部13は、筒型形状以外の形状とされてよい。電池セル収納部13について前後方向の列数と上下方向の列数は、
図1等の例に限定されない。また、1つの電池セル収納部13に対して収納される電池セルの数も1つに限定されない。
【0015】
電池セル収納部13の軸線方向(+Y方向、-Y方向)に沿って向かい合う端部は、例えば、略円形状に開口している。そして、それぞれの端部に形成された開口から後述する電池セル4の電極端子部15(正極端子部15a、負極端子部15b)が露出する。
【0016】
電池ホルダ12の材料としては、例えば、絶縁性を有する材料が好適に用いられ、具体的にプラスチック等を用いられてよい。
【0017】
(電池セル)
電池セル4は、特に限定されず、例えば、リチウムイオン二次電池やリチウムイオンポリマー二次電池などを採用することができる。ただし、このことは、電池セル4が、その他の電池であることを規制するものではない。
【0018】
電池セル4には、その両端面に電極端子部15が形成されている。電池セル4の一端面には電極端子部15として正極端子部15aが形成され、電池セル4の他端面には電極端子部15として負極端子部15bが形成されている。
図1では、説明の便宜上、符号15を用いて電池セル4の電極端子部を示し、
図3では、符号15a、15bを用いて電池セル4の電池端子部として正極端子部、負極端子部を示す。
【0019】
図1等の例では、電池ホルダ12には複数の電池セル4が収納される。上下に隣り合う電池セル4の配置については、電池ホルダ12の一方面側から露出する電極端子部15の極性が揃えられている。例えば、電池ホルダ12の一方面側で、上下に隣り合う電池セル4の負極端子部15bが露出し、他方面側で、上下に隣り合う電池セル4の正極端子部15aが露出するように配置される(
図3参照)。また、電池セル4の一方端面側から他方端面側に向かう方向(Y方向)を視線方向として、電池ホルダ12に収納される複数の電池セル4の電極端子部15の配列を見た場合に、正極端子部15aと負極端子部15bが前後方向に交互に並んでいるように、電池セル4が配置される。なお、ここに述べた電池セル4の配置は一例であり、例示した配置に限られない。
【0020】
(基板接続用金属板、両極連結用金属板)
電池ホルダ12の各電池セル収納部13の開口から露出する電極端子部15(正極端子部、負極端子部)は、金属板に接合されている。
図1、
図3等の例に示す電池パック1においては、金属板として、2つの基板接続用金属板5a、2つの両極連結用金属板5bが設けられている。基板接続用金属板5aは、回路基板に接続される端子を備える金属板である。両極連結用金属板5bは、極性の異なる電極端子部15間を電気的に連結する金属板である。電池ホルダ12の左右方向の一方側面(+Y方向側の面)に露出した電池セルの電極端子部15は、基板接続用金属板5aと両極連結用金属板5bのいずれかに接合され、電池ホルダ12の左右方向の他方側面(-Y方向側の面)に露出した電池セルの電極端子部15は、同じく、基板接続用金属板5aと両極連結用金属板5bのいずれかに接合される。
【0021】
電池ホルダ12の左右方向の一方側面(+Y方向側の面)について、基板接続用金属板5aが、両極連結用金属板5bよりも前方側(前後方向に見て外部接続端子36に近づく方向側(+X方向側))に位置している。電池ホルダ12の+Y方向側の端面において、基板接続用金属板5aは、上下方向に隣り合う各電池セル収納部13の開口から露出する電極端子部15(
図3の例では、2つの正極端子部15a)に接合される。
【0022】
電池ホルダ12の左右方向の一方側面(+Y方向側の面)について、両極連結用金属板5bは、基板接続用金属板5aの後方側(前後方向に見て外部接続端子36から遠ざかる方向側(-X方向))に位置している。電池ホルダ12の+Y方向側の端面において、この両極連結用金属板5bは、前後方向と上下方向に隣り合う4つの各電池セル収納部13の開口から露出する電極端子部15(
図3の例では、2つの正極端子部15aと2つの負極端子部15b)に接合される。
【0023】
電池ホルダ12の左右方向の他方側面(-Y方向側の面)について、両極連結用金属板5bは、基板接続用金属板5aよりも前方側(前後方向に見て外部接続端子36に近づく方向側(+X方向側))に位置している。電池ホルダ12の-Y方向側の端面において、この両極連結用金属板5bは、前後方向と上下方向に隣り合う4つの各電池セル収納部13の開口から露出する電極端子部15(
図3の例では、2つの正極端子部15aと2つの負極端子部15b)に接合される。
【0024】
電池ホルダ12の左右方向の他方側面(-Y方向側の面)について、基板接続用金属板5aが、両極連結用金属板5bよりも後方側(前後方向に見て外部接続端子36から遠ざかる方向側(-X方向側))に位置している。電池ホルダ12の-Y方向側の端面において、基板接続用金属板5aは、上下方向に隣り合う各電池セル収納部13の開口から露出する電極端子部15(
図3の例では、2つの負極端子部15b)に接合される。
【0025】
電池ホルダ12に収納される電池セル4に接合された基板接続用金属板5a、5aの上端側は、電池ホルダ12の上面上で電池ホルダ12の中央側に向かって延設された鉤型形状部が形成されている。それぞれの鉤型形状部は、それぞれ基板接続端子18、18をなしている。後述する回路基板3には、基板接続端子18、18を接続する受入端子部19、19が形成されており、基板接続用金属板5a、5aのそれぞれの基板接続端子18、18が、受入端子部19、19に接続されることで回路基板3に対して電気的に接続される。
【0026】
基板接続用金属板5aと両極連結用金属板5bは、銅合金またはそれに類する材料によって構成されることが好ましい。これにより、低抵抗で配電することが可能となる。基板接続用金属板5aと両極連結用金属板5bは、例えば、ニッケルまたはニッケル合金で構成される。これにより、基板接続用金属板5aと両極連結用金属板5bは、電極端子部との溶接性が良好になる。基板接続用金属板5aと両極連結用金属板5bは、その表面が錫またはニッケルでメッキされていてもよい。これにより、基板接続用金属板5aと両極連結用金属板5bの表面が酸化して錆びが発生することを防止できる。
【0027】
電池ホルダ12に収納された電池セル4は、基板接続用金属板5aと両極連結用金属板5bによって電気的に互いに接続される。
図1、
図3等の例では基板接続用金属板5aと両極連結用金属板5bによって、上下に並ぶ2個の電池セル4の組み合わせが並列で接続され、この組み合わせ3組が、直列で電気的に接続されることになる。
【0028】
なお、電池セル4の電極端子部15に接合される上記した金属板(基板接続用金属板5aと両極連結用金属板5b)の例は一例であり、金属板の数及び配置、個々の金属板の形状や材質等は、電極端子部15の配置や電池セル4などに応じて適宜設定可能である。
【0029】
(回路基板)
回路基板3は、電池パック1の外部接続端子36に対して電気的に接続されている。
図1の例では、配線(図示せず)を介して回路基板3と外部接続端子36とが電気的に接続されている。回路基板3は、基板接続用金属板5aの基板接続端子18と電気的に接続されており、電気回路を搭載している。電気回路は、電池セル4からの電力を外部接続端子36から外部に向けて供給することができるように形成されている。
【0030】
(外装ケース)
外装ケース2は、
図1、
図2A、
図2Bに示すように、上ケース2aおよび下ケース2bを有しており、上ケース2aと下ケース2bとを合わせた状態で内部空間Spが形成される。
図1、
図2Aの例では、上ケース2aは、略矩形状の上面部6を有する。上面部6の外縁全周囲からは、上側周壁部7が下方(-Z方向)に向かって立設されている。上ケース2aの深さ(上側周壁部7の基端から先端までの距離)は、特に限定されるものではないが、
図1、
図2Aの例では、下ケース2bの深さよりも浅く形成されている。
【0031】
下ケース2bは、略矩形状の底面部8を有する。底面部8の外縁全周囲から、下側周壁部9が上方(+Z方向)に向かって立設されている。
【0032】
上ケース2aおよび下ケース2bの材質は、絶縁性と剛性を有する材料であることが好適である。上ケース2aおよび下ケース2bが絶縁性を有することで、電池セル4から外装ケース2外に電流が流れ出ることが抑制される。また、上ケース2aおよび下ケース2bが剛性を有することで外装ケース2が堅牢性に富むようになり、電池パック1が過酷な状況の下におかれても、電池セル4の電池としての機能を発揮できる状態を維持しやすくなる。
【0033】
(外部接続端子)
外装ケース2には、所定の位置に、電池セル4と外部とを接続する外部接続端子36が設けられている。
図1の例に示すように、下ケース2bの前端側(+X方向)に外部接続端子36を取り付けるための受け口17が形成されており、受け口17に外部接続端子36がはめ込まれた状態で外部接続端子36が下ケース2bに固定されている。固定方法は特に限定されないが、
図1の例では、外部接続端子36の外周縁位置にて固定ネジ20で締結する方法が用いられている。
【0034】
(接触部)
外装ケース2では、上ケース2aの上側周壁部7の先端面22と下ケース2bの下側周壁部9の先端面23との接触する部分が、接触部21をなしている。下ケース2bの下側周壁部9の先端面23上の所定の位置には溝部24が形成されている。溝部24は、先端面23に沿って環状に形成される。
図1、
図2A、
図2Bの例では、溝部24は、ほぼ四角形の環状に形成されている。また、上ケース2aには、溝部24に対して向かい合う位置に突出部25が形成されている。突出部25は、溝部24の環状形状に整合するように、上ケース2aの上側周壁部7の先端面22に沿って環状に形成される。また、後述する第1の弾性部材26を溝部24に配置した状態で外装ケース2を密閉状態とする観点から、突出部25の高さは、溝部24の深さよりも小さいことが好ましい。
【0035】
(第1の弾性部材)
外装ケース2には、上ケース2aと下ケース2bとの接触部21に第1の弾性部材26が圧縮して配置されている。
図1、
図2A、
図2Bの例では、接触部21における溝部24の位置に第1の弾性部材26が配置される。第1の弾性部材26は特に限定されるものではないが、溝部24への設置の容易さ等の観点からは、環状の弾性部材が好適に用いられ、具体的にOリングが好適に用いられる。
【0036】
上ケース2aと下ケース2bを締結することで外装ケース2を形成する際には、突出部25と溝部24で第1の弾性部材26が押圧される。第1の弾性部材26は、溝部24にはめ込まれているため、溝部24内で潰されながら溝部24内に広がる。そして、第1の弾性部材26が、復元力の作用で溝部24と突出部25との間の位置で上ケース2aと下ケース2bとの間の隙間を埋めるようになり、外装ケース2の内部空間が密閉された状態が形成される。
【0037】
(挿入孔とネジ止め孔)
図1、
図2B、
図4A等に示すように、上ケース2aには、後述する段付きネジ14を挿通される挿入孔10が形成される。
図4Aは、
図2BのIVA-IVA線断面における段付きネジとその周囲の部分を抜き出した図である。挿入孔10は、貫通孔となっている。下ケース2bには、ネジ止め孔11が形成される。上ケース2aと下ケース2bとを位置合わせした状態として上ケース2aと下ケース2bを締結する場合に、挿入孔10の位置にネジ止め孔11が向かい合うように、ネジ止め孔11の位置が定められている。
図1の例では、挿入孔10とネジ止め孔11は、外装ケース2の四隅に形成されている。
【0038】
(段差部)
挿入孔10の形状や径は、特に限定されるものではないが、挿入孔10の内周面に、後述する段付きネジ14の頭部28(外径R1)と中間部29(外径R2)との外径差に応じた段差部27が形成されていることが好ましい。この場合、段差部27の大きさWが段付きネジ14の頭部28の外径R1と中間部29との外径R2との差以上であることが好ましい。
【0039】
また、挿入孔10のうち段差部27よりも内側の部分(接触部21側に近い方の部分)の径U2が、頭部28の径R1未満で中間部29の径R2以上であることが好ましい。径U2が、中間部29の径R2と同径に近いほど挿入孔10と中間部29を面接触させやすくなり、外装ケース2の防水性をより効果的に高めることができる。
【0040】
上記W、U2の値が上記のような条件を満たす場合、
図4Aに示すように、段差部27の上面34が第2の弾性部材33の受け面となる。そして、この場合、頭部28と中間部29を挿入孔10の内部に位置させつつ、頭部28と下ケース2bで上ケース2aを挟みこむことで上ケース2aが容易に下ケース2bから分離してしまうことを抑制することが容易となる。
【0041】
また、上記W、U2の値が上記のような条件を満たすと、挿入孔10のうち段差部27よりも外側の部分(上方側の部分)の径U1が、頭部28の径R1以上になる。
【0042】
なお、挿入孔10において段差部27が非形成となっている場合には、挿入孔10の径は、上記した径U2と同様に定められる。この場合、上面部6のうち挿入孔10の上端縁周囲の領域が第2の弾性部材33の受け面となる。
【0043】
ネジ止め孔11の形状や径は、段付きネジ14のネジ部30をネジ止め孔11に螺合させることができるように定められていれば、特に限定されるものではない。
【0044】
(段付きネジ)
外装ケース2には、
図4Aに示すように、挿入孔10を通過してネジ止め孔11まで段付きネジ14が挿入されている。段付きネジ14は、
図4A、
図5等に示すように頭部28と中間部29とネジ部30とを有する。頭部28は、中間部29及びネジ部30よりも大きな径を有する。中間部29は、頭部28とネジ部30の間に形成されており、ネジ部30の外径よりも大きく頭部28の外径よりも小さい。中間部29は、柱状に形成された部分でありネジ切り構造の非形成部分である。
図5の例では、中間部29は、円柱状に形成されている。ネジ部30は、周面にネジ切り構造を形成された部分である。
【0045】
頭部28と中間部29とネジ部30の外径及び長さ(ネジ軸方向に沿った長さ)は、挿入孔10とネジ止め孔11に応じて定められる。
【0046】
(第2の弾性部材)
電池パック1においては、
図4A、
図6Bに示すように、段付きネジ14の頭部28と上ケース2aの間に第2の弾性部材33が圧縮して配置される。なお、
図6に関して、
図6A、
図6B、
図6Cは、第2の弾性部材の状態を説明するための図である。
図6Aは、第2の弾性部材が非圧縮状態である場合の例であり、
図6Bは、第2の弾性部材を段付きネジとともに外装ケースに取り付けた場合における第2の弾性部材の状態の例であり、
図6Cは、
図6Bの状態で外装ケース内の圧力が上昇した際の第2の弾性部材の状態の例を示す。
【0047】
第2の弾性部材33として、
図4A、
図5、
図6A、
図6B、
図6Cの例では、中空円柱状の樹脂製弾性体が用いられている。中空円柱状の樹脂製弾性体としては、例えばエラストマー等の弾性樹脂成形体や、樹脂製の独立発泡体や、ゴムなどを例示することができる。防水性および経時劣化の観点からゴムを使用することがより好ましい。ゴムとしては、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)やフッ素ゴムを例示することができる。この場合、樹脂製弾性体の中空部分に段付きネジ14の中間部29を通した状態で第2の弾性部材33が外装ケースに配置される。
【0048】
第2の弾性部材33は、その内面と段付きネジ14の中間部29の外面が接していることが好ましい。これは、例えば、第2の弾性部材33が中空円筒状の弾性樹脂である場合に、第2の弾性部材33の内径Pと段付きネジ14の中間部29の径R2が揃っていること等で具体的に実現できる(
図4A、
図5、
図6)。第2の弾性部材33の内面に段付きネジ14の中間部29の外面が接していることで、上ケース2aと下ケース2bを締結させる際に、第2の弾性部材33を段付きネジ14の中間部29に堅固に嵌めつけた状態を形成することができ、段付きネジ14に対する第2の弾性部材33のぐらつきを抑制することができるようになる。
【0049】
(第2の弾性部材のその他の例1)
第2の弾性部材33としては、弾性接着剤が用いられてもよい。弾性接着剤は、段付きネジ14の頭部28の下面31から中間部29の所定領域にかけて塗布されてもよいし、挿入孔10内の所定領域に塗布されてもよい。弾性接着剤としては、アクリル変成シリコーン系樹脂やエポキシ・変成シリコーン系(二液混合硬化)樹脂などの弾性樹脂を例示することができる。
【0050】
(第2の弾性部材のその他の例2)
第2の弾性部材33は、中空円筒状の樹脂製弾性体のように上ケース2aおよび段付きネジ14とは別体で形成されたものに限定されない。第2の弾性部材33は、例えば、上ケース2aに対して一体的に設けられていてもよい。上ケース2aに対して第2の弾性部材33を一体的に設ける方法としては、例えば、第2の弾性部材33として弾性樹脂を用い、2色成形法(ダブルモールド)で上ケース2aを成形することで実現することができる。すなわち、上ケース2aを成形する際に、挿入孔10の形成部分については弾性樹脂を用い、挿入孔10の他の部分について弾性樹脂とは異なる樹脂を用いて2色成形法を実施することで実現できる。
【0051】
(上ケースと下ケースの締結)
上ケース2aと下ケース2bは例えば次のように締結することができる。下ケース2bにおける下側周壁部9の先端面23に形成された溝部24に第1の弾性部材26が配置される。上ケース2aと下ケース2bが位置決めされる。このとき、上側周壁部7の先端面22と下側周壁部9の先端面23が対面し、上ケース2aの挿入孔10と下ケース2bのネジ止め孔11が向かい合う。
【0052】
挿入孔10側からネジ止め孔11に向けて段付きネジ14と第2の弾性部材33が挿入孔10に挿入される。段付きネジ14のネジ部30は、挿入孔10を貫通して、ネジ止め孔11に達する。このとき段付きネジ14の頭部28の下面31位置から中間部29の外周面所定領域を覆うように、第2の弾性部材33が配置される。
図4Aに示すように、上ケース2aに形成される段差部27の上面34から頭部28の下面31まで第2の弾性部材33が配置される。段付きネジ14のネジ部30は、ネジ止め孔11で螺合される。ネジ部30がネジ止め孔11内に深く入り込むにつれ、第2の弾性部材33が圧縮される。段付きネジは、中間部29の先端が下ケース2bの先端面23に到達するまでネジ止め孔11内に螺合される。このとき、
図6A、
図6Bに示すように、第2の弾性部材33は、非圧縮時の長さT1から、ネジ止め孔11への取り付け時の長さT2(T2<T1)に圧縮される。
図1の例では、外装ケース2の四隅の挿入孔10とネジ止め孔11の組合せ全てについて、段付きネジ14のネジ部30がネジ止め孔11の内部に入り込む。こうして、上ケース2aと下ケース2bとが締結される。
【0053】
なお、段付きネジ14のネジ部30がネジ止め孔11の内部に入り込むにつれ、上ケース2aの突出部25が溝部24内に入り込み、第1の弾性部材26が圧縮され、
図4A、
図4Bに示すように、上ケース2aと下ケース2bの密閉状態が形成される。
【0054】
(挿入孔とネジ止め孔に対する溝部の相対的位置)
図2Bに示すように、挿入孔10とネジ止め孔11の位置は、外装ケース2の平面視上、溝部24よりも内側に形成されている。すなわち、段付きネジ14で締結される位置が、外装ケース2の平面視上、第1の弾性部材26が配置される位置よりも内側となっている。第2の弾性部材33として上記したような樹脂製弾性体等の樹脂が用いられている場合、段付きネジ14で締結される位置は、第1の弾性部材26が配置される位置よりも外側でもよい。段付きネジ14で締結される位置が第1の弾性部材26が配置される位置よりも内側でも外側でもよいのは、段付きネジ14と挿入孔10の隙間が存在しても、その隙間を第2の弾性部材33で密閉状態にすることができるためである。したがって、挿入孔10とネジ止め孔11の位置は、外装ケース2の平面視上、溝部24よりも外側でもよい。なお、外装ケース2の平面視上とは、上ケース2aから上下方向(-Z方向)に沿って下ケース2bに向かう方向を視線方向とした場合を示す。
【0055】
(第2の弾性部材と第1の弾性部材の関係)
第2の弾性部材33の潰し荷重は、第1の弾性部材26の潰し荷重の2倍以上であることが、好ましい。この場合、段付きネジ14の頭部28から第2の弾性部材33に加えられる押圧力で第1の弾性部材26による密閉状態をより効率的に形成させることができる。なお、潰し荷重とは、測定対象とされた弾性部材を単位距離圧縮変形させるために要する荷重(N)を示す。
【0056】
(機能と効果)
電池パック1においては、段付きネジ14の頭部28と上ケース2aとの間に第2の弾性部材33が存在するため、電池パック1内部で電池セル4からガスが噴出された場合に外装ケース2内の圧力が上昇すると、
図6B、
図6Cに示すように、第2の弾性部材33がさらに圧縮される。第2の弾性部材33は、ネジ止め孔11への取り付け時の長さT2から、さらに長さT3(T3<T2)へと圧縮される。第2の弾性部材33の圧縮が進むと、
図7A、
図7Bに示すように、上側周壁部7の先端面22と下側周壁部9の先端面23が離れて、上ケース2aと下ケース2bとの間に隙間を生じ、第1の弾性部材26の圧縮状態がゆるみ、外装ケース2の密閉状態が解かれる。そして、上ケース2aと下ケース2bの隙間から外部(F方向に)に速やかにガスが放出される。
【0057】
電池セル4からのガス噴出速度が速い場合には、第2の弾性部材33の圧縮も速やかに進行するため、上ケース2aと下ケース2bの隙間から外部に速やかにガスが放出される。したがって、電池セルからのガス噴出速度が速い場合でも電池パックの爆発を防止できる。
【0058】
また、ガスが放出されて外装ケース内の圧力が低下すると第2の弾性部材33の圧縮状態が回復する。このとき第1の弾性部材26の圧縮状態が回復し、上ケース2aと下ケース2bとが再び密着状態となる。そして、このように上ケース2aと下ケース2bとが密着状態になると、外気が外装ケース2内に大量に入り込むことが規制される。したがって、ガスを外部に逃がした際における電池パック1内への外気の流入による炎上を抑制することができる
【0059】
[2 第2の実施形態]
上記第1の実施形態にかかる電池パックでは、第2の弾性部材33として、樹脂製弾性体等の樹脂が用いられていた。電池パックの第2の弾性部材33は、これに限定されず、圧縮コイルばねであってもよい(第2の実施形態)。
【0060】
第2の実施形態にかかる電池パックは、
図8A、
図8Bに示すように、第2の弾性部材33を圧縮コイルばね35とし、外装ケース2の平面視上、段付きネジ14で締結される位置が第1の弾性部材26が配置される位置よりも外側となっているようにしたほかは、第1の実施形態にかかる電池パックと同じ構成を有する。
【0061】
(圧縮コイルばね)
第2の弾性部材33として用いる圧縮コイルばね35は、外装ケース2の内部空間を十分に密閉できるものであれば、特に限定されない。圧縮コイルばね35の材質としては、金属などを挙げることができる。第2の弾性部材33が、金属などから形成された圧縮コイルばねである場合、紫外線劣化等を生じにくく、耐久性に優れた電池パックを得ることができる。
【0062】
(段付きネジで締結される位置)
第2の実施形態にかかる電池パック1においては、段付きネジ14で締結される位置が第1の弾性部材26の配置位置よりも外側となっている。これは、例えば
図8Aに示すように、第1の実施形態にかかる電池パック1で説明した挿入孔10とネジ止め孔11の位置が、溝部24よりも外側に形成されていることで実現できる。これにより、段付きネジ14との隙間をぬって外気や水分が外装ケース2内に入り込もうとしても、溝部24と突出部25との間に配置される第1の弾性部材26で外装ケース2の内部空間が密閉されているため、外装ケース2内への外気や水分の侵入を規制することができる。
【0063】
[3 第3の実施形態]
上記第1の実施形態にかかる電池パック1においては、複数の段付きネジ14で上ケース2aと下ケース2bが締結されている場合に、少なくとも一つの前記段付きネジ14の中間部29の長さが、その他の段付きネジ14の中間部29の長さとは異なっていてもよい(第3の実施形態)。
【0064】
第3の実施形態にかかる電池パック1においては、1つの段付きネジ14の中間部29の長さが、その他の段付きネジ14の中間部29の長さとは異なっていてもよいし、2つ以上の段付きネジ14の中間部29の長さが、その他の段付きネジ14の中間部29の長さとは異なっていてもよいし、全ての段付きネジ14の中間部29の長さが、互いに異なっていてもよい。
【0065】
図9に示すように、外装ケースの四隅に段付きネジ14として、段付きネジ14a、14b、14c、14dを設けている場合、電池パック1内部で電池セル4からガスが噴出された場合に、外装ケース2から一方向にガスを放出させやすくする観点からは、外周縁に沿って隣り合う2つの段付きネジ14、14の中間部29、29の長さが、その他の段付きネジ14、14の中間部29、29の長さとは異なっていることが好ましい。なお、
図9において、段付きネジ14a、14b、14c、14dに対応して、第2の弾性部材33として第2の弾性部材33a、33b、33c、33dが設けられる。
【0066】
例えば、
図9の例に示すように、段付きネジ14a、14b、14c、14dの中間部29の長さを、それぞれN1、N2、N3、N4とした場合に、第3の実施形態では、段付きネジ14a、14bの中間部の長さよりも、段付きネジ14c、14dの中間部の長さの方が長く、N1とN2の値よりも、N3とN4の値の方が大きい。この場合、複数の段付きネジ14で上ケース2aと下ケース2bが締結された状態(通常状態)で、外部接続端子36に遠い方に配置された2つの第2の弾性部材33c、33dの圧縮の程度が、外部接続端子36に対して近い方に配置された2つの第2の弾性部材33a、33bよりも小さくなりやすい。すなわち、第2の弾性部材33c、33dが第2の弾性部材33a、33bよりも圧縮されやすい状態となりやすい。したがって、段付きネジ14c、14dが取り付けられた部分のほうが、段付きネジ14a、14bを取り付けられた部分よりも小さい力で上ケース2aと下ケース2bとの間に隙間を形成することができるようになる。したがって、この場合、電池パック1内部で電池セル4からガスが噴出されて外装ケース2内の圧力が上昇した場合に(異常状態の場合に)、下ケース2bにおける下側周壁部9のうち外部接続端子36の配置された部分とは反対側の部分と、その部分に対応する上側周壁部7の部分との間に隙間ができやすくなり、矢印Fx方向にガスが放出されやすくなる。ガスが外部接続端子の反対側から放出されることで、外部接続端子側の外部機器によるガスの放出の阻害を避けることができ、また、ガスの放出による電池パックの飛び出しなどを避けることができ、安全性を向上させることができる。
【0067】
[4 第4の実施形態]
上記第1の実施形態にかかる電池パック1においては、複数の段付きネジ14で上ケース2aと下ケース2bが締結され、それぞれの段付きネジ14に第2の弾性部材33が配置されている場合に(第2の弾性部材33を複数有する場合に)、少なくとも1つの第2の弾性部材33の非圧縮時の長さと、そのほかの第2の弾性部材33の非圧縮時の長さとが異なっていてもよい(第4の実施形態)。
【0068】
第4の実施形態にかかる電池パック1においては、1つの第2の弾性部材33の非圧縮時の長さが、その他の第2の弾性部材33の非圧縮時の長さとは異なっていてもよいし、2つ以上の第2の弾性部材33の非圧縮時の長さが、その他の第2の弾性部材33の非圧縮時の長さとは異なっていてもよいし、全ての第2の弾性部材33の非圧縮時の長さが、互いに異なっていてもよい。
【0069】
図9に示すように、外装ケースの四隅に段付きネジ14として、段付きネジ14a、14b、14c、14dを設け、段付きネジ14a、14b、14c、14dに対応して、第2の弾性部材33として第2の弾性部材33a、33b、33c、33dが設けている場合、外周縁に沿って隣り合う2つの第2の弾性部材33の非圧縮時の長さが、その他の第2の弾性部材33の非圧縮時の長さとは異なっていることが好ましい。
【0070】
例えば、
図9の例に示すように、第2の弾性部材33a、33b、33c、33dの長さ(上下方向に沿った長さ)を、それぞれL1、L2、L3、L4とした場合に、第4の実施形態では、第2の弾性部材33c、33dの長さよりも、第2の弾性部材33a、33bの長さの方が長く、L3とL4の値よりも、L1とL2の値の方が大きい。この場合、複数の段付きネジ14で上ケース2aと下ケース2bが締結された通常状態で、第2の弾性部材33c、33dの圧縮の程度が、第2の弾性部材33a、33bの圧縮の程度よりも小さくなりやすい。すなわち、第2の弾性部材33c、33dが第2の弾性部材33a、33bよりも圧縮されやすい状態となりやすい。したがって、この場合、第3の実施形態と同様に、電池パック1内部で電池セル4からガスが噴出されて外装ケース内の圧力が上昇した場合に、下ケース2bにおける下側周壁部9のうち外部接続端子36の配置された部分とは反対側の部分と、その部分に対応する上側周壁部7の部分との間に隙間ができて、矢印Fx方向にガスが放出されやすくなる。
【0071】
[5 第5の実施形態]
上記第1の実施形態にかかる電池パックにおいては、複数の段付きネジ14で上ケース2aと下ケース2bが締結され、それぞれの段付きネジ14に第2の弾性部材33が配置されている場合に(第2の弾性部材33を複数有する場合に)、少なくとも1つの第2の弾性部材33の硬度と、その他の第2の弾性部材33の硬度とが異なっていてもよい(第5の実施形態)。ここに硬度とは、ショアA硬度を示す。
【0072】
第5の実施形態にかかる電池パック1においては、1つの第2の弾性部材33の硬度が、その他の第2の弾性部材33の硬度と異なっていてもよいし、2つ以上の第2の弾性部材33の硬度が、その他の第2の弾性部材33の硬度とは異なっていてもよいし、全ての第2の弾性部材33の硬度が、互いに異なっていてもよい。
【0073】
図9に示すように、外装ケースの四隅に段付きネジ14として、段付きネジ14a、14b、14c、14dを設け、段付きネジ14a、14b、14c、14dに対応して、第2の弾性部材33として第2の弾性部材33a、33b、33c、33dが設けている場合、外周縁に沿って隣り合う2つの第2の弾性部材33の硬度が、その他の第2の弾性部材33の硬度とは異なっていることが好ましい。
【0074】
例えば、
図9の例に示すように、第2の弾性部材33a、33b、33c、33dの硬度を、それぞれC1、C2、C3、C4とした場合に、第5の実施形態では、第2の弾性部材33c、33dの硬度よりも、第2の弾性部材33a、33bの硬度の方が大きく、C3とC4の値よりも、C1とC2の値の方が大きい。この場合、第2の弾性部材33c、33dが第2の弾性部材33a、33bよりも圧縮されやすい状態となりやすい。したがって、この場合、第3の実施形態と同様に、電池パック1内部で電池セル4からガスが噴出されて外装ケース内の圧力が上昇した場合に、下ケース2bにおける下側周壁部9のうち外部接続端子36の配置された部分とは反対側の部分と、その部分に対応する上側周壁部7の部分との間に隙間ができて、矢印Fx方向にガスが放出されやすくなる。
【0075】
[6 応用例]
次に、応用例として、上述の電池パックを備える電動車両について説明する。特に、電動車両の一例として、電動自転車について以下に説明する。
【0076】
図10は、電池パックを電動自転車に備えた場合の、電動自転車の構成の一例を概略的に示したものである。
【0077】
電動自転車200は、補助駆動力faを供給する補助駆動装置207を有する。補助駆動装置207は、補助駆動力faを発生させるモータ214と、減速機215と、補助駆動力faをチェーン212に出力する駆動部216と、ペダル209に作用する踏力fhを検出するトルクセンサ217と、制御部218とを有している。トルクセンサ217はクランク軸206にかかるトルクから踏力fhを検出するものであり、例えば磁歪センサ等が用いられる。
【0078】
クランク軸206の両端には、踏力fhが加えられる左右のペダル209が取付けられている。また、後輪205はチェーン212を介してクランク軸206に連動連結されており、踏力fhおよび補助駆動力faはチェーン212を介して後輪205に伝達される。
【0079】
制御部218は、マイクロコンピュータを含む電気回路等により構成されており、不揮発性メモリからなる記憶部等を備える。制御部218は、トルクセンサ217から随時入力される検出信号に基づいてモータ214を制御している。制御部218が外部制御部に相当する。
【0080】
電動自転車200の車体に対して、蓄電装置219が着脱自在に設けられる。蓄電装置219は、電動自転車200に装着された状態で補助駆動装置207に給電する。この蓄電装置219として、上記第1の実施形態から第5の実施形態で説明した電池パックが適用される。
【0081】
蓄電装置219は、モータ214に第1の電力を供給する。さらに、蓄電装置219は、制御部218に対して第2の電力を供給する。なお、補助駆動装置207の制御部218と蓄電装置219における制御部(内部制御部)219aとの間で通信が行われる。
【0082】
蓄電装置219が、上記第1の実施形態から第5の実施形態で説明した電池パックであることで、蓄電装置をなす電池パックに収納された電池セルに異常が生じて外装ケースの内部空間に電池セルからガスが噴出した場合に、電池パックから速やかにガスを放出することができ、電池パックの破裂(蓄電装置の破裂)による電動自転車の事故を抑制することができる。
【0083】
[7 変形例]
以上、本発明の実施形態(第1の実施形態から第5の実施形態)および実施例について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0084】
例えば、上述の実施形態および応用例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値等はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値等を用いてもよい。また、上述の実施形態および応用例の構成、方法、工程、形状、材料および数値等は、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 電池パック
2 外装ケース
2a 上ケース
2b 下ケース
4 電池セル
14 段付きネジ
26 第1の弾性部材
27 段差部
28 頭部
29 中間部
30 ネジ部
33 第2の弾性部材
35 圧縮コイルばね