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特開2024-23588ガイドされたバイトスプリントを製作するための方法およびガイドされたバイトスプリント
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  • 特開-ガイドされたバイトスプリントを製作するための方法およびガイドされたバイトスプリント 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023588
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ガイドされたバイトスプリントを製作するための方法およびガイドされたバイトスプリント
(51)【国際特許分類】
   A61C 7/08 20060101AFI20240214BHJP
   A61C 7/36 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61C7/08
A61C7/36
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023206767
(22)【出願日】2023-12-07
(62)【分割の表示】P 2020539145の分割
【原出願日】2018-10-02
(31)【優先権主張番号】DE102017217558.3
(32)【優先日】2017-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】500058187
【氏名又は名称】シロナ・デンタル・システムズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ビューラー,エリアス
(72)【発明者】
【氏名】オスカム,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】マクリス,エヴァンゲロス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】対向する顎の少なくとも一つのガイドを含む支持顎のためのガイドされたバイトスプリントを製作するための方法を提供する。
【解決手段】本発明は、対向する顎4のための少なくとも一つのガイド3、30、31を含む支持顎2のためのガイドされたバイトスプリント1を製作するための方法に関連する。支持顎2の3Dモデル5および/または対向する顎4の3Dモデル6が利用可能であり、支持顎と対向する顎の3Dモデルは、咬合位置7にお互いに配置され、支持顎に対する対向する顎の咬合動作10、11、12をシミュレーションする仮想咬合器モデル8に組み込まれ、バイトスプリントの3Dモデルは、支持顎の3Dモデルおよび/または対向する顎の3Dモデルを使用して構築され、対向する顎のための少なくとも一つのガイドは、コンピュータの支援によって、バイトスプリントの3Dモデル13上に自動的に構築される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する顎(4)のための少なくとも一つのガイド(3、30、31)を含む支持顎(2)用のバイトスプリント(1)をコンピュータの支援によって製作する方法であって、
前記支持顎(2)の3Dモデル(5)および前記対向する顎(4)の3Dモデル(6)が利用可能であり、
前記コンピュータが、前記支持顎(2)および前記対向する顎(4)の前記3Dモデル(5、6)を咬合位置(7)において互いに対して配置し、
前記コンピュータが、前記バイトスプリント(1)の3Dモデル(13)を、前記支持顎(2)の前記3Dモデル(5)および前記対向する顎(4)の前記3Dモデル(6)を使用して構築し、
前記コンピュータが、前記対向する顎(4)の前記少なくとも一つのガイド(3、30、31)を、前記バイトスプリント(1)の前記3Dモデル(13)上に自動的に構築し、
前記コンピュータが、前記バイトスプリント(1)の前記3Dモデル(13)を、自動的に計算し、前記バイトスプリント(1)が前記支持顎(2)上の画定された接触領域を覆い、少なくとも一つの局所の咬頭先端が、前記対向する顎(4)の少なくとも一つの歯(17)のための支持点(18)として画定されるという条件が満足されなければならないことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記コンピュータが、前記支持顎(2)および前記対抗する顎(4)の前記3Dモデル(5、6)が、前記支持顎(2)に対して前記対抗する顎(4)の咬合動作(10、11、12)をシミュレーションする仮想咬合器モデル(8)に組み込むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コンピュータが、前記支持顎(2)としての、前記支持顎(2)上または前記対抗する顎(4)上の前記バイトスプリント(1)の延長を、自動的に設定することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記コンピュータが、前記バイトスプリント(1)の最小厚さを、自動的に設定することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記コンピュータが、前記バイトスプリント(1)の所望の咬合位置(7)における咬合開口の画定された距離を自動的に設定することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記コンピュータが、前記対向する顎(4)上に構成される前記ガイド(3、30、31)の少なくとも一つのガイドポイント(14、15、16)を、自動的に画定することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記コンピュータが、少なくとも一つの移動プロファイル(19、20、21、22、23)を各ガイドポイント(14、15、16)に対して画定することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記コンピュータが、前記ガイド(3、30、31)の表面形状を、前記少なくとも一つの移動プロファイル(19、20、21、22、23)に従って自動的に計算することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記コンピュータが、少なくとも二つの移動プロファイル(19、20、21、22、23)を、各ガイドポイント(14、15、16)の二つの異なる平面において画定し、前記ガイド(3、30、31)の表面形状を、滑らかな移行が生まれるように、前記二つの移動プロファイル(19、20、21、22、23)の二つの平面間に補間することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記コンピュータが、前記バイトスプリント(1)の構築の間に、前記バイトスプリント(1)の前記3Dモデル(13)の表面を、前記対向する顎(4)が、定義された動き範囲内で、前記仮想咬合器モデル(8)における前記少なくとも一つのガイド(3)に沿って移動する限り、前記対向する顎(4)の前記3Dモデル(6)の表面点が実質的に貫通されない程度に、減少させることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記コンピュータが、前記バイトスプリント(1)を、CAM機械(38)などの減法製造法を使用して、または3Dプリンタなどの付加製造法を使用して、前記バイトスプリント(1)の前記構築された3Dモデル(13)に従って完全に自動的に製作することを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向する顎の少なくとも一つのガイドを含む支持顎のためのガイドされたバイトスプリントを製作するための方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野の状態から、ガイドされたバイトスプリントの製作方法が公知であり、ここでガイドされたバイトスプリントが咬合器にクランプ留めされ、徐々に調整される。特に、ガイドトラックは、材料が手動で取り外される咬合器における咬合動作を使用して機械的に段階的に製作される。
【0003】
DE202010006250U1号は、側頭下顎関節の顆状位置を修正するためのガイドレールを製作するための装置を開示しており、それにより、装置は、下顎モデルが配置され、上顎モデルに対するプラットホーム位置が制御装置を使用して変更される位置的に可変のプラットホームを含む。
【0004】
DE102013112032A1号は、バイトスプリントを構築するための方法を開示しており、ここで二つの顎の3Dデータが取得され、互いに対する患者の顎および側頭下顎関節の位置が取得され、咬合がシミュレーションされ、頭蓋下顎システムの歯の干渉接触が特定され、バイトスプリントは取得された3Dデータを使い、および得られたデータのシミュレーションから構築され、その結果、識別された干渉接触が除去される。痛みを避けるために、一連の複数のバイトスプリントは、側頭下顎関節の生理学的位置に相互作用的に近似するように構築され、それによって、一連のバイトスプリントが形状でわずかに異なり、よって側頭下顎関節は、長期間にわたって小さな個別のステップにおいて生理学的位置にもたらされる。
【0005】
US20150238280A1号は、顎矯正のために顎を位置決めするための装置および方法を開示し、治療計画が提供され、歯科装置の仮想モデルは患者の二つの顎を再配置するように構成された第一シェルおよび第二シェルを含む。第一の要素は上部シェルに取り付けることができ、第二の要素は下部シェルに取り付けることができ、二つの要素は互いに接触して、二つの顎の所望の変位をもたらす。
EP1516604A1号は、上顎スプリントおよび下顎スプリントを有する口腔内治療装置、好ましくはいびき治療装置を開示し、二つのスプリントは固定ロッドで関節形式で互いに接続されている。
既知の方法の一つの不利点は、ガイドされたバイトスプリントのガイドが、手動の再加工によって後に加えられることである
【0006】
従って、本発明の目的は、ガイドされたバイトスプリントの精密かつ時間を節約した製作を可能にするガイドされたバイトスプリントを製作するための方法を提供するための方法を提供することであり、これによって、特に、バイトスプリントのガイドの手動の製作エラーが回避される。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、対向する顎の少なくとも一つのガイドを含む支持顎のためのガイドされたバイトスプリントを製作するための方法に関連する。上顎の3Dモデルおよび/または下顎の3Dモデルはすでに利用可能であり、それによって上顎および下顎の3Dモデルが互いに対して咬合位置に配置される。その後、上顎の3Dモデルおよび/または下顎の3Dモデルを使用して、バイトスプリントの3Dモデルが構築され、それによって、対向する顎の少なくとも一つのガイドが、コンピュータの支援によってバイトスプリントの3Dモデル上に自動的に構築される。
【0008】
ガイドされたバイトスプリントは、支持顎としておよび、よって下顎の対向する顎として上顎上で構築されており、または支持顎としておよび、よって上顎の対向する顎として下顎上で構築される。
【0009】
ガイドされたバイトスプリントは、歯の摩耗、歯ぎしりおよび頭蓋下顎機能不全の歯科および歯科矯正治療で使用され、マウスガードとしても使用される。
【0010】
ガイドされたバイトスプリントは、ミシガンスプリントとすることができ、例えば、筋肉および関節の痛みおよび不安定な末端咬合を防止するために使用される。ミシガンスプリントは、主に弛緩スプリントとして作用する。バイトスプリント上の下顎のガイダンスは、犬歯の領域で最も頻繁に実施される。
【0011】
ガイドされたバイトスプリントはまた、下顎安定化に特に使用されるDROSバイトスプリントであり得る。
【0012】
従って、ガイドされたバイトスプリントは、咬合機能不全を防止し、咀嚼筋肉を緩和するための弛緩スプリントとして機能する。ガイドされたバイトスプリントはまた、歯の摩耗によって引き起こされる硬い歯の物質の破壊を防ぐことが意図されている。
【0013】
ガイドされたバイトスプリントを使用して、後退する下顎を有する不正咬合または突出した下顎を有する不正咬合など、異なる不正咬合を治療できる。顎の異常は先天性または後天性のどちらかであり得る。不正咬合の程度は顎が閉じているときのみ明らかになり、例えば、開放バイト、または、上顎の歯が、上下逆ではなく、下顎の歯の後ろを噛むという事実によって明らかになる。互いに対する顎の位置および顔の骨に対する顎の位置は、顔面の輪郭に著しい影響を与える。過剰発達または発育不全が、上顎および/または下顎に位置するかどうかによって、異なる顔面プロファイルが不正咬合とともに生じる。
【0014】
バイトスプリントのガイドは、通常、前歯の面積および/または犬歯の領域内に配置され、一般的なバイトスプリントの挿入軸に対して、20度~40度で、通常は顎移動の横方向および/または推進方向における傾斜角度を持ち得る。
【0015】
上顎および/または下顎の3Dモデルは、前述の方法を実行するためにすでに利用可能であり、例えば、口腔内3Dカメラを使用して測定された。
【0016】
二つの顎の3Dモデルは、咬合位置において互いに配置され、仮想咬合器モデルに組み込まれる。例えば、二つの3Dモデルを互いに対して配列するために、末端咬合における患者の二つの顎の横方向の3D画像を使用することができる。
【0017】
対向する顎に対する少なくとも一つのガイドは、コンピュータの支援によって自動的に構築され、それによって、末端咬合において、バイトスプリントのガイドが不正咬合を修正するために、対向する顎上で所望の方向に力を及ぼす。
【0018】
突出する下顎の場合には、下顎は、不正咬合を修正するために、歯弓の末端に向かって遠位方向に移動するべきである。後退する下顎の場合、下顎は歯弓の中心に向かって近心方向に移動するべきである。
【0019】
本方法の一つの利点は、ガイドされたバイトスプリントがコンピュータの支援によって仮想的に構築されており、CAD/CAM方法を使用それともまたは3Dプリンタを使用してガイドされたバイトスプリントの構築された3Dモデルに従って完全に自動的に製作され得ることである。
【0020】
本方法のさらなる利点は、ガイドされたバイトスプリントの少なくとも一つのガイドが、対向する顎に正確に位置付けられ、正確に適合され得ることである。既知の製作方法と比較して、ガイドを製作するための材料の時間のかかるステップごとの取り外しが除去される。
【0021】
上顎および下顎の3Dモデルは有利なことに、仮想咬合器モデルに組み込まれることができ、これは上顎に対する下顎の咬合動作をシミュレーションする。
【0022】
仮想咬合器モデルは、側頭下顎関節の動きを模倣する咬合器をシミュレーションする。互いに対する顎の動きはシミュレーションされ、それによって側頭下顎関節は回転運動(関節の軸周りの開閉動作)およびスライド運動(前方動作)の両方を遂行することができる。側頭下顎関節は、軟骨に覆われた関節ヘッド、同様に軟骨に覆われた関節空洞、および繊維軟骨中間関節椎間板からなる。側頭下顎関節はさらに、靭帯装置、血管および神経などの軟組織構造から構成される。口が開いている時、関節ヘッドは通常、関節ヘッドにしっかりと取り付けられる椎間板とともに前方および下方にスライドする。側頭下顎関節および咀嚼筋肉は、下顎の全ての動きで活性である。これらの動きを仮想咬合器モデルの助けとともに模倣する意図である。仮想咬合器モデルを作成するために、お互いに二つの顎の相対的位置を、例えば、異なる開口角に対して測定することができ、従って仮想咬合器モデルに移される。
【0023】
ガイドされたバイトスプリントは次に、顎の二つの3Dモデルを使用して、側頭下顎関節のシミュレーションされた動きを考慮してコンピュータの支援によって仮想咬合器モデルで構築される。
【0024】
仮想咬合器モデルの代替として、互いに対する二つの顎の動きも、いわゆる発見的方法、例えば、互いに向かう顎の二つの3Dモデルの並進移動を使用して、計算またはシミュレーションすることができる。
【0025】
支持顎としての上顎または下顎上のガイドされたバイトスプリントの延長は、有利なことにコンピュータの支援によって自動的にまたはユーザによって設定され得る。
【0026】
従って、支持顎に対するガイドされたバイトスプリントの延長が設定される。延長は、ガイドされたバイトスプリントの境界を支持顎の3Dモデル上に描き出すことによって、仮想ツールを使用してユーザによって設定され得る。バイトスプリントの延長は、別の方法として、支持顎の異なる3Dモデルのデータベースにアクセスし、バイトスプリントの延長がすでに画定されている支持顎の適切な3Dモデルを選択することによって、コンピュータの支援によって自動的に設定され得る。
【0027】
ガイドされたバイトスプリントの最小厚さは、有利なことに、コンピュータの支援によって自動的にまたはユーザによって設定され得る。
【0028】
従って、バイトスプリントの最小厚さは設定され得る。ユーザは、例えば、最小厚さの値を手動で入力することができる。別の方法として、最小厚さは、支持顎の測定された3Dモデルを、最小厚さがすでに指定されている異なる支持顎のデータベースと比較することによって、コンピュータの支援によって自動的に設定することができる。ガイドされたバイトスプリントは、バイトスプリントの挿入軸に沿ってどこでもある特定の最小厚さを持つ必要がある。挿入軸は、バイトスプリントが支持顎に配置された時に挿入方向によって画定される。しかし、バイトスプリントの縁部に向けた厚さは、特定の最小厚さより小さくてもよい。
【0029】
ガイドされたバイトスプリントの所望の咬合位置における咬合開口の画定された距離は、有利にも、コンピュータの支援によって自動的にまたはユーザによって設定され得る。
【0030】
従って、咬合開口の画定された距離が定義される。距離は、例えば、ユーザによって入力されてもよく、または既知の咬合開口を有する異なる支持顎および対向する顎のデータベースと比較して、コンピュータの支援によって自動的に入力され得る。例えば、咬合開口の距離は、支持顎および対向する顎の対応する咬合接触間の距離によって画定され得る。
【0031】
ガイドされたバイトスプリントの3Dモデルは、コンピュータの支援によって自動的に計算されるが、ガイドされたバイトスプリントは、支持顎上の画定された接触領域を覆い、少なくとも一つの局所の咬頭先端が対向する顎の少なくとも一つの歯の支持点として画定されているという条件を満足しておく必要がある。
【0032】
従って、ガイドされたバイトスプリントの3Dモデルは、条件が満足されるように、コンピュータの支援によって自動的に計算される。画定された接触領域は、それを異なる支持顎のデータベースと比較することによって、ユーザによって手動で決定されるか、またはコンピュータの支援により自動的に決定され得る。個々の歯の画定された支持点は、支持顎上のバイトスプリントの安定した機械的配置を確保する。
【0033】
対向する顎上に構成されるガイドの少なくとも一つのガイドポイントは、有利なことに、コンピュータの支援によって自動的に、またはユーザによって手動で画定され得る。
【0034】
従って、ガイドポイントは、それを設定されたガイドポイントを有する異なる支持顎および対向する顎のデータベースと比較することによって、仮想ツールを使用してユーザによって手動で、またはコンピュータの支援によって自動的に画定される。
【0035】
有利なことに、少なくとも一つの移動プロファイルを各ガイドポイントについて画定できる。
【0036】
従って、ユーザは、例えば、仮想ツールの支援によって、各ガイドポイントの移動プロファイルを画定する。移動プロファイルは、顎移動距離に基づいて顎開口の関数として定義される。従って、移動プロファイルは、顎開口が、対向する顎がバイトスプリントに噛み合わされる閉鎖した咬合位置に減少したときに対向する顎の望ましい移動経路を定義する。望ましい移動経路を得るために、例えば、突出する下顎の場合において、力が遠位方向に下顎に作用し、後退する下顎の場合において、力が近心方向に作用する。移動プロファイルは固定平面を通過し、これはガイドポイントを通過し、例えば、挿入軸の方向に沿って延びる。また、一つのガイドポイントの異なる平面に複数の移動プロファイルを定義することも可能である。
【0037】
ガイドの表面形状は、有利なことに、少なくとも一つの移動プロファイルの関数としてコンピュータの支援によって自動的に計算され得る。
【0038】
従って、ガイドの表面形状は、少なくとも一つの設定された移動プロファイルの関数として、コンピュータの支援によって自動的に計算される。ガイドされたバイトスプリントの3Dモデルの表面は、ガイドの領域に従って調整またはガイドされることができ、それによって、設定された移動プロファイル間の中間スペースを、ガイドの表面形状の滑らかな移行が製作されるように補間できる。従って、ガイドの表面形状は、構築されたガイドが、画定された移動プロファイルに従って、バイトスプリントに対しておよび支持顎に対して対向する顎の望ましい移動経路をもたらすように計算される。
【0039】
有利なことに、少なくとも二つの移動プロファイルを各ガイドポイントの二つの異なる平面に画定することができ、二つの移動プロファイルの二つの平面間のガイドの表面形状は、滑らかな移行が製作されるような方法で補間される。
【0040】
従って、移動プロファイル間の補間は、ガイドの表面形状の滑らかな移行をもたらし、それによって、支持顎に対する対向する顎の望ましい移動経路が構築されたガイドによって達成される。
【0041】
第一の移動プロファイルの第一の平面は、例えば、横方向の移動方向に配置することができ、第二の移動プロファイルの第二の平面は、例えば、突起(後および前)の移動方向に配置することができる。
【0042】
バイトスプリントの構築の間、ガイドされたバイトスプリントの仮想3Dモデルの表面は、有利なことに、対向する顎の3Dモデルの表面点が、対向する顎が定義された動き範囲内において仮想咬合器モデルにおける少なくとも一つのガイドに沿って動く限り、実質的に貫通されない程度に減少され得る。
【0043】
従って、ガイドされたバイトスプリントの3Dモデルは、ガイドされたバイトスプリントが画定されたガイドでおよび、画定された咬合位置において、定義された接触領域で対向する顎と接触する程度に減少するので、バイトスプリントの干渉領域が減少または除去される。従って、干渉領域を減少させるためのバイトスプリントの後の手動処理は必要ない。
【0044】
ガイドされたバイトスプリントは、有利に、CAM機械などの減法製造法を使用して、または3Dプリンタなどの付加製造法を使用して、バイトスプリントの構築された3Dモデルにしたがい、完全に自動的に製作することができる。
【0045】
従って、ガイドされたバイトスプリントは、構築された3Dモデルに従って完全に自動的に製作される。
【0046】
CAM機械を使用する製作については、ブランクがCAM機械に固定され、ガイドされたバイトスプリントが、構築された3Dモデルにしたがい、製作されるまで、フライス工具および/または切削工具によって処理される。3Dプリンタを使用する場合、構築されたバイトスプリントが印刷される。3Dプリンタは、例えば、結合剤または追加の組み立てステップなしで三次元の物体の印刷を可能にする、SLS法(選択的レーザー焼結)に基づいてもよい。バイトスプリントの既存の3Dモデルは、特別なスライスソフトウェアによって多数の水平面に分解され、制御コマンドとして3Dプリンタに渡される。その後、3Dプリンタは、物体を層毎に印刷し、それによって粉体床にある個々の粉末粒子が、高温のレーザーでともに融合される。その後、物体は下降され、新たな粉末層が適用される。プロセスは、ガイドされたバイトスプリント全体が完全に印刷されるまで繰り返される。3Dプリンタはまた、レーザーを使用して、感光樹脂および材料粒子からなる塊を重合する、光造形法に基づいてもよい。ガイドされたバイトスプリントの材料は、例えば、適切な硬度を有するプラスチックであり得る。プラスチックの硬度および弾性は、構築されたガイドに沿った対向する顎の正確なガイダンスが可能であるように選択される。バイトスプリントはまた、さまざまなプラスチックで作製され得る。
【0047】
本発明のさらなる目的は、上述の方法を使用して製作されたガイドされたバイトスプリントであり、それによって、対向する顎の少なくとも一つのガイドがコンピュータの支援によって自動的に構築される。
【0048】
こうしたガイドされたバイトスプリントの利点は、支持顎またはバイトスプリントに対する画定された移動経路を確保するために、ガイドが正確に位置付けられることである。
【0049】
対向する顎のためのガイドは、少なくとも一つのガイドポイントで少なくとも一つの移動プロファイルを使用して有利に構築され得る。
【0050】
こうして、ガイドは、ガイドが対向する顎の望ましい移動経路をもたらすように、画定された移動プロファイルを使用して構築される。
【0051】
ガイドされたバイトスプリントは、有利に、CAM機械などの減法製造法を使用して、または3Dプリンタなどの付加製造法を使用して、バイトスプリントの構築された3Dモデルにしたがい、完全に自動的に製作することができる。
【0052】
従って、ガイドされたバイトスプリントは、時間節約様式で完全に自動的に製作され、それによってバイトスプリントが手動で製作された時に生じうるガイドの製作エラーが回避される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図面を参照して本発明を説明する。図面は以下を示す。
図1図1は、ガイドされたバイトスプリントを製作するための方法を図示するためのスケッチである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
設計例
図1は、上顎の現在のケースに対して、少なくとも一つのガイド3を含む、支持顎2のためのガイドされたバイトスプリント1を製作する方法を示すスケッチを示す。本ケースでは、バイトスプリント1は、対向する顎4、この場合において下顎を持つ複数のガイド3を含む。上顎の3Dモデル5および下顎の3Dモデル6はすでに使用可能であり、口腔内3Dカメラの支援により患者上で測定された。上顎の3Dモデル5および下顎の3Dモデル6は、互いに対して咬合位置7に配置され、仮想咬合器モデル8に組み込まれる。咬合器モデル8は、明瞭化のための×印として示される、側頭下顎関節9および従って上顎5に対する下顎6の咬合動作をシミュレーションする。側頭下顎関節9の咬合動作は、回転運動10、水平方向における前方移動11、上顎の3Dモデル5に対する垂直方向の移動12、および側頭下顎関節9の回転軸方向における横方向移動(図示せず)からなる。次に、ガイドされたバイトスプリント13の3Dモデル13は、上顎2の3Dモデル5と、下顎4の3Dモデル6とを使用しておよび、咬合器モデル8から上顎2に対する下顎4のシミュレーションされた移動経路を使用して構築される。続いて、第一のガイドポイント14、第二のガイドポイント15および第三のガイドポイント16は、ユーザによって手動でまたはコンピュータの支援によって自動でバイトスプリント1の3Dモデル13上に設定される。バイトスプリントの3Dモデル13上のガイドポイント14、15、および16は、対向する顎4上のそれらの位置に対して設定される。支持顎2の3Dモデル5に対するバイトスプリント1の3Dモデル13の延長は、支持顎2の少なくとも一つの画定された接触領域が覆われており、顎の開口が画定された値を持つような方法で使用者によって手動でまたはコンピュータの支援によって自動で設定される。バイトスプリント1の3Dモデル13は、局所の咬頭先端が対向する顎4の全ての歯17の支持点18として画定されるような方法で構築される。支持点18は、反対側の歯17上の×印として図示されている。第一のガイドポイント14については、第一の移動プロファイル19が第一の平面に設定され、第二の移動プロファイル20が第二の平面に設定され、第三のプロファイル21が第三の平面に設定される。複数の移動プロファイル22は、第二のガイドポイント15のための異なる平面で画定される。同様に、二つの移動プロファイル23は、第三のガイドポイント16の異なる平面に画定される。第一の図24は、移動プロファイルの平面におけるそれぞれのガイドポイントに対するガイドの対向する顎のそれぞれのスライド接触ポイントの距離27による、対向する顎4の開口26、すなわち、顎間の距離の関数として、第一の移動プロファイル19の第一の関数25の実施例を示す。第一の移動プロファイル19の第一の関数25は、線形的進行を有する。第二の移動プロファイル20の第二の関数28は、指数的な進行を有する。第三の移動プロファイル21の第三の関数29は、S字型の進行を有する。第一のガイド3の表面形状は、第一のガイドポイント14の移動プロファイル19、20および21に応じて、コンピュータの支援によって自動的に計算される。第二のガイド30は、第二のガイドポイント15の五つの移動プロファイル22に応じて計算される。第三のガイド31は、第三のガイドポイント16の移動プロファイル23に応じて計算される。ガイド3、30、31の表面形状は、ガイドの表面形状の滑らかな移行が製作されるように、隣接する移動プロファイル間の中間領域32内で補間される。ガイドされたバイトスプリントの構築は、コンピュータ33を使用して仮想的に実行され、それにより、モニタなどの表示装置34、およびキーボード35およびマウス36などの動作要素がコンピュータ33に接続される。バイトスプリント1の3Dモデル13の構築は、コンピュータの支援によって自動的におよび/またはカーソルなどの仮想ツール37を使用してユーザによって手動で実行され得る。バイトスプリント1の3Dモデル13の構築が完了すると、構造データはCAM機械38に転送される。CAM機械38では、ガイド3で製作されたガイドされたバイトスプリント1が、特殊なプラスチックからなる、ブランク39から削り出される。ガイドされたバイトスプリント1は、代替的に3Dプリンタを使用して製作され得る。
【0055】
符号の説明
1 バイトスプリント
2 支持顎
3 ガイド
4 対向する顎
5 3Dモデル上顎
6 下顎の3Dモデル
7 咬合位置
8 咬合器モデル
9 側頭下顎関節
10 回転運動
11 前方移動
12 垂直方向の移動
13 バイトスプリントの3Dモデル
14 第一のガイドポイント
15 第二のガイドポイント
16 第三ガイドポイント
17 歯
18 支持点
19 第一の移動プロファイル
20 第二の移動プロファイル
21 第三の移動プロファイル
22 移動プロファイル
23 移動プロファイル
24 図
25 第一の移動プロファイルの関数
26 対向する顎の開口
27 接触ポイントの距離
28 第二の移動プロファイルの関数
29 第三の移動プロファイルの関数
30 第二のガイド
31 第三ガイド
32 中間領域
33 コンピュータ
34 表示装置
35 キーボード
36 マウス
37 カーソル
38 CAM機械
39 ブランク
図1