(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023598
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】EGFR、HER2及びHER3に結合する結合部分の組み合わせ
(51)【国際特許分類】
C07K 16/46 20060101AFI20240214BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240214BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240214BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240214BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
C07K16/46
A61K39/395 N
A61P35/00
A61K39/395 D
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023206980
(22)【出願日】2023-12-07
(62)【分割の表示】P 2021547740の分割
【原出願日】2020-02-13
(31)【優先権主張番号】19157302.1
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19178564.1
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】510340757
【氏名又は名称】メルス ナムローゼ フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】セシリア・アンナ・ヴィルヘルミナ・ゲウイェン
(72)【発明者】
【氏名】トリスタン・ルイ・ジャン・ガレンヌ
(72)【発明者】
【氏名】マルク・スロスビー
(72)【発明者】
【氏名】コルネリス・アドリアーン・デ・クライフ
(57)【要約】
【課題】1つには、EGF受容体ファミリーの様々なメンバーを標的とする結合部分の組み合わせ及びそれらを産生する方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、2つ以上の結合部分を含む組成物であって、当該結合部分の各々の各々が、EGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを含む組成物を提供し、第1の当該結合部分は、HER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを含み、第2の当該結合部分は、HER3の細胞外部分に結合する可変ドメインを含む。本発明はまた、組成物を製造するための、及び当該組成物を用いて対象を治療するための手段及び方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上の結合部分を含む組成物であって、
前記結合部分の各々が、EGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを含み、
第1の前記結合部分が、HER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを含み、第2の前記結合部分が、HER3の細胞外部分に結合する可変ドメインを含む、組成物。
【請求項2】
前記2つ以上の結合部分のうちの少なくとも1つ、好ましくは、少なくとも2つが抗体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記2つ以上の結合部分のうちの少なくとも1つ、好ましくは、少なくとも2つがIgGである、請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
第1及び/又は第2の抗体の重鎖のCH3領域が、HER2結合可変ドメインを有する重鎖を有するEGFR結合可変ドメインとの重鎖のヘテロ二量体化、及び/又は、HER3結合可変ドメインを有する重鎖を有するEGFR結合可変ドメインとの重鎖のヘテロ二量体化を促進するように操作される、請求項2又は請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記2つ以上の抗体のうちの少なくとも1つ、好ましくは、少なくとも2つが二重特異性抗体である、請求項2から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記第1及び第2の抗体のEGFRの細胞外部分に結合する前記可変ドメインが、実質的に同じ重鎖可変領域を含む、請求項2から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
EGFRの細胞外部分に結合する前記可変ドメインが、EGFRのドメインI又はドメインIII、好ましくは、ドメインIIIに結合する、請求項2から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
HER2の細胞外部分に結合する可変ドメインが、HER2のドメインI又はドメインIV、好ましくは、ドメインIVに結合する、請求項2から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
HER3の細胞外部分に結合する前記可変ドメインが、HER3のドメインIIIに結合する、請求項2から8のいずれか一項記載の組成物。
【請求項10】
EGFRの細胞外部分に結合する前記可変ドメインが、EGFRのドメインI又はドメインIII、好ましくは、ドメインIIIに結合し、HER2の細胞外部分に結合する前記可変ドメインが、HER2のドメインI又はドメインIV、好ましくは、ドメインIVに結合し、HER3の細胞外部分に結合する前記可変ドメインが、HER3のドメインIIIに結合する、請求項6から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
HER3の細胞外部分に結合する前記可変ドメインが、少なくともHER3のドメインIIIのR426に結合する、請求項9又は請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
HER3陽性SK-BR-3細胞(ATCC(登録商標)HTB-30(商標))への結合についての、HER3の細胞外部分に結合する前記可変ドメインの親和性(KD)が、2.0nM以下、好ましくは、2.0から0、1nMである、請求項9から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
EGFRにEGFRを結合する可変ドメインの結合が、EGFRへのEGFの結合を遮断し、及び/又は、HER3にHER3を結合する可変ドメインの結合が、HER3へのニューレグリン1(NRG)の結合を遮断する、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
EGFRの細胞外部分に結合する前記可変ドメインが、CDR1配列NYAMN、CDR2配列WINANTGDPTYAQGFTG、及びCDR3配列ERFLEWLHFDYを含む重鎖可変領域、又は、CDR中に1、2、若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含むそれらの変異体を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
HER2の細胞外部分に結合する前記可変ドメインが、CDR1配列SYGMH、CDR2配列VISYDGSNKYYADSVKG、及びCDR3配列DYYRRTARAGFDYを含む重鎖可変領域、又は、CDR中に1、2、若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含むそれらの変異体を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
HER3の細胞外部分に結合する前記可変ドメインが、CDR1配列GYYMH、CDR2配列WINPNSGGTNYAQKFQG、及びCDR3配列DHGSRHFWSYWGFDYを含む重鎖可変領域、又は、CDR中に1、2、若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含むそれらの変異体を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
EGFRの細胞外部分に結合する前記可変ドメインが、CDR1配列NYAMN、CDR2配列WINANTGDPTYAQGFTG、及びCDR3配列ERFLEWLHFDYを含む重鎖可変領域、又は、CDR中の1、2、若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含むそれらの変異体を含み、
HER2の細胞外部分に結合する前記可変ドメインが、CDR1配列SYGMH、CDR2配列VISYDGSNKYYADSVKG、及びCDR3配列DYYRRTARAGFDYを含む重鎖可変領域、又は、CDR中の1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含むそれらの変異体を含み、
HER3の細胞外部分に結合する前記可変ドメインが、CDR1配列GYYMH、CDR2配列WINPNSGGTNYAQKFQG、及びCDR3配列DHGSRHFWSYWGFDYを含む重鎖可変領域、又は、CDR中に1、2、若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含むそれらの変異体を含む、
請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
治療に使用するための、請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
がん、好ましくは、胃がん、肺がん又は食道がんの治療に使用するための、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物を含む医薬組成物。
【請求項21】
それぞれがEGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを含む2つ以上の結合部分;第1の前記結合部分が、HER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを含み、第2の前記結合部分が、がん、好ましくは、胃がん、肺がん又は食道がんの治療に使用するためのHER3の細胞外部分に結合する可変ドメインを含む。
【請求項22】
2つ以上の結合部分を含む産物であって、前記結合部分のそれぞれが、EGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを含み、第1の前記結合部分が、HER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを含み、第2の前記結合部分が、HER3の細胞外部分に結合する可変ドメインを、がん、好ましくは、胃がん、肺がん又は食道がんの治療における同時使用、個別的使用又は逐次使用のための組み合わせ調製物として含む、産物。
【請求項23】
前記がんが、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)による治療に対して細胞を耐性にするEGFR変異を有する細胞を含む、請求項18~22のいずれか一項に記載の使用のための組成物、医薬組成物、結合部分又は産物。
【請求項24】
前記がんが、EGFR R521K多型を有する細胞を含む、請求項18~23のいずれか一項に記載の使用のための組成物、医薬組成物、結合部分又は産物。
【請求項25】
前記がんが、胃がんである、請求項1~24のいずれか一項に記載の使用のための組成物、結合部分又は産物。
【請求項26】
がんを有するか、又はがんの再発若しくは再燃のリスクがある対象を治療する方法であって、治療有効量の2つ以上の結合部分をそれを必要とする対象に投与することを含み、前記結合部分のそれぞれがEGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを含み、第1の前記結合部分が、HER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを含み、第2の前記結合部分が、HER3の細胞外部分に結合する可変ドメインを含む、方法。
【請求項27】
請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物を製造する方法であって、
細胞を提供することであって、前記細胞が、
共通軽鎖と対合してEGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを形成することができる重鎖を含むポリペプチドをコードする核酸と、
前記共通軽鎖と対合してHER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを形成することができる重鎖を含むポリペプチドをコードする核酸と、
前記共通軽鎖と対合してHER3の細胞外部分に結合する可変ドメインを形成することができる重鎖を含むポリペプチドをコードする核酸と、
前記共通軽鎖を含むポリペプチドをコードする核酸とを含み、
任意選択で、2つ以上の前記核酸が物理的に連結されていてもよく、前記核酸の各々が、前記細胞における前記コードされた重鎖及び軽鎖の発現を可能にする発現制御配列を更に含む、細胞を提供すること、
前記細胞を培養して前記重鎖及び軽鎖の発現を可能にすること、及び、任意選択で、
前記2つ以上の結合部分を回収すること、を含む方法。
【請求項28】
複数の細胞に前記核酸を提供すること、及び、前記収集物から前記重鎖及び軽鎖の所望の発現比を有する細胞を選択することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記2つ以上の結合部分が、抗体、好ましくは、二重特異性抗体である、請求項27又は請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記細胞が、本質的に等モル量の前記2つ以上の結合部分を産生する、請求項27から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記細胞が、前記2つ以上の結合部分のうちの第2の結合部分よりも多くの第1の結合部分を産生する、請求項27~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
細胞であって、
共通軽鎖と一緒になってEGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを形成する重鎖を含むポリペプチドをコードする核酸と、
前記共通軽鎖と一緒になってHER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを形成する重鎖を含むポリペプチドをコードする核酸と、
前記共通軽鎖と一緒になってHER3の細胞外部分に結合する可変ドメインを形成する重鎖を含むポリペプチドをコードする核酸と、
前記共通軽鎖を含むポリペプチドをコードする核酸とを含み、
2つ以上の前記核酸が物理的に連結されていてもいなくてもよく、前記核酸の各々が、前記細胞における前記コードされた重鎖及び軽鎖の発現を可能にする発現制御配列を更に含む、細胞。
【請求項33】
核酸を含む容器であって、
共通軽鎖と対合してEGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを形成することができる重鎖を含むポリペプチドをコードする核酸と、
共通軽鎖と対合してHER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを形成することができる重鎖を含むポリペプチドをコードする核酸と、
共通軽鎖と対合してHER3の細胞外部分に結合する可変ドメインを形成することができる重鎖を含むポリペプチドをコードする核酸と、
前記共通軽鎖を含むポリペプチドをコードする核酸とを含み、
任意選択で、2つ以上の前記核酸が物理的に連結されていてもよく、前記核酸の各々が、細胞における前記コードされた重鎖及び軽鎖の発現を可能にする発現制御配列を更に含む、容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体などの結合部分の分野に関し、詳細には、治療用結合部分の分野に関する。本結合部分は、ヒトの治療に使用することができる。より詳細には、本発明は、2つ以上の多重特異性結合部分を含む組成物に関し、好ましくは、多重特異性抗体を含む組成物に関する。本結合部分は、EGFR、HER2及びHER3に結合する。単一の宿主細胞は、複数の結合部分を産生することができる。
【背景技術】
【0002】
上皮成長因子(EGF)受容体(EGFR)は、細胞外タンパク質リガンドの上皮成長因子ファミリー(EGFファミリー)のメンバーのためのプロトタイプの細胞表面受容体である。このファミリーは、現在、4つの密接に関連する受容体チロシンキナーゼ:EGFR、HER2(ErbB-2/c-neu)、HER3(ErbB-3)及びHER4(ErbB-4)を有する。
【0003】
EGFRは、細胞表面に存在し、上皮成長因子及びトランスフォーミング成長因子α(TGFα)を含むその特異的リガンドの結合によって活性化される。その成長因子リガンドによって活性化されると、受容体は、不活性でほとんどがモノマーである形態から、活性なホモ二量体へ転移する。リガンド結合後にホモ二量体を形成することに加えて、EGFRは、HER2などのErbB受容体ファミリーの別のメンバーと対合して、活性化ヘテロ二量体を生成し得る。リガンド結合の非存在下で二量体が形成され、リガンド結合後に活性化EGFRのクラスターが形成されることを示唆する証拠も存在する。
【0004】
EGFR二量体化は、その固有の細胞内タンパク質-チロシンキナーゼ(PTK)活性を刺激する。この活性は、細胞の増殖及び分化をもたらすいくつかのシグナル伝達カスケードを誘導する。EGFRのキナーゼドメインは、それが複合体化している他の受容体のチロシン残基を交差リン酸化することができ、そのようにして、それ自体を活性化することができる。
【0005】
EGFRが関与する突然変異及び過剰発現は、いくつかのタイプのがんで確認されており、それは、抗がん療法の拡大するクラスの標的である。これらには、肺がんに関するゲフィチニブ及びエルロチニブのようなEGFR標的小分子、並びに、結腸がんや頭頸部がんに関するセツキシマブ及びパニツムマブのような抗体が含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
EGFR標的化療法はある程度成功しているが、ほとんどの場合、時間が経つにつれて治療耐性の発生を伴う。EGFR陽性腫瘍が標的療法から逃れることができる方法の1つは、別の受容体の二量体を介したシグナル伝達によるものである。例えば、HER3発現又はヘレグリン発現の増加によるEGFR/HER3二量体によるシグナル伝達の増加は、例えば、肺がんや頭頸部がんにおけるEGFR標的薬耐性を伴う。治療耐性を惹起することとは別に、EGFR標的化抗体のいくつかの副作用が観察されている。一例は、EGFR阻害又は抗EGFR生物学的治療に関連する皮膚発疹の発症である。極端な場合、そのような発疹は、治療サイクルの減少、及び/又は治療の時期尚早な終了につながることがある。
【0007】
EGF受容体ファミリーのシグナル伝達の様々な様式が確認されている。これらの中には、シグナル伝達のリガンド依存性及びリガンド非依存性の活性化がある。過剰発現したHER2は、HER3リガンドの非存在下であっても、HER2/HER3ヘテロ二量体を介して発がん性シグナル伝達を生じさせることができる(Junttila,Akitaら、2009)。HER2活性は、HER2特異的抗体によって阻害することができる。かかるHER2特異的抗体は、例えば、HER2陽性(HER2+)腫瘍の治療に使用される。そのような治療に伴う問題は、腫瘍がしばしばHER2特異的治療から逃れ、阻害抗体の存在下でさえ成長し続けることである。乳房、卵巣、子宮頸部及び胃の腫瘍などのHER2陽性腫瘍が、アップレギュレートされたHER3発現(Ocana、Vera-Badilloら、2013)及び/又はHER3リガンド発現(Wilson、Fridlyandら、2012)を示す腫瘍細胞の亜集団の選択的増殖によって治療から逃れる場合があることが観察されている。HER3受容体における活性化変異も確認されている。
【0008】
このように、EGF受容体ファミリーメンバーを特異的に標的とする抗体治療の将来有望な成果にもかかわらず、全ての腫瘍が応答又は十分に応答するわけではないことが観察されている。本発明は、EGF受容体ファミリーの様々なメンバーを標的とする結合部分の組み合わせ及びそれらを産生する方法を提供する。本発明の組み合わせは良好な有効性を示す。本組み合わせは、費用効果が高く効率的な方法で産生することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、2つ以上の結合部分を含む組成物であって、
各結合部分が、EGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを含み、
第1の当該結合部分が、HER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを含み、第2の当該結合部分が、HER3の細胞外部分に結合する可変ドメインを含む、組成物を提供する。
【0010】
好ましくは、2つ以上の結合部分の少なくとも1つは抗体である。好ましい実施形態では、2つ以上の結合部分のうちの少なくとも2つが抗体である。抗体は、好ましくは、多重特異性抗体であり、好ましくは、二重特異性抗体である。好ましくは、抗体の少なくとも1つ、より好ましくは、少なくとも2つはIgG抗体である。本発明の好ましい実施形態では、本組成物は2つの二重特異性抗体を含む。
【0011】
本明細書に記載の多重特異性抗体は、好ましくは、CH3ヘテロ二量体化ドメインを有する重鎖を含む。一態様において、第1及び/又は第2の多重特異性抗体のCH3ヘテロ二量体化ドメインは、EGFR可変ドメインの重鎖と、HER2可変ドメイン及びHER3可変ドメインのそれぞれの重鎖とのヘテロ二量体化を促進するように操作される。
【0012】
本発明はまた、がんの治療に使用するための本明細書に記載の組成物を提供する。複数の実施形態では、がんは、固形上皮がんである。好ましくは、本組成物は、EGFR、HER2及び/又はHER3を発現するがんに使用される。本組成物は、好ましくは、膵臓がん、結腸直腸がん、頭頸部がん、上皮性卵巣がん、上皮性卵管がん、上皮性腹膜がん、膀胱がん、又は前立腺がんに用いられる。いくつかの実施形態では、本組成物の使用によって治療されるがんは進行がんである。本組成物は、好ましくは、転移性がんに使用される。本組成物は、好ましくは、転移性膵臓がん、転移性結腸直腸がん、転移性頭頸部がん、転移性上皮卵巣がん、転移性上皮卵管がん、転移性上皮腹膜がん、転移性膀胱がん又は転移性前立腺がんに用いられる。いくつかの実施形態では、本組成物は、好ましくは、胃がん、肺がん、乳がん又は食道がんのために使用される。好ましくは、本組成物は、転移性胃がん、転移性肺がん、転移性乳がん又は転移性食道がんに使用される。
【0013】
本発明は更に、それぞれがEGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを含む2つ以上の結合部分を含む産物を提供し、第1の当該結合部分は、HER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを含み、第2の当該結合部分は、HER3の細胞外部分に結合する可変ドメインを、がんの処置における同時使用、個別的使用又は逐次使用のための組み合わせ調製物として含む。
【0014】
本発明は更に、本発明による組成物を製造するための方法を提供し、この方法は、
細胞を提供することであって、
共通軽鎖と一緒になってEGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを形成する重鎖を含むポリペプチドをコードする核酸と、
当該共通軽鎖と一緒になってHER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを形成する重鎖を含むポリペプチドをコードする核酸と、
当該共通軽鎖と一緒になってHER3の細胞外部分に結合する可変ドメインを形成する重鎖を含むポリペプチドをコードする核酸と、
当該共通軽鎖を含むポリペプチドをコードする核酸と、を有する細胞を提供することを含み、
当該核酸のうちの2つ以上が物理的に連結されていてもいなくてもよく、当該核酸の各々が、当該細胞におけるコードされた重鎖及び軽鎖の発現を可能にする発現制御配列を更に含み、当該方法は、当該重鎖及び軽鎖の発現を可能にするために当該細胞を培養することと、任意選択で、当該2つ以上の結合部分を収集することとを更に含む。
【0015】
更に、細胞であって、
共通軽鎖と一緒になってEGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを形成する重鎖を含むポリペプチドをコードする核酸と、
当該共通軽鎖と一緒になってHER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを形成する重鎖を含むポリペプチドをコードする核酸と、
当該共通軽鎖と一緒になってHER3の細胞外部分に結合する可変ドメインを形成する重鎖を含むポリペプチドをコードする核酸と、
当該共通軽鎖を含むポリペプチドをコードする核酸と、を有する細胞を提供することを含み、
ここで、2つ以上の当該核酸は、物理的に連結されていてもいなくてもよく、当該核酸の各々は、当該細胞におけるコードされた重鎖及び軽鎖の発現を可能にする発現制御配列を更に含む。
【0016】
更なる態様では、本発明は、核酸を含む容器であって、
共通軽鎖と一緒になってEGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを形成する重鎖を含むポリペプチドをコードする核酸と、
共通軽鎖と一緒になってHER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを形成する重鎖を含むポリペプチドをコードする核酸と、
共通軽鎖と一緒になってHER3の細胞外部分に結合する可変ドメインを形成する重鎖を含むポリペプチドをコードする核酸と、
当該共通軽鎖を含むポリペプチドをコードする核酸と、を有する細胞を提供することを含み、
ここで、任意選択で、2つ以上の当該核酸が物理的に連結されていてもいなくてもよく、当該核酸のそれぞれが、細胞におけるコードされた重鎖及び軽鎖の発現を可能にする発現制御配列を更に含む。
【0017】
本発明は更に、EGFRの細胞外部分及びHER2の細胞外部分に特異的に結合する結合部分を含む組成物を提供する。
【0018】
本発明はまた、EGFRの細胞外部分及びHER3の細胞外部分に特異的に結合する結合部分を含む組成物を提供する。
【0019】
結合部分は、好ましくは、抗体、好ましくは、IgG抗体、より好ましくは、多重特異性抗体である。
【0020】
本明細書で使用されるEGFRという用語は、ヒトにおいて上皮増殖因子受容体遺伝子(EGFR)によってコードされるタンパク質を指す。このタンパク質は、いくつかの別名で知られており、その中にはErb-B2受容体チロシンキナーゼ1、がん原遺伝子C-ErbB-1、ERBB1、及びHER1がある。ヒトEGFRタンパク質及びそれをコードする遺伝子についてのデータベース登録番号は、(GenBank NM_005228.3)である。この登録番号は、主に、EGFRタンパク質を標的として同定する更なる方法を提供するために与えられ、抗体によって結合されたEGFRタンパク質の実際の配列は、例えば、いくつかのがんなどで生じるものなどのコード遺伝子における変異のために変化し得る。本明細書において、EGFRに言及される場合、特に明記しない限り、ヒトEGFRを指す。EGFR可変ドメインは、ヒトと他の哺乳動物との間のEGFRのオルソログの配列及び三次構造の類似性に起因して、かかるオルソログにも結合し得るが、必ずしも結合するとは限らない。EGFRに結合する可変ドメインは、EGFR及びその様々な変異体(いくつかのEGFR陽性腫瘍上に発現される変異体など)に結合し得る。
【0021】
本発明の抗体又は結合部分のEGFR結合可変ドメインは、好ましくは、EGFRのドメインI又はドメインIIIに結合する。EGFRタンパク質の構造は、とりわけ、Ferguson(2008:Annu Rev Biophys.2008;37:353-373.doi:10.1146/annurev.biophysics.37.032807.125829)に記載されている。ヒトEGFRのドメインは、上述したFergusonの参考文献の
図1に記載されている。本明細書中に開示される本発明の実施形態のEGFR結合可変ドメインは、好ましくは、EGFRのドメインIIIに結合する。この抗体は、好ましくは、BxPC-3(ATCC CRL-1687)又はBxPC-3-luc2細胞(Perkin Elmer 125058)のEGF誘導性増殖を阻害する。
【0022】
本明細書で使用されるHER2という用語は、ヒトにおいてERBB-2遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。この遺伝子又はタンパク質の代替名としては、CD340、ErbB-2;HER-2/neu、MLN 19、NEU、NGL、TKR1。ERBB-2遺伝子は、HER2(human epidermal growth factor receptor 2、ヒト表皮増殖因子受容体2)と呼ばれることが多い。本明細書においてHER2に言及する場合、当該言及はヒトHER2を指す。HER2に結合する可変ドメインを含む抗体は、ヒトHER2に結合する。HER2可変ドメインは、ヒトと他の哺乳動物の間におけるHER2のオルソログの配列及び三次構造の類似性に起因して、かかるオルソログにも結合し得るが、必ずしも結合するとは限らない。ヒトHER2タンパク質及びそれをコードする遺伝子のデータベース受託番号は(NP_001005862.1、NP_004439.2、NC_000017.10、NT_010783.15)である。この受託番号は、主として、標的としてのHER2を識別する更なる方法を提供するために与えられるものであり、抗体に結合したHER2タンパク質の実際の配列は、例えば、いくつかのがんなどにおいて生じる突然変異などのコード遺伝子の突然変異のために変動し得る。HER2可変ドメインは、HER2及びその様々な変異体、例えば、いくつかのHER2陽性腫瘍細胞によって発現される変異体に結合し得る。
【0023】
HER2タンパク質は、いくつかのドメインを含む(Landgraf,R Breast Cancer Res.2007;9(1):202-の
図1を参照のこと)。細胞外ドメインは、ドメインI~IVと呼ばれる。HER2に結合する本明細書に開示される本発明の実施形態の可変ドメインは、好ましくは、HER2のドメインI又はドメインIVに結合し、好ましくは、ドメインIVに結合する。
【0024】
本明細書で使用されるHER3という用語は、ヒトにおいてERBB3遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。遺伝子又はタンパク質の代替名は、LCCS2;MDA-BF-1;c-ErbB-3、c-ErbB3;ErbB3-S;p180-ErbB3;p45-sErbB3;及びp85-sErbB3である。本明細書においてHER3に言及する場合、その言及はヒトHER3を指す。HER3に結合する可変ドメインを含む抗体は、ヒトHER3に結合する。HER3可変ドメインは、ヒトと他の哺乳動物との間のHER3のオルソログの配列及び三次構造の類似性に起因して、かかるオルソログにも結合し得るが、必ずしも結合するとは限らない。ヒトHER3タンパク質及びそれをコードする遺伝子についてのデータベース受託番号(NP_001005915.1;NP_001973.2,NC_000012.11,NT_029419.12)。この受託番号は、主として、標的としてのHER3を識別する更なる方法を提供するために与えられるものであり、抗体に結合したHER3タンパク質の実際の配列は、例えば、いくつかのがんなどにおいて生じる突然変異などのコード遺伝子の突然変異のために変動し得る。HER3可変ドメインは、HER3及びその様々な変異体、例えば、いくつかのHER2陽性腫瘍細胞によって発現される変異体に結合し得る。
【0025】
HER3の構造は、とりわけ、Choら(2002;Science 297,1330~1333:DOI:10.1126/science.1074611)に記載される。ヒトタンパク質は、4つの細胞外ドメインを有する。HER3に結合する本明細書に開示される本発明の実施形態の可変ドメインは、好ましくは、HER3のドメインIIIに結合する。好ましい実施形態では、HER3陽性細胞に対する可変ドメインの親和性(KD)は、2.0nM以下であり、より好ましくは、1.5nM以下、より好ましくは、1.39nM以下、より好ましくは、0.99nM以下である。好ましい実施形態では、本発明による抗体は、好ましくは、R426、及び天然HER3タンパク質中のR426から11.2Å以内に位置するアミノ酸残基からなる群から選択されるHER3のドメインIIIの少なくとも1つのアミノ酸に結合する可変ドメインを含む。好ましい一実施形態では、SK-BR-3細胞上のHER3に対する可変ドメインの親和性(KD)は、2.0nM以下であり、より好ましくは、1.5nM以下、より好ましくは、1.39nM以下、好ましくは、0.99nM以下である。一実施形態では、当該親和性(KD)は、1.39~0.59nMの範囲内である。好ましい一実施形態では、BT-474細胞上のHER3に対する可変ドメインの親和性(KD)は、2.0nM以下であり、より好ましくは、1.5nM以下、より好ましくは、1.0nM以下、より好ましくは、0.5nM以下、より好ましくは、0.31nM以下、より好ましくは、0.23nM以下である。一実施形態では、当該親和性(KD)は、0.31~0.15nMの範囲内である。上述した親和性は、好ましくは、定常状態の細胞親和性の測定値を使用して測定されるものであり、細胞は、放射性標識抗体を使用して4℃でインキュベートされ、その後、細胞に結合した放射能が測定される。
【0026】
HER3のドメインIIIの少なくとも1つのアミノ酸に結合する可変ドメインは、好ましくは、天然HER3タンパク質中のR426及びR426から11.2Å以内に位置するアミノ酸残基を含む群から選択されるアミノ酸に結合する。好ましくは、天然HER3タンパク質中のR426から11.2Å以内に位置する当該アミノ酸残基は、L423、Y424、N425、G427、G452、R453、Y455、E480、R481、L482、D483及びK485からなる群から選択される(例えば、
図9及び表1を参照のこと)。アミノ酸残基のナンバリングは、ProteinDataBank(PDB)ID番号4P59である。HER3のドメインIIIのこの領域に結合する抗体は、特に良好な結合特性を示し、HER3陽性細胞に対するHER3の活性を打ち消すことができる。HER3結合特性を有する可変ドメインは、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2015/130172号明細書に記載されている。好ましい一実施形態では、本発明による二重特異性抗体であって、HER3のドメインIIIの少なくともR426に結合する可変ドメインを含む抗体が提供される。好ましくは、当該抗体は、HER3のドメインIIIの少なくともR426に結合する可変ドメインを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、2つ以上の抗体を含む組成物であって、当該抗体のそれぞれが、EGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを含み、第1の当該抗体がHER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを含み、第2の当該抗体がHER3の細胞外部分に結合する可変ドメインを含む。好ましい実施形態では、第1及び第2の抗体のEGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインは、本質的に同じアミノ酸配列を有する。一実施形態では、当該第1及び第2の抗体は、EGFRのドメインIに結合する可変ドメインを含み、当該第1の抗体は、HER2のドメインIに結合する可変ドメインを含み、当該第2の抗体は、HER3のドメインIIIに結合する可変ドメインを含む。別の実施形態では、当該第1及び第2の抗体は、EGFRのドメインIに結合する可変ドメインを含み、当該第1の抗体は、HER2のドメインIVに結合する可変ドメインを含み、当該第2の抗体は、HER3のドメインIIIに結合する可変ドメインを含む。更なる実施形態では、当該第1及び第2の抗体は、EGFRのドメインIIIに結合する可変ドメインを含み、当該第1の抗体は、HER2のドメインIに結合する可変ドメインを含み、当該第2の抗体は、HER3のドメインIIIに結合する可変ドメインを含む。更なる実施形態では、当該第1及び第2の抗体は、EGFRのドメインIIIに結合する可変ドメインを含み、当該第1の抗体は、HER2のドメインIVに結合する可変ドメインを含み、当該第2の抗体は、HER3のドメインIIIに結合する可変ドメインを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、結合部分は、タンパク質又はアプタマーである。本明細書に記載の結合部分は、典型的には、2以上の結合特異性を有する。結合部分は、好ましくは、抗体の2つ以上の可変ドメインを含む。可変ドメインは、様々な方法で提供することができる。いくつかの抗体可変ドメイン含有断片は、「Nelson 2010:MAbs.2010 Jan-Feb;2(1):77~83」に記載されており、当該断片には、種々のFABフラグメント、scFvフラグメント、及びいわゆる単一ドメイン抗体、例えば、VHHフラグメントが含まれる。種々のFABフラグメント又は一本鎖Fvフラグメントは、現在周知である。単一ドメイン抗体は、単一の単量体可変抗体ドメインからなる抗体フラグメントである。抗体全体と同様に、これは特定の抗原に選択的に結合することができる。分子量がわずか12~15kDaの単一ドメイン抗体は、2つの重タンパク質鎖と2つの軽鎖で構成される一般的な抗体(150~160kDa)よりもはるかに小さく、Fabフラグメント(~約50kDa、軽鎖と重鎖の半分)及び単鎖可変断片(~約25kDa、二つの可変ドメイン、一つは軽鎖由来、もう一つは重鎖由来)よりも更に小さい。単一ドメインフラグメントを最初にラクダ重鎖抗体から作製した。同様の単一ドメインフラグメントは、現在、人工的に作製することができ、他の生物に由来し得る。可変ドメインは、好ましくは、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。可変ドメインは、VH/VL組み合わせ(VHが重鎖の可変領域を表し、VLが軽鎖の可変領域を表す)と呼ばれることもある。
【0029】
2つ以上のフラグメントを連結して、それと同じ数の結合特異性を有する結合部分を作製することができる。連結は、典型的には、2つ以上のアミノ酸残基を含む連結ペプチドを用いて行われる。連結部分はまた、タンパク質の一部又は全部であり得る。例えば、ヒト血清アルブミンが使用される場合がある。本明細書に記載される結合部分は、好ましくは、例えば、
図7又は
図8に記載されるようなMFの重鎖可変領域と、軽鎖可変領域(例えば、軽鎖可変領域)とが対になった少なくとも1つの可変ドメインを含む。好ましい実施形態では、結合部分は、2つ以上のかかる可変ドメインを含む。
【0030】
EGFR及びHER2に結合する結合部分は、EGFR及びHER3に結合する結合部分とは異なる結合部分である。結合部分の少なくとも1つが多重特異性抗体である場合、少なくとも1つの多重特異性抗体は、少なくともEGFR及びHER2に結合し得るか、又は少なくともEGFR及びHER3に結合し得る。好ましい実施形態では、結合部分は、一つの二重特異性抗体がEGFR及びHER2に結合し、もう一つの二重特異性抗体がEGFR及びHER3に結合する二重特異性抗体を含む。
【0031】
本明細書で使用するとき、用語「抗体」は、抗原上のエピトープに結合する1つ以上のドメインを含有するタンパク質の免疫グロブリンクラスに属するタンパク質分子を意味し、このようなドメインは、抗体の可変領域に由来するか又は配列相同性を共有する。抗体は、典型的には、基本的な構造単位で構成されており、それぞれに2つの重鎖及び2つの軽鎖を有する。治療用の抗体は、好ましくは、可能な限り治療される対象の天然抗体(例えば、ヒト対象のヒト抗体)に近いものである。本発明による抗体は、任意の特定のフォーマット又はそれを産生する方法に限定されない。
【0032】
抗体は、典型的には、抗原のエピトープを認識し、かかるエピトープは他の化合物にも存在し得るので、抗原、例えば、EGFR、HER2又はHER3を「特異的に認識する」本発明による抗体は、他の化合物が同じ種類のエピトープを含む場合、かかる他の化合物を同様に認識し得る。したがって、抗原と抗体との相互作用に関して、「特異的に認識する」若しくは「特異的に結合する」という用語又は同じ意味を有する用語は、同じ又は同じ種類のエピトープを含む他の化合物への抗体の結合を排除するものではない。
【0033】
「二重特異性抗体」は、抗体の1つの可変ドメインが第1の抗原に結合する一方で、抗体のもう一つの可変ドメインが第2の抗原に結合し、当該第1及び第2の抗原が同一ではない、本明細書に記載の抗体である。「二重特異性抗体」という用語はまた、一つの重鎖可変領域/軽鎖可変領域(VH/VL)の組み合わせが抗原上の第1のエピトープに結合し、もう一つのVH/VLの組み合わせが第2のエピトープに結合する抗体を包含する。第2のエピトープは、同じ抗原上の異なるエピトープであり得る。この用語は、VHが第1の抗原を特異的に認識することができ、VLが免疫グロブリン可変領域中のVHと対になって、第2の抗原を特異的に認識することができる抗体を更に含む。得られたVH/VL対は、抗原1又は抗原2のいずれかに結合する。例えば、国際公開第2008/027236号明細書、国際公開第2010/108127号明細書及びSchaeferら(Cancer Cell 20,472-486,October 2011)に記載されているそのようないわゆる「ツーインワン抗体」。本発明による二重特異性抗体は、任意の特定の二重特異性フォーマット又はそれを産生する方法に限定されない。
【0034】
二重特異性抗体は、多重特異性抗体の一例である。三重(及びそれ以上の)特異性抗体は、scFvフラグメントなどの結合部分を1つ以上の重鎖に付加することによって作製することができる。一般的な抗体又は二重特異性抗体の可変領域に1つ以上の可変ドメインを付加することも可能である。共通軽鎖と、2つの異なる重鎖であって、各々が共通軽鎖と機能的可変ドメインを形成することができる重鎖とを産生する細胞は、とりわけ、2つの異なる重鎖と軽鎖の組み合わせを有する二重特異性抗体を産生する。同様に、共通軽鎖及び3つ以上の異なる重鎖を産生する細胞は、一緒になって3つ以上の抗原を標的化することが可能ないくつかの二重特異性抗体を形成することができる。現在、抗体の標準的なフォーマット(すなわち、定常部分と2つの可変ドメイン)に基づいて構築し、更なる結合ドメインを付加することが可能である。したがって、抗体の定常ドメイン又は1つ以上の可変ドメインに結合する付加的な結合特異性を備える1つ以上の一本鎖Fvを有する多重特異性抗体を作製することができる。2つ以上の可変領域を有する重鎖を作製することも可能である。付加的な重鎖領域は、異なる又は共通軽鎖可変領域と有利に会合することができる。そのような抗体の説明については、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第62/650467号明細書を参照されたい。
【0035】
本明細書において、核酸又はアミノ酸配列について言及する場合、「パーセント(%)同一性」は、最適な比較目的のために配列をアラインメントした後、選択された配列中の残基と同一である候補配列中の残基の百分率として定義される。核酸配列を比較するパーセント配列同一性は、デフォルト設定を使用してVector NTI Program Advance 10.5.2ソフトウェアのAlignXアプリケーションを使用して求められる。この設定には、変更されたClustalWアルゴリズム(Thompson,J.D.,Higgins,D.G.,and Gibson T.J.(1994)Nuc.Acid Res.22:4673~4680)、swgapdnarntスコアマトリックス、15のギャップオープンペナルティ、及び6.66のギャップエクステンションペナルティを用いる。アミノ酸配列は、デフォルト設定を使用して、Vector NTI Program Advance11.5.2ソフトウェアのAlignXアプリケーションを使用し、れは、修正ClustalWアルゴリズム(Thompson,J.D.,Higgins,D.G.,and Gibson T.J.1994)、blosum62mt2スコアマトリックス、10のギャップオープンペナルティ、及び0.1のギャップ伸長ペナルティを採用して、アライメントされる。
【0036】
本明細書で使用される「共通軽鎖」という用語は、例えば、多重特異性抗体で使用することができる軽鎖を指す。二重特異性抗体では、2つの軽鎖は共通軽鎖(又はそのVL部分)であり得る。全長抗体の結合特異性は影響を受けないが、2つの軽鎖(又はそのVL部分)は、同一であってもよく、いくつかのアミノ酸配列の違いを有してもよい。「再構成された」という用語の追加の有無にかかわらず、「共通軽鎖」、「共通VL」、「単一軽鎖」、「単一VL」という用語は、全て本明細書で互換的に使用される。「共通」は、同じ配列を有する軽鎖を指し、アミノ酸配列が同一ではないが機能的に等価なものも指す。当該軽鎖の多くの変異体が存在し、機能的結合領域の形成に影響を与えない変異(欠失、置換、挿入及び/又は付加)が存在する。本発明の軽鎖はまた、0から10個、好ましくは、0から5個のアミノ酸の挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有する、本明細書で指定される軽鎖であり得る。例えば、保存的アミノ酸の変化、重鎖と対合するときに結合特異性に寄与しない又は部分的にのみ寄与する領域におけるアミノ酸の変化などを導入し試験することによって、同一ではないが依然として機能的に同等である軽鎖を調製又は見出すことは、本明細書に使用される共通軽鎖の定義の範囲内である。いくつかの実施形態では、3つ以上の可変ドメインを有する多重特異性抗体は、異なる重鎖と、同じ軽鎖を有する可変ドメイン又はいくつかのアミノ酸の相違を有する軽鎖とを有するが、全長の多重特異性抗体の結合特異性は影響を受けない。かかる軽鎖は、有利には、本明細書中に記載される共通軽鎖でもある。好ましい実施形態では、多重特異性抗体の全ての可変ドメインが共通軽鎖を含む。本発明の多価抗体において使用するための共通軽鎖(可変領域)は、ラムダ軽鎖であり得、したがって、これも本発明の文脈において提供されるが、カッパ軽鎖が好ましい。本発明の共通軽鎖は、カッパ又はラムダ軽鎖の定常領域を含み得る。それは、好ましくは、カッパ軽鎖の定常領域であり、好ましくは、当該共通軽鎖は、生殖系列軽鎖であり、好ましくは、IgVK1-39遺伝子セグメントを含む再構成された生殖系列ヒトカッパ軽鎖、例えば、再構成された生殖系列ヒトカッパ軽鎖IgVK1-39
*01/IGJK1
*01である。共通軽鎖のアミノ酸配列の例を、
図7の配列10,11又は12に示す。
【0037】
本発明による「全長IgG」又は「全長抗体」という用語は、本質的に完全なIgGを含むものとして定義されるが、必ずしも完全なIgGの全ての機能を有するわけではない。誤解を避けるために、全長IgGは、2つの重鎖及び2つの軽鎖を含む。各鎖は、定常(C)領域及び可変(V)領域を含有し、これはCH1、CH2、CH3、VH及びCL、VLと表示されるドメインに分解することができる。IgG抗体は、Fab部分に含まれる可変領域ドメインを介して抗原に結合し、結合後、定常ドメイン、主にFc部分を介して免疫系の分子及び細胞と相互作用することができる。本発明による全長抗体は、所望の特性を提供する変異が存在し得るIgG分子を包含する。全長IgGは、領域のうちのいずれの実質的な部分の欠失も有さない必要がある。しかしながら、得られるIgG分子の結合特性を本質的に変えることなく、1つ又はいくつかのアミノ酸残基が欠失しているIgG分子は、用語「全長IgG」に含まれる。例えば、かかるIgG分子は、好ましくは、非CDR領域において、1から10アミノ酸残基の欠失を有することができ、この欠失アミノ酸は、IgGの抗原特異性又はエピトープ結合特異性に必須ではない。IgG抗体の例は、IgG1、IgG2、IgG3及びIG4抗体である。本発明のいくつかの実施形態では、IgGはIgG1である。
【0038】
好ましくは、2つ以上の結合部分の少なくとも1つは抗体である。抗体は、EGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインと、HER2の細胞外部分に結合する可変ドメインとを含むことができる。別の実施形態では、抗体は、EGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインと、HER3の細胞外部分に結合する可変ドメインとを含む。
【0039】
2つ以上の結合部分は、好ましくは、2つ以上の抗体を含み、好ましくは、EGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインをそれぞれ含む多重特異性抗体を含み、第1の当該抗体がHER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを含み、第2の当該抗体がHER3の細胞外部分に結合する可変ドメインを含む。2つ以上の多重特異性抗体を含む組成物の好ましい例は、2つ以上の二重特異性抗体を含む組成物である。本明細書に記載の2つの二重特異性抗体を含む組成物の非限定的な例を
図1に概略的に示す。それぞれが2つの重鎖(1)及び2つの軽鎖(4)を有する2つの二重特異性抗体が示されている。2つの抗体は、重鎖可変領域(5)を有する重鎖を共有する。これらは、もう一方の重鎖の可変領域が異なる。一方の抗体は、重鎖可変領域(6)を有する。他方の抗体は、重鎖可変領域(7)を有する。全ての重鎖可変領域は、共通軽鎖(4)と対合して機能的結合ドメインを形成することができる。同じ細胞によって産生される場合、重鎖は、ヘテロ二量体化ドメイン(2,3)の存在によってヘテロ二量体化するように誘導される。ヘテロ二量体化ドメインは、2つの部分を有し、一方の重鎖上に1つの部分を有し、他方の重鎖上に適合部分を有する。ヘテロ二量体化ドメインは、しばしば、IgG1 CH3領域にある。ヘテロ二量体化は、適切な部分を選択された重鎖に提供することによって誘導することができる。
【0040】
本発明では、EGFRxHER2二重特異性抗体及びEGFRxHER3二重特異性抗体の選択的な形成は、重鎖形成EGFR可変ドメインにヘテロ二量体化ドメインの一部分(3)を組み込み、かつ、HER2結合ドメイン及びHER3結合ドメインを形成する重鎖に親和性の部分(2)を組み込むことによって誘導され得る。
【0041】
軽鎖と一緒になって、EGFR、HER2又はHER3などの抗原に結合する可変ドメインを形成する重鎖可変領域を有する重鎖は、本明細書では、EGFR重鎖、又はHER2重鎖などとも呼ばれる。本発明の好ましい実施形態では、第1及び/又は第2の抗体の重鎖のCH3領域は、HER2重鎖とEGFR重鎖とのヘテロ二量体化、及び、HER3重鎖とEGFR重鎖とのヘテロ二量体化を促進するように操作される。好ましい実施形態では、ヘテロ二量体化を促進するための操作は、以前に、米国特許第9,248,182号明細書、9,358,286;同9,248,182号明細書、及び同9,758,805号明細書に記載されたDEKK残基位置を使用する。
【0042】
いくつかの実施形態では、EGFRへの組成物の抗体の結合は、EGFRへのEGFの結合を遮断し、及び/又は、HER3への組成物の抗体の結合は、HER3へのニューレグリン1(NRG)の結合を遮断する。好ましい実施形態では、EGFRに対する組成物の抗体の結合は、EGFRに対するEGFの結合を遮断し、HER3に対する組成物の抗体の結合は、HER3に対するニューレグリン1(NRG)の結合を遮断する。
【0043】
EGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインは、好ましくは、CDR1配列NYAMN、CDR2配列WINANTGDPTYAQGFTG、及び、CDR3配列ERFLEWLHFDY、を含む重鎖可変領域、又は、CDR中に1、2、若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含むそれらの変異体を含む。
【0044】
HER2の細胞外部分に結合する可変ドメインは、好ましくは、CDR1配列SYGMH、CDR2配列VISYDGSNKYYADSVKG、及び、CDR3配列DYYRRTARAGFDY、を含む重鎖可変領域、又は、CDR中に1、2、若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含むそれらの変異体を含む。
【0045】
HER3の細胞外部分に結合する可変ドメインは、好ましくは、CDR1配列GYYMH、CDR2配列WINPNSGGTNYAQKFQG、及び、CDR3配列DHGSRHFWSYWGFDY、を含む重鎖可変領域、又は、CDR中に1、2、若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含むそれらの変異体を含む。
【0046】
好ましい実施形態では、組成物は、2つの二重特異性抗体を含み、第1の当該二重特異性抗体は、CDR1配列NYAMN、CDR2配列WINANTGDPTYAQGFTG、及びCDR3配列ERFLEWLHFDYを含む重鎖可変領域、又は、CDR中の1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含むそれらの変異体を含むEGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを含む。好ましい実施形態では、第1及び第2の当該二重特異性抗体は、CDR1配列NYAMN、CDR2配列WINANTGDPTYAQGFTG、及びCDR3配列ERFLEWLHFDY、又は、CDR中の1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含むそれらの変異体を含む重鎖可変領域を含むEGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを含む。
【0047】
好ましい実施形態では、第1及び第2の当該二重特異性抗体は、CDR1配列NYAMN、CDR2配列WINANTGDPTYAQGFTG、及びCDR3配列ERFLEWLHFDYを含む重鎖可変領域、又は、CDR中に1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含むそれらの変異体を含むEGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを含み、当該第1の二重特異性抗体が、HER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを更に含み、この可変ドメインが、好ましくは、CDR1配列SYGMH、CDR2配列VISYDGSNKYYADSVKG、及びCDR3配列DYYRRTARAGFDY、又は、CDR中に1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含むそれらの変異体を含む重鎖可変領域を含み、当該第2の二重特異性抗体が、HER3の細胞外部分に結合する可変ドメインを更に含み、この可変ドメインが、好ましくは、CDR1配列GYYMH、CDR2配列WINPNSGGTNYAQKFQG、及びCDR3配列DHGSRHFWSYWGFDY、又は、CDR中に1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含むそれらの変異体を含む重鎖可変領域を含む。
【0048】
好ましい実施形態では、第1及び第2の当該二重特異性抗体は、CDR1配列NYAMN、CDR2配列WINANTGDPTYAQGFTG、及びCDR3配列ERFLEWLHFDYを含む重鎖可変領域、又は、CDR中に1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含むそれらの変異体を含むEGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを含み、当該第1の二重特異性抗体が、HER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを更に含み、この可変ドメインが、好ましくは、CDR1配列SYGMH、CDR2配列VISYDGSNKYYADSVKG、及びCDR3配列GDYGSYSSYAFDY、又は、CDR中に1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含むそれらの変異体を含む重鎖可変領域を含み、当該第2の二重特異性抗体が、HER3の細胞外部分に結合する可変ドメインを更に含み、この可変ドメインが、好ましくは、CDR1配列GYYMH、CDR2配列WINPNSGGTNYAQKFQG、及びCDR3配列DHGSRHFWSYWGFDY、又は、CDR中に1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含むそれらの変異体を含む重鎖可変領域を含む。
【0049】
列挙されたCDR配列からの1、2、又は3アミノ酸残基の保存的変異は、種類として同じ結合活性(本質的に同等なのであって、その量は必ずしも同等ではない)を保持させつつ可能である。したがって、当該重鎖CDR1、2及び3配列は、好ましくは、列挙されたCDR配列から3つ以下、好ましくは2つ以下、より好ましくは1つ以下のアミノ酸を逸脱する配列を含有する。特定の実施形態において、重鎖CDR1、2及び3配列は、列挙されたCDR配列と同一である。
【0050】
いくつかの実施形態では、EGFR可変ドメインは、
図7又は
図8に記載のEGFRVH領域のHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む重鎖可変領域を含む。好ましくは、
図7又は
図8のMF3755のそれを含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、EGFR可変ドメインは、
図7又は
図8に記載のEGFRVH領域のアミノ酸配列と、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも97%、より好ましくは、少なくとも98%、より好ましくは、少なくとも99%同一、又は100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。好ましくは、
図7又は
図8のMF3755のそれを含む。
【0052】
例えば、いくつかの実施形態では、ヒトEGFRに結合する二重特異性抗体の重鎖可変領域は、3つのCDR配列の外側の重鎖可変領域の配列において、0~10個、好ましくは、0~5個のアミノ酸の挿入、欠失、置換、付加、又はそれらの組み合わせを有することができる。いくつかの実施形態において、重鎖可変領域は、示されたアミノ酸配列に対する、0~9、0~8、0~7、0~6、0~5、0~4、好ましくは0~3、好ましくは0~2、好ましくは0~1、好ましくは0のアミノ酸の挿入、欠失、置換、付加、又はこれらの組み合わせを含む。
【0053】
特定の実施形態では、EGFR可変ドメインは、
図7又は
図8から選択されるEGFRVH領域由来のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。好ましくは、
図7又は
図8のMF3755のそれを含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、HER2可変ドメインは、
図7又は
図8に記載のHER2VH領域のHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む重鎖可変領域を含み、好ましくは、
図7又は
図8のMF2032のそれを含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、HER2可変ドメインは、
図7又は
図8に記載のHER2VH領域のアミノ酸配列と、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも97%、より好ましくは、少なくとも98%、より好ましくは、少なくとも99%同一、又は100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み、好ましくは、
図7又は
図8のMF2032のそれを含む。
【0056】
例えば、いくつかの実施形態において、ヒトHER2に結合する二重特異性抗体の重鎖可変領域は、3つのCDR配列の外側の重鎖可変領域の配列において、0~10個、好ましくは0~5個のアミノ酸の挿入、欠失、置換、付加、又はそれらの組み合わせを有することができる。いくつかの実施形態において、重鎖可変領域は、示されたアミノ酸配列に対する、0~9、0~8、0~7、0~6、0~5、0~4、好ましくは0~3、好ましくは0~2、好ましくは0~1、好ましくは0のアミノ酸の挿入、欠失、置換、付加、又はこれらの組み合わせを含む。
【0057】
特定の実施形態では、HER2可変ドメインは、
図7又は
図8のMF1849又はMF2032から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。好ましくは、
図7又は
図8のMF2032のそれを含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、HER3可変ドメインは、
図7又は
図8のMF3178のVH領域のHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む重鎖可変領域を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、HER3可変ドメインは、
図7又は
図8のMF3178に記載のアミノ酸配列と、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも97%、より好ましくは、少なくとも98%、より好ましくは、少なくとも99%同一、又は100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0060】
例えば、いくつかの実施形態では、ヒトHER3に結合する二重特異性抗体の重鎖可変領域は、3つのCDR配列の外側の重鎖可変領域の配列における0~10個、好ましくは、0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加、又はそれらの組み合わせを有することができる。いくつかの実施形態において、重鎖可変領域は、示されたアミノ酸配列に対する、0~9、0~8、0~7、0~6、0~5、0~4、好ましくは0~3、好ましくは0~2、好ましくは0~1、好ましくは0のアミノ酸の挿入、欠失、置換、付加、又はこれらの組み合わせを含む。
【0061】
特定の実施形態では、HER3可変ドメインは、
図7又は
図8のMF3178のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0062】
好ましい実施形態では、第1及び第2の当該二重特異性抗体は、
図7又は
図8から選択されるEGFR VH領域由来のアミノ酸配列又はそれらの変異体、好ましくは、
図7若しくは
図8のMF3755のアミノ酸配列、又はそれらの変異体であって、好ましくはCDR中に存在しない、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含む変異体を含む重鎖可変領域を含む、EGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを含み、当該第1の二重特異性抗体が、HER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを更に含み、この可変ドメインが、
図7若しくは
図8のMF1849若しくはMF2032又はそれらの変異体、好ましくは、
図7若しくは
図8のMF2032のアミノ酸配列又はそれらの変異体から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み、当該変異体が、好ましくは、CDR中に存在しない、1、2又は3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含み、当該第2の二重特異性抗体が、HER3の細胞外部分に結合する可変ドメインを更に含み、この可変ドメインが、
図7若しくは
図8のMF3178のアミノ酸配列又はそれらの変異体を含む重鎖可変領域を含み、当該変異体が、好ましくは、CDR中に存在しない、1、2又は3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含む。
【0063】
好ましい実施形態では、第1及び第2の当該二重特異性抗体は、
図7若しくは
図8のMF3755のアミノ酸配列、又はそれらの変異体であって、好ましくは、CDRに中に存在しない、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含む変異体を含む重鎖可変領域を含むEGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを含み、当該第1の二重特異性抗体が、HER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを更に含み、この可変ドメインが、
図7若しくは
図8のMF2032のアミノ酸配列、又はそれらの変異体であって、好ましくは、CDR中に存在しない、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含む変異体を含む重鎖可変領域を含み、当該第2の二重特異性抗体が、HER3の細胞外部分に結合する可変ドメインを更に含み、この可変ドメインが、
図7若しくは
図8のMF3178のアミノ酸配列又はそれらの変異体を含む重鎖可変領域を含み、当該変異体が、好ましくは、CDR中に存在しない、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含む。
【0064】
一実施形態では、第1及び第2の当該二重特異性抗体は、
図7若しくは
図8のMF4280のアミノ酸配列、又はそれらの変異体であって、好ましくは、CDR中に存在しない、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含む変異体を含む重鎖可変領域を含むEGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを含み、当該第1の二重特異性抗体が、更に、
図7若しくは
図8のMF1849のアミノ酸配列、又はそれらの変異体であって、好ましくは、CDR中に存在しない、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含む変異体を含む重鎖可変領域を含むHER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを含み、当該第2の二重特異性抗体が、更に、
図7若しくは
図8のMF3178のアミノ酸配列、又はそれらの変異体であって、好ましくは、CDR中に存在しない、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含む変異体を含む重鎖可変領域を含むHER3の細胞外部分に結合する可変ドメインを含む。
【0065】
一実施形態では、第1及び第2の当該二重特異性抗体は、
図7若しくは
図8のMF4280のアミノ酸配列、又はそれらの変異体であって、好ましくは、CDR中に存在しない、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含む変異体を含む重鎖可変領域を含むEGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを含み、当該第1の二重特異性抗体が、更に、
図7若しくは
図8のMF2032のアミノ酸配列、又はそれらの変異体であって、好ましくは、CDR中に存在しない、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含む変異体を含む重鎖可変領域を含むHER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを含み、当該第2の二重特異性抗体が、更に、
図7若しくは
図8のMF3178のアミノ酸配列、又はそれらの変異体であって、好ましくは、CDR中に存在しない、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含む変異体を含む重鎖可変領域を含むHER3の細胞外部分に結合する可変ドメインを含む。
【0066】
一実施形態では、第1及び第2の当該二重特異性抗体は、
図7若しくは
図8のMF4003のアミノ酸配列、又はそれらの変異体であって、好ましくは、CDR中に存在しない、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含む変異体を含む重鎖可変領域を含むEGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを含み、当該第1の二重特異性抗体が、更に、
図7若しくは
図8のMF1849のアミノ酸配列、又はそれらの変異体であって、好ましくは、CDR中に存在しない、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含む変異体を含む重鎖可変領域を含むHER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを含み、当該第2の二重特異性抗体が、更に、
図7若しくは
図8のMF3178のアミノ酸配列、又はそれらの変異体であって、好ましくは、CDR中に存在しない、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含む変異体を含む重鎖可変領域を含むHER3の細胞外部分に結合する可変ドメインを含む。
【0067】
一実施形態では、第1及び第2の当該二重特異性抗体は、
図7若しくは
図8のMF4003のアミノ酸配列、又はそれらの変異体であって、好ましくは、CDR中に存在しない、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含む変異体を含む重鎖可変領域を含むEGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを含み、当該第1の二重特異性抗体が、更に、
図7若しくは
図8のMF2032のアミノ酸配列、又はそれらの変異体であって、好ましくは、CDR中に存在しない、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含む変異体を含む重鎖可変領域を含むHER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを含み、当該第2の二重特異性抗体が、更に、
図7若しくは
図8のMF3178のアミノ酸配列、又はそれらの変異体であって、好ましくは、CDR中に存在しない、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含む変異体を含む重鎖可変領域を含むHER3の細胞外部分に結合する可変ドメインを含む。
【0068】
例示的なEGFR重鎖可変領域は、国際公開第2015/130172号明細書及び国際出願PCT/NL2018/050537号に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。例示的なHER2重鎖可変領域は、国際公開第2015/130173号明細書に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。例示的なHER3重鎖可変領域は、国際公開第2015/130172号明細書及び国際公開第2015/130173号明細書に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0069】
EGFR、HER2又はHER3の結合を保持する開示されたアミノ酸配列の更なる変異体は、例えば、再構成されたヒトIGKVl-39/IGKJl VL領域(DeKruifら、Biotechnol Bioeng.2010(106)741-50)及び、前述のように本明細書に開示されるEGFR、HER2又はHER3 VH領域のアミノ酸配列にアミノ酸の置換を組み込んだVH領域の集合を含むファージディスプレイライブラリーから得ることができる。EGFR、HER2又はHER3に結合するFab領域をコードするファージを選択し、フローサイトメトリーによって分析し、配列決定することで、アミノ酸の置換、挿入、欠失又は付加を伴う抗原結合を保持する変異体を同定することができる。
【0070】
本発明は更に、EGFRの細胞外部分及びHER2の細胞外部分に特異的に結合する結合部分を提供する。この結合部分は、好ましくは、EGFRに結合する可変ドメイン及びHER2に結合する可変ドメインを含む。EGFRに結合する可変ドメインは、好ましくは、本明細書に記載のEGFR可変ドメインである。HER2に結合する可変ドメインは、好ましくは、本明細書に記載のHER2可変ドメインである。好ましくは、EGFR可変ドメイン及びHER2可変ドメインは、いずれも、本明細書に記載の可変ドメインである。
【0071】
本発明は更に、EGFRの細胞外部分及びHER3の細胞外部分に特異的に結合する結合部分を提供する。この結合部分は、好ましくは、EGFRに結合する可変ドメイン及びHER3に結合する可変ドメインを含む。EGFRに結合する可変ドメインは、好ましくは、本明細書に記載のEGFR可変ドメインである。HER3に結合する可変ドメインは、好ましくは、本明細書に記載のHER3可変ドメインである。好ましくは、EGFR可変ドメイン及びHER3可変ドメインは、いずれも、本明細書に記載の可変ドメインである。
【0072】
本発明は更に、EGFRの細胞外部分及びHER2の細胞外部分に特異的に結合する結合部分と、EGFRの細胞外部分及びHER3の細胞外部分に特異的に結合する結合部分とを含む組成物を提供する。
【0073】
本明細書に記載の結合部分は、好ましくは、抗体であり、好ましくは、多重特異性抗体であり、好ましくは、二重特異性抗体である。
【0074】
二重特異性抗体などの結合部分のEGFR可変ドメイン、HER2可変ドメイン及びHER3可変ドメインの軽鎖可変領域(VL)は、親EGFR単一特異性抗体のVL領域、親HER2単一特異性抗体のVL領域、及び/又は、親HER3単一特異性抗体の同じものと同じであり得る。可変ドメインがそれぞれEGFR、HER2又はHER3への結合を保持する限り、代替のVL領域を、1つ以上のVH/VL領域の組み合わせに使用することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、EGFR可変ドメイン、HER2可変ドメイン及びHER3可変ドメインのVL領域は類似している。特定の実施形態では、結合部分の可変ドメインの全てのVL領域が同一である。
【0076】
特定の実施形態では、本発明の結合部分の1つ、2つ、又は3つ以上の可変ドメインの軽鎖可変領域は、共通軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、1つ、2つ、又は3つ以上の可変ドメインの共通軽鎖可変領域は、生殖系列可変領域Vセグメントを含む。特定の実施形態では、1つ、2つ、又は3つ以上の可変ドメインの軽鎖可変領域は、カッパ軽鎖VセグメントIgVκ1-39
*01を含む。IgVκ1-39は、免疫グロブリン可変カッパ1-39遺伝子についての短縮形である。この遺伝子はまた、免疫グロブリンカッパ可変1-39、IGKV139;IGKV1-39。この遺伝因子についての外部Idsは、HGNC:5740、Entrez Gene:28930、Ensembl:ENSG00000242371である。V領域のアミノ酸配列を、
図7の配列10に示す。V領域は、5つのJ領域のうちの1つと組み合わせることができる。好ましいJ領域はjk1及びjk5であり、接合された配列はIGKV1-39/jk1及びIGKV1-39/jk5として示される。代替名は、IgVκ1-39
*01/IGJκ1
*01又はIgVκ1-39
*01/IGJκ5
*01である(imgt.orgでのIMGTデータベースの世界的なウェブによる命名法)。特定の実施形態では、VH/VL結合領域の一方又は両方の軽鎖可変領域が、カッパ軽鎖IgVκ1-39
*01/IGJκ1
*01、又は、IgVκ1-39
*01/IGJκ1
*05を含む(それぞれ、
図7の配列11又は配列12)。
【0077】
いくつかの実施形態では、本発明の結合部分の1つ、2つ、又は3つ以上の可変ドメインの軽鎖可変領域は、アミノ酸配列QSISSY(
図7の配列7)を含むLCDR1、アミノ酸配列AASを含むLCDR2、及びアミノ酸配列QQSYSTP(
図7の配列9)を含むLCDR3(すなわち、IMGTによるIGKV1-39のCDR)を含む。いくつかの実施形態では、本発明の結合部分の1つ、2つ、又は3つ以上の可変ドメインの軽鎖可変領域は、アミノ酸配列QSISSY(
図7の配列7)を含むLCDR1、アミノ酸配列AASLQSを含むLCDR2(
図7の配列8)、及びアミノ酸配列QQSYSTP(
図7の配列9)を含むLCDR3を含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、本発明の結合部分の1つ、2つ、又は3つ以上の可変ドメインは、
図7の配列11に記載のアミノ酸配列と、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも97%、より好ましくは、少なくとも98%、より好ましくは、少なくとも99%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、本発明の結合部分の1つ、2つ、又は3つ以上の可変ドメインは、
図7の配列11に記載のアミノ酸配列と、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも97%、より好ましくは、少なくとも98%、より好ましくは、少なくとも99%同一、又は100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0079】
例えば、いくつかの実施形態では、本発明の結合部分の1つ、2つ、又は3つ以上の可変ドメインの可変軽鎖は、
図7の配列11又は
図7の配列12に関して、0から10個、好ましくは、0から5個のアミノ酸の挿入、欠失、置換、付加又はそれらの組み合わせを有し得る。いくつかの実施形態では、本発明の結合部分の1つ、2つ、又は3つ以上の可変ドメインの軽鎖可変領域は、示されたアミノ酸配列に対して、0から9個、0から8個、0から7個、0から6個、0から5個、0から4個、好ましくは、0から3個、好ましくは、0から2個、好ましくは、0から1個、好ましくは、0個のアミノ酸の挿入、欠失、置換、付加、又はそれらの組み合わせを含む。
【0080】
他の実施形態では、本発明の結合部分の1つ、2つ、又は3以上の可変ドメインの軽鎖可変領域は、
図7の配列11又は
図7の配列12のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、本発明の結合部分の全ての可変ドメインは、同一のVL領域を含む。一実施形態では、本発明の結合部分の全ての可変ドメインのVLは、
図7の配列11に記載のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、本発明の結合部分の全ての可変ドメインのVLは、
図7の配列12又は
図7の配列12に記載のアミノ酸配列を含む。
【0081】
本明細書に開示される二重特異性抗体などの多重特異性抗体は、複数のフォーマットで提供することができる。多重特異性抗体の多くの異なるフォーマットが当技術分野で公知であり、Kontermann(Drug Discov Today、2015 Jul;20(7):838-47;MAb、;2012 Mar-Apr;4(2):182~97)及びSpiessら(Alternative molecular formats and therapeutic applications for bispecific antibodies.Mol.Immunol.(2015)http://dx.doi.org/10.1016/j.molimm.2015.01.003)によって概説されており、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。例えば、2つの可変ドメインを有する、標準的な抗体ではない二重特異性抗体フォーマットなどの多重特異性抗体フォーマットは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む少なくとも1つの可変ドメインを有する。この可変ドメインは、第2の結合活性を提供する、一本鎖Fvフラグメント、モノボディ、VHH及びFabフラグメントに連結され得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法において使用される多重特異性抗体は、一般に、ヒトIgGサブクラス(例えば、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)のものである。特定の実施形態において、抗体は、ヒトIgG1サブクラスのものである。半減期が有利で免疫原性が低いため、全長IgG抗体が好ましい。かかる多重特異性抗体は、ヘテロ二量体化ドメインを含む2つの異なる重鎖を有し得る。したがって、特定の実施形態では、EGFR/HER2二重特異性抗体及びEGFR/HER3二重特異性抗体は、全長IgG分子である。一実施形態では、EGFR/HER2二重特異性抗体及びEGFR/HER3二重特異性抗体は、全長IgG1分子である。
【0083】
したがって、特定の実施形態では、多重特異性EGFR/HER2及びEGFR/HER3抗体は、結晶化可能なフラグメント(Fc)を含む。多重特異性抗体のFc領域は、好ましくは、ヒト定常領域からなる。多重特異性抗体の定常領域又はFcは、天然に存在するヒト抗体の定常領域との間に、1個以上、好ましくは、10個以下、好ましくは、5個以下のアミノ酸の相違を含み得る。例えば、特定の実施形態において、二重特異性抗体の各Fabアームは、二重特異性抗体の形成を促進する修飾、Fc媒介エフェクター機能に影響を与える修飾、及び/又は本明細書に記載の他の特徴を含むFc領域を更に含み得る。
【0084】
好ましい実施形態では、多重特異性、好ましくは、二重特異性の全長IgG抗体は、当該二重特異性IgG抗体とFcガンマ(Fcγ)受容体との相互作用が増強されるように、より低いヒンジ及び/又はCH2ドメインを有する。抗体自体が低いADCC活性を有する場合には、多くの場合、抗体のADCC活性とも呼ばれる抗体依存性細胞傷害性が改善され得る。これは、例えば、抗体のグリコシル化部分からフコース残基を除去することによって達成される。脱フコシル化によってADCCを増強するための一技術は、例えば、Junttila,T.T.,K.Parsonsら(2010).「Superior In vivo Efficacy of Afucosylated Trastuzumab in the Treatment of HER2-Amplified Breast Cancer.」CancerResearch70(11):4481-4489)に記載されている。本明細書に記載の多重特異性抗体は、好ましくは、脱フコシル化されている。好ましくは、両方の多重特異性抗体が脱フコシル化される。例えば、糖鎖工学(協和発酵/Biowa、GlycArt(Roche)及びEurekaTherapeutics)及び突然変異誘発(Xencor及びMacrogenics)を含む他の戦略がADCC増強を達成することが報告されており、これらは全て、低親和性活性化FcγRIIIaへのFc結合を改善すること、及び/又は、低親和性阻害FcγRIIbへの結合を減少させることを目指している。
【0085】
二重特異性抗体は、典型的には、抗体をコードする核酸を発現する細胞によって産生される。したがって、いくつかの実施形態では、EGFR及びHER2に結合する多重特異性抗体と、EGFR及びHER3に結合する多重特異性抗体とを含む組成物を製造するための方法が提供され、当該方法は、
共通軽鎖と一緒になってEGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを形成する重鎖を含むポリペプチドをコードする核酸と、
当該共通軽鎖と一緒になってHER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを形成する重鎖を含むポリペプチドをコードする核酸と、
当該共通軽鎖と一緒になってHER3の細胞外部分に結合する可変ドメインを形成する重鎖を含むポリペプチドをコードする核酸と、
当該共通軽鎖を含むポリペプチドをコードする核酸と、を有する細胞を提供することを含み、
ここで、2つ以上の当該核酸は、物理的に連結されていてもいなくてもよく、当該核酸の各々は、更に、当該細胞におけるコードされた重鎖及び軽鎖の発現を可能にする発現制御配列を含み、当該方法は、更に、当該重鎖及び軽鎖の発現を可能にするために当該細胞を培養すること、及び、任意選択で、当該2つ以上の抗体を収集することを含む。2つ以上の当該抗体は、細胞及び/又は上清から収集され得る。
【0086】
それぞれの鎖が細胞内で産生されるレベルは、例えば、適切な発現制御配列を選択することによって、又は核酸の導入コピー数を選択することによって、又はその両方によって調整することができる。好ましい実施形態では、細胞の集団に当該核酸が提供され、それぞれの鎖の適切なレベルを発現するクローンが選択される。クローンは、典型的には、産生される抗体の量にも基づいて選択される。一実施形態では、当該方法は、当該核酸を含む細胞の集団を提供すること、及び、当該集団から、重鎖及び軽鎖のそれぞれの所望の発現比を有する細胞を選択することを含む。いくつかの実施形態では、当該2つ以上の結合部分は、抗体であり、好ましくは、二重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、細胞は、好ましくは、本質的に等モル量の2つ以上の結合部分を産生する。他の実施形態では、細胞は、当該2つ以上の結合部分のうち、一つの結合部分を、もう一つの結合部分よりも多く産生する。
【0087】
本発明は、また、
共通軽鎖と一緒になってEGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを形成する重鎖を含むポリペプチドをコードする核酸と、
当該共通軽鎖と一緒になってHER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを形成する重鎖を含むポリペプチドをコードする核酸と、
当該共通軽鎖と一緒になってHER3の細胞外部分に結合する可変ドメインを形成する重鎖を含むポリペプチドをコードする核酸と、
当該共通軽鎖を含むポリペプチドをコードする核酸と、を有する細胞を提供することを含み、
ここで、2つ以上の当該核酸は、物理的に連結されていてもいなくてもよく、当該核酸の各々は、当該細胞におけるコードされた重鎖及び軽鎖の発現を可能にする発現制御配列を更に含む。
【0088】
本発明は、更に、
共通軽鎖と一緒になってEGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを形成する重鎖を含むポリペプチドをコードする核酸と、
共通軽鎖と一緒になってHER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを形成する重鎖を含むポリペプチドをコードする核酸と、
共通軽鎖と一緒になってHER3の細胞外部分に結合する可変ドメインを形成する重鎖を含むポリペプチドをコードする核酸と、
当該共通軽鎖を含むポリペプチドをコードする核酸と、を有する細胞を提供することを含み、
2つ以上の当該核酸は、物理的に連結されていてもいなくてもよく、当該核酸の各々が、更に、当該細胞におけるコードされた重鎖及び軽鎖の発現を可能にする発現制御配列を含む、容器を含む。
【0089】
結合部分を産生する細胞は、好ましくは、動物細胞、より好ましくは、哺乳動物細胞、より好ましくは、霊長類細胞、最も好ましくは、ヒト細胞である。好適な細胞は、本明細書に記載の結合部分、好ましくは、多重特異性抗体、好ましくは、二重特異性抗体を含み、好ましくは、それを産生することができる任意の細胞である。
【0090】
抗体産生に適した細胞は、当技術分野で公知であり、ハイブリドーマ細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NS0細胞、HEK293細胞、293-F細胞又はPER-C6細胞が挙げられる。様々な機関及び企業は、例えば、臨床使用のために、抗体の大規模生産のための細胞株を開発してきた。かかる細胞株の非限定的な例は、CHO細胞、NS0細胞、又はPER.C6細胞である。特に好ましい実施形態では、当該細胞は、ヒト細胞である。好ましくは、アデノウイルスE1領域又はその機能的等価物によって形質転換される細胞。特に好ましい実施形態では、当該細胞は、CHO細胞又はそれらの変異体である。好ましくは、抗体の発現のためにグルタミンシンテターゼ(GS)ベクター系を利用する変異体。好ましい一実施形態では、細胞は、CHO細胞である。
【0091】
いくつかの実施形態では、細胞は、3つの異なる重鎖及び少なくとも1つの軽鎖を発現する。1つの好ましい実施形態において、細胞は、異なる抗体種(異なる重鎖及び軽鎖の組み合わせ)の数を低減するために、本明細書に記載されるような「共通軽鎖」を発現する。例えば、それぞれのVH領域は、二重特異性IgG(国際公開第2013/157954号;参照により本明細書に組み込まれる)の産生のための当技術分野で知られている方法を使用して、再構成ヒトIGKV139/IGKJ1(huVκ139)軽鎖と併せて、発現ベクターにクローン化される。huVκ1 39は、2つ以上の重鎖と対合することができ、それによって多様な特異性を有する抗体を生じさせ、二重特異性分子の生成を促進することが以前に示された(国際公開第2009/157771号明細書)。
【0092】
共通軽鎖及び等量の2つの重鎖を発現する抗体産生細胞は、典型的には、50%の二重特異性抗体と、各々25%の単一特異性抗体を産生する(すなわち、同一の重軽鎖の組み合わせを有する)。それぞれの単一特異性抗体の産生よりも、二重特異性抗体の産生に有利であるいくつかの方法が公開されている。このようなものは、典型的には、重鎖の定常領域を、これらがホモ二量体化よりもヘテロ二量体化(すなわち、他の重鎖/軽鎖の組み合わせの重鎖と二量体化)に有利になるように修飾することによって達成される。好ましい実施形態では、本発明の二重特異性抗体は、適合性ヘテロ二量体化ドメインを有する2つの異なる免疫グロブリン重鎖を含む。様々な適合性ヘテロ二量体化ドメインが、技術分野において記載されている。この適合性ヘテロ二量体化ドメインは、好ましくは、適合性免疫グロブリン重鎖CH3ヘテロ二量体化ドメインである。技術分野では、重鎖のこのようなヘテロ二量体化が達成され得る様々な方法が記載されている。
【0093】
本明細書に記載の多重特異性抗体を産生するための好ましい方法の一例は、米国特許第9,248,181号明細書及び米国特許第9,358,286号明細書に開示されている。具体的には、本質的に二重特異性全長IgG分子のみを産生するための好ましい変異は、第1のCH3ドメイン中のアミノ酸置換L351K及びT366K(EU番号付け)(「KK-変異体」重鎖)、及び第2のドメイン中のアミノ酸置換L351D及びL368E(「DE-変異体」重鎖)、又はその逆である。前述のように、DE-変異体及びKK-変異体は、優先的に対合して、ヘテロ二量体(いわゆる「DEKK」二重特異性分子)を形成する。DE-変異体重鎖のホモ二量体化(DEDEホモ二量体)又はKK-変異体重鎖のホモ二量体化(KKKKホモ二量体)は、同一の重鎖間のCH3-CH3界面における荷電残基間の強い反発力のために、ほとんど発生しない。DE-変異体重鎖又はKK-変異体重鎖のいずれかを有する更なる重鎖を導入することにより、更なるDEKK二重特異性分子の産生が可能になる。新たに導入されたDE-重鎖(DE2)は、既存のKK重鎖と会合することができる。したがって、細胞は、2つの二重特異性抗体、DE1KK二重特異性抗体及びDE2KK二重特異性抗体を産生する。新しいDE重鎖の代わりに新しいKK重鎖(KK2)を導入した場合、DEKK1及びDEKK2の組み合わせを有する二重特異性抗体が産生される。異なる抗体が細胞によって産生され得るレベルは、HER2鎖及びHER3鎖の互いに対する相対的発現を調節することによって調節され得る。軽鎖は、典型的には、単一の重鎖のレベルを低下させるのに十分に産生され、EGFR鎖が産生されるレベルは、典型的には、HER2鎖やHER3鎖との効率的な対合を可能にするのに十分である。
【0094】
したがって、一実施形態では、EGFRに結合する可変ドメインを含む重鎖/軽鎖の組み合わせは、重鎖のDE変異体を含む。この実施形態では、HER2に結合する可変ドメインを含む重鎖/軽鎖の組み合わせ及びHER3に結合する可変ドメインを含む重鎖/軽鎖の組み合わせは、重鎖のKK変異体を含む。
【0095】
任意の適切なアッセイを使用して、候補のEGFR/HER2 IgG二重特異性抗体又はEGFR/HER3 IgG二重特異性抗体の結合について試験することができる。例えば、膜発現EGFR、HER2又はHER3への結合について試験することができる。これは、典型的には、通常、EGFR、HER2又はHER3を発現せず、EGFR、HER2又はHER3のうちの1つを発現するように形質転換された細胞で行われる。非形質転換細胞ではなく形質転換細胞への抗体の結合は、抗体の特異的結合を示唆する。結合は、例えば、フローサイトメトリー(国際公開第2015/130172号明細書、PCT/NL2018/050537号明細書及び国際公開第2015/130173号明細書に以前に記載されたFACS手順に従う)によって評価し得る。それぞれの単一特異性抗体は、コントロール及び無関係なIgG1アイソタイプコントロールmAbとして使用することができる。
【0096】
抗体などの結合部分は、細胞及び/又は細胞培養物の上清から収集することができる。典型的には、それらは産生細胞の上清から収集される。抗体などの結合部分は、上清から精製することができる。当技術分野では、多くの精製方法が公知である。いくつかのより一般的な方法は、親和性精製を使用する。
【0097】
細胞によって産生された抗体は、親和性精製によって精製することができる。これは、プロテインA抽出によって有利に行われる。溶出した抗体の特異的結合特性(すなわち、EGFRとの結合、HER2及びHER3との結合)の存在について、ELISAによって試験することができる。抗体調製物は、イオン交換カラムクロマトグラフィーによって更に分析することができる。個々の二重特異性抗体は、日常的な技術により、例えば、イオン交換クロマトグラフィーを使用して、互いから精製することができる。それぞれの二重特異性抗体の存在をELISAによって分析することもできる。調製物をHER2へ結合させて洗浄すると、全てのEGFR/HER3抗体が除去される。標識された可溶性HER3による染色はシグナルを与えないが、標識された可溶性EGFRによる染色はシグナルを与える。調製物をHER3へ結合させて洗浄すると、全てのEGFR/HER2抗体が除去される。標識された可溶性HER2による染色はシグナルを与えないが、標識された可溶性EGFRによる染色はシグナルを与える。調製物をEGFRへ結合させて洗浄すると、EGFR/HER2及びEGFR/HER3抗体は除去されない。標識された可溶性HER2による染色並びに標識された可溶性HER3による染色は、シグナルを与える。調製物中のそれぞれの抗体のレベルは、単一の二重特異性抗体の既知レベルを有する適切なコントロールを用いる、そのようなELISAを使用して推定することもできる。
【0098】
2つ以上の二重特異性抗体を含む組成物を製造するための方法は、
二重特異性抗体をコードする核酸を細胞に提供すること、
当該細胞を培養すること、
回収物の清澄化、
培養物から二重特異性抗体を収集すること、及び
産生された二重特異性抗体を半抗体からイオン交換クロマトグラフィー(IEX)によって分離すること、を含み、
方法は、上記二重特異性抗体が、同様のIEX保持時間、好ましくは、使用されるIEX条件下での個々の抗体の保持時間の平均から10%以下だけ逸脱するIEX保持時間を示すことを特徴とする。一実施形態では、抗体は、使用されるIEX条件下での個々の抗体の保持時間の平均から10%以下だけ逸脱するIEX保持時間を有するように選択される。抗体は、最初に培養物中の他のタンパク質から精製され得る。これは、典型的には、親和性精製によって、好ましくは、プロテインA抽出によって行われる。二重特異性抗体は、好ましくは、抗体の保持時間が及ぶ範囲外の保持時間を有する半抗体を有するように選択される。二重特異性抗体の組み合わせが産生され、単一特異性抗体が望ましくない場合、二重特異性抗体は、好ましくは、単一特異性抗体の保持時間とは異なる保持時間を有するように選択される。この実施形態における単一特異性抗体の保持時間は、好ましくは、それぞれの二重特異性抗体の保持時間が及ぶ範囲外である。培養物中の細胞は、好ましくは、3つの重鎖を同時に発現し、これらの重鎖は、EGFR/HER2及びEGFR/HER3重鎖ヘテロ二量体化の形成を促進するCH3ヘテロ二量体化ドメインを含む。細胞は、好ましくは、
図7の共通軽鎖を発現する。一実施形態における二重特異性抗体は、当該少なくとも2つの二重特異性抗体の平均PIと類似しており、好ましくは、0、5単位を超えて異ならない等電点(PI)を有する。
【0099】
標的に対する候補EGFR/HER2又はEGFR/HER二重特異性抗体のEGFR、HER2及びHER3 FABの親和性は、BIAcore T100を使用する表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって測定することができる。抗ヒトIgGマウスモノクローナル抗体(Becton and Dickinson,cat.Nr.555784)は、遊離アミン化学(NHS/EDC)を使用して、CM5センサーチップの表面に結合される。次に、bsAbがセンサー表面に捕捉される。続いて、組換え精製抗原であるヒトEGFR-Fc、HER2-Fc及びHER3-Fcタンパク質をセンサー表面上に濃度範囲で流して、オンレート及びオフレートを測定する。各サイクルの後、センサー表面をHClのパルスによって再生し、bsAbを再び捕捉する。得られたセンサーグラムから、BIAevaluationソフトウェアを使用して、ヒトEGFR、HER2及びHER3に結合するためのオンレート及びオフレート並びに親和性値を決定する。
【0100】
本発明はまた、がんの治療に使用するための本明細書に記載の組成物を提供する。複数の実施形態では、がんは、固形上皮がんである。好ましくは、本組成物は、EGFR、HER2及び/又はHER3を発現するがんに使用される。本組成物は、好ましくは、膵臓がん、結腸直腸がん、頭頸部がん、上皮性卵巣がん、上皮性卵管がん、上皮性腹膜がん、膀胱がん、又は前立腺がんに用いられる。いくつかの実施形態では、本組成物の使用によって治療されるがんは進行がんである。本組成物は、好ましくは、転移性がんに使用される。本組成物は、好ましくは、転移性膵臓がん、転移性結腸直腸がん、転移性頭頸部がん、転移性上皮卵巣がん、転移性上皮卵管がん、転移性上皮腹膜がん、転移性膀胱がん又は転移性前立腺がんに用いられる。いくつかの実施形態では、本組成物は、好ましくは、胃がん、肺がん、乳がん又は食道がんのために使用される。好ましくは、本組成物は、転移性胃がん、転移性肺がん、転移性乳がん又は転移性食道がんに使用される。
【0101】
本発明は更に、それぞれがEGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを含む2つ以上の結合部分を提供し、第1の当該結合部分は、HER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを含み、第2の当該結合部分は、がんの治療に使用するためのHER3の細胞外部分に結合する可変ドメインを含む。それぞれがEGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを含む2つ以上の結合部分を含む産物も提供され、第1の当該結合部分は、HER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを含み、第2の当該結合部分は、HER3の細胞外部分に結合する可変ドメインを、がんの処置における同時使用、個別的使用又は逐次使用のための組み合わせ調製物として含む。
【0102】
本発明の実施形態によって治療されるがんは、好ましくは、本明細書の他の箇所に示されるがんである。がんは、好ましくは、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)による治療に対して細胞を耐性にするEGFR変異を有する細胞を含む。いくつかの実施形態では、がんは、EGFR R521K多型を有する細胞を含む。本明細書に記載される本発明の治療されるがん及び治療方法は、好ましくは、胃がん、肺がん又は食道がんである。更なる実施形態では、本発明は、がんを有するか、又はがんの再発、再燃のリスクがある対象を治療する方法を提供し、当該方法は、それぞれがEGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを含む2つ以上の結合部分を、それを必要とする対象に投与することを含み、第1の当該結合部分が、HER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを含み、第2の当該結合部分が、HER3の細胞外部分に結合する可変ドメインを含む、組成物を提供する。
【0103】
本明細書で使用される場合、「対象」及び「患者」という用語は互換的に使用され、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、サル、ウシ、ウマ、ブタなどの哺乳動物(例えば、がんを有するヒト患者などの患者)を指す。
【0104】
本明細書で使用するとき、用語「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」、及び「治療(treatment)」という用語は、疾患に関連する症状、合併症、条件又は生化学的兆候の進行、発達、重症度又は再発を、逆転、緩和、回復、阻害、又は減速若しくは予防することを目的とする、実施される任意の種類の介入若しくは処理、又は活性剤若しくは活性剤の組み合わせを対象に投与することを指す。
【0105】
本明細書で使用される場合、「有効治療」又は「陽性治療反応」は、有益な効果、例えば、がんなどの疾患又は障害の少なくとも1つの症状の回復をもたらす治療を指す。有益な効果により、本方法による療法の開始前に行われた測定又は観察を超える改善などの、ベースラインを超える改善された状態を得ることができる。例えば、疾患の臨床的若しくは診断的症状の減少若しくは排除、又はがんのマーカーの減少若しくは排除によって証明されるように、有益な効果により、任意の臨床段階での対象におけるがんの進行を減速、安定化、停止、又は逆転させる状態を得ることができる。有効治療により、例えば、腫瘍サイズを減少、循環腫瘍細胞の存在を減少、腫瘍の転移を低減若しくは防止、腫瘍成長を減速若しくは阻止、及び/又は腫瘍の再発若しくは再燃を防止若しくは遅延させることができる。
【0106】
用語「有効量」又は「治療有効量」は、所望の生物学的、治療的、及び/又は予防的結果を提供する薬剤又は薬剤の組み合わせの量を指す。その結果は、疾患の1つ以上の徴候、症状、又は原因の低減、回復、緩解、減少、遅延、及び/又は緩和、あるいは生態系における他の所望の変化であり得る。いくつかの実施形態では、有効量は、腫瘍の発生を遅延させるのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、腫瘍再発を予防又は遅らせるのに十分な量である。有効量を1回以上の投与で投与することができる。本薬物又は本組成物の有効量は、(i)がん細胞の数を低減する;(ii)腫瘍のサイズを低減する;(iii)末梢器官へのがん細胞浸潤を、ある程度阻害、阻止、減速し、停止させ得る;(iv)腫瘍転移を阻害する;(v)腫瘍成長を阻害する;(vi)腫瘍の発生及び/又は再発を防止又は遅延させる;及び/又は(vii)がんに関連する1つ以上の症状をある程度和らげることができる。一例では、「有効量」は、がんの減少(例えば、がん細胞の数の減少)又はがんの進行の遅延をもたらすための本発明の組成物の量である。有効量の併用療法は、本明細書に記載の方法に従って、本明細書に示される結合部分の組み合わせを指す「有効レジメン」で投与され、投与の順序及び投与頻度は治療を行うのに十分である。
【0107】
本明細書で使用される場合、「シナジー」、「治療的相乗効果」、及び「相乗効果」という用語は、本明細書に示される結合部分の組み合わせ(例えば、EGFR及びHER2に結合する結合部分と、EGFR及びHER3に結合する結合部分とを含む組成物)を用いた患者の治療が、組み合わせの個々の構成要素がそれぞれ単独で使用された場合に達成される結果よりも治療上優れた結果を呈する現象を指す(例えば、T.H.Corbettら、1982、Cancer Treatment Reports、66、1187を参照されたい)。これに関連して、治療的に優れた結果には、以下のうちの1つ以上が含まれる。(a)本組み合わせと同じ用量での、それぞれの結合部分単独の個別の効果の合計よりも治療応答が増大すること;(b)治療有効性の減少を伴わないで、本組み合わせにおける1つ以上の薬剤の用量が低減されること;(c)本組み合わせと同じ用量での、各薬剤の単剤療法以上の治療効果を得つつ、有害事象の発生率が低下すること;(d)各薬剤の単剤療法よりも大きな治療効果を得つつ、用量制限毒性が低減されること;(e)薬物耐性の誘導が遅延又は最小化されること。
【0108】
異種移植モデルでは、その各構成要素が一般にその個々の最大耐量を超えない用量で存在する最大耐量で使用される組み合わせは、その組み合わせの投与によって達成される腫瘍成長の減少が、最良の構成要素が単独で投与された場合のその構成要素の腫瘍成長の減少の値よりも大きい場合に、治療的相乗効果が証明される。薬物の組み合わせの相乗作用は、例えば、Chou-Talalayの組み合わせ指数(CI)定理に従って決定することができる(Chouら、Adv.Enzyme Regul.1984;22:27-55;Chou,Cancer Res.2010;70(2):440-446)。
【0109】
本発明は更に、がんの治療に使用するための本発明の組成物を提供する。使用される実施形態は、好ましくは、胃がん、大腸がん、結腸がん、胃食道がん、食道がん、子宮内膜がん、卵巣がん、肝臓がん、非小細胞肺がんを含む肺がん、明細胞肉腫、唾液腺がん、頭頸部がん、脳がん、膀胱がん、膵臓がん、前立腺がん、腎臓がん、皮膚がん、黒色腫等を治療する。一実施形態では、実施形態は、胃がん、肺がん又は食道がんを治療する。その使用は、好ましくは、胃がんを治療する。
【0110】
本明細書に記載の発明は、好ましくは、細胞膜上のEGFR、HER2及び/又はHER3の存在について試験されるがんの治療に適用される。これは日常的な方法によって行うことができ、典型的には、免疫組織化学によって分析される。
【0111】
がんは、好ましくは、HER2を発現する。がんは、好ましくは、EGFR又はHER3も発現する。がんは、好ましくは、EGFRを発現する。がんは、好ましくは、HER2又はHER3も発現する。がんは、好ましくは、HER3を発現する。がんは、好ましくは、EGFR又はHER2も発現する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される本発明によって治療されるがんの細胞及び/又は間質細胞は、EGFRリガンド、若しくはHER3リガンド、又はその両方を発現する。したがって、リガンド及び受容体の発現は、がんの細胞に増殖刺激を提供し得る。本発明の組み合わせは、そのような細胞を含むがんを治療するのに特に適している。
【0112】
本発明の治療におけるEGFR、HER2及びHER3のうちの1つの発現は、少なくとも一部の腫瘍が逃れることを遅らせることができる。単一特異的療法で標的化される腫瘍は、別のEGFR、HER2又はHER3の発現を開始することによって、又は受容体に対するリガンドを発現することによって、治療から逃れることができる。
【0113】
そのような細胞は、それが発生する場合に、本発明の結合部分によっても攻撃されるので、それらが成長して多様化する前に除去することができる。一実施形態では、変異EGFRの存在についてがんを試験する。多くのEGFR陽性腫瘍は、細胞をチロシンキナーゼ阻害剤による治療に耐性にする遺伝子において変異を有する。
【0114】
本発明の組成物は、がん細胞をチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)による治療に対して耐性にするEGFR変異を用いてがんを治療するのに適している。一実施形態では、がんは、EGFR R521K多型を有する細胞を含む。いくつかの実施形態では、がんは、ゲフィチニブ及びエルロチニブなどの第1世代TKI阻害剤に耐性であることが知られている。
【0115】
本明細書に示されるがんの治療は、がんの更なる治療と組み合わせることができる。そのような治療は、抗体及び/又は細胞増殖抑制薬、又はプロテインキナーゼ阻害剤などの更なる結合部分を含み得る。プロテインキナーゼ阻害剤は、好ましくは、EGFR又はHER3チロシンキナーゼ阻害剤以外の阻害剤である。更なる治療の非限定的な例には、放射線療法、化学療法、手術、血管成長阻害療法、及び温熱療法が含まれる。
【0116】
本発明の組成物は、EGFR阻害に耐性があるがん(EGFR耐性は、HER2及び/又はHER3の過剰発現の結果である)の治療における使用に適し得る。
【0117】
本発明の組成物は、HER2阻害に耐性があるがん(HER2耐性は、EGFR及び/又はHER3の過剰発現の結果である)の治療における使用に適し得る。
【0118】
本発明の組成物は、HER3阻害に耐性があるがん(HER3耐性は、EGFR及び/又はHER2の過剰発現の結果である)の治療における使用に適し得る。
【0119】
本明細書に記載の抗体、結合部分、組成物又は製品の文脈における「Oligoclonics(登録商標)」という用語は、1つの調製物に、複数の、典型的には10以下の異なる抗体又は結合部分が存在していること(二重特異性の存在を含む)を指す。Oligoclonics(登録商標)の例には、2つの二重特異性抗体の組み合わせが含まれる。
【0120】
本発明は更に、EGFRの細胞外部分に結合する可変ドメイン及びHER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを含む結合部分又は二重特異性抗体を提供し、ここで、上記EFGR可変ドメインは、
図8の重鎖可変領域MF3755、MF4280、MF4003、若しくはMF4016のCDRを含む重鎖可変領域、又は、そのCDR中に、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含むそれらの変異体を含み、上記HER2可変ドメインは、重鎖可変領域MF2032若しくはMF1849のCDRを含む重鎖可変領域、又は、そのCDR中に1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含むそれらの変異体を含む。
【0121】
EGFRの細胞外部分に結合する可変ドメイン及びHER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを含む結合部分又は二重特異性抗体も提供され、ここで、上記EFGR可変ドメインは、
図8の重鎖可変領域MF3755のCDRを含む重鎖可変領域、又は、そのCDR中に、1、2、若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含むそれらの変異体を含み、上記HER2可変ドメインは、重鎖可変領域MF2032のCDRを含む重鎖可変領域、又は、そのCDR中に、1、2、若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含むそれらの変異体を含む。
【0122】
本発明は更に、EGFRの細胞外部分に結合する可変ドメイン及びHER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを含む結合部分又は二重特異性抗体を提供し、ここで、上記EFGR可変ドメインは、
図8の重鎖可変領域MF3755、MF4280、MF4003、又はMF4016のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、又は、そのCDR中に、1、2、若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含むそれらの変異体を含み、上記HER2可変ドメインは、重鎖可変領域MF2032、又はMF1849のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、又は、そのCDR中に、1、2、若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含むそれらの変異体を含む。
【0123】
本発明は更に、EGFRの細胞外部分に結合する可変ドメイン及びHER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを含む結合部分又は二重特異性抗体を提供し、ここで、上記EFGR可変ドメインは、
図8の重鎖可変領域MF3755のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、又は、そのCDR中に、1、2、若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含むそれらの変異体を含み、上記HER2可変ドメインは、重鎖可変領域MF2032のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、又は、そのCDR中に、1、2、若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含むそれらの変異体を含む。
【0124】
EGFRの細胞外部分に結合する可変ドメイン及びHER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを含む結合部分又は二重特異性抗体も提供され、ここで、上記EFGR可変ドメインは、
図8の重鎖可変領域MF3755のCDRを含む重鎖可変領域、又は、そのCDR中に、1、2、若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含むそれらの変異体を含み、上記HER2可変ドメインは、重鎖可変領域MF1849のCDRを含む重鎖可変領域、又は、そのCDR中に、1、2、若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含むそれらの変異体を含む。
【0125】
本発明は更に、EGFRの細胞外部分に結合する可変ドメイン及びHER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを含む結合部分又は二重特異性抗体を提供し、ここで、上記EFGR可変ドメインは、
図8の重鎖可変領域MF3755のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、又は、そのCDR中に、1、2、若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含むそれらの変異体を含み、上記HER2可変ドメインは、重鎖可変領域MF1849のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、又は、そのCDR中に、1、2、若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含むそれらの変異体を含む。
【0126】
明確さ及び簡潔な説明のために、特徴は本明細書では同じ又は別個の実施形態の一部として記載されているが、本発明の範囲は、記載される特徴の全て又は一部の組み合わせを有する実施形態を含んでもよいことが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【
図1】組成物が共通のアームを共有する2つの二重特異性抗体を含む実施形態の概略図。この図は、重鎖(1)及び軽鎖(4)を有する抗体を示す。4つの重鎖は、3つの異なる可変領域(5,6,7)を有する。共有可変領域(5)を有する重鎖は、ヘテロ二量体化ドメインの一部分(3)を有する。可変領域(6)及び(7)を有する重鎖は、ヘテロ二量体化ドメイン(2)の適合部分を有する。ヘテロ二量体化領域(2)及び(3)の好ましい対合によって、二重特異性抗体の形成を誘導することができる。
【
図2】増殖因子依存性細胞株BxPC-3-luc2(Perkin Elmer 125058)及びN87細胞(NCI-87細胞(ATCC(登録商標)CRL-5822(商標)))の増殖に対する2つのOligoclonics(登録商標)の阻害効果。 2つのOligoclonics(登録商標)を、BxPC-3-luc2(左側パネル)及びN87(右側パネル)の細胞増殖に対する効果について試験した。パネルスクリーニングの結果を、2つの単一特異性抗体の組み合わせ(EGFR結合抗体セツキシマブ及びHER3単一特異性抗体PG3178)又はEGFRxHER3結合二重特異性抗体PB4522と比較した。細胞を、飽和量のHRG及びEGFの存在下で増殖させた。HRG及びEGFを含む場合と抗体を含まない場合(基底w/リガンド)のそれぞれの細胞の細胞増殖のレベル、並びに、HRG及びEGFを含まない場合と抗体を含まない場合(w/oリガンド)の基底レベルが示される。 単一特異性抗体PG3178は、
図7又は
図8のMF3178の重鎖可変領域及び
図7の配列11の共通軽鎖可変領域を有するIgG1定常領域及び2つの可変ドメインを有する。 二重特異性抗体PB4522は、IgG1定常領域及び2つの可変ドメインを有する。HER3可変ドメインは、
図7又は
図8のMF3178の重鎖可変領域を有する。EGFR可変ドメインは、
図7又は
図8のMF4280の重鎖可変領域を有する。両方の抗体の軽鎖可変領域は同じであり、
図7の配列11の共通軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する)。
【
図3】Oligoclonics(登録商標)のパネルのADCC活性。Oligoclonics(登録商標)のパネルのADCC活性を、N87及びCD16/NFATレポーターアッセイを用いて試験した。二重特異性抗体は、IgG1定常領域及び2つの可変ドメインを有する。可変ドメインの重鎖可変領域のアミノ酸配列を
図7又は
図8に示す。抗体中の軽鎖可変領域は同じであり、
図7の配列11の共通軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する。
【
図4】様々なOligoclonics(登録商標)のナンバリング及び特異性、並びに、そのADCC活性。「-」は、活性が観察されなかったことを示す。 各行は、2つの二重特異性抗体を含むOligoclonics(登録商標)を表す。二重特異性抗体の内部コードを二重特異性1及び2の列に示す。HER2、HER3及びEGFR結合ドメインの重鎖可変領域を、MFA、MFB及びMFCと記された列に示す。MF番号3178及び2703は、共通軽鎖と組み合わせて、HER3結合可変ドメインを形成する。MF番号4280、3755、4003、4016は、共通軽鎖と組み合わせて、EGFR結合可変ドメインを形成し、MF番号1871、1847、1849及び2032は、共通軽鎖と組み合わせて、HER2結合可変ドメインを形成する。二重特異性抗体は、IgG1定常領域及び2つの可変ドメインを有する。可変ドメインの重鎖可変領域のアミノ酸配列を
図7又は
図8に示す。抗体中の軽鎖可変領域は同じであり、
図7の配列11の共通軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する。
【
図5】Oligoclonics(登録商標)のインビボ試験。0日目に、BxPC-3-luc2細胞、又はN87細胞を異種移植モデルに注入した。二重特異性抗体PB4516×PB6892(
図4参照)を含むOligoclonics(登録商標)、又はコントロールを、1、7、14、21及び28日目に注入した。抗体を25mg/kgの用量で腹腔内注入した。Oligoclonics(登録商標)(PB4516及びPB6892)の結果を示す。ビヒクル及びセツキシマブをコントロールとして用いた。
【
図6A】様々なPDXモデルにおける二重特異性抗体PB4516及びPB6892を含むOligoclonics(登録商標)のインビボ試験。 PDXモデルに0日目に注入し、抗体又はコントロールによる処置を1、7、14、21及び28日目に行った。抗体を25mg/kgの用量で腹腔内注入した。
【
図6B】様々なPDXモデルにおける二重特異性抗体PB4516及びPB6892を含むOligoclonics(登録商標)のインビボ試験。 PDXモデルに0日目に注入し、抗体又はコントロールによる処置を1、7、14、21及び28日目に行った。抗体を25mg/kgの用量で腹腔内注入した。
【
図6C】様々なPDXモデルにおける二重特異性抗体PB4516及びPB6892を含むOligoclonics(登録商標)のインビボ試験。 PDXモデルに0日目に注入し、抗体又はコントロールによる処置を1、7、14、21及び28日目に行った。抗体を25mg/kgの用量で腹腔内注入した。
【
図6D】様々なPDXモデルにおける二重特異性抗体PB4516及びPB6892を含むOligoclonics(登録商標)のインビボ試験。 PDXモデルに0日目に注入し、抗体又はコントロールによる処置を1、7、14、21及び28日目に行った。抗体を25mg/kgの用量で腹腔内注入した。
【
図6E】様々なPDXモデルにおける二重特異性抗体PB4516及びPB6892を含むOligoclonics(登録商標)のインビボ試験。 PDXモデルに0日目に注入し、抗体又はコントロールによる処置を1、7、14、21及び28日目に行った。抗体を25mg/kgの用量で腹腔内注入した。
【
図6F】様々なPDXモデルにおける二重特異性抗体PB4516及びPB6892を含むOligoclonics(登録商標)のインビボ試験。 PDXモデルに0日目に注入し、抗体又はコントロールによる処置を1、7、14、21及び28日目に行った。抗体を25mg/kgの用量で腹腔内注入した。
【
図6G】様々なPDXモデルにおける二重特異性抗体PB4516及びPB6892を含むOligoclonics(登録商標)のインビボ試験。 PDXモデルに0日目に注入し、抗体又はコントロールによる処置を1、7、14、21及び28日目に行った。抗体を25mg/kgの用量で腹腔内注入した。
【
図6H】様々なPDXモデルにおける二重特異性抗体PB4516及びPB6892を含むOligoclonics(登録商標)のインビボ試験。 PDXモデルに0日目に注入し、抗体又はコントロールによる処置を1、7、14、21及び28日目に行った。抗体を25mg/kgの用量で腹腔内注入した。
【
図6I】様々なPDXモデルにおける二重特異性抗体PB4516及びPB6892を含むOligoclonics(登録商標)のインビボ試験。 PDXモデルに0日目に注入し、抗体又はコントロールによる処置を1、7、14、21及び28日目に行った。抗体を25mg/kgの用量で腹腔内注入した。
【
図7】MF番号によって示される様々な可変ドメインの重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号1~6を参照のこと)、並びにCDR及び軽鎖可変領域(配列番号7~12を参照のこと)。
【
図8】本明細書で言及される様々なMFのアミノ酸配列。FR1-4は、フレームワーク領域1~4を指す。CDR1-3は、相補性決定領域1~3を指す。TTは、破傷風トキソイドである。
【
図9A】灰色の球における残基Arg426、及び黒い球におけるArg426から半径11.2Å以内の残基を示すHER3結晶構造(PDB番号4P59)。図及び分析は、Yasara(www.yasara.org)を用いて行った。
【
図9B】残基Arg426、及び黒色で示されるArg426から11.2Å半径内に灰色で示される離れた残基。図及び分析は、Yasara(www.yasara.org)を用いて行った。
【
図9C】領域Arg426中の明るい灰色の残基、及び、周囲の暗い灰色の残基(全て標識されている)。図及び分析は、Yasara(www.yasara.org)を用いて行った。
【発明を実施するための形態】
【0128】
実施例
細胞株
Hek293細胞、NCI-87細胞(ATCC(登録商標)CRL-5822(商標)、BxPC-3(ATCC CRL-1687)、BxPC-3-luc2及びCHO-K1を、10%熱不活化ウシ胎児血清(FBS)を補充した増殖培地において維持した。
【0129】
二重特異性抗体の作製
効率的なヘテロ二量体化及び二重特異性抗体の形成のために上記のDEKK CH3技術を使用して二重特異性抗体を作製した。CH3技術は、以前に記載されたように(国際公開第2013/157954号明細書)、2つの異なる重鎖分子の効率的な対合を可能にするためにCH3領域における電荷に基づく点突然変異を使用する。
【0130】
VH遺伝子を2つの異なる主鎖IgG1ベクターのうちの1つにクローニングした。結合パートナーに応じて、VHを、ヘテロ二量体化変異体「DE」を有するCH3変異体を含むIgG1骨格、又は、相補的CH3ヘテロ二量体化変異体「KK」を含むIgG1骨格にクローニングした。2つ以上の抗体が重鎖を共有する二重特異性抗体又は多重特異性抗体の場合。その共有される鎖は、好ましくは、CH3ヘテロ二量体化変異体「DE」(DE重鎖とも呼ばれる)を有し、2つ以上の固有の重鎖はCH3ヘテロ二量体化変異体「KK」(KK重鎖とも呼ばれる)を有する。
【0131】
接着性Hek293細胞を6ウェルプレートで80%の培養密度になるまで培養した。細胞をDNA-FUGENE混合物で一過性トランスフェクションを行い、更に培養した。トランスフェクションの7日後、上清を回収し、培地をリフレッシュした。トランスフェクションの14日後、上清を合わせ、0.22μMで濾過した。滅菌上清を4℃で保存した。懸濁液に適合させたHek293細胞を、3.0×10e6細胞/mlの密度になるまでT125フラスコ中でシェーカープラトーで培養した。細胞を、0.3~0.5×10e6生存細胞/mlの密度で24ディープウェルプレートの各ウェルに播種した。細胞を個々の滅菌DNA:PEl-MIXで一過性トランスフェクションを行い、更に培養した。トランスフェクションの7日後、上清を回収し、0.22μMで濾過した。滅菌上清を4℃で保存した。
【0132】
2つの二重特異性抗体を共発現する安定な細胞株プールの作製
CHO細胞に、3つの重鎖構築物と1つの共通軽鎖構築物を、共通軽鎖構築物(cLC):EGFR重鎖:HER2重鎖:HER3重鎖=2.5:2:1:1のモル比でトランスフェクトした。安定にトランスフェクトされた細胞の10個のプールを得た(A~J)。抗EGFR抗体、抗HER2抗体、及び抗HER3抗体のELISA分析を、10個のプールの3日目及び6日目の上清について行った。全てのプールで、3つ全ての特異性を検出することができた。
【0133】
上記プールを半固体培地にプレーティングすることによって、2つの二重特異性抗体を共発現する安定な細胞株クローンを作製した。プレーティングした細胞を7~10日間増殖させた。2回の単一細胞クローニングを、単一コロニーの播種及び選別によって行った。Oligoclonicsは、フェッドバッチ発酵によって単一細胞から産生された。
【0134】
抗体価の測定
細胞上清を、総IgG濃度に基づいてPBS中で1:4及び1:50に希釈した。3種全ての抗体の存在を検出するために、単一抗原ELISAを最初に行った。以下の抗原を、2.5μg/ml希釈で使用して、ELISAプレートのウェルをコーティングした:組換えヒトEGFR-ECDFc(R&D Systems,344-ER)、組換えヒトErbB2-ECDFc(R&D Systems,1129-ER)、及び組換えヒトErbB3-ECDFc(R&D Systems,348-ER)。
【0135】
次いで、2つのサンドイッチELISAを行って、2つの二重特異性分子を検出及び定量し、2つの二重特異性間の比の推定を可能にした。EGFRxHER2二重特異性の検出のために、EGFR-Fc(R&D Systems,344-ER)抗原をウェル上にコーティングし、ErbB2-Fc(R&D Systems,1129-ER)で検出した。EGFRxHER3二重特異性の検出のために、EGFR-Fc抗原をウェル上にコーティングし、ErbB3-Fc(R&D Systems,348-RB)で検出した。
【0136】
IgG精製
IgGの精製は、アフィニティークロマトグラフィーを用いて行った。精製は、真空濾過を用いて滅菌条件下で行った。最初に培地のpHをpH8.0に調整し、続いて、産生物をプロテインA Sepharose CL-4Bビーズ(50%v/v)(Pierce)と共に25℃、600rpmの振盪プラットフォームで2時間インキュベートした。次に、ビーズを真空濾過によって回収した。ビーズをPBS pH7.4で2回洗浄した。IgGを0.1Mクエン酸緩衝液を用いてpH3.0で溶出し、IgG画分をトリスpH8.0によって直ちに中和した。Ultracel(Millipore)を用いた遠心分離により緩衝液交換を行った。試料は最終的にpH7.4の最終緩衝液(PBS)になった。
【0137】
カチオン交換クロマトグラフィー(CIEX)
CEX-HPLCクロマトグラフィーは、イオン交換カラムのTSKgel SP-STAT(粒径7μm、内径4.6mm×長さ10cm、東ソー21964)シリーズを使用して行った。カラムには、生体分子の高速かつ高分解能の分析及び単離のために非多孔質樹脂粒子を充填する。TSKgel STATカラム内の粒子は、ローディング容量のために多層イオン交換基のオープンアクセスネットワークを含むが、粒径が比較的大きいために、これらのカラムはHPLC及びFPLCシステムに適している。
【0138】
TSKgel SP-STAT(粒径7μm、内径4.6mm×長さ10cm、東ソー21964)を緩衝液A(リン酸ナトリウム緩衝液、25mM、pH6.0)を用いて平衡化し、その後、塩濃度を増加させ、緩衝液B(25mMリン酸ナトリウム、1mMNaCl、pH6.0)の勾配を実行することによって抗体をカラムから移動させる。流速は0.5mL/分に設定した。全ての試験試料及びコントロール(PBS中)の注入試料質量は10μgであり、注入体積は10~100μlであった。クロマトグラムを、220nmの結果に基づき、観察された主要なピークのピークパターン、保持時間、及びピーク面積について分析する。
【0139】
BxPC-3-luc2及びN87増殖阻害アッセイ
抗体組成物を全抗体の濃度範囲で試験した。抗体を、重量あたりの等量の重量に基づいて2つずつプールした。HRG及びEGFを培養物に添加し、BxPC3-luc2細胞については、0.1ng/mlのEGF及び10ng/mlのHRGを添加し、あるいは、N87細胞については、0.1ng/mlのEGF及び1ng/mlのHRGを添加した。基底w/リガンドは、抗体を含まないが、それぞれの成長因子を含むコントロールであった。基底w/oリガンドは、示された増殖因子を含まず、かつ、抗体を含まないコントロールであった。
【0140】
抗体を合成飢餓培地(CDS:80Uペニシリン及び80μgストレプトマイシン/ml、0.05%(w/v)BSA及び10μg/mlホロトランスフェリンを含有するRPMI1640培地)で希釈し、50μlの希釈抗体を96ウェル黒色ウェル透明底プレート(Costar)のウェルに添加した。リガンドを添加した(CDSで希釈した、40ng/ml又は4ng/mlのHRG、及び400ng/mlのEGF、すなわち、R&D systems、cat.nr.396-HB及び236-EG、を含有するストック溶液50μl/ウェル)。プレートを室温で1時間放置した後、37℃細胞培養インキュベーター内の容器に3日間(N87細胞)又は4日間(BxPC-3-luc2細胞)入れた。4日目に、Alamar blue(Invitrogen、番号DAL1100)を加え(20μl/ウェル)、Alamar blueと(37℃で)6時間(N87細胞)又は4時間(BxPC-3-luc2細胞)インキュベートした後に、Biotek Synergy 2マルチモードマイクロプレートリーダーで560nm励起及び590nm読み出しを用いて蛍光を測定した。蛍光値を非阻害増殖(抗体なし、ただし、両方のリガンドが添加された)に対して正規化した。
【0141】
様々なOligoclonics(登録商標)のADCC活性
ADCCレポーターバイオアッセイ(Promega)を使用した。2つの異なる細胞株、EGFR発現膵臓がん細胞株BxPC3及び胃がんN87細胞株を試験した。
【0142】
バイオアッセイは、FcγRIIIa受容体V158(高親和性)変異体、及び、FcγR活性化の尺度であるホタルルシフェラーゼの発現を駆動するNFAT応答エレメントのいずれかを安定的に発現する、操作されたJurkat細胞を使用する。アッセイは、このADCCレポーターバイオアッセイで得られたデータを標準的な51Cr放出アッセイと比較することによって検証され、両方のアッセイは同様の結果をもたらす。ADCCアッセイは、384白色ウェルプレートを用いるPromega ADCC Bioassayキットを使用して実施した。この実験の設定では、バイオアッセイの20~24時間前に、BxPC3細胞及びN87細胞を1000細胞/ウェルの密度で30μlのアッセイ培地(4%低IgG血清を含むRPMI)にプレーティングした。翌日に、培地を除去した。次に、Oligoclonics(登録商標)の段階希釈液と比較抗体セツキシマブを2連で調製した。10μlのこれらの抗体希釈液をウェルに添加した。抗体を含まないコントロールウェルも含めた(基底)。抗体の出発濃度から5倍の段階希釈を行って、用量応答曲線を得た。最後に、5μLのADCC Bioassay effector cells(15000細胞/ウェル、V158)を加えた。細胞を37℃で6時間インキュベートした。次に、15μlのBIO-Gloルシフェラーゼ基質を加え、5分後にプレートリーダーで発光を検出した。得られたデータを
図3に示す。セツキシマブは、BxPC3細胞及びN87細胞に対してADCC活性を示した。様々なオリゴクロニック抗体もまた、BxPC3細胞及び/又はN87細胞に対してADCC活性を示した。
【0143】
BxPC-3-luc2腫瘍(同所移植)及びN87腫瘍(側腹部に移植された胃細胞)の増殖に対する、二重特異性抗体PB4516及びPB6892を含むOligoclonics(登録商標)の効果についての試験
【0144】
試験開始時において8~10週齢のCB17 SCID雌性マウスの膵臓に、20μl中の1×10e6BxPC-3-luc2腫瘍細胞を同所移植した。マウスを麻酔し、右側に横臥させて左側を露出させ、左側腹部領域を0.5cm切開する。膵臓及び脾臓を摘出し、20μl中1×10e6個の腫瘍細胞を膵尾の被膜下空間に注入した。移植の1週間後、生物発光(BLI)データを生成した。左側面図をイメージングするBLI(週に1回又は2回)では、全ての注入を受けるマウスのイメージングの15分前に、全てのマウスに、150mg/kgのルシフェリン(D-ルシフェリン-EFカリウム塩、カタログ番号E6552、Promega)を腹腔内注入した。BLI/腫瘍体積に基づいて外れ値の動物を除去し、マウスをそれぞれ7匹のマウスの群に無作為に振り分けた。実験8日目に、処置を開始した。
【0145】
抗体処置群の動物に、0.3mg/kgの抗体を4週間連続して毎週投与した(0、7、14及び21日目)。処置の0日目に、動物は、負荷用量の2倍、すなわち、0.6mg/kgの抗体を受ける。最後のイメージングを35日目又は40日目に行った。ビヒクルのみ処置群及びセツキシマブ処置群をコントロールとした。
【0146】
セツキシマブ及びオリゴクロニックは、モデルにおいてBxPC-3腫瘍の増殖を有意に減少させる(p<0.05)(
図5)。Oligoclonics(登録商標)PB4516及びPB6892による腫瘍増殖は、セツキシマブよりも顕著に小さかった。セツキシマブは、N87細胞の増殖を有意に減少させなかった。Oligoclonics(登録商標)は、モデルにおいてN87腫瘍の増殖を有意に減少させた(p<0.05)(
図5)。
【0147】
N87腫瘍:
試験開始時において8~12週齢のCB17SCID雌マウスの脇腹に、50%マトリゲルsc中の1×10e7N87腫瘍細胞を接種した。細胞注入量は0.2mL/マウスとした。腫瘍が150~200mm3の平均サイズに達したときに処置を開始した。抗体をマウス1kg当たり25mgで腹腔内注入によって4週間にわたって週に1回投与した。体重を、腫瘍細胞注入後は、1週間に1回測定し、処置開始から最後までは隔週で測定した。腫瘍の成長をカリパス測定によって隔週でモニターした。実験の終点は、800mm3又は60日のどちらか早い方の腫瘍体積とした。
【0148】
様々なPDXモデルにおけるOligoclonics(登録商標)PB11244及びPB4516の活性
二重特異性抗体PB11244及びPB4516を含むOligoclonics(登録商標)の活性を、一連のPDXモデルにおいて評価した。多数のがんモデルにおける候補治療薬の試験は、臨床的有効性の予測を容易にし、患者選択戦略のための因子を特定することができる。
【0149】
二重特異性抗体PB4516及びPB11244は、IgG1定常領域及び2つの可変ドメインを有する。
【0150】
PB4516のHER3可変ドメインは、
図7又は
図8のMF3178の重鎖可変領域を有する。EGFR可変ドメインは、
図7又は
図8のMF3755の重鎖可変領域を有する。
【0151】
PB11244のHER2可変ドメインは、
図7又は
図8のMF2032の重鎖可変領域を有する。EGFR可変ドメインは、
図7又は
図8のMF3755の重鎖可変領域を有する。
【0152】
両方の抗体の軽鎖可変領域は同じであり、
図7の配列番号11の共通軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有していた。)
【0153】
いくつかの胃がん、食道がん、及び非小細胞肺がんのPDXモデルを選択した(
図6)。
【0154】
二重特異性抗体PB4516及びPB11244を含むOligoclonics(登録商標)を作製し、精製した。これらの抗体を1:1の比で混合した。Oligoclonics(登録商標)をモデルで試験し、セツキシマブ及びビヒクル(PBS)と比較した。
【0155】
PDXモデルは、まず、ドナーBALB/cヌードマウスの皮下(s.c.)に拡がった。腫瘍を摘出し、小片(直径2~3mm)に切断し、新しいアクセプターBALB/cヌードマウスに皮下移植した。腫瘍のレシピエントは、6~8週齢の雌BALB/cヌードマウスであった。腫瘍が100~200mm3の平均サイズに達するまでカリパス測定により腫瘍の成長を観察した。1日目として示されるこの段階で、動物を各モデルについて3つの群に無作為に分けた。処置は、同日に開始され、
PB4516×PB689225mg/kg、毎週5回の投与、腹腔内注入
セツキシマブ25mg/kg、毎週5回、腹腔内注入
ビヒクル(PBS)、毎週5回投与、腹腔内注入、を含んだ。
【0156】
Oligoclonics(登録商標)は、モデルにおいて腫瘍細胞の増殖を有意に減少させたことが分かる。増殖の減少は、セツキシマブと同等又はより良好であった。
【0157】
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-01-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上の結合部分を含む組成物であって、
前記結合部分の各々が、EGFRの細胞外部分に結合する可変ドメインを含み、
第1の前記結合部分が、HER2の細胞外部分に結合する可変ドメインを含み、第2の前記結合部分が、HER3の細胞外部分に結合する可変ドメインを含む、組成物。
【外国語明細書】