IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ベー.エル.アー.ハー.エム.エス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧 ▶ フンダシオン インスティテュート デ エストゥディオス デ シエンシアス デ ラ サルード デ カスティーリャ イ レオンの特許一覧

特開2024-23615感染性疾患の症状を有する患者において入院を必要とする病状のリスクを予測するためのPRO-ADM
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023615
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】感染性疾患の症状を有する患者において入院を必要とする病状のリスクを予測するためのPRO-ADM
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
G01N33/68
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023208353
(22)【出願日】2023-12-11
(62)【分割の表示】P 2021506950の分割
【原出願日】2019-08-08
(31)【優先権主張番号】18188098.0
(32)【優先日】2018-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18200907.6
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】508093584
【氏名又は名称】ベー.エル.アー.ハー.エム.エス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(71)【出願人】
【識別番号】521320988
【氏名又は名称】フンダシオン インスティテュート デ エストゥディオス デ シエンシアス デ ラ サルード デ カスティーリャ イ レオン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン ダライアス
(72)【発明者】
【氏名】ベルメホ マルティン ヘスス フランシスコ
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア オルティーズ ルイス
(72)【発明者】
【氏名】エレロ ロドリゲス カルメン
(57)【要約】
【課題】感染性疾患の症状を有する患者における療法指導のための手段の提供。
【解決手段】本発明は、疾患進行の予後診断を含む、感染性疾患の症状を有する患者における療法指導、層別化、および/または制御のための方法に関し、本方法は、当該患者からの試料を提供することと、当該試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルを決定することと、を含み、当該試料中のproADMレベルまたはその一以上の断片の低リスクレベルが、患者が、入院を必要とする状態への疾患進行のリスクがないことを示し、かつ/または当該試料中のproADMレベルまたはその一以上の断片の高リスクレベルが、患者が入院を必要とする状態への疾患進行のリスクがあることを示す。本発明はさらに、本方法を実行するための試験キットに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾患進行の予後診断を含む、感染性疾患の症状を有する患者における療法指導、層別化、および/または制御のための方法であって、
-前記患者からの試料を提供することと、
-前記試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルを決定することと、を含み、
-前記試料中のproADMレベルまたはその一以上の断片の低リスクレベルが、前記患者が、入院を必要とする状態への疾患進行のリスクがないことを示し、前記低リスクレベルが、1.2nmol/L±20%以下であり、かつ/または
-前記試料中のproADMレベルまたはその一以上の断片の高リスクレベルが、前記患者が入院を必要とする状態への疾患進行のリスクがあることを示し、前記高リスクレベルが、1.2nmol/L±20%超である、前記方法。
【請求項2】
感染性疾患の症状の発生後に前記患者と相談する最初の医療従事者によって得られた試料において、proADMまたはその一以上の断片の前記レベルが決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
試料提供時に、前記患者が、0または1のqSOFAスコアに相当する感染性疾患の軽度の症状を示す、請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
試料提供時に、前記患者が、前記患者において血流感染症、敗血症、重度敗血症、および/または敗血症性ショックの臨床症状を示さない、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
0.7nmL±20%~1.2nmol/L±20%である前記試料中のproADMまたはその一以上の断片の前記レベルが、疾患の存在を示し、かつ前記患者が、入院を必要とする状態への疾患進行のリスクがないことを示す、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
proADMまたはその断片の高リスクレベルが、前記患者が48時間以内、24時間以内、好ましくは12時間以内に生命を脅かす状態への疾患進行のリスクがあることを示し、proADMの低リスクレベルが、前記患者が48時間以内、24時間以内、好ましくは12時間以内に生命を脅かす状態への疾患進行のリスクがないことを示す、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記試料中のproADMまたはその一以上の断片の前記レベルが、入院を必要とする前記患者における血流感染症、敗血症、重症敗血症、および/または敗血症性ショックの発症のリスクを示す、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
そのproADMの高リスクレベルが、前記患者が48時間以内、24時間以内、好ましくは12時間以内に入院を必要とする血流感染症、敗血症、重症敗血症、および/または敗血症性ショックを発症するリスクがあることを示し、proADMの低リスクレベルが、前記患者が48時間以内、24時間以内、好ましくは12時間以内に血流感染症、敗血症、重症敗血症、および/または敗血症性ショックを発症するリスクがないことを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記試料中のproADMまたはその一以上の断片の前記レベルが、前記患者が頻繁なモニタリングおよび/または救命救急治療を必要とすることを示す、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
-感染性疾患を有することが疑われる前記患者の少なくとも1つの臨床スコア、好ましくはNEWSスコアを決定することをさらに含み、
-前記少なくとも1つの臨床スコアおよびproADMまたはその一以上の断片の前記レベルが、前記感染性疾患の存在を示し、かつ前記患者が入院を必要とする状態への疾患進行のリスクがあるかどうかを示す、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記感染性疾患が、呼吸器感染性疾患、尿路感染性疾患、皮膚感染性疾患、または腹部感染性疾患である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
proADMまたはその一以上の断片のレベルを決定することが、前記試料中のMR-proADMのレベルを決定することを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記試料が、全血試料、血清試料、もしくは血漿試料などの血液試料、および/または尿試料からなる群から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記試料が、前記症状が決定されてから24時間以内、6時間以内、2時間以内、1時間以内、より好ましくは30分以内または15分以内に前記患者から単離される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
a.前記患者からの試料中の少なくとも1つの追加のバイオマーカーまたはその一以上の断片のレベルを決定することをさらに含み、前記少なくとも1つの追加のバイオマーカーが、好ましくはPCTまたはその一以上の断片であり、かつ
b.前記少なくとも1つの追加のバイオマーカーの前記レベルが、抗感染剤、好ましくは抗生物質または有糸分裂阻害剤による治療の開始を示す、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの追加のバイオマーカーが、PCTまたはその一以上の断片であり、0,25ng/mLを超える、好ましくは0.5ng/mLを超えるPCTまたはその一以上の断片のレベルが、抗感染剤、好ましくは抗生物質または有糸分裂阻害剤による治療の開始を示す、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の方法を実行するためのキットであって、
a.患者からの試料中のproADMもしくはその一以上の断片のレベルを決定するための検出試薬と、
b.入院を必要とする状態への疾患進行が起こるかどうかに関する患者のリスクに関する参照データ、特にリスク閾値またはカットオフ値に関する参照データであって、当該参照データが、好ましくは、コンピュータ可読媒体に記憶され、かつ/またはproADMもしくはその一以上の断片の決定されたレベルを、リスク閾値またはカットオフ値と比較するために構成されたコンピュータ実行可能コードの形態で用いられる、前記参照データとを含み、
c.任意選択的に、患者からの試料中の少なくとも1つの追加のバイオマーカーまたはその一以上の断片、好ましくはPCTのレベルを決定するための検出試薬、および前記少なくとも1つの追加のバイオマーカー、好ましくはPCTの、リスク閾値もしくはカットオフ値の参照レベルなどに関する参照データであって、前記参照データが、好ましくは、コンピュータ可読媒体に記憶され、かつ/または前記少なくとも1つの追加のバイオマーカーもしくは断片(複数可)の前記決定されたレベルを、前記閾値もしくはカットオフ値と比較するために構成されたコンピュータ実行可能コードの形態で用いられる、検出試薬と、を含んでもよい、前記キット。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
説明
本発明は、疾患進行の予後診断を含む、感染性疾患の症状を有する患者における療法指導、層別化、および/または制御のための方法に関し、本方法は、当該患者からの試料を提供することと、当該試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルを決定することと、を含み、当該試料中のproADMレベルまたはその一以上の断片の低リスクレベルが、患者が、入院を必要とする状態への疾患進行のリスクがないことを示し、当該低リスクレベルは、好ましくは、1.2nmol/L±20%以下であり、かつ/または当該試料中のproADMレベルまたはその一以上の断片の高リスクレベルが、患者が入院を必要とする状態への疾患進行のリスクがあることを示し、当該高リスクレベルは、好ましくは、1.2nmol/L±20%超である。本発明はさらに、本方法を実行するための試験キットに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの患者は、感染症で一般開業医(GP)を訪れ、経口抗生物質の有無にかかわらず帰宅する。しかしながら、少数のこれらの患者は、根底にある感染がより重大である場合、急速に悪化する可能性がある。この現象、すなわち、患者が軽度の症状でGPを訪れ、帰宅し、その後潜在的な致命的な感染症を発症することは、一般メディアで定期的に見られる。症状が悪化した後、これらの患者は救急診療部(ED)に行き、感染の進行により治療が困難である。
【0003】
したがって、多くのGPは、慎重過ぎるくらい慎重になり、臨床的徴候および症状のみに基づいて非常に多くの患者を病院に送る。これらの患者の大多数は実際に入院する必要がないため、これにより病院に不必要な負担がかかる。EDの入院を減らすための重要な要素の1つは、感染が重症でない場合、GPから紹介された患者も含めて、まず第1に患者がEDを訪れるのを実際に止めることである。
【0004】
したがって、感染性疾患の症状を有する患者、特に比較的軽度の症状を有する、一般開業医を訪れる患者を適切に治療する分野において必要性が存在する。したがって、このような症状を有する患者における療法指導、層別化、および/または制御、特に治療のタイミングに関して、いつおよびどのレベルまでの強度治療を開始するべきか、例えば入院が必要かどうかを正確に評価することの必要性は明らかである。加えて、初期だが脅威ではない症状に基づく不必要な入院を減らすための手段の必要性が存在する。
【0005】
proADMの採用は、このような手段、特に中間領域プロアドレノメジュリン(MR-proADM)を代表するものである。
【0006】
本明細書に開示されるデータは、proADMが、入院が必要かどうかに関する効果的な予後報告を可能にし、それによって感染性疾患の症状を有する患者における療法指導のための効果的な手段を提供することを実証する。
【発明の概要】
【0007】
従来技術における困難に照らして、本発明の根底にある技術的問題は、感染性疾患の症状を有する患者における療法指導のための手段の提供である。特に、本発明の根底にある1つの技術的問題は、一般医療開業医などのプライマリヘルスケア供給者によって実行される単純なアッセイに基づいて、感染性疾患の症状を有する患者に入院が必要かどうかを決定するための手段の提供である。
【0008】
したがって、本発明は、患者からの試料において決定されたアドレノメジュリン(ADM)レベル、特にproADMまたはMR-proADMに基づいた、感染性疾患の症状を有する患者の診断、予後診断、予測、リスク評価および/もしくはリスク層別化、または療法指導、層別化、および/もしくは制御のための方法、キット、およびさらなる手段に関する。
【0009】
したがって、本発明の1つの目的は、入院を必要とする可能性が高いか、またはそのリスクが高い(すなわち、病院で提供される集中治療を必要とするリスクが高い)患者と、このような治療を必要とするリスクが低い患者とを区別するためのバイオマーカーまたはバイオマーカーの組み合わせの使用である。
【0010】
本発明の技術的問題の解決策は、独立請求項に提供されている。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に提供されている。
【0011】
したがって、本発明は、疾患進行の予後診断を含む、感染性疾患の症状を有する患者における療法指導、層別化、および/または制御のための方法に関し、本方法は、
-前記患者からの試料を提供することと、
-前記試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルを決定することと、を含み、
-当該試料中のproADMレベルまたはその一以上の断片の低リスクレベルは、患者が、入院を必要とする状態への疾患進行のリスクがないことを示し、当該低リスクレベルは、1.2nmol/L±20%以下であり、かつ/または
-当該試料中のproADMレベルまたはその一以上の断片の高リスクレベルは、患者が入院を必要とする状態への疾患進行のリスクがあることを示し、当該高リスクレベルは、1.2nmol/L±20%超である。
【0012】
これは、1.2nmol/L±20%以上のproADMのカットオフ値(好ましくは、MR-proADMのイムノアッセイを使用)が、患者が病状の悪化を経験する可能性が高く、そのため入院が必要であることを確実に示すことができるという驚くべき発見を表す。プライマリヘルスケア供給者のproADM評価および入院頻度との比較に基づく以下に記載されるような研究は、当該技術分野でこれまで記載されていない。そのため、本明細書に記載の予後報告は、プライマリケアおよび/または病院環境における感染性疾患の予後診断および患者管理の分野における驚くべき有益な発見を表すように思われる。
【0013】
「患者が入院を必要とする状態への疾患進行のリスクがある、またはないことを示す」という用語は、いくつかの実施形態では、患者の状態の悪化の予後診断に関する。いくつかの実施形態では、この用語は、病院でのみ、または病院で主に利用可能である特定の治療が必要であるかどうかの予後診断に関する。いくつかの実施形態では、この用語は、疾患帰結の予後診断に関する。proADMは、いくつかの病状の疾患帰結を予測することが知られているが、本発明は、潜在的な入院を予測する文脈において従来技術に由来しないか、またはこれまでに示唆されなかったであろうプライマリケアシナリオ、特定の患者群に適用可能な特定のカットオフ値を提示する。
【0014】
いくつかの実施形態では、病院で一般的に受けられる治療は、局所および/または経口抗生物質投与を除く治療に関する。病院で一般的に受けられる治療の例は、抗生物質の静脈内投与、または輸液管理、輸液蘇生、補液、および/もしくは輸液再分配(コロイドおよび/または晶質液など)などの他の輸液療法、または輸血にさらに関する。病院で主に利用可能な他の治療は、腎代替療法(RRT)、人工的および機械的換気、手術、または病巣洗浄などの洗浄手順であるが、これらに限定されない。
【0015】
「入院(hospitalization)」という用語は、好ましくは、いくつかの実施形態では、入院(hospital admission)を指す。これは、病院に紹介され、評価され、その後解放される(帰宅する)こととは異なる。入院は、好ましくは、救急室、病棟、集中治療室、または病院もしくは診療所の他の領域にあるかどうかにかかわらず、病院内での患者の病状の制御の維持および/または評価を指す。入院は、好ましくは、いくつかの実施形態では、モニタリングのための患者の一晩の入院に関する。
【0016】
実施形態では、本発明の方法は、proADMの高リスクレベルが決定された場合、患者を入院させるステップを含む。本発明の実施形態では、患者を入院させることは、病状または健康状態の制御の維持および/もしくは評価、ならびに/または患者の健康状態の変化および/もしくは医療的治療のモニタリングのために、好ましくは数時間、例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、15、18、または24時間以上、患者を病院または診療所または同様の医療機関に入院させることを指す。
【0017】
本発明の方法は、最先端の既知の方法と比較して、重要な驚くべき進歩を表す。敗血症患者におけるバイオマーカーとしてのproADMのレベルを決定することは記載されているが、感染性疾患に罹患していることが疑われる患者において、このような患者が入院を必要とするかどうかを決定するために、療法指導、層別化、および/または制御のための方法におけるマーカーとしてのproADMの使用に関する開示は以前にない。特に、本発明の方法は、患者が入院すべきかどうかを示すことに対して決定的であり、この意思決定過程の文脈においてこれまでに開示されていない、proADMまたはその一以上の断片の高リスクレベルを定義する。本発明は、感染性疾患の軽度の症状を示す、および/または敗血症もしくは血流感染症(blood stream infection)の症状を示さない可能性がある患者に特に有用である。本発明の方法はまた、感染症に対する患者の免疫系および/または防御に影響を及ぼし得る血液障害または他の障害に罹患していない患者に特に有用であり、これらの患者は、例えば、感染性疾患の軽度の症状のみを示す可能性がある。
【0018】
一実施形態では、proADMまたはその一以上の断片のレベルは、感染性疾患の症状の発生後に患者と相談する最初の医療従事者によって得られた試料において決定される。
【0019】
本発明の実施形態では、「感染性疾患の症状の発生後に患者と相談する最初の医療従事者」という用語は、一般開業医(GP)、在宅ヘルスケア労働者または介護者、高齢者住宅の看護師、救急車の運転手、または在宅訪問を行う従事者、救急医療員、医師、地域の診療所の看護師に関するが、これらに限定されない。最初の医療従事者は、好ましくは、医師または他の介護者であるかにかかわらず、感染性疾患の症状を発症したが、好ましくは重篤な病気と診断されていない患者に最初に会うおよび医療スタッフを包含すると解釈される。
【0020】
単一のproADM測定に基づいて、入院が必要であるほどの重症度の疾患を患者が発症するかどうかについて、正確で信頼できる結論を下すことができることはまったく驚くべきことである。proADMのこの予後能力は、発明者の知る限り、新しく、驚くべきものである。
【0021】
一実施形態では、患者はプライマリケアユニットに送られ、proADMまたはその一以上の断片の高リスクレベルは、患者の入院が必要であることを示し、proADMまたは断片(複数可)の低リスクレベルは、患者の入院が必要ではないことを示す。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、本方法は、病状の深刻な悪化の深刻なリスクが存在しし、それによって入院が必要であるかどうかを日常の臨床的および/または分子診断手段によって決定することが不可能ではないにしても以前は困難であった患者群における潜在的な入院の予後診断によって定義される。この患者群は、感染性疾患の軽度の症状がある患者、または重篤な感染性疾患の症状がない、例えば、敗血症の症状がない患者と見なされ得る。
【0023】
一実施形態では、試料提供時に、患者は、0または1のqSOFAスコアに相当する感染性疾患の軽度の症状を示す。
【0024】
一実施形態では、試料提供時に、患者は、患者において血流感染症、敗血症、重症敗血症、および/または敗血症性ショックの臨床症状を示さない。
【0025】
qSOFAスコアが0または1に相当する患者など、感染性疾患の軽度の症状のみを示す患者、および感染性疾患の症状を示すが血流感染症または敗血症の存在を示さない患者が、本発明によるproADMまたは断片(複数可)の高リスクレベルを決定することに基づいて、入院を必要とすると分類することができることはまったく驚くべきことであった。専門の医師は、感染性疾患の軽度の症状および/または血流感染症もしくは敗血症を示唆しない症状を有する患者が、例えば、感染性疾患の症状の進行をモニタリングし、治療を実施するために入院を必要とするであろうと予想しないため、これは本発明の方法の大きな利点を表す。このような患者は通常、医療従事者によって検査され、その後、例えば、専門的な医療監視なしで実行することができる治療指示とともに、継続的な医療観察から解放され得る。しかしながら、本発明の方法は、客観的手段によって、感染性疾患の重篤な症状を示さず、それでも入院を必要とする患者を特定することができる。
【0026】
一方、用心の理由から、医療従事者、特に感染性疾患の分野を専門としない従事者は、感染性疾患の症状を有する患者、および血流感染症の敗血症を示さない軽度の症状を有する患者さえも、病院または救急診療部へ送る傾向があるが、これは必要ではない場合がある。本発明の方法は、患者が入院しなければならないかどうかを決定するために、感染性疾患を専門としない可能性のある経験のない医療従事者にも客観的な基準を提供することができるため、大きな利点を表す。したがって、患者を観察する医療従事者の過度に慎重な意思決定による不必要な入院の割合は、本発明の方法の助力により低下させることができる。一方で、継続的な医療観察が必要であるにもかかわらず、入院しない軽度の症状を有する患者の割合が増加する可能性がある。
【0027】
1.2nmol/L±20%の好ましいカットオフ値は、完全に予想外で驚くべきものであり、本明細書に記載の患者群および患者を入院させるかどうかの意思決定過程に関して、最先端技術では報告されていない。軽度の症状を有する患者および敗血症を有する疑いがない患者は、意思決定過程を支持する適切な診断および予後試験がないために、多くの場合、継続的な医療監視から誤って解放される可能性があるため、このカットオフは、これらの患者の入院を決定するのに特に有益である。
【0028】
一実施形態では、0.7nm/L±20%~1.2nmol/L±20%の当該試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルは、疾患の存在を示し、かつ患者は、入院を必要とする状態への疾患進行のリスクがないことを示す。
【0029】
健康な患者は、0.0~0.7nmol/LのproADMレベルを有することが多いため、0.7nm/L±20%~1.2nmol/L±20%のproADM値の範囲は特に有益なものである。いくつかの実施形態では、1.5nmol/Lを超える患者もまた、深刻な治療を必要とする。したがって、0.7nm/L±20%~1.2nmol/L±20%のADM値が測定された場合、医療専門家にとって不確実性の「グレーゾーン」が以前から存在していた。しかしながら、本発明は、現在、このような患者のための信頼できる予後報告を可能にする。いくつかの実施形態では、これらの患者は、入院を必要とする深刻な状態に進行する重大なリスクを示さないため、入院から除外される。
【0030】
一実施形態では、proADMまたはその断片の高リスクレベルは、患者が48時間、24時間、好ましくは12時間以内に生命を脅かす状態への疾患進行のリスクがあることを示し、proADMの低リスクレベルは、患者が48時間、24時間、好ましくは12時間以内に生命を脅かす状態への疾患進行のリスクがないことを示す。
【0031】
一実施形態では、当該試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルは、入院を必要とする患者における血流感染症、敗血症、重症敗血症、および/または敗血症性ショックの発症のリスクを示す。
【0032】
一実施形態では、そのproADMの高リスクレベルは、患者が48時間、24時間、好ましくは12時間以内に入院を必要とする血流感染症、敗血症、重症敗血症、および/または敗血症性ショックを発症するリスクがあることを示し、proADMの低リスクレベルは、患者が48時間、24時間、好ましくは12時間以内に血流感染症、敗血症、重症敗血症、および/または敗血症性ショックを発症するリスクがないことを示す。
【0033】
一実施形態では、当該試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルは、患者が頻繁なモニタリングおよび/または救命救急治療を必要とすることを示す。一実施形態では、高リスクレベルの患者は、病院環境で提供される医療的治療を必要とする。これらの治療の例には、輸液療法、静脈内抗生物質、いくつかの実施形態では、自宅で自己投与することができる経口抗生物質以外の本質的に任意の治療が含まれるが、これらに限定されない。
【0034】
一実施形態では、本方法は、
-感染性疾患を有することが疑われる患者の少なくとも1つの臨床スコア、好ましくはNEWSスコアを決定することをさらに含み、
-少なくとも1つの臨床スコアおよびproADMまたはその一以上の断片のレベルが、感染性疾患の存在を示し、かつ患者が入院を必要とする状態への疾患進行のリスクがあるかどうかを示す。
【0035】
一実施形態では、感染性疾患は、呼吸器感染性疾患、尿路感染性疾患、皮膚感染性疾患、または腹部感染性疾患である。
【0036】
一実施形態では、proADMまたはその一以上の断片のレベルを決定することは、試料中のMR-proADMのレベルを決定することを含む。以下の例に示されるように、好ましくはB.R.A.H.M.S(Hennigsdorf,Germany)の確立されたイムノアッセイ製品を使用して決定されたMR-proADMは、本明細書に記載の方法により信頼できる効果的な予後診断を示す。前駆体または断片を含む代替のADM分子も用いることができる。
【0037】
一実施形態では、試料は、全血試料、血清試料、もしくは血漿試料などの血液試料、および/または尿試料からなる群から選択される。
【0038】
一実施形態では、試料は、症状が決定されてから24時間、6時間、2時間、1時間以内、より好ましくは30分または15分以内に患者から単離される。
【0039】
一実施形態では、本方法は、
a.当該患者からの試料中の少なくとも1つの追加のバイオマーカーまたはその一以上の断片のレベルを決定することであって、少なくとも1つの追加のバイオマーカーが、好ましくはPCTまたはその一以上の断片である、決定することをさらに含み、かつ
b.少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルが、抗感染剤、好ましくは抗生物質または有糸分裂阻害剤による治療の開始を示す。
【0040】
一実施形態では、少なくとも1つの追加のバイオマーカーは、PCTまたはその一以上の断片であり、0,25ng/mLを超える、好ましくは0.5ng/mLを超えるPCTまたはその一以上の断片のレベルは、抗感染剤、好ましくは抗生物質または有糸分裂阻害剤による治療の開始を示す。
【0041】
以下でより詳細に示されるように、追加のバイオマーカー、特にPCTの組み合わせ測定は、予後診断の改善および/または対象に存在する感染症の程度、重症度、または種類に関するさらなる指標を可能にする。PCTとproADMとの組み合わせ測定は、いくつかの実施形態では、抗生物質の用量および患者への投与手段に加えて、入院に関する決定につながる可能性がある。したがって、これらのバイオマーカーの組み合わせは、有益であり、本発明の特定の患者群および開業医群において、驚くべき効果を提供する。
【0042】
本発明のさらなる態様は、本明細書に記載される方法を実行するためのキットに関する。
【0043】
一実施形態では、キットは、
a.患者からの試料中のproADMもしくはその一以上の断片のレベルを決定するための検出試薬と、
b.入院を必要とする状態への疾患進行が起こるかどうかに関する患者のリスクに関する参照データ、特にリスク閾値またはカットオフ値に関する参照データであって、当該参照データが、好ましくは、コンピュータ可読媒体に記憶され、かつ/またはproADMもしくはその一以上の断片の決定されたレベルを、リスク閾値またはカットオフ値と比較するために構成されたコンピュータ実行可能コードの形態で用いられる、参照データと、
c.任意選択的に、患者からの試料中の少なくとも1つの追加のバイオマーカーまたはその一以上の断片、好ましくはPCTのレベルを決定するための検出試薬、および当該少なくとも1つの追加のバイオマーカー、好ましくはPCTの、リスク閾値もしくはカットオフ値の参照レベルなどの参照データであって、当該参照データが、好ましくは、コンピュータ可読媒体に記憶され、かつ/または少なくとも1つの追加のバイオマーカーもしくは断片(複数可)の決定されたレベルを、閾値もしくはカットオフ値と比較するために構成されたコンピュータ実行可能コードの形態で用いられる、検出試薬と、を含む。
【0044】
本発明のキットの実施形態では、参照データは、1.2nmol/L±20%のカットオフ値の閾値を含み、患者からの試料中の1.2nmol/L±20%以下のproADMレベルまたはその一以上の断片の低リスクレベルは、患者が入院を必要とする状態への疾患進行のリスクがないことを示し、かつ/または患者からの試料中の1.2nmol/L±20%超であるproADMレベルまたはその断片の高リスクレベルは、患者が入院を必要とする状態への疾患進行のリスクがあることを示す。キットの実施形態では、1.2nmol/L±20%のカットオフ値を含む当該参照データは、proADMまたはその一以上の断片の決定されたレベルを、リスク閾値またはカットオフ値と比較するために構成されたコンピュータ実行可能コードで提供され、任意選択的に、proADMの決定されたレベルに応じて、患者の入院または(一定の)医療監視からの患者の解放のオプションを含む治療の推奨を提供し得る。
【0045】
好ましい実施形態では、本発明のキットは、0または1のqSOFAスコアに相当する感染性疾患の軽度の症状を示す患者および/または血流感染症、敗血症、重症敗血症、および/または敗血症性ショックの臨床症状を示さない感染性疾患の症状を有する患者において、療法指導、層別化、および/または制御のためのインビトロ方法を実行するためのキットである。
【0046】
さらに、キットの参照データは、0.7nmL±20%~1.2nmol/L±20%のproADMまたはその一以上の断片のレベルの参照範囲を含み得る。この範囲のproADMレベルは、患者における感染性疾患の存在を示す可能性があり、本発明以前は、proADMレベルがこの範囲内にある患者が入院を必要とするかどうか不明であったため、医療開業医開業医および/または医療従事者にとって深刻な課題であった。しかしながら、本発明のキットおよび方法を使用して、このような患者の入院に関する決定を、キットの参照データなどの客観的な基準に基づいて行うことが可能である。キットの参照データは、proADMまたはその一以上の断片の決定されたレベルを当該参照範囲と比較するために構成されたコンピュータ実行可能コードで提供され得、コンピュータ実行可能コードは、ADMの決定されたレベルが基準範囲を超えている場合は患者を入院させる、または決定されたレベルが基準範囲内またはそれ以下である場合は(一定の)医療監視から患者を解放するオプションを含む治療の推奨を提供することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、キットの特徴は、本発明の方法を特徴付けるのに使用されるそれらの特徴を含むと見なされ得、逆もまた同様である。
【0048】
本発明はさらに、疾患進行の予後診断を含む、感染性疾患の症状を有する患者における療法指導、層別化、および/または制御のための方法に関し、本方法は、
・当該患者からの試料を提供することと、
・当該試料中のproADMもしくはその一以上の断片のレベルを決定することと、
・当該試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルをカットオフ値と比較することと、を含み、
・当該カットオフ値は、1.2nmol/L±20%であり、
・当該カットオフ値未満の当該試料中のproADMまたはその一以上の断片の(低リスク)レベルは、患者が入院を必要とする状態への疾患進行のリスクがないことを示し、当該カットオフ値を超える当該試料中のproADMまたはその一以上の断片の高リスクレベルは、患者が入院を必要とする状態への疾患進行のリスクがあることを示す。
【0049】
したがって、本方法は、疾患進行の予後診断を含む、感染性疾患の症状を有する患者における療法指導、層別化、および/または制御のための方法を用いる治療のために患者を選択することを含む、患者の感染性疾患を治療する方法に関し、本方法は、
・当該患者からの試料を提供することと、
・当該試料中のproADMもしくはその一以上の断片のレベルを決定することと、
・当該試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルをカットオフ値と比較することと、を含み、
・当該カットオフ値は、1.2nmol/L±20%であり、
・当該カットオフ値未満の当該試料中のproADMまたはその一以上の断片の(低リスク)レベルは、患者が入院を必要とする状態への疾患進行のリスクがないことを示し、当該カットオフ値を超える当該試料中のproADMまたはその一以上の断片の高リスクレベルは、患者が入院を必要とする状態への疾患進行のリスクがあることを示す。
【0050】
治療方法は、好ましくは本明細書に記載の特定の療法のうちの1つ以上を使用して、当該患者に好適な療法的措置を施すことを含むことが好ましい。
【0051】
一実施形態では、本発明は、感染性疾患の症状を有する患者を治療するための方法に関するか、またはそれを含み、本方法は、
-患者から生物学的試料を得るか、または得たことにより、
-当該試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルを決定するアッセイを実施するか、または実施したことにより、患者がproADMの高または低リスクレベルを有するかどうかを決定するステップを含み、
-当該試料中のproADMレベルまたはその一以上の断片の低リスクレベルは、1.2nmol/L±20%以下であり、かつ/または
-当該試料中のproADMレベルまたはその一以上の断片の高リスクレベルは、1.2nmol/L±20%超であり、
-当該試料中のproADMレベルまたはその一以上の断片の高リスクレベルが決定されると、患者は治療され、当該治療は、好ましくは、入院、または病院でのみもしくは主に病院で利用可能な治療を含む。
【0052】
したがって、本発明は、敗血症などの入院を必要とする状態を発症する感染性疾患の症状を有する患者のリスクを迅速に評価するために、医師、看護師などのプライマリヘルスケア開業医に新しく迅速かつ信頼できる試験を提供する。
【0053】
本明細書に開示のカットオフ値は、血液試料、好ましくは、Thermo Scientific BRAHMS KRYPTORアッセイの手段によって患者から得られた全血試料、または血漿もしくは血清試料中のproADMまたはその断片のタンパク質レベルの測定値を指す。したがって、本明細書に開示の値は、用いられる検出/測定方法に応じてある程度変動し得、本明細書に開示の特定の値は、他の方法によって決定される対応する値を読み取ることも意図している。
【0054】
本発明の実施形態では、低または高重症度レベルのいずれかを定義し得るproADMまたはその一以上の断片のカットオフ値は、およそ1.2nmol/L±20%の任意の値であり得る。他の実施形態では、低または高重症度レベルのいずれかを定義し得るproADMまたはその一以上の断片のカットオフ値は、およそ1.2nmol/L±好ましくは15%、または12%、または10%、または9、8、7、6、5、4、3、2、または1%の任意の値であり得る。
【0055】
この範囲内の任意の値(すなわち、1.2nmol/L値の変動ウィンドウ内)は、proADMの高重症度レベルと低症度レベルとの間の適切なカットオフ値と見なすことができる。
【0056】
さらに、このようなカットオフ値よりも低い値は、入院を必要とする状態を発症する重大なリスクの不在を示し得、このようなカットオフ値以上の値は、入院を必要とする状態を発症することを示し得る。
【0057】
本発明の文脈で使用され得る適切なカットオフレベルは、限定されないが、0.96~1.44nmol/Lの任意の値を含む。他の値には、0.95、1.0、1.05、1.1、1.15、1.2、1.25、1.3、1.35、1.4、および1.45nmol/L、またはこれらの値の間の値、またはこれらの値をエンドポイントとして使用する範囲が含まれる。
【0058】
本発明の実施形態では、これらの可能なカットオフ値からの偏差、例えば、±30%、29%、28%、27%、26%、25%、24%、23%、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%の偏差も主張されている。
【0059】
本明細書に記載の実施形態では、重症度レベルは、好ましくは、低重症度レベルと高重症度レベルとの間の境界を表す1つ以上のカットオフ値によって定義される。したがって、カットオフを表す任意の実施形態は、2つの重症度レベル間の境界として単一のカットオフ値の形式、または各重症度レベルの単一のカットオフレベルを使用してもよい。
【0060】
本発明の方法の特定の実施形態では、入院を必要とする状態は、感染症、院内感染、敗血症、および/または敗血症性ショックなどの感染症関連合併症である。本発明の方法の特定の実施形態では、状態は、好ましくは呼吸器感染性疾患、尿路感染性疾患、皮膚感染性疾患、または腹部感染性疾患に基づく感染症、院内感染、敗血症、および/または敗血症性ショックを含む。
【0061】
本発明の方法の文脈で使用されるproADMまたはその一以上の断片のカットオフは、入院を除外するために使用され得ることが特に利点である。したがって、本方法は、試料単離の状況およびその時点で利用可能なさらなる情報、例えば、重度の状態を発症するリスクの増加に応じて、患者の予後診断/リスクのより正確な評価を可能にする。
【0062】
本発明の方法の結果に応じて、本方法の実施形態は、その後の療法上の決定および/または療法的行為を含み得る。そのような療法上の決定には、医療的治療の開始、変更、または修正が含まれ得る。好ましくは、本発明の方法が病院での治療を必要とする状態を発症することを示す場合、特定の薬物療法、手術、または輸液療法の開始または変更などの好適な療法的措置を開始することができる。
【0063】
本明細書に開示される任意の療法、医療的治療、または療法的行為は、本発明の方法の文脈では、その後の療法上の決定または療法的行為として、特に静脈内輸液療法、透析、電解質異常(特に、カリウム、カルシウム、およびリン)の管理を含むがこれらに限定されない療法的措置が、具体的に病院おいて施される場合に用いることができる。さらに、患者の維持された集中的な観察およびケアは、数日、数週間、さらには数ヶ月などの長期間にわたって潜在的に望ましい可能性がある。これには、患者をICUに留置または移動すること、および/またはICUでの患者の滞在を延長することが含まれる場合がある。
【0064】
一方、本発明の方法の結果が入院を必要とする状態を発症するリスクがないことを示す場合、このような合併症に関する特定の治療措置は必要とされなくてもよいか、またはあまり深刻ではない場合、自己投与可能な治療が処方され得る。
【0065】
一実施形態では、本発明は加えて、本明細書に記載の診断方法の結果を患者に知らせることを含む。本発明の実施形態では、患者は少なくとも18歳である。
【0066】
本発明の好ましい実施形態では、試料は、血液試料、血清試料、血漿試料、および/または尿試料からなる群から選択される。血液、血清、または血漿中のproADMまたはその一以上の断片を決定することは、それが特に正確であることが示されているので、特に有利である。さらに、これらの試料は、特定の時点での患者の実際の状態を非常に正確に反映する。
【0067】
本発明の実施形態では、proADMまたはその一以上の断片のレベルを決定することは、試料中のMR-proADMのレベルを決定することを含む。本明細書に記載の任意の所与の実施形態では、MR-proADMの決定を用いることが好ましく、したがって、各実施形態の文脈において、これが考慮され得る。好ましい実施形態では、「ADM断片」は、MR-proADMであると見なされ得る。
【0068】
特定の実施形態によれば、本発明の方法は、
-当該患者からの試料中の少なくとも1つの追加のバイオマーカーまたはその一以上の断片のレベルを決定することであって、少なくとも1つの追加のバイオマーカーが、好ましくはPCTまたはその一以上の断片および/または乳酸である、決定すること、および/または
-少なくとも1つの臨床スコアを決定することであって、前記少なくとも1つの臨床スコアが、好ましくはSOFAである、決定すること、を加えて含み、
-少なくとも1つの追加のバイオマーカーおよび/または少なくとも1つの臨床スコアのレベル、ならびにproADMまたはその一以上の断片のレベルは、入院が必要かどうか、または患者が病院での治療を必要とする状態を発症するリスクがあるかを示す。
【0069】
本発明の文脈で決定され得るさらなる追加のマーカーは、乳酸およびCRPを含む。本発明の文脈で決定され得る臨床スコアは、SIスコア(全身性炎症スコア)、SOFA、qSOFA、SIRS、SAPS II、APACHE II、好ましくはSOFAを含む。
本発明の方法の文脈におけるproADMまたはその一以上の断片および好ましくはSOFAの決定は、入院を必要とする後の状態の予後診断に関して、さらなる精度を提供することが判明した。
【0070】
さらなる実施形態では、少なくとも1つの追加のバイオマーカーは、乳酸、横紋筋融解症の少なくとも1つのマーカー、例えば、クレアチンキナーゼ(CK)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、クレアチニン、ミオグロビン、アルドラーゼ、トロポニン、炭酸脱水酵素3型、脂肪酸結合タンパク質(FABP)、トランスアミナーゼ、またはカリウムである。
【0071】
proADMまたはその一以上の断片のレベルを決定するための、および任意選択的にPCT、乳酸、および/またはC反応性タンパク質、もしくはそれらの断片(複数可)のレベルを決定するための検出試薬は、好ましくは、方法を実施するのに必要なもの、例えばADMに指向されている抗体、蛍光標識などの好適な標識、好ましくはKRYPTORアッセイでの用途に好適な2つの別個の蛍光標識、試料収集チューブから選択される。
【0072】
本発明の方法の文脈で開示された実施形態および特徴はまた、本発明のキットにも適用され、逆もまた同様である。
【0073】
本明細書に記載の方法の一実施形態では、proADMまたはその一以上の断片、および任意選択的に加えて、例えばPCTまたはその一以上の断片などの他のバイオマーカーのレベルは、質量分析法(MS)、発光イムノアッセイ(LIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、化学発光および蛍光イムノアッセイ、酵素イムノアッセイ(EIA)、酵素結合イムノアッセイ(ELISA)、発光ベースのビーズアレイ、磁気ビーズベースのアレイ、タンパク質マイクロアレイアッセイ、即時免疫クロマトグラフィーストリップ試験などの迅速試験フォーマット、希土類クリプテートアッセイ、ならびに自動化されたシステム/分析器からなる群から選択される方法を使用して決定される。
【0074】
本発明による方法は、均質な方法としてさらに具体化することができ、検出される抗体/複数の抗体、およびマーカー、例えば、proADMまたはその断片によって形成されているサンドイッチ複合体が、液相中で懸濁されたままである。この場合、2つの抗体が使用されると、両方の抗体が検出システムの一部で標識され、それが、両方の抗体が単一のサンドイッチに統合されている場合にシグナルの発生またはシグナルの誘発をもたらすことが好ましい。
【0075】
そのような技術は、特に蛍光増強または蛍光消光検出方法として具体化されるべきである。特に好ましい態様は、例えば、US4882 733A、EP-B10180492、またはEP-B10 539477、およびそれらで引用された従来技術に記載されているものなど、対で使用される検出試薬の使用に関する。このようにして、反応混合物中の単一の免疫複合体中に直接両方の標識成分を含む反応生成物のみが検出される測定が可能になる。
【0076】
例えば、そのような技術は、上記で引用された出願の教示を実装する、商標名TRACE(登録商標)(Time Resolved Amplified Cryptate Emission)、またはKRYPTOR(登録商標)の下で提供されている。したがって、特に好ましい態様では、本明細書で提供される方法を実行するために診断デバイスが使用される。例えば、proADMタンパク質もしくはその断片のレベル、および/または本明細書で提供される方法の任意のさらなるマーカーのレベルが決定される。特に好ましい態様では、診断デバイスは、KRYPTOR(登録商標)である。
【0077】
本明細書に記載の方法の一実施形態では、方法は、アッセイが均質相または不均質相中で実施される、イムノアッセイである。
【0078】
本明細書に記載の方法のさらなる実施形態では、加えて、方法は、感染を検出するための該患者からの試料の分子分析を含む。感染を検出するための分子分析に使用される試料は、好ましくは血液試料である。好ましい実施形態では、分子分析は、病原体に由来する1つ以上の生体分子を検出することを目的とする方法である。当該1つ以上の生体分子は、核酸、タンパク質、糖、炭水化物、脂質、およびまたはグリコシル化タンパク質などのそれらの組み合わせ、好ましくは核酸であり得る。当該生体分子は、好ましくは、1つ以上の病原体(複数可)に特異的である。好ましい実施形態によれば、そのような生体分子は、PCR、qPCR、RT-PCR、qRT-PCRなどの核酸増幅方法、または等温増幅、質量分析、酵素活性の検出、および免疫アッセイに基づく検出方法を含む群から選択される、生体分子の分析のための1つ以上の方法によって検出される。分子分析のさらなる方法は、当業者に既知であり、本発明の方法に含まれる。
【0079】
本明細書に記載の方法の一実施形態では、第1の抗体および第2の抗体は、液体反応混合物中に分散して存在し、蛍光または化学発光消光または増幅に基づく標識系の一部である第1の標識成分が、第1の抗体に結合し、当該標識系の第2の標識成分が、第2の抗体に結合し、これにより、検出される両方の抗体の当該proADMまたはその断片への結合後、測定溶液中で得られたサンドイッチ複合体の検出を可能にする測定可能なシグナルが発生する。
【0080】
本明細書に記載の方法の一実施形態では、標識系が、特にシアニンタイプの蛍光または化学発光染料と組み合わせた希土類クリプテートまたはキレートを含む。
【0081】
本明細書に記載の方法の一実施形態では、方法は、加えて、proADMまたはその一以上の断片の決定されたレベルを、重篤な病気であると診断され、医療的治療下にある患者のproADMまたはその断片に対応する参照レベル、閾値、および/または集団平均と比較することを含み、当該比較が、コンピュータで実行可能なコードを使用してコンピュータプロセッサで実行される。
【0082】
本発明の方法は、部分的にコンピュータで実行され得る。例えば、検出されたマーカー、例えばproADMまたはその断片のレベルを参照レベルと比較するステップは、コンピュータシステムで実施することができる。コンピュータシステムでは、診断、予後診断、予測、リスク評価、および/またはリスク層別化のために示されるスコアを計算するために、マーカー(複数可)の決定されたレベルを、対象の他のマーカーレベルおよび/またはパラメータと組み合わせることができる。例えば、決定された値は、コンピュータシステムに入力されてもよい(医療従事者によって手動で、またはそれぞれのマーカーレベル(複数可)が決定されたデバイス(複数可)から自動で、のいずれか)。コンピュータシステムは、ポイントオブケア(例えば、プライマリケア、ICU、またはED)に直接あってもよく、またはコンピュータネットワークを介して(例えばインターネット、または任意選択的に病院情報システム(HIS)などの他のITシステムもしくはプラットホームと組み合わせた特化された医療クラウドシステムを介して)接続される遠隔地にあってもよい。典型的には、コンピュータシステムは、値(例えば、マーカーレベル、もしくは年齢、血圧、体重、性別などのパラメータ、またはSOFA、qSOFA、BMIなどの臨床スコアシステム)をコンピュータ可読媒体に記憶し、事前に定義および/または事前に記憶された参照レベルまたは参照値に基づきスコアを計算するであろう。得られたスコアは、ユーザ(通常は医師などの医療従事者)のために表示および/または印刷される。あるいは、または加えて、関連する予後診断、診断、評価、治療ガイダンス、患者管理ガイダンスまたは層別化は、ユーザ(典型的には医師などの医療従事者)のために表示および/または印刷されるであろう。
【0083】
本発明の一実施形態では、好ましくは電子健康記録(EHR)からのデータを使用して、機械学習アルゴリズムが敗血症、重症敗血症および敗血症性ショックのリスクがある入院患者を識別することが明らかであるソフトウェアシステムを用いることができる。機械学習アプローチは、患者からのEHRデータ(ラボ、バイオマーカーの発現、バイタル、人口統計など)を使用して、ランダムフォレスト分類器でトレーニングすることができる。機械学習は、単純なルールに基づくシステムとは異なり、明示的にプログラムされなくても、コンピュータにデータの複雑なパターンを学習する能力を提供する一種の人工知能である。以前の研究では、電子健康記録データを使用して警告を誘発して、一般的な臨床的悪化を検出していた。本発明の一実施形態では、proADMレベルの処理は、既存のデータセットとの比較のために適切なソフトウェアに組み込むことができ、例えば、proADMレベルは、有害事象の発生の診断または予後診断を支援する機械学習ソフトウェアで処理することができる。
【0084】
PCTまたはCRPなどの別のバイオマーカーと組み合わせたproADMまたはその断片の組み合わせを用いることにより、単一の多重アッセイで、または患者からの試料で行われる2つの別個のアッセイのいずれかで実現することができる。試料は、同じ試料に関係しても、異なる試料に関係してもよい。proADMおよび例えばPCTの検出および決定に用いられるアッセイはまた、同じであっても異なっていてもよく、例えば、上記のマーカーのうちの1つの決定にイムノアッセイを用いてもよい。好適なアッセイのより詳細な説明を以下に提供する。
【0085】
重篤であると診断され、治療下にある患者におけるproADMまたはその断片のカットオフ値および他の参照レベルは、先述の方法によって決定してもよい。例えば、参照値および/またはカットオフを確立するために、定量アッセイの変動性を評価する際に変動係数を使用するための方法は、当業者に既知である(George F.Reed et al.,Clin Diagn Lab Immunol.2002;9(6):1235-1239)。
【0086】
加えて、確立された技法に従って参照レベルまたはカットオフとして使用するための統計的に有意な値を示すために、機能アッセイの感度を決定することができる。研究所は、臨床的に関連するプロトコルによって、アッセイの機能的感度を独立して確立することが可能である。「機能的感度」は、変動係数(CV)が20%(またはいくつかの他の所定の%CV)を生じる濃度と見なすことができ、したがって低分析物レベルでのアッセイの精度の尺度である。したがって、CVは、標準偏差(SD)の標準化であり、少なくともアッセイのほとんどの有効範囲で、分析物の濃度の大きさに関係なく変動性の概算値を比較することを可能にする。
【0087】
さらに、ROC分析に基づく方法を使用して、2つの臨床患者グループ間の統計的に有意な差を決定することができる。受信者動作特性(ROC)曲線は、モデルの適合確率の並べ替え効率を測定して、応答レベルを並べ替える。ROC曲線はまた、診断試験の基準点の設定にも役立ち得る。対角線からの曲線が高いほど、適合度が高い。ロジスティック適合が3つ以上の応答レベルを有する場合、一般化されたROC曲線を生成する。そのようなプロットには、各応答レベルの曲線があり、これは、他の全てのレベルに対するそのレベルのROC曲線である。例えば、SASのJMP12、JMP13、Statistical Discoveryなど、好適な参照レベルおよびカットオフを確立するために、この種類の分析を可能にすることが可能なソフトウェアが利用可能である。
【0088】
PCTについても同様にカットオフ値を決定することができる。適切なカットオフを決定するために、当業者は文献を利用可能であり、例えばPhilipp Schuetz et al.(BMC Medicine.2011;9:107)は、0.1ng/mLのカットオフで、PCTは感染を排除する非常に高い感度を有したと記載している。感度および特異性に基づいて計算される正および負の可能性比などの指標を記載しているTerence Chan et al.(Expert Rev.Mol.Diagn.2011;11(5),487.496)がまた、診断テストの強度を評価するために有用である。一般的に、値は、複数のカットオフ値(CV)に対する受信者動作特性曲線としてグラフ化される。曲線下の面積の値を使用して、診断上最も妥当なCVを決定する。この文献は、CV(アッセイおよび研究デザインによるカットオフ値)の変動、およびカットオフ値を決定するための好適な方法について記載している。
【0089】
proADMまたはその断片の集団平均レベルはまた、参照値、例えば平均proADM集団値として使用することができ、それにより、対照グループが好ましくは10人超、20、30、40、50人、またはそれ以上の対象を含む対照集団と重篤と診断された患者とを比較することができる。
【0090】
本発明の一実施形態では、PCTのカットオフレベルは、例えば、Luminex MAC Pix E-Bioscience AssayまたはBRAHMS PCT-Kryptor Assayを使用すると、血清試料中の0.01~100.00ng/mLの範囲の値であり得る。好ましい実施形態では、PCTのカットオフレベルは、0.01~100、0.05~50、0.1~20、または0.1~2ng/mL、最も好ましくは>0.05~0.5ng/mLの範囲であり得る。これらの範囲内の任意の値は、適切なカットオフ値と見なすことができる。例えば、0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100ng/mLが用いられ得る。いくつかの実施形態では、健康な対象のPCTレベルは、およそ0.05ng/mLである。
【発明を実施するための形態】
【0091】
本発明は、proADMが、入院が必要かどうかに関する効果的な予後報告を可能にし、それによって感染性疾患の症状を有する患者における療法指導のための効果的な手段を提供することを実証する本明細書に開示されるデータに基づいている。
【0092】
本発明は、本発明の方法およびキットが、従来の方法を上回って迅速、客観的であり、使いやすく、正確である、という利点を有する。本発明の方法およびキットは、日常的に得られた血液試料もしくはさらなる生体液、または対象から得られる試料中のproADM、PCT、乳酸、C反応性タンパク質、SOFA、qSOFA、APACHE II、SAPS IIのレベルを決定することができるため、日常的な方法で容易に測定可能であるマーカーおよび臨床スコアに関する。
【0093】
本明細書で使用される場合、「患者」または「対象」は、脊椎動物であり得る。本発明の文脈において、「対象」という用語は、ヒトおよび動物の両方、特に哺乳動物、および他の生物を含む。
【0094】
本発明の意味において、感染性疾患の症状を有する患者は、限定されないが、発熱、下痢、倦怠感、筋肉痛、咳(動物に噛まれた場合)、呼吸困難である、発熱を伴う激しい頭痛、発疹もしくは腫れ、原因不明もしくは長期にわたる発熱、または視力の問題のうちの1つ以上を示す対象である。他の症状としては、発熱および悪寒、体温が非常に低い、通常より少ない排尿、頻脈、呼吸促迫、悪心、および嘔吐であり得る。好ましい実施形態では、感染性疾患の症状は、発熱、下痢、倦怠感、筋肉痛、頻脈、呼吸促迫、悪心および嘔吐、ならびに/または咳である。
【0095】
本明細書で使用される場合、「感染性疾患」は、細菌および/またはウイルスおよび/または真菌感染症に関連する全ての疾患または障害を含む。
【0096】
本明細書で使用される場合、本発明の文脈における「診断」は、臨床状態の認識および(早期)検出に関する。重症度の評価もまた、「診断」という用語によって包含され得る。
【0097】
「予後診断」は、対象の帰結または特定のリスクの予測に関する。これはまた、前述の対象についての回復の見込みまたは有害な帰結の見込みの推定を含み得る。
【0098】
本発明の方法はまた、モニタリング、療法モニタリング、療法指導および/または療法制御のために使用され得る。「モニタリング」は、例えば、治癒過程の進行または患者の健康状態に対する特定の治療または療法の影響を分析するために、患者および潜在的に発生する合併症を追跡することに関する。
【0099】
本発明の文脈における「療法モニタリング」または「療法制御」という用語は、例えば、療法の有効性に対するフィードバックを得ることによる、当該患者の療法的処置のモニタリングおよび/または調節を指す。本明細書で使用される場合、「治療ガイダンス」という用語は、1つ以上のバイオマーカーの値/レベルおよび/または臨床パラメータおよび/または臨床スコアに基づく特定の療法、療法的行為、または医療的介入の適用を指す。これには、療法の調節または療法の中止が含まれる。
【0100】
本発明において、「リスク評価」および「リスク層別化」という用語は、さらなる予後に従って対象を異なるリスクグループに分類することに関する。リスク評価はまた、予防的および/または治療的措置を適用するための層別化にも関する。「療法層別化」という用語は、特に、患者を、それらの分類に応じてある特定の異なる治療措置を受けるリスク群または治療群などの、異なる群にグループ分けまたは分類することに関する。「療法層別化」という用語はまた、感染症または感染性疾患の症状を有する患者を、特定の治療措置を受ける必要がない群にグループ分けまたは分類することにも関する。
【0101】
本発明の文脈において、「proADMまたはその一以上の断片のレベルを決定する」などは、proADMまたはその断片を決定する任意の手段を指すことが理解される。断片がproADMまたはその断片のレベルの明白な決定を可能にする限り、断片は任意の長さ、例えば少なくとも約5、10、20、30、40、50、または100アミノ酸を有し得る。本発明の特に好ましい態様において、「proADMのレベルを決定すること」は、中間領域のプロアドレノメジュリン(MR-proADM)のレベルを決定することを指す。MR-proADMは、proADMの断片および/または領域である。
【0102】
ペプチドアドレノメジュリン(ADM)は、ヒト褐色細胞腫(phenochromocytome)から単離された、52個のアミノ酸を含む血圧降下ペプチドとして発見された(Kitamuraら、1993)。アドレノメジュリン(ADM)は、185個のアミノ酸を含む前駆体ペプチド(「プレプロアドレノメジュリン」または「プレproADM」)としてコードされる。ADMの例示的なアミノ酸配列は、配列番号1に示されている。
【0103】
配列番号1:プレpro-ADMのアミノ酸配列:
1 MKLVSVALMY LGSLAFLGAD TARLDVASEF RKKWNKWALS RGKRELRMSS
51 SYPTGLADVK AGPAQTLIRP QDMKGASRSP EDSSPDAARI RVKRYRQSMN
101 NFQGLRSFGC RFGTCTVQKL AHQIYQFTDK DKDNVAPRSK ISPQGYGRRR
151 RRSLPEAGPG RTLVSSKPQA HGAPAPPSGS APHFL
【0104】
ADMはプレproADMアミノ酸配列の95~146位を含み、それらのスプライス生成物である。「プロアドレノメジュリン」(「proADM」)は、シグナル配列を有さないプレproADM(アミノ酸1~21)、すなわちプレproADMのアミノ酸残基22~185を指す。「中間領域プロアドレノメジュリン」(「MR-proADM」)は、プレ-proADMのアミノ酸42~95を指す。MR-proADMの例示的なアミノ酸配列は、配列番号2に示されている。
【0105】
配列番号2:MR-pro-ADMのアミノ酸配列(プレpro-ADMのAS45~92):
ELRMSSSYPT GLADVKAGPA QTLIRPQDMK GASRSPEDSS PDAARIRV
【0106】
プレproADMまたはMRproADMのペプチドおよびその断片を本明細書に記載の方法に使用できることも本明細書では想定されている。例えば、ペプチドまたはその断片は、プレproADMのアミノ酸22~41(PAMPペプチド)、またはプレproADMのアミノ酸95~146(bio-ADMとしても知られている生物学的に活性な形態を含む、成熟アドレノメジュリン)を含み得る。proADMのC末端断片(プレproADMのアミノ酸153~185)はアドレノテンシンと呼ばれる。proADMペプチドの断片またはMR-proADMの断片は、例えば、少なくとも約5、10、20、30、またはそれ以上のアミノ酸を含み得る。したがって、proADMの断片は、例えば、MR-proADM、PAMP、アドレノテンシンおよび成熟アドレノメジュリンからなる群から選択することができ、好ましくは本明細書では断片はMR-proADMである。
【0107】
これらの様々な形態のADMまたはproADMおよびそれら断片の決定は、例えば、分子の特定の部分に指向された抗体または他の親和性試薬を用いることによって、あるいは質量分析を使用してタンパク質の一部分を測定することによる分子の存在および/または量を決定することによって、これらの分子の特定のサブ領域を測定および/または検出することも包含する。本明細書に記載の「ADMペプチドまたは断片」のうちの任意の1つ以上を本発明で用いることができる。
【0108】
したがって、本発明の方法およびキットはまた、ADMに加えて、少なくとも1つのさらなるバイオマーカー、マーカー、臨床スコア、および/またはパラメータを決定することも含み得る。
【0109】
本明細書で使用される場合、パラメータは、特定のシステムを定義するのを助けることができる特性、特徴、または測定可能な要因である。パラメータは、疾患/障害/臨床状態リスク、好ましくは臓器機能障害(複数可)などの健康および生理学に関する評価にとって重要な要素である。さらに、パラメータは、正常な生物学的プロセス、病原性プロセス、または治療的介入に対する薬理学的反応の指標として客観的に測定および評価される特性として定義される。例示的なパラメータは、急性生理学および長期的健康評価II(APACHE II)、簡易急性生理学スコア(SAPSIIスコア)、連続的臓器不全評価スコア(sequential organ failure assessment score)(SOFA)、クイック連続的臓器不全評価スコア(qSOFAスコア)、肥満度指数、体重、年齢、性別、IGS II、水分摂取量、白血球数、ナトリウム、カリウム、体温、血圧、ドーパミン、ビリルビン、呼吸数、酸素分圧、世界脳神経外科連合(WFNS)評価、ならびにグラスゴーコーマスケール(GCS)からなるグループから選択することができる。
【0110】
本明細書で使用される場合、「マーカー」、「代理」、「予後診断マーカー」、「因子」、または「バイオマーカー」もしくは「生物学的マーカー」などの用語は、互換的に使用され、疾患/障害/臨床状態リスク、好ましくは有害事象などの健康および生理学に関連する評価の指標として機能する測定可能かつ定量化可能な生物学的マーカー(例えば、特定のタンパク質もしくは酵素濃度、もしくはその断片、特定のホルモン濃度もしくはその断片、または生物学的物質もしくはその断片の存在)に関する。マーカーまたはバイオマーカーは、正常な生物学的プロセス、病原性プロセス、または療法的介入に対する薬理学的反応の指標として客観的に測定および評価され得る特徴として定義される。バイオマーカーは、試料中で(血液、血漿、尿、または組織検査として)測定され得る。
【0111】
当該対象のうちの少なくとも1つのさらなるマーカーおよび/またはパラメータは、当該試料中の乳酸のレベル、当該試料中のプロカルシトニン(PCT)のレベル、当該対象の連続的臓器不全評価スコア(SOFAスコア)、任意選択的にクイックSOFAスコア、当該対象の単純化された急性生理学スコア(SAPSII)、当該対象の急性生理学および長期的健康評価II(APACHE II)スコア、ならびに可溶性fms様チロシンキナーゼ-1(sFlt-1)、ヒストンH2A、ヒストンH2B、ヒストンH3、ヒストンH4、カルシトニン、エンドセリン-1(ET-1)、アルギニンバソプレシン(AVP)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)、トロポニン、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、C反応性タンパク質(CRP)、膵石タンパク質(PSP)、骨髄性細胞1に発現するトリガー受容体(TREM1)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-1、インターロイキン-24(IL-24)、インターロイキン-22(IL-22)、インターロイキン(IL-20)その他のIL、プレセプシン(sCD14-ST)、リポ多糖結合タンパク質(LBP)、アルファ-1-アンチトリプシン、マトリックスメタロプロテイナーゼ2(MMP2)、メタロプロテイナーゼ2(MMP8)、マトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)、マトリックスメタロプロテイナーゼ7(MMP7、胎盤成長因子(PIGF)、クロモグラニンA、S100Aタンパク質、S100Bタンパク質および腫瘍壊死因子α(TNFα)、ネオプテリン、アルファ-1-アンチトリプシン、プロアルギニンバソプレシン(AVP、proAVPまたはコペプチン)、プロカルシトニン、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP、pro-ANP)、エンドセリン-1、CCL1/TCA3、CCL11、CCL12/MCP-5、CCL13/MCP-4、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17/TARC、CCL18、CCL19、CCL2/MCP-1、CCL20、CCL21、CCL22/MDC、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CCL3、CCL3L3、CCL4、CCL4L1/LAG-1、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CX3CL1、CXCL1、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL17、CXCL2/MIP-2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7/Ppbp、CXCL9、IL8/CXCL8、XCL1、XCL2、FAM19A1、FAM19A2、FAM19A3、FAM19A4、FAM19A5、CLCF1、CNTF、IL11、IL31、IL6、レプチン、LIF、OSM、IFNA1、IFNA10、IFNA13、IFNA14、IFNA2、IFNA4、IFNA7、IFNB1、IFNE、IFNG、IFNZ、IFNA8、IFNA5/IFNaG、IFNω/IFNW1、BAFF、4-1BBL、TNFSF8、CD40LG、CD70、CD95L/CD178、EDA-A1、TNFSF14、LTA/TNFB、LTB、TNFa、TNFSF10、TNFSF11、TNFSF12、TNFSF13、TNFSF15、TNFSF4、IL18、IL18BP、IL1A、IL1B、IL1F10、IL1F3/IL1RA、IL1F5、IL1F6、IL1F7、IL1F8、IL1RL2、IL1F9、IL33またはその断片のレベルからなる群から選択され得る。さらなるマーカーには、膜微粒子、血小板数、平均血小板体積(MPV)、sCD14-ST、プロトロンビナーゼ、アンチトロンビンおよび/アンチトロンビン活性、カチオン性タンパク質18(CAP18)、フォンウィルブランド因子(vWF)切断プロテアーゼ、CRPと組み合わせたリポタンパク質、フィブリノゲン、フィブリン、B2GP1、GPIIb-IIIa、フィブリンの非変性Dダイマー、血小板因子4、ヒストン、およびPT-アッセイが含まれる。
【0112】
本明細書で使用される場合、「プロカルシトニン」または「PCT」は、プロカルシトニンペプチドの、アミノ酸残基1~116、2~116、3~116、またはそれらの断片におよぶペプチドに関する。PCTは、カルシトニンホルモンのペプチド前駆体である。したがって、プロカルシトニン断片の長さは、少なくとも12アミノ酸、好ましくは50アミノ酸超、より好ましくは110アミノ酸超である。PCTは、グリコシル化、脂質化、または誘導体化などの翻訳後修飾を含み得る。プロカルシトニンは、カルシトニンおよびカタカルシンの前駆体である。したがって、通常の条件下では、循環中のPCTレベルは、非常に低い(約0.05ng/mL未満)。
【0113】
対象の試料中のPCTのレベルは、本明細書に記載されるようにイムノアッセイによって決定することができる。本明細書で使用される場合、「プロカルシトニン」または「PCT」をコードするリボ核酸またはデオキシリボ核酸のレベルも決定してもよい。例えば、Thermo Fisher Scientific/I B R A H M S GmbHから得られる製品を使用することによるPCTを決定のための方法が、当業者に知られている。
【0114】
乳酸、または乳酸(lactic acid)は、血液を含む体液中に生じる、式CH3CH(OH)COOHを有する有機化合物である。乳酸の血液試験は、体内の酸塩基恒常性の状態を決定するために実施される。乳酸は、細胞が十分な酸素を欠いており(低酸素症)、エネルギー生成手段の効率を低下させる必要があると、または状態によって乳酸の過剰生成もしくはクリアランスの減少が生じると蓄積され得る細胞代謝生成物である。乳酸アシドーシスは、例えば、ショック、敗血症性ショック、またはうっ血性心不全など、細胞および組織に送達される酸素量の減少に至り得る状態を有する場合、細胞および組織の酸素量が不十分なこと(低酸素症)によって生じ得、乳酸試験を使用して、低酸素症および乳酸アシドーシスの重症度の検出および評価を助けることができる。
【0115】
C反応性タンパク質(CRP)は、五量体タンパク質であり、血漿などの体液に見ることができる。CRPレベルは、炎症に応答して上昇し得る。CRP値の測定およびチャート化は、疾患の進行または治療の有効性の決定に有用であることを実証することができる。
【0116】
本明細書で使用されるとき、「連続的臓器不全評価スコア」または「SOFAスコア」は、集中治療室(ICU)に滞在中の患者の状態を追跡するために使用される1つのスコアである。SOFAスコアは、人の臓器機能の程度または不全率を決定するためのスコアリングシステムである。スコアは、6つの異なるスコアに基づき、各1つが呼吸器系、心血管系、肝臓系、凝固系、腎臓系、および神経系に対する。平均および最高の両方のSOFAスコアが帰結の予測因子である。ICUにおける最初の24~48時間のSOFAスコアの増加により、少なくとも50%~最大95%の死亡率が予測される。9未満のスコアは33%で予測死亡率を与え、一方14を超えると95%に近いかまたは95%を超え得る。
【0117】
本明細書で使用される場合、クイックSOFAスコア(qSOFA)は、患者の臓器機能不全または死亡リスクを示す採点システムである。スコアは、3つの基準に基づく:1)精神状態の変化、2)100mm Hg未満の収縮期血圧の低下、3)毎分22呼吸を超える呼吸数。これらの状態のうちの2つ以上を有する患者は、臓器機能不全を有するか、死亡するリスクがより高い。「正の」qSOFAスコア(≧2)は、感染症が疑われる患者の帰結不良のリスクが高いことを示唆する。これらの患者は、臓器機能不全のエビデンスに関してより詳しく評価されるべきである。
【0118】
本明細書で使用される場合、「APACHE II」または「急性生理学および長期的健康評価II」は、疾患の重症度分類の採点システムである(Knausら、1985)。それは、集中治療室(ICU)への患者の入室から24時間以内に適用することができ、AaDO2またはPaO2(FiO2に依存)、体温(直腸)、平均動脈圧、動脈pH、心拍数、呼吸数、ナトリウム(血清)、カリウム(血清)、クレアチニン、ヘマトクリット、白血球数、グラスゴーコーマスケールの、12種の異なる生理学的パラメータに基づいて決定することができる。
【0119】
本明細書で使用する場合、「SAPS II」または「簡易急性生理スコアII」は、疾患または障害の重症度を分類するためのシステムに関する(Le Gall JRら、ヨーロッパ/北米の多施設共同研究に基づく、A new Simplified Acute Physiology Score(SAPS II).JAMA.1993;270(24):2957-63を参照されたい)。SAPS IIスコアは、12種の生理学的変数および3種の疾患関連変数で構成されている。ポイントスコアは、12種のありふれた生理学的測定値、以前の健康状態に関する情報、およびICUへの入室時に得られたいくつかの情報から計算される。SAPS IIスコアはいつでも、好ましくは2日目に決定することができる。「最悪の」測定値は、最高の点数に相関する尺度として定義される。SAPS IIスコアは、0~163点の範囲である。分類システムは、以下のパラメータ、年齢、心拍数、収縮期血圧、体温、グラスゴーコーマスケール、機械的換気またはCPAP、PaO2、FiO2、尿量、血中尿素窒素、ナトリウム、カリウム、重炭酸塩、ビリルビン、白血球、慢性疾患、および入室の種類を含む。死亡率と合計SAPS IIスコアとの間にはS字形相関がある。対象の死亡率は、29点のSAPSIIスコアで10%であり、死亡率は、40点のSAPSIIスコアで25%であり、死亡率は、52点のSAPSIIスコアで50%であり、死亡率は、64点のSAPSIIスコアで75%であり、死亡率は、77点のSAPSIIスコアで90%である(Le Gall loc.cit.)。
【0120】
本明細書で使用される場合、「試料」という用語は、患者または対象から得られるかあるいは単離される、生物学的試料である。「試料」は、本明細書で使用される場合、例えば、患者などの関心対象の分析、診断、予後診断、または評価の目的で得られた体液または組織の試料を指し得る。好ましくは、試料は、本明細書では、血液、血清、血漿、脳脊髄液、尿、唾液、痰、胸水、細胞、細胞抽出物、組織試料、組織生検、便試料などの体液の試料である。特に、試料は、血液、血漿、血清である。
【0121】
本発明の文脈における「血漿」は、遠心分離後に得られる抗凝固剤を含有する血液の実質的に無細胞の上清である。抗凝血剤の例には、EDTAまたはクエン酸塩などのカルシウムイオン結合化合物、およびヘパリン酸塩またはヒルジンなどのトロンビン阻害剤が含まれる。無細胞血漿は、抗凝固処理された血液(例えば、クエン酸塩処理された、EDTAまたはヘパリン処理された血液)を、例えば、2000~3000gで少なくとも15分間遠心分離することによって得ることができる。
【0122】
本発明の文脈における「血清」は、血液を凝固させた後に収集される全血の液体画分である。凝固した血液(血餅)が遠心分離されると、血清が上清として得られ得る。
【0123】
本明細書で使用される場合、「尿」は、排尿(または排尿)と呼ばれる過程を通して腎臓によって分泌され、尿道を通して排泄される体の液体生成物である。
【0124】
本発明の実施形態では、入院を必要とする状態は、敗血症、重症敗血症、および/または敗血症性ショックであり得る。本発明の文脈における「敗血症」は、感染に対する全身性反応を指す。あるいは、敗血症は、SIRSと確認された感染プロセスまたは感染との組み合わせとして見られ得る。敗血症は、感染および全身性炎症反応の両方の存在によって定義される臨床症候群として特徴付けられ得る(Levy MM et al.2001 SCCM/ESICM/ACCP/ATS/SIS International Sepsis Definitions Conference.Crit Care Med.2003 Apr;31(4):1250-6)。本明細書で使用する「敗血症」という用語は、敗血症、重度敗血症、および敗血症性ショックを含むが、これらに限定されない。
【0125】
本明細書で使用する「敗血症」という用語は、敗血症、重度敗血症、および敗血症性ショックを含むが、これらに限定されない。重症敗血症は、臓器機能障害、低灌流異常、または敗血症誘発性低血圧に関連する敗血症を指す。低灌流異常には、乳酸アシドーシス、乏尿症、および精神状態の急激な変化が含まれる。敗血症誘発性低血圧は、低血圧の他の原因(例えば、心原性ショック)が存在しない場合の、約90mm Hg未満の収縮期血圧の存在またはベースラインから約40mm Hg以上のその低減によって定義される。敗血症性ショックは、低灌流異常または臓器機能不全の存在とともに、適切な輸液蘇生法にもかかわらず持続する敗血症誘発性低血圧を伴う重症敗血症として定義される(Boneら、CHEST 101(6):1644-55、1992)。
【0126】
あるいは、敗血症という用語は、感染に対する調節機能障害の宿主の応答によって引き起こされる、生命を脅かす臓器の機能障害として定義することができる。臨床的操作主義では、臓器機能障害は、好ましくは連続的臓器不全評価(SOFA)スコアの2ポイント以上の増加によって表すことができ、10%超の院内死亡率に関連している。敗血症性ショックは、敗血症のサブセットとして定義され得、特に重度の循環器、細胞、および代謝の異常は、敗血症単独よりも高い死亡リスクに関連している。敗血症性ショックの患者は、血液量減少が存在しない場合の、65mm Hg以上の平均動脈圧および2mmol/L超(>18mg/dL)の血清乳酸レベルを維持するための昇圧剤の必要性によって臨床的に識別することができる。
【0127】
本明細書で使用される「敗血症」という用語は、敗血症の発症における全ての可能な段階に関する。「敗血症」という用語には、SEPSIS-2の定義に基づく重症敗血症または敗血症性ショックも含まれる(Bone et al.,2009)。「敗血症」という用語には、SEPSIS-3の定義内に入る対象も含まれる(Singer et al.,2016)。本明細書で使用される「敗血症」という用語は、敗血症の発症における全ての可能な段階に関する。
【0128】
本明細書で使用される場合、本発明の範囲内の「感染」は、病原性または潜在的に病原性の薬剤/病原体、生命体および/または微生物による、通常は無菌の組織または体液への侵入によって引き起こされる病理学的プロセスを意味し、好ましくは細菌、ウイルス、真菌、および/または寄生虫による感染(複数可)に関する。したがって、感染症は、細菌感染症、ウイルス感染症、および/または真菌感染症であり得る。感染症は、局所感染症または全身感染症であり得る。本発明の目的では、ウイルス感染は、微生物による感染と見なしてもよい。
【0129】
さらに、感染関連合併症は「院内」感染であり得る。院内感染(nosocomial infection)は院内感染(hospital-acquired infection、HAI)とも呼ばれ、病院またはその他の医療施設で感染する感染である。病院および病院以外の両方の設定を強調するために、代わりにヘルスケア関連感染症(HAIまたはHCAI)と呼ばれることもある。このような感染症は、病院、介護施設、リハビリ施設、外来診療所、またはその他の臨床現場で感染し得る。院内感染は、さまざまな手段によって、臨床現場で感染しやすい患者に伝播し得る。医療スタッフは、汚染された機器、ベッドリネン、または空気の飛沫に加えて、感染を広げる可能性がある。感染は、外部環境、別の感染した患者、感染している可能性のあるスタッフ、または場合によっては感染源を決定できないことが原因である可能性がある。場合によっては、微生物が患者自身の皮膚微生物叢から発生し、保護皮膚バリアを外す手術または他の処置の後に日和見感染になる。患者は自分の皮膚から感染症にかかった可能性があるが、感染症は医療現場で発症するため、院内感染とみなされる。
【0130】
さらに、感染症を患っている対象は、同時に2つ以上の感染源(複数可)を患っている可能性がある。例えば、感染を患っている対象は、細菌感染およびウイルス感染、ウイルス感染および真菌感染、細菌感染および真菌感染、ならびに細菌感染、真菌感染、およびウイルス感染を患っているか、あるいは潜在的な重複感染、例えば1つ以上のウイルス感染および/または1つ以上の真菌感染に加えて1つ以上の細菌感染を含む、本明細書に列挙されている感染のうちの1つ以上を含む混合感染を患っている場合がある。
【0131】
本明細書で使用される場合、「感染性疾患」は、細菌および/またはウイルスおよび/または真菌感染症に関連する全ての疾患または障害を含む。好ましくは、感染性疾患は細菌性である。
【0132】
本発明の文脈において、「医療的治療」または「治療」という用語は、限定されないが、抗炎症戦略、療法的抗体などのADM拮抗薬、siRNAもしくはDNAの投与、体外血液浄化、またはアフェレーシス、透析、サイトカインストームを防ぐ吸着剤を介する有害物質の除去、炎症性メディエーターの除去、血漿アフェレーシス、ビタミンCなどのビタミンの投与、手術、緊急手術、身体に十分な酸素を提供するための機械的換気および非機械的換気のような換気、例えば、病巣洗浄手順、血液製剤の注輸、コロイドの注入、腎もしくは肝代替などの臓器置換、抗生物質治療、侵襲的機械的換気、非侵襲的機械的換気、昇圧剤使用、輸液療法、アフェレーシス、ならびに臓器保護のための措置を含む、様々な治療および療法的戦略を含む。
【0133】
当業者は、本明細書に記載の治療のどれが病院環境での投与を必要とするかを決定することができる。
【0134】
当業者はまた、どの病状、およびこのような病状のどの程度の重症度が、病院環境で、例えば、EDまたはICUなどでのみ(または主に)利用可能な治療を必要とするかを決定することができる。
【0135】
本発明のさらなる治療は、例えば正常血液量に達するために、および血液量増加または血液量減少を防ぐかあるいは治療するために、幹細胞、血液、または血漿のような細胞または細胞製剤の投与、ならびに患者の循環の安定化、および例えば最適な輸液管理戦略を介した内皮性グリコカリクスの保護を含む。さらに、昇圧剤、または例えばカテコールアミン、ならびに未分画ヘパリンまたはN-脱硫酸化再-N-アセチル化ヘパリンを介したアルブミンまたはヘパラナーゼの阻害は、循環および内皮層をサポートするのに有用な治療である。
【0136】
加えて、本発明の医療的治療は、限定されないが、血液凝固の安定化、抗線溶治療、iNOS阻害剤、ヒドロコルチゾンのような抗炎症剤、鎮静剤および鎮痛剤、ならびにインスリンを含む。
【0137】
人工的および機械的換気は、適切な気体交換および換気を向上し、重症低酸素血症時の救命を目的とする効果的なアプローチである。人工的換気は、対象の呼吸を補助または刺激することに関する。人工的換気は、機械的換気、用手的換気、体外式膜型人工肺(ECMO)、および非侵襲的換気(NIV)からなる群から選択され得る。機械的換気は、自発呼吸を機械的に補助または代替する方法に関する。これは、ベンチレーターと呼ばれる機械を伴い得る。機械的換気は、高頻度振動換気または部分的液体換気であり得る。
【0138】
「腎代替療法」(RRT)は、腎臓の正常な血液濾過機能を代替するために用いられる療法に関する。腎代替療法とは、透析(例えば、血液透析または腹膜透析)、血液濾過、および血液透析濾過を指し得る。そのような技法は、血液を機械に通し、洗浄し、次いで身体に戻す様々な方式である。腎代替療法はまた、腎移植を指し得、古い腎臓がドナーの腎臓に置き換えられるという点で、究極の形式の代替である。血液透析、血液濾過、および血液透析濾過は、持続的または間欠的であり得、動静脈経路(血液が動脈から出て静脈を介して戻る)または静静脈経路(血液が静脈から出て静脈を介して戻る)を使用することができる。これにより、様々な種類のRRTが得られる。例えば、腎代替療法は、限定されないが、持続的腎代替療法(CRRT)、持続的血液透析(CHD)、持続的動静脈血液透析(CAVHD)、持続的静静脈血液透析(CVVHD)、持続的血液濾過(CHF)、持続的動静脈血液濾過(CAVHまたはCAVHF)、持続的静静脈血液濾過(CVVHまたはCVVHF)、持続的血液透析濾過(CHDF)、持続的動静脈血液透析濾過(CAVHDF)、持続的静静脈血液透析濾過(CVVHDF)、間欠的腎代替療法(IRRT)、間欠的血液透析(IHD)、間欠的静静脈血液透析(IVVHD)、間欠的血液濾過(IHF)、間欠的静静脈血液濾過(IVVHまたはIVVHF)、間欠的血液透析濾過(IHDF)、および間欠的静静脈血液透析濾過(IVVHDF)の群から選択され得る。
【0139】
医療的治療は、温めた静脈内輸液および温風毛布の使用を含む、低体温症を回避する方法も含む。
【0140】
医療的治療はまた、出血制御、止血帯を伴うまたは伴わない出血制御技術、創傷洗浄、局所麻酔適用、皮膚接着ストリップ、組織接着剤、縫合糸、ステープルおよび創傷被覆材を使用できる創傷閉鎖技術を含む創傷管理を含む。
【0141】
本発明で使用される「輸液療法」という用語は、それを必要とする対象への輸液の投与に関する。「補液」または「輸液蘇生」という用語も使用され得る。輸液療法は、経口補水療法(飲用)、静脈内療法、直腸、または皮下組織への輸液の注射により置換される輸液を含むが、これらに限定されない。静脈内方法が好ましい。「コロイド」は、巨大有機分子の分散液(例えば、Gelofusin、Voluvenなど)である。コロイドは、典型的には、分子量により健康な半透性毛細管膜を比較的通過することができない担体溶液内の分子の懸濁液である。一実施形態では、本方法は、輸液療法が、ゼラチン、アルブミンおよび/もしくはデンプン溶液、または血液もしくは血液に由来する輸液から選択されるコロイドを含むことを示す。「晶質液」は、水中の小分子の溶液である(例えば、塩化ナトリウム、グルコース、ハルトマン液、またはリンゲル液)。晶質液は、典型的には、自由に透過するイオンの溶液であるが、輸液の張度を決定するナトリウムおよび塩化物の濃度を含有する。
【0142】
「輸液管理」とは、対象の輸液状態のモニタリングおよび制御、ならびに、例えば経口、経腸または静脈内輸液投与による循環または臓器活力を安定化させるための輸液の投与を指す。これは、流体および電解質のバランスの安定化、または血液量増加もしくは血液量減少の予防または修正、ならびに血液製剤の供給を含む。
【0143】
洗浄手順は、対象の感染、特に院内感染を防ぐための衛生的な方法であり、例えば皮膚、病室の物体、医療デバイス、診断デバイス、または部屋の空気など、患者と接触し得るすべての有機および無機質表面の消毒を含む。洗浄手順には、マウスガード、ガウン、手袋、または衛生的ロックなどの防護服およびユニットの使用、ならびに患者の訪問制限のような対策が含まれる。さらに、洗浄手順は、患者自身、および衣服または患者の洗浄を含む。
【0144】
好ましい実施形態では、「医学的治療」または「治療」という用語は、静脈内抗生物質、経口抗生物質または局所抗生物質などの抗生物質治療を含む。
【0145】
本発明の医療的治療は抗生物質治療であり得、本発明の方法により感染症が診断された場合、または予後が診断された場合に、1つ以上の「抗生物質」または「抗生剤」が投与され得る。本発明による抗生物質または抗生物質製剤はまた、診断された感染または敗血症を治療するために使用される抗真菌または抗ウイルス化合物を潜在的に包含する。病原体を分類別に分けると、任意の所与の感染の治療に一般的に適用される抗生物質製剤は以下のとおりである。
【0146】
グラム陽性適用範囲:ペニシリン、(アンピシリン、アモキシシリン)、ペニシリナーゼ耐性、(ジクロキサシリン、オキサシリン)、セファロスポリン(第1世代および第2世代)、マクロライド(エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン)、キノロン(ガチフロキサシン、モキシフロキサシン、レボフロキサシン)、バンコマイシン、スルホンアミド/トリメトプリム、クリンダマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、リネゾリド、シネルシド。
【0147】
グラム陰性適用範囲:広範囲ペニシリン(チカルシリン、クラブラン酸、ピペラシリン、タゾバクタム)、セファロスポリン(第2、第3、および第4世代)、アミノグリコシド、マクロライド、アジスロマイシン、キノロン(シプロフロキサシン)、モノバクタム(アゼトレオナム)、スルホンアミド/トリメトプリム、カルバペネム(イミペネム)、クロラムフェニコール。
【0148】
Pseudomonas適用範囲:シプロフロキサシン、アミノグリコシド、一部の第3世代セファロスポリン、第4世代セファロスポリン、広範囲ペニシリン、カルバペネム。
【0149】
真菌治療:アリルアミン、アムホテリシンB、フルコナゾールおよび他のアゾール、イトラコナゾール、ボリコナゾール、ポサコナゾール、ラブコナゾール、エキノカンジン、フルシトシン、ソルダリン(sordarin)、キチンシンターゼ阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、リポペプチド、プラジミシン、リポゾーム製剤ナイスタチン、ボリコナゾール、エキノカンジン、イミダゾール、トリアゾール、チアゾール、ポリエン。
【0150】
抗ウイルス治療:アバカビル、アシクロビル(Acyclovir)(アシクロビル(Aciclovir))、活性化カスパーゼオリゴマー化薬(oligomerizer)、アデホビル、アマンタジン、アンプレナビル(アゲネラーゼ(Agenerase))、アンプリゲン、アルビドール、アタザナビル、アトリプラ、バラビル(Balavir)、シドフォビル、コンビビル、ドルテグラビル、ダルナビル、デラビルジン、ジダノシン、二本鎖RNA、ドコサノール、エドクスジン、エファビレンツ、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、エコリエベル(Ecoliever)、ファムシクロビル、固定用量の組み合わせ(抗レトロウイルス)、ホミビルセン、ホスアンプレナビル、ホスカルネット、ホスホネット、融合阻害剤、ガンシクロビル、イバシタビン、イムノビル(Imunovir)、イドクスウリジン、イミキモド、インジナビル、イノシン、インテグラーゼ阻害剤、インターフェロンIII型、インターフェロンII型、インターフェロンI型、インターフェロン、ラミブジン、ロピナビル、ロビリデ、マラビロク、モロキシジン、メチサゾン、モルフォリノ、ネルフィナビル、ネビラピン、ネキサビル(Nexavir)、ニタゾキサニド、ヌクレオシド類似体、ノビル、オセルタミビル(タミフル)、ペグインターフェロンアルファ-2a、ペンシクロビル、ペラミビル、プレコナリル、ポドフィロトキシン、プロテアーゼ阻害剤(薬理学)、ラルテグラビル、逆転写酵素阻害剤、リバビリン、リボザイム、リファンピシン、リマンタジン、リトナビル、RNase H、プロテアーゼ阻害剤、ピラミジン、サキナビル、ソホスブビル、スタブジン、相乗的エンハンサー(抗レトロウイルス)、テラプレビル、テノホビル、テノホビルジソプロキシル、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、トルバダ(Truvada)、バラシクロビル(バルトレックス)、バルガンシクロビル、ビクリビロク、ビダラビン、ビラミジン(Viramidine)、ザルシタビン、ザナミビル(リレンザ)、ジドブジン。
【0151】
さらに、抗生剤は、細菌感染の治療のためのバクテリオファージ、合成抗微生物ペプチド、または鉄拮抗薬/鉄キレート剤を含む。また、抗VAP抗体、抗耐性クローンワクチン接種、インビトロ刺激もしくは改変Tエフェクター細胞などの免疫細胞の投与のような、病原性構造に対する療法的抗体または拮抗薬は、敗血症患者などの重篤患者の治療オプションを表す抗生剤である。感染に対する、または新たな感染の予防のためのさらなる抗生物質製剤/治療または療法的戦略には、消毒薬、除染製品、リポソームのような抗ウイルス剤、衛生、創傷手当、手術の使用が含まれる。
【0152】
先述の抗生物質製剤または治療戦略のうちのいくつかを組み合わせることも可能である。
【0153】
本発明によれば、proADMおよび任意選択的にPCTおよび/もしくは他のマーカーまたは臨床スコアは、感染性疾患の症状を示す、病院での治療を必要とする病状を発症する患者の診断、予後診断、予測、リスク評価および/またはリスク層別化のためのマーカーとして用いられる。
【0154】
当業者は、上記のADM分子、またはその断片もしくは変異体のうちのいずれか1つ、ならびに標準分子の生物学的実践に従った本発明の他のマーカーの識別、測定、決定、および/または定量化のための手段を得るかあるいは開発することが可能である。
【0155】
proADMまたはその断片のレベル、ならびに本発明の他のマーカーのレベルは、マーカーの濃度を信頼して決定する任意のアッセイによって決定することができる。特に、質量分析(MS)および/またはイムノアッセイを添付の実施例に例示されているように用いることができる。本明細書で使用される場合、イムノアッセイは、抗体もしくは抗体結合断片もしくは免疫グロブリンの使用を通して溶液中の巨大分子/ポリペプチドの存在または濃度を測定する生化学的試験である。
【0156】
本発明の文脈において使用されるADM、またはPCTなどの他のマーカーを決定する方法は、本発明において意図される。実施例として、質量分析法(MS)、発光イムノアッセイ(LIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、化学発光および蛍光イムノアッセイ、酵素イムノアッセイ(EIA)、酵素結合イムノアッセイ(ELISA)、発光ベースのビーズアレイ、磁気ビーズベースのアレイ、タンパク質マイクロアレイアッセイ、例えば、イムノクロマトグラフィーストリップテスト、希少暗号分析などの迅速試験フォーマット、ならびに自動システム/アナライザーからなる群から選択される方法を採用することができる。
【0157】
抗体認識に基づいたADMおよび任意選択的な他のマーカーの決定は、本発明の好ましい実施形態である。本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的に活性な部分、すなわち抗原と特異的に結合する(免疫反応する)抗原結合部位を含有する分子を指す。本発明によると、抗体は、モノクローナル抗体ならびにポリクローナル抗体であってもよい。特に、少なくともproADMまたはその断片に特異的に結合する抗体が使用される。
【0158】
目的の分子、例えばADMまたはその断片に対するその親和性が、目的の分子を含有する試料中に含まれる他の分子に対するよりも、少なくとも50倍高い、好ましくは100倍高い、最も好ましくは少なくとも1000倍高い場合、抗体は特異的であると見なされる。所与の特異性を有する抗体をどのように開発しそして選択するかは、当該技術分野において周知である。本発明の文脈において、モノクローナル抗体が好ましい。抗体または抗体結合断片は、本明細書に定義されたマーカーまたはその断片に特異的に結合する。特に、抗体または抗体結合断片は、本明細書で定義されたペプチドのADMに結合する。したがって、本明細書に定義されたペプチドはまた、抗体が特異的に結合するエピトープであり得る。さらに、本発明の方法およびキットでは、ADMまたはproADM、特にMR-proADMに特異的に結合する抗体または抗体結合断片が使用される。
【0159】
さらに、本発明の方法およびキットでは、proADMまたはその断片、および任意選択的にPCTなどの本発明の他のマーカーに特異的に結合する抗体または抗体結合断片が使用される。例示的なイムノアッセイは、発光イムノアッセイ(LIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、化学発光および蛍光イムノアッセイ、酵素イムノアッセイ(EIA)、酵素結合イムノアッセイ(ELISA)、発光ベースのビーズアレイ、磁気ビーズベースのアレイ、タンパク質マイクロアレイアッセイ、迅速試験フォーマット、希土類クリプテートアッセイであってもよい。さらに、ポイントオブケア試験および例えば免疫クロマトグラフィーストリップ試験などの迅速試験形式に好適なアッセイを用いることができる。KRYPTORアッセイなどの自動化されたイムノアッセイも、意図される。
【0160】
あるいは、抗体の代わりに、ADMを特異的および/または選択的に認識する他の捕捉分子または分子足場が、本発明の範囲に包含され得る。本明細書では、「捕捉分子」または「分子足場」という用語は、試料からの標的分子または目的の分子、すなわち分析物(例えば、ADM、proADM、MR-proADM、およびPCT)を結合するために使用され得る分子を含む。したがって、捕捉分子は、空間的にも、表面電荷、疎水性、親水性、ルイス供与体および/または受容体の存在または非存在などの表面の特徴に関しても適切に成形され、標的分子または目的の分子に特異的に結合する必要がある。これにより、結合は、例えば、イオン、ファンデルワールス力、パイ-パイ、シグマ-パイ、疎水性もしくは水素結合相互作用、または捕捉分子もしくは分子足場と標的分子もしくは目的の分子との間の先述の相互作用または共有結合性相互作用のうちの2つ以上の組み合わせによって媒介され得る。本発明の文脈において、捕捉分子または分子足場は、例えば、核酸分子、炭水化物分子、PNA分子、タンパク質、ペプチド、および糖タンパク質からなる群から選択され得る。捕捉分子または分子足場は、例えば、アプタマー、DARピン(Designed Ankyrin Repeat Protein)を含む。アフィマーなどが含まれる。
【0161】
本発明のある特定の態様では、方法は、
a)試料を
i.当該proADMの第1のエピトープに特異的な第1の抗体またはその抗原結合断片もしくは誘導体、および
ii.当該proADMの第2のエピトープに特異的な第2の抗体またはその抗原結合断片もしくは誘導体と接触させるステップと、
b)2つの抗体またはその抗原結合断片もしくは誘導体の、当該proADMへの結合を検出するステップと、を含む、イムノアッセイである。
【0162】
好ましくは、一方の抗体を標識し、他方の抗体を固相に結合させるか、または固相に選択的に結合させることができる。アッセイの特に好ましい態様では、抗体のうちの一方が標識される一方で、他方の抗体は、固相に結合されるか、または固相に選択的に結合され得るかのいずれかである。第1の抗体および第2の抗体が、液体反応混合物中に分散して存在し得、蛍光または化学発光消光または増幅に基づく標識系の一部である第1の標識成分が、第1の抗体に結合し、当該標識系の第2の標識成分が、第2の抗体に結合し、これにより、検出される両方の抗体の当該proADMまたはその断片への結合後、測定溶液中の得られたサンドイッチ複合体の検出を可能にする測定可能なシグナルが発生する。標識系は、希土類クリプテートまたはキレートを、特にシアニンタイプの蛍光または化学発光染料と組み合わせて含むことができる。
【0163】
好ましい実施形態では、この方法は異種サンドイッチイムノアッセイとして実施され、ここで抗体の1つは任意に選択された固相、例えば被覆試験管(例えばポリスチロール試験管;被覆管;CT)またはマイクロタイター上に固定される。他の抗体は、検出可能な標識に似ているかまたは標識への選択的結合を可能にする基を有し、そして形成されたサンドイッチ構造の検出に役立つ。適切な固相を用いた一時的な遅延またはその後の固定化も可能である。
【0164】
本発明による方法は、均質な方法としてさらに具体化することができ、検出される抗体/複数の抗体、およびマーカー、ADMまたはその断片によって形成されているサンドイッチ複合体が、液相中で懸濁されたままである。この場合、2つの抗体が使用されるとき、両方の抗体が検出系の一部で標識され、それが、両方の抗体が単一のサンドイッチに統合される場合にシグナルの発生またはシグナルの誘発をもたらすことが好ましい。そのような技術は、特に蛍光増強または蛍光消光検出方法として具体化されるべきである。特に好ましい態様は、例えば、US4882733、EP0180492、またはEP0539477、およびそれらで引用された従来技術に記載のものなど、対で使用される検出試薬の使用に関する。このようにして、反応混合物中の単一の免疫複合体中に直接両方の標識成分を含む反応生成物のみが検出される測定が可能になる。例えば、そのような技術は、上記で引用された出願の教示を実装する、商標名TRACE(登録商標)(Time Resolved Amplified Cryptate Emission)、またはKRYPTOR(登録商標)の下で提供されている。したがって、特に好ましい態様では、本明細書で提供される方法を実行するために診断デバイスが使用される。例えば、proADMもしくはその断片のレベル、および/またはPCTなど、本明細書で提供される方法の任意のさらなるマーカーのレベルが決定される。特に好ましい態様において、診断デバイスはKRYPTOR(登録商標)である。
【0165】
本発明のマーカー、例えばproADMもしくはその断片、PCTもしくはその断片、または他のマーカーのレベルは、質量分析(MS)に基づく方法によっても決定することができる。そのような方法は、当該生物学的試料または例えば当該試料からのタンパク質消化物(例えばトリプシン消化物)中の例えばADMまたはPCTのうちの1つ以上の修飾または未修飾断片ペプチドの存在、量または濃度を検出すること、ならびに任意選択的にクロマトグラフィー方法を用いて試料を分離し、調製され任意選択的に分離された試料にMS分析を施すことを含み得る。例えば、特にproADMまたはその断片の量を決定するために、選択反応モニタリング(SRM)、多重反応モニタリング(MRM)または並列反応モニタリング(PRM)質量分析をMS分析に使用することができる。
【0166】
本明細書において、「質量分析」または「MS」という用語は、化合物をそれらの質量によって同定するための分析技術を指す。質量分析の質量分解および質量決定能力を向上するために、試料は、MS分析前に処理され得る。したがって、本発明は、免疫濃縮技術、試料調製に関する方法および/またはクロマトグラフィー法、好ましくは液体クロマトグラフィー(LC)、より好ましくは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、もしくは超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)と組み合わせることができるMS検出法に関する。試料調製方法は、溶解、分画、ペプチドへの試料の消化、枯渇、濃縮、透析、脱塩、アルキル化、および/またはペプチド還元のための技術を含む。ただし、これらのステップは任意選択的である。分析物イオンの選択的検出は、タンデム質量分析(MS/MS)を用いて行うことができる。タンデム質量分析は、質量選択ステップ(本明細書で使用される場合、「質量選択」という用語は、特定のm/zまたは狭い範囲のm/zを有するイオンの単離を意味する)、続いて選択されたイオンの断片化、および得られた生成物(フラグメント)イオンの質量分析によって特徴付けられる。
【0167】
当業者は、質量分析法によって試料中のマーカーのレベルをどのように定量化するかを知っている。例えば、相対定量化「rSRM」または絶対定量化を上記のように用いることができる。
【0168】
さらに、レベル(参照レベルを含む)は、相対的定量を決定する方法または目的のタンパク質もしくはその断片の絶対定量を決定する方法などの質量分析に基づく方法によって決定することができる。
【0169】
相対定量化「rSRM」は、以下によって達成され得る。
1.試料中で検出された所与の標的断片ペプチドからのSRM(選択反応モニタリング)シグネチャーピーク面積を、少なくとも第2、第3、第4、またはそれ以上の生体試料中の標的断片ペプチドの同じSRMシグネチャーピーク面積と比較することによって、標的タンパク質の増加または減少した存在を決定する。
【0170】
2.試料中に検出された所与の標的ペプチドからのSRMシグネチャーピーク面積と、異なる別々の生物学的供給源に由来する他の試料中の他のタンパク質からのフラグメントペプチドから生じたSRMシグネチャーピーク面積とを比較することによって標的タンパク質の存在の増減を決定する。ペプチドフラグメントについての2つの試料間のSRMサインピーク面積比較は、例えば各試料中で分析されたタンパク質の量に対して正規化される。
【0171】
3.ヒストンタンパク質のレベルの、様々な細胞条件下でそれらの発現レベルを変化させない他のタンパク質のレベルへの変化を正規化するために、所与の標的ペプチドについてのSRMシグネチャーピーク面積を、同じ生体試料内の異なるタンパク質に由来する他の断片ペプチドからのSRMシグネチャーピーク面積と比較することによって、標的タンパク質の増加または減少した存在を決定する。
【0172】
4.これらのアッセイは、非修飾断片ペプチドおよび標的タンパク質の修飾断片ペプチドの両方に適用することができ、修飾には、リン酸化および/またはグリコシル化、アセチル化、メチル化(モノ、ジ、トリ)、シトルリン化、ユビキチン化が含まれる。修飾ペプチドの相対レベルは、未修飾ペプチドの相対量を決定するのと同じ方法で決定される。
【0173】
所与のペプチドの絶対定量化は、以下によって達成され得る。
1.個々の生体試料中の標的タンパク質からの所与の断片ペプチドについてのSRM/MRMシグネチャーピーク面積を、生体試料からタンパク質溶解物中にスパイクされた内部断片ペプチド標準のSRM/MRMシグネチャーピーク面積と比較する。内部標準は、調べられている標的タンパク質からの断片ペプチドの標識合成バージョンまたは標識された組換えタンパク質であり得る。この標準は、消化前(組換えタンパク質にとって必須)または後に既知量で試料中にスパイクされ、生体試料中の内部断片ペプチド標準および天然断片ペプチドの両方について別個にSRM/MRMシグネチャーピーク面積が決定され得、両方のピーク面積の比較が後に続く。これは未修飾断片ペプチドおよび修飾断片ペプチドに適用することができ、ここで修飾はリン酸化および/またはグリコシル化、アセチル化、メチル化(例えばモノ、ジ、またはトリメチル化)、シトルリン化、ユビキチン化、ここで、修飾ペプチドの絶対レベルは、未修飾ペプチドの絶対レベルを決定するのと同じ方法で決定することができる。
【0174】
2.ペプチドはまた、外部較正曲線を使用して定量化され得る。正規曲線アプローチは、内部標準として一定量の重いペプチド、および試料中にスパイクされた様々な量の軽い合成ペプチドを使用する。マトリックス効果を説明するための標準曲線を構築するために、試験試料のものと同様の代表的なマトリックスが使用される必要がある。その上、逆曲線法は、マトリックス中の内因性分析物の問題を回避し、一定量の軽いペプチドは、内因性分析物の上にスパイクされて内部標準を作り出し、様々な量の重いペプチドは、スパイクされて一組の濃度標準を作り出す。正規曲線または逆曲線のいずれかと比較される試験試料は、較正曲線を作り出すために使用されるマトリックス中にスパイクされた内部標準と同じ量の標準ペプチドでスパイクされる。
【0175】
本発明はさらに、キット、キットの使用、およびそのようなキットが使用される方法に関する。本発明は、本明細書の上記および下記に提供される方法を実施するためのキットに関する。本明細書に提供される定義、例えば方法に関して提供される定義はまた、本発明のキットにも適用される。特に、本発明は、患者の健康におけるその後の有害事象の予後診断、リスク評価、またはリスク層別化を含む療法をモニタリングするためのキットに関し、当該キットは、
-対象からの試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルを決定するため、ならびに任意選択的に加えて、PCT、乳酸、および/またはC反応性タンパク質、もしくはその一以上の断片のレベルを決定するための検出試薬と、
-当該対象の当該試料中のADMの当該レベルを決定するための検出試薬と、低重症度レベルが、4nmol/L未満、好ましくは3nmol/L未満、より好ましくは2.7nmol/L未満であり、高重症度レベルが、6.5nmol/L超、好ましくは6.95nmol/L超、より好ましくは10.9nmol/L超である、高および/または低重症度レベルのADM、ならびに任意選択的にPCT、乳酸、および/またはC反応性タンパク質レベルに対応する参照レベルなどの参照データであって、当該参照データが、好ましくはコンピュータ可読媒体に記憶され、かつ/あるいはproADMまたはその一以上の断片の決定されたレベル、ならびに任意選択的に加えてPCT、乳酸、および/またはC反応性タンパク質もしくはそれらの断片(複数可)の決定されたレベルを当該参照データと比較するために構成されているコンピュータで実行可能なコードの形式で用いられる、参照データと、を含む。
【0176】
本明細書で使用される場合、「参照データ」は、ADMおよび任意選択的にPCT、乳酸、C反応性タンパク質、および/または例えば横紋筋融解症のマーカーなどの本明細書に開示される他の適切なマーカーの参照レベルを含む。対象の試料中のADM、ならびに任意選択的にPCT、乳酸、および/またはC反応性タンパク質などの他のマーカーのレベルは、キットの参照データに含まれる参照レベルと比較することができる。参照レベルは本明細書において上記に記載されており、添付の実施例においても例示されている。参照データはまた、ADM、および任意選択的にPCT、乳酸、および/またはC反応性タンパク質のレベルが比較される参照試料を含んでもよい。参照データはまた、本発明のキットの使用方法の取扱説明書を含み得る。
【0177】
キットは、血液試料などの試料を取得するのに有用なアイテムをさらに含むことができ、例えば、キットは、容器を含むことができ、ここで、該容器は、該容器を、例えば、あらかじめ決められた量の試料を該容器に引き込むのに適している、血液単離に適し、かつ気圧よりも低い内圧を示すシリンジであるカニューレもしくはシリンジに取り付けるためのデバイスを含み、ならびに/または界面活性剤、カオトロピック塩、リボヌクレアーゼ阻害剤、イソチオシアン酸グアニジニウム、塩酸グアニジニウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、RNAse阻害タンパク質およびそれらの混合物などのキレート剤と、ニトロセルロース、シリカマトリックス、強磁性球体、カップ回収スピルオーバー、トレハロース、フルクトース、ラクトース、マンノース、ポリエチレングリコール、グリセロール、EDTA、TRIS、リモネン、キシレン、ベンゾイル、フェノール、鉱油、アニリン、ピロール、クエン酸塩、およびそれらの混合物を含むフィルターシステムと、を追加的に含む。
【0178】
本明細書で使用される場合、「検出試薬」などは、本明細書に記載の、例えば、ADM、PCT、乳酸、および/またはC反応性タンパク質のマーカー(複数可)を決定するのに好適な試薬である。このような例示的な検出試薬は、例えば、本明細書に記載のマーカーのペプチドまたはエピトープに特異的に結合するリガンド、例えば抗体またはその断片である。そのようなリガンドは、上記のようにイムノアッセイに使用することができる。マーカー(複数可)のレベルを決定するためにイムノアッセイで用いられるさらなる試薬もキットに含まれ得、本明細書において検出試薬と見なされる。検出試薬はまた、MSに基づく方法によってマーカーまたはその断片を検出するために用いられる試薬にも関係し得る。したがって、そのような検出試薬はまた、MS分析のために試料を調製するために使用される試薬、例えば酵素、化学物質、緩衝剤などであり得る。質量分析計も検出試薬と見なすことができる。本発明による検出試薬はまた、例えば、マーカー(複数可)のレベルを決定および比較するために用いられ得る較正溶液(複数可)であり得る。
【0179】
診断試験および/または予後試験の感度および特異性は、試験の分析の「品質」だけに依存するのではなく、それらはまた、異常な結果を構成するものの定義にも依存する。実際には、受信者動作特性曲線(ROC曲線)は、典型的には、「正常」集団(すなわち、感染を有さない明らかに健康な個人)、および「疾患」集団、例えば感染を有する対象における、その相対頻度に対する変数の値をプロットすることによって計算される。(ADMのような)任意の特定のマーカーについて、疾患/状態の有無にかかわらず対象についてのマーカーレベルの分布は重複する可能性があるであろう。そのような条件下では、試験は、正常と疾患を100%の正確性で完全に区別することはなく、重複の領域は、試験が正常と疾患を区別できない場所を示している可能性がある。それより下では試験が異常であると見なされ、それより上では試験が正常であると見なされ、またはそれを下回るかあるいは上回ると試験が特定の条件、例えば感染を示す、閾値が選択される。ROC曲線の下の面積は、知覚された測定値が状態の正しい識別を可能にするであろう確率の尺度である。試験結果が必ずしも正確な数を与えない場合でも、ROC曲線を使用することができる。結果をランク付けできる限り、ROC曲線を作成することができる。例えば、「疾患」試料に関する試験の結果は、程度に応じてランク付けされ得る(例えば、1=低い、2=正常、および3=高い)。このランク付けは、「正常な」集団の結果と相関し得、ROC曲線が作成され得る。これらの方法は、当該技術分野において周知であり、例えば、Hanley et al.1982.Radiology 143:29-36を参照されたい。好ましくは、閾値は、約0.5より大きい、より好ましくは約0.7より大きい、さらにより好ましくは約0.8より大きい、さらにより好ましくは約0.85より大きい、最も好ましくは約0.9より大きいROC曲線面積を提供するように選択される。この文脈における「約」という用語は、所与の測定値の+/-5%を指す。
【0180】
ROC曲線の横軸は(1-特異性)を表し、これは偽陽性の割合とともに増加する。曲線の縦軸は、感度を表し、これは真陽性率とともに増加する。したがって、選択された特定のカットオフについて、(1-特異性)の値が決定され得、そして対応する感度が得られ得る。ROC曲線下面積は、測定されたマーカーレベルが疾患または状態の正確な識別を可能にするであろう確率の尺度である。したがって、ROC曲線下面積は試験の有効性を決定するために使用することができる。
【0181】
したがって、本発明は、本明細書に記載の方法によって得られた情報に基づいた治療に好適な抗生物質の投与を含む。
【0182】
本明細書で使用される場合、「備える」および「含む」という用語またはその文法的変化形は、述べられた特徴、整数、ステップ、または構成要素を特定するものとして解釈されるべきであるが、1つの以上の追加の特徴、整数、ステップ、構成要素、またはその群の追加を除外するものではない。この用語は、「からなる」および「から本質的になる」という用語を包含する。
【0183】
したがって、「含む」/「含む」/「有する」という用語は、任意のさらなる構成要素(または同様に特徴、整数、ステップなど)が存在し得ることを意味する。「からなる」という用語は、さらなる構成要素(または同様の特徴、整数、ステップなど)が存在しないことを意味する。
【0184】
「から本質的になる」という用語またはその文法的変化形は、本明細書で使用される場合、述べられた特徴、整数、ステップ、または構成要素を特定するものと解釈されるべきであるが、1つ以上の追加の特徴、整数、ステップ、構成要素、またはその群の追加を除外しないが、それらの追加の特徴、整数、ステップ、構成要素、またはその群が、特許請求されている組成物、デバイス、または方法の基本的で新規な特徴を実質的に変化させない場合のみである。
【0185】
したがって、「から本質的になる」という用語は、特定のさらなる成分(または同様に特徴、整数、ステップなど)が存在し得ること、すなわち組成物、デバイスまたは方法の本質的な特徴に実質的に影響を及ぼさないものを意味する。言い換えれば、「から本質的になる」という用語(本明細書では「実質的に含む」という用語と互換的に使用することができる)は、必須の構成要素(または同様の特徴)に加えて組成物、デバイスまたは方法における他の構成要素の存在を可能にする。ただし、デバイスまたは方法の本質的な特徴は他の構成要素の存在によって実質的に影響されない。
【0186】
「方法」という用語は、所与のタスクを達成するための方法、手段、技術および手順を指し、これらに限定されないが、化学、生物学および生物物理学的分野の専門家に知られているこれらの方法、手段、技術および技法を含むか、または既知の方法、手段、化学、生物学および生物物理学的分野の専門家による技術および手順から容易に開発されたこれらの方法、手段、技法および手順を含む。
【実施例0187】
以下の非限定的な実施例を参照することにより本発明をさらに説明する。
バックグラウンド:
敗血症の症例の80%は、入院前の院外で始まる。敗血症治療の成功は時間に依存する。院外、例えば、感染性疾患の症状を有する患者に最初に会う医療従事者など、すなわちGPによる一次治療センターでの敗血症の早期診断が、この疾患の罹患率および死亡率を減らすための優先事項であるべきである。
【0188】
実施例で説明される研究の主な目的:
病院、すなわち病院の救急室(ER)への移送を必要とする、院外(すなわち、GP)で感染症(好ましくは呼吸器)が疑われる患者を特定し、病院へ移送されない患者と区別するための最良のバイオマーカーを見つけることである。
【0189】
バイオマーカーの予測能力は、qSOFAスコアおよびNEWスコアの予測能力と比較される。
【0190】
設計:
これは、院外で呼吸器感染症を有する患者を募集する前向き観察研究である。患者の募集は地域保健センターで行われる。GPは、地域保健センターまたは患者の自宅のいずれかで患者を募集する。
【0191】
試料サイズ:呼吸器感染症が疑われる220人の患者が評価される。
【0192】
選択基準:NEWSスコアで少なくとも1ポイントを獲得する呼吸器感染症の徴候(咳、咽頭痛、粘液産生の増加、呼吸困難..)を有する成人患者:
呼吸数:11rpm~21rpm。
酸素飽和度:95。
体温:36.0~38.1℃
収縮期血圧:110mmHg~220mmHg
心拍数:50~91
【0193】
患者の病院への移送を決定するための基準:
主治医は、自身の臨床基準に基づいて決定する。この研究は、院外の呼吸器感染症を有する患者の主治医であるGPの通常のSOPに干渉しない。
病院に移送された患者と移送されなかった患者との重症度の違いは、正規化されたデータシートに収集されたデータを使用して、研究の最後に分析される。
【0194】
除外基準:インフォームドコンセントを提出しない、18歳未満の患者。
【0195】
臨床情報:
最も関連性の高い臨床データは、標準化されたデータシートを使用して収集される。収集されたデータにより、クイックSOFAスコアおよびNEWスコアが計算され得る。
【0196】
収集した試料:患者を含めるときに、2本のPaxgeneチューブ(各2.5mLの血液)および1本のEDTAチューブ(5mL)を使用して全血を採取する。Paxgeneチューブは、-20℃で最大3ヶ月間保管され、-80℃の冷凍庫に移される。EDTAチューブからの血液は、ポイントオブケア(POC)デバイスを使用して、プロカルシトニンおよびプロアドレノメジュリンの定量化のために直ちに処理される。鼻咽頭スワブも並行して収集され、-20℃で最大3ヶ月間保管され、80oCの冷凍庫に移される。
【0197】
プロファイルされたバイオマーカー:
Paxgeneチューブ内の血液は、マイクロアレイを使用した遺伝子発現のプロファイリング、次世代シーケンシング、またはリアルタイムを使用した定量的PCR法、液滴デジタルPCR、または同様の方法に用いられる。EDTAチューブ内の血液は、サーモフィッシャーサイエンティフィック(B.R.A.H.M.S、ヘニッヒスドルフ、ドイツ)が提供するPOCデバイスを使用して、患者を含めてから最初の12時間でプロカルシトニンとプロアドレノメジュリンの定量に用いられる。
【0198】
鼻咽頭スワブは、分子生物学的方法を使用したウイルス診断に用いられる。
【0199】
統計分析:AUROCおよび多変量回帰分析を実施して、病院に移送された患者と移送されなかった患者とを区別するバイオマーカーの能力を試験する。入院が必要な患者では、同じアプローチを用いて、病棟またはICUでの入院、または死亡率を予測する。多変量線形回帰モデルは、入院期間を予測するように構築されている。
【0200】
結果:
(GPによって評価された)呼吸器感染症を有する患者はプライマリケア施設に登録された。これらの患者には、ウイルス感染症および細菌感染症(または2つの組み合わせ)を有する患者が含まれていた。
【0201】
1.2nmol/LのカットオフでのMR-proADMは、GPから紹介された後の病棟への入院に関連する独立したパラメータであった(実際に入院することは、単に紹介され、その後、再び帰されるのとは対照的に、決定要因である)。
【0202】
PCTレベルの上昇は、患者が細菌感染症かウイルス感染症かを特定することができたが、患者を病院に送る必要があるかどうかを判断する上では、proADMと比較して比較的不十分であった。
【0203】
ソリューション:
GPの手術または他のプライマリヘルスケアとの接触時点でのMR-proADMの測定により、入院を必要とする可能性がある患者を特定することができる。これにより、GP手術時およびED内での待機時間(紹介にもかかわらず、診察を受けるまで待機する必要がある)を短縮することができる。
【0204】
MR-proADM濃度が<1.2nmol/Lの患者は病院に送られず、PCT濃度に応じて自宅に持ち帰るための抗生物質が与えられるため、EDを訪れる患者数が減少する。
【0205】
したがって、両方のバイオマーカーの組み合わせにより、GPが「不必要な」患者をEDに送らないことを確実にし、同時に、自宅で治療することができる患者に抗生物質を提供することができる。最終結果-ED入院の減少、これは、疾患の重症度が不確実であると思われる場合に、患者の治療を管理するための長い間求められていたソリューションを表す。発明者の知る限り、これらの結果を示唆する任意の以前のプライマリケアMR-proADM研究はない(また確実に誰も感染症を調査していない)。
【0206】
データ:
合計:n=66
病棟での入院に値しない:n=49
病棟に入院:n=17
病棟での入院のリスクを評価するための多変量回帰分析:
【表1】
【配列表】
2024023615000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-01-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾患進行の予後診断を含む、感染性疾患の症状を有する患者における療法指導、層別化、および/または制御のための方法であって、
-前記患者からの試料を提供することと、
-前記試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルを決定することと、を含み、
-前記試料中のproADMレベルまたはその一以上の断片の低リスクレベルが、前記患者が、入院を必要とする状態への疾患進行のリスクがないことを示し、前記低リスクレベルが、1.2nmol/L±20%以下であり、かつ/または
-前記試料中のproADMレベルまたはその一以上の断片の高リスクレベルが、前記患者が入院を必要とする状態への疾患進行のリスクがあることを示し、前記高リスクレベルが、1.2nmol/L±20%超である、前記方法。
【外国語明細書】