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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023639
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】タレット型巻糸装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 67/048 20060101AFI20240214BHJP
   B65H 54/02 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B65H67/048
B65H54/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2023209586
(22)【出願日】2023-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000146984
【氏名又は名称】TMT神津株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114764
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100178124
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 英樹
(72)【発明者】
【氏名】平谷 昌弘
(57)【要約】      (修正有)
【課題】タレット盤の回転により空状態のスピンドルを待機位置から巻取位置に配置転換する際、空状態のスピンドルにおけるクラッチ機構を接続するときの衝撃を緩和させることができるタレット型巻糸装置を提供する。
【解決手段】周方向に回転可能に設けられたタレット盤2と、タレット盤2に配設され、共通の第2の駆動モータ200により軸回転しながら糸条を巻き取る複数のスピンドル3と、スピンドル3の軸方向に沿って往復移動することにより糸条を綾振りするトラバース装置4と、各部を制御する制御部と、第2の駆動モータ200とスピンドル3を回転可能に接続する回転伝達機構20を備える。回転伝達機構20は、タレット盤2の回転により空状態のスピンドル3が待機位置から巻取位置に公転しながら配置転換される過程において、空状態の該スピンドル3を予備的に空回転させたあと、巻取位置で糸条を巻き取るために空状態の該スピンドルを実回転させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に回転可能に設けられたタレット盤と、
前記タレット盤に配設され、共通の駆動モータにより軸回転しながら糸条を巻き取る複数のスピンドルと、
前記駆動モータと前記スピンドルを回転可能に接続する回転伝達機構と、
前記スピンドルの軸方向に沿って往復移動することにより糸条を綾振りするトラバース装置と、
前記タレット盤、前記スピンドルおよび前記トラバース装置を制御する制御部とを備え、
巻取位置の前記スピンドルが満巻状態になった際、前記タレット盤の回転により満巻状態の前記スピンドルを巻取位置から待機位置に公転させながら配置転換し、かつ空状態の前記スピンドルを待機位置から巻取位置に公転させながら配置転換するとともに、満巻状態の前記スピンドルから空状態の前記スピンドルに糸条を切り替えて、空状態の前記スピンドルに糸条を新たに巻き取るタレット型巻糸装置において、
前記回転伝達機構は、前記スピンドルとの間においてクラッチ機構が設けられており、 前記タレット盤の回転により空状態の前記スピンドルが待機位置から巻取位置に公転しながら配置転換される過程において、空状態の前記スピンドルを予備的に空回転させたあと、空状態の前記スピンドルにおける前記クラッチ機構が接続されることにより、糸条を巻き取るために空状態の前記スピンドルを実回転させることを特徴とするタレット型巻糸装置。
【請求項2】
前記回転伝達機構は、巻取位置において糸条を巻き取るために空状態の前記スピンドルを実回転させるための第1の回転伝達機構と、第1の回転伝達機構に回転可能に接続され、スピンドルを予備的に空回転させるための第2の回転伝達機構とを備える請求項1に記載のタレット型巻糸装置。
【請求項3】
前記第2の回転伝達機構は、前記第1の回転伝達機構に回転可能に接続される駆動側タイヤと、該駆動側タイヤに回転可能に連結され、かつ前記スピンドルに回転可能に接続されるスピンドル側タイヤとを備え、
タレット盤の回転により空状態の前記スピンドルが待機位置から巻取位置に公転しながら配置転換される過程において、前記第1の回転伝達機構と前記駆動側タイヤが回転可能に接続されることにより駆動側タイヤが回転し、それに伴って前記駆動側タイヤに連結された前記スピンドル側タイヤが回転したあと、前記スピンドル側タイヤが空状態の前記スピンドルに回転可能に接続されることにより空状態の前記スピンドルが予備的に空回転する請求項2に記載のタレット型巻糸装置。
【請求項4】
前記第2の回転伝達機構は、空状態の前記スピンドルにおける前記クラッチ機構が接続される前において、前記第1の回転伝達機構と前記駆動側タイヤの接続が解除される請求項3に記載のタレット型巻糸装置。
【請求項5】
前記第2の回転伝達機構は、空状態の前記スピンドルにおける前記クラッチ機構が接続される前において、前記スピンドル側タイヤと前記スピンドルの接続が解除される請求項3に記載のタレット型巻糸装置。
【請求項6】
前記第2の回転伝達機構は、前記駆動側タイヤが前記第1の回転伝達機構に設けられた前記駆動側ホイールに周面同士で接触することにより、前記第1の回転伝達機構に回転可能に接続される請求項3に記載のタレット型巻糸装置。
【請求項7】
前記第2の回転伝達機構は、前記スピンドル側タイヤが前記スピンドルに設けられたスピンドル側リングに周面同士で接触することにより、空状態の前記スピンドルに回転可能に接続される請求項3に記載のタレット型巻糸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のスピンドル軸に交互に糸条を巻き取るタレット型巻糸装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、周方向に回転可能に設けられたタレット盤と、タレット盤に配設され、共通の駆動モータにより軸回転しながら糸条を巻き取る複数のスピンドルと、駆動モータとスピンドルを回転可能に接続する回転伝達機構と、スピンドルの軸方向に沿って往復移動することにより糸条を綾振りするトラバース装置と、タレット盤、スピンドルおよびトラバース装置を制御する制御部とを備えるタレット型巻糸装置が知られている。
【0003】
そして、巻取位置の前記スピンドルが満巻状態になった際、前記タレット盤の回転により満巻状態の前記スピンドルを巻取位置から待機位置に配置転換し、かつ空状態の前記スピンドルを待機位置から巻取位置に配置転換するとともに、満巻状態の前記スピンドルから空状態の前記スピンドルに糸条を切り替えて、空状態の前記スピンドルに糸条を新たに巻き取ることを交互に繰り返す。
【0004】
そして、一つの共通の駆動モータと各スピンドルをクラッチ機構を介して接続する構造の場合、巻取位置では駆動モータと空状態のスピンドルの間のクラッチ機構を接続して該スピンドルの軸回転を開始する一方、待機位置では駆動モータと満巻状態のスピンドルの間のクラッチ機構の接続を解除して該スピンドルの軸回転を停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-323866号公報
【特許文献2】特開2012-126569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のタレット型巻糸装置では、タレット盤の回転により空状態のスピンドルを待機位置から巻取位置に配置転換する過程において、空状態のスピンドルと駆動モータの間のクラッチ機構を瞬間的に接続する際、クラッチ機構に大きな衝撃(特に音)が発生し、場合によってはクラッチ機構に損傷を与える虞があるという問題があった。
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、タレット盤の回転により空状態のスピンドルを待機位置から巻取位置に配置転換する際、空状態のスピンドルにおけるクラッチ機構を接続するときの衝撃を緩和させることができるタレット型巻糸装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、周方向に回転可能に設けられたタレット盤と、前記タレット盤に配設され、共通の駆動モータにより軸回転しながら糸条を巻き取る複数のスピンドルと、前記駆動モータと前記スピンドルを回転可能に接続する回転伝達機構と、前記スピンドルの軸方向に沿って往復移動することにより糸条を綾振りするトラバース装置と、前記タレット盤、前記スピンドルおよび前記トラバース装置を制御する制御部とを備え、巻取位置の前記スピンドルが満巻状態になった際、前記タレット盤の回転により満巻状態の前記スピンドルを巻取位置から待機位置に公転させながら配置転換し、かつ空状態の前記スピンドルを待機位置から巻取位置に公転させながら配置転換するとともに、満巻状態の前記スピンドルから空状態の前記スピンドルに糸条を切り替えて、空状態の前記スピンドルに糸条を新たに巻き取るタレット型巻糸装置において、前記回転伝達機構は、前記スピンドルとの間においてクラッチ機構が設けられており、前記タレット盤の回転により空状態の前記スピンドルが待機位置から巻取位置に公転しながら配置転換される過程において、空状態の前記スピンドルを予備的に空回転させたあと、空状態の前記スピンドルにおける前記クラッチ機構が接続されることにより、糸条を巻き取るために空状態の前記スピンドルを実回転させることを特徴とする。
【0009】
これによれば、前記タレット盤の回転により空状態の前記スピンドルが待機位置から巻取位置に公転しながら配置転換される過程において、空状態の前記スピンドルを予備的に空回転させたあと、空状態の前記スピンドルにおける前記クラッチ機構が接続されるため、空状態のスピンドルにおけるクラッチ機構を接続するときの衝撃を緩和させることができる。
【0010】
また、前記回転伝達機構は、巻取位置において糸条を巻き取るために空状態の前記スピンドルを実回転させるための第1の回転伝達機構と、第1の回転伝達機構に回転可能に接続され、スピンドルを予備的に空回転させるための第2の回転伝達機構とを備えてもよい。これによれば、空状態のスピンドルに糸条を巻き取るための第1の回転伝達機構による実回転を利用しながら第2の回転伝達機構により空状態のスピンドルを予備的に空回転させるため、一つの駆動モータにより空状態のスピンドルの実回転と空回転を実現することができ、装置の製造コストを抑えることが可能となる。
【0011】
また、前記第2の回転伝達機構は、前記第1の回転伝達機構に回転可能に接続される駆動側タイヤと、該駆動側タイヤに回転可能に連結され、かつ前記スピンドルに回転可能に接続されるスピンドル側タイヤとを備え、タレット盤の回転により空状態の前記スピンドルが待機位置から巻取位置に公転しながら配置転換される過程において、前記第1の回転伝達機構と前記駆動側タイヤが回転可能に接続されることにより駆動側タイヤが回転し、それに伴って前記駆動側タイヤに連結された前記スピンドル側タイヤが回転したあと、前記スピンドル側タイヤが空状態の前記スピンドルに回転可能に接続されることにより空状態の前記スピンドルが予備的に空回転してもよい。これによれば、簡易な構成にして、第1の回転伝達機構の回転を利用しながら第2の回転伝達機構により空状態の該スピンドルを簡単かつ確実に予備的に空回転させることができる。
【0012】
また、前記第2の回転伝達機構は、空状態の前記スピンドルにおける前記クラッチ機構が接続される前において、前記第1の回転伝達機構と前記駆動側タイヤの接続が解除されてもよい。これによれば、第1の回転伝達機構によるスピンドルの実回転と第2の回転伝達機構によるスピンドルの予備的な空回転とが同時に実行されることによって生じるスピンドルのスリップを防止することができる。
【0013】
また、前記第2の回転伝達機構は、空状態の前記スピンドルにおける前記クラッチ機構が接続される前において、前記スピンドル側タイヤと前記スピンドルの接続が解除されてもよい。これによれば、第1の回転伝達機構によるスピンドルの実回転と第2の回転伝達機構によるスピンドルの予備的な空回転とが同時に実行されることによって生じるスピンドルのスリップを防止することができる。
【0014】
また、前記第2の回転伝達機構は、前記駆動側タイヤが前記第1の回転伝達機構に設けられた前記駆動側ホイールに周面同士で接触することにより、前記第1の回転伝達機構に回転可能に接続されてもよい。これによれば、駆動モータの回転を第1の回転伝達機構から第2の回転伝達機構に簡単かつ確実に伝達することができる。
【0015】
また、前記第2の回転伝達機構は、前記スピンドル側タイヤが前記スピンドルに設けられたスピンドル側リングに周面同士で接触することにより、空状態の前記スピンドルに回転可能に接続されてもよい。これによれば、駆動モータの回転を第2の回転伝達機構からスピンドルに簡単かつ確実に伝達することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、前記タレット盤の回転により空状態の前記スピンドルが待機位置から巻取位置に公転しながら配置転換される過程において、空状態の前記スピンドルを予備的に空回転させたあと、空状態の前記スピンドルにおける前記クラッチ機構が接続されるため、空状態のスピンドルにおけるクラッチ機構を接続するときの衝撃を緩和させることができ、ひいては糸条の安定的な巻き取りを実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るタレット型巻糸装置を示す(a)斜視図および(b)正面図である。
図2】タレット型巻糸装置の内部構成を示す平面図である。
図3】タレット型巻糸装置の内部構成を示す側面図である。
図4】第2の回転伝達機構を示す正面図である。
図5】第2の回転伝達機構を示す平面図である。
図6】第2の回転伝達機構とスピンドルの対応関係を示す側面図である。
図7】クラッチ機構の(a)接続状態と(b)解除状態を示す拡大平面図である。
図8】タレット型巻糸装置の電気的構成を示すブロック図である。
図9】第2の回転伝達機構の動作(接続前状態)を示す概念図である。
図10】第2の回転伝達機構の動作(駆動側タイヤ接続状態)を示す概念図である。
図11】第2の回転伝達機構の動作(スピンドル側タイヤ接続状態)を示す概念図である。
図12】第2の回転伝達機構の動作(接続解除後状態)を示す概念図である。
図13】各部の動作のタイミングチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明に係るタレット型巻糸装置(以下、本装置という)の実施形態について図1図13を参照しつつ説明する。
【0019】
[全体構成]
本装置は、図1に示すように、装置の基枠1と、基枠1に設けられたタレット盤2と、該タレット盤2に配設された一対のスピンドル3と、基枠1におけるタレット盤2の正面視左側に設けられたトラバース装置4と、基枠1の背面側に設けられたブレーキ装置5と、タレット盤2、スピンドル3およびトラバース装置4の動作を制御する制御部6とを備える。
【0020】
前記タレット盤2は、金属製の薄型円盤状に形成され、基枠1内の第1の駆動モータ100にタレット盤用の回転伝達機構10を介して接続され、第1の駆動モータ100により周方向(正面から見て左周り)に沿って半回転するものとなされている。具体的には、前記タレット盤2は、図1に示すように、巻取位置A(図1の左側位置)のスピンドル3が満巻状態になった場合、周方向に沿って半回転することにより、満巻状態のスピンドル3を巻取位置A(図1の左側位置)から待機位置B(図1の右側位置)に配置転換するとともに、空状態のスピンドル3を待機位置B(図1の右側位置)から巻取位置A(図1の左側位置)に配置転換する。
【0021】
なお、タレット盤用の回転伝達機構10は、図2および図3に示すように、第1の駆動モータ100に接続された歯車11と、該歯車11に噛合する中歯車12と、該中歯車12の同軸上に設けられた歯車13と、該歯車13に噛合する大歯車14と、該大歯車14に一端部が連結され、かつ他端部がタレット盤2に連結された回転軸15とを備え、第1の駆動モータ100の回転が各歯車11~14及び回転軸15を介してタレット盤2に伝達される。
【0022】
前記スピンドル3は、図1に示すように、タレット盤2の同心円上の対称位置において前方向に突出する態様で片持支持され、タレット盤2の回転により巻取位置Aと待機位置Bの間を公転しながら交互に配置転換される。
【0023】
また、前記スピンドル3は、タレット盤2を貫通するスピンドル軸31と、基枠1の正面側においてスピンドル軸31の周囲において糸条を巻き取るボビンホルダ32と、基枠1の背面側においてスピンドル軸31の基端部に同心状に設けられたリング状のスピンドル側リング33と、ボビンホルダ32の基端部側において糸条の切り替え時に糸条を把持する把持部34とを備える。
【0024】
また、前記スピンドル3は、基枠1内に設けられた共通の第2の駆動モータ200とスピンドル用の回転伝達機構20を介して接続されており、制御部6の命令により巻取位置Aにおいて糸条を軸回転しながら空状態から満巻状態になるまで巻き取るものとなされている。なお、スピンドル用の回転伝達機構20の構成および動作は後述する。
【0025】
また、前記スピンドル3は、スピンドル軸31とスピンドル用の回転伝達機構20の間にクラッチ機構8(ドッグクラッチ)が設けられている。このクラッチ機構8は、図7に示すように第1の回転伝達機構21の駆動側ホイール218に連結された第1のクラッチ歯81と、スピンドル3のスピンドル軸31に連結された第2のクラッチ歯82からなり、制御部6の命令するタレット盤2の動作に連動するドック機能によりクラッチ機構8が動作するものとなされている。
【0026】
具体的には、スピンドル3が巻取位置Aに配置される際、図7(a)に示すように、該スピンドル3のクラッチ機構8が接続状態(第1のクラッチ歯81と第2のクラッチ歯82が噛み合った状態)になって、該スピンドル3と第2の駆動モータ200がスピンドル用の回転伝達機構20の第1の回転伝達機構21を介して回転可能に直接連結されるため、巻取位置Aのスピンドル3が軸回転しながら糸条を巻き取る。一方、スピンドル3が待機位置Bに配置される際、図7(b)に示すように、該スピンドル3のクラッチ機構8の解除状態(第1のクラッチ歯81と第2のクラッチ歯82が離れた状態)になって、該スピンドル3と第2の駆動モータ200の連結も解除されるため、待機位置Bのスピンドル3が第2の駆動モータ200からフリーな状態となって軸回転を停止する。なお、本実施形態では、クラッチ機構8としてドッグクラッチを用いたが、摩擦クラッチや流体クラッチなど、その他のクラッチを用いてもよい。
【0027】
また、前記スピンドル3は、ボビンホルダ32の基端部側に糸条を把持するための把持部34が設けられている。本実施形態では、把持部34は、ボビンホルダ32の基端部側の隙間であって、糸条の切り替え時において所定の隙間に糸条が嵌り込んだあと、該隙間が閉じて糸条を挟着することによって、糸条を把持するものとなされている。
【0028】
また、前記スピンドル3は、ボビンホルダ32の基端部側の周囲にカッター7が設けられている。このカッター7は、タレット盤2の回転により巻取位置Aの満巻状態のスピンドル3と待機位置Bの空状態のスピンドル3を互いに公転させながら配置転換する際、満巻状態のスピンドル3から空状態の前記スピンドル3に糸条を切り替えるときに糸条を切断する。
【0029】
前記トラバース装置4は、基枠1からスピンドル3の軸方向に沿って前方に突出する態様で設けられたトラバース装置本体41と、トラバース装置4に設けられたトラバースガイド42を備える。このトラバースガイド42は、駆動モータ(通常はスピンドル3を軸回転させる第2の駆動モータ200)に所定のカムシフト機構を介して接続され、スピンドル3の軸方向に沿ってスピンドル3の先端部側の折返位置と基端部側の折返位置の間を往復移動することにより、装置外から送られてきた糸条を綾振りしながら巻取位置Aで軸回転するスピンドル3に案内する。
【0030】
また、前記トラバース装置4は、満巻状態の前記スピンドル3から空状態のスピンドル3に糸条を切り替える際、トラバースガイド42が往復移動の基端部側の折返位置を越えて移動することにより、糸条を該スピンドル3の基端部側に引き込み、スピンドル3の把持部34により糸条が把持されたあと、基端部側の折返位置に再び戻るように移動する。
【0031】
次に本装置による糸条の巻き取りの全体の動作について説明する。
【0032】
まず、巻取位置Aの空状態のスピンドル3が糸条を把持したあと、空状態のスピンドル3が軸回転しながら糸条を巻き取っていき、所定径のパッケージの満巻状態になるまで糸条の巻き取りを継続する。
【0033】
そして、巻取位置Aのスピンドル3が満巻状態になった際、タレット盤2の回転により満巻状態のスピンドル3を巻取位置Aから待機位置Bに公転させながら配置転換し、かつ空状態のスピンドル3を待機位置Bから巻取位置Aに公転させながら配置転換する。
【0034】
そして、待機位置Bの満巻状態のスピンドル3から巻取位置Aの空状態のスピンドル3に糸条を切り替えたあと、空状態のスピンドル3に糸条を新たに巻き取るとともに、満巻状態のスピンドル3から糸条のパッケージを引き抜きながら取り出す。
【0035】
[スピンドル用の回転伝達機構20の構成]
次にスピンドル用の回転伝達機構20の構成について、図2図6を参照しつつ説明する。
【0036】
前記スピンドル用の回転伝達機構20は、巻取位置において糸条を巻き取るために空状態のスピンドル3を実回転させるための第1の回転伝達機構21と、スピンドル3を実回転前に予備的に空回転させるための第2の回転伝達機構22とを備える。
【0037】
前記第1の回転伝達機構21は、図2および図3に示すように、第2の駆動モータ200に接続されたプーリー211と、該プーリー211に一方が巻架されるベルト212と、該ベルト212の他方に巻架されるプーリー213と、一端部に該プーリー213が連結された回転軸214と、該回転軸214の他端部に連結されたプーリー215と、該プーリー215に巻架されるベルト216と、該ベルト216の両側部に巻架されるプーリー217と、プーリー217の同軸上に設けられた駆動側ホイール218とを備え、両駆動側ホイール218がクラッチ機構8を介して両スピンドル軸31に接続される。これにより、クラッチ機構8が接続されている場合、第2の駆動モータ200の回転がプーリー211、ベルト212、プーリー213、回転軸214、プーリー215、ベルト216、プーリー217、駆動側ホイール218、さらには接続状態のクラッチ機構8を介して各スピンドル3に伝達される一方、クラッチ機構8の接続が解除されている場合、第2の駆動モータ200の回転はスピンドル3に伝達されない。なお、駆動側ホイール218は、駆動モータ200と第1の回転伝達機構21を介して接続されることにより常時回転した状態であって、タレット盤2の回転により対応するスピンドル3とともに公転する。
【0038】
前記第2の回転伝達機構22は、図4図6に示すように、スピンドル3の公転に伴って第1の回転伝達機構21の駆動側ホイール218に回転可能に接続される駆動側タイヤ221と、スピンドル3の公転に伴ってスピンドル3のスピンドル側リング33に回転可能に接続されるスピンドル側タイヤ222と、駆動側タイヤ221とスピンドル側タイヤ222を回転可能に連結する連結機構223を備える。
【0039】
前記駆動側タイヤ221は、連結機構223に対して後側の位置において、スピンドル3の回転軌道面に直交する方向(スピンドル3の軸方向)を回転軸としながら支持枠1aにバネ部材224を介して回転可能に軸支されており、公転してきた第1の回転伝達機構21の駆動側ホイール218に所定の圧力で周面同士が接触するものとなされている。
【0040】
前記スピンドル側タイヤ222は、連結機構223に対して前側の位置において、スピンドル3の回転軌道面に直交する方向(スピンドル3の軸方向)を回転軸としながら支持枠1aにバネ部材224を介して回転可能に軸支されており、公転してきたスピンドル3のスピンドル側リング33に所定の圧力で周面同士が接触するものとなされている。なお、スピンドル側タイヤ222は、駆動側タイヤ221よりも直径が小さく形成されるとともに、駆動側タイヤ221に対してスピンドル3の回転軌道方向側にずれた位置に設けられており、駆動側タイヤ221と駆動側ホイール218が接触した後にスピンドル側リング33に接触するようになっている。
【0041】
前記連結機構223は、図5に示すように、駆動側タイヤ221の回転軸上に設けられた駆動側プーリー223aと、支持枠1aに設けられた共用プーリー223bと、スピンドル側タイヤ222の回転軸上に設けられたスピンドル側プーリー223cと、駆動側プーリー223aと共用プーリー223bに巻架される駆動側ベルト223dと、スピンドル側プーリー223cと共用プーリー223bに巻架されるスピンドル側ベルト223eとを備え、駆動側タイヤ221の回転をスピンドル側タイヤ222に伝達する。
【0042】
而して、タレット盤2の回転により空状態のスピンドル3が待機位置から巻取位置に公転しながら配置転換される過程において、第2の回転伝達機構22の駆動側タイヤ221が空状態のスピンドル3とともに公転してきた第1の回転伝達機構21の駆動側ホイール218に周面同士を接触させながら回転可能に接続され、それに伴って駆動側タイヤ221に連結機構223を介して連結されたスピンドル側タイヤ222が回転したあと、スピンドル側タイヤ222が公転してきた空状態のスピンドル3のスピンドル側リング33に周面同士を接触させながら回転可能に接続されることにより、空状態の該スピンドル3が予備的に空回転する。
【0043】
また、その後、タレット盤2の回転により空状態のスピンドル3が巻取位置Aに配置される前の公転中において、スピンドル3のスピンドル軸31と第1の回転伝達機構21がクラッチ機構8を介して接続されることにより、空状態のスピンドル3が糸条を巻き取るために実回転する。
【0044】
なお、本実施形態では、第1の回転伝達機構21とスピンドル3がクラッチ機構8を介して回転可能に接続されることによりスピンドル3が糸条を巻き取るために実回転する前において、つまり空状態の前記スピンドル3におけるクラッチ機構8が接続状態になる前において、第1の回転伝達機構21の駆動側ホイール218と第2の回転伝達機構22の駆動側タイヤ221の接続が解除される。具体的には、タレット盤2の回転により空状態のスピンドル3が公転することによって、第1の回転伝達機構21の駆動側ホイール218と第2の回転伝達機構22の駆動側タイヤ221が互いに離間することにより接続が解除される。
【0045】
また、第1の回転伝達機構21の駆動側ホイール218と第2の回転伝達機構22の駆動側タイヤ221の接続が解除されたあと、第2の回転伝達機構22のスピンドル側タイヤ222とスピンドル3のスピンドル側リング33の接続も解除される。具体的には、タレット盤2の回転により空状態のスピンドル3がさらに公転することによって、第2の回転伝達機構22のスピンドル側タイヤ222とスピンドル3のスピンドル側リング33が互いに離間することにより接続が解除される。
【0046】
[スピンドル用の回転伝達機構の動作]
次にスピンドル用の回転伝達機構20の動作について、図9図13を参照しつつ説明する。なお、図9~11については、説明の便宜上、第1の回転伝達機構21の駆動側ホイール218および第2の回転伝達機構22の駆動側タイヤ221における駆動側の動作と、第2の回転伝達機構22のスピンドル側タイヤ222およびスピンドル3のスピンドル側リング33におけるスピンドル側の動作を分けて、本装置の正面側から見た状態を図示する。また、各部の動作を示すタイミングチャートを図13に示す。
【0047】
まず、図9に示すように、空状態のスピンドル3が待機位置Bから巻取位置Aに向けて公転を開始した際、第2の回転伝達機構22の駆動側タイヤ221と第1の回転伝達機構21の駆動側ホイール218は未接続の状態であって、第2の回転伝達機構22のスピンドル側タイヤ222とスピンドル3のスピンドル側リング33も未接続の状態となっているため、スピンドル3は未だ予備的に空回転しない。なお、空状態のスピンドル3におけるクラッチ機構8は、解除状態(図7(b)に示す第1のクラッチ歯81と第2のクラッチ歯82が離れた状態)になっており、後述するように空状態のスピンドル3が巻取位置Aに配置される前の公転中に接続状態(図7(a)に示す第1のクラッチ歯81と第2のクラッチ歯82が噛み合った状態)になるまで解除状態を維持する。
【0048】
そして、空状態のスピンドル3がさらに巻取位置Aに向けて公転すると、図10(a)に示すように、第2の回転伝達機構22の駆動側タイヤ221と第1の回転伝達機構21の駆動側ホイール218が周面同士を接触させながら回転可能に接続されることにより、第2の回転伝達機構22の駆動側タイヤ221が回転を開始し、それに伴って駆動側タイヤ221に連結されたスピンドル側タイヤ222も回転を開始する。このとき、図10(b)に示すように、スピンドル3のスピンドル側リング33は第1の回転伝達機構21の駆動側ホイール218よりも直径が小さいことから、第2の回転伝達機構22のスピンドル側タイヤ222とスピンドル3のスピンドル側リング33は未接続の状態のままになっているため、スピンドル3は未だ予備的に空回転しない。
【0049】
そして、空状態のスピンドル3がさらに巻取位置Aに向けて公転すると、図11(a)に示すように、第2の回転伝達機構22の駆動側タイヤ221と第1の回転伝達機構21の駆動側ホイール218が周面同士を接触させながら回転可能に接続された状態を継続することにより、第2の回転伝達機構22の駆動側タイヤ221が回転を継続し、それに伴って駆動側タイヤ221に連結されたスピンドル側タイヤ222も回転を継続する。このとき、図11(b)に示すように、第2の回転伝達機構22のスピンドル側タイヤ222とスピンドル3のスピンドル側リング33が周面同士を接触させながら回転可能に接続されるため、スピンドル側リング33が設けられたスピンドル3が予備的に空回転する。
【0050】
そして、空状態のスピンドル33がさらに巻取位置Aに向けて公転すると、図12(a)に示すように、第2の回転伝達機構22の駆動側タイヤ221と第1の回転伝達機構21の駆動側ホイール218が周面同士を離間させて接続が解除されることにより、第2の回転伝達機構22の駆動側タイヤ221がフリー状態で惰性的に回転し、それに伴って駆動側タイヤ221に連結されたスピンドル側タイヤ222もフリー状態で惰性的に回転する。このとき、図12(b)に示すように、第2の回転伝達機構22のスピンドル側タイヤ222とスピンドル3のスピンドル側リング33も周面同士を離間させて接続が解除されるが、スピンドル側リング33が設けられたスピンドル3はフリー状態で惰性的に空回転する。これにより、第1の回転伝達機構21によるスピンドル3の実回転と第2の回転伝達機構33によるスピンドル3の予備的な空回転とが同時に実行されることによって生じるスピンドル3のスリップを防止することができる。
【0051】
その後、空状態のスピンドル3は、さらに公転して巻取位置Aに配置される前の公転中において、第1の回転伝達機構21との間のクラッチ機構8が解除状態(図7(b)に示す第1のクラッチ歯81と第2のクラッチ歯82が離れた状態)から接続状態(図7(a)に示す第1のクラッチ歯81と第2のクラッチ歯82が噛み合った状態)に移行することにより、糸条を巻き取るために所定の回転速度の実回転を開始して、満巻状態になるまで実回転を継続する。
【0052】
このように、タレット盤2の回転により空状態のスピンドル3が待機位置Bから巻取位置Aに公転しながら配置転換される過程において、空状態のスピンドル3を予備的に空回転させたあと、空状態のスピンドル3との間の前記クラッチ機構8が接続されるため、空状態のスピンドル3におけるクラッチ機構8を接続するときの衝撃を緩和させることができる。特に本実施形態では、空状態のスピンドル3に糸条を巻き取るための第1の回転伝達機構21による実回転を利用しながら第2の回転伝達機構22により空状態のスピンドル3を予備的に空回転させるため、一つの駆動モータ200により空状態のスピンドル3の実回転と空回転を実現することができ、装置の製造コストを抑えることが可能となる。
【0053】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…基枠
2…タレット盤
3…スピンドル
31…スピンドル軸
32…ボビンホルダ
33…スピンドル側リング
34…把持部
4…トラバース装置
41…トラバース装置本体
42…トラバースガイド
5…ブレーキ装置
6…制御部
7…カッター
8…クラッチ機構
81…第1のクラッチ歯
82…第2のクラッチ歯
10…タレット盤用の回転伝達機構
11…歯車
12…中歯車
13…歯車
14…大歯車
15…回転軸
20…スピンドル用の回転伝達機構
21…第1の回転伝達機構
211…プーリー
212…ベルト
213…プーリー
214…回転軸
215…プーリー
216…ベルト
217…プーリー
218…駆動側ホイール
22…第2の回転伝達機構
221…駆動側タイヤ
222…スピンドル側タイヤ
223…連結機構
224…調整バネ
100…第1の駆動モータ
200…第2の駆動モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13