(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002365
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】紫外半導体発光素子
(51)【国際特許分類】
H01L 33/02 20100101AFI20231228BHJP
H01L 33/32 20100101ALI20231228BHJP
【FI】
H01L33/02
H01L33/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101510
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 亨
(72)【発明者】
【氏名】小川 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】加納 裕之
【テーマコード(参考)】
5F241
【Fターム(参考)】
5F241AA14
5F241CA05
5F241CA40
5F241CA48
5F241CA58
5F241CA65
5F241CB11
5F241FF16
(57)【要約】
【課題】
駆動して深紫外光を出射しているか否かを使用者が容易に確認可能な紫外半導体発光素子を提供することを目的としている。
【解決手段】
本発明による紫外半導体発光素子は、単結晶AlN基板と、前記単結晶AlN基板上に形成されたn型AlGaN層と、前記n型AlGaN層上に形成され、発光ピーク波長が250nm以上280nm以下である活性層と、前記活性層上に形成されたp型AlGaN層と、を有し、前記単結晶AlN基板中のC濃度は3×10
17atoms/cm
3以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶AlN基板と、
前記単結晶AlN基板上に形成されたn型AlGaN層と、
前記n型AlGaN層上に形成され、発光ピーク波長が250nm以上280nm以下である活性層と、
前記活性層上に形成されたp型AlGaN層と、を有し、
前記単結晶AlN基板中のC濃度は3×1017atoms/cm3以上である紫外半導体発光素子。
【請求項2】
前記単結晶AlN基板は、前記活性層の前記発光ピーク波長の光に対する吸収係数が15cm-1以上である請求項1に記載の紫外半導体発光素子。
【請求項3】
前記単結晶AlN基板中のSi濃度とO濃度との合計が前記C濃度よりも高い、請求項1に記載の紫外半導体発光素子。
【請求項4】
前記単結晶AlN基板は、平面視において、前記活性層の前記発光ピーク波長に対する吸収係数をαとし、前記単結晶AlN基板の厚みをxとしたとき、次式(1)で表される内部透過率τが30%以上70%以下である領域を有する請求項1に記載の紫外半導体発光素子。
【数1】
【請求項5】
前記単結晶AlN基板は、平面視において、前記内部透過率τが40%以上60%以下である領域を有する請求項4に記載の紫外半導体発光素子。
【請求項6】
前記領域は前記単結晶AlN基板の上面の外縁に沿っている請求項4または5に記載の紫外半導体発光素子。
【請求項7】
単結晶AlN基板と、
前記単結晶AlN基板上に形成されたn型AlGaN層と、
前記n型AlGaN層上に形成され、発光ピーク波長が250nm以上280nm以下である活性層と、
前記活性層上に形成されたp型AlGaN層と、を有し、
発光スペクトルにおいて、450nm以上800nm以下の波長範囲における発光ピークが590nm以上610nm以下の範囲にある紫外半導体発光素子。
【請求項8】
駆動時における波長590nm以上610nm以下の光の出力が0.15μW以上である請求項7に記載の紫外半導体発光素子。
【請求項9】
前記単結晶AlN基板は、前記活性層からの出射光の一部を吸収し、前記出射光の吸収に応じて590nm以上610nm以下の波長範囲の光を発する請求項7に記載の紫外半導体発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子、特に、紫外光を放出可能な紫外半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、深紫外線領域に発光ピーク波長を有する半導体発光素子が、空気や水の殺菌効果を有する光源として注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、AlN基板上にAlGaN系半導体層が形成された深紫外領域の光半導体素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Applied Physics Letters 104, 202106 (2014)
【非特許文献2】Semiconductor Science and Technology 35 (2020) 125006
【非特許文献3】Applied Physics Letters 100, 191914 (2012)
【非特許文献4】Applied Physics Express 5 (2012) 125501
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような光半導体素子を用いた装置を使用する場合、当該光半導体素子から出射される深紫外光が人体に影響を与え得る故、当該光半導体素子の駆動中は人体への暴露を避けるように当該装置の作業員等に促す必要がある。そのため、当該光半導体素子が駆動して深紫外光を発している場合には一見して認識できることが理想的である。
【0007】
しかしながら、深紫外光は肉眼では見えないため、当該光半導体素子を目視しても当該光半導体素子が駆動か否かすなわち深紫外光を発しているか否かを確認することが困難であった。
【0008】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、駆動して深紫外光を出射しているか否かを使用者が容易に確認可能な紫外半導体発光素子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による紫外半導体発光素子は、単結晶AlN基板と、前記単結晶AlN基板上に形成されたn型AlGaN層と、前記n型AlGaN層上に形成され、発光ピーク波長が250nm以上280nm以下である活性層と、前記活性層上に形成されたp型AlGaN層と、を有し、前記単結晶AlN基板中のC濃度は3×1017atoms/cm3以上である。
【0010】
また、本発明による紫外半導体発光素子は、単結晶AlN基板と、前記単結晶AlN基板上に形成されたn型AlGaN層と、前記n型AlGaN層上に形成され、発光ピーク波長が250nm以上280nm以下である活性層と、前記活性層上に形成されたp型AlGaN層と、を有し、発光スペクトルにおいて、450nm以上800nm以下の波長範囲における発光ピークが590nm以上610nm以下の範囲にある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】実施例1に係る発光装置の波長265nmの光出力を示す図である。
【
図4】実施例1に係る発光装置の波長600nmの光出力を示す図である。
【
図5】実施例1に係る発光装置の駆動電流ごとの発光スペクトルを示す図である。
【
図6】実施例1に係る発光装置の駆動電流ごとの発光スペクトルを示す図である。
【
図10】実施例3の変形例に係る発光装置の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下においては、本発明の好適な実施例について説明するが、これらを適宜改変し、組合せてもよい。また、以下の説明及び添付図面において、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符を付して説明する。
【実施例0013】
添付図面を参照しつつ、本発明の実施例1に係る発光装置10の構成について説明する。
【0014】
図1は、発光装置10の上面図である。発光装置10は、上面形状が矩形のサブマウント基板15及び当該サブマウント基板15上に配された上面形状が矩形の基板13を含む紫外半導体発光素子11を含んで構成されている。発光装置10において、基板13の矩形の上面13Sが光出射面となっている。
【0015】
図2は、発光装置10を
図1中の2-2線に沿って切断した断面図である。サブマウント基板15は、上述のように上面形状が矩形の平板状の基板である。サブマウント基板15は、AlNセラミック基板等の絶縁性の基板である。なお、サブマウント基板15は、他の材料からなる基板、例えばアルミナ等の材料からなる基板であってもよい。
【0016】
サブマウント基板15の上面には、互いに離隔した金属電極であるp配線電極16及びn配線電極17が形成されている。サブマウント基板15の下面には、互いに離隔した金属電極であるp裏面電極18及びn裏面電極19が形成されている。p裏面電極18及びn裏面電極19は、例えば貫通ビアを介して、p配線電極16及びn配線電極17に夫々電気的に接続されている。
【0017】
紫外半導体発光素子11は、基板13と、基板13の下面に形成された活性層を含む複数の窒化物系半導体層からなる半導体積層体20とを含んで構成されている。当該活性層の発光ピーク波長は、深紫外領域の波長の光であり、具体的には、250nm以上280nm以下の波長の光である。
【0018】
基板13は、上述のように矩形の上面形状を有している平板状の基板である。基板13は、C(炭素)、Si(ケイ素)及びO(酸素)を不純物として含む単結晶AlN基板である。上述のように、基板13の上面13Sが発光装置10の光出射面となっている。また、基板13は、250nmから280nmの波長の紫外光が入射するとその一部を吸収し、当該吸収に応じて可視光を発する光物性を有している。
【0019】
半導体積層体20は、基板13の下面を覆うように形成されている複数の半導体層を含む積層構造体である。半導体積層体20は、基板13上に、有機金属気相成長法(MOCVD:metal organic chemical vapor deposition)によって順にエピタキシャル成長されたn型クラッド層21、活性層23、及びp型半導体層25を含む。
【0020】
n型クラッド層21は、基板13の下面を覆うように形成され、n型の不純物がドープされて導電性を有するAlGaN層である。n型クラッド層21には、n型不純物として、例えば、Siがドープされている。
【0021】
n型クラッド層21は、メサ形状を有している。具体的には、n型クラッド層21は下面の外縁に沿った1の領域(図中右側部分)が窪んでおり、当該1の領域以外の他の領域が台地部分となっている。
【0022】
なお、基板13とn型クラッド層21との間に基板13と格子整合したAlNバッファ層を設けてもよい。
【0023】
活性層23は、n型クラッド層21の下面のメサ形状の台地部分に形成されている。活性層23は、互いに組成比が異なるAlGaN層である障壁層と井戸層とによって構成される量子井戸構造を有している。活性層23の発光ピーク波長は250~280nmの範囲内にある。
【0024】
活性層23の構造は、発光ピーク波長が250~280nmとなるように構成されていれば特に制限はない。例えば、井戸層のAl組成や膜厚、障壁層のAl組成等を適切に設定することで、発光ピーク波長を250~280nmとすることができる。なお、井戸層や障壁層は、Siがドープされたn型層としてもよい。
【0025】
また、量子井戸の層数についても特に限定されるものではなく、複数の井戸層が形成された多重量子井戸(MQW:Multi Quantum Well)構造であってもよく、単一量子井戸(SQW:Single Quantum Well)であってもよい。例えば、井戸層の数は、1~5の範囲で適宜決定することが好ましい。
【0026】
p型半導体層25は、電子ブロック層27、p型クラッド層29、及びコンタクト層31がこの順に活性層23上に積層されて構成されている。
【0027】
電子ブロック層27は、活性層23上に形成され、p型のドーパントとしてMg(マグネシウム)を含むAlN層である。電子ブロック層27は、活性層23に注入された電子がp型クラッド層29へオーバーフローすることを抑制するための電子ブロック層(EBL:Electron Blocking Layer)として機能する。
【0028】
電子ブロック層27について、p型ドーパントを含まないようにしてもよい。また、紫外半導体発光素子11において、電子ブロック層27を設けない構成にしてもよい。
【0029】
p型クラッド層29は、電子ブロック層27上に形成され、p型ドーパントとしてMgがドーピングされたAlGaN層である。
【0030】
コンタクト層31は、p型クラッド層29上に形成され、p型ドーパントとしてMgがドーピングされたGaN層である。コンタクト層31は、コンタクト層31上に設けられる電極との接触抵抗を下げる目的で設けられている。
【0031】
なお、電子ブロック層27、p型クラッド層29、及びコンタクト層31のp型のドーパント材料としては、Mgの他にZn(亜鉛),Be(ベリリウム)、C(炭素)等を用いることができる。
【0032】
n電極33は、n型クラッド層21の露出している表面21E上に設けられた金属の電極である。n電極33は、n型クラッド層21に電気的に接続されている。また、n電極33は、導電性の接合部材35を介してサブマウント基板15上のn配線電極17に電気的に接続されている。
【0033】
p電極37は、コンタクト層31上に設けられた金属電極である。p電極37は、コンタクト層31に電気的に接続されている。また、p電極37は、導電性の接合部材39を介してサブマウント基板15上のp配線電極16に電気的に接続されている。
【0034】
以上のように、紫外半導体発光素子11は、サブマウント基板15上にフリップチップ実装されている。なお、紫外半導体発光素子11は、メサ形状を有する場合について説明したが、これに限られず、n型クラッド層21と、n配線電極17とは、半導体積層体20に設けられてn型クラッド層21に達する貫通孔を介して電気的に接続されていてもよい。
【0035】
上記のような構成により、p裏面電極18及びn裏面電極19を介して発光装置10に電流が注入されると、紫外半導体発光素子11の活性層23から、250nm以上280nm以下を発光ピーク波長とする深紫外光が放出される。また、基板13の上面13Sからは、当該深紫外光と共に基板13における当該深紫外光の吸収によって生じた可視光が放出される。
【0036】
[基板13の好ましい光物性]
続いて、基板13の光物性及び発光装置10に対して好ましい光物性をもたらす基板13の構成について詳細に説明する。上述したように、基板13は、活性層23からの出射光の一部を吸収して当該出射光よりも長波長の光を発するという光物性を有する。
【0037】
具体的には、基板13は、活性層23から放出された波長約265nmにピークを持つ250nm以上280nm以下の波長の光(以下、単に深紫外光とも称する)の一部を吸収し、基板13に含まれる不純物による吸収発光過程によって、波長約600nmにピークを持つ590nm以上610nm以下の波長の光(以下、単に赤色光とも称する)を発する。
【0038】
発光装置10においては、駆動中において、紫外半導体発光素子11が発光していることがユーザに視認しやすいように、オレンジ色から赤色に見えかつ視認可能な可視光が光出射面13Sから出射されるのが好ましい。オレンジ色から赤色という色は、視認しやすい色であることに加えて、一般に警告や禁止を示す意味を持つ場合も多く、紫外半導体発光素子11が発光していることについてユーザに注意喚起を促すことができる点においても、紫外半導体発光素子11の発光色として好ましい。
【0039】
このオレンジ色から赤色に見える赤色光の出射を達成するために、発光装置10においては、光出射面13Sからの出射光の発光スペクトルが、450-800nmの可視光の波長範囲で590nm以上610nm以下の範囲にピークを有することが好ましい。また、当該出射される赤色光を視認可能となすために、当該赤色光が所定以上の光出力(例えば、0.15μW以上)であることが好ましい。
【0040】
発光装置として、深紫外光による殺菌等の主目的を達成する十分な深紫外光の発光強度を得ながら、上記したような目視で認識可能な赤色光を発するようにするためには、基板13は、十分な赤色発光が得られる程度に深紫外光を吸収しつつ、深紫外光の吸収を最小限に留める必要がある。以下に、発光装置10における基板13において可視光が発せられるメカニズムおよびそれを踏まえた基板13の好ましい構成について説明する。
【0041】
[可視光が発せられるメカニズムについて]
上述のように、基板13においては、不純物由来の紫外光の吸収とそれによる可視光の発光が生ずる。この基板13中の不純物による紫外光の光吸収及び波長約600nmの光を含む可視光の発光メカニズムについて検討する。
【0042】
単結晶AlNは、結晶中に含まれる不純物種や不純物濃度によって様々な光吸収、発光パターンをとり得ることが知られている。本実施例の紫外半導体発光素子11の発光波長である250~280nm付近の光を吸収して発光をもたらす欠陥構造及び置換構造の吸収エネルギー(eV)及び発光エネルギー(eV)の例を表1に示す。
【0043】
【表1】
表1中、「C
N」は、AlN結晶の窒素サイトがCによって置換された点欠陥を示す。また、表1中の「Si
Al」は、AlN結晶のAlサイトのSi置換を示し、「O
N」は、窒素サイトのO置換を示す。「V
N」は、AlN結晶の窒素サイトから窒素が脱離した窒素欠陥を示す。
【0044】
窒素サイトがCに置換された「CN」は、波長約265nmに相当する4.7eVの光の吸収を示し、3.9eV(≒320nm)及び2.8eV(≒440nm)の発光を示すことが報告されている(非特許文献1))。
【0045】
「CN」と「SiAl」とのコンプレックス(複合体)である「CN-SiAl」は、5.5eVの光の吸収を示し、4.3eVの発光を示す。この「CN-SiAl」は、AlN結晶中のSi濃度がC濃度よりも大きい場合に形成される(非特許文献1)。
【0046】
また、ドナー性の欠陥である「ON」と、これに隣接するアクセプタとしての「CN」との間のドナー・アクセプタ間遷移によって、4.7eV(≒265nm)の吸収及び2.19eV(≒570nm)の発光が起こることが報告されている(非特許文献2)。
【0047】
また、ドナー性の欠陥である「VN」と、これに隣接するアクセプタとしての「CN」との間のドナー・アクセプタ間遷移によって、4.7eV(≒265nm)の吸収及び1.9eV(≒650nm)の発光が起こることが報告されている(非特許文献2)。
【0048】
以上のことから、本発明における波長265nm(4.7eV)の吸収は、基板13中の「CN」が主要因であると推測される。また、本発明における600nm(=2.07eV)の赤色発光は、「ON」、「VN」等のドナー性の欠陥とアクセプタとしての「CN」との間のドナー・アクセプタ間遷移によるものと推測される。
【0049】
[基板13の好ましい構成]
上記メカニズムを踏まえて、基板13の好ましい構成について以下に説明する。
【0050】
[吸収係数]
基板13は、活性層23の発光ピーク波長の深紫外光に対する吸収係数を15cm-1以上とするのが好ましい。深紫外光の吸収は、上述のようにCNが主要因であると考えられる。
【0051】
吸収係数が15cm-1以下である場合、例えば基板13の厚みを大きくしたとしても、目視で認識可能な程度に十分な赤色発光が得られ難い。これは、基板13中のCN濃度が低いことにより、上記したような隣接する「CN」と「ON」や隣接する「CN」と「VN」との間のドナー・アクセプタ間遷移による吸収発光過程が起こり難いためと考えられる。
【0052】
なお、例えば、従来のAlN基板においては、活性層から放射される紫外光に対する基板の吸収により、外部へ取り出せる紫外光の総量が減少し、それによって発光効率が低下することを防止する観点から、例えば、AlN基板の吸収係数としては20cm-1以下が好ましく、さらに好ましくは10cm-1以下とされ、吸収係数を低くする努力がなされてきた。
【0053】
それに対して、本実施例においては、深紫外光の吸収によって赤色光を発生させるために十分な吸収量を確保するために、活性層23の発光ピーク波長の光に対する吸収係数を15cm-1以上としている。
【0054】
吸収係数が15cm-1以上であれば、基板13の厚みを適切に設定することによって、目視で認識可能な程度に十分な赤色発光が得られる。本実施例において、基板13に含まれる不純物濃度を所定値以上とすることで、吸収係数を15cm-1以上に制御している。
【0055】
[内部透過率]
基板13による深紫外光の吸収量は、吸収係数が15cm-1以上である場合、基板13の吸収係数に加えて、基板13の厚みによって変化する。基板13による深紫外光の吸収量と、光出射面13Sから外部へ取り出せる深紫外光の総量とのバランスについては、基板13の内部透過率によって見積もることができる。基板13の発光ピーク波長の光に対する吸収係数をαとし、基板13の厚みをxとしたとき、内部透過率τは、次式で表される。
【0056】
【数1】
十分な発光強度の深紫外光及び目視で容易に認識可能な程度の十分な発光強度の赤色光を光出射面13Sから取り出す観点から、上記の内部透過率は、30%以上70%以下であることが好ましい。
【0057】
内部透過率が30%未満である場合、波長265nmの光の吸収量が増大することで、高い出力の波長約600nmの光が得られる反面、波長265nmの光強度の低下量も増えるため、深紫外光及び赤色光の発光効率の観点から好ましくない。
【0058】
内部透過率が70%を超える場合は、基板13による波長265nmの光の吸収量が小さいことにより波長265nmの発光強度は大きい。しかし、波長265nmの光の吸収量が小さいことにより十分な約600nmの光の発光強度が得られないため、赤色光を取り出す観点から好ましくない。
【0059】
以上の点を考慮すると、基板13による活性層23の発光ピーク波長の光についての内部透過率は、30%以上70%以下であることが好ましく、40%以上60%以下であることがより好ましい。
【0060】
[単結晶AlN基板の吸収係数と厚みの関係]
さらに、基板13の製造上の観点から、基板13の265nmの光に対する吸収係数は50cm-1以下であることが好ましい。吸収係数が50cm-1を越えると、基板の厚みの変動によって265nmの光の吸収量の変動が大きくなる。この場合、製造上の基板13の厚みのばらつきによって、素子の特性が変動することになる。よって、基板13の厚みのばらつきを抑制するためには、基板13の厚みの公差を小さくする必要がある。このように、吸収係数が50cm-1を越えると製造上の加工精度に対する要求が厳しくなることを考慮すると、基板13の吸収係数を50cm-1以下とすることが好ましい。
【0061】
同様の理由により、基板13の厚みは150μm以上とすることが好ましい。基板13の厚みが150μm未満である場合、波長265nmの光の十分な吸収量を得るためには、基板13の吸収係数を高くする必要があり、上述のように基板13の厚みの公差が小さくなる。
【0062】
なお、従来の単結晶AlN基板において、発光素子の成長基板として十分な強度が得られる厚みとしては90~100μmであるところ、本実施例においては、波長265nmの吸収係数との関係により、150μm以上とすることが好ましい。
【0063】
また、基板13の厚みは、500μmを越えると製造コストが高くなること等の製造上の観点から、500μm以下とすることが好ましい。
【0064】
以上より、製造上の観点も考慮すると、基板13は、吸収係数が15cm-1以上50cm-1以下であり、厚みが150μm以上500μm以下であることが好ましい。
【0065】
[単結晶AlN基板中の不純物濃度制御]
本発明における基板13中の不純物濃度制御について説明する。上述のように、基板13は、不純物として、C、Si、Oを含む。当該不純物は、基板13の成長時に導入される不純物であり、意図的に濃度を制御して導入されたものである。なお、基板13中のC濃度、Si濃度及びO濃度は、二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectrometry;SIMS)によって測定可能である。
【0066】
本発明の発光装置10では、上述のように基板13中の不純物のうち、主としてCに起因する吸収発光過程を利用して、活性層23からの波長265nmの光を吸収させ、波長約600nmの赤色光を発生させている。また、上述した通り、波長265nm(4.7eV)の吸収は、基板13中のAlN結晶の窒素サイトがCによって置換された「CN」が主要因であると推測されている。従って、本発明において赤色光を発生させるためには、基板13中のCN濃度の制御が重要である。
【0067】
AlN結晶中に取り込まれるCは、優先的に窒素サイトを置換することが知られている(非特許文献3)。従って、基本的には、AlN結晶中のC濃度をCN濃度とみなすことができる(CN濃度≒C濃度)。
【0068】
ただし、表1に示したように、基板13中のSi濃度がC濃度よりも高い場合には、CNとSiAlとのコンプレックスであるCN-SiAlが形成されることによってCN濃度が減少するので、C濃度をCN濃度とみなすことができない。以下、Si濃度がC濃度以下である場合及びSi濃度がC濃度よりも高い場合についてそれぞれ説明する。
【0069】
まず、基板13中のSi濃度がC濃度以下である場合(Si濃度≦C濃度)は、CN-SiAlは殆ど形成されないか又は無視できる程度であると考えられる。従って、C濃度をCN濃度とみなすことができ、C濃度を制御することによってCN濃度を制御できる。
【0070】
また、AlN結晶の265nm(4.7eV)の光に対する吸収係数αは、AlN結晶中のCNの濃度によって決まることが知られている(非特許文献3)。従って、基板13において適切な吸収発光を起こして深紫外光とともに赤色光を得るためのCNの濃度を、吸収係数αに基づいて見積もることができる。
【0071】
単結晶AlN基板中のC濃度と、当該単結晶AlN基板の4.7eV(≒265nm)の光に対する吸収係数αとの関係が非特許文献3及び非特許文献4に開示されている。
【0072】
上記したように15cm-1未満では基板13の厚みにかかわらず赤色光が得られ難く、本発明において、基板13の吸収係数αを15cm-1以上とすることが必要である。上記のC濃度と吸収係数αとの関係によれば、波長265nmの光の吸収係数15cm-1に相当するC濃度は、3×1017atoms/cm3と見積もることができる。
【0073】
本発明の発光装置10において、基板13中のC濃度を3×1017atoms/cm3以上に制御することによって、基板13による波長265nmの光に対する吸収係数αを15cm-1以上となるように制御している。
【0074】
また、上記のC濃度と吸収係数αとの関係によれば、基板の厚み公差を考慮した吸収係数αの上限値である50cm-1に相当するC濃度は3×1018atoms/cm3と見積もることができる。よって、C濃度をCN濃度とみなすことができる場合、吸収係数αを15cm-1以上50cm-1とするための好ましいC濃度の範囲は3×1017atoms/cm3以上3×1018atoms/cm3以下である。
【0075】
続いて、C濃度よりもSi濃度の方が高い場合(Si濃度>C濃度)について説明する。上述したように、Si濃度がC濃度よりも大きい場合、CNとSiAlとのコンプレックスであるCN-SiAlが形成される。CN-SiAlは、5.5eVの吸収を示し、265nm(4.7eV)の光を吸収しない。また、CN-SiAlは、4.3eVの発光を示し、波長600nm(=2.07eV)の赤色光を放出しない。
【0076】
この場合、CN濃度≒C濃度とみなすことができず、CN濃度は、C濃度からCN-SiAlの濃度を差し引いた濃度、すなわち、「CN濃度≒C濃度-(CN-SiAl濃度)」となる。従って、同じC濃度でもSi濃度がC濃度以下の場合と比較して265nmの光に対する吸収係数αは小さくなる。従って、基板13中のC濃度は、CN-SiAlの形成に使われる分だけ高く設定する必要がある。
【0077】
実際に、Si濃度がC濃度よりも高く、吸収係数αが20cm-1、C濃度が6×1018atoms/cm3Si濃度が2.5×1018atoms/cm3のサンプルを用いて、CN-SiAl濃度を算出すると、約5×1018atoms/cm3となった。なお、CN濃度の算出には、α=5.672E-12X0.6978(XはCN濃度)の関係式を用いた。
【0078】
上記算出結果より、Si濃度がC濃度よりも高い場合に、吸収係数αを15cm-1以上50cm-1とするためのC濃度は、5.3×1018atoms/cm3以上8.0×1018atoms/cm3以下と見積もることができる。
【0079】
また、Si濃度がC濃度よりも低い場合に加えてSi濃度がC濃度よりも高い場合も考慮すると、本願発明において波長265nmの光に対する基板13の吸収係数を15cm-1以上50cm-1とするための好ましいC濃度の範囲を3×1017atoms/cm3以上8×1018atoms/cm3以下と見積もることができる。
【0080】
さらに、本願の発明者らは、基板13中のSi濃度とO濃度との合計が、基板13中のC濃度よりも高く(Si濃度+O濃度>C濃度)なるように制御すると、主目的の深紫外光の発光強度が十分に得られ、かつ、目視可能な赤色光を出射させることができることを見出した。
【0081】
これは、Si濃度とO濃度との合計を、基板13中のC濃度よりも高くした場合、CN-SiAlが形成されることでCNに起因する波長265nmの光の吸収が抑制され、透過率が下がり過ぎることが抑制されるためと考えられる。
【0082】
なお、当該不純物は、基板13の製造時に自然に混入する不純物であってもよい。その場合、所望の濃度の不純物を含む基板を基板13として選択すればよい。
【0083】
図3乃至
図6を参照しつつ、本実施例のサンプルA及びサンプルBについて発光特性を比較して説明する。
【0084】
サンプルAは、本実施例の発光装置10において、基板13の吸収係数を20cm-1とし、基板13の厚みを400μmとしたものである。サンプルBは、基板13の厚みが100μmである点においてのみサンプルAと異なり、その他の点についてはサンプルAと同様に構成されている。
【0085】
従って、サンプルA及びサンプルBにおいて、基板13の吸収係数はいずれも20cm-1である。また、サンプルA及びサンプルBにおける基板13中の不純物濃度は、C濃度が6×1018atoms/cm3, Si濃度が2.5×1018atoms/cm3, O濃度が4.5×1018atoms/cm3である。よって、サンプルA及びサンプルBは、基板13中のSi濃度とO濃度との合計が、C濃度より大きくなるように制御されている((Si+O)/C=1.17)。サンプルA及びサンプルBの各々の光出射面13S上に光検出器を設置して、駆動電流を5mAから70mAまで変化させた際の光出力及び発光スペクトルを測定した。
【0086】
図3は、サンプルA及びサンプルBについて駆動電流に対する波長265nmの光出力を示す図である。
図3に示すように、サンプルA及びサンプルBのいずれも、駆動電流が上昇すると波長265nmの光出力が上昇している。また、同じ駆動電流でサンプルBよりもサンプルAの方が光出力の値が小さい。
【0087】
これは、サンプルAは、サンプルBよりも基板13の厚みが大きく、内部透過率が低い分、波長265nmの光の吸収量が大きいからである。具体的には、波長265nmの光に対して、サンプルAの内部透過率は約45%であり、サンプルBの内部透過率は約82%である。
【0088】
なお、発光装置10を実際に使用する際には、400mA程度の本実験よりも大きい駆動電流で駆動する。その場合、サンプルAの発光装置を用いても、殺菌等の用途に対して十分な、例えば30mW以上の光出力が得られる。
【0089】
図4は、サンプルA及びサンプルBについて駆動電流に対する波長600nmの光出力を示す図である。
図4において、目視可能な光出力のレベルである0.15μWのラインを破線で示している。
【0090】
図4に示すように、駆動電流30mAまでは、サンプルA及びサンプルBのいずれも、駆動電流が上昇すると波長600nmの光出力が上昇している。また、サンプルA及びサンプルBのいずれも、駆動電流が30mA以上で目視可能な光出力のレベルである0.15μWを越えている。
【0091】
駆動電流が30mAを越えると、サンプルAは駆動電流の上昇とともに波長600nmの光出力が上昇している。これに対して、サンプルBは、30mAを越えると駆動電流が上昇しても波長600nmの光出力の上昇幅が小さくなり、駆動電流が50mAを越えると、波長600nmの光出力は上昇しなくなっている。サンプルBでは、30mAを越えると波長265nmの光の吸収サイトが不足し、波長600nmの光出力は飽和傾向にあると考えられる。
【0092】
図5は、サンプルAについて駆動電流を5mAから70mAまで変化させた際の駆動電流ごとの波長400nmから800nmの間の発光スペクトルを示す図である。
図5に示すように、サンプルAの発光スペクトルでは、いずれの駆動電流においても、波長約600nmの発光強度が最大となっている。言い換えれば、サンプルAの発光スペクトルにおいて、450nm以上800nm以下の波長範囲における発光ピークが590nm以上610nm以下の範囲内にある。
【0093】
このように、可視光領域のうち波長約600nmの発光強度が最大となっている場合、目視においてオレンジ色から赤色の光が認識され得る。
【0094】
また、当該約600nmの発光ピークの位置は、駆動電流が変わっても、約600nmの位置から変動していない。従って、サンプルAについて、上記したような実用的な駆動電流である400mA程度まで駆動電流を高くしても、450nm以上800nm以下の波長範囲における発光ピークが590nm以上610nm以下の範囲内にあるという傾向は維持されると考えられる。
【0095】
従って、サンプルAを400mA程度の駆動電流で駆動させると、サンプルAの光出射面13Sからは、深紫外光とともにオレンジ色から赤色の可視光が出射され、当該可視光によって、一見して駆動していることが容易に認識され得る。
【0096】
図6は、サンプルBについて駆動電流を5mAから70mAまで変化させた際の駆動電流ごとの波長400nmから800nmの間の発光スペクトルを示す図である。
図6に示すように、サンプルBの発光スペクトルにおいて、駆動電流30mAまでは波長約600nmの発光強度が最大となっている。また、
図4に示したように、駆動電流が30mA以上で目視可能な光出力のレベルである0.15μWを越えている。従って、少なくとも駆動電流30mAの条件下においては、サンプルBの駆動によって赤色光が認識され得るといえる。
【0097】
しかし、
図6において、50mA及び70mAのスペクトルでは、50mAから70mA駆動電流が上昇しても波長600nmの強度は上昇せず、波長450nm以上600nm未満の光、すなわち可視光領域の光のうち600nmよりも短波長の発光強度が上昇している。これは、p型GaN層であるコンタクト層31からの発光によるものと考えられる。
【0098】
このような場合、目視において認識され得る発光色は、波長約600nmの光と波長450nm以上600nm未満の光との混色により、オレンジ色から赤色ではなく、青白色から白色(以下、単に青白光とも称する)になる傾向がある。
【0099】
例えば、サンプルBについて、実用的な駆動電流である400mA程度まで駆動電流を高くした場合、波長約600nmの発光強度はこれ以上上昇せず、波長450nm以上600nm未満の発光強度が高い傾向が維持されると考えられる。
【0100】
従って、サンプルBを400mA程度の駆動電流で駆動させると、サンプルBの光出射面13Sからは、深紫外光とともに青白光が出射され得る。サンプルBは、当該可視光が出射されることにより、サンプルBの駆動が認識され得るものの、青白光は赤色光と比較して認識されにくい傾向あり、赤色光を出射するサンプルAの方がより好ましいといえる。
【0101】
なお、本実施例においては、サンプルBにおいて上記のようなp型GaN層であるコンタクト層31に起因する青白光を示す発光スペクトルが観察された。当該青白光の発光強度は、pGaNコンタクト層の品質や膜厚によって異なり、視認が困難な程度である場合もある。
【0102】
なお、サンプルAで顕著であったように、本発明において、発光装置10の発光スペクトルが450-800nmの領域において約600nmのピークを有する。この波長600nmは、上記したようにCNを主要因とする吸収発光過程によるものであり、基本的には変動しない。ただし、このピーク波長は、励起密度(電流密度)の上昇によって短波長化する場合や、温度が高くなると長波長化する場合がある。これらのことを考慮しても、基板13中のC不純物の吸収発光過程による450-800nmの領域におけるピーク波長は、600nm±5nm以内になると考えられ、大きく見積もっても600nm±10nm以内に収まるといえる。
【0103】
[単結晶AlN基板の製法]
基板13は、例えば物理気相輸送(PVT)法によって製造することができる。PVT法において、多結晶AlN等のAlN原料を加熱し昇華させて、原料の入っているるつぼに対向して配置された種基板上に結晶成長させる。
【0104】
例えば、初期の不純物量が少ないAlN原料を用いることで成長する単結晶AlN基板中の不純物濃度を低減することができる。
【0105】
また、結晶成長の際の原料の温度等の温度条件及びリアクタ内の圧力条件を制御することにより、気相中の不純物量が変化するため、それに伴って不純物のAlN単結晶への取り込み量を制御することができる。例えば、温度を下げると不純物濃度は減少する傾向がみられる。
【0106】
また、AlN原料とともにSi片、炭素片等の不純物の原料を添加し、その添加量に加えて上記の温度条件や、圧力条件を制御することにより、単結晶AlN基板中の不純物濃度を増減させることができる。
【0107】
なお、基板13は、PVT法に限られず、例えば、ハイドライド気相成長(HVPE)法,分子線エピタキシー(MBE)法、又はMOCVD法によって成長することもでき、これらの方法を組み合わせて成長することもできる。
【0108】
なお、MBE又はMOCVDについては成長時間が長いこと、HVPE法による場合はコストが高くなること等を考慮すると、PVT法によって基板13を成長することが好ましい。
【0109】
以上、詳細に説明したように、本実施例の発光装置10は、紫外半導体発光素子11がサブマウント基板上に実装されて構成されている。紫外半導体発光素子11は、単結晶AlN基板と、n型クラッド層と、発光ピーク波長が250nm以上280nm以下である活性層と、p型クラッド層と、を有し、単結晶AlN基板中のC濃度は3×1017atoms/cm3以上である。
【0110】
言い換えれば、紫外半導体発光素子11は、発光スペクトルにおいて、450nm以上800nm以下の波長範囲における発光ピークが590nm以上610nm以下の範囲にある。
【0111】
上記のような構成により、単結晶AlN基板は、活性層の発光ピーク波長の光である深紫外光の一部を吸収し、当該深紫外光の吸収に応じて590nm以上610nm以下の波長範囲の光を発する。発光装置10の光出射面からは、深紫外光とともに590nm以上610nm以下の波長範囲の光が出射される。590nm以上610nm以下の波長範囲の光は、目視において、オレンジ色から赤色の光として容易に認識され得る。このような、視認され易くかつ一般に警告や禁止の意味を持つ赤色発光によって、発光装置10の使用者は、紫外半導体発光素子11が駆動していることを一見して認識することができ、当該作業者の安全性を向上することができる。
【0112】
従って、本実施例によれば、駆動して深紫外光を出射しているか否かを使用者が容易に確認可能な紫外半導体発光素子を提供することができる。
基板53は、上面視において領域53Aと領域53Bの2つの領域を有している。基板53は、領域53Aにおいて領域53Bよりも厚みが大きくなっている。基板53は、その他の点においては実施例1の基板13と同様に構成されている。
言い換えれば、基板53は、平面視において、活性層23の発光ピーク波長の光に対する内部透過率が30%以上70%以下である領域を有している。発光装置50の駆動により、基板53の領域53Aからは、赤色光が取り出される。領域53Bからは、深紫外光の高い出力が得られ、赤色光は出射されない。例えば、実施例1のサンプルBの場合と同様に、領域53Bからは、青白色から白色の可視光が出射され得る。
なお、実施例2において、基板53の一部の領域の厚みを大きくすればよく、いずれの領域の厚みを大きくするかについては任意である。例えば、上記のように、上面視において基板53の端の方の領域を厚みの大きい領域53Aとすることで、領域53Aによって深紫外光の出射の妨げになることを避けることができる。
なお、本実施例の基板53は、例えば、半導体積層体20の形成後、半導体積層体20をレジスト等により保護した上で、単結晶AlN基板のウェットエッチング等の方法によって領域53Bを形成することによって形成することができる。
なお、本実施例において、基板53の一部の領域の基板の厚みを変化させる代わりに、基板53の一部の領域の不純物濃度を変化させ、それによって当該一部の領域から赤色光を出射するようにしてもよい。