(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023664
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】歯付ベルト
(51)【国際特許分類】
F16G 1/28 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
F16G1/28 E
F16G1/28 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023210690
(22)【出願日】2023-12-14
(62)【分割の表示】P 2023541624の分割
【原出願日】2023-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2022120304
(32)【優先日】2022-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】椿野 和之
(72)【発明者】
【氏名】進藤 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】山口 博憲
(57)【要約】 (修正有)
【課題】耐久性の良好な歯付ベルトを提供する。
【解決手段】ベルト内周に一定ピッチで設けられた複数の歯部を有するベルト本体と、ベルト幅方向にピッチを有するように前記ベルト本体に埋設された心線とを備え、下記の方法で測定したピーク摩擦係数μA及び平均摩擦係数μBが、μA-μB≦0.3、かつμB≦0.5、の関係にある歯付ベルト。歯付ベルトを幅方向に切断して、前記歯付ベルトからベルト歯2個分の測定サンプルを切り出し、当該測定サンプルに一定の荷重を掛けながら歯先がSUS304製の平板と接触するように載置し、速度100mm/minで一方向に30秒間移動させた際の摩擦力を測定し、30秒間の摩擦力の最大値を垂直抗力で除して算出した摩擦係数をピーク摩擦係数μA、30秒間の摩擦力の平均値を垂直抗力で除して算出した摩擦係数を平均摩擦係数μBとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト内周に一定ピッチで設けられた複数の歯部を有するベルト本体と、
ベルト幅方向にピッチを有するように前記ベルト本体に埋設された心線と、
を備え、
下記の方法で測定したピーク摩擦係数μA、及び平均摩擦係数μBが
μA-μB≦0.3、かつμB≦0.5、
の関係にある歯付ベルト。
<測定方法>
歯付ベルトを幅方向に切断して、前記歯付ベルトからベルト歯2個分の測定サンプルを切り出す。得られた測定サンプルをベルト歯が平板と接触するように当該平板上に載置する。この状態で測定サンプルを一方向に30秒間移動させ、その時の摩擦力を測定する。30秒間の摩擦力の最大値を垂直抗力で除して算出した摩擦係数をピーク摩擦係数μA、30秒間の摩擦力の平均値を垂直抗力で除して算出した摩擦係数を平均摩擦係数μBとする。
測定環境は、温度23±5℃、湿度50±5%とする。
測定サンプルは、一定の荷重を掛けながら平板上に載置する。
平板は、SUS304製で、測定サンプルが載置される面の表面粗さは、Ra(算術平均粗さ)で1.6μm以下とする。
測定サンプルの移動速度は、100mm/minとする。
【請求項2】
前記歯部の内周面に、補強布が設けられている請求項1に記載の歯付ベルト。
【請求項3】
前記ベルト本体は、熱硬化性ポリウレタン製である請求項1又は2に記載の歯付ベルト。
【請求項4】
前記ベルト本体は、滑剤を含有する請求項3に記載の歯付ベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯付ベルトに関する。
本出願は、2022年7月28日出願の日本出願第2022-120304号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
工作機械、印刷機械、繊維機械、射出成形機等において、動力伝動用途に使用される歯付ベルトとして、ポリウレタン製の歯付ベルトがある(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
特許文献1には、ポリウレタン製の歯付ベルトであって、芯線よりも歯部側に織布あるいは編み布が配置された歯付ベルトが開示されている。
特許文献2には、注型されたウレタンのベルト材から成るベルト本体と、上記ベルト本体に所定のピッチで離間して形成されたベルト歯と、上記ベルト歯の周辺表面に沿って配設された耐摩耗性の帆布の補強材と、上記ベルト本体に埋め込まれる長さと体積を有しファイバの織り糸の螺旋状に撚られたコードから成る張力部材とを有する歯付ベルトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-127442号公報
【特許文献2】特開平10-148238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
歯付ベルトは、耐久性に優れることが求められている。そのため、ベルト歯が早期に摩耗しないことや、ベルト本体とコード(心線)との間で早期に剥離が発生しないことが求められている。
例えば、歯部の内周面に補強布が設けられている歯付ベルトは、歯部が摩耗しにくい傾向にある。その一方で、この歯付ベルトは、駆動時に発熱しやすい傾向にあり、発熱を原因としてベルト本体とコードとの間で早期に剥離が発生する場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、耐久性の良好な歯付ベルトを提供することを目的とする。
【0007】
(1)本発明の歯付ベルトは、
ベルト内周に一定ピッチで設けられた複数の歯部を有するベルト本体と、
ベルト幅方向にピッチを有するように上記ベルト本体に埋設された心線と、
を備え、
下記の方法で測定したピーク摩擦係数μA、及び平均摩擦係数μBが
μA-μB≦0.3、かつμB≦0.5、
の関係にある。
<測定方法>
歯付ベルトを幅方向に切断して、上記歯付ベルトからベルト歯2個分の測定サンプルを切り出す。得られた測定サンプルをベルト歯が平板と接触するように当該平板上に載置する。この状態で測定サンプルを一方向に30秒間移動させ、その時の摩擦力を測定する。30秒間の摩擦力の最大値を垂直抗力で除して算出した摩擦係数をピーク摩擦係数μA、30秒間の摩擦力の平均値を垂直抗力で除して算出した摩擦係数を平均摩擦係数μBとする。
測定環境は、温度23±5℃、湿度50±5%とする。
測定サンプルは、一定の荷重を掛けながら平板上に載置する。
平板は、SUS304製で、測定サンプルが載置される面の表面粗さは、Ra(算術平均粗さ)で1.6μm以下とする。
測定サンプルの移動速度は、100mm/minとする。
【0008】
上記歯付ベルトによれば、良好な耐久性を確保できる。
上記歯付ベルトでは、上述した方法で測定したピーク摩擦係数μA及び平均摩擦係数μBについて、「μA-μB≦0.3」であることと、「μB≦0.5」であることとを同時に満足することが重要である。
上記歯付ベルトは、平均摩擦係数μBを0.5以下とすることによって、プーリとの間に生じる摩擦力を小さくし、使用時の発熱を抑えることができる。また、プーリとの間に生じる摩擦力が小さくなると、歯部(ベルト歯)の摩耗も抑制される。
更に、上記歯付ベルトは、単に平均摩擦係数μBを小さくするだけでなく、ピーク摩擦係数μAと平均摩擦係数μBとの差を0.3以下とすることによって、歯部(ベルト歯)の摩耗を更に抑制することができる。
【0009】
(2)上記(1)の歯付ベルトは、上記歯部の内周面に、補強布が設けられていることが好ましい。
この場合、ベルト歯の耐摩耗性を向上させるのに適している。
【0010】
(3)上記(1)又は(2)の歯付ベルトにおいて、上記ベルト本体は、熱硬化性ポリウレタン製であることが好ましい。
この場合、耐久性の良好な歯付ベルトを提供するのに適している。
【0011】
(4)上記(3)の歯付ベルトにおいて、上記ベルト本体は、滑剤を含有することが好ましい。
この場合、ピーク摩擦係数μA及び平均摩擦係数μBを上記範囲にしやすくなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、良好な耐久性を有する歯付ベルトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る歯付ベルトを模式的に示す斜視図である。
【
図4】測定サンプルの作製方法を説明するための図である。
【
図6】第1実施形態に係る歯付ベルトの製造方法を説明する図である。
【
図7】第1実施形態に係る歯付ベルトの製造方法を説明する図である。
【
図8】第1実施形態に係る歯付ベルトの製造方法を説明する図である。
【
図9】第2実施形態に係る歯付ベルトを模式的に示す斜視図である。
【
図10】負荷耐久試験用のベルト走行試験機のプーリレイアウトを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る歯付ベルトを模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1における矢視Xの正面図である。
図3は、
図1のA-A線断面図である。
【0016】
本実施形態に係る歯付ベルト10は、例えば、工作機械、印刷機械、繊維機械、射出成形機、二輪車の後輪駆動等の高負荷伝動用途に好適に用いられる。
歯付ベルト10のベルト長さは、例えば500mm以上3000mm以下である。歯付ベルト10のベルト幅は、例えば10mm以上200mm以下である。歯付ベルト10のベルト厚さ(最大)は、例えば3mm以上20mm以下である。本発明の実施形態に係る歯付ベルトの寸法はこの範囲に限定されるわけではない。
【0017】
図1には、歯付ベルト10の一部のみを示すが、歯付ベルト10は、エンドレスの噛み合い伝動ベルトである。
歯付ベルト10は、内周面に複数のベルト歯12を有している。歯付ベルト10は、
図1に示すように、ベルト本体11、心線13、及び補強布14を備えている。本実施形態において、ベルト歯12は直歯である。
【0018】
本実施形態に係る歯付ベルト10は、ポリウレタンで構成されたエラストマー製のベルト本体11を備える。ベルト本体11は、断面横長矩形の平帯部11aと、その内周側に一体に設けられた複数の歯部11bとを有する。複数の歯部11bは、ベルト長さ方向に一定ピッチで間隔をおいて設けられている。
補強布14は、歯部11bの内周面を覆うように設けられている。歯付ベルト10において、ベルト歯12は、歯部11bと補強布14とで構成されている。
【0019】
ベルト歯12の歯形は、S歯形等の円弧歯形である。
ベルト歯12の歯数は、例えば30個以上400個以下である。
ベルト歯12の歯幅は、例えば2mm以上10mm以下である。ベルト歯12の歯幅は、ベルト長さ方向における最大寸法(
図3中、W参照)で規定される。
ベルト歯12の歯高さは、例えば2mm以上8mm以下である。ベルト歯12の歯高さは、ベルト長さ方向に相互に隣接する一対のベルト歯12間の歯底部15からベルト歯12の先端までの寸法(
図3中、H参照)で規定される。
ベルト歯12の配設ピッチは、例えば8mm以上14mm以下である。ベルト歯12の配設ピッチは、ベルト長さ方向における、相互に隣接する一対のベルト歯の歯先間の距離(
図3中、P参照)で規定される。
【0020】
ベルト本体11はポリウレタン製であることが好ましく、熱硬化性ポリウレタン製であることがより好ましい。
上記熱硬化性ポリウレタンは、ウレタンプレポリマーに、硬化剤、任意成分である可塑剤等が配合された熱硬化性ウレタン組成物の硬化物である。
【0021】
ベルト本体11の材質として熱硬化性ポリウレタンを採用した場合、心線や補強布に熱硬化性ウレタン組成物が含侵しやすいため、ベルト本体を構成する成分が心線及び補強布に含侵した歯付ベルトを製造するのに適している。ベルト本体を構成する成分が心線及び補強布に含侵した歯付ベルトは、ベルト歯の歯欠けや摩耗が生じにくく、かつ心線のベルト本体からの剥離も発生しにくいため、耐久性が良好である。
【0022】
上記ウレタンプレポリマーは、末端に複数のNCO基を有する比較的低分子量のウレタン化合物である。上記ウレタンプレポリマーは、イソシアネート成分とポリオール成分との反応により得られる。
上記イソシアネート成分としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等が挙げられる。
上記ポリオール成分としては、例えばポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)等が挙げられる。
上記ウレタンプレポリマーは、単一のウレタン化合物で構成されていてもよいし、複数のウレタン化合物が混合されて構成されていてもよい。
【0023】
上記硬化剤としては、例えば、1,4-フェニレンジアミン、2,6-ジアミノトルエン、1,5-ナフタレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)、4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸イソブチルなどのアミン化合物等が挙げられる。上記硬化剤は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。
アミン化合物からなる硬化剤は、硬化剤中のNH2基のモル数のウレタンプレポリマー中のNCO基のモル数に対する比であるα値(NH2基/NCO基)が0.70以上1.10以下となるように配合されていることが好ましい。
【0024】
上記可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)などのジアルキルフタレート;ジオクチルアジペート(DOA)などのジアルキルアジペート;ジオクチルセバケート(DOS)などのジアルキルセバケート等が挙げられる。上記可塑剤は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。
上記可塑剤の配合量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、例えば3質量部以上20質量部以下である。
【0025】
上記熱硬化性ポリウレタンは、更に、滑剤を含有することが好ましい。
上記滑剤としては、例えば、脂肪酸エステル、炭化水素樹脂、パラフィン、高級脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪族アルコール、金属石鹸、変性シリコーン等が挙げられる。上記滑剤は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。
上記滑剤を含有する場合、その配合量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、例えば3質量部以上20質量部以下である。
【0026】
上記熱硬化性ウレタン組成物は、更に、例えば着色剤、消泡剤、安定剤等を含有していてもよい。
【0027】
ベルト本体11を構成するポリウレタンのJIS-A硬さは、例えば85以上100以下である。上記ポリウレタンのJIS-A硬さは、90以上100以下が好ましい。上記ポリウレタンのJIS-A硬さを90以上とすることにより、良好な耐摩耗性を確保しやすい。
上記ポリウレタンのJIS-A硬さは、JIS K7312:1996に基づいて、タイプAの硬さ試験で測定する。測定には、タイプAデュロメータを用いる。
【0028】
歯付ベルト10は、ベルト本体11の平帯部11aに埋設されたカーボン繊維製の心線13を備える。
心線13の外径は、高負荷伝動での優れた耐久性と、高負荷伝動での優れた張力維持性とを得る観点から、好ましくは0.6mm以上2.2mm以下、より好ましくは0.8mm以上1.2mm以下である。
【0029】
心線13を構成するカーボン繊維は、高負荷伝動での優れた耐久性と、高負荷伝動での優れた張力維持性とを得る観点から、PAN系カーボン繊維であることが好ましい。
また、上記カーボン繊維のフィラメント径は、高負荷伝動での優れた耐久性を得る観点から、好ましくは4μm以上9μm以下、より好ましくは6μm以上8μm以下である。
【0030】
心線13を構成するカーボン繊維の総フィラメント本数は、高負荷伝動での優れた耐久性と、高負荷伝動での優れた張力維持性とを得る観点から、好ましくは6000本(6K)以上48000本(48K)以下、より好ましくは9000本(9K)以上18000本(18K)以下、更に好ましくは12000本(12K)である。
心線13を構成するカーボン繊維の繊度は、高負荷伝動での優れた耐久性と、高負荷伝動での優れた張力維持性とを得る観点から、好ましくは400tex以上3200tex以下、より好ましくは600tex以上1200tex以下、更に好ましくは800texである。
【0031】
心線13は、高負荷伝動での優れた耐久性と、高負荷伝動での優れた張力維持性とを得る観点から、撚り糸であることが好ましい。心線13を構成する撚り糸としては、片撚り糸、諸撚り糸、及びラング撚り糸が挙げられる。
撚り糸の心線13は、高負荷伝動での優れた耐久性と、高負荷伝動での優れた張力維持性とを得る観点から、カーボン繊維のフィラメント束を一方向に撚った片撚り糸であることが好ましい。
片撚り糸の心線13の撚り数は、高負荷伝動での優れた耐久性と、高負荷伝動での優れた張力維持性とを得る観点から、好ましくは4回/10cm以上12回/10cm以下、より好ましくは6回/10cm以上10回/10cm以下である。片撚り糸の心線13には、S撚り糸が用いられても、Z撚り糸が用いられても、それらの両方が用いられても、いずれでもよい。
【0032】
心線13は、ベルト幅方向にピッチを有し、螺旋を形成するように設けられている。心線13は、S撚り糸及びZ撚り糸の2本で構成され、それらが二重螺旋を形成するように設けられていてもよい。
心線13は、ベルト幅方向に間隔をおいて、並行に延びるように配置されることとなる。このとき、心線13のベルト幅10mm当たりの本数は、高負荷伝動での優れた耐久性と、高負荷伝動での優れた張力維持性とを得る観点から、好ましくは6本/10mm以上10本/10mm以下、より好ましくは7本/10mm以上9本/10mm以下である。
【0033】
心線13には、成形前に予め液状の接着剤に浸漬した後に乾燥させる等の接着処理が施されていることが好ましい。
【0034】
補強布14は、織物であってもよいし、編物であってもよい。補強布14は、織物が好ましい。
【0035】
補強布14としては、例えば、経糸及び緯糸で形成された、2/2綾織り帆布、3/1綾織り帆布、平織り帆布、朱子織り帆布等が挙げられる。
補強布14がこれらの帆布の場合、上記経糸及び上記緯糸の繊度は、好ましくは44~933dtex、より好ましくは44~235dtexである。
また、上記経糸及び上記緯糸の糸密度は、好ましくは74~430本/5cm幅、より好ましくは132~174本/5cm幅である。
補強布14の目付量は、好ましくは90~600g/m2、より好ましくは300~450g/m2である。
【0036】
補強布14は、例えば、経糸及び緯糸の一方がベルト長さ方向に一致するように設けられていることが好ましい。
緯糸が仮撚り加工糸等の伸縮加工糸で構成されている場合には、補強布14は、伸縮特性について異方性を有することとなるが、ベルト長さ方向の伸縮特性が高くなるように、緯糸がベルト長さ方向に一致するように設けられることが好ましい。
【0037】
補強布14を構成する繊維材料としては、例えば、ナイロン6,6、ナイロン4,6、ナイロン6などのナイロン繊維、ポリケトン繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維等の化学繊維や綿等の天然繊維が挙げられる。補強布14は、単一種の繊維で構成されていてもよいし、複数種の繊維で構成されていてもよい。
補強布14のベルト周方向の緯糸が、ウーリー糸であってもよい。ウーリー糸は伸縮性に優れるからである。
補強布14には、成形前に予め例えばエポキシ系接着剤に浸漬した後に乾燥させる等の接着処理が施されていてもよい。
【0038】
また、補強布14には、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、エチレン・テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素樹脂等の摩耗改質剤を用いた摩耗改質処理が施されていてもよい。
上記摩耗改質処理では、例えば、上記摩耗改質剤を分散させたバインダーを成形前の補強布に塗布したり、成形前の補強布を上記バインダーに浸漬したりすればよい。
【0039】
歯付ベルト10では、補強布14の隙間に熱硬化性ウレタン組成物の硬化物が侵入した状態になっている。そのため、ベルト歯12の表面(内周面)には、補強布14のみではなく、熱硬化性ウレタン組成物の硬化物も露出している。
【0040】
歯付ベルト10は、下記の方法で測定したピーク摩擦係数μA、及び平均摩擦係数μBが、「μA-μB≦0.3」、かつ「μB≦0.5」の関係にある。
そのため、良好な耐久性を確保できる。
歯付ベルト10は、上記平均摩擦係数μBを0.5以下とすることによって、プーリとの間に生じる摩擦力を小さくし、ベルト歯12を摩耗しにくくできる。また、上記摩擦力を小さくすることによって使用時の発熱を抑えることができる。発熱が抑えられると、ベルト本体11と心線13との界面での剥離が抑制される。これらの結果、歯付ベルト10は、耐久性が良好になる。
【0041】
更に、単に平均摩擦係数μBを小さくするだけでなく、ピーク摩擦係数μAと平均摩擦係数μBとの差を0.3以下とすることによっても、ベルト歯12の摩耗を抑制することができる。ピーク摩擦係数μAと平均摩擦係数μBとの差が大きいと、噛み合い時にベルト歯12に振動現象が生じることがあり、この現象に起因してベルト歯12は摩耗しやすくなる。これに対して、ピーク摩擦係数μAと平均摩擦係数μBとの差を0.3以下とすることによって、上記振動現象を抑制することができる。その結果、ベルト歯12は摩耗しにくくなり、この点からも歯付ベルト10は耐久性が良好になる。
【0042】
上記平均摩擦係数μBの好ましい下限は、0.1である。上記平均摩擦係数μBを0.1未満とすることは非常に困難である。
上記ピーク摩擦係数μAと上記平均摩擦係数μBとの差の下限は、特に限定されず、0よりも大きければよい。
【0043】
次に、ピーク摩擦係数μA及び平均摩擦係数μBの測定方法について説明する。
図4は、測定サンプルの作製方法を説明するための図である。
図4は、歯付ベルト10の一部を内周面側から視た図である。
図5は、摩擦係数の測定方法を説明する図である。
【0044】
(測定サンプル)
測定サンプル50は、歯付ベルト10をベルト幅方向に切断することによって、歯付ベルト10から切り出す。
具体的には、ベルト幅方向の中点であり、かつ隣接するベルト歯12の歯先間の中点である点M(
図4参照)を通るように、ベルト幅方向に2箇所(
図4中、矢印参照)で歯付ベルト10を切断する。このとき、歯付ベルト10は2個のベルト歯12を含むように切断される。
切り出された測定サンプル50は、ベルト厚さ方向に視た形状が矩形であり、ベルト長さ方向の長さがベルト歯12の配設ピッチPの2倍である。
【0045】
(測定方法)
測定サンプル50をベルト歯52がSUS304製の平板55と接触するように設置する。更に、測定サンプル50の背面に重り54を載置する。重り54の重さは、測定サンプル50と重り54との合計重量が1000gとなる重さとする。
この状態で測定を行う。従って、摩擦係数の測定は、測定サンプルに一定の荷重を掛けながら行われることになる。
【0046】
次に、測定サンプル50に一定の荷重を掛けた状態で、当該測定サンプル50を一方向に速度100mm/minで30秒間移動させる。このときの摩擦力を測定し、30秒間の摩擦力の最大値FAを垂直抗力Nで除して算出した摩擦係数(FA/N)をピーク摩擦係数μA、30秒間の摩擦力の平均値FBを垂直抗力Nで除して算出した摩擦係数(FB/N)を平均摩擦係数μBとする。
測定は、3回行い、3回の平均値を測定値とする。
【0047】
この摩擦力の測定において、測定環境は、以下の通りとする。
温度は、23±5℃とする。
湿度は、50±5%とする。
SUS304製の平板の表面粗さは、Ra(算術平均粗さ)で1.6μm以下とする。
また、摩擦力の測定は、新東科学社製、表面性測定機 TYPE:14を用いて行う。
【0048】
歯付ベルト10は、補強布14が歯部11bの内周面を被覆するように設けられている。これによっても、ベルト歯12の耐摩耗性は向上している。
【0049】
本実施形態に係る歯付ベルト10は、例えば一対のプーリに巻き掛けられ、駆動源からの動力を従動側に伝達する。ここで、プーリの外径は例えば20~700mmである。また、ベルト走行速度は例えば10~2000m/minであり、伝達容量は例えば0.1~600KWである。
【0050】
次に、実施形態に係る歯付ベルト10の製造方法について説明する。
図6~
図8は、歯付ベルト10の製造方法を説明するための図である。
図6~
図8には、金型及びベルトの一部を示している。
(1)
図6に示すように、円柱状の内金型31に筒状に加工した補強布14を順に被せ、その上から心線13を螺旋状に巻き付ける。
内金型31の外周には、断面がベルト歯12に対応した形状の軸方向に延びる凹溝32が周方向に間隔をおいて一定ピッチで設けられ、隣接する凹溝32同士の間には凸条33が設けられている。
筒状に加工した補強布14は、凹溝32の形状に沿うように予め成型しておく。
【0051】
(2)次いで、
図7に示すように、内金型31を円筒状の外金型34の中に収容する。このとき、内金型31と外金型34との間にベルト本体成形用のキャビティCが構成される。
【0052】
(3)続いて、
図8に示すように、密閉したキャビティCにウレタンプレポリマー等を含む熱硬化性ウレタン組成物111を注入して充填すると共に加熱する。
このとき、熱硬化性ウレタン組成物111が流動して硬化することにより、凹溝32においてベルト歯部が形成され、凸条33において歯底部が形成される。
このとき、熱硬化性ウレタン組成物111は、図示していないが、補強布14の隙間に侵入しつつ硬化する。そのため、ベルト歯12の内周面には、補強布14とともに熱硬化性ウレタン組成物111の硬化物が露出する。
【0053】
以上のようにして、ベルト本体11、心線13、及び補強布14が一体化した円筒状のスラブが成形される。なお、成形条件は、例えば、成形温度が170℃、成形圧力が12MPa及び成形時間が20分である。
【0054】
最後に、内金型31及び外金型34からスラブを脱型し、それを輪切りすることにより本実施形態に係る歯付ベルト10を得ることができる。
【0055】
(第2実施形態)
本発明の実施形態に係る歯付ベルトは、
図9に示す歯付ベルト20のような構成を備えるものであってもよい。
本実施形態に係る歯付ベルト20は、ベルト本体11におけるベルト厚さ方向の心線13の埋設位置よりも内周側にベルト長さ方向に沿って埋設された不織布16を備える点で、第1実施形態に係る歯付ベルト10と異なる。
歯付ベルト20は、不織布16を備える以外は、歯付ベルト10と同様の構成を有する。
【0056】
歯付ベルトは、不織布16を備えるため、歯部の剛性がより高くなり、高負荷での耐久性向上が期待できる。
【0057】
歯付ベルト20において、不織布16は、一枚で構成されていてもよいし、複数枚で構成されていてもよい。
不織布16は、ベルト本体11を構成するポリウレタンを含んで、側面視において層を形成するように設けられている。不織布16の歯部11bに対応する部分は、側面視において内周側に膨出するように歯部11bに入り込んでベルト厚さ方向に厚く広がっている。不織布16の歯部11b間に対応する部分は、心線13に接触してベルト厚さ方向に薄く圧縮されている。
【0058】
不織布16を構成する繊維材料としては、例えば、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ポリケトン繊維、カーボン繊維等が挙げられる。不織布16は、単一種の繊維で形成されていてもよいし、複数種の繊維で形成されていてもよい。
【0059】
不織布16には、成形前に予め液状の接着剤に浸漬した後に乾燥させる等の接着処理が施されていてもよい。
【0060】
本実施形態に係る不織布16を備える歯付ベルト20の製造方法は、例えば、第1実施形態に係る歯付ベルト10の製造工程の一部を改変する以外は、第1実施形態で採用した方法と同様の方法を採用することができる。
具体的には、円柱状の内金型31に筒状に加工した補強布14及び不織布16を順に被せ、その上から心線13を螺旋状に巻き付けるように、
図6を示しながら説明した工程(1)を改変して製造すればよい。
【0061】
この場合、不織布16としては、円柱状の内金型31に被せた際に周方向にやや張力が付与される程度の長さのものを用いることが好ましい。
また、熱硬化性ウレタン組成物を注入して充填すると共に加熱することで、熱硬化性ウレタン組成物が不織布16に含浸して硬化することにより、不織布16は、熱硬化性ポリウレタンを含んでベルト長さ方向に沿うように配されてベルト本体11に埋設されることになる。
【0062】
(その他の実施形態)
本発明の実施形態に係る歯付ベルトのベルト歯は、直歯に限定されず、ハス歯であってもよい。
ベルト歯がハス歯の場合も測定サンプルの作製方法は上述した通りである。
そのため、ベルト歯がハス歯の場合は、歯すじの向きによっては、歯付ベルトをベルト幅方向に切断する際に、歯底部だけでなく、ベルト歯の一部を通るように切断されることがある。
【0063】
本発明の実施形態に係る歯付ベルトにおいて、ベルト歯の歯形は、台形歯形でもよい。
本発明の実施形態に係る歯付ベルトは、ベルト本体が、熱可塑性ポリウレタン等で構成されていてもよい。
上記歯付きベルトを構成する心線は、アラミド繊維、ポリエステル繊維、PBO繊維、ナイロン繊維、ポリケトン繊維などの有機繊維、ガラス繊維、金属繊維等で構成されたものであってもよい。
【実施例0064】
以下、実施例によって本発明の実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明の実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1~3及び比較例1、2のそれぞれで歯付ベルトを作製した。
【0065】
<実施例1>
第1実施形態と同様の構成のS8Mの歯付ベルトを作製した。
実施例1の歯付ベルトは、ベルト長さが800mm、ベルト厚さ(最大)が4.8mm、ベルト幅が8mmとした。ベルト歯は、ISO13050:2014(E)で規定されるS8Mで、配設ピッチが8mmである。
【0066】
ベルト本体を形成するための熱硬化性ウレタン組成物には、イソシアネート成分をトリレンジイソシアネートとし、ポリオール成分をポリテトラメチレンエーテルグリコールとするウレタンプレポリマー(PTMEG-TDI)100質量部に対して、硬化剤(4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸イソブチル)16質量部と、滑剤(脂肪酸エステル)7.5質量部とを配合した熱硬化性ウレタン組成物を用いた。
熱硬化性ウレタン組成物の硬化物のJIS-A硬さは、95であった。
上記熱硬化性ウレタン組成物の硬化物のJIS-A硬さは、上述した通り、JIS K7312:1996に基づき、タイプAデュロメータを用いて測定した。JIS-A硬さの測定方法は、実施例2、3及び比較例1、2も同様である。
【0067】
心線には、フィラメント本数が12000本のカーボン繊維(Tenax-J UTS50 F22 帝人社製、12K、800tex、フィラメント径:7.0μm)のフィラメント束を、長さ1mあたりの撚り数を90tpmとして一方向に撚った片撚り糸を用いた。片撚り糸の心線は、S撚り糸及びZ撚り糸を準備した。
それらには、接着剤に浸漬した後に乾燥させる接着処理を施した。ここで、接着剤としては、フェノール系接着剤を用いた。
【0068】
S撚り糸及びZ撚り糸の片撚り糸の心線は、それらがベルト幅方向に交互に並んで二重螺旋を形成するように設けた。
心線のベルト幅10mm当たりの本数は8本とした。
【0069】
帆布(補強布)には、繊度が太さ235dtexのナイロン6,6繊維の繊維束1本の緯糸に対し、繊度が同じく太さ235dtexの繊維束3本の経糸で形成された2/2綾織り帆布を用いた。
帆布は、緯糸がベルト長さ方向に一致するように設けた。
帆布には、接着処理を施さなかった。
帆布は、厚さが1.2mm、経糸の糸密度が113本/5cm幅、緯糸の糸密度が120本/5cm幅、並びに目付量が385g/m2であった。
【0070】
製造した歯付ベルトについて、ピーク摩擦係数μA、及び平均摩擦係数μBのそれぞれを上述の方法で測定したところ、ピーク摩擦係数μAが0.24、平均摩擦係数μBが0.21であった。
【0071】
<実施例2>
熱硬化性ウレタン組成物を下記の通り変更した以外は、実施例1と同様にしてS8Mの歯付ベルトを作製した。
【0072】
ベルト本体を形成するための熱硬化性ウレタン組成物としては、イソシアネート成分をトリレンジイソシアネートとし、ポリオール成分をポリテトラメチレンエーテルグリコールとするウレタンプレポリマー(PTMEG-TDI)100質量部に対して、硬化剤(3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA))16質量部と、滑剤(脂肪酸エステル)7.5質量部を配合した熱硬化性ウレタン組成物を用いた。
熱硬化性ウレタン組成物の硬化物のJIS K7312:1996に基づいて測定したJIS-A硬さは95であった。
【0073】
製造した歯付ベルトについて、ピーク摩擦係数μA、及び平均摩擦係数μBのそれぞれを上述の方法で測定したところ、ピーク摩擦係数μAが0.71、平均摩擦係数μBが0.49であった。
【0074】
<実施例3>
熱硬化性ウレタン組成物、及び帆布を下記の通り変更した以外は、実施例1と同様にしてS8Mの歯付ベルトを作製した。
【0075】
ベルト本体を形成するための熱硬化性ウレタン組成物としては、イソシアネート成分をトリレンジイソシアネートとし、ポリオール成分をポリテトラメチレンエーテルグリコールとするウレタンプレポリマー(PTMEG-TDI)100質量部に対して、硬化剤(3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA))16質量部を配合した熱硬化性ウレタン組成物を用いた。
熱硬化性ウレタン組成物の硬化物のJIS K7312:1996に基づいて測定したJIS-A硬さは98であった。
【0076】
帆布としては、実施例1と同様の帆布に、超高分子量PE粉末を用いた摩耗改質処理を施したものを使用した。
上記摩耗改質処理としては、熱可塑性ポリアミド粉末と超高分子量PE粉末との混合粉末を帆布に塗布した後、熱溶着させる処理を施した。
【0077】
製造した歯付ベルトについて、ピーク摩擦係数μA、及び平均摩擦係数μBのそれぞれを上述の方法で測定したところ、ピーク摩擦係数μAが0.25、平均摩擦係数μBが0.08であった。
【0078】
<比較例1>
熱硬化性ウレタン組成物を下記の通り変更した以外は、実施例1と同様にしてS8Mの歯付ベルトを作製した。
【0079】
ベルト本体を形成するための熱硬化性ウレタン組成物としては、イソシアネート成分をトリレンジイソシアネートとし、ポリオール成分をポリテトラメチレンエーテルグリコールとするウレタンプレポリマー(PTMEG-TDI)100質量部に対して、硬化剤(4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸イソブチル)16質量部を配合した熱硬化性ウレタン組成物を用いた。
熱硬化性ウレタン組成物の硬化物のJIS K7312:1996に基づいて測定したJIS-A硬さは98であった。
【0080】
製造した歯付ベルトについて、ピーク摩擦係数μA、及び平均摩擦係数μBのそれぞれを上述の方法で測定したところ、ピーク摩擦係数μAが0.89、平均摩擦係数μBが0.70であった。
【0081】
<比較例2>
熱硬化性ウレタン組成物を下記の通り変更した以外は、実施例1と同様にしてS8Mの歯付ベルトを作製した。
【0082】
ベルト本体を形成するための熱硬化性ウレタン組成物としては、イソシアネート成分をトリレンジイソシアネートとし、ポリオール成分をポリテトラメチレンエーテルグリコールとするウレタンプレポリマー(PTMEG-TDI)100質量部に対して、硬化剤の3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)16質量部を配合した熱硬化性ウレタン組成物を用いた。
熱硬化性ウレタン組成物の硬化物のJIS K7312:1996に基づいて測定したJIS-A硬さは98であった。
【0083】
製造した歯付ベルトについて、ピーク摩擦係数μA、及び平均摩擦係数μBのそれぞれを上述の方法で測定したところ、ピーク摩擦係数μAが0.80、平均摩擦係数μBが0.46であった。
【0084】
(評価)
<負荷耐久試験>
図10は、負荷耐久試験用のベルト走行試験機のプーリレイアウトを示す。
【0085】
このベルト走行試験機40は、歯数が22で且つ外径が54.65mmの駆動プーリ41及び歯数が33で且つ外径が82.66mmの従動プーリ42が横方向に間隔をおいて配設されており、従動プーリ42には、側方に軸荷重(SW)を負荷できるように構成されている。
【0086】
実施例及び比較例のそれぞれの歯付ベルトについて、上記ベルト走行試験機40の駆動プーリ41及び従動プーリ42に巻き掛け、従動プーリ42に608Nの軸荷重(SW)と共に34.24N・mのトルクを負荷した。軸荷重(SW)は、ロードセルによる軸荷重で設定した。設定時は、目標張力に設定後、プーリを手回しでベルト3周回し、再度目標張力に合わせて設定した。そして、雰囲気温度60℃で、駆動プーリ41を回転数4212rpm、従動プーリ42を回転数2808rpmで回転させてベルト走行させた。
そして、定期的にベルト走行を停止して目視観察しながら、ベルト歯の歯欠けや摩耗、ベルト本体と心線との間での剥離の故障が生じるまでベルト走行を継続した。結果を表1に示した。
【0087】
【0088】
表1に示した通り、本発明の実施形態に係る歯付きベルトは、故障が発生するまでの耐久時間が長く、耐久性に優れることが明らかとなった。
実施例1、2の負荷耐久試験では、ベルト歯は摩耗しにくく、ベルト歯の歯欠けによって、試験が終了した。
実施例3の負荷耐久試験では、ベルト歯は摩耗しにくいが、補強布が摩耗しきると、ベルト歯の摩耗によって、試験が終了した。
一方、比較例1の負荷耐久試験では、ベルト本体における発熱量が多くなり、ベルト本体と心線との界面での剥離により試験が終了した。
比較例2の負荷耐久試験では、ベルト歯の摩耗により試験が終了した。