(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023667
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】肝機能改善剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/352 20060101AFI20240214BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/216 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/12 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/522 20060101ALI20240214BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240214BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240214BHJP
A61K 36/899 20060101ALI20240214BHJP
A61K 36/062 20060101ALI20240214BHJP
A61K 36/282 20060101ALI20240214BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240214BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240214BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240214BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240214BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240214BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240214BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20240214BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20240214BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20240214BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20240214BHJP
A61P 1/16 20060101ALN20240214BHJP
A61K 8/49 20060101ALN20240214BHJP
A61K 8/9789 20170101ALN20240214BHJP
【FI】
A61K31/352
A61K31/7048
A61K31/216
A61K31/12
A61K31/522
A61K47/18
A61K47/26
A61K36/899
A61K36/062
A61K36/282
A61P43/00 121
A61K9/20
A61K9/14
A61K9/48
A61K9/08
A61Q19/00
A61Q5/02
A61Q19/10
A23L33/10
A23L33/105
A61P1/16
A61K8/49
A61K8/9789
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023210781
(22)【出願日】2023-12-14
(62)【分割の表示】P 2022069053の分割
【原出願日】2016-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(72)【発明者】
【氏名】中島 千絵
(72)【発明者】
【氏名】鍔田 仁人
(72)【発明者】
【氏名】山口 和也
(72)【発明者】
【氏名】高垣 欣也
(57)【要約】
【課題】 高い肝機能改善作用を有する肝機能改善剤を提供すること。
【解決手段】 テクトリゲニン類とビタミンB2、パントテン酸ナトリウム、ビオチン、ビタミンEから選ばれる少なくとも1種のビタミン類等の特定の他成分とを含有することを特徴とする肝機能改善剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テクトリゲニン、テクトリジン、及びテクトリゲニン7-O-キシロシルグルコシドから選ばれる少なくとも1種と、下記(a)~(d)からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分を含有することを特徴とする経口組成物。
(a)クロロゲン酸、クルクミン、カフェインから選ばれる少なくとも1種の機能性添加剤
(b)アスパルテーム、麦芽糖、フラクトオリゴ糖から選ばれる少なくとも1種の甘味料
(c)ヨモギ、米ぬか、米胚芽から選ばれる少なくとも1種の植物素材
(d)穀物麹、黒酢、小麦ふすま発酵エキス末、もろみ酢、ビール酵母から選ばれる少なくとも1種の発酵関連素材
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝機能改善剤に係り、詳しくは、テクトリゲニン類及び特定の他成分を含有することを特徴とする肝機能改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
テクトリゲニン類はアヤメ科やマメ科の植物に存在するフラボノイドの一つであり、サーチュインを活性化すること(特許文献1参照)、Bmal1遺伝子の発現を活性化すること等が知られている(特許文献2参照)。
テクトリゲニン類は植物に含まれていることから、安全性が比較的高く日常的に摂取しやすいと考えられるが、その活性や機能については未だ不明な点も多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-298876号公報
【特許文献2】特開2013-56866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明においては、テクトリゲニン類と特定の他成分とを組み合わせて、従来にない優れた肝機能改善剤を得ることを目的に種々の検討を行った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、テクトリゲニン類と多種多様な成分とを組み合わせて肝機能改善作用を試験したところ、テクトリゲニン類と特定の他成分とを組み合わせることにより、肝機能改善作用が飛躍的に向上することを見い出した。
【0006】
本発明は具体的には、
テクトリゲニン類と、下記(a)~(f)からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分とを含有することを特徴とする肝機能改善剤である。
(a)ビタミンB2、パントテン酸ナトリウム、ビオチン、ビタミンEから選ばれる少なくとも1種のビタミン類
(b)ヨモギ、黒ショウガ(Kaempferia parviflora)、米ぬか、米胚芽から選ばれる少なくとも1種の植物素材
(c)穀物麹、黒酢、小麦ふすま発酵エキス末、もろみ酢、ビール酵母から選ばれる少なくとも1種の発酵関連素材
(d)アラニン、イソロイシン、リジン、プロリン、チロシンから選ばれる少なくとも1種のアミノ酸(塩を含む)
(e)鉄、モリブデン、亜鉛、チタン、没食子酸、クロロゲン酸、クルクミン、カフェイン、L-カルニチン、α‐リポ酸から選ばれる少なくとも1種の機能性添加剤
(f)アスパルテーム、麦芽糖、フラクトオリゴ糖から選ばれる少なくとも1種の甘味料
【0007】
また、本発明は、テクトリゲニン類と(a)~(f)からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分とからなる成分を添加して得たことを特徴とする肝機能改善剤であることが好ましい。
【0008】
また、本発明は、錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、又は液剤であることを特徴とする肝機能改善剤であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた肝機能改善作用を有する肝機能改善剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の肝機能改善剤としては、テクトリゲニン類及び特定の他成分を含有するものであれば特に制限されるものではない。また、本発明の肝機能改善剤は優れた肝機能改善作用を有し、肝機能の亢進又は肝障害の抑制が期待できる。特に、本発明のテクトリゲニン類と特定の他成分との組み合わせは、肝細胞の傷害を防ぐ。これにより、肝細胞中のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノ基転移酵素(Alanine transaminase、ALT)、γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(γ-Glutamyltransferase、γ-GTP)の血中への逸脱が抑制されることが期待される。
【0011】
本発明に用いられるテクトリゲニン類とは、テクトリゲニン、その配糖体又は誘導体、及びそれらの混合物を意味する。テクトリゲニン類は通常知られているテクトリゲニン類であれば特に限定されないが、テクトリゲニン(tectorigenin)、テクトリジン(tectoridin)及びテクトリゲニン7-O-キシロシルグルコシド(tectorigenin 7-O-xylosylglucoside(TGXG)が好ましく、これらの混合物が特に好ましい。
【0012】
本発明に用いられるテクトリゲニン類は、合成されたものであっても植物に含まれるものであっても良いが、安全性等の観点から植物から抽出されたものが好ましく、アヤメ科やマメ科の植物から抽出したものが特に好ましい。アヤメ科植物やマメ科の植物としては、ハナショウブ、アヤメ、クズ、カキツバタ等が知られている。
【0013】
テクトリゲニン類を植物から抽出する場合、植物の幹、枝、果実、葉、花、種子、樹皮、樹液、根、茎、芽等のいずれの部位を用いても構わないが、簡便に利用するには、葉や花を用いるとよい。抽出の際は、生のまま用いてもよいが、抽出効率を考えると、細切、乾燥、粉砕等の処理を行った後に抽出を行うことが好ましい。抽出は、抽出溶媒に浸漬するか、抽出効率を上げるため、撹拌や抽出溶媒中でホモジナイズしてもよい。抽出温度としては、5℃程度から抽出溶媒の沸点以下の温度とするのが適切である。抽出時間は抽出溶媒の種類や抽出温度によっても異なるが、1時間~30日間程度とするのが適切である。
【0014】
抽出溶媒としては、水の他、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等を用いてもよい。また、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール、1、3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、エチルエーテル、プロピルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、エチルメチルケトン等のケトン類等の極性有機溶媒を用いることができ、これらより1種又は2種以上を選択して用いることができる。
【0015】
アヤメ科やマメ科の上記溶媒による抽出物に含まれるテクトリゲニン類は、そのままでも使用することができるが、濃縮、乾固した物を水や極性溶媒に再度溶解したり、或いはこれらの生理作用を損なわない範囲で脱色、脱臭、脱塩等の精製処理を行ったり、カラムクロマトグラフィー等による分画処理を行った後に用いてもよい。
【0016】
本発明で用いるテクトリゲニン類の入手方法は上記の通り植物から抽出することもできるが、当業者に通常知られる方法により合成された合成物、市販品、該市販品を化学処理、酵素処理、精製処理等に供することによって得られた処理物等を用いてもよい。例えば、テクトリゲニン及びテクトリジンは関東化学社から得ることができる。
【0017】
テクトリゲニン類の含有量は特に限定されず、例えば、本発明の肝機能改善剤の全量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05~20質量%、より好ましくは0.1~10質量%、特に好ましくは0.5~5質量%である。この場合のテクトリゲニン類の含有量とは、テクトリゲニン、テクトリジン及びTGXGの含有量の総量をいう。
【0018】
[他成分]
本発明の肝機能改善剤は、テクトリゲニン類と特定の他成分とを含有することを特徴とし、特定の他成分としては、肝機能改善能がほとんどないか、その能力が小さい他成分を、テクトリゲニン類と組み合わせることにより、肝機能改善能を相乗的に向上させることができる成分であれば限定されないが、特に以下に記載する(a)~(f)からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分とを含有することが望ましい。
【0019】
(a)ビタミン類
本発明の肝機能改善剤においては、テクトリゲニン類と共に、他成分として、ビタミンB2、パントテン酸ナトリウム、ビオチン、ビタミンEから選ばれる少なくとも1種のビタミン類を用いることが好ましい。これらのビタミン類は、特に限定されないが、化粧品や飲食品の原料として利用される市販のものを用いることができる。これらの他成分は、テクトリゲニン類と組み合わせた場合に、相乗的な肝機能改善作用が得られるだけでなく、テクトリゲニン類の呈味を改善することができる。さらに、テクトリゲニン類と組み合わせて飲料、錠剤とした際にテクトリゲニン類の体内への吸収性を高めることができる。
【0020】
(b)植物素材
本発明の肝機能改善剤においては、テクトリゲニン類と共に、他成分として、ヨモギ(Artemisia indica)、黒ショウガ(Kaempferia parviflora)、米ぬか、米胚芽から選ばれる少なくとも1種の植物素材を用いることが好ましい。これらの他成分は、テクトリゲニン類と組み合わせた場合に、相乗的な肝機能改善作用が得られるだけでなく、テクトリゲニン類の呈味を改善することができる。さらに、水にテクトリゲニン類のみを溶解した場合よりも、色味に優れ、また分散性に優れたものとすることができる。
【0021】
これらの植物素材の中で、ヨモギと黒ショウガについては、花、葉、茎、根等、植物のいずれの部位であってもよいが、通常食用される部位が好ましく、植物素材そのもの(乾燥物を含む)、その粉砕物、搾汁、抽出物等を用いることができる。粉砕物としては、粉末、顆粒等が挙げられる。搾汁や抽出物は、液状であってもよいが、ペースト状や乾燥粉末として用いることもできる。抽出物は、適当な溶媒を用いて抽出することによって得ることができ、溶媒としては、例えば、水、エタノール、含水エタノールを用いることができる。
【0022】
米ぬかは、米を精米した際に出る果皮、種皮、胚芽等を分離したものである。米ぬかとしては、特に限定されないが、化粧品や飲食品の原料として利用される市販のものを用いることができる。
【0023】
米胚芽には、米の胚芽や胚芽に含まれる成分を単離したものが挙げられる。米胚芽としては、特に限定されないが、化粧品や飲食品の原料として利用される市販のものを用いることができる。
【0024】
(c)発酵関連素材
本発明の肝機能改善剤においては、テクトリゲニン類と共に、他成分として、穀物麹、黒酢、小麦ふすま発酵エキス末、もろみ酢、ビール酵母から選ばれる少なくとも1種の発酵関連素材を用いることが好ましい。これらの他成分は、テクトリゲニン類と組み合わせた場合に、相乗的な肝機能改善作用が得られるだけでなく、テクトリゲニン類の呈味を改善することができる。さらに、水にテクトリゲニン類のみを溶解した場合よりも、色味に優れ、また分散性に優れたものとすることができる。
【0025】
これら発酵関連素材は、特に限定されないが、発酵関連素材をそのまま用いても良く、発酵関連素材を乾燥させて、粉砕したものを用いても良い。また、発酵関連素材から抽出したものであっても良く、抽出物をそのまま、或いは粉砕して用いることができる。粉砕物としては、粉末、顆粒等が挙げられる。抽出物は、液状であってもよいが、ペースト状や乾燥粉末として用いることもできる。抽出物は、適当な溶媒を用いて抽出することによって得ることができ、溶媒としては、例えば、水、エタノール、含水エタノールを用いることができる。
【0026】
穀物麹は、大麦、アワ、ヒエ、キビ、タカキビ、紫黒米及び米粉の7つを麹菌を用いて発酵させたものであり、黒酢、小麦ふすま発酵エキス末、もろみ酢、ビール酵母は、特に限定されないが、化粧品や飲食品の原料として利用される市販のものを用いることができる。
【0027】
穀物麹、黒酢、小麦ふすま発酵エキス末、もろみ酢の発酵に使用する麹は、特に限定されないが、米、麦、大豆、アワ、ヒエ、キビ等の穀物を麹菌で発酵させたものであれば良く、発酵に用いる麹菌としては、黄麹菌、青麹菌、白麹菌、黒麹菌、紅麹等のいずれを用いても良い。具体的には、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)(黒麹菌)、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)(黒麹菌)、アスペルギルス・ナカザワイ(Aspergillus nakazawai)(黒麹菌)、アスペルギルス・ウサミ(Aspergillus usamii)(黒麹菌)、アスペルギルス・ルーチェンシス(Aspergillus luchensis)(黒麹菌)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)(黒麹菌)、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)(白麹菌)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)(黄麹菌)等のアスペルギルス属に属する微生物を挙げることができる。
【0028】
(d)アミノ酸
本発明の肝機能改善剤においては、テクトリゲニン類と共に、他成分として、アラニン、イソロイシン、リジン、プロリン、チロシンから選ばれる少なくとも1種のアミノ酸を用いることが好ましい。塩としては、例えば、ナトリウム塩、塩酸塩等を挙げることができる。これらのアミノ酸類は、特に限定されないが、化粧品や飲食品の原料として利用される市販のものを用いることができる。これらの他成分は、テクトリゲニン類と組み合わせた場合に、相乗的な肝機能改善作用が得られるだけでなく、テクトリゲニン類の呈味を改善することができる。さらに、水にテクトリゲニン類のみを溶解した場合よりも、色味に優れ、また分散性に優れたものとすることができる。
【0029】
(e)機能性添加剤
本発明の肝機能改善剤においては、テクトリゲニン類と共に、他成分として、鉄、モリブデン、亜鉛、チタン、没食子酸、クロロゲン酸、クルクミン、カフェイン、L-カルニチン、α‐リポ酸から選ばれる少なくとも1種の機能性添加剤を用いることが好ましい。
これらの機能性添加剤は、特に限定されないが、化粧品や飲食品の原料として利用される市販のものを用いることができる。これらの他成分は、テクトリゲニン類と組み合わせた場合に、相乗的な肝機能改善作用が得られるだけでなく、テクトリゲニン類の呈味を改善することができる。さらに、水にテクトリゲニン類のみを溶解した場合よりも、色味に優れ、また分散性に優れたものとすることができる。
【0030】
(f)甘味料
本発明の肝機能改善剤においては、テクトリゲニン類と共に、他成分として、アスパルテーム、麦芽糖、フラクトオリゴ糖から選ばれる少なくとも1種の甘味料を用いることが好ましい。これらの甘味料は、特に限定されないが、化粧品や飲食品の原料として利用される市販のものを用いることができる。これらの他成分は、テクトリゲニン類と組み合わせた場合に、相乗的な肝機能改善作用が得られるだけでなく、テクトリゲニン類の呈味を改善することができる。さらに、水にテクトリゲニン類のみを溶解した場合よりも、色味に優れ、また分散性に優れたものとすることができる。
【0031】
[使用の形態]
本発明の肝機能改善剤は、肝機能改善の用途に用いられる点において、製品として他の製品と区別できるものであればよく、例えば、本発明の肝機能改善剤に係る製品の本体、包装、説明書、宣伝物のいずれかに肝機能改善の機能がある旨を表示したものを挙げることができる。肝機能改善機能がある旨の表示とは、例えば、肝臓の健康を維持したい方、肝臓の健康を維持する、肝臓の働きをサポートする、肝臓の健康に、肝臓機能の改善に、といったように肝臓の健康の維持増進に役立つことの表示や、肝機能が気になる方、肝臓の健康が気になる方、お酒をよく飲む方、といったように肝臓の働きを気にする対象者に訴えかける表示をいう。
【0032】
本発明の肝機能改善剤の利用形態としては、具体的には、医薬品(医薬部外品を含む)、化粧品、一般食品、栄養機能食品の他、消費者庁により効能の表示が認められた特定保健用食品、機能性表示食品等のいわゆる健康食品を挙げることができる。
【0033】
本発明の肝機能改善剤は、外用又は経口用として使用することができる。外用剤としては、皮膚、頭皮等に塗布して用いるものであれば、特に制限はなく、その形態としては、軟膏剤、クリーム剤、ジェル剤、ローション剤、乳液剤、パック剤、湿布剤等の皮膚外用剤や、注射剤等の形態を挙げることができる。
【0034】
また、本発明の肝機能改善剤を経口剤として用いる場合、その形態としては、例えば、錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、液剤、粒状剤、棒状剤、板状剤、ブロック状剤、固形状剤、丸状剤、ペースト状剤、クリーム状剤、カプレット状剤、ゲル状剤、チュアブル状剤、スティック状剤等を挙げることができる。これらの中でも、錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、液剤の形態が、摂取がしやすく肝機能改善作用を得やすいことから特に好ましい。具体的には、サプリメント、食品添加剤、ペットボトル、缶、瓶等に充填された容器詰飲料、水(湯)、牛乳、果汁等に溶解して飲むためのインスタント粉末(顆粒)飲料等を例示することができる。これらは食事の際等に手軽に飲食しやすく、また嗜好性を高めることができるという点で好ましい。
【0035】
本発明の肝機能改善剤におけるテクトリゲニン類及び他成分の含有量としては、その効果の奏する範囲で適宜含有させればよい。本発明の肝機能改善剤は、テクトリゲニン類を有効成分とするものであってもよく、テクトリゲニン類と他成分とを有効成分とするものであってもよい。
【0036】
一般的には、本発明の肝機能改善剤が医薬品やサプリメント(錠剤、カプセル剤)の場合には、テクトリゲニン類及び他成分が乾燥質量換算で全体の0.01~100質量%含まれていることが好ましく、0.1~85質量%含まれていることがより好ましく、0.5~70質量%含まれていることがさらに好ましい。
【0037】
本発明の肝機能改善剤が容器詰飲料(液剤)である場合には、テクトリゲニン類及び他成分が乾燥質量換算で全体の0.0001~10質量%含まれていることが好ましく、0.0003~6質量%含まれていることがより好ましく、0.0005~4質量%含まれていることがさらに好ましい。
【0038】
また、本発明の肝機能改善剤がインスタント粉末飲料(粉末剤)、インスタント顆粒飲料(顆粒剤)である場合には、テクトリゲニン類及び他成分が乾燥質量換算で全体の0.001~50質量%含まれていることが好ましく、0.01~40質量%含まれていることがより好ましく、0.1~30質量%含まれていることがさらに好ましい。
【0039】
本発明の効果をより有効に発揮させるためには、テクトリゲニン類及び他成分が乾燥質量換算で本発明の肝機能改善剤全体(水分を除く)の80質量%以上含まれていることが好ましく、90質量%以上含まれていることがより好ましく、95質量%以上含まれていることがさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。さらに、本発明の肝機能改善剤が成分(a)~(f)のいずれかを含有する場合、その含有される成分は、本発明に記載される他成分のみで構成されることが好ましい。すなわち、本発明の肝機能改善剤が例えば成分(a)植物素材を含有する場合には、それ以外の飲料用植物素材を含まないように構成することが好ましい。
【0040】
本発明の肝機能改善剤の摂取量としては特に制限はないが、本発明の効果をより顕著に発揮させる観点から、1日当たりのテクトリゲニン類及び他成分の摂取量が、5mg/日以上となるように摂取することが好ましく、10mg/日以上となるように摂取することがより好ましく、20mg/日以上となるように摂取することがさらに好ましい。その上限は特に制限されないが、例えば、2g/日であり、好ましくは1g/日である。本発明の肝機能改善剤は、1日の摂取量が前記摂取量となるように、1つの容器に、又は例えば2~3の複数の容器に分けて、1日分として収容することができる。
【0041】
テクトリゲニン類及び他成分の配合質量比としては、乾燥質量換算で、0.0001:1~60:1の範囲であることが好ましく、0.0005:1~50:1の範囲であることがより好ましく、0.001:1~40:1の範囲であることがさらに好ましく、0.003:1~30:1の範囲であることが特に好ましい。テクトリゲニン類及び他成分の配合比が、上記範囲であることにより、本発明の効果をより有効に発揮することができる。
【0042】
本発明の肝機能改善剤は、必要に応じて、経口用として許容される添加剤や、テクトリゲニン類及び他成分以外の成分を添加して、公知の製剤方法によって製造することができる。
【0043】
また、本発明の肝機能改善剤としては、テクトリゲニン類及び他成分を含有する肝機能改善用食品の他、食品に対してテクトリゲニン類及び他成分を添加して得た肝機能改善用食品を挙げることができ、例えば、通常の食品(天然の食品を含む)に比して本発明のテクトリゲニン類及び他成分含有量を増加させた食品や、本発明のテクトリゲニン類及び他成分を通常含まない食品に対してテクトリゲニン類及び他成分を添加した食品を挙げることができる。テクトリゲニン類及び他成分の添加は、それぞれの成分を別々に添加してもよいし、同時に添加してもよく、また、テクトリゲニン類及び他成分以外の他成分と共に添加してもよい。
【0044】
本発明の肝機能改善剤の使用形態の一つとして、食品に添加することができ、食品としては、例えば、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料、スムージー、青汁等の飲料;アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、中華麺、即席麺等の麺類;飴、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子類;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳、ヨーグルト等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及びその加工食品;ソース、醤油等の調味料;カレー、シチュー、親子丼、お粥、雑炊、中華丼、かつ丼、天丼、牛丼、ハヤシライス、オムライス、おでん、マーボドーフ、餃子、シューマイ、ハンバーグ、ミートボール、各種ソース、各種スープ等のレトルトパウチ食品等を挙げることができる。
【実施例0045】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。
【0046】
[試験例]
テクトリゲニン類としては、植物から抽出したテクトリゲニン、テクトリジン及びTGXGの混合物を用いた。(テクトリゲニン:テクトリジン:TGXG=5.4:34.1:60.5)
【0047】
[肝機能改善確認試験]
(サンプル液の調製)
ヒト肝癌由来細胞(HepG2)を10%FBS-DMEM(以下DMEM)により培養後、96well plateの各wellに4.0×104cells/wellの細胞密度で播種し、37℃、5%CO2インキュベーター内で24時間前培養した。
上記細胞にDMEMを用いて後述の表1~6に記載する所定濃度に調製したサンプル液を200μLずつ添加し、5%CO2インキュベーター内で24時間培養した。
なお、上記サンプル液の調製において、他成分としてビタミンE、黒ショウガ、クルクミン、又はα-リポ酸を添加した際は、各被験物質DMSOに溶解し、DMSOの終濃度が0.25%になるように調製した。
【0048】
(測定方法)
サンプル液の培地を除去し、DMEMで30倍に希釈したCell Counting Kit-8溶液を150μL添加した。37℃、5%CO2インキュベーター内に静置し適度に発色させた後、450 nmにおける吸光度を測定した。
コントロールには、試験物質をDMSOに溶解したものに対しては0.25%DMSO含有DMEM、その他の試験物質に対してはDMEMを用いた。
【0049】
各試験物質の肝細胞賦活率は下記の式にて算出した。
肝細胞賦活率(%)
% of control = (Data sample-Data blank) /(Data control-Data blank)×100
(式中、Data sample:試験溶液(test)の蛍光強度
Data control:コントロール(test)の蛍光強度
Data blank:試験溶液(blank)の蛍光強度)
【0050】
その結果を表1~表6に示す。各試験区の肝細胞賦活率以外の数値はテクトリゲニン類又は他成分の最終濃度を示し、単位はいずれもμg/mLである。各試験区の肝細胞賦活率はコントロールの肝細胞賦活率に対する変化値を示している。
【0051】
なお、テクトリゲニン類を単独で用いた場合の肝細胞賦活率(変化値)と、他成分を単独で用いた場合の肝細胞賦活率(変化値)の和よりも、組み合わせて用いた場合の肝細胞賦活率(変化値)が10ポイント以上増加した他成分をテクトリゲニン類との相乗効果ありとし、表1~表6に記載した。
【0052】
【0053】
表1に記載された他成分はすべて市販されているものを用いた。
【0054】
【0055】
表2のヨモギは市販されているヨモギの粉砕末、黒ショウガは市販されている黒ショウガ根茎の60%エタノール抽出物を用いた。また、ヨモギ及び黒ショウガ以外の他成分はすべて市販されているものを用いた。
【0056】
【0057】
表3に記載された他成分はすべて市販されているものを用いた。
【0058】
【0059】
表4に記載された他成分はすべて市販されているものを用いた。
【0060】
【0061】
表5に記載された他成分はすべて市販されているものを用いた。なお、鉄は塩化鉄、モリブデンは塩化モリブデン、チタンは二酸化チタン、亜鉛はグルコン酸亜鉛を用いた。
【0062】
【0063】
表6に記載された他成分はすべて市販されているものを用いた。
【0064】
表1~表6に示すように、テクトリゲニン類と本発明の特定の他成分を組み合わせることにより、肝細胞賦活率が相乗的に増加した。したがって、本発明の肝機能改善剤は肝血流の増加、胆汁分泌促進、肝臓組織呼吸促進、又はウィルス性・薬剤性・アルコール性肝障害抑制を目的として利用できる。
【0065】
(比較例)
実施例と同じ手法を用いて、下記他成分の肝機能改善確認試験を行ったところ、ビタミン類であるビタミンA(テクトリゲニン)、植物素材である大麦若葉末、発酵関連素材である野菜発酵物、アミノ酸であるアルギニン、機能性添加剤であるカルシウム及び甘味料であるトレハロースについては、いずれもテクトリゲニン類を単独で用いた場合の肝細胞賦活率(変化値)と、他成分を単独で用いた場合の肝細胞賦活率(変化値)の和よりも、組み合わせて用いた場合の肝細胞賦活率(変化値)が10ポイント以上増加せず、肝細胞賦活の相乗作用は確認されなかった。
【0066】
(配合例1:化粧水)
全体を100質量部として、テクトリゲニン類 0.01質量部、ビタミンB2 0.01質量部、グリセリン 10質量部、ジグリセリン 3質量部、1、3-ブチレングリコール 12質量部、ペンチレングリコール 3質量部、ヒアルロン酸ナトリウム 0.1質量部、クエン酸 0.01質量部、クエン酸ナトリウム 0.02質量部、キサンタンガム 0.1質量部、メチルパラベン 0.15質量部、カルボマー 0.2質量部、水酸化ナトリウム 0.03質量部及び水 残部を混合して、化粧水の態様で本発明の肝機能改善剤を調製した。
【0067】
(配合例2:シャンプー)
全体を100質量部として、テクトリゲニン類 0.01質量部、ヨモギ葉エキス 0.02質量部、ラウレス硫酸ナトリウム 7.5質量部、コカミドプロピルベタイン 4.2質量部、コカミドDEA 3質量部、1、3-ブチレングリコール 0.1質量部、ポリクオタニウム-10 0.225質量部、クエン酸 0.15質量部、クエン酸ナトリウム 0.05質量部、フェノキシエタノール 0.9質量部及び水 残部を混合して、シャンプーの態様で本発明の肝機能改善剤を調製した。
【0068】
(配合例3:石鹸)
全体を100質量部として、テクトリゲニン類 0.5質量部、黒酢 0.5重量部、グリセリン 2質量部、オリーブ油 1質量部、EDTA-4ナトリウム 0.1質量部、エチドロン酸4ナトリウム 0.2質量部及び石鹸素地 残部を混合及び固化することにより、石鹸の態様で本発明の肝機能改善剤を調製した。
【0069】
(配合例4:乳液)
全体を100質量部として、テクトリゲニン類 0.1質量部、チロシン 0.1質量部、ショ糖脂肪酸エステル 3質量部、グリセリン 12質量部、スクアラン 6質量部、ジメチルシリコーンオイル 24質量部、ポリプロピレングリコール 1質量部、増粘剤 0.06質量部、フェノキシエタノール 0.2質量部、エタノール 5質量部、水酸化ナトリウム 0.01質量部及び精製水 残部を混合して、乳液の態様で本発明の肝機能改善剤を調製した。
【0070】
(配合例5:化粧用クリーム)
全体を100質量部として、テクトリゲニン類 0.1質量部、クロロゲン酸 0.1質量部、スクワラン 15.0質量部、ミリスチン酸オクチルドデシル 4.0質量部、水素添加大豆リン脂質 0.2質量部、ブチルアルコール 2.4質量部、硬化油 1.5質量部、ステアリン酸 1.5質量部、親油型モノステアリン酸グリセリン 1.5質量部、モノステアリン酸ポリグリセリル 0.5質量部、ベヘニルアルコール 0.8質量部、モノミリスチン酸ポリグリセリル 0.7質量部、サラシミツロウ 0.3質量部、d-δ-トコフェロール 0.1質量部、メチルパラベン 0.3質量部、C10~30アルキル変性カルボキシビニルポリマー 0.2質量部、カルボキシビニルポリマー 0.1質量部、1、3-ブタンジオール 18.0質量部、水酸化ナトリウム 0.1質量部及び精製水 残部を混合して、化粧用クリームの態様で本発明の肝機能改善剤を調製した。
【0071】
(配合例6:パック剤)
全体を100質量部として、テクトリゲニン類抽出物 0.1質量部、アスパルテーム 0.01質量部、ポリビニルアルコール 20.0質量部、グリセリン 5.0質量部、エタノール 20.0質量部、カオリン 6.0質量部、防腐剤 0.2質量部、香料 0.1質量部及び精製水 残部を混合して、パック剤の態様で本発明の肝機能改善剤を調製した。
【0072】
(配合例7:錠剤)
全体を100質量部として、テクトリゲニン類粉末 5質量部、パントテン酸ナトリウム 8質量部、ビタミンB1 5質量部、結晶性セルロース 20質量部、乳糖 50質量部、ステアリン酸マグネシウム 4質量部及びコーンスターチ 残部を混合及び打錠することにより、錠剤の態様で本発明の肝機能改善剤を調製した。
【0073】
(配合例8:顆粒剤)
全体を100質量部として、テクトリゲニン類粉末 5質量部、黒ショウガ抽出物 15質量部、乳糖 10質量部、ステアリン酸カルシウム 1質量部及び結晶セルロース 残部を混合及び顆粒化することにより、顆粒剤の態様で本発明の肝機能改善剤を調製した。
【0074】
(配合例9:カプセル剤)
全体を100質量部として、テクトリゲニン類抽出物 2.5質量部、穀物麹 20質量部、レシチン 8質量部及びオリーブ油 残部を混合して調製したものを内容液として、これをカプセル殻に内包することにより、カプセル剤の態様で本発明の肝機能改善剤を調製した。
【0075】
(配合例10:液剤)
全体を100質量部として、テクトリゲニン類粉末 0.33質量部、L-アラニン 0.1質量部、果糖ブドウ糖液糖 10質量部、クエン酸 1質量部、安息香酸ナトリウム 0.02質量部、香料 2質量部、スクラロース 0.05質量部、アセスルファムカリウム 0.03質量部及び精製水 残部を混合して、液剤の態様で本発明の肝機能改善剤を調製した。