(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023672
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】カプセル化された栄養及び医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/12 20160101AFI20240214BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240214BHJP
A23L 33/115 20160101ALI20240214BHJP
A61K 35/60 20060101ALI20240214BHJP
A61K 35/612 20150101ALI20240214BHJP
A61K 31/202 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/683 20060101ALI20240214BHJP
A61K 9/50 20060101ALI20240214BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20240214BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240214BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240214BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A23L33/12
A23L5/00 C
A23L33/115
A61K35/60
A61K35/612
A61K31/202
A61K31/683
A61K9/50
A61K9/107
A61K9/14
A61K47/36
A61P3/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023211167
(22)【出願日】2023-12-14
(62)【分割の表示】P 2019558758の分割
【原出願日】2018-04-27
(31)【優先権主張番号】2017901524
(32)【優先日】2017-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(71)【出願人】
【識別番号】518365581
【氏名又は名称】クローバー・コーポレイション・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Clover Corporation Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ボ・ワン
(72)【発明者】
【氏名】メク・チュ・ティン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】グレン・エリオット
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、安定なリン脂質豊富油を含む組成物を配合及びカプセル化する改善された方法を提供することである。
【解決手段】本発明は、1種又は複数種のLCPUFAと少なくとも1種の親水コロイドとを含むカプセル化組成物であって、約5%未満の表面遊離脂肪含有率を有する、カプセル化組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種又は複数種の長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)と少なくとも1種の親水コロイドとを含むカプセル化組成物であって、約5%未満の表面遊離脂肪含有率を有する、カプセル化組成物。
【請求項2】
1種又は複数種のLCPUFAを含む油脂組成物である、請求項1に記載のカプセル化組成物。
【請求項3】
約2%未満の表面遊離脂肪含有率を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
エマルション又は粉末の形態である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
エマルションが水中油型エマルションである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
油脂組成物がリン脂質含有油脂組成物である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
油脂組成物がリン脂質豊富である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
油脂組成物が少なくとも5~55%のリン脂質を含む、請求項6又は7に記載の組成物。
【請求項9】
油がオキアミ油又は魚油を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも1種の親水コロイドが、組成物中の水の量に対して約0.05%から約1%w/wの間の濃度で存在する、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも1種の親水コロイドが、組成物中の水の量に対して約0.1%から約0.5%w/wの間の濃度で存在する、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも1種の親水コロイドが食用ガムを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
食用ガムがキサンタンガムである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
キサンタンガムが、組成物中の水の量に対して約0.1%から約0.5%w/wの間の濃度で存在する、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
1種若しくは複数種のLCPUFA、又は1種若しくは複数種のLCPUFAを含む油脂組成物が、オクテニルコハク酸無水物化工でん粉及び2種以上の還元糖源でカプセル化されている、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記還元糖源の1種が20と60の間のデキストロース当量(DE)値を有し、第2の前記還元糖源が約0と20の間のDE値を有する、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
1種又は複数種のLCPUFAを含む組成物のカプセル化の効率を増大させるための方法であって、少なくとも1種の親水コロイドを前記組成物に組み込む工程を含む、方法。
【請求項18】
組成物が1種又は複数種のLCPUFAを含む油脂組成物である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
カプセル化の効率が、少なくとも1種の親水コロイドの非存在下における表面遊離脂肪含有率と比較した、カプセル化組成物の表面遊離脂肪含有率によって決定及び/又は定量化される、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1種の親水コロイドの存在下における組成物の表面遊離脂肪含有率が、約5%未満、又は約2%未満である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
カプセル材が、オクテニルコハク酸無水物化工でん粉及び2種以上の還元糖源を含む、請求項17から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1種の親水コロイドが、組成物中の水の量に対して約0.05%から約1%w/wの間の濃度で存在する、請求項17から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1種の親水コロイドが、組成物中の水の量に対して約0.1%から約0.5%w/wの間の濃度で存在する、請求項17から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1種の親水コロイド及びカプセル材が、均質な水性スラリーを形成する、請求項17から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1種の親水コロイドがキサンタンガムを含む、請求項17から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
キサンタンガムが、組成物中の水の量に対して約0.1%から約0.5%w/wの間の濃度で存在する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
1種又は複数種のLCPUFAを含むエマルションを安定化するための方法であって、少なくとも1種の親水コロイドを前記エマルションに組み込む工程を含む、方法。
【請求項28】
エマルションが1種又は複数種のLCPUFAを含む油脂組成物を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
少なくとも1種の親水コロイドの存在下におけるエマルションの表面遊離脂肪含有率が、約5%未満、又は約2%未満である、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
1種若しくは複数種のLCPUFA、又は1種若しくは複数種のLCPUFAを含む油脂組成物が、オクテニルコハク酸無水物化工でん粉及び2種以上の還元糖源でカプセル化されている、請求項27から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
少なくとも1種の親水コロイドが、組成物中の水の量に対して約0.05%から約1%w/wの間の濃度で存在する、請求項27から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
少なくとも1種の親水コロイドが、エマルション中の水の量に対して約0.1%から約0.5%w/wの間の濃度で存在する、請求項27から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
少なくとも1種の親水コロイドがキサンタンガムを含む、請求項27から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
キサンタンガムが、エマルション中の水の量に対して約0.1%から約0.5%w/wの間の濃度で存在する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
請求項27から34のいずれか一項に記載の方法に従って安定化されたエマルション。
【請求項36】
1種又は複数種のLCPUFAと少なくとも1種の親水コロイドとを含む、安定なエマルション。
【請求項37】
水中油型エマルションである、請求項36に記載の安定なエマルション。
【請求項38】
少なくとも1種の親水コロイドが、エマルション中の水の量に対して約0.05%から約1%w/wの間の濃度で存在する、請求項36又は37に記載の安定なエマルション。
【請求項39】
少なくとも1種の親水コロイドが、エマルション中の水の量に対して約0.1%から約0.5%w/wの間の濃度で存在する、請求項36から37のいずれか一項に記載の安定なエマルション。
【請求項40】
少なくとも1種の親水コロイドがキサンタンガムを含む、請求項36から39のいずれか一項に記載の安定なエマルション。
【請求項41】
キサンタンガムが、エマルション中の水の量に対して約0.1%から約0.5%w/wの間の濃度で存在する、請求項40に記載の安定なエマルション。
【請求項42】
1種若しくは複数種のLCPUFA、又は1種若しくは複数種のLCPUFAを含む油脂組成物が、オクテニルコハク酸無水物化工でん粉及び2種以上の還元糖源でカプセル化されている、請求項36から41のいずれか一項に記載の安定なエマルション。
【請求項43】
1種若しくは複数種のLCPUFA又は1種若しくは複数種のLCPUFAを含む油脂組成物、及び少なくとも1種の親水コロイドを含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、栄養及び医薬用途の両方に好適なリン脂質含有油脂組成物の安定なカプセル化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)がヒトの食事の重要な栄養成分であり、多くの人々が十分な量のこれらの必須脂肪酸、特にエイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)等のオメガ-3脂肪酸を摂取できていないということは周知である。多数の研究により、EPA及びDHAは、心臓、脳及び目の健康に有力な役割を果たしているということが見出されている。例えば、最近の研究では、EPA及びDHAは、運動中の心拍数及び酸素消費量を低減することができ、したがって運動選手の身体的及び精神的能力の向上に寄与し得ることが示唆されている。不可欠な栄養的役割のため、EPA及びDHA等のLCPUFAを含む組成物は、栄養補給の点からも薬剤としても重要である。
【0003】
LCPUFAを栄養製品又は医薬品として送達することに関連する問題の1つは、様々な条件下における酸化に対するLCPUFAの感受性であり、これは、配合物の官能特性又は生理学的特性に有害な影響を及ぼし得る望ましくない酸化分解生成物をもたらす。そのため、LCPUFAは、多くの場合、カプセル化によって安定化される。炭水化物と組み合わせたオクテニルコハク酸無水物化工でん粉(octenylsuccinic anhydride-modified starch)等の乳化性でん粉は、LCPUFAの安定化のための有用な手法を提供し、本出願人はこれまでに、有益な量のLCPUFAは、約0と80の間のデキストロース当量値を有する還元糖源と共に、乳児用調製粉乳等の様々な栄養配合物に関する関連規格に従った量のオクテニルコハク酸無水物化工でん粉を用いて、安定化され得るということを実証している(WO2012/106777、この開示は参照によって本明細書に組み込まれる)。
【0004】
複数の研究では、海産、卵及び植物原料由来のリン脂質、スフィンゴミエリン、並びに母乳及び乳製品原料由来の乳脂肪球膜において豊富な、LCPUFA等のリン脂質と結合している長鎖脂肪酸を付与すると、脳の灰白質及び網膜等の人体のある特定の細胞膜へのより良好な吸着のために、脂肪酸の優れたバイオアベイラビリティを呈することが示されている。したがって、これらのリン脂質豊富脂質、とりわけ、オキアミ油、魚油、及びニシン等の海産種からの脂質抽出物等のリン脂質が豊富な油中の、リン脂質結合形態のLCPUFAの送達への関心が高まっている。
【0005】
しかしながら、そのようなLCPUFAを含有するリン脂質豊富油の組成物の調製及びカプセル化には、乏しいエマルション安定性、及び既存のカプセル化技法を用いた不十分なマイクロカプセル化効率という難点があり、結果としてエマルションが粉末形態に変換される際に高レベルの表面遊離脂肪(surface free fat)をもたらし得る。リン脂質豊富油を含む組成物を配合及びカプセル化する改善された方法の開発、並びに組成物の改善された安定化に対する必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kim, E.H.-J.ら(2005)、Melting characteristics of fat present on the surface of industrial spray-dried dairy powders、Colloids and Surfaces B: Biointerfaces、42:1~8頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は、親水コロイドの添加によって、リン脂質含有油脂組成物を含むエマルションの安定性が改善され得、且つそのような組成物のカプセル化効率が増大し得るという本発明者らの驚くべき発見を前提としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の態様は、1種又は複数種のLCPUFAと少なくとも1種の親水コロイドとを含むカプセル化組成物であって、約5%未満の表面遊離脂肪含有率を有する、カプセル化組成物を提供する。
【0010】
組成物は、1種又は複数種のLCPUFAを含む油脂組成物であってもよい。
【0011】
例示的な実施形態では、組成物は約2%未満の表面遊離脂肪含有率を有する。
【0012】
組成物は、水中油型エマルション等のエマルションの形態であってもよい。組成物は、噴霧乾燥粉末等の粉末の形態であってもよい。
【0013】
典型的には、油脂組成物は、リン脂質含有油脂組成物、任意選択で、リン脂質豊富油脂組成物である。リン脂質含有又はリン脂質豊富油脂組成物は、天然に存在するものでも天然に由来するものでもよく、又は合成によるものでもよい。任意選択で、1種又は複数種のLCPUFAは、油脂組成物中のリン脂質化合物のリン酸基に結合している。油は、例えば、オキアミ油、マグロ油等の魚油、又はニシン等の1つ若しくは複数の魚種の魚卵からの油脂抽出物を含むことができる。1種又は複数種のLCPUFAは、DHA及び/又はEPAを含み得る。
【0014】
少なくとも1種の親水コロイドは、組成物中の水の量に対して約0.05%から約1%w/wの間、又は約0.1%から約0.5%の間の濃度で存在し得る。少なくとも1種の親水コロイドは、キサンタンガム等の食用ガムを含むことができる。キサンタンガムは、組成物中の水の量に対して約0.05%から約1%w/wの間、又は約0.1%から約0.5%の間の濃度で存在し得る。
【0015】
1種若しくは複数種のLCPUFA、又は1種若しくは複数種のLCPUFAを含む油脂組成物は、任意選択で、オクテニルコハク酸無水物化工でん粉及び2種以上の還元糖源でカプセル化されていてもよい。前記還元糖源の1種は20と60の間のデキストロース当量(DE)値を有し得、第2の前記還元糖源は約0と20の間のDE値を有し得る。
【0016】
本開示の第2の態様は、1種又は複数種のLCPUFAを含む組成物のカプセル化の効率を増大させるための方法であって、少なくとも1種の親水コロイドを前記組成物に組み込む工程を含む、方法を提供する。
【0017】
組成物は、1種又は複数種のLCPUFAを含む油脂組成物であってもよい。
【0018】
組成物は、水中油型エマルション等のエマルションの形態であってもよい。組成物は、水中油型エマルションの噴霧乾燥粉末生成物等の粉末の形態であってもよい。
【0019】
カプセル化の効率は、少なくとも1種の親水コロイドの非存在下における表面遊離脂肪含有率と比較した、カプセル化組成物の表面遊離脂肪含有率によって決定及び/又は定量化することができる。少なくとも1種の親水コロイドの存在下における組成物の表面遊離脂肪含有率は、約5%未満、又は約2%未満であり得る。
【0020】
少なくとも1種の親水コロイドは、カプセル材の前、カプセル材と共に、又はカプセル材の後に添加することができる。カプセル材は、オクテニルコハク酸無水物化工でん粉及び2種以上の還元糖源を含むことができる。典型的には、少なくとも1種の親水コロイド及びカプセル材は、均質な水性スラリーを形成する。
【0021】
少なくとも1種の親水コロイドは、組成物中の水の量に対して約0.05%から約1%w/wの間、又は約0.1%から約0.5%の間の濃度で存在し得る。少なくとも1種の親水コロイドは、キサンタンガム等の食用ガムを含むことができる。キサンタンガムは、組成物中の水の量に対して約0.05%から約1%w/wの間、又は約0.1%から約0.5%の間の濃度で存在し得る。
【0022】
典型的には、油脂組成物は、リン脂質含有油脂組成物、任意選択で、リン脂質豊富油脂組成物である。リン脂質含有又はリン脂質豊富油脂組成物は、天然に存在するものでも天然に由来するものでもよく、又は合成によるものでもよい。任意選択で、1種又は複数種のLCPUFAは、油脂組成物中のリン脂質化合物のリン酸基に結合している。油は、例えば、オキアミ油、マグロ油等の魚油、又はニシン等の1つ若しくは複数の魚種の魚卵からの油脂抽出物を含むことができる。油はまた、卵、植物原料からの油脂抽出物、スフィンゴミエリン、又は母乳若しくは乳製品原料由来の乳脂肪球膜を含むことができる。1種又は複数種のLCPUFAは、DHA及び/又はEPAを含み得る。
【0023】
本開示の第3の態様では、1種又は複数種のLCPUFAを含むエマルションを安定化するための方法であって、少なくとも1種の親水コロイドを前記エマルションに組み込む工程を含む、方法が提供される。
【0024】
エマルションは、1種又は複数種のLCPUFAを含む油脂組成物を含むことができる。少なくとも1種の親水コロイドの存在下におけるエマルションの表面遊離脂肪含有率は、約5%未満、又は約2%未満であり得る。
【0025】
典型的には、エマルションは水中油型エマルションである。典型的には、1種若しくは複数種のLCPUFA、又は1種若しくは複数種のLCPUFAを含む油がカプセル化されている。少なくとも1種の親水コロイドは、カプセル材の前、カプセル材と共に、又はカプセル材の後に添加することができる。カプセル材は、オクテニルコハク酸無水物化工でん粉及び2種以上の還元糖源を含むことができる。典型的には、少なくとも1種の親水コロイド及びカプセル材は、均質な水性スラリーを形成する。
【0026】
少なくとも1種の親水コロイドは、エマルション中の水の量に対して約0.05%から約1%w/wの間、又は約0.1%から約0.5%の間の濃度で存在し得る。少なくとも1種の親水コロイドは、キサンタンガム等の食用ガムを含むことができる。キサンタンガムは、エマルション中の水の量に対して約0.05%から約1%w/wの間、又は約0.1%から約0.5%の間の濃度で存在し得る。
【0027】
本開示の第4の態様では、第3の態様の方法に従って安定化されたエマルションが提供される。
【0028】
本開示の第5の態様では、1種又は複数種のLCPUFAを含む安定なエマルションであって、少なくとも1種の親水コロイドを更に含む、エマルションが提供される。
【0029】
典型的には、エマルションは水中油型エマルションである。
【0030】
典型的には、油脂組成物は、リン脂質含有油脂組成物、任意選択で、リン脂質豊富油脂組成物である。リン脂質含有又はリン脂質豊富油脂組成物は、天然に存在するものでも天然に由来するものでもよく、又は合成によるものでもよい。任意選択で、1種又は複数種のLCPUFAは、油脂組成物中のリン脂質化合物のリン酸基に結合している。油は、例えば、オキアミ油、マグロ油等の魚油、又はニシン等の1つ若しくは複数の魚種の魚卵からの油脂抽出物を含むことができる。油はまた、卵、植物原料からの油脂抽出物、スフィンゴミエリン、又は母乳若しくは乳製品原料由来の乳脂肪球膜を含むことができる。
【0031】
少なくとも1種の親水コロイドは、エマルション中の水の量に対して約0.05%から約1%w/wの間、又は約0.1%から約0.5%の間の濃度で存在し得る。少なくとも1種の親水コロイドは、キサンタンガム等の食用ガムを含むことができる。キサンタンガムは、エマルション中の水の量に対して約0.05%から約1%w/wの間、又は約0.1%から約0.5%の間の濃度で存在し得る。
【0032】
1種若しくは複数種のLCPUFA、又は1種若しくは複数種のLCPUFAを含む油脂組成物は、任意選択で、オクテニルコハク酸無水物化工でん粉及び2種以上の還元糖源でカプセル化されていてもよい。前記還元糖源の1種は20と60の間のデキストロース当量(DE)値を有し得、第2の前記還元糖源は約0と20の間のDE値を有し得る。
【0033】
本開示の第6の態様は、1種又は複数種のLCPUFAと少なくとも1種の親水コロイドとを含む組成物を提供する。
【0034】
組成物は、水中油型エマルション等のエマルションの形態であってもよい。組成物は、噴霧乾燥粉末等の粉末の形態であってもよい。
【0035】
典型的には、油脂組成物は、リン脂質含有油脂組成物、任意選択で、リン脂質豊富油脂組成物である。リン脂質含有又はリン脂質豊富油脂組成物は、天然に存在するものでも天然に由来するものでもよく、又は合成によるものでもよい。任意選択で、1種又は複数種のLCPUFAは、油脂組成物中のリン脂質化合物のリン酸基に結合している。油は、例えば、オキアミ油、マグロ油等の魚油、又はニシン等の1つ若しくは複数の魚種の魚卵からの油脂抽出物を含むことができる。油はまた、卵、植物原料からの油脂抽出物、スフィンゴミエリン、又は母乳若しくは乳製品原料由来の乳脂肪球膜を含むことができる。
【0036】
少なくとも1種の親水コロイドは、組成物中の水の量に対して約0.05%から約1%w/wの間、又は約0.1%から約0.5%の間の濃度で存在し得る。少なくとも1種の親水コロイドは、キサンタンガム等の食用ガムを含むことができる。キサンタンガムは、組成物中の水の量に対して約0.05%から約1%w/wの間、又は約0.1%から約0.5%の間の濃度で存在し得る。
【0037】
1種若しくは複数種のLCPUFA、又は1種若しくは複数種のLCPUFAを含む油脂組成物は、任意選択で、オクテニルコハク酸無水物化工でん粉及び2種以上の還元糖源でカプセル化されていてもよい。前記還元糖源の1種は20と60の間のデキストロース当量(DE)値を有し得、第2の前記還元糖源は約0と20の間のDE値を有し得る。
【0038】
本開示の例示的な実施形態は、以下の図面を参照して、単に非限定的な例として、本明細書において説明される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】実施例1に記載の、タンパク質に基づくメイラード反応生成物での、及び、キサンタンガムを含む又は含まないオクテニルスクシニル無水物化工でん粉(octenylsuccinyl anhydride-modified starch)に基づく低アレルギー性マトリックスでの、リン脂質豊富オキアミ油のカプセル化の例示的な過程の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本明細書全体を通じて、文脈がそうでないことを要求していない限り、単語「含む(comprise)」、又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」等の変化形は、述べられた工程若しくは要素若しくは整数、又は一群の工程若しくは要素若しくは整数を含むが、任意の他の工程若しくは要素若しくは整数、又は一群の要素若しくは整数を除外するものではないということを含意していると理解されるだろう。それゆえ、本明細書の文脈では、用語「含む」は「主として含むが、必ずしもそれだけを含むわけではない」を意味する。
【0041】
本明細書の文脈では、用語「約」は、当業者であれば、同じ機能又は結果を達成する文脈において、記載された値に相当すると考える数の範囲を指すと理解される。
【0042】
本明細書の文脈では、用語「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、冠詞の文法的対象の1つ又は2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指す。例として、「要素(an element)」は、1つの要素又は2つ以上の要素を意味する。
【0043】
本明細書で用いる場合、用語「安定な」は、エマルションに関して、エマルションが、エマルションの調製後少なくとも48時間、相分離を呈しないことを意味する。したがって、エマルションは安定性を呈すると言われる。
【0044】
本明細書の文脈では、用語「タンパク質を実質的に含まない」は、組成物中に存在するタンパク質の量が約0.1%未満、又は約0.01%未満であることを意味する。
【0045】
本明細書の文脈では、用語「低アレルギー性」は、この用語が指す組成物が、対象においてアレルギー反応を引き起こすことに対して低減した可能性を有する、及び/又は組成物がアレルゲンを含まない、若しくは実質的に含まないことを意味すると理解される。
【0046】
本開示の特定の実施形態は、1種若しくは複数種の長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)又は1種若しくは複数種のLCPUFAを含む油脂組成物を含むエマルション及び組成物を提供し、ここで、前記エマルションは少なくとも1種の親水コロイドを更に含む。
【0047】
本開示の組成物は、粉末の形態であってもよく、噴霧乾燥によって得られてもよい。一実施形態では、組成物は自由流動性粉末である。粉末は、約10μmと1000μmの間、又は約50μmと800μmの間、又は約100μmと300μmの間の平均粒径を有し得る。代替的な実施形態では、組成物は顆粒の形態であってもよい。代替的には、組成物はエマルション、典型的には、水中油型エマルションの形態であってもよい。
【0048】
親水コロイドは、典型的には多数のヒドロキシル基を含み、水中で粘性の分散系又はゲルを形成することができる、長鎖親水性ポリマーの不均一な塊である。任意の好適な親水コロイドが本開示に従って使用され得る。特に適当であるのは、でん粉、化工でん粉、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、アカシアガム、カラヤガム、トラガカントガム、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ペクチン、寒天、アルギン酸塩、ゼラチン、ゲラン、アラビノキシラン、β-グルカン、カラギーナン、及びカードラン等の食品及び医薬品産業で用いられる親水コロイドである。親水コロイドは、動物、植物、若しくは微生物起源のものであってもよく、又は合成により生成されてもよい。例示的な実施形態では、親水コロイドはキサンタンガムである。
【0049】
少なくとも1種の親水コロイドは、均質な水性分散系又はスラリーが形成されるように、エマルション又は組成物の調製の任意の段階でエマルション又は組成物に導入することができる。カプセル化組成物の場合、少なくとも1種の親水コロイドは、カプセル材の前に、例えば水性相で、カプセル材と同時に、又はカプセル材の後に導入することができる。当業者は、導入される少なくとも1種の親水コロイドの量を、過度の負荷又は実験を伴わずに最適化できるだろう。少なくとも1種の親水コロイドの量は、用途に応じた所望の粘度を有する組成物を生成するのに十分であるべきである。水中油型エマルションの場合、粘度は、エマルションが水中油型液滴の形態学的構造を維持することを可能にするのに十分であるべきである。親水コロイド含有率が低すぎる場合には、保護されていないカプセル化マトリックスが結果として生じ得るが、親水コロイド含有率が高すぎる場合には、粘度が高くなりすぎ、噴霧乾燥を妨げ得る。適切な親水コロイド含有率及び適切な粘度を決定することは、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0050】
親水コロイドがキサンタンガムである例示的な実施形態では、キサンタンガムは、組成物又はエマルション中の水の量に対して約0.05%w/wから約1%w/wの間、又は約0.1%w/wと約0.5%w/wの間で存在し得る。例えば、キサンタンガムは、存在する水の量に対して、約0.05%、0.075%、0.1%、0.125%、0.15%、0.175%、0.2%、0.225%、0.25%、0.275%、0.3%、0.325%、0.35%、0.375%、0.4%、0.425%、0.45%、0.475%、0.5%、0.55%、0.6%、0.65%、0.7%、0.75%、0.8%、0.85%、0.9%、0.95%、又は1%w/wで存在し得る。
【0051】
本開示の組成物及びエマルションは、1種若しくは複数種のLCPUFA、又は1種若しくは複数種のLCPUFAを含む油脂組成物を含む。特定の実施形態では、油脂組成物は、リン脂質含有油脂組成物であり、より具体的には、リン脂質豊富油脂組成物である。任意選択で、少なくとも一部分の1種又は複数種のLCPUFAは、油脂組成物中のリン脂質化合物のリン酸基に結合している。リン脂質豊富油脂組成物は、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、又は少なくとも約55%のリン脂質を含み得るものである。
【0052】
リン脂質含有若しくはリン脂質豊富油脂組成物、又はリン脂質含有若しくはリン脂質豊富となるように改変された油脂組成物は、精製された形態、及び/又は好適な原料からの抽出物の形態で存在し得る。原料は遺伝子組換えのものでも非遺伝子組換えのものでもよい。油脂組成物は、天然に存在するものでも天然に由来するものでもよく、又は合成によるものでもよい。本開示の文脈では、「天然に存在する」及び「天然に由来する」油脂組成物は、本明細書に列挙された生物等の天然原料から抽出されていてもよい、或いはそのような天然原料に見出される油又は1種若しくは複数種の脂質に由来していてもよい、或いはそのような天然原料に見出される油又は1種若しくは複数種の脂質から改変されていてもよい、油脂組成物を含む。
【0053】
リン脂質豊富である又はリン脂質豊富となるように改変され得る例示的な油は、例えば、オキアミ等の甲殻類、カキ等の軟体動物、及びマグロ、サケ類、マス類、サーディン、サバ、シーバス、メンハーデン、ニシン、ピルチャード、キッパー(kipper)、ウナギ又はシラス等の魚等の海産生物由来の油を含む。油は、1種又は複数種の海産生物、例えば本明細書に列挙されたものの魚卵由来であってもよい。例示的な実施形態では、油は、オキアミ油、若しくはマグロ油、若しくは魚の卵からの脂質抽出物である、又はオキアミ油、若しくはマグロ油、若しくは魚の卵からの脂質抽出物を含む。
【0054】
リン脂質豊富である、又はリン脂質豊富となるように改変されていてもよい他の例示的な油は、植物原料及び微生物原料を含む。植物原料は、亜麻仁、クルミ、ヒマワリ種子、カノーラ、ベニバナ、ダイズ、小麦胚芽、トウモロコシ、並びにケール、ホウレンソウ及びパセリ等の緑色葉物植物(leafy green plant)を含むが、これらに限定されない。微生物原料は、藻類及び菌類を含む。
【0055】
油脂組成物は、組成物の総質量の約0.1%と80%の間の量で、又は組成物の総質量の約1%と80%の間の量で、若しくは約1%と75%の間の量で、若しくは約5%と80%の間の量で、若しくは約5%と75%の間の量で、若しくは約5%と70%の間の量で存在し得る。油がリン脂質豊富オキアミ油である例示的な実施形態では、油は、組成物の総質量の約1%、3%、5%、7%、9%、11%、13%、15%、17%、19%、21%、23%、25%、27%、29%、31%、33%、35%、37%、39%、41%、43%、45%、47%、49%、51%、53%、55%、57%、59%、61%、63%、65%、67%、69%、71%、73%、又は75%の量で存在し得る。
【0056】
LCPUFAは、典型的には、1種若しくは複数種のオメガ-3脂肪酸、及び/又は1種若しくは複数種のオメガ-6脂肪酸、或いはそれらの混合物を含む。脂肪酸は、DHA、AA、EPA、DPA、及び/若しくはステアリドン酸(SDA)、又はそれらの混合物を含む。一実施形態では、脂肪酸はDHA及びAAを含む。本開示の組成物及びエマルションがDHA及びAAを含む場合、DHA及びAAは、約1:10と10:1の間の比で、若しくは約1:5と5:1の間の比で、若しくは約2:1と1:2の間の比で、若しくは約1:1と1:5の間の比で、若しくは約1:1と1:4の間の比で、若しくは約1:1と1:3の間の比で、若しくは約1:1と1:2の間の比で、又は約1:1の比で存在し得る。
【0057】
本開示は、少なくとも1種の親水コロイドが、エマルション又はエマルションに由来しエマルションを安定化している乾燥粉末の、カプセル化効率を増大させる(例えば、表面遊離脂肪含有率を低下又は最小化する)ために用いられる、方法及び組成物を提供する。表面遊離脂肪含有率は、親水コロイドの存在下では、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満に低下し得る。特定の実施形態では、この表面遊離脂肪含有率の低下は、エマルションに由来する又はエマルションから生成された粉末において見られる。
【0058】
多様な好適なカプセル化手段又は系が本開示に従って使用され得る。例示的な一実施形態では、カプセル化は、その開示が参照によって本明細書に組み込まれるWO2012/106777に以前に記載された、オクテニルコハク酸無水物化工でん粉、及び約0と80の間のデキストロース当量値を有する1種若しくは複数種又は2種以上の還元糖源を用いることを含む。簡潔に述べると、でん粉は、一次及び/又は二次加工を含んでいてもよく、エステル又は半エステルであってもよい。好適なオクテニルコハク酸無水物化工でん粉は、例えば、ワキシーコーンに基づくもの、並びにNational Starch and Chemical Pty Ltd社、Seven Hills、NSW、AustraliaによってPURITY GUM(登録商標)、CAPSUL(登録商標)IMF、及びHI CAP(登録商標)IMFの商品名で販売されているものを含む。オクテニルコハク酸無水物化工でん粉は、組成物の総質量の約18%未満、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6.5%、6%、5.5%、5%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、又は1%未満の量で存在し得る。オクテニルコハク酸無水物化工でん粉は、組成物の総質量の約0.005%と18%の間の量で、又は約1%と18%の間の量で、又は約2%と18%の間の量で、又は約3%と18%の間の量で、又は約4%と18%の間の量で、又は約5%と18%の間の量で、又は約0.005%と15%の間の量で、又は約0.5%と10%の間の量で、又は約1%と10%の間の量で、又は約1%と9%の間の量で、又は約1%と8%の間の量で、又は約1%と7%の間の量で、又は約1%と6%の間の量で、又は約1%と5%の間の量で、又は約0.1%と10%の間の量で、又は約0.1%と8%の間の量で、又は約0.1%と6%の間の量で存在し得る。追加の乳化性でん粉も必要に応じて含まれ得る。
【0059】
少なくとも1種の還元糖源は、約0と80の間のデキストロース当量値を有する。少なくとも1種の還元糖源は、約0と80、0と70、0と60、0と50、0と40、0と30、0と20、0と10、1と20、1と15、1と10、5と20、又は5と15の間のデキストロース当量値を有していてもよい。特定の実施形態では、少なくとも2種の還元糖源が使用され、第1の還元糖源が0と100の間、又は0と80の間、又は0と60の間、又は10と60の間、又は20と100の間、又は20と80の間、又は20と60の間、又は20と50の間、又は20と40の間、又は25と40の間、又は25と35の間のデキストロース当量値を有し、第2の還元糖源が0と25の間、又は0と20の間、又は0と15の間、又は5と15の間のデキストロース当量値を有する。これらの実施形態では、第1の還元糖源の第2の還元糖源に対する質量比は、約1:10と10:1の間、若しくは約1:6と6:1の間、若しくは約1:5と5:1の間、若しくは約1:1と1:10の間、若しくは約1:1と1:8の間、若しくは約1:1と1:6の間、若しくは約1:1と1:5の間、若しくは約1:1と1:4の間、若しくは約1:2と1:10の間、若しくは約1:2と1:8の間、若しくは約1:2と1:6の間、若しくは約1:2と1:5の間、若しくは約1:3と1:10の間、若しくは約1:3と1:8の間、若しくは約1:3と1:6の間、若しくは約1:4と1:10の間、若しくは約1:4と1:8の間、若しくは約1:4と1:6の間、又は約1:4であり得る。
【0060】
ある実施形態では、第1の還元糖源が20と60の間のデキストロース当量値を有し、第2の還元糖源が0と20の間のデキストロース当量値を有し、第1の還元糖源と第2の還元糖源が質量で約1:1と1:10の間の比で存在する。
【0061】
別の実施形態では、第1の還元糖源が20と50の間のデキストロース当量値を有し、第2の還元糖源が0と15の間のデキストロース当量値を有し、第1の還元糖源と第2の還元糖源が質量で約1:1と1:10の間の比で存在する。
【0062】
更なる実施形態では、第1の還元糖源が25と40の間のデキストロース当量値を有し、第2の還元糖源が0と15の間のデキストロース当量値を有し、第1の還元糖源と第2の還元糖源が質量で約1:1と1:6の間の比で存在する。
【0063】
別の実施形態では、第1の還元糖源が20と40の間のデキストロース当量値を有し、第2の還元糖源が5と15の間のデキストロース当量値を有し、第1の還元糖源と第2の還元糖源が質量で約1:1と1:6の間の比で存在する。
【0064】
なお更なる実施形態では、第1の還元糖源が25と35の間のデキストロース当量値を有し、第2の還元糖源が5と15の間のデキストロース当量値を有し、第1の還元糖源と第2の還元糖源が質量で約1:2と1:6の間の比で存在する。
【0065】
別の実施形態では、第1の還元糖源が約30のデキストロース当量値を有し、第2の還元糖源が約10のデキストロース当量値を有し、第1の還元糖源と第2の還元糖源が約1:2と1:6の間、又は約1:4の比で存在する。
【0066】
還元糖源は、当業者に周知であり、単糖類及び二糖類、例えば、グルコース、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グリセルアルデヒド、及びラクトースを含む。好適な還元糖源は、オリゴ糖類、例えば、デキストリン及びマルトデキストリン等のグルコース重合体、並びにグルコースシロップ固体も含む。還元糖はまた、典型的には20質量%以上の還元糖を含有するグルコースシロップに由来していてもよい。
【0067】
還元糖源は、組成物の総質量の約10%と80%の間の量で、又は組成物の総質量の約10%と75%の間の量で、若しくは約10%と70%の間の量で、若しくは約15%と70%の間の量で、若しくは約20%と70%の間の量で、若しくは約25%と65%の間の量で、若しくは約25%と60%の間の量で、若しくは約30%と65%の間の量で、若しくは約35%と65%の間の量で、若しくは約40%と65%の間の量で、若しくは約45%と65%の間の量で、若しくは約50%と65%の間の量で、若しくは約50%と60%の間の量で存在し得る。
【0068】
還元糖源及びオクテニルコハク酸無水物化工でん粉は、質量で約3:1と15:1の間、又は約4:1と14:1の間、又は約4:1と13:1の間、又は約5:1と15:1の間、又は約7:1と15:1の間、又は約8:1と14:1の間、又は約8:1と12:1の間、又は約8:1と11:1の間、又は約10:1と11:1の間の比で組成物中に存在し得る。
【0069】
組成物は、LCPUFA又はLCPUFAを含有する油脂組成物、還元糖源、及びオクテニルコハク酸無水物化工でん粉を含む水性混合物を形成すること、並びに混合物を、例えば噴霧乾燥によって乾燥することによって調製することができる。一例では、組成物は、還元糖源及びオクテニルコハク酸無水物化工でん粉を、高せん断混合機を用いて水性相に溶解することによって調製することができる。次いで、混合物は約65℃から70℃の温度に加熱されてもよく、その後、所望であれば、1種又は複数種の抗酸化剤が添加されてもよい。LCPUFA又は油は、高せん断混合機を通過した水性混合物にインラインで付加され、粗いエマルションを形成することができる。次いで、粗いエマルションに対し、240/40barでの均質化を行ってもよい。粉末化生成物を調製することが望ましい場合、粗いエマルションは、約180℃の入口温度及び80℃の出口温度で加圧及び噴霧乾燥されてもよい。少なくとも1種の親水コロイドを、均一な水性スラリーを生成することを条件として、化工でん粉及び糖類と共に導入することができる、又は後に撹拌の間に添加することができる。
【0070】
カプセル化の代替的な手段及び系もまた企図される。例えば、油をカプセル化するのに有用な任意のタンパク質が用いられ得る。還元糖官能基を有する炭水化物をタンパク質と反応させてもよい。タンパク質は、典型的には可溶性であり、メイラード反応の加熱範囲で安定である必要があり、カゼイン、ダイズ及び乳清タンパク質、ゼラチン、卵アルブミン、並びにダイズタンパク質加水分解物を含む、増加した遊離アミノ酸基を有する加水分解タンパク質を含む。ある実施形態では、タンパク質は、カゼインナトリウム、乳清タンパク質単離物(WPI)、ダイズタンパク質単離物(SPI)、脱脂粉乳(SMP)、加水分解カゼイン(HCP)、及び加水分解乳清タンパク質(HWP)から選択することができ、単独又は組み合わされた炭水化物は、デキストロース(デキストロース一水和物を含む)、グルコース、ラクトース、スクロース、オリゴ糖、及び乾燥グルコースシロップから選択することができる。更なる実施形態では、多糖、高メトキシペクチン、又はカラギーナンを、一部の配合物のタンパク質-炭水化物混合物に添加してもよい。タンパク質と炭水化物とを反応させる際は、タンパク質が良好な膜を形成することを不可能にしてしまう、タンパク質の広範囲にわたるゲル化又は凝固が条件の結果としてもたらされることが確実にないように注意する必要がある。ある実施形態では、メイラード反応生成物の形成は、凝固生成物が実質的に形成されずに行われる。別の実施形態では、メイラード反応生成物の形成は、凝固生成物の形成が生成物の5%を超えないように行われる。この点において、メイラード反応生成物の形成の決定は、IR/UV分光光度計を用いて比色定量分析によって達成でき、したがって制御できるということが理解されるだろう。
【0071】
ある実施形態では、タンパク質は、カゼイン又は乳清タンパク質単離物等の乳タンパク質であり得る。カゼイン又はその塩、例えばカゼインナトリウムは、低コスト、及びメイラード反応生成物を形成する熱処理の間のゲル化に対する比較的高い耐性のために、多くの用途において望ましいタンパク質である。炭水化物は、任意選択で、単糖類(例えば、デキストロース(デキストロース一水和物を含む)、グルコース、フルクトース)、二糖類(例えば、マルトース、ラクトース)、三糖類、オリゴ糖類、及びグルコースシロップ、並びにそれらの混合物からなる群から選択される、還元基を有する糖である。蜂蜜を含む任意の好適な還元糖原料が用いられ得る。
【0072】
タンパク質-炭水化物混合物中のメイラード反応生成物の量は、必要とされる生成物の有効期間の間、抗酸化活性を付与するのに十分な量である。好ましくは、カプセル化前のタンパク質と炭水化物との間で必要とされる最小反応は、存在する糖の少なくとも5%、例えば、存在する糖の例えば少なくとも6%、例えば少なくとも7%、例えば少なくとも8%、例えば少なくとも9%、又は例えば少なくとも10%を消費する。形成されるメイラード反応生成物の程度は、上で議論されたようにして生じる色の変化の度合いによって(タンパク質/炭水化物の特定の組合せに関して)モニターすることができる。代替的な方策は、未反応の糖をアッセイすることである。
【0073】
本開示によって企図される組成物は、追加の成分、例えば、抗酸化剤、固化防止剤、着香剤、着色剤、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、キレート剤等を更に含むことができる。
【0074】
好適な抗酸化剤は、当業者に周知であり、水溶性であっても油溶性であってもよい。好適な水溶性抗酸化剤は、例えば、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸、グルタチオン、リポ酸、及び尿酸を含む。ある実施形態では、水溶性抗酸化剤は、組成物全体の約0~10%wt/wtの範囲で組成物中に存在し得る。好適な油溶性抗酸化剤は、例えば、トコフェロール類、パルミチン酸アスコルビル、トコトリエノール類、フェノール類、ポリフェノール類等を含む。ある実施形態では、油溶性抗酸化剤は、組成物全体の約0~10%wt/wtの範囲で油性相中に存在する。
【0075】
本開示の組成物と相溶性のある固化防止剤は、当業者の間で周知であり得、リン酸三カルシウム等のリン酸カルシウム、並びに炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウム等の炭酸塩、並びに二酸化ケイ素を含む。
【0076】
組成物は1種又は複数種の低分子量の乳化剤を更に含むことができる。好適な低分子量の乳化剤は、例えば、モノ-及びジ-グリセリド、レシチン、並びにソルビタンエステルを含む。他の好適な低分子量の乳化剤は当業者に周知であろう。低分子量の乳化剤は、組成物の総質量の約0.1%と3%の間の量で、又は組成物の総質量の約0.1%と約2%の間の量で、若しくは約0.1%と0.5%の間の量で、若しくは約0.1%と0.3%の間の量で存在し得る。
【0077】
本明細書で企図されている組成物は、対象への任意の好適な経路による投与、典型的には経口投与のために製剤化することができる。組成物は、液体又は固体形態であることができ、そのようなものとして(例えば、シロップ剤若しくは他の好適な液体の形態で、又はカプセル剤若しくは他の好適な固体形態として)消費することができる。代替的には、組成物は、食品又は飲料品に組み込まれていてもよい。
【0078】
一般的に記載された本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、数多くの変形及び/又は変更を本発明に対して行うことができるということが、当業者によって理解されるだろう。したがって、本発明の実施形態は、あらゆる点で例示的なものであって制限的なものではないと考えられるべきである。
【0079】
本発明を、以下の具体的な実施例を参照することによってより詳細に更に説明するが、これらの実施例は、いかなる点においても、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例0080】
(実施例1)
親水コロイドの存在下におけるリン脂質含有油のカプセル化
リン脂質豊富オキアミ油(リン脂質含有率が56%超)を、タンパク質に基づくメイラード反応生成物(MRP系)、又は親水コロイド(キサンタンガム)を水中油型エマルション中に含む若しくは含まないオクテニルスクシニル無水物化工でん粉に基づくマトリックス系のいずれかを用いてカプセル化した後、噴霧乾燥した。エマルションの安定性及び噴霧乾燥粉末の表面遊離脂肪含有率を研究して、カプセル化系の有効性を評価した。過程の流れ図を
図1に示す。
【0081】
図1に関して、MRP系では、水性MRPを50~80℃に加熱して、6,000~12,000rpmで5分間オキアミ油と混合した後、350/100barでの1回の通過によって均質化して、リン脂質豊富水中油型エマルションを調製した。エマルションを180℃の入口温度及び80℃の出口温度で更に噴霧乾燥して、最終粉末生成物を生成した。親水コロイドを含まないオクテニルスクシニル無水物化工でん粉に基づくマトリックスでは、オクテニルスクシニル無水物化工でん粉と還元基を有する糖とを、50~80℃の温度範囲での撹拌(300~700rpmで30~60分間)下において水和して、カプセル材スラリーを調製した。オキアミ油をこのカプセル材スラリーと混合して、6,000~12,000rpmで5分間均質化した後、350/100barでの1回の通過によって均質化して、リン脂質豊富水中油型エマルションを調製した。次いで、得られたエマルションを、上でMRP系に関して記載したように噴霧乾燥した。親水コロイドを含むオクテニルスクシニル無水物化工でん粉に基づくマトリックスでは、キサンタンガムを0.1%から0.5%w/w(含水量に対して)の用量でカプセル材スラリーに添加した。オキアミ油を6,000~12,000rpmで5分間カプセル材スラリーと混合した後、350/100barでの1回の通過によって均質化して、リン脂質豊富水中油型エマルションを調製した。最後に、エマルションを、上でMRP系に関して記載したように噴霧乾燥した。キサンタンガムの存在下におけるオクテニルスクシニル無水物化工でん粉に基づくマトリックス系を用いて生成した組成物を下記のTable 1(表1)に詳述する。Table 1(表1)に詳述する配合物は、左から右に、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、及び0.5%のキサンタンガム(含水量に対するw/w)を含有する。
【0082】
【0083】
安定な噴霧乾燥粉末は、良好な安定性を有するエマルションからのみ生成可能であるので、噴霧乾燥の前に、調製した水中オキアミ油型エマルション(Table 1(表1)を参照のこと)の物理的安定性を調べた。下記のTable 2(表2)に示すように、MRP安定化水中オキアミ油型エマルションは良好な安定性を呈しなかった。具体的には、MRPによって安定化されなかった脂質のために、調製後48時間以内に「クリーミング」が観察されたが、油/水相分離は生じなかった。親水コロイドの非存在下におけるオクテニルスクシニル無水物化工でん粉に基づくマトリックス系を用いた場合、水中油型エマルションは、MRP系と比較して低い固体含有率(<15%)で安定なままであった。しかしながら、固体含有率が20%を超えると、おそらくは高い粘度が油の高いリン脂質含有率によって与えられたために、オキアミ油はエマルション中で安定ではなくなり、油/水相分離が48時間以内に観察された。エマルションの粘度はキサンタンガム含有率の増加と共に増加し、このことが結果として改善されたエマルション安定性をもたらした(Table 2(表2))。それゆえ、含水量に対して0.1%~0.5%w/wでのキサンタンガムの添加は、結果として水中オキアミ油型エマルションの優れた物理的安定性をもたらした。
【0084】
【0085】
続いて、MRP系、又は0.5%w/wのキサンタンガム(キサンタンガム/水)の存在下におけるオクテニルスクシニル無水物化工でん粉に基づくマトリックス系によって安定化された水中オキアミ油型エマルション(30%の含油率、25%の固体含有率)を噴霧乾燥してオキアミ油粉末を生成し、表面遊離脂肪含有率(SFF)を分析してカプセル化系の有効性を評価した。キサンタンガムの非存在下におけるオクテニルスクシニル無水物化工でん粉に基づくマトリックス系のデータは、25%の固体含有率では、調製されたエマルションの乏しい安定性のために利用できなかった。
【0086】
MRP系、及びキサンタンガムの存在下におけるオクテニルスクシニル無水物化工でん粉に基づくマトリックス系のオキアミ油マイクロカプセルの表面遊離脂肪含有率を、若干の修正を施したKim, E.H.-J.ら(2005)、Melting characteristics of fat present on the surface of industrial spray-dried dairy powders、Colloids and Surfaces B: Biointerfaces、42:1~8頁の方法に従って分析した。簡潔に述べると、1gの新鮮な試験粉末を、ろ紙(No. 541、Whatman、Maidstone、Kent、UK)上で秤量し、1×5mlの石油エーテルで洗浄した。漏斗も石油エーテルで洗浄した後、抽出された脂肪を含有するろ液溶液の溶媒を、抽出された脂肪残渣が一定の質量を達成するまで蒸発した。抽出された脂肪値と試験粉末の質量(すなわち1g)との比を表面遊離脂肪(%、g/g)として記録した。Table 3(表3)及びTable 4(表4)に示すように、0.1%から0.5%w/wのキサンタンガム(含水量に対して)を含むオクテニルスクシニル無水物化工でん粉に基づくマトリックス系の噴霧乾燥オキアミ油粉末は、MRP系と比較して有意に低減した表面遊離脂肪含有率を呈した。
【0087】
【0088】
【0089】
(実施例2)
親水コロイドの存在下におけるリン脂質含有油の有効期間
実施例1に記載したように調製した、含水量に対して0.3%w/wのキサンタンガムを含む噴霧乾燥粉末(Table 1(表1)を参照のこと)を、調整雰囲気(N2)の存在下40℃で、密封バッグにおいて24週にわたって保存した。粉末からの安定化された油の抽出後、過酸化物価(PoV)、p-アニシジン価(p-AV)、並びにDHA及びEPA含有量を含む、一連の酸化パラメータを、保存期間を通じて6週ごとにモニターした。過酸化物価(PoV)及びp-アニシジン価(p-AV)は、一次及び二次酸化生成物の生成に関する、容認されている指標である。
【0090】
カプセル材中の安定化された油性相の酸化安定性を分析するために、封入された油を抽出して、その過酸化物価(PoV)及びp-アニシジン価(p-AV)を決定した。通例、PoVは、脂質の一次酸化の尺度であり、酸化を反映して、将来の起こり得る二次酸化の指標となる。しかしながら、PoVによって測定されるヒドロペルオキシドは、容易に分解し又は消費されて、二次酸化生成物を形成するので、著しく酸化された脂質に関して、0に近いPoVを有することもあり得る。そのため、p-AVが、通常、二次酸化生成物、主に不飽和アルデヒド化合物の指標として用いられ、発生した二次酸化を反映する。一方、安定化された油性相の、DHA及びEPA等の多価不飽和脂肪酸の活性含有量は、生成物の有効期間の間不変のままであることが望ましい。
【0091】
実施例2において、抽出された油のPoVを、AOAC公式法(AOAC Official Method)965.33に基づいて分析した。抽出された油を、酢酸-クロロホルム溶液と混合し、ヨウ化カリウムの添加後、チオ硫酸ナトリウム溶液で滴定した。本試験では、でん粉指標を用い、色が変化したらすぐに滴定を停止した。抽出された油のp-AVを、AOCS公式法(AOCS Official Method)Cd 18-90に基づいて決定した。簡潔に述べると、抽出された油をイソオクタンによって希釈した後、酢酸溶液中でp-アニシジンと反応させた。形成された抱合体を350nmの吸光度によって定量した。Global Organization for EPA and DHA Omega-3社(GOED社)は、食用油のPoV及びp-AVがそれぞれ5mgq/kg及び20を超えないことを推奨している。抽出された油におけるDHA及びEPAの活性含有量を、AOAC公式法996.06に従って、ガスクロマトグラフィー-水素炎イオン化検出器(GC-FID)技法を用いて定量した。簡潔に述べると、抽出された油をエステル化し、形成されたメチルエステルを抽出し、前ろ過して、水分を除去した。脂肪酸メチルエステルを、ガスクロマトグラフィーを用いて分離及び定量し、指定のカラムを備えたGC-FIDによって定量した。
【0092】
結果をTable 5(表5)に示す。24週の保存の間、PoV及びp-AVは不変のままであり、どちらも、一般食品に関してGlobal Organization for EPA and DHA Omega-3社(GOED社)によって推奨されている、許容される上限を下回っていた。更に、DHA及びEPAの活性含有量は、ほとんど変動しなかった。
【0093】
1種又は複数種の長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)と少なくとも1種の親水コロイドとを含むカプセル化組成物であって、約5%未満の表面遊離脂肪含有率を有する、カプセル化組成物。