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特開2024-23673アクチビンIIA型受容体変異体およびそれらの使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023673
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】アクチビンIIA型受容体変異体およびそれらの使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/17 20060101AFI20240214BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61K38/17
A61P43/00 105
A61P7/00
A61P7/06
A61P9/12
A61P11/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023211205
(22)【出願日】2023-12-14
(62)【分割の表示】P 2020562654の分割
【原出願日】2019-05-09
(31)【優先権主張番号】62/669,075
(32)【優先日】2018-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/702,735
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519165308
【氏名又は名称】ケロス セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】KEROS THERAPEUTICS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】シーラ、ジャスバー エス.
(72)【発明者】
【氏名】ラシェイ、ジェニファー
(57)【要約】
【課題】アクチビンIIA型受容体変異体およびそれらの使用方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、細胞外ActRIIA変異体を含むポリペプチドを特徴とする。いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドは、Fcドメインの単量体または部分に融合した細胞外ActRIIA変異体を含む。本発明はまた、低赤血球レベル(例えば、貧血または失血)、線維症、または肺高血圧症を含む疾患および病態を治療するためにポリペプチドを使用する医薬組成物および方法を特徴とする。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維症を有するか、あるいは繊維症を発症するリスクにある対象を治療する方法であって、表4の組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
線維症を低減または予防することが必要である対象において、繊維症を低減または予防する方法であって、表4の組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項3】
線維症を遅延、阻害または好転させることが必要である対象において、繊維症を遅延、阻害または好転させる方法であって、表4の組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項4】
線維症の発症を減弱する方法であって、表4の組成物のポリペプチドの治療有効量を対象に投与することを含む、方法。
【請求項5】
線維症を好転させる方法であって、表4の組成物のポリペプチドの治療有効量を対象に投与することを含む、方法。
【請求項6】
繊維症を有するか、あるいは繊維症を発症するリスクがある対象において、ミオスタチン、アクチビン、およびBMP9のシグナル伝達の少なくとも1つに作用する方法であって、表4の組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項7】
前記線維症は、化学療法薬誘発線維症、放射線誘発線維症、肺線維症、肝線維症、腎線維症、角膜線維症、心線維症、骨髄線維症、縦隔線維症、後腹膜線維症、骨関節線維症、関節線維症、組織線維症、腫瘍間質、線維形成性腫瘍、外科的癒着、肥厚性瘢痕、またはケロイドである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記組織線維症は、筋組織、皮膚表皮、皮膚真皮、腱、軟骨、膵臓組織、子宮組織、神経組織、精巣、卵巣、副腎、動脈、静脈、結腸、小腸、大腸、胆道および腸からなる群から選択される組織に作用する線維症である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記線維症は、創傷、火傷、B型またはC型肝炎感染、脂肪肝疾患、住血吸虫感染、腎疾患、慢性腎疾患、心疾患、黄斑変性、網膜または硝子体網膜症、クローン病、全身性または局所性強皮症、アテローム性動脈硬化症、または再狭窄、に関連している、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は線維化した組織または臓器の機能を改善する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
赤血球レベルを増加させることが必要である対象において、赤血球レベルを増加させる方法であって、表4の組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項12】
赤血球の形成を促進または増加させることが必要である対象において、赤血球の形成を促進または増加させる方法であって、表4の組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項13】
前記対象は貧血または失血を患っているかまたは発症するリスクがある、請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項14】
低赤血球レベル、低ヘマトクリット、または低ヘモグロビンレベルを含む疾患または病態を有するか、またはそれらを発症するリスクのある対象においてミオスタチン、アクチビンおよびBMP9のシグナル伝達の少なくとも1つに作用する方法であって、表4の組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項15】
前記疾患または病態は貧血または失血である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記貧血または失血は、癌、癌治療、慢性腎疾患、急性腎疾患または腎不全、慢性腎疾患または腎不全、骨髄異形成症候群、サラセミア、栄養欠乏、薬物に対する有害反応、炎症性または自己免疫疾患、脾腫、ポルフィリン症、血管炎、溶血、骨髄欠損、骨髄移植、急性肝疾患、慢性肝疾患、糖尿病、急性出血、慢性出血、感染、異常ヘモグロビン症、薬物使用、アルコール乱用、チャーグ・ストラウス症候群、フェルティ症候群、移植片対宿主病、造血幹細胞移植、骨髄線維症、汎血球減少症、純粋赤血球無形成症、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、シュワッハマン症候群、高齢、輸血の禁忌、手術、外傷、創傷、潰瘍、尿路出血、消化管出血、頻繁な献血、または多量の月経出血と関連している、請求項13または請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記貧血は、再生不良性貧血、鉄欠乏性貧血、ビタミン欠乏性貧血、慢性疾患に伴う貧血、骨髄疾患に関連する貧血、溶血性貧血、鎌状赤血球貧血、小球性貧血、低色素性貧血、鉄芽球性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、ファンコーニ貧血、または過剰芽細胞を伴う不応性貧血である、請求項13、15または16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
貧血を有するか、あるいはそれを発症するリスクにある対象を治療する方法であって、表4の組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項19】
前記貧血は、癌、癌治療、慢性腎疾患、急性腎疾患または腎不全、慢性腎疾患または腎不全、骨髄異形成症候群、サラセミア、栄養欠乏、薬物に対する有害反応、炎症性または自己免疫疾患、脾腫、ポルフィリン症、血管炎、溶血、骨髄欠損、骨髄移植、急性肝疾患、慢性肝疾患、糖尿病、急性出血、慢性出血、感染、異常ヘモグロビン症、薬物使用、アルコール乱用、高齢、チャーグ・ストラウス症候群、フェルティ症候群、移植片対宿主病、造血幹細胞移植、骨髄線維症、汎血球減少症、純粋赤血球無形成症、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、シュワッハマン症候群、輸血の禁忌、手術、外傷、創傷、潰瘍、尿路出血、消化管出血、頻繁な献血、または多量の月経出血と関連している、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記貧血は、再生不良性貧血、鉄欠乏性貧血、ビタミン欠乏性貧血、慢性疾患に伴う貧血、骨髄疾患に関連する貧血、溶血性貧血、鎌状赤血球貧血、小球性貧血、低色素性貧血、鉄芽球性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、ファンコーニ貧血、または過剰芽細胞を伴う不応性貧血である、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記対象はエリスロポイエチン(EPO)での治療に良好に反応しないか、あるいはEPOの副作用に感受性である、請求項11~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記方法は、赤血球形成、赤血球数、ヘマトクリット、またはヘモグロビンレベルを増加させる、請求項11~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記方法は前記対象の輸血の必要性を低減する、請求項11~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
肺高血圧症(PH)を予防することが必要である対象において、肺高血圧症を予防する方法であって、表4の組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項25】
PHの進行を遅延または抑制することが必要である対象において、PHの進行を遅延または抑制する方法であって、表4の組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項26】
PHを有するかまたはPHを発症するリスクのある対象を治療する方法であって、表4の組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項27】
PHを有するかまたはPHを発症するリスクのある対象において、ミオスタチン、アクチビンおよびBMP9のシグナル伝達の少なくとも1つに作用する方法であって、表4の組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項28】
前記PHは肺動脈高血圧症(PAH)である、請求項24~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記PAHは突発性PAHである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記PAHは遺伝性PAHである、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記PAHは、HIV感染、住血吸虫症、肝硬変、先天性心臓異常、門脈圧亢進症、肺静脈閉塞症、肺毛細血管腫症、結合組織障害、自己免疫障害または薬物の使用もしくは乱用に関連している、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記PHは静脈性PHである、請求項24~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記静脈性PHは、左心室収縮機能不全、左心室拡張機能不全、心臓弁膜症、先天性心筋症、または先天性もしくは後天性肺静脈狭窄に関連している、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記PHは低酸素性PHである、請求項24~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記低酸素性PHは、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、睡眠障害呼吸、肺線維症、肺胞低換気障害、高地への慢性曝露、または発達異常に関連している、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記PHは血栓塞栓性PHである、請求項24~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記血栓塞栓性PHは、慢性血栓塞栓性肺高血圧症、肺塞栓症、血管肉腫、動脈炎、先天性肺動脈狭窄症、または寄生虫感染症に関連している、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記PHはその他のPHである、請求項24~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記その他のPHは、血液疾患、全身性疾患、代謝障害、肺腫瘍性血栓性微小血管症、線維性縦隔炎、慢性腎不全、または区域性肺高血圧症に関連している、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記方法はPHの1つまたは複数の症状の頻度または重症度を低減する、請求項24~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記方法は肺血管リモデリング、または対象の心臓における血管リモデリングを低減する、請求項24~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記方法は右心室肥大を低減する、請求項24~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記方法は肺血管抵抗を低減する、請求項24~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記方法は6分間歩行試験におけるパフォーマンスを改善する、請求項24~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記方法はアクチビンおよびミオスタチンの少なくとも一方のそれらの内因性受容体への結合を低減または阻害する、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記組成物は、線維症を低減するのに、線維症を防止するのに、線維症の発症のリスクを低下させるのに、繊維症の発症を遅延または減弱するのに、繊維症の進行を遅延、抑制または逆転するのに、繊維症を好転させるのに、繊維症を治療するのに、線維症の1つ以上の症状を低減するのに、線維性の組織または臓器の機能を改善するのに、対象におけるミオスタチン、アクチビンおよびBMP9の少なくとも1つのシグナル伝達に作用するのに、あるいはアクチビンおよびミオスタチンの少なくとも一方のそれらの内因性受容体への結合を低減するかまたは阻害するのに、十分な量で投与される、請求項1~10および45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記組成物は、赤血球レベルを増加させるのに、ヘモグロビンレベルを増加させるのに、赤血球形成を増加させるのに、赤血球数を増加させるのに、ヘマトクリットを増加させるのに、輸血の必要性を低減させるのに、貧血を治療するのに、対象におけるミオスタチン、アクチビン、およびBMP9の少なくとも1つのシグナル伝達に作用するのに、または、アクチビンおよびミオスタチンの少なくとも一方のそれらの内因性受容体への結合を減少させるかまたは阻害するのに、十分な量で投与される、請求項11~23および45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記組成物は、PHを予防するのに、PHの発症リスクを低減するのに、PHの1つ以上の症状の重症度または頻度を低減するのに、PHの発症を遅延するのに、PHの進行を遅延または抑制するのに、PHを治療するのに、肺血管リモデリングを低減するのに、心臓の血管リモデリングを低減するのに、右心室肥大を低減するのに、肺血管抵抗を低減するのに、6分間歩行試験のパフォーマンスを改善するのに、対象におけるミオスタチン、アクチビンおよびBMP9の少なくとも1つのシグナル伝達に作用するのに、あるいはアクチビンおよびミオスタチンの少なくとも一方のそれらの内因性受容体への結合を低減するかまたは阻害するのに、十分な量で投与される、請求項24~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記方法は前記対象において血管合併症を引き起こさない、請求項1~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記方法は血管透過性または漏出を増加させない、請求項49に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチビンIIA型受容体変異体およびそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
線維症とは、臓器や組織に過剰な結合組織が形成されることである。損傷(例えば、傷害)に反応して、または免疫反応(例えば、炎症反応)の一部として形成され得る結合組織は、結合組織が形成される臓器または組織の構造および機能を破壊し、組織の剛性を増大させることがある。線維症は、とりわけ、肺(例えば、肺線維症、嚢胞性線維症)、肝臓(例えば、肝硬変)、心臓(例えば、心内膜心筋線維症、または心筋梗塞後の線維症)、脳(例えば、グリア瘢痕形成)、皮膚(例えば、ケロイドの形成)、腎臓(例えば、腎線維症)、および眼(例えば、角膜線維症)を含む体内の多くの臓器および組織で発生する可能性があり、そして、特定の医療処置(例えば、化学療法、放射線療法および外科手術)に関連することが知られている。線維症に罹患した患者に対する治療選択肢は限られており、ほとんどの治療は生活の質の改善または疾患進行の一時的な遅延に焦点が当てられている。
【0003】
貧血は、罹患率と死亡率の両方に影響する健康への影響を伴う世界的な健康問題である。米国だけで、貧血の有病率は2003年から2012年にかけてほぼ倍増した。貧血の症状には、疲労、脱力感、息切れ、動悸、認知能力の低下が含まれ、子供、妊娠中の女性、生殖年齢の女性および高齢者は、貧血を発症するリスクが最も高いことがわかっている。貧血の最も一般的な形態は鉄欠乏性貧血であるが、貧血は慢性疾患、失血、赤血球破壊によっても引き起こされ得る。鉄欠乏性貧血は鉄サプリメントで治療することができるが、再生不良性貧血、慢性疾患の貧血、溶血性貧血など、他の多くの形態の貧血には輸血を必要とする場合がある。
【0004】
肺高血圧症(PH)は、肺と心臓の間の血管の圧力が通常よりも高いことを特徴とする深刻な状態である。PHは、WHOグループI~Vとしても知られている、動脈性(PAH)、静脈性(左側心疾患に続発するPH)、低酸素性(肺疾患によって引き起こされるPH)、血栓塞栓性(血栓などの慢性動脈閉塞によって引き起こされるPH)、またはその他(メカニズムが不明または多因子性のPH)の5つの主要なタイプに分類できる。PAHは、瘢痕による肺の小血管の閉塞または狭窄に起因する肺の血管圧上昇を特徴とする。これにより、肺を通る血流への抵抗が高まり、心臓の右側がより強く機能するようになり、心不全、血液酸素化の低下、および平均余命の短縮につながる可能性がある。PAHは特発性(例えば、特定可能な原因がない)、遺伝性(例えば、家族性、多くの場合、遺伝子突然変異に起因する)であり得るか、または薬物使用(例えば、メタンフェタミンやコカインの使用)、感染症(例:HIV感染または住血吸虫症)、肝硬変、先天性心臓異常、結合組織/自己免疫疾患(強皮症や狼瘡など)に関連することがある。PHの治療には、血管拡張薬、抗凝固薬、酸素補給が含まれるが、これらの治療は、疾患の原因となる生物学的メカニズムを標的にするのではなく、疾患の症状を管理するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
線維症、貧血、およびPHに対する新規な治療法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、細胞外アクチビンIIA型受容体(ActRIIA:activin receptor type IIA)変異体を含むポリペプチドに関する。いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドは、Fcドメインの単量体または部分のN末端またはC末端に融合した細胞外ActRIIA変異体を含む。そのような部分は、アミノ酸または他の共有結合によって結合されていてもよく、そしてポリペプチドの安定性を増加させる。Fcドメイン単量体に融合した細胞外ActRIIA変異体を含むポリペプチドはまた、2つのFcドメイン単量体間の相互作用を介して二量体(例えば、ホモ二量体またはヘテロ二量体)を形成し得る。本発明のポリペプチドは、線維症を軽減または予防するために、または線維症を有するかまたは発症するリスクのある対象における線維症の進行を遅らせるかまたは阻害するために使用され得る。本発明のポリペプチドはまた、それを必要とする対象(例えば、低赤血球レベル(例えば、低ヘモグロビンレベル、低ヘマトクリットおよび/または低赤血球数(例えば、低赤血球量))を有するかもしくは低赤血球レベルを発症するリスクにある対象、例えば、貧血もしくは失血)において、例えば、赤血球レベルを増加させる(例えば、ヘモグロビンレベルを増加させる、ヘマトクリットを増加させる、および/または赤血球数を増加させる、例えば、赤血球量を増加させる)ため、あるいは、赤血球の形成を増加させるために使用することができる。さらに、本発明のポリペプチドは、肺高血圧症(例えば、動脈性、静脈性、低酸素性、血栓塞栓性、またはその他の肺高血圧症)を有するかまたはそれらを発症するリスクがある対象における肺高血圧症の発症または進行を治療、予防、遅延または軽減させるために使用することができる。さらに、本発明のポリペプチドはまた、繊維症、低赤血球レベル(例えば、低ヘモグロビンレベル、低ヘマトクリット、および/または低赤血球数(例えば、低赤血球量))、あるいは肺高血圧症(例えば、動脈性、静脈性、低酸素性、血栓塞栓性、またはその他の肺高血圧症)を有するかまたはそれらを発症するリスクがある対象において、ミオスタチン、アクチビン、および/または骨形成タンパク質9(BMP9)シグナル伝達に作用するために使用することができる。
【0007】
一態様において、本発明は、細胞外アクチビンIIA型受容体(ActRIIA)変異体を含むポリペプチドであって、前記変異体は、
GAILGRSETQECLXNANWXTNQTGVEXCXGX1011121314HCX15ATWX16NISGSIEIVX1718GCX192021DX22NCYDRTDCVEX23242526PX27VYFCCCEGNMCNEKFSYFPEMEVTQPTS(配列番号1)の配列を有し、配列中、XはFまたはYであり;XはFまたはYであり;XはEまたはAであり;XはKまたはLであり;XはDまたはEであり;XはRまたはAであり;XはPまたはRであり;XはYまたはEであり;XはDまたはEであり;X10はKまたはQであり;X11はDまたはAであり;X12はKまたはAであり;X13はRまたはAであり;X14はRまたはLであり;X15はFまたはYであり;X16はK、R、またはAであり;X17はK、A、Y、F、またはIであり;X18はQまたはKであり;X19はWまたはAであり;X20はLまたはAであり;X21はD、K、R、A、F、G、M、N、またはIであり;X22はI、F、またはAであり;X23はKまたはTであり;X24はKまたはEであり;X25はDまたはEであり;X26はSまたはNであり;かつ、X27はEまたはQであり、かつ前記変異体は、配列番号73の配列を有する野生型細胞外ActRIIAまたは配列番号76~96の配列のうちいずれか1つを有する細胞外ActRIIAに対して少なくとも1つのアミノ酸置換を有する、ポリペプチドに関する。
【0008】
いくつかの実施形態において、変異体は、
GAILGRSETQECLFXNANWXTNQTGVEXCXGXKX11121314HCX15ATWX16NISGSIEIVX1718GCX192021DX22NCYDRTDCVEX23242526PX27VYFCCCEGNMCNEKFSYFPEMEVTQPTS(配列番号2)の配列を有し、配列中、X、X、X、X、X、X、X、X、X11、X12、X13、X14、X15、X16、X17、X18、X19、X20、X21、X22、X23、X24、X25、X26、およびX27は上記と同じように定義される。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記変異体は、
GAILGRSETQECLFXNANWEXRTNQTGVEXCXGXKDKRX14HCX15ATWX16NISGSIEIVKX18GCWLDDX22NCYDRTDCVEX23242526PX27VYFCCCEGNMCNEKFSYFPEMEVTQPTS(配列番号3)の配列を有し、配列中、X、X、X、X、X、X、X14、X15、X16、X18、X22、X23、X24、X25、X26、およびX27は上記のように定義される。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記変異体は、
GAILGRSETQECLFXNANWEXDRTNQTGVEXCXGXKDKRX14HCX15ATWX16NISGSIEIVKX18GCWLDDX22NCYDRTDCVEX23KX2526PX27VYFCCCEGNMCNEKFSYFPEMEVTQPTS(配列番号4)の配列を有し、配列中、X、X、X、X、X、X14、X15、X16、X18、X22、X23、X25、X26、およびX27は上記のように定義される。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記変異体は、
GAILGRSETQECLFXNANWEXDRTNQTGVEPCXGXKDKRX14HCFATWKNISGSIEIVKX18GCWLDDINCYDRTDCVEX23KX2526PX27VYFCCCEGNMCNEKFSYFPEMEVTQPTS(配列番号5)の配列を有し、配列中、X、X、X、X、X14、X18、X23、X25、X26、およびX27は上記のように定義される。
【0012】
上述の実施形態のいずれにおいても、XはFまたはYである。上述の実施形態のいずれにおいても、XはFまたはYである。上述の実施形態のいずれにおいても、XはEまたはAである。上述の実施形態のいずれにおいても、XはKまたはLである。上述の実施形態のいずれにおいても、XはDまたはEである。上述の実施形態のいずれにおいても、XはRまたはAである。上述の実施形態のいずれにおいても、XはPまたはRである。上述の実施形態のいずれにおいても、XはYまたはEである。上述の実施形態のいずれにおいても、XはDまたはEである。上述の実施形態のいずれにおいても、X10はKまたはQである。上述の実施形態のいずれにおいても、X11はDまたはAである。上述の実施形態のいずれにおいても、X12はKまたはAである。上述の実施形態のいずれにおいても、X13はRまたはAである。上述の実施形態のいずれにおいても、X14はRまたはLである。上述の実施形態のいずれにおいても、X15はFまたはYである。上述の実施形態のいずれにおいても、X16はK、R、またはAである。上述の実施形態のいずれにおいても、X17はK、A、Y、F、またはIである。上述の実施形態のいずれにおいても、X18はQまたはKである。上述の実施形態のいずれにおいても、X19はWまたはAである。上述の実施形態のいずれにおいても、X20はLまたはAである。上述の実施形態のいずれにおいても、X21はD、K、R、A、F、G、M、N、またはIである。上述の実施形態のいずれにおいても、X22はI、F、またはAである。上述の実施形態のいずれにおいても、X23はKまたはTである。上述の実施形態のいずれにおいても、X24はKまたはEである。上述の実施形態のいずれにおいても、X25はDまたはEである。上述の実施形態のいずれにおいても、X26はSまたはNである。上述の実施形態のいずれにおいても、X27はEまたはQである。上述の実施形態のいずれにおいても、X23はTであり、X24はEであり、X25はEであり、かつ、X26はNである。上述の実施形態のいずれにおいても、X23はTであり、X24はKであり、X25はEであり、かつ、X26はNである。上述の実施形態のいずれにおいても、X17はKである。
【0013】
上述の実施形態のいずれにおいても、前記変異体は、配列番号6~72のうちいずれか1つの配列を有する。
上述の実施形態のいずれにおいても、位置X24のアミノ酸は、アミノ酸Kで置換可能である。
【0014】
上述の実施形態のいずれにおいても、位置X24のアミノ酸は、アミノ酸Eで置換可能である。
上述の実施形態のいずれにおいても、本明細書に記載のポリペプチドは、1以上のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、またはそれ以上のアミノ酸)のC末端伸長部をさらに含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、C末端伸長部は、アミノ酸配列NPである。いくつかの実施形態において、C末端伸長部は、アミノ酸配列NPVTPK(配列番号155)である。
【0015】
前述の実施形態のいずれかにおいて、本明細書に記載のポリペプチドは、ポリペプチドのC末端に融合または共有結合した部分をさらに含み得る。いくつかの実施形態において、同部分はポリペプチドの安定性を増大させるかまたは薬物動態を改善する。いくつかの実施形態において、同部分はFcドメイン、アルブミン結合ペプチド、フィブロネクチンドメイン、またはヒト血清アルブミンである。
【0016】
上述の実施形態のいずれにおいても、本明細書に記載のポリペプチドは、リンカーを介してポリペプチドのC末端に融合されたFcドメイン単量体をさらに含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、Fcドメイン単量体に融合された本明細書に記載の細胞外ActRIIA変異体を含むポリペプチドは、2つのFcドメイン単量体間の相互作用を介して二量体(例えば、ホモ二量体またはヘテロ二量体)を形成し得る。いくつかの実施形態において、Fcドメイン単量体は、配列番号97の配列を有する。
【0017】
上述の実施形態のいずれにおいても、本明細書に記載のポリペプチドは、リンカーを介してポリペプチドのC末端に融合されたFcドメインをさらに含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、Fcドメインは、野生型Fcドメインである。いくつかの実施形態では、野生型Fcドメインは、配列番号151の配列を有する。いくつかの実施形態において、Fcドメインは、1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、1以上のアミノ酸置換を含むFcドメインは、二量体を形成しない。
【0018】
上述の実施形態のいずれにおいても、本明細書に記載のポリペプチドは、リンカーを介してポリペプチドのC末端に融合されたアルブミン結合ペプチドをさらに含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、アルブミン結合ペプチドは、配列番号152の配列を有する。
【0019】
上述の実施形態のいずれにおいても、本明細書に記載のポリペプチドは、リンカーを介してポリペプチドのC末端に融合されたフィブロネクチンドメインをさらに含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、フィブロネクチンドメインペプチドは、配列番号153の配列を有する。
【0020】
上述の実施形態のいずれにおいても、本明細書に記載のポリペプチドは、リンカーを介してポリペプチドのC末端に融合されたヒト血清アルブミンをさらに含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、ヒト血清アルブミンは、配列番号154の配列を有する。
【0021】
いくつかの実施形態において、リンカーは、アミノ酸スペーサーである。いくつかの実施形態では、アミノ酸スペーサーは、GGG、GGGA(配列番号98)、GGGG(配列番号100)、GGGAG(配列番号130)、GGGAGG(配列番号131)、またはGGGAGGG(配列番号132)である。
【0022】
いくつかの実施形態では、アミノ酸スペーサーは、GGGS(配列番号99)、GGGGA(配列番号101)、GGGGS(配列番号102)、GGGGG(配列番号103)、GGAG(配列番号104)、GGSG(配列番号105)、AGGG(配列番号106)、SGGG(配列番号107)、GAGA(配列番号108)、GSGS(配列番号109)、GAGAGA(配列番号110)、GSGSGS(配列番号111)、GAGAGAGA(配列番号112)、GSGSGSGS(配列番号113)、GAGAGAGAGA(配列番号114)、GSGSGSGSGS(配列番号115)、GAGAGAGAGAGA(配列番号116)、およびGSGSGSGSGSGS(配列番号117)、GGAGGA(配列番号118)、GGSGGS(配列番号119)、GGAGGAGGA(配列番号120)、GGSGGSGGS(配列番号121)、GGAGGAGGAGGA(配列番号122)、GGSGGSGGSGGS(配列番号123)、GGAGGGAG(配列番号124)、GGSGGGSG(配列番号125)、GGAGGGAGGGAG(配列番号126)、およびGGSGGGSGGGSG(配列番号127)、GGGGAGGGGAGGGGA(配列番号128)、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号129)、AAAL(配列番号133)、AAAK(配列番号134)、AAAR(配列番号135)、EGKSSGSGSESKST(配列番号136)、GSAGSAAGSGEF(配列番号137)、AEAAAKEAAAKA(配列番号138)、KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号139)、GENLYFQSGG(配列番号140)、SACYCELS(配列番号141)、RSIAT(配列番号142)、RPACKIPNDLKQKVMNH(配列番号143)、GGSAGGSGSGSSGGSSGASGTGTAGTGSGSGTGSG(配列番号144)、AAANSSIDLISVPVDSR(配列番号145)、GGSGGGSEGGGSEGGGSEGGGSEGGGSEGGGSGGGS(配列番号146)、EAAAK(配列番号147)、またはPAPAP(配列番号148)である。
【0023】
上述の実施形態のいずれにおいても、本明細書に記載のポリペプチドは、(例えば、ヒト対象において)少なくとも7日の血清半減期を有する。
上述の実施形態のいずれにおいても、本明細書に記載のポリペプチドは、200pM以上のKでヒト骨形成因子9(BMP9)と結合する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、アクチビンおよび/またはミオスタチンと結合し、ヒトBMP9との結合は低い(例えば、弱い)。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、ヒトBMP9と実質的に結合しない。
【0024】
上述の実施形態のいずれにおいても、本明細書に記載のポリペプチドは、800pM以下のKでヒトアクチビンAと結合する。
上述の実施形態のいずれにおいても、本明細書に記載のポリペプチドは、およそ800pM以下のKでヒトアクチビンBと結合する。
【0025】
上述の実施形態のいずれにおいても、本明細書に記載のポリペプチドは、およそ5pM以上のKでヒトGDF-11と結合する。
別の態様において、本発明は、本明細書に記載のポリペプチド(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体を含むポリペプチド)をコードする核酸分子に関する。別の態様において、本発明はまた、本明細書に記載の核酸分子を含むベクターに関する。
【0026】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載のポリペプチドを発現する宿主細胞に関し、その宿主細胞は、前記2つの態様に記載されている核酸分子またはベクターを含み、この核酸分子またはベクターは宿主細胞内で発現される。
【0027】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載のポリペプチドを作製する方法に関し、その方法は、a)本明細書に記載の核酸分子またはベクターを含む宿主細胞を提供すること、およびb)前記ポリペプチドの形成を可能とする条件下、宿主細胞内で前記核酸分子またはベクターを発現させること、を含む。
【0028】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載のポリペプチド、核酸分子、またはベクターと1以上の薬学上許容される担体または賦形剤とを含む医薬組成物に関する。前記医薬組成物のいくつかの実施形態において、ポリペプチド、核酸分子、またはベクターは治療有効量である。
【0029】
別の態様において、本発明はまた、Fcドメイン単量体(例えば、配列番号97の配列)のN末端またはC末端に融合された、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体をそれぞれ含む2つの同一のポリペプチドを含む構築物(例えば、ホモ二量体)に関する。2つのポリペプチド中の2つのFcドメイン単量体は相互作用して構築物中にFcドメインを形成する。
【0030】
別の態様において、本発明はまた、それぞれが配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体であって、Fcドメイン単量体(例えば、配列番号97の配列)のN末端またはC末端に融合している変異体を含む2つの異なるポリペプチド(例えばヘテロ二量体)を含む構築物に関する。2つのポリペプチド中の2つのFcドメイン単量体は相互作用して構築物中にFcドメインを形成する。
【0031】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の治療有効量のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクター、または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することによる、それを必要とする対象において繊維症を低減または予防する方法に関する。
【0032】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の治療有効量のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクター、または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することによる、それを必要とする対象において繊維症の進行を遅延、抑制、または逆転させる(reversing)方法に関する。
【0033】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の治療有効量のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクター、または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することによる、それを必要とする対象において繊維症を発症するリスクを低減する、または既存の繊維症を改善する方法に関する。
【0034】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の治療有効量のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクター、または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することによる、線維症を有する対象またはそれを発症するリスクがある対象を治療する方法に関する。
【0035】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の治療有効量のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクター、または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することによる、繊維症の発症を軽減する方法に関する。
【0036】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の治療有効量のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクター、または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することによる、繊維症を好転させる(reversing)方法に関する。
【0037】
別の態様において、本発明は、繊維症を有するか、またはそれを発症するリスクがある対象において、ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9シグナル伝達に作用する(例えば、ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9のそれらの受容体への結合を低減または阻害する)方法に関し、同方法は、本明細書に記載の治療有効量のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクター、または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0038】
上記態様のいずれかのいくつかの実施形態において、線維症は、化学療法薬誘発線維症、放射線誘発線維症、肺線維症、肝線維症、腎線維症(例えば、慢性腎疾患に関連する線維症)、角膜線維症、心線維症、骨髄線維症、縦隔線維症、後腹膜線維症(retropertinoneal fibrosis)、関節線維症、骨関節線維症、組織線維症、腫瘍間質、線維形成性腫瘍、外科的癒着、肥厚性瘢痕、またはケロイドである。いくつかの実施形態において、組織線維症は、筋組織、皮膚表皮、皮膚真皮、腱、軟骨、膵臓組織、子宮組織、神経組織、精巣、卵巣、副腎、動脈、静脈、結腸、小腸、大腸、胆道および腸からなる群から選択される組織に影響を与える線維症である。
【0039】
上記態様のいずれかのいくつかの実施形態において、線維症は、創傷、火傷、B型またはC型肝炎感染、脂肪肝疾患、住血吸虫感染、腎疾患(例えば、慢性腎疾患)、心疾患、黄斑変性、網膜または硝子体網膜症、クローン病、全身性または局所性強皮症、アテローム性動脈硬化症、または再狭窄、に関連する繊維症である。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、繊維症は慢性腎疾患によって起こる。
【0040】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は、線維化した組織または臓器の機能を改善する。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は繊維症の進行を遅延、抑制または逆転する。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は線維症の1つ以上の症状を減少させる(例えば、その頻度や重症度を減少させる)あるいは好転させる。
【0041】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の治療有効量のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクター、または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することによる、それを必要とする対象において赤血球レベルを増加させる(例えば、ヘモグロビンレベル、赤血球数またはヘマトクリットを増加させる、例えば赤血球量を増加させる)方法に関する。
【0042】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の治療有効量のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクター、または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することによる、それを必要とする対象の赤血球の形成を促進または増加させる方法に関する。
【0043】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、対象は貧血または失血を患っているかまたはそれらを発症するリスクがある。
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の治療有効量のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクター、または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することによる、低赤血球レベルに関連する疾患または病態(例えば、低ヘモグロビンレベル、低赤血球数、または低ヘマトクリット、例えば、低赤血球量)を有する対象またはそれらを発症するリスクがある対象において、ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9シグナル伝達に作用する(例えば、ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9のそれらの内因性受容体への結合を低減または阻害する)方法に関する。いくつかの実施形態において、疾患または病態は貧血または失血である。
【0044】
別の態様において、本発明は、貧血を有する対象またはそれを発症するリスクがある対象を治療する方法に関し、同方法は、本明細書に記載の治療有効量のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクター、または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0045】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、貧血または失血は、癌、癌治療、腎疾患または腎不全(例えば、慢性腎疾患または急性腎疾患または不全)、骨髄異形成症候群、サラセミア、栄養欠乏、薬物に対する有害反応、炎症性または自己免疫疾患、脾腫、ポルフィリン症、血管炎、溶血、骨髄欠損、骨髄移植、肝疾患(例えば、急性肝疾患または慢性肝疾患)、糖尿病、出血(例えば、急性または慢性の出血)、感染、異常ヘモグロビン症、薬物使用、アルコール乱用、高齢、チャーグ・ストラウス(Churg-Strauss)症候群、フェルティ(Felty)症候群、移植片対宿主病、造血幹細胞移植、骨髄線維症、汎血球減少症、純粋赤血球無形成症、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(purpura Schoenlein-Henoch)、シュワッハマン(Shwachman)症候群(例えば、シュワッハマン・ダイアモンド(Shwachman-Diamond)症候群)、輸血の禁忌、手術、外傷、創傷、潰瘍、尿路出血、消化管出血、頻繁な献血、または重い月経出血と関連している。
【0046】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、貧血は慢性腎疾患によって起こる。
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、貧血は、再生不良性貧血、鉄欠乏性貧血、ビタミン欠乏性貧血、慢性疾患に伴う貧血、骨髄疾患に関連する貧血、溶血性貧血、鎌状赤血球貧血、小球性貧血、低色素性貧血、鉄芽球性貧血、ダイアモンド・ブラックファン(Diamond Blackfan)貧血、ファンコーニ(Fanconi)貧血、または過剰芽細胞を伴う不応性貧血である。
【0047】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、対象はエリスロポイエチン(EPO)での治療に良好に反応しないか、あるいはEPOの副作用に感受性である。
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は赤血球形成、赤血球数、ヘマトクリット、またはヘモグロビンレベル(例えば、赤血球量)を増加させる。
【0048】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は前記対象の輸血の必要性を軽減する。
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の治療有効量のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクター、または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することによる、それを必要とする対象の肺高血圧症(PH)を予防する方法に関する。
【0049】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の治療有効量のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクター、または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することによる、それを必要とする対象においてPHを発症するリスクを低減する方法に関する。
【0050】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の治療有効量のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクター、または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することによる、それを必要とする対象においてPHの進行を遅延または抑制する方法に関する。
【0051】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の治療有効量のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクター、または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することによるPHを有する対象またはそれを発症するリスクがある対象を治療する方法に関する。
【0052】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の治療有効量のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクター、または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することによる、PHを有するか、またはそれを発症するリスクがある対象において、ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9シグナル伝達に作用する(例えば、ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9のそれらの内因性受容体への結合を低減または阻害する)方法に関する。
【0053】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の治療有効量のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクター、または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することによるPHを有する対象またはそれを発症するリスクがある対象における血管リモデリングを低減する方法に関する。
【0054】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の治療有効量のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクター、または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することによるPHを有する対象またはそれを発症するリスクがある対象における右心室肥大を低減する方法に関する。
【0055】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の治療有効量のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクター、または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することによるPHを有する対象またはそれを発症するリスクがある対象における肺血管抵抗を減少させる方法に関する。
【0056】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、PHは肺動脈高血圧症(PAH)である。いくつかの実施形態において、PAHは突発性PAHである。いくつかの実施形態において、PAHは遺伝性PAHである。いくつかの実施形態において、PAHは、HIV感染、住血吸虫症、肝硬変、先天性心臓異常、門脈圧亢進症、肺静脈閉塞症、肺毛細血管腫症、結合組織障害、自己免疫障害(例えば、強皮症または狼瘡)または薬物の使用もしくは乱用(例えば、コカインまたはメタンフェタミンの使用)に関連するものである。
【0057】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、PHは静脈性PHである。いくつかの実施形態において、静脈性PHは、左心室収縮機能不全、左心室拡張機能不全、心臓弁膜症、先天性心筋症、または先天性もしくは後天性肺静脈狭窄に関連するものである。
【0058】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、PHは低酸素性PHである。いくつかの実施形態において、低酸素性PHは、慢性閉塞性肺疾患(例えば、肺気腫)、間質性肺疾患、睡眠障害呼吸(例えば、睡眠時無呼吸)、肺疾患(例えば、肺線維症)、肺胞低換気障害、高地への慢性曝露、または発達異常に関連するものである。
【0059】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、PHは血栓塞栓性PHである。いくつかの実施形態において、血栓塞栓性PHは、慢性血栓塞栓性肺高血圧症、肺塞栓症、血管肉腫、動脈炎、先天性肺動脈狭窄症、または寄生虫感染症に関連するものである。
【0060】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、PHはその他PHである。いくつかの実施形態において、その他のPHは、血液疾患(例えば、慢性溶血性貧血、鎌状赤血球症)、全身性疾患(例えば、サルコイドーシス、肺ランゲルハンス細胞組織球症、リンパ管平滑筋腫症、神経線維腫症、または血管炎)、代謝障害(たとえば、糖原病、ゴーシェ病、または甲状腺疾患)、肺腫瘍性血栓性微小血管症、線維性縦隔炎、慢性腎不全、または区域性肺高血圧症(segmental pulmonary hypertension)に関連するものである。
【0061】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は、PHの1つまたは複数の症状の頻度または重症度を低減する(例えば、息切れ(呼吸困難)、疲労、脚、足、腹(腹水)または首の腫脹(例えば、浮腫)、胸痛または胸部圧迫感、激しい脈または心臓の動悸、唇または皮膚の青みがかった色(チアノーゼ)、めまい、または失神、の重症度または頻度を低減する)。
【0062】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は肺血管リモデリングを低減する。
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は心臓における血管リモデリングを低減する。
【0063】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は右心室肥大を低減する。
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は肺血管抵抗を低減する(例えば、治療前に行われた測定と比較して、肺血管抵抗を低減する)。
【0064】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は6分間歩行試験におけるパフォーマンスを改善する(例えば、治療前に行われた測定と比較してパフォーマンスを改善する)。
【0065】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法はアクチビンおよび/またはミオスタチンのそれらの内因性受容体への結合を低減または阻害する。
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、ポリペプチド、核酸、ベクター、または医薬組成物は、線維症を低減するのに、線維症の発症を予防するのに、線維症の発症を遅延もしくは弱めるのに、繊維症の進行を遅らせる、阻害する、もしくは逆転させるのに、線維症を発症するリスクを減らすのに、線維症を好転させるのに、線維症の1つまたは複数の症状を減らすのに、線維性組織または器官の機能を改善するのに、対象のミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9シグナル伝達に影響を与えるのに、あるいはアクチビンおよび/またはミオスタチンのそれらの内因性受容体への結合を阻害するのに、十分な量にて投与される。
【0066】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、ポリペプチド、核酸、ベクター、または医薬組成物は、赤血球レベルを増加させるのに、ヘモグロビンレベルを増加させるのに、ヘマトクリットを増加させるのに、赤血球形成を増加させるのに、赤血球数を増加させるのに、赤血球量を増加させるのに、輸血の必要性を低減させるのに、貧血を治療するのに、対象におけるミオスタチン、アクチビンおよび/またはBMP9のシグナル伝達に作用するのに、あるいは、アクチビンおよび/またはミオスタチンのそれらの内因性受容体への結合を減少させるかまたは阻害するのに、十分な量で投与される。
【0067】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、ポリペプチド、核酸、ベクター、または医薬組成物は、PHを予防するのに、PHの発症リスクを低減するのに、PHの1つ以上の症状の重症度または頻度を低減するのに、PHの発症を遅延または弱めるのに、PHの進行を遅延または抑制するのに、PHを治療するのに、肺血管リモデリングを低減するのに、心臓の血管リモデリングを低減するのに、右心室肥大を低減するのに、肺血管抵抗を低減するのに、6分間歩行試験のパフォーマンスを改善するのに、対象におけるミオスタチン、アクチビンおよびBMP9の少なくとも1つのシグナル伝達に作用するのに、あるいはアクチビンおよび/またはミオスタチンのそれらの内因性受容体への結合を低減するかまたは阻害するのに、十分な量で投与される。いくつかの実施形態において、PHはPAHである。いくつかの実施形態において、PHは静脈性PHである。いくつかの実施形態において、PHは低酸素性PHである。いくつかの実施形態において、PHは血栓塞栓性PHである。いくつかの実施形態において、PHはその他のPHである。
【0068】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は対象において血管合併症を引き起こさない。いくつかの実施形態において、方法は、血管透過性または漏出を増加させない。
【0069】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、変異体は配列番号69の配列を有する。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、変異体は配列番号58の配列を有する。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、変異体は配列番号6の配列を有する。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、変異体は配列番号38の配列を有する。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、変異体は配列番号41の配列を有する。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、変異体は配列番号44の配列を有する。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、変異体は配列番号70の配列を有する。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、変異体は配列番号71の配列を有する。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、変異体は配列番号72の配列を有する。上述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、配列番号69、配列番号58、配列番号6、配列番号38、配列番号41、配列番号44、配列番号70、配列番号71、または配列番号72の配列を有する変異体は、X17の位置にアミノ酸Kを有する。上述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、配列番号69、配列番号58、配列番号6、配列番号38、配列番号41、配列番号44、配列番号70、配列番号71、または配列番号72の配列を有する変異体は、X23、X24、X25およびX26の位置にアミノ酸TEENまたはTKENを有する。上述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、配列番号69、配列番号58、配列番号6、配列番号38、配列番号41、配列番号44、配列番号70、配列番号71の配列を有する変異体は、C末端伸長部(例えば、C末端に1、2、3、4、5、6またはそれ以上のさらなるアミノ酸、例えば、アミノ酸NPまたはNPVTPK(配列番号155))を有する。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は、治療有効量の配列番号69、配列番号58、配列番号6、配列番号38、配列番号41、配列番号44、配列番号70、配列番号71、または配列番号72の配列を有する変異体、任意選択にて、位置X17にアミノ酸K、位置X23、X24、X25、およびX26にアミノ酸配列TEENまたはTKEN、および/またはC末端伸長部を有する変異体、或いは同変異体を含有する医薬組成物を対象に投与することによって、それを必要とする対象(例えば、繊維症を有するかまたは繊維症を発症するリスクにある対象)において繊維症を増加低減するもしくは予防すること、それを必要とする対象において繊維症の進行を遅らせるもしくは阻害する、それを必要とする対処において繊維症を好転させる、繊維症を有するかまたは繊維症を発症するリスクにある対象を治療する、対象(例えば、繊維症、低赤血球レベル、もしくはPHを有するかまたはそれらを発症するリスクにある対象)においてミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9シグナル伝達に影響を与える(例えば、ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9のそれらの内因性受容体への結合を低減または阻害する)、対象(例えば、貧血または失血を有するかもしくはそれらを発症するリスクにある対象)において赤血球レベルを増加させる、対象(例えば、貧血または失血を有するかもしくはそれらを発症するリスクにある対象)において赤血球の形成を増加させる、貧血を有するかもしくはそれらを発症するリスクにある対象を治療する、PHを予防する、PHを発症するリスクを低減する、PHの進行を遅らせるもしくは阻害する、PHを有するかもしくはそれらを発症するリスクにある対象を治療することを含む。
【0070】
定義
本明細書で使用する場合、用語「細胞外アクチビンIIA型受容体(ActRIIA)変異体」は、野生型細胞外ActRIIAに対して少なくとも1つのアミノ酸置換(例えば、下記に示す配列番号75の配列の太字部分)を有する1回膜貫通型受容体ActRIIAの可溶型細胞外部分または配列番号76~96の配列のうちいずれか1つを有する細胞外ActRIIAを含むペプチドを指す。野生型ヒトActRIIA前駆体タンパク質の配列を下記に示し(配列番号75)、シグナルペプチドを斜体で、細胞外部分を太字で示す。
【0071】
野生型ヒトActRIIA前駆体タンパク質(配列番号75):
【0072】
【化1】
【0073】
細胞外ActRIIA変異体は、配列番号1~72のうちいずれか1つの配列を有し得る。特定の実施形態において、細胞外ActRIIA変異体は、配列番号6~72(表2)のいずれか1つの配列を有する。いくつかの実施形態において、細胞外ActRIIA変異体は、野生型細胞外ActRIIA(配列番号73)の配列と少なくとも85%の(例えば、少なくとも85%、87%、90%、92%、95%、97%の、またはそれを超える)アミノ酸配列同一性を有し得る。
【0074】
本明細書で使用する場合、用語「細胞外ActRIIB変異体」は、野生型細胞外ActRIIB(例えば、配列番号74の配列)に対して少なくとも1つのアミノ酸置換を有する1回膜貫通型受容体、ActRIIB、の可溶型細胞外部分を含むペプチドを指す。細胞外ActRIIB変異体は、以下に示す配列番号149の配列を有し得る:
細胞外ActRIIB変異体(配列番号149):
【0075】
【化2】
【0076】
本明細書で使用する場合、用語「リンカー」は、2つの要素、例えば、ペプチドまたはタンパク質ドメインの間の結合を指す。本明細書に記載のポリペプチドは、ある部分に融合された細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)を含み得る。この部分は、ポリペプチドの安定性を増すか、または薬物動態特性を改善することができる。この部分(例えば、Fcドメイン単量体、野生型Fcドメイン、アミノ酸置換(例えば、二量体形成を低減する1以上の置換)を有するFcドメイン、アルブミン結合ペプチド、フィブロネクチンドメイン、またはヒト血清アルブミン)は、リンカーを介してポリペプチドに融合されていてもよい。リンカーは、共有結合またはスペーサーであり得る。用語「結合」は、化学結合、例えば、アミド結合またはジスルフィド結合、または化学反応、例えば、化学共役から作り出されるいずれの種類の結合も指す。用語「スペーサー」は、2つの要素の間に空間および/またはフレキシビリティを設けるために2つの要素、例えば、ペプチドまたはタンパク質ドメインの間に存在する部分(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマー)またはアミノ酸配列(例えば、1~200アミノ酸の配列)を指す。アミノ酸スペーサーは、ポリペプチドの一次配列の一部である(例えば、ポリペプチド主鎖により空間が設けられたペプチドに融合されている)。例えば、Fcドメインを形成する2つのヒンジ領域の間のジスルフィド結合の形成は、リンカーと見なされない。
【0077】
本明細書で使用する場合、用語「Fcドメイン」は、2つのFcドメイン単量体の二量体を指す。Fcドメインは、少なくともC2ドメインおよびC3ドメインを含むヒトFcドメインと少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも85%、90%、95%、97%、または100%の配列同一性)を有する。Fcドメイン単量体は、第2および第3の抗体定常ドメイン(C2およびC3)を含む。いくつかの実施形態において、Fcドメイン単量体はまた、ヒンジドメインも含む。Fcドメインは、例えば可変ドメインまたは相補性決定領域(CDR)など、抗原認識領域として働くことが可能な免疫グロブリンのいずれの部分も含まない。野生型Fcドメインでは、2つのFcドメイン単量体は、2つのC3抗体定常ドメイン間の相互作用、ならびに2つの二量体形成Fcドメイン単量体のヒンジドメイン間で形成する1以上のジスルフィド結合によって二量体を形成する。いくつかの実施形態において、Fcドメインは、「デッドFcドメイン」の典型としてエフェクター機能を欠くように変異させてもよい。特定の実施形態において、Fcドメインの各Fcドメイン単量体は、FcドメインとFcγ受容体の間の相互作用または結合を低減するようにC2抗体定常ドメイン内にアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、Fcドメインは、Fcドメインの二量体形成を低減または阻害する1つ以上のアミノ酸置換を含む。Fcドメインは、IgG、IgE、IgM、IgA、またはIgDを含むいずれの免疫グロブリン抗体アイソタイプであってもよい。加えて、Fcドメインは、IgGサブタイプ(例えば、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、またはIgG4)であってもよい。Fcドメインはまた、非天然Fcドメイン、例えば、組換えFcドメインであってもよい。
【0078】
本明細書で使用する場合、用語「アルブミン結合ペプチド」は、血清アルブミンに対して親和性を有し、血清アルブミンと結合する働きをするアミノ酸12~16個のアミノ酸配列を指す。アルブミン結合ペプチドは、例えば、ヒト、マウス、またはラットなど、起源の異なるものであってもよい。いくつかの実施形態において、アルブミン結合ペプチドは、配列DICLPRWGCLW(配列番号152)を有する。
【0079】
本明細書で使用する場合、用語「フィブロネクチンドメイン」は、例えば、インテグリンなどの膜貫通受容体タンパク質、ならびにコラーゲンおよびフィブリンなどの細胞外マトリックス成分と結合する、細胞外マトリックスの高分子量糖タンパク質、またはそのフラグメントを指す。いくつかの実施形態において、フィブロネクチンドメインは、UniProt ID NO:P02751の配列のアミノ酸610~702を有するフィブロネクチンIII型ドメイン(配列番号153)である。他の実施形態において、フィブロネクチンドメインは、アドネクチンタンパク質である。
【0080】
本明細書で使用する場合、用語「ヒト血清アルブミン」は、ヒト血漿中に存在するアルブミンタンパク質を指す。ヒト血清アルブミンは、血液中の最も豊富なタンパク質である。ヒト血清アルブミンは、血清タンパク質の約半分を占める。いくつかの実施形態において、ヒト血清アルブミンは、UniProt ID NO:P02768(配列番号154)の配列を有する。
【0081】
本明細書で使用する場合、用語「融合された」は、化学共役、組換え手段、および化学結合、例えば、アミド結合を含む手段による、2以上の要素、成分、またはタンパク質ドメイン、例えば、ペプチドまたはポリペプチドの組合せまたは結合を表すために使用される。例えば、化学共役、化学結合、ペプチドリンカー、または他のいずれかの共有結合手段を介して2つの単一のペプチドを直列に融合して1つの連続するタンパク質構造、例えばポリペプチドを形成することができる。本明細書に記載のポリペプチドのいくつかの実施形態において、細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)を、リンカーを介して、ある部分(例えば、Fcドメイン単量体(例えば、配列番号97の配列)、野生型Fcドメイン(例えば、配列番号151の配列)、アミノ酸置換(例えば、二量体形成を低減する1以上の置換)を有するFcドメイン、アルブミン結合ペプチド(例えば、配列番号152の配列)、フィブロネクチンドメイン(例えば、配列番号153の配列)、またはヒト血清アルブミン(例えば、配列番号154の配列))のN末端またはC末端に直列で融合させてよい。例えば、細胞外ActRIIA変異体を、ペプチドリンカーを介して、ある部分(例えば、Fcドメイン単量体、野生型Fcドメイン、アミノ酸置換(例えば、二量体形成を低減する1以上の置換)を有するFcドメイン、アルブミン結合ペプチド、フィブロネクチンドメイン、またはヒト血清アルブミン)に融合させるが、この場合、ペプチドリンカーのN末端を、化学結合、例えば、ペプチド結合を介して細胞外ActRIIA変異体のC末端に融合させ、かつ、ペプチドリンカーのC末端を、化学結合、例えば、ペプチド結合を介して、その部分(例えば、Fcドメイン単量体、野生型Fcドメイン、アミノ酸置換(例えば、二量体形成を低減する1以上の置換)を有するFcドメイン、アルブミン結合ペプチド、フィブロネクチンドメイン、またはヒト血清アルブミン)のN末端に融合させる。
【0082】
本明細書で使用する場合、用語「C末端伸長部(extension)」は、細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~70(例えば、配列番号6~70)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)を含むポリペプチドのC末端への1以上のアミノ酸の付加を指す。C末端伸長部は、1~6個のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6またはそれ以上のアミノ酸)であり得る。例示的なC末端伸長部は、アミノ酸配列NP(2個のアミノ酸C末端伸長部)およびアミノ酸配列NPVTPK(配列番号155)(6個のアミノ酸C末端伸長部)である。ポリペプチドの活性を混乱させないいずれのアミノ酸配列も使用可能である。配列番号71、すなわち、NPのC末端伸長部を有する配列番号69の配列、および配列番号72、すなわち、NPVTPKのC末端伸長部を有する配列番号69の配列は、本発明のポリペプチドがC末端伸長部を含むように改変され得る可能性のある方法のうちの2つに相当する。
【0083】
本明細書で使用する場合、用語「同一性パーセント(%)(percent(%)identity)」は、配列をアラインし、最大同一性パーセントを得るために必要に応じてギャップを導入した後(すなわち、ギャップは、最適なアラインメントのために候補配列と参照配列の一方または両方に導入することができ、比較の目的で非相同配列を無視することができる)、参照配列、例えば、野生型細胞外ActRIIA(例えば、配列番号73)のアミノ酸(または核酸)残基と同一である、候補配列、例えば、細胞外ActRIIA変異体のアミノ酸(または核酸)残基のパーセンテージを指す。同一性パーセントを決定するためのアラインメントは、例えば、BLAST、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウエアなどの公開コンピュータソフトウエアを使用するなど、当技術分野の技術の範囲内にある様々な方法で達成することができる。当業者は、比較する配列の全長にわたって最大アラインメントを得るために必要なアルゴリズムを含め、アラインメントを評価するための適当なパラメータを決定することができる。いくつかの実施形態において、所与の参照配列に対する(to,with,or against)所与の候補配列のアミノ酸(または核酸)配列同一性パーセント(あるいは、これは所与の参照配列に対して特定のアミノ酸(または核酸)配列同一性パーセントを有するまたは含む所与の候補配列と表現することもできる)は次のように計算される:
100×(A/Bの分数)
式中、Aは、候補配列と参照配列のアラインメントにおいて同一スコアが与えられたアミノ酸(または核酸)残基の数であり、Bは、参照配列のアミノ酸(または核酸)残基の総数である。いくつかの実施形態において、候補配列の長さが参照配列の長さと等しくない場合、参照配列に対する候補配列のアミノ酸(または核酸)配列同一性パーセントは、候補配列に対する参照配列のアミノ酸(または核酸)配列同一性パーセントと等しくないであろう。
【0084】
特定の実施形態において、候補配列との比較のためにアラインされる参照配列は、候補配列が候補配列の全長または候補配列の連続するアミノ酸(または核酸)残基の選択された部分にわたって50%~100%の同一性を示すことを示し得る。比較目的でアラインされる候補配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、例えば、少なくとも40%、例えば、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または100%である。候補配列の位置が参照配列の対応する位置と同じアミノ酸(または核酸)残基で占められていれば、それらの分子はその位置において同一である。
【0085】
本明細書で使用する場合、用語「血清半減期」は、対象に治療タンパク質を投与するという文脈で、その対象においてそのタンパク質の血漿濃度が半分に減少するのに要する時間を指す。タンパク質は、再分布したり、または血流から排除されたり、または例えば、タンパク質分解によって分解されたりすることがある。本明細書に記載されるように、細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)を含むポリペプチドは、ヒトにおいて7日の血清半減期を示す。
【0086】
本明細書で使用する場合、用語「親和性」または「結合親和性」は、2分子間の結合相互作用の強度を指す。一般に、結合親和性は、分子とその結合相手、例えば、細胞外ActRIIA変異体とBMP9またはアクチビンAとの間の非共有結合的相互作用の総和の強度を指す。そうではないことが示されない限り、結合親和性は、固有結合親和性を指し、これは結合対のメンバー間の1:1相互作用を表す。2分子間の結合親和性は、一般に、解離定数(K)または親和性定数(K)によって記載される。互いに低い結合親和性を有する2分子は、一般に、ゆっくりと結合し、容易に解離する傾向があり、大きなKを示す。互いに高い親和性を有する2分子は、一般に、容易に結合し、結合をより長く維持する傾向があり、小さいKを示す。2つの相互作用分子のKは、例えば、表面プラズモン共鳴などの当技術分野で周知の方法および技術を用いて決定することができる。Kは、koff/konの比として計算される。
【0087】
本明細書で使用する場合、「ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9シグナル伝達に作用する(affecting)」という句は、ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9のそれらの受容体、例えば、ActRIIA、ActRIIB、およびBMPRII(例えば、ActRIIA)への結合を変化させることを意味する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の細胞外ActRIIA変異体を含むポリペプチドは、ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9のそれらの受容体(例えばActRIIA、ActRIIB、およびBMPRII(例えばActRIIA))への結合を低減または阻害する。本明細書に記載されているように、細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)を含む本発明のポリペプチドは、BMP9に対する弱い結合親和性を有し得る(例えば、200pM以上のK)。
【0088】
本明細書で使用する場合、「増加する」および「減少する」という用語は、参照と比較して、それぞれ、より多いまたはより少ない量の機能、発現、または測定基準(metric)の活性をもたらす変調(modulating)を指す。例えば、本明細書に記載の方法における細胞外ActRIIA変異体を含む本発明のポリペプチドの投与に続いて、本明細書に記載の測定基準(例えば、赤血球数)のマーカーの量は、投与前のマーカーの量と比較して、対象において増加または減少し得る。一般に、測定基準は、投与後、投与が列挙された効果を示したときに、例えば、治療レジメンが開始された後の、少なくとも1週間、1ヶ月、3ヶ月、または6ヶ月において測定される。
【0089】
本明細書で使用する場合、「内因性(endogenous)」という用語は、特定の生物(例えば、ヒト)または生物内の特定の場所(例えば、臓器、組織、または細胞、例えばヒト細胞、例えばヒト有毛細胞)に天然に見られる分子(例えば、ポリペプチド、核酸、または補因子)を表す。
【0090】
本明細書で使用される場合、「線維症」という用語は、線維性結合組織が過剰に形成される病理学的過程を指す。線維症は、線維芽細胞の蓄積と、特定の組織における正常な沈着を上回るコラーゲン沈着を特徴とする。炎症や組織の損傷に反応して、近くにある線維芽細胞は傷の中に移動し、増殖し、大量のコラーゲン性細胞外マトリックスを産生する。損傷に反応して線維症が発生する場合、「瘢痕化(scarring)」という用語は同義語として使用できる。線維症は、例えば、肺、皮膚、肝臓、腎臓、心臓、眼、腱、軟骨、膵臓組織、子宮組織、神経組織、精巣、卵巣、副腎、動脈、静脈、結腸、小腸および大腸、胆道、腸を含む身体の多くの組織において起こり得る。
【0091】
本明細書で使用される場合、「肺高血圧症」または「PH」という用語は、心臓と肺との間の血圧の上昇によって特徴付けられる疾患を指し、肺動脈(肺動脈高血圧)、肺静脈または肺毛細血管における血圧の上昇を含み得る。肺高血圧症には、多くの症状、息切れ(呼吸困難)、疲労、脚、足、腹(例えば腹水)、首の腫れ(例えば、浮腫)、胸痛または胸部圧迫感、激しい脈または心臓の動悸、唇または皮膚の青みがかった色(チアノーゼ)、めまいまたは失神がある。PHはまた運動耐容能を低下させ、心不全につながる可能性がある。
【0092】
本明細書で使用される場合、「肺動脈高血圧症」または「PAH」という用語は、瘢痕化によって引き起こされることが多い小肺動脈の狭窄または閉塞、および肺動脈血圧の上昇を特徴とする肺高血圧症の形態を指す。PAHはWHOグループI PHとしても知られている。PAHは、肺動脈毛細血管楔入圧が正常で、安静時の肺動脈平均肺動脈圧が25mmHgを超えることに基づいて診断できる。PAHは、息切れ、めまい、失神、およびその他の症状を引き起こすことがあり、これらはすべて労作により悪化する。PAHは、運動耐容能の顕著な低下と心不全を伴う重篤な疾患であり得る。PAHの主な2つの型には特発性PAH(例えば、素因が同定されていないPAH)および遺伝性PAH(例えば、BMPR2、ALK1、SMAD9、カベオリン1、KCNK3、またはEIF2AK4の突然変異と関連するPAH)がある。家族性PAH症例の70%では、突然変異がBMPR2遺伝子に位置している。PAH発症のリスク因子には、PAHの家族歴、薬物使用(例えば、メタンフェタミンやコカインの使用)、感染(例えば、HIV感染または住血吸虫症)、肝硬変、先天性心異常、門脈圧亢進症、肺静脈閉塞性疾患、肺毛細血管腫症、または結合組織/自己免疫障害(例えば、強皮症または狼瘡)が含まれる。
【0093】
本明細書で使用される場合、「静脈性肺高血圧症」および「静脈性PH」という用語は、左心疾患に続発する肺高血圧症の形態を指す。静脈性PHはWHOグループII PHとしても知られている。静脈性PHは、左心室収縮機能障害(例えば、左心室不全)、左心室拡張機能障害、心臓弁膜症(例えば、僧帽弁疾患や大動脈弁疾患)、先天性心筋症、または先天性/後天性の肺静脈狭窄症と関連するものであるか、またはこれらに起因することがある。
【0094】
本明細書で使用される場合、「低酸素性肺高血圧症」および「低酸素性PH」という用語は、肺疾患または慢性低酸素症に起因する肺高血圧症の形態を指す。この形態のPHはWHOグループIII PHとしても知られている。低酸素性PHは、慢性閉塞性肺疾患(例えば、肺気腫)、間質性肺疾患、睡眠障害呼吸(例えば、睡眠時無呼吸)、肺疾患(例えば、肺線維症)、肺胞低換気障害、高地への慢性曝露、または発達異常に関連するものであるか、またはこれらに起因することがある。
【0095】
本明細書で使用される場合、「血栓塞栓性肺高血圧症」および「血栓塞栓性PH」という用語は、慢性動脈閉塞症(例えば血栓)に関連する肺高血圧の1つの型を指す。血栓塞栓性PHはWHOグループIV PHとしても知られている。血栓塞栓性PHは、慢性血栓塞栓性肺高血圧症または他の肺動脈閉塞(例えば、肺塞栓、血管肉腫、動脈炎、先天性肺動脈狭窄、または寄生虫感染)と関連するものであるか、またはこれらに起因することがある。
【0096】
本明細書で使用される場合、「その他の(miscellaneous)肺高血圧症」および「その他のPH」という用語は、不明なまたは多因子機構を有する肺高血圧の形態を指す。この形態のPHはWHOグループV PHとして分類される。その他のPHは、血液疾患(例えば、慢性溶血性貧血、鎌状赤血球症)、全身性疾患(例えば、サルコイドーシス、肺ランゲルハンス細胞組織球症、リンパ管平滑筋腫症、神経線維腫症、または血管炎)、代謝障害(たとえば、糖原病、ゴーシェ病、または甲状腺疾患)、肺腫瘍性血栓性微小血管症、線維性縦隔炎、慢性腎不全、または区域性肺高血圧症に関連するものである。
【0097】
本明細書で使用される場合、「赤血球レベル」という用語は、ヘマトクリット値、赤血球数、およびヘモグロビン測定値などの臨床的に観察可能な測定基準を指す。本明細書で使用される場合、「赤血球レベルを増加させる」および「赤血球形成が促進される」という用語は、ヘマトクリット、赤血球数、およびヘモグロビンの測定値などの臨床的に観察可能な測定基準が増加することを指し、そのような変化が起こるメカニズムに関しては中立であることを意図している。本明細書で使用される場合、「低赤血球レベル」という用語は、対象の年齢および性別に対して正常と見なされる値の範囲を下回る赤血球数、ヘマトクリット、およびヘモグロビンの測定値を指す。
【0098】
本明細書で使用される場合、「赤血球量(red blood cell mass)」という用語は、循環中の赤血球の総質量を指し、これは通常、貧血で減少する。
本明細書で使用される場合、「赤血球形成(red blood cell formation)」および「赤血球産生(red cell production)」という用語は、赤血球が骨髄で産生される赤血球形成のプロセスなどの赤血球の生成を指す。
【0099】
本明細書で使用される場合、「貧血」という用語は、血液中の酸素レベルの低下をもたらすヘモグロビンまたは赤血球の異常を指す。貧血は、赤血球および/またはヘモグロビンの産生、プロセシングまたは機能の異常に関連している可能性がある。貧血という用語は、正常な血液レベルと比較して、血液中の赤血球の数および/またはヘモグロビンのレベルの任意の減少を指す。
【0100】
本明細書で使用する場合、用語「血管合併症」は、血管障害または血管に対するいずれかの損傷、例えば、血管壁に対する損傷を指す。血管壁に対する損傷は、血管透過性または漏出の増加を招き得る。用語「血管透過性または漏出」は、小分子、タンパク質、および細胞を血管に流入させ、血管から流出させる血管壁の能力を指す。血管透過性または漏出の増加は、血管壁に並ぶ内皮細胞間の間隙の増大(例えば、間隙の大きさおよび/もしくは数の増大)ならびに/または血管壁の薄化によって起こり得る。
【0101】
本明細書で使用する場合、用語「ポリペプチド」は、単量体がアミノ酸残基であり、それらがアミド結合を介して相互に共有結合されている単一のポリマーを表す。ポリペプチドとは、天然型、組換え型、または合成生産されたいずれのアミノ酸配列も包含するものとする。
【0102】
本明細書で使用する場合、用語「ホモ二量体(homodimer)」は、2つの同一の高分子、例えば、タンパク質または核酸によって形成された分子構築物を指す。これら2つの同一の単量体は、共有結合または非共有結合によってホモ二量体を形成し得る。例えば、Fcドメインは、2つのFcドメイン単量体が同じ配列を含めば、2つのFcドメイン単量体のホモ二量体であり得る。別の例では、Fcドメイン単量体に融合された細胞外ActRIIA変異体を含む本明細書に記載のポリペプチドは、2つのFcドメイン単量体の相互作用を介してホモ二量体を形成することができ、これらのFcドメイン単量体はホモ二量体においてFcドメインを形成する。
【0103】
本明細書で使用する場合、用語「ヘテロ二量体(heterodimer)」は、2つの異なる高分子、例えば、タンパク質または核酸によって形成された分子構築物を指す。これら2つの単量体は、共有結合または非共有結合によってヘテロ二量体を形成し得る。例えば、Fcドメイン単量体に融合された細胞外ActRIIA変異体を含む本明細書に記載のポリペプチドは、異なるActRIIA変異体にそれぞれ融合された2つのFcドメイン単量体の相互作用を介してヘテロ二量体を形成することができ、これらのFcドメイン単量体はヘテロ二量体においてFcドメインを形成する。
【0104】
本明細書で使用する場合、用語「宿主細胞」は、必要な細胞成分、例えば、対応する核酸からタンパク質を発現させるために必要とされる細胞小器官を含む媒体を指す。核酸は一般に、当技術分野で公知の従来技術(形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法、ダイレクトマイクロインジェクションなど)によって宿主細胞に導入することができる核酸ベクター内に含まれる。宿主細胞は、原核細胞、例えば、細菌細胞、または真核細胞、例えば、哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞またはHEK293細胞)であり得る。
【0105】
本明細書中で使用される場合、用語「治療有効量」とは、本発明のポリペプチド、核酸、もしくはベクター、または本発明のポリペプチド、核酸、もしくはベクターを含有する医薬組成物の量であって、貧血、線維症、またはPH(例えば、PAH、静脈性PH、低酸素性PH、血栓塞栓性PH、その他のPH)などの疾患または病態を有する患者を治療する上で、所望の治療効果を達成するのに有効である量を指す。特に、治療有効量のポリペプチド、核酸、またはベクターは有害な副作用を回避する。
【0106】
本明細書で使用する場合、用語「医薬組成物」は、有効成分ならびにその有効成分を投与方法に適したものとすることができる賦形剤および希釈剤を含む医薬または医薬製剤を指す。本発明の医薬組成物は、ポリペプチド、核酸、またはベクターと適合する薬学上許容される成分を含む。医薬組成物は経口投与用の錠剤もしくはカプセル剤形であっても、または静脈投与または皮下投与用の水性剤形であってもよい。
【0107】
本明細書で使用する場合、用語「薬学上許容される担体または賦形剤」は、医薬組成物中の賦形剤または希釈剤を指す。薬学上許容される担体は、その製剤の他の成分と適合し、かつ、レシピエントに有害であってはならない。本発明では、薬学上許容される担体または賦形剤は、細胞外ActRIIA変異体を含むポリペプチド、そのポリペプチドをコードする核酸分子、またはそのような核酸分子を含有するベクターに十分な薬学的安定性を提供しなければならない。担体または賦形剤の性質は、投与様式によって異なる。例えば、静脈内投与には、水溶液担体が一般に使用され、経口投与には、固体担体が好ましい。
【0108】
本明細書中で使用される場合、用語「治療するおよび/または予防する」とは、本発明の方法および組成物を用いての、疾患または病態、例えば、貧血、線維症、またはPH(例えば、PAH、静脈PH、低酸素PH、血栓塞栓性PH、またはその他のPH)の治療および/または予防を指す。一般に、貧血、繊維症またはPH(例えば、PAH、静脈性PH、低酸素性PH、血栓塞栓性PH、もしくはその他のPH)の治療は、対象がその貧血、繊維症またはPH(例えば、PAH、静脈性PH、低酸素性PH、血栓塞栓性PH、またはその他のPH)を発症し、かつ/または貧血、繊維症またはPH(例えば、PAH、静脈性PH、低酸素性PH、血栓塞栓性PH、またはその他のPH)を有すると既に診断された後に行われる。貧血、繊維症またはPH(例えば、PAH、静脈性PH、低酸素性PH、血栓塞栓性PH、またはその他のPH)の予防は、対象にその貧血、繊維症またはPH(例えば、PAH、静脈性PH、低酸素性PH、血栓塞栓性PH、またはその他のPH)を発症するリスクがある場合に講じられるステップまたは手順を指す。対象は、貧血、繊維症またはPH(例えば、PAH、静脈性PH、低酸素性PH、血栓塞栓性PH、またはその他のPH)を発症するための適応症またはリスク因子であると医師により判断される徴候または軽度の症状を示すか、貧血、繊維症またはPH(例えば、PAH、静脈性PH、低酸素性PH、血栓塞栓性PH、またはその他のPH)の発症に関連する他の疾患または病態を有するか、貧血または線維症を引き起こす可能性のある治療を受けているか(例えば、手術、化学療法、または放射線)、または貧血、繊維症またはPH(例えば、PAH、静脈性PH、低酸素性PH、血栓塞栓性PH、またはその他のPH)を発症する家族歴あるいは遺伝的素因を有するが、まだそのような疾患または病態を発症していない。
【0109】
本明細書で使用する場合、用語「対象」は、哺乳動物、例えば、好ましくは、ヒトを指す。哺乳動物としては、限定されるものではないが、ヒトおよび飼育動物および農用動物、例えば、サル(例えば、カニクイザル)、マウス、イヌ、ネコ、ウマ、およびウシなどが含まれる。
【発明の効果】
【0110】
本発明によれば、アクチビンIIA型受容体変異体およびそれらの使用方法が提供できた。
【図面の簡単な説明】
【0111】
図1-1】細胞外ActRIIAおよびActRIIBの野生型配列ならびにActRIIA変異体のアミノ酸置換を示す配列アラインメントである。
図1-2】細胞外ActRIIAおよびActRIIBの野生型配列ならびにActRIIA変異体のアミノ酸置換を示す配列アラインメントである。
図2】老齢mdxマウスをActRIIA/B-Fc(A/B、Fcドメインに融合した配列番号69)で処理すると線維症の発症が減弱したことを示す一連のグラフである。
図3】ActRIIA/B-Fc(Fcドメインに融合された配列番号69)での非ヒト霊長類の処理が赤血球量を増加させたことを示すグラフである。Hct-ヘマトクリット、Hgb-ヘモグロビン、RBC-赤血球数。
【発明を実施するための形態】
【0112】
本発明は、細胞外アクチビンIIA型受容体(ActRIIA)変異体を含むポリペプチドに関する。いくつかの実施形態では、本発明のポリペプチドは、ある部分(例えば、Fcドメイン単量体、野生型Fcドメイン、アミノ酸置換(例えば、二量体形成を低減する1以上の置換)を有するFcドメイン、アルブミン結合ペプチド、フィブロネクチンドメイン、またはヒト血清アルブミン)に融合された細胞外ActRIIA変異体を含む。Fcドメイン単量体に融合された細胞外ActRIIA変異体を含むポリペプチドはまた、2つのFcドメイン単量体間の相互作用を介して二量体(例えば、ホモ二量体またはヘテロ二量体)を形成し得る。本明細書に記載のActRIIA変異体は、アクチビンおよびミオスタチンと比較して、骨形成因子9(BMP9)に対して結合親和性が弱いか、または結合親和性を全く持たない。本発明はまた、線維症を治療または予防する方法、赤血球レベル(例えば、赤血球数、ヘモグロビンレベル、またはヘマトクリット、例えば、赤血球量を増加させることによって)または赤血球産生を増加させることによって低赤血球レベル(貧血や失血など)を治療または予防する方法、肺高血圧症(PH)(例えば、PAH、静脈性PH、低酸素性PH、血栓塞栓性PH、またはその他のPH)を治療または予防する方法、あるいは対象におけるミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9シグナル伝達に作用する方法であって、本明細書に記載された細胞外ActRIIA変異体を含むポリペプチドを対象に投与することによる方法を含む。
【0113】
I.細胞外アクチビンIIA型受容体(ActRIIA)変異体
アクチビンII型受容体は、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β:transforming growth factor β)スーパーファミリーのリガンドに対するシグナルを調節する1回膜貫通ドメイン受容体である。TGF-βスーパーファミリーのリガンドは、宿主において筋肉成長、血管成長、細胞分化、恒常性、および骨形成などの多くの生理学的プロセスに関与する。TGF-βスーパーファミリーのリガンドの例としては、例えば、アクチビン、インヒビン、成長分化因子(GDF:growth differentiation factor)(例えば、GDF8、ミオスタチンとしても知られる、およびGDF11)、ならびに骨形成因子(BMP)(例えば、BMP9)が挙げられる。ミオスタチンとアクチビンは線維症を調節することが示されている。例えば、ミオスタチンを欠くマウスは筋線維症の減少を示し、ミオスタチンでコーティングされたビーズを注射すると、マウスに筋線維症を誘発する。拡散性アクチビンAの産生を誘導するアクチビンサブユニットを過剰発現するマウスも線維症を示す。アクチビンAの上昇は、臨床的および実験的な肺高血圧症でも観察されている。別のアクチビンII型受容体リガンドであるGDF11は、β-サラセミアのマウスモデルにおいて過剰発現され、無効な赤血球産生と関連することが示されている。したがって、アクチビンII型受容体(例えば、ミオスタチン、アクチビン、および/またはGDF11によって媒介されるシグナル伝達)を介したシグナル伝達を低下または阻害する方法は、線維症、赤血球レベルの低下を伴う疾患(例えば、貧血)、および肺高血圧症(例えば、PAH、静脈性PH、低酸素性PH、血栓塞栓性PH、その他のPH)の治療に用いることができる。
【0114】
2つのタイプのアクチビンII型受容体:ActRIIAおよびActRIIBが存在する。研究によれば、BMP9はActRIIAの約300倍の高い結合親和性でActRIIBと結合することが示されている(例えば、Townson他のJ.Biol.Chem.287:27313,2012を参照)。ActRIIAは、ActRIIBに比べて長い半減期を有することが知られている。本発明は、ActRIIAの有益な生理学的特性および薬物動態特性も維持しつつ、ActRIIBによって与えられる生理学的特性を付与するという目的でActRIIAにActRIIBのアミノ酸残基を導入することによって構築される細胞外ActRIIA変異体を記載する。最適なペプチドは、例えば、より長い血清半減期およびBMP9に対する低い結合親和性を維持しながら、線維症を減少させ、PH(例えば、PAH、静脈性PH、低酸素性PH、血栓塞栓性PH、その他のPH)を治療し、および/または赤血球レベルを増加させる(例えば、赤血球産生を増加させる)。好ましいActRIIA変異体はまた、野生型ActRIIAに比べてアクチビンおよび/またはミオスタチンに対する結合の改善を示し、これにより、それらはリガンド結合に関して内因性のアクチビン受容体と競合可能となり、内因性のアクチビン受容体シグナル伝達を低減または阻害することができる。これらの変異体は、線維症、PH(例えば、PAH、静脈性PH、低酸素性PH、血栓塞栓性PH、またはその他のPH)および貧血のようなアクチビン受容体シグナル伝達が上昇する障害を治療するために使用することができ、線維症の低減(例えば、繊維症の低減または繊維症の進行の遅延または停止、既存の繊維症の改善、または既存の繊維症の回復)、赤血球レベルの増加(例えば、ヘモグロビンレベル、ヘマトクリット、または赤血球数の増加、例えば、赤血球産生および/または赤血球量の増加)、あるいはPH(例えば、PAH、静脈性PH、低酸素性PH、血栓塞栓性PH、またはその他のPH)の症状または進行の低下をもたらす。いくつかの実施形態において、BMP9に対する変異体の結合親和性を低減または除去するために細胞外ActRIIA変異体にアミノ酸置換を導入することができる。ヒトActRIIAおよびActRIIBの細胞外部分の野生型アミノ酸配列を下記に示す。
【0115】
ヒトActRIIA細胞外部分(配列番号73):
【0116】
【化3】
【0117】
ヒトActRIIB細胞外部分(配列番号74):
【0118】
【化4】
【0119】
本明細書に記載のポリペプチドは、配列番号73の配列を有する野生型細胞外ActRIIAまたは配列番号76~96の配列のうちいずれか1つを有する細胞外ActRIIAに対して少なくとも1つのアミノ酸置換を有する細胞外ActRIIA変異体を含む。27箇所の異なる位置の潜在的アミノ酸置換が細胞外ActRIIA変異体に導入され得る(表1)。いくつかの実施形態において、細胞外ActRIIA変異体は、野生型細胞外ActRIIA(配列番号73)の配列と少なくとも85%の(例えば、少なくとも85%、87%、90%、92%、95%、97%の、またはそれを超える)アミノ酸配列同一性を有し得る。細胞外ActRIIA変異体は、野生型細胞外ActRIIA(配列番号73)の配列に対して1以上(例えば、1~27、1~25、1~23、1~21、1~19、1~17、1~15、1~13、1~11、1~9、1~7、1~5、1~3、または1~2;例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、または27)のアミノ酸置換を有し得る。いくつかの実施形態において、細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1の配列を有する細胞外ActRIIA変異体)は、表1に挙げられているような27箇所の位置の全てにアミノ酸置換を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、細胞外ActRIIA変異体は、表1に挙げられているような27箇所の位置のうち複数の位置、例えば、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、または26箇所にアミノ酸置換を含んでいてもよい。
【0120】
アミノ酸置換は、本発明のActRIIA変異体の活性および/または結合親和性を低下または向上させ得る。ポリペプチド機能を維持するためには、表1および2に示される配列(配列番号1~72(例えば、配列番号6~72))の位置X17のリシン(K)が保持されることが重要である。その位置における置換は、活性の消失をもたらし得る。例えば、
GAILGRSETQECLFYNANWELERTNQTGVERCEGEKDKRLHCYATWRNISGSIEIVAKGCWLDDFNCYDRTDCVETEENPQVYFCCCEGNMCNEKFSYFPEMEVTQPTS(配列番号150)の配列を有するActRIIA変異体はin vivoにおいて活性が低減され、X17におけるリシン(K)のアラニン(A)での置換が許容されないことを示す。よって、表1および2の変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)を含む本発明のActRIIA変異体)は、位置X17にアミノ酸Kを保持する。
【0121】
本発明のActRIIA変異体は好ましくは、BMP9に対する結合が低減されているか、弱いか、または実質的に無い。位置X23、X24、X25、およびX26にアミノ酸配列TEENを含むActRIIA変異体ならびに位置X24にアミノ酸Kを維持し、かつ、位置X23、X24、X25、およびX26にアミノ酸配列TKENを有する変異体では、BMP9結合が低減されている(例えば、野生型のActRIIAと比較して低減されている)。配列TEENおよびTKENは、本発明のActRIIA変異体(例えば、表1および2の変異体、例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72))では、BMP9結合の低減をもたらすために互換的に使用可能である。
【0122】
本発明のActRIIA変異体は、C末端伸長部(例えば、C末端における付加的アミノ酸)をさらに含み得る。C末端伸長部には、表1および2(例えば、配列番号1~70(例えば、配列番号6~70))に示される変異体のいずれかのC末端に1~6個の付加的アミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6またはそれ以上の付加的アミノ酸)を付加することができる。本発明のActRIIA変異体に含まれ得る1つの潜在的なC末端伸長部は、アミノ酸配列NPである。例えば、C末端伸長部NPを含む配列は、配列番号71(例えば、NPのC末端伸長部を有する配列番号69)である。本発明のActRIIA変異体に含まれ得るもう1つの例としてのC末端伸長部はアミノ酸配列NPVTPK(配列番号155)である。例えば、C末端伸長部NPVTPKを含む配列は、配列番号72(例えば、NPVTPKのC末端伸長部を有する配列番号69)である。
【0123】
【表1】
【0124】
配列番号2の配列を有する細胞外ActRIIA変異体のいくつかの実施形態において、XはEであり、XはRであり、X11はDであり、X12はKであり、X13はRであり、X16はKまたはRであり、X17はKであり、X19はWであり、X20はLであり、X21はDであり、かつ、X22はIまたはFである。配列番号1または2の配列を有する細胞外ActRIIA変異体のいくつかの実施形態において、X17はKである。配列番号1~3の配列を有する細胞外ActRIIA変異体のいくつかの実施形態において、X17はKであり、X23はTであり、X24はEであり、X25はEであり、かつ、X26はNである。配列番号1~5のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体のいくつかの実施形態において、X17はKであり、X23はTであり、X24はKであり、X25はEであり、かつ、X26はNである。
【0125】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポリペプチドは、配列番号6~72(表2)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体を含む。
【0126】
【表2-1】
【0127】
【表2-2】
【0128】
【表2-3】
【0129】
【表2-4】
【0130】
いくつかの実施形態において、細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つ)を含む本発明のポリペプチドは、位置X17にアミノ酸Kを有する。位置X17のアミノ酸を変更すると、活性の低減がもたらされる。例えば、GAILGRSETQECLFYNANWELERTNQTGVERCEGEKDKRLHCYATWRNISGSIEIVAKGCWLDDFNCYDRTDCVETEENPQVYFCCCEGNMCNEKFSYFPEMEVTQPTS(配列番号150)の配列を有するActRIIA変異体は、in vivoにおいて活性が低減され、X17におけるKのAでの置換が許容されないことを示す。
【0131】
いくつかの実施形態において、位置X23、X24、X25、およびX26に配列TEENを有する細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つ)を含む本発明のポリペプチドは、位置X24にアミノ酸Eのアミノ酸Kでの置換を有し得る。いくつかの実施形態において、位置X23、X24、X25、およびX26に配列TKENを有する細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つ)を含む本発明のポリペプチドは、位置X24にアミノ酸Kのアミノ酸Eでの置換を有し得る。位置X23、X24、X25、およびX26に配列TEENまたはTKENを有するポリペプチドは、BMP9に対する結合が低減されているか、または弱い(例えば、野生型ActRIIAのBMP9結合と比較して、BMP9への結合が低減されている)。
【0132】
いくつかの実施形態において、細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~70(例えば、配列番号6~70)のうちいずれか1つ)を含む本発明のポリペプチドは、C末端伸長部(例えば、C末端における付加的アミノ酸)をさらに含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、C末端伸長部は、アミノ酸配列NPである。例えば、C末端伸長NPを含む配列は、配列番号71(例えば、NPのC末端伸長を有する配列番号69)である。いくつかの実施形態において、C末端伸長部は、アミノ酸配列NPVTPK(配列番号155)である。例えば、C末端伸長部NPVTPKを含む配列は、配列番号72(例えば、NPVTPKのC末端伸長部を有する配列番号69)である。C末端伸長部には、C末端に1~6個の付加的アミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6またはそれ以上の付加的アミノ酸)を付加することができる。
【0133】
いくつかの実施形態において、細胞外ActRIIA変異体を含む本発明のポリペプチドは、ある部分(例えば、Fcドメイン単量体、野生型Fcドメイン、アミノ酸置換(例えば、二量体形成を低減する1以上の置換)を有するFcドメイン、アルブミン結合ペプチド、フィブロネクチンドメイン、またはヒト血清アルブミン)をさらに含んでいてもよく、この部分はリンカーをまたは他の共有結合を介して細胞外ActRIIA変異体のN末端またはC末端(例えば、C末端)に融合させることができる。Fcドメイン単量体に融合された細胞外ActRIIA変異体を含むポリペプチドは、2つのFcドメイン単量体間の相互作用を介して二量体(例えば、ホモ二量体またはヘテロ二量体)を形成することができ、これらのFcドメイン単量体は合わさって二量体においてFcドメインを形成する。
【0134】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の細胞外ActRIIA変異体は、以下の表3に示される配列番号76~96のうちいずれの配列も持たない。
【0135】
【表3-1】
【0136】
【表3-2】
【0137】
さらに、いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポリペプチドは、ヒトにおいて少なくとも7日の血清半減期を有する。ポリペプチドは、200pM以上のKで骨形成因子9(BMP9)と結合し得る。このポリペプチドは、10pM以上のKでアクチビンAと結合し得る。いくつかの実施形態において、このポリペプチドは、BMP9またはアクチビンAと結合しない。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、アクチビンおよび/またはミオスタチンに結合し、BMP9への結合の減少(例えば、弱い)を示す(例えば、野生型ActRIIAのBMP9結合と比較して、減少したBMP9結合)。いくつかの実施形態において、BMP9に対する結合が低いまたは弱いポリペプチドは、位置X23、X24、X25、およびX26に配列TEENまたはTKENを有する。
【0138】
加えて、いくつかの実施形態では、このポリペプチドは、約200pM以上のK(例えば、約200、300、400、500、600、700、800、または900pM以上のK、例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、または50nM以上のK、例えば、約200pM~約50nMの間のK)でヒトBMP9と結合し得る。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、ヒトBMP9と実質的に結合しない。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、約800pM以下のK(例えば、約800、700、600、500、400、300、200、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1pM以下のK、例えば、約800pM~約200pMの間のK)でヒトアクチビンAと結合し得る。いくつかの実施形態において、このポリペプチドは、800pM以下のK(例えば、約800、700、600、500、400、300、200、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1pM以下のK、例えば、約800pM~約200pMの間のK)でヒトアクチビンBと結合し得る。このポリペプチドは、およそ5pM以上のK(例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、または200pM以上のK)で成長および分化因子11(GDF-11)とも結合し得る。
【0139】
II.Fcドメイン
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポリペプチドは、ポリペプチドの血清半減期を延長するために、免疫グロブリンのFcドメイン単量体またはFcドメインのフラグメントに融合された細胞外ActRIIA変異体を含み得る。Fcドメイン単量体に融合された細胞外ActRIIA変異体を含むポリペプチドは、2つのFcドメイン単量体間の相互作用を介して二量体(例えば、ホモ二量体またはヘテロ二量体)を形成することができ、これらのFcドメイン単量体は二量体においてFcドメインを形成する。従来から当技術分野で知られているように、Fcドメインは、免疫グロブリンのC末端に見られるタンパク質構造である。Fcドメインは、C3抗体定常ドメイン間の相互作用によって二量体を形成する2つのFcドメイン単量体を含む。野生型Fcドメインは、Fc受容体、例えば、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa、FcγRIIIb、FcγRIVに結合する最小構造を形成する。いくつかの実施形態において、Fcドメインは、「デッド(dead)」Fcドメインに典型的に、エフェクター機能を欠くように変異させることができる。例えば、Fcドメインは、FcドメインとFcγ受容体の間の相互作用を最小にすることが知られている特定のアミノ酸置換を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、FcドメインはIgG1抗体に由来し、アミノ酸置換L234A、L235A、およびG237Aを含む。いくつかの実施形態において、FcドメインはIgG1抗体に由来し、アミノ酸置換D265A、K322A、およびN434Aを含む。上記のアミノ酸位置は、Kabat(Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))に従って定義される。アミノ酸残基のKabatのナンバリングは、所与の抗体に関して、抗体配列の相同性領域を「標準」Kabatナンバリング配列とアラインすることによって決定することができる。さらに、いくつかの実施形態において、Fcドメインは、いずれの免疫系関連応答も誘導しない。例えば、Fcドメイン単量体に融合された細胞外ActRIIA変異体を含むポリペプチドの二量体におけるFcドメインは、FcドメインとFcγ受容体の間の相互作用または結合を低減するように改変されてもよい。細胞外ActRIIA変異体に融合させることができるFcドメイン単量体の配列を下記に示す(配列番号97):
【0140】
【化5】
【0141】
いくつかの実施形態において、FcドメインはIgG1抗体に由来し、配列番号97の配列に対してアミノ酸置換L12A、L13A、およびG15Aを含む。いくつかの実施形態において、FcドメインはIgG1抗体に由来し、配列番号97の配列に対してアミノ酸置換D43A、K100A、およびN212Aを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)は、従来の遺伝学的または化学的手段、例えば、化学共役によってFcドメイン単量体(例えば、配列番号97)のN末端またはC末端に融合させることができる。所望であれば、細胞外ActRIIA変異体とFcドメイン単量体の間にリンカー(例えば、スペーサー)を挿入することができる。Fcドメイン単量体は、細胞外ActRIIA変異体のN末端またはC末端(例えば、C末端)に融合させることができる。
【0142】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポリペプチドは、Fcドメインに融合された細胞外ActRIIA変異体を含み得る。いくつかの実施形態において、Fcドメインは、Fcドメインの二量体形成を低減または阻害する1つ以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、Fcドメインは、ヒンジドメインを含む。Fcドメインは、免疫グロブリン抗体アイソタイプIgG、IgE、IgM、IgA、またはIgDのものであり得る。加えて、Fcドメインは、IgGサブタイプ(例えば、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、またはIgG4)であり得る。Fcドメインはまた、非天然Fcドメイン、例えば、組換えFcドメインであってもよい。
【0143】
二量体形成が低減されたFcドメインを作出する方法は当技術分野で公知である。いくつかの実施形態において、立体衝突にて二量体形成を障害するように、C3-C3二量体界面に大きな側鎖を有する1つ以上のアミノ酸(例えば、チロシンまたはトリプトファン)を導入してもよい。他の実施形態において、有利な相互作用を除くために、C3-C3二量体界面に小さい側鎖を有する1つ以上のアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、またはトレオニン)を導入してもよい。C3ドメインに大きなまたは小さな側鎖を有するアミノ酸を導入する方法は、例えば、Ying他(J Biol Chem.287:19399-19408,2012)、米国特許出願公開第2006/0074225号明細書、米国特許第8,216,805号明細書および米国特許第5,731,168号明細書、Ridgway他(Protein Eng.9:617-612,1996)、Atwell他(J Mol Biol.270:26-35,1997)、およびMerchant他(Nat Biotechnol.16:677-681,1998)に記載されており、これらは全て、それらの全内容を本明細書の一部として援用する。
【0144】
さらに他の実施形態において、2つのFcドメイン間でC3-C3界面を構成するC3ドメインの1以上のアミノ酸残基を、正電荷を有するアミノ酸残基(例えば、リシン、アルギニン、もしくはヒスチジン)または負電荷を有するアミノ酸残基(例えば、アスパラギン酸もしくはグルタミン酸)で置換し、その相互作用が、導入された特定の電荷のアミノ酸によって静電気的に不利となるようにする。二量体形成に不利となるように、または二量体形成を妨げるようにC3ドメインに電荷アミノ酸を導入する方法は、例えば、Ying他(J Biol Chem.287:19399-19408,2012)、米国特許出願公開第2006/0074225号明細書、米国特許出願公開第2012/0244578号明細書、および米国特許出願公開第2014/0024111号明細書に記載されており、これらは全て、それらの全内容を本明細書の一部として援用する。
【0145】
本発明のいくつかの実施形態において、Fcドメインは、ヒトIgG1の配列に対し以下のアミノ酸置換:T366W、T366Y、T394W、F405W、Y349T、Y349E、Y349V、L351T、L351H、L351N、L352K、P353S、S354D、D356K、D356R、D356S、E357K、E357R、E357Q、S364A、T366E、L368T、L368Y、L368E、K370E、K370D、K370Q、K392E、K392D、T394N、P395N、P396T、V397T、V397Q、L398T、D399K、D399R、D399N、F405T、F405H、F405R、Y407T、Y407H、Y407I、K409E、K409D、K409T、およびK409Iの1つ以上を含む。特定の一実施形態において、Fcドメインは、ヒトIgG1の配列に対してアミノ酸置換T366Wを含む。野生型Fcドメインの配列を配列番号151に示す。
【0146】
III.アルブミン結合ペプチド
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリペプチドは、血清タンパク質結合ペプチドに融合された細胞外ActRIIA変異体を含み得る。血清タンパク質ペプチドとの結合は、タンパク質医薬の薬物動態を改善することができる。
【0147】
一例として、本明細書に記載の方法および組成物において使用可能なアルブミン結合ペプチドは一般に当技術分野で公知である。一実施形態において、アルブミン結合ペプチドは、配列DICLPRWGCLW(配列番号152)を含む。
【0148】
本発明では、細胞外ActRIIA変異体の血清半減期を延長するために、本明細書に記載の細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)のN末端またはC末端(例えば、C末端)にアルブミン結合ペプチドを連結することができる。いくつかの実施形態において、アルブミン結合ペプチドは、細胞外ActRIIA変異体のN末端またはC末端に直接またはリンカーを介して連結される。
【0149】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)は、従来の遺伝学的または化学的手段、例えば、化学共役によってアルブミン結合ペプチド(例えば、配列番号152)のN末端またはC末端に融合させることができる。所望により、細胞外ActRIIA変異体とアルブミン結合ペプチドの間にリンカー(例えば、スペーサー)を挿入することができる。理論に縛られるものではないが、本明細書に記載の細胞外ActRIIA変異体にアルブミン結合ペプチドが含まれると、その血清アルブミンへの結合を介して治療タンパク質の保持の延長がもたらされ得ると思われる。
【0150】
IV.フィブロネクチンドメイン
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポリペプチドは、フィブロネクチンドメインに融合された細胞外ActRIIA変異体を含み得る。フィブロネクチンドメインとの結合は、タンパク質医薬の薬物動態を改善することができる。
【0151】
フィブロネクチンドメインは、例えば、インテグリンなどの膜貫通受容体タンパク質、ならびにコラーゲンおよびフィブリンなどの細胞外マトリックス成分と結合する細胞外マトリックスの高分子量糖タンパク質、またはそのフラグメントである。本発明のいくつかの実施形態において、細胞外ActRIIA変異体の血清半減期を延長するために、本明細書に記載の細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)のN末端またはC末端(例えば、C末端)にフィブロネクチンドメインが連結される。フィブロネクチンドメインは、細胞外ActRIIA変異体のN末端またはC末端に直接またはリンカーを介して連結することができる。
【0152】
一例として、本明細書に記載の方法および組成物において使用可能なフィブロネクチンドメインは一般に当技術分野で公知である。一実施形態において、フィブロネクチンドメインは、UniProt ID NO:P02751の配列のアミノ酸610~702を有するフィブロネクチンIII型ドメイン(配列番号153)である。別の実施形態において、フィブロネクチンドメインは、アドネクチンタンパク質である。
【0153】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)は、従来の遺伝学的または化学的手段、例えば、化学共役によってフィブロネクチンドメイン(例えば、配列番号153)のN末端またはC末端に融合させることができる。所望により、細胞外ActRIIA変異体とフィブロネクチンドメインの間にリンカー(例えば、スペーサー)を挿入することができる。理論に縛られるものではないが、本明細書に記載の細胞外ActRIIA変異体にフィブロネクチンドメインが含まれると、そのインテグリンならびにコラーゲンおよびフィブリンなどの細胞外マトリックス成分への結合を介して治療タンパク質の保持の延長がもたらされ得ると思われる。
【0154】
V.血清アルブミン
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポリペプチドは、血清アルブミンに融合された細胞外ActRIIA変異体を含み得る。血清アルブミンとの結合は、タンパク質医薬の薬物動態を改善することができる。
【0155】
血清アルブミンは、哺乳動物において最も豊富な血液タンパク質である球状のタンパク質である。血清アルブミンは、肝臓で生産され、血清タンパク質の約半分を占める。血清アルブミンは血液中では単量体で可溶型である。血清アルブミンの最も重要ないくつかの機能として、体内におけるホルモン、脂肪酸、およびその他のタンパク質の輸送、pHの緩衝、ならびに血管と身体組織の間の体液の適正な分布に必要とされる浸透圧の維持が挙げられる。好ましい実施形態において、血清アルブミンは、ヒト血清アルブミンである。本発明のいくつかの実施形態において、細胞外ActRIIA変異体の血清半減期を延長するために、本明細書に記載の細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)のN末端またはC末端(例えば、C末端)にヒト血清アルブミンが連結される。ヒト血清アルブミンは、細胞外ActRIIA変異体のN末端またはC末端に直接またはリンカーを介して連結することができる。
【0156】
一例として、本明細書に記載の方法および組成物において使用可能な血清アルブミンは一般に当技術分野で公知である。一実施形態において、血清アルブミンは、UniProt ID NO:P02768(配列番号154)の配列を含む。
【0157】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)は、従来の遺伝学的または化学的手段、例えば、化学共役によってヒト血清アルブミン(例えば、配列番号154)のN末端またはC末端に融合させることができる。所望により、細胞外ActRIIA変異体とヒト血清アルブミンの間にリンカー(例えば、スペーサー)を挿入することができる。理論に縛られるものではないが、本明細書に記載の細胞外ActRIIA変異体にヒト血清アルブミンが含まれると、治療タンパク質の保持の延長がもたらされ得ると思われる。
【0158】
VI.リンカー
本明細書に記載のポリペプチドは、リンカーを介してある部分に融合された細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)を含み得る。いくつかの実施形態において、その部分は、ポリペプチドの安定性を高める。その部分の例としては、Fcドメイン単量体、野生型Fcドメイン、アミノ酸置換(例えば、二量体形成を低減する1以上の置換)を有するFcドメイン、アルブミン結合ペプチド、フィブロネクチンドメイン、またはヒト血清アルブミンが含まれる。本発明では、ある部分(例えば、Fcドメイン単量体(例えば、配列番号97の配列)、野生型Fcドメイン(例えば、配列番号151)、アミノ酸置換(例えば、二量体形成を低減する1以上の置換)を有するFcドメイン、アルブミン結合ペプチド(例えば、配列番号152)、フィブロネクチンドメイン(例えば、配列番号153)、またはヒト血清アルブミン(例えば、配列番号154))と細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)との間のリンカーは、1~200個のアミノ酸を含むアミノ酸スペーサーであり得る。好適なペプチドスペーサーは当技術分野で公知であり、例えば、グリシン、アラニン、およびセリンなどのフレキシブルなアミノ酸残基を含むペプチドリンカーを含む。いくつかの実施形態において、スペーサーは、GA、GS、GG、GGA、GGS、GGG、GGGA(配列番号98)、GGGS(配列番号99)、GGGG(配列番号100)、GGGGA(配列番号101)、GGGGS(配列番号102)、GGGGG(配列番号103)、GGAG(配列番号104)、GGSG(配列番号105)、AGGG(配列番号106)またはSGGG(配列番号107)のモチーフ、例えば、多重または反復モチーフを含み得る。いくつかの実施形態では、スペーサーは、GAまたはGS、例えば、GA、GS、GAGA(配列番号108)、GSGS(配列番号109)、GAGAGA(配列番号110)、GSGSGS(配列番号111)、GAGAGAGA(配列番号112)、GSGSGSGS(配列番号113)、GAGAGAGAGA(配列番号114)、GSGSGSGSGS(配列番号115)、GAGAGAGAGAGA(配列番号116)、およびGSGSGSGSGSGS(配列番号117)のモチーフを含む2~12個のアミノ酸を含み得る。いくつかの実施形態では、スペーサーは、GGAまたはGGS、例えば、GGA、GGS、GGAGGA(配列番号118)、GGSGGS(配列番号119)、GGAGGAGGA(配列番号120)、GGSGGSGGS(配列番号121)、GGAGGAGGAGGA(配列番号122)、およびGGSGGSGGSGGS(配列番号123)のモチーフを含む3~12個のアミノ酸を含み得る。さらにいくつかの実施形態では、スペーサーは、GGAG(配列番号104)、GGSG(配列番号105)、例えば、GGAG(配列番号104)、GGSG(配列番号105)、GGAGGGAG(配列番号124)、GGSGGGSG(配列番号125)、GGAGGGAGGGAG(配列番号126)、およびGGSGGGSGGGSG(配列番号127)のモチーフを含む4~12個のアミノ酸を含み得る。いくつかの実施形態において、スペーサーは、GGGGA(配列番号101)またはGGGGS(配列番号102)、例えば、GGGGAGGGGAGGGGA(配列番号128)およびGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号129)のモチーフを含み得る。本発明のいくつかの実施形態において、ある部分(例えば、Fcドメイン単量体、野生型Fcドメイン、アミノ酸置換(例えば、二量体形成を低減する1以上の置換)を有するFcドメイン、アルブミン結合ペプチド、フィブロネクチンドメイン、または血清アルブミン)と細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)との間のアミノ酸スペーサーは、GGG、GGGA(配列番号98)、GGGG(配列番号100)、GGGAG(配列番号130)、GGGAGG(配列番号131)、またはGGGAGGG(配列番号132)であり得る。
【0159】
いくつかの実施形態において、スペーサーはまた、グリシン、アラニン、およびセリン以外のアミノ酸、例えば、AAAL(配列番号133)、AAAK(配列番号134)、AAAR(配列番号135)、EGKSSGSGSESKST(配列番号136)、GSAGSAAGSGEF(配列番号137)、AEAAAKEAAAKA(配列番号138)、KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号139)、GENLYFQSGG(配列番号140)、SACYCELS(配列番号141)、RSIAT(配列番号142)、RPACKIPNDLKQKVMNH(配列番号143)、GGSAGGSGSGSSGGSSGASGTGTAGGTGSGSGTGSG(配列番号144)、AAANSSIDLISVPVDSR(配列番号145)、またはGGSGGGSEGGGSEGGGSEGGGSEGGGSEGGGSGGGS(配列番号146)も含み得る。いくつかの実施形態において、スペーサーは、EAAAK(配列番号147)のモチーフ、例えば、多重または反復モチーフを含み得る。いくつかの実施形態において、スペーサーは、(XP)(ここで、Xは、任意のアミノ酸(例えば、A、K、またはE)であってもよく、nは1~5である)、およびPAPAP(配列番号148)などのプロリンリッチ配列のモチーフ、例えば、多重または反復モチーフを含み得る。
【0160】
使用するペプチドスペーサーおよびアミノ酸の長さは、関与する2つのタンパク質および最終的なタンパク質融合ポリペプチドに求められるフレキシビリティの程度によって調節することができる。スペーサーの長さは、適正なタンパク質折り畳みを確保し、凝集の形成を避けるように調節することができる。
【0161】
VII.ベクター、宿主細胞、およびタンパク質生産
本発明のポリペプチドは、宿主細胞から生産することができる。宿主細胞とは、必要な細胞成分、例えば、対応する核酸から本明細書に記載のポリペプチドおよび融合ポリペプチドを発現させるために必要とされる細胞小器官を含む媒体を指す。これらの核酸は、当技術分野で公知の従来技術(例えば、形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法、ダイレクトマイクロインジェクション、または感染など)によって宿主細胞に導入することができる核酸ベクター内に含まれていてもよい。核酸ベクターの選択は、一部は使用する宿主細胞によって異なる。一般に、好ましい宿主細胞は真核生物(例えば、哺乳動物)または原核生物(例えば、細菌)起源である。
【0162】
核酸ベクターの構築および宿主細胞
本発明のポリペプチドのアミノ酸配列をコードする核酸配列は、当技術分野で公知の様々な方法によって作製することができる。これらの方法には、限定されるものではないが、オリゴヌクレオチド媒介(または部位指定)突然変異誘発およびPCR突然変異誘発が含まれる。本発明のポリペプチドをコードする核酸分子は、例えば、遺伝子合成などの標準技術を用いて得ることができる。あるいは、野生型細胞外ActRIIAをコードする核酸分子は、例えば、QuikChange(商標)突然変異誘発などの当技術分野における標準技術を用いて、特定のアミノ酸置換を含むように変異させることができる。核酸分子は、ヌクレオチド合成装置またはPCR技術を用いて合成することができる。
【0163】
本発明のポリペプチドをコードする核酸配列は、原核生物または真核生物の宿主細胞で核酸分子を複製および発現することができるベクターに挿入することができる。当技術分野では多くのベクターが利用可能であり、本発明の目的において使用できる。各ベクターは種々の成分を含んでいてもよく、これらの成分は特定の宿主細胞と適合するように調節および最適化することができる。例えば、ベクター成分としては、限定されるものではないが、複製起点、選択マーカー遺伝子、プロモーター、リボソーム結合部位、シグナル配列、目的タンパク質をコードする核酸配列、および転写終結配列が含まれる。
【0164】
いくつかの実施形態において、哺乳動物細胞を本発明の宿主細胞として使用することができる。哺乳動物細胞種の例としては、限定されるものではないが、ヒト胎児腎(HEK)(例えば、HEK293、HEK293F)細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、COS細胞、PC3細胞、Vero細胞、MC3T3細胞、NS0細胞、Sp2/0細胞、VERY細胞、BHK細胞、MDCK細胞、W138細胞、BT483細胞、Hs578T細胞、HTB2細胞、BT20細胞、T47D細胞、NS0細胞(免疫グロブリン鎖を内因的に生産しないマウス骨髄腫細胞株)、CRL7O3O細胞、およびHsS78Bst細胞が挙げられる。いくつかの実施形態において、大腸菌(E.coli)細胞も本発明の宿主細胞として使用可能である。大腸菌株としては、限定されるものではないが、大腸菌294(ATCC(登録商標)31,446)、大腸菌λ1776(ATCC(登録商標)31,537)、大腸菌BL21(DE3)(ATCC(登録商標)BAA-1025)、および大腸菌RV308(ATCC(登録商標)31,608)が挙げられる。異なる宿主細胞は、翻訳後プロセシングおよびタンパク質産物の修飾(例えば、グリコシル化)に特徴的かつ特異的な機構を有する。適当な細胞株または宿主系は、発現されるポリペプチドの適正な修飾およびプロセシングを確保するために選択することができる。上記の発現ベクターは、当技術分野における従来技術、例えば、形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法、およびダイレクトマイクロインジェクションを用いて適当な宿主細胞に導入することができる。タンパク質生産用のためにベクターが宿主細胞に導入されれば、プロモーターを誘導する、形質転換体を選択する、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために必要に応じて修飾された従来の栄養培地で宿主細胞を培養する。治療タンパク質の発現のための方法は当技術分野で公知であり、例えば、Paulina Balbas,Argelia Lorence(eds.)、Recombinant Gene Expression:Reviews and Protocols(Methods in Molecular Biology),Humana Press;第2版(2004年)、およびVladimir VoynovおよびJustin A.Caravella(eds.)、Therapeutic Proteins:Methods and Protocols(Methods in Molecular Biology),Humana Press;第2版(2012年)を参照されたい。
【0165】
タンパク質生産、回収および精製
本発明のポリペプチドを生産するために使用される宿主細胞は、当技術分野で公知であり、選択された宿主細胞の培養に好適な培地で増殖させることができる。哺乳動物宿主細胞に好適な培地の例としては、最小必須培地(MEM:Minimal Essential Medium)、ダルベッコの改変イーグル培地(DMEM:Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)、Expi293(商標)発現培地、ウシ胎仔血清(FBS:fetal bovine serum)を添加したDMEM、およびRPMI-1640が挙げられる。細菌宿主細胞に好適な培地の例としては、選択薬剤、例えば、アンピシリンなどの必要な添加を行ったLuria broth(LB)が挙げられる。宿主細胞は、好適な温度、例えば、約20℃~約39℃、例えば、25℃~約37℃、好ましくは、37℃、および5~10%などのCOレベルで培養する。培地のpHは、主として宿主生物に応じて、一般に、約6.8~7.4、例えば、7.0である。本発明の発現ベクターにおいて誘導プロモーターが使用される場合、プロモーターの活性化に好適な条件下でタンパク質発現が誘導される。
【0166】
いくつかの実施形態において、使用する発現ベクターおよび宿主細胞に応じて、発現されるタンパク質を宿主細胞(例えば、哺乳動物宿主細胞)から細胞培養培地へ分泌させることができる。タンパク質の回収は、細胞残渣を除去するために細胞培養培地を濾過することを含み得る。これらのタンパク質をさらに精製してもよい。本発明のポリペプチドは、タンパク質精製の技術分野で公知の任意の方法、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、およびサイズ排除カラムクロマトグラフィー)、遠心分離、示差溶解度、またはタンパク質精製のための他のいずれかの標準技術によって、精製することができる。タンパク質は、例えば、プロテインAカラム(例えば、POROSプロテインAクロマトグラフィー)などのアフィニティーカラムを適切に選択し、クロマトグラフィーカラム(例えば、POROS HS-50陽イオン交換クロマトグラフィー)、濾過、限外濾過、塩析および透析法と組み合わせることによって単離および精製することができる。
【0167】
他の実施形態において、宿主細胞は、発現されたタンパク質を回収するために、例えば、浸透圧ショック、音波処理、または溶解によって破壊することができる。細胞が破壊されれば、細胞残渣を遠心分離または濾過によって除去することができる。場合によっては、精製を容易にするためにポリペプチドをペプチドなどのマーカー配列に結合させることもできる。マーカーアミノ酸配列の例は、ヘキサヒスチジンペプチド(His-タグ)であり、これはマイクロモルの親和性で、ニッケル官能基を有するアガロースアフィニティーカラムに結合する。精製に有用な他のペプチドタグとしては、限定されるものではないが、血球凝集素「HA」タグが含まれ、これはインフルエンザ血球凝集素タンパク質に由来するエピトープに相当する(Wilson他、Cell 37:767,1984)。
【0168】
あるいは、本発明のポリペプチドは、例えば、遺伝子療法において、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子を含むベクター(例えば、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルスベクター、例えば、変異ワクシニアアンカラ(MVA:Modified Vaccinia Ankara))、アデノ随伴ウイルスベクター、およびアルファウイルスベクター))を投与することにより、対象(例えば、ヒト)の細胞によって生産することができる。ベクターは、対象の細胞内にあれば(例えば、形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法、ダイレクトマイクロインジェクション、感染など)、ポリペプチドの発現を促進し、これは次に細胞から分泌される。疾患または障害の治療が所望の転帰である場合には、それ以上の作用は必要とされないと思われる。タンパク質の採集が望まれる場合には、対象から血液を採取し、当技術分野で公知の方法によって血液からタンパク質を精製することができる。
【0169】
VIII.医薬組成物および製剤
本発明は、本明細書に記載のポリペプチド(例えば、細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)を含むポリペプチド)を含む医薬組成物に関する。いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物は、治療タンパク質として、C末端伸長部(例えば、1、2、3、4、5、6またはそれ以上の付加的アミノ酸)を有する細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~70(例えば、配列番号6~70)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)を含むポリペプチドを含む。いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物は、治療タンパク質として、ある部分(例えば、Fcドメイン単量体、またはその二量体、野生型Fcドメイン、アミノ酸置換(例えば、二量体形成を低減する1以上の置換)を有するFcドメイン、アルブミン結合ペプチド、フィブロネクチンドメイン、またはヒト血清アルブミン)に融合された細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)を含むポリペプチドを含む。いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドを含む本発明の医薬組成物は、療法において、他の薬剤(例えば、治療生物製剤および/または小分子)または組成物と併用することができる。治療有効量のポリペプチドに加え、医薬組成物は1種類以上の薬学上許容される担体または賦形剤を含んでいてもよく、当業者に公知の方法によって製剤化することができる。いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物は、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子(DNAもしくはRNA、例えば、mRNA)、またはそのような核酸分子を含有するベクターを含む。
【0170】
医薬組成物の許容される担体および賦形剤は、使用される用量および濃度でレシピエントに無毒である。許容される担体および賦形剤は、リン酸塩、クエン酸塩、HEPES、およびTAEなどのバッファー、アスコルビン酸およびメチオニンなどの酸化防止剤、塩化ヘキサメトニウム、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、レゾルシノール、および塩化ベンザルコニウムなどの保存剤、ヒト血清アルブミン、ゼラチン、デキストラン、および免疫グロブリンなどのタンパク質、ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、ヒスチジン、およびリシンなどのアミノ酸、ならびにグルコース、マンノース、スクロース、およびソルビトールなどの炭水化物を含み得る。本発明の医薬組成物は、注射製剤の形態で非経口的に投与することができる。注射用医薬組成物は、無菌溶液または任意の薬学上許容される液体をビヒクルとして用いて調剤することができる。薬学上許容されるビヒクルとしては、限定されるものではないが、無菌水、生理食塩水、および細胞培養培地(例えば、ダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)、α-改変イーグル培地(α-MEM)、F-12培地)が挙げられる。調剤方法は当技術分野で公知であり、例えば、Banga(ed.)、Therapeutic Peptides and Proteins:Formulation, Processing and Delivery Systems(第3版)、Taylor & Francis Group,CRC Press(2015)が参照される。
【0171】
本発明の医薬組成物は、ヒドロキシルメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセルなどのマイクロカプセル中に調製してもよい。本発明の医薬組成物はまた、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子、およびナノカプセルなどの他の薬物送達システム中に調製してもよい。このような技術は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第22版(2012年)に記載されている。in vivo投与に使用される医薬組成物は無菌でなければならない。これは無菌濾過膜を介した濾過によって容易に達成される。
【0172】
本発明の医薬組成物はまた、徐放性製剤として調製してもよい。徐放性製剤の好適な例としては、本発明のポリペプチドを含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられる。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリアクチド(polyactides)、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー(例えば、LUPRON DEPOT(商標))、およびポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。一部の徐放性製剤は、数ヶ月、例えば、1~6か月にわたって分子の放出を可能とするが、他の製剤は本発明の医薬組成物をより短い期間、例えば、数日~数週間で放出する。
【0173】
医薬組成物は、必要であれば、単位剤形で形成することができる。医薬製剤中に含まれる有効成分、例えば、本発明のポリペプチドの量は、指定の範囲内で適切な用量が提供されるような量(例えば、0.01~100mg/kg体重の範囲内の用量)である。
【0174】
遺伝子療法用の医薬組成物は許容される希釈剤中にあってよく、または遺伝子送達ビヒクルが包埋された緩徐放出マトリックスを含み得る。送達方法としてハイドロダイナミックインジェクションが使用される場合には、本明細書に記載のポリペプチドをコードする核酸分子またはその核酸分子を含有するベクター(例えば、ウイルスベクター)を含有する医薬組成物は、大きな液量で静脈内に容易に送達される。in vivo遺伝子送達ビヒクルとして使用可能なベクターとしては、限定されるものではないが、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルスベクター、例えば、変異ワクシニアアンカラ)、アデノ随伴ウイルスベクター、およびアルファウイルスベクターが挙げられる。
【0175】
IX.経路、用量、および投与
治療タンパク質として本発明のポリペプチドを含む医薬組成物は、例えば、静脈内投与、非経口投与、皮下投与、筋肉内投与、動脈内投与、くも膜下腔内投与、または腹腔内投与向けに調剤されてよい。医薬組成物はまた、経口投与、鼻腔投与、噴霧投与、エアロゾル投与、直腸、もしくは膣投与用に調剤し、またはそれらを介して投与することができる。注射製剤に関しては、種々の有効な医薬担体が当技術分野で知られている。例えば、ASHP Handbook on Injectable Drugs,Toissel,第18版(2014)を参照されたい。
【0176】
いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子またはそのような核酸分子を含有するベクターを含む医薬組成物は、遺伝子送達によって送達することができる。遺伝子送達の方法は、当業者に周知である。in vivo遺伝子送達および発現に使用可能なベクターとしては、限定されるものではないが、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルスベクター、例えば、変異ワクシニアアンカラ(MVA))、アデノ随伴ウイルスベクター、およびアルファウイルスベクターが挙げられる。いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドをコードするmRNA分子を直接対象に投与してもよい。
【0177】
本発明のいくつかの実施形態において、本明細書に記載のポリペプチドをコードする核酸分子またはそのような核酸分子を含有するベクターは、ハイドロダイナミックインジェクションプラットフォームを用いて投与することができる。ハイドロダイナミックインジェクション法では、本明細書に記載のポリペプチドをコードする核酸分子を、操作したプラスミド(例えば、ウイルスプラスミド)内の強力なプロモーターの制御下に置く。プラスミドは多くの場合、大きな液量で静脈内に容易に送達される。ハイドロダイナミックインジェクションは、大きな液量の迅速な注入から得られる高圧が静脈からの流体およびプラスミドの管外遊出をもたらすように細胞透過性を高めるために、静脈内で、制御された流体力学的圧力を使用する。核酸分子の発現は、主として肝臓によって駆動される。マウスでは、ハイドロダイナミックインジェクションは、多くの場合、プラスミドの尾静脈への注射によって行われる。特定の実施形態において、本明細書に記載のポリペプチドをコードするmRNA分子は、ハイドロダイナミックインジェクションを用いて投与することができる。
【0178】
本発明の医薬組成物の用量は、投与経路、治療される疾患、および対象の身体的特徴、例えば、年齢、体重、健康状態を含む因子によって決まる。本発明の医薬組成物は、0.01~500mg/kgの範囲(例えば、0.01、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、150、200、250、300、350、400、450、または500mg/kg)、より具体的な実施形態では、約0.1~約30mg/kg、より具体的な実施形態では、約0.3~約30mg/kgの用量の本発明のポリペプチドを含み得る。用量は、対象の疾患の程度および種々のパラメータなどの従来の因子に従って医師が適合させることができる。
【0179】
医薬組成物は、その剤形に適した様式で、症状の改善または修復をもたらすために治療有効量で投与される。医薬組成物は、様々な剤形、例えば、静脈内剤形、皮下剤形、および経口剤形(例えば、摂取可能な溶液、薬物放出カプセル)で投与される。一般に、治療タンパク質は、0.1~100mg/kg、例えば、1~50mg/kgで投与される。本発明のポリペプチドを含む医薬組成物は、それを必要とする対象に、例えば、毎日、毎週、隔週、毎月、隔月、四半期毎、半年毎、1年毎、または医学的に必要に応じて1回以上(例えば、1~10回以上)投与することができる。いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドを含む医薬組成物は、それを必要とする対象に、毎週、隔週、毎月、隔月、または四半期毎に投与することができる。用量は単回または複数回の投与計画で提供することができる。投与間のタイミングは、医学的状態が改善すると減らすことができ、または患者の健康が減退すると増やすことができる。
【0180】
X.治療方法
本発明は、ActRIIBの細胞外部分からActRIIAの細胞外部分へアミノ酸を置換すると、特性が改善されたActRIIA変異体が得られるという発見に基づく。ActRIIBからActRIIAに残基を導入することによって作出されたActRIIA変異体は、より長い血清半減期およびBMP9に対する低い結合親和性などのActRIIAの有益な特性を保持し、かつ、アクチビンAおよびBに対する結合の増強(実施例1の表5を参照)のようなActRIIBの有益な特性のいくつかを獲得する。これらのActRIIA変異体特性は、リガンド結合に関して内因性のアクチビン受容体と競合し得る有用な治療性(therapeutic)を作出する。ActRIIA変異体は受容体の細胞外部分を含むので、それらは可溶型であり、かつ、細胞内シグナル伝達経路を活性化することなく、リガンド(例えば、アクチビンAおよびB、ミオスタチン、GDF11)と結合してそれらを隔離する(sequester)ことができる。よって、細胞外ActRIIA変異体は、アクチビンシグナル伝達の上昇が関連付けられている疾患または病態(例えば、アクチビン受容体またはアクチビン受容体リガンドの発現の増加に関連する疾患または病態)を治療するために使用することができる。例えば、ミオスタチンの喪失は線維症を減少させることが示されているが、ミオスタチンまたはアクチビンの増加は線維症を誘発する。別の例において、アクチビン受容体リガンドGDF11は溶血性貧血のマウスモデルにおいて過剰発現され、赤血球産生における欠陥と関連している。加えて、アクチビンAは、臨床的および実験的な肺高血圧症においても上昇することが見出されている。理論に縛られることを望むものではないが、アクチビン受容体リガンド(例えば、ミオスタチン、アクチビンおよび/またはGDF11)に結合し、内因性アクチビン受容体との相互作用を減少させる治療薬は、線維症、貧血、またはPH(例えば、PAH、静脈性PH、低酸素性PH、血栓塞栓性PH、またはその他のPH)を治療するために使用され得る。
【0181】
本発明は、それを必要とする対象において、線維症を低減し、線維症を予防し、線維症を発症するリスクを低減し、線維症の進行を遅らせるか停止するか、または線維症を好転させる(reverse)ために使用できる組成物および治療方法を提供する。本発明はまた、それを必要とする対象において、赤血球レベルを増加させる(例えば、ヘモグロビンを増加させる、ヘマトクリットを増加させる、または赤血球数を増加させる、例えば、赤血球産生および/または赤血球量を増加させる)ために使用できる組成物および治療方法を提供する。本発明はさらに、それを必要とする対象において、PHを治療する、PHを減少させる(例えば、息切れ(呼吸困難)、疲労、脚、足、腹(例えば腹水)または首の腫れ(例えば、浮腫)、胸痛または胸部圧迫感、激しい脈または心臓の動悸、唇または皮膚の青みがかった色(チアノーゼ)、めまいまたは失神のようなPHの症状を減少させる)、PHの進行を遅らせるか停止させる、ために使用することができる組成物および治療方法を提供する。本発明は、PAH、静脈性PH、低酸素性PH、血栓塞栓性PH、その他のPHのような任意の種類のPHのいずれかを治療するか、あるいはその進行を遅らせるか、または停止することができる。いくつかの実施形態において、対象は、繊維症に関連する疾患または病態(例えば、肝硬変、肺線維症、クローン病、慢性腎疾患);低赤血球レベルに関連する疾患または病態(例えば、貧血または失血);PHに関連する疾患または病態(例えば、HIV感染、住血吸虫症、門脈圧亢進症、肺静脈閉塞症、肺毛細血管腫症、肝硬変、先天性心臓異常、結合組織/自己免疫障害(例えば、強皮症または狼瘡)あるいは薬物の使用もしくは乱用(例えば、メタンフェタミンまたはコカインの使用)のようなPAHに関連する疾患または病態);左心室収縮機能不全、左心室拡張機能不全、心臓弁膜症、先天性心筋症、または先天性/後天性肺静脈狭窄のような静脈性PHに関連する疾患または病態;慢性閉塞性肺疾患(例えば、肺気腫)、間質性肺疾患、睡眠障害呼吸(例えば、睡眠時無呼吸)、肺疾患(例えば、肺線維症)、肺胞低換気障害、高地への慢性曝露、または発達異常のような低酸素性PHに関連する疾患または病態;慢性血栓塞栓性肺高血圧症または他の肺動脈閉塞(例えば、肺塞栓、血管肉腫、動脈炎、先天性肺動脈狭窄、寄生虫感染)のような血栓塞栓性PHに関連する疾患または状態;血液疾患(例えば、慢性溶血性貧血、鎌状赤血球症)、全身性疾患(例えば、サルコイドーシス、肺ランゲルハンス細胞組織球症、リンパ管平滑筋腫症、神経線維腫症、または血管炎)、代謝障害(たとえば、糖原病、ゴーシェ病、または甲状腺疾患)、肺腫瘍性血栓性微小血管症、線維性縦隔炎、慢性腎不全、または区域性肺高血圧症(肺の1つ以上の葉に限定される肺高血圧症)などのその他のPHに関連する疾患または状態、を有し得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、線維症、低赤血球レベル、またはPH(例えば、PAH、静脈性PH、低酸素性PH、血栓塞栓性PH、その他のPH)を含む疾患または状態を有する対象においてミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9シグナル伝達に影響を与えることに関する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の細胞外ActRIIA変異体を含むポリペプチドは、ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9のそれぞれの内因性受容体(例えばActRIIA、ActRIIB、およびBMPRII(例えばActRIIA))への結合を低減または阻害する。いくつかの実施形態において、ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9シグナル伝達に作用すること(例えば、ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9のそれぞれの受容体、例えば、ActRIIA、ActRIIB、およびBMPRII(例えば:ActRIIA)への結合を減少または阻害すること)は、繊維症の低減、繊維症を発症するリスクの低減、繊維症の発症の遅延、繊維症の進行における低減(例えば、遅らせるもしくは阻害する)、繊維症の好転、赤血球における増加(例えば、ヘモグロビン、ヘマトクリット、または赤血球数における増加、例えば、赤血球の産生および/または赤血球量における増加)、PHの症状の低減(例えば、息切れ(呼吸困難)、疲労、脚、足、腹部(腹水)または頸部の腫脹(例えば浮腫)、胸痛または胸部圧迫感、激しい脈または心臓の動悸、唇または皮膚への青みがかった色(チアノーゼ)、めまい、または失神の低減)、PHを発症するリスクの低減、PHの発症の遅延、またはPHの進行の低減(例えば、進行の減速または抑制)をもたらす。PHはPAH、静脈性PH、低酸素性PH、血栓塞栓性PH、またはその他のPHであってもよい。
【0182】
本明細書に記載される組成物および方法は、医学的状態、例えば、低赤血球レベル(例えば、低ヘモグロビンレベルまたは低赤血球数)、線維症、またはPH(例えば、PAH、静脈性PH、低酸素性PH、血栓塞栓性PH、またはその他のPH)を治療および/または予防する(例えば、これらの医学的状態と診断された対象の発症を予防する、あるいは対象を治療する)ために使用され得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポリペプチド(例えば、細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)、例えば有効量のActRIIA変異体、を含むポリペプチド)は、それを必要とする対象において、赤血球レベルを増加させるため(例えば、ヘモグロビンレベルを増加させる、ヘマトクリットを増加させる、赤血球数を増加させる、赤血球量を増加させる、または赤血球の形成を増加させる)ために投与され得る。本明細書に記載のポリペプチドは、治療前に得られた測定値と比較して、赤血球レベルを増大させる(例えば、ヘモグロビンレベル、赤血球数、ヘマトクリット、赤血球量または赤血球形成を増加させる)ことができる。いくつかの実施形態において、対象は低赤血球レベルに関連する疾患または病態(例えば、貧血または失血)を有し得る。いくつかの実施形態において、対象は、貧血または失血(例えば、対象は、慢性腎疾患、関節リウマチ、癌、または炎症性疾患(例えば、クローン病、SLE、潰瘍性大腸炎)のような他の疾患または病態に起因する、あるいは化学療法、放射線療法または手術のような医学的処置に起因する、貧血を発症するリスクがあり得る)を有するか、発症するリスクにあり得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、低赤血球レベルを伴う疾患または病態(例えば、貧血または失血)を有する対象において、ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9シグナル伝達に作用する(例えば、ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9のそれぞれの内因性受容体に結合することを低減もしくは阻害する)ことに関する。
【0183】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポリペプチド(例えば、細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)、例えば有効量のActRIIA変異体、を含むポリペプチド)は、それを必要とする対象において、繊維症を予防または低減するために投与され得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポリペプチドは、繊維症の進行を遅延もしくは停止させるために、繊維症の発症のリスクを低減するために、線維症の1つ以上の症状を低減する(例えば、その頻度や重症度を低減する)ために、または繊維症を好転させるために、投与され得る。本明細書に記載のポリペプチドは、少なくとも治療前の線維症の進行と比較して、または未治療の対象における線維症の進行と比較して、線維症を減少させるか、または線維症の進行を遅らせる、もしくは繊維症の進行を逆転させることができる。いくつかの実施形態において、対象は、線維症を有するか、または発症するリスクがある場合がある(例えば、対象は、創傷、B型またはC型肝炎、脂肪肝疾患、腎疾患(例えば、慢性腎疾患)、心疾患、またはアテローム性動脈硬化症などの繊維症に関連する疾患もしくは病態を有していてもよく、または化学療法、放射線療法もしくは手術などの線維症の発症に関連する治療を受けていてもよい)。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポリペプチドは、線維症を発症するリスクがある対象(例えば、対象は、化学療法、放射線療法もしくは手術で治療されているか、あるいは対象は、創傷、B型またはC型肝炎、脂肪肝疾患、腎疾患(例えば、慢性腎疾患)、心疾患、またはアテローム性動脈硬化症などの繊維症に関連する疾患もしくは病態を有していてもよい)において、繊維症の発症を予防する、遅らせる、または減弱させる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、繊維症、または繊維症に関連する疾患または病態を有する対象において、ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9シグナル伝達に作用する(例えば、ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9のそれぞれの内因性受容体に結合することを低減もしくは阻害する)ことに関する。
【0184】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチド(例えば、細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)、例えば有効量のActRIIA変異体、を含むポリペプチド)は、それを必要とする対象において、PHを治療するため、PHを低減させるため(例えば、息切れ(呼吸困難)、疲労、脚、足、腹(例えば腹水)もしくは首の腫れ(例えば、浮腫)、胸痛または胸部圧迫感、激しい脈または心臓の動悸、唇または皮膚の青みがかった色(チアノーゼ)、めまいまたは失神など、PHの1つ以上の症状の重症度または頻度を低下させる)、あるいはPH(PAH、静脈性PH、低酸素性PH、血栓塞栓性PH、またはその他のPH)を予防するため(例えば、PHの発症を予防するため)に投与され得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポリペプチドは、PH(例えば、PAH、静脈性PH、低酸素性PH、血栓塞栓性PH、またはその他のPH)の進行を遅らせるまたは停止するために、またはPH(例えば、PAH、静脈性PH、低酸素性PH、血栓塞栓性PH、またはその他のPH)を発症するリスクを低減するために投与され得る。本明細書に記載されるポリペプチドは、治療前に観察された症状または進行と比較して、または未治療の対象におけるPHの症状または進行と比較して、PHの症状を低減させる(例えば、息切れ(呼吸困難)、疲労、脚、足、腹(例えば腹水)、首の腫れ(例えば、浮腫)、胸痛または胸部圧迫感、激しい脈または心臓の動悸、唇または皮膚の青みがかった色(チアノーゼ)、めまいまたは失神など、PHの1つ以上の症状の重症度または頻度を低下させる)、またはPH(例えば、PAH、静脈性PH、低酸素性PH、血栓塞栓性PH、またはその他のPH)の進行を遅らせることができる。いくつかの実施形態において、対象は、PHを有するか、またはPHを発症するリスクがあり得る(例えば、対象は、特発性PAHを有していてもよい);対象は、HIV感染、住血吸虫症、門脈圧亢進症、肺静脈閉塞症、肺毛細血管腫症、肝硬変、先天性心異常、結合組織/自己免疫疾患(強皮症や狼瘡など)、薬物使用または乱用(例えば、メタンフェタミンやコカインの使用)など、PAHに関連する疾患または状態(例えば、PAH発症のリスクの増大を誘導する疾患または状態)を有し得る;対象は、PHの家族歴があり得る(例えば、遺伝性PAH);対象は、左室収縮機能障害、左室拡張機能障害、心臓弁膜症、先天性心筋症、先天性/後天性肺静脈狭窄などの静脈性PHに関連する疾患または病態(例えば、静脈性PHを発症するリスクの増大を誘導する疾患または病態)を有し得る;対象は、慢性閉塞性肺疾患(肺気腫など)、間質性肺疾患、睡眠呼吸障害(例えば、睡眠時無呼吸)、肺疾患(例えば、肺線維症)、肺胞低換気障害、高地への慢性的暴露、発達異常など、低酸素性PHに関連する疾患または病態(例えば、低酸素性PHを発症するリスクを増大させる疾患または病態)を有し得る;対象は、慢性血栓塞栓性肺高血圧症、または他の肺動脈閉塞(例えば、肺塞栓、血管肉腫、動脈炎、先天性肺動脈狭窄、または寄生虫感染)のような血栓塞栓性PHに関連する疾患または病態(例えば、血栓塞栓性PHを発症するリスクの増大を誘導する疾患または病態)を有し得る;あるいは、対象は、血液疾患(例えば、慢性溶血性貧血、鎌状赤血球症)、全身性疾患(例えば、サルコイドーシス、肺ランゲルハンス細胞組織球症、リンパ管平滑筋腫症、神経線維腫症、または血管炎)、代謝性疾患(例えば、糖原病、ゴーシェ病、甲状腺疾患)、肺腫瘍性血栓性微小血管症、線維性縦隔炎、慢性腎不全もしくは区域性肺高血圧症などのその他のPHに関連する疾患や病態(例えば、その他のPHを発症するリスクの増大を誘導する疾患または病態))を有し得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポリペプチドは、PHを発症するリスクのある対象においてPHの発症を予防するか、遅らせるか、あるいは減弱させる(例えば、対象はPHの家族歴(例えば、遺伝性PAH)を有するか、もしくは対象は、PAH(例えば、HIV感染、住血吸虫症、肝硬変、先天性心異常、結合組織/自己免疫疾患(強皮症や狼瘡など)、または薬物使用または乱用(例えば、メタンフェタミンやコカインの使用)、静脈性PH(例えば、左室収縮機能障害、左室拡張機能障害、心臓弁膜症、先天性心筋症、もしくは先天性/後天性肺静脈狭窄)、低酸素性PH(例えば、慢性閉塞性肺疾患(肺気腫など)、間質性肺疾患、睡眠呼吸障害(例えば、睡眠時無呼吸)、肺疾患(例えば、肺線維症)、肺胞低換気障害、高地への慢性的暴露、もしくは発達異常)、血栓塞栓性PH(例えば、慢性血栓塞栓性肺高血圧症、または他の肺動脈閉塞(例えば、肺塞栓、血管肉腫、動脈炎、先天性肺動脈狭窄、または寄生虫感染))、またはその他のPH(例えば、血液疾患(例えば、慢性溶血性貧血、鎌状赤血球症)、全身性疾患(例えば、サルコイドーシス、肺ランゲルハンス細胞組織球症、リンパ管平滑筋腫症、神経線維腫症、または血管炎)、代謝性疾患(例えば、糖原病、ゴーシェ病、甲状腺疾患)、肺腫瘍性血栓性微小血管症、線維性縦隔炎、慢性腎不全、もしくは区域性肺高血圧症)を発症するリスクの増大を引き起こす疾患または病態を有する)。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、PH(例えば、PAH、静脈性PH、低酸素性PH、血栓塞栓性PH、またはその他のPH)を有する、またはPH(例えば、PAH、静脈性PH、低酸素性PH、血栓塞栓性PH、またはその他のPH)に関連する疾患または病態を有する対象において、ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9シグナル伝達に作用する(例えば、ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9のそれぞれの内因性受容体に結合することを低減もしくは阻害する)ことに関する。
【0185】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の細胞外ActRIIA変異体を含むポリペプチドは、ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9のそれぞれの内因性受容体(例えばActRIIA、ActRIIB、およびBMPRII(例えばActRIIA))への結合を低減または阻害する。本明細書に記載のポリペプチドは、本発明のポリペプチドの非存在下でのミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9のそれぞれの内因性受容体への結合と比較して、ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9のそれぞれの内因性受容体への結合を低減し得る。いくつかの実施形態において、ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9シグナル伝達に作用すること(例えば、ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9のそれぞれの内因性受容体、例えば、ActRIIA、ActRIIB、およびBMPRII(例えば:ActRIIA)への結合を減少または阻害すること)は、対象の赤血球レベル(例えば、ヘモグロビンレベル、ヘマトクリットレベル、または赤血球数、例えば、赤血球の形成および/または赤血球量を誘導または増加させる)の増加、対象の線維症または線維症を発症するリスクの低減、線維症の発症の遅延、線維症の進行の遅延または停止、繊維症の好転、対象のPHの症状(例えば、息切れ(呼吸困難)、疲労、脚、足、腹部(腹水)または頸部の腫脹(例えば浮腫)、胸痛または胸部圧迫感、激しい脈または心臓の動悸、唇または皮膚への青みがかった色(チアノーゼ)、めまい、または失神の低減)の低減、対象のPHを発症するリスクの低減、PHの発症の遅延、および/またはPHの進行の遅延または停止、をもたらす。PHはPAH、静脈性PH、低酸素性PH、血栓塞栓性PH、またはその他のPHであってもよい。
【0186】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポリペプチド(例えば、細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)、例えば有効量のActRIIA変異体、を含むポリペプチド)は、対象において、赤血球レベルを増加させる(例えば、ヘモグロビンレベルを増加させる、ヘマトクリット値を増加させる、赤血球数を増加させる、赤血球量を増加させる、または赤血球の形成を誘導または増加させる)、線維症を予防または低減する(例えば、線維症を低減する、線維症の発症を予防する、遅延させるもしくは減弱させる、線維症の進行を遅延または停止させる、あるいは繊維症を好転させる)、PHを予防または治療する(例えば、PHの症状を軽減する、PHの発症を予防する、遅延するもしくは減弱させる、あるいはPAH、静脈性PH、低酸素性PH、血栓塞栓性PH、またはその他のPHのようなPHの進行を遅延または停止させるため)、またはミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9シグナル伝達に作用するために、同対象に投与され得る。細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体、例えば有効量のActRIIA変異体)は、治療前に得られた測定値と比較して、または同じ疾患もしくは病態を有する未治療の対象から得られた測定値と比較して、赤血球レベルを増加させる、線維症を予防または低減する、あるいはPHを予防または治療することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、血管透過性の増加または漏出のような対象における血管合併症を引き起こさない。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態において、対象は、低赤血球レベル(例えば、貧血または失血、例えば、癌に関連する貧血(例えば、多発性骨髄腫、白血病、乳癌、肺癌、結腸癌)、癌治療(例、化学療法または放射線療法)、骨髄異形成症候群、慢性または急性腎疾患または不全(例、慢性腎疾患)、炎症性または自己免疫疾患(例えば、関節リウマチ、炎症性腸疾患、例えばクローン病または潰瘍性大腸炎、SLE)、または手術などの貧血または失血)を含む疾患または病態を有するか、またはそれらを発症するリスクがある。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態において、対象は、線維症(例えば化学療法薬誘発性線維症、放射線誘発性線維症、肺線維症、肝線維症(例:肝硬変)、腎線維症(例えば、慢性腎疾患に関連する線維症)、角膜線維症、心臓線維症、骨関節線維症、組織線維症、腫瘍間質、線維形成性腫瘍、外科的癒着、肥大性瘢痕、ケロイド、あるいは創傷、熱傷、B型またはC型肝炎感染症、脂肪肝疾患、住血吸虫感染症、腎疾患、心疾患、黄斑変性、網膜または硝子体網膜症、全身性または局所性強皮症、アテローム性動脈硬化症、または再狭窄と関連している線維症)を含む疾患または病態を有するか、またはそれらを発症するリスクがある。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態において、対象は、PH(例えば、PAH、静脈性PH、低酸素性PH、血栓塞栓性PH、またはその他のPH、例えば特発性PAH;遺伝性PAH;HIV感染、住血吸虫症、門脈圧亢進症、肺静脈閉塞症、肺毛細血管腫症、肝硬変、先天性心異常、結合組織/自己免疫疾患(強皮症や狼瘡など)、薬物使用または乱用(例えば、メタンフェタミンやコカインの使用)に関連する、またはこれらに起因するPAH;左室収縮機能不全、左室拡張機能不全、心臓弁膜症、先天性心筋症、または先天性/後天性肺静脈狭窄に関連するか、または起因する静脈性PH;慢性閉塞性肺疾患(肺気腫など)、間質性肺疾患、睡眠呼吸障害(例えば、睡眠時無呼吸)、肺疾患(例えば、肺線維症)、肺胞低換気障害、高地への慢性暴露、または発達異常に関連するか、または起因する低酸素性PH;慢性血栓塞栓性肺高血圧症または他の肺動脈閉塞(例えば、肺塞栓、血管肉腫、動脈炎、先天性肺動脈狭窄、または寄生虫感染)に関連する、またはこれらに起因する血栓塞栓性PH;血液疾患(例えば、慢性溶血性貧血、鎌状赤血球症)、全身性疾患(例えば、サルコイドーシス、肺ランゲルハンス細胞組織球症、リンパ管平滑筋腫症、神経線維腫症、または血管炎)、代謝障害(例えば、糖原病、ゴーシェ病、甲状腺疾患)、肺腫瘍性血栓性微小血管症、線維性縦隔炎、慢性腎不全、または区域性肺高血圧症に関連するか、または起因するその他のPH)を伴う疾患または病態を有しているか、またはそれらを発症するリスクがある。
【0187】
本発明はまた、本明細書に記載される有効量のポリペプチド(例えば、細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)を含むポリペプチド)を対象に投与することにより、貧血または失血を有するか、またはそれらを発症するリスクがある対象を治療する方法を含む。本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、低赤血球レベル(例えば、低ヘモグロビンレベル、または低赤血球数、例えば、低赤血球量)を有するかまたは発症するリスクがある対象は、貧血または失血を発症するか、発症するリスクがある。いくつかの実施形態において、貧血は、栄養欠乏(例、ビタミン欠乏症)、骨髄欠損(例えば、発作性夜間血色素尿症)、薬物に対する有害反応(例えば抗レトロウイルスHIV薬)、骨髄異形成症候群、骨髄移植、癌(例えば、乳癌、肺癌もしくは結腸癌などの固形腫瘍;慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫などのリンパ系腫瘍;または白血病や多発性骨髄腫などの造血系の腫瘍)、癌治療(例えば、放射線または化学療法、例えばプラチナ含有薬剤による化学療法)、炎症性または自己免疫疾患(例えば、関節リウマチ、他の炎症性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、急性または慢性皮膚疾患(例えば乾癬)、または炎症性腸疾患(例えばクローン病や潰瘍性大腸炎)、膀胱炎、胃炎)、特発性または先天性の病態を含む急性または慢性腎疾患または不全(例えば慢性腎疾患)、急性または慢性肝疾患、糖尿病、急性または慢性出血、感染(例えば、マラリア、骨髄炎)、脾腫、ポルフィリン症、血管炎、溶血、尿路感染症、異常ヘモグロビン症(例えば鎌状赤血球症)、サラセミア、チャーグ・ストラウス症候群、フェルティ症候群、移植片対宿主病、造血幹細胞移植、骨髄線維症、汎血球減少症、純粋赤血球無形成症、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、シュワッハマン症候群(例えば、シュワッハマン・ダイアモンド症候群)、薬物使用または乱用(例:アルコール乱用)、または輸血禁忌(例えば、高齢の患者、同種抗体または自己抗体を有する患者、小児患者、心肺疾患の患者、宗教的理由で輸血に反対する患者(例えば、いくらかのエホバの証人))と関連するか、あるいはそれらによって引き起こされる。いくつかの実施形態において、貧血は、再生不良性貧血、鉄欠乏性貧血、ビタミン欠乏性貧血、慢性疾患に伴う貧血、骨髄疾患に関連する貧血、溶血性貧血、鎌状赤血球貧血、小球性貧血、低色素性貧血、鉄芽球性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、ファンコーニ貧血、または過剰芽細胞を伴う不応性貧血である。本願明細書に記載される組成物および方法はまた、エリスロポエチン(EPO)に十分に応答しない、またはEPOの有害作用(例えば、高血圧、頭痛、血管血栓症、インフルエンザ様症候群、シャント閉塞、心筋梗塞)に感受性のある対象を治療するために使用され得る。いくつかの実施形態において、失血は、手術、外傷、創傷、潰瘍、尿路出血、消化管出血、頻繁な献血、または多量の月経出血(例えば、月経過多)によるものである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、治療前に得られた測定値と比較して、赤血球レベル(例えば、ヘモグロビンレベル、ヘマトクリット、または赤血球数、例えば、赤血球量)を増大させる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、治療前に得られた測定値と比較して、赤血球形成を増大させる、または誘導する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物および方法は、輸血に対する対象の必要性を低減する(例えば、対象は、輸血をもはや必要としない、または対象は、本明細書に記載の組成物および方法による治療前よりも頻繁な輸血を必要としない)。正常な赤血球レベルを有する対象は、本明細書に記載の方法および組成物を使用して治療され、赤血球レベルを増加させて、それにより、後に輸血にて使用するための血液を採取および保存することができる。
【0188】
本発明はまた、本明細書に記載される有効量のポリペプチド(例えば、細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)を含むポリペプチド)を対象に投与することにより、線維症を有するか、またはそれらを発症するリスクがある対象を治療する方法を含む。本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、対象は繊維症を患っているかまたは繊維症を発症するリスクがある。いくつかの実施形態において、線維症は、化学療法薬誘発性線維症、放射線誘発性線維症、肺線維症(例えば、嚢胞性線維症、特発性線維症、または結核、肺炎、石炭の粉塵に関連した線維症)、肝線維症(肝硬変、胆道閉鎖症など)、腎線維症(例えば、慢性腎疾患に関連する線維症)、角膜線維症、心線維症(例えば、心内膜心筋線維症または心筋梗塞に関連する線維症)、骨髄線維症、縦隔線維症、後腹膜線維症、骨関節線維症、関節繊維症、組織線維症(例えば、筋組織、皮膚表皮、皮膚真皮、腱、軟骨、膵臓組織、子宮組織、神経組織、精巣、卵巣、副腎、動脈、静脈、結腸、小腸、大腸、胆道、または腸に影響する線維症)、腫瘍間質、線維形成性腫瘍、外科的癒着、肥厚性瘢痕、あるいはケロイドである。いくつかの実施形態において、線維症は、創傷、火傷、B型またはC型肝炎感染、脂肪肝疾患、住血吸虫感染、腎疾患(例えば、慢性腎疾患)、心疾患、黄斑変性、網膜または硝子体網膜症、クローン病、全身性または局所性強皮症、アテローム性動脈硬化症、または再狭窄、に関連する繊維症である。いくつかの実施形態において、対象は、癌治療(化学療法または放射線療法)、疾患または感染症(例えば、結核、肺炎、心筋梗塞、B型またはC型肝炎感染、脂肪肝疾患、住血吸虫感染、腎疾患(例えば慢性腎疾患)、心疾患、黄斑変性、網膜又は硝子体網膜症、クローン病、全身性又は局所性強皮症、アテローム性動脈硬化症、再狭窄)、手術、創傷または熱傷に関連して線維症を発症するリスクがある。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、治療前に得られた測定値と比較して、あるいは未治療の対象における繊維症と比較して、繊維症を低減する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、線維症の発症を防止する、線維症を発症するリスクを低減する(例えば、未治療の対象における線維症の発症と比較して線維症を発症するリスクを低減する)、または既存の繊維症を好転させる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、繊維症の進行を遅延する、停止する、または逆転させる(例えば、治療前における進行と比較して、治療を行わない場合、もしくは未治療の対象における進行と比較して、繊維症の進行を遅延する)。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、治療前の臓器または組織の機能と比較して、臓器または組織の機能(例えば、線維症を有する臓器または組織の機能)を改善する。組織と臓器の機能は、組織と臓器の機能を評価するために一般的に使用される標準的な臨床検査を使用して評価できる。
【0189】
本発明はまた、本明細書に記載される有効量のポリペプチド(例えば、細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)を含むポリペプチド)を対象に投与することにより、PH(例えば、PAH、静脈性PH、低酸素性PH、血栓塞栓性PH、またはその他のPH)を有するか、またはそれらを発症するリスクがある対象を治療する方法を含む。本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、対象はPH(例えば、PAH、静脈性PH、低酸素性PH、血栓塞栓性PH、またはその他のPH)を有するか、またはそれらを発症するリスクがある。いくつかの実施形態において、PHはPAHである。いくつかの実施形態において、PAHは突発性PAHである。いくつかの実施形態において、PAHは遺伝性PAHである。いくつかの実施形態において、PAHは、HIV感染、住血吸虫症、門脈圧亢進症、肺静脈閉塞性疾患、肺毛細管血管腫症、肝硬変、先天性心臓異常、結合組織/自己免疫疾患(強皮症や狼瘡など)、または薬物使用もしくは乱用(例えば、メタンフェタミンやコカインの使用)に関する(例えば、これらの疾患によって引き起こされるもしくは関係する)PAHである。いくつかの実施形態において、PHは静脈性PHである。いくつかの実施形態において、静脈性PHは、左心室収縮機能不全、左心室拡張機能不全、心臓弁膜症、先天性心筋症、または先天性/後天性肺静脈狭窄に関する(例えば、これらの疾患によって引き起こされるもしくは関係する)静脈性PHである。いくつかの実施形態において、PHは低酸素性PHである。いくつかの実施形態において、低酸素性PHは、慢性閉塞性肺疾患(例えば、肺気腫)、間質性肺疾患、睡眠障害呼吸(例えば、睡眠時無呼吸)、肺疾患(例えば、肺線維症)、肺胞低換気障害、高地への慢性曝露、または発達異常に関する(例えば、これらの疾患によって引き起こされるもしくは関係する)低酸素性PHである。いくつかの実施形態において、PHは血栓塞栓性PHである。いくつかの実施形態において、血栓塞栓性PHは、慢性血栓塞栓性肺高血圧症または他の肺動脈閉塞(例えば、肺塞栓、血管肉腫、動脈炎、先天性肺動脈狭窄、または寄生虫感染)に関する(例えば、これらの疾患によって引き起こされるもしくは関係する)血栓塞栓性PHである。いくつかの実施形態において、PHはその他のPHである。いくつかの実施形態において、その他のPHは、血液疾患(例えば、慢性溶血性貧血、鎌状赤血球症)、全身性疾患(例えば、サルコイドーシス、肺ランゲルハンス細胞組織球症、リンパ管平滑筋腫症、神経線維腫症、または血管炎)、代謝障害(たとえば、糖原病、ゴーシェ病、または甲状腺疾患)、肺腫瘍性血栓性微小血管症、線維性縦隔炎、慢性腎不全、または区域性肺高血圧症に関する(例えば、これらの疾患によって引き起こされるもしくは関係する)その他のPHである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、PHの症状を、治療前の症状の頻度または重症度と比較して低減する(例えば、息切れ(呼吸困難)、疲労、脚、足、腹(腹水)または首の腫脹(例えば、浮腫)、胸痛または胸部圧迫感、激しい脈または心臓の動悸、唇または皮膚の青みがかった色(チアノーゼ)、めまい、または失神、のような症状の頻度または重症度を低減する)。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、PHの発症を防止するか、またはPHを発症するリスクを低減する(例えば、未治療の対象におけるPHの発症と比較してPH(例えば、PAH、静脈性PH、低酸素性PH、血栓塞栓性PH、またはその他のPH)を発症するリスクを低減する)。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、PHの進行を遅延もしくは停止する(例えば、PH(例えば、PAH、静脈性PH、低酸素性PH、血栓塞栓性PH、またはその他のPH)の進行を、治療前の進行と比較して、または治療を受けないかもしくは未治療の対象における進行と比較して遅延する)。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、治療前の血管リモデリングと比較して、または未治療の対象における血管リモデリングと比較して、対象の肺血管リモデリングまたは心臓における血管リモデリング(例えば、心臓または肺における血管リモデリングの開始または進行)を低減する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法は、治療前の右心室と比較して、または未治療の対象における右心室肥大と比較して、右心室を低減する(例えば、右室肥大を低減する、もしくは右室肥大の進行を低減する)。PHの症状は、標準的な臨床試験を使用して、治療の前後に評価できる。PHを評価するために一般的に使用される試験には、心電図、肺機能試験、心エコー図、右心カテーテル検査、コンピュータ断層撮影スキャン、肺血管抵抗の測定、および6分間歩行試験が含まれる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法は、肺血管抵抗を低減する(例えば、治療前の肺血管抵抗と比較して肺血管抵抗の低減が得られる)。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法は、治療前の6分間歩行試験におけるパフォーマンスと比較して6分間歩行試験におけるパフォーマンスを改善する。
【0190】
本明細書に記載の方法のいずれにおいても、細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~71(例えば、配列番号6~71)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)を含むポリペプチドであってさらに、1~6個のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6個またはそれ以上のアミノ酸)のC末端伸長部を含むポリペプチドが治療用タンパク質として使用され得る。本明細書に記載の方法のいずれにおいても、それぞれが細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)を含むポリペプチドに融合された2つのFcドメインモノマーの相互作用によって形成される二量体(例えば、ホモダイマーまたはヘテロダイマー)を治療タンパク質として使用することができる。本明細書に記載の方法のいずれにおいても、ある部分(例えば、Fcドメイン単量体、野生型Fcドメイン、アミノ酸置換(例えば、二量体形成を低減する1以上の置換)を有するFcドメイン、アルブミン結合ペプチド、フィブロネクチンドメイン、またはヒト血清アルブミン)に融合された細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)を含むポリペプチドは、治療用タンパク質として使用されてもよい。本明細書に記載のポリペプチドをコードする核酸、または該核酸を含有するベクターもまた、本明細書に記載の方法のいずれかに従って投与され得る。本明細書に記載の方法のいずれにおいても、ポリペプチド、核酸、またはベクターは医薬組成物の一部として投与することができる。本明細書に記載の方法に従って対象に投与することができる組成物を、以下の表4に提供する。
【0191】
【表4-1】
【0192】
【表4-2】
【0193】
【表4-3】
【0194】
【表4-4】
【0195】
【表4-5】
【0196】
【表4-6】
【0197】
【表4-7】
【実施例0198】
実施例1:表面プラズモン共鳴(SPR)によるActRIIA変異体結合親和性の評価
ActRIIA変異体とリガンドであるアクチビンA、アクチビンB、成長分化因子11(GDF11)、およびBMP-9との間の相互作用の動態を測定するためにBiacore3000を使用した。ActRIIA変異体を、HEK293細胞における一過性発現によって作製し、プロテインAセファロースクロマトグラフィーを使用して馴化培地から精製した。ActRIIA変異体を、適正な配向を確保するためにフローセル2~4において捕捉抗体(GEGEからの抗マウス)を用いてチップ(CM4またはCM5)に固定した。フローセル1は非特異的結合およびバルク効果を差し引くために参照セルとして使用した。GE Healthcare(商標)からのHBS-EP+緩衝液をランニング緩衝液として使用した。物質移動効果を避けるために40μl/分にて、一定の濃度系で各リガンドを流した。各相互作用のKを計算するため、BioLogic(商標)ソフトウエアによりScrubber2を用いてデータを解析した(表5)。
【0199】
【表5】
【0200】
実施例2-mdxマウスの線維症に対するActRIIA/B-Fcの効果
デュシェンヌ型筋ジストロフィーのマウスモデルであるmdxマウスを用いて,筋ジストロフィーに伴う筋内線維症の減少に対するActRIIA/B-Fc(配列番号69がFcドメインに融合している)の効果を解析した。簡単に述べれば、12~13か月齢の雌C57Bl/10およびmdxマウスを、ビヒクルまたは20mg/kgのActRIIA/B-Fcで週2回、12週間処置した。剖検時に横隔膜と大腿四頭筋(quadriceps)を採取し、直ちに液体窒素でフラッシュ凍結した。タンパク質を組織から抽出し、Hitachi L 8900アミノ酸分析器で高速液体クロマトグラフィーにかける前に加水分解した。個々のアミノ酸含有量は、クロマトグラフィーのピークを既知の標準と比較することによって決定した。コラーゲンに特異的なアミノ酸で総線維症含有量の代替物であるヒドロキシプロリンを、抽出した総タンパク質のグラム当たりmgとして計算した。図2に示すように、ActRIIA/B-Fcによる処理は、高齢mdxマウスにおける線維症の発症を減弱させた。
【0201】
実施例3-非ヒト霊長類の赤血球量に対するActRIIA/B-Fcの効果
2~3歳のカニクイザルにビヒクルまたは3、10または50mg/kgのActRIIA/B-Fc(配列番号69がFcドメインに融合している)を3か月間隔週投与した。92日目に、血液をKEDTAチューブに採取し、Advia血液学アナライザーで分析した。図3に示すように、ActRIIA/B-Fcによる処理は、非ヒト霊長類における赤血球量を用量依存的に増加させた。Hct-ヘマトクリット、Hgb-ヘモグロビン、RBC-赤血球数。
【0202】
実施例4:PAHに対する細胞外ActRIIA変異体の効果
一実験において、雄ラットにモノクロタリン(MCT,40mg/kg)を単回皮下注射してPAHを誘発した。ActRIIA変異体による処置がPAHの発症を予防できるかどうかを決定するために、ラットをPAH誘発の24時間後にビヒクルまたはActRIIA変異体処置群にランダム化し、週2回、ActRIIA変異体(5または15mg/kg)またはビヒクルで21日間処置する。14日目に、動物を仰臥位に保持した状態で、1.5%イソフルランでラットを麻酔し、小動物高周波超音波プローブを用いて肺血流加速、右心室機能と肥大および左心室機能を検出することにより、心電図で心室機能と右心室(RV)リモデリングを検査する。僧帽弁および三尖弁を横断するドップラーを用いて、ActRIIA変異体による処置が明らかな逆流または病変を誘発するかどうかを判定する。21日目に、ラットをペントバルビタールで麻酔し、気管を通して挿管し、げっ歯類用人工呼吸器を用いて機械的に換気する。血行動態は、右室心尖部から液体を満たしたカテーテルを用いて評価する。ラットにPBS、次いで1%パラホルムアルデヒド(PFA)を灌流する。右室肥大(RVH)を測定するために、心臓を摘出し、左室+中隔(LV+S)から右室自由壁を切除し、別々に秤量した(weighted)。RVHの程度は、RV/(LV+S)の比から決定される。
【0203】
第2の実験では、雄ラットにモノクロタリン(MCT,40mg/kg)を単回皮下投与してPAHを誘発した。ActRIIA変異体による処置がPAHの進行を遅延するかまたは低下させるかを決定するために、ラットに18日目にMCTを再度注射し、ビヒクルまたはActRIIA変異体処置群にランダム化した。ラットにActRIIA変異体(15mg/kg)またはビヒクルを週3回注射する。上述のように第35日に血行動態およびRVHを検査する。
【0204】
実施例5:細胞外ActRIIA変異体の投与による貧血の治療
本明細書に開示される方法によれば、当該技術分野の医師は、赤血球数、ヘモグロビンレベル、またはヘマトクリットなどの赤血球量のパラメータを増加させるように、貧血(例えば、ビタミン欠乏性貧血または慢性腎疾患に伴う貧血)を有するヒト患者などの対象を治療することができる。治療方法は、血液学的パラメータを測定する血液試験に基づいて、治療の候補として対象を診断または同定することを含むことができる。対象を治療するために、当該技術分野の医師は、細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)を含有する組成物を同対象に投与することができる。細胞外ActRIIA変異体を含有する組成物は、例えば、非経口注射(例えば、静脈内注射)によって、対象に投与して、貧血を治療することができる。細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)は、治療有効量、例えば、0.01~500mg/kg(例えば、0.01、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、150、200、250、300、350、400、450、または500mg/kg)にて投与される。いくつかの実施形態において、細胞外ActRIIA変異体は、隔月で、月に1回、2週間に1回、または少なくとも週に1回以上(例えば、週に1、2、3、4、5、6、または7回またはそれ以上)投与される。細胞外ActRIIA変異体は、ヘモグロビンレベルを増加させる、赤血球数を増加させる、またはヘマトクリットを増加させるのに十分な量で投与される。
【0205】
組成物を患者に投与した後、当業者は、様々な方法により治療に応答した患者の改善を監視することができる。たとえば、医師は血液試験を実施することによって、患者のヘモグロビンレベル、赤血球数、またはヘマトクリットを監視することができる。組成物の投与前の試験結果と比較して、組成物の投与後に、患者がヘモグロビンレベル、赤血球数、またはヘマトクリットを改善するという発見は、患者が治療に好意的に反応していることを示す。その後の用量は、必要に応じて決定および投与することができる。
【0206】
実施例6-細胞外ActRIIA変異体の投与による繊維症の治療
本明細書に開示される方法によれば、当該技術分野の医師は、線維症の症状を低減するか、線維症の進行を遅延もしくは停止させることができるように、繊維症(例えば、慢性腎疾患に伴う肺線維症または線維症)を有するヒト患者などの対象を治療することができる。治療方法は、繊維症についての臨床検査(例えば、X線またはCTスキャンのような画像試験)に基づいて、対象を治療の候補として診断または識別することを含むことができる。対象を治療するために、当該技術分野の医師は、細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)を含有する組成物を同対象に投与することができる。細胞外ActRIIA変異体を含有する組成物は、例えば、繊維症を治療するために非経口注射(例えば、静脈内注射)によって、対象に投与することができるか、または線維性組織または臓器に局所投与(例えば、注射)することができる。細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)は、治療有効量、例えば、0.01~500mg/kg(例えば、0.01、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、150、200、250、300、350、400、450、または500mg/kg)にて投与される。いくつかの実施形態において、細胞外ActRIIA変異体は、隔月で、月に1回、2週間に1回、または少なくとも週に1回以上(例えば、週に1、2、3、4、5、6、または7回またはそれ以上)投与される。細胞外ActRIIA変異体は、線維症の症状を低減するか、線維症の進行を遅延もしくは停止させるのに十分な量で投与される。
【0207】
組成物を患者に投与した後、当業者は、様々な方法により治療に応答した患者の改善を監視することができる。たとえば、医師は、画像試験を実施して患者の繊維症を監視し、かつ標準的な臨床試験を用いて患者の症状を監視することができる。組成物の投与前の試験結果と比較して、組成物の投与後に、患者の症状が低減したか、あるいは患者の繊維症の進行が遅延もしくは停止したという発見は、患者が治療に好意的に反応していることを示す。その後の用量は、必要に応じて決定および投与することができる。
【0208】
実施例7-細胞外ActRIIA変異体の投与による肺高血圧症の治療
本明細書に開示される方法によれば、当該技術分野の医師は、PHの症状を低減するか、PHの進行を遅延もしくは停止させることができるように、肺高血圧症(PH、例えば、PAH)を有するヒト患者などの対象を治療することができる。治療方法は、PHについての標準的な臨床検査(例えば、心エコー図、心電図、胸部X線、右心カテーテル検査)に基づいて、対象を治療の候補として診断または識別することを含むことができる。対象を治療するために、当該技術分野の医師は、細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)を含有する組成物を同対象に投与することができる。細胞外ActRIIA変異体を含有する組成物は、例えば、非経口注射(例えば、静脈内注射)によって、対象に投与して、PHを治療することができる。細胞外ActRIIA変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIA変異体)は、治療有効量、例えば、0.01~500mg/kg(例えば、0.01、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、150、200、250、300、350、400、450、または500mg/kg)にて投与される。いくつかの実施形態において、細胞外ActRIIA変異体は、隔月で、月に1回、2週間に1回、または少なくとも週に1回以上(例えば、週に1、2、3、4、5、6、または7回またはそれ以上)投与される。細胞外ActRIIA変異体は、PHの症状を低減するか、PHの進行を遅延もしくは停止させるのに十分な量で投与される。
【0209】
組成物を患者に投与した後、当業者は、様々な方法により治療に応答した患者の改善を監視することができる。たとえば、医師は、標準的な臨床試験を用いて、かつ患者の自己報告を用いて、患者の症状を監視することができる。組成物の投与前の試験結果と比較して、組成物の投与後に、患者の症状でPHの症状が低減したか、あるいは患者のPHの進行が遅延もしくは停止したという発見は、患者が治療に好意的に反応していることを示す。その後の用量は、必要に応じて決定および投与することができる。
【0210】
その他の実施形態
本発明をその特定の実施形態に関して記載してきたが、さらなる改変が可能であり、本願は、一般に本発明の原理に従う本発明のいずれの変形形態、使用、または適応も包含することが意図され、本開示からのそのような逸脱を含むことは、本発明が属する技術分野内の既知または関連の実施の範囲内にあり、以上に示す本質的特徴に該当し得ることが理解されるであろう。
【0211】
各個の刊行物、特許、および特許出願の全内容が本明細書の一部として援用されることが具体的かつ個々に示される場合と同等に、全ての刊行物、特許、および特許出願の全内容は本明細書の一部として援用される。
【0212】
他の実施形態も以下の特許請求の範囲内にある。
図1-1】
図1-2】
図2
図3
【配列表】
2024023673000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-01-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0212
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0212】
他の実施形態も以下の特許請求の範囲内にある。
以下に、上記実施形態から把握できる技術思想を付記として記載する。
[付記1]線維症を有するか、あるいは繊維症を発症するリスクにある対象を治療する方法であって、表4の組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
[付記2]線維症を低減または予防することが必要である対象において、繊維症を低減または予防する方法であって、表4の組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
[付記3]線維症を遅延、阻害または好転させることが必要である対象において、繊維症を遅延、阻害または好転させる方法であって、表4の組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
[付記4]線維症の発症を減弱する方法であって、表4の組成物のポリペプチドの治療有効量を対象に投与することを含む、方法。
[付記5]線維症を好転させる方法であって、表4の組成物のポリペプチドの治療有効量を対象に投与することを含む、方法。
[付記6]繊維症を有するか、あるいは繊維症を発症するリスクがある対象において、ミオスタチン、アクチビン、およびBMP9のシグナル伝達の少なくとも1つに作用する方法であって、表4の組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
[付記7]前記線維症は、化学療法薬誘発線維症、放射線誘発線維症、肺線維症、肝線維症、腎線維症、角膜線維症、心線維症、骨髄線維症、縦隔線維症、後腹膜線維症、骨関節線維症、関節線維症、組織線維症、腫瘍間質、線維形成性腫瘍、外科的癒着、肥厚性瘢痕、またはケロイドである、付記1~6のいずれか1つに記載の方法。
[付記8]前記組織線維症は、筋組織、皮膚表皮、皮膚真皮、腱、軟骨、膵臓組織、子宮組織、神経組織、精巣、卵巣、副腎、動脈、静脈、結腸、小腸、大腸、胆道および腸からなる群から選択される組織に作用する線維症である、付記7に記載の方法。
[付記9]前記線維症は、創傷、火傷、B型またはC型肝炎感染、脂肪肝疾患、住血吸虫感染、腎疾患、慢性腎疾患、心疾患、黄斑変性、網膜または硝子体網膜症、クローン病、全身性または局所性強皮症、アテローム性動脈硬化症、または再狭窄、に関連している、付記1~6のいずれか一項に記載の方法。
[付記10]前記方法は線維化した組織または臓器の機能を改善する、付記1~9のいずれか1つに記載の方法。
[付記11]赤血球レベルを増加させることが必要である対象において、赤血球レベルを増加させる方法であって、表4の組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
[付記12]赤血球の形成を促進または増加させることが必要である対象において、赤血球の形成を促進または増加させる方法であって、表4の組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
[付記13]前記対象は貧血または失血を患っているかまたは発症するリスクがある、付記11または付記12に記載の方法。
[付記14]低赤血球レベル、低ヘマトクリット、または低ヘモグロビンレベルを含む疾患または病態を有するか、またはそれらを発症するリスクのある対象においてミオスタチン、アクチビンおよびBMP9のシグナル伝達の少なくとも1つに作用する方法であって、表4の組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
[付記15]前記疾患または病態は貧血または失血である、付記14に記載の方法。
[付記16]前記貧血または失血は、癌、癌治療、慢性腎疾患、急性腎疾患または腎不全、慢性腎疾患または腎不全、骨髄異形成症候群、サラセミア、栄養欠乏、薬物に対する有害反応、炎症性または自己免疫疾患、脾腫、ポルフィリン症、血管炎、溶血、骨髄欠損、骨髄移植、急性肝疾患、慢性肝疾患、糖尿病、急性出血、慢性出血、感染、異常ヘモグロビン症、薬物使用、アルコール乱用、チャーグ・ストラウス症候群、フェルティ症候群、移植片対宿主病、造血幹細胞移植、骨髄線維症、汎血球減少症、純粋赤血球無形成症、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、シュワッハマン症候群、高齢、輸血の禁忌、手術、外傷、創傷、潰瘍、尿路出血、消化管出血、頻繁な献血、または多量の月経出血と関連している、付記13または付記15に記載の方法。
[付記17]前記貧血は、再生不良性貧血、鉄欠乏性貧血、ビタミン欠乏性貧血、慢性疾患に伴う貧血、骨髄疾患に関連する貧血、溶血性貧血、鎌状赤血球貧血、小球性貧血、低色素性貧血、鉄芽球性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、ファンコーニ貧血、または過剰芽細胞を伴う不応性貧血である、付記13、15または16のいずれか1つに記載の方法。
[付記18]貧血を有するか、あるいはそれを発症するリスクにある対象を治療する方法であって、表4の組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
[付記19]前記貧血は、癌、癌治療、慢性腎疾患、急性腎疾患または腎不全、慢性腎疾患または腎不全、骨髄異形成症候群、サラセミア、栄養欠乏、薬物に対する有害反応、炎症性または自己免疫疾患、脾腫、ポルフィリン症、血管炎、溶血、骨髄欠損、骨髄移植、急性肝疾患、慢性肝疾患、糖尿病、急性出血、慢性出血、感染、異常ヘモグロビン症、薬物使用、アルコール乱用、高齢、チャーグ・ストラウス症候群、フェルティ症候群、移植片対宿主病、造血幹細胞移植、骨髄線維症、汎血球減少症、純粋赤血球無形成症、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、シュワッハマン症候群、輸血の禁忌、手術、外傷、創傷、潰瘍、尿路出血、消化管出血、頻繁な献血、または多量の月経出血と関連している、付記18に記載の方法。
[付記20]前記貧血は、再生不良性貧血、鉄欠乏性貧血、ビタミン欠乏性貧血、慢性疾患に伴う貧血、骨髄疾患に関連する貧血、溶血性貧血、鎌状赤血球貧血、小球性貧血、低色素性貧血、鉄芽球性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、ファンコーニ貧血、または過剰芽細胞を伴う不応性貧血である、付記18または19に記載の方法。
[付記21]前記対象はエリスロポイエチン(EPO)での治療に良好に反応しないか、あるいはEPOの副作用に感受性である、付記11~20のいずれか1つに記載の方法。
[付記22]前記方法は、赤血球形成、赤血球数、ヘマトクリット、またはヘモグロビンレベルを増加させる、付記11~21のいずれか1つに記載の方法。
[付記23]前記方法は前記対象の輸血の必要性を低減する、付記11~22のいずれか1つに記載の方法。
[付記24]肺高血圧症(PH)を予防することが必要である対象において、肺高血圧症を予防する方法であって、表4の組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
[付記25]PHの進行を遅延または抑制することが必要である対象において、PHの進行を遅延または抑制する方法であって、表4の組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
[付記26]PHを有するかまたはPHを発症するリスクのある対象を治療する方法であって、表4の組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
[付記27]PHを有するかまたはPHを発症するリスクのある対象において、ミオスタチン、アクチビンおよびBMP9のシグナル伝達の少なくとも1つに作用する方法であって、表4の組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
[付記28]前記PHは肺動脈高血圧症(PAH)である、付記24~27のいずれか1つに記載の方法。
[付記29]前記PAHは突発性PAHである、付記28に記載の方法。
[付記30]前記PAHは遺伝性PAHである、付記28に記載の方法。
[付記31]前記PAHは、HIV感染、住血吸虫症、肝硬変、先天性心臓異常、門脈圧亢進症、肺静脈閉塞症、肺毛細血管腫症、結合組織障害、自己免疫障害または薬物の使用もしくは乱用に関連している、付記28に記載の方法。
[付記32]前記PHは静脈性PHである、付記24~27のいずれか1つに記載の方法。
[付記33]前記静脈性PHは、左心室収縮機能不全、左心室拡張機能不全、心臓弁膜症、先天性心筋症、または先天性もしくは後天性肺静脈狭窄に関連している、付記32に記載の方法。
[付記34]前記PHは低酸素性PHである、付記24~27のいずれか1つに記載の方法。
[付記35]前記低酸素性PHは、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、睡眠障害呼吸、肺線維症、肺胞低換気障害、高地への慢性曝露、または発達異常に関連している、付記34に記載の方法。
[付記36]前記PHは血栓塞栓性PHである、付記24~27のいずれか1つに記載の方法。
[付記37]前記血栓塞栓性PHは、慢性血栓塞栓性肺高血圧症、肺塞栓症、血管肉腫、動脈炎、先天性肺動脈狭窄症、または寄生虫感染症に関連している、付記36に記載の方法。
[付記38]前記PHはその他のPHである、付記24~27のいずれか1つに記載の方法。
[付記39]前記その他のPHは、血液疾患、全身性疾患、代謝障害、肺腫瘍性血栓性微小血管症、線維性縦隔炎、慢性腎不全、または区域性肺高血圧症に関連している、付記38に記載の方法。
[付記40]前記方法はPHの1つまたは複数の症状の頻度または重症度を低減する、付記24~39のいずれか1つに記載の方法。
[付記41]前記方法は肺血管リモデリング、または対象の心臓における血管リモデリングを低減する、付記24~40のいずれか1つに記載の方法。
[付記42]前記方法は右心室肥大を低減する、付記24~41のいずれか1つに記載の方法。
[付記43]前記方法は肺血管抵抗を低減する、付記24~42のいずれか1つに記載の方法。
[付記44]前記方法は6分間歩行試験におけるパフォーマンスを改善する、付記24~43のいずれか1つに記載の方法。
[付記45]前記方法はアクチビンおよびミオスタチンの少なくとも一方のそれらの内因性受容体への結合を低減または阻害する、付記1~44のいずれか1つに記載の方法。
[付記46]前記組成物は、線維症を低減するのに、線維症を防止するのに、線維症の発症のリスクを低下させるのに、繊維症の発症を遅延または減弱するのに、繊維症の進行を遅延、抑制または逆転するのに、繊維症を好転させるのに、繊維症を治療するのに、線維症の1つ以上の症状を低減するのに、線維性の組織または臓器の機能を改善するのに、対象におけるミオスタチン、アクチビンおよびBMP9の少なくとも1つのシグナル伝達に作用するのに、あるいはアクチビンおよびミオスタチンの少なくとも一方のそれらの内因性受容体への結合を低減するかまたは阻害するのに、十分な量で投与される、付記1~10および45のいずれか1つに記載の方法。
[付記47]前記組成物は、赤血球レベルを増加させるのに、ヘモグロビンレベルを増加させるのに、赤血球形成を増加させるのに、赤血球数を増加させるのに、ヘマトクリットを増加させるのに、輸血の必要性を低減させるのに、貧血を治療するのに、対象におけるミオスタチン、アクチビン、およびBMP9の少なくとも1つのシグナル伝達に作用するのに、または、アクチビンおよびミオスタチンの少なくとも一方のそれらの内因性受容体への結合を減少させるかまたは阻害するのに、十分な量で投与される、付記11~23および45のいずれか1つに記載の方法。
[付記48]前記組成物は、PHを予防するのに、PHの発症リスクを低減するのに、PHの1つ以上の症状の重症度または頻度を低減するのに、PHの発症を遅延するのに、PHの進行を遅延または抑制するのに、PHを治療するのに、肺血管リモデリングを低減するのに、心臓の血管リモデリングを低減するのに、右心室肥大を低減するのに、肺血管抵抗を低減するのに、6分間歩行試験のパフォーマンスを改善するのに、対象におけるミオスタチン、アクチビンおよびBMP9の少なくとも1つのシグナル伝達に作用するのに、あるいはアクチビンおよびミオスタチンの少なくとも一方のそれらの内因性受容体への結合を低減するかまたは阻害するのに、十分な量で投与される、付記24~45のいずれか1つに記載の方法。
[付記49]前記方法は前記対象において血管合併症を引き起こさない、付記1~48のいずれか1つに記載の方法。
[付記50]前記方法は血管透過性または漏出を増加させない、付記49に記載の方法。