(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023707
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】光拡散層形成用塗料、プロジェクションスクリーン用フィルム、及びプロジェクションスクリーン
(51)【国際特許分類】
G03B 21/62 20140101AFI20240214BHJP
C09D 133/04 20060101ALI20240214BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240214BHJP
【FI】
G03B21/62
C09D133/04
C09D7/61
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023213436
(22)【出願日】2023-12-19
(62)【分割の表示】P 2019201113の分割
【原出願日】2019-11-06
(31)【優先権主張番号】P 2018208519
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000250384
【氏名又は名称】リケンテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184653
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 寧
(72)【発明者】
【氏名】橋本岳人
(57)【要約】
【課題】
光拡散層形成用塗料であって、高い透明性と高い映像表示性とのバランスに優れたプロジェクションスクリーンを得ることのできる塗料、該塗料を用いて形成された光拡散層を含むプロジェクションスクリーン用フィルム、及びプロジェクションスクリーンを提供すること。
【解決手段】
(A)基材樹脂100質量部;及び、(B)希土類燐酸塩微粒子0.1~50質量部;を含むプロジェクションスクリーンの光拡散層形成用塗料。好ましくは更に(B)希土類燐酸塩微粒子100質量部に対して、(C)シランカップリング剤1~30質量部、(D)イソシアネート基とイソシアネート基以外の重合性官能基を有する化合物1~30質量部を含む。上記成分(A)基材樹脂は(A1)多官能ポリ(メタ)アクリレートを含むものが好ましい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)基材樹脂 100質量部;及び、
(B)希土類燐酸塩微粒子 0.1~50質量部;
を含むプロジェクションスクリーンの光拡散層形成用塗料。
【請求項2】
上記成分(A)基材樹脂が、(A1)多官能ポリ(メタ)アクリレートを含む請求項1に記載の塗料。
【請求項3】
上記成分(A1)のゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した微分分子量分布曲線から算出したポリスチレン換算の質量平均分子量が1千以上である請求項2に記載の塗料。
【請求項4】
更に、上記成分(B)希土類燐酸塩微粒子 100質量部に対して、(C)シランカップリング剤 1~30質量部を含む、請求項1~3の何れか1項に記載の塗料。
【請求項5】
更に、上記成分(B)希土類燐酸塩微粒子 100質量部に対して、(D)イソシアネート基とイソシアネート基以外の重合性官能基を有する化合物 1~30質量部を含む、請求項1~4の何れか1項に記載の塗料。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の塗料を用いて形成された光拡散層を含むプロジェクションスクリーン用フィルム。
【請求項7】
フィルム基材の層の少なくとも片面の上に光拡散層を有し;
上記光拡散層は、(A)基材樹脂、及び(B)希土類燐酸塩微粒子を含む塗料を用いて形成され;
下記特性(イ)~(ハ)を満たすプロジェクションスクリーン用フィルム:
(イ)全光線透過率 85%以上;
(ロ)ヘーズ 30%以下;及び、
(ハ)拡散率 2%以上。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のプロジェクションスクリーン用フィルムを含むプロジェクションスクリーン。
【請求項9】
請求項1~5の何れか1項に記載の塗料を用いて形成された光拡散層を含むプロジェクションスクリーン。
【請求項10】
プロジェクションスクリーン用フィルムの生産方法であって、
(1)(B)希土類燐酸塩微粒子 100質量部、(C)シランカップリング剤 1~30質量部;及び、(E)溶剤 500~2000質量部を混合し、攪拌して混合液1を得る工程;
(2)上記工程(1)で得た混合液1に、更に、(D)イソシアネート基とイソシアネート基以外の重合性官能基を有する化合物を、その配合量が、上記成分(B)希土類燐酸塩微粒子 100質量部に対して、1~30質量部となるように配合し、混合攪拌して混合液2を得る工程;
(3)上記工程(2)で得た混合液2に、更に、(A)基材樹脂を配合し、混合攪拌して、上記成分(A)基材樹脂 100質量部;及び、上記成分(B)希土類燐酸塩微粒子 0.1~50質量部;を含む塗料を得る工程;
(4)上記工程(3)で得た塗料を用い、フィルム基材の少なくとも片面の上に、光拡散層を形成する工程;
を含む、上記生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散層形成用塗料、プロジェクションスクリーン用フィルム、及びプロジェクションスクリーンに関する。更に詳しくは、プロジェクションスクリーンの光拡散層を形成するために用いる塗料、該塗料を用いて形成された光拡散層を含むプロジェクションスクリーン用フィルム、及びプロジェクションスクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、ショッピングセンター、及びデパートなどの商業施設のガラス窓やガラス張りの飾り棚;及び、イベント会場のガラス製の間仕切りなどの透過視認性を有する媒体に、透明性を有するプロジェクションスクリーン用フィルムを貼合し、通常は透過視認性を維持しつつ、所望のときに、上記プロジェクションスクリーン用フィルムに商品、サービス、及びニュースなどの映像コンテンツを投影表示することが行われている。このような使用をするためのプロジェクションスクリーン用フィルムには、高い透過視認性(高い透明性)と投影表示される映像が鮮明に見えること(高い映像表示性)という、相反する特性の両立が求められる。更に投影表示される映像を鮮明に見ることのできる角度(プロジェクションスクリーンを見る角度)が広いこと(広い視野角)、投影表示される映像に色収差が生じないこと、及びプロジェクションスクリーン用フィルムそのものに色味のないことなども求められる。透明性を有するプロジェクションスクリーン用フィルムとしては、多くの提案がある(例えば、特許文献1、2)。しかし、これらの技術は、上述のような使用をするためのプロジェクションスクリーン用フィルムとしては、十分に満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015‐212800号公報
【特許文献2】特開2017‐215355号公報
【特許文献3】国際公開第2018/025800号
【特許文献4】特開2014‐201495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、プロジェクションスクリーンの光拡散層形成用塗料であって、高い透明性と高い映像表示性とのバランスに優れたプロジェクションスクリーンを得ることのできる塗料、該塗料を用いて形成された光拡散層を含むプロジェクションスクリーン用フィルム、及びプロジェクションスクリーンを提供することにある。本発明の更なる課題は、プロジェクションスクリーンの光拡散層形成用塗料であって、高い透明性と高い映像表示性とのバランスに優れ、視野角が広く、色収差が生じ難く(色収差が十分に小さく)、色味のない(白色透明である)プロジェクションスクリーンを得ることのできる塗料、該塗料を用いて形成された光拡散層を含むプロジェクションスクリーン用フィルム、及びプロジェクションスクリーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意研究した結果、特定の塗料により、上記課題を達成できることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、(A)基材樹脂 100質量部;及び、(B)希土類燐酸塩微粒子 0.1~50質量部;を含むプロジェクションスクリーンの光拡散層形成用塗料である。
【0007】
第2の発明は、上記成分(A)基材樹脂が、(A1)多官能ポリ(メタ)アクリレートを含む第1の発明に記載の塗料である。
【0008】
第3の発明は、上記成分(A1)のゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した微分分子量分布曲線から算出したポリスチレン換算の質量平均分子量が1千以上である第2の発明に記載の塗料である。
【0009】
第4の発明は、更に、上記成分(B)希土類燐酸塩微粒子 100質量部に対して、(C)シランカップリング剤 1~30質量部を含む、第1~3の発明の何れか1に記載の塗料である。
【0010】
第5の発明は、更に、上記成分(B)希土類燐酸塩微粒子 100質量部に対して、(D)イソシアネート基とイソシアネート基以外の重合性官能基を有する化合物 1~30質量部を含む、第1~4の発明の何れか1に記載の塗料である。
【0011】
第6の発明は、第1~5の発明の何れか1に記載の塗料を用いて形成された光拡散層を含むプロジェクションスクリーン用フィルムである。
【0012】
第7の発明は、フィルム基材の層の少なくとも片面の上に光拡散層を有し;上記光拡散層は、(A)基材樹脂、及び(B)希土類燐酸塩微粒子を含む塗料を用いて形成され;下記特性(イ)~(ハ)を満たすプロジェクションスクリーン用フィルムである:
(イ)全光線透過率 85%以上;
(ロ)ヘーズ 30%以下;及び、
(ハ)拡散率 2%以上。
【0013】
第8の発明は、第6の発明又は第7の発明に記載のプロジェクションスクリーン用フィルムを含むプロジェクションスクリーンである。
【0014】
第9の発明は、第1~5の発明の何れか1に記載の塗料を用いて形成された光拡散層を含むプロジェクションスクリーンである。
【0015】
第10の発明は、プロジェクションスクリーン用フィルムの生産方法であって、
(1)(B)希土類燐酸塩微粒子 100質量部、(C)シランカップリング剤 1~30質量部;及び、(E)溶剤 500~2000質量部を混合し、攪拌して混合液1を得る工程;
(2)上記工程(1)で得た混合液1に、更に、(D)イソシアネート基とイソシアネート基以外の重合性官能基を有する化合物を、その配合量が、上記成分(B)希土類燐酸塩微粒子 100質量部に対して、1~30質量部となるように配合し、混合攪拌して混合液2を得る工程;
(3)上記工程(2)で得た混合液2に、更に、(A)基材樹脂を配合し、混合攪拌して、上記成分(A)基材樹脂 100質量部;及び、上記成分(B)希土類燐酸塩微粒子 0.1~50質量部;を含む塗料を得る工程;
(4)上記工程(3)で得た塗料を用い、フィルム基材の少なくとも片面の上に、光拡散層を形成する工程;
を含む、上記生産方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の塗料を用いて形成された光拡散層を含むプロジェクションスクリーン用フィルムは、高い透明性と高い映像表示性とのバランスに優れる。本発明の好ましい塗料を用いて形成された光拡散層を含むプロジェクションスクリーン用フィルムは、高い透明性と高い映像表示性とのバランスに優れ、視野角が広く、色収差が生じ難く(色収差が十分に小さく)、色味がない(白色透明である)。そのためプロジェクションスクリーン用フィルムとして、好適に用いることができる。特に、ガラス窓などの透過視認性を有する媒体に貼合して用いるプロジェクションスクリーン用フィルムであって、通常は透過視認性を維持しつつ、所望のときに、映像コンテンツを投影表示するプロジェクションスクリーン用のフィルムとして、好適に用いることができる。
【0017】
本発明の塗料を用いて形成された光拡散層を含むプロジェクションスクリーンは、高い透明性と高い映像表示性とのバランスに優れる。本発明の好ましい塗料を用いて形成された光拡散層を含むプロジェクションスクリーンは、高い透明性と高い映像表示性とのバランスに優れ、視野角が広く、色収差が生じ難く(色収差が十分に小さく)、色味がない(白色透明である)。そのためプロジェクションスクリーンとして、好適に用いることができる。特に、通常は透過視認性を維持しつつ、所望のときに、映像コンテンツを投影表示するプロジェクションスクリーンとして、好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において「樹脂」の用語は、2種以上の樹脂を含む樹脂混合物や、樹脂以外の成分を含む樹脂組成物をも含む用語として使用する。本明細書において「フィルム」の用語は、「シート」と相互交換的に又は相互置換可能に使用する。本明細書において、「フィルム」及び「シート」の用語は、工業的にロール状に巻き取ることのできるものに使用する。「板」の用語は、工業的にロール状に巻き取ることのできないものに使用する。また本明細書において、ある層と他の層とを順に積層することは、それらの層を直接積層すること、及び、それらの層の間にアンカーコートなどの別の層を1層以上介在させて積層することの両方を含む。
【0019】
本明細書において数値範囲に係る「以上」の用語は、ある数値又はある数値超の意味で使用する。例えば、20%以上は、20%又は20%超を意味する。数値範囲に係る「以下」の用語は、ある数値又はある数値未満の意味で使用する。例えば、20%以下は、20%又は20%未満を意味する。更に数値範囲に係る「~」の記号は、ある数値、ある数値超かつ他のある数値未満、又は他のある数値の意味で使用する。ここで、他のある数値は、ある数値よりも大きい数値とする。例えば、10~90%は、10%、10%超かつ90%未満、又は90%を意味する。更に、数値範囲の上限と下限とは、任意に組み合わせることができるものとし、任意に組み合わせた実施形態が読み取れるものとする。例えば、ある特性の数値範囲に係る「通常10%以上、好ましくは20%以上である。一方、通常40%以下、好ましくは30%以下である。」や「通常10~40%、好ましくは20~30%である。」という記載から、そのある特性の数値範囲は、一実施形態において10~40%、20~30%、10~30%、又は20~40%であることが読み取れるものとする。
【0020】
実施例以外において、又は別段に指定されていない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用されるすべての数値は、「約」という用語により修飾されるものとして理解されるべきである。特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限しようとすることなく、各数値は、有効数字に照らして、及び通常の丸め手法を適用することにより解釈されるべきである。
【0021】
1.光拡散層形成用塗料:
本発明の塗料は、(A)基材樹脂、及び(B)希土類燐酸塩微粒子を含む。本発明の塗料は、好ましい実施形態の1つにおいて、更に(C)シランカップリング剤を含む。本発明の塗料は、好ましい実施形態の1つにおいて、更に(D)イソシアネート基とイソシアネート基以外の重合性官能基を有する化合物を含む。本発明の塗料は、より好ましい実施形態の1つにおいて、(A)基材樹脂、(B)希土類燐酸塩微粒子、(C)シランカップリング剤、及び(D)イソシアネート基とイソシアネート基以外の重合性官能基を有する化合物を含む。以下、各成分について説明する。
【0022】
(A)基材樹脂:
上記成分(A)基材樹脂は、上記成分(B)希土類燐酸塩微粒子を包含し、塗膜を形成する働きをする。
【0023】
上記成分(A)としては、例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂などの硬化性樹脂、粘着剤、接着剤、及び熱可塑性樹脂などをあげることができる。これらの中で、上記成分(A)中に上記成分(B)を良好に分散させる観点;光拡散層の厚みを均一にし、映像表示性を均一に発現させる観点;及び、プロジェクションスクリーンが物理的な衝撃を受けたとしても、光拡散層の厚みが変化して映像表示性の均一さが損なわれるのを抑制することができるようにする観点から;活性エネルギー線硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂などの硬化性樹脂が好ましい。
【0024】
上記熱硬化性樹脂は、熱により重合・硬化して、塗膜を形成することができるものである。上記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、2液硬化型ウレタン樹脂、及びポリウレタンなどをあげることができる。
【0025】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂は、紫外線や電子線等の活性エネルギー線により重合・硬化して、塗膜を形成することができるものである。
【0026】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n‐ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2‐エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルセロソルブ(メタ)アクリレート、2‐メトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2‐アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、及びトリメチルシロキシエチルメタクリレートなどの(メタ)アクリロイル基含有単官能反応性モノマー;N‐ビニルピロリドン、スチレンなどの単官能反応性モノマーなどをあげることができる。本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。上記活性エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2’‐ビス(4‐(メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオキシフェニル)プロパン、及び2,2’‐ビス(4‐(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレンオキシフェニル)プロパンなどの(メタ)アクリロイル基含有2官能反応性モノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、及びエトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリロイル基含有3官能反応性モノマー;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールテトラメタクリレートなどの(メタ)アクリロイル基含有4官能反応性モノマー;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの(メタ)アクリロイル基含有6官能反応性モノマー;及び、トリペンタエリスリトールオクタアクリレートなどの(メタ)アクリロイル基含有8官能反応性モノマーなどの多官能(メタ)アクリレートをあげることができる。上記活性エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリアクリル(メタ)アクリレート、ポリエポキシ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールポリ(メタ)アクリレート、及びポリエーテル(メタ)アクリレートなどのプレポリマー又はオリゴマーであって、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するものなどの多官能ポリ(メタ)アクリレートをあげることができる。
【0027】
上記硬化性樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる
【0028】
上記硬化性樹脂としては、高い透明性と高い映像表示性とのバランスをより優れたものにする観点から、上記活性エネルギー線硬化性樹脂が好ましく、多官能(メタ)アクリレートがより好ましく、多官能ポリ(メタ)アクリレートが更に好ましい。
【0029】
(A1)多官能ポリ(メタ)アクリレート:
上記成分(A1)多官能ポリ(メタ)アクリレートは、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー又はプレポリマーである。本明細書において、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。上記成分(A1)は、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するため、紫外線や電子線等の活性エネルギー線により重合・硬化して、塗膜を形成する働きをする。
【0030】
上記成分(A1)としては、例えば、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリアクリル(メタ)アクリレート、ポリエポキシ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールポリ(メタ)アクリレート、及び、ポリエーテル(メタ)アクリレートなどのプレポリマー又はオリゴマーであって、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するものあげることができる。これらの中で、表面硬度、及び塗膜外観の観点から、ポリウレタン(メタ)アクリレートであって、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するものが好ましい。
【0031】
上記ポリウレタン(メタ)アクリレートであって、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するものは、ウレタン構造(-NH-CO-O-)を有する化合物、又はその誘導体であって、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。
【0032】
上記ポリウレタン(メタ)アクリレートであって、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するものは、特に限定されないが、典型的には、1分子中に2個以上のイソシアネート基(-N=C=O)を有する化合物、ポリオール化合物、及び水酸基含有(メタ)アクリレートを用いて製造されるもの、即ち、これらの化合物に由来する構成単位を含むものであってよい。
【0033】
上記1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、及びメチレンビス(4‐シクロヘキシルイソシアネート)などの1分子中に2個のイソシアネート基を有する化合物をあげることができる。上記1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体、及びヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体などのポリイソシアネートをあげることができる。上記1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0034】
上記ポリオール化合物としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリカーボネートポリオールなどをあげることができる。
【0035】
上記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール;ポリエチレンオキサイド、及びポリプロピレンオキサイドなどのポリアルキレンオキサイド;エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体;エチレンオキサイドとテトラヒドロフランとの共重合体;2価フェノール化合物とポリオキシアルキレングリコールとの共重合体;及び2価フェノールと炭素数2~4のアルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2‐ブチレンオキサイド、及び1,4‐ブチレンオキサイドなど。)の1種以上との共重合体;などをあげることができる。
【0036】
上記ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(ブチレンアジペート)、ポリ(ネオペンチルアジペート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)、ポリ(ブチレンアゼラエート)、ポリ(ブチレンセバケート)、及びポリカプロラクトンなどをあげることができる。
【0037】
上記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリ(ブタンジオールカーボネート)、ポリ(ヘキサンジオールカーボネート)、及びポリ(ノナンジオールカーボネート)などをあげることができる。
【0038】
上記ポリオール化合物としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0039】
上記水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4‐ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6‐ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、及び2‐ヒドロキシ‐3‐(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのグリコール系(メタ)アクリレート;グリセリンジ(メタ)アクリレートなどのグリセリン系(メタ)アクリレート;脂肪酸変性‐グリシジル(メタ)アクリレートなどのグリシジル系(メタ)アクリレート;2‐ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどの燐原子含有(メタ)アクリレート;2‐(メタ)アクリロイロキシエチル‐2‐ヒドロキシプロピルフタレートなどのエステル又はエステル誘導体の(メタ)アクリル酸付加物;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びエチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどのペンタエリスリトール系(メタ)アクリレート;及び、カプロラクトン変性2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどのカプロラクトン変性(メタ)アクリレート;をあげることができる。上記水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0040】
上記成分(A1)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0041】
上記成分(A1)のゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略すことがある。)により測定した微分分子量分布曲線(以下、「GPC曲線」と略すことがある。)から算出したポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)は、上記成分(B)を良好に分散し、形成される塗膜の表面外観を良好にする観点から、好ましくは1千以上、より好ましくは2千以上、更に好ましくは3千以上、最も好ましくは4千以上であってよい。一方、上記成分(A1)を含む塗料の塗工性の観点から、好ましくは10万以下、より好ましくは7万以下、更に好ましくは5万以下であってよい。
【0042】
上記成分(A1)のGPC曲線から算出したポリスチレン換算のZ平均分子量(Mz)は、上記成分(B)を良好に分散し、形成される塗膜の表面外観を良好にする観点から、好ましくは2千以上、より好ましくは4千以上、更に好ましくは6千以上、最も好ましくは8千以上であってよい。一方、上記成分(A1)を含む塗料の塗工性の観点から、好ましくは20万以下、より好ましくは15万以下、更に好ましくは12万以下であってよい。
【0043】
GPCの測定は、システムとして東ソー株式会社の高速液体クロマトグラフィーシステム「HLC-8320(商品名)」(デガッサー、送液ポンプ、オートサンプラー、カラムオーブン及びRI(示差屈折率)検出器を含むシステム。)を使用し;GPCカラムとしShodex社のGPCカラム「KF-806L(商品名)」を2本、「KF-802(商品名)」及び「KF-801(商品名)」を各1本の合計4本を、上流側からKF-806L、KF-806L、KF-802、及びKF-801の順に連結して使用し;和光純薬工業株式会社の高速液体クロマトグラフ用テトラヒドロフラン(安定剤不含)を移動相として;流速1.0ミリリットル/分、カラム温度40℃、試料濃度1ミリグラム/ミリリットル、及び試料注入量100マイクロリットルの条件で行うことができる。各保持容量における溶出量は、測定試料の屈折率の分子量依存性が無いと見なしてRI検出器の検出量から求めることができる。また保持容量からポリスチレン換算分子量への較正曲線は、アジレントテクノロジー(Agilent Technology)株式会社の標準ポリスチレン「EasiCal PS-1(商品名)」(Plain Aの分子量6375000、573000、117000、31500、3480;Plain Bの分子量2517000、270600、71800、10750、705)を使用して作成することができる。解析プログラムは、東ソー株式会社の「TOSOH HLC-8320GPC EcoSEC(商品名)」を使用することができる。なおGPCの理論及び測定の実際については、共立出版株式会社の「サイズ排除クロマトグラフィー 高分子の高速液体クロマトグラフィー、著者:森定雄、初版第1刷1991年12月10日」、株式会社オーム社の「合成高分子クロマトグラフィー、編者:大谷肇、寶崎達也、初版第1刷2013年7月25日」などの参考書を参照することができる。
【0044】
図1に実施例で用いた下記成分(A1-1)の微分分子量分布曲線を示す。主要成分のピークトップと副成分のピークトップが認められ、そのピークトップ位置のポリスチレン換算分子量は、順に3600、及び430である。最も高分子量側の成分のポリスチレン換算分子量は39800と認められる。そして、全体のポリスチレン換算の数平均分子量は2000、質量平均分子量は4800、Z平均分子量は9600である。
【0045】
上記成分(A1)の1分子中の(メタ)アクリロイル基の数は、塗膜の表面硬度や耐擦傷性を高める観点から、好ましくは3個以上、より好ましくは4個以上、更に好ましくは5個以上であってよい。一方、耐クラック性の観点から、通常30個以下、好ましくは20個以下、より好ましくは12個以下、更に好ましくは10個以下であってよい。
【0046】
(B)希土類燐酸塩微粒子:
上記成分(B)希土類燐酸塩微粒子は、希土類(スカンジウム、イットリウム、並びにランタノイド(ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウム))の燐酸塩の微粒子である。上記成分(B)は、プロジェクションスクリーンの光拡散層に入射した光を散乱し、映像コンテンツを鮮明に投影表示することができるようにする働きをする。
【0047】
理論に拘束される意図はないが、上記成分(B)は高い屈折率と高いアッベ数を有しており、また屈折率の波長依存性が小さいことから、視野角が広く、色収差の生じ難い(色収差が十分に小さい)プロジェクションスクリーンを得ることができると考察される。また上記成分(B)は白色透明であるため、色味のないプロジェクションスクリーンを得ることができると考察される。
【0048】
上記成分(B)の平均粒子径は、塗膜の透明性を保持する観点から、通常20μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは6μm以下、更に好ましくは3μm以下、最も好ましくは1μm以下であってよい。一方、映像コンテンツを鮮明に投影表示することができるようにする観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、更に好ましくは0.08μm以上であってよい。
【0049】
本明細書において、粒子の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法で測定した粒子径分布曲線において、粒子の小さい方からの累積が50質量%となる粒子径である。上記粒子径分布曲線は、例えば、日機装株式会社のレーザー回折・散乱式粒度分析計「MT3200II(商品名)」を使用して測定することができる。
【0050】
上記成分(B)としては、例えば、特許文献3、4に記載されたものを好ましく用いることができる。
【0051】
上記成分(B)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0052】
上記成分(B)の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して、映像コンテンツを鮮明に投影表示することができるようにする観点から、通常0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上、最も好ましくは3質量部以上であってよい。一方、塗膜の透明性を保持する観点から、通常50質量部以下、好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下、最も好ましくは15質量部以下であってよい。
【0053】
(C)シランカップリング剤:
上記成分(C)シランカップリング剤は、加水分解性基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;アセトキシ基等のアシルオキシ基;クロロ基等のハロゲン基;など)、及び有機官能基(例えば、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、ウレイド基、及びイソシアヌレート基など)の少なくとも2種類の異なる反応性基を有するシラン化合物である。上記成分(C)は、上記成分(A)と上記成分(B)との混和性を高め、ひいては光拡散性塗料から形成される塗膜(光拡散層)の表面外観、耐湿熱性を向上させる働きをする。
【0054】
理論に拘束される意図はないが、上記成分(C)が上記成分(A)と上記成分(B)との混和性を高めることができるのは、上記成分(C)は、加水分解性基を有することから、上記成分(B)と化学結合を形成したり、強く相互作用したりすることができ、かつ上記成分(C)は、有機官能基を有することから、上記成分(A)と化学結合を形成したり、強く相互作用したりすることができるためと考察している。
【0055】
上記成分(C)としては、例えば、ビニル基を有するシランカップリング剤(ビニル基と加水分解性基を有するシラン化合物)、エポキシ基を有するシランカップリング剤(エポキシ基と加水分解性基を有するシラン化合物)、(メタ)アクリロキシ基(メタクリロキシ基又はアクリロキシ基)を有するシランカップリング剤((メタ)アクリロキシ基と加水分解性基を有するシラン化合物)、アミノ基を有するシランカップリング剤(アミノ基と加水分解性基を有するシラン化合物)、メルカプト基を有するシランカップリング剤(メルカプト基と加水分解性基を有するシラン化合物)、イソシアネート基を有するシランカップリング剤(イソシアネート基と加水分解性基を有するシラン化合物)、ウレイド基を有するシランカップリング剤(ウレイド基と加水分解性基を有するシラン化合物)、及びイソシアヌレート基を有するシランカップリング剤(イソシアヌレート基と加水分解性基を有するシラン化合物)などをあげることができる。
【0056】
上記ビニル基を有するシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、及びp‐スチリルトリメトキシシランなどをあげることができる。
【0057】
上記エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、2‐(3,4‐エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3‐グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3‐グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、及び3‐グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどをあげることができる。
【0058】
上記(メタ)アクリロキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3‐メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3‐メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3‐メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、及び3‐アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどをあげることができる。
【0059】
上記アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、N‐2‐(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N‐2‐(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、N‐2‐(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、
3‐トリエトキシシリル‐N‐(1,3‐ジメチル‐ブチリデン)プロピルアミン、N‐フェニル‐3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN‐(ビニルベンジル)‐2‐アミノエチル‐3‐アミノプロピルトリメトキシシランなどをあげることができる。
【0060】
上記メルカプト基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3‐メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、及び3‐メルカプトプロピルトリメトキシシランなどをあげることができる。
【0061】
上記イソシアネート基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3‐イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどをあげることができる。
【0062】
上記ウレイド基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3‐ウレイドプロピルトリメトキシシラン、及び3‐ウレイドプロピルトリエトキシシランなどをあげることができる。
【0063】
上記イソシアヌレート基を有するシランカップリング剤としては、例えば、トリス‐(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートなどをあげることができる。
【0064】
上記成分(C)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0065】
上記成分(C)の配合量は、上記成分(B)100質量部に対して、上記成分(A)と上記成分(B)との混和性向上効果を確実に得る観点から、通常1質量部以上、好ましくは4質量部以上、より好ましくは7質量部以上であってよい。一方、塗膜硬化性の観点から、及び透明性の観点から、通常30質量部以下、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下であってよい。
【0066】
本発明の塗料を生産する際に、上記成分(B)と上記成分(C)を混合攪拌後、上記成分(A)を加えて更に混合攪拌することは好ましい。上記成分(C)の上記成分(A)と上記成分(B)との混和性向上効果をより確実に得ることができる。
【0067】
(D)イソシアネート基とイソシアネート基以外の重合性官能基を有する化合物:
上記成分(D)イソシアネート基とイソシアネート基以外の重合性官能基を有する化合物は、1分子中に1個以上のイソシアネート基(-N=C=O)を有し、かつ1個以上のイソシアネート基以外の重合性官能基を有する化合物である。なお本明細書において、多官能(メタ)アクリレート又は多官能ポリ(メタ)アクリレートであって、イソシアネート基を有する化合物は、上記成分(A)ではなく、上記成分(D)に分類されるものとする。上記成分(D)は、上記成分(A)と上記成分(B)との混和性を高め、ひいては光拡散性塗料から形成される塗膜(光拡散層)の表面外観、耐湿熱性を向上させる働きをする。
【0068】
上記成分(D)の有するイソシアネート基以外の重合性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、及びメルカプト基などをあげることができる。これらの中で(メタ)アクリロイル基、及びビニル基が好ましい。
【0069】
上記成分(D)の有するイソシアネート基の数は、好ましくは1~3個、より好ましくは1個であってよい。上記成分(D)の有するイソシアネート基以外の重合性官能基の数は好ましくは1~3個、より好ましくは1~2個であってよい。
【0070】
上記成分(D)としては、例えば、2‐イソシアナトエチル(メタ)アクリレートなどの1分子中に1個のイソシアネート基と1個のイソシアネート基以外の重合性官能基を有する化合物;及び、1,1‐(ビス(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートなどの1分子中に1個のイソシアネート基と2個のイソシアネート基以外の重合性官能基を有する化合物;などをあげることができる。
【0071】
上記成分(D)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0072】
上記成分(D)の配合量は、上記成分(B)100質量部に対して、上記成分(A)と上記成分(B)との混和性向上効果を確実に得る観点から、通常1質量部以上、好ましくは4質量部以上、より好ましくは7質量部以上であってよい。一方、塗膜硬化性の観点から、通常30質量部以下、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下であってよい。
【0073】
本発明の塗料を生産する際に、上記成分(B)と上記成分(D)を混合攪拌後、上記成分(A)を加えて更に混合攪拌することは好ましい。上記成分(D)の上記成分(A)と上記成分(B)との混和性向上効果をより確実に得ることができる。
【0074】
上記成分(C)と上記成分(D)を併用することは好ましい。この実施形態の場合、本発明の塗料を生産する際に、上記成分(B)と上記成分(C)を混合攪拌後、上記成分(D)を加えて混合攪拌し、更に上記成分(A)を加えて混合攪拌することは好ましい。上記成分(C)と上記成分(D)の併用による上記成分(A)と上記成分(B)との混和性向上効果を更に確実に得ることができる。
【0075】
理論に拘束される意図はないが、上述の混和性向上効果を以下のように考察している。上記成分(C)の有する加水分解性基であって、上記成分(B)との化学結合や強い相互作用に関与しなかった加水分解性基(以下、「遊離加水分解性基」と言う。)が、お互いに(遊離加水分解性基同士で)化学結合を形成したり、強く相互作用したりすると、上記成分(B)が凝集し、分散性が低下することになってしまう。この現象を、上記成分(D)は、イソシアネート基を有することから、遊離加水分解性基と化学結合を形成したり、強く相互作用したりすることにより防止している。そして、上記成分(D)は、重合性官能基を有することから、上記成分(A)と化学結合を形成したり、強く相互作用したりすることができるため、上記成分(D)単独でも上記成分(A)と上記成分(B)との混和性向上に寄与している。また上記成分(D)よりも先に上記成分(C)を上記成分(B)と混合攪拌する方が好ましいのは、上記成分(B)との化学結合や強い相互作用という観点では、加水分解性基の方がイソシアネート基よりも有利なためである。
【0076】
本発明の塗料には、活性エネルギー線による硬化性を良好にする観点から、1分子中に2個以上のイソシアネート基(-N=C=O)を有する化合物及び/又は光重合開始剤を更に含ませることが好ましい。
【0077】
上記1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、メチレンビス‐4‐シクロヘキシルイソシアネート;トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体等のポリイソシアネート;及び、上記ポリイソシアネートのブロック型イソシアネート等のウレタン架橋剤などをあげることができる。上記1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。また、架橋の際には、必要に応じてジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエートなどの触媒を添加してもよい。
【0078】
上記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、メチル-o-ベンゾイルベンゾエート、4-メチルベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4′-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルメチルケタール等のベンゾイン系化合物;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン系化合物;メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-アミルアントラキノン等のアントラキノン系化合物;チオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;アセトフェノンジメチルケタール等のアルキルフェノン系化合物;トリアジン系化合物;ビイミダゾール化合物;アシルフォスフィンオキサイド系化合物;チタノセン系化合物;オキシムエステル系化合物;オキシムフェニル酢酸エステル系化合物;ヒドロキシケトン系化合物;及び、アミノベンゾエート系化合物などをあげることができる。上記光重合開始剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0079】
上記光重合開始剤として、アセトフェノン系光重合開始剤を2種以上、例えば、1‐ヒドロキシ‐シクロヘキシル‐フェニルケトンと2‐ヒロドキシ‐1‐{4‐[4‐(2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐プロピオニル)‐ベンジル]フェニル}‐2‐メチル‐プロパン‐1‐オンとを併用することは好ましい。塗膜の着色を抑制しつつ、十分に硬化させることができる。
【0080】
本発明の塗料には、光拡散層の表面を平滑なものにする観点から、更にレベリング剤を含ませることが好ましい。
【0081】
上記レベリング剤としては、例えば、アクリル系レベリング剤、シリコン系レベリング剤、弗素系レベリング剤、シリコン・アクリル共重合体系レベリング剤、弗素変性アクリル系レベリング剤、弗素変性シリコン系レベリング剤、及びこれらに官能基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン基、アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、及びイソシアネート基など。)を導入したレベリング剤などをあげることができる。これらの中で、上記レベリング剤としては、シリコン・アクリル共重合体系レベリング剤が好ましい。上記レベリング剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0082】
上記レベリング剤の配合量は、任意成分であるから特に制限されない。上記レベリング剤の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して、レベリング剤の使用効果を確実に得る観点から、通常0.01質量部以上、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であってよい。一方、上記レベリング剤の配合量は、ブリードアウトによるトラブルを抑制する観点から、通常3質量部以下、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1質量部以下、更に好ましくは0.5質量部以下であってよい。
【0083】
本発明の塗料には、所望に応じて、上記成分(B)以外の無機粒子、帯電防止剤、界面活性剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、汚染防止剤、印刷性改良剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、有機粒子、有機着色剤、及び無機着色剤などの任意成分を1種又は2種以上含ませることができる。
【0084】
本発明の塗料は、塗工し易い濃度に希釈するため、所望に応じて溶剤を含んでいてもよい。上記溶剤は上記成分(A)、上記成分(B)、及びその他の任意成分と反応したり、これらの成分の自己反応(劣化反応を含む)を触媒(促進)したりしないものであれば、特に制限されない。上記溶剤としては、例えば、1‐メトキシ‐2‐プロパノール、2‐プロパノール、エタノール、酢酸エチル、酢酸n‐ブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、及びアセトンなどをあげることができる。これらの中で、上記成分(B)の分散性、及び塗料を静置した際の上記成分(B)の沈降を抑制する観点から、1‐メトキシ‐2‐プロパノール、2‐プロパノール、及びエタノールが好ましく、1‐メトキシ‐2‐プロパノール、及び2‐プロパノールがより好ましい。上記溶剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0085】
本発明の塗料は、これらの成分を混合、攪拌することにより得ることができる。
【0086】
本発明の塗料の好ましい生産方法としては、例えば、
(1)上記成分(B)希土類燐酸塩微粒子 100質量部、上記成分(C)シランカップリング剤 1~30質量部;及び、(E)溶剤 500~2000質量部を混合し、攪拌して混合液1を得る工程;
(2)上記工程(1)で得た混合液1に、更に、上記成分(D)イソシアネート基とイソシアネート基以外の重合性官能基を有する化合物を、その配合量が、上記成分(B)希土類燐酸塩微粒子 100質量部に対して、1~30質量部となるように配合し、混合攪拌して混合液2を得る工程;
(3)上記工程(2)で得た混合液2に、更に、上記成分(A)基材樹脂を配合し、混合攪拌して、上記成分(A)基材樹脂 100質量部;及び、上記成分(B)希土類燐酸塩微粒子 0.1~50質量部;を含む塗料を得る工程;
を含む方法をあげることができる。
【0087】
上記工程(1)~(3)の混合攪拌に使用する装置は、特に制限されず、公知の混合攪拌装置を使用することができる。上記工程(1)~(3)の混合攪拌は、超音波を使用して行うこともできる。
【0088】
上記工程(1)~(3)の混合攪拌を行う際に、ジルコニアビーズなどの小球を、混合攪拌の補助に使用することは好ましい。上記小球の大きさは、上記成分(B)の平均粒子径を勘案して適宜選択すればよい。上記小球の大きさは、直径が通常0.1~3mm、好ましくは0.3~1mmであってよい。上記小球の使用量は、上記成分(B)の分散性、及び作業性の観点から、上記成分(B)100質量部に対して、通常1000~1万質量部、好ましくは2000~5000質量部であってよい。
【0089】
上記工程(1)における上記成分(E)の配合量は、上記成分(B)の分散性、塗料を静置した際の上記成分(B)の沈降を抑制する観点、及び本発明の塗料の固形分や粘度を適切な範囲にする観点から、通常500~2000質量部、好ましくは700~1500質量部であってよい。
【0090】
2.プロジェクションスクリーン用フィルム:
本発明のプロジェクションスクリーン用フィルムは、本発明の塗料を用いて形成された光拡散層を含む。本発明のプロジェクションスクリーン用フィルムは、通常は、フィルム基材の層の少なくとも片面の上に、本発明の塗料を用いて形成された光拡散層を有する。
【0091】
本発明の塗料については上述した。本発明の塗料を用いて、上記光拡散層を形成する方法は特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。上記方法としては、例えば、ロッドコート、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、ディップコート、スプレーコート、スピンコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法をあげることができる。これらの方法の中で、上記光拡散層の厚みを均一なものにする観点から、ロッドコートが好ましく、ロッドとしてメイヤーバーを用いるロッドコート(以下、「メイヤーバー方式」と略すことがある。)がより好ましい。
【0092】
上記光拡散層の厚みは、特に制限されず、所望により任意の厚みにすることができる。上記光拡散層の厚みは、高い映像表示性を付与する観点から、通常0.5μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、更に好ましくは3μm以上であってよい。一方、本発明のプロジェクションスクリーン用フィルムの耐曲げ性を良好に保ち、フィルムロールとして容易に取り扱えるようにする観点から、通常60μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは10μm以下、最も好ましくは7μm以下であってよい。
【0093】
上記フィルム基材は、本発明のプロジェクションスクリーン用フィルムに高い透明性を付与する観点、及び着色のないものにする観点から、高い透明性を有するものが好ましく、高い透明性を有し、かつ着色のないものがより好ましい。
【0094】
上記フィルム基材の全光線透過率(JIS K7361-1:1997に従い測定。)は、通常80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、更に好ましくは90%以上、最も好ましくは92%以上であってよい。全光線透過率は高い方が好ましい。全光線透過率は、JIS K7361-1:1997に従い、例えば、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定することができる。
【0095】
上記フィルム基材の黄色度指数(JIS K7105:1981に従い測定。)は通常5以下、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1以下であってよい。黄色度指数は低い方が好ましい。黄色度指数はJIS K7105:1981に従い、例えば、島津製作所社製の色度計「SolidSpec-3700(商品名)」を用いて測定することができる。
【0096】
上記フィルム基材としては、例えば、トリアセチルセルロース等のセルロースエステル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;エチレンノルボルネン共重合体等の環状炭化水素系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、及びビニルシクロヘキサン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体等のアクリル系樹脂;芳香族ポリカーボネート系樹脂;ポリプロピレン、及び4-メチル-ペンテン-1等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリマー型ウレタンアクリレート系樹脂;及びポリイミド系樹脂;などのフィルムをあげることができる。これらのフィルムは無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、及び二軸延伸フィルムを包含する。またこれらのフィルムは、これらの1種又は2種以上を、2層以上積層した積層フィルムを包含する。
【0097】
上記フィルム基材の厚みは、特に制限されず、所望により任意の厚みにすることができる。本発明のプロジェクションスクリーン用フィルムに高い剛性を要求されない場合には、取扱性の観点、及びガラス飛散防止フィルムとしての規格に適合させる観点から、通常10μm以上、好ましくは30μm以上、より好ましくは50μm以上であってよい。一方、経済性の観点から、通常250μm以下、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下であってよい。本発明のプロジェクションスクリーン用フィルムに高い剛性が要求される場合には、通常200μm以上、好ましくは300μm以上、より好ましくは400μm以上であってよい。また物品の薄型化の要求に応える観点から、通常1500μm以下、好ましくは1000μm以下、より好ましくは700μm以下であってよい。
【0098】
また上記光拡散層を形成するに際し、上記フィルム基材の上記光拡散層形成面又は両面に、上記光拡散層との接着強度を高めるため、事前にコロナ放電処理やアンカーコート形成などの易接着処理を施してもよい。
【0099】
本発明のプロジェクションスクリーン用フィルムは、所望により、上記光拡散層、上記フィルム基材の層以外の任意の層を有していてもよい。上記任意の層としては、例えば、ハードコート、アンカーコート、粘着剤層、透明導電層、赤外線遮蔽層、赤外線反射層、電磁波遮蔽層、電磁波反射層、及び反射層などをあげることができる。上記任意の層は1層に限らず、2層以上であってよい。上記任意の層が2層以上である場合、その種類は1種に限らず2種以上であってよい。
【0100】
図2は本発明のプロジェクションスクリーン用フィルムの実施形態の一例を示す断面の概念図である。この実施形態は、ガラス窓の屋外側に貼合するタイプであり、ガラスとの貼合面側から順に、粘着剤層1、赤外線遮蔽層2、第1アンカーコート3、フィルム基材の層4、第2アンカーコート5、光拡散層6、耐候性ハードコート7を有している。この実施形態は所謂透過型であり、映像コンテンツは屋内側から投影され、屋外側から見ることになる。
【0101】
図3は本発明のプロジェクションスクリーン用フィルムのその他の実施形態の一例を示す断面の概念図である。この実施形態は、ガラス窓の屋内側に貼合するタイプであり、ガラスとの貼合面側から順に、耐候性粘着剤層8、光拡散層6、第1アンカーコート3、フィルム基材の層4、第2アンカーコート5、赤外線遮蔽層2、ハードコート9を有している。この実施形態は所謂透過型であり、映像コンテンツは屋内側から投影され、屋外側から見ることになる。
【0102】
図4は本発明のプロジェクションスクリーン用フィルムのその他の実施形態の一例を示す断面の概念図である。この実施形態は、ガラス窓の屋内側に貼合するタイプであり、耐候性粘着剤層8、第1アンカーコート3、フィルム基材の層4、第2アンカーコート5、反射層10、光拡散層6、赤外線遮蔽層2、ハードコート9を有している。この実施形態は所謂反射型であり、映像コンテンツは屋内側から投影され、屋内側から見ることになる。
【0103】
本発明のプロジェクションスクリーン用フィルムは、全光線透過率(JIS K7361-1:1997に従い測定。)が好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、更に好ましくは90%以上、最も好ましくは91%以上である。全光線透過率が85%以上であることにより、本発明のプロジェクションスクリーン用フィルムは、ガラス窓などの透過視認性を有する媒体に貼合して用いるプロジェクションスクリーン用フィルムであって、通常は透過視認性を維持しつつ、所望のときに、映像コンテンツを投影表示するプロジェクションスクリーン用のフィルムとして、好適に用いることができる。全光線透過率は高い方が好ましい。全光線透過率は、JIS K7361-1:1997に従い、例えば、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定することができる。
【0104】
本発明のプロジェクションスクリーン用フィルムは、ヘーズ(JIS K7136:2000に従い、光拡散層側の面から光を入射する条件で測定。)が好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下、更に好ましくは20%以下、より更に好ましくは15%以下、最も好ましくは12%以下であってよい。ヘーズが30%以下であることにより、映像コンテンツを投影表示していないときの透明感を保持することができる。透明感を保持するという観点からは、ヘーズは低い方が好ましい。ヘーズは、JIS K7136:2000に従い、光拡散層側の面から光を入射する条件で、例えば、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を使用して測定することができる。
【0105】
本発明のプロジェクションスクリーン用フィルムは、拡散率が2%以上、好ましくは4%以上、より好ましくは7%以上である。映像表示性の観点からは、拡散率は高い方が好ましい。ここで拡散率は、下記実施例の試験(ハ)拡散率に従い測定、算出した値である。
【0106】
本発明のプロジェクションスクリーン用フィルムは、視野角(投影表示される映像を鮮明に見ることのできる角度)が好ましくは100°以上、より好ましくは120°以上、更に好ましくは140°以上、最も好ましくは160°以上であってよい。映像表示性の観点からは、視野角は広いほど好ましい。ここで視野角は、下記実施例の試験(ニ)視野角に従い評価したとき、△評価又は○評価になる最大の角度をいう。
【0107】
本発明のプロジェクションスクリーン用フィルムの本発明のハードコート積層フィルムの黄色度指数(JIS K7105:1981に従い測定。)は、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下、最も好ましくは1.6以下である。黄色度指数は低い方が好ましい。黄色度指数が5以下であることにより、プロジェクションスクリーン用フィルムとして好適に用いることができる。黄色度指数は、JIS K7105:1981に従い、例えば、株式会社島津製作所の色度計「SolidSpec-3700(商品名)」を用いて測定することができる。
【0108】
3.プロジェクションスクリーン:
本発明のプロジェクションスクリーンは、本発明の塗料を用いて形成された光拡散層を含む。本発明のプロジェクションスクリーンは、典型的な1つの実施形態において、ガラス窓などの透過視認性を有する媒体の一部又は全部に、本発明のプロジェクションスクリーン用フィルムが貼合されたものである。本発明のプロジェクションスクリーンは、典型的な他の1つの実施形態において、ガラス窓などの透過視認性を有する媒体の一部又は全部に、本発明の塗料を用いて、光拡散層が直接又はアンカーコートを介して形成されたものである。
【0109】
上記透過視認性を有する媒体は、透明樹脂板(積層体を含む。)であってよい。該透明樹脂板を用いることにより、ガラスの問題(例えば、耐衝撃性が低く割れ易い、加工性が低い、及び比重が高く重いなど。)を、根本的に大きく改善することができる。また上記媒体として上記透明樹脂板を用いることにより、曲面形状を有するものを生産性良く製造することが容易になる。
【実施例0110】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0111】
測定方法
(イ)全光線透過率:
JIS K7361-1:1997に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を使用し、光拡散層側の面から光を入射する条件で測定した。
【0112】
(ロ)ヘーズ:
JIS K7136:2000に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を使用し、光拡散層側の面から光を入射する条件で測定した。
【0113】
(ハ)拡散率:
日本電色工業株式会社の変角光度計「GC5000L(商品名)」を使用し、光拡散層側の面に投光角度0°で光を入射し、受光角度-85°から85°までを1°間隔で透過率と反射率を測定した後、上記変角光度計に内蔵のプログラム(下記の計算式)で拡散率を計算した。
拡散率=(L20+L70)/(2・L5)=(T20/cos20°+T70/cos70°)/(2・T5/cos5°)
ここでL20は受光角度20°のときの反射率、L70は受光角度70°のときの反射率、L5は受光角度5°のときの反射率、T20は受光角度20°のときの透過率、T70は受光角度70°のときの透過率、T5は受光角度5°のときの透過率である。
【0114】
(ニ)視野角:
信越化学工業株式会社の付加反応型シリコン系粘着剤「KR-3704(商品名)」100質量部、信越化学工業株式会社の白金化合物系付加反応触媒「CAT-PL-50T(商品名)」0.5質量部、及びトルエン20質量部を混合・攪拌し、粘着層形成用塗料を得た。次に、該粘着層形成用塗料を、プロジェクションスクリーン用フィルムの光拡散層形成面とは反対側の面の上に、硬化後の厚みが30μmとなるように塗布し、130℃、1分間の条件で加熱硬化し、粘着層を形成した。続いて、上記プロジェクションスクリーン用フィルムの粘着層側の面と株式会社テストピースのJIS R3202:2011に規定するフロート板ガラス(厚さ3mm)とを貼り合わせ、プロジェクションスクリーンを作成した。次に、該プロジェクションスクリーンのガラス面側から、ASUS社のプロジェクター「ZenBeam E1(商品名)」を使用し、暗所にて、入射角度0°、ガラス面とプロジェクターのレンズとの距離30cmの条件で映像を投影し、視力検査表を、所定の位置に、該視力検査表のランドルト環が所定の大きさ(4m離れた位置から判別できると視力1.0と判定される大きさ(以下、視力1.0用の大きさと略す。)、又は4m離れた位置から判別できると視力1.5と判定される大きさ(以下、視力1.5用の大きさと略す。)になるように表示させた。続いて、上記プロジェクションスクリーンのランドルト環表示箇所に対して、角度80°(プロジェクションスクリーンの光拡散層側の面に対する法線であって、ランドルト環表示箇所を通る線と、ランドルト環表示箇所と被験者の待機場所とを結ぶ線とのなす角度が80°。視野角に換算すると160°。以下、同様。)、距離60cmの場所で待機していた被験者(試験に使用する目(使用しない目は、遮眼子で覆った。)の矯正視力1.0。)に表示したランドルト環の切れ目の位置を回答させた。以下の基準で評価した。
○:何れの大きさのランドルト環でも判別可能であった。
△:視力1.0用の大きさのランドルト環は判別可能であったが、視力1.5用の大きさのランドルト環は判別できなかった。
×:何れの大きさのランドルト環も判別できなかった。
【0115】
同様に、被験者の待機する場所の角度を、角度70°(視野角140°)、角度60°(視野角120°)、角度50°(視野角100°)、角度40°(視野角80°)に変更した試験も行った。
【0116】
(ホ)色収差:
上記試験(ニ)と同様にして、プロジェクションスクリーンを作成し、該プロジェクションスクリーンに、上記試験(ニ)と同様にして、映像を投影し、青色と赤色の市松模様を正方形の1辺の長さ3mmとなるように表示させた。次に、上記プロジェクションスクリーンの市松模様の表示箇所に対して、角度0°、距離60cmの場所から上記市松模様を目視観察し、以下の基準で評価した。
○:色収差は認められなかった。
△:色収差が僅かに認められた。
×:色収差が明確に認められた。
【0117】
(ヘ)黄色度指数:
JIS K7105:1981に従い、島津製作所社製の色度計「SolidSpec-3700(商品名)」を使用し、光拡散層側の面から光を入射する条件で測定した。
【0118】
(ト)鉛筆硬度:
JIS K5600-5-4:1999に従い、試験長さ25mm、及び荷重200gの条件で、三菱鉛筆株式会社の鉛筆「ユニ(商品名)」を用い、プロジェクションスクリーン用フィルムの光拡散層側の面について測定した。傷跡が生じたか否かの判定は、蛍光灯下、蛍光灯から50cm離れた位置において、サンプル表面を目視観察することにより行った。
【0119】
(チ)表面外観:
プロジェクションスクリーン用フィルムの光拡散層側の面を、蛍光灯の光の入射角をいろいろと変えて当てながら目視観察し、以下の基準で評価した。
A:表面にうねりや傷はなかった。間近に光を透かし見ても、一様な透明感であった。
B:表面にうねりや傷はなかった。しかし、間近に光を透かし見ると、僅かに透明感の異なる箇所があった。
C:表面に傷はなかった。しかし、間近に見ると、表面にうねりが僅かに認められた。また間近に光を透かし見ると、透明感の異なる箇所があった。
D:表面にうねりや傷が認められた。また明らかに透明感の異なる箇所があった。
【0120】
(リ)マンドレル試験(耐クラック性の指標):
JIS K5600-5-1:1999に準拠し、プロジェクションスクリーン用フィルムから該フィルムのマシン方向100mm×横方向50mmとなるように採取したサンプルを用い、円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験を行った。塗膜(光拡散層)に割れの起こらなかったマンドレルのうち直径が最小のマンドレルの直径を求めた。以下の基準で評価した。
A:10mm以下。
B:12mm、16mm、又は20mm。
C:25mm、又は32mm。
D:マンドレルの直径が32mmでも割れが生じた。
【0121】
(ヌ)耐カール性:
プロジェクションスクリーン用フィルムのフィルムロールからマシン方向10cm×横方向10cmのサンプルを採取し、光拡散層側の面を上にして水平面に置いた際の4隅のカールによる浮き上がり高さを測定した。4隅のうち浮き上がり高さが最も大きいものをカールによる浮き上がりの高さの値とした。以下の基準で評価した。
A:2mm以下。
B:2mm超、5mm以下。
C:5mm超、10mm以下。
D:10mm超。
【0122】
(ル)耐湿熱性(湿熱処理後の碁盤目試験):
プロジェクションスクリーン用フィルムを温度60℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽内で500時間処理した。次に、JIS K 5600-5-6:1999に従い、該処理済プロジェクションスクリーン用フィルムの光拡散層側から碁盤目の切れ込みを100マス(1マス=1mm×1mm)入れた。続いて、密着試験用テープを碁盤目へ貼り付けて指でしごいた後、剥がした。評価基準はJISの上記規格の表1に従った。
分類0:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にも剥れがない。
分類1:カットの交差点における塗膜の小さな剥れ。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない。
分類2:塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は交差点において剥れている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。
分類3:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大剥れを生じており、及び/又は目のいろいろな部分が、部分的又は全面的に剥れている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に15%を超えるが35%を上回ることはない。
分類4:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大剥れを生じており、及び/又は数箇所の目が、部分的又は全面的に剥れている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に35%を超えるが65%を上回ることはない。
分類5:剥れの程度が分類4を超える場合。
【0123】
使用した原材料
(A)基材樹脂:
(A1)多官能ポリ(メタ)アクリレート:
(A1-1)根上工業株式会社のポリウレタンアクリレート「アートレジン UN‐954(商品名)」。ポリスチレン換算の数平均分子量2000、質量平均分子量4800、Z平均分子量9600。アクリロイル基の数6個。固形分60質量%。
(A1-2)根上工業株式会社のポリウレタンアクリレート「アートレジン UN‐952(商品名)」。ポリスチレン換算の数平均分子量2500、質量平均分子量9100、Z平均分子量23000。アクリロイル基の数10個。固形分60質量%。
(A1-3)根上工業株式会社のポリウレタンアクリレート「アートレジン UN‐953(商品名)」。ポリスチレン換算の数平均分子量2000、質量平均分子量26000、Z平均分子量110000。アクリロイル基の数20個。固形分40質量%。
【0124】
(A-4)日本化薬株式会社のジペンタエリスリトールヘキサアクリレート「KAYARAD DPHA(商品名)」。
(A-5)東洋紡株式会社の非晶性ポリエステル樹脂「バイロン240SS(商品名)」。
【0125】
(B)希土類燐酸塩微粒子:
(B-1)三井金属鉱業株式会社の燐酸イットリウム。平均粒子径0.085μm。
【0126】
(C)シランカップリング剤:
(C-1)信越化学工業株式会社のビニルトリメトキシシラン「KBM‐1003(商品名)」。
【0127】
(D)イソシアネート基とイソシアネート基以外の重合性官能基を有する化合物:
(D-1)昭和電工株式会社の2‐イソシアナトエチルアクリレート「カレンズAOI(商品名)」。
【0128】
(E)溶剤:
(E-1)1‐メトキシ‐2‐プロパノール。
【0129】
(F)その他:
(F-1)BASF社のアセトフェノン系光重合開始剤(1‐ヒドロキシ‐シクロヘキシル‐フェニルケトン)「IRGACURE184(商品名)」。
(F-2)BASF社のアセトフェノン系光重合開始剤(2‐ヒロドキシ‐1‐{4‐[4‐(2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐プロピオニル)‐ベンジル]フェニル}‐2‐メチル‐プロパン‐1‐オン)「IRGACURE127(商品名)」。
(F-3)東ソー株式会社の1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物「コロネートHX(商品名)」。
(F-4)楠本化成株式会社のシリコン・アクリル共重合体系レベリング剤「ディスパロンNSH-8430HF(商品名)」。固形分10質量%。
【0130】
例1
(a)光拡散層形成用塗料の調製:
上記(B-1)100質量部、上記(C-1)10質量部、及び上記(E-1)900質量部を混合し、更に混合攪拌を補助するため、ジルコニアビーズ(直径0.60mm)を2500質量部投入し、チューブミキサーを使用して15分間の攪拌を行った。次に、上記成分(D-1)10質量部を加え、更に30分間の超音波処理を行った後、ジルコニアビーズを濾別して、懸濁液を得た。続いて、上記(A1-1)167質量部(固形分換算100質量部)、上記懸濁液45.9質量部(上記(B-1)4.5質量部、上記(C-1)0.45質量部、上記(D-1)0.45質量部、及び上記(E-1)40.5質量部)、上記(E-1)70.5質量部、上記(F-1)2.4質量部、上記(F-2)0.6質量部、及び上記(F-4)2質量部(固形分換算0.2質量部)を混合攪拌し、光拡散層形成用塗料を得た。
【0131】
(b)プロジェクションスクリーン用フィルムの作成:
上記(a)で得た光拡散層形成用塗料を、東レ株式会社の厚み50μmの両面易接着二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム「ルミラー(商品名)」の片面の上に、メイヤーバー方式の塗工装置を使用して、硬化後の厚みが5μmとなるように塗布し、乾燥し、紫外線照射によりして硬化して、光拡散層を形成した。
【0132】
上記試験(イ)~(ヌ)を行った。結果を表1に示す。なお表には溶剤(上記(E-1))を除き、全て固形分換算の値を記載した。また表に記載した上記(E-1)の値は、上記懸濁液に含まれる上記(E-1)の量と上記成分(A)などの上記懸濁液以外の成分と上記懸濁液とを混合する際に新たに配合した上記(E-1)の量の和である。以下の例についても同様である。
【0133】
例2~4
上記成分(A)として上記(A1-1)の代わりに表1に示すものを用い、上記懸濁液以外の成分と上記懸濁液とを混合する際に新たに配合する上記(E-1)の量を、光拡散層形成用塗料の粘度が適切なものになるように適宜調節したこと以外は、例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0134】
例5
上記成分(A-5)100質量部、例1で調製した懸濁液45.9質量部(上記(B-1)4.5質量部、上記(C-1)0.45質量部、上記(D-1)0.45質量部、及び上記(E-1)40.5質量部)、上記(E-1)0.5質量部、上記(F-3)10質量部、及び上記(F-4)2質量部(固形分換算0.2質量部)を混合攪拌し、光拡散層形成用塗料を得た。続いて、該塗料を、東レ株式会社の厚み50μmの両面易接着二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム「ルミラー(商品名)」の片面の上に、メイヤーバー方式の塗工装置を使用して、乾燥後の厚みが5μmとなるように塗布し、乾燥して、光拡散層を形成した。上記試験(イ)~(ヌ)を行った。結果を表1に示す。
【0135】
例6~9
上記懸濁液の配合量を変更し、上記懸濁液以外の成分と上記懸濁液とを混合する際に新たに配合する上記(E-1)の量を、光拡散層形成用塗料の粘度が適切なものになるように適宜調節することにより、上記成分(B)~(E)の配合量を表1又は2に示すように変更したこと以外は、例1と同様に行った。結果を表1又は2に示す。
【0136】
例10~12
光拡散層形成用塗料の調製を以下のように変更したこと以外は、例1と同様に行った。結果を表1又は2に示す。
【0137】
例10に用いた光拡散層形成用塗料の調製:
上記(B-1)100質量部、上記(C-1)10質量部、及び上記(E-1)900質量部を混合し、更に混合攪拌を補助するため、ジルコニアビーズ(直径0.60mm)を2500質量部投入し、チューブミキサーを使用して15分間の攪拌を行い、更に30分間の超音波処理を行った後、ジルコニアビーズを濾別して、懸濁液を得た。続いて、上記(A1-1)167質量部(固形分換算100質量部)、上記懸濁液45.45質量部(上記(B-1)4.5質量部、上記(C-1)0.45質量部、及び上記(E-1)40.5質量部)、上記(E-1)70.5質量部、上記(F-1)2.4質量部、上記(F-2)0.6質量部、及び上記(F-4)2質量部(固形分換算0.2質量部)を混合攪拌し、光拡散層形成用塗料を得た。
【0138】
例11に用いた光拡散層形成用塗料の調製:
上記(B-1)100質量部、上記(D-1)10質量部、及び上記(E-1)900質量部を混合し、更に混合攪拌を補助するため、ジルコニアビーズ(直径0.60mm)を2500質量部投入し、チューブミキサーを使用して15分間の攪拌を行い、更に30分間の超音波処理を行った後、ジルコニアビーズを濾別して、懸濁液を得た。続いて、上記(A1-1)167質量部(固形分換算100質量部)、上記懸濁液45.45質量部(上記(B-1)4.5質量部、上記(D-1)0.45質量部、及び上記(E-1)40.5質量部)、上記(E-1)70.5質量部、上記(F-1)2.4質量部、上記(F-2)0.6質量部、及び上記(F-4)2質量部(固形分換算0.2質量部)を混合攪拌し、光拡散層形成用塗料を得た。
【0139】
例12に用いた光拡散層形成用塗料の調製:
上記(B-1)100質量部、及び上記(E-1)900質量部を混合し、更に混合攪拌を補助するため、ジルコニアビーズ(直径0.60mm)を2500質量部投入し、チューブミキサーを使用して15分間の攪拌を行い、更に30分間の超音波処理を行った後、ジルコニアビーズを濾別して、懸濁液を得た。続いて、上記(A1-1)167質量部(固形分換算100質量部)、上記懸濁液45質量部(上記(B-1)4.5質量部、及び上記(E-1)40.5質量部)、上記(E-1)70.5質量部、上記(F-1)2.4質量部、上記(F-2)0.6質量部、及び上記(F-4)2質量部(固形分換算0.2質量部)を混合攪拌し、光拡散層形成用塗料を得た。
【0140】
【0141】
【0142】
例13
上記(A1-1)167質量部(固形分換算100質量部)、酸化ジルコニウム微粒子(平均粒子径0.1μm)のメチルイソブチルケトン/2‐メチルプロピルアルコール(容積比7/3の混合液)分散液11.25質量部(固形分換算4.5質量部)、上記(E-1)100質量部、上記(F-1)2.4質量部、上記(F-2)0.6質量部、及び上記(F-4)2質量部(固形分換算0.2質量部)を混合攪拌し、光拡散層形成用塗料を得た。該光拡散層形成用塗料を、東レ株式会社の厚み50μmの両面易接着二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム「ルミラー(商品名)」の片面の上に、メイヤーバー方式の塗工装置を使用して、硬化後の厚みが5μmとなるように塗布し、乾燥し、紫外線照射によりして硬化して、光拡散層を形成した。上記試験(イ)~(ハ)を行ったところ、全光線透過率86.9%、ヘーズ2.5%、拡散率1.3%であった。
【0143】
本発明の塗料を用いて光拡散層を形成されたプロジェクションスクリーン用フィルムは、映像表示性に優れ(拡散率が高く)、透明性が高く、視野角が広く、色収差が生じ難く、色味のない(黄色度指数が小さい)ものであった。本発明の好ましい塗料を用いて光拡散層を形成されたプロジェクションスクリーン用フィルムは、更に、表面硬度が高く、表面外観が良好であった。またマンドレル試験、耐カール性、及び耐湿熱性の結果から、ガラス窓などに貼合する際の作業性も良好であり、光拡散層に割れが生じるなどのトラブルは経時的にも起き難いと期待できる。