(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002371
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】排土装置および杭打ち機
(51)【国際特許分類】
E21B 37/02 20060101AFI20231228BHJP
E21B 21/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
E21B37/02
E21B21/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101520
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 幹雄
(57)【要約】
【課題】排土効率を向上させる。
【解決手段】既成杭を埋設する杭孔を掘削するための掘削ロッドに取り付けられる排土装置は、掘削ロッドに取り付けられる本体部と、少なくとも1つの可変翼とを備える。可変翼の下端部は、本体部に取り付けられている。可変翼は、上端部が本体部に近付いた閉状態と、上端部が本体部から遠ざかった開状態と、の間を切り替わるように構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既成杭を埋設する杭孔を掘削するための掘削ロッドに取り付けられる排土装置であって、
前記掘削ロッドに取り付けられる本体部と、
少なくとも1つの可変翼であって、下端部が前記本体部に取り付けられ、上端部が前記本体部に近付いた閉状態と、前記上端部が前記本体部から遠ざかった開状態と、の間を切り替わるように構成された、少なくとも1つの可変翼と、
を備える、排土装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排土装置であって、
複数の前記可変翼を備える、排土装置。
【請求項3】
請求項2に記載の排土装置であって、
複数の前記可変翼は、前記本体部を挟んで径方向に互いに対向する少なくとも一対の前記可変翼を含む、排土装置。
【請求項4】
請求項3に記載の排土装置であって、
複数の前記可変翼は、前記本体部を挟んで径方向に互いに対向する複数対の前記可変翼を含む、排土装置。
【請求項5】
請求項2に記載の排土装置であって、
上下方向視で、前記開状態の複数の前記可変翼の間に、隙間が存在する、排土装置。
【請求項6】
掘削ロッドと、
前記掘削ロッドに取り付けられた請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の排土装置と、
を備える、杭打ち機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、既成杭を埋設する杭孔を掘削するための掘削ロッドに取り付けられる排土装置、および、排土装置と掘削ロッドとを備える杭打ち機に関する。
【背景技術】
【0002】
基礎杭を構築する方法として、支持層まで杭孔を掘削し、杭孔内に既成杭を埋設する方法がある。杭孔の掘削は、掘削ロッドと、掘削ロッドの先端に設けられた掘削ヘッドと、を有する杭打ち機により行われる(例えば、特許文献1)。掘削ロッドには、掘削した泥土を杭孔の孔壁に練り付ける練り付けドラムが取り付けられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
杭孔の掘削の際には、泥土の排出(以下、「排土」という。)を掘削水に頼っている。そのため、掘削水が少なかったり、掘削ロッドの反復回数が少なかったりした場合、十分に排土できないおそれがある。このような問題は、特に、比較的大きな粘土塊について生じやすい。また、練り付けドラムは固定的な部材であるため、掘削ロッドの下降時に、掘削した泥土を再度沈降させてしまうことがある。排土を十分にできなかったり、泥土を再度沈降させてしまったりすると、例えば、拡大根固め部に泥土(粘土塊等)が残り、根固め部ソイルセメントの強度不足を引き起こすおそれがある。
【0005】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本明細書に開示される排土装置は、既成杭を埋設する杭孔を掘削するための掘削ロッドに取り付けられる装置であって、前記掘削ロッドに取り付けられる本体部と、少なくとも1つの可変翼と、を備える。少なくとも1つの可変翼の下端部は、前記本体部に取り付けられている。少なくとも1つの可変翼は、上端部が前記本体部に近付いた閉状態と、前記上端部が前記本体部から遠ざかった開状態と、の間を切り替わるように構成されている。
【0008】
本排土装置では、掘削ロッドの下降時には、可変翼が掘削水流による下方からの荷重を受け、あるいは、慣性力により、可変翼が閉状態となり、掘削した泥土が可変翼に干渉して再度沈降することが抑制される。また、掘削ロッドの上昇時には、可変翼が掘削水流による上方からの荷重を受け、あるいは、慣性力により、可変翼が開状態となり、可変翼によって泥土が捕集されて上方に搬出される。このように、本排土装置によれば、杭孔からの十分な排土を実現できると共に、掘削した泥土を再度沈降させることを抑制することができ、排土効率を向上させることができる。その結果、例えば、拡大根固め部に泥土(粘土塊等)が残ることを抑制することができ、根固め部ソイルセメントの強度不足の発生を抑制することができる。また、排土装置によって排土効率を向上させた結果、掘削水を削減することも可能であり、工事に伴う環境負荷を低減することができる。
【0009】
(2)上記排土装置において、複数の前記可変翼を備える構成としてもよい。本排土装置によれば、複数の可変翼によって泥土を効率的に捕集することができ、排土効率をさらに向上させることができる。
【0010】
(3)上記排土装置において、複数の前記可変翼は、前記本体部を挟んで径方向に互いに対向する少なくとも一対の前記可変翼を含む構成としてもよい。本排土装置によれば、一対の可変翼によって杭孔内の泥土を満遍なく捕集することができ、排土効率をさらに向上させることができる。
【0011】
(4)上記排土装置において、複数の前記可変翼は、前記本体部を挟んで径方向に互いに対向する複数対の前記可変翼を含む構成としてもよい。本排土装置によれば、複数対の可変翼によって杭孔内の泥土をさらに満遍なく捕集することができ、排土効率を一層向上させることができる。
【0012】
(5)上記排土装置において、上下方向視で、前記開状態の複数の前記可変翼の間に、隙間が存在する構成としてもよい。本排土装置によれば、複数の可変翼によって捕集した泥土を地上において効率的に除去することができ、作業効率を向上させることができる。
【0013】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、排土装置、排土装置と掘削ロッドとを備える杭打ち機、杭打ち機を用いた杭孔の掘削方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】掘削ロッド20を下降させているときの杭打ち機100の側面構成を示す説明図
【
図2】掘削ロッド20を上昇させているときの杭打ち機100の側面構成を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
A.実施形態:
図1から
図3は、本実施形態における杭打ち機100の構成を示す説明図である。杭打ち機100は、杭孔102を掘削し、杭孔102内に既成杭を埋設するための重機である。
図1には、杭孔102内において後述する掘削ロッド20を下降させているときの杭打ち機100の一部の側面構成を示しており、
図2には、杭孔102内において掘削ロッド20を上昇させているときの杭打ち機100の一部の側面構成を示しており、
図3には、後述する排土装置10が地上に出るまで掘削ロッド20を上昇させたときの杭打ち機100の一部の上面構成を示している。
【0016】
杭打ち機100は、掘削ロッド20と、排土装置10とを有する。掘削ロッド20は、鉛直方向に延伸する姿勢で使用される棒状部材である。掘削ロッド20は、単一の棒状要素から構成されてもよいし、複数の棒状要素が互いに連結された構成であってもよい。掘削ロッド20の一方の先端部(下端部)には、掘削刃を有する掘削ヘッド(不図示)が設けられている。また、掘削ロッド20の他方の先端部(上端部)は、杭打ち機100のオーガー(不図示)に接続されている。掘削ロッド20は、オーガーにより、掘削ロッド20の中心軸周りに回転させられつつ、上下方向に移動させられる。なお、掘削ロッド20に、掘削した泥土106を杭孔102の孔壁104に練り付けるための練り付けドラム(不図示)が取り付けられていてもよい。
【0017】
排土装置10は、杭打ち機100による杭孔102の掘削の際に排土を促進させる装置である。排土装置10は、本体部12と、可変翼14とを有する。本実施形態では、排土装置10は4枚の可変翼14を有する。
図3に示すように、4枚の可変翼14は、掘削ロッド20の長手方向軸周りに互いに90°ずれるように並べて配置されている。そのため、排土装置10は、本体部12を挟んで径方向に互いに対向する二対(2ペア)の可変翼14を含んでいる。
【0018】
排土装置10の本体部12は、掘削ロッド20に取り付けられている。より詳細には、本体部12は上下方向に延伸する筒状部材であり、本体部12の中空部に掘削ロッド20が挿通された状態で、本体部12が掘削ロッド20に固定されている。なお、掘削ロッド20に練り付けドラムが取り付けられている場合には、排土装置10の本体部12は練り付けドラムより下方の位置に取り付けられることが好ましい。
【0019】
排土装置10の可変翼14は、略板状の部材である。可変翼14の下端部は、本体部12に取り付けられている。一方、可変翼14の上端部は、自由端となっている。可変翼14と本体部12との取り付け箇所はヒンジ構造となっており、可変翼14は下端部を支点として本体部12に対して回転(開閉)可能である。そのため、可変翼14は、上端部が本体部12に近付いた閉状態(
図1参照)と、上端部が本体部12から遠ざかった開状態(
図2参照)と、の間を切り替わる。
【0020】
本実施形態では、閉状態における可変翼14(
図1参照)は、掘削ロッド20の長手方向と略平行になる。また、開状態における可変翼14(
図2参照)と掘削ロッド20の長手方向とのなす角は、例えば15°~45°程度に設定される。また、
図3に示すように、上下方向視で、開状態の複数の可変翼14の間には、隙間G1が存在する。
【0021】
次に、排土装置10の動作について説明する。
図1に示すように、掘削ロッド20が下降しているときには、可変翼14が掘削水流による下方からの荷重を受け、あるいは、慣性力により、可変翼14は閉状態となる。そのため、杭孔102の孔壁104と可変翼14との間に泥土106が通過する隙間が確保される。これにより、掘削した泥土106が可変翼14に干渉して再度沈降することが抑制される。
【0022】
一方、
図2に示すように、掘削ロッド20が上昇しているときには、可変翼14が掘削水流による上方からの荷重を受け、あるいは、慣性力により、可変翼14は開状態となる。そのため、可変翼14の上端が杭孔102の孔壁104に近づき、可変翼14によって杭孔102内の泥土106が機械的に捕集されて上方に搬出される。掘削水による排土が難しい比較的大きな粘土塊についても、可変翼14により効果的に捕集して排土することができる。
【0023】
図3に示すように、可変翼14が地上に出るまで掘削ロッド20が上昇したら、例えばハイウォッシャー30を用いて可変翼14に捕集された泥土106を除去する。上述したように、上下方向視で開状態の複数の可変翼14の間には隙間G1が存在するため、可変翼14に捕集された泥土106を該隙間G1を介して効率的に除去することができる。その後は、適宜、
図1に示す掘削ロッド20の下降と、
図2に示す掘削ロッド20の上昇とが繰り返され、所定の深さまで杭孔102の掘削が実行される。
【0024】
以上説明したように、本実施形態の排土装置10は、既成杭を埋設する杭孔102を掘削するための掘削ロッド20に取り付けられる装置である。排土装置10は、掘削ロッド20に取り付けられる本体部12と、少なくとも1つの可変翼14とを備える。可変翼14の下端部は、本体部12に取り付けられている。可変翼14は、上端部が本体部12に近付いた閉状態と、上端部が本体部12から遠ざかった開状態と、の間を切り替わるように構成されている。
【0025】
本実施形態の排土装置10は上記構成であるため、掘削ロッド20の下降時には、可変翼14が閉状態となり、掘削した泥土106が可変翼14に干渉して再度沈降することが抑制される。また、掘削ロッド20の上昇時には、可変翼14が開状態となり、可変翼14によって泥土106が捕集されて上方に搬出される。このように、本実施形態の排土装置10によれば、杭孔102からの十分な排土を実現できると共に、掘削した泥土106を再度沈降させることを抑制することができ、排土効率を向上させることができる。その結果、例えば、拡大根固め部に泥土(粘土塊等)が残ることを抑制することができ、根固め部ソイルセメントの強度不足の発生を抑制することができる。また、排土装置10によって排土効率を向上させた結果、掘削水を削減することも可能であり、工事に伴う環境負荷を低減することができる。
【0026】
また、本実施形態の排土装置10は、複数の可変翼14を備える。そのため、本実施形態の排土装置10によれば、複数の可変翼14によって泥土106を効率的に捕集することができ、排土効率をさらに向上させることができる。
【0027】
また、本実施形態の排土装置10は、本体部12を挟んで径方向に互いに対向する二対の可変翼14を含む。そのため、本実施形態の排土装置10によれば、二対の可変翼14によって杭孔102内の泥土106を満遍なく捕集することができ、排土効率をさらに向上させることができる。
【0028】
また、本実施形態の排土装置10では、上下方向視で、開状態の複数の可変翼14の間に隙間G1が存在する。そのため、本実施形態の排土装置10によれば、複数の可変翼14によって捕集した泥土106を地上において効率的に除去することができ、作業効率を向上させることができる。
【0029】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0030】
上記実施形態における杭打ち機100や杭打ち機100に含まれる排土装置10の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、排土装置10は4枚の可変翼14を有しているが、排土装置10の有する可変翼14の枚数は、3枚以下であってもよいし、5枚以上であってもよい。また、上記実施形態では、排土装置10は、本体部12を挟んで径方向に互いに対向する二対の可変翼14を含むが、排土装置10は、本体部12を挟んで径方向に互いに対向する一対の可変翼14を含んでもよいし、本体部12を挟んで径方向に互いに対向する三対以上の可変翼14を含んでもよい。また、排土装置10が、本体部12を挟んで径方向に互いに対向する2つの可変翼14の組を含まなくてもよい。
【0031】
上記実施形態では、上下方向視で、開状態の複数の可変翼14の間に隙間G1が存在するが、開状態の複数の可変翼14の間に隙間が存在しないように構成してもよい。
【符号の説明】
【0032】
10:排土装置 12:本体部 14:可変翼 20:掘削ロッド 30:ハイウォッシャー 100:杭打ち機 102:杭孔 104:孔壁 106:泥土 G1:隙間