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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023711
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】消火栓装置及び消火栓設備
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/20 20060101AFI20240214BHJP
   A62C 3/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A62C35/20
A62C3/00 J
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023213482
(22)【出願日】2023-12-19
(62)【分割の表示】P 2023039248の分割
【原出願日】2017-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2016171342
(32)【優先日】2016-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(74)【代理人】
【識別番号】100228669
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 愛規
(72)【発明者】
【氏名】安藤 拓史
(57)【要約】      (修正有)
【課題】道路側及び監視員通路の路面側から簡単且つ容易に消火用ホースを取り出すことを可能とする。
【解決手段】消火栓装置は、上面に形成された扉開口に、後縁部を軸として上下回りに開閉自在に軸支されると共に、前縁部を軸として上下回りに開閉自在に軸支された上扉と、上扉の裏面に配置され、内部に収納したホース76の先端に装着された泡ノズル78を着脱自在に係止させるノズルホルダー86Aと、を備え、ノズルホルダー86Aは、上扉の閉鎖時、上扉が後縁部を軸として開放されたとき及び上扉が前縁部を軸として開放されたときの何れにおいても、泡ノズル78を懸下した状態で係止させる。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端にノズルが装着された消火用ホースが内部に収納された消火栓装置に於いて、
前記消火栓装置の上面に形成された扉開口に、後縁部を軸として上下回りに開閉自在に軸支されると共に、前縁部を軸として上下回りに開閉自在に軸支された上扉と、
前記上扉の裏面に配置され、前記ノズルを着脱自在に係止させるノズルホルダーと、
を備え、
前記ノズルホルダーは、前記上扉の閉鎖時、前記上扉が前記後縁部を軸として開放されたとき及び前記上扉が前記前縁部を軸として開放されたときの何れにおいても、前記ノズルを懸下した状態で係止させることを特徴とする消火栓装置。
【請求項2】
請求項1記載の消火栓装置であって、
前記ノズルホルダーは、
前記上扉の裏面に対して所定の方向に回動可能であり、
前記上扉が前記後縁部を軸として開放されたとき及び前記上扉が前記前縁部を軸として開放されたときに回動して前記ノズルを懸下した状態で維持することを特徴とする消火栓装置。
【請求項3】
トンネル内のトンネル壁面に沿った監視員通路の路面下の内部空間である消火栓埋込部を備える消火栓設備であって、
請求項1又は2記載の消火栓装置が、前記消火栓埋込部に前記上面が前記監視員通路の路面側に露出し前面が道路側に露出するように埋込設置されたことを特徴とする消火栓設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端にノズルが装着された消火用ホースが内部に収納された消火栓装置及び該消火栓装置が設置された消火栓設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路や自動車専用道路などのトンネル内に設置するトンネル非常用設備として消火栓装置が設けられており、消火栓装置は開放自在な消火栓扉を備え、先端にノズルを装着したホースと消火栓弁を含むバルブ類を収納している。
【0003】
消火栓装置は、一般的に、トンネル側壁に沿って例えば50メートル間隔でトンネル壁面に埋込み設置されている。火災を伴う車両事故が発生した場合には、監視員通路のあるトンネルでは、事故車両の運転者等の道路利用者は監視員通路の側面に設置されたステップ等により監視員通路に登り、トンネル壁面に設置された消火栓装置の消火栓扉を前方に開放してノズル付きのホースを取出して消火作業を行うようにしている。
【0004】
監視員通路は路面に対し高くした側壁通路として設けられ、トンネル内の車両通行を妨げることなく且つ安全にトンネル内に設置している消火栓装置を含む各種の機器の点検を行うことを可能としている。
【0005】
また、監視員通路のないトンネルにあっては、事故車両の運転者等の利用者は、トンネル壁面に設置された消火栓装置に近づき、同様に、消火栓扉を前方に開放してノズル付きのホースを取出して消火作業を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-181057号公報
【特許文献2】特開2008-055024号公報
【特許文献3】特開2009-285126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、シールド工法等により作られた都市型トンネルにあっては、トンネル壁面に消火栓装置を埋込み設置できない構造であり、監視員通路側面(壁面)に消火栓装置を埋込み設置する必要がある。
【0008】
しかしながら、従来の消火栓のように扉を前開きする消火栓装置を監視員通路に設置した場合には、消火栓扉が開くと建築限界を超えて道路側に飛び出す問題がある。
【0009】
この問題を解決するため、監視員通路内に消火栓収納箱を埋込み設置し、道路側に面してスライド開閉される前扉を設けると共に、監視員通路面に上向きに開閉される上扉を設けた消火栓収納箱が提案されている。
【0010】
このように監視員通路に埋込み設置された消火栓収納箱によれば、車両事故による火災の発生時に、利用者は、道路に面した前扉を開くことで、ホース収納部から簡単且つ容易にノズル付きホースを引き出して消火を行うことができる。また、消火栓装置の前に車両が停止して前扉からの操作ができない場合には、監視員通路の上扉を開くことで、停止車両に妨げられることなく、ノズル付きホースを引き出して消火を行うことができる。
【0011】
ところで、監視員通路に埋込み設置される消火栓収納箱は、監視員通路の横幅が0.7メートル程度であり、消火栓収納箱の横幅は、監視員通路の例えば半分の0.35メートル程度と狭くなり、消火栓収納箱の中には約30メートル程度のホースを水平に内巻きして収納している。
【0012】
また、図23(A)(B)の概略図に示すように、消火栓収納箱200に収納されたホース202の先端に装着された泡ノズル204は、上扉206の裏面に横置きに設けられたノズルホルダー208に対し横向きに嵌め入れて着脱自在に係止される構造が検討されている。
【0013】
しかしながら、監視員通路に消火栓収納箱200が埋込み設置された場合では、道路側から操作する場合と、監視員通路の路面側から操作する場合が想定され、操作する利用者の位置と露出されたノズルホルダー208に係止された泡ノズル204の位置との位置関係は操作する位置により異なり、利用者の位置によって泡ノズル204の取出しやすい位置が異なってくる。そのため、泡ノズル204が係止される位置によっては操作する位置から泡ノズル204の取出しに手間取ることが想定される。
【0014】
本発明は、道路側及び監視員通路の路面側から簡単且つ容易に消火用ホースを取り出すことを可能とする消火栓装置及び該消火栓装置が設置された消火栓設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(消火栓装置)
本発明は、先端にノズルが装着された消火用ホースが内部に収納された消火栓装置に於いて、
消火栓装置の上面に形成された扉開口に、後縁部を軸として上下回りに開閉自在に軸支されると共に、前縁部を軸として上下回りに開閉自在に軸支された上扉と、
上扉の裏面に配置され、ノズルを着脱自在に係止させるノズルホルダーと、
を備え、
ノズルホルダーは、上扉の閉鎖時、上扉が後縁部を軸として開放されたとき及び上扉が前縁部を軸として開放されたときの何れにおいても、ノズルを懸下した状態で係止させることを特徴とする。
【0016】
(回動するノズルホルダー)
ノズルホルダーは、
上扉の裏面に対して所定の方向に回動可能であり、
上扉が後縁部を軸として開放されたとき及び上扉が前縁部を軸として開放されたときに回動してノズルを懸下した状態で維持する。
【0017】
(消火栓設備)
本発明は、トンネル内のトンネル壁面に沿った監視員通路の路面下の内部空間である消火栓埋込部を備える消火栓設備であって、
前述した消火栓装置が、消火栓埋込部に上面が監視員通路の路面側に露出し前面が道路側に露出するように埋込設置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
(基本的な効果)
本発明は、先端にノズルが装着された消火用ホースが内部に収納された消火栓装置に於いて、消火栓装置の上面に形成された扉開口に、後縁部を軸として上下回りに開閉自在に軸支されると共に、前縁部を軸として上下回りに開閉自在に軸支された上扉と、上扉の裏面に配置され、ノズルを着脱自在に係止させるノズルホルダーと、を備え、ノズルホルダーは、上扉の閉鎖時、上扉が後縁部を軸として開放されたとき及び上扉が前縁部を軸として開放されたときの何れにおいても、ノズルを懸下した状態で係止させるため、トンネル内の監視員通路に埋込設置されたときに道路側及び監視員通路の路面側から簡単且つ容易に消火用ホースを取り出すことを可能とする。また、上扉の開閉状態に掛かわらずノズルは懸下した状態にあるため、ノズルの先に続く消火用ホースが上扉の開閉により変形することがなく、消火用ホースの消耗を抑制することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】自動車専用道路のトンネル内に設置された消火栓設備を含むトンネル非常用設備を示した説明図
図2】通常時における消火栓収納箱の外観を示した説明図
図3図2の消火栓収納箱の外観を正面及び平面から示した説明図
図4図2の消火栓収納箱の外観を側面から示した説明図
図5】前開き機構が設けられた消火栓収納箱の前開きハンドルの部分を取り出して示した説明図
図6】第2上扉を前開きして前扉の落下によりスライド開放させる前開き機構の機構構造を示した説明図
図7】消火栓収納箱の内部構造を示した説明図
図8】道路側から操作する場合の前扉と第2上扉の開放操作を示した説明図
図9】監視員通路側から操作する場合の第1上扉の開放操作を示した説明図
図10】ノズルホルダーの第1実施形態を上扉の閉鎖状態について示した説明図
図11】第2上扉の前開き状態及び第1上扉の後開き状態での第1実施形態のノズルホルダーによる泡ノズルの懸架状態を取り出して示した説明図
図12】ノズルホルダーの第2実施形態を示した説明図
図13】ノズルホルダーの第3実施形態を示した説明図
図14】第2上扉の前開き状態及び第1上扉の後開き状態での第3実施形態のノズルホルダーによる泡ノズルの懸架状態を取り出して示した説明図
図15】第3実施形態のノズルホルダーを前方から見て示した説明図
図16】第3実施形態のノズルホルダーを横方向から見て示した説明図
図17】一部のホルダー部材が垂直軸回りに回動した状態での第3実施形態のノズルホルダーを横方向から見て示した説明図
図18】第4実施形態のノズルホルダーを前方から見て示した説明図
図19】第4実施形態のノズルホルダーを横方向から見て示した説明図
図20】消火栓収納箱における扉構造の他の実施形態を示した説明図
図21図13の消火栓収納箱を道路側から操作する場合の前扉と上扉の開放操作を示した説明図
図22図13の消火栓装置を監視員通路側から操作する場合の上扉の開放操作を示した説明図
図23】検討されているノズルホルダーを示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0020】
[トンネル非常用設備の概要]
図1は自動車専用道路のトンネル内に設置された消火栓設備を含むトンネル非常用設備を示した説明図である。図1に示すように、シールド工法により構築されたトンネル10内は円筒形のトンネル壁面12により覆われ、床版18により仕切られることで道路15が設けられており、この例にあっては、道路15は1方向2車線としている。
【0021】
床版18で仕切られた道路15の左側のトンネル壁面12に沿って監視員通路14が設けられ、監視員通路14の下側の内部空間はダクト22として利用され、電線管等が敷設される。監視員通路14は例えば高さが90センチメートル、横幅が70センチメートルといった大きさをもつ。
【0022】
道路15が形成された床版18の下側はトンネル横方向に複数の区画に仕切られており、例えば、監視員通路14の下に位置する区画は、管理用通路20として使用され、また、管理用通路20はトンネル内での火災発生時には、緊急避難通路として使用される。管理用通路20には給水本管24が敷設されている。
【0023】
トンネル10の長手方向の50メートルおきには、消火栓設備16が設置され、消火栓設備16の消火栓装置はホースが収納された消火栓収納箱30と放水制御機構収納部26に分離して設置されている。
【0024】
消火栓収納箱30は、監視員通路14の路面及び道路15側の壁面にかけて箱形に刳り貫かれた消火栓埋込部に配置されている。放水制御機構収納部260は、消火栓収納箱30の下側となる管理用通路20に配置され、給水本管24から分岐した分岐配管24aが引き込まれ、また、消火栓収納箱30に消火用水を供給する給水配管25が立ち上げられている。
【0025】
[消火栓設備]
図2は通常時における消火栓収納箱の外観を示した説明図、図3図2の消火栓収納箱の外観を正面及び平面から示した説明図、図4図2の消火栓収納箱の外観を側面から示した説明図である。
【0026】
(消火栓収納箱の外観構造)
図2乃至図4に示すように、消火栓設備16の消火栓収納箱30は、監視員通路14の路面下の内部空間に埋込み設置されている。消火栓収納箱30は、筐体31の前面中央の上側に形成された前面扉開口33に前扉32が上下方向にスライド自在に配置されている。
【0027】
また、消火栓収納箱30の監視員通路14の路面側となる上面中央に形成された第1上面扉開口35には、前扉32と同じ横幅の第1上扉34が配置されている。更に、第1上扉34の前側中央には第2上面扉開口37が形成され、ここに第2上扉36が配置されている。
【0028】
第1上扉34は扉前縁の両側を、筐体31の上部の前縁コーナー部に配置したヒンジ46により軸支されており、図4の第1上扉34aに示すように、ヒンジ46を中心に上向きに開放させる後ろ開きができるようにしている。
【0029】
第2上扉36は扉後縁を第1上扉34の第2上面扉開口37にヒンジ42により軸支しており、図4の第2上扉36aに示すように、ヒンジ42を中心に上向きに開放させる前開きができるようにしている。
【0030】
第2上扉36の前縁にはヒンジ44により前開きハンドル38が軸支されており、前開きハンドル38のハンドル本体に設けられた前開き機構により、第2上扉36の閉鎖状態で、前扉32が図示の閉鎖状態に係止されており、利用者が道路15側から操作する場合には、前開きハンドル38を開操作すると、第2上扉36に対する前扉32の係止が解除され、前扉32は自重により筐体31の裏側に落下して前面扉開口33を開放させ、また、第2上扉36を前開きすることで、消火栓収納箱30の第2上面扉開口37を開放させる。
【0031】
ここで、第1上扉34を筐体31の前縁コーナー部に軸支させるヒンジ46と、第2上扉36の前縁に前開きハンドル38を軸支させるヒンジ44は、両者の軸心線が同軸となるように配置されており、筐体31及び前扉32を閉鎖位置に係止している前開きハンドル38を固定側として、ヒンジ44,46により第2上扉36と共に第1上扉34を後開き自在に軸支している。
【0032】
消火栓収納箱30の前面左上部には通報装置パネル48が設けられる。通報装置パネル48には、赤色表示灯50及び発信機52、応答ランプ54及び電話ジャック55が設けられている。赤色表示灯50は常時点灯し、消火栓設備の設置場所が遠方から分かるようにしている。火災時には、発信機52を押して押し釦スイッチをオンすると、発信信号が監視室の監視センター等に設置された防災受信盤に送信されて火災警報が出され、これに伴い応答信号が防災受信盤から送られて、応答ランプ54が点灯され、更に、赤色表示灯50が点滅される。
【0033】
[前開き機構]
図5は前開き機構が設けられた消火栓収納箱の前開きハンドルの部分を取り出して示した説明図であり、図5(A)は正面を示し、図5(B)は図5(A)のX-Xから見た側面を示す。図6は第2上扉を前開きして前扉の落下によりスライド開放させる前開き機構の機構構造を示した説明図であり、図6(A)は閉鎖状態を示し、図6(B)は前開きハンドルを開操作した状態を示す。
【0034】
図5に示すように、消火栓収納箱30の上面に配置された第2上扉36の先端にヒンジ44で軸支された前開きハンドル38のハンドル本体38aの両側には、前開き機構の軸部材56が取り出されおり、第2上扉36の閉鎖状態で軸部材56の先端は、前扉32の裏側に配置された軸受部材58の軸穴に挿入されており、これにより第2上扉36に前扉32が係止され、閉鎖位置に保持されている。
【0035】
軸部材56は前開きハンドル38をリフトアップすると、内側に引き込まれ、軸受部材58の軸穴から抜けることで、前扉32の係止が解除され、前扉32は自重によりスライドしながら落下して前面扉開口33を開放させる。
【0036】
図6(A)に示すように、前開き機構60は、ハンドル本体38a内に、一対の屈曲したリンク62の一端が移動支点64で連結され、リンク62の屈曲位置が回動支点66としてハンドル本体38a側に固定され、リンク62の他端はスライド支点70として、軸部材56の軸端の支点68に連結されており、更に、移動支点64はスプリング72により図示で上方向に付勢されている。
【0037】
前開きハンドル38を操作していない場合、スプリング72の力を受けて、リンク62は外側に回動することで、軸部材56を軸受部材58の軸穴58aに嵌め入れ、第2上扉36に前扉32を係止させている。
【0038】
前開きンドル38をリフトアップすると、図6(B)に示すように、図示しないリンク機構を介して移動支点64がスプリング72に抗して下側に移動し、これによりリンク62は内側に回動し、軸部材56を内側に引き込むことで、軸受部材58の軸穴58aから軸部材56の先端を引き外し、前扉32の係止が解除され、前扉32は自重によりスライドしながら落下して前面扉開口33を開放させる。
【0039】
なお、前開き機構60は図6のリンク機構に限定されず、前開きハンドル38のリフトアップにより軸部材56を内側に引き込んで軸受部材58の軸穴58aから引き外す適宜のリンク機構が含まれる。
【0040】
[消火栓収納箱の内部構造]
図7は消火栓収納箱の内部構造を示した説明図であり、図7(A)は正面を示し、図7(B)は図7(A)のY-Y断面から見た平面を示す。
【0041】
図7に示すように、消火栓収納箱30における筐体31の内部下側はホース収納部74となっており、保形構造のホース76を水平回りに重ねて内巻きしている。
【0042】
筐体31の平面からみた長方形は、横幅は約1.4メートル程度、奥行きは約0.35メートル程度であることから、ホース収納部74にホース76を内巻きした場合、ホース76の内巻き形状は、2つの平行線と2つの半円からなる角丸長方形となり、平面長方形の筐体31内に内巻きされたホース76の1ターンの長さは概ね3.5メートル程度となり、ホース長さは30メートル以上必要とすることから、ホース76は9ターン以上重ねて内巻きすればよい。
【0043】
ここで、筐体31内に角丸長方形に内巻きされたホース76を、平行線ホース部分76a,76c及び半円ホース部分76b,76dで示している。
【0044】
筐体31の中央前面側には、筐体31内に角丸長方形に内巻きされるホース76の前面側の平行線ホース部分76aを内側に変形させるホースガイド構造80が設けられる。
【0045】
ホースガイド構造80は金属パイプを用いた4本のガイドパイプ80a,80b,80c,80dを底板81に起立させており、両端のガイドパイプ80a,80dは筐体31の内面に沿って起立され、中央のガイドパイプ80b,80cは所定長さ内側に離して起立させ、ホース76をホースガイド構造80のガイドパイプ80a,80b,80c,80dに沿って内巻きすることで、ホース76の前面側の平行線ホース部分76aが内側に変形されて略ひょうたん形に近い形状となり、この変形によりホース76の変形された平行線ホース部分76aには外側に広がろうとする反発力が発生している。
【0046】
このようなホースガイド構造80が設けられたことで、筐体31内に重ねて内巻きされたホース76は、角丸長円形の平行線ホース部分76aがホースガイド構造80により内側に変形されることで、外側に広がろうとする反発力が発生し、筐体31の内壁側に押し付ける力が発生することで、重ねて内巻きしたホース76の平行線ホース部分76a,76cが長くなっても内側に崩れてしまうことを確実に防止可能とする。
【0047】
ここで、ホースガイド構造80はホース76の前面側の平行線ホース部分76aを内側に変形させ、背面側の平行ホース部分76cは内側に変形させていないが、平行線ホース部分76aの内側へ変形により、ホース76全体として外側に広がろうとする力が増加し、内側に変形させていない背面側の平行ホース部分76cについても、内側に崩れてしまうことを確実が防止可能となる。
【0048】
また、前扉32及び第2上扉36又は第1上扉34を開いてホース76を外部に引き出す場合には、ホース76の半径ホース部分76b,76dの変形によるホースを押し出そうとする力に加え、ホース76の平行線ホース部分76aについても、ホースガイド構造80による内側への変形でホース76を押し出そうとする力が発生し、ホース76の引き出し力を低減可能とする。
【0049】
ホースガイド構造80の上部には、図1及び図2に示した前面扉開口33、第1上面扉開口35及び第2上面扉開口37の内側を囲むように、ガイドパイプ82a~82d及びガイドパイプ84a,84bが配置され、ホース76を外部に引き出す際にガイドパイプ82a~82c又はガイドパイプ84a,84bに摺接させることで、ホース76の損耗を防止すると共にホース引き出し力を低減させている。
【0050】
また、第2上扉36の裏面にはノズルホルダー86によりホース76の先端に連結された泡ノズル78が着脱自在に係止されている。本実施形態のノズルホルダー86は、泡ノズル78を第2上扉36の裏面に軸支して懸垂状態に吊り下げる懸架構造により係止しており、第12上扉36を図4の上扉36aに示すように前開きした場合、又は、第1上扉34を第2上扉36と一体に図4の第1上扉34aに示すように後ろ開きした場合にも、第2上扉36の扉裏面にノズルホルダー86が泡ノズル78を懸垂した状態で係止している。
【0051】
このため第2上扉36を前開き又は第1上扉34を第2上扉36と共に後開きすると、扉裏面に懸垂状態に保持されている泡ノズル78が消火栓収納箱30の上部に現れることになる。
【0052】
第2上扉36の前開きで扉裏面に保持されている泡ノズル78が現れる位置は、道路15から概ね0.9~1.3メートルの範囲のいずれかとなり、これは道路15に立った利用者の腰から肩までの範囲に相当し、目の前に泡ノズル78が出現することから、泡ノズル78の取出しが容易にできる。
【0053】
また、第1上扉34の後開きで扉裏面に保持されている泡ノズル78が現れる位置は、監視員通路14の路面から概ね0.2~0.4メートルの範囲のいずれかとなり、監視員通路14に体をかがめて後開きハンドル40を操作している利用者の目の前に泡ノズル78が出現し、利用者は監視員通路14側から泡ノズル78を容易に取り出すことができる。
【0054】
また、筐体31の上面開口の右側内部には操作箱が配置され、操作箱には消火栓弁開閉レバーが設けられ、操作箱の内部に設けられている手動パイロット弁を開閉操作させるようにしているが、図示を省略している。消火栓弁開閉レバーを開操作すると、手動パイロット弁が開放され、図1に示した放水制御機構収納部26に分離配置された消火栓弁を遠隔的に開放させることができる。
【0055】
また、操作箱や手動パイロット弁、消火栓開閉レバーのうち、1または複数をホースガイド構造80によって確保される空きスペースに配置しても良い。また、手動パイロット弁と消火栓開閉レバー間の接続部材や、手動パイロット弁から消火栓弁までの配管の一部を空きスペースに配置しても良い。
【0056】
上記のように空きスペースに適宜の部材を配置することで、スペースの限られる監視員通路に配置される消火栓収納箱の空間を有効活用することができる。
【0057】
[道路側から第2上扉及び前扉を開放させる操作]
図8は道路側から操作する場合の前扉と第2上扉の開放操作を示した説明図である。
【0058】
図8に示すように、利用者が道路側から消火栓収納箱30を操作する場合には、前開きハンドル38をリフトアップすると、前扉32の係止が解除され、前扉32は自重によりスライド落下し、前面扉開口33が開放される。
【0059】
続いて、利用者が第2上扉36を奥行方向に開く前開き操作を行うと、図6(A)(B)に示したように、ハンドル本体38aの両側に配置されている軸部材56が前扉32の裏面の軸受部材58から抜き出され、第2上扉36はヒンジ42を中心に前開きされ、第2上面扉開口37が開放される。
【0060】
このとき図7(A)に示したように、第2上扉36の裏側に配置されているノズルホルダー86は、道路にいる利用者の目の前に位置し、ノズルホルダー86に係止されている泡ノズル78が利用者の目の前に出現し、容易に泡ノズル78を取り出してホース76を引き出すことができる。
【0061】
[監視員通路側から上扉を開放させる操作]
図9は監視員通路側から操作する場合の第1上扉の開放操作を示した説明図である。
【0062】
図9に示すように、利用者が監視員通路側から消火栓収納箱30を操作する場合には、利用者が監視員通路から体をかがめて後開きハンドル40をリフトアップすると、第1上扉34の後縁側の筐体31側に対する係止が解除され、前縁コーナー部のヒンジ46を中心に、第1上扉34は後開きされ、第1上面扉開口35が開放される。
【0063】
このとき第1上扉34と一体に第2上扉36もヒンジ44を中心に後開きされ、ヒンジ44で軸支された前開きハンドル38は動くことがなく、前開きハンドル38に設けられた図6に示した前開き機構60の軸部材56の先端は前扉32の裏面に配置された軸部材58の軸穴58aに嵌め込まれた状態を維持しており、前扉32の閉鎖状態への係止を保持したまま、第2上扉36は第1上扉34と一体に後開きされる。
【0064】
第1上扉34の後開きにより第1上面扉開口35が開放されると、図6(A)に示したように、第2上扉36の裏側に配置されているノズルホルダー86に係止された泡ノズル78が、監視員通路で体をかがめている利用者の目の前に出現し、容易に泡ノズル78を取り出してホース76を引き出すことができる。
【0065】
[ノズルホルダーの第1実施形態]
図10はノズルホルダーの第1実施形態を上扉の閉鎖状態について示した説明図であり、図10(A)は正面を示し、図10(B)は側面を示す。また、図11は第2上扉の前開き状態(図11(A))及び第1上扉の後開き状態(図11(B))での第1実施形態のノズルホルダーによる泡ノズルの懸架状態を取り出して示した説明図である。
【0066】
図10に示すように、本実施形態のノズルホルダー86Aは、第2上扉36の裏面に配置された支持部材88に、図8に示したように、ヒンジ42による第2上扉36の軸心線と平行な軸心線96によりホルダー本体90が軸ピン94により揺動自在に設けられており、ホルダー本体90の先端には、泡ノズル78の逆テーパ先端部78aを着脱自在に掴む屈曲された複数本の板ばねを用いたチャッキ爪92aが放射状に配置されたチャッキ部92が設けられている。
【0067】
このように閉鎖状態にある第2上扉36の裏面にノズルホルダー86Aによりノズル78が着脱自在に吊り下げられており、図7(A)に示したように、泡ノズル78後端に連結されたホース76はホース収納部74に向かって下向きとなっており、図7(B)に示すように、水平回りに巻き回したホース76の巻き回し終了位置がどのような位置にあっても、大きなホース76の変形を起こすことがなく、第2上扉36の前開きによる開閉及び第2上扉36と一体となった第1上扉34の後開きによる開閉が滑らかにできる。
【0068】
図11(A)は、利用者による道路側からの操作により第2上扉36を前開きした状態であり、このとき前扉32は係止が解除されることでスライド落下して開いている。第2上扉36を図示の位置に前開きすると、第2上扉36の開きに伴い扉裏面に固定されたノズルホルダー86Aの支持部材88の動きに対し、軸ピン94で軸支されたホルダー本体90はチャッキ部92のチャッキ爪92aに係止して吊り下げている泡ノズル78及びホース76の重量を受けて下向きに吊り下げられた懸架姿勢を維持しており、この懸架姿勢のまま泡ノズル78が上側に引き上げられ、道路側から操作している利用者の目の前に泡ノズル78が出現し、第2上扉36を開いた状態での泡ノズル78の取出しを容易に行うことを可能とする。
【0069】
ノズルホルダー86Aからの泡ノズル78の取外しは、泡ノズル78を下に引くことでチャッキ部92のチャッキ爪92aから抜き出すことができる。なお、消火栓を使用した後の復旧時には、ノズルホルダー86Aのチャッキ部92のチャッキ爪92aに対し泡ノズル78の先端を下から押し込むことで係止させることができる。
【0070】
図11(B)は、利用者による監視員通路側からの操作により、第2上扉36を一体化した状態で第1上扉34を後開きした状態である。第1上扉34を図示の位置に後開きすると、第2上扉36の開きに伴い扉裏面に固定されたノズルホルダー86Aの支持部材88の動きに対し、軸ピン94で軸支されたホルダー本体90はチャッキ部92のチャッキ爪92aに係止して吊り下げている泡ノズル78及びホース76の重量を受けて下向きに吊り下げられた懸架姿勢を維持しており、この懸架姿勢のまま泡ノズル78が上側に引き上げられ、体をかがめて監視員通路側から操作している利用者の目の前に泡ノズル78が出現し、第1上扉34を開いた状態での泡ノズル78の取出しを容易に行うことを可能とする。
【0071】
図7及び図11に示すように泡ノズル78の取手が横向きになるように懸架されることが好適である。泡ノズル78の取手が横向きになるように懸架されることで、扉がどちらの方向から開かれたとしても泡ノズル78の取手が奥側に行かないようにすることが出来る。泡ノズル78の取手が横向きになるように懸架されるようにするために、上扉裏面に懸架方法を指示する旨を表示したり、ノズル先端に印をつけたり、ノズルの取手が横向きであるときのみロックするような機構を設けるようにしても良い。
【0072】
また、上扉開放時に扉をロックする機構を設けても良い。扉をロックすることで、泡ノズル78を取り出す際に泡ノズル78を引き下ろす力により上扉が閉まることを防止することが出来る。
【0073】
また、ノズルホルダー86Aのチャッキ部92のチャッキ爪92aにより泡ノズル78を保持する力は、泡ノズル78及び上扉開放時に浮く部分のホース76の重量に耐えられるものである。
【0074】
また、泡ノズル78及び上扉開放時に浮く部分のホース76の重量と泡ノズル78の取り出しを行う引き降ろし力との合計により保持を解除できるものとする。
【0075】
また、チャッキ部92のチャッキ爪92aに泡ノズル78が下から押し込まれる際にオンするスイッチを設け、当該スイッチを解除することでノズルの把持力が解除されるような仕組みを設けても良い。
【0076】
[ノズルホルダーの第2実施形態]
図12はノズルホルダーの第2実施形態を示した説明図であり、図12(A)は正面を示し、図12(B)は側面を示し、図12(C)に箱枠状のノズル把持部を下側から見た平面を示す。
【0077】
図12に示すように、本実施形態のノズルホルダー86Bは、第2上扉36の裏面に配置された支持部材88に、図8に示したように、ヒンジ42による第2上扉36の軸心線と平行な軸心線96によりホルダー本体90が軸ピン94により揺動自在に設けられている点は図11の実施形態と同じであるが、ホルダー本体90の先端には箱枠状のノズル把持部98が設けられている。
【0078】
ノズル把持部98は、泡ノズル78の逆テーパ先端部78aを出し入れする開口が左右に形成されると共に下側横方向に逆テーパ先端部78aの付け根側を通過可能な横幅を持つ下側開口98aが形成され、下側開口98aの中央に、横方向から受け入れた泡ノズル78の逆テーパ先端部78aを嵌め込み保持させる円弧状の切欠98bが形成されている。
【0079】
このような本実施形態のノズルホルダー86Bよれば、扉裏面の支持部材88に対する軸ピン94によるホルダー本体90の軸支により、第1上扉34の開閉位置の如何に関わらず、常に、泡ノズル78の懸架姿勢を一定に保つことが可能となり、第2上扉36と一体となった第1上扉34の後開きによる開閉が滑らかにできる。
【0080】
また、ホルダー本体90の先端に配置された箱枠状のノズル把持部98に対し、泡ノズル78の逆テーパ先端部78aを左右いずれかの横方向から嵌め入れることで懸架状態に係止でき、また、第1上扉34を開いた場合には、ノズル把持部98に懸架状態で係止している泡ノズル78を、左右何れかの方向に引き外すことで、簡単に取り出すことができる。
【0081】
逆テーパ先端部分78aは付け根側より先端部の径が広い構造である。円弧状の切欠98bは逆テーパ先端部分78aの付け根側よりも広く、逆テーパ先端部分78aの先端部よりも狭い構造である。また、下側開口98aは逆テーパ先端部78aの付け根側を通過可能な横幅を持つので、下側開口98aより逆テーパ先端部分78aを通して切欠98bまで挿入し、泡ノズル78から手を放すなどして解放することで、切欠98bと逆テーパ先端部78aの径が等しくなる場所までノズルが落下し、ノズルが嵌め込み保持される。これにより、水平方向と下方向への動きが規制され、上向きの動きもノズル自身の重さにより規制される。
【0082】
泡ノズル78を取り出す時は、泡ノズル78を上にずらし、下側開口98aの横幅よりも逆テーパ先端部78aが小さくなる高さまで泡ノズル78を持ち上げることで、下側開口98aから泡ノズル78を取り出すことが出来る。また、逆テーパ先端部はヒョウタンのような高さ方向において途中が凹形状となるものを用いても良い。この場合、下側開口98aは逆テーパ先端部78aの凹部を通過可能な横幅を持つようにすればよい。
【0083】
図12に示すように泡ノズル78の取手が横向きになるように懸架されることが好適である。泡ノズル78の取手が横向きになるように懸架されることで、扉がどちらの方向から開かれたとしても泡ノズル78の取手が奥側に行かないようにすることが出来る。泡ノズル78の取手が横向きになるように懸架されるようにするために、上扉裏面に懸架方法を指示する旨を表示したり、ノズル先端に印をつけたりしても良い。また、ノズル把持部98のうち、切欠98bの周囲から下向きに、逆テーパ先端部78aから取手までの高さ分程度の長さを有するガイドを設けるようにしても良い。
【0084】
[ノズルホルダーの第3実施形態]
図13はノズルホルダーの第3実施形態を示した説明図であり、図13(A)は筐体前面及び前扉の一部を破断して内部の正面を示し、図13(B)は横方向から見た断面を示す。また、図14は第2上扉の前開き状態(図14(A))及び第1上扉の後開き状態(図14(B))でのノズルホルダーによる泡ノズルの懸架状態を取り出して示した説明図である。また、図15はノズルホルダーの第3実施形態を上扉の開放状態で前方から見て示した説明図、図16は第3実施形態のノズルホルダーを横方向から見て示した説明図、図17は一部のホルダー部材が垂直軸回りに回動した状態での第3実施形態のノズルホルダーを横方向から見て示した説明図である。
【0085】
(3軸自由度を持つノズルホルダーの構成)
図15乃至図17に示すように、本実施形態のノズルホルダー86Cは、支持部材120、第1ホルダー部材124、第2ホルダー部材128、第3ホルダー部材132及びチャッキ部138で構成される。
【0086】
支持部材120は、取付部120bの前方に2枚の支持アーム120aが延在されており、第2上扉36の裏面にボルト121とナット122により取付部120bが締め付け固定されている。
【0087】
支持アーム120aの先端側の軸穴には軸ピン126により第1ホルダー部材124が第1軸心線140回りに回動自在に軸支されている。第1ホルダー部材124は、上向きに開いた断面コ字形の部材である。ここで、軸ピン126の第1軸心線140は、図8に示したヒンジ42による第2上扉36の軸心線と平行になる。
【0088】
第1ホルダー部材124の下には、ボルト軸130とナット131により第2ホルダー部材128が第2軸心線142回りに回動自在に軸支されている。第2ホルダー部材128は、下向きに開いた断面コ字形の部材であり、また、第2軸心線142は第1軸心線140に直交している。
【0089】
第2ホルダー部材128の下には、軸ピン134により第3ホルダー部材132が第3軸心線144回りに回動自在に軸支されている。第2ホルダー部材128は、下向きに開いた断面コ字形の部材であり、また、第3軸心線144は第2軸心線142に直交している。
【0090】
第3ホルダー部材132の下側にはリベット136によりチャッキ部138が固定されている。チャッキ部138は、ほぼ「フの字」形に形成された4本の板ばねによるチャッキ爪138aが放射状に配置されており、チャッキ爪138aに対し下側から泡ノズル78の逆テーパ先端部78aを嵌め入れることで、泡ノズル78を吊り下げた懸架状態で着脱自在に係止している。
【0091】
このような本実施形態のノズルホルダー86Cは、固定側となる支持部材120に対しチャッキ部138が、第1ホルダー部材124、第2ホルダー部材128及び第3ホルダー部材132を介して、軸ピン126、ボルト軸130及び軸ピン134による第1乃至第3軸心線140,142,144による3軸回りに回動自在に連結されている。即ち、本実施形態のノズルホルダー86Cは、固定側となる第2上扉36の裏面に、泡ノズル78が係止されるチャッキ部138を3軸自由度をもつフリーな状態で吊下げている。
【0092】
また、固定側となる支持部材120に対しチャッキ部138が、3軸自由度をもつ第1ホルダー部材124、第2ホルダー部材128及び第3ホルダー部材132を介してフリーな状態で吊下げられているため、扉開閉に伴うホース76が連結された泡ノズル78の動きに応じてチャッキ部138が3軸回りに自由に動き、ノズル先端の逆テーパ先端部78aを掴んでいる複数のチャッキ爪138aによる係止が均一にバランス良く行われ、4本のチャッキ爪138aによる泡ノズル78の係止力をそれほど強くしなくとも、確実に泡ノズル78を吊下げ状態に係止できる。
【0093】
また、チャッキ爪138aによる泡ノズル78の係止力を強くしなくとも確実に泡ノズル78を着脱自在に係止できるため、ノズルホルダー86Cに係止している泡ノズル78を軽い力で引き外すことができ、操作性を高めることができる。
【0094】
(上扉の閉鎖状態)
図13に示すように、第2上扉36が閉鎖された通常状態にあっては、閉鎖されている第2上扉36の裏面に固定された支持部材120は支持アーム120aを下向きとしており、その下に3軸自由度を持って連結された第1ホルダー部材124、第2ホルダー部材128及び第3ホルダー部材132を介してチャッキ部138が吊下げられており、チャッキ部138の4本のチャッキ爪138aに泡ノズル78の逆テーパ先端部78aが嵌め込まれ、泡ノズル78及びホース76の重量を受けて吊下げられた状態に係止されている。
【0095】
このように閉鎖状態にある第2上扉36の裏面にノズルホルダー86Cにより泡ノズル78が着脱自在に吊り下げられた状態では、図7(A)に示したと同様に、泡ノズル78の後端に連結されたホース76はホース収納部74に向かって下向きとなっており、図7(B)に示すように、水平回りに巻き回したホース76の巻き回し終了位置がどのような位置にあっても、大きなホース76の変形を起こすことがなく、第2上扉36の前開きによる開閉及び第2上扉36と一体となった第1上扉34の後開きによる開閉が滑らかにできる。
【0096】
(上扉の開放状態)
図14(A)は、利用者による道路側からの操作により第2上扉36を前開きした状態であり、このとき前扉は係止が解除されることでスライド落下して開いている。第2上扉36を図示の位置に前開きすると、第2上扉36の開きに伴い扉裏面に固定されたノズルホルダー86Cの支持部材120の動きに対し、3軸自由度を持つ第1ホルダー部材124、第2ホルダー部材128及び第3ホルダー部材132を介してフリー状態に支持されているチャッキ部138に係止された泡ノズル78が上側に引き上げられ、道路側から操作している利用者の目の前に泡ノズル78が出現し、第2上扉36を開いた状態での泡ノズル78の取出しを容易に行うことを可能とする。
【0097】
ノズルホルダー86Cからの泡ノズル78の取外しは、固定側となる支持部材120に対しチャッキ部138がフリー状態で吊り下げられていることから、泡ノズル78を手前から下向きに引くことで、簡単にチャッキ部138のチャッキ爪138aから取り外すことができる。なお、消火栓を使用した後の復旧時には、ノズルホルダー86Cのチャッキ部138に対し泡ノズル78の先端を下から押し込むことで、簡単に係止させることができる。
【0098】
図14(B)は、利用者による監視員通路側からの操作により、第2上扉36を一体化した状態で第1上扉34を後開きした状態である。第1上扉34を図示の位置に後開きすると、第2上扉36の扉裏面に固定されたノズルホルダー86Cの支持部材120の動きに対し、3軸自由度を持つ第1ホルダー部材124、第2ホルダー部材128及び第3ホルダー部材132を介してフリー状態に支持されているチャッキ部138に係止された泡ノズル78が上側に引き上げられ、体をかがめて監視員通路側から操作している利用者の目の前に泡ノズル78が出現し、第1上扉34を開いた状態での泡ノズル78の取出しを容易に行うことを可能とする。
【0099】
ここで、第2上扉36の裏面に対するノズルホルダー86Cの配置は、第2上扉36の前後の中心位置より奥行側となる位置に支持部材120を固定して配置されており、このため図14(B)のように、第2上扉36を一体化した状態で第1上扉34を後開きした場合、図14(A)に示した前開きした場合に比べ、それより高い位置にノズルホルダー86Cが引き上げられ、監視員通路側からの泡ノズルの取出しを容易にしている。
【0100】
また、図14(B)に示すように、第1上扉34を後開きしたときの泡ノズル78の少なくとも一部の位置が、図14(A)に示す第2上扉36を前開きしたときの泡ノズル78の少なくとも一部の位置より高くなるように構成していることで、監視員通路側からの操作者による泡ノズル78の取出しを行い易くしている。
【0101】
また、図11の第1実施形態では支持部材88を第2上扉36の裏面中央に設けているが、支持部材88を図14の第3実施形態と同様に、第2上扉36の裏面の奥行側に設けることで、第1上扉34を後開きしたときの泡ノズル78の少なくとも一部の位置が、第2上扉36を前開きしたときの泡ノズル78の少なくとも一部の位置より高くなるように構成することとなり、監視員通路側からの操作者による泡ノズル78の取出しを行い易くできる。
【0102】
また、ノズルホルダー86Cの第2上扉36の裏面の配置を、扉前後方向の中心位置とすることで、図11の第1実施形態と同様に、第2上扉36を前開きした場合と第2上扉36を一体化した状態で第1上扉34を後開きした場合のノズルホルダー86Cの引上げ位置が同じ高さとなるようにしても良い。
【0103】
また、図14乃至図17に示した第3実施形態のチャッキ部138を、図12に示した第2実施形態におけるノズル把持部98としても良い。
【0104】
[ノズルホルダーの第4実施形態]
図18はノズルホルダーの第4実施形態のノズルホルダーを前方から見て示した説明図、図19はノズルホルダーの第4実施形態のノズルホルダーを横方向から見て示した説明図である。
【0105】
(2軸自由度を持つノズルホルダーの構成)
図18及び図19に示すように、本実施形態のノズルホルダー86Dは、支持部材120、第1ホルダー部材124、第2ホルダー部材146及びチャッキ部138で構成される。
【0106】
支持部材120は、取付部120bの前方に2枚の支持アーム120aが延在されており、第2上扉36の裏面にボルト121とナット122により取付部120bを締め付け固定されている。
【0107】
支持アーム120aの先端側の軸穴には軸ピン126により第1ホルダー部材124が第1軸心線140回りに回動自在に軸支されている。第1ホルダー部材124は、図8に示したヒンジ42による第2上扉36の軸心線と平行になる。
【0108】
第1ホルダー部材124の下には、ボルト軸130とナット131により第2ホルダー部材146が垂直方向の第2軸心線142回りに回動自在に軸支されている。第2ホルダー部材146は、横に開いた断面矩形の部材であり、また、第2軸心線142は第1軸心線140と直交している。
【0109】
第2ホルダー部材146の下側にはリベット136によりチャッキ部138が固定されている。チャッキ部138は、4本の板ばねによるチャッキ爪138aが放射状に配置されており、チャッキ爪138aに対し下側から泡ノズル78の逆テーパ先端部78aを嵌め入れることで、泡ノズル78を吊り下げた状態で着脱自在に係止している。
【0110】
このような本実施形態のノズルホルダー86Dは、固定側となる支持部材120に対しチャッキ部138が、第1ホルダー部材124及び第2ホルダー部材146を介して、軸ピン126及びボルト軸130による第1及び第2軸心線140,142による2軸回りに回動自在に連結されている。即ち、本実施形態のノズルホルダー86Dは、固定側となる第2上扉36の裏面に、泡ノズル78を係止するチャッキ部138が2軸自由度をもって吊下げられている。
【0111】
また、固定側となる支持部材120に対しチャッキ部138が、2軸自由度をもつ第1ホルダー部材124及び第2ホルダー部材146を介して2軸回りにフリーな状態で吊下げられているため、扉開閉に伴うホース76が連結された泡ノズル78の動きに応じてチャッキ部138が2軸回りに自由に動き、ノズル先端の逆テーパ先端部78aを掴んでいる複数のチャッキ爪138aによる係止が均一にバランス良く行われ、4本のチャッキ爪138aによる泡ノズル78の係止力をそれほど強くしなくとも、確実に泡ノズル78を懸垂状態に係止できる。
【0112】
また、チャッキ爪138aによる泡ノズル78の係止力を強くしなくとも確実に泡ノズル78を着脱自在に係止できるため、ノズルホルダー86Dに係止している泡ノズル78を軽い力で引き外すことができ、操作性を高めることができる。
【0113】
利用者が道路側からの操作により第2上扉36を前開きした場合には、第2上扉36の開きに伴い扉裏面に固定されたノズルホルダー86Dの支持部材120の動きに対し、2軸自由度を持つ第1ホルダー部材124及び第2ホルダー部材146を介してフリー状態に支持されているチャッキ部138に係止された泡ノズル78が上側に引き上げられ、道路側から操作している利用者の目の前に泡ノズル78が出現し、第2上扉36を開いた状態での泡ノズル78の取出しを容易に行うことを可能とする。
【0114】
また、利用者による監視員通路側からの操作により第2上扉36を一体化した状態で第1上扉34を後開きした場合には、第2上扉36の開きに伴い扉裏面に固定されたノズルホルダー86Dの支持部材120の動きに対し、2軸自由度を持つ第1ホルダー部材124及び第2ホルダー部材146を介してフリー状態に支持されているチャッキ部138に係止された泡ノズル78が上側に引き上げられ、体をかがめて監視員通路側から操作している利用者の目の前に泡ノズル78が出現し、第1上扉34を開いた状態での泡ノズル78の取出しを容易に行うことを可能とする。
【0115】
また、図18及び図19の第3実施形態のチャッキ部138を、図12に示した第2実施形態におけるノズル把持部98としても良い。
【0116】
[扉開閉構造の他の実施形態]
図20は消火栓収納箱における扉構造の他の実施形態を示した説明図、図21図20の消火栓収納箱を道路側から操作する場合の前扉と上扉の開放操作を示した説明図、図22図20の消火栓収納箱を監視員通路側から操作する場合の上扉の開放操作を示した説明図である。
【0117】
(上扉の前開き構造)
図20に示す本実施形態の扉開閉構造は、図2の上扉を第1上扉34と第2上扉36に分けた実施形態に対し、上扉100を一枚扉とし、上扉100を前開き及び後開き自在に軸支させたことを特徴とする。
【0118】
利用者が道路側から操作する場合には、前開きハンドル38を操作すると、前扉32の係止が解除されてスライド落下し、図21に示すように開放される。
【0119】
また、上扉100は前開きハンドル38を持って上向きに開くことで開放され、このとき上扉100の裏面に配置されたノズルホルダー86が利用者の目の前に出現する。なお、ノズルホルダー86に係止されている泡ノズルは図示を省略している。
【0120】
上扉100に対する前扉32の係合は、図5及び図6に示したと同じ構造であり、利用者が道路側から操作する場合には、前開きハンドル38を操作するとハンドル本体38aの両側に取り出された軸部材56が引き込まれ、前扉32の裏面に配置された軸受部材58の軸穴から抜けることで、前扉32との係止が解除され、前扉32のスライド落下による開放及び上扉100の開放ができる。
【0121】
上扉100を前開きするための後縁部の構造は、図21に示すように、上扉100の後開きハンドル102のハンドル本体102aから両側に軸部材104が取り出され、軸部材104の先端は筐体31に固定された軸受部材106の軸穴に嵌め入れられている。この構造は図5及び図6に示した前開きハンドル38側と同じ開閉構造となる。
【0122】
このため上扉100は、後開きハンドル102の軸部材104を筐体31側の軸受部材106に嵌め入れて軸支させることで、両者の軸心線を中心に上下方向に開閉される。
【0123】
(上扉の後開き構造)
図20の消火栓収納箱30を利用者が監視員通路側から操作する場合に、後開きハンドル102を操作すると、筐体31側との係止が解除され、上扉100を図22に示すように後開きすることができる。このとき上扉100の裏面に配置されたノズルホルダー86が、体をかがめている利用者の目の前に出現する。
【0124】
上扉100を後開きするための開閉構造は、図21に示すように、上扉100の前縁両側の裏面側に軸部材110が支持され、これに対応して筐体31の上面扉開口112の前縁両側に、上方に開口した半円筒状の軸受け部材108が固定配置され、軸受け部材108に上扉100の軸部材110が嵌め入れられた状態で、両者の軸心線を中心に、上扉100が後開き可能に軸支されている。
【0125】
また、上扉100の前縁中央に設けられた前開き操作ハンドル38は、軸部材56の先端が前扉32の内側の軸部材58に挿入されていることで、前扉32を閉鎖状態に係止したまま、上扉100の後開きを可能としている。
【0126】
このような図20乃至図22に示す扉開閉構造の消火栓収納箱30についても、上扉100の閉鎖状態で泡ノズルは扉裏面にノズルホルダー86により吊り下げられた懸架状態で係止されており、上扉100を前開き及び後開きしても、泡ノズルはノズルホルダー86による吊り下げられた懸架姿勢を保ったまま、上扉100の開放に伴って引き上げられ、上扉100の開閉に対しノズルの姿勢が変化せず、上扉100を開いた状態でのノズルの取出しを容易に行うことを可能とする。
【0127】
[本発明の変形例]
(ノズルホルダー)
上記の実施形態に示したノズルホルダーにより泡ノズルを着脱自在に係止する爪部又は箱枠状のノズル把持部は一例であり、扉裏面に泡ノズルを懸架状態で着脱自在に係止する構造であればよく、適宜の構造とすることができる。
【0128】
(2軸自由度また3軸自由度のノズルホルダー)
上記の実施形態は、上扉裏面に固定された支持部材に対し軸ピンとコ字形のホルダー部材の多段連結によりチャッキ部の2軸自由度又は3軸自由度を実現しているが、これに限定されず、例えば、上扉裏面に固定された支持部材に対しボールジョイントを介してチャッキ部を揺動自在に連結することで、2軸自由度又は3軸自由度を実現するようにしても良い。
【0129】
(泡消火栓設備)
上記の実施形態は、消火泡を放出させる泡消火栓設備を例にとっているが、これに限定されず、消火用水を放水させる消火栓設備としても良い。
【0130】
(その他)
上記の実施形態は、前扉を有する消火栓設備を例にとっているが、これに限定されず、前扉を有さない構造としても良い。
【0131】
また、上記の実施形態は、トンネル消火栓を例にとっているが、一般の道路に埋め込まれた消火栓に用いても良い。また、消火栓収納箱を埋め込まずに露出するようにしても良い。露出型の消火栓収納箱に用いる場合、上扉を開きやすく、ノズルを取り出す易くするために上扉が1メートル程度の高さに来るようにすることが好適である。また、例えば高さの異なる2つの通路面や、例えば体育館や舞台などの壇上とその下のような、それぞれ人が歩行可能な高さの異なる面とその面に接する壁面において本願消火栓収納箱を適用しても良い。
【0132】
また本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0133】
10:トンネル
12:トンネル壁面
14:監視員通路
15:道路
16:消火栓設備
18:床版
20:管理用通路
22:ダクト
24:給水本管
24a:分岐配管
25:給水配管
26:放水制御機構収納部
30:消火栓収納箱
31:筐体
32:前扉
33:前面扉開口
34:第1上扉
35:第1上面扉開口
36:第2上扉
37:第2上面扉開口
38:前開きハンドル
40,102:後開きハンドル
42,44,46:ヒンジ
48:通報装置パネル
56,104:軸部材
58,106:軸受部材
58a:軸穴
60:前開き機構
74:ホース収納部
76:ホース
78:泡ノズル
78a:逆テーパ先端部
80:ホースガイド
80a~80d,82a~82c,84a,84b:ガイドパイプ
86,86A,86B,86C,86D:ノズルホルダー
88,120:支持部材
90:ホルダー本体
92,138:チャッキ部
92a,138a:チャッキ爪
94:軸ピン
98:ノズル把持部
100:上扉
124:第1ホルダー部材
126,134:軸ピン
128,146:第2ホルダー部材
130:ボルト軸
132:第3ホルダー部材
140:第1軸心線
142:第2軸心線
144:第3軸心線
図1
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