(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023729
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】電気刺激装置
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
A61N1/36
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023214102
(22)【出願日】2023-12-19
(62)【分割の表示】P 2019102990の分割
【原出願日】2019-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000103471
【氏名又は名称】オージー技研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】根木 陽一
(72)【発明者】
【氏名】下山 賢士
(57)【要約】
【課題】治療開始前及び治療終了後に被治療者が麻痺部位を動かしたときに検出した麻痺部位の運動機能に関する情報を報知し、それら情報を比較することによって治療による運動機能向上の程度を確認可能な電気刺激装置を提供する。
【解決手段】運動機能検出手段と、電気刺激手段と、運動機能検出手段によって治療開始前及び治療終了後に被治療者が麻痺部位を動かしたときに検出された麻痺部位の運動機能に関する情報を報知する報知手段とを備えた電気刺激装置である。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被治療者の麻痺部位の運動機能を検出する運動機能検出手段と、
電流を前記被治療者の麻痺部位に印加する電気刺激手段と、
前記運動機能検出手段によって治療開始前及び治療終了後に前記被治療者が前記麻痺部位を動かしたときに検出された前記運動機能に関する情報を報知する報知手段と、
を備えたことを特徴とする電気刺激装置。
【請求項2】
治療条件として治療前後の前記運動機能に関する情報を記憶するか否かを選択可能であることを特徴とする請求項1に記載の電気刺激装置。
【請求項3】
前記運動機能検出手段は、前記麻痺部位の筋電位を検出する筋電位検出手段であり、
前記運動機能に関する情報は前記麻痺部位の前記筋電位から得られる筋電レベルである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気刺激装置。
【請求項4】
前記運動機能検出手段は、前記麻痺部位に関わる関節の移動量又は前記麻痺部位の筋力値を検出する手段であり、
前記運動機能に関する情報は、前記移動量又は前記筋力値である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気刺激装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気刺激装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、神経や筋群に電気刺激を印加して鎮痛、筋委縮改善を図る電気刺激装置が知られている。特許文献1に記載された電気刺激装置では、麻痺部位の筋電信号又は麻痺部位以外の部位の筋電信号を検出し、検出された筋電信号に基づいて、電気刺激を麻痺部位に印加して麻痺部位の運動機能訓練を行う。また、親機及び子機それぞれによる治療履歴(治療時間、出力回数、刺激時間)を、親機において表示して確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された電気刺激装置では、治療前及び治療後に検出した麻痺部位の運動機能に関する情報(例えば筋電レベル)を報知することができず、治療による運動機能向上の程度を確認することができなかった。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、治療前及び治療後に検出した麻痺部位の運動機能に関する情報を報知し、治療による運動機能向上の程度を確認可能な電気刺激装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、被治療者の麻痺部位の運動機能を検出する運動機能検出手段と、電流を前記被治療者の麻痺部位に印加する電気刺激手段と、前記運動機能検出手段によって治療開始前及び治療終了後に前記被治療者が前記麻痺部位を動かしたときに検出された前記運動機能に関する情報を報知する報知手段と、を備えたことを特徴とする電気刺激装置である。これによれば、治療による運動機能向上の程度を確認することができる。
【0006】
また、治療条件として治療前後の前記運動機能に関する情報を記憶するか否かを選択可能であることが好ましい。これによれば、治療による運動機能向上の程度を確認することができる。
【0007】
また、前記運動機能検出手段は、前記麻痺部位の筋電位を検出する筋電位検出手段であり、前記運動機能に関する情報は前記麻痺部位の前記筋電位から得られる筋電レベルであることが好ましい。これによれば、治療による運動機能向上の程度を確認することができる。
【0008】
また、前記運動機能検出手段は、前記麻痺部位に関わる関節の移動量又は前記麻痺部位の筋力値を検出する手段であり、前記運動機能に関する情報は、前記移動量又は前記筋力値であることが好ましい。これによれば、治療による運動機能向上の程度を確認することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば治療前及び治療後に検出した麻痺部位の運動機能に関する情報を報知し、治療による運動機能向上の程度を確認可能な電気刺激装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る電気刺激装置の平面図である。
【
図2】同電気刺激装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図4】同電気刺激装置を用いて筋電感度を設定する画面を示す図である。
【
図5】(a)は治療前後の筋電位の平均値の表示の選択画面を示す図であり、(b)は治療前後に行う筋電位の計測時間の設定画面である。
【
図6】同電気刺激装置における治療中の筋電位及び電流等を表示する一例を示す図である。
【
図7】治療中に筋電感度を設定する画面を示す図である。
【
図8】(a)、(b)はそれぞれ治療前、治療後の筋電位を検出するときの画面を示す図である。
【
図9】治療前後の筋電位の平均値を表示する一例を示す図である。
【
図10】同電気刺激装置における治療履歴を表示する一例を示す図である。
【
図11】本発明の実施の形態2に係る電気刺激装置における治療中の麻痺部位の筋電位、目標の筋電位及び電流を表示する一例を示す図である。
【
図12】本発明の実施の形態3に係る電気刺激装置における治療中の麻痺部位の筋電位、健常部位の筋電位及び電流を表示する一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態1に係る電気刺激装置について図面を参照して説明する。
【0012】
(実施の形態1)
図1に示すように、本発明の実施の形態1による電気刺激装置1は、電気刺激を出力するための電気回路が内部に設けられた装置本体2と、被治療者の麻痺部位の皮膚表面に配置されて筋電位の検出と電気刺激の印加を行う両用電極3と、両用電極3を装置本体2に接続する電極ケーブル4と、被治療者の健常部位(麻痺部位以外の部位)の皮膚表面に配置されて筋電位の検出を行う筋電電極5と、筋電電極5を装置本体2に接続する電極ケーブル6と、装置本体2との間で情報を送受信可能なタブレット(報知手段)7とを主たる構成としており、装置本体2には無線ドングル8が外付けされている。
【0013】
両用電極3は、電極9aと電極9bの二個が一体構成とされる二極型電極9と、一個の電極10とから構成され、各電極は裏面が被治療者の皮膚表面に貼り付ける貼付面とされるホック式のゲル電極である。電極9a、電極9b及び電極10の各ホックは中途位置で三本に分岐した電極ケーブル4の各先端側に係着され、電極ケーブル4の基端側の接続プラグ4aは装置本体2の上側面に設けられた第一出カコネクタ11に着脱自在に挿嵌される。筋電電極5は電極5aと電極5bの二個が一体構成とされる二極型電極である。電極5a、5bの各ホックは中途位置で二本に分岐した電極ケーブル6の先端側に係着され、電極ケーブル6の基端側の接続プラグ6aは装置本体2の上側面に設けられた第二出カコネクタ12に着脱自在に挿嵌される。
【0014】
電極9a及び電極9bは、対象筋肉の筋腹の皮膚表面に配置され、被治療者の筋活動から発生する微弱筋電位を電極9aと電極9bの電極間で検出するとともに、電気刺激を印加するための電気刺激用電極として機能する。電極10は、電気刺激を印加したい筋肉の筋腹の皮膚表面に配置され、電気刺激を筋肉に印加するための電気刺激用電極として機能する。電極5a及び電極5bは、対象筋肉の筋腹の皮膚表面に配置され、被治療者の筋活動から発生する微弱筋電位を電極5aと電極5bの電極間で検出する。
【0015】
図2に示すように、装置本体2は、操作スイッチ部13、液晶表示部14、LED表示部15、治療条件や治療結果などを読み出し可能に記憶する不揮発性メモリ(EEPROM)でなる記憶部16、電気刺激手段17、マイコンよりなる制御部18、タブレット7との間で治療条件や治療履歴情報を送受信する通信回路19、筋電位検出回路(筋電位検出手段)20、21などを備えている。
【0016】
LED表示部15は液晶表示部14の上辺近傍にLEDが横方向に5個等間隔に並べて設けられ、LEDは検出された筋電位の強度に応じて点灯し、筋電位の強度がどのレベルにあるかを視覚的に治療者や被治療者に知らせるための筋電位レベルLEDである。筋電位の強度は零から最大値の範囲で6個の区間に区分し、筋電位の強度が最低の強度区分に属するときは5個のLEDは全く点灯せず、筋電位の強度が増加し次の区間に属すると最左のLEDが1個だけ点灯し(レベル1)、その次の区分に属すると最左から2個目までの計2個のLEDが点灯する(レベル2)。以下、筋電位の強度が属する区間に応じてそれぞれ計3~5個のLEDが点灯(レベル3~5)するようになっている。
【0017】
例えば、筋電位の強度を零から100%の範囲で6つに区分するとき、筋電位が16.6%以上33.3%未満をレベル1とし、33.3%以上50%未満をレベル2とし、50%以上66.6%未満をレベル3とし、66.6%以上83.3%未満をレベル4とし、83.3%以上をレベル5とする。このように、筋電位に関するレベル値が複数(この例では5個)設定される。
【0018】
電気刺激手段17は、電池電源22、電池電源22から入力された電圧を制御する出力制御回路23、出力制御回路23からの出力電圧を昇圧する出カトランス24、出カトランス24からの出力電流を検出する電流検出回路25から構成されている。電流検出回路25で検出された出力電流信号は制御部18に入力され、制御部18は出力制御回路23を制御する。出力トランス24からの出力電流は、第一出力コネクタ11を介して両用電極3に出力される。
【0019】
電池電源22にはアルカリ乾電池やリチウムイオンニ次電池などを用いて構成することができる。また、電池電源22の電圧値を検出する電池電圧検出回路26と、制御部18に制御用電源を供給するための電源回路27が設けられている。電池電圧検出回路26により電池電源22の電圧値が第一の閾値にまで低下したことが検出されると、制御部18は電圧値の低下を液晶表示部14に画像表示して治療者等に報知する。また、電池電源22の電圧値が第一の閾値より低い電圧値とされる第二の閾値に到達すると、制御部18は装置本体2の電源を切断する。
【0020】
装置本体2とタブレット7とは、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、無線LAN等により無線通信が可能である。装置本体2には情報通信手段としての通信回路19が設けられ、通信回路19は装置本体2の右側面中央に形成される信号入出力部28と接続される。装置本体2は、信号入出力部28に接続された無線ドングル8を介してタブレット7との間で情報の送受信が可能であり、タブレット7から治療条件を受信し記憶部16に記憶したり、記憶部16に記憶している治療履歴情報をタブレット7に送信することが可能となっている。
【0021】
次に、筋電位検出の構成について両用電極3を用いる場合について説明する。出カトランス24から所定周波数(具体例では20Hz)で所定パルス幅(具体例では50μs)の双方向性方形波を、三回をひとつの単位として繰返し二極型電極9と電極10間に出力し、この繰返しの間(具体例では8ms)の筋電位を電極9aと電極9bの電極間で検出する。電極9aと電極9bの電極間で検出された筋電位は筋電位検出回路20に入力され、不図示の増幅器等により制御部18が認識できる程度にまで増幅されて制御部18に取り込まれる。制御部18は、信号処理を行って筋電位を算出し、例えば次の電気刺激の出力強度を、算出した筋電位の強度に応じた出力となるよう出力制御回路23を制御する。これにより二極型電極9と電極10間に出力電流が流れ、麻痺部位に電気刺激が印加される。筋電位の強度に応じた電気刺激の出力は夕ブレット7で設定された最大出力で制限され、それ以上の出力が印加されることはなく、また、筋電位検出回路20にて筋電位が検出されない場合でもタブレット7で設定した最小出力の電気刺激が常時印加されることになる。また、筋電位検出感度(筋電感度)をタブレット7によって設定することが可能となっている。
【0022】
電気刺激装置1の治療モードとして、第一の治療モードと第二の治療モードを有している。第一の治療モードは、前述のように被治療者の麻痺部位から検出された筋電位に応じた強度の出力電流(電気刺激)を電気刺激手段17から麻痺部位に対して印加して治療するモードである。第二の治療モードは、被治療者の健常部位から検出された筋電位に応じた強度の出力電流を電気刺激手段17から麻痺部位に印加するモードである。第一の治療モードにより治療を行う場合、両用電極3のみを使用し、筋電電極5は使用する必要がないため、装置本体2に筋電電極5は接続しない。第二の治療モードにより治療を行う場合、両用電極3及び筋電電極5を使用する。
【0023】
次に、電気刺激装置1を用いて手関節の背屈動作や手指の伸展動作に障害を有する被治療者を第一の治療モードで治療する例を説明する。治療者は、両用電極3の電極9a、9b(二極型電極9)を治療対象となる被治療者の麻痺部位である前腕の手関節背屈筋群や手指伸展筋群の筋腹上に、電極10を被治療者の前腕の手関節背屈筋群や手指伸展筋群の筋腹の一端(手首側)付近にそれぞれ貼り付けする。治療者は、治療時間、電気刺激の最小出力及び最大出力、筋電感度等の治療条件を設定する。なお、記憶部16に予め治療条件が記憶されている場合には、治療条件を記憶部16から読み出し、必要に応じて記憶された治療条件を変更して設定すればよい。
【0024】
治療者が治療条件を設定する方法について説明する。
図3は治療条件を設定するときのタブレット7の画面を示しており、保存している被治療者の一覧画面(不図示)で対象とする被治療者を選択すると表示される画面である。なお、画面左下の「戻る」をタッチすると、保存している被治療者の一覧画面が表示される。
図3に示すように、記憶部16に記憶された被治療者の治療条件を読み出して表示しており、新規の被治療者であって治療条件が記憶部16に記憶されていない場合には、治療条件は表示されず空欄である。治療条件を修正あるいは新規に設定する場合、領域61のうち設定する治療条件に対応する部分をタッチすることで治療条件の設定を行うことができる。治療条件の設定後、
図3の画面右下の「送信」をタッチすることで、設定した治療条件がタブレット7から装置本体2に送信される。
【0025】
ここで、装置本体2を使用して筋電感度を設定する方法について説明する。
図3に示す画面の領域62をタッチすると
図4に示す画面がタブレット7に表示される。そこで、前腕に力を入れたときにLED表示部15の筋電位レベルLEDが5個全て点灯し、脱力したときに筋電位レベルLEDが全て消灯するよう画面の「+」又は[-]をタッチして筋電感度を増加又は減少させて調節する。力を強く入れても筋電位レベルLEDが全て点灯しないときは筋電感度が高くなるように調節を行い、一方、脱力しても筋電位レベルLEDが全て消灯しないときは筋電感度が低くなるよう調整を行えばよい。筋電感度の調整が終了し画面の「決定」をタッチすると、筋電感度が設定されて
図3の画面に戻る。なお、脱力したときに筋電位レベルLEDが全て消灯するように筋電感度を調整するのは、筋電位検出回路20にノイズが侵入すると、筋から筋電位が出ていないにもかかわらず、筋電位が検出されたと誤認識して予期しない電気刺激が出力される可能性があるためである。
【0026】
また、
図3の領域61のうち治療条件の項目である「治療前後の筋電を記憶」に対応する部分をタッチした場合、
図5(a)の画面が表示される。
図5(a)の画面で「する」の部分をタッチした場合、
図5(b)の画面が表示されるので、画面の「+」又は[-]をタッチして治療前後に行う計測時間を増加又は減少させて調節する。調節が終了し「決定」をタッチすると
図3の画面に戻り、設定された計測時間が項目「治療前後の筋電を記憶」の右横の括弧内に表示される。
図5(a)の画面で「しない」をタッチした場合は
図3の画面に戻り、項目「治療前後の筋電を記憶」の右横に「しない」が表示される。
図5(a)の画面で「する」の部分をタッチした場合の電気刺激装置1の動作については後述する。
【0027】
治療条件の設定後に治療を開始し、前腕に力を入れると、電極9aと電極9bの電極間で検出された筋電位は筋電位検出回路20に入力され、制御部18が筋電位を算出して、その強度に応じた出力電流が二極型電極9と電極10の電極間に流れ、手関節背屈筋群や手指伸展筋群に電気刺激が印加される。この電気刺激の印加により、手関節背屈筋群や手指伸展筋群の筋収縮が促され、この結果として手関節の背屈動作及び手指の伸展動作が強要され、被治療者は手関節及び手指関節の運動機能訓練を行うことができる。設定した治療時間が経過すると、電気刺激の出力が自動で停止するので、治療を終了する。
【0028】
治療中に検出された筋電位は、前述のように筋電位の強度を6個の区間に区分し、筋電位の強度に応じて5個のレベル1~5を設定する。治療中に検出された筋電位がレベル1~5のそれぞれに到達した回数(達成回数)を計数し、レベル毎の達成回数が記憶部16に記憶される。
【0029】
図6は治療中にタブレット7に表示される画面の一例を示している。波形表示領域70に表示されている波形71は治療中の麻痺部位の筋電位を表しており、波形72は被治療者に電気刺激を与えるための電流を表している。筋電位及び電流の目盛はそれぞれ、波形表示領域70の左側及び右側に示されている。横軸は時間であり、横軸の右端は治療時現在の時間を表している。横軸のラベルは治療開始からの時間を分と秒で示し、例えば「0:20」は治療開始から0分20秒経過した時点を表す。
【0030】
画面左端の領域には、治療条件として設定された最小出力(%)、最大出力(%)、筋電感度が表示されるとともに、治療時現在の筋電位及び電流が筋電検出(%)及び電流値(mA)として表示されている。最小出力及び最大出力は、前述のように電気刺激の出力を制限する最小出力及び最大出力である。また、波形表示領域70の左側にある領域73には、治療時現在における筋電位を10%おきにバーグラフで表示している。バーグラフでは筋電検出14%の表示に対応して、斜線で示した0~20%の領域の色を変えるなどして治療時現在の筋電位を表示している。このように、筋電位及び電流の治療経過の推移を波形71及び波形72で確認することができる。また、治療時現在の麻痺部位の筋電位をバーグラフ、数値で確認することができ、治療時現在の電流を数値で確認することができる。
【0031】
図6に示すようにタブレット7には治療中の筋電位と電流を表示しており、治療中の電流と筋電位との相関関係を確認することができる。このため、医師や理学療法士等の治療者は、治療中において治療条件を変更するなど、確認結果に応じた対応をとることができる。例えば、電流と筋電位との相関関係を確認した結果、治療中に電気刺激の出力が弱いと判断したときは出力や筋電感度が高くなるように調整を行い、治療中に電気刺激の出力が強いと判断したときは出力や筋電感度が低くなるように調整を行えばよい。なお、麻痺部位の筋電位は麻痺部位の運動機能に関する情報の一例であり、電流は所定情報の一例である。また、筋電位検出手段は麻痺部位の運動機能を検出する運動機能検出手段の一例である。
【0032】
例えば、
図6の左下に表示されている「戻る」をタッチすることで、
図3に示す画面が表示され、領域61のうち筋電感度に対応する部分をタッチすれば
図7の画面が表示される。画面の「+」又は[-]をタッチして筋電感度を増加又は減少させる。例えば0.1間隔で筋電感度を変更できる。
図7の画面では、変更操作中の治療条件がわかるように筋電感度が四角で囲まれているが、文字の色を変えたり文字を太くする等、他の方法で認識できるようにしてもよい。調節が終了して画面の「決定」をタッチすると
図3の画面に戻り、画面右下の「送信」をタッチすることで変更した筋電感度が装置本体2に送信されて、治療中に筋電感度を調節することができる。
【0033】
ここで、加速度センサ等を用いて麻痺部位に関わる関節の移動量を検出し、検出した移動量を筋電位の代わりに表示してもよい。すなわち、治療中の関節の移動量と電流をタブレット7に表示してもよい。また、治療中の筋電位と関節の移動量と電流をタブレット7に表示してもよい。その他に、筋力計を用いて麻痺部位の筋力値を検出し、検出した筋力値を筋電位の代わりに表示してもよい。すなわち、治療中の筋力値と電流をタブレット7に表示してもよい。また、治療中の筋電位と筋力値と電流をタブレット7に表示してもよい。なお、麻痺部位に関わる関節の移動量や麻痺部位の筋力値は、麻痺部位の運動機能に関する情報の一例であり、加速度センサや筋力計は運動機能検出手段の一例である。
【0034】
図8(a)、(b)はそれぞれ、治療条件設定時の
図5(a)の画面において「する」を選択した場合に、治療開始前、治療終了後にタブレット7に表示される画面の一例を示している。この場合、治療開始前に所定時間(
図5(b)の画面で設定した時間)の間、被治療者が麻痺部位を自発的に動かしたときの麻痺部位の筋電位を検出して平均値(治療前の筋電レベル)を求める。治療終了後にも治療開始前と同様にして、被治療者が麻痺部位を自発的に動かしたときの麻痺部位の筋電位を検出して平均値(治療後の筋電レベル)を求める。そして、治療が終了して治療後の筋電レベルを求めた後に、治療前の筋電レベルと治療後の筋電レベルが
図9に示すように表示されることにより、治療によって筋電レベルが向上したか否かの効果を確認することができる。なお、筋電レベルは、麻痺部位の運動機能に関する情報の一例である。
【0035】
また、筋電位に関する所定レベル(%)を設定しておき、治療中に筋電位検出回路20により検出された筋電位が所定レベルを超えた回数を計数し、その回数の治療開始からの合計回数を治療中にタブレット7に表示する。例えば、
図6に示すように、所定レベルを領域73のバーグラフに横線74で表示し、合計回数を波形表示領域70の上側の部分75に表示することができる。治療者又は被治療者が過去の治療において筋電位が所定レベルを超えた合計回数を認識していれば、過去の治療結果と比較しながら治療を受けることができる。また、過去の治療における前述の合計回数を記憶部16に記憶しておき、例えば前回の治療における合計回数を、現在の治療における合計回数に並べて表示するようにしてもよい。なお、合計回数は、麻痺部位の筋電位に基づき得られる情報の一例である。
【0036】
ここで、治療前と治療後の筋電レベルを比較することにより治療による運動機能向上の程度を確認する代わりに、他の指標を比較してもよい。例えば、加速度センサ等を用いて麻痺部位に関わる関節の移動量を治療前と治療後に検出し、それらの検出値を表示して比較することにより治療による運動機能向上の程度を確認することができる。また、筋力計を用いて麻痺部位の筋力値を治療前と治療後に検出し、それらの検出値を表示して比較することにより治療による運動機能向上の程度を確認することができる。
【0037】
図10は、過去の治療履歴を表示した一例を示しており、記憶部16に記憶された治療条件、治療結果のデータをもとに表示している。この治療履歴は、タブレット7に表示することや、データをパーソナルコンピュータに取り込んでそのモニターに表示したり印刷することなどにより、確認することができる。治療日毎の治療条件の表81、治療結果の表82及びグラフ83を表示しており、治療日の途中のデータの表示を省略している。表81には治療条件として治療時間(分)、最小出力(%)、最大出力(%)、筋電感度を表示している。表82には治療結果として、治療中に検出された筋電位がレベル1~5のそれぞれに到達した回数(達成回数)とその達成回数に基づく指標を表示している。グラフ83の各治療日において右端の棒グラフ(3月1日では棒グラフa)がレベル1の達成回数であり、左端の棒グラフ(3月1日では棒グラフb)がレベル5の達成回数であり、それらの間にレベル2~4の達成回数の棒グラフを表示している。また、達成回数に基づく指標を折れ線グラフcで表示している。ここでは達成回数に基づく指標の一例として、(n)×(レベルnの達成回数)をn=1~5のそれぞれについて求め、それらの合計としている。この指標によればレベルが上がり、達成回数が増えるほど大きくなる指標となっている。
【0038】
図10によれば、治療が進むにつれて各レベルの達成回数がどの程度変化しているかを確認することができる。また、指標の変化を見れば治療中の筋電位が向上しているか否かを確認することができる。
図10の治療履歴によれば、3月13日~3月15日の治療結果は3月1日~3月3日の治療結果に比べて各レベルの達成回数が増加するとともに、達成回数に基づく指標も増加しており、治療中の筋電位が向上していることがわかる。
【0039】
(実施の形態2)
本実施の形態2は、実施の形態1で説明した電気刺激装置1を用い、第一の治療モードで治療を行う場合の他の実施形態である。タブレット7において治療中の麻痺部位の筋電位を表示するとともに、予め設定された目標の筋電位を表示する。例えば、
図11に示すように、治療中の麻痺部位の筋電位波形91と、目標の筋電位波形(一例として正弦波)92をタブレット7の画面の1つの表示領域に重ねて表示している。波形93は電流波形である。この場合、被治療者は画面で治療中の麻痺部位の筋電位波形と目標の筋電位波形との相関関係を確認することができるため、麻痺部位の筋電位波形が目標の筋電位波形に近づくように麻痺部位を動かすように訓練をすることができる。また、実際の筋電位がどの程度目標の筋電位に近づいているかを治療中に確認することができる。ここで、目標の筋電位は所定情報の一例である。なお、麻痺部位の筋電位波形91と目標の筋電位波形92とを画面の上下に並べて表示するようにしてもよい。また、目標の筋電位は、例えば基本波形(正弦波、矩形波など)のデータを記憶部16に記憶させておき、そのデータを表示するようにしてもよい。また、基本波形に対して振幅、周波数等を入力可能にしておき、入力されたデータに基づいて波形を生成して表示するようにしてもよい。また、タブレット7を利用して治療者等が手書き入力で波形を作成できるようにしてもよい。
【0040】
(実施の形態3)
本実施の形態3は、実施の形態1で説明した電気刺激装置1を用い、第二の治療モードで治療を行う場合の実施形態である。第一の治療モードのように両用電極3を被治療者の麻痺部位に配置するのに加え、第二の治療モードでは筋電電極5を被治療者の健常部位に配置し、筋電電極5により前述した方法を用いて筋電感度を設定する。電極5aと電極5bの電極間で検出された筋電位は筋電位検出回路21に入力され、制御部18に取り込まれる。制御部18は、信号処理を行って筋電位を算出し、両用電極3を介して麻痺部位に印加される次の電気刺激の出力強度を、算出した筋電位の強度に応じた出力となるよう出力制御回路23を制御する。
【0041】
タブレット7には、両用電極3によって検出される治療中の麻痺部位の筋電位と、筋電電極5によって検出される治療中の健常部位の筋電位が表示される。例えば、
図12に示すように、治療中の麻痺部位の筋電位波形94と、治療中の健常部位の筋電位波形95をタブレット7の画面の1つの表示領域に重ねて表示している。波形96は電流波形である。被治療者は画面で治療中の麻痺部位の筋電位と健常部位の筋電位との相関関係を確認することができるため、麻痺部位の筋電位が健常部位の筋電位に近づくように麻痺部位を動かすように訓練をすることができる。また、麻痺部位の筋電位がどの程度健常部位の筋電位に近づいているかを治療中に確認することができる。ここで、健常部位の筋電位は所定情報の一例である。なお、麻痺部位の筋電位波形94と健常部位の筋電位波形95とを画面の上下に並べて表示するようにしてもよい。
【0042】
(実施の形態4)
実施の形態4は、実施の形態1で説明した電気刺激装置1において、治療中の麻痺部位の筋電位の強度に応じて音階の異なる音によって知らせる機能を有している。音はタブレット7に備えられたスピーカから発せられる。一例として、実施の形態1において説明したように、筋電位の強度を6個の区間に区分し、筋電位の強度に応じて5個のレベル1~5を設定する。スピーカは、筋電位がレベル1になると音階ドの音を発し、筋電位がレベル2になると音階レの音を発し、筋電位がレベル3になると音階ミの音を発し、筋電位がレベル4になると音階ファの音を発し、筋電位がレベル5になると音階ソの音を発する。
【0043】
各音階の音量は治療者又は被治療者がタブレット7によって設定することができる。例えば、目標としている筋電位のレベルに相当する音階の音量を、他のレベルに相当する音階の音量よりも大きく設定することができる。
【0044】
このように、治療中に検出される麻痺部位の筋電位のレベルに応じて、音階ド~ソの音で報知される。例えば、被治療者が力を抜いているときは、できるだけ筋緊張を低くさせることが効果的であるため、音階が低くなるよう被治療者に力を抜く努力を促すことが可能となる。音階が低くなれば、筋が弛緩していることが分かり、被治療者は音階の変化を手掛かりとして筋の弛緩方法を学習することが可能となる。なお、音階ド~ソの音で報知する例を説明したが、音階ド~ソの音に限定されるものではなく、他の音階の音を用いて報知してもよい。
【0045】
特許文献1に記載された電気刺激装置では、麻痺部位の運動機能に関する情報(例えば筋電位)と所定情報(例えば目標となる筋電位)を治療中に報知することができず、それらの相関関係を治療中に確認することができなかったが、実施形態1~3による電気刺激装置によれば、麻痺部位の運動機能に関する情報(例えば筋電位)と所定情報(例えば電流、目標の筋電位、健常部位の筋電位)を治療中に報知し、それらの相関関係を治療中に確認することができる。
【0046】
上記各実施の形態では、報知手段としてタブレット7を用いた例を説明したが、据置型のディスプレイやモニター、可搬型のスマートフォンなどを報知手段として用いることができる。装置本体2の液晶表示部14を報知手段として用いてもよい。治療中の筋電位と電流とを装置本体2でも確認しやすくなるように、液晶表示部14を大きくすればよい。また、タブレット7を用いて治療条件を設定する例を説明したが、装置本体2の操作スイッチ部13を用いて治療条件を設定するようにしてもよい。また、装置本体2を小型化し固定バンドのような装着手段を用いて被治療者の腕等に装置本体2を固定するなど、被治療者に装着可能にした電気刺激装置に対しても本発明を適用することができる。
【0047】
上記各実施の形態では、1つの装置本体2を備えた電気刺激装置について説明したが、装置本体2を複数備えた電気刺激装置についても本発明を適用することができる。その場合、タブレット7は各装置本体2と無線通信が可能であり、タブレット7には複数の装置本体2の情報を表示してもよい。例えば、各装置本体2における
図6のような治療中の筋電位等の表示を、タブレット7の画面に複数並べて表示してもよい。ここで、装置本体2の情報とは、運動機能に関する情報や所定情報の他に、治療条件として設定された最小出力(%)、最大出力(%)、治療モード、治療時間などの情報が含まれる。また、装置本体2に取り付けた無線ドングル8を介してタブレット7と無線通信を行う例を説明したが、装置本体2に無線通信用の回路を内蔵させて無線ドングル8を使用せずにタブレット7と無線通信を行う構成にしてもよい。
【0048】
上記実施の形態では、手関節の背屈動作や手指の伸展動作に障害を有する被治療者を治療する例を説明したが、電極面積を増加させて両用電極3及び筋電電極5を大型化し、電気刺激装置1の最大出力電流を引き上げることにより、下肢に障害を有する被治療者を治療する電気刺激装置に対しても本発明を適用することができる。
【0049】
また、実施の形態4では治療中の麻痺部位の筋電位の強度に応じて音階の異なる音によって知らせる例を説明したが、音量の異なる音によって知らせるようにしてもよい。また、光によって知らせるようにしてもよく、例えば治療中の麻痺部位の筋電位の強度に応じて色の異なる光を用いるようにしてもよい。また、振動によって知らせるようにしてもよく、例えば治療中の麻痺部位の筋電位の強度に応じて振動の間隔や大きさを異ならせる等、振動のパターンを異ならせるようにしてもよい。さらに、上記のような音階の異なる音、音量の異なる音、色の異なる光、パターンの異なる振動のうち少なくとも2つを併用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
上肢又は下肢に麻痺がある被治療者が、麻痺部位の機能回復訓練を行う場合などに用いられる電気刺激装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 電気刺激装置
2 装置本体
3 両用電極
4、6 電極ケーブル
5 筋電電極
7 タブレット
8 無線ドングル
9 二極型電極
10 電極
13 操作スイッチ部
14 液晶表示部
15 LED表示部
16 記憶部
17 電気刺激手段
18 制御部
19 通信回路
20、21 筋電位検出回路
22 電池電源
23 出力制御回路
24 出力トランス
25 電流検出回路
26 電池電圧検出回路
27 電源回路
28 信号入出力部