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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002373
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】複合装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20231228BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20231228BHJP
【FI】
F04B39/00 106Z
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101523
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 淳
【テーマコード(参考)】
3H003
5H770
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AB06
3H003AC03
3H003BF02
3H003CD01
3H003CF01
5H770AA21
5H770BA05
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA01
5H770PA11
5H770PA42
5H770PA43
5H770QA01
5H770QA06
5H770QA08
5H770QA27
(57)【要約】
【課題】車両用空気調和装置等の小型化に資することができる複合装置を提供すると共に複合装置において電力の供給等に用いられるスイッチング素子のサージ電圧による損傷を防止しつつスイッチング損失の増加を抑制する。
【解決手段】冷媒圧縮機能及び熱媒体加熱機能を有する複合装置において、熱媒体加熱用の電気ヒータを制御するヒータ制御回路の第2スイッチング素子Q7、Q8のスイッチング周波数は、圧縮機構駆動用の電動モータを駆動するモータ駆動回路の第1スイッチング素子Q1~Q6のスイッチング周波数よりも低く、第2スイッチング素子Q7、Q8のスイッチング速度は第1スイッチング素子Q1~Q6のスイッチング速度よりも遅く、第1スイッチング素子Q1~Q6に関する配線の寄生インダクタンスは、第2スイッチング素子Q7、Q8に関する配線に寄生インダクタンスよりも小さい。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒圧縮機能及び熱媒体加熱機能を有する複合装置であって、
冷媒を圧縮する圧縮機構及び前記圧縮機構を駆動する電動モータを内部に収容すると共に、冷媒を内部に流入させる冷媒流入口及び前記圧縮機構で圧縮された冷媒を外部に流出させる冷媒流出口を有する圧縮機ハウジングと、
熱媒体を加熱する電気ヒータを内部に収容すると共に、熱媒体を内部に流入させる熱媒体流入口及び前記電気ヒータで加熱された熱媒体を外部に流出させる熱媒体流出口を有するヒータハウジングと、
前記電動モータを駆動するモータ駆動回路及び前記電気ヒータを制御するヒータ制御回路を含む電子回路が実装された回路基板を収容する回路ハウジングと、
を含み、
前記圧縮機ハウジング、前記ヒータハウジング及び前記回路ハウジングは、一体的に結合されており、
前記モータ駆動回路及び前記ヒータ制御回路は、それぞれスイッチング素子を含み、
前記ヒータ制御回路のスイッチング素子のスイッチング周波数は、前記モータ駆動回路のスイッチング素子のスイッチング周波数よりも低く設定され、
前記ヒータ制御回路のスイッチング素子のスイッチング速度は、前記モータ駆動回路のスイッチング素子のスイッチング速度よりも遅く設定され、
前記電子回路は、前記モータ駆動回路のスイッチング素子に関する配線の寄生インダクタンスが前記ヒータ制御回路のスイッチング素子に関する配線の寄生インダクタンスよりも小さくなるように形成されている、
複合装置。
【請求項2】
前記モータ駆動回路のスイッチング素子は、電源からの直流電圧を交流電圧に変換するように構成され、
前記ヒータ制御回路のスイッチング素子は、前記電源と前記電気ヒータとの間の通電をON/OFFするように構成され、
前記電子回路は、前記電源からの直流電圧を平滑化する平滑コンデンサをさらに含み、
前記回路基板において、前記平滑コンデンサは、前記ヒータ制御回路のスイッチング素子よりも前記モータ駆動回路のスイッチング素子に近い位置に配置されている、
請求項1に記載の複合装置。
【請求項3】
前記回路基板において、前記平滑コンデンサと前記モータ駆動回路のスイッチング素子との間の配線パターンの長さが前記平滑コンデンサと前記ヒータ制御回路のスイッチング素子との間の配線パターンの長さよりも短い、請求項2に記載の複合装置。
【請求項4】
前記回路基板において、前記平滑コンデンサと前記モータ駆動回路のスイッチング素子との間の配線パターンが他の配線パターンよりも幅広に形成されている、請求項2に記載の複合装置。
【請求項5】
前記圧縮機ハウジングの内部と前記回路ハウジングの内部とが第1仕切部で仕切られていると共に、前記圧縮機ハウジングの前記冷媒流入口が前記第1仕切部の近傍に設けられており、
前記回路ハウジング内において、前記平滑コンデンサ、前記モータ駆動回路のスイッチング素子及び前記ヒータ制御回路のスイッチング素子は、前記第1仕切部に熱的に接触するように配置されている、
請求項2~4のいずれか一つに記載の複合装置。
【請求項6】
前記ヒータハウジングの内部と前記回路ハウジングの内部とが第2仕切部で仕切られていると共に、前記ヒータハウジングの前記熱媒体流入口が前記第2仕切部の近傍に設けられており、
前記回路ハウジング内において、前記平滑コンデンサ、前記モータ駆動回路のスイッチング素子及び前記ヒータ制御回路のスイッチング素子は、前記第2仕切部に熱的に接触するように配置されている、
請求項2~4のいずれか一つに記載の複合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒圧縮機能と熱媒体加熱機能とを有する複合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハイブリッド自動車や電気自動車などの車両に適用可能な車両用空気調和装置が記載されている。特許文献1に記載された車両用空気調和装置は、冷媒を圧縮する電動圧縮機と、電動圧縮機から吐出された冷媒を放熱させて車室内に供給される空気を加熱する放熱器と、放熱された冷媒を減圧膨張させる膨張弁と、減圧膨張された冷媒と外気との間で熱交換を行わせる蒸発器に相当する熱交換器を含む冷媒回路を有している。また、特許文献1に記載された車両用空気調和装置は、放熱器による車室内の暖房を補助するため、熱媒体を加熱する熱媒体加熱電気ヒータと、加熱された熱媒体で車室内に供給される空気を加熱する熱媒体-空気熱交換器と、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-213765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された車両用空気調和装置は、放熱器による暖房能力の不足を補完することが可能である。しかし、特許文献1に記載された車両用空気調和装置では、電動圧縮機や熱媒体加熱電気ヒータなどが個別に設けられている。このため、装置全体が大型化し、設置スペースなどの面で改良の余地があった。
【0005】
本発明は、車両用空気調和装置等の小型化に資することができる複合装置を提供すると共に、複合装置において電力の供給等に用いられるスイッチング素子のサージ電圧による損傷を防止しつつスイッチング損失の増加を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によると、冷媒圧縮機能及び熱媒体加熱機能を有する複合装置が提供される。複合装置は、冷媒を圧縮する圧縮機構及び前記圧縮機構を駆動する電動モータを内部に収容すると共に、冷媒を内部に流入させる冷媒流入口及び前記圧縮機構で圧縮された冷媒を外部に流出させる冷媒流出口を有する圧縮機ハウジングと、熱媒体を加熱する電気ヒータを内部に収容すると共に、熱媒体を内部に流入させる熱媒体流入口及び前記電気ヒータで加熱された熱媒体を外部に流出させる熱媒体流出口を有するヒータハウジングと、前記電動モータを駆動するモータ駆動回路及び前記電気ヒータを制御するヒータ制御回路を含む電子回路が実装された回路基板を内部に収容する回路ハウジングとを含む。前記圧縮機ハウジング、前記ヒータハウジング及び前記回路ハウジングは、一体的に結合されている。また、前記モータ駆動回路及び前記ヒータ制御回路は、それぞれスイッチング素子を含む。そして、前記ヒータ制御回路のスイッチング素子のスイッチング周波数は、前記モータ駆動回路のスイッチング素子のスイッチング周波数よりも低く設定され、前記ヒータ制御回路のスイッチング素子のスイッチング速度は、前記モータ駆動回路のスイッチング素子のスイッチング速度よりも遅く設定され、及び、前記電子回路は、前記モータ駆動回路のスイッチング素子に接続される配線の寄生インダクタンスが前記ヒータ制御回路のスイッチング素子に接続される配線の寄生インダクタンスよりも小さくなるように形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両用空気調和装置等の小型化に資することができる複合装置を提供することができる。また、本発明によれば、複合装置において電力の供給等に用いられるスイッチング素子のサージ電圧による損傷を防止しつつスイッチング損失の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る複合装置の正面図である。
図2】実施形態に係る複合装置の右側面図である。
図3】実施形態に係る複合装置の上面図である。
図4】実施形態に係る複合装置の部分概略断面図であり、図2のA-A断面図に相当する図である。
図5】実施形態に係る複合装置のモータ駆動回路及びヒータ制御回路を含む電子回路の要部構成例を示す図である。
図6】実施形態に係る複合装置の部分概略断面図であり、図3のB-B断面図に相当する図である。
図7】実施形態に係る複合装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。
図8】前記電子回路が実装された回路基板の配線パターン例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0010】
図1図4は、本発明の実施形態に係る複合装置1の概略構成を示している。図1は、実施形態に係る複合装置1の正面図であり、図2は、実施形態に係る複合装置1の右側面図であり、図3は、実施形態に係る複合装置1の上面図であり、図4は、実施形態に係る複合装置の部分概略断面図であり、図2のA-A断面図に相当する図である。
【0011】
実施形態に係る複合装置1は、冷媒を圧縮する冷媒圧縮機能と、冷媒とは別の熱媒体を加熱する熱媒体加熱機能とを有している。つまり、複合装置1は、冷媒圧縮機と熱媒体加熱装置とが一体化された構成を有する。
【0012】
複合装置1は、上述したような車両用空気調和装置に適用され得る。すなわち、複合装置1は、冷媒が循環する冷媒回路と、電動ポンプなどで構成されるポンプ部によって熱媒体が循環する熱媒体回路とに組み込まれて使用され得る。例えば、複合装置1の冷媒圧縮機能部は、前記冷媒回路に組み込まれ、膨張弁と、蒸発器(又はこれに相当する熱交換器)とを通過した冷媒を圧縮すると共に、圧縮された冷媒を、車室内に供給される空気を加熱する放熱器(冷媒-空気熱交換器)に供給するように構成され得る。また、複合装置1の熱媒体加熱機能部は、前記熱媒体回路に組み込まれ、車室内に供給される空気を加熱する熱媒体-空気熱交換器を通過した熱媒体を加熱すると共に、加熱された熱媒体を前記熱媒体-空気熱交換器に供給するように構成され得る。なお、冷媒及び熱媒体は、それぞれ任意に選択され得るが、例えば、冷媒としては気体冷媒が用いられ、熱媒体としては液体が用いられ得る。また、特に限定されないが、熱媒体には、通常、水(不凍液などが混入されたものを含む)が用いられる。したがって、熱媒体加熱機能(熱媒体加熱装置)は、水加熱機能(水加熱装置)とも称され得る。
【0013】
図1図4を参照すると、複合装置1は、ハウジング2を有する。複合装置1のハウジング2は、第1ハウジング2Aと、第2ハウジング2Bと、第3ハウジング2Cと、第1カバー2Dと、第2カバー2Eと、第3カバー2Fとを含み、これらが図示省略のボルトなどの締結部材によって一体的に結合(締結)されて構成されている。
【0014】
第1ハウジング2Aは、略円筒状に形成されている。第1ハウジング2Aの内部には、冷媒を圧縮する圧縮機構3と、圧縮機構3を駆動する電動モータ4とが軸方向に直列に収容されている。特に限定されないが、圧縮機構3は、固定スクロールと可動(旋回)スクロールとを含むスクロール圧縮機構であり得る。また、電動モータ4の出力軸4aは、圧縮機構3(例えば、前記可動(旋回)スクロール)に連結されている。
【0015】
第1ハウジング2Aの2つの開口端のうちの一方の開口端(図1図2における下側のの開口端)、すなわち、第1ハウジング2Aの圧縮機構3側の開口端は、第1カバー2Dによって閉塞されている。なお、冷媒を圧縮する圧縮機構3及びこれを駆動する電動モータ4を収容する第1ハウジング2Aは「圧縮機ハウジング」とも称され得る。
【0016】
第2ハウジング2Bは、第1ハウジング2Aの側方に配置されている。第2ハウジング2Bは、略矩形筒状に形成されている。第2ハウジング2Bの内部には、熱媒体を加熱する電気ヒータ5が収容されている。
【0017】
第2ハウジング2Bの2つの開口端のうちの一方の開口端(図1図2における下側のの開口端)は、第2カバー2Eによって閉塞されている。なお、熱媒体を加熱する電気ヒータ5を収容する第2ハウジング2Bは、「ヒータハウジング」とも称され得る。
【0018】
第3ハウジング2Cは、上面が開放された箱型に形成されている。第3ハウジング2Cの内部には、電動モータ4を駆動(制御)するモータ駆動回路20及び電気ヒータ5を制御するヒータ制御回路30が収容されている。具体的には、本実施形態においては、モータ駆動回路20及びヒータ制御回路30を含む電子回路が実装された回路基板6が第3ハウジング2Cの内部に収容されている。
【0019】
第3ハウジング2Cの底壁7は、第1ハウジング2Aの他方の開口端(図1図2における上側の開口端)、すなわち、第1ハウジング2Aの電動モータ4側の開口端と、第2ハウジング2Bの他方の開口端(図1図2における上側の開口端)とを閉塞している。これにより、第1ハウジング2Aの内部と第3ハウジング2Cの内部とが仕切られ、第2ハウジング2Bの内部と第3ハウジング2Cの内部とが仕切られている。つまり、第3ハウジング2Cの底壁7は、第1ハウジング2Aの内部と第3ハウジング2Cの内部とを仕切る第1仕切部71と、第2ハウジング2Bの内部と第3ハウジング2Cの内部とを仕切る第2仕切部72を有する。
【0020】
第3ハウジング2Cの上面(開口端)は、第3カバー2Fによって閉塞されている。なお、モータ駆動回路20及びヒータ制御回路30(具体的にはこれらを含む前記電子回路が実装された回路基板6)を収容する第3ハウジング2Cは、「回路ハウジング」又は「基板ハウジング」とも称され得る。
【0021】
そして、複合装置1においては、主に圧縮機構3、電動モータ4及びモータ駆動回路20によって冷媒圧縮機能(電動圧縮機)が実現され、主に電気ヒータ5及びヒータ制御回路30によって熱媒体加熱機能(熱媒体加熱装置)が実現される。
【0022】
第1ハウジング2Aには、前記冷媒回路を循環する冷媒を内部に流入させるための冷媒流入口8が形成されている。流入させる冷媒は、例えば、膨張弁と蒸発器(またはこれに相当する熱交換器)とを通過した冷媒、すなわち、低温低圧の冷媒である。本実施形態において、冷媒流入口8は、第1ハウジング2Aの第3ハウジング2C側の部位、つまり、第1ハウジング2Aの内部と第3ハウジング2Cの内部とを仕切る第1仕切部71の近傍に設けられている。好ましくは、冷媒流入口8は、冷媒の少なくとも一部が第1仕切部71に沿って流れるように、前記冷媒回路を循環する冷媒を第1ハウジング2A内に流入させるように構成されている。
【0023】
冷媒流入口8を介して第1ハウジング2Aの内部に流入した(低温低圧の)冷媒は、第1ハウジング2Aの内部を流れて圧縮機構3に吸入される。圧縮機構3に吸入された冷媒は、圧縮機構3によって圧縮され、高温高圧の冷媒となって圧縮機構3から吐出される。吐出された(高温高圧の)冷媒は、第1ハウジング2Aに形成された冷媒流出口9から流出し、例えば、上述の放熱器(冷媒-空気熱交換器)に供給される。
【0024】
本実施形態において、冷媒流出口9は、第1ハウジング2Aの第1カバー2D側の部位に、すなわち、冷媒流入口8から図1図2における上下方向に離れた位置に設けられている。このため、本実施形態において、冷媒流入口8から第1ハウジング2A内に流入した冷媒は、第1ハウジング2A内を図1図2における上側から下側に向かって流れる。
【0025】
なお、第1仕切部71は、冷媒流入口8を介して第1ハウジング2A内に流入する(低温低圧の)冷媒によって冷却され得る。また、電動モータ4は、第1ハウジング2Aの内部を流れる冷媒によって冷却され得る。さらに、冷媒流入口8、第1ハウジング2Aの内部及び冷媒流出口9は、前記冷媒回路の一部を構成する。
【0026】
第2ハウジング2Bには、前記熱媒体回路を循環する熱媒体を内部に流入させるための熱媒体流入口10が形成されている。流入させる熱媒体は、例えば、上述の熱媒体-空気熱交換器を通過した熱媒体、すなわち、低温の熱媒体である。本実施形態において、熱媒体流入口10は、第2ハウジング2Bの第3ハウジング2C側の部位、つまり、第2ハウジング2Bの内部と第3ハウジング2Cの内部とを仕切る第2仕切部72の近傍であって且つ図1における奥側(図2における右側)に設けられている。好ましくは、熱媒体流入口10は、熱媒体の少なくとも一部が第2仕切部72に沿って流れるように、前記熱媒体回路を循環する熱媒体を第2ハウジング2B内に流入させるように構成されている。
【0027】
熱媒体流入口10を介して第2ハウジング2Bの内部に流入した(低温の)熱媒体は、第2ハウジング2Bの内部を流れ、その際、電気ヒータ5によって加熱されて昇温する。加熱された熱媒体は、第2ハウジング2Bに形成された熱媒体流出口11から流出し、例えば、上述の熱媒体-空気熱交換器に供給される。
【0028】
本実施形態において、熱媒体流出口11は、第2ハウジング2Bの内部と第3ハウジング2Cの内部とを仕切る第2仕切部72の近傍であって且つ図1における手前側(図2における左側)に設けられている。このため、本実施形態において、熱媒体流入口10から第2ハウジング2B内に流入した熱媒体は、第2ハウジング2B内を、第2仕切部72に沿って、図2図4における右側から左側に向かって流れる。つまり、複合装置1において、熱媒体の流れ方向は、冷媒の流れ方向に略直交している。
【0029】
なお、第2仕切部72は、熱媒体流入口10を介して第2ハウジング2B内に流入する(低温の)熱媒体によって冷却され得る。また、熱媒体流入口10、第2ハウジング2Bの内部及び熱媒体流出口11は、前記熱媒体回路の一部を構成する。
【0030】
ここで、図には示されていないが、モータ駆動回路20から電動モータ4への給電線及びヒータ制御回路30から電気ヒータ5への給電線は、それぞれ気密及び液密な状態で第3ハウジング2Cの底壁7を貫通して延びている。
【0031】
次に、電動モータ4を駆動するモータ駆動回路20及び電気ヒータ5を制御するヒータ制御回路30について説明する。図5は、モータ駆動回路20及びヒータ制御回路30を含む前記電子回路の要部構成例を示す図である。
【0032】
本実施形態において、モータ駆動回路20は、車両に搭載された高電圧バッテリなどの高電圧電源HVからの直流電圧を三相交流電圧に変換して電動モータ4に供給することで電動モータ4を駆動(制御)するように構成されている。また、ヒータ制御回路30は、高電圧電源HVの電気ヒータ5への印加(高電圧電源HVと電気ヒータ5との間の通電)を制御することで電気ヒータ5の温度を制御するように構成されている。さらに、本実施形態において、前記電子回路は、高電圧電源HVからの直流電圧を平滑化する平滑コンデンサSCを含んでいる。
【0033】
図5に示されるように、前記電子回路において、平滑コンデンサSCは、高電圧電源HVの電源ライン(HV+)と接地ライン(HVGND)との間に接続されている。平滑コンデンサSCは、高電圧電源HVからモータ駆動回路20及びヒータ制御回路30に供給される直流電圧を平滑化する。
【0034】
モータ駆動回路20は、第1パワーモジュール21と、第1ドライバ22とを有する。なお、平滑コンデンサSCを含んだ状態をモータ駆動回路20ということもある。
【0035】
第1パワーモジュール21は、6つのパワースイッチング素子(以下単に「第1スイッチング素子」という)Q1~Q6と、6つのダイオードD1~D6とを含む。特に限定されないが、第1スイッチング素子Q1~Q6は、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)であり得る。第1パワーモジュール21は、第1スイッチング素子Q1~Q6がPWM制御されることにより、高電圧電源HVからの直流電圧を三相交流電圧に変換して電動モータ4に供給する。
【0036】
具体的には、第1パワーモジュール21は、高電圧電源HVの電源ラインと接地ラインとの間に、互いに並列に設けられたU相アーム、V相アーム及びW相アームを有する。
【0037】
U相アームには、2つの第1スイッチング素子Q1、Q2が直列に接続されており、各第1スイッチング素子Q1、Q2にはダイオードD1、D2がそれぞれ逆並列に接続されている。
【0038】
V相アームには、2つの第1スイッチング素子Q3、Q4が直列に接続されており、各第1スイッチング素子Q3、Q4にはダイオードD3、D4がそれぞれ逆並列に接続されている。
【0039】
W相アームには、2つの第1スイッチング素子Q5、Q6が直列に接続されており、各第1スイッチング素子Q5、Q6にはダイオードD5、D6がそれぞれ逆並列に接続されている。
【0040】
また、U、V、W相アームのそれぞれの中間点は、それぞれの一端においてスター結線された電動モータ4のU、V、W相コイルの他端に接続されている。つまり、U相アームの第1スイッチング素子Q1、Q2の中間点がU相コイルに接続され、V相アームの第1スイッチング素子Q3、Q4の中間点がV相コイルに接続され、及び、W相アームの第1スイッチング素子Q5、Q6の中間点がW相コイルに接続されている。
【0041】
したがって、第1パワーモジュール21は、各相アームの電源ライン側の第1スイッチング素子Q1,Q3,Q5のON期間と、接地ライン側の第1スイッチング素子Q2,Q4,Q6のON期間との比率が制御される(PWM制御される)ことにより、平滑コンデンサSCによって平滑化された、高電圧電源HVからの直流電圧を三相交流電圧に変換して電動モータ4に供給することができ、これにより、電動モータ4を駆動し、及び圧縮機構3を駆動することができる。
【0042】
第1ドライバ22は、後述する制御ユニット15からの制御信号(PWM信号)に基づき、第1スイッチング素子Q1~Q6(のゲート)をON/OFF駆動(スイッチング)する。
【0043】
つまり、本実施形態において、モータ駆動回路20の動作(第1スイッチング素子Q1~Q6のスイッチング動作)、ひいては、電動モータ4及び圧縮機構3(すなわち、冷媒圧縮機能)の動作は、制御ユニット15によって制御されるようになっている。
【0044】
ヒータ制御回路30は、第2パワーモジュール31と、第2ドライバ32とを有する。
【0045】
第2パワーモジュール31は、高電圧電源HVの電気ヒータ5への印加を制御する2つのスイッチング素子(以下「第2スイッチング素子」という)Q7、Q8を含む。第2スイッチング素子Q7、Q8は、モータ駆動回路20の第1スイッチング素子Q1~Q6と同様、IGBTであり得る。本実施形態において、2つの第2スイッチング素子Q7、Q8のうちの一方の第2スイッチング素子Q7は、電気ヒータ5よりも高電圧電源HVの出力側(電圧側)に設けられ、他方の第2スイッチング素子Q8は、電気ヒータ5よりも高電圧電源HVの接地側に設けられている。
【0046】
第2パワーモジュール31は、第2スイッチング素子Q7、Q8が制御(PWM制御)されることにより、高電圧電源HVと電気ヒータ5との間の通電をON/OFFし、これによって、電気ヒータ5の温度、さらには、電気ヒータ5によって加熱される熱媒体の温度を制御する。
【0047】
第2ドライバ32は、モータ駆動回路20の第1ドライバ22と同様、制御ユニット15からの制御信号(PWM信号)に基づき、第2スイッチング素子Q7、Q8(のゲート)をON/OFF駆動(スイッチング)する。
【0048】
つまり、本実施形態において、ヒータ制御回路30(第2スイッチング素子Q7、Q8)の動作、ひいては、電気ヒータ5(熱媒体加熱機能)の動作は、制御ユニット15によって制御されるようになっている。
【0049】
ここで、図6を参照して、平滑コンデンサSC、モータ駆動回路20の第1スイッチング素子Q1~Q6及びヒータ制御回路30の第2スイッチング素子Q7、Q8の配置構造について説明する。図6は、複合装置1の部分概略断面図(図3のB-B断面図に相当する)である。
【0050】
上述のように、モータ駆動回路20及びヒータ制御回路30(さらには平滑コンデンサSC)を含む前記電子回路は、回路基板6に実装されて第3収容空間S3に収容されている。回路基板6は、図6に示されるように、例えば、第3収容空間S3内に設けられた複数の基板取付部12に取り付けられている。本実施形態において、複数の基板取付部12のそれぞれは、第3ハウジング2Cの底壁7から上側に(第1ハウジング2A及び第2ハウジング2Bから離れる方向に)突出するボス状に形成され、複数の基板取付部12の上面に回路基板6がねじ13によって取り付けられている。
【0051】
本実施形態において、平滑コンデンサSC、モータ駆動回路20の第1スイッチング素子Q1~Q6及びヒータ制御回路30の第2スイッチング素子Q7、Q8は、冷媒流入口8から第1ハウジング2Aの内部に流入した冷媒によって冷却され得る位置に配置されている。
【0052】
具体的には、平滑コンデンサSC、モータ駆動回路20の第1スイッチング素子Q1~Q6及びヒータ制御回路30の第2スイッチング素子Q7、Q8は、基板取付部12に取り付けられた回路基板6の下面(第3ハウジング2Cの底壁7側の面)に実装され、第1ハウジング2Aの内部と第3ハウジング2Cの内部とを仕切る第1仕切部71に熱的に接触するように配置されている。ここで、「第1仕切部71に熱的に接触する」とは、第1仕切部71との間で熱交換可能な状態にあることをいい、第1仕切部71に直接接触していること、第1仕切部71に熱交換可能な程度に近接していること、及び、熱伝導率が高い熱交換部材などを介して第1仕切部71に間接的に接触することなどが含まれる。
【0053】
図7は、実施形態に係る複合装置1の制御系の概略構成を示すブロック図である。図7に示されるように、本実施形態において、複合装置1の制御ユニット15には、上位の制御装置(例えば、上述の車両用空調装置の制御装置)から、冷媒圧縮機能の動作要求(起動要求、停止要求を含む)や熱媒体加熱機能の動作要求(起動要求、停止要求を含む)などが入力される。
【0054】
また、制御ユニット15には、第1スイッチング素子Q1~Q6の温度又はその相関値を検出する第1温度検出部51や第2スイッチング素子Q7、Q8の温度又はその相関値を検出する第2温度検出部52などの各種検出部の検出結果も入力されている。
【0055】
そして、制御ユニット15は、入力された前記上位の制御装置からの動作要求及び/又は前記各種検出部の検出結果に応じた制御信号を第1ドライバ22及び/又は第2ドライバ32に供給し、これによって、第1スイッチング素子Q1~Q6の動作(すなわち、モータ駆動回路20の動作)を制御し、及び/又は、第2スイッチング素子Q7、Q8(すなわち、ヒータ制御回路30の動作)を制御するように構成されている。
【0056】
ところで、前記電子回路の配線、すなわち、回路基板6上の配線パターンは、寄生インダクタンスを有している。配線の寄生インダクタンスは、配線の長さが長いほど大きくなる傾向がある。また、前記電子回路において、平滑コンデンサSCと、モータ駆動回路20の第1スイッチング素子Q1~Q6及びヒータ制御回路30の第2スイッチング素子Q7,Q8のそれぞれとの間の配線の寄生インダクタンスをLとすると、各スイッチング素子のスイッチング(ターンオフ)時に発生するサージ電圧ΔVは、ΔV=L×di/dtとなる。ここで、「di/dt」は、スイッチング素子に流れる電流の傾きであり、スイッチング素子のスイッチング(ターンオフ)速度に依存する。
【0057】
スイッチング素子を効率的に動作させるためには、スイッチング素子のスイッチング速度を速くした方がよい。但し、スイッチング速度を速くすると、「di/dt」が増加してサージ電圧ΔVも上昇する。サージ電圧ΔVがスイッチング素子の耐圧電圧を超えてしまうと、スイッチング素子の損傷を招く。そのため、同一の回路に用いられた複数のスイッチング素子のスイッチング速度は、通常、平滑コンデンサから最も離れた位置にある(配線長が最も長い)スイッチング素子に関する配線の寄生インダクタンスに制約される。すなわち、平滑コンデンサから最も離れた位置にあるスイッチング素子以外のスイッチング素子についても、平滑コンデンサから最も離れた位置にあるスイッチング素子と同じように、スイッチング速度が遅く設定される。このため、全体としてスイッチング損失が必要以上に増加してしまうことになる。
【0058】
つまり、全てのスイッチング素子を効率的に動作させつつ、サージ電圧による各スイッチング素子の損傷を防止することは難しいという問題がある。
【0059】
実施形態に係る複合装置1は、以下のような構成を採用し、これによって、上記問題に対処するようにしている。
【0060】
(1)まず、ヒータ制御回路30の第2スイッチング素子Q7、Q8の駆動周波数(スイッチング周波数)は、モータ駆動回路20の第1スイッチング素子Q1~Q6の駆動周波数(スイッチング周波数)よりも低い。
【0061】
モータ駆動回路20(の第1スイッチング素子Q1~Q6)は、高電圧電源HVからの直流電圧を三相交流電圧に変換するものであり、第1スイッチング素子Q1~Q6のスイッチング周波数が低くなると、出力波形に歪み等が生じるおそれがある。出力波形に歪み等が生じると、電動モータ4の安定した動作が得られない。このため、モータ駆動回路20の第1スイッチング素子Q1~Q6のスイッチング周波数は、ある程度高くせざるを得ない。例えば、第1スイッチング素子Q1~Q6のスイッチング周波数は、kHzオーダー以上の周波数である必要がある。
【0062】
他方、ヒータ制御回路30(の第2スイッチング素子Q7、Q8)は、高電圧電源HVと電気ヒータ5との間の通電をON/OFFするものであるので、第2スイッチング素子Q7、Q8のスイッチング周波数は、それほど高くする必要はない。例えば、第2スイッチング素子Q7、Q8のスイッチング周波数は、Hzオーダーの周波数で十分である。
【0063】
そこで、本実施形態では、第2スイッチング素子Q7、Q8のスイッチング周波数が、第1スイッチング素子Q1~Q6のスイッチング周波数よりも低く設定されている。
【0064】
(2)次に、ヒータ制御回路30の第2スイッチング素子Q7、Q8のスイッチング速度は、モータ駆動回路20の第1スイッチング素子Q1~Q6のスイッチング速度よりも遅い。
【0065】
スイッチング素子のスイッチング速度を遅くすると、「di/dt」が小さくなる。そのため、スイッチング素子がスイッチング(ターンオフ)したときに発生するサージ電圧ΔVが低下する。したがって、スイッチング素子のスイッチング速度を遅くすることで、スイッチング(ターンオフ)時に発生するサージ電圧ΔVがスイッチング素子の耐圧電圧を超えること、つまり、サージ電圧によってスイッチング素子が損傷することが防止され得る。但し、スイッチング素子のスイッチング速度が遅くなると、スイッチング損失が増加することになる(効率が低下する)。
【0066】
ここで、上記(1)に記載されているように、本実施形態において、ヒータ制御回路30の第2スイッチング素子Q7、Q8のスイッチング周波数は、モータ駆動回路20の第1スイッチング素子Q1~Q6のスイッチング周波数よりも低く設定されている。つまり、第2スイッチング素子Q7、Q8は、第1スイッチング素子Q1~Q6と比べて、スイッチング回数が少ない。このことは、第2スイッチング素子Q7、Q8のスイッチング速度を遅くしても、第1スイッチング素子Q1~Q6のスイッチング速度を遅くした場合に比べて、スイッチング損失の増加が少なくて済むこと、すなわち、全体としてのスイッチング損失の増加が抑制され得ることを意味している。
【0067】
そこで、本実施形態では、第2スイッチング素子Q7、Q8のスイッチング速度が、第1スイッチング素子Q1~Q6のスイッチング速度よりも遅く設定されている。特に限定されないが、本実施形態においては、第2スイッチング素子Q7、Q8のゲート抵抗(図示省略)が、モータ駆動回路20の第1スイッチング素子Q1~Q6のゲート抵抗(図示省略)より高い抵抗値を有しており、これによって、第2スイッチング素子Q7、Q8のスイッチング速度が第1スイッチング素子Q1~Q6のスイッチング速度よりも遅くなっている。
【0068】
(3)そして、前記電子回路において、モータ駆動回路20の第1スイッチング素子Q1~Q6に関する配線の寄生インダクタンスは、ヒータ制御回路30の第2スイッチング素子Q7、Q8に関する配線の寄生インダクタンスよりも小さくなっている。
【0069】
上記(2)に記載されたように、本実施形態において、第2スイッチング素子Q7、Q8のスイッチング速度は、第1スイッチング素子Q1~Q6のスイッチング速度よりも遅く設定されている。したがって、第2スイッチング素子Q7、Q8における「di/dt」は、第1スイッチング素子Q1~Q6における「di/dt」よりも小さい。このことは、サージ電圧ΔV(=L×di/dt)を考慮したとき、第2スイッチング素子Q7、Q8に関する配線の寄生インダクタンスが、第1スイッチング素子Q1~Q6に関する配線の寄生インダクタンスよりも大きくてもよいことを意味している。つまり、第2スイッチング素子Q7、Q8に関する配線の寄生インダクタンスが、第1スイッチング素子Q1~Q6に関する配線の寄生インダクタンスよりも大きくなっても、第2スイッチング素子Q7、Q8のスイッチング(ターンオフ)時に発生するサージ電圧ΔVが第2スイッチング素子Q7、Q8の耐圧電圧を超えないようにすることが可能である。
【0070】
そこで、本実施形態において、前記電子回路は、モータ駆動回路20の第1スイッチング素子Q1~Q6に関する配線の寄生インダクタンスが、ヒータ制御回路30の第2スイッチング素子Q7、Q8に関する配線の寄生インダンクタンスよりも小さくなるように、形成されている。
【0071】
配線の寄生インダクタンスは、配線の長さが短いほど小さくなる。そのため、本実施形態の前記電子回路において、平滑コンデンサSCは、ヒータ制御回路30の第2スイッチング素子Q7、Q8よりもモータ駆動回路20の第1スイッチング素子Q1~Q6に近い位置に配置され(図5参照)、これによって、第1スイッチング素子Q1~Q6に関する配線(具体的には平滑コンデンサSCと第1スイッチング素子Q1~Q6との間の配線)の長さが、第2スイッチング素子Q7、Q8に関する配線(具体的には平滑コンデンサSCと第2スイッチング素子Q7、Q8との間の配線)の長さよりも短くなっている。
【0072】
また、配線の寄生インダクタンスは、配線の幅が広い(配線が太い)ほど小さくなる。そのため、本実施形態の前記電子回路において、第1スイッチング素子Q1~Q6に関する配線は、第2スイッチング素子Q7、Q8に関する配線よりも幅広に(太く)形成されている。但し、本実施形態において、第2スイッチング素子Q7、Q8に関する配線は、第1スイッチング素子Q1~Q6に関する配線との共用部を含んでいる。したがって、本実施形態においては、平滑コンデンサSCと第1スイッチング素子Q1~Q6との間の配線(図5において破線で囲まれた配線)が、平滑コンデンサSCと第2スイッチング素子Q7、Q8との間の配線における前記共用部以外の部分、すなわち、第1スイッチング素子Q1~Q6と第2スイッチング素子Q7、Q8との間の配線(図5において一点鎖線で囲まれた配線)よりも幅広に(太く)形成されている。
【0073】
具体的には、図8に示されるように、回路基板6の下面(第3ハウジング2Cの底壁7側の面)において、平滑コンデンサSCは、ヒータ制御回路30の第2スイッチング素子Q7、Q8よりもモータ駆動回路20の第1スイッチング素子Q1~Q6に近い位置に配置(実装)されている。また、回路基板6の上面(第3カバー2F側の面)において、平滑コンデンサSCと第1スイッチング素子Q1~Q6との間の配線パターンP1a、P1bの長さは、平滑コンデンサSCと第2スイッチング素子Q7、Q8との間の配線パターンP1a+P2a、P1b+P2bの長さよりも短くなっている。さらに、平滑コンデンサSCと第1スイッチング素子Q1~Q6との間の配線パターンP1a、P1bは、回路基板6上の他の配線パターン、例えば、第1スイッチング素子Q1~Q6と第2スイッチング素子Q7、Q8との間の第2配線パターンP2a、P2bや第2スイッチング素子Q7、Q8から電気ヒータ5に向かって延びる第3配線パターンP3a、P3bよりも幅広に形成されている。
【0074】
実施形態に係る複合装置1によれば以下の効果が得られる。
【0075】
実施形態に係る複合装置1は、冷媒を圧縮する圧縮機構3及び圧縮機構3を駆動する電動モータ4を内部に収容すると共に、冷媒流入口8及び冷媒流出口9を有する第1ハウジング(圧縮機ハウジング)2Aと、熱媒体を加熱する電気ヒータ5を内部に収容すると共に、熱媒体流入口10及び熱媒体流出口11を有する第2ハウジング(ヒータハウジング)2Bと、電動モータ4を駆動するモータ駆動回路20及び電気ヒータ5を制御するヒータ制御回路30を含む電子回路が実装された回路基板6を内部に収容する第3ハウジング(回路ハウジング)2Cとを含み、これら第1ハウジング(圧縮機ハウジング)2A、第2ハウジング2B(ヒータハウジング)及び第3ハウジング(回路ハウジング)2Cが一体的に結合されている。
【0076】
このような複合装置1は、冷媒を圧縮する冷媒圧縮機(電動圧縮機)及び熱媒体を加熱する熱媒体加熱装置として機能し得るものであり、冷媒を圧縮しながら、熱媒体を加熱することができる。このため、複合装置1は、上述したような車両用空気調和装置に適用され得る。そして、複合装置1が車両用空気調和装置に適用されることにより、電動圧縮機及び熱媒体加熱装置を別個に有する従来の構成に比べて、車両用空気調和装置の小型化を図ることが可能である。
【0077】
複合装置1において、モータ駆動回路20は、直流電圧を三相交流電圧に変換する第1スイッチング素子Q1~Q6を含み、ヒータ制御回路30は、電気ヒータ5への通電をON/OFFする第2スイッチング素子Q7、Q8を含む。また、第2スイッチング素子Q7、Q8のスイッチング周波数(駆動周波数)は、第1スイッチング素子Q1~Q6のスイッチング周波数(駆動周波数)よりも低く設定され、第2スイッチング素子Q7、Q8のスイッチング速度は、第1スイッチング素子Q1~Q6のスイッチング速度よりも遅く設定され、及び、前記電子回路は、第1スイッチング素子Q1~Q6に関する配線の寄生インダクタンスが、第2スイッチング素子Q7、Q8に関する配線の寄生インダクタンスよりも小さくなるように形成されている。
【0078】
具体的には、回路基板6において、平滑コンデンサSCは、ヒータ制御回路30の第2スイッチング素子Q7、Q8よりもモータ駆動回路20の第1スイッチング素子Q1~Q6に近い位置に配置されており、平滑コンデンサSCと第1スイッチング素子Q1~Q6との間の配線パターンP1a,P1bの長さが、平滑コンデンサSCと第2スイッチング素子Q7、Q8との間の配線パターンP1a+P2a,P1b+P2bの長さよりも短くなっている。また、平滑コンデンサSCと第1スイッチング素子Q1~Q6との間の配線パターンP1a,P1bは、第1スイッチング素子Q1~Q6と第2スイッチング素子Q7、Q8との間の配線パターンP2a,P2bを含む回路基板6上の他の配線パターンよりも幅広に形成されている。
【0079】
このため、冷媒圧縮機能及び熱媒体加熱機能を損なうことなく、第1スイッチング素子Q1~Q6及び第2スイッチング素子Q7、Q8のサージ電圧による損傷を防止しつつ、第1スイッチング素子Q1~Q6及び第2スイッチング素子Q7、Q8によるスイッチング損失の増加を抑制することができる。具体的には、第1スイッチング素子Q1~Q6については、これらに関する配線の寄生インダクタンスを小さくすることにより、スイッチング速度を遅くする(スイッチング損失を増加させる)ことなく、サージ電圧による損傷を防止する。他方、第2スイッチング素子Q7、Q8については、スイッチング速度を遅くすることでサージ電圧による損傷を防止すると共に、スイッチング周波数を低くすることでスイッチング損失の増加を抑制する。そして、これらにより、複合装置1において、第1スイッチング素子Q1~Q6及び第2スイッチング素子Q7、Q8のサージ電圧による損傷の防止と、第1スイッチング素子Q1~Q6及び第2スイッチング素子Q7、Q8によるスイッチング損失の増加の抑制とを両立させることを可能としている。
【0080】
また、複合装置1において、第1ハウジング(圧縮機ハウジング)2Aの冷媒流入口8は、第1ハウジング(圧縮機ハウジング)2Aの内部と第3ハウジング(回路ハウジング)2Cの内部とを仕切る第1仕切部71の近傍に設けられており、第3ハウジング(回路ハウジング)2C内において、平滑コンデンサSC、第1スイッチング素子Q1~Q6及び第2スイッチング素子Q7、Q8は、第1仕切部71に熱的に接触するように配置されている。
【0081】
このため、平滑コンデンサSC、第1スイッチング素子Q1~Q6及び第2スイッチング素子Q7、Q8が、第1ハウジング(圧縮機ハウジング)内に流入する冷媒によって冷却され得る第1仕切部71との間の熱交換によって効果的に冷却され得る。つまり、平滑コンデンサSC、第1スイッチング素子Q1~Q6及び第2スイッチング素子Q7、Q8に対する高い冷却性(放熱性)が確保され、その結果、複合装置1の安定した動作が実現され得る。
【0082】
なお、上述の実施形態において、平滑コンデンサSC、第1スイッチング素子Q1~Q6及び第2スイッチング素子Q7、Q8は、第1仕切部71に熱的に接触するように配置されている。しかし、これに限られるものではない。複合装置1において、第2ハウジング(ヒータハウジング)2Bの熱媒体流入口10は、第2ハウジング2B(ヒータハウジング)2Bの内部と第3ハウジング(回路ハウジング)2Cの内部とを仕切る第2仕切部72の近傍に設けられており、第2仕切部72は、第2ハウジング2B内に流入する熱媒体によって冷却され得る。したがって、平滑コンデンサSC、第1スイッチング素子Q1~Q6及び第2スイッチング素子Q7、Q8は、第2仕切部72に熱的に接触するように配置されてもよい。あるいは、平滑コンデンサSC、第1スイッチング素子Q1~Q6及び第2スイッチング素子Q7、Q8の一部が第1仕切部71に熱的に接触するように配置され、残りが第2仕切部72に熱的に接触するように配置されてもよい。このようにしても平滑コンデンサSC、第1スイッチング素子Q1~Q6及び第2スイッチング素子Q7、Q8に対する冷却性(放熱性)が確保され得る。
【0083】
また、上記では、主に複合装置1が車両用空気調和装置に適用される場合について説明されている。しかし、これに限られるものではない。複合装置1は、冷媒を圧縮する電動圧縮機及び熱媒体を加熱する熱媒体加熱装置を利用する種々の装置やシステムに適用することが可能である。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて変形及び変更が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0085】
1…複合装置、2…ハウジング、2A…第1ハウジング(圧縮機ハウジング)、2B…第2ハウジング(ヒータハウジング)、2C…第3ハウジング(回路ハウジング)、3…圧縮機構、4…電動モータ、5…電気ヒータ、6…回路基板、8…冷媒流入口、9…冷媒流出口、10…熱媒体流入口、11…熱媒体流出口、15…制御ユニット、20…モータ駆動回路、30…ヒータ制御回路、Q1~Q6…第1スイッチング素子(モータ駆動回路のスイッチング素子)、Q7,Q8…第2スイッチング素子(ヒータ制御回路のスイッチング素子)、SC…平滑コンデンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8