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特開2024-23740組織の特性評価とスクリーニングのために改善したサイトメトリー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023740
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】組織の特性評価とスクリーニングのために改善したサイトメトリー
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20240214BHJP
   G01N 21/05 20060101ALI20240214BHJP
   G01N 35/08 20060101ALN20240214BHJP
   G01N 37/00 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
G01N21/64 F
G01N21/05
G01N35/08 A
G01N37/00 101
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023214695
(22)【出願日】2023-12-20
(62)【分割の表示】P 2020563650の分割
【原出願日】2019-05-23
(31)【優先権主張番号】62/676,620
(32)【優先日】2018-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515302853
【氏名又は名称】ファイヴ プライム セラピューティクス インク
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ナラカン アルヴィンダン
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン メヒ
(72)【発明者】
【氏名】グアンチン オウ
(57)【要約】
【課題】イメージングシステム及び方法を提供すること
【解決手段】光学イメージングシステムは、第1ステージと第2ステージとの間の機械的結合を提供するように設計されたフレーム、前記第1ステージに配置された試料保持領域、レンズ装置、及びセンサーアレイを含む。前記レンズ装置は、前記第1ステージと前記第2ステージとの間に配置され、前記第1ステージの前記試料保持領域における試料からの光を受けるように設計されている。前記レンズ装置は、0.1未満の開口数を有する。前記センサーアレイは前記第2ステージに結合し、前記レンズ装置を通過する光を受けるように設計されている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、イメージングシステム及び方法に関し、更に具体的には、細胞及び組織を含む、生体試料の分析ならびに特性評価を容易にするイメージングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞の表面上の分子の発現をプローブして特性評価する能力は、それ自体であろうと組織との関連であろうと、ヒト生物学の根底にある分子メカニズムを分析し、病理学及び治療介入に関連する変化を監視する研究者の能力にとって不可欠である。これらの分析では、細胞表面に発現する分子の種類と数、及び発現プロファイルが異なる細胞間の空間的関係の両方に関する情報を収集することが重要である。例えば、癌に関連して、空間情報は、どの細胞が免疫応答を誘発しているか、どの構造サブグループが治療に特に感受性または耐性があるか、に関する手がかりを提供することができる。
【0003】
ただし、このような特性評価を実行するための最先端の方法は、処理量、並列化、及び空間情報の維持の間でトレードオフを受ける。例えば、従来の免疫蛍光(IF)及び免疫組織化学(IHC)は、組織を生理学的表示に近い状態に維持するが、利用可能なスペクトル的に異なる蛍光プローブの数と、組織をプローブできる回数によって制限される。その結果、1つの組織片は、対象となる5~7つの分子の発現についてのみプローブできる。一方、フローサイトメトリーは、対象となる15~18の分子をプローブする機能を提供する。CyTOF(Cytometry by Time of Flight)のような分野での最近の開発では、重金属イオンタグ付き抗体を利用しており、プローブされる分子の数を約100に増やすことができる。ただし、どちらの方法でも、分析は1つの細胞レベルで行われるため、元の試料を分割する必要があり、重要な空間情報が失われてしまう。これだけでなく、分析が実行されると、その組織は、並列情報を提供する可能性のあるRNA配列などの他の下流分析で使用できなくなる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書に提示される実施形態で、新しいイメージング技術は、空間情報を維持し、同時に大きな組織片を特性評価し、プローブできる表面分子の数が理論的に無制限であり、下流分析のために試料の完全性を維持する、特性評価方法を提供するために提示される。
【0005】
一実施形態で、光学イメージングシステムは、第1ステージと第2ステージとの間の機械的結合を提供するように設計されたフレーム、第1ステージに配置された試料保持領域、レンズ装置、及びセンサーアレイを含む。レンズ装置は、第1ステージと第2ステージとの間に配置され、第1ステージの試料保持領域で試料からの光を受けるように設計されている。レンズ装置は、0.1未満の開口数を有する。センサーアレイは第2ステージに結合し、レンズ装置を通過する光を受けるように設計されている。
【0006】
別の実施形態で、試料の蛍光画像を取得する方法は、ステージ上の試料保持領域上に試料を配置することと、複数のマイクロ流体チャネルを含む基板を試料上に配置することと、を含む。この方法は更に、溶液が試料に接触するように複数のマイクロ流体チャネルを通して溶液を流すことと、ステージの下に配置されたレンズ装置で試料から蛍光を発する光を受けることと、を含む。レンズ装置は、0.1未満の開口数を有する。この方法は、レンズ装置から光学的に下流に配置された検出器で試料からの蛍光を発する光を検出することも含む。
【0007】
別の実施形態で、光学イメージングシステムは、第1ステージと第2ステージとの間の機械的結合を提供するように設計されたフレーム、第1ステージに配置された試料保持領域、試料保持領域に配置された試料上に配置された基板、レンズ装置、及びセンサーアレイを含む。基板は、複数のマイクロ流体チャネルを含む。レンズ装置は、第1ステージと第2ステージとの間に配置され、第1ステージの試料保持領域における試料からの光を受けるように設計されている。レンズ装置は、0.1未満の開口数を有する。センサーアレイは第2ステージに結合し、レンズ装置を通過する光を受けるように設計されている。
【0008】
別の実施形態で、結合反応を検出する方法は、プローブ溶液を第1チャネルに順次充填することを含み、ここで、プローブ溶液のそれぞれは、蛍光タグ付きプローブ分子を含む。プローブ溶液は、第1チャネルの中で互いに実質的に分離されている。この方法は更に、プローブ溶液が第2チャネルに存在するときに試料と接触するように、プローブ溶液を第1チャネルを通って、試料上に位置する第2チャネルに流すことを含む。この方法は、試料の下に配置されたレンズ装置を使用して、試料に存在する蛍光タグ付きプローブ分子からの蛍光を発する光を受けることと、レンズ装置から光学的に下流に配置された検出器で蛍光タグ付きプローブ分子からの蛍光を発する光を検出することと、を含む。
【0009】
本明細書に組み込まれ、明細書の一部を形成する添付図面は、本発明の実施形態を例証し、明細書と共に、本発明の原則を説明するために更に機能し、関連技術の当業者が本発明を作製しかつ利用することを可能にする。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
第1ステージと第2ステージとの間の機械的結合を提供するように構成されたフレームと、
前記第1ステージに配置される試料保持領域と、
前記第1ステージと前記第2ステージとの間に配置されたレンズ装置であって、前記レンズ装置が、前記第1ステージの前記試料保持領域における試料から光を受けるように構成されており、前記レンズ装置が、0.1未満の開口数を有する、前記レンズ装置と、
前記第2ステージに結合し、前記レンズ装置を通過する光を受けるように設計されている、センサーアレイと、を備える、光学イメージングシステム。
(項目2)
前記レンズ装置が、テレセントリックレンズを含む、項目1に記載の光学イメージングシステム。
(項目3)
前記第2ステージに結合され、前記レンズ装置を収容するように構成された、ハウジングを更に備える、項目1または2に記載の光学イメージングシステム。
(項目4)
前記ハウジングが、バンドパスフィルタ、ロングパスフィルタ、もしくは偏光フィルタ
のうちの1つまたは複数を更に含む、項目3に記載の光学イメージングシステム。
(項目5)
前記ハウジングが、前記ハウジングの側面に沿って開口部を含み、その結果、前記開口部で受けた光が前記試料保持領域に向けられる、項目3または4に記載の光学イメージングシステム。
(項目6)
前記ハウジングが、前記開口部で受けた前記光を反射し、前記試料から受けた前記光を通過させるように構成された角度付きフィルタを含む、項目5に記載の光学イメージングシステム。
(項目7)
前記レンズ装置が、複数のレンズを備える、先行項目のいずれか一項に記載の光学イメージングシステム。
(項目8)
前記センサーアレイが、CMOSセンサーアレイを備える、先行項目のいずれか一項に記載の光学イメージングシステム。
(項目9)
前記試料保持領域に向けて励起光を提供するように構成される、光源を更に備える、先行項目のいずれか一項に記載の光学イメージングシステム。
(項目10)
前記第1ステージが、前記試料保持領域の下に配置されたバンドパスフィルタ、ロングパスフィルタ、もしくは偏光フィルタのうちの1つまたは複数を含む、先行項目のいずれか一項に記載の光学イメージングシステム。
(項目11)
試料の蛍光画像を取得する方法であって、前記方法が、
ステージ上の試料保持領域上に前記試料を配置することと、
前記試料上に複数のマイクロ流体チャネルを含む基板を配置することと、
蛍光タグ付きプローブ分子を含む溶液を、前記溶液が前記試料と接触するように、前記複数のマイクロ流体チャネルを通して流すことと、
前記ステージの下に配置されたレンズ装置を使用して、前記試料に結合した前記蛍光タグ付きプローブ分子からの蛍光を発する光を受けることであって、前記レンズ装置が、0.1未満の開口数を有する、前記蛍光を発する光を受けることと、
前記レンズ装置から光学的に下流に配置された検出器で、前記蛍光タグ付きプローブ分子からの蛍光を発する前記光を検出することと、を含む、前記方法。
(項目12)
プリズムブロックを前記基板上に配置することを更に含む、項目11に記載の方法。
(項目13)
励起光を、前記プリズムブロックを通して前記試料保持領域に向けることを更に含む、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記流すことが、複数のマイクロ流体チャネルを通して実質的に一定の流速で前記溶液を流すことを含む、項目11~13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記検出することが、CMOSセンサーアレイで前記タグ付き生体分子からの蛍光を発する前記光を検出することを含む、項目11~14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
バンドパスフィルタ、ロングパスフィルタ、または偏光フィルタのうちの少なくとも1つを使用して、前記レンズ装置によって受けた光をフィルタリングすることを更に含む、項目11~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記流すことが、加えられた圧力を介して前記溶液を流すことを含む、項目11~16
のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記レンズ装置がテレセントリックレンズを含む、項目11~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
励起光を、前記レンズ装置を通して前記試料保持領域に向けることを更に含む、項目11~18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
第1ステージと第2ステージとの間の機械的結合を提供するように構成されたフレームと、
前記第1ステージに配置される試料保持領域と、
前記試料保持領域に置かれた試料上に配置された基板であって、前記基板が、複数のマイクロ流体チャネルを含む、前記基板と、
前記第1ステージと前記第2ステージとの間に配置されたレンズ装置であって、前記レンズ装置が、前記第1ステージの前記試料保持領域における前記試料からの光を受けるように構成されており、前記レンズ装置が、0.1未満の開口数を有する、前記レンズ装置と、
前記第2ステージに結合し、前記レンズ装置を通過する光を受けるように構成されている、センサーアレイと、を備える、光学イメージングシステム。
(項目21)
前記複数のマイクロ流体チャネルが、第1の方向に配向された長さを有する複数の平行なマイクロ流体チャネルを含み、そこで、前記複数の平行なマイクロ流体チャネルの各チャネルの幅が、前記複数の平行なマイクロ流体チャネルの中心チャネルから、前記第1の方向に垂直な第2の方向に沿った距離の増加と共に増加する、項目20に記載の光学イメージングシステム。
(項目22)
前記複数のマイクロ流体チャネルが、分岐マイクロ流体チャネルのネットワークを含み、そこで、前記分岐マイクロ流体チャネルのネットワークが、前記分岐マイクロ流体チャネルのネットワークの少なくとも1つの幅にまたがる幅を有する1つの流体チャネルに終端する、複数のマイクロ流体チャネルを含む、項目20または21に記載の光学イメージングシステム。
(項目23)
細胞結合反応を検出する方法であって、前記方法が、
複数のプローブ溶液を第1チャネルの中に順次充填することであって、そこで、前記複数のプローブ溶液のそれぞれが、蛍光タグ付きプローブ分子を含み、前記複数のプローブ溶液が、前記第1チャネル内で互いに実質的に分離される、前記充填することと、
前記複数のプローブ溶液を、試料上に位置する前記第1チャネルを通って前記第2チャネルに順次流し、前記複数のプローブ溶液が第2チャネルに存在するときに前記試料と接触するようにすることと、
前記試料の下に配置されたレンズ装置を使用して、前記試料に存在する前記蛍光タグ付きプローブ分子から蛍光を発する光を受けることと、
前記レンズ装置から光学的に下流に配置された検出器で、前記蛍光タグ付きプローブ分子からの蛍光を発する前記光を検出することと、を含む、前記方法。
(項目24)
前記流すことが、複数のマイクロ流体チャネルを通して実質的に一定の流速で前記複数のプローブ溶液を流すことを含む、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記検出することが、CMOSセンサーアレイで前記タグ付き生体分子からの蛍光を発する前記光を検出することを含む、項目23または24に記載の方法。
(項目26)
バンドパスフィルタ、ロングパスフィルタ、または偏光フィルタのうちの少なくとも1つを使用して、前記レンズ装置によって受けた光をフィルタリングすることを更に含む、項目23~25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記流すことが、加えられた圧力を介して前記複数のプローブ溶液を流すことを含む、項目23~26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記レンズ装置が、テレセントリックレンズを含む、項目23~27のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記試料が、疾患組織試料である、項目23~28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記試料が、生検組織試料である、項目23~29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
前記複数のプローブ溶液のうちの1つまたは複数中の前記蛍光タグ付きプローブ分子が、抗体を含む、項目23~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
前記複数のプローブ溶液のうちの1つまたは複数中の前記蛍光タグ付きプローブ分子が、タンパク質を含む、項目23~31のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
前記複数のプローブ溶液のうちの1つまたは複数中の前記蛍光タグ付きプローブ分子が、DNAを含む、項目23~32のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
前記複数のプローブ溶液のうちの1つまたは複数中の前記蛍光タグ付きプローブ分子が、RNAを含む、項目23~33のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
前記複数のプローブ溶液のうちの1つまたは複数中の前記蛍光タグ付きプローブ分子が、酵素を含む、項目23~34のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
前記複数のプローブ溶液のうちの1つまたは複数中の前記蛍光タグ付きプローブ分子が、細胞を含む、項目23~35のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記複数のプローブ溶液のうちの所与のプローブ溶液中の前記蛍光タグ付きプローブ分子が、同一である、項目23~36のいずれか一項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態による、光学検査システムの3次元図を示す。
図2】一実施形態による、光学検査システムの断面図を示す。
図3】一実施形態による、図2で使用するようなレンズ装置を備えたハウジングを示す。
図4】別の実施形態による、光学検査システムの断面図を示す。
図5】別の実施形態による、図4で使用するようなレンズ装置を備えたハウジングを示す。
図6】一実施形態による、マイクロ流体装置の上面図を示す。
図7】一実施形態による、別のマイクロ流体装置の上面図を示す。
図8】一実施形態による、マイクロ流体装置を用いた試験手順を示す。
図9A】A及びBは、一実施形態による、例示の蛍光測定値を示す。
図9B】A及びBは、一実施形態による、例示の蛍光測定値を示す。
図10】一実施形態による、試料の蛍光画像を取得する方法を示す。
図11】一実施形態による、試料の蛍光画像を取得する別の方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態は、添付図面を参照して説明される。図面は一定の縮尺で描かれておらず、図面で使用される特定の幾何学的形状または寸法は、本発明の例示の実施形態を提供するためにのみ使用されることを理解されたい。
【0012】
特定の構成及び配置について説明するが、これは、例証のみを目的として行われることを理解すべきである。関連技術の当業者であれば、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の構成及び配置を使用できることを認識するであろう。本発明が様々な用途にも使用され得て、特定の1つの用途に限定されないことは、関連技術の当業者には明らかであろう。
【0013】
本明細の「一実施形態」「実施形態」「例示の実施形態」などへの言及は、記載の実施形態が特定の特徴、構造、または特性を含み得ることを示すが、あらゆる実施形態が、特定の特徴、構造、または特性を必ずしも含むわけではないことに留意されたい。そのうえ、このような語句は、同一の実施形態を必ずしも指すわけではない。更に、特定の特徴、構造、または特性が、実施形態に関連して説明されるとき、そのような特徴、構造、または特性を、明確に記載されているか否かにかかわらず、他の実施形態に関連して達成することは当業者の知識の範囲内であると考えられる。
【0014】
IFやIHCなどの用途向けの従来の顕微鏡イメージング技術は、単一細胞レベルの解像度を実現する高倍率の光学システムを使用するので、処理量を犠牲にして高解像度を得ている。これらの従来のシステムで、組織は、操作上、高解像度顕微鏡の限られた視野に収まる30~40の小さな断片に分割され、各断片はそれだけで画像化されなければならない。その結果、1つの組織は、固定、包埋、及び標識化の面倒な処理(それ自体が数時間または数日の処理)の後でも、イメージングに30分~2時間かかる。イメージング後、これらの30~40の小片から組織画像を再構成するために実行される、更なる画像処理がある。
【0015】
それに対し、本明細書の実施形態は、試料の画像を取得するために使用できる光学イメージングシステムに関し、そこで、画像は、解像度を犠牲にすることなく、比較的広い視野を有するとして特性評価される。そのため、定性分析と定量分析の両方に十分な高解像度を維持しながら、組織試料全体を同じ視野で(試料を分割することを必要とせず)イメージングできる。試料は、疾患組織試料、または生検組織試料を含むことができる。いくつかの例で、試料の全域が1つの画像内に収まり、試料の異なる地点で複数の画像を撮影する必要がなくなる。
【0016】
図1は、一実施形態による、光学イメージングシステム100を示す。光学イメージングシステム100は、フレーム102によって支持された上部ステージ104を含む。一実施形態で、フレーム102は更に、上部ステージ104と下部ステージ106との間の機械的結合を提供する。フレーム102は、図1に示されるように、任意の数の支柱を含むことができる、または下部ステージ106の上方の所与の距離で上部ステージ104を支持するための他の構造の形状もしくは角度のある部材を含み得る。下部ステージ106は、光学イメージングシステム100の安定した基部を提供することができ、本明細書で更に詳細に説明するように、検出要素と連結することもできる。一実施形態で、上部ステージ104は、Z方向に沿って移動するように設計することができる。
【0017】
一実施形態によれば、上部ステージ104は、試料保持領域108を含む。試料保持領域108は、上部ステージ104の中央またはその近くに配置することができる。試料保持領域108は、光が上部ステージ104の下方からまたはその上方から開口を通過することができるように、上部ステージ104の底面を通る開口となることができる。試料保持領域108は、開口上またはその中に配置された透明なブロックを含み得る。透明なブロックは、所与のサイトメトリー処理の間に使用される光のすべての波長に対して実質的に透明であり得る。いくつかの実施形態で、試料保持領域108は、スライドガラスまたはくぼみに配置された他の試料含有基板を支持するための下部縁を含む、上部ステージ104の底面のくぼみを含み得る。試料保持領域108は更に、励起光を減衰させるが、試料からの蛍光を通過させるための、偏光フィルタ、バンドパスフィルタ、もしくはロングパスフィルタのうちの1つまたは複数を含み得る。
【0018】
一実施形態によれば、第1ステージ104と第2ステージ106との間に、ハウジング110が配置される。ハウジング110は、第2ステージ106に結合することができ、試料保持領域108に配置された試料から光を収集するように設計された様々な光学要素を収容することができる。例えば、試料保持領域108に配置された試料で生成された蛍光は、ハウジング110内の光学要素によって収集され得る。
【0019】
一実施形態によれば、ハウジング110は、試料からの光を受けるレンズ装置を含む。レンズ装置は、光が狭い範囲の角度からのみ入ることができるように、非常に低い開口数であるように設計されている。これは、レンズ装置に入る散乱光や他のノイズ源を取り除くことにより、解像度を大幅に向上させるのに役立つ。開口数が小さいため、光の入射は、z方向に伝搬する光のみ、またはz方向からの小さな角度のみに制限される。一実施形態で、ハウジング110内のレンズ装置の開口数は0.1未満である。他の実施形態で、ハウジング110内のレンズ装置の開口数は、0.05未満、0.01未満、または0.001未満である。一実施形態で、ハウジング110内のレンズ装置は、収集した画像の倍率を変更しない(すなわち、レンズ装置は1倍の倍率である)。一実施形態で、レンズ装置は、テレセントリックレンズを含む。レンズ装置に関する更なる議論は、図3A及び図3Bに関連して提供される。
【0020】
一実施形態で、ハウジング110は、ハウジング110の側面に沿った開口部112を含む。試料保持領域108で試料に向けて励起光を提供するために、光を開口部112の中に導くことができる。例えば、光ファイバを開口部112の中に結合して、励起光を開口部112の中に誘導することができる。励起光を使用して、試料保持領域108の試料を蛍光させることができる。
【0021】
いくつかの実施形態で、下部ステージ106は、容易にスライドイン及びスライドアウトするように設計され得る、取り外し可能な要素114を含む。ハウジング110は、この取り外し可能な要素114に結合されて、試料保持領域108の下方にハウジング110を位置合わせする(したがって、レンズ装置をその中に位置合わせする)ための機構を提供することができる。
【0022】
図2は、一実施形態による、光学イメージングシステム100の様々な要素の側面図を示す。一例で、試料保持領域108は試料204を支持する。試料204は、試料保持領域108上に配置される前に、スライドガラスまたは他の支持基板上に置かれ得る。いくつかの実施形態で、試料204は組織試料である。
【0023】
いくつかの実施形態では、上部ステージ104は、試料保持領域108の下に配置された光学フィルタ202を含む。光学フィルタ202は、偏光フィルタ、バンドパスフィルタ、もしくはロングパスフィルタのうちの1つまたは複数を含み得る。照明源210からの励起光が上方から試料保持領域108に向けられる場合、光学フィルタ202が含まれ得る。例えば、照明源210は、青色レーザーまたは青色LEDであり得て、青色光は、試料204中のフルオロフォアを励起して、高波長の光(例えば、緑色光)を放出する。このシナリオで、光学フィルタ202を使用して、緑色光を通過させながら、青色光の通過を実質的に遮断することができる。例えば、バンドパスフィルタは、電磁スペクトルの緑色光部分周囲の帯域(例えば、約530±30nm)のみを通過させることができる、またはロングパスフィルタは、特定の閾値を超える波長(例えば、500nm超)のみを通過させることができる。したがって、試料204の画像は、ノイズ(例えば、青色の励起光)ではなく、主に試料の蛍光から形成されるだろう。他の励起波長及びフルオロフォア波長は、それに応じて調整された光学フィルタ202と共に使用されて、蛍光光を通過させる間、励起光の通過を実質的に遮断することができる。
【0024】
一実施形態で、1つまたは複数のマイクロ流体チャネルを有する基板206は、試料204上に配置される。基板206は、1つまたは複数のマイクロ流体チャネルがガラス基板内にエッチングされている、ガラス基板であり得る。別の実施形態で、基板206は、1つまたは複数のマイクロ流体チャネルを形成するように成形された、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのポリマー材料である。基板206は更に、1つまたは複数のマイクロ流体チャネルを通して流体を流すための入口ポート及び出口ポート(図示せず)も含み得る。基板206中のマイクロ流体チャネルの1つの例示の配置が、図6に示されている。
【0025】
試料204上に流体を送達するために、1つまたは複数のマイクロ流体チャネルを提供することができる。したがって、流体は、1つまたは複数のマイクロ流体チャネルを通って流れる際に、試料204に接触することができる。緩衝液中のタグ付きプローブ分子(例えば、様々なフルオロフォアでタグ付けした)は、1つまたは複数のマイクロ流体チャネルを介して送達されて、試料204中の特定の細胞または細胞型の表面に結合し得る。タグ付きプローブ分子は、細胞の表面またはその内部の分子と相互作用する、細胞結合剤であり得る。タグ付きプローブ分子は、いくつかの例を挙げると、抗体、タンパク質、DNA、RNA、酵素、または細胞を含み得る。一実施形態によれば、タグ付きプローブ分子と試料204との間で生じる結合は、共有結合ではないが、結合環境の平衡定数に基づく弱い結合であり得る。結合が弱いため、1つまたは複数のマイクロ流体チャネルを通る溶液の流れは、結合したプローブ分子を最終的に洗い流す。このメカニズムにより、タグ付きプローブ分子のいずれかと試料204との間で発生する結合反応について試料204を絶えずイメージングしながら、複数のプローブ分子を試料204上に次々に導入することができる。複数のタグ付きプローブ分子の導入については、図7を参照して後でより詳細に論じる。様々な洗浄緩衝液も、1つまたは複数のマイクロ流体チャネルを通して送達され得る。一実施形態で、流体は、圧力駆動流を使用して、1つまたは複数のマイクロ流体チャネルを通して送達される。
【0026】
いくつかの実施形態で、基板206は、酸素プラズマを使用して、試料204の下のスライドガラスまたは他の種類のガラス基板にプラズマ結合され得る。追加の漏れ防止のために、上部基板208を基板206の上に設けて、下向きに圧力を加え、1つまたは複数のマイクロ流体チャネルを更に封止することができる。いくつかの実施形態で、上部基板208は、上部基板208を上部ステージ104に向かって下向きに締着するための1つまたは複数のねじ(図示せず)を含み得る。
【0027】
任意のプリズムブロック209は、基板206上に提供され得る。プリズムブロック209を使用して、試料保持領域108を通ってハウジング110に向かって伝播する励起光の量を減らすことができる。
【0028】
ハウジング110は、試料204から光を収集するために、試料保持領域108の下に配置される。一実施形態で、ハウジング110は、受信光を検出器212に向けて案内するためのレンズ装置及び場合により他の光学要素を含む。検出器212は、CMOSセンサーアレイなどのセンサーアレイであり得る。一実施形態で、検出器212は、下部ステージ106に結合することができる。検出器212は、例えば5μm未満のピクセルサイズを有するセンサーアレイであり得る。各ピクセルは、例えば、約2.2μm×2.2μmのサイズを有し得る。センサーアレイは、例えば、8mm未満の総対角距離を有し得る。一実施形態で、ハウジング110の中のレンズ装置によって提供される視野は、レンズ装置によって倍率が課されない場合、センサーアレイの総設置面積にほぼ等しい。したがって、対角線距離が7.33mmであるセンサーアレイは、対角線に沿って、同様の約7.33mmの視野による画像を提供する。
【0029】
図3は、一実施形態による、図2に示される配置で使用されるようなハウジング110の中の図を示す。ハウジング110は、複数のレンズ304を含む、レンズ装置302を含む。複数のレンズ304は、レンズ装置302が非常に小さい開口数(例えば、0.1未満の開口数)を有するように配置された、任意の数及び種類のレンズを含み得る。一実施形態で、複数のレンズ304は、テレセントリックレンズを含む。テレセントリックレンズの例には、両側テレセントリックレンズと像側テレセントリックレンズの両方が含まれる。
【0030】
いくつかの実施形態で、ハウジング110は、光学フィルタ306を含む。光学フィルタ306は、試料保持領域108の下に配置された光学フィルタ202と同様であり得る。したがって、光学フィルタ306は、偏光フィルタ、バンドパスフィルタ、もしくはロングパスフィルタのうちの1つまたは複数を含み得る。いくつかの構成では、光学フィルタ202と光学フィルタ306の両方を含む必要がない場合がある。したがって、いくつかの実施形態では、光学フィルタ202を使用せずに光学フィルタ306のみが使用され、他のいくつかの実施形態では、光学フィルタ306を使用せずに光学フィルタ202のみが使用される。
【0031】
図4は、別の実施形態による、光学イメージングシステム100の様々な要素の別の図を示す。図2に示される同じ要素の多くが、図4で再び繰り返され、したがって、それらの説明はここでは繰り返さない。この実施形態は、励起光を導入するために、その側面に沿って開口部112を備えたハウジング110を使用する。励起光は、開口部112を介して提供され、下から試料保持領域108に向けられるので、図2に示すように、照明源210、プリズムブロック209、及び光学フィルタ202は、この実施形態では必要とされない。
【0032】
図5は、一実施形態による、図4に示される配置で使用されるようなハウジング110の中の図を示す。励起光502は、開口部112を介してハウジング110の中に提供される。励起光502は、閾値未満の波長を反射し、閾値を超える波長を通過させるように設計された角度付きフィルタ506によって受けられる。一実施形態によれば、励起光502は、角度付きフィルタ506から反射され、レンズ装置302を通過して、試料保持領域108に向けられる。次に、試料から受けた光504は、レンズ装置302を介してハウジング110の中に戻されて収集されて、そこで、角度付きフィルタ506を通過する。いくつかの実施形態で、試料から受けた励起光502及び光504は、同じ角度付きフィルタ506と相互作用せず、代わりに、ハウジング110内の異なる光路に沿って移動する。
【0033】
試料から受けた光504は、周囲環境からの望ましくないノイズと混合された所望の蛍光及び/または励起光502を含み得る。図3に示す実施形態と同様に、光フィルタ306は、光504からのいかなるノイズ源も除去するために提供され得る。
【0034】
図6は、一実施形態による、その中にパターン化されたマイクロ流体チャネルを有する、フローセル600の上面図を示す。フローセル600は、図2に関連して上述した基板206の一例であり得る。フローセル600は、試料(例えば、組織試料)上に配置されて、フローセル600のマイクロ流体チャネルの下に露出した試料の一部に流体を送ることができる。
【0035】
一実施形態によれば、フローセル600は、2つの流体入口/出口(I/O)ポート602と、I/Oポート602の間の複数の平行なマイクロ流体チャネル604と、を含む。複数の平行なマイクロ流体チャネル604は、フローセル600がポリマー材料である場合、既知のソフトリソグラフィ技術を使用して成形することができる。別の例で、フローセル600がガラスまたはシリコンなどのより剛性の高い材料である場合、複数の平行なマイクロ流体チャネル604はエッチングされる。
【0036】
流体は圧力駆動されて、1つのI/Oポート602の中に入ることができ、その結果、流体は、複数のマイクロ流体チャネル604のそれぞれを通って流れてから、反対側のI/Oポート602から出る。複数のマイクロ流体チャネル604のそれぞれは、長さl及び幅wを有するとして特性評価され得る。一実施形態によれば、複数のマイクロ流体チャネル604のそれぞれの長さlは、実質的に同じであるが、各チャネルの幅wは、チャネルが中心チャネル606から離れるほど広がる。例えば、中央チャネル606は、最小の幅wを有し得て、一方で端のマイクロ流体チャネルのそれぞれは、最大の幅wを有する。マイクロ流体チャネルの幅をこのパターンで変化させることにより、流体は、複数のマイクロ流体チャネル604のそれぞれを通って実質的に同じ流量で流れる。複数のマイクロ流体チャネル604の各チャネルの幅は、同じ流量がチャネルのそれぞれにより得られるように決定され得る。この決定は、流体の粘度と、I/Oポート602に入るときに流体に加えられる圧力の量に依存し得る。
【0037】
流体は、シリンジポンプまたは加圧空気源を使用して、I/Oポート602の間を流れることができる。統合されたポンプ、毛管現象、または電気浸透流を含む、他の形態の流体輸送も可能である。上述のように、イメージングされる試料は、複数のマイクロ流体チャネル604を流れる流体が試料上を直接流れるように、複数のマイクロ流体チャネル604のそれぞれの底面を形成することができる。複数のマイクロ流体チャネル604を通る流体の流れを制御することにより、(非マイクロ流体装置と比較して)より少ない分析物が、試料204を用いた所与の実験で使用される。更に、複数の分離されたチャネルを利用する他のマイクロ流体設計を使用して、同じ試料204の異なる部分に異なる流体を制御可能に導入することができる。
【0038】
図7は、一実施形態による、その中にパターン化されたマイクロ流体チャネルを有する、別のフローセル700の上面図を示す。フローセル700は、図2に関連して上述した基板206の一例であり得る。フローセル700は、試料(例えば、組織試料)上に配置されて、フローセル700のマイクロ流体チャネルの下に露出した試料の一部に流体を送ることができる。
【0039】
一実施形態によれば、流体は、入口ポート702を通ってフローセル700に入り、入口ポート702に接続された入口チャネル704を通って流れる。一実施形態によれば、流体は、入口チャネル704から分岐流体ネットワーク706を通って流れる。図7に示すように、分岐流体ネットワーク706は、各分岐点で2つの分岐流体チャネルを形成し、3つのレベルで分岐して、1つの開始チャネルから8つの終了チャネルに移行する。分岐流体ネットワーク706は、任意の総数の分岐チャネルを含むことができ、任意の数の分岐チャネルを各分岐点で使用することができる。
【0040】
一実施形態によれば、分岐流体ネットワーク706の分岐チャネルは、同じ大きな流体チャネル708に終端する。大きな流体チャネル708は、分岐流体ネットワーク706の実質的に全幅にまたがる幅を有し得る。大きな流体チャネル708は、幅が約15mmと25mmの間であり得て、長さが約20mmと30mmの間であり得る。流体が大きな流体チャネル708を通過すると、流体は、流体出口712に接続された出口チャネル710を通って流れる。一実施形態によれば、分岐流体ネットワーク706は、流体が大きな流体チャネル708の端から端まで均一に流れるように、入口チャネル704を通って流れる流体を大きな流体チャネル708の幅に沿って均一に広げる。
【0041】
いくつかの実施形態で、フローセル600またはフローセル700は、試料204上に配置されて、流体を試料204に送ることができる。フローセル700は、試料204が大きな流体チャネル708の下にあるように配置され得る。いくつかの実施形態で、フローセル600またはフローセル700のいずれかのチャネルを通って流される流体は、蛍光タグ付きプローブ分子を含有する緩衝液を含む。蛍光タグ付きプローブ分子は、試料204上または試料204中に存在する結合パートナーに結合し得る。結合パートナーは、試料204に見られる特定の細胞または細胞型上またはその中に存在し得る。蛍光タグ付きプローブ分子は、細胞の表面またはその内部の分子と相互作用する細胞結合剤を含み得る。蛍光タグ付きプローブ分子は、例えば、蛍光タグ付き抗体、タンパク質、DNA、RNA、細胞、アプタマー、または組織片を含み得る。洗浄緩衝液も、フローセル600またはフローセル700のいずれかのチャネルを通って流されて、チャネル及び試料204の表面から非特異的に結合された分子を除去し得る。
【0042】
図8は、いくつかの実施形態による、組織試料上の流体チャネルを通って複数のタグ付きプローブ分子を流す例を示す。流体装置800は、流体チャネル812がパターン化され得る、チャネル層802を含む。一例で、チャネル層802はガラス層であり、流体チャネル812はガラス層にエッチングされる。別の例で、チャネル層802はポリマー層(例えば、PDMS)であり、流体チャネル812は、ポリマー層で成形またはパターン化される。チャネル層802は、いくつかの実施形態によれば、フローセル600またはフローセル700のいずれかと同様のチャネル設計を有し得る。流体装置800は更に、実験される試料805を含む、試料層804を含み得る。試料層804は、スライドガラスまたは他の任意の透明材料であり得る。試料805は、組織試料(例えば、ヒトまたは動物対象の生検中に得られた組織試料)であり得る。他の例で、試料805は、生物学的要素の順序付けられたアレイを表す。例えば、試料805は、DNA配列、RNA配列、タンパク質、酵素、リガンド、抗体、またはそれらの任意の組み合わせのアレイであり得る。流体装置は更に、励起光をフィルタリングし、タグ付きプローブ分子から蛍光で放出された光816を通過させるように設計されたフィルタ層806を含み得る。
【0043】
流体チャネル812は、試料805上に流体を導入するための流体チャネルの任意の設計を表すことができ、図8のその例示は制限をすることを意図するものではない。例えば、流体チャネル812は、試料805上を通過する1つのチャネル、試料805上を通過する複数の平行なチャネル、または分岐チャネル及び流体弁を含み得る他のより複雑な構成を含むことができる。流体チャネル812がミリメートル未満の寸法を含む場合、流体チャネル812はマイクロ流体チャネルであり得る。
【0044】
一実施形態によれば、複数のタグ付きプローブ分子は、それらがそれぞれ試料805上を通過するように、流体チャネル812を介して連続配置で次々に送達され得る。一連のプローブ溶液808-1~808-nは、一連の溶液プラグが互いに隣接するように、入口チャネル810を介して順次導入され得る。溶液プラグは、チャネル内に閉じ込められた特定の溶液の画定した量であり得る。別の例で、各プローブ溶液808-1~808-nは、エアポケットまたは緩衝液を使用して、隣接するプローブ溶液から実質的に分離され得る。いずれの場合も、プローブ溶液808-1~808-nは、入口チャネル810または流体チャネル812で互いに分離されている。プローブ溶液808-1~808-nが一連の溶液プラグとして順次導入される場合、隣接するプローブ溶液は、液体界面によって実質的に分離され得る。一実施形態によれば、液体界面を横断する隣接する溶液の間で拡散が起こり得るが、溶液が少なくとも入口チャネル810及び流体チャネル812を通って流れるとき、溶液間でそれ以上の混合は起こらない。溶液間の液体界面の形成及び実質的な混合の欠如は、マイクロ流体チャネルを通る溶液の層流を提供する、マイクロ流体チャネルの形状が小さいために発生する可能性がある。
【0045】
プローブ溶液808-1~808-nはそれぞれ、同一のプローブ分子の集団を含み得る。同一のプローブ分子の集団は、異なるプローブ溶液808-1~808-nの間で異なる場合がある。
【0046】
図8に示す例で、プローブ溶液808-1は、様々な要因に基づいて、一定期間、試料805上に最初に導入される。これらの要因には、流体チャネル812の寸法、溶液の流量、及びプローブ溶液808-1の充填量が含まれ得る。当業者であれば、これらの要因のうちの1つまたは複数を調整して、プローブ溶液が試料上に存在する期間に影響を与える方法を理解するであろう。プローブ溶液808-1が試料805上を流れ終えた後、それは出口チャネル814から流れ出て、その直後にまたは設定された期間の後に、プローブ溶液808-2などが続き、プローブ溶液808-1~808-nのそれぞれが試料805上に導入されるまで、それが続く。
【0047】
タグ付きプローブ分子からの蛍光816は、分子が試料805上を流れるときに収集される。図9のA及びBは、結合が起こらないシナリオ(A)及び結合が起こるシナリオ(B)について、経時的に収集した蛍光シグナルの例を示す。明確にするために、図9のA及びBは、測定した光シグナルにある程度存在するであろう、収集した励起光を含まない。更に、相対的なピークサイズ及び幅は、例示の目的でのみ示され、限定すると見なされるべきではない。
【0048】
結合が生じない場合、プローブ溶液は試料805上を流れ、蛍光タグは光学収集領域上に短時間しか存在しない(試料805のどの部分にも結合しないため)。したがって、得られる蛍光シグナルは、フルオロフォアのピーク発光波長を中心とする1つの鋭いピークのように見える。しかし、プローブ溶液内のプローブ分子が試料805のいずれかの部分へのある程度の結合を示す場合、蛍光タグは、より長い期間、光学収集領域上に留まるだろう。これは、図9Bに示されるように、時間の経過と共に更に引き出された蛍光シグナルとして現れる。収集された蛍光シグナルのゆっくりとした減衰は、チャネル内の流体が流れ続けるにつれて、蛍光タグ付きプローブ分子が結合位置からゆっくりと洗い流されるために発生する。蛍光シグナルの減衰率は、溶液の流速または充填されたプローブ溶液の量によって影響を受ける可能性がある。
【0049】
いくつかの実施形態で、プローブ分子から収集した蛍光シグナルの特性を分析して、結合が起こるかどうかを決定することができ、これを使用して、特定の細胞型または生物学的実体が試料805に存在するかどうかを決定することができる。いくつかの実施形態で、プローブ分子から収集した蛍光シグナルの特性を分析して、試料805に存在する標的分子(例えば、プローブ分子と結合する分子)の濃度または総数を決定することができる。いくつかの実施形態で、異なるプローブ分子上の異なるフルオロフォアに対応して、複数の発光ピークが同時に存在し得る。
【0050】
図10は、一実施形態による、試料の蛍光画像を取得するための方法1000のフローチャートを示す。方法1000の様々な工程は、本明細書に記載の光学イメージングシステム100の実施形態を使用して実行することができる。ここに示されている工程の間に他の工程が発生する可能性があるが、明確さと簡潔さのために省略されていることを理解すべきである。そのような工程は、当業者であれば十分に理解するであろう、従来の試料調製技術を含むだろう。
【0051】
方法1000は、組織試料が試料保持領域上に配置される、工程1002から始まる。試料保持領域の少なくとも一部は、所与のサイトメトリー処理中に使用される実質的にすべての波長の光に対して透明であり得る。いくつかの実施形態で、組織試料は、保持領域に配置される前に、最初にスライドガラス(または、同様の透明な基板)上に配置される。スライドガラスは、試料保持領域のくぼみに収まることができる。
【0052】
方法1000は、マイクロ流体チャネル(複数可)を備えた基板が試料上に配置される、工程1004に続く。基板は、マイクロ流体チャネル(複数可)がガラス基板内でエッチングされる、ガラス基板であり得る。別の実施形態で、基板は、マイクロ流体チャネル(複数可)を形成するように成形されたPDMSなどのポリマー材料である。他の構成要素も、基板上に追加され得る。例えば、透明なプリズムブロックを基板上に配置して、励起光をプリズムブロックの方に向けることができる。プリズムブロックは、下流のレンズ装置によって受ける励起光の量を減らすために含まれ得る。
【0053】
方法1000は、流体が基板内のマイクロ流体チャネル(複数可)を通って流れる、工程1006に続く。複数のマイクロ流体チャネルを含む基板の場合、流体は、複数の平行なマイクロ流体チャネルのそれぞれを通って実質的に同じ流量で流れることができる。流量は、マイクロ流体チャネル(複数可)の形状に基づいて決定することができる。流体の流れは、シリンジポンプまたは加圧空気によって供給される適用圧力を介して制御できる。
【0054】
方法1000は、工程1008に続き、一実施形態によれば、試料に存在するタグ付きプローブ分子からの蛍光を発する光(例えば、試料に結合する、または試料を通過する)が、試料保持領域の下に配置されたレンズ装置で受けられる。レンズ装置は、非常に小さい開口数(例えば、0.1未満の開口数)を有するものとして特性評価され得る。他の実施形態で、レンズ装置の開口数は、0.05未満、0.01未満、または0.001未満である。一例で、レンズ装置は、テレセントリックレンズを含む。いくつかの実施形態で、励起光は、レンズ装置を通して試料保持領域に向けられ、一方で、試料からの蛍光を発する光は、レンズ装置を通して収集される。レンズ装置は、ハウジング内に配置することができる。
【0055】
方法1000は、レンズ装置で受けた光がセンサーアレイを使用して検出される、工程1010に続く。センサーアレイは、検出器のCMOSアレイを含み得る。一実施形態で、レンズ装置によって提供される視野は、レンズ装置によって倍率が課されない場合、センサーアレイの総設置面積にほぼ等しい。したがって、そのような実施形態でのセンサーアレイの物理的サイズは、取得された画像の視野にほぼ等しい。例えば、対角線距離が7.33mmであるセンサーアレイは、対角線に沿って、同様の約7.33mmの視野による画像を提供する。いくつかの実施形態で、レンズ装置で受けた光は、センサーアレイによって受け取られる前にフィルタリングされる。フィルタリングは、バンドパスフィルタ、ロングパスフィルタ、もしくは偏光フィルタのうちの1つまたは複数によって実行され得る。いくつかの実施形態で、光のフィルタリングは、光がレンズ装置によって受けられる前に実行される。
【0056】
いくつかの実施形態では、センサーアレイによって受けられた光を使用して、試料の画像を形成することができる。この画像は、タグ付きプローブ分子(例えば、蛍光タグ付きプローブ分子)を使用して染色された試料の領域の詳細を提供し得る。画像は更に、試料と蛍光タグ付きプローブ分子との間で結合が起こった試料の領域の詳細を提供し得る。画像中の蛍光領域の強度は、発生した結合の程度を示すために使用することができる。例えば、試料の明るい領域を表示する画像は、蛍光タグ付きプローブ分子とそれらの明るい領域の試料との間の高レベルの結合を示し得る。
【0057】
いくつかの実施形態で、センサーアレイで受ける光は、試料で蛍光タグ付きプローブ分子から生成された任意の蛍光を含む。受けた蛍光のこの強度を使用して、試料に存在する蛍光タグ付きプローブ分子の濃度を計算することができる。そのような実験は、例えば、特定の細胞型、または細胞の外側表面上の特定のタンパク質、または試料中に存在する任意の他の生体分子の相対濃度を決定するために実施され得る。いくつかの実施形態で、光は試料全体から受けられ、その結果、試料領域全体の1つの画像を生成することができる。
【0058】
図11は、一実施形態による、高スループットで複数のタグ付きプローブ分子を分析するための方法1100のフローチャートを示す。方法1100の様々な工程は、本明細書に記載の光学イメージングシステム100及び/または流体装置800の実施形態を使用して実行することができる。ここに示されている工程の間に他の工程が発生する可能性があるが、明確さと簡潔さのために省略されていることを理解すべきである。そのような工程は、当業者であれば十分に理解するであろう、従来の試料調製技術を含むだろう。
【0059】
方法1100は、組織試料が試料保持領域上に配置される工程1102で始まり、マイクロ流体チャネルを有する基板が試料上に配置される工程1104に続く。これらの工程は、方法1000に関連してすでに説明した工程1002及び1004に類似しているため、それらの説明はここでは繰り返さない。
【0060】
方法1100は、タグ付きプローブ分子を含有する一連の溶液が、マイクロ流体チャネル(複数可)に接続したチャネルに充填される工程1106に続く。プローブ溶液は、最終的にマイクロ流体チャネル(複数可)につながるシリンジまたはプラスチックチューブの中に順次充填することができる。プローブ溶液は、チャネルを通って一緒に流される際、各プローブ溶液がチャネル内の隣接するプローブ溶液と接触するように(例えば、液体界面を形成するように)充填され得る。別の実施形態で、プローブ溶液は、チャネル内の各プローブ溶液の間に空間が存在するように充填され得る。空間は、空気、または緩衝液などの別の溶液で満たされていてもよい。
【0061】
方法1100は、蛍光タグ付きプローブ分子が組織試料上を流れる、工程1108に続く。流れは圧力駆動され得て、プローブ分子は組織試料上を連続的に流れ得る。流量を調整して、各プローブ溶液が組織試料上に存在する時間を変えることができる。所与のプローブ溶液が試料上に留まる時間は、ほぼ秒(例えば、10秒と30秒の間)であり得る。複数の結合活性のハイスループット検出は、組織試料全体に任意の数の蛍光タグ付きプローブ分子を順次流すことによって達成できる。
【0062】
方法1100は、試料に存在するタグ付きプローブ分子からの蛍光を発する光が、試料保持領域の下に配置されたレンズ装置で受けられる、工程1110に続く。次に、方法1100は、レンズ装置で受けた光がセンサーアレイを使用して検出される、工程1112に続く。これらの工程は、方法1000に関連してすでに説明した工程1008及び1010に類似しているため、それらの説明はここでは繰り返さない。
【0063】
最後に
発明の概要及び要約の項分ではなく、発明を実施するための形態の項が請求項を解釈するために使用されることを意図していることを理解されたい。発明の概要及び要約の項は、本発明者(複数可)によって意図されるものとして、本発明の1つ以上ではあるがすべてではない例示の実施形態を示し得て、したがって本発明及び添付の特許請求の範囲をいかなる場合であっても限定するものではない。
【0064】
本発明の実施形態は、その特定の機能及び関係の実現を示す機能ビルディングブロックを用いて、上述された。これらの機能ビルディングブロックの境界は、記述上の便宜のためにここで任意に定義されたものである。その特定の機能及び関係が適切に遂行される限り、別の境界が定義され得る。
【0065】
特定の実施形態についての上述の説明は、当業者の範囲内の知識を適用することにより、他者が、様々な応用のために、このような特定の実施形態を、過度な実験をすることなく、本発明の概括的な概念から逸脱することなく、容易に変更及び/または改造し得るという本発明の概括的な特徴を十分に公表することになる。したがって、そのような改造及び変更は、本明細書に提示されている教示及び指導に基づき、開示された実施形態の等価物の意味と範囲の中にあることが意図される。本明細書の語法または用語法は、教示及び指導に鑑み、当業者により理解されるべきものであるように、ここでの語法または用語法は、説明目的であり、制限する目的ではないことを理解されたい。
【0066】
本発明の効果及び範囲は、上述の例示的な実施形態のいずれによっても制限されるべきではなく、以下の特許請求の範囲やそれらの等価物によってのみ定義されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
【外国語明細書】