(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023776
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】複数の酵素を用いた分析物センサ及びそれに関連する方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1473 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
A61B5/1473
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215647
(22)【出願日】2023-12-21
(62)【分割の表示】P 2021543441の分割
【原出願日】2020-01-28
(31)【優先権主張番号】62/797,566
(32)【優先日】2019-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500211047
【氏名又は名称】アボット ダイアベティス ケア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT DIABETES CARE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】オージャ、スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】オーヤン、ティエンメイ
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】トラン、ラム エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】フェルドマン、ベンジャミン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】スローン、マーク ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】クマール、アシュウィン
(72)【発明者】
【氏名】キアイエ、ナムバー
(72)【発明者】
【氏名】ラブ、マイケル アール.
(57)【要約】
【課題】複数の分析物の分析用に構成された分析物センサを提供する。
【解決手段】分析物センサは、組織に挿入するように構成されたセンサテールであって、少なくとも作用電極を含むセンサテール;及びセンサテール上に配置された第1及び第2の活性領域であって、少なくとも1つの分析物の濃度を測定するための少なくとも2つの異なる酵素を含む第1及び第2の活性領域を含み;第1の活性領域は、互いに異なる第1の膜ポリマー及び第2の膜ポリマーで覆われている。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物センサであって、
組織に挿入するように構成されたセンサテールであって、少なくとも作用電極を含むセンサテール;及び
センサテール上に配置された第1及び第2の活性領域であって、少なくとも1つの分析物の濃度を測定するための少なくとも2つの異なる酵素を含む第1及び第2の活性領域を含み;
第1の活性領域は、互いに異なる第1の膜ポリマー及び第2の膜ポリマーで覆われている、分析物センサ。
【請求項2】
第1の活性領域は、第1の膜ポリマー及び第2の膜ポリマーの混合物で覆われ、第1の膜ポリマー及び第2の膜ポリマーのうちの一方は、均質な膜として第2の活性領域を覆っている、請求項1に記載の分析物センサ。
【請求項3】
第1の活性領域は、第2の膜ポリマー上に配置された第1の膜ポリマーを含む二層膜で覆われ、第2の膜ポリマーは、均質な膜として第2の活性領域を覆っている、請求項1に記載の分析物センサ。
【請求項4】
第1の活性領域は、少なくとも2つの異なる酵素のうちの第1の酵素を含み、第2の活性領域は、少なくとも2つの異なる酵素のうちの第2の酵素を含む、請求項1に記載の分析物センサ。
【請求項5】
第1の酵素は前記少なくとも1つの分析物と非反応性であり、第1及び第2の酵素は協調して相互作用して、前記少なくとも1つの分析物の濃度に比例するシグナルを生成することができる、請求項4に記載の分析物センサ。
【請求項6】
第2の酵素は、前記少なくとも1つの分析物を第1の酵素と反応する生成物に変換することができ、その結果、第1の酵素は、前記生成物を反応させて作用電極でシグナルを生成することができる、請求項5に記載の分析物センサ。
【請求項7】
第1の酵素はキサンチンオキシダーゼであり、第2の酵素はグルコースオキシダーゼであり、第1の活性領域及び第2の活性領域のうちの少なくとも一方はカタラーゼをさらに含む、請求項5に記載の分析物センサ。
【請求項8】
カタラーゼが第1の活性領域に存在する、請求項7に記載の分析物センサ。
【請求項9】
第1の活性領域は、作用電極上に直接配置され、さらに電子移動剤を含む、請求項5に記載の分析物センサ。
【請求項10】
第1の膜ポリマーは第1の活性領域上に直接配置され、第2の活性領域は第1の膜ポリマー上に直接配置され、第2の膜ポリマーは第2の活性領域上に直接配置されている、請求項5に記載の分析物センサ。
【請求項11】
センサテールは、第1の作用電極及び第2の作用電極を含み、第1の活性領域は、第1の作用電極の表面に配置され、第2の活性領域は、第2の作用電極の表面に配置され、第1の酵素は、第1の分析物と反応して第1の分析物の濃度に比例するシグナルを生成するものであり、第2の酵素は第2の分析物と反応して第2の分析物の濃度に比例するシグナルを生成するものである、請求項4に記載の分析物センサ。
【請求項12】
第1及び第2の活性領域のそれぞれは酸化還元電位を有し、第1の活性領域の酸化還元電位は、第2の活性領域の酸化還元電位から十分に離れており、第2の活性領域からのシグナルの生成とは独立して第1の活性領域からのシグナルの生成を可能にする、請求項4に記載の分析物センサ。
【請求項13】
第1の活性領域の酸化還元電位は、第2の活性領域の酸化還元電位から少なくとも約100mV離れている、請求項12に記載の分析物センサ。
【請求項14】
第1の活性領域からのシグナルは第1の分析物濃度に対応し、第2の活性領域からのシグナルは第2の分析物濃度に対応する、請求項12に記載の分析物センサ。
【請求項15】
第1の活性領域は、第1の電子移動剤を含み、第2の活性領域は、第1の電子移動剤とは異なる第2の電子移動剤を含む、請求項12に記載の分析物センサ。
【請求項16】
分析物センサであって、
組織に挿入するように構成され、少なくとも作用電極を含むセンサテール;及び
センサテール上に配置された少なくとも2つの活性領域であって、各活性領域は、酵素、電子移動剤、及びポリマーを含む少なくとも2つの活性領域を含み、
各活性領域の酵素は異なっており、かつ異なる分析物に対して応答性であり;
各活性領域は酸化還元電位を有し、第1の活性領域の酸化還元電位は、第2の活性領域の酸化還元電位から十分に離れており、第2の活性領域からのシグナルの生成とは独立して第1の活性領域からのシグナルの生成を可能にする、分析物センサ。
【請求項17】
第1の活性領域の酸化還元電位は、第2の活性領域の酸化還元電位から少なくとも約100mV離れている、請求項16に記載の分析物センサ。
【請求項18】
第1の活性領域は、第1の電子移動剤を含み、第2の活性領域は、第1の電子移動剤とは異なる第2の電子移動剤を含む、請求項16に記載の分析物センサ。
【請求項19】
第1及び第2の活性領域は、物質移動制限膜で覆われ、第1の活性領域は、単一の膜ポリマーで覆われ、第2の活性領域は、2つ以上の異なる膜ポリマーで覆われている、請求項16に記載の分析物センサ。
【請求項20】
分析物センサ及び車両の電気システムと通信する制御モジュールであって、分析物センサによって提供されるデータを受信及び処理するようにプログラムされたコンピュータシステムを含む制御モジュールをさらに含み、
操作者のリアルタイム測定された分析物レベルが所定の安全閾値を超えると、車両の操作がコンピュータシステムによって制御又は無効化される、請求項16に記載の分析物センサ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
個体内の様々な分析物の検出は、健康やウェルビーイングの状態をモニタリングするために時として不可欠な場合がある。通常の分析物レベルからの逸脱は、代謝状態や病気などの根本的な生理学的状態、又は特定の環境条件への曝露を示していることがよくある。
【0002】
分析物を検知するための適切な化学を特定することができれば、任意の分析物が生理学的分析に適し得る。この目的のために、生体内でグルコースをアッセイするために構成されたアンペロメトリックセンサが、近年開発され、改良されてきた。一般的に生理学的調節不全の影響を受ける他の分析物であって、同様に生体外又は生体内のモニタリングに望ましい分析物には、限定するものではないが、乳酸、酸素、pH、A1c、ケトン、薬物レベルなどが含まれる。
【0003】
個体の分析物モニタリングは、定期的に又は一定期間にわたって継続的に行われる場合がある。定期的な分析物モニタリングは、設定された時間間隔で血液などの体液のサンプルを採取し、生体外で分析することによって行われ得る。継続的な分析物モニタリングは、分析が生体内で実施され得るように、皮膚内、皮下又は静脈内などの、個体の組織内に少なくとも部分的に埋め込まれたままである1つ以上のセンサを使用して行われ得る。埋め込まれたセンサは、個体の特定の健康上のニーズ及び/又は以前に測定された分析物レベルに応じて、任意の指示された速度で分析物データを収集することができる。
【0004】
定期的な生体外分析物モニタリングは、多くの個体の生理学的状態を決定するのに十分であり得る。しかし、生体外分析物モニタリングは、一部の人にとっては不便又は苦痛を伴う場合がある。さらに、分析物の測定値が適切なタイミングで取得されない場合、失われたデータを回復する方法はない。
【0005】
生体内に埋め込まれたセンサを用いた継続的な分析物モニタリングは、重度の分析物調節不全及び/又は急速に変動する分析物レベルを有する個体にとってより望ましいアプローチであるかもしれないが、他の個体にとっても有益である可能性がある。埋め込まれたセンサによる継続的な分析物モニタリングは有利な場合があるが、これらのタイプの測定に関連する課題がある。静脈内分析物センサには、血液から直接分析物濃度を提供するという利点があるが、侵襲的であり、特に長期間にわたって個体が装用するのに痛みを伴う場合がある。皮下、間質、又は皮膚の分析物センサは、多くの場合、個体が装用する際の痛みが少なく、多くの場合、十分な測定精度を提供できる。
【0006】
生体内分析物センサは、通常、特定の分析を提供するために単一の分析物を分析するように構成され、分析特異性を提供するために酵素を使用することが多い。しかし、分析物の様々な組み合わせの間の生理学的相互作用により、特定の場合では、複数の分析対象物の分析が望ましい場合もある。現在、複数の分析物の生体内分析は、各分析物の分析用に構成された対応する数の分析物センサを使用することを必要とし得る。このアプローチは、個体が複数の分析物センサを装用する必要があるため、不便な場合がある。さらに、複数の分析物センサは、個人又は保険会社にとって許容できないコスト負担となる可能性がある。また、このような検知プロトコル中に、独立した分析物センサの1つが故障する可能性も高くなる。
【0007】
生体内分析物センサはまた、分析物センサの少なくとも埋め込まれた部分の上に配置された膜を含み得る。一態様では、膜は、分析物センサの生体適合性を改善し得る。別の態様では、膜は、目的の分析物に対して透過性又は半透過性であってもよく、全体的な分析物フラックスを分析物センサの活性領域に制限する。すなわち、膜は、物質移動制限膜として機能し得る。物質移動制限膜を使用して分析物のアクセスをセンサの活性領域に制限すると、センサの過負荷(飽和)を回避し、それによって検出性能及び精度を向上させることができる。このような膜は、特定の分析物の物質移動を制限することに非常に特化しており、他の物質については著しく異なる速度で膜を透過させ得る。様々な潜在的な分析物の異なる膜透過性は、複数の分析物の分析用に構成された分析物センサを開発するための大きな障壁になっている。つまり、膜透過性の値が異なると、複数の分析物に対する感度が大幅に異なる可能性があり、それによって分析が複雑になる。複数の分析物に対する異なる感度は、異なるサイズの活性領域を使用することによって部分的に相殺される場合がある(例えば、感度/透過性の高い分析物の場合は活性領域が小さく、感度/透過性の低い分析物の場合は活性領域が大きい)。しかし、このアプローチには製造上の重大な課題があり、すべての場合に適用できるとは限らない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
添付の図面は、本開示の特定の態様を説明するために含まれており、排他的な実施形態として見なされるべきではない。開示された主題は、本開示の範囲から逸脱することなく、形態及び機能においてかなりの修正、変更、組み合わせ、及び同等物が可能である。
【
図1】本開示の分析物センサを組み込むことができる例示的な検知システムの図を示す。
【
図2A】本明細書に開示のいくつかの実施形態での使用に適合する、単一の作用電極を有する例示的な2電極分析物センサ構成の図を示す。
【
図2B】本明細書に開示のいくつかの実施形態での使用に適合する、単一の作用電極を有する例示的な3電極分析物センサ構成の図を示す。
【
図3】本明細書に開示のいくつかの実施形態での使用に適合する、2つの作用電極、参照電極及びカウンター電極を有する例示的な分析物センサ構成の図を示す。
【
図4】2つの異なる活性領域が単一の作用電極の表面に配置されている、本明細書に開示のいくつかの実施形態での使用に適合する例示的な分析物センサ構成を示す。
【
図5A】本開示の様々な実施形態による、作用電極上に直接配置されたアルコールオキシダーゼ及びキサンチンオキシダーゼを使用するエタノール検出に関連する協調酵素反応サイクルを示す。
【
図5B】本開示の様々な実施形態による、作用電極上に直接配置されたβ-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、及びジアホラーゼを使用するケトン検出に関連する協調酵素反応サイクルを示す。
【
図5C】本開示の様々な実施形態による、作用電極上に直接配置されたβ-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、NADHオキシダーゼ、及びスーパーオキシドジスムターゼを使用するケトン検出に関連する協調酵素反応サイクルを示す。
【
図5D】本開示の様々な実施形態による、作用電極上に直接配置された、β-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、及びポリ-1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンを使用するケトン検出に関連する協調酵素反応サイクルを示す。
【
図5E】本開示の様々な実施形態による、グルコースオキシダーゼ、カタラーゼ、及びキサンチンオキシダーゼを使用するエタノール検出に関連する協調酵素反応サイクルを示し、グルコースオキシダーゼは作用電極から離れており、キサンチンオキシダーゼは作用電極上に直接位置している。
【
図6A】本明細書に開示のいくつかの実施形態での使用に適合する、第1の活性領域が作用電極の表面に直接配置され、第2の活性領域が膜によって作用電極から分離された、例示的な作用電極の図を示す。
【
図6C】第1の活性領域及び第2の活性領域が作用電極上で互いに横方向に間隔を置いて配置され、活性領域のうちの一方が膜によって作用電極から分離されている、例示的な作用電極の図を示す。
【
図7】本明細書に開示のいくつかの実施形態での使用に適合する分析物センサの一部であって、2つの作用電極を有し、2つの作用電極のうちの1つを覆う二層膜を特徴とする分析物センサの一部の例示的な概略図を示す。
【
図8】電子移動メディエータとして2つの異なるオスミウム錯体を含む作用電極を使用して、分析物を含まない緩衝液で得られた例示的なサイクリックボルタモグラムを示す。
【
図9】
図8の電極をE1電位とE2電位の間で循環させたときの5mMグルコース/5mM乳酸緩衝液における電極応答の4つの複製を示す。
【
図10】様々なエタノール濃度への曝露時の、活性領域にアルコールオキシダーゼ及びキサンチンオキシダーゼを一緒に含む電極の応答の3つの複製を示す。
【
図11A】
図10の電極の平均電流応答対エタノール濃度の例示的なプロットを示す。
【
図11B】単一電極の電流応答対エタノール濃度の例示的なプロットを示す。
【
図12A】別々の活性領域に層状にされ、膜によって隔てられたグルコースオキシダーゼ及びキサンチンオキシダーゼを含む電極の、様々なエタノール濃度への曝露時の応答の2つの複製を示し、カタラーゼはグルコースオキシダーゼを含む活性領域に存在する。
【
図12B】別々の活性領域に層状にされ、膜によって隔てられたグルコースオキシダーゼ及びキサンチンオキシダーゼを含む電極間の、様々なエタノール濃度への曝露時の比較応答データを示し、カタラーゼは活性領域に別々に存在する。
【
図13】
図12の電極の平均電流応答対エタノール濃度の例示的なプロットを示す。
【
図14】5mM乳酸塩溶液に対するポリマー1A及び1Bで覆われた電極の応答の例示的なプロットを示す。
【
図15】5mMの乳酸塩溶液に対するポリマー2で覆われた電極の応答の例示的なプロットを示す。
【
図16】5mM乳酸塩溶液に対するポリマー3で覆われた電極の応答の例示的なプロットを示す。
【
図17】様々な乳酸濃度を有する乳酸塩溶液に対するポリマー3で覆われた電極の応答の例示的なプロットを示す。
【
図18】5mM乳酸塩溶液に対するポリマー4で覆われた電極の応答の例示的なプロットを示す。
【
図19】様々な乳酸濃度を有する乳酸塩溶液に対するポリマー4で覆われた電極の応答の例示的なプロットを示す。
【
図20】5mM乳酸塩溶液に対する、架橋PVP(ポリマー2)の下層及び架橋ポリマー1Bの上層を含む二層膜で覆われた電極の応答の例示的なプロットを示す。
【
図21】5mM乳酸塩溶液に対する、架橋PVP(ポリマー2)の下層及び架橋ポリマー1Aの上層を含む二層膜で覆われた電極の応答の例示的なプロットを示し、電極は配合物1及び配合物3で様々な回数ディップコーティングされたものである。
【
図22】5mMの乳酸塩溶液に対する、架橋PVP(ポリマー2)及び架橋ポリマー1Bを含む混合膜で覆われた電極の応答の例示的なプロットを示す。
【
図23】様々な乳酸濃度に対する、架橋PVP(ポリマー2)及び架橋ポリマー1Bを含む混合膜で覆われた電極の応答の例示的なプロットを示す。
【
図24】様々な比率の架橋PVP(ポリマー2)及び架橋ポリマー1Bを含む混合膜で覆われた電極の応答の例示的なプロットを示す。
【
図25】30mMグルコース/5mM乳酸塩溶液に対する2つの作用電極を含むセンサの応答の例示的なプロットを示し、乳酸応答性作用電極は二層膜で覆われており、グルコース応答性作用電極は均質な膜で覆われている。
【
図26】様々な濃度のグルコース及び乳酸塩を含む溶液に対する2つの作用電極を含むセンサの応答の例示的なプロットを示し、乳酸応答性作用電極は二層膜で覆われており、グルコース応答性作用電極は均質な膜で覆われている。
【
図27】様々なβ-ヒドロキシ酪酸濃度に曝露されたときの、ジアホラーゼ、NAD
+、及びβ-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼを含む電極の応答の4つの複製を示している。
【
図28】
図27の電極の平均電流応答対β-ヒドロキシ酪酸濃度の例示的なプロットを示す。
【
図29】100mM PBS中の8mMのβ-ヒドロキシ酪酸に33℃で2週間曝露したときの
図27の電極の電流応答の例示的なプロットを示す。
【
図30】実施例6の群1~4のセンサ性能の例示的なプロットを示す。
【
図31】様々な乳酸濃度を有する乳酸塩溶液に対する実施例6からの群1分析物センサの応答の例示的なプロットを示す。
【
図32】本開示の1つ以上の実施形態による、例示的な分析物モニタリング及び車両制御システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
本開示は、概して、検出のために複数の酵素を使用する分析物センサ及び方法、より具体的には、複数の酵素が独立して又は協調して機能して1つ以上の分析物を検出し得る分析物センサ及び方法を説明する。
【0010】
上述したように、分析物センサは通常、単一の分析物を検出するために使用される。複数の分析物の検出が望まれる場合、対応する数の分析物センサが使用され得る。このアプローチは、とりわけ、コストの懸念、個人が複数の分析物センサを装用する必要性、及び個々のセンサの故障の可能性が増すために、望ましくない場合がある。
【0011】
一部の分析物センサは、目的の分析物を検出するための基礎として酵素反応を利用する。酵素はしばしば特定の基質又は関連するクラスの基質に対して反応特異性を示すので、それらは目的の単一の分析物を分析するように構成された検出化学を有する分析物センサを提供し得る。したがって、単一の分析物を分析するための分析物センサは、通常、対応する単一の酵素のみを組み込んで、検出を容易にするための適切な酵素反応を促進する。現在、複数の分析物の検出機能を提供するために、1つの分析物センサに複数の酵素を組み込むことはかなり難しい場合がある。その理由には、分析物の感度の違いと、所与の分析条件のセットに対する1つ以上の酵素の潜在的な非互換性が挙げられる。
【0012】
単一の酵素を特徴とする分析物センサとは対照的に、本開示は、複数の酵素がセンサの(1つ以上の)活性領域に存在する分析物センサを説明する。本明細書に記載の様々な方法で分析物センサに複数の酵素を組み込むことにより、多くの利点を実現することができる。本開示のいくつかのセンサ構成において、複数の酵素は、グルコースや乳酸塩などの複数の分析物の独立した検出を容易にし得る。複数の分析物に合わせた透過性を提供するように構成された膜も本明細書に記載されており、各分析物に対するセンサの感度を平準化することにより、単一の分析物センサによる分析物検出を容易にし得る。本開示の他のセンサ構成において、複数の酵素が協調して機能するように選択されて、単一の酵素を使用してアッセイすることが問題又は不可能であり得た目的とする単一の分析物の検出を容易にし得る。いずれにせよ、所与の分析物又は分析物のセットを検出するために必要な電極を少なくすることができる。さらに、本開示は、サイズが小さく、測定電子機器の複雑さが軽減されたセンサを提供することができる。したがって、様々な構成で複数の酵素を使用する分析物センサは、本明細書の開示による1つ以上の分析物の効率的な検出を容易にし得る。
【0013】
複数の酵素を含む分析物センサは、酵素が独立して動作するか協調して動作するかにかかわらず、適切な安定剤の存在下、より高い安定性で機能し得る。使用できる安定剤には、例えば、カタラーゼ又はアルブミン(例えば、ウシ血清アルブミン又はヒト血清アルブミン)が含まれる。カタラーゼは、生物学的環境から過酸化物などの反応性種を除去する能力で知られている。一方、アルブミンは、反応性種を除去する機能を示すとは考えられておらず、結果として、本開示の分析物センサの応答を安定化するそれらの能力は驚くべきものである。
【0014】
本開示の分析物センサをより詳細に説明する前に、本開示の実施形態をよりよく理解できるように、適切な生体内分析物センサ構成及びその分析物センサを使用するセンサシステムの簡単な概要を最初に提供する。本開示の様々な実施形態によれば、以下に記載されるセンサシステム及び分析物センサ構成のいずれも、複数の酵素を特徴とし得ることが理解されるべきである。
【0015】
図1は、本開示の分析物センサを組み込むことができる例示的な検知システムの図を示す。示されるように、検知システム100は、有線又は無線、単方向又は双方向、及び暗号化又は非暗号化されているローカル通信パス又はリンクを介して互いに通信するように構成されたセンサ制御デバイス102及びリーダデバイス120を含む。リーダデバイス120は、いくつかの実施形態によれば、分析物濃度、及び、センサ104又はそれに関連するプロセッサによって決定される警告又は通知を表示するための出力媒体を構成することができ、ならびに1つ以上のユーザ入力を可能にし得る。リーダデバイス120は、多目的スマートフォン又は専用の電子リーダ機器であり得る。1つのリーダデバイス120のみが示されているが、特定の場合には、複数のリーダデバイス120が存在し得る。リーダデバイス120はまた、こちらも有線又は無線、単方向又は双方向、及び暗号化又は非暗号化されている通信パス/リンク141及び/又は142を介して、リモート端末170及び/又は信頼できるコンピュータシステム180とそれぞれ通信し得る。それに加えて又はそれに代えて、リーダデバイス120は、通信パス/リンク151を介してネットワーク150(例えば、携帯電話ネットワーク、インターネット、又はクラウドサーバ)と通信し得る。ネットワーク150は、通信パス/リンク152を介してリモート端末170に、及び/又は通信パス/リンク153を介して信頼できるコンピュータシステム180にさらに通信可能に接続され得る。あるいは、センサ104は、介在するリーダデバイス120を存在させずに、リモート端末170及び/又は信頼できるコンピュータシステム180と直接通信することができる。例えば、センサ104は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2011/0213225号明細書に記載されているように、いくつかの実施形態によれば、ネットワーク150への直接通信リンクを介してリモート端末170及び/又は信頼できるコンピュータシステム180と通信することができる。近距離通信(NFC)、無線周波数識別(RFID)、BLUETOOTH(登録商標)又はBLUETOOTH(登録商標)低エネルギープロトコル、WiFi(登録商標)などの任意の適切な電子通信プロトコルを、通信パス又はリンクのそれぞれに使用することができる。リモート端末170及び/又は信頼できるコンピュータシステム180は、いくつかの実施形態によれば、一次ユーザ以外の、ユーザの分析物レベルに関心のある個人によってアクセス可能である。リーダデバイス120は、ディスプレイ122及びオプションの入力コンポーネント121を含み得る。ディスプレイ122は、いくつかの実施形態によれば、タッチスクリーンインターフェースを含み得る。
【0016】
センサ制御デバイス102は、センサ104を操作するための回路及び電源を収容することができるセンサハウジング103を含む。任意選択で、電源及び/又はアクティブ回路を省略してもよい。プロセッサ(図示略)を、センサ104に通信可能に接続してもよく、プロセッサは、物理的にセンサハウジング103又はリーダデバイス120内に配置される。センサ104は、センサハウジング103の下側から突出し、接着層105を通って延在する。接着層105は、いくつかの実施形態によれば、センサハウジング103を皮膚などの組織表面に接着するように適合されている。
【0017】
センサ104は、皮膚の真皮層内又は皮下層内など、対象の組織に少なくとも部分的に挿入されるように適合されている。センサ104は、所与の組織の所望の深さまで挿入するのに十分な長さのセンサテールを含み得る。センサテールは、少なくとも1つの作用電極と、少なくとも1つの作用電極上に配置され、目的とする1つ以上の分析物を検知するために活性である1つ以上の活性領域(検知領域/スポット又は検知層)とを含み得る。総じて、本開示の1つ以上の実施形態によれば、1つ以上の活性領域は複数の酵素を含み得る。いくつかの実施形態によれば、活性領域は、少なくとも一部の酵素が共有結合しているポリマー材料を含み得る。本開示の様々な実施形態において、分析物は、真皮液、間質液、血漿、血液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、気管支肺胞洗浄液、羊水などの対象の任意の生物学的流体中でモニタリングされ得る。特定の実施形態では、本開示の分析物センサは、真皮液又は間質液をアッセイするために適合させることができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、センサ104は、データをリーダデバイス120に自動的に転送することができる。例えば、分析物濃度データは、データが取得されると、(例えば、毎分、5分ごとに、又は他の所定の期間で)送信されるまでメモリに格納され、特定の頻度で、又は特定の期間が経過した後など、自動的かつ定期的に通信され得る。他の実施形態では、センサ104は、設定されたスケジュールに従ってではなく、非自動的な方法でリーダデバイス120と通信することができる。例えば、データは、センサ電子機器がリーダデバイス120の通信範囲内に入ったときに、RFID技術を使用してセンサ104から通信され得る。リーダデバイス120に通信されるまで、データは、センサ104のメモリに記憶されたままであってもよい。したがって、患者は、リーダデバイス120に常に近接している必要はなく、代わりに、都合のよい時間にデータをアップロードすることができる。さらに他の実施形態では、自動及び非自動データ転送の組み合わせを実装することができる。例えば、データ転送を、リーダデバイス120がセンサ104の通信範囲からいなくなるまで、自動的に継続することができる。
【0019】
組織へのセンサ104の導入を促進するために、イントロデューサを一時的に存在させてもよい。例示的な実施形態では、イントロデューサは、針又は同様の鋭利物を含み得る。代替の実施形態では、シースやブレードなどの他のタイプのイントロデューサが存在し得ることが認識されるべきである。より具体的には、針又は他のイントロデューサは、組織挿入の前にセンサ104の近傍に一時的に存在し、その後、引き抜かれてもよい。存在している間、針又は他のイントロデューサは、センサ104がたどるアクセス経路を開くことによって、センサ104の組織への挿入を容易にし得る。例えば、1つ以上の実施形態によれば、針は、真皮へのアクセス経路として表皮の貫通を容易にして、センサ104の植込みが行われることを可能にし得る。アクセス経路を開いた後、針又は他のイントロデューサを引き抜いて、鋭利な危険を与えないようにすることができる。例示的な実施形態では、適切な針は、中実又は中空、斜角又は非斜角、及び/又は断面が円形又は非円形であり得る。より特定の実施形態では、適切な針は、断面直径及び/又は先端設計において、約250ミクロンの断面直径を有し得る鍼治療針に匹敵し得る。しかしながら、特定の用途に必要な場合、適切な針は、より大きい又はより小さい断面直径を有し得ることが認識されるべきである。
【0020】
いくつかの実施形態では、針の先端(存在している間)は、針が最初に組織を貫通し、センサ104のためのアクセス経路を開くように、センサ104の末端上で角度を付けられ得る。他の例示的な実施形態では、センサ104は、針の管腔又は溝内に存在してもよく、針は、同様に、センサ104のためのアクセス経路を開く。いずれの場合も、針はセンサの挿入を容易にしたら、その後引き抜かれる。
【0021】
本明細書に記載の分析物センサは、単一の作用電極の活性領域上、又は2つ以上の別個の作用電極上の複数の酵素を特徴とし得る。本開示の様々な実施形態によれば、分析物センサの単一作用電極構成は、2電極又は3電極検出モチーフを使用することができる。単一の作用電極を特徴とするセンサ構成を、以下、
図2A~2Cを参照して説明する。その後に、複数の作用電極を特徴とするセンサ構成を別途、
図3を参照して説明する。複数の酵素は、以下に記載されるセンサ構成のいずれにも組み込むことができ、複数の酵素を組み込むのに適した特定の構成を、以下にさらに詳細に記載する。
【0022】
単一の作用電極が分析物センサに存在する場合、3電極検出モチーフは、作用電極、カウンター電極、及び参照電極を含み得る。関連する2電極検出モチーフは、作用電極及び第2の電極を含み得、第2の電極は、カウンター電極及び参照電極の両方(すなわち、カウンター/参照電極)として機能する。2電極及び3電極検出モチーフの両方において、分析物センサの1つ以上の活性領域が作用電極と接触してもよい。1つ以上の活性領域は、本開示の実施形態による複数の酵素を含み得、複数の酵素は、単一の活性領域及び/又は複数の活性領域に存在する。いくつかの実施形態では、以下でさらに詳細に説明するように、様々な電極を互いに少なくとも部分的に積み重ねる(層状にする)ことができる。いくつかの又は他の実施形態では、様々な電極は、センサテール上で互いに横方向に離隔され得る。同様に、各電極上の関連する活性領域は、互いの上に垂直に積み重ねることができ、又は横方向に離隔させることができる。いずれの場合も、様々な電極は、誘電体材料又は同様の絶縁体によって互いに電気的に絶縁され得る。
【0023】
図2Aは、本明細書の開示のいくつかの実施形態での使用に適合する、単一の作用電極を有する例示的な2電極分析物センサ構成の図を示す。示されるように、分析物センサ200は、作用電極214とカウンター/参照電極216との間に配置された基板212を含む。あるいは、作用電極214及びカウンター/参照電極216は、間に誘電体材料が挿入された状態で、基板212の同じ側に配置され得る(構成は図示しない)。活性領域218は、作用電極214の少なくとも一部上に少なくとも1つの層として配置されている。様々な実施形態において、活性領域218は、1つ以上の目的の分析物の検出のために構成された複数のスポット又は単一のスポットを含み得る。総じて、複数の酵素は活性領域218に(すなわち、単一のスポット又は複数のスポットに)存在し得る。
【0024】
引き続き
図2Aを参照すると、膜220は、いくつかの実施形態によれば、少なくとも活性領域218を覆い、任意選択で、作用電極214及び/又はカウンター/参照電極216の一部又は全部、あるいは分析物センサ200全体を覆うことができる。分析物センサ200の片面又は両面が、膜220で覆われてもよい。膜220は、分析物フラックスを活性領域218に制限する能力を有する1つ以上の高分子膜材料を含み得る。本明細書でさらに説明するように、分析物が何かによって、膜220の組成は変化し得る。分析物センサ200は、クーロメトリー、アンペロメトリー、ボルタンメトリー、又はポテンショメトリーによる電気化学的検出技術のいずれかによって1つ以上の分析物をアッセイするために動作可能であり得る。
【0025】
図2B及び2Cは、本明細書の開示のいくつかの実施形態での使用に適合する、単一の作用電極を有する例示的な3電極分析物センサ構成の図を示す。単一の作用電極を使用する3電極分析物センサ構成は、分析物センサ201及び202(
図2B及び2C)に追加の電極217を含めることを除いて、
図2Aの分析物センサ200について示したものと同様とすることができる。追加の電極217を用いると、カウンター/参照電極216は、カウンター電極又は参照電極のいずれかとして機能することができ、追加の電極217は他方の電極機能を果たす。作用電極214は、その本来の機能を引き続き果たす。追加の電極217は、作用電極210上又は電極216上のいずれかに、間に誘電体の分離層を挟んで配置することができる。例えば、
図2Bに示されるように、誘電体層219a、219b及び219cは、電極214、216、及び217を互いに分離し、電気的絶縁を提供する。あるいは、電極214、216、及び217のうちの少なくとも1つは、
図2Cに示されるように、基板212の反対側の面上に配置され得る。したがって、いくつかの実施形態では、電極214(作用電極)及び電極216(カウンター電極)は、基板212の反対側の面上に配置され得、電極217(参照電極)は、電極214又は216のうちの一方の上に配置され、誘電体材料でそれから離隔され得る。参照材料層230(例えば、Ag/AgCl)が電極217上に存在してもよく、参照材料層230の位置は、
図2B及び2Cに示されるものに限定されない。
図2Aに示されるセンサ200と同様に、分析物センサ201及び202の活性領域218は、目的とする1つ以上の分析物の検出のために構成された複数のスポット又は単一のスポットを含み得る。総じて、複数の酵素が、分析物センサ201及び202の活性領域218に存在し得る。さらに、分析物センサ201及び202は、クーロメトリー、アンペロメトリー、ボルタンメトリー、又はポテンショメトリーによる電気化学的検出技術のいずれかによって1つ以上の分析物をアッセイするために動作可能であり得る。
【0026】
分析物センサ200と同様に、膜220もまた、分析物センサ201及び202において、活性領域218、ならびに他のセンサ構成要素を覆うことができる。いくつかの実施形態では、追加の電極217が、膜220で覆われ得る。
図2B及び2Cでは、電極214、216及び217のすべてが膜220で覆われているものとして描写されているが、いくつかの実施形態では、作用電極214のみが覆われてもよいことが認識されるべきである。さらに、電極214、216、及び217のそれぞれにおける膜220の厚さは、同じであっても異なっていてもよい。2電極分析物センサ構成(
図2A)の場合のように、
図2B及び2Cのセンサ構成において、分析物センサ201及び202の片面又は両面が膜220で覆われ得るか、又は分析物センサ201及び202の全体が覆われ得る。したがって、
図2B及び2Cに示される3電極センサ構成は、本開示の範囲内にある代替の電極及び/又は層構成を備えた、本明細書に開示される実施形態の非限定的例として理解されるべきである。
【0027】
次に、複数の作用電極を有する分析物センサ構成についてさらに詳細に説明する。以下の説明は、主に2つの作用電極を有する分析物センサ構成に向けられているが、本明細書の開示を拡張することで、3つ以上の作用電極も問題なく組み込まれ得ることが理解されるべきである。追加の作用電極は、追加の活性領域及び対応する検知能力を、そのような特徴を有する分析物センサに与えることを可能にし得る。
【0028】
図3は、本明細書の開示のいくつかの実施形態での使用に適合する、2つの作用電極、参照電極及びカウンター電極を有する例示的な分析物センサ構成の図を示す。
図3に示すように、分析物センサ300は、基板302の対向面にそれぞれ配置された作用電極304及び306を含む。活性領域310は、作用電極304の表面に配置され、活性領域312は、作用電極306の表面に配置される。総じて、複数の酵素が活性領域310及び312に存在し得、各活性領域310、312は1つ以上の酵素を含む。例えば、特定の実施形態では、グルコース応答性酵素が活性領域310に存在し得、乳酸応答性酵素が活性領域312に存在し得る。カウンター電極320は、誘電体層322によって作用電極304から電気的に絶縁されており、参照電極321は、誘電体層323によって作用電極306から電気的に絶縁されている。外側誘電体層330及び332は、それぞれ、参照電極321及びカウンター電極320上に配置されている。膜340は、様々な実施形態によれば、少なくとも活性領域310及び312を覆うことができる。分析物センサ300の他の構成要素も同様に膜340で覆われてもよく、上記のように、分析物センサ300の片面又は両面、又はその一部は、膜340で覆われ得る。分析物センサ200、201及び202と同様に、分析物センサ300は、クーロメトリー、アンペロメトリー、ボルタンメトリー、又はポテンショメトリーによる電気化学的検出技術のいずれかによって1つ以上の分析物をアッセイするために動作可能であり得る。
【0029】
複数の作用電極を有し、
図3に示されるものとは異なる代替の分析物センサ構成は、別個のカウンター電極及び参照電極320、321の代わりに、カウンター/参照電極、及び/又は、明示的に示されたものとは異なる層及び/又は膜の配置を特徴とし得る。例えば、カウンター電極320及び参照電極321の配置は、
図3に示されているものとは逆にすることができる。さらに、作用電極304及び306は、必ずしも、
図3に示される態様で基板302の対向面上に存在する必要はない。
【0030】
離れた活性領域を有する作用電極を特徴とする分析物センサ構成を、
図6A及び6Bに示し、以下でさらに説明する。
本開示の様々な実施形態によれば、電子移動剤が、本明細書に開示される分析物センサ又は分析物センサ構成のいずれかの1つ以上の活性領域に存在し得る。適切な電子移動剤は、分析物(酵素基質)が酸化還元反応を受けるときの作用電極への電子の運搬を容易にし得る。各活性領域内の電子移動剤の選択は、それぞれについて観察される酸化還元電位を決定し得る。複数の活性領域が存在する場合、各活性領域内の電子移動剤は同じであっても異なっていてもよい。
【0031】
適切な電子移動剤には、標準的なカロメル電極(SCE)の酸化還元電位よりも数百ミリボルト上又は下の酸化還元電位を有する電気還元性及び電気酸化性のイオン、錯体又は分子(例えば、キノン)が含まれ得る。いくつかの実施形態によれば、適切な電子移動剤には、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,134,461号及び第6,605,200号に記載されているものなどの低電位オスミウム錯体が含まれ得る。追加の例には、米国特許第6,736,957号、第7,501,053号及び第7,754,093号に記載されているものが含まれ、これらのそれぞれの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。他の適切な電子移動剤は、ルテニウム、オスミウム、鉄(例えば、ポリビニルフェロセン又はヘキサシアノフェラート)又はコバルトの金属化合物又は錯体(例えば、そのメタロセン化合物を含む)を含み得る。電子移動メディエータ及びポリマー結合電子移動メディエータの適切な例には、米国特許第8,444,834号、第8,268,143号及び第6,605,201号に記載されているものが含まれ得、これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。金属錯体に適した配位子には、例えば、ビピリジン、ビイミダゾール、フェナントロリン、又はピリジル(イミダゾール)などの二座又はより高い座数の配位子も含まれ得る。他の適切な二座配位子には、例えば、アミノ酸、シュウ酸、アセチルアセトン、ジアミノアルカン、又はo-ジアミノアレーンが含まれ得る。完全な配位圏を達成するために、単座、二座、三座、四座、又はより高い座数の配位子の任意の組み合わせが金属錯体に存在し得る。
【0032】
本開示の様々な実施形態によれば、ポリマーは、本明細書に開示される分析物センサ又は分析物センサ構成のいずれの各活性領域に存在してもよい。活性領域に含めるのに適したポリマーには、限定するものではないが、ポリビニルピリジン(例えば、ポリ(4-ビニルピリジン))、ポリビニルイミダゾール(例えば、ポリ(1-ビニルイミダゾール))、又はそれらの任意のコポリマーが含まれ得る。活性領域に含めるのに適し得る例示的なコポリマーには、例えば、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、又はアクリロニトリルなどのモノマー単位を含むものが含まれる。複数の活性領域が存在する場合、各活性領域内のポリマーは同じであっても異なっていてもよい。
【0033】
本開示の様々な実施形態によれば、電子移動剤は、各活性領域においてポリマーに共有結合され得る。共有結合の態様は特に制限されているとは考えられない。電子移動剤のポリマーへの共有結合は、共有結合した電子移動剤を有するモノマー単位を重合することによって起こり得るか、又はポリマーが既に合成された後なら、電子移動剤をポリマーと別々に反応させることができる。いくつかの実施形態によれば、二官能性スペーサーは、活性領域内のポリマーに電子移動剤を共有結合し得、ここで、第1の官能基はポリマーと反応性であり(例えば、ピリジン窒素原子又はイミダゾール窒素原子を四級化することができる官能基)、第2の官能基は電子移動剤と反応性である(例えば、金属イオンを配位する配位子と反応する官能基)。
【0034】
同様に、本開示のいくつかの又は他の様々な実施形態によれば、1つ以上の活性領域内の酵素は、ポリマーに共有結合され得る。複数の酵素が単一の活性領域に存在する場合、いくつかの実施形態では、複数の酵素のすべてがポリマーに共有結合し得、他の実施形態では、複数の酵素の一部のみがポリマーに共有結合し得る。例えば、第1の酵素はポリマーに共有結合し得、第2の酵素はポリマーと非共有結合し得る。より具体的な実施形態によれば、酵素のポリマーへの共有結合は、適切な架橋剤と共に導入された架橋剤を介して起こり得る。酵素中の遊離アミノ基との(例えば、リジン中の遊離アミンとの)反応のための適切な架橋剤は、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEGDGE)又は他のポリエポキシド、塩化シアン、N-ヒドロキシスクシンイミド、イミドエステル、エピクロロヒドリン、又はそれらの誘導体化変異体などの架橋剤を含み得る。酵素中の遊離カルボン酸基との反応に適した架橋剤には、例えば、カルボジイミドが含まれ得る。架橋は一般に分子間であるが、いくつかの実施形態では分子内であり得る。
【0035】
電子移動剤及び/又は酵素は、共有結合以外の手段によっても、活性領域内のポリマーと結合することができる。いくつかの実施形態では、電子移動剤及び/又は酵素は、イオン的に又は配位的にポリマーと結合し得る。例えば、帯電したポリマーは、反対に帯電した電子移動剤又は酵素とイオン結合し得る。さらに他の実施形態では、電子移動剤及び/又は酵素は、ポリマーに結合することなく、ポリマー内に物理的に同伴され得る。
【0036】
次に、本開示の分析物センサに複数の酵素を配置するのに適した様々な構成をさらに詳細に説明する。複数の酵素は、センサの1つ以上の活性領域内に堆積させることができる。活性領域は、サイズが約0.01mm2~約1mm2の範囲であり得るが、より大きい又はより小さい活性領域も本明細書で企図される。
【0037】
いくつかの実施形態では、複数の酵素が、単一の作用電極上の別々の活性領域内に配置され得る。複数の酵素がこのように配置されている場合、各活性領域は、以下に説明するように、別々の分析物の検出を容易にし得る。活性領域の少なくとも1つは、他の活性領域とは独立してシグナルを生成することができる。
【0038】
いくつかの実施形態によれば、単一の作用電極上に複数の活性領域を有する本開示の分析物センサは、少なくとも作用電極を含むセンサテール、及び作用電極の表面に配置された少なくとも2つの活性領域を含み得る。各活性領域は、分析物応答性酵素及びポリマーを含み、各活性領域における分析物応答性酵素は異なる。各活性領域は酸化還元電位を有し、第1の活性領域の酸化還元電位は、第2の活性領域の酸化還元電位から十分に離れており、第2の活性領域からのシグナルとは無関係に第1の活性領域からのシグナルを生成することを可能にする。より具体的な実施形態では、そのような分析物センサは、少なくとも2つの活性領域を有する単一の作用電極を含み得る。電子移動を促進するために、電子移動剤を各活性領域内に組み込むことができる。
【0039】
代替のセンサ構成は、電子移動剤とともに、第1の分析物応答性酵素及び第2の分析物応答性酵素の両方を含む単一の活性領域を含み得る。各酵素は、単一の活性領域内のポリマーの別々の部分に共有結合することができる。各分析物の電子移動を促進するための検知化学物質が単一の活性領域において過度に希釈されない場合、単一の活性領域は、別個の活性領域について以下に説明するのと同様の方法で分析物の検出を容易にし得る。そのようなセンサ構成は、第1及び第2の分析物応答性酵素でアッセイされる分析物が同等の膜透過性値を有する場合に特に実現可能であり得る。
【0040】
より具体的な実施形態では、センサテールは、組織への挿入のために構成され得る。適切な組織は特に限定されているとは見なされず、上記でより詳細に説明されている。同様に、組織内の特定の位置にセンサテールを配置するための考慮事項については、上記で説明した。
【0041】
より具体的な実施形態では、第1の活性領域に関連する酸化還元電位は、第2の活性領域の酸化還元電位から、少なくとも約100mV、又は少なくとも約150mV、又は少なくとも約200mVだけ離され得る。酸化還元電位間の離隔の上限は、作業電気化学ウィンドウによって生体内で決定される。活性領域の酸化還元電位の大きさを互いに十分に離すことにより、電気化学反応は、第2の活性領域内で電気化学反応を実質的に誘発することなく、第1の活性領域内で起こり得る。したがって、第1の活性領域からのシグナルは、その対応する酸化還元電位以上で独立して生成され得る。対照的に、第2の活性領域の酸化還元電位以上では、電気化学反応が両方の活性領域内で起こり得る。したがって、第2の活性領域の酸化還元電位以上で得られるシグナルは、第1の活性領域及び第2の活性領域の両方からのシグナル寄与を含み得、そのシグナルは複合シグナルである。次に、その酸化還元電位以上の第2の活性領域からのシグナル寄与は、対応する酸化還元電位以上の第1の活性領域のみから得られたシグナルを、複合シグナルから差し引くことによって決定することができる。同様の考慮事項は、異なる酸化還元電位でシグナルを生成する2つの異なる酵素を含む単一の活性領域からのシグナル寄与の分析にも当てはまる。
【0042】
より具体的な実施形態では、第1及び第2の活性領域は、活性領域が同じ作用電極上に位置する場合、酸化還元電位の大きさを十分に離すために、異なる電子移動剤を含み得る。より具体的には、第1の活性領域は、第1の電子移動剤を含み得、第2の活性領域は、第2の電子移動剤を含み得、第1の電子移動剤と第2の電子移動剤とは異なる。本開示の様々な実施形態によれば、所与の電子移動剤中に存在する金属中心及び/又は配位子を変化させて、第1及び第2の活性領域の酸化還元電位を十分に離すことができる。さらにより具体的な実施形態によれば、第1の電子移動剤は、第1の活性領域においてポリマーに共有結合し得、第2の電子移動剤は、第2の活性領域においてポリマーに共有結合し得る。第1の電子移動剤及び第2の電子移動剤の共有結合の態様は、同じであっても異なっていてもよい。上記の開示に従って、単一の活性領域内に含まれる第1の分析物応答性酵素及び第2の分析物応答性酵素と組み合わせて使用するのに適した電子移動剤を選択する場合にも、同様の考慮事項が適用される。
【0043】
本開示のより具体的な実施形態では、各活性領域の分析物応答性酵素は、各活性領域内のポリマーに共有結合(又は他の方法で固定化)され得る。さらにより具体的な実施形態では、各活性領域内の分析物応答性酵素及び電子移動剤は、各活性領域内のポリマーに共有結合され得る。単一の活性領域に含まれる場合、第1の分析物応答性酵素及び第1の電子移動剤は、ポリマーの第1の部分に共有結合され得、第2の分析物応答性酵素及び第2の電子移動剤は、ポリマーの第2の部分に共有結合され得る。第1の部分及び第2の部分のポリマーは、同じであっても異なっていてもよい。
【0044】
理想的には、単一の作用電極上に配置された第1及び第2の活性領域は、所与の電位で分析物センサを動作させると迅速に定常状態電流を達成するように構成され得る。定常状態電流の迅速な達成は、各活性領域について、その酸化還元電位以上の電位にさらされるとその酸化状態を迅速に変化させる電子移動剤を選択することによって促進され得る。活性領域を可能な限り薄くすることもまた、定常状態電流の迅速な達成を容易にし得る。例えば、第1及び第2の活性領域に適した厚さは、約0.1ミクロン~約10ミクロンの範囲であり得る。いくつかの又は他の実施形態では、例えば、カーボンナノチューブ、グラフェン、又は金属ナノ粒子などの導電性材料を1つ以上の活性領域内で組み合わせると、定常状態電流の迅速な達成を促進することができる。導電性粒子の適切な量は、活性領域の約0.1重量%~約50重量%、又は約1重量%~約50重量%、又は約0.1重量%~約10重量%、又は約1重量%~約10重量%の範囲であり得る。応答の安定性を促進するために安定剤を使用することもできる。
【0045】
各分析物に対する分析物センサの感度(出力電流)は、活性領域の被覆率(面積又はサイズ)、活性領域の互いに対する面積比、活性領域を覆う物質移動制限膜の性質及び厚さ、ならびにこれらの任意の組み合わせを変化させることによって変更できることも理解されたい。これらのパラメータの変更は、本明細書の開示の利益を与えられた当業者によって容易に実施することができる。
【0046】
前述の説明は、主に2つの異なる分析物を検出するように構成された分析物センサに向けられているが、上記の概念は、単一の作用電極上に配置された対応する数の活性領域を使用して3つ以上の分析物を検出する場合に拡張できることを理解されたい。具体的には、本開示のさらなる実施形態において、3つ以上の活性領域及びその中の対応する数の異なる酵素(及び電子移動剤)を使用する分析物センサを使用して、同数の異なる分析物を検出することができる。各活性領域の酸化還元電位が他の活性領域の酸化還元電位から十分に離れている場合、各活性領域からのシグナル寄与を上記の方法に関連する方法で分析して、各分析物の濃度を提供することができる。
【0047】
より特定の実施形態では、第1の活性領域は、上記でより詳細に説明した適切な電子移動剤及びポリマーに加えて、グルコースオキシダーゼなどのグルコース応答性酵素を含み得、第2の活性領域は、乳酸オキシダーゼなどの乳酸応答性酵素を含み得る。特定の実施形態によれば、グルコース及び乳酸塩を検出するのに適した分析物センサは、第1の活性領域及び第2の活性領域がその上に配置された作動電極、ならびに作動電極上の第1及び第2の活性領域を覆う物質移動制限膜を含み得る。第2の活性領域は、ポリマー、アルブミン、及びポリマーに共有結合した乳酸応答性酵素(例えば、乳酸オキシダーゼ)を含み、第1の活性領域は、ポリマーに共有結合したグルコース応答性酵素(例えば、グルコースオキシダーゼ)を含む。互いに異なる第1及び第2の電子移動剤が、各活性領域に存在し得る。より具体的な実施形態では、物質移動制限膜は、少なくとも架橋ポリビニルピリジンホモポリマー又はコポリマーを含み得る。物質移動制限膜の組成は、物質移動制限膜が各活性領域を覆う場合、同じであっても異なっていてもよい。特定の実施形態では、第1の活性領域を覆う物質移動制限膜は単一成分(単一の膜ポリマーを含む)であり得、第2の活性領域を覆う物質移動制限膜は多成分(2つ以上の異なる膜ポリマーを含み、そのうちの1つはポリビニルピリジンホモポリマー又はコポリマーである)であり、二重層又は均一な混合物のいずれかであり得る。
【0048】
同様に、所与の作用電極上に配置された2つ以上の活性領域を有する本開示のいくつかの分析物センサは、少なくとも1つの活性領域に2つ以上の分析物応答性酵素を含み得ることも理解されたい。より具体的な実施形態によれば、所与の活性領域内の2つ以上の分析物応答性酵素は、協調して相互作用して、単一の分析物の濃度に比例するシグナルを生成し得る。したがって、分析物応答性酵素は、特定の分析物の選択に対して必ずしも1:1の比率で存在する必要はない。協調して相互作用する酵素を含む分析物センサは、以下でさらに詳細に説明される。
【0049】
したがって、単一の作用電極上に配置された複数の酵素を特徴とする分析物センサを使用する複数分析物検出方法もまた、本明細書に記載されている。様々な実施形態において、そのような方法は、分析物センサを少なくとも1つの分析物を含む流体に曝露することを含み得る。分析物センサは、少なくとも作用電極、特に単一の作用電極、及び作用電極の表面に配置された少なくとも2つの活性領域を含むセンサテールを含む。各活性領域は、分析物応答性酵素及びポリマーを含み、各活性領域における分析物応答性酵素は異なる。各活性領域は酸化還元電位を有し、第1の活性領域の酸化還元電位は、第2の活性領域の酸化還元電位から十分に離されており、第2の活性領域からのシグナルの生成とは独立した第1の活性領域からのシグナルの生成を可能にする。この方法はさらに、第1のシグナルが第1の分析物の濃度に比例するように、第1の活性領域の酸化還元電位以上で第1のシグナルを取得すること;第2のシグナルが、第1の活性領域からのシグナル寄与及び第2の活性領域からのシグナル寄与を含む複合シグナルであるように、第2の活性領域の酸化還元電位以上で第2のシグナルを取得すること;及び、第2のシグナルから第1のシグナルを差し引いて、第2の分析物の濃度に比例する差分シグナルを取得することを含む。
【0050】
より具体的な実施形態では、第1の活性領域に関連する酸化還元電位は、第1の活性領域からのシグナルの独立した生成のために十分に離すために、第2の活性領域の酸化還元電位から、少なくとも約100mV、又は少なくとも約150mV、又は少なくとも約200mVだけ離され得る。
【0051】
いくつかの又は他のより具体的な実施形態では、流体は生物学的流体であり、分析物センサは、個体の生体内で生物学的流体に曝露される。所与の作用電極上に配置された少なくとも2つの異なる活性領域を有する分析物センサを用いた分析に適した生物学的流体は、上記でより詳細に記述した生物学的流体のいずれかを含み得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、各活性領域に関連するシグナルは、各分析物のルックアップテーブル又は検量線を参照することによって、対応する分析物濃度に相関させることができる。各分析物のルックアップテーブルは、既知の分析物濃度を有する複数のサンプルを分析し、各分析物の各濃度でのセンサ応答を記録することによって作成することができる。同様に、各分析物の検量線は、濃度の関数として各分析物に対する分析物センサ応答をプロットすることによって決定することができる。いくつかの実施形態によれば、本開示の分析物センサの検量線は直線状であり得る。
【0053】
プロセッサは、ルックアップテーブル内のどのセンサ応答値が未知の分析物濃度を有するサンプルについて測定されたものに最も近いかを決定し、それに応じて分析物濃度を報告することができる。いくつかの又は他の実施形態では、未知の分析物濃度を有するサンプルのセンサ応答値がルックアップテーブルに記録された値の間にある場合、プロセッサは2つのルックアップテーブル値の間を内挿して分析物濃度を推定することができる。内挿は、ルックアップテーブルで報告された2つの値の間の線形濃度変動を前提とし得る。内挿は、センサの応答がルックアップテーブルの所与の値と十分に異なる場合(約10%以上の変動など)に使用できる。
【0054】
同様に、いくつかの又は他の様々な実施形態によれば、プロセッサは、未知の分析物濃度を有するサンプルのセンサ応答値を、対応する検量線に入力することができる。次に、センサはそれに応じて分析物濃度を報告することができる。
【0055】
所与の作用電極上に配置された2つの異なる活性領域を有する分析物センサの実施形態は、
図2A~2C及び上記に示されるものに関連するセンサ構成を使用することができる。しかしながら、適切な分析物センサはまた、作用電極のうちの少なくとも1つが互いに異なる少なくとも2つの活性領域を有する、
図3に示されるセンサ構成などの複数の作用電極を特徴とし得ることが理解されるべきである。所与の作用電極の表面に配置された2つ以上の異なる活性領域を有する他の分析物センサ構成もまた、本開示の範囲内に存在することを理解されたい。例えば、作用電極ならびにカウンター電極及び/又は参照電極の位置、配向又は機能は、本願の図面に示されているものとは異なる場合がある。
【0056】
図4は、2つの異なる活性領域が単一の作用電極の表面に配置されている、本明細書の開示のいくつかの実施形態での使用に適合する例示的な分析物センサ構成を示す。
図4の分析物センサ構成は、
図2Cのものと最も類似しており、
図2Cを参照することにより、よりよく理解することができる。適切な場合は、明確性の目的で
図2Cと共通の参照符号が
図4で使用されており、簡潔にする目的で、共通の構造及び/又は機能を有する特徴は、それ以上詳細には説明されていない。この場合も、他の分析物センサ構成は、
図4について以下に説明する特徴を同様に組み込むことができることを理解されたい。
【0057】
図4を参照すると、分析物センサ400は、作用電極214の表面に活性領域218a及び218bを含む。活性領域218aは、活性領域218aを含むポリマーに共有結合され得る第1の電子移動剤及び第1の分析物応答性酵素を含む。活性領域218bは、同様に、活性領域218bを含むポリマーに共有結合され得る第2の電子移動剤及び第2の分析物応答性酵素を含む。第1の電子移動剤及び第2の電子移動剤は、第1の活性領域218a及び第2の活性領域218bの酸化還元電位の離隔を提供するように、組成が異なっていてもよい。特定の実施形態では、活性領域218bは、乳酸オキシダーゼなどの乳酸応答性酵素を含み得、活性領域218aは、グルコースオキシダーゼなどのグルコース応答性酵素を含み得る。
【0058】
第1の活性領域218a及び第2の活性領域218bの酸化還元電位は、第2の活性領域218bからのシグナル生成とは独立して第1の活性領域218aからのシグナルの生成を可能にするように、互いに十分に離隔され得る。そのため、分析物センサ400は、酸化還元反応が第1の活性領域218a内で生じるが、第2の活性領域218b内では生じない第1の電位で動作することができる。したがって、第1の分析物(例えば、グルコース)は、印加電位が第2の活性領域218bとの酸化還元反応を促進するのに十分高くない限り、第1の活性領域218aの酸化還元電位以上で選択的に検出され得る。第1の分析物の濃度は、ルックアップテーブル又は検量線を参照することにより、第1の活性領域218aのセンサ応答から決定され得る。
【0059】
第2の活性領域218bの酸化還元電位以上で、別個の酸化還元反応が、第1の活性領域218a及び第2の活性領域218bの両方内で同時に又はほぼ同時に起こり得る。結果として、第2の活性領域218bの酸化還元電位以上で生成されたシグナルは、第1の活性領域218a及び第2の活性領域218bの両方からのシグナル寄与を有する複合シグナルを含み得る。複合シグナルから第2の分析物(例えば、乳酸塩)の濃度を決定するために、対応する酸化還元電位以上の第1の活性領域218aからのシグナルを複合シグナルから差し引いて、第2の活性領域218bのみに関連する差分シグナルを提供することができる。差分シグナルが決定されると、第2の分析物の濃度は、ルックアップテーブル又は検量線を参照することによって決定され得る。
【0060】
前述のように、同様の考慮事項は、互いに異なる第1及び第2の分析物の濃度を決定するために、2つの異なる分析物応答性酵素を含む単一の活性領域から第1のシグナル及び第2のシグナルを分離することにも当てはまる。
【0061】
本開示のいくつかの又は他の実施形態では、複数の酵素が単一の活性領域に存在し得る。複数の酵素が独立して機能して異なる分析物を検出するセンサ構成、特に、作用電極の表面の別々の活性領域に間隔を置いて配置されているセンサ構成とは異なり、本開示のいくつかの実施形態によれば、単一の活性領域に配置された複数の酵素は、特に安定剤の存在下で協調して機能し、単一の分析物の検出を容易にする。本明細書で使用される場合、「協調して」という用語及びその文法的変形は、第1の酵素反応の生成物が第2の酵素反応の基質となり、第2の酵素反応が、第1の酵素反応中に反応した基質(分析物)の濃度測定の基礎として機能する、組み合わされた酵素反応を指す。単一の酵素では検出を容易にすることができない場合、目的の所与の分析物を検出するために、互いに協調して作用する2つの酵素を利用することが望ましい場合がある。単一の酵素が分析物の検出を促進するのに効果がない可能性がある状況には、例えば、酵素が酵素反応の1つ以上の生成物によって阻害されるか、又は分析物センサ内に配置されると、酸化状態と還元状態との間を循環できない状況が含まれる。
【0062】
本明細書にも開示されるように、別々の活性領域に配置された複数の酵素は、同様に協調して相互作用し、単一の分析物の検出を促進し得る。複数の酵素が別々の活性領域に配置されている場合、活性領域の1つを作用電極から分離して、作用電極との間の電子移動が1つの活性領域からのみ行われるようにすることができる。
【0063】
より具体的な実施形態では、互いに協調して相互作用する少なくとも2つの酵素を特徴とする分析物センサは、少なくとも作用電極を含むセンサテール;及び、作用電極の表面に配置された少なくとも1つの活性領域を含み得る。少なくとも1つの活性領域は、第1の酵素、第2の酵素、及びポリマーを含む。第1及び第2の酵素は協調して相互作用することができ、第1の酵素は分析物を第1の生成物に変換することができ、第2の酵素は第1の生成物を第2の生成物に変換して、作用電極においてシグナルを生成することができる。第2の酵素は分析物とは反応しない。少なくとも第2の酵素は、少なくとも1つの活性領域でポリマーに共有結合している。以下でさらに詳細に説明するように、第1の生成物の第2の生成物への反応から生じるシグナル(例えば、固定入力電圧で測定される電流)の分析は、分析物を検出し、その濃度を測定するための基礎を提供し得る。
【0064】
より具体的には、活性領域は、上記のような電子移動剤を含み得、第2の酵素のみが電子移動剤と電子を交換することができ、その場合、第1の酵素は、以下に説明するように、間接的に第2の酵素に電子を伝達し得る。したがって、本開示のより具体的な実施形態は、ポリマーに共有結合されていない(したがって、電子移動剤と電子を交換する可能性が低い)第1の酵素及び(電子移動剤との電子交換を促進するために)ポリマーに共有結合されている第2の酵素を特徴とし得る。電子移動剤は、いずれの場合も、活性領域においてポリマーに共有結合され得る。配位結合もまた、本明細書の開示による共有結合の範囲内に含まれる。
【0065】
いくつかの実施形態によれば、安定剤が活性領域に存在し得る。協調して相互作用する酵素を含む分析物センサに特に適した安定剤には、例えば、カタラーゼ及びアルブミンが含まれる。
【0066】
いくつかの実施形態によれば、センサテールは、目的の組織に挿入されるように構成され得る。そのため、いくつかの実施形態によれば、所与の活性領域において互いに協調して相互作用することができる酵素を含む分析物センサは、生体内で生物学的流体中の分析物の濃度を分析するように適合され得る。ここでも、生物学的流体が何であるかは特に限定されない。
【0067】
上記のように、協調して相互作用することができる2つの酵素を組み込んだセンサ構成は、少なくとも1つの活性領域が、ポリマーに共有結合している電子移動剤を含むものを含み得る。この場合も、本明細書の開示によれば、配位結合も共有結合の範囲内に含まれる。そのような実施形態では、少なくとも第2の酵素もまた、ポリマーに共有結合され得る。いくつかの実施形態において、第1の酵素は、ポリマーに共有結合されていない。他の実施形態において、第1の酵素及び第2の酵素の両方が、少なくとも1つの活性領域においてポリマーに共有結合され得る。第1の酵素のポリマーへの共有結合は、例えば、少なくとも1つの活性領域から第1の酵素が浸出する可能性を低減するために望ましい場合がある。
【0068】
作用電極上の1つ以上の活性領域において互いに協調して相互作用する2つの酵素を組み込むのに適した分析物センサ構成は、
図2A~2Cに示され、上記でより詳細に説明されたものと同様であり得る。互いに協調して相互作用することができる酵素(すなわち、協調酵素又は協調酵素ペア)はまた、複数の作用電極(
図3)を有するか、又は所与の作用電極上に配置された複数の活性領域(
図4)を有する分析物センサ構成に組み込まれ得る。作用電極の表面に直接配置された協調酵素ペアを有する本明細書に開示される分析物センサのいずれも、前述の任意の分析物センサ構成を採用することができる。複数の活性領域において互いに協調して相互作用する2つ以上の酵素を有する分析物センサ構成であって、活性領域の1つが作用電極から離れている構成を、
図6A及び6Bを参照して以下でさらに説明する。
【0069】
両方が作用電極上に直接配置された協調酵素を含む分析物センサのより具体的な構成では、第1の酵素はアルコールオキシダーゼ(AOX)であり得、第2の酵素はキサンチンオキシダーゼ(XOX)であり得る。この酵素のペアにより、分析物センサは、1つ以上の実施形態によれば、アルコール、特にエタノールを検出するように機能し得る。両方の酵素が作用電極上に配置されている場合のエタノール及び他のアルコールを検出するためのアルコールオキシダーゼとキサンチンオキシダーゼとの間の協同性について、以下でさらに詳細に説明する(
図5Aを参照)。本開示のより具体的な実施形態において、キサンチンオキシダーゼは、活性領域においてポリマーに共有結合され得るが、アルコールオキシダーゼはポリマーに共有結合されない。さらにより具体的な実施形態では、キサンチンオキシダーゼ及び電子移動剤の両方がポリマーに共有結合され得るが、アルコールオキシダーゼはポリマーに共有結合されない。この酵素のペアと共に、カタラーゼが安定剤として存在してもよい。
【0070】
作用電極の表面に両方の酵素が直接配置されている、本明細書の開示で使用するのに適し得る協調酵素の別のペアは、β-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ及びジアホラーゼである。この協調酵素ペアはケトン体の検出に使用でき、β-ヒドロキシ酪酸は、ケトンの存在を示す代表的な分子である。この協調酵素のペアを含むセンサ構成では、β-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼは、β-ヒドロキシ酪酸及び酸化ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD
+)をアセト酢酸及び還元ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)に変換し得る。次に、NADHは、ジアホラーゼ媒介下で還元を受け、このプロセス中に伝達される電子が、作用電極でのケトン検出の基礎を提供する。ケトンを検出するためのβ-ヒドロキシ酪酸とジアホラーゼ(NAD
+補因子によって媒介される)との間の協奏反応を
図5Bに示す。協調酵素のペアと共に、アルブミンが安定剤として存在してもよい。
【0071】
ケトンのさらに他の代替の酵素的検出化学が、
図5C及び5Dに示されている。
図5Cに示すように、β-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼは、β-ヒドロキシ酪酸とNAD
+をアセト酢酸とNADHに変換することができる。作用電極への電子移動がジアホラーゼによって完了する代わりに(
図5Bを参照)、還元型のNADHオキシダーゼ(NADHOx(red))が反応を受けて、対応する酸化型(NADHOx(Ox))を形成する。次に、NADHOx(red)は酸素分子との反応によって再形成されてスーパーオキシドを生成し、これはその後スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)を介して過酸化水素に変換され得る。様々な実施形態によれば、SODは、活性領域のポリマーに共有結合され得る。次に、過酸化水素は、作用電極で反応を受けて、存在するケトンの量と相関し得るシグナルを提供し得る。
図5Dは、β-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼが再びβ-ヒドロキシ酪酸及びNAD
+をアセト酢酸及びNADHに変換し得る別の代替酵素検出化学を示している。この場合の検出サイクルは、作用電極でのポリ-1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンの酸化によって完了する。本明細書に開示される他の検知化学のように、活性領域にアルブミンを含めることは、応答安定性の驚くべき改善を提供し得る。
【0072】
クレアチンアミドヒドロラーゼ及びサルコシンオキシダーゼは、両方の酵素が作用電極上に直接配置されている場合に、本明細書の開示で使用するのに適している可能性がある協調酵素の別のペアである。クレアチンアミドヒドロラーゼは、クレアチンからサルコシンと尿素を生成する。次に、サルコシンオキシダーゼは、サルコシンの反応を触媒して、グリシン、ホルムアルデヒド、及び過酸化水素を形成することができる。したがって、作用電極での過酸化水素の検出は、クレアチン及び/又はサルコシンを定量化するための基礎として役立ち得る。
【0073】
協調酵素反応を介したアルコールオキシダーゼ及びキサンチンオキシダーゼを使用したエタノール及び他のアルコールの検出について、さらに詳細に説明する。アルコールオキシダーゼはエタノールと相互作用してアセトアルデヒドと過酸化水素を形成する。他のアルコールは反応して、対応するより高い又はより低い炭素数のアルデヒドを形成する。有利なことに、アルコールオキシダーゼは、エタノールからアセトアルデヒドへの順方向変換のみを触媒し(アルコールデヒドロゲナーゼの場合のように可逆的に反応を実施するのとは対照的である)、これはこの酵素を分析物センサで使用するのに有利であり得る。さらに、アルコールオキシダーゼは強く結合したフラビン補因子を含んでいるため、外因性補因子を必ずしもアルコールオキシダーゼと組み合わせて、酵素をアルコール酸化を促進するために活性化する必要はない。
【0074】
原則として、アルコールオキシダーゼのみを、酵素反応で生成されたアセトアルデヒド又は過酸化水素生成物のいずれかをアッセイすることにより、分析物センサでのエタノール検出に使用することができる。しかし、このアプローチには2つの問題がある。まず、アセトアルデヒド及び過酸化水素の両方がアルコールオキシダーゼを阻害する。したがって、これらの化合物がセンサ環境から除去されない場合、アルコールオキシダーゼはエタノール酸化を促進するために不活性になり、それによって分析物センサはエタノールをアッセイするために機能しなくなる。さらに、アセトアルデヒドと過酸化水素が隔離されたり、他の薬剤でクエンチされたりすると、電気化学的検出に利用できる種はなくなる。第二に、アルコールオキシダーゼは、酸素分子以外の酸化還元メディエータと電子を自由に交換しない。そのため、本明細書で記述されるオスミウムや他の遷移金属錯体などの、分析物センサの活性領域内のポリマーに関連する電子移動剤は、アルコールオキシダーゼを不活性な還元状態からエタノールと反応性である酸化状態に循環させるのに効果がない。したがって、アルコールオキシダーゼは、任意選択でポリマーに共有結合され得るが、そうすることによる電子移動プロセスへの特別な利点はない。すなわち、アルコールオキシダーゼのポリマーへの共有結合は、電子移動剤による電子移動の促進を助けない。
【0075】
作用電極上での直接的な、特に所与の活性領域で一緒の、アルコールオキシダーゼとキサンチンオキシダーゼの協調した組み合わせは、アルコールオキシダーゼを使用する分析物センサを使用するエタノール検出に関連する前述の課題の少なくともいくつかを克服し得る。アセトアルデヒド及び他のアルデヒドは、キサンチンオキシダーゼの基質として機能することができ、アセトアルデヒドは酵素的に酢酸に変換される。したがって、キサンチンオキシダーゼは、センサ環境からアセトアルデヒドを除去することができ、それにより、アルコールオキシダーゼのアセトアルデヒドベースの不活性化を妨げる。過酸化水素を除去するために、カタラーゼが(例えば、カタラーゼ-過酸化水素複合体として)活性領域に存在してもよく、それにより、この種によるアルコールオキシダーゼの不活性化を妨げる。さらに、アルコールオキシダーゼとは異なり、キサンチンオキシダーゼは、分析物センサの活性領域内のポリマーに関連するオスミウム及び他の遷移金属錯体と電子を交換することができる。このように、キサンチンオキシダーゼは、その酸化型と還元型との間を循環することができ、それにより、分析物センサがアクティブな検知状態を維持することを可能にする。したがって、前述の分析物センサでのエタノールの検出は、キサンチンオキシダーゼと、エタノールの酵素反応生成物であるアセトアルデヒドとの酵素反応に基づいている。さらに、前述の方法で分析物センサ内の酵素を構成することにより、アルコールオキシダーゼは、酸素分子で再酸化を受けてその活性を維持する可能性がある。
【0076】
図5Aは、本開示の様々な実施形態による、作用電極上に直接配置されたアルコールオキシダーゼ及びキサンチンオキシダーゼを使用するエタノール検出に関連する協調酵素反応サイクルを示す。キサンチンオキシダーゼは、分析物センサの活性領域でポリマーに共有結合し、アルコールオキシダーゼは、活性領域でポリマーと非共有結合する。キサンチンオキシダーゼに加えて、この酵素と電子を交換することができるオスミウム錯体又は他の遷移金属錯体もまた、ポリマーに共有結合されている。
図5Aに示すように、エタノールは、フラビン補因子(FAD-既にアルコールオキシダーゼと結合している)の存在下で酸化(活性)アルコールオキシダーゼと反応し、それにより、還元アルコールオキシダーゼ、アセトアルデヒド、及び過酸化水素を形成する。還元されたアルコールオキシダーゼは、アルコールオキシダーゼをその触媒的に活性な酸化形態に戻すために、示されるように酸素分子で再酸化され得る。
【0077】
引き続き
図5Aを参照して、エタノールから酵素的に形成されたアセトアルデヒドは、次に、酵素と共に本来存在するフラビン補因子の存在下で、酸化型のキサンチンオキシダーゼとのその後の反応を受ける。この過程で酢酸が生成され、キサンチンオキシダーゼが還元状態に変化する。次に、還元されたキサンチンオキシダーゼは、ポリマーに結合した遷移金属電子移動剤と反応して、電子を作用電極に移動させ、それによって電流を生成し、酸化型のキサンチンオキシダーゼを再生することができる。
図5Aには示されていないが、過酸化水素は、活性領域に存在するカタラーゼによってセンサ環境から別個に除去される。
【0078】
図5Aから理解できるように、酵素的に形成されたアセトアルデヒドの量は、元々存在していたエタノールの量に比例する。そのため、アセトアルデヒドのキサンチンオキシダーゼ酸化中に作用電極で生成される電流は、存在するアセトアルデヒドの量、ひいてはエタノールの量に比例し得る。作用電極電流とエタノール濃度との相関は、既知のエタノール濃度での電流のルックアップテーブルを参照することにより、又は検量線を利用することにより行われ得る。これらの概念は上記でより詳細に説明されている。
【0079】
同様に、ケトンを分析するときに作用電極で生成される電流は、酸化されてアセトアセトン(acetoacetone)を形成するβ-ヒドロキシ酪酸の量に比例し得る(
図5B~5D)。したがって、作用電極での電流の相関は、エタノールについて上で提供されたものに関連する方法で行われ得る(例えば、検量線又はルックアップテーブルを使用して)。
【0080】
したがって、より具体的な実施形態では、本開示は、アルコールオキシダーゼとキサンチンオキシダーゼの協調酵素反応に基づくアルコールセンサを提供する。より具体的には、アルコールセンサは、少なくとも作用電極、及び作用電極の表面に配置された少なくとも1つの活性領域を含むセンサテールを含み得、ここで、少なくとも1つの活性領域は、アルコールオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、カタラーゼ、ポリマー、及び電子移動剤を含む。特定の実施形態によれば、電子移動剤及びキサンチンオキシダーゼは、ポリマーに共有結合され得るが、アルコールオキシダーゼはポリマーに共有結合されない。アルコールオキシダーゼとキサンチンオキシダーゼは協調して相互作用し、アルコール濃度に比例するシグナルを作用電極で生成することができる。より具体的には、アルコールオキシダーゼ及びキサンチンオキシダーゼは両方とも、前述のことを達成するために作用電極上に直接配置される。
【0081】
より具体的な実施形態によれば、アルコールセンサの少なくとも1つの活性領域内のカタラーゼは、ポリマーに共有結合されていない。カタラーゼは、ポリマーの約1重量%~約50重量%、より具体的には、ポリマーの約1重量%~約10重量%、又はポリマーの約1重量%~約5重量%の範囲の量で存在し得る。
【0082】
したがって、本開示はまた、協調酵素ペアが作用電極の表面に直接配置されている、協調酵素反応に基づく検出方法を提供する。様々な実施形態によれば、検出方法は、分析物センサを、分析物を含む流体に曝露することを含み得、分析物センサは、少なくとも作用電極及び作用電極の表面に配置された少なくとも1つの活性領域を含むセンサテールを含み、少なくとも1つの活性領域は、第1の酵素、第2の酵素、及びポリマーを含む。第1の酵素及び第2の酵素は協調して相互作用することができ、第2の酵素はポリマーに共有結合され、分析物とは非反応性である。この方法はさらに、分析物を第1の酵素と反応させて第1の生成物を形成すること;第1の生成物を第2の酵素と反応させて第2の生成物を形成し、作用電極でシグナルを生成すること;及び、シグナルを流体中の分析物の濃度に相関させることを含む。
【0083】
より具体的な実施形態によれば、前述の方法を実行する場合、電子移動剤もポリマーに共有結合され得る。適切な電子移動剤は、上記でより詳細に説明されている。いくつかの又は他の実施形態では、特に共有結合した電子移動剤が存在する場合、第1の酵素は、少なくとも1つの活性領域ではポリマーに共有結合されていない。
【0084】
より具体的な実施形態では、本開示のエタノール検出方法は、分析物センサを、エタノールを含む流体、特に生物学的流体に曝露することを含み得、分析物センサは、少なくとも作動電極、及び、作用電極の表面に配置され、アルコールオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、カタラーゼ、ポリマー、及び電子移動剤を含む少なくとも1つの活性領域を含むセンサテールを含む。電子移動剤及びキサンチンオキシダーゼはポリマーに共有結合されており、アルコールオキシダーゼはポリマーに共有結合されていない。アルコールオキシダーゼとキサンチンオキシダーゼは協調して相互作用することができる。この方法はさらに、エタノールをアルコールオキシダーゼと反応させてアセトアルデヒドを形成すること;アセトアルデヒドをキサンチンオキシダーゼと反応させて酢酸を形成し、作用電極でシグナルを生成すること;及び、シグナルを流体中のエタノール濃度と相関させることを含む。いくつかの実施形態によれば、流体は生物学的流体であり得、分析物センサは、生体内で生物学的流体に曝露され得る。
【0085】
分析物センサの単一の活性領域内の2つの異なる酵素は、分析物濃度を決定するために互いに協調して相互作用し得るが、酵素はまた、他の実施形態において代替分析物を検出するために互いに独立して機能し得ることが理解されるべきである。例えば、上記の分析物センサの第2の酵素がキサンチンオキシダーゼの場合、分析物センサを使用してエタノールを検出する代わりに、分析物センサを、キサンチンオキシダーゼと親和性のある多種多様な基質のいずれかを検出するために代わりに使用することができる。キサンチンオキシダーゼの代替基質には、例えば、ヒポキサンチン、キサンチン、尿酸、プリン、プテリン、及び同様の化合物が含まれ得る。分析物センサがこのように使用される場合、アルコールが存在しなければ、アルコールオキシダーゼは未使用のままであり、かつ/又はこれらの種がキサンチンオキシダーゼ又は他の種によって除去されない場合、アセトアルデヒド/過酸化水素によって不活性化され得る。したがって、協調酵素を含むセンサは、複数の分析物、協調酵素ペアからの1つの分析物、及び独立して作用する協調酵素ペアのメンバーの一方からの少なくとも第2の分析物を検出できると見なすこともできる。そのようなセンサが単一の分析物をアッセイするか複数の分析物をアッセイするかは、センサがさらされる環境に基づいて決定され得る。
【0086】
上で参照したように、別々の活性領域に配置された複数の酵素も協調して相互作用して、単一の分析物の検出を促進し得る。場合によっては、上記でより詳細に記述したように、複数の酵素の両方が作用電極の表面に直接配置され得る。別々の活性領域に複数の酵素を含む代替の分析物センサ構成では、活性領域の1つを作用電極から隔離して、作用電極への電子移動が1つの活性領域のみから起こるようにすることができる。すなわち、以下でさらに詳細に記述されるように、作用電極から単離された活性領域は、目的の分析物の酵素反応を促進して、作用電極と直接接触する活性領域の酵素と反応する反応生成物(基質)を生成し得る。次に、作用電極と直接接触している活性領域で起こる酵素反応に関連するシグナルが、分析物を検出するための基礎を提供する。シグナルと分析物濃度との相関は、上記でより詳細に記述したのと同様の方法で達成することができる。
【0087】
より具体的には、
図5Eは、本開示の様々な実施形態に従ってグルコースオキシダーゼ及びキサンチンオキシダーゼを使用するエタノール検出に関連する協調酵素反応サイクルを示し、キサンチンオキシダーゼ又はキサンチンオキシダーゼ及びカタラーゼのみが作用電極の表面に配置されている場合、カタラーゼによってさらに媒介される。
図5Eに示される協調酵素反応サイクルは、以下に説明するように、分析中に流体中に互いに共存するグルコース及びエタノールに依存している。グルコースは遍在する生物学的栄養素であるため、生物学的流体をアッセイする際に他の分析物と共存することがよくある。しかしながら、分析中の特定の流体がグルコースを欠く場合、本開示の特定の実施形態は、グルコースを流体に添加し、グルコースオキシダーゼとキサンチンオキシダーゼの協調酵素反応を使用してエタノール又は別のアルコールの検出を促進することを特徴とし得る。
【0088】
図5Eに示される協調酵素反応についてさらに記述する前に、作用電極から隔離された少なくとも1つの活性領域を特徴とする例示的な分析物センサ構成を、最初にさらに詳細に説明する。前述のように、
図2A~4に示される分析物センサ構成はすべて、各作用電極の表面に直接配置された1つ以上の活性領域を有する1つ以上の作用電極を特徴とする。対照的に、
図6A、6B及び6Cは、第1の活性領域が作用電極の表面に直接配置され、第2の活性領域が膜によって作用電極から離隔されている(距離を置いているか又は遠隔にある)作用電極の図を示す。
図6A、6B及び6Cに示される作用電極構成は、
図2A~4に示される特定の作用電極構成のいずれかを代用することができる。すなわち、
図6A、6B及び6Cに示される作用電極構成は、任意の適切な方法で、カウンター電極及び/又は参照電極、膜、基板、及び分析物センサ内の同様の構造と組み合わせることができる。
【0089】
図6Aに示されるように、作用電極400は、その表面に直接配置された活性領域402を有する。活性領域402は、第1のポリマーに共有結合した第1の酵素を含む。典型的には、電子移動剤も活性領域402に存在し、電子移動剤もまたポリマーに共有結合されている。活性領域402はメンブレン404で覆われている。膜404はまた、図示のように、作用電極400の表面、ならびに作用電極400が存在する分析物センサの他の部分を覆うことができる。膜404は、活性領域406を作用電極400から隔離し、その結果、2つの間の電子交換が妨げられる。活性領域406は、第2のポリマーに共有結合した第2の酵素を含むが、別個の電子移動剤は存在しない。
図6Aは、活性領域402の真上に配置された活性領域406を示しており、本開示と互換性のある代替構成において、それらが互いに横方向に離隔され得ることを理解されたい。膜408は、活性領域406、及び任意選択で他のセンサ構成要素を覆うことで、物質移動制限特性を提供する。同様に、
図6Bに示されるように、膜404は、作用電極400上で膜408が行うのと同じ横方向距離を必ずしも延ばす必要はない。実際、
図6Bの膜404は、活性領域402を覆うが、作用電極400の表面の一部のみを覆い、膜408は、活性領域406、膜404の表面、及び、膜404によって覆われていない作用電極400の表面の残りの部分を覆う。活性領域402及び406はまた、
図6Cに示されるように、いくつかの実施形態では、互いに横方向にずらされ得る。ここで、活性領域406は、膜404によって作用電極400から再び隔離されている。
【0090】
膜408は、分析物及び活性領域406における酵素反応を促進するために必要とされる任意の追加の成分に対して透過性である。対照的に、膜404は、活性領域406で形成された生成物に対して透過性である。すなわち、分析物は、活性領域406で反応して第1の生成物を形成し、これは次に膜404を通って拡散し、続いて活性領域402でさらに反応して第2の生成物を形成する。続いて、第2の生成物は、作用電極400との電子交換に基づいて検出可能である。
【0091】
任意選択で、グルコース検出が望まれる場合、活性領域402と406との間にリード410を延在させてもよい。
グルコースオキシダーゼとキサンチンオキシダーゼの協調酵素反応に基づく検出を特徴とするアルコールセンサでは、グルコースオキシダーゼは活性領域406に存在し、キサンチンオキシダーゼは活性領域402に存在する。引き続き
図6A、6B及び6Cを参照しつつ、再び
図5Eを参照すると、グルコースオキシダーゼは、活性領域406に存在し、外因性グルコースをD-グルコノラクトン-1,5-ジオン及び過酸化水素に変換する。アルコールオキシダーゼとキサンチンオキシドとの間の協調酵素反応に基づく検出を特徴とするアルコールセンサ(
図5A)とは異なり、カタラーゼは、
図5Eに示される協調酵素反応においてより積極的な役割を果たす。すなわち、カタラーゼは過酸化水素と反応してカタラーゼ-過酸化水素複合体を形成し(アルコールオキシダーゼとキサンチンオキシダーゼの協調酵素反応においてカタラーゼが示すのと同じ過酸化物除去機能)、続いて複合体はエタノールと反応してアセトアルデヒドを形成する。エタノールをカタラーゼ-過酸化水素複合体と反応させたときに活性領域406で形成されたアセトアルデヒドは、膜404を通って拡散し、これは活性領域406を活性領域402から分離させる。あるいは、カタラーゼは活性領域402に存在してもよく、その場合、活性領域406で形成された過酸化水素は、膜404を通って活性領域402に拡散し、活性領域402でカタラーゼ-過酸化水素複合体を形成し、活性領域402でエタノールをアセトアルデヒドに酸化し得る。アセトアルデヒドが活性領域402で形成されると、協調酵素反応は、
図5Eに示されるように継続し得る。膜404は、アセトアルデヒドに対して透過性である架橋ポリビニルピリジンを含み得る。次に、アセトアルデヒドは、活性領域402においてキサンチンオキシダーゼと反応して、
図5Aについて上で説明したのと同様の方法で酢酸を形成する。
【0092】
したがって、本開示のアルコールセンサは、少なくとも作用電極を含むセンサテール;作用電極の表面に配置された第1の活性領域であって、キサンチンオキシダーゼ、カタラーゼ、第1のポリマー、及び電子移動剤を含み、キサンチンオキシダーゼ及び電子移動剤は、第1のポリマーに共有結合されている第1の活性領域;第1の活性領域を覆う第1の膜であって、第1の膜ポリマーを含み、アセトアルデヒドに対して透過性である第1の膜;第1の膜上に配置された第2の活性領域であって、グルコースオキシダーゼ、カタラーゼ、及び第2のポリマーを含み、グルコースオキシダーゼは、第2のポリマーに共有結合されている第2の活性領域;及び第2の活性領域を覆う第2の膜であって、第2の膜ポリマーを含み、グルコース及びアルコールに対して透過性である第2の膜を含み得る。ここで、グルコースオキシダーゼとキサンチンオキシダーゼは協調して相互作用し、作用電極でアルコール濃度に比例するシグナルを生成することができる。より具体的な実施形態では、アルコールはエタノールであり得る。
【0093】
いくつかの実施形態によれば、第1の膜ポリマー及び第2の膜ポリマーは、互いに異なっていてもよい。いくつかの実施形態によれば、第1の膜ポリマーは、架橋ポリビニルピリジンであり得る。本開示の実施形態において、架橋ポリビニルピリジンは、アセトアルデヒドを容易に透過させる。第2の膜ポリマーは架橋ポリビニルピリジン-co-スチレンポリマーであり得、ここで、ピリジン窒素原子の一部は非架橋ポリ(エチレングリコール)テールで官能化され、ピリジン窒素原子の一部はアルキルスルホン酸基で官能化されたものである。そのような第2の膜ポリマーは、グルコース及びエタノールの両方を容易に透過させる。
【0094】
いくつかの実施形態によれば、カタラーゼは、第1の活性領域又は第2の活性領域において、第1のポリマー又は第2のポリマーに共有結合されていない。カタラーゼは、第1のポリマー、第2のポリマー、第1の膜ポリマー、又は第2の膜ポリマーのいずれかによって、第1の活性領域及び第2の活性領域内に物理的に拘束され得る。
【0095】
同様に、協調して相互作用するグルコースオキシダーゼ及びキサンチンオキシダーゼを含む前述の分析物センサを使用してエタノール又は別のアルコールを分析するための方法は、グルコースをグルコースオキシダーゼで酸化して過酸化水素を生成すること;カタラーゼ-過酸化水素複合体を形成すること;アルコールをカタラーゼ-過酸化水素複合体で酸化してアセトアルデヒドを形成すること;アセトアルデヒドをキサンチンオキシダーゼと反応させて酢酸を形成し、作用電極でシグナルを生成すること;及びシグナルを流体中のアルコール濃度と相関させることを含み得る。本開示の様々な実施形態によれば、流体は、生物学的流体を含み得る。シグナルと流体中のアルコール濃度との相関は、上記でより詳細に概説された任意の適切な相関技術を使用して行うことができる。
【0096】
本開示のさらに他の実施形態では、複数の酵素が、別個の作用電極の活性領域内に配置され得る。そのため、各活性領域内で発生する酵素反応に関連するシグナルは、各作用電極に同時に又は異なる時間に応答させることによって別々に測定することができる。次に、各活性領域に関連するシグナルを、別々の分析物の濃度と相関させることができる。
【0097】
上述したように、膜(すなわち、物質移動制限膜)は、生体適合性を高め、活性領域への分析物フラックスを変更するために、分析物センサの1つ以上の活性領域を覆うことができる。そのような膜は、本明細書に開示される分析物センサのいずれにおいても存在し得る。異なる分析物は所与の膜内で異なる透過性値を示す可能性があるため、複数の分析物を分析するように構成された分析物センサは、各分析物に対して異なる感度を示す可能性がある。異なる感度値に対処するための1つのアプローチは、各活性領域にわたって異なる膜の厚さを利用することを含み得る。このアプローチは実行可能ではあるが、製造の観点から実施するのが難しい場合がある。すなわち、膜堆積に使用される典型的なディップコーティング技術を使用して、異なる場所で膜の厚さを変えることは難しい場合がある。別の可能なアプローチは、分析物ごとに異なるサイズの活性領域を使用することである。
【0098】
別々の作用電極上で異なる分析物をアッセイするように構成された活性領域を有する分析物センサは、異なる分析物感度に関連する前述の問題に対処し得る。すなわち、以下の開示は、膜透過性を各作用電極上で変更し、各位置での分析物膜透過性を平準化することができる様々な方法を提供する。つまり、本明細書の開示は、各作用電極での分析物の透過性及び感度を独立して変化させることを可能にする。本明細書の開示によれば、2つ以上の異なる膜ポリマーを含む物質移動制限膜は、各作用電極でより平準化された分析物透過性を提供し得る。1つ以上の作用電極上の分析物透過性を平準化するのに適し得る特定の膜構成には、それぞれが2つ以上の異なる膜ポリマーを含む二層膜及び混合膜が含まれる。驚くべきことに、所与の分析物の透過性を促進するのに個々には不適切である膜ポリマーを含む二層膜及び混合膜は、以下で記述するように、二層膜又は混合膜に配置されたときに満足のいく性能を提供し得る。このアプローチは、各作用電極上の活性領域のサイズを変化させて、各分析物に同等の感度値を提供することと比較して有利である可能性がある。
【0099】
したがって、いくつかの実施形態では、別個の作用電極上に配置された2つ以上の酵素を特徴とする分析物センサは、少なくとも第1の作用電極及び第2の作用電極、第1の作用電極の表面に位置する第1の活性領域、第2の作用電極の表面に位置する第2の活性領域、第1の活性領域を覆う多成分膜、及び第2の活性領域を覆う均質な膜を含むセンサテールを含み得る。第1の活性領域は、第1のポリマー、及び第1の分析物と反応する第1の分析物応答性酵素を含み、第2の活性領域は、第2のポリマー、及び第2の分析物と反応する第2の分析物応答性酵素を含む。第1の分析物応答性酵素及び第2の分析物応答性酵素は異なり、異なる分析物と反応性である。多成分膜は、互いに異なる少なくとも第1の膜ポリマー及び第2の膜ポリマーを含む。均質な膜は、第1の膜ポリマー及び第2の膜ポリマーのうちの一方を含む。
【0100】
上記の多成分膜の特定の構成は、いくつかの実施形態では二層膜、又は他の実施形態では膜ポリマーの混合物を含み得る。驚くべきことに、以下でさらに詳細に説明するように、二層膜及び混合膜は、分析物の透過性を平準化するように機能し得る。
【0101】
別個の作用電極上に配置された2つの異なる活性領域を有する本開示の分析物センサは、
図3で上記に説明したもの又はそのバリエーションと同様のセンサ構成を使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、カウンター/参照電極は、2つ以上の作用電極を有する分析物センサ内の別個のカウンター電極及び参照電極で置き換えることができる。同様に、別々の作用電極上に配置された2つの異なる活性領域を有する分析物センサ内の層構成及び配置は、
図3に示されるものとは異なる場合がある。各活性領域上の膜配置に関するさらなる詳細は、
図7を参照して以下に提供される。
【0102】
本開示のより具体的な実施形態によれば、複数の作用電極を有する分析物センサは、電子移動剤が各活性領域でポリマーに共有結合している活性領域を含み得る。いくつかの又は他の実施形態では、そのような分析物センサは、第1の活性領域でポリマーに共有結合した第1の分析物応答性酵素及び第2の活性領域でポリマーに共有結合した第2の分析物応答性を特徴とし得る。この場合も、特定の実施形態では、第1の分析物応答性酵素は、グルコースオキシダーゼなどのグルコース応答性酵素であり得、第2の分析物応答性酵素は、乳酸オキシダーゼなどの乳酸応答性酵素であり得る。
【0103】
さらに他のより具体的な実施形態では、複数の作用電極を有する分析物センサは、組織への挿入のために構成されたセンサテールを含み得る。
いくつかの実施形態では、二層膜は、1つの作用電極上の第1の活性領域を覆うことができる。二層膜は、活性領域上で互いに層状になっている第1の膜ポリマー及び第2の膜ポリマーを含む。より具体的な実施形態では、第1の膜ポリマーは、第1の作用電極の活性領域上に直接配置され得、第2の膜ポリマーは、二層膜を画定するために第1の膜ポリマー上に配置され得る。そのような実施形態では、第2の膜ポリマーは、第2の作用電極上に位置する均質な膜中に存在する。そのような二層構成は、いくつかの実施形態において、第1の作用電極上にのみ第1の膜ポリマーをコーティングし(例えば、スプレーコーティング、塗装、インクジェット印刷、ローラコーティングなどによって)、次いで第2の膜ポリマーを両方の作用電極上に同時にコーティング(例えば、ディップコーティング又は同様の技術によって)することにより調製され得る。他の実施形態では、二層膜は、第1の膜ポリマーが第2の作用電極上に配置されて、上記のように構成され得る。
【0104】
図7は、2つの作用電極を有し、2つの作用電極のうちの一方を覆う二層膜を特徴とする分析物センサの一部の例示的な概略図を示し、これは、本明細書の開示のいくつかの実施形態での使用に適合している。
図7に示されるように、分析物センサは、基板612の反対側の面に配置された作用電極614a及び614bを有するセンサテール600を特徴とする。活性領域618aは、作用電極614a上に配置され、活性領域618bは、作用電極614b上に配置される。活性領域618a及び618bは、異なる分析物応答性酵素を含み、本明細書の開示に従って、異なる分析物についてアッセイするように構成される。
図7は、活性領域618a及び618bが、基板612に関して互いにほぼ反対側に配置されることを示しているが、活性領域618a及び618bは、基板612の反対側の面上で互いに横方向に離隔され(ずらされ)得ることを理解されたい。活性領域618a及び618bの横方向に離隔した構成は、以下で記述するように、各活性領域618a及び618bを物質移動制限膜で覆うのに特に有利であり得る。
【0105】
図7にさらに示されるように、活性領域618aは、膜層620で覆われている。膜層620は、単一の膜ポリマーを含む均質な膜である。活性領域618bは、活性領域618bと直接接触する膜層621a及び膜層621aを覆う膜層621bを含む二層膜621で覆われている。膜層621a及び621bは、異なる膜ポリマーを含む。上記のように、特定の実施形態では、膜層620及び膜層621bは、同じ膜ポリマーを含み得る。
【0106】
1つ以上の実施形態によれば、別個の作用電極上に複数の活性領域を有し、活性領域の1つが二層膜で覆われている分析物センサは、平準化された、又は独立して可変の分析物透過性を示し得る。すなわち、分析物センサは、2つの異なる分析物に対して、二層膜が存在しない場合よりも互いに近い感度を有し得る。そのような分析物センサ構成では、均質な膜(例えば、
図7の膜層620)で覆われた活性領域は、第1の分析物に対して、その特定の膜ポリマーに特徴的な分析物透過性を示し得る。驚くべきことに、二層膜(例えば、
図7の二層膜621)は第2の分析物の透過性に悪影響を及ぼさない膜ポリマー(すなわち、中立的な透過性の影響を有する膜ポリマー)を含み得、それにより、第1の膜ポリマーが存在しないかのように、二層膜を含む他方の膜ポリマーが第2の分析物に対してその特徴的な透過性を示すのを可能にする。したがって、様々な実施形態によれば、中立的な透過性の影響を有する膜ポリマー及び均質な膜を含む膜ポリマーは、同じポリマーを構成し得る。
【0107】
いくつかの又は他の特定の実施形態において、中立的な透過性の影響を有する膜ポリマーは、二層膜の内層を含み得る。したがって、そのような実施形態によれば、二層膜の内層及び均質な膜は、同じ膜ポリマーを構成し得る。他の特定の実施形態では、二層膜の外層及び均質な膜は、同じ膜ポリマーを構成し得る。
【0108】
特定の実施形態では、第1の活性領域は、グルコースオキシダーゼなどのグルコース応答性酵素を含み得、第2の活性領域は、乳酸オキシダーゼなどの乳酸応答性酵素を含み得る。したがって、そのような実施形態によれば、グルコース応答性酵素を含む第1の活性領域は、二層膜で覆われ得、乳酸応答性酵素を含む第2の活性領域は、均質な(単一成分膜ポリマー)膜により過剰作用(overacted)され得る。さらにより具体的な実施形態では、第2の活性領域は、ポリマー、アルブミン、及びポリマーに共有結合した乳酸応答性酵素を含み得る。さらにさらに具体的な実施形態では、第2の活性領域を覆う均質な膜は、少なくとも架橋ポリビニルピリジンホモポリマー又はコポリマーを含み得、第1の活性領域を覆う二層膜はまた、ポリビニルピリジンホモポリマー又はコポリマーを含み得る。
【0109】
本開示の他の実施形態では、多成分膜は、第1の膜ポリマーと第2の膜ポリマーとの混合物(均一なブレンド)を含み得る。そのような分析物センサ構成は、均一なブレンドの2つの異なる膜ポリマーを含む混合膜で二層膜621が置換されていることを除いて、外観が
図7に示されるものと類似したものであり得る。活性領域の1つに配置された二層膜を含む分析物センサと同様に、混合膜の第1の膜ポリマー又は第2の膜ポリマーの一方を含む均質な膜が、第2の作用電極上の他方の活性領域を覆ってもよい。
【0110】
二層膜と同様に、第2の分析物の透過性に中立的な影響を与える膜ポリマーを含む混合膜は、混合膜が第2の分析物に対し、混合物中の他方の膜ポリマーにかなり特徴的な透過性を示すことを可能にし得る。したがって、本開示の様々な実施形態によれば、均質な膜の膜ポリマー及び混合膜の膜ポリマーの1つは、混合膜を通る第2の分析物の透過性がその膜ポリマーによって実質的に変化しないように選択され得る。特定の実施形態では、第1の活性領域は、グルコースオキシダーゼなどのグルコース応答性酵素を含み得、第2の活性領域は、乳酸オキシダーゼなどの乳酸応答性酵素を含み得る。したがって、そのような実施形態によれば、グルコース応答性酵素を含む第1の活性領域は、混合膜で覆われ得、乳酸応答性酵素を含む第2の活性領域は、均質な(単一成分膜ポリマー)膜により過剰作用(overacted)され得る。さらにより具体的な実施形態では、第2の活性領域は、ポリマー、アルブミン、及びポリマーに共有結合した乳酸応答性酵素を含み得る。さらに具体的な実施形態では、第2の活性領域を覆う均質な膜は、少なくとも架橋ポリビニルピリジンホモポリマー又はコポリマーを含み得、第1の活性領域を覆う混合膜はまた、ポリビニルピリジンホモポリマー又はコポリマーを含み得る。
【0111】
上記で参照したように、二層膜及び混合膜は、本開示の分析物センサにおける分析物透過性を平準化することができ、ここで、2つ以上の活性領域は、互いに空間的に分離され、異なる物質移動制限膜で覆われ得る。具体的には、本開示の二層膜及び混合膜は、別個の作用電極を有し、異なる酵素を有する2つ以上の活性領域を含み、少なくとも1つの活性領域が各作用電極に配置される分析物センサにおいて、分析物透過性を平準化することができる。したがって、そのような膜は、センサ感度を各分析物に対して独立して変化させることを有利に可能にし得る。膜の厚さ及び/又は第2の膜ポリマーに対する第1の膜ポリマーの相対的な比率は、各作用電極での分析物の特徴的な透過性を調整するために変更され得る他のパラメータを表す。
【0112】
したがって、2つの作用電極を含む分析物センサを使用するための方法は、分析物センサを、少なくとも1つの分析物を含む流体に曝露することを含み得る。分析物センサは、少なくとも第1の作用電極及び第2の作用電極を含むセンサテールを含む。第1の活性領域が、第1の作用電極の表面に配置され、第2の活性領域が、第2の作用電極の表面に配置される。第1の活性領域は、第1のポリマー及び第1の分析物と反応する第1の分析物応答性酵素を含み、第2の活性領域は、第2のポリマー及び第2の分析物と反応する第2の分析物応答性酵素を含む。第1の分析物応答性酵素と第2の分析物応答性酵素とは異なる。多成分膜が第1の活性領域を覆い、均質な膜が第2の活性領域を覆う。多成分膜は、互いに異なる少なくとも第1の膜ポリマー及び第2の膜ポリマーを含み、均質な膜は、第1の膜ポリマー又は第2の膜ポリマーのうちの一方を含む。この方法は、第1の活性領域の酸化還元電位以上で第1のシグナルを取得すること、第2の活性領域の酸化還元電位以上で第2のシグナルを取得すること、及び第1のシグナルを流体中の第1の分析物の濃度に、そして第2のシグナルを流体中の第2の分析物の濃度に相関させることをさらに含む。第1のシグナルは、流体中の第1の分析物の濃度に比例し、第2のシグナルは、流体中の第2の分析物の濃度に比例する。
【0113】
より具体的な実施形態によれば、第1のシグナル及び第2のシグナルは、異なる時間に測定され得る。したがって、そのような実施形態では、電位は、第1の作用電極及び第2の作用電極に交互に印加され得る。他の実施形態では、第1のシグナル及び第2のシグナルは、第1のチャネル及び第2のチャネルを介して同時に測定することができ、その場合、電位を両方の電極に同時に印加することができる。
【0114】
本明細書に開示される実施形態には、以下が含まれる。
A.異なる分析物応答性酵素を有する2つの活性領域を含む分析物センサ。分析物センサは、少なくとも作用電極を含むセンサテール;及び作用電極の表面に配置された少なくとも2つの活性領域を含み、各活性領域は、分析物応答性酵素及びポリマーを含み、各活性領域における分析物応答性酵素は異なる。ここで、各活性領域は酸化還元電位を有し、第1の活性領域の酸化還元電位は、第2の活性領域の酸化還元電位から十分に離れており、第2の活性領域からのシグナルの生成から独立して、第1の活性領域からのシグナルを生成することができる。
【0115】
B.異なる分析物応答性酵素を含む第1の活性領域及び第2の活性領域を使用して2つ以上の分析物をアッセイするための方法。この方法は、分析物センサを、少なくとも1つの分析物を含む流体に曝露すること;分析物センサは、少なくとも作用電極と、作用電極の表面に配置された少なくとも2つの活性領域とを含むセンサテールを含み、各活性領域は、分析物応答性酵素及びポリマーを含むこと;各活性領域における分析物応答性酵素は異なっていること;各活性領域は酸化還元電位を有し、第1の活性領域の酸化還元電位は、第2の活性領域の酸化還元電位から十分に離れており、第2の活性領域からのシグナルの生成から独立して、第1の活性領域からのシグナルを生成することができること;第1の活性領域の酸化還元電位以上で、第1の分析物の濃度に比例する第1のシグナルを取得すること;第2の活性領域の酸化還元電位以上で第2のシグナルを取得することであって、第2のシグナルは、第1の活性領域からのシグナル寄与及び第2の活性領域からのシグナル寄与を含む複合シグナルであること;及び、第2のシグナルから第1のシグナルを差し引いて、第2の分析物の濃度に比例する差分シグナルを取得することを含む。
【0116】
C.互いに協調して相互作用することができる2つ以上の酵素を含む分析物センサ。分析物センサは、少なくとも作用電極を含むセンサテール;及び作用電極の表面に配置された少なくとも1つの活性領域を含み、少なくとも1つの活性領域は、第1の酵素、第2の酵素、及びポリマーを含み、第1の酵素及び第2の酵素は協調して相互作用することができ;第1の酵素は分析物を第1の生成物に変換することができ、第2の酵素は第1の生成物を第2の生成物に変換して作用電極でシグナルを生成することができ;第2の酵素はポリマーに共有結合されており、分析物と非反応性である。
【0117】
D.互いに協調して相互作用することができる2つ以上の酵素を使用して分析物をアッセイするための方法。この方法は、分析物センサを、分析物を含む流体に曝露すること;分析物センサは、少なくとも作用電極と、作用電極の表面に配置された少なくとも1つの活性領域とを含むセンサテールを含み、少なくとも1つの活性領域は、第1の酵素、第2の酵素、及びポリマーを含むこと;第1の酵素と第2の酵素は協調して相互作用することができ、第2の酵素はポリマーに共有結合されており、分析物と非反応性であること;分析物を第1の酵素と反応させて第1の生成物を形成すること;第1の生成物を第2の酵素と反応させて第2の生成物を形成し、作用電極でシグナルを生成すること;及びシグナルを流体中の分析物の濃度に相関させることを含む。
【0118】
E.アルコールセンサ。アルコールセンサは、少なくとも作用電極を含むセンサテール;及び作用電極の表面に配置された少なくとも1つの活性領域を含み、少なくとも1つの活性領域は、アルコールオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、カタラーゼ、ポリマー、及び電子移動剤を含み;電子移動剤及びキサンチンオキシダーゼはポリマーに共有結合されており、アルコールオキシダーゼはポリマーに共有結合されておらず;アルコールオキシダーゼとキサンチンオキシダーゼは協調して相互作用して、アルコール濃度に比例するシグナルを作用電極で生成することができる。
【0119】
F.アルコールを検出する方法。この方法は、分析物センサをエタノールを含む流体に曝露すること;分析物センサは、少なくとも作用電極及び作用電極の表面に配置された少なくとも1つの活性領域を含むセンサテールを含み、少なくとも1つの活性領域は、アルコールオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、カタラーゼ、ポリマー、及び電子移動剤を含むこと;電子移動剤及びキサンチンオキシダーゼはポリマーに共有結合されており、アルコールオキシダーゼはポリマーに共有結合されていないこと;及び、アルコールオキシダーゼとキサンチンオキシダーゼは協調して相互作用することができること;エタノールをアルコールオキシダーゼと反応させてアセトアルデヒドを形成すること;アセトアルデヒドをキサンチンオキシダーゼと反応させて酢酸を形成し、作用電極でシグナルを生成すること;及びシグナルを流体中のエタノール濃度と相関させることを含む。
【0120】
G.異なる物質移動制限膜で覆われた2つ以上の作用電極を含む分析物センサ。分析物センサは、少なくとも第1の作用電極及び第2の作用電極を含むセンサテール;第1の作用電極の表面に配置された第1の活性領域であって、第1のポリマー及び第1の分析物と反応する第1の分析物応答性酵素を含む第1の活性領域;第2の作用電極の表面に配置された第2の活性領域であって、第2のポリマー及び第2の分析物と反応する第2の分析物応答性酵素を含む第2の活性領域;ここで、第1の分析物応答性酵素及び第2の分析物応答性酵素は異なっていること;第1の活性領域を覆う多成分膜であって、互いに異なる少なくとも第1の膜ポリマー及び第2の膜ポリマーを含む多成分膜;及び、第2の活性領域を覆い、多成分膜とは組成が異なる均質な膜であって、第1の膜ポリマー及び第2の膜ポリマーのうちの一方を含む均質な膜を含む。
【0121】
H.異なる物質移動制限膜で覆われた2つの作用電極を使用して2つ以上の分析物をアッセイする方法。この方法は、分析物センサを、少なくとも1つの分析物を含む流体に曝露すること;分析物センサは、少なくとも第1の作用電極及び第2の作用電極を含むセンサテールを含むこと;第1の活性領域が、第1の作用電極の表面に配置され、第1の活性領域は、第1のポリマー及び第1の分析物と反応する第1の分析物応答性酵素を含み、第2の活性領域が、第2の作用電極の表面に配置され、第2の活性領域は、第2のポリマー及び第2の分析物と反応する第2の分析物応答性酵素を含むこと;第1の分析物応答性酵素及び第2の分析物応答性酵素は異なっていること;及び、多成分膜が第1の活性領域を覆い、均質な膜が第2の活性領域を覆い、多成分膜は、互いに異なる少なくとも第1の膜ポリマー及び第2の膜ポリマーを含み、均質な膜は、第1の膜ポリマー又は第2の膜ポリマーのうちの一方を含み、多成分膜とは組成が異なっていること;第1の活性領域の酸化還元電位以上で、流体中の第1の分析物の濃度に比例する第1のシグナルを取得すること;第2の活性領域の酸化還元電位以上で、流体中の第2の分析物の濃度に比例する第2のシグナルを取得すること;及び、第1のシグナルを流体中の第1の分析物の濃度に相関させ、第2のシグナルを流体中の第2の分析物の濃度に相関させることを含む。
【0122】
I.協調して相互作用するグルコースオキシダーゼとキサンチンオキシダーゼを含むアルコールセンサ。アルコールセンサは、少なくとも作用電極を含むセンサテール;作用電極の表面に配置された第1の活性領域であって、キサンチンオキシダーゼ、カタラーゼ、第1のポリマー、及び電子移動剤を含む第1の活性領域;キサンチンオキシダーゼ及び電子移動剤は、第1のポリマーに共有結合されていること;第1の活性領域を覆う第1の膜であって、第1の膜ポリマーを含み、アセトアルデヒドに対して透過性である第1の膜;第1の膜上に配置された第2の活性領域であって、グルコースオキシダーゼ、カタラーゼ、及び第2のポリマーを含む第2の活性領域;グルコースオキシダーゼは、第2のポリマーに共有結合されていること;第2の活性領域を覆う第2の膜であって、第2の膜ポリマーを含み、グルコース及びアルコールに対して透過性である第2の膜;グルコースオキシダーゼとキサンチンオキシダーゼは協調して相互作用して、アルコール濃度に比例するシグナルを作用電極で生成することができることを含む。
【0123】
J.グルコースオキシダーゼとキサンチンオキシダーゼとの間の協調的相互作用を使用してアルコールを検出するための方法。この方法は、分析物センサをエタノール及びグルコースを含む流体に曝露すること;分析物センサは、以下を含むセンサテールを含むこと:少なくとも作用電極;作用電極の表面に配置された第1の活性領域であって、キサンチンオキシダーゼ、カタラーゼ、第1のポリマー、及び電子移動剤を含み、キサンチンオキシダーゼ及び電子移動剤は、第1のポリマーに共有結合している第1の活性領域;第1の活性領域を覆う第1の膜であって、第1の膜ポリマーを含み、アセトアルデヒドに対して透過性である第1の膜;第1の膜上に配置された第2の活性領域であって、グルコースオキシダーゼ、カタラーゼ、及び第2のポリマーを含み、グルコースオキシダーゼは、第2のポリマーに共有結合している第2の活性領域;及び第2の活性領域を覆う第2の膜であって、第2の膜ポリマーを含み、グルコース及びアルコールに対して透過性である第2の膜;グルコースオキシダーゼとキサンチンオキシダーゼは協調して相互作用することができること;グルコースをグルコースオキシダーゼで酸化して過酸化水素を生成すること;カタラーゼ-過酸化水素複合体を形成すること;アルコールをカタラーゼ-過酸化水素複合体で酸化してアセトアルデヒドを形成すること;アセトアルデヒドをキサンチンオキシダーゼと反応させて酢酸を形成し、作用電極でシグナルを生成すること;及びシグナルを液体中のアルコール濃度と相関させることを含む。
【0124】
実施形態A及びBのそれぞれは、以下の追加の要素のうちの1つ以上を任意の組み合わせで有し得る:
要素1:センサテールは、組織への挿入のために構成されている。
【0125】
要素2:第1の活性領域の酸化還元電位は、第2の活性領域の酸化還元電位から少なくとも約100mV離れている。
要素3:第1の活性領域は、第1の電子移動剤を含み、第2の活性領域は、第2の電子移動剤を含み、第1及び第2の電子移動剤は異なっている。
【0126】
要素4:第1の電子移動剤は、第1の活性領域でポリマーに共有結合されており、第2の電子移動剤は、第2の活性領域でポリマーに共有結合されている。
要素5:各活性領域の分析物応答性酵素はポリマーに共有結合されている。
【0127】
要素6:分析物センサは、少なくとも少なくとも2つの活性領域を覆う物質移動制限膜をさらに含む。
要素7:少なくとも2つの活性領域のうちの少なくとも1つは、2つ以上の分析物応答性酵素を含み、2つ以上の分析物応答性酵素は協調して相互作用して、単一の分析物の濃度に比例するシグナルを生成する。
【0128】
要素8:流体は生物学的流体であり、分析物センサは生体内で生物学的流体に曝露される。
要素9:物質移動制限膜は、少なくとも上記少なくとも2つの活性領域を覆う。
【0129】
要素10:分析物センサは、第1の酵素としてグルコースオキシダーゼ及び第2の酵素として乳酸オキシダーゼを含む。
実施形態C及びDのそれぞれは、以下の追加の要素のうちの1つ以上を任意の組み合わせで有し得る。
【0130】
要素11:第1の酵素はアルコールオキシダーゼであり、第2の酵素はキサンチンオキシダーゼである。
要素12:少なくとも1つの活性領域は、カタラーゼをさらに含む。
【0131】
要素13:カタラーゼはポリマーに共有結合されていない。
要素14:アルコールオキシダーゼはポリマーに共有結合されていない。
要素15:第1の酵素はポリマーに共有結合されていない。
【0132】
要素16:少なくとも1つの活性領域は、ポリマーに共有結合している電子移動剤を含む。
要素17:センサテールは、組織への挿入のために構成されている。
【0133】
要素18:分析物センサは、少なくとも上記少なくとも1つの活性領域を覆う物質移動制限膜をさらに含む。
要素19:流体は生物学的流体であり、分析物センサは生体内で生物学的流体に曝露される。
【0134】
要素20:物質移動制限膜は、少なくとも1つの活性領域を覆う。
実施形態E及びFのそれぞれは、以下の追加の要素のうちの1つ以上を任意の組み合わせで有し得る。
【0135】
要素21:カタラーゼはポリマーに共有結合されていない。
要素22:センサテールは、組織への挿入のために構成されている。
要素23:アルコールセンサは、少なくとも上記少なくとも1つの活性領域を覆う物質移動制限膜をさらに含む。
【0136】
要素24:流体は生物学的流体であり、分析物センサは生体内で生物学的流体に曝露される。
要素25:物質移動制限膜は、少なくとも1つの活性領域を覆う。
【0137】
実施形態G及びHのそれぞれは、以下の追加の要素のうちの1つ以上を任意の組み合わせで有し得る。
要素26:多成分膜は二層膜を含む。
【0138】
要素27:第1の膜ポリマーが第1の活性領域上に直接配置され、第2の膜ポリマーが第1の膜ポリマー上に配置されて二層膜を画定し、第2の膜ポリマーは均質な膜中にも存在する。
【0139】
要素28:多成分膜は、第1の膜ポリマーと第2の膜ポリマーとの混合物を含む。
要素29:センサテールは、組織への挿入のために構成されている。
要素30:各活性領域は、ポリマーに共有結合している電子移動剤をさらに含む。
【0140】
要素31:第1の分析物応答性酵素は、第1の活性領域でポリマーに共有結合され、第2の分析物応答性酵素は、第2の活性領域でポリマーに共有結合されている。
要素32:電子移動剤は、各活性領域においてポリマーに共有結合されている。
【0141】
要素33:各活性領域の分析物応答性酵素は、ポリマーに共有結合されている。
要素34:流体は生物学的流体であり、分析物センサは生体内で生物学的流体に曝露される。
【0142】
要素35:第1のシグナル及び第2のシグナルは、異なる時間に測定される。
要素36:第1のシグナル及び第2のシグナルは、第1のチャネル及び第2のチャネルを介して同時に測定される。
【0143】
実施形態I及びJのそれぞれは、以下の追加の要素のうちの1つ以上を任意の組み合わせで有し得る。
要素37:カタラーゼは、第1のポリマー又は第2のポリマーに共有結合されていない。
【0144】
要素38:センサテールは、組織への挿入のために構成されている。
要素39:第1の膜ポリマー及び第2の膜ポリマーは互いに異なる。
要素40:ここで、第1の膜ポリマーは、架橋ポリビニルピリジンを含む。
【0145】
要素41:流体は生物学的流体であり、分析物センサは生体内で生物学的流体に曝露される。
非限定的な例として、A~Jに適用可能な例示的な組み合わせには、以下が含まれる。
【0146】
要素1及び2;1及び3;1、3、及び4;1及び5;1及び6;1及び7;2及び3;2~4;2及び5;2及び6;2及び7;3~5;3及び4;3及び5;3及び6;3及び7;5及び6;6及び7;2、3、及び5;2、3、及び6;2~5;ならびに2、5及び6と組み合わせたAの分析物センサ。要素2及び3;2~4;2及び5;2及び6;2及び7;2及び8;3~5;3及び4;3及び5;3及び6;3及び7;3及び8;5及び6;5及び8;6及び7;6及び8;7及び8;2、3及び5;2、3、5及び8;2、3及び6;2、3、6及び8;2~5;2~5及び8;2、5及び6;2、5、6及び8;2、3及び8;3、5及び8;2、6及び8;2、5及び8;2~8のいずれか1つ及び9;ならびに2~8のいずれか1つ及び10と組み合わせたBの方法。
【0147】
要素11及び12;11、12及び13;12及び13;11及び14;11及び15;11及び17;11及び18;12及び13;12及び14;12及び15;12及び16;12及び17;12及び18;15及び16;15及び17;15及び18;16及び17;16及び18;17及び18;11、12及び13;11、12及び14;11~14;11~14及び16;11~14及び17;11~14及び18;15~17;15~18;ならびに15、17及び18と組み合わせたCの分析物センサ。要素11及び12;11、12及び13;12及び13;11及び14;11及び15;11及び17;11及び18;11及び19;11及び20;12及び13;12及び14;12及び15;12及び16;12及び17;12及び18;12及び19;12及び20;15及び16;15及び17;15及び18;15及び19;15及び20;16及び17;16及び18;16及び19;16及び20;17及び18;17及び19;17及び20;18及び19;18及び20;19及び20;11、12及び13;11、12、13及び19;11、12、13及び20;11、12及び14;11、12、14及び19;11、12、14及び20;11~14;11~14及び19;11~14及び20;11~14及び16;11~14、16及び19;11~14、16及び20;11~14及び17;11~14、17及び19;11~14、17及び20;11~14及び18;11~14、18及び19;11~14、18及び20;15~17;15~17及び19;15~17及び20;15~18;15~18及び19;15~18及び20;15、17及び18;15、17、18及び19;15、17、18及び20;11~16のいずれか1つ及び19;ならびに11~16のいずれか1つ及び20と組み合わせたDの方法。
【0148】
要素21及び22;21及び23;22及び23;及び21~23と組み合わせたEの分析物センサ。要素21及び22;21及び23;22及び23;21~23;21及び24;21及び25と組み合わせたFの方法。
【0149】
要素26及び27;26及び29;26、27及び29;26及び30;26、27及び30;26及び31;26、27及び31;28及び29;28及び30;28~30;28及び31;29及び30;29及び31;ならびに30及び31と組み合わせたGの分析物センサ。
【0150】
要素26及び27;26及び29;26、27及び29;26及び30;26、27及び30;26及び31;26、27及び31;28及び29;28及び30;28~30;28及び31;29及び30;29及び31;30及び31;26及び33;26、27及び33;26及び34;26、27、34;26及び35;26、27及び35;26及び36;26、27及び36;28及び33;28及び34;28及び35;28及び36;30及び33;30及び34;30及び35;30及び36;33及び34;33及び35;33及び36;34及び35;ならびに34及び36と組み合わせたHの方法。
【0151】
要素37及び38;37及び39;37及び40;38及び39;38及び40;ならびに39及び40と組み合わせたIの分析物センサ。要素37及び39;37及び40;37及び41;39及び40;39及び41;ならびに40及び41と組み合わせたJの方法。。
【0152】
本明細書に開示されるさらなる実施形態には、以下が含まれる。
A1:多成分膜を備えた分析物センサ。分析物センサは、組織に挿入するように構成されたセンサテールであって、少なくとも作用電極を含むセンサテール;及びセンサテール上に配置された、少なくとも1つの分析物の濃度を測定するための少なくとも2つの異なる酵素を含む第1及び第2の活性領域を含み;第1の活性領域は、互いに異なる第1の膜ポリマー及び第2の膜ポリマーで覆われている。
【0153】
B1:作用電極上に2つの活性領域を持ち、異なる分析物を検知するように構成された分析物センサ。分析物センサは、組織に挿入するように構成され、少なくとも作用電極を含むセンサテール;及びセンサテール上に配置された少なくとも2つの活性領域を含み、各活性領域は、酵素、電子移動剤、及びポリマーを含み、各活性領域の酵素は異なり、異なる分析物に応答し;各活性領域は酸化還元電位を有し、第1の活性領域の酸化還元電位は、第2の活性領域の酸化還元電位から十分に離れており、第2の活性領域からのシグナル生成とは独立して第1の活性領域からシグナルを生成することができる。
【0154】
実施形態A1は、以下の追加の要素のうちの1つ以上を任意の組み合わせで有することができる。
要素1’:第1の活性領域は、第1の膜ポリマー及び第2の膜ポリマーの混合物で覆われ、第1の膜ポリマー及び第2の膜ポリマーのうちの一方は、均質な膜として第2の活性領域を覆う。
【0155】
要素2’:第1の活性領域は、第2の膜ポリマー上に配置された第1の膜ポリマーを含む二層膜で覆われ、第2の膜ポリマーは、均質な膜として第2の活性領域を覆う。
要素3’:第1の活性領域は、少なくとも2つの異なる酵素のうちの第1の酵素を含み、第2の活性領域は、少なくとも2つの異なる酵素のうちの第2の酵素を含む。
【0156】
要素4’:第1の酵素は少なくとも1つの分析物と非反応性であり、第1及び第2の酵素は協調して相互作用して、上記少なくとも1つの分析物の濃度に比例するシグナルを生成することができる。
【0157】
要素5’:第2の酵素は、少なくとも1つの分析物を第1の酵素と反応する生成物に変換することができ、その結果、第1の酵素は、生成物を反応させて作用電極でシグナルを生成することができる。
【0158】
要素6’:第1の酵素はキサンチンオキシダーゼであり、第2の酵素はグルコースオキシダーゼであり、第1の活性領域及び第2の活性領域のうちの少なくとも一方はカタラーゼをさらに含む。
【0159】
要素7’:カタラーゼが第1の活性領域に存在する。
要素8’:第1の活性領域は、作用電極上に直接配置され、さらに電子移動剤を含む。
要素9’:第1の膜ポリマーは第1の活性領域上に直接配置され、第2の活性領域は第1の膜ポリマー上に直接配置され、第2の膜ポリマーは第2の活性領域上に直接配置される。
【0160】
要素10’:センサテールは、第1の作用電極及び第2の作用電極を含み、第1の活性領域は、第1の作用電極の表面に配置され、第2の活性領域は、第2の作用電極の表面に配置され、第1の酵素は、第1の分析物と反応して第1の分析物の濃度に比例するシグナルを生成し、第2の酵素は第2の分析物と反応して第2の分析物の濃度に比例するシグナルを生成する。
【0161】
要素11’:第1及び第2の活性領域のそれぞれは酸化還元電位を有し、第1の活性領域の酸化還元電位は、第2の活性領域の酸化還元電位から十分に離れており、第2の活性領域からのシグナルの生成とは独立して第1の活性領域からのシグナルの生成を可能にする。
【0162】
要素12’:第1の活性領域の酸化還元電位は、第2の活性領域の酸化還元電位から少なくとも約100mV離れている。
要素13’:第1の活性領域からのシグナルは第1の分析物濃度に対応し、第2の活性領域からのシグナルは第2の分析物濃度に対応する。
【0163】
要素14’:第1の活性領域は、第1の電子移動剤を含み、第2の活性領域は、第1の電子移動剤とは異なる第2の電子移動剤を含む。
実施形態B1は、以下の追加の要素のうちの1つ以上を任意の組み合わせで有することができる。
【0164】
要素15’:第1の活性領域の酸化還元電位は、第2の活性領域の酸化還元電位から少なくとも約100mV離れている。
要素16’:第1の活性領域は、第1の電子移動剤を含み、第2の活性領域は、第1の電子移動剤とは異なる第2の電子移動剤を含む。
【0165】
要素17’:第1及び第2の活性領域は、物質移動制限膜で覆われ、第1の活性領域は、単一の膜ポリマーで覆われ、第2の活性領域は、2つ以上の異なる膜ポリマーで覆われる。
【0166】
本明細書に記載の実施形態のより良い理解を容易にするために、様々な代表的な実施形態の以下の実施例が与えられる。以下の実施例は、本発明の範囲を制限又は定義するものと解されるべきではない。
【0167】
実施例
実施例1:単一の作用電極上に2つの異なる活性領域を有する分析物センサを使用したグルコース及び乳酸塩の検出。異なるポリ(ビニルピリジン)結合遷移金属錯体を含む2つの溶液を調製した。第1の溶液のポリマーの構造を式1に示し、第2の溶液のポリマーの構造を式2に示す。これらのポリマーに関するさらなる詳細は、上記の参照により組み込まれた、共通に所有されている米国特許第6,605,200号に提供されている。各モノマーの下付き文字は、例示的な原子比を表す。
【0168】
【0169】
Ag/AgCl参照に対する式1のポリマーの酸化還元電位は-50mVであり、同じ参照に対する式2のポリマーの酸化還元電位は+220mV(270mVの離隔、
図8参照)であった。それぞれの電子移動剤として機能する遷移金属錯体に加えて、式1のポリマーは、それに共有結合したグルコースオキシダーゼ(GOX)を含み、式2のポリマーは、作用電極上への堆積及び硬化後にそれに共有結合したラクトースオキシダーゼ(LOX)を含んでいた。架橋は、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEGDE400)を用いて達成された。式1のポリマー及び式2のポリマーを含む溶液は、以下の表1及び2に指定されるように調合された。
【0170】
【0171】
【0172】
各活性領域を堆積するために、約20nLの各溶液を炭素作用電極上に堆積させて、それぞれが約0.1mm2の面積を有する2つの分かれた別個のスポットを形成した。1つのスポットはグルコースオキシダーゼ配合物を含み、もう1つのスポットはラクトースオキシダーゼ配合物を含んでいた。堆積後、作用電極を25℃で一晩硬化させた。
【0173】
硬化後、作用電極上に膜が堆積した。膜ポリマーは、2018年6月13日に出願され、「温度非感受性膜材料及びそれを含む分析物センサ」(Temperature-Insensitive Membrane Materials and Analyte
Sensors Containing the Same)と題された米国仮特許出願第62/684,438号に記載されているように、アミンを含まないポリエーテル側鎖官能基を有するポリビニルピリジンコポリマーであった。膜の堆積は、4mLの膜ポリマー(120mg/mL)と0.35mL PEG1000(200mg/mL)を含む溶液に電極を3回ディップコーティングすることによって達成された。スプレーコーティング、スクリーン印刷、又は同様のプロセスを交互に使用して、膜を堆積させることができる。堆積後、電極を25℃で一晩硬化させ、次に乾燥したバイアル中で56℃で2日間さらに硬化させた。
【0174】
製造後、グルコースも乳酸塩も含まない緩衝液中でサイクリックボルタンメトリーにより電極を分析した。得られたサイクリックボルタモグラムを
図8に示す。グルコース及び乳酸塩のいずれからも電流の寄与がなかったため、
図8は、2つのオスミウム錯体に特徴的なアノード及びカソードのピークを示している。上記で報告された酸化還元電位は、各オスミウム錯体のカソード及びアノードピークの平均から計算された。
【0175】
グルコース及び乳酸塩を分析するために、電極を、第1のポリマーの平均酸化還元電位を超える電位、具体的には+40mV(
図8のE1)に配置した。この電位では、第1のポリマー及びグルコース中のオスミウム錯体の酸化が発生する可能性があるが、第2のポリマー又は乳酸塩中のオスミウム錯体の酸化は発生しない。両方のオスミウム錯体、及びグルコースと乳酸塩の両方を酸化するために、電極を、第2のポリマーの平均酸化還元電位を超える電位、具体的には+250mV(
図8のE2)に配置した。
【0176】
グルコース及び乳酸塩の分析は、5mMのグルコース及び5mMの乳酸塩を含む緩衝液に電極を浸漬することによって実施され、E1及びE2電位が連続的に適用された。
図9は、E1とE2の間で循環されたときの5mMのグルコース/5mMの乳酸緩衝液における電極応答の4つの複製を示している。示されているように、E1での電流は約5nAであり、これはグルコースの酸化によるものであり、E2での電流は約10.5nAであり、これはグルコースと乳酸の両方の酸化によるものである。E1とE2で測定された電流の差をとると、乳酸の酸化によるE2での約5.5nAの寄与が得られる。未知のグルコース及び乳酸濃度は、ルックアップテーブル又は検量線と比較することによって同様に分析することができる。
【0177】
実施例2A:単一の作用電極上で協調して動作する2つの異なる酵素(XOX/AOX)を有する分析物センサを使用したエタノールの検出。表3に示す配合のスポッティング溶液を調製した。すべての成分をpH8の10mM HEPES緩衝液に溶解させた。架橋は、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを用いて達成された。
【0178】
【0179】
約15nLの溶液を、約0.05mm2の面積を有する単一のスポットとして炭素作用電極上に堆積させた。堆積後、作用電極を25℃で一晩硬化させた。
硬化後、100mg/mL PVP及び100mg/mL PEGDE400を含むコーティング溶液から、ポリ(4-ビニルピリジン)(PVP)膜を作用電極上に堆積させた。膜の堆積は、コーティング溶液に電極を3回ディップコーティングすることによって達成された。堆積後、電極を25℃で一晩硬化させ、次に乾燥バイアル中で56℃で2日間さらに硬化させた。スプレーコーティング、スクリーン印刷、又は同様のプロセスを交互に使用して、膜を堆積させることができる。
【0180】
それぞれが様々な濃度のエタノールを含むエタノール含有PBS溶液に電極を浸すことにより、エタノール分析を行った。
図10は、様々なエタノール濃度への曝露の際の、検知スポットにアルコールオキシダーゼ及びキサンチンオキシダーゼを一緒に含む電極の応答の3つの複製を示す。示されているように、電流応答は、新しいエタノール濃度への曝露後、数分の間に増加してその後安定した。
図11Aは、エタノール濃度に対する平均電流応答の例示的なプロットを示す。
図11Bは、単一のセンサに対応するデータを示す。示されているように、センサ応答は、0~10mMのエタノール濃度範囲にわたってほぼ直線状であった。
【0181】
実施例2B:単一の作用電極上で協調して動作する2つの異なる酵素(XOX/GOX)を有する分析物センサを使用したエタノールの検出。表4に示される配合を有する第1のスポッティング溶液を調製した。すべての成分をpH8の10mM HEPES緩衝液に溶解させた。架橋は、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを用いて達成された。
【0182】
【0183】
約15nLの第1のスポッティング溶液を、約0.05mm2の面積を有する単一のスポット(XOXスポット)として炭素作用電極上に堆積させた。堆積後、作用電極を25℃で一晩硬化させた。
【0184】
硬化後、100mg/mL PVP及び100mg/mL PEGDE400を含むコーティング溶液から、ポリ(4-ビニルピリジン)(PVP)膜を作用電極及びXOXスポット上に堆積させた。膜の堆積は、コーティング溶液に電極を3回ディップコーティングすることによって達成された。スプレーコーティング、スクリーン印刷、又は同様のプロセスを交互に使用して、膜を堆積させることができる。堆積後、電極を25℃で一晩硬化させ、次に乾燥バイアル中で56℃で2日間さらに硬化させた。
【0185】
表5に示される配合を有する第2のスポッティング溶液を調製した。すべての成分をpH8の10mM HEPES緩衝液に溶解させた。架橋は、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを用いて達成された。
【0186】
【0187】
約15nLの第2のスポッティング溶液を、約0.05mm2の面積を有する単一のスポット(GOXスポット)として上からPVP膜上に堆積させた。堆積後、25℃で一晩硬化を行った。
【0188】
硬化後、GOXスポット及びPVP膜上に第2の膜を堆積させた。この場合の膜ポリマーは、架橋ポリビニルピリジン-co-スチレンポリマーであり、ピリジン窒素原子の一部は非架橋ポリ(エチレングリコール)テールで官能化され、ピリジン窒素原子の一部はアルキルスルホン酸基で官能化された。この位置の膜は、35mg/mLの架橋ポリビニルピリジン-co-スチレンポリマーと100mg/mL PEGDE400を含むコーティング溶液から堆積された。膜の堆積は、コーティング溶液に電極を3回ディップコーティングすることによって達成された。スプレーコーティング、スクリーン印刷、又は同様のプロセスを交互に使用して、膜を堆積させることができる。堆積後、電極を25℃で一晩硬化させ、次に乾燥バイアル中で56℃で2日間さらに硬化させた。
【0189】
それぞれが様々な濃度のエタノールを含むエタノール含有PBS溶液に電極を浸すことにより、エタノール分析を行った。
図12Aは、別々の活性領域に層状にされ、膜によって隔てられたグルコースオキシダーゼ及びキサンチンオキシダーゼを含む電極の、様々なエタノール濃度に曝露した時の応答の2つの複製を示す。カタラーゼはグルコースオキシダーゼと共に活性領域内にある。示されているように、電流応答は、新しいエタノール濃度への曝露後、数分の間に増加してその後安定した。観察した2つの複製で良好な再現性が得られた。
図13は、エタノール濃度に対する平均電流応答の例示的なプロットを示している。曲線形状は、AOX/XOXを使用して得られたものと類似していた(
図11A、実施例2A)。
【0190】
図12Bは、別々の活性領域に層状にされ、膜によって隔てられたグルコースオキシダーゼ及びキサンチンオキシダーゼを含む電極間の、様々なエタノール濃度への曝露時の比較応答データを示す。カタラーゼは別々に活性領域に存在する。示されているように、センサ応答は、カタラーゼがキサンチンオキシダーゼを含む活性領域に含まれている場合に大きくなった。
【0191】
実施例3:様々な物質移動制限膜の存在下での乳酸塩に対する分析対象物センサの応答の比較。この実施例では、以下の膜配合物を、その活性領域に乳酸オキシダーゼを含む炭素作用電極上にコーティングした。活性領域を、実施例1に記載のような乳酸オキシダーゼ配合物を使用して堆積させた。ただし、配合物中の式2のポリマーの代わりに式1のポリマーを使用し、濃度を以下の表6に指定される濃度に調整した。
【0192】
【0193】
活性領域の堆積及び硬化は、実施例1に記載のように行った。ただし、実施例1の0.1mm2の面積を有する単一のスポットの代わりに、それぞれが0.01mm2の面積を有する6つのスポットを堆積させた。以下に別段の記載がない限り、膜堆積はディップコーティング(電極の1~5回の浸漬及び浸漬間の約10分の待機時間)により行った。ディップコーティングの完了後、膜を25℃で24時間硬化させ、続いて乾燥バイアル内で56℃で48時間硬化させた。
【0194】
電極の活性領域を、37℃で、100mM、pH=7.5のリン酸緩衝生理食塩水を含むビーカーに入れることにより、電極応答を測定した。電位をAg/AgClに対して+40mVに上げ、その後電流を継続的にモニタリングした。様々な乳酸濃度での応答を測定するために、乳酸ナトリウムを1mMの増分で最大5mMまで、緩衝液に添加した。応答安定性を決定するために、5mM乳酸ナトリウム中で2週間などの長期間にわたって電流を測定した。
【0195】
膜ポリマー1A及び1B:最初に試験した膜ポリマーは、架橋ポリビニルピリジン-co-スチレンポリマーであり、ピリジン窒素原子の一部は非架橋ポリ(エチレングリコール)テールで官能化されており、ピリジン窒素原子の一部はアルキルスルホン酸基で官能化されていた。この膜ポリマーの架橋に影響を与えるために、2つの異なる架橋剤、すなわちグリセロールトリグリシジルエーテル(Gly3-配合物1)及びポリエチレングリコールジグリシジルエーテル400(PEGDGE400-配合物2)を使用した。配合物1には、80:20 エタノール:HEPES緩衝液中4mLの膜ポリマー(140mg/mL)、80:20 エタノール:HEPES緩衝液中1mLのGly3(35mg/mL)、及びエタノール中0.0132mLのアミノプロピル末端ポリジメチルシロキサン(PDMS)(100mg/mL)が含まれていた。配合物2には、80:20 エタノール:HEPES緩衝液中4mlの膜ポリマー(140mg/ml)、80:20 エタノール:HEPES緩衝液中0.2mLのPEGDGE400(100mg/ml)、及びエタノール中0.0132mlのアミノプロピル末端ポリジメチルシロキサン(PDMS)(100mg/mL)が含まれていた。対応する架橋ポリマーは、本明細書では、それぞれ、ポリマー1A及び1Bとして示されている。
【0196】
図14は、5mMの乳酸塩溶液に対するポリマー1A及び1Bで覆われた電極の応答の例示的なプロットを示している。示されているように、どちらの配合物も、経時的に安定したセンサ応答をもたらさなかった。ポリマー1A(配合物1)によって提供されるセンサ電流は、2週間の測定期間にわたってゆっくりと減少したのに対し、ポリマー1B(配合物2)によって提供されるセンサ電流は、乳酸曝露の初めの1週間で最初に増加し、その後減少した。対照的に、これらの膜は両方とも、グルコース分析物の存在下では安定した応答を提供した(データは示されていない)。
【0197】
膜ポリマー2:2番目に試験した膜ポリマーは、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル1000(PEGDGE1000)で架橋されたポリビニルピリジン(PVP)であった。この膜ポリマーは、本明細書ではポリマー2として示されている。膜配合物(配合物3)には、80:20 エタノール:HEPES緩衝液中4.3mLのPVP(100mg/mL)、80:20 エタノールHEPES緩衝液中0.25mLのPEGDGE1000(200mg/mL)、及びエタノール中0.0132mLのPDMS(100mg/mL)が含まれていた。
【0198】
図15は、5mMの乳酸塩溶液に対するポリマー2(配合物3)で覆われた電極の応答の例示的なプロットを示す。ポリマー1A及び1Bと同様に、ポリマー2も経時的に安定した電流応答を提供しなかった。最初の48時間で応答が大幅に減少し、その後は比較的安定した動作が続いた。さらに、感度は約1nA/mMの目標値をはるかに下回った。ポリマー1A及び1Bと同様に、ポリマー2はグルコース分析物の存在下では安定した電流応答を提供した(データは示していない)。
【0199】
膜ポリマー3:3番目に試験した膜ポリマーは、PEGDGE400で架橋されたポリビニルピリジン(PVP)であった。この膜ポリマーは、本明細書ではポリマー3として示されている。膜配合物(配合物4)には、80:20 エタノール:HEPES緩衝液中4.3mLのPVP(100mg/mL)、80:20 エタノール:HEPES緩衝液中0.23mLのPEGDGE400(100mg/mL)、及びエタノール中0.0132mLのPDMS(100mg/mL)が含まれていた。
【0200】
図16は、5mMの乳酸塩溶液に対するポリマー3(配合物4)で覆われた電極の応答の例示的なプロットを示す。同じ架橋剤の高分子量バリアントで架橋されたポリマー2とは異なり、ポリマー3は驚くべきことに経時的に安定した電流応答をもたらした。さらに、電流は迅速に応答し、追加する乳酸の量を1mM刻みで増加させると安定した電流を達成した(
図17)。
【0201】
膜ポリマー4:4番目に試験した膜ポリマーは、3~4重量%の非架橋PEG側鎖を含むPVPであり、これは次にPEGDGE1000で架橋された。したがって、試験した膜ポリマーは、非架橋PEG鎖及び架橋PEG1000鎖の両方を含んでいた。この膜ポリマーは、本明細書ではポリマー4として示されている。膜配合物(配合物5)は、80:20 エタノール:HEPES緩衝液中4.3mLのポリマー(100mg/mL)、80:20 エタノール:HEPES緩衝液中0.025mLのPEGDGE1000(200mg/mL)、及びエタノール中0.0132mLのPDMS(100mg/mL)を含んでいた。
【0202】
図18は、5mMの乳酸塩溶液に対するポリマー4(配合物5)で覆われた電極の応答の例示的なプロットを示している。ポリマー2及び3とは異なり、ポリマー4は驚くべきことに、経時的に安定した電流応答を提供した。さらに、電流は迅速に応答し、追加する乳酸の量を1mM刻みで増加させると安定した値を達成した(
図19)。
【0203】
ポリマー2及び1B又はポリマー2及び1Aを含む二層膜:配合物3(ポリマー2)を、ディップコーティング操作を繰り返すことにより電極表面にコーティングした。スプレーコーティング、スクリーン印刷、又は同様のプロセスを交互に使用して、膜を堆積させることができる。次に、配合物2(ポリマー1B)を、ディップコーティング操作を繰り返すことにより、堆積された架橋PVP層上にコーティングした。連続する浸漬の間には10分の待機時間があった。すべての浸漬操作が完了した後、センサを25℃で24時間硬化させ、続いて乾燥バイアル内で56℃で48時間硬化させた。上に示したように、これらの膜ポリマーはいずれも、単独で使用した場合に満足のいく性能を提供しなかった。
【0204】
図20は、5mMの乳酸塩溶液に対する、架橋PVP(ポリマー2)の下層及び架橋ポリマー1Bの上層を含む二層膜で覆われた電極の応答の例示的なプロットを示す。同じ架橋剤(ポリマー2)で架橋されたポリマー1B又はPVPとは異なり、どちらのポリマーも単独では許容できる性能を提供しないにもかかわらず、これらの膜ポリマーを含む二層膜は、驚くべきことに許容可能なレベルの感度で経時的に安定した電流応答をもたらした。
図20の応答データは、配合物3(ポリマー2)に2回及び配合物2(ポリマー1B)に4回浸漬された電極のものであった。
【0205】
二層膜中の各膜ポリマーの量(厚さ)は、ポリマー2及びポリマー1Aについて以下に示すように、センサ性能を変化させる可能性がある。したがって、ポリマー1BのGly3架橋バリアント(すなわち、ポリマー1A)は、どちらのポリマーも単独では許容できる性能を提供しなかったとしても、ポリマー2と二層膜で組み合わせると同様に許容できる性能を提供する可能性がある。
【0206】
図21は、架橋PVP(ポリマー2)の下層及び架橋ポリマー1Aの上層を含む二層膜で覆われた電極の5mM乳酸塩溶液に対する応答の例示的なプロットを示し、電極は、配合物1(ポリマー1A)及び配合物3(ポリマー2)で様々な回数ディップコーティングされたものである。この場合のPVP(ポリマー2)の架橋剤はPEGDGE1000のままであったが、ポリマー1Aの架橋剤はGly3であった。これは、この架橋剤が二層膜構成での使用にも適していることを示している。
図21に示されるように、電極を配合物3で2回、配合物1で4回ディップコーティングすることにより、感度と安定した電流応答の良好なバランスが得られた。ディップコーティング操作の数を変更すると、二層膜の各コンポーネントの厚さ、及び膜ポリマーの相互の質量比が変化した。
図21に示されるように、PVP層が薄すぎると(0又は1回のポリマー2浸漬)、感度は高いが、応答安定性は低くなる。一方、厚すぎると(3回以上の浸漬)、場合によっては電極は感度が低く、応答安定性が低くなる。
【0207】
膜ポリマー1B及び3を含む混合膜:混合膜配合物(配合物6)を、80:20 エタノール:HEPES緩衝液中1.5mLのPVP(100mg/mL)、80:20 エタノール:HEPES緩衝液中2.5mLの、配合物1A及び1Bを調製するために使用したコポリマー(140mg/mL)、80:20 エタノール:HEPES緩衝液中0.175mLのPEGDGE400(100mg/mL)、及びエタノール中0.0132mLのPDMS(100mg/mL)を混合することによって調製した。したがって、架橋後、配合物6はポリマー1B及びポリマー3を含み、これらはそれぞれPEG400で架橋されている。
【0208】
図22は、5mMの乳酸塩溶液に対する、架橋PVP(ポリマー3)及び架橋ポリマー1Bを含む混合膜で覆われた電極の応答の例示的なプロットを示す。同じ成分のうちの1つ(ポリマー1B)を含む二層膜と同様に、混合膜は、経時的に安定した電流応答と許容可能なレベルの感度を提供した。さらに、電流は迅速に応答し、追加する乳酸の量を1mM刻みで増加させると、安定した値を達成した(
図23)。
【0209】
図24は、様々な比率の架橋PVP(ポリマー3)及び架橋ポリマー1Bを含む混合膜で覆われたセンサの応答の例示的なプロットを示す。
図24に示すように、ポリマー1Bの量が多いと感度は上がるが、応答安定性は低くなる。
【0210】
実施例4:二層物質移動制限膜で覆われた2つの作用電極を含むセンサの性能。この実施例では、グルコースオキシダーゼを含む第1の作用電極及び乳酸オキシダーゼを含む第2の作用電極を二層膜で覆った。グルコースオキシダーゼを含む活性領域を、実施例1(表1)に記載のように、グルコースオキシダーゼ配合物を使用して堆積させた。乳酸オキシダーゼを含む活性領域を、実施例3(表6)に記載のように、乳酸オキシダーゼ配合物を使用して堆積させた。活性領域の堆積及び硬化は、実施例1に記載のように行った。ただし、実施例1の0.1mm2の面積を有する単一のスポットの代わりに、それぞれが0.01mm2の面積を有する5つのスポットを堆積させた。実施例3からの配合物2(ポリマー1B)及び配合物4(ポリマー3)に対応する膜ポリマー配合物を、この実施例における二層膜を堆積させるために使用した。すなわち、ポリマー3を、乳酸オキシダーゼを特徴とする第2の作用電極上に堆積させた。第2の作用電極への選択的堆積は、改変スロットコーティング手順によって達成された。次に硬化を25℃で24時間行った。その後、アセンブリ全体(すなわち、両方の作用電極、第2の作用電極上のPVPコーティング、ならびにカウンター電極及び参照電極)を、配合物2にディップコーティングした。硬化は再び25℃で24時間行い、続いて乾燥環境で56℃で48時間ベーキングした。したがって、均質な膜が第1の作用電極上に堆積され(グルコース応答性)、二層膜が第2の作用電極上に堆積された(乳酸応答性)。架橋PVP(ポリマー3)は、第2の作用電極上の乳酸応答性活性領域と接触していた。
【0211】
このセンサを使用して、37℃の100mM PBS中でグルコース及び乳酸を同時にアッセイした。最初の実験では、センサを37℃で2週間、30mMグルコースと5mM乳酸塩を含む100mM PBS溶液にさらした。この試験では、センサはAg/AgClに対して+40mVに保持された。
図25は、30mMグルコース及び5mM乳酸塩への曝露時の各作用電極についてのセンサ応答の例示的なプロットを示している。示されているように、センサの応答は、観察期間にわたって非常に安定したままであった。
【0212】
次に、グルコースと乳酸塩を37℃で100mM PBSに段階的に添加して、各分析物に対するセンサの応答性を測定した。この試験では、センサは再びAg/AgClに対して+40mVに保持された。グルコースは0~30mMの濃度範囲で添加し、乳酸塩は0~5mMの濃度範囲で添加した。
図26は、様々な濃度のグルコース及び乳酸塩に対するセンサ応答の例示的なプロットを示している。
図26に示すように、センサ応答は両方の分析物に対して迅速であり、所与の分析物濃度で安定したままであった。
【0213】
実施例5:協調して相互作用するジアホラーゼ及びβ-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼを有する分析物センサを使用したケトンの検出。この実施例では、以下の表7に示す膜配合物を炭素作用電極にコーティングした。作用電極上に、それぞれ約0.01mm2の面積を有する6つのスポットを配置するために堆積を行った。堆積後、作用電極を25℃で一晩硬化させた。その後、4mLの100mg/mL PVP、0.2mLの100mg/mL PEGDGE400、及び0.0132mLの100mg/mL PDMSの配合のコーティング溶液を使用したディップコーティングを介して、PVP膜を作用電極に適用した。膜硬化は、25℃で24時間、続いて乾燥バイアル内で56℃で48時間行った。
【0214】
【0215】
電極を100mM PBS緩衝液(pH=7.4)に33℃で浸漬し、様々な量のβ-ヒドロキシ酪酸(合計0、1、2、3、4、6、及び8mMのβ-ヒドロキシ酪酸塩の追加)を導入することにより、ケトン分析を行った。
図27は、ジアホラーゼ、NAD
+、及びβ-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼを含む電極の、様々なβ-ヒドロキシ酪酸濃度に曝露された時の応答の4つの複製を示す。示されているように、電流応答は、新しいβ-ヒドロキシ酪酸濃度への曝露後、数分の間に増加してその後安定した。
図28は、
図27の電極についての平均電流応答対β-ヒドロキシ酪酸濃度の例示的なプロットを示す。ケトンセンサはまた、
図29に示されるように、延長された測定時間にわたって安定した応答を示した。
図29は、100mM PBS中8mMのβ-ヒドロキシ酪酸に33℃で2週間曝露した時の
図27の電極の電流応答の例示的なプロットを示す。測定期間中の平均シグナル損失はわずか3.1%であった。
【0216】
実施例6:様々なセンサ構成での乳酸センサ応答の比較。配合物の様々な並べ替えを特徴とする乳酸応答性センサの性能をアッセイするために、活性領域堆積のための2つの異なる乳酸オキシダーゼ/ポリマー配合物及び物質移動制限膜堆積のための2つの異なる膜ポリマー配合物を調製した。配合物の詳細及び分析物センサの調製に使用したプロセスを以下に示す。全般的に、分析物センサは、上記と同様の方法で調製された。
【0217】
【0218】
【0219】
各活性領域を堆積するために、約20nLの各溶液を炭素作用電極上に堆積させて、それぞれが約0.01mm2の面積を有する6つの個別のスポットを形成した。配合物Aを4回、配合物Bを6回施用して、スポットを形成した。堆積後、作用電極を25℃で一晩硬化させた。配合物Aは、グルコースオキシダーゼの代わりに乳酸オキシダーゼを使用したことを除いて、グルコース応答性分析物センサの活性領域を堆積させるために使用したものに相当する。
【0220】
物質移動制限膜堆積のための配合物:膜ポリマー配合物を、以下の表10及び11において指定された水溶液配合物に調製した。
【0221】
【0222】
【0223】
ディップコーティングを使用して、上記のように調製された各活性領域に物質移動制限膜を堆積させた。配合物Cは4回の浸漬を使用して堆積され、配合物Dは44回の浸漬を使用して堆積された。浸漬と浸漬の間には約10分の待機時間を用いた。ディップコーティングの完了後、膜を25℃で24時間硬化させ、続いて乾燥バイアル内で56℃で48時間硬化させた。スプレーコーティング、スクリーン印刷、又は同様のプロセスを交互に使用して、物質移動制限膜を堆積させることができる。配合物Cは、グルコース応答性分析物センサ内に物質移動制限膜を堆積させるために使用したものに相当する。
【0224】
乳酸応答性分析物センサを、上記で特定する堆積条件を使用して調製した。活性領域と物質移動制限膜のすべての可能な組み合わせを準備し、可能な組み合わせごとに8個のセンサを製造した。製造後、各センサを100mMリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中5mM乳酸塩溶液に、37℃で190時間曝露し、作用電位をAg/AgClに対して+40mVに保持した。活性領域と物質移動制限膜の試験された組み合わせを表12に示す。試験結果を
図30に示す。
【0225】
【0226】
図30に示されるように、グルコース応答性分析物センサ(群1)で問題なく使用されたものと同様に配合された活性領域及び物質移動制限膜を有する乳酸応答性分析物センサは、乳酸に曝露されたときに不十分な性能をもたらした。示されているように、シグナル強度は、試験したすべてのサンプルで0.5nA未満であった。これは、実行可能な乳酸応答センサには望ましくない低い値である。配合物C(群2)において、ポリビニルピリジン及び異なる架橋剤を、ポリビニルピリジン-co-スチレン及びGly3架橋剤の代わりに使用した場合、シグナル強度はさらに低かった。
【0227】
さらに
図30に示されるように、ヒト血清アルブミンの組み込みは、センサ性能をかなり改善した。例えば、サンプル群3は、群1又は群2のサンプルのいずれかで実現されたものよりもかなり高いシグナル強度を示した。ただし、この群のサンプル間では、初期シグナル強度にかなりのばらつきがあった(>4nAのばらつき)。さらに、最初に観察された最大シグナル強度からシグナル強度が着実に減少した。応答の変動性と経時的なシグナル安定性の低さにより、このサンプル群の組み合わせが実行可能な乳酸応答性分析物センサに適している可能性は、同様に低いと考えられる。
【0228】
驚くべきことに、ヒト血清アルブミンを含む活性領域と、架橋ポリビニルピリジンホモポリマーを含む物質移動制限膜との組み合わせ(群4)は、高いシグナル強度と経時的なシグナル安定性の延長の許容可能な組み合わせをもたらした。
図30に示されるように、群4のすべての複製センサは、4nAと5nAの間で互いに1nA以内にクラスター化された初期シグナル強度を有していた。このレベルのシグナル強度及び変動性は、商業的に実行可能な乳酸応答性分析物センサが開発され得る範囲内にある。さらに、シグナル強度は、190時間のシグナル観察でnAの数十分の1以下しか変化しなかった。これも、商業的に実行可能なセンサの開発に適し得る範囲内である。
【0229】
図31に示されるように、群4のセンサについて観察された電流は、最初は乳酸を含まないPBS溶液に1mM刻みで増加する量の乳酸が加えられると、迅速に応答し、安定した値を達成した。
【0230】
特に明記しない限り、本明細書及び関連する特許請求の範囲において数量等を表すすべての数字は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対のことが示されない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本発明の実施形態によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、均等論の適用を特許請求の範囲に限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告された有効桁数に照らして、通常の丸め手法を適用することによって解釈されるべきである。
【0231】
分析物センサイグニッションロック
イグニッションロックなどの車両フェイルセーフは、障害がある場合や車両を安全に操作できる状態にない場合に、操作者が車両を操作できないようにするために使用されることがある。障害のある状態で車両を操作すると、操作者や一般の人々に重大な危険をもたらす可能性がある。一般的なタイプのイグニッションロックの1つは、飲酒運転を防止するように設計されており、より具体的には、アルコールの使用によって酔っている間に個人が車両を操作するのを防止するように設計されている。このようなロック装置は、呼気アルコール分析装置又は光学センサを車両のイグニッションシステムに接続しており、ドライバーは車両を始動する前に血中アルコール濃度テストに合格する必要がある。
【0232】
酩酊は、操作者を車両の操作に不適合又は操作不可能にする、操作者が経験し得る一種の障害又は状態である。ただし、他の障害や状態も操作者を悩ませる可能性があるため、操作者が障害のあるときに車両を操作しないように注意深く監視する必要がある。例えば、糖尿病で低血糖のときに運転をしている操作者は、立ちくらみ、錯乱、頭痛、意識喪失、発作、反射の遅延を起こす可能性があり、そのいずれもが自身の、及びその車両内又は車両付近の人の生命を危険にさらす可能性がある。
【0233】
分析物モニタリングシステムは、体液(例えば血液)中の分析物の長期モニタリングを容易にするために開発されてきた。いくつかの分析物モニタリングシステムは、血糖値を検出及びモニタリングするように設計されており、これは糖尿病状態の治療に役立つ。しかしながら、他の分析物モニタリングシステムは、操作者の体液中に存在する他の分析物を検出及びモニタリングするように設計されており、操作者で検出された異常な分析物レベルは、操作者が現在車両を安全に操作するのに適していないことを示し得る。
【0234】
以下の説明は、操作者の分析物レベルが所定の閾値を超えたときに車両の操作を防止するために使用される分析物モニタリング及び車両制御システムについて記載する。センサ制御デバイス102(
図1)を適切に配備することにより、ユーザは、体液分析物のレベル及び傾向を理性的に追跡及びモニタリングすることができる。一部の分析物レベルが特定の閾値を超えると、ユーザが車両を安全に操作できなくなる物理的又は認知障害が発生する可能性がある。このような場合、ユーザは、車両の操作を試みる前に、分析物レベルを安全な範囲に戻すための適切な措置を講じる必要がある。ただし、場合によっては、ユーザは車両を操作するのにまったく問題がないと感じるかもしれないが、そうであっても、危険な身体的障害の発症を突然引き起こす可能性のある安全でない分析物レベルを有する。このような場合、ユーザが車両を操作して自身や他者を危険にさらす可能性を防止又は警告するフェイルセーフシステムを設置することが有利な場合がある。
【0235】
図32は、本開示の1つ以上の実施形態による、例示的な分析物モニタリング及び車両制御システム3200の概略図である。図示のように、分析物モニタリング及び車両制御システム3200(以下、「システム3200」)は、センサ制御デバイス102を含み、これは、ユーザ又は「操作者」3202上に配備され、あるいは、操作者3202の身体の標的モニタリング位置、例えば腕の後ろに送達され得る。上述のように、センサ制御デバイス102は、センサ104(
図1)を含み、適切に配備されると、センサ104は、皮膚内に経皮的に配置されて、操作者3202の体液内に存在する分析物を検出及びモニタリングする。センサ制御デバイス102の底部に塗布された接着パッチ105(
図1)は、皮膚に付着して、動作中にセンサ制御デバイス102を所定の位置に固定する。
【0236】
システム3200は、本明細書では分析物レベルを検出及び報告するためのオンボディセンサ制御デバイス102を含むものとして説明されるが、システム3200は、代わりに、本開示の範囲から逸脱することなく、生体外分析物センサ(例えば、セルフモニタリング血糖「SMBG」メータ)を組み込むことができる。したがって、「センサ制御デバイス」という用語は、本明細書では、上記で主に記載したようなオンボディセンサシステムだけでなく、従来のハンドヘルドセンサシステムも含むと解釈されるべきである。
【0237】
図示のように、システム3200は、リーダデバイス120をさらに含むことができ、センサ制御デバイス102は、ローカル通信パス又はリンクを介してリーダデバイス120と通信して、分析物濃度データを自動的に、定期的に、又は操作者3202の必要に応じて提供することができる。リーダデバイス120は、制御モジュール3204と通信することができ、制御モジュール3204は、車両3206の電気システムと通信し、車両バッテリによって電力を供給されるか、さもなければ別個のバッテリによって電力を供給される。そのような実施形態では、センサ制御デバイス102からリーダデバイス120に送信されるデータは、その後、処理のためにリーダデバイス120によって制御モジュール3204に送信され得る。しかしながら、他の実施形態では、センサ制御デバイス102は、BLUETOOTH(登録商標)などの任意の無線通信プロトコルを介して制御モジュール3204と直接通信することができる。そのような実施形態では、リーダデバイス120は、システム3200において必要である場合もあれば、必要でない場合もある。
【0238】
図示の実施形態では、車両3206は自動車として描かれている。しかしながら、本明細書で使用される場合、「車両」という用語は広い意味で使用され、人間のユーザ又は「操作者」が操作できるあらゆる種類の輸送体を含むことを意味するが、人間を輸送するために使用される自動運転車も含むことができる。車両3206の例には、限定するものではないが、任意の種類の自動車、トラック、スポーツ多目的車両、航空機、船舶、宇宙船、及び/又は他の任意の輸送手段、あるいはそれらの組み合わせが含まれる。
【0239】
制御モジュール3204は、センサ制御デバイス102及び/又はリーダデバイス120との間で情報を通信するための通信インターフェースを含み得る。例示的なBLUETOOTH(登録商標)対応のセンサ制御デバイス102及び/又はリーダデバイス120の場合、センサ制御デバイス102が車両3206に近づくと、ペアリングモードに入ることができる。ペアリング時に、制御モジュール3204は、センサ制御デバイス102及び/又はリーダデバイス120の存在を自動的に検出し、それらとの通信を確立するようにプログラム及び構成され得る。例えば、操作者3202が車両3206に接近し又は進入すると、制御モジュール3204は、センサ制御デバイス102の存在を自動的に検出し、それらの間又はリーダデバイス120との通信を可能にすることができる。
【0240】
いくつかの実施形態では、制御モジュール3204は、インフォテインメントシステム、タッチスクリーンディスプレイ、又は情報ディスプレイなどの、車両3206に含まれる車両ユーザインターフェース3208と通信することができる。そのような実施形態では、制御モジュール3204は、車両ユーザインターフェース3208を介して操作者3202と視覚的に通信することができ、また、車両3206に含まれるオーディオスピーカを介して操作者3202と聴覚的に通信することもできる。しかしながら、他の実施形態では、制御モジュール3204は、操作者3202と通信することができるように、リーダデバイス120と通信するように構成され得る。
【0241】
図示のように、制御モジュール3204は、センサ制御デバイス102によって得られた操作者3202のリアルタイム測定された分析物レベルに基づいて、車両3206の様々な動作及び/又はシステムを制御するように構成又はプログラムされたコンピュータシステム3210であり得るか、又はそれを含み得る。車両3206の操作は、車両3206の1つ以上の重要なシステムを無効にすることによって、又は車両3206内の警告システムをアクティブにすることによって、制御、無効化、又は変更される。操作者3202のリアルタイム測定された分析物レベルが所定の安全範囲内にある場合、操作者3202が車両3206を操作することは安全であると見なされ得る。しかしながら、操作者3202のリアルタイム測定された分析物レベルが所定の安全範囲外にあるか、又は所定の閾値を超えると、コンピュータシステム3210は、車両3206の操作を制御、無効化、又は変更するようにプログラムされ得る。
【0242】
いくつかの実施形態では、例えば、コンピュータシステム3210は、操作者3202の検出された分析物レベルが所定の範囲外にあるか、あるいは所定の閾値を超えたときに、様々な重要な車両システムを無効にするように構成され得、したがって、操作者3202を、車両3206を安全に操作するのに障害があるものとして識別すると、車両の操作を徐々にかつ安全に無効にする。無効にされ得る車両3206の重要な車両システムには、イグニッションシステム(例えば、エネルギー切り替え/制御システム)、トランスミッションシステム(又はギアボックス)、燃料システム、エネルギー供給システム(例えば、バッテリ、コンデンサ、コンバージョン/反応電池など)が含まれる。上昇又は低下した(安全でない)分析物レベルが検出されると、コンピュータシステム3210は、重要な車両システムが機能又は動作するのを妨げることができる。その結果、操作者3202は、車両3206を始動又は操作することができず、それにより、操作者3202が自身及び/又は他者を危険にさらすことを防ぐ。
【0243】
他の実施形態では、又はそれに加えて、コンピュータシステム3210は、操作者3202の検出された分析物レベルが所定の閾値を上回るか又は超えると、様々な重要でない車両システムを作動させるように構成され得る。作動され得る重要でない車両システムには、例えば、車両3206に設置された車両ホーン、車両ライト、又は可聴警告システムが含まれる。そのような実施形態では、重要でない車両システムの起動は、障害のある状態で運転している可能性のある操作者3202の法執行機関及び他者(例えば、隣接する車両の操作者、居合わせている人、歩行者など)に警告し、したがってそれに関連する問題に迅速に対処すべく、法的処置を可能にし、潜在的に危険な状況を他者に通知することができる。
【0244】
さらに他の実施形態では、又はそれに加えて、コンピュータシステム3210は、操作者3202の分析物レベルが所定の安全操作範囲外にあるか、あるいは所定の閾値を超えると、1つ以上の緊急連絡先に自動的に電話をかけるように構成され得る。そのような実施形態では、コンピュータシステム3210は、リーダデバイス120(例えば、携帯電話)又は車両3206に組み込まれたセルラー又は衛星通信システム(例えば、OnStar(登録商標))を介して動作することができる。他の実施形態では、又はそれに加えて、コンピュータシステム3210は、操作者3202の分析物レベルが所定の安全操作範囲外にあるか、あるいは所定の閾値を超えたときに、緊急連絡先にメッセージ(例えば、テキスト又はSMSメッセージ、電子メールなど)を自動的に送信するように構成され得る。緊急連絡先の例には、限定するものではないが、配偶者、親、医療関係者(医師など)、病院、911、又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0245】
いくつかの実施形態では、システム3200は、操作者3202、より具体的には、センサ制御デバイス102の存在を検出するように構成された1つ以上の近接センサ3212をさらに含み得る。そのような実施形態では、近接センサ3212は、車両3206内の運転席3214の全体的な領域をモニタリングするように構成され得る。センサ制御デバイス102が近接センサ3212によって運転席3214の領域内で検出された場合、それは、操作者3202が運転席3214にいて、車両3206を操作しようとしている可能性があることの肯定的な指標を提供し得る。そのような場合、シグナルが制御モジュール3204に送信されて、操作者3202が車両3206内にいて、車両3206を操作しようとしている可能性があることをコンピュータシステム3210に警告することができる。操作者3202のリアルタイム測定された分析物レベルが所定の安全範囲内にあるか、又は所定のレベル未満である場合、コンピュータシステム3210は、操作者3202が車両3206を操作することを可能にし得る。しかしながら、操作者3202のリアルタイム測定された分析物レベルが所定の安全範囲外にあるか、又は所定の閾値を超えると、コンピュータシステム3210は、上記で概説したように、車両3206の操作を制御、無効化、又は変更することができる。理解されるように、近接センサ3212は、障害のある操作者3202が運転席3214にいて、車両3206を操作する準備ができている場合にのみ、車両3206の操作を防止するのに有利であり得る。その結果、センサ制御デバイス102を装着しているユーザは、制御モジュール3204又は車両3206の動作に影響を与えることなく、任意の状態で車両3206に乗客として乗ることができる。
【0246】
いくつかの実施形態では、制御モジュール3204は、車両3206が現在動いているか静止しているかを含む、車両3206の現在の状態を検出するように構成された車両状態検出モジュール3216をさらに含み得る。さらに、車両状態検出モジュール3216は、車両3206内のモータが現在動作しているか、又は停止しているかを決定するように構成され得る。1つ以上の実施形態では、車両状態検出モジュール3216は、状態シグナルを制御モジュール3204に提供することができ、制御モジュール3204は、操作者3202のリアルタイム測定された分析物レベルが所定の安全範囲外にあるか、又は所定の閾値を超えたときに、状態シグナルを使用して、どの車両動作をアクティブ又は無効にするかを決定することができる。例えば、状態シグナルが車両3206が静止していることを示す場合、制御モジュール3204は、車両燃料システム、トランスミッションシステム、イグニッションシステム、又はそれらの任意の組み合わせを無効にすることができる。対照的に、状態シグナルが車両3206が動いていることを示す場合、制御モジュール3204は、車両ホーンを作動させ、車両ライトを点滅させ、又は操作者3202及び/又は操作者3202の周囲の人に、操作者3202が正常でないという警告音を発することができる。
【0247】
いくつかの実施形態では、操作者3202が車両3206に入ると、又は制御モジュール3204がセンサ制御デバイス102及び/又はリーダデバイス120とペアリングすると、リーダデバイス120又は車両ユーザインターフェース3208上でアプリが起動され得る。そして、リーダデバイス120及び/又は車両ユーザインターフェース3208上に、現在の分析物レベル、傾向、履歴データ、及び予測される分析物レベルを示すデジタルダッシュボードが表示され得る。しかしながら、現在の分析物レベルが所定の安全操作範囲外にある場合、コンピュータシステム3210は、1つ以上の重要な車両システムを無効にして、操作者3202が車両3206を操作するのを防ぐようにプログラムされ得る。そのような実施形態では、視覚的又は聴覚的な警告が制御モジュール3204によって発せられて、車両3206が始動しない理由を操作者3202に通知することができる。より具体的には、視覚的警告(例えば、書かれたメッセージ)が生成され、リーダデバイス120又は車両ユーザインターフェース3208上に表示され得るか、又は可聴警告(例えば、音声メッセージ)がリーダデバイス又は車両3206内のスピーカを通して伝えられ得る。
【0248】
自動的に行われない場合、操作者3202は、センサ制御デバイス102を制御モジュール3204とペアリングする際に、現在の分析物レベルを取得するように促され得る。場合によっては、現在の分析物レベルが得られるまで、車両3206の操作が妨げられてもよい。現在の分析物レベルが安全限界内にある場合、コンピュータシステム3210は、車両3206の操作を可能にし得る。いくつかの態様において、及び自動的に行われない限り、制御モジュール3204は、所定の期間にわたって車両3206を操作した後(例えば、1時間、2時間、5時間後など)、追加の現在の分析物レベルを取得するように操作者3202を促すことができる。
【0249】
いくつかの実施形態では、制御モジュール3204は、測定された分析物レベルを安全な範囲に戻すのに役立ち得る視覚的又は聴覚的な推奨又は指導を操作者3202に発するように構成され得る。そのような実施形態では、そのような視覚的又は聴覚的推奨は、分析物レベルを安全な範囲に戻す結果となり得る何らかの行動をとるようにユーザを促すことができる。さらに、いくつかの実施形態では、操作者3202は、口頭の応答又は命令を発することによって、口頭で制御モジュール3204と通信することができる場合がある。これは、車両3206の気が散る操作を防ぐのに有利であることを証明し得る。
【0250】
いくつかの実施形態では、制御モジュール3204の設定は、安全でない分析物レベルが検出され、視覚的又は聴覚的警告が制御モジュール3204によって発せられた後、ユーザが情報に基づいた決定を下せるように、操作者3202によってカスタマイズされ得る。より具体的には、少なくとも1つの実施形態では、制御モジュール3204は、安全でない分析物レベルが測定された場合でさえ、操作者3202が車両3206を操作できるようにするバイパス機能を含み得る。そのような実施形態では、操作者3202は、操作者3202が障害のある又は危険な健康状態で車両3206を操作している可能性があることを認めることによって、車両3206を操作することができる。
【0251】
いくつかの実施形態では、コンピュータシステム3210は、操作者3202の分析物レベルが所定の安全範囲から逸脱するか、あるいは所定の閾値を超える可能性がある場合に、予測タイムラインを計算するように構成又はプログラムされ得る。そのような実施形態では、制御モジュール3204は、安全でない分析物レベルに到達し、潜在的な危険な病状が生じ得る状態になるまでに、操作者3202におよそどれくらいの時間があるかを示す視覚的又は聴覚的警告を操作者3202に発するように構成され得る。安全でない分析物レベルに達する前に、操作者が特定の時間増分を残していることを示すために、複数の警告が提供されてもよい。例えば、1時間以内、30分以内、10分以内、5分以内、1分以内、及びそれらの間の任意の時間増分で安全でない分析物レベルに達しそうになると、視覚的又は聴覚的警告が発せられ得る。さらに、操作者の分析物レベルが安全でないレベルに達するか、又は所定の閾値を超えると、視覚的又は聴覚的警告が発せられ得る。
【0252】
いくつかの実施形態では、操作者3202が車両3206を操作している間に安全でない分析物レベルが測定されると、制御モジュール3204は、安全でない分析物レベルについて操作者3202に警告する1つ以上の警告(視覚的又は聴覚的)を発するように構成され得る。場合によっては、車両3206内のステレオの音量を自動的に下げて、操作者3202が可聴警告を聞くことができるようにすることができる。そのような実施形態では、制御モジュール3204は、操作者3202に1つ以上の是正措置を提案するように構成され得る。是正措置の例には、限定するものではないが、車両3206の減速及び停止、近くのコンビニエンスストア又は薬局の位置特定及びそこへの運転、及び近くの病院又は医療施設の位置特定が含まれる。車両3206が自動運転車であり、現在の分析物レベルが操作者3202を潜在的に危険な状態に置く場合、制御モジュール3204は、車両3206を治療のために医療施設に自動的に向けることができる。あるいは、又はそれに加えて、制御モジュール3204は、安全でない分析物レベルが検出されたときに車両3206の速度を徐々に減速又は制限することができ、したがって、操作者3202を停止させ、車両3206を操作し続ける前に問題に対処する。
【0253】
システム3200は、運転中の操作者3202及び/又は操作者3202の周囲の人々を保護するために、いくつかの異なるシナリオで有用であり得る。いくつかの用途では、システム3200は、リアルタイムで障害を検出するために、操作者によって自発的に組み込まれ得る。他の用途では、システム3200は、車両3206の所有者によって、操作者3202の障害を検出することを要求され得る。そのような用途では、車両3206の所有者は、輸送会社又はトラック会社であり得る。さらに他のアプリケーションでは、システム3200は、障害を検出するために操作者3202に法的に課され得る。
【0254】
本明細書に開示される実施形態には、以下が含まれる。
K.操作者の体内に存在する1つ以上の分析物を検出及びモニタリングするセンサを有するセンサ制御デバイスと、センサ制御デバイス及び車両の電気システムと通信する制御モジュールとを含む分析物モニタリング及び車両制御システムであって、制御モジュールは、センサ制御デバイスによって提供されるデータを受信及び処理するようにプログラムされたコンピュータシステムを含み、操作者のリアルタイム測定された分析物レベルが所定の安全閾値を超えると、車両の操作がコンピュータシステムによって制御又は無効化される、分析物モニタリング及び車両制御システム。
【0255】
L.センサを有するセンサ制御デバイスを用いて操作者の体内に存在する1つ以上の分析物を検出及びモニタリングすること、センサ制御デバイスによって提供されるデータを、センサ制御デバイス及び車両の電気システムと通信する制御モジュールで受信及び処理すること;及び、操作者のリアルタイム測定された分析物レベルが所定の安全閾値を超えたときに、制御モジュールのコンピュータシステムを用いて車両の操作を制御又は無効にすることを含む方法。
【0256】
実施形態K及びLのそれぞれは、以下の追加の要素のうちの1つ以上を任意の組み合わせで有し得る:要素1:センサ制御デバイスが操作者に結合され、センサが操作者の体液内に存在する分析物を検出及びモニタリングするために、操作者の皮膚の下に経皮的に配置される。要素2:センサ制御デバイスは、生体外分析物センサを含む。要素3:センサ制御デバイスからデータを受信し、そのデータを制御モジュールに送信するリーダデバイスをさらに備える。要素4:車両は、自動車、自動運転車、トラック、スポーツユーティリティビークル、航空機、船舶、宇宙船、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される輸送体を含む。要素5:センサ制御デバイスは、操作者が車両に接近した際に通信のために制御モジュールとペアリングする。要素6:車両に含まれ、制御モジュールと通信する車両ユーザインターフェースをさらに備える。要素7:車両の1つ以上の重要なシステムを無効にすることによって車両の操作が無効にされ、上記重要なシステムは、イグニッションシステム、トランスミッションシステム、燃料システム、及びエネルギー供給システムからなる群から選択される。要素8:車両の操作は、車両の1つ以上の重要でないシステムを起動すること、1つ以上の緊急連絡先に電話するかメッセージを送信すること、及び車両の速度を徐々に下げることの少なくとも1つによって制御される。要素9:車両の運転席の領域をモニタリングし、操作者の存在を検出するために車両に設置された1つ以上の近接センサをさらに備える。要素10:制御モジュールは、車両の現在の状態を検出する車両状態検出モジュールをさらに含む。要素11:制御モジュールは、操作者のリアルタイム測定された分析物レベルが所定の安全閾値外にあるときに、操作者が知覚できる視覚的又は聴覚的警告を生成する。要素12:安全でない分析物レベルに達する前に、視覚的又は聴覚的警告が特定の時間増分で生成される。要素13:視覚的又は聴覚的警告は、操作者に伝達される1つ以上の提案された是正措置を含む。要素14:制御モジュールは、操作者のリアルタイム測定された分析物レベルが所定の閾値を超えたときに、操作者が車両を操作できるようにするバイパス機能を含む。
【0257】
要素15:センサ制御デバイスからデータを受信し、センサ制御デバイス及び制御モジュールと通信するリーダデバイスを用いて、データを制御モジュールに送信することをさらに含む。要素16:車両の操作を無効にすることは、車両の1つ以上の重要なシステムを無効にすることを含み、上記重要なシステムは、イグニッションシステム、トランスミッションシステム、燃料システム、及びエネルギー供給システムからなる群から選択される。要素17:車両の操作を制御することは、車両の1つ以上の重要でないシステムを起動すること、1つ以上の緊急連絡先に電話するかメッセージを送信すること、及び車両の速度を徐々に下げることの少なくとも1つを含む。要素18:車両に取り付けられた1つ以上の近接センサを用いて、車両の運転席の領域をモニタリングし、操作者の存在を検出することをさらに含む。要素19:制御モジュールに含まれる車両状態検出モジュールを用いて車両の現在の状態を検出することをさらに含む。要素20:操作者のリアルタイム測定された分析物レベルが所定の閾値を超えたときに、制御モジュールを用いて、操作者によって知覚可能な視覚的又は聴覚的警告を生成することをさらに含む。
【0258】
様々な特徴を組み込んだ1つ以上の例示的な実施形態が本明細書に提示されている。明確にするため、物理的実装のすべての特徴が本願で説明ないし示されているわけではない。本発明の実施形態を組み込んだ物理的実施形態の開発において、システム関連、ビジネス関連、政府関連及びその他の制約のコンプライアンスなどの開発者の目標を達成するために、多数の実装固有の決定を行わなければならないことが理解される。これらは、実装によって、また場合によって変化する。開発者の努力は時間がかかるかもしれないが、それでも、そのような努力は、当業者にとって日常的な作業であり、本開示の利益を有するであろう。
【0259】
様々なシステム、ツール、及び方法が、様々なコンポーネント又はステップを「含む」という観点から本明細書で説明されているが、システム、ツール、及び方法はまた、様々なコンポーネント及びステップ「から本質的になる」又は「からなる」ものとすることができる。
【0260】
本明細書で使用される場合、一連の項目の前にあり、項目のいずれかを区切る「及び」又は「又は」という用語を伴う「少なくとも1つ」という句は、リストの各メンバー(つまり、各項目)ではなく、リスト全体を修飾する。「~の少なくとも1つ」という句は、項目のいずれか1つのうちの少なくとも1つ、及び/又は項目の任意の組み合わせのうちの少なくとも1つ、及び/又は項目のそれぞれの少なくとも1つを含むという意味を許容する。例として、「A、B、及びCの少なくとも1つ」又は「A、B、又はCの少なくとも1つ」という句は、それぞれ、Aのみ、Bのみ、又はCのみ;A、B、及びCの任意の組み合わせ;及び/又はA、B、及びCのそれぞれの少なくとも1つを指す。
【0261】
したがって、開示されたシステム、ツール、及び方法は、言及された目的及び利点、ならびにそれに内在するものを達成するために十分に適合されている。本開示の教示は、本明細書の教示の利益を有する当業者には明らかな、相違する同等の態様で変更及び実施され得るので、上記で開示された特定の実施形態は例示にすぎない。さらに、添付の特許請求の範囲に記載されている場合を除き、本明細書に示されている構造又は設計の詳細に限定することは意図されていない。したがって、上に開示された特定の例示的な実施形態は、変更、組み合わせ、又は修正され得ることは明らかであり、そのようなすべてのバリエーションは、本開示の範囲内であると見なされる。本明細書に例示的に開示されるシステム、ツール、及び方法は、本明細書に具体的に開示されていない要素及び/又は本明細書に開示されている任意選択の要素がない状態で適切に実施され得る。システム、ツール、及び方法は、様々なコンポーネント又はステップを「含む」という観点から説明されているが、システム、ツール、及び方法は、様々なコンポーネント及びステップ「から本質的になる」又は「からなる」ことも可能である。上記に開示されたすべての数及び範囲は、いくらか変動する場合がある。下限及び上限を有する数値範囲が開示されるときはいつでも、その範囲内にある任意の数及び任意の含まれる範囲が具体的に開示される。特に、本明細書に開示されるすべての範囲の値(「約aから約b」、又は同等に「約aからb」、又は同等に「約a~b」の形式)は、より広い範囲の値に含まれるすべての数及び範囲を記載しているものとして理解されるべきである。また、特許権者によって明示的かつ明確に定義されていない限り、請求項の用語は、本来の通常の意味を有する。本明細書と、参照により本明細書に組み込まれ得る1つ以上の特許文献又はその他の文献との間で単語又は用語の使用法に矛盾がある場合は、本明細書に従う定義を採用するものとする。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物センサであって、
組織に挿入するように構成されたセンサテールであって、少なくとも作用電極を含むセンサテール;及び
センサテール上に配置された第1及び第2の活性領域であって、少なくとも1つの分析物の濃度を測定するための少なくとも2つの異なる酵素を含む第1及び第2の活性領域を含み;
第1の活性領域は、互いに異なる第1の膜ポリマー及び第2の膜ポリマーで覆われている、分析物センサ。