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特開2024-23784染毛退色防止用組成物又は染毛用キット
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  • 特開-染毛退色防止用組成物又は染毛用キット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023784
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】染毛退色防止用組成物又は染毛用キット
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20240214BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20240214BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20240214BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20240214BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/41
A61Q5/06
A61Q5/00
A61Q5/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215753
(22)【出願日】2023-12-21
(62)【分割の表示】P 2020015702の分割
【原出願日】2020-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】津村 光孝
(57)【要約】
【課題】染毛後の毛髪の退色を低減又は抑制することが可能な組成物を提供する。
【解決手段】本開示の染毛退色防止用組成物は、特定のL-アスコルビン酸誘導体及びその塩から選ばれる少なくとも一種の第1化合物、並びに、カチオン系の第2化合物を含んでいる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式1で表されるL-アスコルビン酸誘導体及びその塩から選ばれる少なくとも一種の第1化合物、並びに、
カチオン系の第2化合物、
を含む、染毛退色防止用組成物:
【化1】
式1中、
は、それぞれ独立して、水素、炭素原子数8~36の直鎖若しくは分岐の飽和若しくは不飽和炭化水素基、又は炭素原子数8~36の直鎖若しくは分岐の飽和若しくは不飽和脂肪酸残基であり、
は水素、炭素原子数8~36の直鎖若しくは分岐の飽和若しくは不飽和炭化水素基、又は炭素原子数8~36の直鎖若しくは分岐の飽和若しくは不飽和脂肪酸残基であり、
は水素、炭素原子数8~36の直鎖若しくは分岐の飽和若しくは不飽和炭化水素基、炭素原子数8~36の直鎖若しくは分岐の飽和若しくは不飽和脂肪酸残基、糖残基、リン酸エステル基、又は硫酸エステル基であり、かつ、
~Rのうちの少なくとも1つは、炭素原子数8~36の直鎖若しくは分岐の飽和若しくは不飽和脂肪酸残基である。
【請求項2】
前記第1化合物が、テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第2化合物が、下記の式2で表されるモノアルキル又はジアルキル型の第四級アンモニウム塩である、請求項1又は2に記載の組成物:
【化2】
式2中、
~Rのうちの1又は2つは、ヒドロキシ基が置換していてもよい炭素原子数8~24のアルキル基を示し、
~Rのうちの前記1又は2つ以外のものは、ヒドロキシ基が置換していてもよい炭素原子数1~3のアルキル基、又は水素原子を示し、かつ、
は、陰イオンを示す。
【請求項4】
前記第1化合物の含有量が、組成物全量に対し、0.03質量%以上、1.0質量%以下であり、かつ、前記第2化合物の含有量が、組成物全量に対し、0.03質量%以上、1.0質量%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
染料をさらに含み、かつ、染毛用として使用される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
アルカリ剤をさらに含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
酸化剤をさらに含み、かつ、染毛用として使用される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
過硫酸塩をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
ヘアコンディショナー、ヘアリンス、又はヘアトリートメントとして使用される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物である剤、及び
使用説明書、
を備える、染毛用キット。
【請求項11】
前記剤が、染料をさらに含む、請求項10に記載のキット。
【請求項12】
前記剤がアルカリ剤をさらに含む第1剤であり、かつ、酸化剤を含む第2剤をさらに備える、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
前記剤が酸化剤をさらに含む第2剤であり、かつ、染料及びアルカリ剤を含む第1剤をさらに備える、請求項10に記載のキット。
【請求項14】
前記剤が第3剤であり、かつ、染料及びアルカリ剤を含む第1剤並びに酸化剤を含む第2剤をさらに備える、請求項10に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、染毛退色防止用組成物又は染毛用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の染毛剤などが開発されている。
【0003】
特許文献1には、(A)数平均重合度800~20,000のアミノ変性高重合シリコーン類、(B)特定の長鎖ジアルキル型第四級アンモニウム塩を0.1~5質量%、(C)高級アルコール、(D)アルカリ剤、(E)酸化染料中間体又は直接染料(脱色用の場合はいずれも含有しない)、(F)水、(G)非イオン界面活性剤を1~40質量%、(H)ジアリル四級アンモニウム塩を構成単位として含むカチオン性ポリマーを含有し、成分(B)を含めたカチオン界面活性剤と、成分(G)の非イオン界面活性剤との使用比率が、(カチオン界面活性剤)/(非イオン界面活性剤+カチオン界面活性剤)の質量比で0.4以下となる範囲であり、pHが8~12であり、酸化剤組成物と混合して使用する、乳化型酸化染毛又は脱色用第1剤組成物が開示されている。
【0004】
特許文献2には、主要中間体及びカプラーよりなる酸化染料を含有する酸化染毛剤において、アスコルビン酸類を1~20質量%含有する、酸化染毛剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4162585号公報
【特許文献2】特開2002-029946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
染毛剤を傷んだ毛髪に対して適用して染毛した場合、染毛直後は均一に毛髪が染毛されるが、日常的に実施されるシャンプーなどによって、汚れと同時に毛髪に適用されている染料も少なくとも一部が抜け落ち、染毛した髪が全体的に退色してきたり、或いは、染毛むらなどが生じる場合があった。
【0007】
したがって、本開示の主題は、染毛後の毛髪の退色を低減又は抑制することが可能な組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〈態様1〉
下記式1で表されるL-アスコルビン酸誘導体及びその塩から選ばれる少なくとも一種の第1化合物、並びに、
カチオン系の第2化合物、
を含む、染毛退色防止用組成物:
【化1】
式1中、
は、それぞれ独立して、水素、炭素原子数8~36の直鎖若しくは分岐の飽和若しくは不飽和炭化水素基、又は炭素原子数8~36の直鎖若しくは分岐の飽和若しくは不飽和脂肪酸残基であり、
は水素、炭素原子数8~36の直鎖若しくは分岐の飽和若しくは不飽和炭化水素基、又は炭素原子数8~36の直鎖若しくは分岐の飽和若しくは不飽和脂肪酸残基であり、
は水素、炭素原子数8~36の直鎖若しくは分岐の飽和若しくは不飽和炭化水素基、炭素原子数8~36の直鎖若しくは分岐の飽和若しくは不飽和脂肪酸残基、糖残基、リン酸エステル基、又は硫酸エステル基であり、かつ、
~Rのうちの少なくとも1つは、炭素原子数8~36の直鎖若しくは分岐の飽和若しくは不飽和脂肪酸残基である。
〈態様2〉
前記第1化合物が、テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビルである、態様1に記載の組成物。
〈態様3〉
前記第2化合物が、下記の式2で表されるモノアルキル又はジアルキル型の第四級アンモニウム塩である、態様1又は2に記載の組成物:
【化2】
式2中、
~Rのうちの1又は2つは、ヒドロキシ基が置換していてもよい炭素原子数8~24のアルキル基を示し、
~Rのうちの前記1又は2つ以外のものは、ヒドロキシ基が置換していてもよい炭素原子数1~3のアルキル基、又は水素原子を示し、かつ、
は、陰イオンを示す。
〈態様4〉
前記第1化合物の含有量が、組成物全量に対し、0.03質量%以上、1.0質量%以下であり、かつ、前記第2化合物の含有量が、組成物全量に対し、0.03質量%以上、1.0質量%以下である、態様1~3のいずれかに記載の組成物。
〈態様5〉
染料をさらに含み、かつ、染毛用として使用される、態様1~4のいずれかに記載の組成物。
〈態様6〉
アルカリ剤をさらに含む、態様5に記載の組成物。
〈態様7〉
酸化剤をさらに含み、かつ、染毛用として使用される、態様1~4のいずれかに記載の組成物。
〈態様8〉
過硫酸塩をさらに含む、態様1~4のいずれかに記載の組成物。
〈態様9〉
ヘアコンディショナー、ヘアリンス、又はヘアトリートメントとして使用される、態様1~4のいずれかに記載の組成物。
〈態様10〉
態様1~4のいずれかに記載の組成物である剤、及び
使用説明書、
を備える、染毛用キット。
〈態様11〉
前記剤が、染料をさらに含む、態様10に記載のキット。
〈態様12〉
前記剤がアルカリ剤をさらに含む第1剤であり、かつ、酸化剤を含む第2剤をさらに備える、態様11に記載のキット。
〈態様13〉
前記剤が酸化剤をさらに含む第2剤であり、かつ、染料及びアルカリ剤を含む第1剤をさらに備える、態様10に記載のキット。
〈態様14〉
前記剤が第3剤であり、かつ、染料及びアルカリ剤を含む第1剤並びに酸化剤を含む第2剤をさらに備える、態様10に記載のキット。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、染毛後の毛髪の退色を低減又は抑制することが可能な組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】各実施例及び各比較例の組成物による染毛後の毛髪の退色防止性に関与するΔE abに関するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について詳述する。本開示は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、発明の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0012】
本開示の染毛退色防止用組成物(単に「組成物」という場合がある。)は、特定のL-アスコルビン酸誘導体及びその塩から選ばれる少なくとも一種の第1化合物、並びに、カチオン系の第2化合物を含んでいる。
【0013】
原理によって限定されるものではないが、このような組成物が、染毛後の毛髪の退色を低減又は抑制し得る作用原理は以下のとおりであると考える。
【0014】
毛髪は一般的には、その表面がキューティクルで覆われているため、疎水性を呈しているが、例えば、毛髪がダメージを受け、表面のキューティクル構造が崩れると、そのダメージ部は親水性を呈するようになり、また、マイナスにチャージされることが知られている。
【0015】
そして、染毛された毛髪の退色は、毛髪がダメージを受け、それによりそのダメージ部から、シャンプーなどによって染料が抜け落ちることが影響していると考えている。
【0016】
本開示の組成物に含まれている第1化合物及び第2化合物は、各々、ダメージヘアーの補修剤などとして使用され、親水性になったダメージヘアーを補修して疎水性に戻す作用を有することが知られているが、この第1化合物又は第2化合物を各々単独で、染毛された毛髪に適用してもシャンプー後の退色を防止することはできなかった。しかしながら、意外なことに、本発明者は、第1化合物及び第2化合物を併用した場合において、染毛された毛髪のシャンプー後の退色を好適に防止し得ることを見出した。この第1化合物及び第2化合物の併用系が、染毛された毛髪のシャンプー後の退色を好適に防止し得る理由としては次のように考えている。
【0017】
第1化合物は、ダメージを受けていない髪の表面部に存在するアミノ基と反応して、第1化合物を構成する基、例えば、炭素原子数8~36の直鎖若しくは分岐の飽和又は不飽和脂肪酸残基に基づく疎水基が、髪の表面を覆うように配置され、髪表面を疎水性に補修する性能を呈することができる。また、カチオン性の第2化合物は、プラスにチャージし、電荷的な誘引作用によって、マイナスにチャージしている毛髪表面のダメージ部に対して直接的に補修するように配置される。
【0018】
染料が髪のダメージ部から、シャンプーなどによって抜け落ちている場合、染料の髪からの抜け落ちは、第2化合物によるダメージ部への直接的な補修のみで対処可能のように思われる。しかしながら、シャンプーは一般的にアニオン性を呈しているため、補修した部分に配置されているカチオン性の第2化合物は、そのダメージ部からシャンプー側にもいくらか引き寄せられてしまうと考えている。その結果、補修部において染料が抜け落ちてしまうような空洞部が生じ、十分な退色防止性が発現しないと考えている。
【0019】
一方、本開示の組成物は、まず、カチオン性の第2化合物で髪のダメージ部を補修し、さらに、そのダメージ部の周囲に存在するアミノ基と、第1化合物とが反応し、第2化合物による補修部が、第1化合物とアミノ基の反応によってもたらされる疎水基で覆われて保護されると考えている。その結果、疎水基で保護されているカチオン性の第2化合物は、シャンプーしてもダメージ部から抜け落ちることなく保持されるため、十分な退色防止性を発現できると考えている。
【0020】
《染毛退色防止用組成物》
本開示の染毛退色防止用組成物は、染毛した毛髪の退色を低減又は抑制する性能(この性能を単に「退色防止性」という場合がある。)を有している。退色防止性に関しては、例えば、後述する退色防止試験の条件に従い、染毛した毛髪について、シャンプーによる洗髪を施す前と後における毛髪の色を、分光測色計を使用して測定し、その色差(ΔE ab)によって評価することができる。色差(ΔE ab)がゼロに近いほど退色防止性に優れることを意味する。この色差(ΔE ab)としては、7.0以下、6.7以下、6.5以下、6.3以下、又は6.0以下とすることができる。色差(ΔE ab)の下限値については特に制限はないが、例えば、1.0以上、1.5以上、2.0以上、2.5以上、3.0以上、3.5以上、又は4.0以上とすることができる。
【0021】
〈第1化合物〉
本開示の染毛退色防止用組成物は、下記の式1で表されるL-アスコルビン酸誘導体及びその塩から選ばれる少なくとも一種の第1化合物を含んでいる。
【0022】
第1化合物の配合量としては特に制限はなく、例えば、組成物の全量に対し、0.03質量%以上、0.06質量%以上、0.08質量%以上、0.10質量%以上、0.15質量%以上、又は0.20質量%以上とすることができ、また、1.0質量%以下、0.70質量%以下、0.50質量%以下、又は0.30質量%以下とすることができる。
【0023】
本開示の組成物に配合し得る第1化合物は、下記の式1で表されるL-アスコルビン酸誘導体及びその塩から選ばれる少なくとも一種である:
【化3】
【0024】
式1中、Rは、それぞれ独立して、水素、炭素原子数8~36の直鎖若しくは分岐の飽和若しくは不飽和炭化水素基、又は炭素原子数8~36の直鎖若しくは分岐の飽和若しくは不飽和脂肪酸残基であり、Rは水素、炭素原子数8~36の直鎖若しくは分岐の飽和若しくは不飽和炭化水素基、又は炭素原子数8~36の直鎖若しくは分岐の飽和若しくは不飽和脂肪酸残基であり、Rは水素、炭素原子数8~36の直鎖若しくは分岐の飽和若しくは不飽和炭化水素基、炭素原子数8~36の直鎖若しくは分岐の飽和若しくは不飽和脂肪酸残基、糖残基、リン酸エステル基、又は硫酸エステル基であり、かつ、R~Rのうちの少なくとも1つは、炭素原子数8~36の直鎖若しくは分岐の飽和若しくは不飽和脂肪酸残基である。
【0025】
退色防止性の観点から、式1で表されるL-アスコルビン酸誘導体及びその塩のR~Rにおいて、直鎖若しくは分岐の飽和又は不飽和炭化水素基の炭素原子数は、8~36が好ましいが、より好ましくは12~22である。さらに、退色防止性の観点から、R~Rは、そのうちの少なくとも1つが、炭素原子数8~36の直鎖若しくは分岐の飽和又は不飽和脂肪酸残基であることが好ましいが、炭素原子数12~22の直鎖若しくは分岐の飽和又は不飽和脂肪酸残基であることがより好ましい。
【0026】
ここで、脂肪酸残基とは、直鎖若しくは分岐の飽和又は不飽和脂肪酸のカルボキシル基から水酸基を除いた基を意図する。脂肪酸は、飽和又は不飽和の脂肪酸であり、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、ヘキシルデカン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキジン酸、ベヘン酸などを挙げることができる。
【0027】
また、Rにおいて、糖残基とは、糖から水酸基を1つ除いた基を意図する。リン酸エステル基は、Rと結合する酸素原子を含めた部分をリン酸エステル基と称し、硫酸エステル基は、Rと結合する酸素原子を含めた部分を硫酸エステル基と称する。
【0028】
式1で表されるL-アスコルビン酸誘導体の塩の形態としては、特に限定されるものでないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミノ酸塩等の形態を挙げることができる。
【0029】
式1で表されるL-アスコルビン酸誘導体及びその塩として、具体的には、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビル、テトラパルミチン酸アスコルビル、テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル、アスコルビン酸グルコシド脂肪酸、パルミチン酸アスコルビルリン酸三ナトリウムを挙げることができる。これらは単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。これらの中でも、退色防止性等の観点から、ジパルミチン酸アスコルビル、及びテトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビルが好ましく、テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビルがより好ましい。
【0030】
〈第2化合物〉
本開示の染毛退色防止用組成物は、カチオン系の第2化合物を含んでいる。この第2化合物と上述した第1化合物を併用することによって、良好な退色防止性を発現させることができる。
【0031】
第2化合物の配合量としては特に制限はなく、例えば、組成物の全量に対し、0.03質量%以上、0.06質量%以上、0.08質量%以上、0.10質量%以上、0.15質量%以上、又は0.20質量%以上とすることができ、また、1.0質量%以下、0.70質量%以下、0.50質量%以下、又は0.30質量%以下とすることができる。
【0032】
上述した第1化合物と、第2化合物との配合割合としては特に制限はないが、例えば、退色防止性の観点から、第1化合物及び第2化合物の質量比としては、1:3、1:2.5、1:2、1:1.5、及び1:1から選択されるいずれかから、3:1、2.5:1、2:1、1.5:1、及び1:1から選択されるいずれかまでの範囲とすることができる。中でも、かかる質量比として、1:2.5~2.5:1の範囲が好ましく、1:2~2:1の範囲がより好ましく、1:2~1.5:1の範囲がさらに好ましく、1:2~1:1の範囲が特に好ましい。
【0033】
本開示の組成物に配合し得る第2化合物としては、カチオン系の化合物を使用することができ、中でも、退色防止性の観点から、カチオン性界面活性剤を使用することが好ましく、下記の式2で表されるモノアルキル型の第四級アンモニウム塩又はジアルキル型の第四級アンモニウム塩を使用することがさらに好ましい。第2化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる:
【化4】
【0034】
式2中、R~Rのうちの1又は2つは、ヒドロキシ基が置換していてもよい炭素原子数8~24のアルキル基を示し、R~Rのうちの前記1又は2つ以外のものは、ヒドロキシ基が置換していてもよい炭素原子数1~3のアルキル基、又は水素原子を示し、かつ、Aは、陰イオンを示す。
【0035】
(モノアルキル型第四級アンモニウム塩)
モノアルキル型第四級アンモニウム塩について、以下に詳述する。
【0036】
モノアルキル型第四級アンモニウム塩の場合、式2中、Rは、炭素原子数8~22の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であることが好ましい。かかる炭素原子数としては、12以上又は16以上であることがより好ましく、また、20以下又は18以下であることがより好ましい。また、Rは、直鎖アルキル基が好ましい。
【0037】
式2中のR~Rは、同一でもよく又は異なってもよく、また、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0038】
式2中のAは、塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲン化物イオンが好ましく、塩化物イオンがより好ましい。
【0039】
モノアルキル型第四級アンモニウム塩の具体例としては、例えば、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム等の塩化アルキルトリメチルアンモニウムを挙げることができる。中でも、退色防止性等の観点から、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウムが好ましく、塩化ステアリルトリメチルアンモニウムがより好ましい。
【0040】
(ジアルキル型第四級アンモニウム塩)
ジアルキル型第四級アンモニウム塩の場合、式2中、R及びRは、同一でもよく又は異なってもよく、ヒドロキシ基が置換していてもよい炭素原子数8~24のアルキル基であることが好ましい。かかる炭素原子数としては、12以上又は14以上であることがより好ましく、また、20以下又は18以下であることがより好ましい。また、R及びRは、直鎖アルキル基が好ましい。
【0041】
式2中のR及びRは、同一でもよく又は異なってもよく、ヒドロキシ基が置換していてもよい炭素原子数1~3のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0042】
式2中のAは、ハロゲン化物イオン、メチル硫酸イオン、又はエチル硫酸イオンであることが好ましく、ハロゲン化物イオンがより好ましく、塩化物イオンがさらに好ましい。
【0043】
ジアルキル型第四級アンモニウム塩の具体例としては、例えば、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化イソステアリルラウリルジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(C12~C15)ジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(C12~C18)ジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(C14~C18)ジメチルアンモニウム等を挙げることができる。中でも、退色防止性等の観点から、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムが好ましい。
【0044】
〈任意成分〉
本開示の染毛退色防止用組成物は、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で、各種成分を適宜配合することができる。例えば、染料、アルカリ剤、酸化剤、油脂剤、金属封鎖剤(例えば、EDTA)及び酸化防止剤(例えば、ビタミンC、シスチン、亜硫酸塩)等の安定化剤、殺菌剤、防腐剤、紫外線吸収剤、溶剤(例えば、エタノール)、水、浸透剤(例えば、ベンジルアルコール)、界面活性剤(例えば、アニオン性界面活性剤、上記以外のカチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤)、水溶性高分子化合物、保湿剤、コンディショニング剤(例えば、ポリオール、ケラチンタンパク、シリコーン、アミノ酸、植物エキス)、pH調整剤(例えば、リン酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸)、光沢付与剤、感触改良剤、エモリエント剤、増粘剤(セルロース、キサンタンガム)、可溶化剤(例えば、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン)、顔料、香料等を挙げることができる。これらの任意成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0045】
例えば、染料をさらに含む組成物は、例えば、1剤式の一時染毛剤又は半永久染毛剤として使用することができ、或いは、2剤式の永久染毛剤の第1剤として使用することができる。なお、本開示の染毛退色防止用組成物は、一時染毛剤、半永久染毛剤、及び永久染毛剤のいずれかで染毛した毛髪に対して退色防止性を発揮することができるが、染料が毛髪の内部に浸透し、毛髪のダメージ部からシャンプーによって外部へ移行しやすい半永久染毛剤及び永久染毛剤、その中でも永久染毛剤で染毛した毛髪に対して利用することが有利である。
【0046】
例えば、組成物を2剤式の永久染毛剤の第1剤として使用する場合、アルカリ剤をさらに配合することができる。
【0047】
この他、例えば、酸化剤をさらに含む組成物は、2剤式の永久染毛剤の第2剤として使用することができ、また、過硫酸塩をさらに含む組成物は、例えば、3剤式の永久染毛剤の第3剤(脱色剤)として使用することができる。かかる第3剤は、染毛する前に、毛髪を脱色しておくための剤であり、この第3剤を使用した後に、染毛処理が実施される。
【0048】
また、組成物に対して、界面活性剤、油脂剤、水等を適宜配合し、ヘアコンディショナー、ヘアリンス、又はヘアトリートメントなどとして使用してもよい。本開示の染毛退色防止用組成物は、染毛するための剤として直接使用されなくても、ヘアコンディショナー等の形態で継続的に使用することで、染毛した髪の脱色を低減又は抑制することができる。
【0049】
以下に、任意成分の中で使用頻度の高い成分をいくつか詳述する。
【0050】
(染料)
いくつかの実施態様において、本開示の染毛退色防止用組成物は、一時染毛剤、半永久染毛剤、永久染毛剤で使用されるような染料を配合することができる。
【0051】
染料の配合量としては特に制限はなく、例えば、組成物の全量に対し、0.01質量%以上、0.05質量%以上、又は0.1質量%以上とすることができ、また、5.0質量%以下、4.5質量%以下、又は4.0質量%以下とすることができる。
【0052】
a.酸性染料
染料として、酸性染料を使用することができる。酸性染料は、典型的には、一時染毛剤、半永久染毛剤に使用される染料である。
【0053】
酸性染料としては、例えば、赤色3号(エリスロシン)、赤色102号(ニューコクシン)、赤色106号(アシッドレッド)、赤色201号(リソールルビンB)、赤色227号(ファストアシッドマゲンタ)、赤色230号の(1)(エリスロシンYS)、赤色203号の(2)(エリスロシンYSK)、赤色231号(フロキシンBK)、赤色232号(ローズベンガルK)、赤色401号(ビオラミンR)、赤色502号(ボンソー3R)、赤色503号(ボンソーR)、赤色504号(ボンソーSX)、赤色506号(ファストレッドS)、黄色202号の(2)(ウラニンK)、黄色4号(タートラジン)、黄色402号(ポーラエロー5G)、黄色403号の(1)(ナフトールエローS)、黄色406号(メタニールエロー)、緑色3号(ファーストグリーンFCF)、緑色201号(アリザリンシアニングリーンF)、緑色204号(ピラニンコンク)、緑色205号(ライトグリーンSF黄)、緑色401号(ナフトールグリーンB)、緑色402号(ギネアグリーンB)、青色1号(ブリリアントブルーFCF)、青色2号(インジゴカルミン)、青色202号(パテントブルーNA)、青色205号(アルファズリンFG)、褐色201号(レゾルシンブラウン)、紫色401号(アリズロールパープル)、黒色401号(ナフトールブルーブラック)等を挙げることができる。これらは単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0054】
b.酸化染料
染料として、酸化染料を使用することができる。酸化染料は、典型的には、永久染毛剤に使用される染料である。
【0055】
酸化染料(酸化染料中間体)としては特に制限はなく、酸化染料(酸化染料中間体)自身が単独で酸化重合して高分子の発色団に変化して発色するタイプであってもよく、或いは、酸化染料(酸化染料中間体)とカプラーとが酸化重合して高分子の発色団に変化して発色するタイプであってもよい。
【0056】
酸化染料(酸化染料中間体)としては、例えば、パラフェニレンジアミン、トルエン-2,5-ジアミン、2-クロロ-パラフェニレンジアミン、N-メトキシエチル-パラフェニレンジアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-パラフェニレンジアミン、2-(2-ヒドロキシエチル)-パラフェニレンジアミン、2,6-ジメチル-パラフェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、1,3-ビス(N-(2-ヒドロキシエチル)-N-(4-アミノフェニル)アミノ)-2-プロパノール、PEG-3,3,2’-パラフェニレンジアミン、パラアミノフェノール、パラメチルアミノフェノール、3-メチル-4-アミノフェノール、2-アミノメチル-4-アミノフェノール、2-(2-ヒドロキシエチルアミノメチル)-4-アミノフェノール、オルトアミノフェノール、2-アミノ-5-メチルフェノール、2-アミノ-6-メチルフェノール、2-アミノ-5-アセタミドフェノール、3,4-ジアミノ安息香酸、5-アミノサリチル酸、2,4,5,6-テトラアミノピリミジン、2,5,6-トリアミノ-4-ヒドロキシピリミジン、4,5-ジアミノ-1-(4’-クロロベンジル)ピラゾール、4,5-ジアミノ-1-ヒドロキシエチルピラゾール、又はこれらの塩(例えば硫酸塩)等が挙げられる。これらは単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0057】
上述した酸化染料と酸化重合し得るカプラーとしては、例えば、メタフェニレンジアミン、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、2-アミノ-4-(2-ヒドロキシエチルアミノ)アニソール、2,4-ジアミノ-5-メチルフェネトール、2,4-ジアミノ-5-(2-ヒドロキシエトキシ)トルエン、2,4-ジメトキシ-1,3-ジアミノベンゼン、2,6-ビス(2-ヒドロキシエチルアミノ)トルエン、2,4-ジアミノ-5-フルオロトルエン、1,3-ビス(2,4-ジアミノフェノキシ)プロパン、メタアミノフェノール、2-メチル-5-アミノフェノール、2-メチル-5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)フェノール、2,4-ジクロロ-3-アミノフェノール、2-クロロ-3-アミノ-6-メチルフェノール、2-メチル-4-クロロ-5-アミノフェノール、N-シクロペンチル-メタアミノフェノール、2-メチル-4-メトキシ-5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)フェノール、2-メチル-4-フルオロ-5-アミノフェノール、パラアミノオルトクレゾール、レゾルシン、2-メチルレゾルシン、4-クロロレゾルシン、1-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、2-イソプロピル-5-メチルフェノール、4-ヒドロキシインドール、5-ヒドロキシインドール、6-ヒドロキシインドール、7-ヒドロキシインドール、6-ヒドロキシベンゾモルホリン、3,4-メチレンジオキシフェノール、2-ブロモ-4,5-メチレンジオキシフェノール、3,4-メチレンジオキシアニリン、1-(2-ヒドロキシエチル)アミノ-3,4-メチレンジオキシベンゼン、2,6-ジヒドロキシ-3,4-ジメチルピリジン、2,6-ジメトキシ-3,5-ジアミノピリジン、2,3-ジアミノ-6-メトキシピリジン、2-メチルアミノ-3-アミノ-6-メトキシピリジン、2-アミノ-3-ヒドロキシピリジン、2,6-ジアミノピリジン、又はこれらの塩(例えば硫酸塩、塩酸塩)等が挙げられる。これらは単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0058】
c.直接染料
染料として、直接染料を使用することができる。直接染料は、典型的には、永久染毛剤に使用される染料である。
【0059】
直接染料としては特に制限はなく、例えば、ニトロ染料、分散染料、塩基性染料等を挙げることができる。これらは単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0060】
ニトロ染料としては、例えば、2-ニトロ-パラフェニレンジアミン、2-アミノ-6-クロロ-4-ニトロフェノール、3-ニトロ-パラヒドロキシエチルアミノフェノール、4-ニトロ-オルトフェニレンジアミン、4-アミノ-3-ニトロフェノール、4-ヒドロキシプロピルアミノ-3-ニトロフェノール、ニトロパラミン、HCブルーNo.2、HCオレンジNo.1、HCレッドNo.1、HCイエローNo.2、HCイエローNo.4、HCイエローNo.5、HCレッドNo.3、N,N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-2-ニトロ-パラフェニレンジアミン等を挙げることができる。
【0061】
分散染料としては、例えば、ディスパーズバイオレット1、ディスパーズブルー1、ディスパーズブラック9等を挙げることができる。
【0062】
塩基性染料としては、例えば、ベーシックブルー99、ベーシックブラウン16、ベーシックブラウン17、ベーシックレッド76、ベーシックレッド51、ベーシックイエロー57、ベーシックイエロー87、ベーシックオレンジ31等を挙げることができる。
【0063】
(アルカリ剤)
いくつかの実施態様において、本開示の染毛退色防止用組成物は、アルカリ剤を含んでもよい。アルカリ剤は、毛髪を膨潤させて、各種の成分を毛髪の内部に浸透させやすくする機能を有するとともに、例えば、過酸化水素等の酸化剤を分解して酸素を発生させ、それにより、毛髪のメラニン色素の分解、又は酸化染料の重合に間接的に貢献することができる。
【0064】
アルカリ剤の配合量としては特に制限はなく、例えば、組成物の全量に対し、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、又は8質量%以上とすることができる。アルカリ剤の配合量の上限値としては特に制限はないが、例えば、30質量%以下、25質量%以下、又は20質量%以下とすることができる。
【0065】
アルカリ剤としては特に制限はなく、例えば、アンモニア、炭酸水素アンモニウム、リン酸アンモニウム等のアンモニウム塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸;グアニジン、2-アミノ-2-メチルプロパン、モノイソプロパノールアミン等の有機アミン;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリなどを挙げることができる。さらに、これらの塩との組合せによる緩衝溶液(例えば、リン酸-リン酸のナトリウム塩)などを用いることができる。好ましいアルカリ剤としては、アンモニア、アンモニウム塩、アルカノールアミンを挙げることができる。これらのアルカリ剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0066】
(酸化剤)
いくつかの実施態様において、本開示の染毛退色防止用組成物は、酸化剤を含んでもよい。酸化剤は、毛髪内のメラニン色素の脱色を促進させる働きを有し、また、酸化染料中間体及び任意のカプラーを酸化重合させて着色効果を確定する効果を発揮することができる。
【0067】
酸化剤の配合量としては特に制限はなく、例えば、組成物の全量に対し、0.1質量%以上、0.5質量%以上、又は1.0質量%以上とすることができ、また、12質量%以下、9.0質量%以下、又は6.0質量%以下とすることができる。
【0068】
酸化剤としては特に制限はなく、例えば、過酸化水素、過酸化水素塩(例えば、過酸化水素ナトリウム等)、過酸化塩(例えば、過酸化アンモニウム、過酸化カリウム等)、過硫酸塩(例えば、過硫酸アンモニウム等)、過ホウ酸塩(例えば、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸アンモニウム、過ホウ酸カリウム等)、臭素酸塩(例えば、臭素酸ナトリウム等)、過ヨウ素酸塩、過酸化尿素塩、過炭酸塩(例えば、過炭酸ナトリウム等)等を挙げることができる。これらは単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0069】
(油脂剤)
いくつかの実施態様において、本開示の染毛退色防止用組成物は、油脂剤を含んでもよい。油脂剤は、例えば、塗布性能の向上、使用感(例えばしっとり感)の発現、毛髪に対するエモリエント効果の発現等のために、組成物中に配合され得る。
【0070】
油脂剤の配合量としては特に制限はなく、例えば、組成物の全量に対し、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、3.0質量%以上、又は5.0質量%以上とすることができ、また、20質量%以下、18質量%以下、15質量%以下、13質量%以下、又は10質量%以下とすることができる。
【0071】
油脂剤としては特に制限はなく、例えば、高級アルコール、高級脂肪酸、炭化水素油等の油性成分を挙げることができる。これらは単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0072】
高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等の直鎖アルコール;イソステアリルアルコール、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2-デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の分岐鎖アルコール等を挙げることができる。
【0073】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン(ベヘニン)酸、オレイン酸、12-ヒドキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等を挙げることができる。
【0074】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等を挙げることができる。
【0075】
〈組成物の形態〉
本開示の染毛退色防止用組成物の形態としては特に制限はなく、例えば、液状、ゲル状、ペースト状、クリーム状、ワックス状等の形態を適宜選択することができる。
【0076】
上記の形態の中でも、クリーム状であることが好ましい。クリーム状の組成物は、液状の組成物に比べて毛髪上に保持されやすく、本開示の組成物中の第1化合物及び第2化合物が毛髪の表面又はダメージ部に対して定着しやすくなるため、退色防止性をより向上させることができる。
【0077】
クリーム状組成物、例えば、2剤式の染毛用キットに用いられる第1剤及び第2剤を混ぜ合わせた状態の粘度(塗布時の粘度)としては、例えば、髪への塗り伸ばしやすさ等の観点から、10,000mPa・s以上、20,000mPa・s以上、30,000mPa・s以上、40,000mPa・s以上、45,000mPa・s以上、又は50,000mPa・s以上とすることができる。クリーム状組成物の粘度の上限値としては特に制限はなく、例えば、髪への塗り伸ばしやすさの観点から、100,000mPa・s以下、80,000mPa・s以下、60,000mPa・s以下、55,000mPa・s以下、又は50,000mPa・s以下とすることができる。ここで、かかる粘度は、25℃の雰囲気下でB型粘度計(RV型粘度計RVDVI+、ブルックフィールド社製、ローター番号6)を用いたときの、2rpmで測定される粘度を意図する。
【0078】
本開示の組成物は、水、界面活性剤、油分などを用いて調製した、水中油型又は油中水型の乳化物の形態であってもよい。
【0079】
《染毛用キット》
本開示の染毛用キットは、染毛退色防止用組成物である剤と、使用説明書とを備えている。ここで、使用説明書とは、キット内に書類の形態で添付されている一般的な使用説明書以外に、例えば、キットを収容する包装容器、又は染毛退色防止用組成物を注入するチューブ等の包装容器に対して使用説明文が印字された状態のものも包含することができる。
【0080】
以下に、染毛用キットの具体的な実施態様をいくつか例示するが、本開示のキットはこれらに限定されるものではない。
【0081】
以下のキットに使用される、染毛退色防止用組成物、アルカリ剤、酸化剤、染料などは、上述したものを同様に使用することができ、また、キットに用いられる各剤には、上述した任意成分を適宜配合してもよい。また、以下に示す各剤に含まれる内容物の形態としては、上述した組成物の形態と同様のものを採用することができる。
【0082】
いくつかの実施態様において、本開示の染毛用キットは、染料を含む染毛退色防止用組成物である剤と、使用説明書とを備えることができる。
【0083】
いくつかの実施態様において、本開示の染毛用キットは、染料及びアルカリ剤を含む染毛退色防止用組成物である第1剤と、酸化剤を含む第2剤と、使用説明書とを備えることができる。
【0084】
いくつかの実施態様において、本開示の染毛用キットは、酸化剤を含む染毛退色防止用組成物である第2剤と、染料及びアルカリ剤を含む第1剤と、使用説明書とを備えることができる。
【0085】
いくつかの実施態様において、本開示の染毛用キットは、染毛退色防止用組成物である第3剤と、染料及びアルカリ剤を含む第1剤と、酸化剤を含む第2剤と、使用説明書とを備えることができる。ここで、第3剤には、例えば、過硫酸塩などをさらに配合してもよい。
【0086】
上述した実施態様では、染毛退色防止用組成物は、1つの剤として構成されているが、かかる組成物は、2つ以上の剤として構成されてもよい。
【0087】
〈剤型〉
上述した各種の剤は、チューブ等の容器に適宜配合することができ、その剤型としては特に制限はなく、例えば、ポンプスプレー、エアゾールスプレー、ポンプフォーム、エアゾールフォーム、クリーム、ジェル、ローション等を挙げることができる。中でも、上述したように、毛髪上での保持性能、脱色防止性能等の観点から、少なくとも、本開示の組成物を含む剤の剤型としては、クリームの剤型が好ましい。
【0088】
〈使用方法〉
上述した染毛用キットに用いられる各種の剤は、公知の方法によって髪に適用することができる。例えば、2剤式の場合は、第1剤と第2剤とを混ぜ合わせて毛髪に塗布し、所定時間経過後、洗い流すことで実施することができる。3剤式の場合は、例えば、第1剤~第3剤を混ぜ合わせて、同様にして実施することができる。
【実施例0089】
以下に実施例を挙げて、本発明についてさらに詳しく説明を行うが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下、特に断りのない限り、配合量は質量%で示す。
【0090】
《実施例1~7及び比較例1~5》
表2に示す各処方の2剤式染毛剤の第1剤(染料を含む組成物)を常法により調製した。また、以下の表1の配合例に示す処方の2剤式染毛剤の第2剤(酸化剤を含む組成物)を常法により調製した。これらの第1剤及び第2剤を用いて、以下の評価を行い、その結果を表2及び図1に示す。
【0091】
〈評価方法〉
(脱色防止性評価:色差(ΔE ab))
イオン交換水60質量%、無水メタケイ酸ナトリウム8質量%、過硫酸アンモニウム20質量%、及び35%の過酸化水素水12質量%含む脱色剤を、2gの黒髪ストランドに対して塗布し、31℃で20分間放置した後、水洗し、風乾させてダメージ毛を調製した。
【0092】
第1剤及び第2剤を均一に混ぜ合わせて調製した混合物を、ダメージ毛に塗布し、31℃で30分間放置した後、水洗し、風乾させて染色毛を調製し、分光測色計(CM-3600d、コニカミノルタ社製)を用いて染色毛の色相(a 、b )及び明度(L )を測定した。
【0093】
次いで、5%のシャンプー液を含む容器内に染色毛を投入し、40℃で30分間浸漬した後、水洗し、風乾させてシャンプー処理毛を調製し、同様にして処理毛の色相(a 、b )及び明度(L )を測定した。
【0094】
そして、得られた測定結果を以下の式3に導入して色差(ΔE ab)を算出した。なお、色差が1程度異なると、目視では色味が明らかに異なると認識される傾向にある:
【数1】
【0095】
〈2剤式染毛剤の第1剤及び第2剤の処方並びに評価結果〉
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
〈結果〉
表2及び図1を見れば分かるように、第1化合物又は第2化合物のいずれかのみを含む組成物を使用した比較例2~5の色差はいずれも7.0を超えており、第1化合物及び第2化合物の両方を含まない組成物を使用した比較例1と同様、明らかに退色していた。
【0098】
一方、第1化合物及び第2化合物の両方を含む組成物を使用した実施例1~7の色差はいずれも7.0を下回っており、第1化合物及び第2化合物の両方を含まない組成物を使用した比較例1と見比べると、明らかに退色が抑制されていることが確認できた。
図1
【手続補正書】
【提出日】2023-12-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式1で表されるL-アスコルビン酸誘導体及びその塩から選ばれる少なくとも一種の第1化合物、並びに、
カチオン系の第2化合物、
を含む、染毛退色防止用組成物:
【化1】
式1中、
は、それぞれ独立して、水素、炭素原子数8~36の直鎖若しくは分岐の飽和若しくは不飽和炭化水素基、又は炭素原子数8~36の直鎖若しくは分岐の飽和若しくは不飽和脂肪酸残基であり、
は水素、炭素原子数8~36の直鎖若しくは分岐の飽和若しくは不飽和炭化水素基、又は炭素原子数8~36の直鎖若しくは分岐の飽和若しくは不飽和脂肪酸残基であり、
は水素、炭素原子数8~36の直鎖若しくは分岐の飽和若しくは不飽和炭化水素基、炭素原子数8~36の直鎖若しくは分岐の飽和若しくは不飽和脂肪酸残基、糖残基、リン酸エステル基、又は硫酸エステル基であり、かつ、
~Rのうちの少なくとも1つは、炭素原子数8~36の直鎖若しくは分岐の飽和若しくは不飽和脂肪酸残基である。