(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023823
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】直接的選択的レーザ線維柱帯形成術
(51)【国際特許分類】
A61F 9/008 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
A61F9/008 100
A61F9/008 120E
A61F9/008 151
A61F9/008 110
A61F9/008 130
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023217477
(22)【出願日】2023-12-22
(62)【分割の表示】P 2020561860の分割
【原出願日】2019-07-01
(31)【優先権主張番号】62/692,868
(32)【優先日】2018-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/739,238
(32)【優先日】2018-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/748,461
(32)【優先日】2018-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515212529
【氏名又は名称】ベルキン ヴィジョン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086461
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 和則
(72)【発明者】
【氏名】サックス、ザッチャリ
(72)【発明者】
【氏名】レマン-ブルメンタール、ダリア
(72)【発明者】
【氏名】キソス、アリエッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハイ、ユーヴァル
(72)【発明者】
【氏名】エルカヤム、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ダブキン-ベクマン、マーシャ
(72)【発明者】
【氏名】ジメルマン、マイカ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】緑内障、高眼圧症(OHT)、および他の疾患を処置するための眼科用装置および方法を提供する。
【解決手段】システム20は、放射線源とコントローラとを有し、コントローラは:患者22の眼25の画像のライブシーケンスを表示し、眼の画像のシークエンスを表示している間、放射線源に対し、画像内で見ることが出来る1つまたは複数の照準ビームを眼に照射させ、放射線源に対し照準ビームを眼に照射させた後、ユーザから確認入力を受け取り、そして確認入力の受け取りに応答して、放射線源に対し複数の治療ビームを眼のそれぞれの標的領域に照射させることにより眼を処置する、ように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線の治療ビームを放出するように構成された放射線照射源と;
眼の画像を取得するように構成されたカメラと; そして
コントローラと;
を有するシステムであって、
前記コントローラは:
前記眼の画像に基づいて、前記眼の瞳孔を含む、前記カメラの視野内の静的領域を識別し、そして
標的領域の次の1つの位置を計算するステップと;
前記計算された位置に基づいて、前記標的領域の次の1つが前記静的領域内にあるかどうかを確認するステップと;そして
前記標的領域の次の1つが前記静的領域内にない場合に、前記放射線照射源に対し前記標的領域の次の1つを照射させるステップ;
を繰り返して、前記放射線照射源から前記眼の複数の標的領域に前記治療ビームを照射する、ように構成される、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記治療ビームを前記標的領域に向けるように構成された1つまたは複数のビーム指向要素をさらに備え、
前記コントローラはさらに、前記治療ビームが発射されていない間でも前記ビーム指向要素が前記静止領域に向けられることを禁止するように構成される、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記標的領域の次の1つが前記静的領域内にあるかどうかを確認するステップは、前記標的領域の次の1つの中心が前記静的領域の境界から所定の距離よりも離れているかどうかをチェックするステップを有する、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記静止領域は、前記瞳孔を囲む前記眼の角膜の一部を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記画像内の角膜輪部の位置に基づいて前記静的領域を識別するように構成される、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記角膜輪部の位置を示す、角膜輪部位置決め入力をユーザから受信するステップをさらに有する、ことを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記コントローラはさらに、前記角膜輪部の位置を識別するように構成される、ことを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記コントローラは、前記角膜輪部から所定の距離を超えて前記角膜輪部の内側に位置する、視野内のすべての点の集合として前記静的領域を識別するように構成される、ことを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
前記コントローラは、前記角膜輪部の中心または前記瞳孔の中心に前記静的領域の中心を置くことによって、前記静的領域を識別するように構成される、ことを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項10】
前記放射線放射源を含む光学ユニットをさらに備え、前記コントローラは、前記光学ユニットが前記眼に向かって斜め上方に向けられ、そして前記眼が前記光学ユニットに向かって斜め下を見つめている間に、前記放射線放射源に対し前記標的領域を照射させるように構成される、ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
楔をさらに備え、前記光学ユニッは、前記楔に取り付けられることによって前記眼に向かって斜め上方に向けられる、ことを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
楔と;
光学ユニットであって、前記楔に取り付けられ、斜め上方を向き、放射線放射源を有する、光学ユニットと; そして
コントローラであって、眼が前記光学ユニットに向かって斜め下方を見つめている間に、前記放射線源に対し前記眼の1つ以上の標的領域に1つ以上の治療ビームを照射させることによって患者の前記眼を治療するように構成される、コントローラと;
を有することを特徴とするシステム。
【請求項13】
前記光学ユニットが、前記眼の画像を取得するように構成されたカメラをさらに備える、ことを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記コントローラは、前記1つまたは複数の標的領域を識別するために前記画像を処理するように構成される、ことを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記コントローラは、前記眼の角膜輪部を識別し、前記識別された角膜輪部に基づいて前記1つまたは複数の標的領域を選択するように構成される、ことを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
モーションステージをさらに備え、前記楔が前記モーションステージ上に取り付けられる、ことを特徴とする請求項12~15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記楔は、前記光学ユニットを5度~20度の間の角度だけ上向きに向けるように構成される、ことを特徴とする請求項12~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記光学ユニットに対して斜めの向きで前記患者の頭部を固定するように構成された額当ておよび顎当てをさらに備える、ことを特徴とする請求項12~17のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑内障、高眼圧症(OHT)、および他の疾患を処置するための眼科用装置および方法に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、(i)2018年7月2日に出願された「直接的選択的レーザ線維柱帯形成術プロセス(DSLT)および安全性」と題された米国特許暫定出願第62/692,868号(特許文献1)(ii)2018年9月30日に出願された「アイトラッキングフラッシュ照明」と題された米国特許暫定出願第62/739,238号(特許文献2)、および(iii)2018年10月21日に出願された「クロスレンジングビーム」と題された米国特許暫定出願第62/748,461号(特許文献3)の利益を主張する。それらそれぞれの参考文献のそれぞれの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
線維柱帯形成術では、放射線源が1つまたは複数の治療ビームで患者の眼の線維柱帯を照射し、眼内の眼圧を低下させる。
【0004】
Geffen、Noa、他著「角膜鏡検査レンズなしの経強膜選択的レーザ線維柱帯形成術」Journal of glaucoma 26.3(2017):201-207(非特許文献1)は、角膜鏡検査レンズなしで直接強膜に行われた選択的レーザ線維柱帯形成術(SLT)の結果を調査する研究について記載している。
【0005】
その開示が参照により本明細書に組み込まれる、Belkinの米国特許出願公開第2015/0366706号(特許文献4)は、プローブおよびプロセッサを含む装置を記載している。プローブは、患者の眼に隣接して配置され、眼の線維柱帯に1つまたは複数の光ビームを照射するように構成される。プロセッサは、線維柱帯の1つまたは複数の標的領域を選択し、プローブを制御して選択された標的領域を光ビームで照射するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許暫定出願第62/692,868号
【特許文献2】米国特許暫定出願第62/739,238号
【特許文献3】米国特許暫定出願第62/748,461号
【特許文献4】米国特許出願公開第2015/0366706号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Geffen、Noa、他著「角膜鏡検査レンズなしの経強膜選択的レーザ線維柱帯形成術」Journal of glaucoma 26.3(2017):201-207
【発明の概要】
【0008】
本発明の幾つかの実施形態によれば、放射線源とコントローラとを有するシステムが提供される。コントローラは:患者の目の画像のライブシーケンスを表示し、目の画像のシークエンスを表示している間、放射線源に対し、画像内で見ることが出来る1つまたは複数の照準ビームを目に照射させるように構成される。コントローラはさらに、放射線源に照準ビームを目に照射させた後、ユーザから確認入力を受け取り、そして確認入力の受け取りに応答して、放射線源に対し複数の治療ビームを目のそれぞれの標的領域に照射させることにより目を処置する、ように構成される。
【0009】
幾つかの実施形態では、集束レンズおよび1つまたは複数のビーム指向要素を更に備え、ここで、コントローラは、放射線源に対し、集束レンズを介してビーム指向要素に向かって治療ビームを放出させることによって治療ビームを目に照射させる、ように構成され、それによりビームはビーム指向要素によってそれぞれの標的領域に向け指向される前に、集束レンズによって集束される。
【0010】
幾つかの実施形態では、照準ビームが、それぞれの標的領域の少なくとも一部に衝突する。
幾つかの実施形態では、コントローラは、それぞれの画像の上に、それぞれの標的領域を通過するマーカーを重ね合わせるようにさらに構成される。
幾つかの実施形態では、マーカーが楕円形である。
幾つかの実施形態では、それぞれの標的領域の少なくとも一部が、角膜輪部から1mm以内に位置する。
【0011】
幾つかの実施形態では、コントローラがさらに:それぞれの画像の上に1つのマーカーを重ね、そして目を処置する前に、画像を処理することにより、それぞれの照準ビームのマーカーに対する位置を確認する、ように構成され、ここで、コントローラは、照準ビームの位置の確認に応答して目を処置するように構成される。
幾つかの実施形態では、コントローラは、照準ビームがマーカーと重なることを確認することにより照準ビームの位置を確認する、ように構成される。
【0012】
幾つかの実施形態では、コントローラは、照準ビームがマーカーの外側にあることを確認することによって、照準ビームの位置を確認するように構成される。
幾つかの実施形態では、コントローラは、治療ビームのそれぞれの縁部が、マーカーが重ね合わされる目のそれぞれの部分に衝突するように、目を処置するように構成される。
幾つかの実施形態では、マーカーが楕円形である。
【0013】
幾つかの実施形態では、コントローラが:ライブ画像を表示する前に、目の静止画像を表示し、ユーザからの入力に基づいて、静止画像内の目の楕円形の部分を識別し、そして目の楕円形の部分の識別に応答して、各画像の目の楕円形の部分の上に楕円形のマーカーを重ねわせる、ようにさらに構成される。
【0014】
幾つかの実施形態では、コントローラは、目の楕円部分の識別に続いて、目の角膜輪部の中心から静止画像の楕円部分の中心までの偏位を特定し、画像の各画像について:画像内の角膜輪部の中心を識別し、そして楕円形マーカーの中心が角膜輪部の中心から特定された偏位になるように、楕円形マーカーを画像に重ねわせる、ことによって、目の楕円形部分の上に楕円形マーカーを重ね合わせるように構成される。
【0015】
幾つかの実施形態では、コントローラは:静止画像の上に、(i)楕円形のマーカー、および(ii)楕円形のマーカーに外接する長方形を表示するステップと;楕円形マーカーと長方形を表示した後、ユーザによる長方形の調整に応答して、楕円形マーカーが目の部分に重なるまで、楕円形マーカーが長方形との外接を維持するように楕円形マーカーを調整するステップと;によって目の楕円形部分を識別するように構成される。
幾つかの実施形態では、コントローラは、静止画像内の目の角膜輪部を識別するようにさらに構成され、コントローラは、角膜輪部の上に楕円形マーカーを表示するように構成される。
【0016】
幾つかの実施形態では、画像を取得し、そして画像を取得する前に、目の静止画像を取得する、ように構成されたカメラをさらに備え、ここで、コントローラはさらに:目の静止画像に基づいて、目の瞳孔を含むカメラの視野内の静的領域を特定し、そしてそれぞれの」治療ビームが静的領域の外側で目に衝突するように目を処置する、ように構成される。
【0017】
幾つかの実施形態では、1つまたは複数のビーム指向要素をさらに備え、ここで、コントローラは、ビーム指向要素を標的領域に順番に向けさせ、そして治療ビームをビーム指向要素に放出することによって目を処置するように構成され、ここで、コントローラは、治療ビームが放出されていない間でさえ、ビーム指向要素が静的領域に向けられるのを禁止するようにさらに構成される。
幾つかの実施形態では、コントローラは、ユーザから、静止画像内の角膜輪部の位置を示す角膜輪部位置特定入力を受信するステップと;そして角膜輪部の位置に基づいて静的領域を識別するステップと;によって静的領域を識別するように構成される。
【0018】
幾つかの実施形態では、画像は最初の画像であり、照準ビームは最初の照準ビームであり、ここで、システムは、目を処置しながら目の複数の第2の画像を取得するように構成されたカメラをさらに含み、ここで、コントローラは、反復的に:第2の画像におけるそれぞれの第2の照準ビームの位置を確認するステップ;および確認に応答して、それぞれの1つの治療ビームを目に向けて放出するステップ;により目を処置するように構成される。
【0019】
幾つかの実施形態では、コントローラは、第2の照準ビームとそれぞれの1つの標的領域との間の距離が所定の閾値未満であることを確認することによって位置を確認するように構成される。
幾つかの実施形態では、コントローラは、それぞれの1つ標的領域に向かってそれぞれ1つ治療ビームを放出するように構成される。
幾つかの実施形態では、さらに照明源を備え、ここでコントローラは、照明源に対し、少なくともそれぞれの第2の画像の取得の間は目を照らすように、目に向かって可視光を断続的にフラッシュさせる、ようにさらに構成される。
【0020】
幾つかの実施形態では、それぞれのフラッシュの持続時間にわたる光のピーク平均強度は、0.003-3mW/cm2の間である。
幾つかの実施形態では、コントローラは、照明源に対し、少なくとも60Hzの周波数で光をフラッシュさせるように構成される。
幾つかの実施形態では、周波数が少なくとも100Hzである。
幾つかの実施形態では、コントローラは、照明源が、少なくともそれぞれの第2の画像の取得中は近赤外光で目を照らすようにさらに構成される。
【0021】
幾つかの実施形態では、コントローラは、照明源に対し、目を処置している間は、目に向かって可視光を断続的にフラッシュさせる、ようにさらに構成される。
幾つかの実施形態では、放射線源および複数のビームエミッタを含む光学ユニットをさらに備え、ここで、コントローラは、放射線源に対し、照準ビームを目に向かって照射させる前に、ビームエミッタに対し、目に向かって複数の距離測定ビームを照射させる、ようにさらに構成され、距離測定ビームは、事前定義された複合パターンの異なるそれぞれの部分を画定するように形付けられ、それにより光学ユニットが目から所定の距離にある場合にのみ、事前定義された複合パターンが目の上に形成される。
【0022】
幾つかの実施形態では、距離測定ビームは、2つの垂直な形状を画定するように成形され、事前定義された複合パターンは、十字を含む。
幾つかの実施形態では、放射線源を含む光学ユニットをさらに備え、コントローラは、光学ユニットが目に向かって斜め上方に向けられ、そして目が光学ユニットに向かって斜め下向きに見据える間に、放射線源に対し、標的領域を照射させる、ように構成される。
幾つかの実施形態では、楔をさらに備え、光学ユニットは、楔に取り付けられることにより、目に向かって斜め上向きに配向される。
【0023】
本発明の幾つかの実施形態によれば、楔と;斜め上方に配向されるように楔に取り付けられた光学ユニットであって、放射線源を含む光学ユニットと;そして目が光学ユニットに向かって斜め下向きに注視している間に、放射線源に対し、複数の治療ビームを目のそれぞれの標的領域に照射させることによって患者の目を処置するように構成されたコントローラと;を有することを特徴とするシステムが画提供される。
【0024】
本発明の幾つかの実施形態によれば、患者の目の画像のライブシーケンスを表示するステップと;画像のシークエンスを表示しながら、画像内で目に見える1つまたは複数の照準ビームを目に照射するステップと;照準ビームを目に照射するステップに続いて、ユーザから確認入力を受け取るステップと;そして確認入力の受信に応答して、目のそれぞれの標的領域に複数の治療ビームを照射することによって目を処置するステップと;を有することを特徴とする方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明は、図面を参照するその実施形態の以下の詳細な説明から、より完全に理解されるであろう:
【
図1】本発明のいくつかの実施形態による、線維柱帯形成術を実施するためのシステムの概略図である。
【
図2】本発明のいくつかの実施形態による、線維柱帯形成装置の概略図である。
【
図3】本発明のいくつかの実施形態による、前処置手順の概略図である。そして
【
図4】本発明のいくつかの実施形態による、自動化された線維柱帯形成術手順を実行するための例示的なアルゴリズムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(概要)
本発明の実施形態は、眼に対して安全かつ効率的に線維柱帯形成術手順を実行するように構成された自動線維柱帯形成術装置を提供する。線維柱帯形成術装置は、コントローラと、放射線源、カメラ、およびビーム指向要素を含む光学ユニットとを含む。以下で詳細に説明するように、コントローラは、カメラからのフィードバックに応答して放射線源およびビーム指向要素を制御するように構成され、ビーム指向要素は、放射線源によって放出される放射線のビームを目の適切な場所に向ける。放出された放射線ビームには、眼の線維柱帯を照射する治療ビームと、治療ビームの照準を助けるために使用される照準ビームの両方が含まれる。
【0027】
通常、手順の前に、コントローラは、2つの楕円が目の上に重ねられた目のライブビデオを表示する:目の角膜輪部を示す内側の楕円と、内側の楕円から小さな距離ずれ、治療ビームによって照射される各標的領域を通過する、またはその近くを通過する外側の楕円である。コントローラはさらに、通常、照準ビームが各標的領域の少なくとも一部に衝突するように、外側の楕円上で照準ビームを掃引することによって手順をシミュレートする。有利なことに、このシミュレーションは、医師が、治療ビームによって標的化される眼に沿った経路、すなわち、標的領域が存在する経路を視覚化するのに役立ちうる。医師が眼に沿った標的経路を確認した後、コントローラは放射線源に対し標的領域に向かって治療ビームを放出させる。
【0028】
放射線の各ビームは一般に非微小スポットサイズで眼に衝突するので、本出願は一般に、各ビームを目の「領域」、その面積はスポットサイズの関数であるが、に衝突し、目の「点」に衝突するのではないものとして記載することに留意されたい。したがって、例えば、本出願は、「標的ポイント」ではなく「標的領域」に関する。それにもかかわらず、特許請求の範囲を含む本出願の文脈において、標的領域の位置を計算することへの言及は、ビームの中心または端部(それぞれ)が向けられる領域の中心または端部のような領域内の単一の点の位置を計算することによって領域の位置を暗黙的に計算することを指すことができる。(その後、ビームの中心または端部が計算された点からわずかにずれたとしても、特許請求の範囲を含む本出願は、ビームが計算された標的領域に衝突したと見なすことができる。)
【0029】
通常、上記の手順をシミュレートする前に、コントローラは目の静止画像を取得し、静止画像内の角膜輪部を識別する。次に、コントローラは、前述の内側の楕円を角膜輪部に重ねわせる。続いて、コントローラは、医師が内側の楕円の位置および/または形状を変更することを許容し、その結果、内側の楕円は、医師の定義による角膜輪部をマークする。(角膜輪部は一般に明確に定義されていないため、医師ごとの角膜輪部の位置は、コントローラによって自動的に識別される位置とわずかに異なる場合がある。)たとえば、コントローラは、内側の楕円を長方形で囲み、そして医師が外接する長方形の側面または角をドラッグして、楕円を調整することを許可してもよい。
【0030】
本発明者らが観察したように、線維柱帯は、治療ビームが目の角膜輪部またはその近くに衝突するときに最も効果的に照射され得、角膜輪部は、上記のようにユーザによって識別され得るか、またはコントローラによって自動的に識別され得る。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、コントローラは、放射線源に、角膜輪部または角膜輪部の近くの眼の一部を標的にするようにさせる。例えば、各標的領域の少なくとも一部は、角膜輪部から1mm以内(例えば、400ミクロン以内)に位置し得る。上記の特定の例として、各標的領域の中心は角膜輪部から1mm以内(例えば、400ミクロン以内)に位置し、それにより各治療ビームの中心が角膜輪部の1mm以内(例えば、400ミクロン以内)で眼に衝突し得る。
【0031】
シミュレートされた処置と実際の処置の両方で、カメラは比較的高い周波数(たとえば、40Hzまたは50Hzを超える周波数)で目の画像を取得し、コントローラは取得した各画像の角膜輪部の中心を識別することによって目の動きを追跡する。角膜輪部の中心の特定に応答して、シミュレートされた処置中に、コントローラは、内側の楕円が医師によって定義された角膜輪部の上に配置されたままに留まり、そして外側の楕円が、目が動いても、内側の楕円と不変の距離に留まるように、内側と外側の楕円を移動させる。同様に、手順中に、コントローラは、識別された角膜輪部の中心に適切な(x,y)偏位を追加することによって、各標的領域の中心または端部を計算することができる。有利なことに、このフィードバックプロセスにより、手順の安全性と有効性が大幅に向上する。
【0032】
さらに、追加の安全対策として、コントローラは、前述の静止画像において、本明細書で「禁止ゾーン」と呼ばれる領域を定義することができる。禁止ゾーンは、通常、瞳孔を取り囲む眼の一部とともに、眼の瞳孔を包含する。禁止ゾーンは、カメラの視野(FOV)で定義され、検出された目の動きに応答して調整されないという点で静的である。次に、コントローラは、治療ビームのいずれかが禁止ゾーンに当たるのを防ぐことができる。さらに、コントローラは、放射線源が休止中の間でさえ、ビーム指向要素が禁止ゾーンに向けられるのを防ぐことができる。したがって、目の網膜は、潜在的な(可能性は低いが)漂遊ビームから保護される。
【0033】
いくつかの実施形態では、線維柱帯形成術装置は、可視光源をさらに含み、コントローラは、可視光源に眼に向かって可視光をフラッシュさせ、それにより少なくとも各画像が取得されている間、可視光がオンになるように構成される。有利なことに、フラッシュは、画像の取得に必要な時間を短縮し、その結果、画像に応答して計算された標的領域の位置は、照準ビームまたは治療ビームが標的領域に放出される前に著しく移動しない。さらに、フラッシュは目の瞳孔を収縮でき、したがって、潜在的な漂遊ビームから網膜をさらに保護する。
【0034】
通常、光は十分に高い周波数でフラッシュし、および/または光の各パルスは十分に長い持続時間を有するため、フラッシュは患者に気付かれない。それにもかかわらず、フラッシュされた光の総エネルギーは、光が網膜を損傷しないように十分に低い。
【0035】
あるいは、患者に不快感を与えることなく画像取得に必要な時間を短縮するために、眼を近赤外光で照らすことができる。さらに、選択肢として、画像が取得されている間、および/または画像取得の合間に可視光がオンになるように、可視光が眼に向かってフラッシュされ得る。
【0036】
本発明の実施形態は、眼から正しい距離(または「範囲」)に線維柱帯形成術装置を配置することを容易にするための技術をさらに提供する。従来、このタイプの位置決めは、装置から眼に2つの円形の距離測定ビームを向け、2つのビームが重なるまで装置を眼に近づけたり遠ざけたりすることによって実行される。しかしながら、本発明者らが観察したように、いくつかの理由で、この技術を小柱形成装置の位置決めに使用することは困難である可能性がある。たとえば、強膜は結膜で覆われているため、距離測定ビームを歪ませ、そして反射する可能性があるため、ビームが重なっていることを識別出来ない。したがって、本発明の実施形態では、距離測定ビームは、小柱形成装置が眼から正しい距離に配置された場合にのみビームが特定のパターンを形成するように、異なるそれぞれの形状が与えられる。例えば、距離測定ビームは、直交する楕円として形成され、距離測定ビームは正しい距離でのみ眼の上に十字を形成する。
【0037】
いくつかの実施形態では、上眼瞼による強膜の閉塞を低減するために、線維柱帯形成装置の光学ユニットは、カメラおよび放射線源が斜め上向きになるように、くさびに取り付けられる。次に、患者の強膜の上部が露出するように、患者の視線が斜め下向きに光学ユニットに向けられる。
【0038】
本明細書の記載は主に線維柱帯形成術に関連しているが、本明細書に記載の技術は、自動光凝固術、虹彩切開術、カプセル切除術、水晶体除去、または他の関連する眼科手術にも適用できる。放射線の標的は、線維柱帯および/または内皮幹細胞または眼のシュレム管細胞などの眼の他の適切な部分を含み得る。本発明の実施形態は、緑内障、高眼圧症(OHT)、および他の疾患を処置するために使用することができる。
【0039】
(システムの記述)
本発明のいくつかの実施形態による、線維柱帯形成術を実施するための線維柱帯形成術装置21を含むシステム20の概略図である
図1を最初に参照する。本発明のいくつかの実施形態による、線維柱帯形成装置21の概略図である
図2をさらに参照する。
【0040】
線維柱帯形成術装置21は、光学ユニット30を含む。光学ユニット30は、本明細書に記載の照準ビームおよび治療ビームの両方で患者22の目25を照射するように構成される放射線源48を備える。光学ユニット30は、例えば、1つまたは複数のガルボミラー50(総称して「ガルボスキャナ」と呼ばれ得る)および/またはビーム集束器56を含む1つまたは複数のビーム指向要素をさらに含む。放射線源48からの各ビーム52の放出の前、またはビームが放出されている間、コントローラ44は、ビームがビーム指向要素によって標的領域に向けられるように、ビーム指向要素を目25の上の所望の標的領域に向ける。例えば、ビームは、ガルボミラー50によってビーム集束器56に向かって偏向され得、次いで、ビームは、ビームが標的領域に衝突するように、光学ユニットの前面の開口58を通して偏向され得る。放射線源によって放出される各ビームは、楕円形(例えば、円形)、正方形、または他の任意の適切な形状を有し得る。
【0041】
通常、放射線源は2つのレーザで構成される。1つは本明細書に記載の照準ビームを放出するためのものであり、もう1つは本明細書に記載の治療ビームを放出するためのものである。純粋に例示的な例として、処置用レーザは、Ekspla(登録商標) NL204-0.5K-SHレーザ(例えば、減衰器、エネルギーメーター、およびメカニカルシャッターを含むように変更された)を含み得、一方、照準レーザは、レーザコンポーネント(登録商標)FP-D-635-1DI-CFレーザを含み得る。通常、照準ビームと治療ビームの両方が可視光を含む。
【0042】
レーザの代替または追加として、放射線源は、例えば、マイクロ波放射、赤外線放射、X線放射、ガンマ放射または紫外線放射を含む、電磁スペクトルの任意の適切な部分に属する放射を放出するように構成された任意の他の適切なエミッターを含み得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、各ビーム52は、ガルボスキャナに到達する前に、ビーム拡大器(図示せず)を通過し、ビーム拡大器は、ビームを拡大し、次に再コリメートする。そのような実施形態では、光学ユニット30は、典型的には、ガルボスキャナによるビームの方向づけに続いて各ビームを集束するように構成されたFシータレンズ51を含む。
【0044】
他の実施形態では、集束レンズは、放射線源とガルボスキャナとの間に配置されている。例えば、前述のビーム拡大器は、コリメートレンズの代わりに集束レンズを含み得るか、または光学ユニットは、ビーム拡大器に加えて集束レンズを含み得る。そのような実施形態では、各ビームは、Fシータレンズ51が必要とされないように、ビーム指向要素によって指向される前に、集束レンズによって集束される。
【0045】
光学ユニット30は、カメラ54をさらに備える。手順の前および最中に、カメラ54は、典型的には比較的高い頻度で、患者の眼の複数の画像を取得する。コントローラ44は、これらの画像を処理し、それに応答して、
図3-4を参照して以下に記載するように、放射線源48およびビーム指向要素を制御する。
図2に示されるように、カメラ54は、カメラがビーム集束器を介して光を受け取るように、ビーム集束器56の後ろに配置され得る。
【0046】
典型的には、光学ユニット30は、例えば、開口58を取り囲むLEDのリングなどの1つ以上の発光ダイオード(LED)を含む照明源60をさらに含む。そのような実施形態では、
図4を参照して以下でさらに説明するように、コントローラ44は、照明源60に対し光を目に向けて断続的にフラッシュさせることができる。(説明を容易にするために、コントローラ44と照明源60との間の接続は、
図2には明示的に示されていない)。
【0047】
光学ユニット30は、ジョイスティックなどの制御機構36によって制御されるXYZステージ32に取り付けられている。制御機構36を使用して、眼科医または別の医師などのシステム20のユーザは、患者の眼を処置する前に、光学ユニットを適切な位置に配置することができる。いくつかの実施形態では、XYZステージ32は、ステージの位置決めの後のステージの移動を禁止するように構成されたロック要素を備える。
【0048】
いくつかの実施形態では、XYZステージ32は1つまたは複数のモーターを含み、制御機構36はインタフェース回路46に接続される。ユーザが制御機構を操作すると、インタフェース回路46はこの活動を適切な電子信号に変換し、これらの信号をコントローラ44に出力する。信号に応答して、コントローラはXYZステージのモーターを制御する。他の実施形態では、XYZステージ32は、制御機構を操作することによって手動で制御される。
【0049】
通常、放射線源が目に向かってビームを放出する前に、ユーザは、制御機構36を使用して、目から所定の距離Dに光学ユニットを配置する。この位置決めを容易にするために、光学ユニットは、複数のビームエミッタ62(例えば、それぞれのレーザダイオードを含む)を含み得、これらは、目に複数の距離測定ビーム64を照射するように構成され、例えば、ビーム間の角度は30-100度である。以下で
図3を参照してさらに説明するように、距離測定ビーム64は、事前定義された複合パターンの異なるそれぞれの部分を画定するように形作られ、光学ユニットが目から所定の距離にある場合にのみ事前定義された複合パターンが目に形成される。したがって、複合パターンの観察に応答して、ユーザは、光学ユニットが所定の距離にあることを確認することができる。
【0050】
システム20は、トレイまたはテーブルトップなどの水平面38に取り付けられたヘッドレスト24をさらに備える。ヘッドレスト24は、額レスト26および顎レスト28を備える。線維柱帯形成術手順の間、患者22は、顎を顎レスト28上に置きながら額を額レスト26に押し付ける。
【0051】
いくつかの実施形態では、ヘッドレスト24は、患者の頭を後ろから固定し、したがって患者の頭をヘッドレストに押し付けたままにするように構成された固定ストラップ27をさらに備える。固定ストラップ27は、頭の一方の側でヘッドレストから延在し、頭の反対側でヘッドレストに固定するように構成された単一のセグメント、または頭の対向する側でヘッドレストから延在し、頭の後ろで互いに固定するように構成された2つのセグメントを含み得る。選択肢として、固定ストラップは、固定化ストラップが適切に固定されたことを検出するように構成されたセンサーを含み得る。例えば、固定ストラップを締めると、電気回路が閉じられ、センサーは、回路を通る電流を検出し、それに応答して(例えば、LEDを点灯することによって)出力を生成し得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、ヘッドレスト24は、1つまたは複数のセンサーをさらに含み、これは、例えば、額レストまたは顎レスト上に配置することができる。これらのセンサーのそれぞれは、必要に応じて、患者の頭がヘッドレストに載っているかどうかを示す出力を生成するように構成できる。適切なセンサーの例には、静電容量センサー、抵抗センサー、圧電センサーが含まれる。代替的または追加的に、ヘッドレストは、Sparkfun(登録商標)9375などの1つまたは複数のスイッチまたは力に敏感な抵抗器を備え得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、目によって反射された放射線を阻止するために、物理的ブロックが目の周りに配置される。例えば、フードは、顎レストおよび/または患者の頭の上に配置され得る。代替的または追加的に、フードは装置21の面に結合されてもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、装置21は、水平面38に取り付けられるベースユニット34をさらに含み、XYZステージ32は、ベースユニット34に取り付けられる。そのような実施形態では、コントローラ44およびインタフェース回路46は、ベースユニット内に配置され得る。他の実施形態では、XYZステージは、水平面38に直接取り付けられている。
【0055】
通常、
図1に示すように、患者の目を照射している間、光学ユニットは目に向かって斜め上向きに向けられ、一方目は光学ユニットに向かって斜め下向きに注視する、すなわち、目と光学ユニットとの間の光路23は水平ではなく斜めである。例えば、光路23は、5~20度の間の角度θに配向され得る。有利なことに、この向きは、患者の上目瞼および関連する解剖学的構造による患者の目の妨害を低減する。選択肢として、目の追加の露出のために、指、検鏡、または別のツールを使用して、まぶたの一方または両方を引っ込めることができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、
図1に示されるように、光路の斜め方向は、XYZステージに取り付けられた楔40に取り付けられた光学ユニットによって達成される。換言すれば、光学ユニットは、楔40を介してXYZステージに取り付けられる。
【0057】
楔40を使用する代わりに、またはそれに加えて、光路の斜め方向は、患者の頭を後方に傾けることによって達成することができる。例えば、額レスト26および/または顎レスト28は、長さ調節可能なストラップを含み得、そして患者の頭は、ストラップの長さを調節することによって後方に傾けられ得る。(例えば、額ストラップは収縮し得る。)この調整を容易にするために、長さ調節可能なストラップは、ウォームタイプのドライブ、フックアンドループファスナー、スナップ、ロッキングピン、ノット、および/または他の任意の適切なメカニズムを含み得る。
【0058】
他の実施形態では、患者の頭は、例えば、ヘッドレスト24(または少なくとも顎レスト28)を光学ユニットに向かって角度を付けることによってわずかに前方に傾けられ、その結果、患者の頭は、ヘッドレスト上によりしっかりと載る。
【0059】
システム20は、
図3を参照して以下で詳細に説明するように、カメラによって取得された目の画像を表示するように構成されたモニタ42をさらに備える。モニタ42は、装置21の隣の水平面38などの任意の適切な位置に配置することができる。いくつかの実施形態では、モニタ42はタッチスクリーンを含み、ユーザはタッチスクリーンを介してシステムにコマンドを入力する。代替的または追加的に、システム20は、ユーザによって使用され得る、キーボードまたはマウスなどの他の任意の適切な入力装置を含み得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、モニタ42は、有線または無線通信インタフェースを介してコントローラ44に直接接続されている。他の実施形態では、モニタ42は、標準的なデスクトップコンピュータに属するプロセッサなどの外部プロセッサを介してコントローラ44に接続されている。
【0061】
図2に示す構成は、例としてのみ提供されていることを強調しておく。、装置21は
図2に示される構成要素に対してさらに代替的または追加的に、任意の適切な構成要素を含み得る。例えば、装置は、患者が処置中に凝視することができるLEDなどの追加の照明源を備えることができる。そのような照明源は、例えば、開口58の近くまたはカメラの隣に配置することができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるコントローラ44の機能の少なくともいくつかは、例えば、1つまたは複数の特定用途向け集積回路(ASIC)またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を使用して、ハードウェアに実装される。代替的または追加的に、コントローラ44は、ソフトウェアおよび/またはファームウェアコードを実行することによって、本明細書に記載される機能の少なくともいくつかを実行することができる。例えば、コントローラ44は、中央処理装置(CPU)およびランダムアクセスメモリ(RAM)を備え得る。ソフトウェアプログラムを含むプログラムコードおよび/またはデータは、CPUによる実行および処理のためにRAMにロードされ得る。プログラムコードおよび/またはデータは、例えば、ネットワークを介して、電子形式でコントローラにダウンロードされ得る。代替的または追加的に、プログラムコードおよび/またはデータは、磁気、光学、または電子メモリなどの非一過性有形媒体に提供および/または格納され得る。そのようなプログラムコードおよび/またはデータは、コントローラに提供されると、本明細書に記載のタスクを実行するように構成された機械または専用コンピュータを生成する。
【0063】
いくつかの実施形態では、コントローラは、Varisite(登録商標)DART-MX8Mなどのシステムオンモジュール(SOM)を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、コントローラ44は、装置21の外部に配置される。代替的または追加的に、コントローラは、別の外部プロセッサと本明細書に記載の機能の少なくともいくつかを協調的に実行することができる。
【0065】
(前処置手順)
ここで、本発明のいくつかの実施形態による、前処置手順の概略図である
図3を参照する。
【0066】
はじめに、
図3に示される手順は、図においてステップA~Cと呼ばれる3つのステップを有する。
図3は、これらのステップのそれぞれについて、カメラ54(
図2)によって取得され、コントローラ44(
図2)によってモニタ42上に表示される目25の画像を示す。通常、グラフィックユーザインタフェース(GUI)68は、モニタ42上の各画像の傍にさらに表示される。GUI68は、関連する英数字データおよび/またはユーザへの指示を含むテキストボックス、特定の処置計画を確認または拒否するためのボタン、および/または他の関連するウィジェットを含み得る。
【0067】
ステップAにおいて、ユーザは、目の中心がカメラのFOVのほぼ中心になるように光学ユニット30(
図2)を配置する。ユーザはまた、治療ビームが目に適切なスポットサイズを有するように、目から正しい距離に光学ユニットを配置する。
図2を参照して上で説明したように、この位置決めは典型的には、距離測定ビーム64により効率化される。それらは事前定義された複合パターン66の異なるそれぞれの部分を画定するように形作られ、それにより光学ユニットが正しい距離にある場合のみ、そのパターン66が目に形成される。通常、ユーザは、角膜輪部近くの目の強膜に複合パターンを形成する。(通常、光学ユニットの位置が調整されている間、コントローラは患者の目の画像のライブシーケンスを表示する。)
【0068】
たとえば、
図3に示すように、距離測定ビームは、光学ユニットが正しい距離にあるときにのみ目に十字を形成する2つの垂直な楕円、長方形、または線などの2つの垂直な形状を画定するように成形できる。あるいは、距離測定ビームは、円を形成する2つの円弧または半円、またはひし形またはX字形を形成する2つの三角形または矢じり を画定するように成形され得る。これらのパターンの生成を容易にするために、回折光学素子(DOE)、ホログラム、またはアキシコンなどの任意の適切な光学素子を使用することができる。
【0069】
他の実施形態では、単一の距離測定ビームのみが放出され、コンピュータで生成されたパターンが目の画像に重ね合わされる。光学ユニットが正しい距離にあるとき、距離測定ビームとコンピュータ生成パターンは重なり合うか、または複合パターン66を形成する。
【0070】
複合パターン66の観察に応答して、ユーザは、光学ユニットが目から正しい距離にあることをコントローラに示す。例えば、ユーザは、GUI68上の適切なボタンをクリックすることができる。この入力に応答して、コントローラは、前処置手順のステップBに進む。
【0071】
ステップBにおいて、コントローラは、目の静止画像71を表示する。続いて、ユーザからの入力に基づいて、コントローラは、目の角膜輪部69などの目の楕円形(例えば、円形またはほぼ円形)の部分を識別する。例えば、コントローラは、ユーザが目の部分の上に楕円形マーカー78を重ね合わせたことに応答して、目の部分を識別することができる。次に、以下でさらに説明するように、楕円形マーカー78の位置は、治療ビームの標的領域のそれぞれの位置を計算するために使用することができる。
【0072】
例えば、コントローラは、静止画像上に、楕円形マーカー78と、楕円形マーカーに外接する(または「境界を定める」)長方形80の両方を表示することができる。続いて、ユーザは、例えば、マウスまたはタッチスクリーンを使用して長方形の側面または角をドラッグすることによって、長方形80を調整することができる。(いくつかの実施形態では、システムは、ユーザが長方形の大まかな調整と微調整を切り替えることを可能にする。)ユーザによる長方形の調整に応答して、コントローラは、楕円形マーカーが、ユーザが定義した角膜輪部(または目の別の部分)に重ねられるまで、楕円形マーカーが長方形によって外接されたままに維持されるように、楕円形マーカー78を調整することができる。続いて、ユーザは、ユーザが定義した角膜輪部の上に、楕円形マーカーが重ねられていることを(例えば、GUI68を介して)コントローラに示すことができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、コントローラは、それぞれ楕円形マーカー78の頂部端部および底部端部に接する2本の水平線と、楕円形マーカー78のそれぞれ左端および右端に接する2本の垂直線を、必ずしも線を互いに交差させ、そしてしたがって長方形を定義することなく、重ね合わせる。そのような実施形態では、ユーザは、線をドラッグすることによって楕円形マーカー78を調整することができる。
【0074】
通常、ユーザが楕円形マーカー78を調整できるようにする前に、コントローラは、端部検出アルゴリズムまたはその他の適切な画像処理技術を使用して、静止画像内の角膜輪部を識別し、そしてその後角膜輪部の上に楕円形マーカー78を表示する。(コントローラは、垂直軸および水平軸に整列した、または任意の適切な角度で回転した楕円形など、任意の適切な形状によって角膜輪部の形状を近似できることに留意されたい。)有利には、このようにして楕円形マーカー78の配置を初期化することによって、マーカーの調整に必要な時間が短縮される。(角膜輪部は一般に明確に定義された特徴ではないため、ユーザが識別した角膜輪部の位置は、通常、コントローラが最初に識別した角膜輪部の位置とわずかに異なる。したがって、本明細書で記載するように、ユーザはマーカーを調整することができる。)
【0075】
長方形を調整する代わりに、またはそれに加えて、ユーザは、関連するパラメータを入力することによって楕円形マーカー78を直接調整することができる。例えば、楕円形(例えば、円形)のマーカーの場合、ユーザは、楕円形マーカーの中心の座標およびマーカーの1つまたは2つの直径を入力することができる。代替的または追加的に、ユーザは、コントローラによって実行される角膜輪部識別アルゴリズムへの入力(端部検出のための閾値など)を調整することによって、楕円形マーカーを調整することができる。さらに別の選択肢として、ユーザは楕円形マーカー78を直接操作することができる。
【0076】
代替の実施形態では、楕円形マーカー78は全く示されない。そのような実施形態では、ユーザは、マーカーが表示されていた場合にマーカーを境界付ける長方形または線をドラッグすることによって、角膜輪部の位置を示すことができる。さらに別の代替として、より高い精度のために、より正確に角膜輪部69の形状に一致する別の形状を有する非楕円形マーカーを、楕円形マーカー78の代わりに使用することができる。
【0077】
通常、
図3に示す前処置手順を実行する前に、ユーザは(GUI68またはその他の適切な入力インタフェースを使用して)ステップBで識別される、目の部分に対する複数の標的領域のそれぞれの位置を指定する。あるいは、これらのパラメータは、ユーザがシステムを使用する前に、事前に定義することができる。
【0078】
たとえば、ユーザは、標的領域の数と、各標的領域の中心または端部が位置すべき、角膜輪部からの(またはその中心からの)距離を指定することによって、角膜輪部に隣接する標的領域の楕円形の経路を指定できる。あるいは、ユーザは、前述のパラメータに加えて、(i)各円弧の角度スパン、および(ii)各円弧の位置を指定することによって、1つまたは複数の円弧の経路を指定することができる。(たとえば、ユーザは、角膜輪部の下半分または上半分の周りに180度の弧を指定したり、頂部と底部にそれぞれ90度の弧を指定したりできる。)この入力に基づき、またユーザが指定した角膜輪部の位置に基づき、コントローラは、通常、コントローラによって識別された角膜輪部の中心に対する、標的領域のそれぞれの位置を計算する。(いくつかの実施形態では、コントローラは、ユーザによって指定された楕円または弧の位置を計算するが、以下に説明するステップCの実行後まで、楕円または弧上の標的領域の特定の位置を計算しない。)
【0079】
純粋に例示的な例として、ユーザは、各標的領域の中心または縁部が、角膜輪部の中心に対して異なるそれぞれの角度θ
iで、ユーザによってマークされた角膜輪部からd1の距離にあることを指定することができる。次に、ユーザは、ステップBの間に、マーカーの中心が(x0+Δx,y0+Δy)にあるように楕円形マーカー78を調整することができ、ここで、(x0,y0)は、コントローラによって識別される角膜輪部の中心である。このような場合、楕円形マーカー78が半径Rの円であると仮定すると、コントローラは、各標的領域の中心または端部の角膜輪部中心からのオフセットを(Δx+(R+d1)cos(θ
i),Δy+(R+d1)sin(θ
i))と計算することができる。(d1はゼロであり得る、すなわち、各標的領域の中心または縁部はユーザによってマークされた角膜輪部と一致し得て、治療ビームのそれぞれの中心または縁部が(それぞれ)ユーザによってマークされた角膜輪部に衝突することに留意されたい。続いて、手順中に、
図4を参照して以下でさらに説明するように、コントローラは、角膜輪部の中心を追跡し、そして各標的領域について、このオフセットを中心の位置に追加することによって標的領域の位置を計算することができる。
【0080】
典型的には、ステップBにおいて、コントローラはまた、静止画像に基づいて、瞳孔74を含むカメラの視野(FOV)内の静的領域76(本明細書では「禁止ゾーン」とも呼ばれる)を、通常瞳孔74を取り囲む目の角膜72のかなりの部分を含む「バッファ」とともに、識別する。通常、バッファの寸法は、目の予想される最大の動きに基づいて設定される。
【0081】
いくつかの実施形態では、静的領域76は、コントローラによって自動的に識別されるか、またはユーザによってマークされる、角膜輪部の位置に基づいて識別される。例えば、コントローラは、静的領域76を、角膜輪部から事前定義された距離を超えて角膜輪部の内側に位置するFOV内のすべての点のセットとして識別することができる。あるいは、例えば、コントローラは、角膜輪部の中心または瞳孔の中心にある点を識別し、次に、この中心点にある中心領域76を識別し得る。そのような実施形態では、静的領域76は、楕円形または長方形の形状などの任意の適切な形状を有し得、任意の適切なサイズを有し得る。静的領域76の重要性は、
図4を参照して以下に説明される。(静的領域76は、必ずしもモニタ42に表示されるとは限らないことに留意されたい。)
【0082】
ステップBに続いて、コントローラはステップCに進み、そこで線維柱帯形成術の手順がシミュレートされる。シミュレーションの表示に応答して、ユーザは、例えば、GUI68の適切なボタン(「開始」ボタンなど)をクリックすることによって、コントローラに確認の入力を提供することができる。この入力は、コントローラが手順を続行する必要があることを確認する。
【0083】
より具体的には、ステップCにおいて、コントローラは、目の画像のライブシーケンス(すなわち、ライブビデオ)を表示し、画像のシーケンスを表示している間、画像で可視の1つまたは複数の照準ビーム84を目に向かって照射する。通常、照準ビームは赤である。例えば、各照準ビームは、620~650nmの波長を有し得る。いくつかの実施形態では、照準ビームの色は、治療ビームの色とは異なる。例えば、照準ビームは赤色であり得るが、治療ビームは、例えば515~545nm(例えば、532nm)の波長を有する緑色であり得る。
【0084】
照準ビームを目に照射している間、コントローラは、治療ビームが放出された場合に治療ビームが計算された標的領域に衝突するように、ビーム指向要素を制御する。したがって、照準ビームのそれぞれの中心は、各標的領域の中心と順次一致し得る。あるいは、Fシータレンズ51(
図2)を使用し、照準ビームの色が治療ビームの色と異なる場合、Fシータレンズによって導入される色収差により、照準ビームがわずかに標的領域から偏位する可能性がある。それにもかかわらず、この場合でさえ、照準ビームは通常、各標的領域の少なくとも一部に衝突する。
【0085】
いくつかの実施形態では、コントローラは、照準ビームが各標的領域の少なくとも一部に衝突するように、目に沿って単一の照準ビームを掃引する。他の実施形態では、コントローラは複数の照準ビームを放出し、各照準ビームは異なるそれぞれの1つの標的領域の少なくとも一部に衝突する。
【0086】
通常、シミュレーションの実行中に、コントローラは、ステップBで識別された目の部分に楕円形マーカー78を重ねわせる。目の動きを補正するために、コントローラは通常、各画像の角膜輪部の中心を識別し、そして角膜輪部から適切に偏位して楕円形マーカー78を配置する。たとえば、静止画像(ステップB)の楕円形マーカー78の中心の最終位置が(x0+Δx,y0+Δy)である場合、コントローラは各ライブ画像において楕円形マーカー78を角膜輪部の中心から(Δx,Δy)の偏位に配置できる。
【0087】
楕円形マーカー78を重ね合わせる代わりにまたは追加して、コントローラは、画像のそれぞれに、各標的領域を通過する(例えば、中心を通る)または各標的領域の近くに別のマーカー82を重ねることができる。マーカー82の位置は、マーカー82を楕円形マーカー78から適切な偏位に維持することによって、眼球運動に応答して調整することができる。例えば、各標的領域の中心が、ユーザによってマークされた角膜輪部からd1の距離にあるべき場合、マーカー82は、楕円形マーカー78からd1の距離に保たれ得る。いくつかの実施形態では、マーカー82は、楕円形マーカー78の色とは異なる色である。
【0088】
通常、シミュレーションの実行中に、コントローラは、照準ビームのそれぞれがビーム指向要素によって適切に指向されていることを確認する。例えば、コントローラは、ガルボミラー50のエンコーダからのフィードバック信号を処理することができる。代替的または追加的に、コントローラは、画像を処理することによって、楕円形マーカー78、マーカー82および/または各画像に重ねられたその他の適切なマーカーに対する照準ビームのそれぞれの位置を確認することができる。例えば、コントローラは、各照準ビーム(例えば、各照準ビームの中心)がマーカー82と重なること、および/または各照準ビームの端部が楕円形マーカー78に接触することを確認することができる。(特許請求の範囲を含む本出願の文脈において、ビームの「端部」は、ナイフ端部測定値、1/e2幅測定値、半値全幅測定値、またはその他の適切な測定値の観点から定義することができる。)別の例として、コントローラは、各照準ビームの中心または端部が楕円形マーカー78から適切な距離に配置されていることを確認する。照準ビームの位置確認に応答して、コントローラは、ユーザが前述の確認入力を提供するという条件で、線維柱帯形成術の手順を進めることができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、ユーザがシミュレーションを確認しない場合、処置は中止される。他の実施形態では、ユーザは、(例えば、GUI68を介して)照準ビームがたどる経路を調整することができる。この調整は、ステップBに戻って楕円形マーカー78を調整することによって、および/または各標的領域が配置されるべき楕円形マーカー78からの距離を調整することによって実行され得る。そのような実施形態では、シミュレーションは、ユーザが経路を確認するまで、ユーザによって定義された新しい経路ごとに繰り返され得る。
【0090】
(処置手順)
ユーザからの前述の確認入力の受信に応答して、コントローラは、それぞれの治療ビームで標的領域を照射することによって目を処置する。治療ビームのピークパワーは、照準ビームのピークパワーよりもはるかに高くなる。さらに、典型的には、治療ビームの波長は、照準ビームの波長と比較して、目の線維柱帯を処置するのにより適している。
【0091】
より具体的には、処置中、コントローラは、目の画像を取得しながら、標的領域を通過して照準ビームを掃引し続けるか、または標的領域にそれぞれの照準ビームを放出し続ける。
図4を参照して以下でさらに説明するように、コントローラは、各画像内の照準ビームの位置を確認し、それに応答して、目に治療ビームを放出する。例えば、コントローラは、照準ビームが衝突した標的領域に向かって、または次の標的領域に向かって治療ビームを放出することができる。
【0092】
通常、コントローラは、治療ビームのそれぞれを、本明細書では「禁止ゾーン」とも呼ばれる静的領域76(
図3)の外側の目に衝突させる。(上記のように、静的領域76は、領域がカメラのFOVに関して定義され、したがって、目と共に移動しないという点で静的である。)さらに、追加の予防措置として、コントローラは、ビーム指向要素に対し、治療ビームのいずれも放出されていない間でさえ、ビームが静的領域76に指向される(すなわち、「通過する」)ことを禁止することができる。(通常、コントローラは、前処置手順中に照準ビームを放出するときにも、これらの予防措置を適用する。)
【0093】
通常、処置手順中に各画像を取得している間、コントローラは、照明源60(
図2)に対し、目に可視光(例えば、白色光、赤色光、または緑色光)をフラッシュさせる。このフラッシュのおかげで、カメラの必要な露光時間は、例えば、3倍以上短縮され得る。したがって、例えば、必要な露光時間を9ミリ秒から3ミリ秒に短縮することができる。各フラッシュは、画像の取得の前に開始することも、取得後に終了することもある。通常、各フラッシュの持続時間にわたるピーク平均強度は0.003-3mW/cm
2であり、これは一般に、必要なカメラの露出時間を短縮し、患者に害を及ぼすことなく目の瞳孔を収縮させるのに十分な強度である。
【0094】
通常、光は、患者がフラッシュに気付かず、むしろ安定した照明を知覚するように十分に高い周波数でフラッシュする。例えば、光は、少なくとも100Hzなど、少なくとも60Hzの周波数でフラッシュされ得る。(そのような実施形態では、各フラッシュ(または「パルス」)の持続時間は、通常、3ミリ秒未満、例えば、2ミリ秒または1ミリ秒未満である。)フラッシュの周波数は、フレームレート(すなわち、画像が取得される頻度)より高いため、画像取得の間にフラッシュの一部が発生する場合がある。例えば、フラッシュ周波数は、フラッシュが画像取得と同期するように、画像が取得される周波数の整数倍であり得る。純粋に例示的な例として、フレームレートが60Hzの場合、フラッシュ周波数は120Hzまたは180Hzであり得る。
【0095】
あるいは、光はより低い周波数でフラッシュされてもよいが、各フラッシュの持続時間は、安定した照明が知覚されるように増加され得る。たとえば、患者が100Hzのフラッシュ周波数と20%のデューティサイクルでちらつきを感じた場合、周波数を変更せずにパルス幅を増やすことで、デューティサイクルを40%に増やすことができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、照明源60は、近赤外光を放出するように構成される。そのような実施形態では、患者を邪魔することなく必要なカメラ露光時間を短縮するために、処置中、または少なくとも画像が取得されている間、近赤外光を連続的に照射することができる。選択肢として、照明源60はまた、必要な露光時間をさらに短縮し、および/または瞳孔を収縮させるために、画像取得中および/または画像取得の間に目に向かって可視光をフラッシュすることができる。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態による、自動線維柱帯形成術手順を実行するための例示的なアルゴリズム86の概略図である
図4を参照して、線維柱帯形成術手順に関するいくつかのさらなる詳細が提供される。
【0098】
ユーザによるシミュレートされた手順の承認後に手順を開始するために、コントローラは、画像化および位置特定ステップ88で、目に向けて光をフラッシュし、フラッシュ中にカメラを使用して目の画像を取得し、取得した画像内の角膜輪部の中心の位置を特定する。続いて、標的計算ステップ90で、コントローラは、角膜輪部の中心の位置に適切な(x,y)オフセットを追加することによって、次の標的領域の位置を計算する。この位置を確認した後、以下でさらに説明するように、標的領域が照射される。次に、コントローラは別の画像を取得し、次の標的領域の位置を計算し、位置を確認して、標的を照射する。このようにして、コントローラは標的領域を繰り返し照射する。
【0099】
より具体的には、計算された各標的領域について、コントローラは、第1の標的チェックステップ92で、標的領域が(部分的にでも)禁止ゾーンにあるかどうかをチェックし、ここで禁止ゾーンは、思い出されるが、カメラのFOV内の静的領域である。(このチェックを実行するために、コントローラは必ずしも標的領域の境界を明示的に計算する必要はない;たとえば、コントローラは、標的領域の中心にあるポイントが事前定義された距離-照準ビームまたは治療ビームの半径と同じかまたはわずかに大きい-よりも大きく禁止ゾーンの境界から離れているかどうかをチェックする場合がある。)そうでない場合、コントローラは、第2の標的チェックステップ94を実行し、標的領域の前に従前の標的領域があることを前提として、コントローラは、標的領域が従前の標的領域から許容可能な距離にあるかどうかを確認する。例えば、コントローラは、標的領域と従前の標的領域との間の距離が事前定義された閾値よりも小さいかどうかをチェックし得、小さいことは目が比較的静止していることを示す。標的領域が前の標的領域から許容可能な距離にない場合、または標的領域が禁止ゾーンにある場合、コントローラは、画像化および位置特定のステップ88に戻る。
【0100】
計算された標的領域が第1の標的チェックステップ92と第2の標的チェックステップ94の両方を通過する場合、コントローラは、照準ステップ96で、標的領域にビーム指向要素を向ける。その後コントローラは、照準ビーム放出ステップ98において、照準ビームをビーム指向要素に向けて放出し、それにより照準ビームがビーム指向要素によって標的領域に向けられる。あるいは、単一の照準ビームが連続的に放出され得、その結果、照準ビーム放出ステップ98を実行する必要がない。
【0101】
続いて、コントローラは、画像化および位置特定ステップ88を実行する。次に、コントローラは、角膜輪部中心チェックステップ100で、角膜輪部の中心が(最近取得された画像に対して)事前定義された閾値よりも大きく移動したかどうかをチェックする。はいの場合、コントローラは、標的計算ステップ90に戻り、角膜輪部の中心に対する標的領域の位置を再計算する。そうでなければ、コントローラは、照準ビーム識別ステップ102で、画像内の照準ビームを識別する。
【0102】
照準ビームの識別に続いて、コントローラは、第1の照準ビームチェックステップ106で、照準ビームが禁止ゾーンにあるかどうかをチェックする。照準ビームが禁止ゾーンにある場合(目の急速な動きまたはシステムの障害を示す)、コントローラは手順を終了する。そうでなければ、コントローラは、第2の照準ビームチェックステップ108で、照準ビームと計算された標的領域との間の距離が事前定義された閾値内にあるかどうかをチェックする。閾値内にない場合、コントローラは、標的計算ステップ90に戻る。閾値内にある場合、コントローラは、治療ビーム放出ステップ110で、治療ビームを放出し、治療ビームが標的領域に衝突する。
【0103】
通常、コントローラは、照準ビームの位置を識別および確認することに加えて、例えば、まぶた、まつげ、指、成長物(翼状片など)、血管、または検鏡を含む、標的領域を妨害している可能性のある障害物について各画像をチェックする。障害物が特定された場合、障害物を回避するために標的領域をシフトすることができる。あるいは、標的領域を完全にスキップするか、または処置手順を終了することができる。
【0104】
一般に、障害物は、任意の適切な画像処理技術を使用して、選択肢としてユーザからの入力と組み合わせて識別できる。例えば、処置手順の前に、ユーザは、潜在的な障害物を構成する目の1つまたは複数の部分を(例えば、静止画像を参照して)選択することができる。続いて、コントローラは、テンプレートマッチング、端部検出、または他の適切な技術(たとえば、連続する画像間の変化の識別を含む)を使用して、目の選択された部分を識別することができる。このような技術は、ユーザが事前に特定したとは限らない他の静的または動的な障害物を特定するためにも使用できる。(「障害物」の定義は用途によって異なる場合があることに注意されたい。たとえば、特定の血管が障害物を構成する場合もあれば、血管を照射することが望ましい場合もある。)
【0105】
治療ビーム放出ステップ110に続いて、コントローラは、最終チェックステップ112で全ての標的領域が処理されたかどうかをチェックする。はいの場合、コントローラは手順を終了する。それ以外の場合、コントローラは標的計算ステップ90に戻る。
【0106】
有利なことに、各画像の取得と治療ビームの放出との間の時間は、通常、15ミリ秒未満、例えば、10ミリ秒未満である。いくつかの実施形態では、この遅延は、2番目の照準ビームチェックステップ108の後ではなく、照準ステップ96と照準ビーム放出ステップ98との間で(または、単一の照準ビームが連続的に放出される場合、照準ステップ96と画像化および位置特定ステップ88との間で)治療ビームを放出することによって)さらに低減される。(そのような実施形態では、照準ビームは、治療ビームが正しく放出されたことを事後的に確認するために使用される。)
【0107】
いくつかの実施形態では、コントローラによって実行される別個のルーチンが、各画像取得からの時間を監視する。この時間が事前定義された閾値(10~15ミリ秒の閾値など)を超えると、次の画像が取得されて標的位置が再計算されるまで、治療ビームは放出されない。
【0108】
本発明は、本明細書で特に示され、説明されたものに限定されないことが当業者によって理解されるであろう。むしろ、本発明の範囲は、上記の様々な特徴の組み合わせおよびサブ組合せの両方、ならびに前述の説明を読んだときに当業者に想起される先行技術にはないその変形および修正を含む。
【外国語明細書】