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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023825
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】光学式キーボード
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/02 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
G06F3/02 D
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217486
(22)【出願日】2023-12-23
(62)【分割の表示】P 2020020232の分割
【原出願日】2020-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】719004544
【氏名又は名称】江頭 徹
(72)【発明者】
【氏名】江頭 徹
(57)【要約】
【課題】集約した光源および集約した受光素子群により複数の押しボタンの押下量を光学的に検出可能な光学式キーボードを提供する。
【解決手段】突出部を備える押しボタンと、前記押しボタンを前記突出部を孔から突出しうる態様で収納するパッケージとを備えるボタンモジュール、を備え、前記突出部の少なくとも一部と前記パッケージの外側の少なくとも一部との、光の散乱特性または蛍光の特性が異なるようにするとともに、前記押しボタンの押下量が大きいほど前記突出部の前記パッケージからの突出が大きくなるようにする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
突出部を備える押しボタンと、前記押しボタンを前記突出部を孔から突出しうる態様で収納するパッケージとを備えるボタンモジュール、を備える光学式キーボードであり、
前記押しボタンは複数であり、
前記突出部の少なくとも一部と前記パッケージの外側の少なくとも一部との、光の散乱特性または蛍光の特性が異なり、
前記押しボタンの押下量が大きいほど前記突出部の前記パッケージからの突出が大きくなり、
前記突出部の少なくとも一部と前記パッケージの外側の少なくとも一部とが光の反射を抑制する表面を備える、
光学式キーボード。
【請求項2】
前記押しボタンの押下量が無い場合でも前記突出部の一部が前記パッケージから突出している、請求項1に記載の光学式キーボード。
【請求項3】
複数の前記突出部およびその周囲を照射する指向性を備える光源と、
受光面を備える撮像素子と、
複数の前記突出部のそれぞれの少なくとも一部が発する散乱光または蛍光を前記受光面に結像させる結像素子とを備える、請求項1又は2に記載の光学式キーボード。
【請求項4】
突出部を備える押しボタンと、前記押しボタンを前記突出部を孔から突出しうる態様で収納するパッケージとを備えるボタンモジュール、を備える光学式キーボードであり、
前記押しボタンは複数であり、
前記突出部の少なくとも一部と前記パッケージの外側の少なくとも一部との、光の散乱特性または蛍光の特性が異なり、
前記押しボタンの押下量が大きいほど前記突出部の前記パッケージからの突出が大きくなり、
プロセサとメモリとを備え、前記プロセサは、前記メモリの記憶する画像データのピクセルであり、かつ、ピクセル値が前記メモリの記憶する基準ピクセル値と既定関係であるピクセルであり、かつ、前記メモリの記憶する基準座標の近隣であるピクセル、を要素とするピクセル集合の計量値に基づいて押下量を算出する、光学式キーボード。
【請求項5】
前記プロセサは、前記基準座標のピクセルのピクセル値が前記基準ピクセル値と既定関係でない場合には前記画像データの前記基準座標の近傍でピクセル値が前記基準ピクセル値と既定関係であるようなピクセルを探し、その座標を新たな基準座標として前記メモリに書き込む、請求項4に記載の光学式キーボード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーボードに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光学式キーボードが記載されている。このキーボードはマトリクス状に配置された光路の行と桁の各交点にボタンを配し、ボタンが押下されたときに行および桁の光路のそれぞれ1つが遮蔽されるようにしている。遮蔽された行および桁を特定することで押下されたボタンを特定する。
特許文献2には、ボタン押下量を光学的に検出できるレリーズスイッチが記載されている。このレリーズスイッチでは複数の受光素子を有するラインセンサと面発光体とが貫通孔を有するステムを挟んで対向しており、ボタンの押下とともにステムが移動することで光源である面発光体の発する光が貫通孔を通って入射する受光素子が変化する。それを用いてボタンの押下量を検出する。
特許文献3には、ボタン押下量を光学的に検出できるスイッチが記載されている。このスイッチでは光源である発光素子からの指向性の高い光を反射板で反射させて受光素子群のいずれかの受光素子に入射させる。その反射板をボタンの押下とともに回動あるいは移動させることで押下量に応じて光が入射する受光素子が変化する。それを用いてボタンの押下量を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07-306738号公報
【特許文献2】特開2010-192410号公報
【特許文献3】特開2005-158586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の押しボタンを備えるキーボードにおいて各押しボタンの押下量を検出しようとすると、特許文献2および特許文献3のスイッチでは各押しボタンに光源及び受光素子を個別に設けなければならず、高コストである。
【0005】
特許文献2および特許文献3と同等の機構を特許文献1のキーボードに適用して、光源および受光素子群を複数の押しボタンで集約しコストを削減し、かつ各押しボタンの押下量も検出可能とすることは机上論としては可能である。すなわち、特許文献1のキーボードにおいて、行と桁の光路の各交点に、特許文献2のステムすなわち遮光手段または特許文献3の反射板すなわち光反射手段を配置して、押しボタンの押下量に応じて変位させることにより光路に変化を与え、その変化を集約した受光素子群で検出できるように構成することは可能である。しかしながら、現実のキーボードでそのような構成とすることは少なくとも次の2つの問題点がある。
【0006】
第1の問題点は、マトリクス状の光路を構成するために光反射手段(ミラー)を高精度にアライメント(位置関係及び配向の設定)する必要がある点である。特許文献1のキーボードでは行と桁のマトリクス状の複数の光路に1の光源からの光を時分割して送っているが、その光路を構成するために光反射手段を用いており、それらは光源からの光が受光素子に届くように精度良くアライメントされる必要がある。
【0007】
第2の問題点は、光路を構成する光学要素のアライメント誤差が押しボタン押下量の検出を困難にすることである。
キーボードには押しボタンへの押下力などの外力が加わり、また、温度環境も一定の環境で用いられるとは限らないため、押しボタンや光源や受光素子群を支える構造、すなわちキーボードの筐体などの構造が外力や熱膨張により歪むことが大いに想定される。この歪みはすなわちアライメント誤差となり、光路に変化を与えるため、押下量の検出に誤差を与える、あるいは検出をできなくしてしまうことになる。
【0008】
本発明の第1の目的は、光反射手段のような光学要素を高精度にアライメントさせる必要があるマトリクス状の光路を用いることなく、集約した光源および集約した受光素子群により複数の押しボタンの押下量を光学的に検出可能な光学式キーボードを提供することである。
【0009】
本発明の第2の目的は、光源および受光素子群を複数の押しボタンで集約し、かつ、キーボードの筐体などの構造に歪みが生じても各押しボタンの押下量の検出を行うことができる光学式キーボードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1態様として、突出部を備える押しボタンと、前記押しボタンを前記突出部を孔から突出しうる態様で収納するパッケージとを備えるボタンモジュール、を備える光学式キーボードであり、前記押しボタンは複数であり、前記突出部の少なくとも一部と前記パッケージの外側の少なくとも一部との、光の散乱特性または蛍光の特性が異なり、前記押しボタンの押下量が大きいほど前記突出部の前記パッケージからの突出が大きくなる光学式キーボードが提供される。
【0011】
この第1態様により、パッケージと突出部との光の散乱特性の違いまたは蛍光の特性の違いに基づいて、パッケージから突出した突出部を光学的に観測できるようになる。
また、各押しボタンの押下量をパッケージからの突出部の突出の大きさを観測することにより検出できるようになる。
また、突出部はパッケージから突出しているため、マトリクス状の光路を用いなくても、複数の押しボタンの突出部を1つの光源を用いて照射することや、複数の押しボタンの突出部からの散乱光または蛍光を1つの撮像素子を用いて観測することができるようになる。
すなわち、マトリクス状の光路を用いることなく、各押しボタンの押下量を集約した光源および集約した受光素子群により散乱光または蛍光により光学的に検出できるようになる。
【0012】
本発明の第2態様として、第1態様の光学式キーボードにおいて、前記押しボタンの押下量が無い場合でも前記突出部の一部が前記パッケージから突出している光学式キーボードが提供される。
【0013】
この第2態様により、突出部が常にパッケージから突出しているため、突出部は常に光学的に観測できるようになる。このため、筐体の変形などの構造歪みが生じて突出部の相対位置が変化しても、その位置変化を継続的に追跡できるようになる。すなわち、筐体の変形などの構造歪みが生じても突出部を見失うことなく、また、他の押しボタンの突出部と取り違えることなく、押しボタンの押下量を散乱光または蛍光により光学的に検出できるようになる。
【0014】
本発明の第3態様として、第1態様または第2態様の光学式キーボードにおいて、前記突出部の少なくとも一部と前記パッケージの外側の少なくとも一部とが光の反射を抑制する表面を備える光学式キーボードが提供される。
【0015】
この第3態様により、突出部またはパッケージからの反射光に影響されることなく押しボタンの押下量を散乱光または蛍光により光学的に検出できるようになる。
【0016】
本発明の第4態様として、第1態様乃至第3態様のいずれかの光学式キーボードにおいて、複数の前記突出部およびその周囲を照射する指向性を備える光源と、受光面を備える撮像素子と、複数の前記突出部のそれぞれの少なくとも一部が発する散乱光または蛍光を前記受光面に結像させる結像素子とを備える光学式キーボードが提供される。
【0017】
この第4態様により、突出部が発する散乱光または蛍光を結像素子で撮像素子の受光面に結像させることができるため、撮像素子の出力する画像データを用いて、突出部とその他の部分との光の散乱特性の違いまたは蛍光の特性の違いに基づいて、突出部を観測できるようになる。
【0018】
本発明の第5態様として、第1態様乃至第4態様のいずれかの光学式キーボードにおいて、プロセサとメモリとを備え、前記プロセサは、前記メモリの記憶する画像データのピクセルであり、かつ、ピクセル値が前記メモリの記憶する基準ピクセル値と既定関係であるピクセルであり、かつ、前記メモリの記憶する基準座標の近隣であるピクセル、を要素とするピクセル集合の計量値に基づいて押下量を算出する光学式キーボードが提供される。
【0019】
この第5態様により、プロセサが画像データを解析し、突出部に対応するピクセル集合の計量値に基づいて押下量を算出できるようになる。
ここで基準座標は特定の押しボタンの突出部に対応するピクセルであることが分かっているピクセルの画像データ上での座標であり、基準ピクセル値は画像データ上の突出部に対応するピクセルに特徴的なピクセル値であり、ピクセル値が基準ピクセル値と既定関係であるピクセルは、すなわち突出部に対応するピクセルであるとみなすことができる。
したがって、ピクセル値が基準ピクセル値と既定関係であるピクセルであり、かつ、基準座標の近隣であるピクセルを要素とするピクセル集合とは、基準座標で定まる特定の押しボタンの突出部に対応するピクセルの集合である。その集合の計量値は押しボタンの押下量が大きく突出部の突出が大きいほど大きくなるため、それに基づいて押下量が算出できるのである。
【0020】
本発明の第6態様として、第5態様の光学式キーボードにおいて、前記プロセサは、前記基準座標のピクセルのピクセル値が前記基準ピクセル値と既定関係でない場合には前記画像データの前記基準座標の近傍でピクセル値が前記基準ピクセル値と既定関係であるようなピクセルを探し、その座標を新たな基準座標として前記メモリに書き込む光学式キーボードが提供される。
【0021】
この第6態様により、筐体の変形などの構造歪みが生じて突出部の相対位置が変化することで画像データにおける突出部に対応するピクセルが基準座標から移動してしまった場合でも、突出部に対応するピクセルを基準座標の近傍で探してその座標を新たな基準座標として設定し直して、引き続き押下量を検出できるようになる。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、光学要素を高精度にアライメントさせる必要があるマトリクス状の光路を用いることなく、集約した光源および集約した受光素子群により複数の押しボタンの押下量を光学的に検出可能な光学式キーボードを提供することができる。
【0023】
また、本発明により、光源および受光素子群を複数の押しボタンで集約し、かつ、キーボードの筐体などの構造に歪みが生じても各押しボタンの押下量の検出を行うことができる光学式キーボードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る光学式キーボード1の外観を説明する等角投影図である。
図2】本発明に係る光学式キーボード1の上面を説明する平面図である。
図3図2におけるA-A線断面図である。
図4図2におけるB-B線断面図である。
図5】情報処理部30の構成を説明するブロック図である。
図6】テーブル34のデータの一例を示す図である。
図7】画像データの具体例を示す図である。
図8】撮像素子22から画像データを受けたときのプロセサ31の動作を説明するフローチャートである。
図9】画像データの具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。ただし、第2実施形態において、第1実施形態と同一又は類似の構成要素は、第1実施形態と同一又は類似の符号で表し、詳細な説明を適宜省略する。また、第2実施形態において得られる効果について、第1実施形態と同様のものについては説明を適宜省略する。各実施形態の図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本願発明の技術的範囲を実施形態に限定して解するべきではない。
【0026】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態による光学式キーボード1を図面を参照して詳細に説明する。
図1は光学式キーボード1の外観を説明する等角投影図、図2は同上面を説明する平面図、図3はA-A線断面図、である。
光学式キーボード1は、上面パネル4を有する筐体2と、1つ以上のボタンモジュール10と、押下量検出モジュール20と、光源3とを備える。
【0027】
光源3は筐体2の内部に光を照射する光源である。押下量検出モジュール20は光源3からの光が押しボタン11の突出部115を照射することにより得られる突出部115からの散乱光を捉えるため、光源3は複数の、好ましくはすべての押しボタン11の突出部115を、好ましくは突出部115の周囲を含めて、同時に照射するような指向性を備え、押下量検出モジュール20が押下量の検出に用いる波長帯域を含む光を発することが必要である。
光源3の位置および指向性であるが、背景技術のような反射や遮光により光路を制御する方法では光源の位置や指向性を精度良く定める必要があるが、本実施形態においては突出部115からの散乱光が押下量検出モジュール20に届けばよいので、十分に広角な指向性ですべての押しボタン11の突出部115を照射することができさえするならば、光源3の位置や照射方向は比較的自由に定めることができる。
光源3は時間的に連続して光を発しても良いが、撮像素子22が画像データを生成するに必要な受光を行う期間のみ発するよう制御しても良い。
【0028】
筐体2はその上面パネル4にボタンモジュール10が挿入される開口部5を1つ以上備える。
筐体2は遮光性が高いことが好ましい。これは、押下量検出モジュール20に筐体2の外部からの光(環境光)が入射して押下量検出処理に影響することを防ぐためである。
筐体2の内面の少なくとも一部については、光の反射を抑制する表面を備えることが好ましい。あるいは、光源3からの照射光の反射を抑制する表面を備えることが好ましい。これは、筐体2の内面による光源3からの照射光の散乱光に加えて反射光までもが押下量検出モジュール20に入射することで押下量検出処理に影響することを防ぐためである。例としては、反射防止コーティングや、粗面仕上げの表面加工を施すことが好ましい。
【0029】
ボタンモジュール10は押しボタン11とパッケージ12と弾性体13とを備え、筐体2の開口部5に挿入されて用いられる。
【0030】
押しボタン11は押下部111と上限ストッパ部112と反力印加部113と下限ストッパ部114と突出部115とを有する。
押下部111はパッケージ12の上面部121の孔から突出しうる部分である。押下部111はキーボード操作者からの押下力を直接受けても良い。あるいは、押下部111の上に図示しないキーキャップを設置し、そのキーキャップを通じて間接的に押下力を受けても良い。
上限ストッパ部112はパッケージ12と干渉することで押しボタン11が最も上昇した状態を規定する部分である。
反力印加部113は弾性体13と接する部分であり、弾性体13からの弾性力を押しボタン11に伝達する。
下限ストッパ部114はパッケージ12と干渉することで押しボタン11が最も下降した状態を規定する部分である。
【0031】
突出部115は押しボタン11の押下に伴いパッケージ12の下面部123の孔からパッケージ12の外部に突出しうる部分である。押下部111に押下力が与えられて押しボタン11が押し下げられる量(押下量)が大きくなるほど、突出部115のパッケージ12外部への突出が大きくなることが好ましい。
【0032】
突出部115の少なくとも一部については押しボタン11の押下量が無い、すなわち押下されておらず押しボタン11が最も上昇した状態のときでもパッケージ12の外部に突出していることが好ましい。
【0033】
突出部115の少なくとも一部については光の反射を抑制する表面を備えることが好ましい。あるいは、光源3からの照射光の反射を抑制する表面を備えることが好ましい。これは、突出部115による光源3からの照射光の散乱光に加えて反射光までもが押下量検出モジュール20に入射することで押下量検出処理に影響することを防ぐためである。例としては、反射防止コーティングや、粗面仕上げの表面加工を施すことが好ましい。
【0034】
突出部115の少なくとも一部については、筐体2の内側およびパッケージ12の筐体2の内部に露出する外側部分のどちらとも光源3の発する光の波長帯域における光の散乱特性が異なるようにする必要がある。これは、撮像素子22の出力する画像データにおいて、突出部115からの散乱光と、それ以外からの散乱光とをピクセル値の違いとして明瞭に区別できるようにするためである。光の散乱特性が異なる度合いとしてはすなわち、撮像素子22の出力する画像データ上で明瞭に区別できる程度に異なることが好ましい。
光源3の波長帯域が可視光の場合の例としては、突出部115を白色とし、筐体2の内側およびパッケージ12の外側を黒色としても良い。また、その逆に突出部115を黒色とし、筐体2の内側およびパッケージ12の外側を白色としても良い。
そのほか、突出部115の色を任意に定めて、その色とは明度、彩度、色相のうちの1つ以上が大きく異なる(すなわち画像データ上で明瞭に区別できる)色を1色以上選択して、筐体2の内側およびパッケージ12の外側に用いても良い。光源3が可視光以外の波長帯域の場合は、突出部115と、筐体2の内側およびパッケージ12の外側とを当該波長帯域での散乱特性が異なるようにしても良い。
【0035】
そのほかの散乱特性の変え方として、偏光が異なるようにしても良い。例えば、突出部115からの散乱光は垂直方向の偏光となるようにし、筐体2の内側およびパッケージ12の外側からの散乱光が水平方向の偏光となるようにしても良い。散乱光を偏光させる方法としては、例えば突出部115などの表面を膜状の偏光フィルタで覆っても良い。
【0036】
パッケージ12は上面部121と側面部122と下面部123とを有し、押しボタン11をその一部が外部に突出し、かつ上下動が可能なように収容するとともに、弾性体13を収容する。
上面部121には孔が開いており、押しボタン11の押下部111がその孔から突出する。上面部121はまた筐体2の上面パネル4と当接することでボタンモジュール10を開口部5に挿入する際のストッパとなるとともに、押しボタン11への押下力を筐体2に伝達する部分である。
側面部122は係止片124を有し、開口部5に挿入されたボタンモジュール10が外れないよう係止する。
下面部123には孔が開いており、押しボタン11の突出部115がその孔から突出する。下面部123はまた弾性体13と当接し支持することで弾性体13を経由し押しボタン11の押下時の反力を押しボタン11に与える。
【0037】
パッケージ12は、光学式キーボード1の外部の環境光がボタンモジュール10を経由して筐体2の内部に侵入し押下量検出モジュール20による押下量検出処理に影響するのを防ぐために、遮光性が高いことが好ましい。このため、押しボタン11が突出する上下の孔以外は隙間を最小限に全面的に覆うような形状であることが好ましい。また、遮光性の高い材質を用いて構成されることが好ましい。
また、突出部115と同様の理由により、パッケージ12の筐体2の内部に露出する外側部分の少なくとも一部については光の反射を抑制する表面を備えることが好ましい。あるいは、光源3からの照射光の反射を抑制する表面を備えることが好ましい。
【0038】
弾性体13は押しボタン11およびパッケージ12に当接し、押しボタン11の押下量に応じた弾性復元力を押下力に対する反力として押しボタン11に与える。弾性体13としてはコイルスプリングやゴムを用いても良い。また、マグネットなど磁力を用いて同等の働きをさせても良い。
【0039】
なお、図面では1つのボタンモジュール10は1つのパッケージ12に1つの押しボタン11および1つの弾性体13を収容するよう示しているが、1つのパッケージ12に複数の押しボタン11および複数の弾性体13を収容するよう構成しても良い。
【0040】
次に、図4を参照して押下量検出モジュール20について説明する。図4は光学式キーボード1のB-B線断面図である。押下量検出モジュール20は、結像素子21と撮像素子22と情報処理部30とを備える。
【0041】
結像素子21は、筐体2内部に存在するもの、すなわち筐体2の内面やボタンモジュール10などの少なくとも一部が発する散乱光を、受光面23に結像させる光学素子である。結像素子21は、複数の突出部115のそれぞれの少なくとも一部からの光を受光面23に結像させる必要がある。結像素子21は、筐体2内部の1点からの光は受光面23上の略同一の場所に届き、筐体2内部の充分離れた2点からの光は受光面23上の互いに離れた場所に届くようなものであることが好ましい。結像素子21としてはレンズやピンホールや凹面鏡を用いても良い。
【0042】
撮像素子22は入射する光を受光する受光面23を有し、受光面23上における入射光の強度分布に対応する画像データを出力する素子である。撮像素子22は入射光を受光してその強度分布に対応する画像データを出力する動作を繰り返す。その繰り返しの時間周期は一定であっても良いが、例えば画像データの変化度合いに応じて周期を変えても良い。撮像素子22としては電荷結合素子(CCD)イメージセンサやCMOSイメージセンサを用いても良い。
画像データは受光面23の微小領域に対応するピクセルごとの値の集合を含むよう構成されており、ピクセルの値はそのピクセルが対応する受光面23の微小領域の受光強度に対応する。ピクセルの値としては単一波長帯域の受光強度を表すスカラ値でも良いし、複数の波長帯域それぞれの受光強度を束ねたベクタ値でも良い。
受光面23の前には受光面23に入射する光の一部を弱めるフィルタ24を備えても良い。フィルタ24は例えば受光面23に入射する光の一部の波長帯域を弱めても良い。また、受光面23に入射する光の一部の偏光を弱めても良い。
【0043】
情報処理部30については図5を参照して説明する。図5は情報処理部30の構成を説明するブロック図である。情報処理部30はプログラム33に従ってデータを処理するプロセサ31と、プログラム33を読み出し可能に記憶し、テーブル34等のデータを読み書き可能に記憶するメモリ32とを備える。プログラム33はプロセサ31の動作を制御して、撮像素子22が生成した画像データを受けて押しボタン11の押下量を検出する押下量検出処理をプロセサ31に行わせる。
【0044】
プロセサ31による押下量検出処理を説明するに先立って、その部分処理である、評価値算出処理について説明する。評価値算出処理は、画像データと基準座標と基準ピクセル値の入力から評価値を出力する処理である。より具体的には、入力の画像データにおいてピクセル値が入力の基準ピクセル値と既定関係であるピクセルであり、かつ、入力の基準座標の近隣であるピクセル、を要素とするピクセル集合について、その集合の計量値を算出して評価値として出力する処理である。
この評価値は、入力される画像データが、押しボタン11の押下量がより大きい時のそれであるほどより大きくなる値となることを想定している。すなわち、押しボタン11の押下量がより大きくなると、突出部115のパッケージ12からの突出がより大きくなるため、突出部115からの散乱光を結像素子21を通して受ける受光面23の面積もより大きくなり、その時に撮像素子22が出力する画像データもより多くのピクセルにおいて突出部115からの散乱光に特有のピクセル値を示すことになる。評価値算出処理はそれを捉えてより大きい評価値を出力すれば良い。
【0045】
評価値算出処理の入力である基準座標と基準ピクセル値は、光学式キーボード1の備える複数の押しボタン11それぞれに固有の値である。基準座標は、特定の押しボタン11の突出部115からの散乱光に特有のピクセル値が現れる画像データにおける座標であり、基準ピクセル値はその特有のピクセル値である。
【0046】
評価値算出処理において、基準ピクセル値と既定関係であるとは、あるピクセル値について、それが基準ピクセル値と比較してあらかじめ定めた関係を満たす、ということである。ピクセル値がスカラ値の場合の例としては、基準ピクセル値と一定誤差範囲内で一致する、としてもよい。また、基準ピクセル値より大きい、としてもよい。また、基準ピクセル値より小さい、としてもよい。ピクセル値がベクタ値の場合は、ノルムによりスカラ化してその誤差範囲内の一致や大小関係としてもよいし、既定ベクタとのスカラ積によりスカラ化してその誤差範囲内の一致や大小関係としてもよい。
【0047】
評価値算出処理において、基準座標の近隣であるピクセルとは、一例としては、基準座標からの距離が既定値以内の座標のピクセルを基準座標近隣であるとしても良い。別の例としては、基準座標のピクセルから出発して、ピクセル値が基準ピクセル値と既定関係であるピクセルだけを経由してたどり着けるピクセルを基準座標の近隣であるとしても良い。基準座標のピクセル自身を含めても良い。
【0048】
評価値算出処理において、ピクセル集合の計量値とは、一例としては、当該集合に含まれるピクセルの数としても良い。別の例としては、当該集合に含まれる任意の2ピクセルのピクセル間距離の最大のものとしても良い。
【0049】
次に、図6を参照してメモリ32の記憶するテーブル34について説明する。テーブル34は、基準座標と、基準ピクセル値と、最小値と、最大値と、コードとを含む押しボタンデータを1つ以上有するデータである。テーブル34のデータ構造およびデータの一例を図6に示す。図6の例では表形式のデータ構造となっており、押しボタンデータの基準座標、基準ピクセル値、最小値、最大値、コードがそれぞれ表の列として表現され、4つの押しボタンデータがそれぞれ表の行として表現されている。
【0050】
押しボタンデータは特定の押しボタン11について、当該押しボタン11が押下されていない時の画像データと、当該押しボタン11が最大に押下されている時の画像データとを用いて、次のように求められるデータである。
基準座標は、当該押しボタン11が押下されていない時の画像データにおいて突出部115からの散乱光を捉えたピクセルの座標である。当該ピクセルが複数ある場合には、その中の1つのピクセルの座標を用いるものとする。
基準ピクセル値は、当該押しボタン11が押下されていない時の画像データにおける前記基準座標のピクセルのピクセル値である。
最小値は、前述の評価値算出処理に、当該押しボタン11が押下されていない時の画像データと、前記基準座標と、前記基準ピクセル値とを入力して算出した評価値である。
最大値は、前述の評価値算出処理に、当該押しボタン11が最大に押下されている時の画像データと前記基準座標と、前記基準ピクセル値とを入力して算出した評価値である。
コードは、当該押しボタン11固有に割り当てられた数字あるいは文字列である。
【0051】
具体例を用いて基準座標、基準ピクセル値、最小値と最大値の関係を説明する。図7は画像データの例を表現した図である。図7(a)は押しボタン11が押下されていない時の画像データの例、図7(b)は押しボタン11が最大に押下されている時の画像データの例である。横軸(X軸)方向に10升、縦軸(Y軸)方向に10升の格子の各升はピクセルを表しており、升の中の値はピクセル値を表している。ピクセル値はこの例ではスカラ値を用いているが、RGB値のようなベクタ値でも良い。X軸とY軸に付された連番は各軸の座標を表している。X軸で5、Y軸で2の位置の事を(5,2)のように表現するとすると、図7(a)の画像データにおいて座標(5,2)のピクセルのピクセル値は1である。
【0052】
なお、画像データには光学式キーボード1の備える複数のボタンモジュール10のそれぞれの突出部115に対応したピクセルを含む必要があるため、縦横10ピクセルよりさらに多くのピクセル数が必要となる。図7は発明を分かりやすく説明するために、画像データのうちの一部分、1つの突出部115に対応したピクセルおよびその周辺ピクセルのみを示したものであることに注意が必要である。このことは画像データを図示する以降すべての図面において同様である。
【0053】
この図7において基準座標は、押しボタン11が押下されていない時の画像データすなわち図7(a)の画像データにおいて突出部115からの散乱光を捉えたピクセルの座標であるが、ここでは例として座標(4,3)であるとする。図7(a)では座標(4,3)の升を白黒反転して表記しているが、これは当該座標が基準座標であることを便宜的に示す表記であり、以降の図面においても同様とする。
基準ピクセル値は押しボタン11が押下されていない時の画像データにおける基準座標のピクセルのピクセル値であるので、図7(a)の画像データの座標(4,3)のピクセルのピクセル値すなわち5である。
【0054】
最小値は、前述の評価値算出処理に、当該押しボタン11が押下されていない時の画像データと、前記基準座標と、前記基準ピクセル値とを入力して算出した評価値である。評価値算出処理は、ピクセル値が基準ピクセル値と既定関係であるピクセルであり、かつ、基準座標近隣であるピクセル、を要素とするピクセル集合について、その集合の計量値を算出して評価値として出力する処理であるが、ここでは例として、ピクセル値が基準ピクセル値と既定関係であるとはピクセル値が基準ピクセル値と誤差範囲プラスマイナス1以内で一致する事とし、基準座標の近隣であるピクセルとは、基準座標のピクセルから出発して、ピクセル値が基準ピクセル値と既定関係であるピクセルだけを経由してたどり着けるピクセルとし、ピクセル集合の計量値とは、当該集合に含まれるピクセルの数とする。
すると、「ピクセル値が基準ピクセル値と既定関係であるピクセルであり、かつ、基準座標近隣であるピクセル、を要素とするピクセル集合」とはすなわち座標(3,3)、(5,3)、(4,4)、(5,4)のピクセルからなる集合となる。最小値はこのピクセル集合の計量値、すなわちピクセル数、すなわち4である。
【0055】
最大値は、前述の評価値算出処理に、当該押しボタン11が最大に押下されている時の画像データと前記基準座標と、前記基準ピクセル値とを入力して算出した評価値である。評価値算出処理は前記最小値のものと同じとすると、「ピクセル値が基準ピクセル値と既定関係であるピクセルであり、かつ、 基準座標の近隣であるピクセル、を要素とするピクセル集合」とはすなわち座標(3,3)、(5,3)、(4,4)、(5,4)、(6,4)、(5,5)、(6,5)、(6,6)のピクセルからなる集合となる。最大値はこのピクセル集合の計量値、すなわち8である。
【0056】
次に、図8を参照して、プログラム33により制御されたプロセサ31による押下量検出処理の動作について説明する。図8は撮像素子22から画像データを入力されたときのプロセサ31の動作を説明するフローチャートである。
プロセサ31は画像データを入力されると、当該画像データをメモリ32に記憶する(S1)。
次にプロセサ31はメモリ32の記憶するテーブル34の最初の行を処理対象行とする(S2)。
次にプロセサ31はテーブル34の処理対象行を読み、基準座標、基準ピクセル値、最小値、最大値、コードを得る(S3)。
次にプロセサ31はメモリ32の記憶する画像データの基準座標のピクセルのピクセル値を読み出し、それが基準ピクセル値と既定関係であるか確認し(S4)、既定関係である場合はステップS6に進み、そうでない場合はステップS5に進む。
なお、基準ピクセル値と既定関係であるとは、評価値算出処理におけるそれと同等の関係を意味しており、次のステップS5についても同義である。
【0057】
ステップS5に進んだ場合、プロセサ31はメモリ32の記憶する画像データの基準座標の近傍でピクセル値が基準ピクセル値と既定関係であるようなピクセルを探し、発見したピクセルの座標を新たな基準座標としてテーブル34の処理対象行の基準座標列に書き込み(S5)、ステップS3に進む。
ステップS6に進んだ場合、プロセサ31は評価値算出処理に、メモリ32の記憶する画像データと、基準座標と、基準ピクセル値とを入力して評価値を算出する(S6)。
次にプロセサ31はコードとともに、次の数式で算出した押下量指標を出力する(S7)。
押下量指標 = (評価値 - 最小値) / (最大値 - 最小値)
この押下量指標は、押しボタン11が押下されていない時に0となり、最大に押下されているときに1となるように正規化した、押しボタン11の押下量を表す指標である。
【0058】
次にプロセサ31は処理対象行がテーブル34の最後の行であるか確認し(S8)、最後の行の場合は処理を終了し、そうでない場合はステップS9に進む。
ステップS9に進んだ場合、プロセサ31はテーブル34の処理対象行の次の行を新たな処理対象行として(S9)、ステップS3に進む。
【0059】
次に、押下量検出処理の具体的な動作例について説明する。この例では、テーブル34のデータとして図6のデータがメモリ32に記憶されており、図9(a)に示す画像データがプロセサ31に入力された場合を考える。
なお、この具体例においても、ピクセル値が基準ピクセル値と既定関係であるとはピクセル値が基準ピクセル値と誤差範囲プラスマイナス1以内で一致する事とし、基準座標近隣であるピクセルとは、基準座標のピクセルから出発して、ピクセル値が基準ピクセル値と既定関係であるピクセルだけを経由してたどり着けるピクセルとし、ピクセル集合の計量値とは、当該集合に含まれるピクセルの数とする。
【0060】
まずステップS1でプロセサ31は入力された画像データをメモリ32に記憶する。
次に、ステップS2でプロセサ31はメモリ32の記憶するテーブル34の最初の行を処理対象行とする。
次に、ステップS3でプロセサ31はテーブル34の処理対象行を読み、基準座標、基準ピクセル値、最小値、最大値、コードを得る。この場合、基準座標=(4,3)、基準ピクセル値=5、最小値=4、最大値=8、コード=0x41である。
次に、ステップS4でプロセサ31はメモリ32の記憶する画像データの基準座標のピクセルのピクセル値を読み出し、それが基準ピクセル値と既定関係であるか確認する。この場合、基準座標(4,3)のピクセル値は1であり、基準ピクセル値(=5)とは既定関係ではない。よって次はステップS5に進む。
次に、ステップS5でプロセサ31はメモリ32の記憶する画像データの基準座標の近傍でピクセル値が基準ピクセル値と既定関係であるようなピクセルを探す。基準座標(4,3)の近傍でピクセル値が基準ピクセル値(=5)と既定関係であるようなピクセルとしては、座標(4,4)のピクセル(ピクセル値=4)があるので、この例ではそのピクセルを採用し、そのピクセルの座標をテーブル34の処理対象行の基準座標列に書き込み、ステップS3に進む。
基準座標は図9において白黒反転の升で表現しているが、ステップS5の処理の前は図9(a)の白黒反転の升が基準座標であったが、ステップS5の処理の後は図9(b)の白黒反転の升に基準座標が変わることになる。
【0061】
次に、ステップS3でプロセサ31はテーブル34の処理対象行を読み、基準座標、基準ピクセル値、最小値、最大値、コードを得る。基準座標が先ほどと変わり、基準座標=(4,4)、基準ピクセル値=5、最小値=4、最大値=8、コード=0x41である。
次に、ステップS4でプロセサ31はメモリ32の記憶する画像データの基準座標のピクセルのピクセル値を読み出し、それが基準ピクセル値と既定関係であるか確認する。この場合、基準座標(4,4)のピクセル値は4であり、基準ピクセル値(=5)と既定関係である。よって次はステップS6に進む。
次に、ステップS6でプロセサ31は評価値算出処理に、メモリ32の記憶する画像データと、基準座標と、基準ピクセル値とを入力して評価値を算出する。この場合、評価値は5となる。
次に、ステップS7でプロセサ31は押下量指標を算出する。押下量指標は
(5 - 4) / (8 - 4) = 0.25
となる。そしてコード(=0x41)とともに押下量指標(=0.25)を出力する。
【0062】
次に、ステップS8でプロセサ31は処理対象行がテーブル34の最後の行であるか確認するが、処理対象行は最後の行ではないため、ステップS9に進む。
次に、ステップS9でプロセサ31はテーブル34の処理対象行の次の行、すなわち2行目を新たな処理対象行として、ステップS3に進む。
以降の動作についての説明は省略するが、テーブル34の残りのすべての行について同様の処理が行われる。
【0063】
このように、押下量検出処理ではステップS4およびステップS5の処理により基準座標のピクセルのピクセル値が基準ピクセル値と既定関係でない場合は、基準座標を近傍の適切なピクセルの座標に移動する。このような場合は、筐体2が押しボタン11への押下力や熱膨張により歪んだ場合にも生じうる。
すなわち、撮像素子22からの1つ前の画像データでは突出部115からの散乱光を捉えており、基準ピクセル値と既定関係のピクセル値を示していた基準座標のピクセルが、次の画像データでは筐体2が歪んだことにより撮像素子22と結像素子21と突出部115との位置関係が変化し、突出部115からの散乱光を捉えなくなり、基準ピクセル値と既定関係のピクセル値を示さなくなることが生じうる。
その場合でも、筐体2の歪み方が、撮像素子22が画像データを出力する時間間隔を基準として短時間でかつ大きい歪み方であるのではない限りは、1つ前の画像データからの変化は小さいと期待できる。このため、突出部115からの散乱光を捉えるピクセルは基準座標の近傍にあると期待でき、ステップS4およびステップS5の処理によりそのピクセルを発見し、基準座標をそのピクセルに移動することができる。いうなれば、画像データ上で突出部115からの散乱光を捉えるピクセルが移動しても、ステップS4およびステップS5の処理によりそれを追跡して基準座標に設定するのである。よって、そのような歪みが生じても押しボタン11の押下量を検出することができる。
【0064】
突出部115からの散乱光を捉えるピクセルを追跡するためには、画像データには常に突出部115からの散乱光を捉えているピクセルがある必要がある。すなわち、押しボタン11が押下されているときはもちろんのこと、押下されていないときも突出部115からの散乱光を捉えているピクセルがある必要がある。このため前述のように、突出部115の少なくとも一部については押しボタン11の押下量が無い状態のときでもパッケージ12の外部に突出していることが好ましい。
【0065】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態による光学式キーボード1を第1実施形態との相違点を中心に説明する。第1実施形態では撮像素子22の生成する画像データを用いて、光源3による照射光の突出部115による散乱光の特性とその他の部分からの散乱光の特性との違いをピクセル値の違いとして識別するが、第2実施形態では撮像素子22の生成する画像データを用いて、光源3による照射光により励起された突出部115による蛍光の特性とその他の部分からの蛍光の特性との違いをピクセル値の違いとして識別する。
【0066】
このため、突出部115の少なくとも一部については、光源3の発する光を受けた時に発する蛍光の特性が、筐体2の内側およびパッケージ12の筐体2の内部に露出する外側部分のどちらの特性とも異なるようにする必要がある。
一例としては、突出部115は励起波長帯域の光を吸収し励起波長帯域とは異なる蛍光波長帯域の光を発する蛍光物質を用いて構成し、筐体2の内側およびパッケージ12の外側部分には蛍光物質は相対的に少量、または用いずに構成しても良い。別の例としては、突出部115と、筐体2の内側およびパッケージ12の外側部分とで蛍光波長帯域が異なる蛍光物質を用いても良い。さらに別の例としては、突出部115と、筐体2の内側およびパッケージ12の外側部分とで蛍光の偏光が異なるようにしても良い。
【0067】
光源3は励起波長帯域を含む光を発する必要がある。また、光源3は突出部115の蛍光波長帯域の光は発しないことが好ましい。撮像素子22の受光面23の前には受光面23に入射する光のうち突出部115の蛍光波長帯域以外の部分を弱めるフィルタ24を備えることが好ましい。
【0068】
なお、第1実施形態では突出部115の少なくとも一部については、筐体2の内側およびパッケージ12の筐体2の内部に露出する外側部分のどちらとも光源3の発する光の波長帯域における光の散乱特性が異なるようにする必要がある、としていたが、第2実施形態ではその必要はない。
また、第1実施形態では光源3は押下量検出モジュール20が押下量の検出に用いる波長帯域を含む光を発することが必要である、としていたが、第2実施形態ではその必要はない。
そのほか、第1実施形態において「散乱光」と記述した部分を「蛍光」と読み替えればよい。
【符号の説明】
【0069】
1 光学式キーボード
2 筐体
3 光源
4 上面パネル
5 開口部
10 ボタンモジュール
11 押しボタン
111 押下部
115 突出部
12 パッケージ
13 弾性体
20 押下量検出モジュール
21 結像素子
22 撮像素子
23 受光面
24 フィルタ
30 情報処理部
31 プロセサ
32 メモリ
33 プログラム
34 テーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-01-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
突出部を備える押しボタンと、前記押しボタンを前記突出部を孔から突出しうる態様で収納するパッケージとを備えるボタンモジュールと、光源と、を備える光学式キーボードであり、
前記押しボタンは複数であり、
前記突出部の少なくとも一部と前記パッケージの外側の少なくとも一部との、光の散乱特性または蛍光の特性が異なり、
前記押しボタンの押下量が大きいほど前記突出部の前記パッケージからの突出が大きくなり、
記光源がすべての前記押しボタンの前記突出部を同時に照射するような指向性を備える、
光学式キーボード。
【請求項2】
記光源が、押下されていない時の前記押しボタンの前記突出部を照射するような指向性を備える、請求項1に記載の光学式キーボード。
【請求項3】
光面を備える撮像素子と
押下されていない時の前記押しボタンの前記突出部の少なくとも一部が発する散乱光または蛍光を前記受光面に結像させる結像素子とを備える、請求項1又は2に記載の光学式キーボード。
【請求項4】
ロセサとメモリとを備え、前記プロセサは、前記メモリの記憶する画像データのピクセルであり、かつ、ピクセル値が前記メモリの記憶する基準ピクセル値と既定関係であるピクセルであり、かつ、前記メモリの記憶する基準座標の近隣であるピクセル、を要素とするピクセル集合の計量値に基づいて押下量を算出する、請求項1乃至3のいずれかに記載の光学式キーボード。
【請求項5】
前記プロセサは、前記基準座標のピクセルのピクセル値が前記基準ピクセル値と既定関係でない場合には前記画像データの前記基準座標の近傍でピクセル値が前記基準ピクセル値と既定関係であるようなピクセルを探し、その座標を新たな基準座標として前記メモリに書き込む、請求項4に記載の光学式キーボード。