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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023883
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】スパッタ装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20240214BHJP
   C23C 14/56 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C23C14/34 M
C23C14/34 C
C23C14/56 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023218601
(22)【出願日】2023-12-25
(62)【分割の表示】P 2019080828の分割
【原出願日】2019-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 尚史
(72)【発明者】
【氏名】吉良 ▲隆▼一
(72)【発明者】
【氏名】神丸 剛
(57)【要約】
【課題】均一な膜厚を形成することができるスパッタ装置を提供すること。
【解決手段】スパッタ装置1は、成膜ロール27と、複数の成膜室51、61、65、71、75とを備えるスパッタ装置1であって、 複数の成膜室は、それぞれ、ターゲットユニット55と、成膜室を区画する壁部52、62、66、72、76とを備え、壁部には、排気口15が設けられており、第1断面図において、成膜ロール中心C1と排気口中心C2とを通過する第1仮想線L1上に、ターゲットユニット55が配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムを周方向に搬送する成膜ロールと、
前記成膜ロールの周方向に沿って配置される複数の成膜室と
を備えるスパッタ装置であって、
前記複数の成膜室は、それぞれ、
前記成膜ロールと間隔を隔てて対向配置されるターゲットユニットと、
前記成膜室を区画する壁部と
を備え、
前記壁部には、排気部が設けられており、
前記成膜ロールの軸方向と直交する断面図において、前記成膜ロールの中心と前記排気部の中心とを通過する第1仮想線上に、前記ターゲットユニットが配置されていることを特徴とする、スパッタ装置。
【請求項2】
前記壁部は、
前記排気部が設けられる排気壁と、
前記排気壁から前記成膜ロールに向かって径方向に延び、互いに間隔を隔てて配置される2つの隔壁と
を備え、
前記排気壁は、前記第1仮想線に対して対称であることを特徴とする、請求項1に記載のスパッタ装置。
【請求項3】
前記2つの隔壁は、前記第1仮想線に対して対称であることを特徴とする、請求項2に記載のスパッタ装置。
【請求項4】
前記壁部は、前記排気壁および前記隔壁を連結する連結壁をさらに備え、
前記連結壁は、前記成膜室における前記軸方向中心を通る第2仮想線に対して対称となることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のスパッタ装置。
【請求項5】
前記複数の成膜室には、それぞれ、前記排気部と連結するポンプが設けられていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のスパッタ装置。
【請求項6】
前記排気部は、前記成膜室における前記軸方向中心を通る第2仮想線に対して対称となることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のスパッタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、長尺なフィルムに対して均一な薄膜を形成して連続的に薄膜付きフィルムを製造する装置として、ロールトゥロール方式によるスパッタ装置が知られている。そして、薄膜を複数にしたり、薄膜を厚くするために、複数のスパッタターゲットを搬送方向に設けて、複数回のスパッタを実施するスパッタ装置も知られている(特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1のスパッタ装置では、一つの大成膜室(成膜チャンバー)の内部に、一つの成膜ロールが配置されており、その周方向には、3つのターゲットおよびカソードが配置されている。また、各ターゲットおよびカソードは、隔壁によって区画される小成膜室内に収容されている。さらに、各小成膜室を真空にするため、一つの真空ポンプが、大成膜室内における小成膜室以外の箇所の壁に設けられている。
【0004】
特許文献1のスパッタ装置では、成膜ロールの周方向にターゲットを効率よく配置できるため、装置をコンパクト化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-74820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のスパッタ装置では、形成される薄膜の厚みにばらつきが生じる場合があるため、厚みのさらなる均一化が望まれている。
【0007】
本発明者らは、この膜厚のばらつきについて検討したところ、以下の知見を得た。スパッタを実施する場合、スパッタに必要なガス(アルゴンなど)が、小成膜室内に連続的に供給および排出される。具体的には、ガスは、各小成膜室のカソードから成膜ロール付近に噴射され、フィルムへのスパッタに使用され、その後、真空ポンプから外部に排気される。この際、特許文献1の装置では、供給されたガスは、複数の小成膜室以外の壁に設けられる一の真空ポンプに向かって流れ、そこから外部に排出される。そのため、各成膜室において、ガスの流れは異なる。すなわち、搬送方向上流の小成膜室では、フィルムの搬送方向に逆らうようにガスは流れ、搬送方向下流側の小成膜室では、フィルムの搬送方向に沿ってガスは流れる。搬送方向中央の成膜室では、上記2つのガスの流れが混在し、搬送方向下流側に向かって流れるガスは、搬送方向下流側の小成膜室のガスと合流し、搬送方向上流側に向かって流れるガスは、搬送方向上流側の小成膜室のガスと合流する。その結果、ガスが乱流し、スパッタに影響を及ぼし、得られる薄膜が不均一となる。
【0008】
本発明は、均一な膜厚を形成することができるスパッタ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明[1]は、フィルムを周方向に搬送する成膜ロールと、前記成膜ロールの周方向に沿って配置される複数の成膜室とを備えるスパッタ装置であって、前記複数の成膜室は、それぞれ、前記成膜ロールと間隔を隔てて対向配置されるターゲットユニットと、前記成膜室を区画する壁部とを備え、前記壁部には、排気部が設けられており、前記成膜ロールの軸方向と直交する断面図において、前記成膜ロールの中心と前記排気部の中心とを通過する第1仮想線上に、前記ターゲットユニットが配置されている、スパッタ装置を含む。
【0010】
このスパッタ装置によれば、複数の成膜室に、それぞれ、ターゲットユニット、壁部および排気部が備えられているため、各成膜室に供給されるガスは、各成膜室に配置される排気部によって排気される。そのため、一の成膜室に供給されたガスが、その周方向に隣接する成膜室に流れ込むことを抑制することができる。
【0011】
また、各成膜室において、成膜ロール中心と排気部中心とを通過する第1仮想線上に、ターゲットユニットが配置されているため、成膜に使用されたガスは、成膜ロール付近から、ターゲットユニットによって第1仮想線を中心に対称に分かれて、排気部に排出される。すなわち、ガスの供給から排気までの流れを均等にして、ガスの乱流を抑制することができる。
【0012】
そのため、ガスに起因する成膜のばらつきを抑制でき、均一な膜厚の薄膜をフィルムに形成することができる。
【0013】
本発明[2]は、前記壁部は、前記排気部が設けられる排気壁と、前記排気壁から前記成膜ロールに向かって径方向に延び、互いに間隔を隔てて配置される2つの隔壁とを備え、前記排気壁は、前記第1仮想線に対して対称である、[1]に記載のスパッタ装置を含む。
【0014】
このスパッタ装置によれば、排気壁が、排気部を通る第1仮想線に対して対称であるため、排気されるガスが、排気壁に沿って、均等に排気部に流れ込み易くなる。よって、不均等による乱流を抑制して、ガスをより一層スムーズに排気することができる。その結果、ガスに起因するばらつきをより確実に抑制することができる。
【0015】
本発明[3]は、前記2つの隔壁は、前記第1仮想線に対して対称である、[2]に記載のスパッタ装置を含む。
【0016】
このスパッタ装置によれば、2つの隔壁が、排気部を通る第1仮想線に対して対称であるため、排気されるガスが、2つの隔壁に沿って、均等に排気部に流れ込み易くなる。よって、不均等による乱流を抑制して、ガスをより一層スムーズに排気することができる。
その結果、ガスに起因するばらつきをより確実に抑制することができる。
【0017】
本発明[4]は、前記壁部は、前記排気壁および前記隔壁を連結する連結壁をさらに備え、前記連結壁は、前記成膜室における前記軸方向中心を通る第2仮想線に対して対称となる、(1)~(3)のいずれか一項に記載のスパッタ装置を含む。
【0018】
このスパッタ装置によれば、連結壁が、第2仮想線に対して対称となるため、成膜室内の乱流を有効に抑制して、ばらつきをより一層確実に抑制することができる。
【0019】
本発明[5]は、前記複数の成膜室には、それぞれ、前記排気部と連結するポンプが設けられている、[1]~[4]のいずれか一項に記載のスパッタ装置を含む。
【0020】
このスパッタ装置によれば、複数の成膜室にそれぞれポンプが直結しているため、確実に成膜室内のガスを外部に排出することができる。
【0021】
本発明[6]は、前記排気部は、前記成膜室における前記軸方向中心を通る第2仮想線に対して対称となる、[1]~[5]のいずれか一項に記載のスパッタ装置を含む。
【0022】
このスパッタ装置によれば、排気部は、成膜室における軸方向中心を通る第2仮想線に対して対称となるため、成膜ロールの軸方向においても、均等に排気することができ、ガスをより一層スムーズに排気することができる。その結果、ガスに起因するばらつきをより確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のスパッタ装置によれば、ガスに起因する成膜のばらつきを抑制でき、均一な膜厚の薄膜をフィルムに形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明のスパッタ装置の一実施形態の軸方向における断面図を示す。
図2図2は、図1に示すA-A断面図を示す。
図3図3A-Bは、図1の第1成膜室のガスの流れ示し、図3Aは、供給時のガスの流れ、図3Bは、排気時のガスの流れを示す。
図4図4は、図1に示すスパッタ装置の変形例(排気口を2つ備える形態)を示す。
図5図5は、図1に示すスパッタ装置の変形例(排気口を3つ備える形態)を示す。
図6図6は、図1に示すスパッタ装置の変形例(成膜室を2つ備える形態)を示す。
図7図7は、図1に示すスパッタ装置の変形例(成膜室を2つ備える形態)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
1.スパッタ装置
図1図3Bを参照して、本発明の一実施形態であるスパッタ装置1を説明する。なお、後述する成膜ロール27の軸方向を「軸方向」とし、成膜ロール27の周方向を「周方向」とし、成膜ロール27の径方向を「径方向」とする。また、図1は、第1断面図、すなわち、径方向における断面図(軸方向と直交する面方向に切断した際の断面図)であって、詳しくは、図2におけるB-B断面図を示す。図2は、第2断面図、すなわち、軸方向における断面図(径方向と直交する面方向に切断した際の断面)であって、詳しくは、図1におけるA-A断面図を示す。
【0026】
図1に示すスパッタ装置1は、長尺なフィルム2を搬送しながらその厚み方向一方面に薄膜3を設けて、積層フィルム4を製造する。
【0027】
スパッタ装置1は、繰出部5と、スパッタ部6と、巻取部7とを、フィルム2の搬送方向上流側(以下、「上流側」と省略する)から搬送方向下流側(以下、「下流側」と省略する)に向かって、この順で備える。以下、これらを詳述する。
【0028】
繰出部5は、スパッタ装置1の中で最上流側に配置されており、長尺なフィルム2を繰り出す。繰出部5は、箱型形状を有する。繰出部5は、繰出ロール11と、第1ガイドロール12と、繰出ケーシング13と、真空ポンプ(ポンプの一例)14とを備える。
【0029】
繰出ロール11では、ロール状のフィルム2がセットされる。すなわち、繰出ロール11の周面に、搬送方向に長尺なフィルム2が巻回される。繰出ロール11は、搬送方向に回転する回転軸を有し、幅方向に延びる円柱部材である。なお、本明細書において、後述する各種のロール(繰出ロール11、第1~6ガイドロール(12、23、24、33、34、81)、成膜ロール27、巻取ロール82)は、いずれも、搬送方向に回転する回転軸を有し、幅方向に延びる円柱部材である。
【0030】
繰出ロール11は、外部動力などによって駆動して、図1に示す矢印方向に回転可能に構成されている。具体的には、繰出ロール11の回転軸の端部には、ギヤ(図示せず)が設けられており、ギヤには、繰出ロール11を矢印方向に回転させるためのモータ(図示せず)が接続されている。繰出ロール11は、モータの駆動力によって回転する。
【0031】
繰出ケーシング13は、その内部に、繰出ロール11および第1ガイドロール12を収容する。
【0032】
繰出ケーシング13は、その内部を真空状態に調節可能に構成されている。具体的には、繰出ケーシング13には、排気口15が形成され、その排気口には、その内部の空気を外部に排出する真空ポンプ14が接続されている。
【0033】
真空ポンプ14は、繰出ケーシング13の内部のガスを外部に排出して、繰出ケーシング13の内部を真空にする。真空ポンプ14は、繰出ケーシング13の外側に、排気口15と連通するように配置されている。真空ポンプ14としては、例えば、ターボ分子ポンプなどが挙げられる。
【0034】
スパッタ部6は、繰出部5の下流側および巻取部7の上流側に、これらと隣接するように配置されている。スパッタ部6は、通路部21と、成膜部22とを備える。
【0035】
通路部21は、繰出部5からのフィルム2を成膜部22に搬送し、また、成膜部22からの積層フィルム4を巻取部7に搬送する。
【0036】
通路部21は、箱型形状を有する。通路部21は、第2ガイドロール23と、第3ガイドロール24と、通路ケーシング25とを備える。
【0037】
第2ガイドロール23は、通路部21の上流側に配置されている。第2ガイドロール23は、繰出部5から搬送されるフィルム2をガイドロール室31の第4ガイドロール33(後述)へ案内する。
【0038】
第3ガイドロール24は、通路部21の下流側に配置されている。第3ガイドロール24は、ガイドロール室31の第5ガイドロール34(後述)から搬送される積層フィルム4を巻取部7へ案内する。
【0039】
通路ケーシング25は、その内部に、第2ガイドロール23および第3ガイドロール24を収容する。通路ケーシング25は、成膜部22のガイドロール室31(後述)と連通するように形成されている。すなわち、通路ケーシング25は、成膜部22と連続しており、通路ケーシング25と成膜部22とが連続する箇所において、通路ケーシング25は、フィルム2および積層フィルム4が搬送可能なように、連通口を備える。
【0040】
成膜部22は、第1断面視において、略六角形状を有し、第2断面視において、略矩形状を有する。成膜部22は、中心部26と、その周方向に配置される部屋(ガイドロール室31および複数(5つ)の成膜室51、61、65、71、75)とを備える。詳しくは、ガイドロール室31および複数(5つ)の成膜室51、61、65、71、75は、成膜ロール27の周方向に互いに隣接配置されるとともに、中心部26とも径方向に隣接配置される。
【0041】
中心部26は、第1断面視において、成膜部22の中心に配置されている。中心部26は、成膜ロール27と、連結壁の一例としての一対の成膜ロール側壁28とを備える。
【0042】
成膜ロール27は、フィルム2を成膜ロール27の周方向に搬送する。成膜ロール27は、アノードとしての役割も果たす。成膜ロール27は、後述するガイドロール室31および複数の成膜室51、61、65、71、75と面する。
【0043】
成膜ロール27は、外部動力などによって駆動して、図1に示す矢印方向に回転可能に構成されている。具体的には、繰出ロール11と同様である。
【0044】
一対の成膜ロール側壁28は、軸方向一方側および他方側に、成膜ロール27と間隔を隔てて対向配置されている。一対の成膜ロール側壁28は、互いに略同一形状であり、第1断面視において、成膜ロール27と略同一形状を有する。一対の成膜ロール側壁28は、後述する第2仮想線L2に対称である。
【0045】
ガイドロール室31は、通路部21と連通するように配置されている。具体的には、ガイドロール室31は、通路部21の下流側および第1成膜室51の上流側に配置されるとともに、第5成膜室75の下流側および通路部21の上流側に配置されている。
【0046】
ガイドロール室31は、成膜ロール27と対向配置されるガイドロール壁部32によって区画されている。ガイドロール室31には、第4ガイドロール33および第5ガイドロール34が収容されている。ガイドロール壁部32は、第1隔壁41、第6隔壁46、および、一対のガイドロール側壁35を備える。換言すれば、ガイドロール室31は、第4ガイドロール33と、第5ガイドロール34と、ガイドロール壁部32(第1隔壁41、第6隔壁46、および、一対のガイドロール側壁35)とを備える。
【0047】
第4ガイドロール33は、成膜ロール27の近くに、成膜ロール27と間隔を隔てて配置される。第4ガイドロール33は、第2ガイドロール23から搬送されるフィルム2を、フィルム2の搬送方向が成膜ロール27の周方向に沿うように、成膜ロール27の周面に案内する。
【0048】
第5ガイドロール34は、成膜ロール27の近くに、成膜ロール27と間隔を隔てて配置され、かつ、第4ガイドロール33に対して下流側に配置されている。第5ガイドロール34は、成膜ロール27から搬送される積層フィルム4を第3ガイドロール24へ案内する。
【0049】
第1隔壁41は、ガイドロール室31と第1成膜室51とを区画するように、これらの間に配置されている。第1隔壁41は、径方向および軸方向に延びる平板形状を有する。
第1隔壁41は、第1断面視において、第1排気壁53(後述)と通路ケーシング25との境界から、成膜ロール中心C1に向かって、径方向に延びる。第1隔壁41の径方向端部と、成膜ロール27との間には、フィルム2が通過できる僅かな隙間が形成されている。
【0050】
一対のガイドロール側壁35は、図2に示すように、軸方向に互いに隔てて対向配置されている。一対のガイドロール側壁35は、それぞれ、周方向および径方向に延びる平板形状を有する。一対のガイドロール側壁35の形状は、互いに略同一形状であり、第1断面視において、略等脚台形形状を有する。
【0051】
第1成膜室51は、図1に示すように、ガイドロール室31の下流側および第2成膜室61の上流側に、これらと隣接するように配置されている。すなわち、第1成膜室51は、複数の成膜室51、61、65、71、75の中で最も上流側に配置されている。
【0052】
第1成膜室51は、成膜ロール27と対向配置される第1壁部52によって区画されている。また、第1成膜室51の内部には、ターゲットユニット55が収容され、第1成膜室51の外部には、真空ポンプ14が連結されている。第1壁部52は、第1排気壁53、第1隔壁41、第2隔壁42、および、一対の第1側壁54を備える。換言すれば、第1成膜室51は、第1排気壁53、第1隔壁41と、第2隔壁42と、一対の第1側壁54と、ターゲットユニット55と、真空ポンプ14とを備える。
【0053】
第1排気壁53は、成膜部22における径方向外側の外壁を構成する。第1排気壁53は、軸方向および周方向に延びる平板形状を有する。第1断面視において、第1排気壁53は、仮想線L1に対して対称となるように形成されている。具体的には、第1排気壁53は、第1排気壁53の排気口15の中心C2から周方向両外側に向かって垂直に延びる。また、図2に示すように、第2断面視において、第1排気壁53は、第2仮想線L2に対して対称となるように形成されている。具体的には、第1排気壁53は、第2仮想線L2に対して、垂直に延びるように形成されている。
【0054】
なお、第1仮想線L1は、第1断面視において、成膜ロール中心C1と、排気口15の中心C2とを通る。好ましくは、第1仮想線L1は、C1、C2、C3(2つの隔壁41、42の周方向中心)の全てを通る。第2仮想線L2は、第2断面図において、成膜ロール27の軸方向中心C4を通り、径方向に延びる。
【0055】
図1および図2に示すように、第1排気壁53の周方向および軸方向の中心には、排気口(排気部の一例)15が形成されている。
【0056】
第1隔壁41は、ガイドロール室31で上述した第1隔壁41と同一部材であり、第1成膜室51およびガイドロール室31は、第1隔壁41を共有する。
【0057】
第2隔壁42は、第1成膜室51と第2成膜室61とを区画するように、これらの間に配置されている。第2隔壁42は、第1隔壁41と同様の形状を有しており、第2隔壁42は、第1排気壁53と第2排気壁63との境界から、成膜ロール中心C1に向かって、径方向に延びる。
【0058】
一対の第1側壁54は、成膜部22における軸方向外側の外壁を構成する。一対の第1側壁54は、軸方向に互いに隔てて対向配置されている。一対の第1側壁54は、それぞれ、周方向および径方向に延びる平板形状を有する。一対の第1側壁54の形状は、互いに略同一形状であり、第1断面視において、略等脚台形形状を有する。一対の第1側壁54のそれぞれは、第1排気壁53の周方向両端部のそれぞれと、第1隔壁41の軸方向両端部のそれぞれと、第2隔壁42の軸方向両端部のそれぞれとを連結する。一対の第1側壁54は、第2仮想線L2(後述)に対して対称である。
【0059】
ターゲットユニット55は、成膜ロール27と間隔を隔てて対向配置されている。また、ターゲットユニット55は、仮想線L1に対して対称となるように配置されている。ターゲットユニット55は、ターゲット56と、カソード57と、ガス供給機58とを備える。
【0060】
ターゲット56は、薄膜3の原材料である。ターゲット29は、ガスイオンの衝突によってターゲット56から飛び出すターゲット材料が成膜ロール27に堆積するように、成膜ロール27と対向配置されている。
【0061】
ターゲット29の材料としては、薄膜3に応じて適宜決定され、例えば、In、Sn、Zn、Ga、Sb、Nb、Ti、Si、Zr、Mg、Al、Au、Ag、Cu、Pd、Wからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む金属酸化物が挙げられる。具体的には、例えば、インジウムスズ複合酸化物(ITO)などのインジウム含有酸化物、例えば、アンチモンスズ複合酸化物(ATO)などのアンチモン含有酸化物などが挙げられる。
【0062】
カソード57は、ガスイオンがターゲット56に向かって加速されるように、ターゲット56の径方向外側(成膜ロール27とは反対側)に配置されている。
【0063】
ガス供給機58は、ターゲット56とカソード57との間付近に配置されている。なお、ガス供給機58は、ガスが、ターゲット56を通過して、成膜ロール27のフィルム2に送風可能に構成されている。
【0064】
真空ポンプ14は、第1成膜室51の内部のガスを外部に排出して、第1成膜室51の内部を真空にする。真空ポンプ14は、第1排気壁53の径方向外側に、第1排気壁53の排気口15と連通するように配置されている。真空ポンプ14としては、繰出部5の真空ポンプ14と同様である。
【0065】
第2成膜室61は、第1成膜室51の下流側および第3成膜室65の上流側に、これらと隣接するように配置されている。
【0066】
第2成膜室61は、成膜ロール27と対向配置される第2壁部62によって区画されている。また、第2成膜室61の内部には、ターゲットユニット55が収容され、第2成膜室61の外部には、真空ポンプ14が連結されている。第2壁部62は、第2排気壁63、第2隔壁42、第3隔壁43、および、一対の第2側壁(図示せず)を備える。換言すれば、第2成膜室61は、第2排気壁63、第2隔壁42と、第3隔壁43と、一対の第2側壁と、ターゲットユニット55と、真空ポンプ14とを備える。
【0067】
第2排気壁63は、成膜部22における径方向外側の外壁を構成する。第2排気壁63は、成膜ロール中心C1を中心にして第1排気壁53を周方向に所定角度(例えば、45度以上、70度以下)回転させた形状であり、第1排気壁53と同様の構成を有する。
【0068】
第2隔壁42は、第1成膜室51で上述した第2隔壁42と同一部材であり、第2成膜室61および第1成膜室51は、第2隔壁42を共有する。
【0069】
第3隔壁43は、第2成膜室61と第3成膜室65とを区画するように、これらの間に配置されている。第3隔壁43は、第1隔壁41と同様の形状を有しており、第2排気壁63と第3排気壁67の境界から成膜ロール中心C1に向かって、径方向に延びる。
【0070】
一対の第2側壁は、軸方向外側の外壁を構成する。第2側壁は、第1側壁54と周方向に所定角度回転させた形状であり、第1側壁54と同様の構成を有する。
【0071】
第2成膜室61におけるターゲットユニット55および真空ポンプは、第1成膜室51と同様の構成を有し、第1成膜室51と同様に第2成膜室61に配置されている。
【0072】
第3成膜室65は、成膜ロール27と対向配置される第3壁部66によって区画されている。また、第3成膜室65の内部には、ターゲットユニット55が収容され、第3成膜室65の外部には、真空ポンプ14が連結されている。第3壁部66は、第3排気壁67、第3隔壁43、第4隔壁44、および、一対の第3側壁(図示せず)を備える。換言すれば、第3成膜室65は、第3排気壁67、第3隔壁43と、第4隔壁44と、一対の第3側壁と、ターゲットユニット55と、真空ポンプ14とを備える。
【0073】
第3排気壁67は、径方向外側の外壁を構成する。第3排気壁67は、成膜ロール中心C1を中心にして第2排気壁63を周方向に所定角度回転させた形状であり、第2排気壁63と同様の構成を有する。
【0074】
第3隔壁43は、第2成膜室61で上述した第3隔壁43と同一部材であり、第3成膜室65および第2成膜室61は、第3隔壁43を共有する。
【0075】
第4隔壁44は、第3成膜室65と第4成膜室71とを区画するように、これらの間に配置されている。第4隔壁44は、第1隔壁41と同様の形状を有しており、第3排気壁67と第4排気壁73との境界から成膜ロール中心C1に向かって、径方向に延びる。
【0076】
一対の第3側壁は、成膜部22における軸方向外側の外壁を構成する。第3側壁は、成膜ロール中心C1を中心にして第2側壁を周方向に所定角度回転させた形状であり、第2側壁と同様の構成を有する。
【0077】
第3成膜室65におけるターゲットユニット55および真空ポンプは、第1成膜室51と同様の構成を有し、第1成膜室51と同様に第3成膜室65に配置されている。
【0078】
第4成膜室71は、成膜ロール27と対向配置される第4壁部72によって区画されている。また、第4成膜室71の内部には、ターゲットユニット55が収容され、第4成膜室71の外部には、真空ポンプ14が連結されている。第4壁部72は、第4排気壁73、第4隔壁44、第5隔壁45、および、一対の第4側壁(図示せず)を備える。換言すれば、第4成膜室71は、第4排気壁73、第4隔壁44と、第5隔壁45と、一対の第4側壁と、ターゲットユニット55と、真空ポンプ14とを備える。
【0079】
第4排気壁73は、成膜部22における径方向外側の外壁を構成する。第4排気壁73は、成膜ロール中心C1を中心にして第3排気壁67を周方向に所定角度回転させた形状であり、第3排気壁67と同様の構成を有する。
【0080】
第4隔壁44は、第3成膜室65で上述した第4隔壁44と同一部材であり、第4成膜室71および第3成膜室65は、第4隔壁44を共有する。
【0081】
第5隔壁45は、第4成膜室71と第5成膜室75とを区画するように、これらの間に配置されている。第4隔壁44は、第1隔壁41と同様の形状を有しており、第4排気壁73と第5排気壁77との境界から成膜ロール中心C1に向かって、径方向に延びる。
【0082】
一対の第4側壁は、成膜部22における軸方向外側の外壁を構成する。第4側壁は、成膜ロール中心C1を中心にして第3側壁を周方向に所定角度回転させた形状であり、第3側壁と同様の構成を有する。
【0083】
第4成膜室71におけるターゲットユニット55および真空ポンプは、第1成膜室51と同様の構成を有し、第1成膜室51と同様に第4成膜室71に配置されている。
【0084】
第5成膜室75は、成膜ロール27と対向配置される第5壁部76によって区画されている。また、第5成膜室75の内部には、ターゲットユニット55が収容され、第5成膜室75の外部には、真空ポンプ14が連結されている。第5壁部76は、第5排気壁77、第5隔壁45、第6隔壁46、および、一対の第5側壁(図示せず)を備える。換言すれば、第5成膜室75は、第5排気壁77、第5隔壁45と、第6隔壁46と、一対の第5側壁と、ターゲットユニット55と、真空ポンプ14とを備える。
【0085】
第5排気壁77は、成膜部22における径方向外側の外壁を構成する。第5排気壁77は、成膜ロール中心C1を中心にして第4排気壁73を周方向に所定角度回転させた形状であり、第4排気壁73と同様の構成を有する。
【0086】
第5隔壁45は、第4成膜室71で上述した第4隔壁44と同一部材であり、第5成膜室75および第4成膜室71は、第5隔壁45を共有する。
【0087】
第6隔壁46は、第5成膜室75とガイドロール室31とを区画するように、これらの間に配置されている。第6隔壁46は、第2隔壁42と同様の形状を有しており、第5排気壁77と通路ケーシング25との境界から成膜ロール中心C1に向かって、径方向に延びる。
【0088】
一対の第5側壁は、成膜部22における軸方向外側の外壁を構成する。第5側壁は、成膜ロール中心C1を中心にして第4側壁を周方向に所定角度回転させた形状であり、第4側壁と同様の構成を有する。
【0089】
第5成膜室75におけるターゲットユニット55および真空ポンプ14は、第1成膜室51と同様の構成を有し、第1成膜室51と同様に第5成膜室75に配置されている。
【0090】
成膜部22において、第1成膜室51、第2成膜室61、第3成膜室65、第4成膜室71および第5成膜室75は、周方向に所定角度回転している以外、略同一構造を有する。
【0091】
また、各排気壁において、第1排気壁53、第2排気壁63、第3排気壁67、第4排気壁73および第5排気壁77は、周方向に連続して形成されており、第1断面視において、略六角形状を有する。
【0092】
各隔壁において、第1隔壁41、第2隔壁42、第3隔壁43、第4隔壁44および第5隔壁45は、周方向に間隔を隔てて、各排気壁から径方向内側に向かって延びるように形成されている。各隔壁の径方向内端部は、成膜ロール27に対して、フィルム2が通過できる僅かな隙間を隔てる。また、第1隔壁41、第2隔壁42、第3隔壁43、第4隔壁44、および、第5隔壁45は、周方向に等間隔となるように配置されている。
【0093】
成膜部22の一対の側壁の一方側および他方側では、それぞれ、成膜ロール側壁28、ガイドロール側壁35、第1側壁54、第2側壁、第3側壁、第4側壁および第5側壁は、一体的に形成されており、第1断面視において、略六角形状を有する。
【0094】
複数の成膜室51、61、65、71、75は、成膜ロール27と対向して、壁部52、62、66、72、76によって区画されており、第1成膜室51、第2成膜室61、第3成膜室65、第4成膜室71および第5成膜室75を備える。これら成膜室は、フィルムの搬送方向に沿って、すなわち、成膜ロール27の周方向に沿って、この順に、互いに隣接するように配置されている。各成膜室51、61、65、71、75は、互いに略同一構造を有する。
【0095】
巻取部7は、スパッタ装置1の中で最下流側に配置されており、通路部21の下流側に、通路部21と隣接するように配置されている。巻取部7は、積層フィルム4を巻き取る。
【0096】
巻取部7は、箱型形状を有する。巻取部7は、第6ガイドロール81と、巻取ロール82と、巻取ケーシング83と、真空ポンプ14とを備える。
【0097】
第6ガイドロール81は、通路部21から搬送されてくる積層フィルム4を、巻取ロール82に案内する。第6ガイドロール81は、巻取ロール82の上流側に配置されている。
【0098】
巻取ロール82は、第6ガイドロール81から搬送される薄膜付きフィルムをロール状に巻き取る。巻取ロール82は、外部動力などによって駆動して、図1に示す矢印方向に回転可能に構成されている。具体的には、繰出ロール11と同様である。
【0099】
巻取ケーシング83は、その内部に、第6ガイドロール81、および、巻取ロール82を収容する。巻取ケーシング83は、その内部を真空状態に調節可能に構成されている。
具体的には、巻取ケーシング83には、排気口15が形成されており、排気口15には、その内部の空気を外部に排出する真空ポンプ14が配置されている。
【0100】
真空ポンプ14は、巻取ケーシング83の内部のガスを外部に排出して、繰出ケーシング13の内部を真空にする。真空ポンプ14は、巻取ケーシング83の外側に、排気口15と連通するように配置されている。真空ポンプ14としては、繰出部5の真空ポンプが挙げられる。
【0101】
2.積層フィルムの製造方法
スパッタ装置1を用いて、フィルム2から積層フィルム4を製造する方法を説明する。
【0102】
まず、積層対象となるフィルム2を繰出ロール11に用意する。具体的には、フィルム2を用意し、繰出ロール11にセットする。
【0103】
フィルム2としては、例えば、高分子フィルム、ガラスフィルム(薄膜ガラス)などが挙げられる。高分子フィルムとしては、例えば、ポリエステル系フィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムなど)、ポリカーボネート系フィルム、オレフィン系フィルム(ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、シクロオレフィンフィルムなど)、アクリル系フィルム、ポリエーテルスルフォン系フィルム、ポリアリレート系フィルム、メラミン系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリイミド系フィルム、セルロース系フィルム、ポリスチレン系フィルムが挙げられる。
【0104】
次いで、スパッタ装置1を作動させる。具体的には、各種の真空ポンプ14を稼働させて、繰出部5、スパッタ部6および巻取部7の全てを真空に調整するとともに、各ロールに取り付けられているモータを駆動させて、各ロールを回転駆動させる。また、ターゲットユニット55も作動させて、スパッタリングを実施する。これにより、繰出部5から、フィルム2が繰り出され、スパッタ部6でスパッタリングにより積層フィルム4が形成され、巻取部7で巻き取られる。
【0105】
特に、スパッタ部6においては、フィルム2は、通路部21から第2ガイドロール23によってガイドロール室31に案内され、続いて、第4ガイドロール33によって、第1成膜室51に案内される。次いで、成膜ロール27に周面に沿って、第2成膜室61、第3成膜室65、第4成膜室71、第5成膜室75を順次通過する。この際、フィルム2に対して、第1成膜室51、第2成膜室61、第3成膜室65、第4成膜室71、および、第5成膜室75でスパッタリングが順次実施される。その後、積層フィルム4は、再び、ガイドロール室31に搬送され、第5ガイドロール34によって通路部21に案内される。次いで、第4ガイドロール33によって、巻取部7に案内される。
【0106】
各成膜室51、61、65、71、75でのスパッタリングについて、第1成膜室51を代表して、説明する。なお、他の成膜室でのスパッタリングも、第1成膜室51のスパッタリングと同様である。
【0107】
スパッタリングでは、ガスをガス供給機58から供給するとともに電源(図示せず)により電圧を印加することによってガスをイオン化させる。そして、イオン化ガスをカソード57付近にあるターゲット56に衝突させ、ターゲット56表面からターゲット材料(薄膜材料)をはじき出し、そのターゲット材料(薄膜材料)をフィルム2に堆積させる。
【0108】
スパッタリングの方式としては、具体的には、2極スパッタリング法、電子サイクロトロン共鳴スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法などが挙げられる。
【0109】
供給するガスとしては、例えば、アルゴン(Ar)などの不活性ガスが挙げられる。好ましくは、酸素ガスなどの反応性ガスを併用することができる。
【0110】
スパッタリング時の気圧は、真空であり、好ましくは、1.0Pa未満、より好ましくは、0.5Pa以下である。
【0111】
スパッタリングに用いる電源は、例えば、DC電源、AC電源、MF電源およびRF電源のいずれであってもよく、また、これらの組み合わせであってもよい。
【0112】
第1成膜室51のスパッタリング時のガスの流れを、図3A-Bの矢印を参照して詳述する。
【0113】
ガス供給機58から、ガス(例えば、アルゴンガス)が成膜ロール27およびフィルム2に向かって噴射される(図3Aの破線参照)。
【0114】
噴射されたガスは、Arなどによってイオン化された後、カソード57に向かって加速し、ターゲット56に衝突し、ターゲット56からターゲット材料をたたき出す(図3Aの実線参照)。ターゲット56に衝突したイオン化ガスは、カソード57の影響によって、イオン化状態から気体状態に戻る。
【0115】
そして、ガスは、第1排気壁53の真空ポンプ14の吸引により、その排気口15に向かって、すなわち、径方向外側に向かって流れる。この際、ガスは、カソード57の対向面に沿って第1仮想線L1に対して対称となるように分岐して流れる。第1隔壁41側に向かうガスは、第1隔壁41および第1排気壁53に沿って流れ、排気口15に吸い込まれ、一方、第2隔壁42側に向かうガスは、第2隔壁42および第1排気壁53に沿って流れ、排気口15に吸い込まれる(図3B参照)。
【0116】
このとき、第1成膜室51は、第1仮想線L1に対して対称であるため、ガスの流れも対象となり、排気におけるスムーズな流れが、第1成膜室51に生じる。すなわち、成膜が実施されるカソード57と成膜ロール27との間の領域に、乱流が生じにくく、安定したガスの供給および排出がなされる。
【0117】
第2成膜室61、第3成膜室65、第4成膜室71および第5成膜室75においても、それぞれ、独立して、第1成膜室51と同様のスパッタリング、ひいては、同様のガスの供給・排出が実施される。
【0118】
そして、このスパッタ装置1では、第1成膜室51、第2成膜室61、第3成膜室65、第4成膜室71および第5成膜室75に、それぞれ、ターゲットユニット55、壁部52、62、66,72、76および排気口15が備えられているため、各成膜室に供給されるガスは、各成膜室に配置される排気口15によって排気される。そのため、一の成膜室に供給されたガスが、その周方向に隣接する成膜室に流れ込むことを抑制することができる。
【0119】
また、各成膜室において、第1仮想線L1上に、ターゲットユニット55が配置されているため、成膜に使用されたガスは、成膜ロール27付近から、ターゲットユニット55によって第1仮想線L1を中心に対称に分かれて、排気口15に排出される。すなわち、ガスの供給から排気までの流れを均等にして、ガスの乱流を抑制することができる。
【0120】
そのため、ガスに起因する成膜のばらつきを抑制でき、均一な膜厚の薄膜3をフィルム2に形成することができる。
【0121】
また、このスパッタ装置1では、第1壁部52は、第1排気壁53と、第1隔壁41および第2隔壁42とを備え、第1排気壁53は、第1仮想線L1に対して対称である。
【0122】
このため、排気されるガスが、第1排気壁に沿って、均等に排気口15に流れ込み易くなる。よって、不均等による乱流を抑制して、ガスをより一層スムーズに排気することができる。その結果、ガスに起因するばらつきをより確実に抑制することができる。
【0123】
また、このスパッタ装置1では、第1隔壁41および第2隔壁42は、第1仮想線L1に対して対称である。
【0124】
このため、排気されるガスが、第1隔壁41および第2隔壁42に沿って、均等に排気部に流れ込み易くなる。よって、不均等による乱流を抑制して、ガスをより一層スムーズに排気することができる。その結果、ガスに起因するばらつきをより確実に抑制することができる。
【0125】
また、このスパッタ装置1では、一対の成膜ロール側壁28が、第2仮想線L2に対して対称であるため、乱流を有効に抑制して、複数の成膜室51、61、65、71、75のそれぞれにおけるばらつきをより一層確実に抑制することができる。
【0126】
また、このスパッタ装置1では、複数の成膜室には、それぞれ、排気口と連結する真空ポンプ14が設けられている。
【0127】
このため、確実に成膜室内のガスを外部に排出することができる。
【0128】
また、このスパッタ装置1では、排気口15は、成膜室51、61、65、71、75における第2仮想線L2に対して中心となるように配置されている。
【0129】
このため、排気口15は、成膜ロール27の軸方向においても、均等に排気することができ、ガスをより一層スムーズに排気することができる。その結果、ガスに起因するばらつきをより確実に抑制することができる。
【0130】
4.変形例
以下に、図1に示す一実施形態の変形例について説明する。なお、これら変形例についても、上記した一実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0131】
(1)図1に示す実施形態では、各成膜室51、61、65、71、75は、それぞれ、一つの真空ポンプを備えているが、例えば、図4および図5で示すように、各成膜室51、61、65、71、75は、複数(2以上)の真空ポンプ14を備えることができる。
【0132】
図4に示す実施形態では、各成膜室は、2つの真空ポンプ14を備える。2つの真空ポンプ14は、軸方向互いに間隔を隔てて配置されている。2つの真空ポンプ14は、第2仮想線L2を軸に対称となるように配置されている。なお、2つの真空ポンプ14に対応して、各排気壁には、排気口15が形成されている。
【0133】
図5に示す実施形態では、各成膜室は、3つの真空ポンプ14を備える。3つの真空ポンプ14は、軸方向互いに等間隔を隔てて配置されている。3つの真空ポンプ14は、第3仮想線L2を軸に対称となるように配置されている。なお、3つの真空ポンプ14に対応して、各排気壁には、排気口15が形成されている。
【0134】
(2)図1に示す実施形態では、成膜部22は、5つの成膜室を備えているが、成膜室の数は複数(2以上)であれば限定されず、例えば、図6および図7に示すように、2つまたは3つの成膜室を備えることもできる。
【0135】
図6に示す実施形態では、2つの成膜室51、61は、互いに周方向に所定角度回転させた形状であり、互いに同一構造を有する。各排気壁は、第1断面視において、第1仮想線L1に対して対称であり、略円弧形状を有する。
【0136】
図7に示す実施形態では、3つの成膜室51、61、65は、互いに周方向に所定角度回転させた形状であり、互いに同一構造を有する。
【符号の説明】
【0137】
1 スパッタ装置
2 フィルム
6 スパッタ部
14 真空ポンプ
15 排気口
27 成膜ロール
28 成膜ロール側壁
41 第1隔壁
42 第2隔壁
43 第3隔壁
44 第4隔壁
45 第5隔壁
46 第6隔壁
51 第1成膜室
52 第1壁部
53 第1排気壁
54 第2側壁
55 ターゲットユニット
61 第2成膜室
62 第2壁部
63 第2排気壁
65 第3成膜室
66 第3壁部
67 第3排気壁
71 第4成膜室
72 第4壁部
73 第4排気壁
75 第5成膜室
76 第5壁部
77 第5排気壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムを周方向に搬送する成膜ロールと、
前記成膜ロールの周方向に沿って配置される複数の成膜室と
を備えるスパッタ装置であって、
前記複数の成膜室は、それぞれ、
前記成膜ロールと間隔を隔てて対向配置されるターゲットユニットと、
前記成膜室を区画する壁部と
を備え、
前記壁部には、排気部が設けられており、
前記成膜ロールの軸方向と直交する断面図において、前記成膜ロールの中心と前記排気部の中心とを通過する第1仮想線上に、前記ターゲットユニットが配置されており、
前記壁部は、
前記排気部が設けられる排気壁と、
前記排気壁から前記成膜ロールに向かって径方向に延び、互いに間隔を隔てて配置される2つの隔壁と
を備え、
前記排気壁は、前記第1仮想線に対して対称であり、
隣接する前記成膜室は前記隔壁の内1つを共有することを特徴とする、スパッタ装置。
【請求項2】
前記2つの隔壁は、前記第1仮想線に対して対称であることを特徴とする、請求項に記載のスパッタ装置。
【請求項3】
前記壁部は、前記排気壁および前記隔壁を連結する連結壁をさらに備え、
前記連結壁は、前記成膜室における前記軸方向中心を通る第2仮想線に対して対称となることを特徴とする、請求項1または2に記載のスパッタ装置。
【請求項4】
前記複数の成膜室には、それぞれ、前記排気部と連結するポンプが設けられていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のスパッタ装置。
【請求項5】
前記排気部は、前記成膜室における前記軸方向中心を通る第2仮想線に対して対称となることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のスパッタ装置。