(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023933
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】プレフィルドシリンジ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/28 20060101AFI20240214BHJP
A61M 5/145 20060101ALI20240214BHJP
A61M 5/172 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61M5/28
A61M5/145 510
A61M5/172
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219782
(22)【出願日】2023-12-26
(62)【分割の表示】P 2020509244の分割
【原出願日】2019-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2018066113
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100185225
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 恭一
(72)【発明者】
【氏名】奥田 雄二
(72)【発明者】
【氏名】関口 彰太
(57)【要約】
【課題】シリンジポンプがデータを取得し易く、かつ、剥離し難いRFIDタグを備えるプレフィルドシリンジ及び薬液投与システムを提供する。また、当該プレフィルドシリンジに対応したシリンジポンプを提供する。
【解決手段】本開示に係るプレフィルドシリンジは、薬液と、薬液を内包する筒状の胴部と、胴部の先端側に設けられ、薬液を排出するノズル部と、を有するバレルと、先端開口部を封止するキャップと、胴部の内周面を摺動するガスケットと、ガスケットに装着可能な押子と、矩形状に巻き回されたアンテナ線により構成された通信用のアンテナ及びメモリを有し、胴部の外周面に対して位置が固定されたRFIDタグと、を備え、胴部の外径が14mm~33mmであり、アンテナの最大周方向長さが9mm~25mmであり、胴部の外周面の周方向長さが、アンテナの最大周方向長さの2.0倍~7.0倍である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液と、
前記薬液を内包する筒状の胴部と、前記胴部の先端側に設けられ、前記薬液を排出するノズル部と、を有するバレルと、
前記ノズル部の先端部に設けられた先端開口部を封止するキャップと、
前記胴部の内周面を摺動するガスケットと、
前記ガスケットに装着可能な押子と、
矩形状に巻き回されているアンテナ線により構成されている通信用のアンテナ及びメモリを有し、前記胴部の外周面に対して位置が固定されているRFIDタグと、を備え、
前記バレルの前記胴部の外径が14ミリメートル~33ミリメートルであり、
前記バレルの前記胴部の周方向に沿う、前記RFIDタグの前記アンテナの最大周方向長さが9ミリメートル~25ミリメートルであり、
前記バレルの前記胴部の外周面の周方向長さが、前記RFIDタグの前記アンテナの前記最大周方向長さの2.0倍~7.0倍である、プレフィルドシリンジ。
【請求項2】
前記バレルの前記胴部の軸方向に沿う、前記RFIDタグの最大軸方向長さは、8ミリメートル~25ミリメートルである、請求項1に記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項3】
前記バレルは、前記胴部の基端部から突出するフランジ部を有し、
前記胴部は、前記フランジ部の近傍に、前記押子を駆動するシリンジポンプのクランプ部が当接するクランプ当接部を有し、
前記RFIDタグは、前記胴部の軸方向において、前記クランプ当接部よりも先端側に配置された、請求項1又は2に記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項4】
前記胴部の軸方向において、前記RFIDタグの基端と、前記バレルの前記フランジ部の先端との距離が、15ミリメートル~40ミリメートルである、請求項3に記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項5】
前記RFIDタグが、前記胴部の軸方向において、前記ガスケットの先端よりも基端側に配置された、請求項1乃至4のいずれか1つに記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項6】
前記バレルの前記胴部に貼付された情報記載ラベルを更に備え、
前記RFIDタグは、前記情報記載ラベルの内面又は外面に貼付されている、請求項1乃至5のいずれか1つに記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項7】
前記RFIDタグの外面を覆うように前記バレルの前記胴部に貼付された情報記載ラベルを更に備える、請求項1乃至5のいずれか1つに記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項8】
前記情報記載ラベルには、前記胴部の前記薬液の量を示す目盛が、前記バレルの前記胴部の軸方向に沿って設けられており、
前記RFIDタグの少なくとも一部は、前記目盛の少なくとも一部と、前記バレルの前記胴部の軸方向において重複し、かつ前記バレルの前記胴部の周方向にずれた位置に配置されている、請求項6又は7に記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項9】
前記目盛が複数設けられ、
前記RFIDタグは、少なくとも2つの前記目盛の間に配置されている、請求項8に記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項10】
前記少なくとも2つの目盛は、前記バレルの前記胴部の中心軸に対して対称である、請求項9に記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項11】
シリンジポンプと、前記シリンジポンプに設置されるプレフィルドシリンジとを有する薬液投与システムであり、
前記プレフィルドシリンジは、
薬液と、
前記薬液を内包する筒状の胴部と、前記胴部の先端側に設けられ、前記薬液を排出するノズル部と、を有するバレルと、
前記ノズル部の先端部に設けられた先端開口部を封止するキャップと、
前記胴部の内周面を摺動するガスケットと、
前記ガスケットに装着可能な押子と、
矩形状に巻き回されているアンテナ線により構成されている通信用のアンテナ及びメモリを有し、前記胴部の外周面に対して位置が固定されているRFIDタグと、
を備えるプレフィルドシリンジであって、
前記バレルの前記胴部の外径が14ミリメートル~33ミリメートルであり、
前記バレルの前記胴部の周方向に沿う、前記RFIDタグの前記アンテナの最大周方向長さが9ミリメートル~25ミリメートルであり、
前記バレルの前記胴部の外周面の周方向長さが、前記RFIDタグの前記アンテナの前記最大周方向長さの2.0倍~7.0倍であり、
前記シリンジポンプは、
前記プレフィルドシリンジの前記押子を、前記胴部の先端側に向かう先端方向に駆動するシリンジ押子駆動部と、
前記プレフィルドシリンジの前記RFIDタグの前記メモリに記憶されたデータセットを読み取るリーダと前記シリンジ押子駆動部を制御する制御部とを備える本体部と、
前記プレフィルドシリンジの前記胴部の前記外周面を、前記胴部の軸に対して垂直な方向から支持する支持部と、
前記支持部と対向し、前記支持部との間で前記胴部をクランプするクランプ部と、を有する、薬液投与システム。
【請求項12】
前記クランプ部が前記プレフィルドシリンジを前記支持部と前記クランプ部との間でクランプする際に、前記胴部の前記外周面のうち前記クランプ部がクランプする部分は、前記RFIDタグが貼付されている部分とは異なる、請求項11に記載の薬液投与システム。
【請求項13】
前記バレルは、前記胴部の基端部から突出するフランジ部を有し、
前記胴部の軸方向において、前記RFIDタグの基端と、前記バレルの前記フランジ部の先端との距離が、15ミリメートル~40ミリメートルであり、
前記クランプ部は、前記胴部の前記フランジ部の近傍に当接することで、前記プレフィルドシリンジを前記支持部とともにクランプする、請求項12に記載の薬液投与システム。
【請求項14】
前記シリンジポンプの前記本体部は、前記クランプ部と対向する第1領域と、前記胴部の軸方向において、前記第1領域に隣接して、前記シリンジ押子駆動部に対して反対側に配置された第2領域とを有し、
前記リーダは、前記RFIDタグのアンテナと通信する、リーダアンテナ線から形成されるリーダアンテナを含み、
前記リーダアンテナの少なくとも一部が、前記第2領域に配置されている、請求項13に記載の薬液投与システム。
【請求項15】
前記支持部の正面視において前記バレルの前記胴部の軸方向と直交する、前記リーダアンテナの中心線が、前記第2領域に配置されているとともに、
前記支持部の正面視において、前記リーダアンテナの中心線が、前記RFIDタグの前記アンテナと重なる、請求項14に記載の薬液投与システム。
【請求項16】
プレフィルドシリンジが設置されるシリンジポンプであり、
前記プレフィルドシリンジは、
薬液と、
前記薬液を内包する筒状の胴部と、前記胴部の先端側に設けられ、前記薬液を排出するノズル部と、を有するバレルと、
前記ノズル部の先端部に設けられた先端開口部を封止するキャップと、
前記胴部の内周面を摺動するガスケットと、
前記ガスケットに装着可能な押子と、
矩形状に巻き回されているアンテナ線により構成されている通信用のアンテナ及びメモリを有し、前記胴部の外周面に対して位置が固定されているRFIDタグと、
を備えるプレフィルドシリンジであって、
前記シリンジポンプは、
前記プレフィルドシリンジの前記押子を、前記胴部の先端側に向かう先端方向に駆動するシリンジ押子駆動部と、
前記プレフィルドシリンジの前記RFIDタグの前記メモリに記憶されたデータセットを読み取るリーダと前記シリンジ押子駆動部を制御する制御部とを備える本体部と、
前記プレフィルドシリンジの前記胴部の前記外周面を、前記胴部の軸に対して垂直な方向から支持する支持部と、
前記支持部と対向し、前記支持部との間で前記プレフィルドシリンジの前記胴部をクランプするクランプ部と、を有し、
前記シリンジポンプの前記本体部は、クランプ部と対向する第1領域と、前記胴部の軸方向において、前記第1領域に隣接して、前記シリンジ押子駆動部に対して反対側に配置された第2領域とを有し、
前記リーダは、前記RFIDタグの前記アンテナと通信する、リーダアンテナ線から構成されているリーダアンテナを含み、
前記リーダアンテナの少なくとも一部が、前記第2領域に配置されている、シリンジポンプ。
【請求項17】
前記支持部の正面視において前記バレルの前記胴部の軸方向と直交する、前記リーダアンテナの中心線が、前記第2領域に配置されている、請求項16に記載のシリンジポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はプレフィルドシリンジ、薬液投与システム及びシリンジポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
手術室又は集中治療室等の医療現場において、静脈麻酔薬等の薬剤を患者の体内に送液する場合、適用する手技及び患者の症状等に応じて、送液する薬剤の流量(以下、単に「送液量」とも称する)を適切に調節しながら長時間に亘って送液を行う必要がある。設定された送液量で長時間に亘って正確に薬剤を送液する装置としては、例えば、バレル内に薬剤を含む薬液が収容されたプレフィルドシリンジを用いて送液を実行可能な、シリンジポンプなどの薬液投与装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、この種の薬液投与装置としての薬液注入装置が開示されている。また、特許文献1には、各種データが記録されたRFID(Radio Frequency Identification)タグが装着された、薬液注入装置に装着されるシリンジが開示されている。更に、特許文献1に記載の薬液注入装置は、シリンジのRFIDタグから、記録されている各種データを取得するリーダを含むRFIDモジュールを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている薬液注入装置を使用する際には、医療現場でシリンジを薬液注入装置の台座部分に設置する。シリンジの設置時には、薬液注入装置のリーダがシリンジのRFIDタグのデータを取得できるように、RFIDタグを薬液注入装置のリーダに近接させる必要がある。そのため、シリンジのRFIDタグの位置と、薬液注入装置のリーダの位置と、を位置合わせした状態で、円筒状のシリンジを薬液注入装置の台座部分に設置する必要がある。この作業は医療従事者にとって煩雑である。また、シリンジを台座部分に設置した状態で、シリンジをその軸線周りに回転させることで上述の位置合わせを行う場合には、シリンジの外周面に固定されているRFIDタグと、薬液注入装置の台座部分と、の間の摺動により、シリンジのRFIDタグが破損するおそれがあった。
【0006】
また、RFIDタグをシリンジの外周面に貼付する際に、シリンジの外周面は曲面であるため、貼付されたRFIDタグが変形する。この変形の結果、RFIDタグが剥離するおそれがある。
【0007】
本開示は、シリンジポンプがデータを取得し易く、かつ、剥離し難いRFIDタグを備えるプレフィルドシリンジ及び薬液投与システムを提供することを目的とする。また本開示は、当該プレフィルドシリンジに対応したシリンジポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様としてのプレフィルドシリンジは、薬液と、前記薬液を内包する筒状の胴部と、前記胴部の先端側に設けられ、前記薬液を排出するノズル部と、を有するバレルと、前記ノズル部の先端部に設けられた先端開口部を封止するキャップと、前記胴部の内周面を摺動するガスケットと、前記ガスケットに装着可能な押子と、矩形状に巻き回されているアンテナ線により構成されている通信用のアンテナ及びメモリを有し、前記胴部の外周面に対して位置が固定されているRFIDタグと、を備え、前記バレルの前記胴部の外径が14ミリメートル~33ミリメートルであり、前記バレルの前記胴部の周方向に沿う、前記RFIDタグの前記アンテナの最大周方向長さが9ミリメートル~25ミリメートルであり、前記バレルの前記胴部の外周面の周方向長さが、前記RFIDタグの前記アンテナの前記最大周方向長さの2.0倍~7.0倍である。
【0009】
本発明の1つの実施形態として、前記バレルの前記胴部の軸方向に沿う、前記RFIDタグの最大軸方向長さは、8ミリメートル~25ミリメートルである。
【0010】
本発明の1つの実施形態として、前記バレルは、前記胴部の基端部から突出するフランジ部を有し、前記胴部は、前記フランジ部の近傍に、前記押子を駆動するシリンジポンプのクランプ部が当接するクランプ当接部を有し、前記RFIDタグは、前記胴部の軸方向において、前記クランプ当接部よりも先端側に配置される。
【0011】
本発明の1つの実施形態として、前記胴部の軸方向において、前記RFIDタグの基端と、前記バレルの前記フランジ部の先端との距離が、15ミリメートル~40ミリメートルである。
【0012】
本発明の1つの実施形態として、前記RFIDタグが、前記胴部の軸方向において、前記ガスケットの先端よりも基端側に配置される。
【0013】
本発明の1つの実施形態としてのプレフィルドシリンジは、前記バレルの前記胴部に貼付された情報記載ラベルを更に備え、前記RFIDタグは、前記情報記載ラベルの内面又は外面に貼付されている。
【0014】
本発明の1つの実施形態としてのプレフィルドシリンジは、前記RFIDタグの外面を覆うように前記バレルの前記胴部に貼付された情報記載ラベルを更に備える。
【0015】
本発明の1つの実施形態として、前記情報記載ラベルには、前記胴部の前記薬液の量を示す目盛が、前記バレルの前記胴部の軸方向に沿って設けられており、前記RFIDタグの少なくとも一部は、前記目盛の少なくとも一部と、前記バレルの前記胴部の軸方向において重複し、かつ前記バレルの前記胴部の周方向にずれた位置に配置されている。
【0016】
本発明の1つの実施形態として、前記目盛が複数設けられ、前記RFIDタグは、少なくとも2つの前記目盛の間に配置されている。
【0017】
本発明の1つの実施形態として、前記少なくとも2つの目盛は、前記バレルの前記胴部の中心軸に対して対称である。
【0018】
本発明の第2の態様としての薬液投与システムは、シリンジポンプと、前記シリンジポンプに設置されるプレフィルドシリンジとを有する薬液投与システムであり、前記プレフィルドシリンジは、薬液と、前記薬液を内包する筒状の胴部と、前記胴部の先端側に設けられ、前記薬液を排出するノズル部と、を有するバレルと、前記ノズル部の先端部に設けられた先端開口部を封止するキャップと、前記胴部の内周面を摺動するガスケットと、前記ガスケットに装着可能な押子と、矩形状に巻き回されているアンテナ線により構成されている通信用のアンテナ及びメモリを有し、前記胴部の外周面に対して位置が固定されているRFIDタグと、を備えるプレフィルドシリンジであって、前記バレルの前記胴部の外径が14ミリメートル~33ミリメートルであり、前記バレルの前記胴部の周方向に沿う、前記RFIDタグの前記アンテナの最大周方向長さが9ミリメートル~25ミリメートルであり、前記バレルの前記胴部の外周面の周方向長さが、前記RFIDタグの前記アンテナの前記最大周方向長さの2.0倍~7.0倍であり、前記シリンジポンプは、前記プレフィルドシリンジの前記押子を、前記胴部の先端側に向かう先端方向に駆動するシリンジ押子駆動部と、前記プレフィルドシリンジの前記RFIDタグの前記メモリに記憶されたデータセットを読み取るリーダと前記シリンジ押子駆動部を制御する制御部とを備える本体部と、前記プレフィルドシリンジの前記胴部の前記外周面を、前記胴部の軸に対して垂直な方向から支持する支持部と、前記支持部と対向し、前記支持部との間で前記胴部をクランプするクランプ部と、を有する。
【0019】
本発明の1つの実施形態として、前記クランプ部が前記プレフィルドシリンジを前記支持部と前記クランプ部との間でクランプする際に、前記胴部の前記外周面のうち前記クランプ部がクランプする部分は、前記RFIDタグが貼付されている部分とは異なる。
【0020】
本発明の1つの実施形態として、前記バレルは、前記胴部の基端部から突出するフランジ部を有し、前記胴部の軸方向において、前記RFIDタグの基端と、前記バレルの前記フランジの先端との距離が、15ミリメートル~40ミリメートルであり、前記クランプ部は、前記胴部の前記フランジ部の近傍に当接することで、前記プレフィルドシリンジを前記支持部とともにクランプする。
【0021】
本発明の1つの実施形態として、前記シリンジポンプの前記本体部は、前記クランプ部と対向する第1領域と、前記胴部の軸方向において、前記第1領域に隣接して、前記シリンジ押子駆動部に対して反対側に配置された第2領域とを有し、前記リーダは、前記RFIDタグのアンテナと通信する、リーダアンテナ線から構成されるリーダアンテナを含み、前記リーダアンテナの少なくとも一部が、前記第2領域に配置されている。
【0022】
本発明の1つの実施形態として、前記支持部の正面視において前記バレルの前記胴部の軸方向と直交する、前記リーダアンテナの中心線が、前記第2領域に配置されているとともに、前記支持部の正面視において、前記リーダアンテナの中心線が、前記RFIDタグの前記アンテナと重なる。
【0023】
本発明の第3の態様としての薬液投与システムは、プレフィルドシリンジが設置されるシリンジポンプであり、前記プレフィルドシリンジは、薬液と、前記薬液を内包する筒状の胴部と、前記胴部の先端側に設けられ、前記薬液を排出するノズル部と、を有するバレルと、前記ノズル部の先端部に設けられた先端開口部を封止するキャップと、前記胴部の内周面を摺動するガスケットと、前記ガスケットに装着可能な押子と、矩形状に巻き回されているアンテナ線により構成されている通信用のアンテナ及びメモリを有し、前記胴部の外周面に対して位置が固定されているRFIDタグと、を備えるプレフィルドシリンジであって、前記シリンジポンプは、前記プレフィルドシリンジの前記押子を、前記胴部の先端側に向かう先端方向に駆動するシリンジ押子駆動部と、前記プレフィルドシリンジの前記RFIDタグの前記メモリに記憶されたデータセットを読み取るリーダと前記シリンジ押子駆動部を制御する制御部とを備える本体部と、前記プレフィルドシリンジの前記胴部の前記外周面を、前記胴部の軸に対して垂直な方向から支持する支持部と、前記支持部と対向し、前記支持部との間で前記プレフィルドシリンジの前記胴部をクランプするクランプ部と、を有し、前記シリンジポンプの前記本体部は、クランプ部と対向する第1領域と、前記胴部の軸方向において、前記第1領域に隣接して、前記シリンジ押子駆動部に対して反対側に配置された第2領域とを有し、前記リーダは、前記RFIDタグの前記アンテナと通信する、リーダアンテナ線から構成されるリーダアンテナを含み、前記リーダアンテナの少なくとも一部が、前記第2領域に配置されている。
【0024】
本発明の1つの実施形態として、前記支持部の正面視において前記バレルの前記胴部の軸方向と直交する、前記リーダアンテナの中心線が、前記第2領域に配置されている。
【発明の効果】
【0025】
本開示によれば、シリンジポンプがデータを取得し易く、かつ、剥離し難いRFIDタグを備えるプレフィルドシリンジ及び薬液投与システムを提供することができる。また本開示によれば、当該プレフィルドシリンジに対応したシリンジポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】一実施形態として、プレフィルドシリンジ及びシリンジポンプを備える薬液投与システムを示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すプレフィルドシリンジを示す斜視図である。
【
図3】
図2に示すプレフィルドシリンジに貼付される情報記載ラベルを示す図である。
【
図4】プレフィルドシリンジに貼付されたRFIDタグと、シリンジポンプのリーダとを示すブロック図である。
【
図5】情報記載ラベルが貼付されたプレフィルドシリンジを得る方法の一例を示す図である。
【
図6】
図1に示すシリンジポンプの本体部の正面図の一部を拡大した拡大正面図である。
【
図7】
図1に示すプレフィルドシリンジ及びシリンジポンプの断面図である。
【
図8】他の実施形態のプレフィルドシリンジを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本開示に係るプレフィルドシリンジ、薬液投与システム及びシリンジポンプの実施形態について
図1~
図8を参照して説明する。各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
【0028】
図1は、一実施形態として、プレフィルドシリンジ200及びシリンジポンプ100を備える薬液投与システム1を示す斜視図である。また、
図2は、
図1に示すプレフィルドシリンジ200を示す斜視図である。
図3は、
図2に示すプレフィルドシリンジ200の貼付される情報記載ラベル300を示す図である。
図4は、プレフィルドシリンジ200に貼付されたRFIDタグ206と、シリンジポンプ100のリーダ31とを示すブロック図である。
図5は、情報記載ラベル300が貼付されたプレフィルドシリンジ200を得る方法の一例を示す図である。
図6は、
図1に示すシリンジポンプ100の本体部3の正面図の一部を拡大した拡大正面図である。
図7は、
図1に示すプレフィルドシリンジ200及びシリンジポンプ100の断面図である。より具体的に、
図7は、シリンジポンプ100にプレフィルドシリンジ200が装着されている状態において、プレフィルドシリンジ200の軸方向と直交する断面を示す断面図である。
図8は、他の実施形態のプレフィルドシリンジ600を示す斜視図である。
【0029】
図1に示すように、本実施形態の薬液投与システム1は、シリンジポンプ100と、シリンジポンプ100に装着可能なプレフィルドシリンジ200と、を備える。以下、それぞれの構成要素について説明する。
【0030】
[プレフィルドシリンジ200]
まず、プレフィルドシリンジ200の詳細について説明する。
図2に示すように、プレフィルドシリンジ200は、薬液201と、バレル202と、キャップ203と、ガスケット204と、押子205と、RFIDタグ206と、を備えている。
【0031】
薬液201は、例えば抗がん剤、麻酔剤、化学療法剤、輸血等、栄養剤等である。薬液201は、バレル202に内包されている。薬液201は、後述するように患者の体内に微量注入される。
【0032】
バレル202は、筒状の胴部202aと、ノズル部202bと、フランジ部202cと、を備えている。
【0033】
胴部202aは、薬液201を内包している。胴部202aの外径Dは、14ミリメートル~33ミリメートルである。また、胴部202aの外周面の周方向長さは、RFIDタグ206の後述するアンテナの最大周方向長さLcの2.0倍~7.0倍である。
【0034】
ノズル部202bは、胴部202aの先端側に設けられる。ノズル部202bの先端部には、先端開口部202b1が設けられる。先端開口部202b1から、薬液201が排出される。ノズル部202bには、チューブ207(
図1、
図2では二点鎖線で表示)が接続可能である。
【0035】
フランジ部202cは、胴部202aの基端部から、胴部202aの径方向Bの外側に向かって突出している。
【0036】
キャップ203は、ノズル部202bの先端部に設けられた先端開口部202b1を封止可能である。キャップ203は、ノズル部202bに装着可能であり、
図2は、キャップ203がノズル部202bから取り外され、先端開口部202b1が開放された状態を示す。
【0037】
ガスケット204は、胴部202aの内周面を摺動する。本実施形態のガスケット204は、先端が閉鎖され、基端が開放されている筒状体である。ガスケット204によって、バレル202内に、薬液201が収納される薬液収納部が形成される。本実施形態では、収納される薬液の量は、5ミリリットル~50ミリリットルである。なお一般に、収納される薬液の量(ミリリットル)は、プレフィルドシリンジ200の外径D(ミリメートル)と対応付けられており、例えばISO 11040-6(Prefilled syringes - Part 6: Plastic barrels for injectables)に規定されている。本実施形態では、収納可能な薬液の量が5ミリリットルのプレフィルドシリンジの場合、外径Dは14ミリメートルとされている。また、収納可能な薬液の量が10ミリリットルの場合、外径Dは17ミリメートルとされている。収納可能な薬液の量が20ミリリットルの場合、外径Dは22ミリメートルとされている。更に、収納可能な薬液の量が50ミリリットルの場合、外径Dは33ミリメートルとされている。
【0038】
押子205は、ガスケット204に装着可能である。押子205は、押子本体205aと、フランジ部205bと、を備えている。本実施形態では、押子本体205aの先端部が、ガスケット204の基端側から挿入された状態で、ガスケット204に固定可能である。押子本体205aとガスケット204との固定は、例えばねじ接合とすることができる。押子本体205aは、胴部202a内に挿入されており、胴部202a内で胴部202aの軸方向Aに移動可能である。フランジ部205bは、押子205の基端部で、押子本体205aから径方向Bの外側に向かって突出している。
【0039】
本実施形態では、RFIDタグ206は、後述する情報記載ラベル300の外面に貼付される。すなわち、本実施形態のRFIDタグ206は、情報記載ラベル300を介して胴部202aの外周面に貼付されている。なお、他の実施形態では、情報記載ラベル300を、RFIDタグ206の外面を覆うようにバレル202の胴部202aに貼り付ける構成としてもよい。
【0040】
RFIDタグ206は、胴部202aの周方向Cの全域に亘って取り付けられてはおらず、周方向Cの一部のみに取り付けられている。
【0041】
本実施形態では、バレル202の胴部202aの軸方向Aに沿う、RFIDタグ206の最大軸方向長さLaは、8ミリメートル~25ミリメートルである。本実施形態では、RFIDタグ206の基端は、バレル202のフランジ部202cの先端から、胴部202aの軸方向Aの先端側に向かう先端方向に、15ミリメートル~40ミリメートル(例えば24.8ミリメートル)離れて配置されている。本実施形態では、RFIDタグ206は、胴部202aの軸方向Aにおいて、ガスケット204の先端よりも基端側に配置される。具体的に、本実施形態のRFIDタグ206は、胴部202aの軸方向Aにおいて、未使用状態のプレフィルドシリンジ200のガスケット204の先端の位置よりも基端側にある。換言すれば、本実施形態のRFIDタグ206は、胴部202aの軸方向Aにおいて、ガスケット204の先端よりも更に先端側には位置していない。
図1に示すように、本実施形態では、シリンジポンプ100のクランプ部5がプレフィルドシリンジ200の外周面をクランプする部分(以下、クランプ当接部209と記載する。)は、RFIDタグ206が貼付されている部分よりも基端側である。
【0042】
例えばRFIDタグ206の形状は、胴部202aの外周面に対して位置が固定されている状態で、周方向長さLcが18ミリメートル、軸方向長さLaが18ミリメートルの矩形とすることができる。この他に、例えば、同状態で、周方向長さLcが25ミリメートル、軸方向長さLaが25ミリメートルの矩形としてもよい。また同状態で、周方向長さLcが12ミリメートル、軸方向長さLaが9ミリメートルの矩形としてもよい。
【0043】
RFIDタグ206は、
図3及び
図4に示すように、通信用のアンテナ206aとメモリ206bと制御部206cとを有する。
【0044】
図3に示すように、RFIDタグ206のアンテナ206aは、矩形状に巻き回されているアンテナ線により構成されている。
図2に示すように、RFIDタグ206を設置できる胴部202a上の領域は限られているが、アンテナ線を矩形状に巻き回すことで、アンテナ線を円形状に巻き回す構成と比較して、アンテナ線により形成されるループ面積を広く確保し易い。これにより、
図1及び
図7に示すように、プレフィルドシリンジ200が、シリンジポンプ100の支持部4に設置されているときに、プレフィルドシリンジ200のRFIDタグ206と、シリンジポンプ100のリーダ31とが、高い精度で位置合わせされていなくても、RFIDタグ206とリーダ31とは通信することができる。
【0045】
RFIDタグ206のアンテナ206aは、例えばNFC(Near Field Communication)のような、到達距離の短い無線通信によって通信を行う。
【0046】
RFIDタグ206がバレル202の胴部202aの外周面に対して位置が固定されている状態で、バレル202の胴部202aの周方向Cに沿う、RFIDタグ206のアンテナ206aの最大周方向長さLcは、9ミリメートル~25ミリメートルである。例えばアンテナ206aの外縁を、上記と同状態で、周方向長さ15ミリメートル、軸方向長さ15ミリメートルの矩形とすることができる。この他に、アンテナ206aの外縁を、例えば、上記と同状態で、周方向長さ25ミリメートル、軸方向長さ25ミリメートルの矩形としてもよい。
【0047】
RFIDタグ206の制御部206cは、メモリ206bからデータを読み出し、アンテナ206aにデータを送信させることができる。RFIDタグ206のアンテナ206aと、シリンジポンプ100のリーダ31のリーダアンテナ31aとの間の無線通信は通信可能距離が短い(例えば35mm以内)。そのため、プレフィルドシリンジ200のRFIDタグ206が、リーダ31のリーダアンテナ31aから所定の距離以上離れているときは、リーダ31のリーダアンテナ31aは、プレフィルドシリンジ200のRFIDタグ206と通信することができない。RFIDタグ206のメモリ206b及び制御部206cは、例えば、不揮発性メモリを含む集積回路(ICチップ)により構成することができる。
【0048】
図4に示すように、RFIDタグ206のアンテナ206aは、シリンジポンプ100のリーダ31のリーダアンテナ31aから発信される電磁波を受ける。この電磁波から、RFIDタグ206の動作電力を得ることができる。制御部206cは、RFIDタグ206のメモリ206b内のデータを読み出し、アンテナ206aを用いて当該データを電磁波に乗せてリーダ31のリーダアンテナ31aに返信(送信)させる。リーダ31のリーダアンテナ31aは、RFIDタグ206のアンテナ206aからの電磁波を受信する。そして、シリンジポンプ100の制御部31cは、受信した電磁波からデータを取り出すことで、RFIDタグ206のメモリ206bに記憶されているデータを取得し、シリンジポンプ100の記憶部31bに記憶させる。
【0049】
RFIDタグ206のメモリ206bには、例えば、プレフィルドシリンジ200に関して、薬液201の名称、個体ごとの識別データ、バレル202の寸法データ、押子205のストロークの寸法データ、などの各種データが記憶されている。
【0050】
図2に示すように、バレル202の胴部202aの外周面には、情報記載ラベル300が貼付されている。
図3に、胴部202aの外周面に貼付される前の、情報記載ラベル300を示す。
【0051】
情報記載ラベル300には、2つの目盛301が、胴部202aの外周面に貼付されているときに胴部202aの軸方向Aに沿うように設けられている(
図2参照)。より具体的に、本実施形態の2つの目盛301の刻みは、胴部202aの外周面に貼付されている状態で、胴部202aの軸方向Aに沿って配置されている。目盛301は、情報記載ラベル300が胴部202aの外周面に貼付されているときに胴部202a内の薬液201の量を示す。本実施形態では、
図2に示すように、情報記載ラベル300がバレル202の胴部202aの外周面に貼付されているときに、2つの目盛301は胴部202aの中心軸に対して対称となる。
【0052】
図3に示すように、情報記載ラベル300の2つの目盛301の間には、RFIDタグ206が貼付されている。本実施形態では、RFIDタグ206は情報記載ラベル300の外面に貼付されている。他の実施形態では、RFIDタグ206を情報記載ラベル300の内面に貼付することができる。
【0053】
本実施形態では、RFIDタグ206の一部が、2つの目盛301の一部と、情報記載ラベル300の長手方向において重複し、かつ情報記載ラベル300の短手方向にずれた位置に配置される。すなわち、
図2に示すように、情報記載ラベル300が胴部202aの外周面に貼付されているときに、RFIDタグ206の一部が、目盛301の一部と、バレル202の胴部202aの軸方向Aにおいて重複し、かつバレル202の胴部202aの周方向Cにずれた位置に配置される。
【0054】
情報記載ラベル300には、上述の目盛301の他に、薬剤名又は薬液の量が記載された情報領域302を設けることができる。
【0055】
情報記載ラベル300が貼付されたプレフィルドシリンジ200を得る方法の一例について、
図5に基づいて説明する。最初に、ロール状の台紙401を引き出す。この台紙401には、RFIDタグ206が一定間隔で設置されている。次に、領域R1で示すように、RFIDタグ206に各種情報を書き込む。その後、領域R2で示すように、RFIDタグ206を台紙401から取り外し、RFIDタグ206を情報記載ラベル300の外面に貼付する。それから、ドラム402上で、情報記載ラベル300の向きを適切に設定する。そして、ドラム403上で、RFIDタグ206に書き込まれた情報が正しいか検査する。最後に、ドラム404を使用して、プレフィルドシリンジ200の胴部202aの外周面に情報記載ラベル300を貼付する。
【0056】
[シリンジポンプ100]
次に、
図1、
図6及び
図7を参照してシリンジポンプ100について説明する。
【0057】
シリンジポンプ100は、例えば集中治療室等で使用される。また、シリンジポンプ100は、患者Pに対して、例えば抗がん剤、麻酔剤、化学療法剤、輸血等、栄養剤等の薬液の微量注入処置を、高い精度で比較的長時間行う際に、用いることができる。
【0058】
また、本実施形態のシリンジポンプ100は、スタンド等に対して着脱可能であり、スタンド等に装着された状態で使用することができる。シリンジポンプ100は、装着状態のプレフィルドシリンジ200の胴部202aの軸方向Aが水平方向になるように固定される。
【0059】
図1に示すように、シリンジポンプ100は、シリンジ押子駆動部2と、本体部3と、支持部4と、クランプ部5と、を備えている。
【0060】
シリンジ押子駆動部2は、プレフィルドシリンジ200の押子205を、胴部202aの先端側に向かう先端方向に駆動する。
【0061】
本実施形態のシリンジ押子駆動部2は、押圧部2aと、フランジ固定部2bと、を備える。
【0062】
押圧部2aは、装着状態のプレフィルドシリンジ200の押子205のフランジ部205bに対して、軸方向Aの基端側に配置される。そして、押圧部2aを軸方向Aの先端側に移動させることで、フランジ部205bの軸方向Aの基端側の面を、軸方向Aの先端側に押圧することができる。これにより、押子205を、装着状態のプレフィルドシリンジ200のバレル202に対して、軸方向Aの先端側に相対的に移動させることができる。
【0063】
フランジ固定部2bは、押子205のフランジ部205bを、押圧部2aに対して固定する。具体的に、本実施形態のフランジ固定部2bは、押圧部2aの軸方向Aの先端側に位置し、押圧部2aに対して取り付けられている。プレフィルドシリンジ200の装着状態では、押圧部2aとフランジ固定部2bとの間に、押子205のフランジ部205bが配置される。これにより、押子205は、シリンジ押子駆動部2の軸方向Aの移動に追従して、軸方向Aに移動可能となる。
【0064】
図6は、シリンジポンプ100の本体部3の正面図の一部を拡大した拡大正面図である。より具体的に、
図6は、本体部3のうち、プレフィルドシリンジ200を受ける後述の支持部4の位置を拡大して示している。なお、
図6では、説明の便宜上、フランジ部202cが本体部3のフランジ受け溝7(
図1参照)に嵌合している状態で、支持部4において適切に受けられているプレフィルドシリンジ200のバレル202、を図示している。本体部3は、プレフィルドシリンジ200のRFIDタグ206のメモリに記憶されたデータセットを受信するリーダアンテナ31aを含むリーダ31と、シリンジ押子駆動部2を制御する制御部13(
図1参照)とを備える。具体的に、本実施形態のリーダ31及び制御部13は、本体部3の内部に配置される。なお、シリンジポンプ100の制御部13と上述した制御部31cとを、別個の構成要素とすることができる。また、制御部31cと制御部13とを統合して同一の構成要素としてもよい。本実施形態では、リーダ31のリーダアンテナ31aはリーダアンテナ線から構成される。
図6に示すように、リーダアンテナ線から構成されるリーダアンテナ31aの外縁は矩形である。本実施形態では、リーダ31のリーダアンテナ31aの一部が、シリンジポンプ100の支持部4の正面視(
図6の本体部3の正面視と同じ)において、後述するシリンジポンプ100のクランプ部5(
図1参照)と対向する後述の第1領域3a1から軸方向Aにずれている。
【0065】
本実施形態では、本体部3は、クランプ部5と対向する第1領域3a1と、胴部202aの軸方向Aにおいて、第1領域3a1に隣接して、シリンジ押子駆動部2に対して反対側に配置された第2領域3a2とを有する。そして、リーダ31のリーダアンテナ31aの少なくとも一部が、第2領域3a2に配置されている。また、本実施形態では、支持部4の正面視(本実施形態では本体部3の正面視と同じ)において、バレル202の胴部202aの軸方向Aと直交する、リーダアンテナ31aの中心線lcaが、第2領域3a2に配置されている。さらに本実施形態では、支持部4の正面視において、リーダアンテナ31aの中心線lcaが、RFIDタグ206のアンテナ206aと重なる。なお、本実施形態ではリーダアンテナ31aの外縁が矩形であるため、リーダアンテナ31aの中心線lcaは、リーダアンテナ31aの外縁を構成する辺のうち、バレル202の胴部202aの軸方向Aに沿った2つの辺の各中心を通る線である。換言すれば、リーダアンテナ31aの中心線lcaは、プレフィルドシリンジ200の胴部202aの軸方向Aと直交して、リーダアンテナ31aのループ面積を二等分する線である。リーダアンテナの外縁が矩形でない場合には、プレフィルドシリンジの胴部の軸方向と直交し、リーダアンテナのループ面積を二等分する線を中心線とすればよい。
【0066】
リーダ31のリーダアンテナ31aは、後述する支持部4でプレフィルドシリンジ200を受けた状態で、電磁波を発信可能である。プレフィルドシリンジ200に貼付されたRFIDタグ206は当該電磁波に応答してデータを送信する。リーダ31のリーダアンテナ31aは当該データを受信することができる。
【0067】
更に、
図1に示すように、本実施形態の本体部3は、表示部32及び操作パネル部33を備えている。
【0068】
表示部32は、カラー表示することができる画像表示装置である。表示部32は、例えば、カラー液晶表示装置により構成することができる。表示部32は、日本語表記による情報表記だけでなく、必要に応じて複数の外国語による情報の表示を行うことができる。本実施形態の表示部32は、シリンジポンプ100の正面のうち、後述する支持部4の上側に設けられている。表示部32は、タッチセンサ等の入力デバイスを備えて、ユーザからの入力を受け付けてもよい。
【0069】
操作パネル部33は、シリンジポンプ100の正面のうち、支持部4の上側であって、上述の表示部32の右側に配置されている。操作パネル部33には、電源スイッチ33A、動作インジケータ33H、及び操作スイッチが配置されている。
図1には、操作スイッチの一例として、早送りスイッチ33B、開始スイッチ33C、停止スイッチ33D、表示切替スイッチ33E、戻る/消音スイッチ33F、及び確認スイッチ33Gを示している。
【0070】
上述の操作パネル部33での操作は、制御部13に入力され、制御部13からの命令により、シリンジポンプ100の各部位が動作する。
【0071】
更に、本実施形態の本体部3の中には、シリンジポンプ100の各部材を電気的に接続する各種配線、制御部からの命令を実行するための各種機構、RFIDタグ206以外の外部装置と無線又は有線による通信が可能な通信部、シリンジポンプ100の動作に必要な各種データ及び各種プログラムを記憶する記憶部、などが配置されている。
【0072】
図1に示すように、本実施形態の支持部4は、本体部3の正面に形成されている。また、本実施形態の支持部4は、プレフィルドシリンジ200の胴部202aの外周面を、胴部202aの中心軸に対して垂直な方向から支持する。
図7に示すように、本実施形態の支持部4は、胴部202aの外周面を受けるために、断面がほぼ半円形形状の凹状の湾曲面により構成されている。また、本実施形態の支持部4は、外径などの大きさの異なる複数の種類の胴部202aを受けることができる。
【0073】
図1に示すように、クランプ部5は、本体部3に形成されている支持部4と対向し、支持部4との間でプレフィルドシリンジ200の胴部202aをクランプする。本実施形態では、胴部202aの外周面のうち、クランプ部5がプレフィルドシリンジ200をクランプする部分であるクランプ当接部209(
図2参照)は、RFIDタグ206が貼付されている部分と異なり、RFIDタグ206が貼付されている部分よりも基端側である。
【0074】
図7に示すように、クランプ部5は、ベース6の長手方向(中心軸線O2に平行な方向)に移動可能に、ベース6に支持されている。そのため、クランプ部5をベース6の長手方向に移動させることにより、クランプ部5と、本体部3の正面側に設けられている支持部4と、の対向距離を変化させることができる。これにより、クランプ部5を、挟持位置と非挟持位置との間で移動させることが可能となる。
【0075】
クランプ部5の挟持位置とは、
図7に示すような、支持部4との間でプレフィルドシリンジ200の胴部202aを挟み込む位置である。また、クランプ部5の非挟持位置とは、挟持位置よりも支持部4から遠ざかるように離間し、支持部4との間で胴部202aを挟み込まない位置である。
【0076】
クランプ部5は、ベース6の長手方向において、支持部4に近づく方向にバネ部材等の付勢部材により常時付勢されているため、クランプ部5を挟持位置から非挟持位置に移動させる場合には、この付勢部材の付勢力に抗して移動させる。
【0077】
また、クランプ部5は、ベース6の長手方向に加えて、ベース6の中心軸線O2周りの周方向にも移動可能に、ベース6に支持されている。これにより、クランプ部5がベース6の長手方向に移動しないように、ベース6の長手方向の位置を固定することができる。具体的に、クランプ部5は、支持部4と対向する位置と、支持部4とは対向しない位置と、の間で、ベース6の中心軸線O2周りの周方向に回動可能である。この回動動作は、クランプ部5が挟持位置にある場合はできず、クランプ部5が非挟持位置にある場合に実行可能である。クランプ部5を、支持部4と対向しない角度にすることにより、支持部4の受け面にプレフィルドシリンジ200を配置し易い状態にすることができる。
【0078】
プレフィルドシリンジ200は、シリンジポンプ100に装着された装着状態(
図1参照)で、以下のように動作する。シリンジポンプ100により、押子205が、軸方向Aの先端側に向かって押圧される。これにより、押子205と連結されているガスケット204が、バレル202の胴部202a内を、軸方向Aの先端側に向かってスライド移動する。
【0079】
ガスケット204が胴部202a内を軸方向Aの先端側にスライド移動すると、胴部202a内の薬液201が圧縮される。薬液201は、この圧縮力により、胴部202aのノズル部202bを通じて排出される。シリンジポンプ100の使用状態では、プレフィルドシリンジ200のノズル部202bの先端開口部202b1に、チューブ207(
図1参照)が接続されている。また、
図1に示すように、チューブ207の遠位端には、患者Pに留置される留置針208が接続されている。そのため、胴部202a内の薬液201を、チューブ207及び留置針208を通じて、患者Pの体内へと送液することができる。
【0080】
図8には、他の実施形態のプレフィルドシリンジ600を示す。以下、プレフィルドシリンジ600と、
図2に示すプレフィルドシリンジ200とを比較して説明する。
図8の情報記載ラベル400の長手方向長さ比率は、
図2の情報記載ラベル300の長手方向長さ比率よりも小さい。長手方向長さ比率とは、胴部の軸方向Aにおけるバレル全長に対する、軸方向Aにおける情報記載ラベルの全長の比率を意味する。また
図8のRFIDタグ206は、
図2に示す構成と同様である。ただし、
図2におけるフランジ部202cとRFIDタグ206との間の軸方向Aにおける距離(例えば24.8ミリメートル)は、
図6におけるフランジ部202cとRFIDタグ206との間の軸方向Aにおける距離(例えば11ミリメートル)よりも大きい。なお、本実施形態においても、シリンジポンプ100のクランプ当接部209は、
図8のRFIDタグ206が貼付されている部分よりも基端側である。その他の点において、プレフィルドシリンジ600の構成は、プレフィルドシリンジ200の構成と同じであるため、説明を省略する。
【0081】
本開示の実施形態に係るプレフィルドシリンジ200若しくは600、又は薬液投与システム1では、バレル202の胴部202aの外径Dは、14ミリメートル~33ミリメートルである。またバレル202の胴部202aの周方向Cに沿う、RFIDタグ206のアンテナの最大周方向長さLcは、9ミリメートル~25ミリメートルである。さらに、胴部202aの外周面の周方向長さは、RFIDタグ206のアンテナの最大周方向長さの2.0倍~7.0倍である。
【0082】
これらの構成により、円筒状のプレフィルドシリンジ200又は600がシリンジポンプ100の支持部4に設置されているときに、プレフィルドシリンジ200のRFIDタグ206の位置と、シリンジポンプ100のリーダの位置と、が位置合わせされていなくても、RFIDタグ206とリーダ31とが通信できる。また、プレフィルドシリンジ200又は600の位置合わせが不要となるため、プレフィルドシリンジ200又は600の外周面に固定されているRFIDタグ206と、シリンジポンプ100の支持部4との間の摺動により、プレフィルドシリンジ200又は600のRFIDタグ206が破損することを抑制することができる。
【0083】
また、RFIDタグをプレフィルドシリンジの外周面に貼付する際に、プレフィルドシリンジの外周面は曲面であるため、貼付されたRFIDタグが変形して、RFIDタグが剥離するおそれがあった。これに対し、上述した構成により、プレフィルドシリンジ200又は600の外周面に貼付されているRFIDタグ206の剥離を抑制することができる。
【0084】
本開示の実施形態に係るプレフィルドシリンジ200又は600では、バレル202の胴部202aの軸方向に沿う、RFIDタグ206の最大軸方向長さLaは、8ミリメートル~25ミリメートルである。RFIDタグ206の最大軸方向長さLaを8ミリメートル以上とすることで、円筒状のプレフィルドシリンジ200又は600がシリンジポンプ100の支持部4に設置されているときに、RFIDタグ206とシリンジポンプ100のリーダとの通信をより確実に行うことができる。また、RFIDタグ206の最大軸方向長さLaを25ミリメートル以下とすることで、RFIDタグ206により目盛301が見にくくなることを防止するとともに、RFIDタグ206が胴部202aに内包された薬液201の視認性を妨げないようにできる。
【0085】
本開示の実施形態に係るプレフィルドシリンジ200又は600では、バレル202は、胴部202aの基端部から突出するフランジ部202cを有し、胴部202aは、フランジ部202cの近傍に、押子205を駆動するシリンジポンプ100のクランプ部5が当接するクランプ当接部209を有し、RFIDタグ206は、胴部202aの軸方向Aにおいて、クランプ当接部209よりも先端側に配置されている。これにより、シリンジポンプ100のクランプ部5がRFIDタグ206に接触することを防止して、RFIDタグ206の破損を防止することができる。
【0086】
本開示の実施形態に係るプレフィルドシリンジ200又は600では、胴部202aの軸方向において、RFIDタグ206の基端と、バレル202のフランジ部202cの先端との距離は、15ミリメートル~40ミリメートルである。胴部202aの軸方向において、RFIDタグ206の基端と、バレル202のフランジ部202cの先端との距離を15ミリメートル以上とすることで、シリンジポンプ100のクランプ部5がRFIDタグ206に接触することを防止して、RFIDタグ206の破損を防止することができる。また、胴部202aの軸方向において、RFIDタグ206の基端と、バレル202のフランジ部202cの先端との距離を40ミリメートル以下とすることで、目盛301が見にくくなることを防止するとともに、胴部202aに内包された薬液201の視認性を確保することができる。
【0087】
本開示の実施形態に係るプレフィルドシリンジ200又は600では、RFIDタグ206が、胴部202aの軸方向Aにおいて、ガスケット204の先端よりも基端側に配置されている。これにより、目盛301が見にくくなることを防止するとともに、胴部202aに内包された薬液201の視認性を確保することができる。
【0088】
本開示の実施形態に係るプレフィルドシリンジ200は、バレル202の胴部202aに貼付された情報記載ラベル300を更に備える。RFIDタグ206は、情報記載ラベル300の内面又は外面に貼付される構成とすることができる。これらの構成により、
図5に示すように、プレフィルドシリンジ200を製造する際に、情報記載ラベル300とRFIDタグ206とを一度にバレル202に貼付することができ、プレフィルドシリンジ200の生産効率を向上させることができる。
【0089】
プレフィルドシリンジ200が、RFIDタグ206の外面を覆うようにバレル202の胴部202aに貼付された情報記載ラベル300を備える構成としてもよい。これにより、胴部202aの外周面に対して固定されたRFIDタグ206が剥離することを防止することができる。
【0090】
本開示の実施形態に係るプレフィルドシリンジ200又は600では、情報記載ラベル300には、胴部202aの薬液201の量を示す目盛301が、バレル202の胴部202aの軸方向Aに沿って設けられており、RFIDタグ206の少なくとも一部は、目盛301の少なくとも一部と、バレル202の胴部202aの軸方向Aにおいて重複し、かつバレル202の胴部202aの周方向Cにずれた位置に配置されている。これにより、プレフィルドシリンジ200又は600の軸方向長さを長くすることなく、プレフィルドシリンジ200又は600上に目盛301とRFIDタグ206とを設けることができる。
【0091】
本開示の実施形態に係るプレフィルドシリンジ200又は600では、目盛301が複数設けられ、RFIDタグ206は、少なくとも2つの目盛301の間に配置されている。これにより、プレフィルドシリンジ200又は600がシリンジポンプ100に設置されたときに、少なくとも1つの目盛301を露出させ視認することができる。
【0092】
本開示の実施形態に係るプレフィルドシリンジ200又は600では、少なくとも2つの目盛301は、バレル202の胴部202aの中心軸に対して対称である。これにより、より確実に、少なくとも1つの目盛301を露出させ視認することができる。
【0093】
本開示の実施形態に係る薬液投与システム1では、シリンジポンプ100は、支持部4と対向し、支持部4との間でプレフィルドシリンジの200又は600の胴部202aをクランプするクランプ部5を有し、クランプ部5がプレフィルドシリンジ200又は600を支持部4とクランプ部5との間でクランプする際に、胴部202aの外周面のうちクランプ部5がクランプする部分であるクランプ当接部209は、RFIDタグ206が貼付されている部分とは異なる。これにより、シリンジポンプ100のクランプ部5がRFIDタグ206に接触することを防止して、RFIDタグ206の破損を防止することができる。
【0094】
本開示の実施形態に係る薬液投与システム1では、バレル202は、胴部202aの基端部から突出するフランジ部202cを有し、胴部202aの軸方向において、RFIDタグ206の基端と、バレル202のフランジ部202cの先端との距離が、15ミリメートル~40ミリメートルであり、クランプ部5は、胴部202aのフランジ部202cの近傍に当接することで、プレフィルドシリンジ200又は600を支持部4とともにクランプする。胴部202aの軸方向において、RFIDタグ206の基端と、バレル202のフランジ部202cの先端との距離を、15ミリメートル以上とするとともに、シリンジポンプ100のクランプ部5が、胴部202aのフランジ部202cの近傍であるクランプ当接部209に当接することで、クランプ部5がRFIDタグ206に接触することを防止して、RFIDタグ206の破損を防止することができる。また、胴部202aの軸方向において、RFIDタグ206の基端と、バレル202のフランジ部202cの先端との距離を、40ミリメートル以下とすることで、目盛301が見にくくなることを防止するとともに、胴部202aに内包された薬液201の視認性を確保することができる。
【0095】
本開示の実施形態に係る薬液投与システム1では、シリンジポンプ100の本体部3は、クランプ部5と対向する第1領域3a1と、胴部202aの軸方向Aにおいて、第1領域3a1に隣接して、シリンジ押子駆動部2に対して反対側に配置された第2領域3a2とを有し、リーダ31は、RFIDタグ206のアンテナ206aと通信する、リーダアンテナ線から構成されているリーダアンテナ31aを含み、リーダアンテナ31aの少なくとも一部が、第2領域3a2に配置されている。つまり、リーダアンテナ31aの少なくとも一部が、クランプ部5と対向する第1領域3a1ではない、第2領域3a2に配置されている。この構成により、リーダアンテナ31aは、RFIDタグ206のデータセットを確実に読み取ることができる。なお、プレフィルドシリンジ200又は600は、RFIDタグ206の少なくとも一部が第2領域3a2と対向する位置となるように、シリンジポンプ100に対して設置される。
【0096】
本開示の実施形態に係る薬液投与システム1では、支持部4の正面視においてバレル202の胴部202aの軸方向と直交する、リーダアンテナ31aの中心線lcaが、第2領域3a2に配置されているとともに、支持部4の正面視において、リーダアンテナ31aの中心線lcaが、RFIDタグ206のアンテナと重なる。ここで、リーダアンテナ31aの中心線lcaの位置は、リーダアンテナ31aが発生させる磁束の磁束密度が最も高くなる位置とほぼ一致することが好ましい。そのため、リーダアンテナ31aの中心線lcaをRFIDタグ206のアンテナと重ねることで、リーダ31は、より確実にRFIDタグ206のデータセットを読み取ることができる。
【0097】
本開示の実施形態に係るシリンジポンプ100は、支持部4と対向し、支持部4との間でプレフィルドシリンジ200の胴部202aをクランプするクランプ部5を有し、シリンジポンプ100の本体部3は、胴部202aのクランプ部5と対向する第1領域3a1と、胴部202aの軸方向Aにおいて、第1領域3a1に隣接して、シリンジ押子駆動部2に対して反対側に配置された第2領域3a2とを有し、リーダ31は、RFIDタグ206の前記アンテナと通信する、リーダアンテナ線から構成されているリーダアンテナ31aを含み、リーダアンテナ31aの少なくとも一部が、第2領域3a2に配置されている。これにより、リーダアンテナ31aの少なくとも一部が、クランプ部5と対向する第1領域3a1ではない、第2領域3a2に配置されているため、リーダアンテナ31aは、RFIDタグ206のデータセットを読み取ることができる。また、支持部4とクランプ部5とでプレフィルドシリンジ200をクランプする際に、RFIDタグ206がクランプ部5と接触して破損することを防止することができる。なお、プレフィルドシリンジ200又は600は、RFIDタグ206の少なくとも一部が第2領域3a2と対向する位置となるように、シリンジポンプ100に対して設置される。
【0098】
さらに、本開示の実施形態に係るシリンジポンプ100では、支持部4の正面視においてバレル202の胴部202aと直交する、リーダアンテナ31aの中心線lcaが、第2領域3a2に配置されている。これにより、リーダ31は、シリンジポンプ100のRFIDタグ206のデータを確実に読み取ることができる。
【実施例0099】
次に、本開示の実施形態に係るプレフィルドシリンジを試作し、その性能を評価したので、以下に説明する。
【0100】
本実施例では、バレルの胴部の外径が異なる6つのプレフィルドシリンジ1-6を試作した。プレフィルドシリンジ1-6のバレルの胴部の外径はそれぞれ、11ミリメートル、14ミリメートル、17ミリメートル、22ミリメートル、33ミリメートル及び35.5ミリメートルである。
【0101】
<RFIDタグ貼付に関する検証>
プレフィルドシリンジ1-6それぞれのバレルの胴部の外周面に、RFIDタグ1-6を貼付して、その後剥離しないか検証した。RFIDタグ1-5の、アンテナ、メモリ及び制御部を含むタグ本体の形状と、アンテナ線の外縁とは矩形である。また、RFIDタグ6のタグ本体の形状は外径28ミリメートルの円形であり、アンテナ線の外縁は外径25ミリメートルの円形である。RFIDタグ1-6のタグ本体の寸法と、アンテナの寸法とを表1に示す。また表1には、プレフィルドシリンジのバレルの胴部の外周面の周方向長さを、RFIDタグのアンテナの最大周方向長さで割った値(表1では「シリンジ-タグ周方向長さ比」と記載する)を示す。本実施例では、RFIDタグ1-6を、プレフィルドシリンジ1-6の胴部の外周面に貼付して、その後剥離しないか検証した。表1の「○」は、RFIDタグが剥離しなかった場合を示す。「×」は、RFIDタグのサイズが大きくて貼付できなかった場合や、RFIDタグを貼付した後に剥離した場合等であり、言い換えれば、RFIDタグをプレフィルドシリンジに適切に貼付できなかった場合を示す。
【0102】
<RFIDタグ読取に関する検証>
RFIDタグ1-6をプレフィルドシリンジ1-6のバレルの外周面の胴部の外周面に貼付した状態で、プレフィルドシリンジ1-6それぞれを
図1に示すシリンジポンプ100に設置した。ここで、貼付されたRFIDタグ1-6は、シリンジポンプ100のリーダ31から最も離れた位置に、すなわち
図1においてRFIDタグ206が手前側を向くように配置した。このような状態で、シリンジポンプ100のリーダ31が、RFIDタグ1-6のデータを読み取ることができるかを、複数回検証した。表1の「○」は全ての場合でRFIDタグのデータを読み取ることができたことを示す。「△」はRFIDタグのデータを読み取ることができない場合があったことを示す。さらに「-」は、プレフィルドシリンジのバレルの胴部の外周面にRFIDタグを適切に貼付できなかったため、本検証を行わなかったことを示す。
【0103】
【0104】
表1から明らかなように、アンテナを矩形状に巻き回されているアンテナ線により構成し、バレルの胴部の外径を14ミリメートル~33ミリメートルとし、バレルの胴部aの周方向に沿う、RFIDタグのアンテナの最大周方向長さLcを9ミリメートル~25ミリメートルとし、胴部の外周面の周方向長さをRFIDタグ206のアンテナの最大周方向長さの2.0倍~7.0倍としたプレフィルドシリンジは、いずれも、その他のプレフィルドシリンジに比して、シリンジポンプがデータを取得し易く、かつ貼付されたRFIDタグが剥離し難いことがわかった。
前記胴部の軸方向において、前記RFIDタグの基端と、前記バレルの前記フランジ部の先端との距離が、15ミリメートル~40ミリメートルである、請求項3に記載のプレフィルドシリンジ。