(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023942
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】エンドミル
(51)【国際特許分類】
B23C 5/10 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
B23C5/10 B
B23C5/10 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023220010
(22)【出願日】2023-12-26
(62)【分割の表示】P 2019238246の分割
【原出願日】2019-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000152527
【氏名又は名称】日進工具株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健志
(72)【発明者】
【氏名】高野 昌之
(57)【要約】
【課題】R形状部分を有する底刃による加工精度と加工面粗さを向上できる。
【解決手段】ボールエンドミル1は、中心軸線O回りに回転可能な工具本体2の先端側に切刃部3を備えた。切刃部3の先端面に形成されていて2枚のR刃5を対向配置させ、R刃5の回転方向前方側にR刃5のすくい面8を形成するギャッシュ溝7を設けた。R刃5にバックテーパ角を有する外周刃13を設け、外周刃13の回転方向前側に切り屑排出用のフルート溝16を設けた。R刃5は切刃部3の先端部から1/4円弧の交差部rに角度θの範囲の円弧刃5aを延長させた。円弧刃5aの終端部sからバックテーパつなぎ刃13dを介して外周刃13を接続させた。ギャッシュ溝7は、先端部pからフルート溝16との交差稜線部20までギャッシュ面を形成し、このギャッシュ面は円弧刃5a及びバックテーパつなぎ刃13dのすくい面を形成している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線回りに回転可能な工具本体と、前記工具本体の先端側に該工具本体と一体に形成された切刃部と、を備え、
前記切刃部は、R形状部分を有する底刃と、該底刃から前記工具本体の基端側に向かって捻れる外周刃と、を有し、
前記底刃のギャッシュ面が前記R形状部分を超えて前記外周刃まで延びている、
エンドミル。
【請求項2】
前記底刃は、前記切刃部の先端部から1/4円弧を超える長さのR刃を有し、
前記底刃のギャッシュ面は、前記R刃の終端部からさらに延びて前記外周刃の一部をなす部分まで延びている、
請求項1に記載のエンドミル。
【請求項3】
前記1/4円弧を超える長さが前記R刃の半径の0.02~0.2の長さ範囲である、
請求項2に記載のエンドミル。
【請求項4】
前記底刃の回転方向前方側に形成されていて前記底刃のすくい面を有するギャッシュ溝と、該外周刃の回転方向前側に形成されたフルート溝と、をさらに有し、
前記ギャッシュ溝は、前記工具本体の先端部から前記フルート溝との交差部までの距離が前記切刃部の半径長さより長く設定されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載のエンドミル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば外周面に外周刃と外周フルート溝が設けられ、工具本体の先端面にR形状部分を有する底刃が形成されたエンドミルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に精密機械加工分野において、金型や部品等を切削加工するために例えばボールエンドミルやラジアスエンドミル等が用いられている。例えば
図8に記載されたボールエンドミル100では、工具本体101の先端面に180度対向して配設された1/4円弧状の2枚のR刃102と、R刃102に続いて基端側に配設された外周刃103とを有している。外周刃103の先端側部分にはバックテーパ刃が形成されている。R刃102の外径寸法は工具本体の直径Dと同一かより大きい寸法とされている。
【0003】
R刃102の回転方向前方にはR刃102のすくい面104aを有するギャッシュ溝104が形成されている。また、外周刃103の回転方向前方にはフルート溝105が形成されている。R刃102と外周刃103との接続部106にギャッシュ溝104とフルート溝105の境界をなす交差稜線部107が形成されている。
そして、ボールエンドミル100を被削材に切り込ませて横送りすることで、回転するR刃102によって金型等の被削材を切削加工する。R刃102で生成された切り屑はギャッシュ溝104に形成されたすくい面104aから外部に排出される。このようなボールエンドミルは例えば特許文献1等にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ギャッシュ溝104とフルート溝105の交差稜線部107にR刃102と外周刃103の接続部106を精度良く形成することは、困難であった。そのため、R刃102における接続部106近傍部分の加工精度が低下し易いという問題があった。
また、ボールエンドミル100で被削材の切削加工を行う場合、R刃102と外周刃103の接続部106付近に被削材に対する当り面があるとR刃102のすくい面104aと外周刃103のすくい面105aの境界付近のR刃102で切削加工する。この場合、2つのすくい面104a、105aは交差稜線部107で仕切られてすくい面とすくい角が相違しているため、R刃102による切削加工とそのすくい面104aからフルート溝105への切屑流れがスムーズにいかず、加工精度と加工面粗さを悪化させるという問題もある。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、R形状部分を有する底刃のR形状部分の精度と加工面粗さを向上できるようにしたエンドミルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるエンドミルは、中心軸線回りに回転可能な工具本体と、前記工具本体の先端側に該工具本体と一体に形成された切刃部と、を備え、前記切刃部は、R形状部分を有する底刃と、該底刃から前記工具本体の基端側に向かって捻れる外周刃と、を有し、前記底刃のギャッシュ面が前記R形状部分を超えて前記外周刃まで延びていることを特徴とする。
【0008】
また、ギャッシュ面は底刃のすくい面と底刃に接続されたバックテーパつなぎ刃のすくい面を形成していることが好ましい。
底刃や外周刃のバックテーパつなぎ刃で切削された切り屑はそれぞれギャッシュ面のすくい面を走行してフルート溝側に流れるため、切り屑の走行が阻害されることなく切り屑流れがスムーズで切削性を向上できる。
【0009】
また、底刃は切刃部の先端部から1/4円弧を超える長さのR刃を有し、底刃に接続されたバックテーパつなぎ刃を介して外周刃に接続されていることが好ましい。
底刃のR刃とバックテーパつなぎ刃の境界をなす終端部が底刃の1/4円弧部分より基端側に延びて形成されているため、R刃の加工が容易で加工精度が高く、R刃の1/4円弧部付近による切削加工の加工精度が良好である。
【0010】
また、底刃に接続されたバックテーパつなぎ刃は外周刃の一部をなし、ギャッシュ面はバックテーパつなぎ刃と外周刃との接続部まで延びていることが好ましい。
底刃及びバックテーパつなぎ刃の間の終端部やバックテーパつなぎ刃及び外周刃の接続部の位置精度が低くても、これらは外周刃のバックテーパつなぎ刃上に形成されているため、工具のR精度を劣化させることがなく、仕上げ加工時の加工精度を低下させない。
【0011】
また、フルート溝のねじれ角はギャッシュ溝のねじれ角と同一またはそれ以上の大きさに設定されていることが好ましい。
ギャッシュ溝のギャッシュ面を走行する切り屑は、同一またはそれ以上のねじれ角で捩じれるフルート溝をスムーズに走行して排出される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るエンドミルによれば、ギャッシュ溝は切刃部の先端からフルート溝との交差部まで延びた距離が切刃部の半径長さより長いギャッシュ面を形成しているため、底刃の基端側の半径長さ部分で切削加工された切り屑はギャッシュ面からなるすくい面を走行して外部に流れる。そのため、底刃の基端側の半径長さ部分での切削性が良好でギャッシュ面に沿った切り屑流れがスムーズであり、被削材の加工精度と加工面粗さを向上できる。しかも、底刃の加工精度が高い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第一実施形態によるボールエンドミルの切刃部を示す先端面図である。
【
図2】
図1に示すボールエンドミルのギャッシュ溝とフルート溝を示す側面図である。
【
図3】R刃のすくい面及び逃げ面を示す側面図である。
【
図4】ボールエンドミルの切刃部におけるR刃及び外周刃を示す側面図である。
【
図6】本発明の第二実施形態によるラジアスエンドミルの側面図である。
【
図8】従来のボールエンドミルの切刃部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の各実施形態によるR刃を有するエンドミルについて添付図面に基づいて説明する。
図1乃至
図5は本発明の第一実施形態による外周フルート溝を有するボールエンドミル1を示すものである。
図1乃至
図3において、本実施形態によるボールエンドミル1は、略円柱状に形成されていて中心軸線Oを中心に回転される工具本体2とその先端部に形成された切刃部3とを備えている。
このボールエンドミル1は機械部品や金型等の高硬度材や非鉄金属、一般鋼材等を切削加工するのに用いられる。本明細書では工具本体2の中心軸線Oに沿った切刃部3側を先端側、先端といい、主軸に連結する反対側を基端側、基端というものとする。
【0015】
図1及び
図4において、ボールエンドミル1は切刃部3の先端面4に略1/4円弧より長い円弧状の底刃として複数、例えば2枚のR刃5が180度対向する位置に形成されている。工具本体2の外径をDとした場合、R刃5の半径をRとして2R≧Dに設定されている。しかも、R刃5は芯上がりに形成されている。或いは、R刃5は芯下がりでもよい。
図2及び
図3に示す切刃部3において、各R刃5の回転方向前方側にはギャッシュ溝7が形成されている。R刃5は凸円弧状に形成され、側面視で先端側から基端側に向けて次第に回転方向後方側に捩じれるようにねじれ角αを有している。ギャッシュ溝7も同様にねじれ角αで回転方向後方側にねじれている(
図2参照)。
【0016】
R刃5の基端側に形成された外周刃13の回転方向前方側にはフルート溝16が形成されている。外周刃13とフルート溝16も先端側から基端側に向けて次第に回転方向後方側に螺旋状に捩じれるようにねじれ角βを有している。R刃5のねじれ角αは外周刃13のねじれ角βと同一またはより小さく形成されている。外周刃13のねじれ角βをR刃5のねじれ角α以上の大きさに設定することで、R刃5で生成された切り屑の排出性をスム
ーズにしている。
【0017】
ギャッシュ溝7におけるR刃5の回転方向前方を向くギャッシュ面にすくい面8が形成されている。このすくい面8は凹円弧面状に形成されていてもよいし、平面状または凸円弧面状に形成されていてもよい。本実施形態ではR刃5のすくい面8は正のすくい角を有する凸円弧状に形成されているものとする。
R刃5の回転方向後方側には逃げ面として正の逃げ角を有する二番逃げ面9と三番逃げ面10が順次形成されている。R刃5及び外周刃13の後述するバックテーパつなぎ刃13dのそれぞれの逃げ面は二番逃げ面9とされ、逃げ角が同一に形成されている。三番逃げ面10の逃げ角は二番逃げ面9の逃げ角より大きい逃げ角を有している。また、フルート溝16における外周刃13の回転方向前方側には外周刃13のすくい面17が形成されている。
【0018】
図4及び
図5に示すように、R刃5は中心軸線Oとの交差部である先端部pから基端側に向けて半径Rを持って略1/4円弧状に形成された基部切刃5bを有している。更に、R刃5は基部切刃5bに加えて、交差部rの1/4円弧より基端側に所定距離長い終端部sまで半径Rの円弧刃5aを有している。
円弧刃5aは交差部rから終端部sまで中心点qを中心とした長さmの円弧とされており、交差部rよりも中心軸線O側に角度θだけ湾曲している。しかも、切刃部3はR刃5の交差部rの位置で最大外径2Rを有している。
【0019】
R刃5の終端部sと外周刃13との間はバックテーパつなぎ刃13dによって接続されている。外周刃13とバックテーパつなぎ刃13dとは接続部12によって同一線状に連結されている。バックテーパ状に形成された外周刃13の長手方向中間部分には段付きのアンダーカット部13aが形成されている。アンダーカット部13aと接続部12との間の外周刃13は基端側に向けて外径が次第に縮径するバックテーパ刃13bとされ、アンダーカット部13aの基端側部分13cは外径寸法が縮径しないで一定に保持されている。或いは、基端側部分13cは外径寸法が縮径されていてもよい。
外周刃13のバックテーパつなぎ刃13dとバックテーパ刃13bは例えば直線状のバックテーパ形状を有しており、中心軸線Oに対してバックテーパ角度θで傾斜している。ここで、円弧刃5aとバックテーパつなぎ刃13dはR刃5を延長させて外周刃13に接続する延長部14とされている。バックテーパつなぎ刃13dは外周刃13の一部を構成している。なお、外周刃13のバックテーパ刃13bとバックテーパつなぎ刃13dは円弧状に形成されていてもよい。また、バックテーパつなぎ刃13dとバックテーパ刃13bは接続部12を境に異なる角度に形成されていてもよい。
【0020】
次にR刃5における交差部rと接続部12の間の延長部14について
図4及び
図5により詳述する。
R刃5は切刃部3の先端部pから外周面側に向けて1/4R円弧状に形成された交差部rを超えて終端部sまで長さmだけ半径Rの円弧状に延びている。R刃5は中心点qから先端部pまでの半径長さRで先端部pから交差部rまでの90度の角度範囲による1/4円弧状長さに加えて、角度θだけ円弧状長さmを延長した円弧刃5aを有している。しかも、R刃5は交差部rを介した基部切刃5bと円弧刃5aに継ぎ目がない。
円弧刃5aの長さmを設定する中心点qの角度θは例えば0°<θ≦10°の範囲に設定されている。本実施形態では角度θ=1°に設定されている。円弧刃5aの角度θは外周刃13のバックテーパ角度θと等しく設定したが、異なっていてもよい。
【0021】
ここで、角度θが0°以下であるとR刃5の終端部sの位置を交差部rから基端側に延長できない。また、角度θが10°を超えるとR刃5の終端部sが交差部rから基端側に長くなりすぎて切刃部3が縮径され、切刃部3の首下径が小さくなり工具強度が小さくな
る。
バックテーパつなぎ刃13dはR刃5の終端部sから接続部12までの長さnに亘って延長したものであり、長さnの切刃は外周刃13の一部を形成している。中心点qから終端部sまでの仮想線はバックテーパつなぎ刃13dに直角に形成されている。
【0022】
R刃5の延長部14は、長さmの円弧刃5aと直線状長さnのバックテーパつなぎ刃13dとを追加した長さ(m+n)を有しており、延長幅Lに設定されている。半径Rの円弧刃5aは終端部sで終了し、更にバックテーパつなぎ刃13dの長さnだけ基端側に延長して接続部12に到達している。接続部12はギャッシュ溝7とフルート溝16の交差稜線部20に接続されている。
【0023】
ここで、延長幅LはR刃5の半径Rの0.02R~0.2Rの長さ範囲に設定されている。延長幅Lが0.02Rより小さいと加工誤差によって0になる可能性があり、加工が困難になる。他方、延長幅Lが0.2Rより大きいと直径Dが縮径されるためフルート溝16が小さくなるおそれがあり、切り屑の排出性が悪くなり切削抵抗が大きくなる。
【0024】
そのため、延長したギャッシュ溝7のギャッシュ面はR刃5の延長した円弧刃5aと外周刃13のバックテーパつなぎ刃13dの各すくい面を兼ねており、すくい面8の一部を形成している。そのため、ギャッシュ面からなるR刃5のすくい面8は、R刃5の円弧刃5aと外周刃13のバックテーパつなぎ刃13dまで滑らかに延長されており、しかも継ぎ目がない。
しかも、R刃5と外周刃13との接続部12は、従来技術におけるR刃5の1/4円弧部をなす交差部rから基端側に延長部14の延長幅L(=m+n)だけ移動し、R刃5と外周刃13をそれぞれ延長させている。これに関連して、ギャッシュ溝7のギャッシュ面であるR刃5のすくい面8が交差部rから接続部12まで延長している。終端部sを挟むR刃5の円弧刃5aとバックテーパつなぎ刃13dで生成された切り屑は、すくい面8のすくい角が同一であるため、スムーズに切削されて基端側に送られる。
【0025】
本実施形態によるボールエンドミル1は上述した構成を備えており、次にその使用方法について説明する。
ボールエンドミル1を中心軸線O回りに回転させつつ、等高線仕上げ加工において被削材に直角の立壁加工を行う。切り込み時には切刃部3のR刃5で被削材を切削加工することで、切削された切り屑はギャッシュ溝7のすくい面8を走行して、基端側に流れて外部に排出される。しかも、フルート溝16はギャッシュ溝7と同一ねじれ角αまたはより大きいねじれ角βで回転方向後方側に捩じれているため、切り屑はギャッシュ溝7からフルート溝16へスムーズに流れて外部に排出される。
【0026】
そして、切刃部3の中心軸線O方向の縦送りによる切り込みが進んで交差部r以上送り込まれ、横送りしてR刃5で被削材を切削加工すると、R刃5の交差部rから終端部sまでの円弧刃5aと外周刃13のバックテーパつなぎ刃13dの領域でも被削材の切削加工を行う。
この場合、R刃5の交差部rから終端部sまでの円弧刃5aとバックテーパつなぎ刃13dのすくい面8はすくい角が同一角度に形成されているため、切り屑がスムーズにすくい面8上を流れて、交差稜線部20を乗り越えてフルート溝16側に送られる。そのため、R刃5の先端部pから交差部rまでの1/4円弧での切削と、交差部rから終端部s及び接続部12までの延長部14での切削加工の切削性がよく、切り屑排出もスムーズである。
【0027】
ところで、R刃5の終端部s及び接続部12を含む延長部14の形成位置に誤差があると、この部分で加工誤差を生じることがある。しかしながら、円弧刃5aの終端部s及び
終端部sから接続部12までのバックテーパつなぎ刃13dでの領域は、R刃5の最も外周側に突出した交差部rに対して内側に引っ込んでいる。そのため、R刃5の横方向に最も突出した交差部rで加工面を仕上げ加工するため加工誤差の跡が残らない。そのため、延長部14の形成位置に誤差があっても加工誤差を吸収できる。
【0028】
上述したように、本実施形態によるボールエンドミル1によれば、次の作用効果を奏する。
R刃5を先端部pから1/4円弧をなす交差部rに加えて終端部sまで角度θ分の長さmだけ円弧刃5aを延ばした。そのため、R刃5の円弧形状の製造誤差を抑制できてR刃5の加工精度が向上し、交差部rを超えた終端部sまで精度の良い円弧形状を形成できる。
また、R刃5を1/4円弧の交差部rを超えて終端部sまで円弧刃5aとして延ばし、更にバックテーパつなぎ刃13dを備えた延長部14を形成して接続部12を介して外周刃13に接続し、ギャッシュ溝7を接続部12まで延ばした。そのため、追加の円弧刃5aとバックテーパつなぎ刃13dのすくい面8がギャッシュ溝7のギャッシュ面で継ぎ目のない同一すくい角に形成され、生成された切り屑をすくい面8にスムーズに走行できるため加工精度と加工面粗さが向上する。
【0029】
また、円弧状のR刃5を、交差部rから円弧刃5aを延長させてバックテーパつなぎ刃13dを介して外周刃13と接続部12で接続させた。そのため、終端部sや接続部12の形成位置に誤差があっても、R刃5の最も外側に突出した交差部rに対して内側に引っ込んでいるため被削材の加工面に加工誤差が残らない。切刃部3に形成したギャッシュ溝7のねじれ角αに対してフルート溝16のねじれ角βを同一またはより大きく形成したため、R刃5で生成された切り屑をスムーズに排出できる。
また、R刃5に続く円弧刃5aの角度θを0°より大きく10°以下の範囲に設定したため、切削性を向上できる上に、切刃部3の首下径が小さくなるのを抑制して工具強度を確保できる。
【0030】
以上、本発明の実施形態によるボールエンドミル1について説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の異なる形態や態様を採用できることはいうまでもない。これらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
以下に本発明の他の実施形態や変形例について説明するが、上述した実施形態の部分や部品と同一または同様なものについては同一の符号を用いて説明を行うものとする。
【0031】
図6及び
図7は第二実施形態によるラジアスエンドミル25を示すものであり、第一実施形態によるボールエンドミル1と同様な構成を有している。
本実施形態によるラジアスエンドミル25では、中心軸線O回りに回転可能な略円柱状の工具本体2の切刃部3に形成された底刃26の外周側コーナー部に半径Rで1/4円弧状をなすR刃5(R形状部分)が形成されている。R刃5における基部切刃5bの基端側端部をなす交差部rの延長上に終端部sまで角度θ分、半径Rの円弧刃5aが形成されている。
更に、R刃5の終端部sに続いて直線状のバックテーパつなぎ刃13dが接続部12まで延び、接続部12の基端側に外周刃13が形成されている。外周刃13のバックテーパ刃13bとバックテーパつなぎ刃13dはバックテーパ角度θを有しており、同一の直線状に形成されているが、円弧状に形成されていてもよい。或いは、外周刃13のバックテーパ角度θを接続部12の位置で内側に向けた異なる角度に変えてもよい。
【0032】
また、R刃5の回転方向前方側にギャッシュ溝7が形成され、R刃5のすくい面8を形成するギャッシュ溝7のギャッシュ面は接続部12まで延びている。外周刃13の回転方
向前方側にもフルート溝16が形成されている。
そのため、本第二実施形態によるラジアスエンドミル25においても第一実施形態によるボールエンドミル1と同様な構成を有し同様の作用効果を奏する。
【0033】
なお、上述した各実施形態では、追加の円弧刃5aのすくい面とバックテーパつなぎ刃13dのすくい面を、R刃5の基部切刃5bのすくい面8と同一すくい角に設定したが、基部切刃5bのすくい面8のすくい角と相違していてもよい。また、円弧刃5aのすくい面とバックテーパつなぎ刃13dの各すくい面のすくい角は互いに異なっていてもよい。
また、延長部14としてR刃5の円弧刃5aと外周刃13のバックテーパつなぎ刃13dとを形成したが、バックテーパつなぎ刃13dを設けることなく、R刃5の終端部sを直接外周刃13のバックテーパ刃13bに接続部12を介して接続させてもよい。
なお、上述した各実施形態によるボールエンドミル1、ラジアスエンドミル25において、切刃部3に形成する底刃は2枚に限定されることなく、3枚以上でもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 ボールエンドミル
2 工具本体
3 切刃部
5 R刃(底刃)
5a 円弧刃(底刃)
5b 基部切刃(底刃)
7 ギャッシュ溝
8 すくい面
9 二番逃げ面
12 接続部
13 外周刃
13b バックテーパ刃(外周刃)
13d バックテーパつなぎ刃(外周刃)
16 フルート溝
17 外周刃のすくい面
20 交差稜線部
25 ラジアスエンドミル
26 底刃
p 先端部
q 中心点
r 交差部
s 終端部
O 中心軸線