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特開2024-23959香り立ちが増強されたノンアルコール炭酸飲料およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023959
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】香り立ちが増強されたノンアルコール炭酸飲料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20240214BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20240214BHJP
【FI】
A23L2/00 B
A23L2/00 T
A23L2/38 S
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023220624
(22)【出願日】2023-12-27
(62)【分割の表示】P 2020065024の分割
【原出願日】2020-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】工藤 あずさ
(72)【発明者】
【氏名】四元 祐子
(72)【発明者】
【氏名】金谷 知華
(57)【要約】
【課題】香り立ちが増強された、所定量の香気成分を含有するノンアルコール炭酸飲料の提供。
【解決手段】所定量の香気成分を含有するノンアルコール炭酸飲料であって、該ノンアルコール炭酸飲料のpH値と、該ノンアルコール炭酸飲料から炭酸を除去した後に測定されるpH値との差(ΔpH)が0.04以上である、ノンアルコール炭酸飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
香気成分を含有するノンアルコール炭酸飲料であって、該ノンアルコール炭酸飲料のpH値と、該ノンアルコール炭酸飲料から炭酸を除去した後に測定されるpH値との差(ΔpH)が0.04以上であり、以下の表:
【表1】
に示される測定方法によって測定される前記ノンアルコール炭酸飲料中の香気成分量Lが20以上である、ノンアルコール炭酸飲料。
【請求項2】
香料を含有する、請求項1に記載のノンアルコール炭酸飲料。
【請求項3】
前記ノンアルコール炭酸飲料の炭酸除去後のpH値が2.0~7.0である、請求項1または2に記載のノンアルコール炭酸飲料。
【請求項4】
アルコール濃度が0.05v/v%未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載のノンアルコール炭酸飲料。
【請求項5】
甘味料を含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のノンアルコール炭酸飲料。
【請求項6】
容器詰め炭酸飲料である、請求項1~5のいずれか一項に記載のノンアルコール炭酸飲料。
【請求項7】
香気成分を含有するノンアルコール炭酸飲料を製造する方法であって、該ノンアルコール炭酸飲料のpH値と、該ノンアルコール炭酸飲料から炭酸を除去した後に測定されるpH値との差(ΔpH)を0.04以上に調整することを含んでなり、前記表1に示される測定方法によって測定される前記ノンアルコール炭酸飲料中の香気成分量Lが20以上である、方法。
【請求項8】
前記ノンアルコール炭酸飲料が香料を含有するものである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ノンアルコール炭酸飲料のアルコール濃度が0.05v/v%未満である、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
香気成分を含有するノンアルコール炭酸飲料の香り立ちを増強する方法であって、該ノンアルコール炭酸飲料のpH値と、該ノンアルコール炭酸飲料から炭酸を除去した後に測定されるpH値との差(ΔpH)を0.04以上に調整することを含んでなり、前記表1に示される測定方法によって測定される前記ノンアルコール炭酸飲料中の香気成分量Lが20以上である、方法。
【請求項11】
前記ノンアルコール炭酸飲料が香料を含有するものである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ノンアルコール炭酸飲料のアルコール濃度が0.05v/v%未満である、請求項10または11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香り立ちが増強されたノンアルコール炭酸飲料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飲酒運転防止等の観点から、アルコールを全く摂取することなくアルコール飲料と同等の嗜好性をもつ飲料の開発が求められており、アルコール度数0.00%(v/v)の飲料の市場が形成されている。このような飲料の製造には、溶剤にエタノールを用いた香料が使用できず、プロピレングリコール溶剤の香料や乳化香料などを使用する必要がある。
【0003】
しかし、このような香料は、エタノール溶剤を用いた香料に比べて香りが立たないことが多く、エタノール溶剤香料を使用したときのような香り立ちのよい飲料を設計することが困難であった。
【0004】
一方で、本発明者らは、アルコール含有炭酸飲料のpH値と、該アルコール含有容器詰め炭酸飲料から炭酸を除去した後に測定されるpH値との差(ΔpH)を所定の数値以上に調整することにより、アルコール含有炭酸飲料のアルコール感を増強し得ること見出している(特許文献1)。しかし、特許文献1では、アルコール含有炭酸飲料についてエタノール含有香料で検討したため、エタノール含有量の少ない飲料においてΔpHを調整することの効果については見出していなかった。例えば、特許文献1ではノンアルコールの炭酸飲料(香料を含有し、かつエタノール濃度0.00v/v%の炭酸飲料)における香り立ちの増強については何ら言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-189140号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは、所定の香気成分を含有するノンアルコールの炭酸飲料において、炭酸を含有する状態での炭酸飲料のpH値と、その飲料から炭酸を除去したときのpH値との差(以下「ΔpH」という)を一定の数値以上とすることにより、その飲料を飲用したときの香り立ちを増強し得ることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
【0007】
従って、本発明は、香り立ちが増強された、所定量の香気成分を含有するノンアルコール炭酸飲料およびその製造方法を提供する。
【0008】
本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)香気成分を含有するノンアルコール炭酸飲料であって、該ノンアルコール炭酸飲料のpH値と、該ノンアルコール炭酸飲料から炭酸を除去した後に測定されるpH値との差(ΔpH)が0.04以上であり、以下の表:
【表1】
に示される測定方法によって測定される前記ノンアルコール炭酸飲料中の香気成分量Lが20以上である、ノンアルコール炭酸飲料。
(2)香料を含有する、前記(1)に記載のノンアルコール炭酸飲料。
(3)前記ノンアルコール炭酸飲料の炭酸除去後のpH値が2.0~7.0である、前記(1)または(2)に記載のノンアルコール炭酸飲料。
(4)アルコール濃度が0.05v/v%未満である、前記(1)~(3)のいずれかに記載のノンアルコール炭酸飲料。
(5)甘味料を含有する、前記(1)~(4)のいずれかに記載のノンアルコール炭酸飲料。
(6)容器詰め炭酸飲料である、前記(1)~(5)のいずれかに記載のノンアルコール炭酸飲料。
(7)香気成分を含有するノンアルコール炭酸飲料を製造する方法であって、該ノンアルコール炭酸飲料のpH値と、該ノンアルコール炭酸飲料から炭酸を除去した後に測定されるpH値との差(ΔpH)を0.04以上に調整することを含んでなり、上記表1に示される測定方法によって測定される前記ノンアルコール炭酸飲料中の香気成分量Lが20以上である、方法。
(8)前記ノンアルコール炭酸飲料が香料を含有するものである、前記(7)に記載の方法。
(9)前記ノンアルコール炭酸飲料のアルコール濃度が0.05v/v%未満である、前記(7)または(8)に記載の方法。
(10)香気成分を含有するノンアルコール炭酸飲料の香り立ちを増強する方法であって、該ノンアルコール炭酸飲料のpH値と、該ノンアルコール炭酸飲料から炭酸を除去した後に測定されるpH値との差(ΔpH)を0.04以上に調整することを含んでなり、上記表1に示される測定方法によって測定される前記ノンアルコール炭酸飲料中の香気成分量Lが20以上である、方法。
(11)前記ノンアルコール炭酸飲料が香料を含有するものである、前記(10)に記載の方法。
(12)前記ノンアルコール炭酸飲料のアルコール濃度が0.05v/v%未満である、前記(10)または(11)に記載の方法。
【0009】
本発明によれば、所定量の香気成分を含有するノンアルコール炭酸飲料の香り立ちを増強することができる。特に、本発明によれば、所定量の香気成分を含有するノンアルコール炭酸飲料の戻り香を増強することが可能となる。
【発明の具体的説明】
【0010】
本発明において「ノンアルコール」とは、その飲料が、酵母発酵に由来するエタノールを含有しないだけでなく、エタノールを実質的に含有しないこと、好ましくはエタノールの含量(アルコール濃度)が0.05v/v%未満、より好ましくは0.01v/v%未満、さらに好ましくは0.005v/v%未満であることを意味する。
【0011】
本発明において「香り立ち」とは、香りをはっきりと感じられること意味し、飲料を飲んだ直後に感じられる香りだけでなく、戻り香をも含む概念である。また、本発明において「戻り香」とは、飲料を飲み込んだ後に喉の奥から鼻へ抜けて感じられる香りを意味する。
【0012】
本発明において「香料」とは、食品の着香の目的で使用される添加物を意味するものであり、原材料表示に「香料」と表示されるものであればよく、合成香料であっても天然香料であってもよい。
【0013】
本発明のノンアルコール炭酸飲料は、所定量の香気成分を含有するものであり、例えば、香料を含有するものである。また、本発明のノンアルコール炭酸飲料は、該ノンアルコール炭酸飲料のpH値と、該ノンアルコール炭酸飲料から炭酸を除去した後に測定されるpH値との差(ΔpH)が所定の数値範囲にあるノンアルコール炭酸飲料である。このようなΔpHを有することにより、本発明のノンアルコール炭酸飲料を飲用したときの香り立ちが増強される。本発明の飲料は、ノンアルコール炭酸飲料の製造過程において、ΔpHが所定の数値範囲となるように調整することにより製造することができる。
【0014】
ΔpHは、炭酸飲料のpH値と、その炭酸飲料から炭酸を除去した後に測定されるpH値との差である。ΔpHは、これら2つのpH値のうち、大きい方のpH値から小さい方のpH値を減じることによって算出される。本発明の好ましい実施態様では、本発明のノンアルコール炭酸飲料のpH値は、該ノンアルコール炭酸飲料から炭酸を除去した後に測定されるpH値よりも低く、よって、ΔpHは(ノンアルコール炭酸飲料から炭酸を除去した後に測定されるpH値)-(ノンアルコール炭酸飲料のpH値)で表される。
【0015】
本発明のノンアルコール炭酸飲料のΔpHは、0.04以上、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.06以上、さらに好ましくは0.07以上とされる。ΔpHは、大きければ大きいほど香り立ち増強効果が大きいため、その上限値は特に限定されないが、現実的な数値として、例えば2.00、好ましくは1.00、より好ましくは0.8、さらに好ましくは0.5とすることができる。
【0016】
pH値の測定は、炭酸飲料のpH値と、その炭酸飲料における炭酸の影響を排除したときのpH値の両方を測定できる方法によって行うことができる。このような方法は従来は実質上不可能であったが、現在の当技術分野においては公知であり、また、そのような方法に用いるための装置も市販されている。このような装置の例としては、例えば、飲料分析用測定装置の一種であるPBA-S(アントンパール・ジャパン社製)が挙げられる。このような方法または装置を用いることにより、ΔpHを簡便に測定することができる。
【0017】
本発明のノンアルコール炭酸飲料におけるΔpHの調整は、まずはノンアルコール炭酸飲料を製造し、そのΔpHを測定し、ΔpHが所定の数値に満たない場合には、ノンアルコール炭酸飲料に炭酸を付与する前の原料液において、ΔpHに影響を与える原材料または食品添加物の配合量を増減させることによって、行うことができる。ここで、ΔpHに影響を与える原材料または食品添加物の配合量を増減させてノンアルコール炭酸飲料を製造した後は、再度ΔpHを測定し、ΔpHが所定の数値に満たない場合には再度同じ操作を繰り返すことができる。また、ΔpHが所定の数値以上となる条件(全ての原材料の配合量など)を一旦見出した後は、その条件に従ってノンアルコール炭酸飲料を製造すればよく、ΔpHを改めて測定する必要は無い。すなわち、そのような条件に従ってノンアルコール炭酸飲料を製造すること自体が、ΔpHを調整する行為に該当するものと理解すべきである。
【0018】
ΔpHの調整に用いられる食品添加物としては、炭酸飲料に炭酸を付与する前の原料液のpH値に影響を与える食品添加物を用いることができ、これをΔpH付与剤と呼ぶ。ΔpH付与剤としては、食品としての安全性が確認されている素材を用いることができる。あるΔpH付与剤が、炭酸を含有する状態での炭酸飲料のpH値と、その飲料から炭酸を除去したときのpH値との差が一定の数値よりも大きくできる性質を有するか否かは、以下の方法で調べることによって決定することができる。すなわち、炭酸を付与する前の炭酸飲料の原料液に、ΔpH付与剤候補物質を添加し、その後、炭酸を付与して容器詰め炭酸飲料を試作し、得られた試作品について、炭酸飲料のpH値と、その炭酸飲料における炭酸の影響を排除したときのpH値の両方を測定できる機器(例えばPBA-S(アントンパール・ジャパン社製))を用いてΔpHを測定することにより、ΔpH付与効果の有無を簡便に確認することができる。このような性質を有するΔpH付与剤の具体例としては、例えば、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、水酸化ナトリウム(NaOH)、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、リン酸三カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二カリウム、コハク酸一カリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸水素カリウム、ヒスチジン、アルギニン、γ-アミノ酪酸、シトルリン、リジン等を挙げることができる。このようなΔpH付与剤などの食品添加物の使用量は、飲料の炭酸ガス圧、飲料のpH値、他の原材料等に応じて、当業者であれば上述のΔpHの条件を満たすために適宜決定することができる。
【0019】
本発明の香り立ち増強効果は、飲料に含まれる香気成分の量にかかわらず、その量に応じて奏されるものであり、従って、飲料中の香気成分の具体的な量は特に制限されない。一方で、本発明の香り立ち増強効果は、飲料に含まれる香気成分に起因する香りの香り立ちを増強する効果であるため、飲料中の香気成分の量が多い方が認識されやすいことも事実であろう。
【0020】
よって、本発明のノンアルコール炭酸飲料は、一定量以上の香気成分を含有するものとされる。具体的には、上記表1に示される測定方法によって測定されるノンアルコール炭酸飲料中の香気成分量Lが20以上、より好ましくは40以上とすることができる。
【0021】
本発明のノンアルコール炭酸飲料において、該炭酸飲料の炭酸除去後のpH値は2.0~7.0、好ましくは3.0~7.0、より好ましくは3.0~6.5、さらに好ましくは3.0~6.0、さらに好ましくは3.0~5.5、さらに好ましくは3.5~5.5、さらに好ましくは3.5~5.0に調整することができる。飲料のpH値は、炭酸飲料のpH値と、その炭酸飲料における炭酸の影響を排除したときのpH値の両方を測定できる機器(例えばPBA-S(アントンパール・ジャパン社製))を用いることにより測定することができる。
【0022】
本発明のノンアルコール炭酸飲料の炭酸ガス圧は、好みに応じて適宜調整することができ、例えば、0.1~0.4MPa、好ましくは0.15~0.35MPa、より好ましくは0.2~0.3MPa(いずれも20℃におけるガス圧)の範囲で調整することができる。
【0023】
本発明のノンアルコール炭酸飲料は甘味料を含むことができ、例えば、高甘味度甘味料(例えばアセスルファムK、スクラロース等)、果汁由来の甘味料(例えば、グレープ果汁、グレープフルーツ果汁、リンゴ果汁などの果汁由来の甘味料)、砂糖、ブドウ糖、果糖、オリゴ糖、異性化液糖、糖アルコール等を含有していてもよい。糖は動植物原料(果実、野菜、乳等)由来であってもよい。
【0024】
本発明のノンアルコール炭酸飲料は、容器詰飲料として提供することができる。本発明のノンアルコール炭酸飲料に使用される容器は、飲料の充填に通常使用される容器であればよく、例えば、金属缶、樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル、カップ)、紙容器、瓶、パウチ容器等が挙げられるが、好ましくは金属缶・樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル)、または瓶とされる。
【0025】
本発明の香り立ち増強効果は、戻り香の増強効果を含むことを一つの特徴としており、このような特徴は、酒を想起する香気(酒様香)との相性がよいものと考えられる。よって、本発明の好ましい実施態様によれば、本発明のノンアルコール炭酸飲料は、酒様香のある飲料、すなわち、アルコール風味飲料とされる。アルコール風味飲料としては、例えば、ビールテイスト飲料、日本酒テイスト飲料、ワインテイスト飲料、リキュールテイスト飲料、カクテルテイスト飲料、チューハイテイスト飲料、浸漬酒テイスト飲料、ウイスキーテイスト飲料、焼酎テイスト飲料等が挙げられる。
【0026】
本発明の飲料は、ノンアルコール炭酸飲料の製造に用いられる他の成分を含んでもよい。このような他の成分としては、例えば、酸味料(例えば、酒石酸、乳酸、リン酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸、フィチン酸、イタコン酸、フマル酸、グルコン酸、アジピン酸、酢酸、またはそれらの塩類等)、色素、食品添加剤(例えば、起泡・泡持ち向上剤、苦味料、保存料、酸化防止剤、増粘安定剤、乳化剤、食物繊維、pH調整剤など)等を適宜添加することができ、さらには、香り立ちの増強効果の妨げとならない限りにおいて他のフレーバリング(例えば、香料)を加えることもできる。
【0027】
本発明の他の態様によれば、香料を含有するノンアルコール炭酸飲料の香り立ちを増強する方法であって、該ノンアルコール炭酸飲料のpH値と、該ノンアルコール炭酸飲料から炭酸を除去した後に測定されるpH値との差(ΔpH)を0.04以上に調整することを含んでなる方法が提供される。
【実施例0028】
以下の実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
飲料サンプルの調製方法
表2の処方に従い、ポストミックス法で各区の炭酸飲料サンプルを調製した。ポストミックス法とは、糖液、酸味料、香料、着色料等を混合して調合したシロップを容器に注入し、次いで、炭酸水を容器に注入し、容器を密封した後でシロップと炭酸水を混合させる方法である。本実施例では、炭酸水以外の原材料を混合して調合したシロップを容器に注入し、次いで、別途カーボネーション(炭酸ガス圧入溶解)して作製した炭酸水(炭酸ガス濃度が0.5MPa)を容器に注入し、容器を密封した後で前述のシロップと炭酸水を混合することにより、各区の炭酸飲料サンプルを調製した。
【0030】
ΔpHの測定方法
ΔpH(炭酸飲料サンプルのpH値と、その炭酸飲料サンプルから炭酸を除去したときのpH値との差)は、飲料分析用測定装置であるPBA-S(アントンパール・ジャパン社製)を用いて測定した。測定によって得られたpH:炭酸飲料サンプルのpH値およびpH(CO corrected):炭酸飲料サンプルから炭酸を除去したときのpH値から、下記の式:
[ΔpH]=[pH(CO Correct)]-[pH]
によってΔpHを求めた。
【0031】
官能評価
調製した各区の炭酸飲料サンプルの官能評価は、訓練されたパネリスト5名によって、以下の方法および基準で行った。
【0032】
官能評価では、様々な香料を含有する試飲サンプルを引用した際の香り立ち(戻り香を含む)の強さについて評価を行った。各香味において、陽性対照(対照区)としてアルコール(エタノール)濃度が0.1v/v%の飲料サンプルを用い、ΔpHを任意に調整したアルコール濃度0.00v/v%の飲料サンプルを比較区もしくは試験区として評価を行った。
【0033】
評価スコアは、以下の4段階とした。
4:対照区と比べて香り立ちが同等
3:対照区と比べて香り立ちが少し弱い(対照区における香料添加量を80v/v%にしたサンプルと同等)
2:対照区と比べて香り立ちが弱い(対照区における香料添加量を60v/v%にしたサンプルと同等)
1:対照区と比べて香り立ちが非常に弱い(対照区における香料添加量を40v/v%にしたサンプルと同等)
【0034】
パネリスト5人の評価スコアの平均値を算出し、その平均値を以下の評価基準でレベル分けした。
(評価基準)
A:評価スコアの平均値が3.5以上
B:評価スコアの平均値が3.0以上3.5未満
C:評価スコアの平均値が2.5以上3.0未満
D:評価スコアの平均値が2.5未満
【0035】
香気成分量Lの測定方法
香気成分量Lは、以下の表1に従って測定した。
【表2】
【0036】
実施例1:香料を含有するノンアルコール炭酸飲料における香り立ち増強のための条件 香料を含有する飲料サンプルにおけるΔpHの香り立ちへの影響を評価した。表2に従って、ポストミックス法で、様々な香味を有する炭酸飲料の試験区、比較区および対照区の飲料サンプルを炭酸ガス圧が0.25MPaとなるように調製した。ΔpHおよび官能評価の結果を、各飲料サンプルの香味の種類および香気成分量Lとともに表3に示す。
【0037】
【表3-1】
【0038】
【表3-2】
【0039】
【表3-3】
【0040】
【表3-4】
【0041】
【表3-5】
【0042】
【表4-1】
【0043】
【表4-2】
【0044】
それぞれの香味の飲料サンプルにおいて、ΔpHが大きくなるにしたがって香り立ちが向上した。特に、ΔpHが0.04以上となった試験区において、香り立ちの増強効果が顕著に認められた。
【0045】
さらに、香気成分量Lが大きいほど、香り立ちの増強効果が感じられやすく、特に、香気成分量Lが20以上(好ましくは40以上)のサンプルにおいて香り立ちの増強効果が感じられやすいと考えられた。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
香気成分を含有するノンアルコール炭酸飲料であって、該ノンアルコール炭酸飲料のpH値と、該ノンアルコール炭酸飲料から炭酸を除去した後に測定されるpH値との差(ΔpH)が0.04以上であり、以下の表:
【表1】
に示される測定方法によって測定される前記ノンアルコール炭酸飲料中の香気成分量Lが20以上であり、酒様香を有する、ノンアルコール炭酸飲料。
【請求項2】
香料を含有する、請求項1に記載のノンアルコール炭酸飲料。
【請求項3】
ビールフレーバーを含有する、請求項1または2に記載のノンアルコール炭酸飲料
【請求項4】
ビールテイスト飲料である、請求項1~3のいずれか一項に記載のノンアルコール炭酸飲料
【請求項5】
日本酒テイスト飲料である、請求項1または2に記載のノンアルコール炭酸飲料
【請求項6】
焼酎テイスト飲料である、請求項1または2に記載のノンアルコール炭酸飲料
【請求項7】
ウイスキーテイスト飲料である、請求項1または2に記載のノンアルコール炭酸飲料
【請求項8】
ワインテイスト飲料である、請求項1または2に記載のノンアルコール炭酸飲料
【請求項9】
酒石酸、乳酸、リン酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸、フィチン酸、イタコン酸、フマル酸、グルコン酸、アジピン酸、酢酸、およびそれらの塩類からなる群から選択される少なくとも1種の酸味料を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のノンアルコール炭酸飲料
【請求項10】
前記ノンアルコール炭酸飲料の炭酸除去後のpH値が2.0~7.0である、請求項1~9のいずれか一項に記載のノンアルコール炭酸飲料。
【請求項11】
アルコール濃度が0.05v/v%未満である、請求項1~10のいずれか一項に記載のノンアルコール炭酸飲料。
【請求項12】
甘味料を含有する、請求項1~11のいずれか一項に記載のノンアルコール炭酸飲料。
【請求項13】
容器詰め炭酸飲料である、請求項1~12のいずれか一項に記載のノンアルコール炭酸飲料。
【請求項14】
香気成分を含有するノンアルコール炭酸飲料を製造する方法であって、該ノンアルコール炭酸飲料のpH値と、該ノンアルコール炭酸飲料から炭酸を除去した後に測定されるpH値との差(ΔpH)を0.04以上に調整することを含んでなり、以下の表:
【表2】
に示される測定方法によって測定される前記ノンアルコール炭酸飲料中の香気成分量Lが20以上であり、前記ノンアルコール炭酸飲料が酒様香を有する、方法。
【請求項15】
前記ノンアルコール炭酸飲料が香料を含有するものである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ノンアルコール炭酸飲料がビールフレーバーを含有する、請求項14または15に記載の方法
【請求項17】
前記ノンアルコール炭酸飲料がビールテイスト飲料である、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ノンアルコール炭酸飲料が日本酒テイスト飲料である、請求項14または15に記載の方法
【請求項19】
前記ノンアルコール炭酸飲料が焼酎テイスト飲料である、請求項14または15に記載の方法
【請求項20】
前記ノンアルコール炭酸飲料がウイスキーテイスト飲料である、請求項14または15に記載の方法
【請求項21】
前記ノンアルコール炭酸飲料がワインテイスト飲料である、請求項14または15に記載の方法
【請求項22】
前記ノンアルコール炭酸飲料が、酒石酸、乳酸、リン酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸、フィチン酸、イタコン酸、フマル酸、グルコン酸、アジピン酸、酢酸、およびそれらの塩類からなる群から選択される少なくとも1種の酸味料を含む、請求項14~21のいずれか一項に記載の方法
【請求項23】
前記ノンアルコール炭酸飲料のアルコール濃度が0.05v/v%未満である、請求項14~22のいずれか一項に記載の方法。