(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023967
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ロータリテーブル装置
(51)【国際特許分類】
H02K 7/14 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
H02K7/14 C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023220895
(22)【出願日】2023-12-27
(62)【分割の表示】P 2019007183の分割
【原出願日】2019-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000229335
【氏名又は名称】日本トムソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【弁理士】
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】坂井 哲也
(57)【要約】
【課題】このロータリテーブル装置は,ベッドに対して回転するテーブルの位置を全周にわたって精度よく検出すると共に,電機子組立体を絶縁層で被覆してベッドとテーブルの間を絶縁して組み立てを容易にする。
【解決手段】界磁マグネット4を全周に配設したテーブル2の軸部10に,全周にわたって延びるリングスケール20を備えたリング部材17を配設する。電機子コイル6を界磁マグネット4に対向して周方向に配設したベッド1に,リングスケール20を読み取るセンサ21を配設する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の場所に設置されるベッド,前記ベッドに軸受を介して回転可能に取り付けられた円盤状のテーブル,及び前記テーブルを回転駆動するモータを有し,前記モータの一次側でなる電機子組立体を構成する複数の電機子コイルは,扁平で環状に巻回された三相のコアレスコイルから構成され且つ前記ベッド上の環状凹部に周方向に沿ってそれぞれ配設されており,前記モータの二次側でなる界磁マグネットを構成する複数のマグネットは,板状に形成され且つ前記テーブルの下面の環状凹部に磁極を交互に異にして周方向に沿って前記電機子コイルに対向してそれぞれ配設されていることから成るロータリテーブル装置において,
前記テーブルは,前記下面に前記界磁マグネットが配設され且つ前記ベッドに対向する側に位置する軸部と,該軸部に一体構造であって相手部材を取り付けるための載置部とから構成され,前記テーブルの前記軸部には全周にわたって延びるリング部材が配設され,前記リング部材の外周面の全域にわたってリングスケールが設けられ,前記ベッドには前記リングスケールを読み取るためのセンサが配設されていることを特徴とするロータリテーブル装置。
【請求項2】
前記テーブルの前記軸部の外周面は前記載置部の外周面よりも内側に位置し,前記軸部の取り付けられた前記リングスケールの外周面が前記載置部の前記外周面よりも内側に位置していることを特徴とする請求項1に記載のロータリテーブル装置。
【請求項3】
前記リング部材は,前記テーブルの前記軸部の外周面にインロー嵌合によって固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のロータリテーブル装置。
【請求項4】
前記テーブルの前記軸部に嵌入された前記リング部材の内周面は,前記テーブルの前記軸部の前記外周面の挿入方向に沿ってテーパ面に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のロータリテーブル装置。
【請求項5】
前記電機子組立体は,多数の前記マグネットの配設方向に沿って形成されたリング状の基板,及び前記マグネットの配設方向に沿って前記基板上に順次に配設された前記電機子コイルから構成され,前記電機子組立体には,前記電機子コイル側に設けられた第1絶縁層と前記基板側に形成された第2絶縁層とが設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のロータリテーブル装置。
【請求項6】
前記第1絶縁層は前記電機子組立体に接着される絶縁プレートであり,前記第2絶縁層は前記基板に接着した絶縁シート又は前記基板に塗布された絶縁膜であることを特徴とする請求項5に記載のロータリテーブル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,半導体製造装置,測定器,工作機械,産業用ロボット等の機械装置に使用され,例えば,ベッド側に配設した電機子組立体とテーブル側に配設した界磁マグネットとから成るリニアモータを内蔵したロータリテーブル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,機械装置を用いる各種の技術分野におけるX-Y等多軸ステージや運動機構部において,ワーク,機器等の移動体を高速で移動させ,ベッド等のべースに対して移動体のテーブルを高精度で位置決めするため,ベッド及びテーブルをコンパクトで軽量な構造に構成した高推力,高速,高応答性のスライド装置が求められている。スライド装置のテーブルを移動させる駆動装置としては,リニアモータが使用されている。一般的に,リニアモータとしては,複数個の電機子コイルを可動子として設けた可動コイル型リニアモータと,界磁マグネットを可動子として設けた可動マグネット型のリニアモータとがある。
【0003】
従来,アライメントステージ装置として,円盤状のテーブルが固定側のベッドに対して予め決められた所定の回転角に回転可能に構成されたものが知られている。該アライメントステージ装置は,ベッドに軸受を介して回転支持されるテーブルをリニアモータによって回転駆動している。リニアモータは,一次側が扁平で環状に巻回された三相のコアレスコイルから成る電機子コイルと,二次側が多数の板状のマグネットから成る界磁マグネットとから構成されている。上記アライメントステージ装置は,電機子コイルをベッド側にそれぞれ配設し,マグネットをテーブル側にそれぞれ周方向に配設して,互いに電機子コイルとマグネットとを対向配置させている。また,電機子組立体は,テーブルの周方向に配設した複数のマグネットに沿って形成した環状の基板と,該基板にそれぞれ固定した電機子コイルとで構成されている。該電機子組立体は,ベッドに固定されている。また,テーブルの回転角に対応する範囲のテーブル外周面にテープ状のスケールを接着し,該スケールをベッドに配置した光学センサで読み込んでテーブルの位置を検出するように構成している。また,電機子組立体とベッド及びテーブルの間に絶縁シートを配設している。電機子組立体は,絶縁シートによってベッドとテーブルから絶縁されている(例えば,特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,上記アライメントステージ装置は,所定の回転角内で揺動するものであるため,テーブル全周にスケールを設けて無限回転するという技術的思想を有していないものである。即ち,上記アライメントステージ装置は,回転角に対応する範囲にテープ状のスケールを接着しており,そのため,テーブルを無限回転しようとすると,位置検出用のテープ状スケールをテーブルの全周の360°にわたって接着することになる。この場合,スケールの繋ぎ目を合わせることが難しく,品質を安定させることは困難である。また,上記アライメントステージ装置は,電機子組立体と,ベッド及びテーブルの間を絶縁する絶縁シートを別に配設している。そのため,テーブル組立時に絶縁シートを挟み込むことになり,部品点数が増加し,組立工数が増加するという問題がある。また,電機子組立体と絶縁シートの取付孔等の位置を合わせてベッドに配設することになり,位置合わせが困難になる。また,従来のアライメントステージ装置では,テーブルの組み立て時に,別体の絶縁シートをベッドと電機子コイルとの間に挟み込んでいた。
【0006】
この発明の目的は,上記の課題を解決することであり,所定の位置に設置されるベッドに対してテーブルを無限回転させるロータリテーブル装置であって,テーブルの軸部の全周に配設したリング部材に全周にわたってリングスケールを設け,また,電機子組立体を絶縁体で被覆してベッドとテーブルとの間を絶縁して組み立ても容易に構成し,ベッドに対するテーブルの全周にわたっての位置を測定可能にして回転するテーブルの位置を高精度に検出すると共に,界磁マグネットを配設したテーブルと電機子組立体を配設したベッドとの設計の自由度をアップさせると共にコンパクトに構成したことを特徴とするロータリテーブル装置を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は,所定の場所に設置されるベッド,前記ベッドに軸受を介して回転可能に取り付けられた円盤状のテーブル,及び前記テーブルを回転駆動するモータを有し,前記モータの一次側でなる電機子組立体を構成する複数の電機子コイルは,扁平で環状に巻回された三相のコアレスコイルから構成され且つ前記ベッド上の環状凹部に周方向に沿ってそれぞれ配設されており,前記モータの二次側でなる界磁マグネットを構成する複数のマグネットは,板状に形成され且つ前記テーブルの下面の環状凹部に磁極を交互に異にして周方向に沿って前記電機子コイルに対向してそれぞれ配設されていることから成るロータリテーブル装置において,
前記テーブルは,前記下面に前記界磁マグネットが配設され且つ前記ベッドに対向する側に位置する軸部と,該軸部に一体構造であって相手部材を取り付けるための載置部とから構成され,前記テーブルの前記軸部には全周にわたって延びるリング部材が配設され,前記リング部材の外周面の全域にわたってリングスケールが設けられ,前記ベッドには前記リングスケールを読み取るためのセンサが配設されていることを特徴とするロータリテーブル装置に関する。
【0008】
また,前記テーブルの前記軸部の外周面は前記載置部の外周面よりも内側に位置し,前記軸部の取り付けられた前記リングスケールの外周面が前記載置部の前記外周面よりも内側に位置しているものである。
【0009】
また,前記リング部材は,前記テーブルの前記軸部の外周面にインロー嵌合によって固定されている。
【0010】
また,前記テーブルの前記軸部に嵌入された前記リング部材の内周面は,前記テーブルの前記軸部の前記外周面の挿入方向に沿ってテーパ面に形成されているものである。
【0011】
また,前記電機子組立体は,多数の前記マグネットの配設方向に沿って形成されたリング状の基板,及び前記マグネットの配設方向に沿って前記基板上に順次に配設された前記電機子コイルから構成されている。更に,前記電機子組立体には,前記電機子コイル側に設けられた第1絶縁層と前記基板側に形成された第2絶縁層とが設けられている。
【0012】
また,前記第1絶縁層は前記電機子組立体に接着される絶縁プレートであり,前記第2絶縁層は前記基板に接着した絶縁シート又は前記基板に塗布された絶縁膜である。
【発明の効果】
【0013】
この発明によるロータリテーブル装置は,上記のように,可動マグネット型リニアモータを内蔵したものであり,テーブルの軸部の全周にわたってに延びる繋ぎ目のないリング部材にリングスケールを形成して,スケールを備えたリング部材をテーブルの軸部に容易に且つ適正に取り付けることができる。また,このロータリテーブル装置は,リング部材の外周面で位置するスケール面を,テーブルの外周面よりも内側に配置して,スケールを誤って触ってしまうという問題を防止し,テーブル外周部にリング部材をインロー嵌合させるため,テーブルにリング部材を精度よく固定することでき,更に,テーブル挿入方向に沿ったテーパ面をリング部材の内周面に形成しているので,リング部材をテーブルの軸部に容易に挿入して取り付けることができる。また,場合によっては,リングスケールは,リング部材に直接形成することができ,簡素に構成することができる。また,このロータリテーブル装置は,電機子コイルを基板に配設した電機子組立体の両面に予め絶縁層を形成しているため,電機子組立体を組み込むだけでベッド及びテーブルとの間を絶縁でき,絶縁シートを別途用意する必要がなく,電機子組立体は,基板,電機子コイル及び絶縁層がワンピースに一体構造に構成されているため,電機子組立体をベッドに簡単に組み込むことができ,容易に且つ適正に組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明によるロータリテーブル装置を一部破断して示す斜視図である。
【
図2】
図1のロータリテーブル装置の一実施例を示す断面図である。
【
図3】
図2のロータリテーブル装置の一部を拡大して示す断面図である。
【
図4】
図1のロータリテーブル装置におけるリングスケールの固定状態を示す拡大断面図である。
【
図5】
図1のロータリテーブル装置における電機子組立体を構成する複数の電機子コイルをベッドの上面に配設した状態を示す平面図である。
【
図6】
図1のロータリテーブル装置における界磁マグネットを構成する複数のマグネットをテーブルの下面に配設した状態を示す平面図である。
【
図7】
図1のロータリテーブル装置におけるリングスケールを示す側面図である。
【
図8】
図1のロータリテーブル装置におけるリングスケールとセンサとの位置関係を示す平面図である。
【
図9】
図1のロータリテーブル装置におけるリングスケールの読み取り状態の概念を示す断面図である。
【
図10】
図1のロータリテーブル装置における電機子組立体を示す平面図である。
【
図11】
図10の電機子組立体の線分A-Aにおける断面図である。
【
図12】
図9の電機子組立体から3個の電機子コイルを無くしてランドを内側配設した別の実施例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下,図面を参照して,この発明によるロータリテーブル装置の実施例を説明する。この発明によるロータリテーブル装置は,例えば,半導体関連装置,測定器,工作機械,産業用ロボット,搬送機等の機械装置に使用され,例えば,電機子組立体3をベッド1側に配設し,界磁マグネット4をテーブル2側に配設して構成したリニアモータを内蔵したものである。このロータリテーブル装置は,例えば,直交位置決め装置であるXYテーブル装置に搭載されて使用されて角度位置のアライメントを達成するものであり,ベッド1には,中央部に通孔13,ベース,基台等に取り付けるための取付け用孔33が四隅に設けられ,例えば,X軸方向とY軸方向とに駆動可能なテーブル2をベース1に固定できるように構成されている。また,テーブル2には,他部品,ワーク等の相手部材を取り付けるための取付け用孔23が設けられている。テーブル2は,例えば,ニッケルメッキされた鋼製の磁性材の鉄により円盤状に形成されている。テーブル2の中心部には,貫通孔である通孔12が形成されており,通孔12には,配線や配管をテーブル2の上面47へ通すことができ,また,通孔12の分だけテーブル2を軽量化できるように構成されている。
【0016】
この発明によるロータリテーブル装置は,概して,
図1~
図6に示すように,予め決められた所定の場所に設置された固定側になるベッド1,ベッド1にクロスローラベアリング等の軸受5を介して回転可能に取り付けられた円盤状のターンテーブル等のテーブル2,及びテーブル2を相対回転駆動する永久磁石式モータであるリニアモータを有している。クロスローラベアリングは,隣接するローラの軸中心線を直交させて,ローラを配置した軸受5であり,ベッド1に固定ねじ26によって固定された外輪14,テーブル2に固定ねじ25によって固定された内輪15,及び外輪14と内輪15との間に交互に交差して配設された複数のローラ16から構成されており,コンパクトでありながら,ラジアル荷重,アキシアル荷重,モーメントを同時に受けることができるため,装置のサイズを小さく構成でき,また,装置の断面高さの低い扁平な装置に構成することができる。
【0017】
リニアモータは,一次側でなる複数の電機子コイル6から成る電機子組立体3と,二次側でなる複数のマグネット9から成る界磁マグネット4とから構成されている。電機子コイル6は,扁平で環状に巻回された三相のコアレスコイルからなって巻線を台形状に巻回して構成され且つベッド1の上面に形成された環状凹部19の円形平面に周方向に沿ってそれぞれ配設されている。電機子コイル6は,短辺になる上底をテーブル2の回転中心に向けてベッド1上に隙間なく配置されている。これにより,電機子コイル6の上底と下底を繋ぐ腕部が長くなり,面積が増加するため,テーブル2の推力を増加させることができる。各電機子コイル6は,図示していない絶縁性の樹脂でモールドされており,リング状のプリント基板即ちコイル基板である基板7に固定されている。また,マグネット4は,板状で台形状に形成され且つテーブル2の下面32に形成された環状凹部18の円形平面に磁極を交互に異にして周方向に沿ってそれぞれ配設されており,電機子コイル6に対向して配設されている。テーブル2は,界磁マグネット4の磁路を形成するマグネットヨークを兼ねたものになっている。テーブル2を回転駆動する永久磁石モータは,四極の三相モータであり,一次側の電機子組立体3を構成する電機子コイル6と二次側の界磁マグネット4を構成するマグネット9を有するリニアモータであり,テーブル2をダイレクトに回転駆動するダイレクトドライブ型モータである。
【0018】
この発明によるロータリテーブル装置は,特に,全周にわたってに延びる繋ぎ目のないリングスケール20を備えたリング部材17を介してテーブル2の軸部10の外周面の全域にわたって配設したことを特徴としている。テーブル2は,ワーク,機器等の相手部材を取り付けるための上側に位置する載置部11と,載置部11より小径で下側に位置して一体構造に構成され且つ電機子コイル6がベッド1に対向する側に配設されている軸部10とから構成されている。言い換えれば,テーブル2の軸部10には,その外周面41の全周にわたって延びるリング部材17が配設されており,リング部材17の外周面42の全域にわたってリングスケール20が設けられている。ベッド1には,リングスケール20を読み取るためのセンサ21(読み取りヘッド)が配設されている。
図8と
図9に示すように,リングスケール20の外周面44であるスケール面を読み取る光学式のセンサ21は,ベッド1に固定された支持台39を介して固定され,ベッド1に固定されたカバー22で覆われている。スケール面とセンサ21の間には,センサ21がスケール面を読み取り可能な隙間35が形成されている。なお,
図8は,テーブル2とマグネット9が省略された図になっている。
【0019】
また,このロータリテーブル装置において,テーブル2の軸部10の外周面41は,載置部11の外周面43よりも内側に位置し,軸部10の取り付けられたリングスケール20の外周面44が載置部11の外周面43よりも内側に位置している。また,リング部材17は,テーブル2の軸部10の外周面42にインロー嵌合によって固定されている。また,テーブル2の軸部10に嵌入されたリング部材17の内周面45は,テーブル2の軸部10の外周面41の挿入方向に沿ってテーパ面30に形成されている。更に,電機子組立体3は,多数のマグネット9の配設方向に沿って形成されたリング状のコイル基板である基板7,及びマグネット9の配設方向に沿って基板7上に順次に配設された電機子コイル6から構成されている。電機子組立体3は,電機子コイル6側に設けられた第1絶縁層36,及び基板7側に設けられる第2絶縁層37を備えて,一体化されている。また,第1絶縁層36は,電機子組立体3に接着される絶縁プレートであり,また,第2絶縁層37は,基板7に接着した絶縁シート又は基板7に塗布された絶縁膜で構成されている。
【0020】
このロータリテーブル装置は,具体的には,次のように形成されている。即ち,電機子組立体3を構成する基板7は,例えば,ガラスエポキシ樹脂で形成され,複数の回路パターンが層状に形成された4層のプリント基板である基板7であり,図示していないスルーホールを介して各回路パターンは接続されると共に,電機子コイル6と接続されている。基板7の電機子コイル6が,固定される面には絶縁膜が,例えば,ダブルレジスト処理による2層の絶縁膜が形成され,基板7の反対の面には絶縁膜が,例えば,シングルレジスト処理による1層の絶縁膜が形成されている。ここで,レジスト処理は,例えば,紫外線硬化型や熱硬化型の樹脂をスクリーン印刷で基板7にパターン印刷して硬化させるソルダレジスト処理等の,周知のレジスト処理を用いることができる。なお,電機子組立体3は,ダブルレジスト処理に代えてシングルレジスト処理にすることができる。要は,基板7の両面に絶縁膜を形成し,基板7からの電気の漏れや基板7の耐ノイズ性を向上できるようになっている。このように構成される電機子コイル6を基板7全周に固定することにより,
図5に示す電機子組立体3が構成されている。ここで,電機子組立体3は,三相(U,V,W相)通電方式で各相の電流が供給される3個の電機子コイル6とこれに4個のマグネット9が対応する組が構成されている。そして,図示していない電力線を,基板7の外周側の舌片状のランド31に接続して電機子コイル6に給電できるようになっている。ランド31は,例えば,U,V,W相に対応する接続部を備え,これらの接続部に電力線をはんだ等で接続できるようになっている。このように構成される電機子組立体3は,電機子コイル6を下側(ベッド1側)に向け,樹脂製のカラー34を介してベッド1にねじ止めすることにより,電機子コイル6をベッド1に配設できるようになっている。電機子コイル6とマグネット9の間を基板7に遮られて電機子コイル6で発生した熱がマグネット9に伝わり難い構造に構成されている。即ち,永久磁石式モータの推力は,マグネット9の磁束密度に比例する。ここで,磁束密度は,温度依存であり,マグネット9の温度が上がると,磁束密度が低下してモータの推力が低下する恐れがある。しかしながら,本実施例によれば,電機子コイル6とマグネット9の間を基板7で遮っているため,電機子コイル6の熱がマグネット9に伝わり難く,温度上昇による推力の低下を抑制することができる。更に,このロータリテーブル装置は,テーブル2の回転に伴う気流によりマグネット9が空冷されるため,温度上昇による推力の低下を一層抑制できる。その結果,本実施例では,マグネット9等を冷却する冷却装置を不要にできるため,装置をコンパクトにすることができる。また,ベッド1に円環状の凹部19を形成し,凹部19に電機子コイル6を収容するよう配設しているため,装置の断面高さを低く構成することができる。
【0021】
このロータリテーブル装置は,具体的には,
図5に示すように,テーブル2の下側(裏面側)にはマグネット9が配設されている。この実施例では,各マグネット9は,所定曲率に沿って円周状に配設されている。各マグネット9は,テーブル2の下側(裏面側)に周状に形成された環状凹部18に収容するように配設されているため,マグネット9を取り付けたテーブル2の断面高さを低く形成でき,コンパクトに構成できる。マグネット9は,例えば,希土類のネオジウム系の永久磁石であり,電機子コイル6に対応する台形の板状に形成されている。また,マグネット9は,例えば,テーブル2の環状凹部18に嵌入して接着剤で固定することができる。なお,磁力によりマグネット9を磁性材でなるテーブル2に強固に固定できる場合は,接着材を用いることなく,磁力のみで固定できる。また,マグネット9は,電機子コイル6に対向するように,テーブル2の全周に配設されている。マグネット9は,周方向に密接して配設されると共に,磁極が交互に配設されるよう,即ち,隣接するマグネット9が互いにN極とS極になるように配設されている。このロータリテーブル装置は,この実施例では,例えば,電機子コイル6を3個とマグネット9を4個で1組に成るように構成でき,これらの組が6組設けられている。言い換えれば,電機子コイル6が3×n個,マグネット9が4×n個になる関係になっている。具体的には,電機子コイル6は,ベッド1に3個×6で18個配設されており,また,マグネット9は,テーブル2に4個×6で24個配設されている。そして,電機子コイル6が3コイルに対して,マグネット9が4極に対応して構成されている。
【0022】
このロータリテーブル装置について,テーブル2の軸部10の外周面41に配設されるリングスケール20について説明する。テーブル2の軸部10の外周面41には,リングスケール20が設けられたリング部材17が固定されている。リングスケール20は,光学式のスケールであり,
図7に示すように,リング部材17の外周面42に全周にわたってスケールが形成されている。この実施例では,具体的には,
図4に示すように,リング部材17は,その内周面45がテーブル2の軸部10に挿入されてインロー嵌合させると共に,固定ねじ24がテーブル2の載置部11に形成された取付け用ねじ孔29に螺入されてテーブル2に固定されている。リング部材17の内周面には,テーブル2の挿入方向に沿ったテーパ面30が形成され,リング部材17をテーブル2の軸部10に挿入し易く構成されている。この際,リング部材17は,リングスケール20の外周面44であるスケール面がテーブル2の載置部11の外周面43よりも内側になるように,テーブル2の載置部11の下面と軸部10の外周面41とで形成された一種のアンダカットの収容スペース27に配設されている。言い換えると,リング部材17を挿入できるテーブル2の軸部10の外周面41には,テーブル2の載置部11の外周面43より内側に凹む軸部10が形成され,該軸部10にリング部材17に挿入し,そのリング部材17を固定ねじ24で固定して,テーブル2にリング部材17を固定できるように構成されている。これらのリングスケール20とセンサ21とにより,テーブル2のベッド1に対する位置を検出可能な光学式のエンコーダが構成されている。なお,センサ部には,図示していない電力線や信号線が接続されるように構成されている。このように,このロータリテーブル装置では,繋ぎ目のないリングスケール20を用いるため,テーブル2全周に容易にスケールを設けることができる。また,テーブル2の周長が長いリング部材17の外周面42にリングスケール20を形成したため,リングスケール20を細かく刻むことができ,高精度に位置を検出することを可能にしている。更に,テーブル2の軸部10である外周部にリング部材17をインロー嵌合しているため,テーブル2にリング部材17,従ってリングスケール20を精度よく取り付けることができ,テーブル2の回転中心とリングスケール20の中心を容易に心合わせすることができる。また,この実施例は,リングスケール20のスケール面を,テーブル2の載置部11の外周面43よりも内側に配置したため,スケール面を誤って触ってしまうことが抑制される。その結果,スケール面が汚れてセンサ21が読み取れなくなるという問題を回避できる。なお,この実施例では,リングスケール20の位置を調整するため,テーブル2とリングスケール20の間にスペーサ28を配置したが,テーブル2やリングスケール20自体の寸法を調整して,スペーサ28を無くすこともできる。
【0023】
次に,このロータリテーブル装置における電機子組立体3の絶縁構造について説明する。
図10に示すように,電機子組立体3の電機子コイル6側の面には,第1絶縁層となる絶縁プレート36が設けられている。絶縁プレート36は,例えば,絶縁材であるガラスエポキシ樹脂で厚さ0.2mmの板状に形成したプレートである。絶縁プレート36は,電機子組立体3に,例えば,接着剤により固定されている。また,
図11に示すように,電機子組立体3の基板7側の面には,第2絶縁層となる絶縁シート37が設けられている。絶縁シート37は,例えば,絶縁材であるガラスエポキシ樹脂で厚さ0.2mmの薄板状に形成されたシートである。絶縁シート37は,電機子組立体3に,例えば,接着剤により固定されている。絶縁プレート36及び絶縁シート37により,電機子組立体3からの漏れた電流が外部に伝わるのを防止でき,また,外部からのノイズが内部の回路等に侵入するのを防止できるように構成されている。このように,電機子組立体3に予め絶縁プレート36及び絶縁シート37を接着したため,電機子組立体3を,ベッド1に組み込むだけで絶縁することができる。即ち,従来のロータリテーブル装置では,別体の絶縁シートを組立時に電機子組立体とベッド及びテーブルの間に挟み込む構造であったので,組み立てが複雑であったが,この発明によるロータリテーブル装置の実施例によれば,本作業を省略でき,容易に組み立てることができ,製造コストを低減できる。更に,電機子組立体3に絶縁プレート36や絶縁シート37を直接固定しているため,絶縁性を向上させることができ,充分な絶縁耐圧を確保することができる。また,電機子コイル6を覆うように,絶縁プレート36や絶縁シート37を固定しているため,絶縁層で電機子コイル6を保護することができる。また,この実施例では,電機子コイル6及びマグネット9を平置きに配設しているため,薄型のロータリテーブル装置を実現することができる。更に,テーブル2を薄型に構成できるため,回転半径が大きいテーブル2の外周側の質量を小さく構成でき,慣性モーメントを小さくすることができる。また,テーブル2の中心部に通孔12を空けてテーブル全体を軽くしているため,慣性モーメントを一層小さくできる。なお,この実施例は,プリント基板即ち基板7の全周に電機子コイル6を配設しているが,
図12に示すように,例えば,電機子コイル6を1組(3個)を減らした電機子組立体3’に構成することができる。これによれば,電機子コイル6を減らした位置にランド31を形成できるため,基板7の径方向の大きさを小さくできる。他方,この実施例のように,電機子コイル6を基板7の全周に配置すると,装置のトルクを大きくすることができる。また,基板7側の第2絶縁層である絶縁シート37は,その接着に限定されず,例えば,周知の絶縁材をシルク印刷により基板7に塗布して絶縁膜を形成することもできる。これによれば,部品番号等をプリント基板である基板7に記載するシルク印刷装置を利用して,基板7に絶縁膜を形成できるため,絶縁膜を形成する装置を別途用意する必要がない。更に,レジスト処理による絶縁膜で充分な絶縁耐性を確保できれば,絶縁シート37を無くすことができる。また,この実施例は,電機子コイル6及びマグネット9を台形に形成したが,矩形等の他の形に形成することもでき,更に,電機子コイル6とマグネット9を異なる形にすることができる。なお,この実施例のロータリテーブル装置は,例えば,テーブル2の外径200mm,装置全体の高さ30mmに構成することができ,断面高さの低い扁平の装置とすることができる。また,リングスケール20を用いた本装置の分解能は,例えば,0.21秒であり,繰り返し位置決め精度は,例えば,±0.5秒であり,高精度な位置決めを実現できる。更に,リングスケール20のねじ固定の位置を等間隔にすることにより,ねじ締結時の外周面44即ちスケール面の変形を小さくできる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
このロータリテーブル装置は,例えば,半導体製造装置,各種組立装置,測定装置,試験装置,位置決めテーブルなどに用いることができ,特に,高精度な位置決めが求められる測定装置や試験装置等に好適である。
【符号の説明】
【0025】
1 ベッド
2 テーブル
3,3’ 電機子組立体
4 界磁マグネット
5 軸受
6 電機子コイル
7 基板
9 マグネット
10 軸部
11 載置部
17 リング部材
18,19 環状凹部
20 リングスケール
21 センサ
30 テーパ面
32 下面
36 絶縁プレート(第1絶縁層)
37 絶縁シート(第2絶縁層)
41,42,43,44 外周面
45 内周面
【手続補正書】
【提出日】2023-12-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の場所に設置されるベッド,前記ベッドに軸受を介して回転可能に取り付けられた円盤状のテーブル,及び前記テーブルを回転駆動するモータを有し,
前記モータの一次側でなる電機子組立体を構成する複数の電機子コイルは,前記ベッド上の第1の環状凹部に周方向に沿ってそれぞれ配設されており,
前記モータの二次側でなる界磁マグネットを構成する複数のマグネットは,板状に形成され且つ前記テーブルの下面の環状凹部に磁極を交互に異にして周方向に沿って前記電機子コイルに対向してそれぞれ配設されていることから成るロータリテーブル装置において,
前記テーブルは,前記下面に前記界磁マグネットが配設され且つ前記ベッドに対向する側に位置する軸部と,該軸部に一体構造であって相手部材を取り付けるための載置部とから構成され,
前記テーブルの前記軸部には全周にわたって延びるリング部材が配設され,前記リング部材の外周面の全域にわたってリングスケールが設けられ,前記ベッドには前記リングスケールを読み取るためのセンサが配設され、
前記テーブルの前記軸部の外周面は前記載置部の外周面よりも内側に位置し,
前記リング部材の外周面に設けられた前記リングスケールの外周面は、前記載置部の外周面よりも内側に位置し,
前記センサは、その一部が前記載置部の下面と前記軸部の外周面とで形成された収容スペースに位置するように配置され,
前記リングスケールの外周面と前記センサの間に前記センサが前記リングスケールを読み取り可能であるように形成された隙間は,前記収容スペース内に位置していることを特徴とするロータリテーブル装置。
【請求項2】
前記ベッドは前記軸受の外輪に固定されており,前記テーブルは前記軸受の内輪に固定されており,
前記ベッド上には、前記電機子コイルが配設される前記第1の環状凹部よりも内周側に、前記外輪の外周面に沿う面を有する第2の環状凹部が形成され、前記外輪は前記第2の環状凹部にその一部が収容されるよう配置されていることを特徴とする請求項1に記載のロータリテーブル装置。
【請求項3】
前記リング部材は,前記テーブルの前記軸部の外周面にインロー嵌合によって固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のロータリテーブル装置。
【請求項4】
前記テーブルの前記軸部に嵌入された前記リング部材の内周面は,前記テーブルの前記軸部の前記外周面の挿入方向に沿ってテーパ面に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のロータリテーブル装置。
【請求項5】
前記電機子組立体は,
多数の前記マグネットの配設方向に沿って形成されたリング状の基板,及び前記マグネットの配設方向に沿って前記基板上に順次に配設された前記電機子コイルから構成され,
前記電機子組立体は,前記電機子コイル側に設けられ、前記電機子組立体に接着される絶縁プレートである第1絶縁層と、前記基板側に形成され、前記基板に接着した絶縁シート又は前記基板に塗布された絶縁膜である第2絶縁層とを備え,
前記基板,前記電機子コイル,前記第1絶縁層および前記第2絶縁層は一体化されており、前記ベッド上の前記環状凹部に収容されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のロータリテーブル装置。