(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002397
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】可動リン木
(51)【国際特許分類】
B62B 3/02 20060101AFI20231228BHJP
B65D 19/42 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
B62B3/02 H
B65D19/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101552
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】村井 孝司
(72)【発明者】
【氏名】南川 達浩
【テーマコード(参考)】
3D050
3E063
【Fターム(参考)】
3D050AA11
3D050AA13
3D050BB02
3D050BB22
3D050DD01
3D050EE08
3D050EE13
3D050FF03
3D050GG01
3E063AA31
3E063BA05
3E063BA08
3E063CA05
(57)【要約】
【課題】リン木ごと一時積載物を少しだけ移動させることに適した可動リン木を提供する。
【解決手段】可動リン木1は、一方向に長い略角柱形の外形をなし、上面部1aと、上面部1aに対向する底面部1bと、上面部1aと底面部1bとの間に位置する側面部1cと、上記一方向に交差する端面部1dと、を有する外郭部11を有している。底面部1bの両側部に形成された各凹部1e内には、昇降ユニット2が埋め込まれている。昇降ユニット2は、底面が開口された鋼製筐体部21と、この鋼製筐体部21に設けられた1個の車輪3と、底面部1bよりも下方に車輪3の下部周面が突出する降下状態と底面部1bよりも上方に車輪3が位置する上昇状態とを切り替える個別昇降機構4と、を備える。端面部1dには、個別昇降機構4を操作する操作部5が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に長い略角柱形の外形をなし、上面部と、上記上面部に対向する底面部と、上記上面部と上記底面部との間に位置する側面部と、上記一方向に交差する端面部と、を有する外郭部と、
車輪の下部が上記底面部よりも下方に突出する降下状態と上記車輪が上記底面部よりも上方に位置する上昇状態とを切り替える昇降機構と、
上記昇降機構を操作する操作部と、
を備えることを特徴とする可動リン木。
【請求項2】
請求項1に記載の可動リン木において、上記操作部が上記端面部および上記側面部の少なくとも一方に設けられていることを特徴とする可動リン木。
【請求項3】
請求項1に記載の可動リン木において、上記昇降機構として個別に各車輪を昇降させる個別昇降機構が設けられており、各個別昇降機構を各々操作する操作部によって、各車輪が個別に昇降されることを特徴とする可動リン木。
【請求項4】
請求項1に記載の可動リン木において、上記昇降機構として複数の車輪を一体で昇降させる一体昇降機構が設けられており、この一体昇降機構を操作する操作部によって、上記複数の車輪が一体で昇降されることを特徴とする可動リン木。
【請求項5】
請求項1に記載の可動リン木において、上記昇降機構は、螺子シャフトに螺合する移動ナット部と、上記車輪を揺動する揺動リンク部と、上記移動ナット部と上記車輪とをリンク接続するリンク部材と、を備えており、上記降下状態の完了位置で上記揺動リンク部が最下点を通過して止まることを特徴とする可動リン木。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の可動リン木において、上記操作部は、回転工具が係合する形状を有することを特徴とする可動リン木。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、資材等を一時的に置くことができるリン木に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パネル等の部材をリン木と共に玉掛けして荷降ろしを行うことができ、現場での荷降ろし作業の容易化が図れる荷降ろし用リン木ユニットが提案されている。
【0003】
また、特許文献2、3には、車輪が昇降可能に戸車ケース内に収容された戸車が開示されている。
【0004】
ところで、建設中の建物内において、内壁ボード等をリン木上に一時的に積載しておく場合があり、何らかの作業に際して、上記リン木ごと積載物を少しだけ移動させたいことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5-92137号公報
【特許文献2】特開昭64-52981号公報
【特許文献3】特開平10-37579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の荷降ろし用リン木ユニットは、大掛かりな装置であり、建設中の建物内において、リン木ごと積載物を少しだけ移動させるには使い勝手がわるい。また、フォークリフトやパレットリフトを用いるとしても、このようなパレットリフトを建物の上階で用いることは容易でない。また、特許文献2、3は、リン木ではなく、戸車を開示しているに過ぎない。戸車は車輪を下方に常に出して移動するものであり、リン木とは全く異なる。
【0007】
この発明は、リン木ごと積載物を移動させることができる可動リン木を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の可動リン木は、一方向に長い略角柱形の外形をなし、上面部と、上記上面部に対向する底面部と、上記上面部と上記底面部との間に位置する側面部と、上記一方向に交差する端面部と、を有する外郭部と、
車輪の下部が上記底面部よりも下方に突出する降下状態と上記車輪が上記底面部よりも上方に位置する上昇状態とを切り替える昇降機構と、
上記昇降機構を操作する操作部と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
上記の構成であれば、上記車輪の下部を、上記底面部よりも下方に突出させた降下状態とすることで、当該可動リン木は移動可能な状態となり、可動リン木ごと積載物を移動させることができる。一方、上記車輪を、上記底面部よりも上方に位置させた上昇状態とすることで、当該可動リン木は移動不可となり、可動リン木ごと積載物が不意に移動するのを防止することができる。
【0010】
上記操作部が上記端面部および上記側面部の少なくとも一方に設けられていてもよい。これによれば、可動リン木上に積載物が在る状態でも、容易に上記操作部を操作することが可能である。
【0011】
上記昇降機構として個別に各車輪を昇降させる個別昇降機構が設けられており、各個別昇降機構を各々操作する操作部によって、各車輪が個別に昇降されてもよい。これによれば、1本の可動リン木について、移動可と移動不可の切り替えに際して2回の上記操作部の操作が必要になるものの、各個別昇降機構同士の連携を不要とする簡単な構成となり、低コスト化が容易となる。
【0012】
或いは、上記昇降機構として複数の車輪を一体で昇降させる一体昇降機構が設けられており、この一体昇降機構を操作する操作部によって、上記複数の車輪が一体で昇降されてもよい。これによれば、1本の可動リン木について、移動可と移動不可の切り替えが、1回の上記操作部の操作で済むので、この切り替えの作業負担が軽減される。
【0013】
上記昇降機構は、螺子シャフトに螺合する移動ナット部と、上記車輪を揺動する揺動リンク部と、上記移動ナット部と上記車輪とをリンク接続するリンク部材と、を備えており、上記降下状態の完了位置で上記揺動リンク部が最下点を通過して止まってもよい。これによれば、上記降下状態が安定し、横方向等から力が加わっても、上記降下状態は解除され難くなる。
【0014】
上記操作部は、回転工具が係合する形状を有してもよい。これによれば、例えば、上記係合部を六角形とし、六角ソケットを装着した電動ドライバーで上記操作部を回転操作することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明であれば、例えば、建設中の建物内において、リン木ごと積載物を移動させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態の可動リン木を示した底面図である。
【
図3】
図1の可動リン木の縦断面を示すとともに昇降機構の動作を示した説明図である。
【
図4】同図(A)、(B)は、
図1の可動リン木の使用状態を示した説明図である。
【
図5】他の実施形態の可動リン木を示した底面図である。
【
図7】
図5の可動リン木の縦断面を示すとともに昇降機構の動作を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態1)
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1および
図2に示すように、実施形態の可動リン木1は、一方向に長い略角柱形の外形をなし、上面部1aと、上面部1aに対向する底面部1bと、上面部1aと底面部1bとの間に位置する側面部1cと、上記一方向に交差する端面部1dと、を有する外郭部11を有している。このような外郭部11は、例えば、木質材或いは樹脂材を用いて作製される。
【0018】
底面部1bにおける上記一方向の両端側には、凹部1eが形成されている。この凹部1eは、外郭部11を、樹脂成型することにより、或いは、複数の木質材で組み立てること等により得ることができる。
【0019】
各凹部1e内には、昇降ユニット2が埋め込まれている。この昇降ユニット2は、底面が開口形成された鋼製筐体部21と、この鋼製筐体部21内に設けられた1個の車輪3と、底面部1bよりも下方に車輪3の下部側周面が突出する降下状態と底面部1bよりも上方に車輪3が位置する上昇状態とを切り替える個別昇降機構4と、を備えている。
【0020】
車輪3の走行方向は、上記一方向に一致している。鋼製筐体部21の側面板の内側面間に水平に渡された支持軸32には、第1リンク部材(揺動リンク部)33の上端側が回動自在に支持されている。そして、車輪3の回転軸31は、第1リンク部材33の下端側で支持されている。
【0021】
個別昇降機構4は、鋼製筐体部21内において、上記一方向に延びる螺子シャフト41を備えている。この螺子シャフト41の内側端および外側端は、それぞれ軸受部42によって、回転可能に支持されている。そして、螺子シャフト41の外側端の先端部は、鋼製筐体部21の端面板21aを貫通して、外側に突出している。すなわち、この一例では、可動リン木1の端面部1dの中央側は、鋼製筐体部21の端面板21aにより形成されており、螺子シャフト41の外側の先端は、端面板21aから外に突出している。
【0022】
螺子シャフト41には、上記一方向に直線移動が可能で回転が規制される四角柱形状等の移動ナット部43が螺合されている。この移動ナット部43の両側面には、第2リンク部材44の一端側が係合されている。そして、各第2リンク部材44の他端側は、車輪3の回転軸31の各端に係合している。
【0023】
図3に示しているように、移動ナット部43が鋼製筐体部21の端面板21aに接近移動すると、第1リンク部材33の下端側が下がり、車輪3の下部周面が底面部1bよりも下方に突出する降下状態が形成され、可動リン木1は移動可能となる。この降下状態の完了位置では、第1リンク部材(揺動リンク部)33が最下点を通過して止まるようにしている。一方、移動ナット部43が鋼製筐体部21の端面板21aから離れる方向に移動すると、第1リンク部材33の下端側が最下点を通過して上がりはじめ、車輪3が底面部1bよりも上方に位置する上昇状態が形成され、可動リン木1は移動不可となる。
【0024】
端面部1dから外側に突出する螺子シャフト41の先端部は、個別昇降機構4を操作する操作部5をなす。この操作部5は、例えば、回転工具用の係合部となる六角形状を有する。
【0025】
上記の可動リン木1であれば、
図4(A)および
図4(B)に示すように、車輪3の下部周面を、底面部1bよりも下方に突出させた降下状態とすることで、当該可動リン木1は移動可能な状態となり、可動リン木1ごとボード等の積載物Bを移動させることができる。この実施形態では、上記移動可能状態で、底面部1bが床から10mm程度上昇するようにしている。このため、床上のブルーシート等を乗り越えて移動することが容易である。なお、車輪3は直進するタイプであるので、進行方向を曲げたいときには、車輪3を接地面に対して滑らせるが、この際に滑りやすいシートを車輪3と床との間に介在させるようにしてもよい。
【0026】
一方、車輪3を、底面部1bよりも上方に位置させた上昇状態とすることで、底面部1bが床に接触して当該可動リン木1は移動不可状態となり、可動リン木1ごと積載物Bが不意に移動するのを防止することができる。また、当該可動リン木1における上述した移動可能状態では、床との接触が車輪3のみとなり、床に局所的に大きな圧力がかかるが、上記のように、底面部1bが床に接触することで、床に局所的に大きな圧力がかかるのを抑制できる。
【0027】
個別昇降機構4を操作する操作部5は、端面部1d(端面板21a)に設けられているので、積載物Bが在る状態でも、容易に操作可能である。
【0028】
個別昇降機構4は、上記降下状態の完了地点で第1リンク部材33が最下点を通過して止まるので、上記降下状態が安定し、横方向等から力が加わっても、上記降下状態は解除され難くなる。
【0029】
個別昇降機構4については、可動リン木1の両側の端面部1dに各々設けられた操作部5によって、各個別昇降機構4が個別に操作される。このため、1本の可動リン木1について、移動可と移動不可の切り替えに際して2回の操作部5の操作が必要になるものの、各個別昇降機構4同士の連携を不要とする簡単な構成となり、低コスト化が容易である。
【0030】
操作部5が、端面部1dの外に突出する螺子シャフト41の端部に設けられた回転工具用の係合部であると、上記のように係合部を六角形とし、電動ドライバーに装着する回転工具として、六角ソケットを用いることができる。
【0031】
(実施形態2)
次に、他の実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、実施形態1と同様の構成要素には、同一の符号を付記して説明を省略する。
【0032】
図5および
図6に示すように、実施形態の可動リン木1Aは、一方向に長い略角柱形の外形をなし、上面部1aと、上面部1aに対向する底面部1bと、上面部1aと底面部1bとの間に位置する側面部1cと、上記一方向に交差する端面部1dと、を備える外郭部11Aを有している。このような外郭部11Aは、例えば、溝形鋼の両端に、端面部1dをなす鋼板を溶接固定することで得ることができる。なお、上記溝形鋼の周囲に木質板材や樹脂板を貼付することで、表面が金属面とならない態様とすることもできる。
【0033】
外郭部11Aの内面側である凹部1e内には、一体昇降機構4Aが設けられている。一体昇降機構4Aは、上記一方向に離間する2個の車輪3・3と、底面部1bよりも下方に両車輪3・3の下部周面が突出する降下状態と底面部1bよりも上方に両車輪3・3が位置する上昇状態とを切り替える。
【0034】
一体昇降機構4Aは、個別昇降機構4における車輪3、回転軸31、支持軸32、第1リンク部材33、螺子シャフト41、移動ナット部43および第2リンク部材44を2セット備えたものに相当する。
【0035】
ただし、2本の螺子シャフト41のうち一方の螺子シャフト41の先端部が端面部1dから外側に突出しており、この先端部が一体昇降機構4Aを操作する操作部5をなす。また、2本の螺子シャフト41を、連結部材411によって連結しており、一方の螺子シャフト41の回転が連結部材411を介して他方の螺子シャフト41に伝達されるようにしている。また、複数の車輪3・3のうちの少なくとも操作部5を有する側の車輪3は、周溝3aを有しており、この周溝3a内を螺子シャフト41或いは連結部材411が通るようにしている。車輪3の周溝3aに螺子シャフト41等を通す構造であれば、可動リン木1Aの高さを低くできる。
【0036】
また、可動リン木1Aにおいては、操作部5を有する端面部1dから一方の車輪3までの距離と、操作部5を有しない端面部1dから他方の車輪3までの距離と、が同じとなるようにしている。
【0037】
上記の可動リン木1Aにおいても、
図7に示すように、移動ナット部43が図において右方向に移動すると、第1リンク部材33の下端側が下がり、車輪3の下部周面が底面部1bよりも下方に突出する降下状態が形成され、可動リン木1は移動可能となる。逆に、移動ナット部43が鋼製筐体部21の端面板21aから離れる方向に移動すると、第1リンク部材33の下端側が上がり、車輪3が底面部1bよりも上方に位置する上昇状態が形成され、可動リン木1は移動不可となる。
【0038】
また、可動リン木1Aであれば、1本の可動リン木1Aについて、移動可と移動不可の切り替えが1回の操作部5の操作で済むので、この切り替えの作業負担が軽減される。
【0039】
なお、上記の例では、車輪昇降にリンク機構を利用したが、これに限らない。例えば、螺子シャフト41の回転で移動する移動ナット部43にテーパ部材を取り付け、このテーパ部材のテーパ面に接触して上下方向に移動案内されるテーパ昇降部材の下面に車輪3を取り付けてもよい。また、この構成では、上記テーパ昇降部材の下面に自由車輪(自在キャスター)を取り付けることも可能である。
【0040】
また、操作部5を有しない側の昇降機構において、螺子シャフト41、移動ナット部43および第2リンク部材44を設けず、この操作部5を有しない側の昇降機構の回転軸31と、操作部5を有する側の昇降機構の回転軸31とを、リンク部材で連結する構造とすることもできる。このような機構も、複数の車輪3を一体で昇降させる一体昇降機構となり、片側に設けられた操作部5によって、上記一体昇降機構が操作されることになる。
【0041】
また、操作部5を端面部1dに設けたが、操作部5を側面部1cに設けることもできる。例えば、螺子シャフト41に傘歯車を装着するとともに、この傘歯車に歯合する別の傘歯車の回転軸を側面部1c側に突出させ、この回転軸の先端部を操作部5とする。
【0042】
また、1本の可動リン木が、上記一方向に、車輪3を3個有し、そのうちの端側の1個の車輪3を個別昇降機構4で昇降し、他の端側と真ん中の2個の車輪3・3を、一体昇降機構4Aで昇降するようにしてもよい。
【0043】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 :可動リン木
1A :可動リン木
1a :上面部
1b :底面部
1c :側面部
1d :端面部
1e :凹部
2 :昇降ユニット
3 :車輪
3a :周溝
4 :個別昇降機構
4A :一体昇降機構
5 :操作部
11 :外郭部
11A :外郭部
21 :鋼製筐体部
21a :端面板
31 :回転軸
32 :支持軸
33 :第1リンク部材
41 :螺子シャフト
42 :軸受部
43 :移動ナット部
44 :第2リンク部材
411 :連結部材
B :積載物