(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023970
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】菌数抑制剤、体臭抑制剤および腋臭症予防改善剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20240214BHJP
A61Q 15/00 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/047 20060101ALI20240214BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61K8/34
A61Q15/00
A61K31/047
A61P17/00
A61P31/04
A61P17/00 101
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023220946
(22)【出願日】2023-12-27
(62)【分割の表示】P 2019118245の分割
【原出願日】2019-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000226415
【氏名又は名称】物産フードサイエンス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】藤井 匡
(72)【発明者】
【氏名】栃尾 巧
(72)【発明者】
【氏名】大嶽 亜季
(57)【要約】
【課題】 体臭抑制剤、腋臭症の予防改善剤および体臭原因菌の菌数抑制剤を提供する。
【解決手段】 エリスリトールを有効成分とする、体臭抑制剤、腋臭症の予防改善剤および体臭原因菌の菌数抑制剤。本発明によれば、皮膚への刺激性や安全性を全く懸念することなく、体臭を抑制し、腋臭症を予防または改善し、あるいは体臭原因菌の数を抑制することができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エリスリトールを有効成分とする、体臭抑制剤。
【請求項2】
エリスリトールを有効成分とする、腋臭症を予防または改善する剤。
【請求項3】
エリスリトールを有効成分とする、体臭原因菌の菌数抑制剤。
【請求項4】
前記体臭原因菌がコリネバクテリウム属細菌、スタフィロコッカス属細菌またはミクロコッカス属細菌である、請求項3に記載の剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エリスリトールを有効成分とする、体臭抑制剤、腋臭症を予防または改善する剤および体臭原因菌の菌数抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
体臭は体から発せられる臭気をいい、狭義には、そのうちの不快な臭いを指す。体臭は、発生箇所や臭いの質、原因物質などにより、腋臭や足臭、頭皮臭、脂臭、酸臭、加齢臭などに分けられる場合があるが、これらはいずれも、汗や皮脂、角質といった体表に存在する身体由来の物質を、皮膚常在菌等の微生物が代謝して生成する物質が一因となることが知られている。
【0003】
体臭は万人が有するものであるが、これを予防ないし抑制したいというニーズは大きい。また、周囲に不快感を与えたり、本人が気に病むほど強い腋臭は、「腋臭症」として治療の対象になる場合もある。
【0004】
そこで、体臭を抑制する技術が研究開発されている。例えば、特許文献1には、クスノハガシワ抽出物またはキナ抽出物が、皮膚常在菌によるジケトン化合物(酸臭やアブラ臭の原因物質)の生成を抑制することが記載されている。また、特許文献2には、炭素数が8~14の脂肪酸を構成脂肪酸として含有し、モノエステル体の含有量が90質量%以上のプロピレングリコール脂肪酸エステルが、腋臭原因菌の生育を抑制することが記載されている。また、特許文献3には、1,2-ヘキサンジオールおよび/または1,2-オクタンジオールとα-ビサボロールとを併用すると、腋臭原因菌の生育を抑制できること、および、腋臭を防止できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6130472号公報
【特許文献2】特許第6242636号公報
【特許文献3】特許第5393962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献を鑑みても、体臭を効果的に抑制する技術や、体臭原因菌の数を効果的に抑制する技術は十分に提供されている状況ではない。本発明は係る課題を解決するためになされたものであって、体臭を抑制する技術、腋臭症を予防または改善する技術および体臭原因菌の数を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、エリスリトールが、体臭を顕著に抑制すること、および、体臭原因菌の数を顕著に抑制することを見出した。そこで、この知見に基づいて、下記の各発明を完成した。
【0008】
(1)本発明に係る体臭抑制剤は、エリスリトールを有効成分とする。
【0009】
(2)本発明に係る腋臭症予防改善剤は、腋臭症を予防または改善する剤であって、エリスリトールを有効成分とする。
【0010】
(3)本発明に係る菌数抑制剤は、体臭原因菌の数を抑制する剤であって、エリスリトールを有効成分とする。
【0011】
(4)本発明において、体臭原因菌は、コリネバクテリウム属細菌、スタフィロコッカス属細菌またはミクロコッカス属細菌であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、体臭を抑制することができる。また、本発明によれば、腋臭症の症状を改善し、あるいは、腋臭症を予防することができる。また、本発明によれば、体臭原因菌の数を抑制することができる。
【0013】
また、本発明が有効成分とするエリスリトールは、食品としても用いられることから明かなように、ヒトや動物にとって極めて安全な物質である。従って、本発明によれば、皮膚への刺激性や安全性を全く懸念することなく、体臭を抑制し、腋臭症を予防または改善し、あるいは体臭原因菌の数を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】糖アルコールを含有しない培地(コントロール)および各種の糖アルコールを含有する培地(Ery培地、Man培地、Sol培地)を用いて体臭原因菌(1~4番の株)を培養し、得られた培養液の比濁度を示す棒グラフである。
【
図2】エリスリトール(Ery培地)またはソルビトール(Sol培地)を種々の濃度で含有する培地を用いて体臭原因菌を培養し、得られた培養液の濁度を示す折れ線グラフである。
【
図3】エリスリトールを種々の濃度で含有する培地を用いて体臭原因菌(3番および4番の株)を培養し、得られた培養液の比濁度を示す棒グラフである。
【
図4】(A)は、エリスリトールを含有しない培地(エリスリトールの濃度:0%)およびエリスリトールを含有する培地(エリスリトールの濃度:20%)を用いて体臭原因菌を培養し、得られた培養液の比濁度を示す棒グラフである。(B)は、それら培養液のわき臭の強度を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
エリスリトールは、化学名が1,2,3,4-Butaneterolである単糖アルコールであり、エリトリトールとも呼ばれる。エリスリトールは、市販されているものを用いてもよく、当業者に公知の方法に従って製造して用いてもよい。
【0017】
公知の製造方法としては、グルコースなどを炭素源としてエリスリトール生産菌を培養して生産させ、これを精製して得る方法を挙げることができる。ここで、エリスリトール生産菌としては、例えば、トリゴノプシス属またはカンジダ属に属する微生物(特公昭47-41549号公報)、トルロプシス属、ハンゼヌラ属、ピヒア属またはデバリオミセス属に属する微生物(特公昭51-21072号公報)、モニリエラ属に属する微生物(特開昭60-110295号公報、特開平10-215887)、オーレオバシデュウム属に属する微生物(特公昭63-9831号公報)、イエロビア属に属する微生物(特開平10-215887号公報)などを挙げることができ、培養条件は、各菌に適した通常の条件で行うことができる。また、エリスリトールの精製は、菌体分離、クロマトグラフィーによるエリスリトールの分取、脱塩、脱色、晶析、結晶分解および乾燥の工程を常法に従って行うことができる。
【0018】
「体臭」は、上述のとおり体から発せられる臭いをいう。体臭は、発生箇所により、腋臭や足臭、頭皮臭、頭髪臭などに分けられる場合がある。また、臭いの種類により、汗臭や脂臭、酸臭、酸化臭、加齢臭などに分けられる場合もある。体臭の構成成分としては、例えば、アルデヒド類(頭皮臭、頭髪臭)、アンドロステノン(男性の体臭)などのステロイド類、酢酸やプロピオン酸などの脂肪酸(頭皮臭、頭髪臭)、イソ吉草酸(3-メチルブタン酸、足裏臭)、イソ吉草酸アルデヒド(足臭)、ジアセチル、2-ノネナール(加齢臭)、3-メチル-2-へキセン酸(腋臭)、ビニルケトン類(ツンとした酸化臭)、3-ヒドロキシ-3-メチルヘキサン酸(スパイス臭)、3-メチル-3-スルファニルヘキサン-1-オール(硫黄臭)などが知られている。
【0019】
「体臭を抑制する」とは、体臭を低減すること、あるいは体臭の強度を小さくすることをいう。体臭の強度は、市販の測定機器(ガスクロマトグラフ-マススペクトロメータ(GC-MS)、金属酸化物半導体を用いた臭いセンサーなど)を用いて、体臭の特定の構成成分の濃度を検出することにより確認することができる。また、ヒトの嗅覚により臭いの強さを判定する官能試験法によって確認することもできる。
【0020】
「腋臭症」は、腋窩(わきの下の凹んだところ)から不快な臭いを発する状態をいう。本発明において、「腋臭症を改善する」とは、腋窩から発せられる臭い(腋臭)を低減すること、あるいは腋臭の強度を小さくすることをいう。また、「腋臭症を予防する」とは、治療を含む何らかの対処が不要な程度に、腋臭を低減することをいう。
【0021】
「体臭原因菌」とは、体表に存在し、体臭の原因物質(上述の「体臭の構成成分」を例示することができる)を代謝により発生させる微生物をいう。体臭原因菌として、具体的にはC. minutissimumやC. xerosis、C. tenuis、C. striatumなどのコリネバクテリウム属細菌(Corynebacterium)、S. aureusやS. epidermidis、S. warneri A、S. warneri B、S. caprae B、S. haemolyticus、S. capitis A、S. capitis B、S. lentus、S. gallinarum、S. delphini、S. hominis、S. xylosus、S. hyicus、S. cohniiなどのスタフィロコッカス属細菌(Staphylococcus)、M. luteusなどのミクロコッカス属細菌(Micrococcus)などを例示することができる。
【0022】
本発明において、「菌数」とは、微生物の個体数を意味する。
【0023】
体臭原因菌の菌数が抑制されたか否かは、後述する実施例に示すように、培養試験により判断することができる。すなわち、一方は被検物質(菌数抑制剤)を添加して、他方はこれを添加せずに、同種の培地を調製する。この両培地に体臭原因菌を植菌して所定の期間培養した後、培地の菌量を測定する。菌量の測定は、簡便には濁度法により行うことができるが、培地や培養条件、測定対象の菌種などに応じて、乾燥菌体重量法や湿重量法、リアルタイムPCR法などの公知の手法を適宜選択することができる。その結果、被検物質(菌数抑制剤)を添加したものの方が、これを添加しないものよりも菌量が小さければ、被検物質(菌数抑制剤)により体臭原因菌の菌数が抑制されたと判断することができる。
【0024】
本発明の剤は、わきや手足、背中、頭などの体表を使用対象とした化粧品、医薬部外品、医薬品、洗浄料や生理用品などの衛生用品等に好適に用いることができる。本発明の剤が配合された製品は、当該製品に通常用いられる原料(例えば、油、界面活性剤、アルコール、防腐剤、キレート剤、酸化防止剤、増粘剤、香料、殺菌剤等の成分)にエリスリトールを添加して、製造することができる。エリスリトールの含有量は、製品の形態や用途に応じて適宜設定することができるが、例えば0.01~35重量%、好ましくは0.01~30重量%、より好ましくは0.5~25重量%、さらに好ましくは1~20重量%を例示することができる。製品の剤型としては、エアゾール剤、ロールオン、スティック、クリーム、シート剤、ローション、乳液、ジェル、粉剤等の形態を例示することができる。
【0025】
以下、本発明について、各実施例に基づいて説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。
【実施例0026】
<試験方法>
(1)糖アルコール
本実施例において、糖アルコールは、市販のエリスリトール(製品名:Erythritol、白色粒状)、D-ソルビトール(製品名:ソルビトールFP、白色粒状)およびD-マンニトール(製品名:マンニトール、白色粒状)(いずれも製造者は物産フードサイエンス(株))を用いた。
【0027】
(2)菌株
本実施例において、菌株は表1に記載の1~4番を用いた。1番の株は、特許文献4(特開2015-120677号公報)に腋臭の原因菌として、特許文献5(特開2017-43568号公報)に足臭の原因菌として、それぞれ記載されている。また、2番の株は特許文献4に腋臭の原因菌として記載されている。また、3番の株は特許文献5に足臭の原因菌として記載されている。また、4番の株は、小学生男児の臭気を発している足の裏から採取したものである。株の採取は、小学生男児の足裏をLB寒天培地に接地させた後、当該LB寒天培地を30度で培養することにより行った。
【表1】
【0028】
(3)培地
本実施例において、培地は以下のものを用いた。各試薬の入手元は全て、富士フイルム和光純薬社である。
LB液体培地(ハイポリペプトン:1(w/v)%、イーストエキストラクト:0.5(w/v)%、塩化ナトリウム:1(w/v)%)
LB寒天培地(ハイポリペプトン:1(w/v)%、イーストエキストラクト:0.5(w/v)%、塩化ナトリウム:1(w/v)%、アガー:1.5(w/v)%)
802培地(ハイポリペプトン:1(w/v)%、イーストエキストラクト:0.2(w/v)%、硫酸マグネシウム7水和物:0.1(w/v)%、pH7.0)
Ery培地(4~20(w/v)%のエリスリトールを含有する802培地)
Man培地(10(w/v)%のD-マンニトールを含有する802培地)
Sol培地(7~26(w/v)%のD-ソルビトールを含有する802培地)
【0029】
<実施例1>糖アルコールの検討
LB寒天培地に1~4番の株を塗布し、30℃で3日間静止培養した。続いて、各株を2mLのLB液体培地に植菌して、30℃、210回転/分(rpm)で20時間振盪培養(前培養)した。糖アルコール濃度が10(w/v)%のEry培地、Man培地およびSol培地各0.8mLを、96 Deep Well Plate(AxyGen Scientific, Inc., CA, USA) に分注した。コントロールとして、糖アルコールを含有しない802培地を同様に96 Deep Well Plateに分注した。ここに、前培養の各培養液(1番および2番は25μLずつ、3番は50μL、4番は20μL)を植菌し、MBR-034P shaker (Taitec, Tokyo, Japan)を用いて、30℃で23時間振盪培養(本培養)した。
【0030】
本培養の培養液について、濁度法により菌体濃度を測定した。具体的には、まず、96穴平底プレート(4845-96F、ワトソン)に水180μLを分注した。ここに、本培養の培養液20μLを入れ、マイクロプレートリーダー (SpectraMax(登録商標)M2、モレキュラーデバイス)を用いて波長660nmでの透過光強度を検出することにより、濁度(OD
660)を測定した。さらに、コントロールの培地を用いた場合の濁度を100として、糖アルコールを含有する培地を用いた場合の濁度を百分率で表し、これを比濁度(%)とした。その結果を
図1に示す。
【0031】
図1に示すように、1~4番のいずれの株についても、Ery培地を用いた場合の培養液の比濁度が最も小さかった。すなわち、エリスリトールを含有する培地を用いた場合は、他の培地(糖アルコールを含有しない培地、D-マンニトールを含有する培地、D-ソルビトールを含有する培地)を用いた場合と比較して、菌体濃度が顕著に小さかった。この結果から、エリスリトールは体臭原因菌の数を抑制できることが明らかになった。
【0032】
<実施例2>濃度の検討
(1)1番の株
実施例1に記載の方法により1番の株を培養して、培養液の濁度(OD
660)を測定した。ただし、本培養は、CELLreactor(登録商標)フィルターキャップ遠心管(Greiner Bio-One)に前培養の培養液2mLを入れ、BioShaker BR-23FP(TAITEC)を用いて、30℃、210回転/分(rpm)で24時間振盪培養した。糖アルコールを含有する培地は、糖アルコール濃度が5、10、15および20(w/v)%のEry培地およびSol培地を用いた。糖アルコールを含有する培地を用いた培養液の濁度は、コントロールの培地を用いた場合の濁度を100とした比濁度(%)で表した。その結果を
図2に示す。
【0033】
図2に示すように、Ery培地の比濁度は、いずれの糖アルコール濃度においても、コントロールおよびSol培地と比較して小さかった。すなわち、エリスリトールを含有する培地を用いた場合は、エリスリトールの濃度の大小にかかわらず、他の培地(糖アルコールを含有しない培地、同濃度のD-ソルビトールを含有する培地)を用いた場合と比較して、菌体濃度が顕著に小さかった。この結果から、エリスリトールは、濃度の大小にかかわらず、効果的に体臭原因菌の数を抑制できることが明らかになった。
【0034】
(2)3番および4番の株
実施例1に記載の方法により3番および4番の株を培養して濁度(OD
660)を測定した。ただし、本培養の培地は、エリスリトール濃度が6.7、10、15および20(w/v)%のEry培地と、糖アルコールを含有しない802培地(コントロール)とを用いた。Ery培地を用いた培養液の濁度は、コントロールの培地を用いた場合の濁度を100とした比濁度(%)で表した。その結果を
図3に示す。
【0035】
図3に示すように、エリスリトールの濃度が6.7、10、15および20(w/v)%のいずれの場合も、比濁度は100%よりも顕著に小さかった。すなわち、エリスリトールを含有する培地を用いた場合は、エリスリトールの濃度の大小にかかわらず、糖アルコールを含有しない培地を用いた場合と比較して、菌体濃度が顕著に小さかった。この結果から、エリスリトールは、濃度の大小にかかわらず、効果的に体臭原因菌の数を抑制できることが明らかになった。
【0036】
<実施例3>臭気抑制効果の検討
特許文献6(特開2003-24422号公報、[0002]など)および特許文献7(特表2009-508478号公報、[0003]など)には、足臭の主たる原因物質がイソ吉草酸と考えられていること、および、イソ吉草酸はL-ロイシンの酵素的変換により生成される可能性があることが記載されている。そこで、L-ロイシンを含有する培地にて体臭原因菌を培養し、エリスリトールによる臭気の抑制効果を検討した。
【0037】
具体的には、実施例1に記載の方法により1番の株を培養した。ただし、802培地は、ロイシンを0.5mg/mLおよびグルコースを0.2(w/v)%となるよう添加したものを用いた。また、本培養の培地は、Ery培地(エリスリトール濃度が20(w/v)%)と、糖アルコールを含有しない802培地(エリスリトール濃度が0%)とを用いた。また、本培養の培養時間は24時間とした。本培養の培養液について、実施例1に記載の方法により濁度(OD
660)を測定した。また、Kunkun body(登録商標)(コニカミノルタ(株))のわき臭測定モードにて臭いの強度を測定した。当該わき臭測定モードは、イソ吉草酸およびアンモニアの濃度を検出して腋臭の強さを測定するものである。その結果を
図4に示す。
【0038】
図4に示すように、培養液の濁度は、培地のエリスリトール濃度が20(w/v)%の場合は0%の場合と比較して顕著に小さかった。わき臭の強度もまた、エリスリトール濃度が20(w/v)%の場合は、0%の場合と比較して、顕著に小さかった。すなわち、エリスリトールを含有する培地を用いた場合は、含有しない培地を用いた場合と比較して、培養液の菌体濃度が顕著に小さく、また、わき臭の強度が顕著に小さかった。この結果から、エリスリトールは、体臭原因菌の数を抑制するとともに、体臭を抑制できることが明らかになった。