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特開2024-23987ニーボルスタ及びニーボルスタ用の硬質ポリウレタンフォーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023987
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ニーボルスタ及びニーボルスタ用の硬質ポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/045 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
B60R21/045 332
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023221948
(22)【出願日】2023-12-27
(62)【分割の表示】P 2020106331の分割
【原出願日】2020-06-19
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】神谷 健太郎
(57)【要約】
【課題】衝撃の緩和を安定して行うことが可能なニーボルスタの提供。
【解決手段】ニーボルスタ10は、車両90の衝突時に乗員Jの膝Hを受け止めて、硬質ポリウレタンフォーム40の圧縮破壊によって膝Hへの衝撃を緩和し、硬質ポリウレタンフォーム40を収容する収容器11と、収容器11の一部を構成し、車両90に固定される第1容器構成部20と、収容器11の他の一部を構成し、第1容器構成部20に対して硬質ポリウレタンフォーム40を間に挟んで硬質ポリウレタンフォーム40の圧縮方向で対向する第2容器構成部30と、第2容器構成部30の前記圧縮方向への移動を許容しかつ前記圧縮方向と交差する方向への移動を規制する移動規制部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の衝突時に乗員の膝を受け止めて、硬質ポリウレタンフォームの圧縮破壊によって前記膝への衝撃を緩和するニーボルスタであって、
前記硬質ポリウレタンフォームを収容する収容器と、
前記収容器の一部を構成し、前記車両に固定される第1容器構成部と、
前記収容器の他の一部を構成し、前記第1容器構成部に対して前記硬質ポリウレタンフォームを間に挟んで前記硬質ポリウレタンフォームの圧縮方向で対向する第2容器構成部と、
前記第2容器構成部の前記圧縮方向への移動を許容しかつ前記圧縮方向と交差する方向への移動を規制する移動規制部と、を備えるニーボルスタ。
【請求項2】
前記第1容器構成部は、前記硬質ポリウレタンフォームの前記圧縮方向の一端部に嵌合する第1嵌合壁と、前記硬質ポリウレタンフォームの前記圧縮方向の一端面に当接する第1端部壁とを有し、
前記第2容器構成部は、前記硬質ポリウレタンフォームの前記圧縮方向の他端部に嵌合する第2嵌合壁と、前記硬質ポリウレタンフォームの前記圧縮方向の他端面に当接する第2端部壁とを有する、請求項1に記載のニーボルスタ。
【請求項3】
前記移動規制部は、前記第1容器構成部と前記第2容器構成部の一方から他方側に延びる複数のアームと、前記第1容器構成部と前記第2容器構成部の他方に設けられ、前記アームが前記圧縮方向で貫通した貫通孔を有するアームガイドと、からなる、請求項1又は2に記載のニーボルスタ。
【請求項4】
前記硬質ポリウレタンフォームと前記収容器のうち前記圧縮方向で対向して互いに押圧し合う1対の押圧対向面同士の当接面積が前記硬質ポリウレタンフォームの圧縮破壊の過程で段階的に大きくなるように、前記1対の押圧対向面の少なくとも一方に当接突部が設けられている、請求項1から3の何れか1の請求項に記載のニーボルスタ。
【請求項5】
前記第1容器構成部と前記硬質ポリウレタンフォームのうち前記圧縮方向で対向して互いに押圧し合う1対の押圧対向面は、面当接し合う曲面になっている、請求項1から3の何れか1の請求項に記載のニーボルスタ。
【請求項6】
前記第2容器構成部のうち前記膝を受ける膝受け面には、前記乗員の体の左右の中心から離れるに従って前記車両の後側に向かうように傾斜しかつ外側に膨らんだ膨出曲面が備えられている請求項1から5の何れか1の請求項に記載のニーボルスタ。
【請求項7】
前記第1容器構成部と第2容器構成部には、互いに係合して前記第1容器構成部と前記第2容器構成部とが離隔することを規制する係合部が設けられている、請求項1から6の何れか1の請求項に記載のニーボルスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の衝突時に乗員の膝を受け止めて、膝への衝撃を緩和するニーボルスタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ニーボルスタとして、硬質ポリウレタンフォームからなり、その圧縮破壊によって衝撃の緩和を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-327066号公報(段落[0017]、[0018]、図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したニーボルスタでは、せん断によって圧縮破壊が十分に進まず衝撃緩和が十分にできなくなるという事態が生じ得た。そのため、衝撃の緩和を安定して行うことが可能なニーボルスタが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明は、車両の衝突時に乗員の膝を受け止めて、硬質ポリウレタンフォームの圧縮破壊によって前記膝への衝撃を緩和するニーボルスタであって、前記硬質ポリウレタンフォームを収容する収容器と、前記収容器の一部を構成し、前記車両に固定される第1容器構成部と、前記収容器の他の一部を構成し、前記第1容器構成部に対して前記硬質ポリウレタンフォームを間に挟んで前記硬質ポリウレタンフォームの圧縮方向で対向する第2容器構成部と、前記第2容器構成部の前記圧縮方向への移動を許容しかつ前記圧縮方向と交差する方向への移動を規制する移動規制部と、を備えるニーボルスタである。
【0006】
請求項2の発明は、前記第1容器構成部は、前記硬質ポリウレタンフォームの前記圧縮方向の一端部に嵌合する第1嵌合壁と、前記硬質ポリウレタンフォームのうち前記圧縮方向の一端面に当接する第1端部壁とを有し、前記第2容器構成部は、前記硬質ポリウレタンフォームのうち前記圧縮方向の他端部に嵌合する第2嵌合壁と、前記硬質ポリウレタンフォームのうち前記圧縮方向の他端面に当接する第2端部壁とを有する、請求項1に記載のニーボルスタである。
【0007】
請求項3の発明は、前記移動規制部は、前記第1容器構成部と前記第2容器構成部の一方から他方側に延びる複数のアームと、前記第1容器構成部と前記第2容器構成部の他方に設けられ、前記アームが前記圧縮方向で貫通した貫通孔を有するアームガイドと、からなる、請求項1又は2に記載のニーボルスタである。
【0008】
請求項4の発明は、前記硬質ポリウレタンフォーム及び前記収容器のうち前記圧縮方向で対向して互いに押圧し合う1対の押圧対向面同士の当接面積が前記硬質ポリウレタンフォームの圧縮破壊の過程で段階的に大きくなるように、前記1対の押圧対向面の少なくとも一方に当接突部が設けられている、請求項1から3の何れか1の請求項に記載のニーボルスタである。
【0009】
請求項5の発明は、前記第1容器構成部及び前記硬質ポリウレタンフォームのうち前記圧縮方向で対向して互いに押圧し合う1対の押圧対向面は、面当接し合う曲面になっている、請求項1から3の何れか1の請求項に記載のニーボルスタである。
【0010】
請求項6の発明は、前記第2容器構成部のうち前記膝を受ける膝受け面には、前記乗員の体の左右の中心から離れるに従って前記車両の後側に向かうように傾斜しかつ外側に膨らんだ膨出曲面が備えられている請求項1から5の何れか1の請求項に記載のニーボルスタである。
【0011】
請求項7の発明は、前記第1容器構成部と第2容器構成部には、互いに係合して前記第1容器構成部と前記第2容器構成部とが離隔することを規制する係合部が設けられている、請求項1から6の何れか1の請求項に記載のニーボルスタである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1のニーボルスタは、硬質ポリウレタンフォームを収容する収容器を有し、収容器には、硬質ポリウレタンフォームの圧縮方向で対向する第1及び第2容器構成部が設けられる。そして、第1容器構成部が車両に固定されると共に、第2容器構成部が、移動規制部によって硬質ポリウレタンフォームの圧縮方向と交差する方向への移動を規制される。従って、乗員の膝を受け止めるときに圧縮の過程で仮に硬質ポリウレタンフォームにせん断が生じても、硬質ポリウレタンフォームのうち第2容器構成部側の部分が第1容器構成部側の部分に対してずれることを抑制可能となる。これにより、硬質ポリウレタンフォームをさらに圧縮させて衝撃を緩和させることが可能となり、従来よりもニーボルスタによる衝撃緩和を安定して行うことが可能となる。
【0013】
請求項2のニーボルスタでは、第1容器構成部の第1端部壁と第2容器構成部の第2端部壁とで硬質ポリウレタンフォームを圧縮することができる。また、第1嵌合壁と第2嵌合壁に硬質ポリウレタンフォームが嵌合されるので、硬質ポリウレタンフォームが圧縮方向と交差する方向へずれ難くなり、膝を受け止め易くなると共に、せん断によるずれがより生じ難くなり、衝撃緩和をより安定して行うことが可能となる。また、例えば、第1容器構成部と第2容器構成部のうち一方が他方に被さるように収容器を構成すれば、硬質ポリウレタンフォームの圧縮ストロークを長くすることが可能となる。
【0014】
請求項3のニーボルスタのように、移動規制部を、複数のアームとそれらアームが貫通する貫通孔とを有する構成としてもよい。この場合、移動規制部の形成を容易にすることが可能となる。
【0015】
請求項4のニーボルスタでは、硬質ポリウレタンフォームの圧縮開始時には、収容器と硬質ポリウレタンフォームの押圧対向面の一部のみが当接することになるので、押圧対向面同士が全面で当接する場合に比べて、受け止める膝への初期の反力を小さくすることが可能となる。また、硬質ポリウレタンフォームがさらに圧縮されると、押圧対向面の当接面積が、硬質ポリウレタンフォームの圧縮破壊の過程で段階的に大きくなる。従って、硬質ポリウレタンフォームが受ける荷重を段階的に上昇させることが可能となる。これにより、荷重を徐々に上昇させる場合に比べて、衝撃を吸収するための硬質ポリウレタンフォームの圧縮ストロークを短くすることが可能となり、ニーボルスタのコンパクト化を図ることが可能となる。
【0016】
請求項5のニーボルスタでは、第1容器構成部と硬質ポリウレタンフォームのうち圧縮方向で対向して押圧し合う押圧対向面が、面当接し合う曲面になっているので、平坦面である場合に比べて、ニーボルスタに対する膝の衝突角度が変わっても、硬質ポリウレタンフォームを第1容器構成部の押圧対向面で受け止め易くすることができる。なお、これら押圧対向面は、収容器の外側に、凸となっていてもよいし、凹となっていてもよい。前者の場合、例えば、第1容器構成部の押圧対向面は、円弧状又は半球状の凹面となっていてもよい。
【0017】
請求項6のニーボルスタでは、第2容器構成部のうち乗員の膝を受ける膝受け面が、乗員の体の左右の中心から離れるに従って車両の後側に向かうように傾斜する。即ち、膝受け面が乗員の左右の中心側を向いて傾斜するので、乗員の膝を乗員の左右の中心側に受け止めることが可能となる。また、膝受け面が外側に膨らんだ膨出曲面となっていることで、平坦面である場合に比べて、受け止め易い膝の衝突角度の範囲を広くすることが可能となる。
【0018】
請求項7のニーボルスタによれば、第2容器構成部が第1容器構成部から離れることが規制されるので、ニーボルスタの配置姿勢の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係るニーボルスタの車両への取り付け状態を示す側面図
図2】車両に取り付けられたニーボルスタの平面図
図3】ニーボルスタの正面側から見た斜視図
図4】ニーボルスタの背面側から見た斜視図
図5】ニーボルスタの正面図
図6】ニーボルスタの平面図
図7】第1容器構成部に受容されたポリウレタンフォームの斜視図
図8】ニーボルスタの図5におけるA-A断面図
図9】ニーボルスタの図5におけるB-B断面図
図10】ニーボルスタの図5におけるC-C断面図
図11】圧縮されたニーボルスタのA-A断面図
図12】圧縮されたニーボルスタのC-C断面図
図13】第2実施形態に係るニーボルスタの側面図
図14】ニーボルスタの正面側から見た斜視図
図15】ニーボルスタの背面側から見た斜視図
図16】第1容器構成部に受容されたポリウレタンフォームの斜視図
図17】ニーボルスタの側断面図
図18】圧縮されたニーボルスタの側断面図
図19】解析でニーボルスタに衝突させる衝突体の側面図
図20】解析結果を示すグラフ
図21】(A)他の実施形態に係るニーボルスタの側断面図、(B)他の実施形態に係るニーボルスタの側断面図
図22】他の実施形態に係るニーボルスタの側断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
図1及び図2に示されるように、本実施形態のニーボルスタ10は、車両90のインストルメントパネル91の裏側(車両90の前側)に配置される。ニーボルスタ10は、着座した乗員Jの左右の膝Hに前側から対向する位置にそれぞれ配置される。そして、車両90の衝突時等に乗員Jの膝Hが前側に移動したときに、膝Hを受け止めて、膝Hへの衝撃を緩和する。
【0021】
詳細には、車両90におけるインストルメントパネル91の裏側には、車幅方向に延びるパイプ状のリインフォースメント92が設けられている。リインフォースメント92のうち乗員Jの左右の膝Hに対向する2箇所には、前側に突出するブラケット93がそれぞれ固定されている。ニーボルスタ10は、ブラケット93の前面にそれぞれ取り付けられ、インストルメントパネル91に近接配置される。そして、車両90の衝突時等に乗員Jの膝Hが前側に移動してインストルメントパネル91に衝突すると、インストルメントパネル91が前側に押し込まれて変形し、ニーボルスタ10がインストルメントパネル91ごと膝Hを受け止める。
【0022】
図3及び図4に示されるように、ニーボルスタ10は、略直方体状をなしていて、硬質のポリウレタンフォーム40(以下、単にポリウレタンフォーム40という。)を収容器11に収容してなる。なお、本実施形態では、収容器11は、樹脂製であるが、金属製であってもよい。
【0023】
収容器11は、ポリウレタンフォーム40を挟む第1及び第2容器構成部20,30を有する。これら容器構成部20,30は、乗員Jの膝Hとニーボルスタ10との対向方向で互いに対向するように配置される。そして、ニーボルスタ10は、乗員Jの膝Hを受け止めたときにポリウレタンフォーム40が圧縮破壊されることで膝Hへの衝撃を緩和する。ニーボルスタ10では、第1及び第2容器構成部20,30の対向方向は、ポリウレタンフォーム40の圧縮方向でもある。
【0024】
図5に示されるように、ニーボルスタ10は、第1及び第2容器構成部20,30の対向方向から見ると、長方形状をなし、その長手方向が上下方向に沿うように配置される。本実施形態では、乗員Jの左膝用と右膝用のニーボルスタ10は、左右対称の構造となっているので、以下では、右膝用のニーボルスタ10について詳説する。
【0025】
図3及び図4に示されるように、第1及び第2容器構成部20,30は、互いに向かって開口した箱形状をなし、第1容器構成部20が車両90(詳細には上述のブラケット93)に固定され、第2容器構成部30が乗員J側に配置される。なお、第2容器構成部30は、第1容器構成部20に被せられるように第1容器構成部20よりも大きく開口している。
【0026】
第1容器構成部20は、略長方形状の底壁21と、底壁21の外縁部から立設された外周壁22とからなる。外周壁22は、底壁21の長辺部から立設され互いに車幅方向で対向する1対の長辺側壁23と、底壁21の短辺部から立設され互いに上下に対向する1対の短辺側壁24と、からなる。1対の長辺側壁23と1対の短辺側壁24は、それぞれ底壁21から遠ざかるにつれて互いに離れるように配置される。なお、本実施形態では、底壁21、外周壁22が、それぞれ特許請求の範囲に記載の「第1端部壁」、「第1嵌合壁」に相当する。
【0027】
第1容器構成部20の底壁21は、上述のブラケット93に固定される。底壁21のうちブラケット93と対向する基端面には、ニーボルスタ10をブラケット93に固定するための固定具29が取り付けられる(図4参照)。なお、固定具29は、例えば底壁21の一方の(乗員Jの左右方向の中央側の)長辺部に配置される。
【0028】
図4及び図10に示されるように、底壁21は、長辺方向(即ち、上下方向)から見て、外側に膨出する円弧状となっている。また、底壁21は、第1及び第2容器構成部20,30の対向方向に対して傾いていて、固定具29が配置された一方の長辺部から他方の長辺部に向かうにつれて第2容器構成部30側(即ち、乗員J側)に向かうように配置される。本実施形態では、底壁21が円弧状をなすことで、第1容器構成部20の内側面のうち、ポリウレタンフォーム40を圧縮方向で受け止める押圧対向面20Mが、上下方向から見て円弧状の凹面となっている。
【0029】
なお、底壁21の基端面のうち固定具29と反対側の長辺部には、底リブ28が突出している。底リブ28は、長辺方向に延びる複数の縦リブ28Tと、短辺方向に延びる複数の横リブ28Yが交差してなる。底リブ28は、その突出先端縁が、底壁21の基端面のうち固定具29側の長辺部と略面一になるように、固定具29から離れるにつれて突出量を大きくしている。
【0030】
図6及び図7に示されるように、第1容器構成部20の容器開口の開口縁からは、複数のアーム27が突出している。具体的には、アーム27は、外周壁22の周方向の複数位置から、第2容器構成部30側に直線状に延長された突片状をなしている。アーム27の先端部には、外周壁22の外側に向かって張り出した係合爪部27Tが設けられている。なお、本実施形態の例では、アーム27は、各長辺側壁23を等分する2箇所から延びるものと、各短辺側壁24を等分する1箇所から延びるものとの、合計6つ設けられている。
【0031】
図3に示されるように、第2容器構成部30は、略長方形状の底壁31と、底壁31の外縁部から立設された外周壁32とからなる。外周壁32は、底壁31の長辺部から立設され互いに車幅方向で対向する1対の長辺側壁33と、底壁21の短辺部から立設され互いに上下に対向する1対の短辺側壁34と、を有する。1対の長辺側壁33と1対の短辺側壁34は、それぞれ底壁31から遠ざかるにつれて互いに離れるように配置される。また、外周壁32のうち底壁31から離れた側の端部(即ち、第2容器構成部30の開口縁)からは、外側にフランジ部32Fが張り出している。なお、本実施形態では、底壁31、外周壁32が、それぞれ特許請求の範囲に記載の「第2端部壁」、「第2嵌合壁」に相当する。
【0032】
第2容器構成部30の底壁31は、長辺方向(上下方向)から見て、第1容器構成部20の底壁21と同様に、外側に膨出する円弧上をなすと共に第1及び第2容器構成部20,30の対向方向に対して傾いている。第2容器構成部30の底壁31の外側面(先端面)は、乗員Jの膝Hを受ける膝受け面30Mとなっている。
【0033】
図3及び図5に示されるように、第2容器構成部30の底壁31を長辺方向で等分する2位置には、短辺方向に端から端まで延びる溝部35Uが形成されている。溝部35Uは、底壁31を内側(第1容器構成部20側)に隆起させてなり、底壁31の内側面のうち溝部35Uの反対側部分には、短辺方向に延びる突条部35T(図8参照)が形成されている。なお、溝部35Uには、溝幅方向に複数のリブ35Rが架け渡されている。
【0034】
図3及び図4に示されるように、第2容器構成部30の外周壁32には、第1及び第2容器構成部20,30の対向方向に延びる直線孔部36が貫通形成されている。直線孔部36は、外周壁32の周方向の複数位置に形成されていて、本実施形態の例では、直線孔部36は、各長辺側壁33を等分する2箇所と、各短辺側壁34を等分する1箇所に設けられている。即ち、各直線孔部36は、外周壁32の周方向で、第1容器構成部20のアーム27と対応する位置に配置されている。なお、直線孔部36のうち底壁31から離れた側の末端は、フランジ部32Fに隣接している。また、長辺側壁33に設けられた直線孔部36は、上述した底壁31の溝部35Uに連絡している。各直線孔部36の開口縁のうち外周壁32の周方向で対向する両辺部からは、外側に直線状のリブ36Rが張り出している。
【0035】
ここで、収容器11では、第1容器構成部20の各アーム27は、第2容器構成部30の内側に挿通され、各直線孔部36を第1及び第2容器構成部20,30の対向方向に貫通する。これにより、第2容器構成部30は、第1容器構成部20に対して互いの対向方向(即ち、ポリウレタンフォーム40の圧縮方向)での移動が許容されると共に、当該対向方向と交差する方向への移動が規制される。
【0036】
また、アーム27の先端部の係合爪部27Tは、直線孔部36から第2容器構成部30の外側に露出し、第1容器構成部20に対して第2容器構成部30が対向方向で遠ざかるように移動すると、係合爪部27Tが直線孔部36の開口縁のうちフランジ部32F側の部分に係合する。これにより、第2容器構成部30が第1容器構成部20から離隔することが規制される。
【0037】
なお、詳細には、図8及び図9に示されるように、第1容器構成部20と第2容器構成部30が、互いに向かって各外周壁22,32を広げるように構成されているので、直線状のアーム27を直線孔部36に挿通するのが容易となっている。
【0038】
図7には、収容器11に収容されるポリウレタンフォーム40が示されている。ポリウレタンフォーム40は、略直方体状をなしている。詳細には、ポリウレタンフォーム40は、第1及び第2容器構成部20,30の対向方向(即ち圧縮方向)における途中位置Lから両端側に向かって断面積が小さくなる形状となっている。
【0039】
ポリウレタンフォーム40のうち途中位置Lから基端側の基端側部分41は、第1容器構成部20側に配置され、第1容器構成部20の内側面に対応する略四角錐台形状をなして、外周壁22に嵌合すると共に、底壁21に面当接する(図8及び図9参照)。即ち、ポリウレタンフォーム40のうち底壁21と対向して押圧し合う押圧対向面40Mは、上下方向から見て円弧状に膨出した曲面となっている。
【0040】
図7及び図8に示されるように、ポリウレタンフォーム40のうち途中位置Lよりも第2容器構成部30側に配置される先端側部分42は、ベース部42Bと、ベース部42Bから段状に突出した当接突部43と、からなる。ベース部42Bは、扁平な四角錐台形状をなし、途中位置Lで基端側部分41と連絡している。
【0041】
本実施形態では、第1及び第2容器構成部20,30の対向方向から見たときに、ポリウレタンフォーム40が長方形状をなし、その長手方向に、当接突部43が複数並んで設けられている。本実施形態の例では、当接突部43は、3つ設けられ、中央の当接突部43Aが突出量が最も大きくなっていると共に、両側の2つの当接突部43Bは、突出量が互いに同じになっている。中央の当接突部43Aは、第2容器構成部30の底壁31と当接又は近接するように配置される(図8及び図9参照)。両側の2つの当接突部43Bは、第2容器構成部30の底壁31と間隔をあけて配置されている(図8及び図10参照)。なお、図9及び図10に示されるように、各当接突部43の突出先端面は、第2容器構成部30の底壁31の内側面に対応した上方視円弧状の膨出曲面となっている。なお、各当接突部43の間の谷部は、第2容器構成部30の突条部35Tに略対応した形状となっている。
【0042】
ニーボルスタ10では、車両90の衝突時には、乗員Jの膝Hと対向配置される第2容器構成部30のうち上述の膝受け面30Mが膝Hを受けることになる。そして、膝受け面30Mで膝Hを受け止めると、図8図9)から図11図12)への変化に示されるように、第2容器構成部30が第1容器構成部20に対して近づくように移動し、ポリウレタンフォーム40が圧縮される。ここで、ポリウレタンフォーム40のうち第2容器構成部30を最初に受け止める部分は、3つの当接突部43のうち最も底壁31に近い中央の当接突部43Aになる。そして、膝Hにより第2容器構成部30がさらに押し込められていくと、中央の当接突部43Aが圧縮して潰れ(図11及び図12参照)、第2容器構成部30が、ポリウレタンフォーム40の先端面のうち中央の当接突部43A以外の部分にも当接する。本実施形態では、次に両側の当接突部43Bも第2容器構成部30に当接し、以降は、3つの当接突部43で第2容器構成部30を受けながら、ポリウレタンフォーム40が圧壊されることとなる。なお、このとき、第2容器構成部30の突条部35Tが当接突部43間の谷部に受容されその谷底に当接する。また、本実施形態では、ポリウレタンフォーム40と第1の容器構成部30とのうち圧縮方向で対向する面(上述の押圧対向面40M,20M)は、ポリウレタンフォーム40の圧縮過程で全面が面当接する。
【0043】
このように、本実施形態のニーボルスタ10では、乗員Jの膝Hの衝突によるポリウレタンフォーム40の圧縮破壊の過程において、ポリウレタンフォーム40と収容器11とのうち圧縮方向で押圧し合う面同士の当接面積が、段階的に大きくなる。
【0044】
本実施形態のニーボルスタ10では、ポリウレタンフォーム40の圧縮開始時には、収容器11とポリウレタンフォーム40のうち圧縮方向で対向する押圧対向面の一部のみが当接することになるので、押圧対向面同士が全面で当接する場合に比べて、膝Hへの初期の反力を小さくすることが可能となる。また、ポリウレタンフォーム40がさらに圧縮されると、これら押圧対向面の当接面積が、ポリウレタンフォーム40の圧縮破壊の過程で段階的に大きくなる。従って、ポリウレタンフォーム40が受ける荷重を段階的に上昇させることが可能となる。これにより、荷重を徐々に上昇させる場合に比べて、衝撃を吸収するためのポリウレタンフォーム40の圧縮ストロークを短くすることが可能となり、ニーボルスタ10のコンパクト化を図ることが可能となる。
【0045】
なお、ポリウレタンフォーム40のうち乗員Jの膝Hと対向する先端面が、このように段状の当接突部43A,43B等が設けられる凹凸面であっても、乗員J側から第2容器構成部30で覆うことで、膝Hを受ける膝受け面30Mを、膝Hを受け止め易い形状にすることが可能となる。
【0046】
以上では、右膝用のニーボルスタ10について説明したが、左膝用のニーボルスタ10についても、構造が右膝用と左右対称となっている点以外は右膝用のニーボルスタ10と同様である。本実施形態では、図2に示されるように、車両90に、乗員Jの左膝用と右膝用にニーボルスタ10が左右対称に配置される。ここで、各ニーボルスタ10の膝受け面30Mは、乗員Jの体の左右の中心から離れるに従って車両90の後側に向かうように傾斜した配置となる。即ち、膝受け面30Mが乗員Jの左右の中心側を向いて傾斜するので、乗員Jの膝Hを乗員Jの左右の中心側に受け止めることが可能となる。また、膝受け面30Mが外側に膨らんだ膨出曲面となっていることで、平坦面である場合に比べて、受け止め易い膝Hの衝突角度の範囲を広くすることが可能となる。
【0047】
ここで、ポリウレタンフォーム40の圧縮の過程で、ポリウレタンフォーム40に例えば圧縮方向に対して斜めにせん断が生じる場合がある。この場合、ポリウレタンフォーム40のうちそのせん断箇所よりも先端側の部分と基端側の部分とが互いにずれると、ポリウレタンフォーム40の圧縮を十分に行い難くなり、ポリウレタンフォーム40による衝撃緩和が十分にできなくなるという問題が生じ得る。
【0048】
これに対し、本実施形態のニーボルスタ10は、ポリウレタンフォーム40を収容する収容器11を有し、収容器11には、ポリウレタンフォーム40の圧縮方向で対向する第1及び第2容器構成部20,30が設けられる。そして、第1容器構成部20が車両90に固定されると共に、第2容器構成部30が、ポリウレタンフォーム40の圧縮方向と交差する方向への移動を規制される。従って、乗員Jの膝Hを受け止めるときに圧縮の過程で仮にポリウレタンフォーム40にせん断が生じても、ポリウレタンフォーム40のうち第2容器構成部30側の部分が第1容器構成部20側の部分に対してずれることを抑制可能となる。これにより、ポリウレタンフォーム40をさらに圧縮させて衝撃を緩和させることが可能となり、従来よりもニーボルスタ10による衝撃緩和を安定して行うことが可能となる。
【0049】
また、本実施形態のニーボルスタ10では、第1容器構成部20の外周壁22と第2容器構成部30の外周壁32にポリウレタンフォーム40が嵌合される。従って、ポリウレタンフォーム40が圧縮方向と交差する方向へずれ難くなり、膝Hを受け止め易くなると共に、せん断によるずれがより生じ難くなり、膝Hへの衝撃緩和をより安定して行うことが可能となる。また、乗員Jの着座姿勢や、乗員Jの体格等により、ニーボルスタ10への膝Hの衝突方向が、第1及び第2容器構成部20,30の対向方向に対して傾斜することが考えられる。しかしながら、この場合でも、ニーボルスタ10では、この対向方向に対して交差する方向への第2容器構成部30の移動が規制されるので、ポリウレタンフォーム40にせん断が生じることを抑制可能となる。
【0050】
また、ニーボルスタには、長い圧縮ストロークでも安定して荷重を受けられることが求められる。これに対して、本実施形態のニーボルスタ10では、上述のように、ポリウレタンフォーム40を収容器11で収容して衝撃を受けたときに割れないように圧壊させることで、圧縮ストロークが長くても安定して荷重を受けることができ、一定荷重で長ストロークの圧壊が可能となる。また、ポリウレタンフォーム40を収容する収容器11が設けられることで、圧縮過程で割れが生じた場合でもポリウレタンフォーム40が部分的に脱落することを抑制可能となる。これらによっても、ニーボルスタ10による衝撃緩和を従来よりも安定して行うことが可能となる。
【0051】
また、本実施形態では、このように第2容器構成部30の移動を規制する移動規制部を、複数のアーム27とそれらアーム27が貫通する直線孔部36とを有する構成としているので、移動規制部を容器に形成することが可能となる。
【0052】
本実施形態では、第1及び第2容器構成部20,30に、互いに係合して離隔することを規制する係合部(係合爪部27T及び直線孔部36の開口縁)が設けられるので、第2容器構成部30が第1容器構成部20から離れることが規制される。これにより、ニーボルスタ10の配置姿勢の自由度を高めることができる。例えば、図1に示されるように、車両90の衝突時には、乗員Jの膝Hが乗員Jのかかとを支点として回動するように前方斜め上側に移動し易いと考えられるため、ニーボルスタ10は、乗員Jの膝Hに、前方斜め上側から対向するように配置される。この場合、第2容器構成部30は、車両90に固定された第1容器構成部20よりも下側に配置されるが、上述の係合部により、第2容器構成部30が第1容器構成部20から離隔することが規制されるので、第2容器構成部30の脱落を防ぐことが可能となる。
【0053】
本実施形態では、第1容器構成部20とポリウレタンフォーム40のうち圧縮方向で対向して互いに押圧し合う押圧対向面20M,40Mが、面当接し合う曲面になっている。従って、押圧対向面20M,40Mが平坦面である場合に比べて、ニーボルスタ10に対する膝Hの衝突角度が変わっても、ポリウレタンフォーム40を第1容器構成部20の押圧対向面20Mで受け止め易くすることができる。
【0054】
また、第1容器構成部20に第2容器構成部30が被さることができるので、ポリウレタンフォーム40の圧縮ストロークを長くすることが可能となる。これにより、膝Hへの荷重を小さくしながら衝撃緩和を行うことが可能となる。
【0055】
なお、本実施形態では、第2容器構成部30の直線孔部36が、特許請求の範囲に記載の「貫通孔」に相当し、外周壁32が、特許請求の範囲に記載の「アームガイド」に相当し、アーム27及び外周壁32が、特許請求の範囲に記載の「移動規制部」に相当する。また、アーム27の係合爪部27Tと直線孔部36の開口縁とが、特許請求の範囲に記載の「係合部」に相当する。
【0056】
[第2実施形態]
図13及び図14に示す第2実施形態のニーボルスタ10Vは、第1実施形態のニーボルスタ10を変形したものである。第2実施形態のニーボルスタ10Vは、略円柱状をなし、その軸方向で乗員Jの膝H(図18参照)と対向するように車両90に取り付けられる。
【0057】
本実施形態では、ポリウレタンフォーム40Vを収容する収容器11Vは、ポリウレタンフォーム40Vをニーボルスタ10Vの軸方向に挟んだ第1及び第2容器構成部20V,30Vからなる。第1容器構成部20Vと第2容器構成部30Vは、略お碗状となっていて、互いに容器開口を突き合わせている。第2容器構成部30Vは、第1容器構成部20Vよりも大きく開口し、第1容器構成部20Vに被せられる。
【0058】
第1容器構成部20Vは、車両90のブラケット93に固定され、半球状に膨出した底壁21V(図17参照)と、底壁21Vの外縁部から立設された円筒状の外周壁22Vと、を有する。図15に示されるように、底壁21Vのうちブラケット93と対向する基端面には、第1容器構成部20V(即ち、ニーボルスタ10V)をブラケット93に固定するための固定具29が取り付けられる。なお、本実施形態の例では、固定具29は底壁21Vの中心部に取り付けられる。また、底壁21の基端面には、リブ28が突設されている。リブ28は、第1容器構成部20Vの周方向に延びる環状リブ28Hと、底壁21の中心付近から放射状に延びる放射リブ28Kと、が互いに交差してなる。リブ28は、リブ28の突出先端縁が、底壁21Vの中心部と略面一となるように、底壁21の中心から離れるにつれて突出量を大きくしている。
【0059】
図14に示されるように、第2容器構成部30Vは、半球状に膨出した底壁31Vと、底壁31Vの外縁部から立設された円筒状の外周壁32Vと、を有する。第2容器構成部30Vの底壁31Vの膝受け面30Mには、ニーボルスタ10Vの中心軸C(図17参照)回りに環状溝31Uが形成されている。底壁31Vの内側面のうち環状溝31Uの反対側の部分には、環状突部31T(図17参照)が形成されている。なお、環状溝31Uには、溝幅方向(径方向)に複数のリブ35Rが架け渡されている 。
【0060】
第1容器構成部20Vの容器開口の開口縁からは、上記第1実施形態と同様に、アーム27が外周壁22Vから延長されて第2容器構成部30V側に突出している。そして、アーム27は、第2容器構成部30Vに設けられた直線孔部36に挿通されている。また、アーム27の先端部の係合爪部27Tが、直線孔部36の開口縁に係合することで、第2容器構成部30Vが第1容器構成部20Vから離隔することが規制されている。なお、アーム27と直線孔部36とは、それぞれ第1容器構成部20Vと第2容器構成部30Vの周方向に等間隔に(例えば4箇所に)配置されている。
【0061】
図16に示されるように、ポリウレタンフォーム40Vは、中心軸C(図17参照)回りに対称な形状をなしている。ポリウレタンフォーム40Vのうち第2容器構成部30V側を向く先端面には、中心軸C回りに環状溝42Uが形成され、その内側部分が、ポリウレタンフォーム40Vの先端面において最も突出した当接突部43Vとなっている。また、ポリウレタンフォーム40Vは、第1及び第2容器構成部20V,30Vに嵌合している。
【0062】
図17から図18への変化に示されるように、上記第1実施形態と同様に、車両90の衝突時の乗員Jの膝Hの衝突により、膝受け面30Mが押し込まれると、第2容器構成部30Vが軸方向に押されて、まず当接突部43Vが圧縮されて潰される。その後、ポリウレタンフォーム40Vの先端面の略全体が、第2容器構成部30Vに面当接する。この圧縮の過程では、第1容器構成部20Vとポリウレタンフォーム40Vの基端面とは、圧縮方向で全体が面当接する。このように、本実施形態においても、圧縮過程において、収容器11Vとポリウレタンフォーム40Vとの圧縮方向における当接面積が、段階的に大きくなる。
【0063】
本実施形態のニーボルスタ10Vにおいても、上記第1実施形態のニーボルスタ10と同様の効果を奏することが可能となる。本実施形態のニーボルスタ10Vでは、膝受け面30Mが半球状をなしているので、乗員Jの膝Hの衝突方向が中心軸Cに対して上下左右に傾いている場合でも、膝Hを受け止め易くすることが可能となる。なお、本実施形態のニーボルスタ10Vは、左膝用も右膝用も同じ構造である。
【0064】
[シミュレーションによる確認]
上記第2実施形態に係るニーボルスタ10Vの効果を、コンピュータ解析にて確認した。具体的には、ニーボルスタ10Vに衝突体100を衝突させたときのニーボルスタ10Vの圧縮量と荷重の関係をシミュレーションした。
【0065】
<解析内容>
ニーボルスタ10Vへの衝突体100の衝突角度が異なる3条件について解析を行った。この解析では、衝突体100を平板とし、ニーボルスタ10Vへの衝突体100の衝突方向に対して、衝突体100の平板面が直角になるように(衝突方向が衝突体100の厚さ方向となるように)設定した(図19参照)。解析1では、衝突体100(図19において2点鎖線で示されている。)をニーボルスタ10Vに、ニーボルスタ10Vの中心軸C上で衝突させた。解析2では、衝突体100(図19において1点鎖線で示されている。)をニーボルスタ10Vに、中心軸Cからの傾き角度θ(図19参照)が15度となる方向で衝突させた。解析3では、衝突体100をニーボルスタ10Vに、中心軸Cからの傾き角度θが30度となる方向で衝突させた。なお、何れの場合においても、衝突体100の衝突方向が、第2容器構成部30Vの半球状の膝受け面30Mの衝突点における面直方向となるようにした。そのため、解析1,2では、衝突点が、第2容器構成部30Vの底壁31Vのうち環状溝31Uよりも内側の部分(当接突部43Vに当接される部分)に位置する。一方、解析3では、衝突点が、底壁31Vの環状溝31U付近となった。なお、衝突体100は、環状溝31Uの溝幅より大きいものを設定している。
【0066】
<解析結果>
図20のグラフは、各解析条件におけるニーボルスタ10Vの圧縮量と荷重の関係を示すものである。同グラフからわかるように、ニーボルスタ10Vによれば、衝突体の衝突角度が中心軸Cから30度の範囲で変化しても、同様の衝撃吸収特性(圧縮量及び荷重の変化特性)が得られることが確認できた。従って、ニーボルスタ10Vによれば、衝突体100の衝突角度が異なる場合であっても良好な衝撃吸収性を発揮することが可能となる。これは、ポリウレタンフォーム40Vと収容器11Vとのうち圧縮方向で対向して押圧し合う押圧対向面が、曲面(特に収容器11Vの外側に凸となる曲面)となっていることが効いているためと考えられる。なお、例えば、第2容器構成部30Vの底壁31Vと、第1容器構成部20Vの底壁21Vとの曲率半径を同じにしてもよく、この場合、膝受け面30Mで面直に衝突体100を受け止めたときに、ポリウレタンフォーム40Vを第1容器構成部20Vの底壁21Vでより受け止め易くすることが可能となる 。
【0067】
図20のグラフ内において2点鎖線で示す線は、ニーボルスタの衝撃吸収特性として階段状に荷重を変化させる場合の目標値を表している。同グラフから、解析条件1~3共に、衝撃吸収特性の上述の階段状の変化の発現が可能なことが確認された。従って、ポリウレタンフォーム40Vが圧縮するにつれて段階的に荷重が大きくなる荷重変化が求められる場合でも、当接突部43Vを設けることで、ポリウレタンフォーム40Vと収容器11Vとが圧縮方向で当接する面積を段階的に大きくすることができ、このような段階的な荷重変化を実現可能であることが確認できた。
【0068】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態では、第1容器構成部20と第2容器構成部30の両方とも容器状であったが、図21(A)に示すニーボルスタ10Wのように、一方の容器構成部のみ(同図の例では第2容器構成部30W)が容器状であってもよい。この場合、他方の容器構成部(同図の例では、第1容器構成部20W)は、例えば、角柱状や円柱状等であってもよい。なお、第1容器構成部20と第2容器構成部30のうち一方が他方に被さることで、第2容器構成部30が第1容器構成部20に対してポリウレタンフォーム40の圧縮方向と交差する方向に移動を規制されてもよい。この場合、アーム27と直線孔部36が設けられていなくてもよい。また、複数のアーム27が第2容器構成部30の外周壁32から第1容器構成部20側に延長して設けられると共に、複数の直線孔部36が第1容器構成部20の外周壁22に設けられてもよい。
【0069】
(2)上記実施形態では、ポリウレタンフォーム40の当接突部43が、第2容器構成部30との対向面に設けられていたが、図21(B)に示すニーボルスタ10Xのように第1容器構成部20との対向面に設けられていてもよいし、両方の容器構成部20,30との対向面に設けられていてもよい。また、図22に示すニーボルスタ10Zのように、第1容器構成部20又は第2容器構成部30のうちポリウレタンフォーム40と圧縮方向で対向して押圧し合う面に、当接突部11Tが設けられていてもよい。これらの構成によっても、ポリウレタンフォーム40と収容器11との圧縮方向での当接面積を、ポリウレタンフォーム40の圧縮過程で段階的に大きくすることが可能となる。なお、ポリウレタンフォーム40に当接突部43が設けられていなくてもよい。
【0070】
(3)上記実施形態では、ポリウレタンフォーム40と第1容器構成部20との互いに押圧し合う押圧対向面20M,40Mが、収容器11の外側に、凸となっていたが、凹となっていてもよい。即ち、第1容器構成部20の押圧対向面20Mが、円弧状又は半球状等の突状曲面となっていると共に、ポリウレタンフォーム40の押圧対向面40Mが、円弧状又は半球状の凹状曲面となっていてもよい。
【0071】
(4)上記実施形態では、ニーボルスタ10が、乗員Jの左右の膝Hごとに設けられていたが、例えば、乗員Jの両膝を共に受け止められるような幅の広いものであってもよい
【符号の説明】
【0072】
10 ニーボルスタ
11 収容器
20 第1容器構成部
30 第2容器構成部
J 乗員
H 膝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【手続補正書】
【提出日】2024-01-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の衝突時に乗員の膝を受け止めて、硬質ポリウレタンフォームの圧縮破壊によって前記膝への衝撃を緩和するニーボルスタであって、
前記硬質ポリウレタンフォームと、
前記硬質ポリウレタンフォームを収容する収容器と、を備え、
前記硬質ポリウレタンフォームと前記収容器との当接面積が、前記硬質ポリウレタンフォームの圧縮破壊の過程で段階的に大きくなるニーボルスタ。
【請求項2】
前記硬質ポリウレタンフォームは、段状に突出した突出量の異なる複数の当接突部を備え、
前記複数の当接突部と前記収容器との当接面積が、前記硬質ポリウレタンフォームの圧縮破壊の過程で段階的に大きくなる、請求項1に記載のニーボルスタ。
【請求項3】
前記複数の当接突部は、中央の前記当接突部の突出量が最も大きくなるように配置されている、請求項2に記載のニーボルスタ。
【請求項4】
段状に突出した突出量の異なる複数の突部を備える、ニーボルスタ用の硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項5】
前記複数の突部は、中央の前記突部の突出量が最も大きくなるように配置されている、請求項4に記載のニーボルスタ用の硬質ポリウレタンフォーム。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
上記課題を解決するためになされた発明の第1態様は、車両の衝突時に乗員の膝を受け止めて、硬質ポリウレタンフォームの圧縮破壊によって前記膝への衝撃を緩和するニーボルスタであって、前記硬質ポリウレタンフォームを収容する収容器と、前記収容器の一部を構成し、前記車両に固定される第1容器構成部と、前記収容器の他の一部を構成し、前記第1容器構成部に対して前記硬質ポリウレタンフォームを間に挟んで前記硬質ポリウレタンフォームの圧縮方向で対向する第2容器構成部と、前記第2容器構成部の前記圧縮方向への移動を許容しかつ前記圧縮方向と交差する方向への移動を規制する移動規制部と、を備えるニーボルスタである。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
発明の第2態様は、前記第1容器構成部は、前記硬質ポリウレタンフォームの前記圧縮方向の一端部に嵌合する第1嵌合壁と、前記硬質ポリウレタンフォームのうち前記圧縮方向の一端面に当接する第1端部壁とを有し、前記第2容器構成部は、前記硬質ポリウレタンフォームのうち前記圧縮方向の他端部に嵌合する第2嵌合壁と、前記硬質ポリウレタンフォームのうち前記圧縮方向の他端面に当接する第2端部壁とを有する、第1態様に記載のニーボルスタである。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
発明の第3態様は、前記移動規制部は、前記第1容器構成部と前記第2容器構成部の一方から他方側に延びる複数のアームと、前記第1容器構成部と前記第2容器構成部の他方に設けられ、前記アームが前記圧縮方向で貫通した貫通孔を有するアームガイドと、からなる、第1態様又は第2態様に記載のニーボルスタである。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
発明の第4態様は、前記硬質ポリウレタンフォーム及び前記収容器のうち前記圧縮方向で対向して互いに押圧し合う1対の押圧対向面同士の当接面積が前記硬質ポリウレタンフォームの圧縮破壊の過程で段階的に大きくなるように、前記1対の押圧対向面の少なくとも一方に当接突部が設けられている、第1態様から第3態様の何れか1の態様に記載のニーボルスタである。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
発明の第5態様は、前記第1容器構成部及び前記硬質ポリウレタンフォームのうち前記圧縮方向で対向して互いに押圧し合う1対の押圧対向面は、面当接し合う曲面になっている、第1態様から第3態様の何れか1の態様に記載のニーボルスタである。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
発明の第6態様は、前記第2容器構成部のうち前記膝を受ける膝受け面には、前記乗員の体の左右の中心から離れるに従って前記車両の後側に向かうように傾斜しかつ外側に膨らんだ膨出曲面が備えられている第1態様から第5態様の何れか1の態様に記載のニーボルスタである。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
発明の第7態様は、前記第1容器構成部と第2容器構成部には、互いに係合して前記第1容器構成部と前記第2容器構成部とが離隔することを規制する係合部が設けられている、第1態様から第6態様の何れか1の態様に記載のニーボルスタである。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
発明の第1態様のニーボルスタは、硬質ポリウレタンフォームを収容する収容器を有し、収容器には、硬質ポリウレタンフォームの圧縮方向で対向する第1及び第2容器構成部が設けられる。そして、第1容器構成部が車両に固定されると共に、第2容器構成部が、移動規制部によって硬質ポリウレタンフォームの圧縮方向と交差する方向への移動を規制される。従って、乗員の膝を受け止めるときに圧縮の過程で仮に硬質ポリウレタンフォームにせん断が生じても、硬質ポリウレタンフォームのうち第2容器構成部側の部分が第1容器構成部側の部分に対してずれることを抑制可能となる。これにより、硬質ポリウレタンフォームをさらに圧縮させて衝撃を緩和させることが可能となり、従来よりもニーボルスタによる衝撃緩和を安定して行うことが可能となる。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
発明の第2態様のニーボルスタでは、第1容器構成部の第1端部壁と第2容器構成部の第2端部壁とで硬質ポリウレタンフォームを圧縮することができる。また、第1嵌合壁と第2嵌合壁に硬質ポリウレタンフォームが嵌合されるので、硬質ポリウレタンフォームが圧縮方向と交差する方向へずれ難くなり、膝を受け止め易くなると共に、せん断によるずれがより生じ難くなり、衝撃緩和をより安定して行うことが可能となる。また、例えば、第1容器構成部と第2容器構成部のうち一方が他方に被さるように収容器を構成すれば、硬質ポリウレタンフォームの圧縮ストロークを長くすることが可能となる。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
発明の第3態様のニーボルスタのように、移動規制部を、複数のアームとそれらアームが貫通する貫通孔とを有する構成としてもよい。この場合、移動規制部の形成を容易にすることが可能となる。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
発明の第4態様のニーボルスタでは、硬質ポリウレタンフォームの圧縮開始時には、収容器と硬質ポリウレタンフォームの押圧対向面の一部のみが当接することになるので、押圧対向面同士が全面で当接する場合に比べて、受け止める膝への初期の反力を小さくすることが可能となる。また、硬質ポリウレタンフォームがさらに圧縮されると、押圧対向面の当接面積が、硬質ポリウレタンフォームの圧縮破壊の過程で段階的に大きくなる。従って、硬質ポリウレタンフォームが受ける荷重を段階的に上昇させることが可能となる。これにより、荷重を徐々に上昇させる場合に比べて、衝撃を吸収するための硬質ポリウレタンフォームの圧縮ストロークを短くすることが可能となり、ニーボルスタのコンパクト化を図ることが可能となる。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
発明の第5態様のニーボルスタでは、第1容器構成部と硬質ポリウレタンフォームのうち圧縮方向で対向して押圧し合う押圧対向面が、面当接し合う曲面になっているので、平坦面である場合に比べて、ニーボルスタに対する膝の衝突角度が変わっても、硬質ポリウレタンフォームを第1容器構成部の押圧対向面で受け止め易くすることができる。なお、これら押圧対向面は、収容器の外側に、凸となっていてもよいし、凹となっていてもよい。前者の場合、例えば、第1容器構成部の押圧対向面は、円弧状又は半球状の凹面となっていてもよい。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
発明の第6態様のニーボルスタでは、第2容器構成部のうち乗員の膝を受ける膝受け面が、乗員の体の左右の中心から離れるに従って車両の後側に向かうように傾斜する。即ち、膝受け面が乗員の左右の中心側を向いて傾斜するので、乗員の膝を乗員の左右の中心側に受け止めることが可能となる。また、膝受け面が外側に膨らんだ膨出曲面となっていることで、平坦面である場合に比べて、受け止め易い膝の衝突角度の範囲を広くすることが可能となる。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
発明の第7態様のニーボルスタによれば、第2容器構成部が第1容器構成部から離れることが規制されるので、ニーボルスタの配置姿勢の自由度を高めることができる。