(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023990
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】不公正取引可視化装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/04 20120101AFI20240214BHJP
【FI】
G06Q40/04
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023222086
(22)【出願日】2023-12-28
(62)【分割の表示】P 2022510427の分割
【原出願日】2021-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2020050540
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩壁 冬樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124501
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 誠人
(72)【発明者】
【氏名】福田 健二
(57)【要約】
【課題】不公正が疑われる株取引を分かり易く可視化できる不公正取引可視化装置を提供する。
【解決手段】候補一覧出力部81は、指定された種類の不公正が疑われる一または複数の取引を示す不公正取引候補の一覧を出力する。候補入力部82は、出力された不公正取引候補の一覧から不公正取引候補の選択を受け付ける。不公正取引出力部83は、選択された不公正取引候補が不公正と疑われる契機になった取引から終了になった取引までに行われた取引を示す取引データが含まれる対象取引データを、同一銘柄の他の取引データと区別可能な態様で表示する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銘柄の入力を受け付ける手段と、
前記銘柄における第1の取引データと、前記銘柄における第2の取引データとを区別して表示する手段とを備え、
前記第1の取引データは、取引データに基づいて特徴的な取引を特定するモデルを用いて特定される
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記特徴的な取引は、不公正取引を含む
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第1の取引データは、特徴的な取引であることが示されてから当該取引が終了になった取引までの期間に行われた取引を示す取引データを含む
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項4】
銘柄の入力を受け付け、
前記銘柄における第1の取引データと、前記銘柄における第2の取引データとを区別して表示し、
前記第1の取引データは、取引データに基づいて特徴的な取引を特定するモデルを用いて特定される
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項5】
前記特徴的な取引は、不公正取引を含む
請求項4記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記第1の取引データは、特徴的な取引であることが示されてから当該取引が終了になった取引までの期間に行われた取引を示す取引データを含む
請求項4記載の情報処理方法。
【請求項7】
コンピュータに、
銘柄の入力を受け付ける処理、および、
前記銘柄における第1の取引データと、前記銘柄における第2の取引データとを区別して表示する処理とを実行させ、
前記第1の取引データは、取引データに基づいて特徴的な取引を特定するモデルを用いて特定される
ことを特徴とするプログラム。
【請求項8】
前記特徴的な取引は、不公正取引を含む
請求項7記載のプログラム。
【請求項9】
前記第1の取引データは、特徴的な取引であることが示されてから当該取引が終了になった取引までの期間に行われた取引を示す取引データを含む
請求項7記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不公正が疑われる株取引を可視化する不公正取引可視化装置、不公正取引可視化方法および不公正取引可視化プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットを介したオンライントレードが発達し、多くの投資家が容易に株取引を行えるようになっている。一方、株取引が容易になってきていることから、株式相場を意図的に操作するような不公正な行為が行われる危険性も高まっているため、このような不公正取引を適切に監視できることが望まれている。
【0003】
株売買における不公正取引のうち、AI(Artificial Intelligence )で検知可能な不公正取引として、見せ玉、仮想売買などが知られている。見せ玉は、ある特定の株式の売買が繁盛に行われていると他の投資家に誤解させ、取引を誘引することを目的として、売買を成立させる意図がない大量の売買注文の発注、取消および訂正を頻繁に繰り返す行為を言う。また、仮想売買は、同一人物が同じ時期に同じ価格で売買両方の注文を発注するといった、権利の移転を目的としない取引を言う。
【0004】
例えば、特許文献1には、可視化において提供される情報により、クライアントアカウントに対する疑わしい活動の自動検知または手動検知を可能とする方法が記載されている。特許文献1に記載された方法では、クライアントのアカウント残高の推移を可視化し、異常な預け入れや引き出し、株価に影響を与え得る大きな発表の直前の特定の株についての取引活動における大きなスイングを、不公正取引として検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、検知された取引が、本当に不公正な取引なのか、善意の利用者が経済的な判断で似たようなパターンの取引を行ったのかについて、最終的な判断は、証券取引所や証券会社の担当者によって行われる。そのため、AIによって不公正の可能性があると判断された取引を分かり易く表示する方法が望まれている。
【0007】
特許文献1に記載された方法では、イベントとの関係に基づいて、不公正取引を検知する。しかし、上述する見せ玉や仮想売買は、必ずしも特定のイベントとの関係だけに基づいて判断される取引ではない。そのため、特許文献1に記載された方法では、イベントと紐付かない不公正取引を可視化できないという問題がある。
【0008】
また、特許文献1に記載された方法では、検知された大きな預け入れや引き出しも検知する。しかし、このような取引自体は不公正取引と言えない場合も数多く、全てを検知して可視化すると確認すべき内容が増大してしまうという問題がある。そのため、不公正が疑われる株取引に注目して、担当者が理解しやすい態様で可視化できることが望ましい。
【0009】
そこで、本発明は、不公正が疑われる株取引を分かり易く可視化できる不公正取引可視化装置、不公正取引可視化方法および不公正取引可視化プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による情報処理装置は、銘柄の入力を受け付ける手段と、その銘柄における第1の取引データと、その銘柄における第2の取引データとを区別して表示する手段とを備え、第1の取引データが、取引データに基づいて特徴的な取引を特定するモデルを用いて特定されることを特徴とする。
【0011】
本発明による情報処理方法は、銘柄の入力を受け付け、その銘柄における第1の取引データと、その銘柄における第2の取引データとを区別して表示し、第1の取引データが、取引データに基づいて特徴的な取引を特定するモデルを用いて特定されることを特徴とする。
【0012】
本発明によるプログラムは、コンピュータに、銘柄の入力を受け付ける処理、および、その銘柄における第1の取引データと、その銘柄における第2の取引データとを区別して表示する処理とを実行させ、第1の取引データが、取引データに基づいて特徴的な取引を特定するモデルを用いて特定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、不公正が疑われる株取引を分かり易く可視化できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明による不公正取引可視化装置の一実施形態の構成例を示すブロック図である。
【
図2】不公正の種類の入力を受け付ける画面の例を示す説明図である。
【
図3】不公正取引候補の一覧を出力する画面の例を示す説明図である。
【
図4】不公正取引候補を可視化する第一の画面の例を示す説明図である。
【
図5】不公正取引候補を可視化する第二の画面の例を示す説明図である。
【
図6】不公正取引候補を可視化する第三の画面の例を示す説明図である。
【
図7】不公正取引候補を可視化する第四の画面の例を示す説明図である。
【
図8】不公正取引候補を可視化する第四の画面の他の例を示す説明図である。
【
図9】不公正取引候補を可視化する複数の画面を表示する例を示す説明図である。
【
図10】不公正取引可視化装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図11】不公正取引可視化装置の他の動作例を示すフローチャートである。
【
図12】本発明による不公正取引可視化装置の概要を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明による不公正取引可視化装置の一実施形態の構成例を示すブロック図である。本実施形態の不公正取引可視化装置100は、記憶部10と、取引データ入力部20と、不公正取引推定部30と、不公正種類入力部40と、候補一覧出力部50と、候補入力部60と、不公正取引出力部70とを備えている。
【0017】
記憶部10は、不公正取引可視化装置100が各種処理を行うために必要な情報を記憶する。記憶部10は、例えば、後述する取引データ入力部20が入力した取引データを記憶してもよい。記憶部10は、例えば、磁気ディスク等により実現される。
【0018】
取引データ入力部20は、可視化する対象の取引データを入力する。具体的には、取引データ入力部20は、所定期間分(例えば、1日分、など)の取引データを取引履歴として入力する。取引データは、1種類の銘柄であってもよく、複数種類の銘柄の取引データであってもよい。また、取引データ入力部20は、入力した取引データを記憶部10に記憶させてもよい。
【0019】
本実施形態では、取引データは、株売買に関する各種情報を含む。具体的には、取引データは、売り注文、買い注文、売り注文の約定、買い注文の約定、取り消し注文、または注文の訂正などの、注文一覧を含む。また、取引データは、注文一覧だけでなく、買最良気配値または売最良気配値を含んでいてもよい。さらに、取引データは、取引時点における銘柄の株価や、その銘柄の板情報を含んでいてもよい。
【0020】
不公正取引推定部30は、入力された取引データを対象として、不公正が疑われる一または複数の取引、および、疑われる不公正の種類(以下、手口と記すこともある。)を推定する。不公正が疑われる取引には、不公正取引の種類(すなわち、手口)、その取引を行った顧客、その取引が行われた銘柄、および、その取引が行われた時刻が対応付けられる。以下の説明では、不公正が疑われる取引のことを、不公正取引候補と記す。
【0021】
不公正取引推定部30は、不公正が疑われる特定の取引を不公正取引候補と推定してもよく、一連の取引をまとめた取引を不公正取引候補として推定してもよい。一連の取引には、例えば、契機になった取引および終了したと特定される取引の組が含まれていてもよい。また、終了したと特定される取引だけでなく、終了したと推定される取引を含んでいてもよい。推定される取引とは、例えば、終了したと特定される取引から予め定めた件数分または時間分の取引を示す。
【0022】
不公正取引推定部30が、不公正取引候補を推定する方法は任意である。不公正取引推定部30は、例えば、取引データを入力として不公正の種類ごとに不公正取引か否かを予測するモデルを用いて、不公正取引候補を推定してもよい。例えば、不公正取引か否かを予測するモデルが不公正らしさを示すスコアを算出する場合、不公正取引推定部30は、算出されたスコアが予め定めた閾値より大きくなる取引データが示す取引を、不公正取引候補と推定してもよい。さらに、不公正取引推定部30は、スコアに応じて不公正取引候補にランク付けを行ってもよい。
【0023】
また、不公正取引か否かを予測するモデルが線形回帰式で表されているとする。この場合、モデルに含まれる係数が大きい説明変数ほど、不公正取引の推定に対してより大きな影響を与えていると言える。そこで、不公正取引推定部30は、モデルの係数を正規化し、モデルに含まれる説明変数の係数の大きさに応じて不公正取引候補と判定した要因(説明変数)を推定してもよい。不公正取引推定部30は、推定した不公正取引候補や判定した要因を記憶部10に記憶してもよい。
【0024】
ただし、不公正取引推定部30が不公正取引か否かを推定する方法は、上述するモデルを用いる場合に限定されない。不公正取引推定部30は、例えば、不公正の種類に応じた取引のパターンに類似する取引履歴を検出して、不公正取引候補を推定してもよい。例えば、予め定めた数量以上の売買注文の発注、取消および訂正が所定回数以上繰り返された場合、不公正取引推定部30は、その一連の取引を、見せ玉を示す不公正取引候補と推定してもよい。また、例えば、同一人物が同じ時期に同じ価格で売買両方の注文を発注していた場合、不公正取引推定部30は、その一連の取引を、仮想売買を示す不公正取引候補と推定してもよい。
【0025】
不公正種類入力部40は、ユーザから、不公正が疑われる取引の種類(すなわち、手口)の指定(例えば、見せ玉、仮想売買など)を受け付ける。不公正種類入力部40は、例えば、不公正取引推定部30が推定対象とした不公正の種類の一覧を表示装置(図示せず)の画面に表示し、その一覧の中から、ユーザの選択を受け付けてもよい。不公正種類入力部40が受け付けた指定は、後述する候補一覧出力部50が不公正取引候補を抽出するための条件に対応する。
【0026】
なお、推定された不公正取引候補の種類を限定しない場合、不公正取引可視化装置100は、不公正種類入力部40を備えていなくてもよい。ただし、不公正が疑われる取引の種類を担当者が認識しやすいように、不公正取引可視化装置100は、不公正種類入力部40を備えていることが好ましい。さらに、不公正種類入力部40は、不公正が疑われる取引の種類だけでなく、取引が行われた期間や、銘柄、市場、顧客などの情報を入力してもよい。
【0027】
図2は、不公正種類入力部40が不公正の種類の入力を受け付ける画面の例を示す説明図である。
図2に示す例では、画面の「検知項目」で不公正の種類を選択することにより、不公正取引候補の種類を限定する。なお、
図2に例示する画面は、不公正の種類の入力以外にも、不公正取引候補を絞り込む条件として、期間、銘柄コード、顧客ID、扱い者、スコア閾値、判定(A~Cなど)を受け付ける例を示す。
図2に例示するスコアは、上述するモデルが算出する不公正らしさを示すスコアを示す。また、
図2に例示するように、表示する条件に不公正取引候補のソート順などを指定してもよい。
【0028】
候補一覧出力部50は、不公正種類入力部40が受け付けた指定に基づいて、不公正取引候補の一覧を出力する。具体的には、候補一覧出力部50は、指定された種類の不公正が疑われる取引(すなわち、不公正取引候補)の一覧を出力する。また、不公正種類入力部40が不公正取引候補の条件の指定を受け付けた場合、候補一覧出力部50は、その条件に合致する不公正取引候補のみを出力してもよい。なお、上述するように、不公正取引候補に含まれる取引は、1つまたは複数(例えば、契機になった取引と終了のセット)である。
【0029】
図3は、不公正取引候補の一覧を出力する画面の例を示す説明図である。
図3に示す例では、期間、不公正の種類である検知項目、銘柄コード、市場およびスコア閾値を指定した場合の検索結果の一例である。
【0030】
候補入力部60は、出力された不公正取引候補の一覧から、ユーザが所望する不公正取引候補の選択を受け付ける。候補入力部60は、例えば、ポインティングデバイスを介してユーザが不公正取引候補の一覧から選択した不公正取引候補を検知してもよい。また、候補入力部60は、タッチパネルに表示された不公正取引候補の一覧に対して、ユーザがタップした不公正取引候補を検知してもよい。
【0031】
また、不公正取引候補と判定した要因(説明変数)が推定されている場合、候補入力部60は、その要因を示す情報(例えば、各説明変数の係数の重みや、上位の要因など)を不公正取引出力部70に入力してもよい。
【0032】
不公正取引出力部70は、選択された不公正取引候補を可視化する。具体的には、不公正取引出力部70は、選択された不公正取引候補が不公正と疑われる契機になった取引から終了になった取引までに行われた取引を示す取引データ(以下、対象取引データと記す。)を、他の取引データと区別可能な態様で表示する。不公正取引出力部70は、例えば、対象取引データを、同一銘柄の他の取引データと区別可能な態様で表示してもよい。
【0033】
また、不公正取引出力部70は、一日の株価の推移に合わせ、対象取引データを、同一銘柄で、かつ、同一日の他の取引データと区別可能な態様で表示してもよい。また不公正取引出力部70は、選択された不公正取引候補が不公正と疑われる契機になった取引の時刻から終了になった取引の時刻までに行われた取引を示す取引データを、他の取引データと区別可能な態様で表示してもよい。
【0034】
図4は、不公正取引候補を可視化する第一の画面の例を示す説明図である。
図4に例示する第一の画面11は、所定期間の取引履歴を表示する画面である。
図4では、不公正取引出力部70が、不公正取引候補の銘柄に応じた注文一覧である取引履歴を表示し、かつ、その取引履歴のうち、対象取引データT1を、他の期間の取引データと区別できるように強調表示している例を示す。
【0035】
図5は、不公正取引候補を可視化する第二の画面の例を示す説明図である。
図5に例示する第二の画面12は、取引データに含まれる株価チャートを表示する画面である。
図5では、不公正取引出力部70が、予め定めた期間の株価チャートを表示し、かつ、その株価チャートのうち、見せ玉を示す対象取引データが含まれる期間T2の株価変動を、他の期間の株価変動と区別できるように強調表示している例を示す。なお、取引データに、株価として、買最良気配値および売最良気配値を含んでいる場合、不公正取引出力部70は、
図5に例示するように、株価チャートに買最良気配値および売最良気配値を表示してもよい。
【0036】
図6は、不公正取引候補を可視化する第三の画面の例を示す説明図である。
図6に例示する第三の画面13は、株価チャートの一部を拡大して表示する画面である。株価チャートは、一般に、1日や1週間など、予め定めた期間で作成される。一方、対象取引データが含まれる期間は、予め定めた期間よりも短い期間であることが多い。そこで、その期間の株価変動をより見やすくするため、
図6に例示するように、不公正取引出力部70は、対象取引データが含まれる期間の株価チャートを拡大表示してもよい。
図6では、
図5に例示する期間の株価チャートを拡大表示した例を示す。
【0037】
図7は、不公正取引候補を可視化する第四の画面の例を示す説明図である。
図7に例示する第四の画面14は、板情報を表示する画面である。
図7では、不公正取引出力部70が、
図4に例示する取引履歴のうち、特定の取引が指定された場合に、その取引が行われた時点の板情報を表示している例を示す。
【0038】
さらに、不公正取引出力部70は、指定された取引が示す注文内容を板情報に対応付けて表示してもよい。
図8は、不公正取引候補を可視化する第四の画面の他の例を示す説明図である。例えば、指定された取引が1550円の株価に対する1000株の買い注文である場合、
図8に示す例示する第四の画面15では、不公正取引出力部70が、取引の注文株数を板情報の対応する株価に対応付けて表示している例を示す。
【0039】
さらに、不公正取引候補と判定した要因(説明変数)が入力された場合、不公正取引出力部70は、不公正取引候補と判定した要因を示す情報に応じて、当該要因に対応する表示項目を他の表示項目と区別可能な態様で表示してもよい。例えば、不公正取引候補と判定した要因の一つとして注文数量が入力された場合、不公正取引出力部70は、該当する取引の注文数量を強調表示してもよい。また、不公正取引候補と判定した要因のスコアが入力された場合、不公正取引出力部70は、そのスコアに応じて対応する表示項目の明るさや太さを変化させてもよい。
【0040】
本実施形態では、
図4から
図7に不公正取引候補を可視化する画面をそれぞれ例示したが、不公正取引出力部70は、各画面を一つの画面にまとめて表示してもよい。
図9は、不公正取引候補を可視化する複数の画面を表示する例を示す説明図である。
図9に例示する画面16は、
図4から
図7に例示する第一の画面11、第二の画面12、第三の画面13および第四の画面14を1つに纏めた画面の例を示す。
図9に例示するように、複数の画面を纏めて表示することで、相互の関連性を把握しやすくなる。例えば、第一の画面11に例示する対象取引データの中から、一番上の取引が選択された場合、不公正取引出力部70は、選択された取引が行われた対応する板情報を第四の画面14に表示してもよい。
【0041】
なお、
図4から
図9では、不公正取引出力部70が、対象取引データを、同一銘柄で、かつ、同一日の他の取引データと区別可能な態様で表示した場合の画面を例示した。ただし、不公正取引出力部70は、対象取引データを複数の日にわたって表示してもよい。この場合、不公正取引出力部70は、
図4に例示する取引履歴を複数日にわたって表示してもよいし、
図5に例示する株価チャートを、複数日(例えば、対象取引データが含まれる日数や、1週間単位など)にわたって表示してもよい。
【0042】
取引データ入力部20と、不公正取引推定部30と、不公正種類入力部40と、候補一覧出力部50と、候補入力部60と、不公正取引出力部70とは、プログラム(不公正取引可視化プログラム)に従って動作するコンピュータのプロセッサ(例えば、CPU(Central Processing Unit )、GPU(Graphics Processing Unit))によって実現される。
【0043】
例えば、プログラムは、記憶部10に記憶され、プロセッサは、そのプログラムを読み込み、プログラムに従って、取引データ入力部20、不公正取引推定部30、不公正種類入力部40、候補一覧出力部50、候補入力部60および不公正取引出力部70として動作してもよい。また、不公正取引可視化装置の機能がSaaS(Software as a Service )形式で提供されてもよい。
【0044】
取引データ入力部20と、不公正取引推定部30と、不公正種類入力部40と、候補一覧出力部50と、候補入力部60と、不公正取引出力部70とは、それぞれが専用のハードウェアで実現されていてもよい。また、各装置の各構成要素の一部又は全部は、汎用または専用の回路(circuitry )、プロセッサ等やこれらの組合せによって実現されてもよい。これらは、単一のチップによって構成されてもよいし、バスを介して接続される複数のチップによって構成されてもよい。各装置の各構成要素の一部又は全部は、上述した回路等とプログラムとの組合せによって実現されてもよい。
【0045】
また、不公正取引可視化装置の各構成要素の一部又は全部が複数の情報処理装置や回路等により実現される場合には、複数の情報処理装置や回路等は、集中配置されてもよいし、分散配置されてもよい。例えば、情報処理装置や回路等は、クライアントサーバシステム、クラウドコンピューティングシステム等、各々が通信ネットワークを介して接続される形態として実現されてもよい。
【0046】
次に、本実施形態の不公正取引可視化装置の動作例を説明する。
図10は、本実施形態の不公正取引可視化装置100の動作例を示すフローチャートである。候補一覧出力部50は、指定された種類の不公正取引候補の一覧を出力する(ステップS11)。候補入力部60は、出力された不公正取引候補の一覧から不公正取引候補の選択を受け付ける(ステップS12)。不公正取引出力部70は、選択された不公正取引候補の契機になった取引から終了になった取引までを、同一銘柄の他の取引データと区別可能な態様で表示する(ステップS13)。
【0047】
図11は、本実施形態の不公正取引可視化装置100の他の動作例を示すフローチャートである。取引データ入力部20は、可視化する対象の取引データを入力する(ステップS21)。不公正取引推定部30は、入力された取引データを対象として不公正取引候補を推定する(ステップS22)。不公正種類入力部40は、不公正が疑われる取引の種類を受け付けると(ステップS23)、候補一覧出力部50は、受け付けた指定に基づいて、不公正取引候補の一覧を出力する(ステップS24)。以降、候補入力部60が、不公正取引候補の選択を受け付け、不公正取引出力部70が、対象取引データを他の取引データと区別可能な態様で表示する処理は、
図10に例示するステップS12からステップS13までの処理と同様である。
【0048】
以上のように、本実施形態では、候補一覧出力部50が不公正取引候補の一覧を出力し、候補入力部60が、一覧から不公正取引候補の選択を受け付け、不公正取引出力部70が、対象取引データを、同一銘柄の他の取引データと区別可能な態様で表示する。そのため、不公正が疑われる株取引を分かり易く可視化できる。
【0049】
次に、本発明の概要を説明する。
図12は、本発明による不公正取引可視化装置の概要を示すブロック図である。本発明による不公正取引可視化装置80(例えば、不公正取引可視化装置100)は、指定された種類の不公正(例えば、見せ玉、仮想売買など)が疑われる一または複数の取引を示す不公正取引候補の一覧を出力する候補一覧出力部81(例えば、候補一覧出力部50)と、出力された不公正取引候補の一覧から不公正取引候補の選択を(例えば、ユーザから)受け付ける候補入力部82(例えば、候補入力部60)と、選択された不公正取引候補が不公正と疑われる契機になった取引から終了になった取引までに行われた取引を示す取引データが含まれる対象取引データを、同一銘柄の他の取引データと区別可能な態様で表示する不公正取引出力部83(例えば、不公正取引出力部70)とを備えている。
【0050】
そのような構成により、不公正が疑われる株取引を分かり易く可視化できる。
【0051】
取引データは、売り注文、買い注文、売り注文の約定、買い注文の約定、取り消し注文、または注文の訂正を示す情報を含んでいてもよい。
【0052】
また、取引データは、買最良気配値または売最良気配値を含んでいてもよい。
【0053】
また、不公正取引出力部83は、選択された不公正取引候補が不公正と疑われる契機になった取引の時刻から終了したと推定される時刻の取引までに行われた取引を示す取引データを、同一銘柄の他の取引データと区別可能な態様で表示してもよい。
【0054】
また、不公正取引出力部83は、対象取引データを、同一銘柄で、かつ、同一日の他の取引データと区別可能な態様で表示してもよい。
【0055】
具体的には、不公正取引出力部83は、不公正取引候補の銘柄に応じた取引履歴を表示し、その取引履歴のうち、対象取引データを、他の期間の取引データと区別可能な態様で表示(例えば、
図4に例示する画面表示)してもよい。このような画面により、不公正取引候補の取引履歴を分かり易く可視化できる。
【0056】
その際、不公正取引出力部83は、取引履歴のうち指定された取引が行われた時点の板情報を表示し、その取引の注文株数を板情報の対応する株価に対応付けて表示(例えば、
図8に例示する画面表示)してもよい。
【0057】
他にも、不公正取引出力部83は、予め定めた期間の株価チャートを表示し、その株価チャートのうち、対象取引データが含まれる期間の株価変動を、他の期間の株価変動と区別可能な態様で表示してもよい。このような画面により、不公正取引候補の取引が行われた際の株価変動を分かり易く可視化できる。
【0058】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0059】
(付記1)指定された種類の不公正が疑われる一または複数の取引を示す不公正取引候補の一覧を出力する候補一覧出力部と、出力された前記不公正取引候補の一覧から不公正取引候補の選択を受け付ける候補入力部と、選択された不公正取引候補が不公正と疑われる契機になった取引から終了になった取引までに行われた取引を示す取引データが含まれる対象取引データを、同一銘柄の他の取引データと区別可能な態様で表示する不公正取引出力部とを備えたことを特徴とする不公正取引可視化装置。
【0060】
(付記2)取引データは、売り注文、買い注文、売り注文の約定、買い注文の約定、取り消し注文、または注文の訂正を示す情報を含む付記1記載の不公正取引可視化装置。
【0061】
(付記3)取引データは、買最良気配値または売最良気配値を含む付記1または付記2記載の不公正取引可視化装置。
【0062】
(付記4)不公正取引出力部は、選択された不公正取引候補が不公正と疑われる契機になった取引の時刻から終了したと推定される時刻の取引までに行われた取引を示す取引データを、同一銘柄の他の取引データと区別可能な態様で表示する付記1から付記3のうちのいずれか1つに記載の不公正取引可視化装置。
【0063】
(付記5)不公正取引出力部は、対象取引データを、同一銘柄で、かつ、同一日の他の取引データと区別可能な態様で表示する付記1から付記4のうちのいずれか1つに記載の不公正取引可視化装置。
【0064】
(付記6)不公正取引出力部は、不公正取引候補の銘柄に応じた取引履歴を表示し、当該取引履歴のうち、対象取引データを、他の期間の取引データと区別可能な態様で表示する付記1から付記5のうちのいずれか1つに記載の不公正取引可視化装置。
【0065】
(付記7)不公正取引出力部は、取引履歴のうち指定された取引が行われた時点の板情報を表示し、当該取引の注文株数を前記板情報の対応する株価に対応付けて表示する付記6記載の不公正取引可視化装置。
【0066】
(付記8)不公正取引出力部は、予め定めた期間の株価チャートを表示し、当該株価チャートのうち、対象取引データが含まれる期間の株価変動を、他の期間の株価変動と区別可能な態様で表示する付記1から付記7のうちのいずれか1つに記載の不公正取引可視化装置。
【0067】
(付記9)不公正取引出力部は、対象取引データが含まれる期間の株価チャートを拡大表示する付記8記載の不公正取引可視化装置。
【0068】
(付記10)不公正取引候補には、不公正取引の種類、取引を行った顧客、当該取引が行われた銘柄、および当該取引が行われた時刻が対応付けられる付記1から付記9のうちのいずれか1つに記載の不公正取引可視化装置。
【0069】
(付記11)不公正取引出力部は、不公正取引候補と判定した要因を示す情報に応じて、当該要因に対応する表示項目を他の表示項目と区別可能な態様で表示する付記1から付記10のうちのいずれか1つに記載の不公正取引可視化装置。
【0070】
(付記12)指定された種類の不公正が疑われる一または複数の取引を示す不公正取引候補の一覧を出力し、出力された前記不公正取引候補の一覧から不公正取引候補の選択を受け付け、選択された不公正取引候補が不公正と疑われる契機になった取引から終了になった取引までに行われた取引を示す取引データが含まれる対象取引データを、同一銘柄の他の取引データと区別可能な態様で表示することを特徴とする不公正取引可視化方法。
【0071】
(付記13)コンピュータに、指定された種類の不公正が疑われる一または複数の取引を示す不公正取引候補の一覧を出力する候補一覧出力処理、出力された前記不公正取引候補の一覧から不公正取引候補の選択を受け付ける候補入力処理、および、選択された不公正取引候補が不公正と疑われる契機になった取引から終了になった取引までに行われた取引を示す取引データが含まれる対象取引データを、同一銘柄の他の取引データと区別可能な態様で表示する不公正取引出力処理を実行させるための不公正取引可視化プログラム。
【0072】
以上、実施形態及び実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0073】
10 記憶部
20 取引データ入力部
30 不公正取引推定部
40 不公正種類入力部
50 候補一覧出力部
60 候補入力部
70 不公正取引出力部
100 不公正取引可視化装置