IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東海理化電機製作所の特許一覧

<>
  • 特開-制御装置および制御方法 図1
  • 特開-制御装置および制御方法 図2
  • 特開-制御装置および制御方法 図3
  • 特開-制御装置および制御方法 図4
  • 特開-制御装置および制御方法 図5
  • 特開-制御装置および制御方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024013
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 12/06 20210101AFI20240214BHJP
   H04W 12/03 20210101ALI20240214BHJP
   H04W 12/04 20210101ALI20240214BHJP
   H04W 12/69 20210101ALI20240214BHJP
【FI】
H04W12/06
H04W12/03
H04W12/04
H04W12/69
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023222426
(22)【出願日】2023-12-28
(62)【分割の表示】P 2020098254の分割
【原出願日】2020-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【弁理士】
【氏名又は名称】大山 夏子
(72)【発明者】
【氏名】大橋 洋介
(72)【発明者】
【氏名】古田 昌輝
(72)【発明者】
【氏名】河野 裕己
(72)【発明者】
【氏名】新田 繁則
(57)【要約】
【課題】装置間の認証処理に用いる信号の送受信において、信号の混同を低減することが可能な制御装置および制御方法を提供する。
【解決手段】少なくとも一つの通信装置と無線通信を行って受信した信号に含まれる情報に基づいて、前記通信装置と、装置の認証に関する処理を行う認証処理を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記通信装置に送信する信号の前記認証処理における役割の種別である信号種別に応じて異なる、前記認証処理に用いられる情報である認証情報を、前記通信装置に送信する信号に含めて、前記通信装置に前記無線通信により送信するよう制御する、制御装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの通信装置と無線通信を行って受信した信号に含まれる情報に基づいて、前記通信装置と、装置の認証に関する処理を行う認証処理を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記通信装置に送信する信号の前記認証処理における役割の種別である信号種別に応じて異なる、前記認証処理に用いられる情報である認証情報を、前記通信装置に送信する信号に含めて、前記通信装置に前記無線通信により送信するよう制御する、制御装置。
【請求項2】
前記認証情報は、暗号化された情報である、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記暗号化された情報は、前記通信装置と共通する暗号鍵により生成した情報である、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記暗号化された情報は、前記信号種別毎に前記通信装置と共通する暗号鍵により生成した情報である、請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記認証情報は、予め設定された識別情報である、請求項1~4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記信号種別は、前記認証処理の開始を通知する役割を持つトリガ信号と、前記トリガ信号を受信した場合に返送され、応答を要求する役割を持つ要求信号と、前記要求信号を受信した場合に返送され、前記要求に応答する役割を持つ応答信号と、を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記認証処理として、前記通信装置と前記制御装置との間の距離を測定する測距認証を実行し、
前記トリガ信号は、前記測距認証を開始することを通知する測距トリガ信号であり、
前記要求信号は、前記距離を算出するために応答を要求する測距要求信号であり、
前記応答信号は、前記測距要求信号を受信した場合に応答する測距応答信号である、請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
少なくとも、前記トリガ信号に含まれる認証情報と、前記要求信号および前記応答信号に含まれる認証情報とが異なる、請求項6または7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記制御装置は、移動体に搭載され、
前記通信装置は、前記移動体のユーザに携帯される、請求項1~8のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記制御装置は、
前記通信装置と無線通信を行う1以上の通信部と、
前記制御部と、を有する、
請求項9に記載の制御装置。
【請求項11】
前記制御装置は、
前記移動体に搭載され、前記通信装置と無線通信を行う1以上の移動体搭載通信装置を制御し、
前記移動体搭載通信装置を介して前記通信装置との信号の送受信を制御する、請求項9に記載の制御装置。
【請求項12】
前記通信装置は、移動体に搭載され、
前記制御装置は、前記移動体のユーザに携帯される、請求項1~8のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項13】
前記通信装置は、
前記制御装置と無線通信を行う複数の通信部と、
前記制御部と、を有し、
前記制御装置は、
前記認証情報を、前記信号種別とさらに前記複数の通信部毎に異なる暗号鍵により生成する、請求項12に記載の制御装置。
【請求項14】
プロセッサが、
少なくとも一つの通信装置と無線通信を行って受信した信号に含まれる情報に基づいて、前記通信装置と、装置の認証に関する処理を行う認証処理を制御することと、
前記通信装置に送信する信号の前記認証処理における役割の種別である信号種別に応じて異なる、前記認証処理に用いられる情報である認証情報を、前記通信装置に送信する信号に含めて、前記通信装置に前記無線通信により送信するよう制御することと、を含む、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、装置間で信号を送受信した結果に従って装置を認証する技術が開発されている。例えば、下記特許文献1では、第1の通信部により車載器が携帯機との間で信号を送受信して携帯機の認証を行っている。携帯機は、車両の施錠や解錠を行うためのリモートコントローラであって、スマートキーとも称される。また、携帯機は運転者に携帯される。さらに、下記特許文献1では、第1の通信部による認証に加えて、第2の通信部により車載器が携帯機との距離を測って車両操作の許否を判定するスマートキーシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-31871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、装置間の信号の送受信において信号の混同が生じると、通信が成立しないといった問題が起こる。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、装置間の認証処理に用いる信号の送受信において、信号の混同を防止することが可能な、新規かつ改良された制御装置および制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、少なくとも一つの通信装置と無線通信を行って受信した信号に含まれる情報に基づいて、前記通信装置と、装置の認証に関する処理を行う認証処理を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記通信装置に送信する信号の前記認証処理における役割の種別である信号種別に応じて異なる、前記認証処理に用いられる情報である認証情報を、前記通信装置に送信する信号に含めて、前記通信装置に前記無線通信により送信するよう制御する、制御装置が提供される。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、プロセッサが、少なくとも一つの通信装置と無線通信を行って受信した信号に含まれる情報に基づいて、前記通信装置と、装置の認証に関する処理を行う認証処理を制御することと、前記通信装置に送信する信号の前記認証処理における役割の種別である信号種別に応じて異なる、前記認証処理に用いられる情報である認証情報を、前記通信装置に送信する信号に含めて、前記通信装置に前記無線通信により送信するよう制御することと、を含む、制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように本発明によれば、装置間の認証処理に用いる信号の送受信において、信号の混同を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るシステムの構成の一例を示す図である。
図2】本実施形態による認証処理の基本的な流れの一例を示すシーケンス図である。
図3】信号の取り違えについて説明する図である。
図4】本実施形態に係る制御装置の距離に基づく認証処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5】不正ツールが用いられた場合の信号の誤認について説明する図である。
図6】本実施形態の応用例に係る距離に基づく認証処理の一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
<1.構成例>
図1は、本発明の一実施形態に係るシステム1の構成の一例を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係るシステム1は、携帯機100、及び制御装置200を含む。本実施形態における制御装置200は、一例として、車両に搭載される。車両は、ユーザの利用対象の一つとして挙げられる移動体の一例である。
【0012】
本発明には、被認証側である通信装置と、当該通信装置との通信により得られた情報を用いて当該他の通信装置を認証する認証処理を行う制御部を備える制御装置と、が関与する。図1に示した例では、携帯機100が通信装置の一例であり、制御装置200が制御装置の一例である。システム1においては、例えば車両20の運転者等のユーザが携帯機100を携帯して車両に近付くと、携帯機100と車両20に搭載された制御装置200との間で認証のための無線通信が行われる。そして、認証が成功すると、車両20のドア錠がアンロックされたりエンジンが始動されたりして、車両20はユーザにより利用可能な状態となる。システム1は、スマートエントリーシステムとも称される。以下、各構成要素について順に説明する。
【0013】
(1-1)携帯機100
携帯機100は、任意の装置として構成される。任意の装置の一例として、運転者等のユーザに携帯して使用される、電子キー、スマートフォン、及びウェアラブル端末等の装置が挙げられる。図1に示すように、携帯機100は、第1の無線通信部110、第2の無線通信部120、記憶部130、及び制御部140を備える。
【0014】
第1の無線通信部110は、制御装置200との間で、第1の無線通信規格に準拠した通信を行う機能を有する。第2の無線通信部120は、制御装置200との間で、第1の無線通信規格とは異なる第2の無線通信規格に準拠した通信を行う機能を有する。とりわけ、第2の無線通信規格は、第1の無線通信規格よりも測距に適し、第2の無線通信部120は、測距に関する通信を主に担当する。
【0015】
ここで、第1の無線通信規格は、第2の無線通信規格と比較して、利得が高いこと、及び受信側の消費電力が低いこと、の少なくともいずれかを満たしてもよい。これらの要件を満たす具体例として、第2の無線通信規格では、第1の無線通信規格における搬送波の周波数よりも高い周波数の搬送波が用いられてもよい。搬送波の周波数が高いほど距離に応じた減衰が大きくなるため利得が低くなり、搬送波の周波数が低いほど距離に応じた減衰が小さくなるため利得が高くなり、利得に関する上記要件が満たされるためである。また、搬送波の周波数が高いと、人体による吸収などの人体影響が大きくなり、利得が低下する。
【0016】
なお、サンプリング周波数が、搬送波の周波数の最大値に応じて設定されることを考慮すれば、第2の無線通信規格における搬送波の最大周波数が第1の無線通信規格における搬送波の最大周波数よりも高いこと、が少なくとも満たされればよい。
【0017】
例えば、第1の無線通信規格では、RF(Radio Frequency)帯の信号及びLF(Low Frequency)帯の信号が使用されてもよい。典型的なスマートエントリーシステムにおいては、携帯機100から車両20の制御装置200への送信にRF帯の信号が使用され、車両20の制御装置200から携帯機100への送信にLF帯の信号が使用される。以下では、第1の無線通信部110は、RF帯の信号及びLF帯の信号での通信が可能な通信インタフェースとして構成されているものとして説明する。即ち、以下では、車両20の制御装置200への送信にRF帯の信号を使用し、車両20の制御装置200からの受信にLF帯の信号を使用するものとする。
【0018】
例えば、第2の無線通信規格では、UWB(Ultra-Wide Band)を用いた信号が使用されてもよい。UWBによるインパルス方式の信号は、測位及び測距を高精度に行うことができるという特性を有する。即ち、ナノ秒以下の非常に短いパルス幅の電波を使用することで電波の空中伝搬時間を高精度に測定することができ、伝搬時間に基づく測位及び測距を高精度に行うことができる。以下では、第2の無線通信部120は、UWBを用いた信号での通信が可能な通信インタフェースとして構成されるものとする。
【0019】
なお、UWBを用いた信号は、測距用信号、及びデータ信号として送受信され得る。測距用信号とは、後述する測距処理において送受信される信号である。測距用信号は、例えば、データを格納するペイロード部分を有さないフレームフォーマットで構成されていてもよいし、ペイロード部分を有するフレームフォーマットで構成されていてもよい。データ信号は、データを搬送するための信号である。データ信号は、データを格納するペイロード部分を有するフレームフォーマットで構成されることが望ましい。以下では、測距用信号は、データを格納するペイロード部分を有さないフレームフォーマットで構成されるものとする。また、データ信号は、データを格納するペイロード部分を有するフレームフォーマットで構成されるものとする。
【0020】
記憶部130は、携帯機100の動作のための各種情報を記憶する機能を有する。例えば、記憶部130は、携帯機100の動作のためのプログラム、並びに認証のためのID(識別情報の一例)、パスワード、及び認証アルゴリズム等を記憶する。記憶部130は、例えば、フラッシュメモリ等の記憶媒体、及び記憶媒体への記録再生を実行する処理装置により構成される。
【0021】
制御部140は、携帯機100による動作全般を制御する機能を有する。一例として、制御部140は、第1の無線通信部110及び第2の無線通信部120を制御して車両の制御装置200との通信を行う。また、制御部140は、記憶部130からの情報の読み出し及び記憶部130への情報の書き込みを行う。制御部140は、車両の制御装置200との間で行われる認証処理を制御する認証制御部としても機能する。制御部140は、例えばCPU(Central Processing Unit)及びマイクロプロセッサ等の電子回路によって構成される。
【0022】
(1-2)制御装置200
制御装置200は、車両に対応付けて設けられる。ここでは、制御装置200は、車両20に搭載されるものとする。搭載位置の例として、車両20の車室内に制御装置200が設置される、又は、制御モジュール若しくは通信モジュールとして車両20に内蔵される等が挙げられる。他にも、車両20の駐車場に制御装置200が設けられる等、ユーザの利用対象と制御装置200とが別体として構成されてもよい。その場合、制御装置200は、携帯機100との通信結果に基づいて、車両20に制御信号を無線送信し、車両20を遠隔で制御し得る。図1に示すように、制御装置200は、第1の無線通信部210、第2の無線通信部220、記憶部230、及び制御部240を備える。
【0023】
第1の無線通信部210は、携帯機100との間で、第1の無線通信規格に準拠した通信を行う機能を有する。以下では、第1の無線通信部210は、RF帯の信号及びLF帯の信号での通信が可能な通信インタフェースとして構成されるものとする。
【0024】
第2の無線通信部220は、携帯機100との間で、第1の無線通信規格とは異なる第2の無線通信規格に準拠した通信を行う機能を有する。以下では、第2の無線通信部220は、UWBを用いた信号での通信が可能な通信インタフェースとして構成されるものとする。第2の無線通信部220は車両20に複数搭載されていてもよい。
【0025】
記憶部230は、制御装置200の動作のための各種情報を記憶する機能を有する。例えば、記憶部230は、制御装置200の動作のためのプログラム、並びに認証のためのID(識別情報の一例)、パスワード、及び認証アルゴリズム等を記憶する。記憶部230は、例えば、フラッシュメモリ等の記憶媒体、及び記憶媒体への記録再生を実行する処理装置により構成される。
【0026】
制御部240は、制御装置200、及び車両に搭載された車載機器の動作全般を制御する機能を有する。一例として、制御部240は、第1の無線通信部210及び第2の無線通信部220を制御して携帯機100との通信を行う。また、制御部240は、記憶部230からの情報の読み出し及び記憶部230への情報の書き込みを行う。制御部240は、携帯機100との間で行われる認証処理を制御する認証制御部としても機能する。また、制御部240は、車両のドア錠を制御するドアロック制御部としても機能し、ドア錠のロック及びアンロックを行う。また、制御部240は、車両のエンジンを制御するエンジン制御部としても機能し、エンジンの始動/停止を行う。なお、車両に備えられる動力源は、エンジンの他にモータ等であってもよい。制御部240は、例えばECU(Electronic Control Unit)として構成される。
【0027】
なお、図1に示す制御装置200は、本発明による制御装置の一例である。本発明による制御装置の構成は、図1に示す例に限定されず、例えば第1の無線通信部210を含む通信モジュールと、第2の無線通信部220を含む通信モジュールと、制御部240を含む制御モジュールと、から構成されていてもよい。また、本発明による制御装置の構成は、第1の無線通信部210を含む通信モジュール、第2の無線通信部220を含む通信モジュール、または制御部240を含む制御モジュールとして実現されてもよい。各モジュールは、有線または無線の通信ネットワークにより接続される。通信ネットワークは、例えば、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、又はLAN(Local Area Network)等の任意の規格に準拠した車載通信ネットワークであってもよい。
【0028】
また、図1に示す各装置の構成は一例である。例えば図1に示す構成では携帯機100および制御装置200は、それぞれ第1の無線通信部及び第2の無線通信部を有するが、本発明はこれに限定されず、携帯機100および制御装置200が、それぞれ一の無線通信規格に準拠した通信を行う無線通信部を有する構成であってもよい。無線通信部は、車両20に複数設けられていてもよい。無線通信部は、認証処理に用いる信号の送受信を行う。また、当該無線通信部が認証処理に用いられる信号を送信する際に使用される周波数帯は任意である。例えば、認証処理に用いられる信号は、UWBを用いた信号として送信されてもよいし、LF帯の信号として送信されてもよいし、RF帯の信号として送信されてもよいし、BLE(Bluetooth Low Energy)(登録商標)の信号として送信されてもよい。
【0029】
<2.認証処理>
スマートエントリーシステムにおいては、携帯機100と車両の制御装置200との間の距離に基づいて、携帯機100の認証が行われる場合がある。本実施形態による認証処理は、携帯機100と制御装置200との距離を測定する処理(以下、本明細書において「測距処理」とも称する)、及び距離の測定結果に基づき認証する処理を含む。距離に基づく認証を行うことで、中継器を用いて車両の制御装置(認証装置)の送信信号を中継して携帯機(被認証装置)と制御装置との通信を間接的に実現させ、制御装置による携帯機の認証を不正に成立させるリレーアタックのような被認証装置の偽装、距離の偽装を低減し、認証精度を効果的に高めることが可能となる。
【0030】
図2は、本実施形態による認証処理の基本的な流れの一例を示すシーケンス図である。図2に示すように、まず、携帯機100は、測距トリガ信号を送信する(ステップS103)。本実施形態では、一例として、制御装置200からの第1の測距用信号の送信に先立って、当該第1の測距用信号を送信するよう指示する信号(測距トリガ信号)を携帯機100から送信する。測距トリガ信号には、例えばUWBを用いた信号が使用される。具体的には、携帯機100は、第2の無線通信部120により測距トリガ信号を送信してもよい。
【0031】
次いで、制御装置200は、測距トリガ信号を受信すると、第1の測距用信号として、測距処理のための応答を要求する測距要求信号を送信する(ステップS106)。測距要求信号には、例えばUWBを用いた信号が使用される。具体的には、制御装置200は、第2の無線通信部220により測距要求信号を送信してもよい。
【0032】
次に、携帯機100は、制御装置200から測距要求信号(第1の測距用信号)を受信すると、測距要求信号を受信してから時間ΔT2経過後に、第2の測距用信号として、測距要求に応答する測距応答信号を送信する(ステップS109)。測距応答信号には、例えばUWBを用いた信号が使用される。具体的には、携帯機100は、第2の無線通信部120により測距応答信号を送信してもよい。時間ΔT2は、予め規定された時間である。時間ΔT2は、携帯機100において第1の測距用信号を受信してから第2の測距用信号を送信するまでの処理のために要されると想定される時間よりも長く設定される。これにより、第2の測距用信号の送信準備を、第1の測距用信号を受信してから時間ΔT2が経過するまでに確実に完了させることが可能となる。また、時間ΔT2は、制御装置200にも既知であってもよい。
【0033】
続いて、制御装置200の制御部240は、測距応答信号(第2の測距用信号)を受信すると、携帯機100と制御装置200との間の距離を算出する(ステップS112)。詳しくは、制御装置200は、第1の測距用信号の送信時刻から第2の測距用信号の受信時刻までの時間ΔT1を計測し、計測したΔT1と既知な時間ΔT2とに基づいて距離を計算する。制御装置200は、ΔT1からΔT2を差し引いた値を2で割ることで片道の信号送受信にかかる時間を計算し、かかる時間に信号の速度を掛けることで、携帯機100と制御装置200との間の距離を計算し得る。なお、時間ΔT2は、制御装置200に既知でなくともよい。例えば、携帯機100は、時間ΔT2を計測し、制御装置200に報告してもよい。かかる報告は、時間ΔT2を示す情報を暗号化した情報を含むデータ信号を送信することで行われ得る。データ信号は、測距処理のための信号の他の一例である。データ信号は、データを格納して搬送する信号である。データ信号は、データを格納するペイロード部分を有するフレームフォーマットで構成される。また、データ信号は、UWBを用いた信号として送受信され得る。
【0034】
なおステップS112に示す距離の算出は、第2の無線通信部220が通信ユニットとして構成されている際は通信ユニットの制御部で行われてもよい。この場合、通信ユニットは算出結果を制御部140に車載通信ネットワークで送信する。また、車両20には第2の無線通信部220が複数搭載されていてもよい。制御部240は、複数の第2の無線通信部220がそれぞれ携帯機100と送受信したデータに基づいて、携帯機100と制御装置200との間の距離を算出してもよい。
【0035】
そして、制御装置200の制御部240は、算出した距離が所定条件を満たすか否かに応じて、携帯機100の認証を行う(ステップS115)。例えば制御部240は、算出した距離が所定値以下であれば認証成功と判定し、そうでない場合には認証失敗と判定する。また、制御部240は、算出した距離が所定の範囲内であれば、対応する所定の制御を行うための認証の成功と判定してもよい。例えば、制御部240は、携帯機100を携帯するユーザと、制御装置200が搭載された車両20との間の距離が所定の範囲内の場合には、車両20に設けられた照明を点灯する制御を行うための認証の成功と判定して、照明を点灯する制御を行う。そして、ユーザがさらに車両20に近付いた場合、制御部240は、車両20のドア錠をアンロックする制御を行うための認証の成功と判定して、ドア錠のアンロック制御を行うようにしてもよい。
【0036】
<3.課題の整理>
ここで、上述した測距トリガ信号、測距要求信号、及び、測距応答信号には、認証のための所定の情報が含まれる。かかる「認証のための所定の情報」を、本明細書において、「認証情報」と称する。信号を受信した側の装置は、信号に含まれる認証情報に基づいて、自身とペアリングされた相手から送信された信号であるか否かを判別する。認証情報は、装置のIDであってもよいし、何らかの規定の情報が暗号化された情報であってもよい。暗号化は、例えば信号の送信側の装置と受信側の装置との間で予め共有された暗号鍵により暗号化され得る。暗号化された情報の場合、信号を受信した側の装置は、暗号化された情報の復号を行い、復号が成功した場合には自身とペアリングされた相手から送信された信号であると判別できる。ここで、暗号化された情報を取り扱う認証者と被認証者の間では、例えば、暗号化に用いる鍵とロジックが共通し、暗号処理に入力される情報のみが異なってもよい。また、暗号化に用いる鍵とロジックの少なくとも一方が異なり、暗号処理に入力される情報が共通または異なってもよい。また、暗号化に用いる鍵やロジック、または入力される情報を変更する場合は、認証者と被認証者が予め有する変更の法則により変更されてもよい。
【0037】
しかし、測距トリガ信号、測距要求信号、及び、測距応答信号の少なくとも2つ以上の信号に同じ認証情報が用いられる場合、信号を受信した側の装置が信号を取り違える恐れがある。特に、車両20に複数の無線通信部が設けられている場合、一方の無線通信部が携帯機100に送信した信号を、他方の無線通信部が受信し、携帯機100から送信された信号と誤認する可能性がある。以下、図3を参照して具体的に説明する。
【0038】
図3は、信号の取り違えについて説明する図である。図3では、比較例による制御装置201を用いて信号の取り違えについて説明する。制御装置201は、複数の第2の無線通信部221a、221bを有する装置であって、車両20に搭載される。
【0039】
図3に示すように、まず、携帯機100が測距トリガ信号を送信する(ステップS203)。次いで、測距トリガ信号を受信した第2の無線通信部221aは、測距要求信号を送信する(ステップS206)。次に、携帯機100は、測距要求信号を受信してから所定時間(上記ΔT2)経過後に、測距応答信号を送信する(ステップS209)。
【0040】
ここで、「測距トリガ信号」と「測距要求信号」に同じ認証情報が含められている場合、第2の無線通信部221において「測距トリガ信号」と「測距要求信号」の取り違えが生じ得る。同じ認証情報とは、例えば、同じ暗号化情報が用いられている場合が想定される。第2の無線通信部221bは、予め受信待ち状態に制御されており、携帯機100から送信された測距トリガ信号を受信し損ねた場合(ステップS203a)、第2の無線通信部221aから送信された測距要求信号を受信し(ステップS206a)、当該測距要求信号を測距トリガ信号と判別してしまう可能性がある。
【0041】
受信待ち状態とは、受信した信号を取り込むための処理を実行する状態を指す。第2の無線通信部221bは、携帯機100からのUWBを用いた測距トリガ信号の送信に先行して行われる携帯機100と制御装置201との通信に基づいて、任意のタイミングで測距トリガ信号の受信を想定した受信待ち状態に制御され得る。先行して行われる通信は、RF帯の信号及びLF帯の信号での通信が可能な第1の無線通信部により行われてもよい。そして、測距トリガ信号の受信を想定した受信待ち状態に制御された第2の無線通信部221bは、受信したUWB信号が、実際は第2の無線通信部221aから送信された測距要求信号であっても、含まれている暗号化情報の復号化が成功した場合、当該UWB信号を測距トリガ信号と判別してしまう。
【0042】
次いで、測距トリガ信号を受信したものと誤認した第2の無線通信部221bは、測距要求信号を携帯機100に送信する(ステップS212)。しかし、かかる誤認による測距要求信号の送信のタイミングは、携帯機100における受信待ち状態の時間と合わず、通信が成立しない可能性が高い。携帯機100は、消費電力低減のため、上記ステップS203で測距トリガ信号を送信してから一定時間受信待ち状態とする制御を行う。このため、携帯機100では、タイミングが遅くなった第2の無線通信部221bからの測距要求信号の受信や取り込みが行われず、その後の測距応答信号の送信も行われない。
【0043】
このように、誤認によりタイミングがずれた状態で第2の無線通信部221bから測距要求信号を送信しても、測距の通信が行えず、消費電力の無駄となってしまう。
【0044】
そこで、本発明の一実施形態では、装置間の認証処理に関する信号に用いる認証情報を使い分ける。すなわち、測距トリガ信号や測距要求信号など、各信号の認証処理における役割の種別である信号種別に応じて、異なる認証情報を用いる。具体的には、測距トリガ信号と測距要求信号とで異なる認証情報を用いる。これにより、信号の誤認を低減し、無駄な消費電力を抑制することが可能となる。
【0045】
以下、本発明の実施形態による技術的特徴について詳しく説明する。
【0046】
<4.技術的特徴>
図4は、本実施形態に係る制御装置200の距離に基づく認証処理の流れの一例を示すフローチャートである。本明細書において、「距離に基づく認証処理」は、携帯機100と制御装置200との距離を測定する測距処理、及び、当該測距処理により測定された距離に基づき認証する認証処理を含む。図4に示す動作処理は、制御装置200による測距処理に用いる信号の送受信の制御について説明するものである。
【0047】
図4に示すように、まず、制御装置200の制御部240は、第2の無線通信部220により信号を受信する(ステップS303)。第2の無線通信部220は、車両20に複数設けられていてもよい。複数の第2の無線通信部220は、それぞれ信号を受信する。また、各第2の無線通信部220は、予め受信待ち状態に制御されており、信号の受信を行い得る。受信待ち状態とは、受信した信号を取り込むための各種処理を実行する状態を指す。各種処理とは、例えば、第2の無線通信部220を構成するアンテナが信号を受信すること、第2の無線通信部220により、受信した信号のサンプリングを行うこと、さらに、制御部240により、サンプリングして得られた信号に基づく処理を行うことなどが挙げられる。本実施形態による制御部240は、任意のタイミングで、第2の無線通信部220を測距トリガ信号の受信待ち状態に遷移させ、測距トリガ信号の受信を待つ。なお、任意のタイミングとは、例えば携帯機100からのUWBを用いた測距トリガ信号の送信に先行して行われる携帯機100と制御装置200との通信が成立したタイミングである。制御部240は、携帯機100と制御装置200との通信が成立した際、測距トリガ信号の受信を想定して1以上の第2の無線通信部220を受信待ち状態に制御する。先行して行われる通信は、例えばRF帯の信号及びLF帯の信号での通信が可能な第1の無線通信部により行われてもよい。
【0048】
次いで、制御部240は、受信した信号が測距トリガ信号か否かを判定する(ステップS306)。第2の無線通信部220が複数ある場合、制御部240は、各第2の無線通信部220が受信した各信号について、それぞれ測距トリガ信号か否かを判定する。本実施形態による測距トリガには、信号種別に応じて異なる認証情報が含まれているため、制御部240は、受信した信号に含まれる認証情報に基づいて測距トリガ信号か否かを判定することができる。例えば認証情報は、測距トリガ信号用に用いる共通の鍵により暗号化された情報である。暗号化情報を用いることで、セキュリティをより高めることができる。制御部240は、受信した信号に含まれる暗号化情報を測距トリガに用いる共通の鍵により復号化できた場合、測距トリガ信号であると判定し得る。また、制御部240は、復号化した情報が予め携帯機100と共有された情報と一致する場合に、測距トリガ信号であると判定してもよい。
【0049】
次に、測距トリガ信号であると判定した場合(ステップS309/Yes)、制御部240は、測距要求用の認証情報を含めた測距要求信号を生成し、これを第2の無線通信部220から送信する制御を行う(ステップS312)。測距要求用の認証情報とは、例えば測距要求信号用に用いる共通の鍵により暗号化された情報である。暗号化の対象となる元の情報は、予め携帯機100と共有された情報であってもよいし、ランダムな数値であってもよい。測距要求信号用に用いる共通の鍵は、上記測距トリガ信号用に用いる共通の鍵とは異なるものである。測距要求信号には測距要求信号用の認証情報を含めて送信することで、万一他の第2の無線通信部220が受信してしまった場合も、上記ステップS306で測距トリガ信号と誤認されることが抑制される。
【0050】
このように、本実施形態による測距トリガ信号や測距要求信号等の測距用信号に、信号種別に応じて異なる認証情報が含むことで、図4を参照して説明したような信号の混同を低減することが可能となり、無駄な消費電力が抑制される。信号種別に応じて異なる認証情報は、例えば信号種別に応じて異なる共通の鍵により規定の情報を暗号化することで生成されてもよい。なお本発明書において、測距用信号には、測距応答信号も含まれる。携帯機100は、例えば測距応答信号用に予め制御装置200と共有された共通の鍵を用いて暗号化した情報を、測距応答信号に含めるようにしてもよい。本システム1では、少なくとも、測距トリガ信号に含まれる認証情報と、測距要求信号および測距応答信号に含まれる認証情報とが異なるようにしてもよい。また、携帯機100および制御装置200は、信号種別とさらに複数の第2の無線通信部毎で異なる鍵を用いて、認証情報を生成してもよい。例えば第2の無線通信部220aが送信する測距要求信号に含まれる認証情報と、第2の無線通信部220bが送信する測距要求信号に含まれる認証情報とは、異なる鍵により生成される。また、携帯機100は、第2の無線通信部220aから送信された測距要求信号に応じて生成する測距応答信号に含まれる認証情報と、第2の無線通信部220bから送信された測距要求信号に応じて生成する測距応答信号に含まれる認証情報とは、同様に異なる鍵により生成する。このように同じ信号種別であっても通信主体または通信相手によって認証情報を異ならせることで、さらにセキュリティを高めることが可能となる。また、上記実施形態では認証情報として規定の情報が暗号化された情報を用いる旨を説明したが、本実施形態はこれに限定されず、例えば携帯機100が有する固有の識別情報や、制御装置200が有する固有の識別情報を用いてもよい。
【0051】
また、図4に示す動作処理は、本実施形態の一例であって、本発明はこれに限定されない。例えば、第2の無線通信部220が通信ユニットとして構成されている場合、上記ステップS306に示す処理を、第2の無線通信部220に設けられた制御部(不図示)により制御してもよい。
【0052】
また、上記ステップ303の前に第2の無線通信部220を受信待ち状態に遷移させる任意のタイミングは、制御装置200が第1の無線通信部210により携帯機100から所定の信号を受信した際でもよいし、当該受信した所定の信号に基づいて制御装置200が携帯機100の認証を行っている間であってもよいし、当該認証が終了した後であってもよい。すなわち、上記ステップ303の前に、携帯機100と制御装置200との間では所定の信号の送受信が行われる場合も想定される。携帯機100と制御装置200との間で行われる所定の任意の信号の送受信は、携帯機100の第1の無線通信部110と、制御装置200の第1の無線通信部210との間で行われてもよい。
【0053】
例えば、携帯機100と制御装置200との間では、要求応答認証が行われる。要求応答認証では、認証要求信号、及び認証要求に基づいて生成される認証応答信号の送受信が行われる。要求応答認証とは、認証者が認証要求信号を生成して被認証者に送信し、被認証者が認証要求信号に基づいて認証応答信号を生成して認証者に送信し、認証者が認証応答信号に基づき被認証者の認証を行う方式である。典型的には、認証要求信号は乱数であり認証のたびに変化するので、要求応答認証は反射攻撃に耐性を有する。また、認証応答信号は被認証者の情報に基づいて生成される。被認証者の情報とは、例えば、ID及びパスワード等である。ID及びパスワードそのものは送受信されないため、盗聴が低減される。より具体的には、例えば制御装置200が認証要求として送信した第1の認証信号に対し、携帯機100が第1の認証信号と予め保存されたパスワード等の鍵情報とに基づき演算した第2の認証信号を認証応答として送信する。認証応答として送信された第2の認証信号が、認証要求である第1の認証信号と上記の鍵情報とから算出される正規の値を示すことが認められた場合、制御装置200は、携帯機100の認証を成功としてよい。
【0054】
また、携帯機100と制御装置200との間で、起動を指示するウェイクアップ信号、及びウェイクアップ信号に対する応答の送受信が行われてもよい。ウェイクアップ信号により、受信側をスリープ状態から復帰させることができる。ウェイクアップ信号に対する応答としては、起動することを示す肯定応答(ACK:Acknowledgement)信号、及び起動しないことを示す否定応答(NACK:Negative Acknowledgement)信号が挙げられる。
【0055】
若しくは、測距トリガ信号の受信待ちに先立って、携帯機100と制御装置200との間で、ウェイクアップ信号の応答と、要求応答認証が行われてもよい。制御装置200は、このようなウェイクアップ信号の応答や要求応答認証に応じて、上記測距トリガ信号の受信待ちを開始する。
【0056】
制御装置200は、ウェイクアップ信号の応答や要求応答認証に応じて受信待ちを開始することで、受信待ち期間を短縮することができる。また、距離に基づく認証処理の前に他の方法での認証処理を1段階踏まえることで、認証精度をさらに高めることができる。
【0057】
なお、ウェイクアップ信号の応答や要求応答認証において、一方の装置から他方の装置へ送信される信号を第1の通知信号とも称する。そして、第1の通知信号を受信した装置から、第1の通知信号を送信した装置へ送信される信号を、第2の通知信号とも称する。各装置は、第1の認証信号への応答として、第1の認証信号に対応する正規の第2の認証信号が送信された場合にのみ、相手装置の認証を成功とする。第1、第2の通知信号が送信される際に使用される周波数帯は任意である。例えば、通知信号は、測距トリガ信号や測距要求信号等の測距用信号と同一の周波数帯を使用して送信されてもよいし、測距用信号と異なる周波数帯を使用して送信されてもよい。また、通知信号は、UWBを用いた信号として送信されてもよいし、LF帯の信号として送信されてもよいし、RF帯の信号として送信されてもよいし、BLE(Bluetooth Low Energy)の信号として送信されてもよい。
【0058】
また、本実施形態による信号種別に応じた認証情報の使い分けは、上記第1の通知信号および第2の通知信号など、例えば要求応答認証で用いられる各信号に適用することも可能である。
【0059】
<5.応用例>
図3を参照して説明した比較例では、特に制御装置201が複数の第2の無線通信部221a、221bを有している場合に、一方の第2の無線通信部221から発信された測距要求信号が他方の第2の無線通信部221に受信され、測距トリガ信号と誤認される恐れがある旨を説明した。
【0060】
一方、第2の無線通信部が一つであっても、各測距用信号に含まれる認証情報がすべて同じ場合、リレーアタックを行う中継器などの不正ツールによりコピーされた信号が正当な信号と誤認され、被認証装置の偽装が行われる恐れがある。以下、図5を参照して具体的に説明する。
【0061】
図5は、不正ツールが用いられた場合の信号の誤認について説明する図である。図5に示すように、まず、携帯機100から測距トリガ信号が送信される(ステップS403)。測距トリガ信号は、例えばUWBを用いた信号である。
【0062】
次に、不正ツール400は、携帯機100から受信した測距トリガ信号をコピーし、コピーされた信号を比較例による制御装置201に送信する(ステップS406)。また、不正ツール400は、当該コピーされた信号を携帯機100にも送信する(ステップS409)。不正ツール400による測距トリガ信号のコピーでは、信号に含まれる暗号化情報もそのままコピーされる。
【0063】
次いで、制御装置201は、不正ツール400によりコピーされた信号に含まれる認証情報に基づいて当該信号を正当な測距トリガ信号と誤認し、測距要求信号を送信する(ステップS412)。不正ツール400によりコピーされた信号は、例えばUWBを用いた信号であって、制御装置201の一の無線通信部により受信される。
【0064】
一方、携帯機100は、不正ツール400によりコピーされた信号に含まれる認証情報に基づく認証が成功することで、当該信号を正当な測距要求信号と誤認し、規定の時間(ΔT4)経過後に測距応答信号を送信する(ステップS415)。例えばUWBを用いた測距用信号に含まれる各認証情報がすべて同じ場合、携帯機100は、測距トリガ信号を送信して受信待ち状態になっている際に受信したUWBの信号に含まれる認証情報に基づく認証に成功してしまう。これにより、実際は測距トリガ信号をコピーして返信された不正な信号であるにも関わらず、携帯機100は、制御装置201からの測距要求信号であると誤認してしまう恐れがある。
【0065】
次に、不正ツール400は、携帯機100から送信された測距応答信号をコピーし、コピーされた信号を制御装置201に送信する(ステップS418)。不正ツール400による測距応答信号のコピーでは、信号に含まれる暗号化情報もそのままコピーされる。
【0066】
次いで、制御装置201は、不正ツール400によりコピーされた信号に含まれる認証情報に基づいて当該信号を正当な測距応答信号と誤認し、携帯機100と制御装置201との間の距離を算出する(ステップS421)。詳しくは、制御装置201は、第1の測距用信号である測距要求信号の送信時刻から、第2の測距用信号である測距応答信号の受信時刻までの時間ΔT3を計測し、計測したΔT3と既知な時間ΔT4とに基づいて距離を計算する。
【0067】
そして、制御装置201は、算出した距離が所定条件を満たすか否かに応じて、携帯機100の認証を行う(ステップS424)。例えば制御装置201は、算出した距離が所定値以下であれば認証成功と判定し、そうでない場合には認証失敗と判定する。ここで、実際は携帯機100が遠い、すなわち往復の信号送受信にかかる時間は、ΔT3よりも長いはずであるが、不正ツール400によりΔT3が実際にかかる時間より短い時間となってしまう。これにより、携帯機100との距離が偽装され、制御装置201による携帯機100の認証が不正に成立してしまう。
【0068】
これに対し、本発明に係るシステム1の適用により、不当な認証処理を抑制することが可能となる。本発明に係るシステム1に含まれる携帯機100および制御装置200は、信号種別に応じて異なる認証情報を測距用信号に含めて用いる。以下、図6を参照して具体的に説明する。
【0069】
図6は、本実施形態の応用例に係る距離に基づく認証処理の一例を示すシーケンス図である。図6に示すように、まず、携帯機100から測距トリガ信号が送信される(ステップS503)。携帯機100は、測距トリガ信号用の認証情報を含めて送信する。例えば携帯機100は、測距トリガ信号用の共通の鍵を用いて規定の情報を暗号化した情報を認証情報として測距トリガ信号に含めて送信する。
【0070】
次に、不正ツール400は、携帯機100から受信した測距トリガ信号をコピーし、コピーされた信号を制御装置200に送信する(ステップS506)。また、不正ツール400は、当該コピーされた信号を携帯機100にも送信する(ステップS509)。不正ツール400による測距トリガ信号のコピーでは、信号に含まれる暗号化情報もそのままコピーされる。
【0071】
次いで、制御装置200は、不正ツール400によりコピーされた信号に含まれる認証情報に基づいて、当該信号を正当な測距トリガ信号と誤認し、測距要求信号を送信する(ステップS515)。不正ツール400によりコピーされた信号では、測距トリガ信号用の認証情報もそのままコピーされているため、この時点では制御装置200が誤認することも想定される。制御装置200は、測距要求信号用の認証情報を含めて送信する。例えば制御装置200は、測距要求信号用の共通の鍵を用いて規定の情報を暗号化した情報を認証情報として測距要求信号に含めて送信する。
【0072】
一方、不正ツール400によりコピーされ、携帯機100に送信された信号には、測距トリガ信号に含まれる認証情報がコピーされているため認証が失敗する。これにより、携帯機100は、受信した信号が正当な測距要求信号ではないと判定できる(ステップS512)。このため、図5のステップS415に示すような、コピーされた信号に応じて測距応答信号が発信されることが回避され、結果的に距離の偽装が低減される。
【0073】
次に、制御装置200が誤認して送信した測距要求信号には、測距要求信号用の認証情報が含まれているため、認証が成功する。これにより、携帯機100は、受信した信号が正当な測距要求信号であると判定できる(ステップS518)。
【0074】
続いて、携帯機100は、規定の時間(ΔT6)経過後に測距応答信号を送信する(ステップS521)。携帯機100は、測距応答信号用の認証情報を含めて送信する。例えば携帯機100は、測距応答信号用の共通の鍵を用いて規定の情報を暗号化した情報を認証情報として測距応答信号に含めて送信する。
【0075】
次に、制御装置200は、携帯機100から送信された測距応答信号に含まれる認証情報に基づいて、当該測距応答信号が正当な測距応答信号と判別し、携帯機100と制御装置200との間の距離を算出する(ステップS524)。詳しくは、制御装置200は、第1の測距用信号である測距要求信号の送信時刻から、第2の測距用信号である測距応答信号の受信時刻までの時間ΔT5を計測し、計測したΔT5と既知な時間ΔT6とに基づいて距離を計算する。時間ΔT5は、実際に往復の信号送受信にかかった時間であり、図5に示す比較例と異なり、偽装は行われていない。制御装置200は、正しい距離を算出することが可能となる。
【0076】
そして、制御装置200は、算出した距離が所定条件を満たすか否かに応じて、携帯機100の認証を行う(ステップS424)。例えば制御装置200は、算出した距離が所定値以下であれば認証成功と判定し、そうでない場合には認証失敗と判定する。ここでは、携帯機100との距離が遠く、認証失敗と判定される。このように、不正ツール400を用いようとしても、信号が誤認されることなく、携帯機100と制御装置200との距離の偽装を抑制し、制御装置200による携帯機100の不正な認証を低減できる。
【0077】
<6.まとめ>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0078】
例えば、上記実施形態では、認証者側が第1の測距用信号を送信する例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。認証者側とは、例えば、車両20の制御装置200である。例えば、被認証者側が第1の測距用信号を送信してもよい。被認証者側とは、例えば、携帯機100である。制御装置200は、携帯機100から第1の測距用信号を受信すると、第1の測距用信号の応答として第2の測距用信号を送信する。携帯機100は、第2の測距用信号を受信すると、第1の測距用信号の送信時刻から第2の測距用信号の受信時刻までの時間ΔT1を計測する。次いで、携帯機100は、計測したΔT1を示す情報を暗号化した情報を含むデータ信号を送信する。他方、制御装置200は、第1の測距用信号の受信時刻から第2の測距用信号の送信時刻までの時間ΔT2を計測しておく。そして、制御装置200は、携帯機100からデータ信号を受信すると、携帯機100から受信したデータ信号により示されるΔT1と、計測したΔT2とに基づいて、携帯機100と制御装置200との間の距離を計算する。例えば、ΔT1-ΔT2を2で割ることで片道の信号送受信にかかる時間が計算され、かかる時間に信号の速度を掛けることで、携帯機と制御装置200との間の距離が計算される。このように、第1の測距用信号及び第2の測距用信号の送受信の方向を逆にした場合、制御装置200は、携帯機100から送信される第1の測距用信号を待つ待ち状態に遷移する制御を行う。第1の測距用信号を待つ待ち状態への遷移は、任意のタイミングで行われ得る。
【0079】
また、上記実施形態では、被認証者が携帯機100であり、認証者が車両20の制御装置200である例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。携帯機100及び車両20の制御装置200の役割は逆であってもよいし、役割が動的に交換されてもよい。また、車両20の制御装置200同士で測距及び認証が行われてもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、携帯機100が通信装置の一例であり、制御装置200が制御装置の一例である旨を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。携帯機100が制御装置の一例であってもよいし、制御装置200が通信装置の一例であってもよい。
【0081】
他にも例えば、上記実施形態では、本発明がスマートエントリーシステムに適用される例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明は、信号を送受信することで測距及び認証を行う任意のシステムに適用可能である。例えば、ユーザが利用する対象物として、ドローン、車両、船舶、飛行機、建築物、ロボット、ロッカー、家電製品等が挙げられる。建築物には、住宅などが含まれる。また、本発明は、携帯機、車両、船舶、飛行機、スマートフォン、ドローン、建築物、ロボット、ロッカー及び家電製品等のうち任意の2つの装置を含むペアに適用可能である。なお、ペアは、2つの同じ種類の装置を含んでいてもよいし、2つの異なる種類の装置を含んでいてもよい。この場合、一方の装置が第1の通信装置として動作し、他方の装置が第2の通信装置として動作する。
【0082】
他にも例えば、上記実施形態では、無線通信規格としてUWBを用いるものを挙げたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、無線通信規格として、赤外線を用いるものが使用されてもよい。
【0083】
他にも例えば、上記では、制御部240がECUとして構成され、制御装置200の動作全般を制御するものと説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、第1の無線通信部210および第2の無線通信部220がそれぞれECUを含んでいてもよい。この場合、第1の無線通信部210および第2の無線通信部220は、移動体搭載通信装置とも称される。移動体搭載通信装置は、上述した制御装置200と同様に、受信した信号に含まれる認証情報に基づく処理や、受信待ち状態への遷移を制御する処理を実行してもよい。
【0084】
なお、本明細書において説明した各装置による一連の処理は、ソフトウェア、ハードウェア、及びソフトウェアとハードウェアとの組合せのいずれを用いて実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、各装置の内部又は外部に設けられる記録媒体(非一時的な媒体:non-transitory media)に予め格納される。そして、各プログラムは、例えば、コンピュータによる実行時にRAMに読み込まれ、CPUなどのプロセッサにより実行される。上記記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信されてもよい。
【0085】
また、本明細書においてシーケンス図やフローチャートを用いて説明した処理は、必ずしも図示された順序で実行されなくてもよい。いくつかの処理ステップは、並列的に実行されてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1:システム、100:携帯機、110:第1の無線通信部、120:第2の無線通信部、130:記憶部、140:制御部、20:車両20 200:制御装置、210:第1の無線通信部、220:第2の無線通信部、230:記憶部、240:制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-01-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの通信装置と無線通信を行って受信した信号に含まれる情報に基づいて、前記通信装置と、装置の認証に関する処理を行う認証処理を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記通信装置に送信する信号の前記認証処理における役割の種別である信号種別に応じて異なる、前記認証処理に用いられる情報である認証情報を、前記通信装置に送信する信号に含めて、前記通信装置に前記無線通信により送信するよう制御し、
前記認証処理は、前記通信装置と制御装置との間の距離を測定する測距認証であり、
前記信号種別は、前記測距認証を開始することを通知する測距トリガ信号と、前記距離を算出するために応答を要求する測距要求信号と、を含み、
前記認証情報は、前記信号種別と、さらに前記通信装置が有する複数の通信部毎に異なる、
制御装置。
【請求項2】
前記信号種別は、前記測距要求信号を受信した場合に応答する測距応答信号をさらに含む、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記認証情報は、暗号化された情報である、請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記暗号化された情報は、前記通信装置と共通する暗号鍵により生成した情報である、請求項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記暗号化された情報は、前記信号種別毎に前記通信装置と共通する暗号鍵により生成した情報である、請求項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記認証情報は、予め設定された識別情報である、請求項1~のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
少なくとも、前記測距トリガ信号に含まれる認証情報と、前記測距要求信号および前記測距応答信号に含まれる認証情報とが異なる、請求項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記制御装置は、移動体に搭載され、
前記通信装置は、前記移動体のユーザに携帯される、請求項1~のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記制御装置は、
前記通信装置と無線通信を行う1以上の通信部と、
前記制御部と、を有する、
請求項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記制御装置は、
前記移動体に搭載され、前記通信装置と無線通信を行う1以上の移動体搭載通信装置を制御し、
前記移動体搭載通信装置を介して前記通信装置との信号の送受信を制御する、請求項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記通信装置は、移動体に搭載され、
前記制御装置は、前記移動体のユーザに携帯される、請求項1~のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項12】
前記通信装置は、
前記制御装置と無線通信を行う複数の通信部と、
前記制御部と、を有し、
前記制御装置は、
前記認証情報を、前記信号種別とさらに前記複数の通信部毎に異なる暗号鍵により生成する、請求項11に記載の制御装置。
【請求項13】
プロセッサが、
少なくとも一つの通信装置と無線通信を行って受信した信号に含まれる情報に基づいて、前記通信装置と、装置の認証に関する処理を行う認証処理を制御することと、
前記通信装置に送信する信号の前記認証処理における役割の種別である信号種別に応じて異なる、前記認証処理に用いられる情報である認証情報を、前記通信装置に送信する信号に含めて、前記通信装置に前記無線通信により送信するよう制御することと、を含み、
前記認証処理は、前記通信装置と制御装置との間の距離を測定する測距認証であり、
前記信号種別は、前記測距認証を開始することを通知する測距トリガ信号と、前記距離を算出するために応答を要求する測距要求信号と、を含み、
前記認証情報は、前記信号種別と、さらに前記通信装置が有する複数の通信部毎に異なる、
制御方法。