(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024092
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】滅菌装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/20 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
A61L2/20
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024001266
(22)【出願日】2024-01-09
(62)【分割の表示】P 2020036185の分割
【原出願日】2020-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2019039249
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000148025
【氏名又は名称】サクラ精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧 登志夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 伸明
(72)【発明者】
【氏名】中澤 雅嗣
(57)【要約】
【課題】被滅菌物を収納したカートを滅菌室内に入れた後に、滅菌工程が開始する前にカートが滅菌室から引き出された場合には、作業者にその旨を知らせる。
【解決手段】被滅菌物を収納するカート50と、カート50を収納可能な滅菌室32と、作業者によって滅菌工程を開始するために操作されるスタートスイッチ72と、スタートスイッチ72がオンになったときに滅菌工程を実行するように制御する制御部70と、カート50の出し入れを検出するセンサ38、40と、スタートスイッチ70がオンになっていない状態でセンサ38、40が、カート50が滅菌室32から引き出されたことを検出した場合には、作業者に対して警告を発する警告装置76とを具備する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被滅菌物を収納するカートと、
該カートを収納可能であって、カートに収納された被滅菌物に対して滅菌工程を施す滅菌室と、
作業者によって滅菌工程を開始するために操作されるスタートスイッチと、
該スタートスイッチがオンになったときに滅菌工程を実行するように制御する制御部と、
前記カートの出し入れを検出するセンサと、
前記スタートスイッチがオンになっていない状態で前記センサが、カートが滅菌室から引き出されたことを検出した場合には、作業者に対して警告を発するように前記制御部によって制御される警告装置と、を具備することを特徴とする滅菌装置。
【請求項2】
前記警告装置は、
滅菌工程の実行がされていない旨を表示する表示装置及び/又は警告音を発するスピーカを含むことを特徴とする請求項1記載の滅菌装置。
【請求項3】
前記制御部は、
作業者によって滅菌工程の準備が完了したときから所定時間スタートスイッチがオンされない場合には、前記警告装置から作業者に対して警告を発するように制御することを特徴とする請求項1記載の滅菌装置。
【請求項4】
前記警告装置は、
滅菌工程のスタートスイッチがオンされていない旨を表示する表示装置及び/又は警告音を発するスピーカを含むことを特徴とする請求項3記載の滅菌装置。
【請求項5】
前記カートには、被滅菌物を収納する収納部よりも下部において、前記センサに感知させる感知部が設けられており、
前記センサは、前記滅菌室の開口部を正面から見て左右いずれか一方の側面開口部側に設けられて、前記カートの前記感知部に対してカートの通過を感知することを特徴とする請求項1~請求項4のうちのいずれか1項記載の滅菌装置。
【請求項6】
前記センサは、前記滅菌室の開口部を正面から見て左右いずれか一方の側面開口部側において第1センサと、第1センサよりも下方に設けられた第2センサとを有し、
前記感知部は、第1センサに感知される第1感知部と、第1感知よりも下方であってカートの滅菌室からの退出方向側に設けられて第2センサに感知される第2感知部とを有し、
前記制御部は、
前記第1センサが第1感知部を感知した後に前記第2センサが第2感知部を感知した場合には、カートが滅菌室内に進入したと判断し、
前記第2センサが第2感知部を感知した後に前記第1センサが第1感知部を感知した場合には、カートが滅菌室内から引き出されたと判断することを特徴とする請求項5記載の滅菌装置。
【請求項7】
前記感知部は、カートの前記滅菌室への進入方向側に設けられた第3感知部と、カートの前記滅菌室からの退出方向側に設けられた第4感知部とを有し、
前記第3感知部と、前記第4感知部とは異なる色で配色されており、
前記センサは、前記滅菌室の開口部を正面から見て左右いずれか一方の側面開口部側においてカートを構成する支柱を検出する支柱検出センサと、前記第3感知部及び前記第4感知部を撮影する画像センサとを有し、
前記制御部は、
前記支柱検出センサがカートの支柱を検出した場合に、前記画像センサを所定のフレームレートで撮影動作を開始するように制御し、
前記支柱検出センサが次にカートの支柱を検出した場合に、前記画像センサにおける撮影動作を終了するように制御し、
前記画像センサで撮影された複数の画像において、前記第3感知部と前記第4感知部の色に基づいて、前記第3感知部と前記第4感知部のどちらが先に撮影されたかを判断するように制御し、
前記第3感知部が前記第4感知部よりも先に撮影されたと判断した場合にはカートが滅菌室内に進入したと判断し、
前記画像センサで撮影された複数の画像において、前記第4感知部が前記第3感知部よりも先に撮影されたと判断した場合にはカートが滅菌室内から引き出されたと判断することを特徴とする請求項5記載の滅菌装置。
【請求項8】
前記センサは、前記滅菌室の開口部よりも装置外側における床面において配置されたテープスイッチであることを特徴とする請求項1~請求項4のうちのいずれか1項記載の滅菌装置。
【請求項9】
前記テープスイッチは、
第1テープスイッチと、該第1テープスイッチと所定間隔をあけて第1テープスイッチよりも前記滅菌室の開口部側に配置された第2テープスイッチとを有し、
前記制御部は、
前記第1テープスイッチが感知した後に前記第2テープスイッチが感知した場合には、カートが滅菌室内に進入したと判断し、
前記第2テープスイッチが感知した後に前記第1テープスイッチが感知した場合には、カートが滅菌室内から引き出されたと判断することを特徴とする請求項8記載の滅菌装置。
【請求項10】
前記センサは、
前記滅菌室の開口部を開閉する扉よりも前方側に配置され、扉が開いた際に滅菌室内のカートの有無を検出可能なセンサであることを特徴とする請求項1記載の滅菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気や酸化エチレンガス等の滅菌剤によって被滅菌物を滅菌する滅菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
病院等においては、治療用の包帯、メス、鉗子、手術着等の滅菌が必要な被滅菌物を滅菌処理する必要がある。このような被滅菌物の滅菌には、被滅菌物を収容する圧力容器を有する蒸気滅菌装置が用いられることが多い。
一般的な蒸気滅菌装置では、圧力容器内に飽和水蒸気を導入して加圧・加熱し、所定の圧力及び温度を一定時間保持することにより被滅菌物を滅菌するように動作する。
【0003】
なお、高圧蒸気での滅菌に適さない非耐熱性のプラスチックやゴム等で構成される物については、低温で滅菌が行える酸化エチレンガスを用いた酸化エチレンガス滅菌装置によって滅菌が行われる。
【0004】
このような各滅菌装置においては、不用意に滅菌室の扉を開いてしまうと、高温高圧の蒸気が漏れたり、又は有毒な酸化エチレンガスが漏れたりして非常に危険である。また、滅菌工程も中断してしまうので再度滅菌工程を実行しなくてはならない。
【0005】
そこで、準備工程開始前だけでなく、滅菌工程前に扉のロック手段の異常を確認してガス漏れの危険防止を図る滅菌装置が提案されている(例えば、特許文献1:特許第5910853号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
滅菌装置を用いる作業者の動作としては、まず滅菌装置の電源をオンにし、扉を開き、被滅菌物を収納したカートを滅菌室に入れ、扉を閉める。そして、スタートスイッチをオンにすることで滅菌工程が開始される。
スタートスイッチをオンにしてから扉のロック機構は動作し、滅菌工程中は不用意に扉を開けるようなことが生じないようにしている。
【0008】
このように、滅菌装置における扉のロック機構は、作業者が滅菌工程を開始するスタートスイッチをオンにすることで初めて動作するものである。
一方、スタートスイッチをオンにしない限り、扉は自由に開けることができる。つまり、一度カートを滅菌室内に入れてから、滅菌室からカートを再度引き出して被滅菌物を追加する等の行為も可能である。
【0009】
しかし、従来の滅菌装置では、次のような場合において対応ができない。
例えば、作業者が、被滅菌物が収納されたカートを滅菌室内に入れた後、滅菌工程を開始せず(スタートスイッチをオンにせず)に作業者が滅菌装置の前から離れてしまった場合、まだスタートスイッチはオンになっていないため扉は開閉することができ、他の作業者がこの滅菌装置には滅菌装置内に収納されている被滅菌物はすでに滅菌完了したものと勘違いしてカートを引き出してしまう可能性がある。
【0010】
このように滅菌完了していると勘違いしてカートを滅菌装置内から引き出してしまうと未滅菌の被滅菌物を使用してしまうなどの事故が生じうる。
そこで、カートを滅菌室内に収納した後、滅菌工程の開始前にカートが滅菌室から出された場合には、まだ滅菌工程が施されていない旨を作業者に知らせることが望まれる。
【0011】
なお、滅菌装置の種類としては、カートを用いずに滅菌室内に被滅菌物を収納する構成のものも存在する。このような滅菌装置の場合、例えば、作業者が、被滅菌物を滅菌室内に入れた後、滅菌工程を開始せず(スタートスイッチをオンにせず)に作業者が滅菌装置の前から離れてしまった場合、まだスタートスイッチはオンになっていないため扉は開閉することができ、他の作業者がこの滅菌装置には滅菌装置内に収納されている被滅菌物はすでに滅菌完了したものと勘違いして扉を開けて被滅菌物を取り出そうとしてしまう可能性がある。
【0012】
このように、滅菌工程を開始していないにも関わらず、滅菌完了していると勘違いして滅菌室の扉を開いてしまうと未滅菌の被滅菌物を使用してしまうなどの事故が生じうる。
そこで、被滅菌物を滅菌室内に収納した後、滅菌工程の開始前に扉を開けた場合には、まだ滅菌工程が施されていない旨を作業者に知らせることが望まれる。
【0013】
そこで、本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、被滅菌物を収納したカートを滅菌室内に入れた後に、滅菌工程が開始する前にカートが滅菌室から引き出された場合には、作業者にその旨を知らせるようにできる滅菌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明にかかる滅菌装置によれば、被滅菌物を収納するカートと、該カートを収納可能であって、カートに収納された被滅菌物に対して滅菌工程を施す滅菌室と、作業者によって滅菌工程を開始するために操作されるスタートスイッチと、該スタートスイッチがオンになったときに滅菌工程を実行するように制御する制御部と、前記カートの出し入れを検出するセンサと、前記スタートスイッチがオンになっていない状態で前記センサが、カートが滅菌室から引き出されたことを検出した場合には、作業者に対して警告を発するように前記制御部によって制御される警告装置と、を具備することを特徴としている。
この構成を採用することによって、滅菌工程が実施される前の状態でカートが引き出されることを検出した場合には、作業者にその旨を警告することができるので、未滅菌の被滅菌物を再度使用してしまう等の事故を防止することができる。
【0015】
また、前記警告装置は、滅菌工程の実行がされていない旨を表示する表示装置及び/又は警告音を発するスピーカを含むことを特徴としてもよい。
【0016】
また、前記制御部は、作業者によって滅菌工程の準備が完了したときから所定時間スタートスイッチがオンされない場合には、前記警告装置から作業者に対して警告を発するように制御することを特徴としてもよい。
この構成によれば、滅菌工程の開始忘れを防止することができる。
【0017】
また、前記警告装置は、滅菌工程のスタートスイッチがオンされていない旨を表示する表示装置及び/又は警告音を発するスピーカを含むことを特徴としてもよい。
【0018】
また、前記カートには、被滅菌物を収納する収納部よりも下部において、前記センサに感知させる感知部が設けられており、前記センサは、前記滅菌室の開口部を正面から見て左右いずれか一方の側面開口部側に設けられて、前記カートの前記感知部に対してカートの通過を感知することを特徴としてもよい。
この構成によれば、カートの収納部よりも下に感知部が設けられているため、被滅菌物や、カートを構成する支柱やかご等が邪魔になってしまうことがなく、センサが確実にカートを認識することができる。
【0019】
また、前記センサは、前記滅菌室の開口部を正面から見て左右いずれか一方の側面開口部側において第1センサと、第1センサよりも下方に設けられた第2センサとを有し、前記感知部は、第1センサに感知される第1感知部と、第1感知よりも下方であってカートの滅菌室からの退出方向側に設けられて第2センサに感知される第2感知部とを有し、前記制御部は、前記第1センサが第1感知部を感知した後に前記第2センサが第2感知部を感知した場合には、カートが滅菌室内に進入したと判断し、前記第2センサが第2感知部を感知した後に前記第1センサが第1感知部を感知した場合には、カートが滅菌室内から引き出されたと判断することを特徴としてもよい。
この構成によれば、カートの滅菌室内への進入と滅菌室からの引き出しを確実にセンサによって把握することができる。
【0020】
また、前記感知部は、カートの前記滅菌室への進入方向側に設けられた第3感知部と、カートの前記滅菌室からの退出方向側に設けられた第4感知部とを有し、前記第3感知部と、前記第4感知部とは異なる色で配色されており、前記センサは、前記滅菌室の開口部を正面から見て左右いずれか一方の側面開口部側においてカートを構成する支柱を検出する支柱検出センサと、前記第3感知部及び前記第4感知部を撮影する画像センサとを有し、前記制御部は、前記支柱検出センサがカートの支柱を検出した場合に、前記画像センサを所定のフレームレートで撮影動作を開始するように制御し、前記支柱検出センサが次にカートの支柱を検出した場合に、前記画像センサにおける撮影動作を終了するように制御し、前記画像センサで撮影された複数の画像において、前記第3感知部と前記第4感知部の色に基づいて、前記第3感知部と前記第4感知部のどちらが先に撮影されたかを判断するように制御し、前記第3感知部が前記第4感知部よりも先に撮影されたと判断した場合にはカートが滅菌室内に進入したと判断し、前記画像センサで撮影された複数の画像において、前記第4感知部が前記第3感知部よりも先に撮影されたと判断した場合にはカートが滅菌室内から引き出されたと判断することを特徴としてもよい。
この構成によれば、カートの2つの感知部を色によって識別するため、カートの出し入れの方向性を確実に検出することができる。
【0021】
また、前記センサは、前記滅菌室の開口部よりも装置外側における床面において配置されたテープスイッチであることを特徴としてもよい。
この構成によれば、カート及び滅菌装置にセンサや感知部を設けなくともよいので、コストの大幅な上昇なくテープスイッチがカートを確実に認識することができる。
【0022】
また、前記テープスイッチは、第1テープスイッチと、該第1テープスイッチと所定間隔をあけて第1テープスイッチよりも前記滅菌室の開口部側に配置された第2テープスイッチとを有し、前記制御部は、前記第1テープスイッチが感知した後に前記第2テープスイッチが感知した場合には、カートが滅菌室内に進入したと判断し、前記第2テープスイッチが感知した後に前記第1テープスイッチが感知した場合には、カートが滅菌室内から引き出されたと判断することを特徴としてもよい。
この構成によれば、カート及び滅菌装置にセンサや感知部を設けなくともよいので、コストの大幅な上昇なくカートの滅菌室内への進入と滅菌室からの引き出しを確実にテープスイッチによって把握することができる。
【0023】
また、前記センサは、前記滅菌室の開口部を開閉する扉よりも前方側に配置され、扉が開いた際に滅菌室内のカートの有無を検出可能なセンサであることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の滅菌装置によれば、被滅菌物を収納したカートを滅菌室内に入れた後に、滅菌工程が開始する前にカートが滅菌室から引き出された場合には、作業者にその旨を知らせることができるので、未滅菌の被滅菌物を使用してしまう等の事故を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図6】表示部に表示されるスタートスイッチの例を示す説明図である。
【
図7】制御部の滅菌工程開始までの動作を示すフローチャートである。
【
図8】互いに色の異なる2つの感知部を設けたカートの側面図である。
【
図9】互いに色の異なる2つの感知部を設けた実施形態においてカートを滅菌室へ進入させる際の説明図である。
【
図10】互いに色の異なる2つの感知部を設けた実施形態においてカートを滅菌室から引き出す際の説明図である。
【
図11】テープスイッチを配置した実施形態を示す側面図である。
【
図12】テープスイッチを配置した実施形態を示す平面図である。
【
図13】滅菌装置の第2の実施形態の正面図である。
【
図14】滅菌装置の第2の実施形態の制御系のブロック図である。
【
図15】第2の実施形態の制御部の滅菌工程開始までの動作を示すフローチャートである。
【
図16】第3の実施形態のセンサの配置例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1の実施形態)
図1に滅菌装置を正面から見たところを示す。
ここで説明する滅菌装置30は蒸気滅菌装置であるとし、正面に扉(
図1では、扉が開いているところを示している)が設けられ、扉を開くと滅菌室32が開口する構成となっている。
扉の開き方は手前に開くタイプ、上下スライドタイプ、横方向スライドタイプなどが考えられるが、どのような開き方でであってもよい。
また、本実施形態の滅菌装置30は、被滅菌物をカートに収納し、カートごと滅菌室32内に収納して被滅菌物を滅菌するものである。カートの構造については後述する。
【0027】
滅菌装置30の正面において扉が設けられている箇所以外の箇所には、表示部34、プリンタ35、動作表示灯36等が設けられている。
表示部34は、タッチパネル形式であって、作業者に動作内容を表示するとともに作業者によって操作内容を入力することも可能となっている。後述するように、滅菌工程を開始する際のスタートスイッチも表示部34に表示される。作業者が表示部34に表示された作業工程等を入力設定した後、スタートスイッチが表示部34に表示される。作業者は表示部34に表示されたスタートスイッチをタッチすることによって滅菌工程が開始される。
【0028】
動作表示灯36は、滅菌装置30において滅菌室32の上方に設けられており、複数の色のランプを有している。動作表示灯36は、滅菌工程中にいずれかの色のランプが点灯し、現在の滅菌工程の進捗情報を作業者に知らせることができる。
【0029】
滅菌装置30の滅菌室32の開口部の開口側端部の側面には、カートの滅菌室32の出し入れを検出するためのセンサが設けられている。センサの配置位置は、カートの収納部よりも下方に設けられている感知部を感知できるように、開口側端部の側面の底面に近い側に配置される。本実施形態では滅菌室32を正面から見て右側の側面に各センサを設けている。
また、センサは上側に配置された第1センサ38と、第1センサ38よりも下方に位置する第2センサ40とから構成される。第1センサ38と第2センサ40の高さ方向の位置は異なるが幅方法(カートの出し入れ方向)は一致している。
【0030】
図2~
図4にカートの構成を示す。
図2はカートの側面図、
図3はカートの正面図、
図4はカートの平面図である。
カート50は、底板52と、底板52の四隅から上方に向けて延びる4本の支柱54と、各支柱54の間に所定の間隔をあけて配置された複数の棚板56とを備えている。棚板56の上に被滅菌物が配置される。
図4に示すように棚板56は、全面に長孔57が形成されており、被滅菌物がなるべく滅菌剤である蒸気に触れるようになっている。
本実施形態における棚板56は上下方向に4枚配置されているが、棚板56の枚数は被滅菌物の大きさに合わせて適宜変更することができる。
【0031】
底板52の下部には、床面に設置する車輪58が設けられている。車輪58がフリー回転する構成となっており、作業者がカート50を押すことによってカート50を移動させて滅菌室32内に収納することができ、また作業者がカート50を引っ張って滅菌室32から引き出すことができる。
【0032】
最下段の棚板56と底板52との間であって、前後方向の支柱54の間における、カート50を正面から見て左右の側面に、センサが感知する部位である感知部が設けられている。最下段の棚板56と底板52との間であれば、被滅菌物が存在することがないため、センサによる感知が的確に行われる。
感知部は、第1センサ38が感知する位置に設けられた第1感知部60と、第2センサ40が感知する位置に設けられた第2感知部62とを有する。
【0033】
本実施形態においてはセンサとして、反射型の光電センサを採用している。したがって、カート50に設けられている感知部は具体的には光を反射する反射板である。反射板としては単なる金属板を採用することができる。
第1センサ38が照射した光を第1感知部60が反射することで、第1センサ38は第1感知部60がその場所にあることを認識する。また、第2センサ40が照射した光を第2感知部62が反射することで、第2センサ40は第2感知部62がその場所にあることを認識する。
なお、カートの出し入れを検出するセンサは、光電センサに限定するものではなく、リミットスイッチや近接スイッチを採用してもよい。
【0034】
第1感知部60は、最下段の棚板56と底板52との間の隙間内で、第2感知部62よりも上方に配置されている。したがって、第2感知部62は第1感知部60よりも下方に位置している。
そして、第1感知部60は、第2感知部62よりもカート50の滅菌装置30への進入方向側に設けられ、第2感知部62は、第1感知部60よりもカート50の滅菌装置30からの退出側に設けられている。
すなわち、カート50が滅菌装置30の滅菌室32に進入する際には、まず第1センサ38が第1感知部60を感知し、次いで第2センサ40が第2感知部62を感知する。
一方、カート50が滅菌装置30の滅菌室32から引き出される際には、まず第2センサ40が第2感知部62を感知し、次いで第1センサ38が第1感知部60を感知する。
【0035】
上記のように、2つのセンサがカート50を感知する順番によってカート50が滅菌室32に進入したのか、あるいは滅菌室32からカート50が引き出されたのかが判断できる。
このようにカート50の移動方向を検出することにより、被滅菌物を収納したカート50を滅菌室内に入れた後に、滅菌工程が開始する前にカート50が滅菌室から引き出されたか否かの判断が可能となる。
【0036】
なお、本実施形態では、カートの出し入れ方向に対してカート50の両側面に感知部を設けている。
図2、
図4では、図面右側に向かう方向が滅菌室32への進入方向であり、本実施形態では滅菌室32を正面から見て右側の側面に各センサを設けているので、図面右側に位置する第1感知部60と第2感知部62によってカート50の出し入れが感知される。
図2、
図4の図面左側に位置する第1感知部60と第2感知部62は、カート50の滅菌室32への進入方向を逆にした場合に第1センサ38及び第2センサ40によって感知される。
このように、カートの出し入れ方向に対して左右両側に感知部を設けたことにより、カートを滅菌室に対して前後逆にして出し入れしたとしてもセンサはカートの出し入れを感知できる。
【0037】
図5に本実施形態の制御系のブロック図を示す。
滅菌装置30の動作制御は制御部70からの制御信号に基づいて、真空ポンプや各バルブを制御して滅菌工程が実行される。制御部70としては、CPU及びメモリ等から構成され、予めメモリに記憶された動作プログラムに基づいて動作する。
制御部70には、制御部70には電源スイッチ74が接続されている。電源スイッチ74は、滅菌装置30全体の電源をオンオフするためのスイッチである。作業者は電源スイッチ74を最初に入れることによって滅菌装置30の動作を開始させることができる。
【0038】
また、制御部70には、スタートスイッチ72が接続されている。本実施形態のスタートスイッチ72としては、タッチパネル式の表示部34に表示されるスイッチを想定しているが、物理的なスイッチであってもよい。
本実施形態では、作業者が電源スイッチ74をオンにしたのち、表示部34には、作業者が実行可能な工程などが表示され、作業者は表示部34を操作して実行する工程内容を入力又は選択する。制御部70は、作業者が滅菌工程開始前の必要な設定が完了すると、
図6に示すように、「スタートしますか」の文字と「スタート」ボタンと「キャンセル」ボタンが表示される。この「スタート」ボタンがスタートスイッチ72である。
作業者は表示されている滅菌工程の内容で滅菌工程を開始する場合はスタートスイッチ72を押下する。スタートスイッチ72が押下されたことを制御部70が検出すると、制御部70は真空ポンプや各バルブを制御して滅菌工程を実行する。
【0039】
また、制御部70はタイマー機能79を有しており、作業者における準備が完了したのち(
図6の「スタートしますか」と「スタート」ボタンと「キャンセル」ボタンが表示された後)、所定時間経過してもスタートスイッチ72が押下されなかった場合には、警告装置76によって、作業者に滅菌工程が開始されていないことを警告してもよい。
【0040】
制御部70には、第1センサ38及び第2センサ40が接続されている。制御部70は、第1センサ38及び第2センサ40のそれぞれのオンオフに基づいて、カート50の滅菌室32への出し入れを検出することができる。
【0041】
また制御部70には、警告装置76が接続されている。警告装置76としては、音声等を発して聴覚によって作業者に警告をするもの、及び/又は視覚によって作業者に警告をするものが考えられる。
本実施形態では、作業者に警告音(音声を含む)を発するスピーカと、警告を文字表示させる表示部34と、色彩の変化や点滅などで作業者に警告する動作表示灯36の3つの具体的構成が警告装置76に該当する。
【0042】
次に、制御部によるカートの出し入れに関する制御フローについて、
図7に基づいて説明する。
作業者が電源スイッチ74をオンにすることにより、滅菌装置30の制御部70が起動する(ステップS100)。
そして、作業者はタッチパネル式の表示部34を操作して実行すべき滅菌工程の設定等を行う。さらに作業者は、カート50に被滅菌物を収納する作業を行い、被滅菌物を収納し終えたカート50を滅菌室32内に進入させる。制御部70は、第1センサ38及び第2センサ40によってカート50が滅菌室32内に進入したことを検出する(ステップS102)。カート50を滅菌室32内に収納した後、作業者は滅菌室32の扉を閉じる。制御部70は、扉開閉センサ78により扉が閉じられたことを検出する(ステップS103)。
【0043】
制御部70は、扉が閉じられたことを検出し、且つ滅菌工程に必要な設定が完了していると判断した場合には
図6に示すようにスタートスイッチ72を表示部34に表示させる(ステップS104)。
制御部70は、スタートスイッチ72を表示させてから(つまり滅菌工程開始準備が整ってから)、タイマー機能79によって時間を計測する(ステップS105)。
制御部70は、スタートスイッチ72を表示させてから、所定時間経過してもスタートスイッチ72がオンされないと判断した場合、警告装置76が作業者に対して警告をするように制御する(ステップS109)。
この警告は滅菌工程の開始忘れを防止するものであり、スピーカ(図示せず)から音声やブザーによりスタートしていないことを作業者に知らせるか、表示部34にスタートしていないことを表示させるか、動作表示灯36でランプを表示又は点滅させてスタートしていないことを作業者に知らせるか、これらの何れか又はこれらの組み合わせにより実行される。
警告装置76による警告は、作業者がスタートスイッチ72をオンするまで実行される。
【0044】
また、制御部70は、所定時間経過前にスタートスイッチ72がオンされたことを検出した場合(ステップS106)には、滅菌工程を開始する(ステップS107)。滅菌工程が開始されると、制御部70は自動的に扉をロックし、作業者が扉を開けようとして開かないようにすることができる。
【0045】
なお、制御部70は、スタートスイッチ72がオンにならない状態で、扉開閉センサ78により扉が開いたことを検出し(ステップS108)、その後カート50が滅菌室32から引き出されたことを検出した(ステップS110)場合には、警告装置76が作業者に対して警告をするように制御する(ステップS112)。
警告は、カートに収納されている滅菌対象物がまだ滅菌されていないことを作業者に警告するものであり、スピーカ(図示せず)から音声やブザーにより未滅菌であることを作業者に知らせるか、表示部34に未滅菌であることを表示させるか、動作表示灯36でランプを表示又は点滅させて未滅菌であることを作業者に知らせるか、これらの何れか又はこれらの組み合わせにより実行される。
【0046】
警告後、作業者が再度カート50を滅菌室32へ収納し、扉を閉じ、スタートスイッチ72をオンすることによって、制御部70は滅菌工程を開始する(ステップS107)。
【0047】
次に、カート50に、色を異ならせた2つの感知部64,66を設けた実施形態について、カート50の出し入れを判断する場合の説明をする。なお、上述した構成要素と同一の構成要素については同じ符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0048】
図8に、カートの側面図を示す。
カート50の最下段の棚板56と底板52との間であって、前後方向の支柱54の間における、カート50を正面から見て左右どちらか一方の側面に、センサが感知する部位である感知部が設けられている。
感知部は、滅菌装置30への進入方向側に設けられた第3感知部64と、滅菌装置30からの退出方向側に設けられた第4感知部66とを有している。
【0049】
第3感知部64と、第4感知部66とは、それぞれ異なる色が表面に表れている。例えば、第3感知部64が「青色」で第4感知部が「赤色」など、色の相違を識別しやすい2つの色にするとよい。また、2つの色を補色の関係の色にするとコントラストが強い関係になるため、より識別しやすくなると考えられる。
第3感知部64及び第4感知部66には、異なる色を塗布して構成してもよいし、異なる色の材料を張り付けて構成してもよい。
【0050】
図9、
図10に、滅菌装置30に設けたセンサについて示す。
本実施形態では、カートの滅菌室32への出し入れを検出するためのセンサとして、滅菌装置30の滅菌室32の開口部の開口側端部の側面に、支柱検出センサ67と、画像センサ68が設けられている。
支柱検出センサ67は、例えば光電センサなどで構成され、カート50の支柱54を検出する。
画像センサ68は、所定のフレームレートで画像撮影可能なCCDやC-MOS等のセンサである。
【0051】
支柱検出センサ67と、画像センサ68は制御部70に接続されている。以下、制御部70におけるカート50の出し入れの判断について説明する。
カート50が、滅菌装置30の滅菌室32に進入するか又は滅菌室32から引き出される場合、支柱検出センサ67がカート50の進入方向先端側か後端側かどちらか一方の支柱54を検出する。制御部70は、カート50の支柱54を検出した後、画像センサ68の撮影動作を開始させる。画像センサ68は、あらかじめ設定されたフレームレートで連続してカートを撮影する。
そして、支柱検出センサ67が、カート50の進入方向先端側か後端側かどちらか他方の支柱54を検出すると、制御部70は、画像センサ68の撮影動作を終了させる。
【0052】
支柱検出センサ67によって支柱54を検出することが、画像センサ68を動作開始及び動作終了のスイッチとなってはたらく。第3感知部64及び第4感知部66は、進行方向前後に設けられた2本の支柱の間に設けられているため、進行方向前後に設けられた2本の支柱54の間だけ画像センサ68を駆動させていればよく、このような構成とした。
【0053】
このように、画像センサ68が各感知部64,66に到達する前か又は到達と同時に、支柱検出センサ67がカート50の支柱54を検出する必要がある。
このため、
図9に示すように、カート50の支柱54から第3感知部64までの距離及び支柱54から第4感知部66までの距離をA、支柱検出センサ67と画像センサ68との距離をBとした場合、A≧Bとすることが好ましい。
【0054】
図9に示すように、支柱検出センサ67の方が画像センサ68よりも滅菌室32の開口側に配置されている場合、カート50を滅菌室32に進入させるときには、画像センサ68よりも先に支柱検出センサ67が支柱54を検出するので、支柱54から第3感知部64までの距離Aと、支柱検出センサ67と画像センサ68との距離Bはどのような関係であってもよい。
しかし、
図10に示すように、支柱検出センサ67の方が画像センサ68よりも滅菌室32の開口側に配置されている場合、滅菌室32からカート50を引き出すときには、画像センサ68が支柱検出センサ67よりも先に支柱54に到達することになる。このため、画像センサ68が支柱検出センサ67よりも先に支柱54に到達しても、A≧Bとすることにより、画像センサ68が第3感知部64に到達する前か、又は画像センサ68が第3感知部64に到達すると同時に支柱検出センサ67が支柱54を検出し、制御部70が画像センサ68の動作を開始させることができる。
【0055】
なお、画像センサ68の方が支柱検出センサ67よりも滅菌室32の開口側に配置されていてもよい。
この場合にもA≧Bであれば、カート50を滅菌室32に進入させるときには、画像センサ68が第3感知部64に到達する前か、又は画像センサ68が第3感知部64に到達すると同時に支柱検出センサ67が支柱54を検出し、制御部70が画像センサ68の動作を開始させるので、支柱検出センサ67によって画像センサ68を動作開始及び動作終了のスイッチとなってはたらかせることができる。
画像センサ68の方が支柱検出センサ67よりも滅菌室32の開口側に配置されている場合に、カート50を滅菌室32に引き出すときには、画像センサ68よりも先に支柱検出センサ67が支柱54を検出するので、支柱54から第3感知部64までの距離Aと、支柱検出センサ67と画像センサ68との距離Bはどのような関係であってもよい。
【0056】
また、支柱検出スイッチ67は支柱54のどこの位置を検出するようにしてもよいので、画像センサ68と水平方向に同じ高さ位置にしなくてもよく、画像センサ68よりも高い位置に設けられていてもよい。
【0057】
制御部70は、画像センサ68によって撮影された複数の画像から、第3感知部64と第4感知部66を見つけ出す。例えば、第3感知部64が青色、第4感知部66が赤色の場合、制御部70には予め第3感知部64が青色、第4感知部66が赤色であることを記憶させておく。
そして、制御部70は、画像センサ68によって撮影された複数の画像において、第3感知部64と第4感知部66がどのような順番で撮影されたかを判断する。この判断において、制御部70は、画像センサ68によって撮影された複数の画像において青→赤の順番で撮影されたか、赤→青の順番で撮影されたかを調べる。
【0058】
青→赤の順番で撮影されたのであれば第3感知部64→第4感知部66の順でカート50が移動したこととなり、制御部70は、滅菌装置30へカートが進入したと判断することができる。赤→青の順番で撮影されたのであれば第4感知部66→第3感知部64の順でカート50が移動したこととなり、制御部70は、滅菌装置30からカートが引き出されたと判断することができる。
【0059】
次に、カートを検出するセンサとしてテープスイッチを用いた実施形態について説明する。なお、上述した構成要素と同一の構成要素については同じ符号を付し、説明を省略する場合がある。
テープスイッチとは、接触センサの一種であり、薄く細長い形状に形成されたテープ状の合成樹脂内に2枚の電極版が間隔をあけて配置されており、荷重がかかることによって2枚の電極版が接触することでスイッチが導通する構造となっている。
【0060】
図11に滅菌装置外部の床面にテープスイッチを設置した側面図を示し、
図12に滅菌装置外部の床面にテープスイッチを設置した平面図を示す。
滅菌装置30の滅菌室32の開口部の外側の床面80には、開口部から離れた側から第1テープスイッチ82が設置され、第1テープスイッチ82とは所定間隔をあけて滅菌装置30の開口部寄りに第2テープスイッチ84が設置されている。
第1テープスイッチ82と第2テープスイッチ84はそれぞれ制御部70に接続されている。各テープスイッチ82、84の上をカート50が通過することにより、各テープスイッチ82、84がオンとなり、各テープスイッチ82、84がオンとなったことを制御部70が検出する。
【0061】
制御部70は、カート50の車輪58が先に第1テープスイッチ82を通過して、後に第2テープスイッチ84を通過したことを検出した場合にはカート50が滅菌室32へ進入したと判断することができる。また制御部70は、カート50の車輪58が先に第2テープスイッチ84を通過して、後に第1テープスイッチ82を通過したことを検出した場合にはカート50が滅菌室32から引き出されたと判断することができる。
【0062】
テープスイッチを採用した実施形態においても、制御部70の制御動作は
図7に示したフローチャートと同じである。
すなわち、作業者が電源スイッチ74をオンにすることにより、滅菌装置30の制御部70が起動する(ステップS100)。
そして、作業者はタッチパネル式の表示部34を操作して実行すべき滅菌工程の設定等を行う。さらに作業者は、カート50に被滅菌物を収納する作業を行い、被滅菌物を収納し終えたカート50を滅菌室32内に進入させる。制御部70は、第1テープスイッチ82及び第2テープスイッチ84によってカート50が滅菌室32内に進入したことを検出する(ステップS102)。カート50を滅菌室32内に収納した後、作業者は滅菌室32の扉を閉じる。制御部70は、扉開閉センサ78により扉が閉じられたことを検出する(ステップS103)。
【0063】
制御部70は、扉が閉じられたことを検出し、且つ滅菌工程に必要な設定が完了していると判断した場合には
図6に示すようにスタートスイッチ72を表示部34に表示させる(ステップS104)。
制御部70は、スタートスイッチ72を表示させてから(つまり滅菌工程開始準備が整ってから)、タイマー機能79によって時間を計測する(ステップS105)。
制御部70は、スタートスイッチ72を表示させてから、所定時間経過してもスタートスイッチ72がオンされないと判断した場合、警告装置76が作業者に対して警告をするように制御する(ステップS109)。
この警告は滅菌工程の開始忘れを防止するものであり、スピーカ(図示せず)から音声やブザーによりスタートしていないことを作業者に知らせるか、表示部34にスタートしていないことを表示させるか、動作表示灯36でランプを表示又は点滅させてスタートしていないことを作業者に知らせるか、これらの何れか又はこれらの組み合わせにより実行される。
警告装置76による警告は、作業者がスタートスイッチ72をオンするまで実行される。
【0064】
また、制御部70は、所定時間経過前にスタートスイッチ72がオンされたことを検出した場合(ステップS106)には、滅菌工程を開始する(ステップS107)。滅菌工程が開始されると、制御部70は自動的に扉をロックし、作業者が扉を開けようとして開かないようにすることができる。
【0065】
なお、制御部70は、スタートスイッチ72がオンにならない状態で、扉開閉センサ78により扉が開いたことを検出し(ステップS108)、その後第1テープスイッチ82及び第2テープスイッチ84によってカート50が滅菌室32から引き出されたことを検出した(ステップS110)場合には、警告装置76が作業者に対して警告をするように制御する(ステップS112)。
警告は、カートに収納されている滅菌対象物がまだ滅菌されていないことを作業者に警告するものであり、スピーカ(図示せず)から音声やブザーにより未滅菌であることを作業者に知らせるか、表示部34に未滅菌であることを表示させるか、動作表示灯36でランプを表示又は点滅させて未滅菌であることを作業者に知らせるか、これらの何れか又はこれらの組み合わせにより実行される。
【0066】
警告後、作業者が再度カート50を滅菌室32へ収納し、扉を閉じ、スタートスイッチ72をオンすることによって、制御部70は滅菌工程を開始する(ステップS107)。
【0067】
(第2の実施形態)
第2の実施形態として、カートを用いずに滅菌室内に被滅菌物を収納する滅菌装置について説明する。
なお、上述してきた実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、説明を省略する場合もある。
【0068】
滅菌装置30は蒸気滅菌装置であるとし、
図13に示すように、正面に扉31が設けられ、扉31を開くと滅菌室32が開口する構成となっている。
扉31の開き方は手前に開くタイプ、上下スライドタイプ、横方向スライドタイプなどが考えられるが、どのような開き方でであってもよい。
【0069】
図14に第2の実施形態の制御系のブロック図を示す。この
図14は、第1の実施形態における制御系のブロック図である
図5から第1センサ38及び第2センサ40、第1感知部60及び第2感知部62を省いた構成であり、その他の構成は同一であるため、第2の実施形態の滅菌装置30の構成要素の説明は省略する。
【0070】
図15に、第2の実施形態における制御部によるカートの出し入れに関する制御フローについて説明する。
作業者が電源スイッチ74をオンにすることにより、滅菌装置30の制御部70が起動する(ステップS200)。
そして、作業者はタッチパネル式の表示部34を操作して実行すべき滅菌工程の設定等を行う。さらに作業者は、滅菌室32に被滅菌物を収納する作業を行う。被滅菌物を滅菌室32内に収納した後、作業者は滅菌室32の扉を閉じる。制御部70は、扉開閉センサ78により扉が閉じられたことを検出する(ステップS202)。
【0071】
制御部70は、扉が閉じられたことを検出し、且つ滅菌工程に必要な設定が完了していると判断した場合には
図6に示すようなスタートスイッチ72を表示部34に表示させる(ステップS204)。
制御部70は、スタートスイッチ72を表示させてから(つまり滅菌工程開始準備が整ってから)、タイマー機能79によって時間を計測する(ステップS205)。
制御部70は、スタートスイッチ72を表示させてから、所定時間経過してもスタートスイッチ72がオンされないと判断した場合、警告装置76が作業者に対して警告をするように制御する(ステップS209)。
この警告は滅菌工程の開始忘れを防止するものであり、スピーカ(図示せず)から音声やブザーによりスタートしていないことを作業者に知らせるか、表示部34にスタートしていないことを表示させるか、動作表示灯36でランプを表示又は点滅させてスタートしていないことを作業者に知らせるか、これらの何れか又はこれらの組み合わせにより実行される。
警告装置76による警告は、作業者がスタートスイッチ72をオンするまで実行される。
【0072】
また、制御部70は、所定時間経過前にスタートスイッチ72がオンされたことを検出した場合(ステップS206)には、滅菌工程を開始する(ステップS207)。滅菌工程が開始されると、制御部70は自動的に扉をロックし、作業者が扉を開けようとして開かないようにすることができる。
【0073】
なお、制御部70は、スタートスイッチ72がオンにならない状態で、扉開閉センサ78により扉が開いたことを検出し(ステップS208)した場合には、警告装置76が作業者に対して警告をするように制御する(ステップS210)。
警告は、滅菌室32内の被滅菌物がまだ滅菌されていないことを作業者に警告するものであり、スピーカ(図示せず)から音声やブザーにより未滅菌であることを作業者に知らせるか、表示部34に未滅菌であることを表示させるか、動作表示灯36でランプを表示又は点滅させて未滅菌であることを作業者に知らせるか、これらの何れか又はこれらの組み合わせにより実行される。
【0074】
警告後、作業者が再度扉を閉じ、スタートスイッチ72をオンすることによって、制御部70は滅菌工程を開始する(ステップS207)。
【0075】
(第3の実施形態)
第3の実施形態として、滅菌室32内に収納されているカート50を検出するセンサを設けた場合について、
図16に基づいて説明する。なお、上述してきた実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、説明を省略する場合もある。
【0076】
本実施形態におけるセンサは、光電センサ86であって、滅菌装置30の前面側を覆うように配置された前面パネル88内に設けられている。前面パネル88の内側には、滅菌室32の開口部を開閉するための扉90が配置されている。
【0077】
本実施形態における扉90は、横方向にスライドするスライド扉であって、前面パネル88の内側にスライド可能に配置されている。
光電センサ86は、前面パネル88において滅菌室32側を向くように配置されている。したがって、扉90が開いた状態のときには光電センサ86によって滅菌室32内のカート50の有無を検出可能となる。
【0078】
このような構成を採用する場合、制御部70は、スタートスイッチ72がオンにならない状態で、扉開閉センサ78により扉90が開いたことを検出した場合、光電センサ86によって滅菌室32内にカート50が収納されていることを検出すると、警告装置76が作業者に対して警告をするように制御する。
【0079】
警告は、カートに収納されている滅菌対象物がまだ滅菌されていないことを作業者に警告するものであり、スピーカ(図示せず)から音声やブザーにより未滅菌であることを作業者に知らせるか、表示部34に未滅菌であることを表示させるか、動作表示灯36でランプを表示又は点滅させて未滅菌であることを作業者に知らせるか、これらの何れか又はこれらの組み合わせにより実行される。
【0080】
なお、上述してきた各実施形態において滅菌装置としては蒸気滅菌装置に限定するものではなく、酸化エチレンガス滅菌装置であってもよい。
【符号の説明】
【0081】
30 滅菌装置
32 滅菌室
34 表示部
35 プリンタ
36 動作表示灯
38 第1センサ
40 第2センサ
50 カート
52 底板
54 支柱
56 棚板
57 長孔
58 車輪
60 第1感知部
62 第2感知部
64 第3感知部
66 第4感知部
67 支柱検出センサ
68 画像センサ
70 制御部
72 スタートスイッチ
74 電源スイッチ
76 警告装置
78 扉開閉センサ
79 タイマー機能
80 床面
82 第1テープスイッチ
84 第2テープスイッチ
86 光電センサ
88 前面パネル
90 扉