(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024093
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】リンパ腫の治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/506 20060101AFI20240214BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20240214BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240214BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240214BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61K31/506
A61K31/496
A61K39/395 T
A61P35/02
A61P43/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024001279
(22)【出願日】2024-01-09
(62)【分割の表示】P 2020561635の分割
【原出願日】2019-05-03
(31)【優先権主張番号】62/667,249
(32)【優先日】2018-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/678,934
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/736,047
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506109155
【氏名又は名称】ポートラ ファーマシューティカルズ, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー コフィー
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ビレル
(72)【発明者】
【氏名】パメラ ビー. コンリー
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ティー. カーナット
(72)【発明者】
【氏名】アンジャリ パンディー
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー スティール
(72)【発明者】
【氏名】グレン マイケルソン
(57)【要約】
【課題】リンパ腫の治療方法の提供。
【解決手段】ヒト患者のリンパ腫、特にT細胞リンパ腫及び濾胞性リンパ腫を治療するための組成物ならびに方法が提供される。上記方法は上記患者に有効量のセルデュラチニブを投与することを伴う。いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は再発性または難治性T細胞リンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は、T細胞リンパ腫を治療するための薬剤による前治療を受けていない(すなわち、治療未経験)。いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫はT細胞非ホジキンリンパ腫である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年5月4日出願の米国仮出願62/667,249、2018年5月31日出願の62/678,934、及び2018年9月25日出願の62/736,047の、米国特許法第119条(e)に基づく利益を主張し、上記出願のそれぞれは、本記載をもってその全体が援用される。
【0002】
本開示は、概括的には血液癌、特にはリンパ腫の治療に関する。
【背景技術】
【0003】
リンパ腫は、リンパ系と呼ばれる免疫系の一部のがんである。多くの型のリンパ腫がある。1つの型はホジキン病である。残りは非ホジキンリンパ腫と呼ばれる。非ホジキンリンパ腫(NHL)は一般に、その起源がB細胞であるかまたはT細胞であるかに基づいて2種の主要な型(それぞれ、B細胞リンパ腫またはT細胞リンパ腫)に分けられる。
【0004】
群としてのリンパ腫は、7番目に一般的ながんの形態であり、すべてのがんの3~4%を占める。リンパ腫は世界中で、2012年に約566,000人に発症し、約305,000人が死亡した。米国におけるすべてのホジキンリンパ腫サブタイプに関する5年生存率は85%である一方、非ホジキンリンパ腫に関する5年生存率は69%である。したがって、リンパ腫、特に非ホジキンリンパ腫に対する新規な治療薬が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示はリンパ腫の治療におけるセルデュラチニブの使用に関する。
【0006】
セルデュラチニブは、小分子、ATP競合性の、SYKファミリーメンバー及びJAKファミリーメンバーの両方の可逆的阻害剤であり、米国特許8,138,339及び米国特許8,501,944に記載される。セルデュラチニブの化学名は4-(シクロプロピルアミノ)-2-((4-(4-(エチルスルホニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-カルボキサミドであり、式I:
【化1】
の構造を有する。
【0007】
いくつかの実施形態において、本明細書では、治療を必要とするヒト患者のT細胞リンパ腫の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を上記患者に投与することを含む、上記方法が提供される。
【0008】
いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は再発性または難治性T細胞リンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は、T細胞リンパ腫を治療するための薬剤による前治療を受けていない(すなわち、治療未経験)。いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫はT細胞非ホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は再発性または難治性T細胞非ホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は末梢性T細胞リンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は再発性または難治性末梢性T細胞リンパ腫である。
【0009】
いくつかの実施形態において、本明細書では、治療を必要とし、かつMcl-1、FoxP1、GAB1、SOCS1、もしくはSOCS3の1種以上を正常なベースラインを超えて発現するか、またはFAT4、CCND3、MYOM2、ZMYM3、NOTCH1、KMT2D、TCF3、ARID1A、AXIN1、NOTCH1、SETD2、SIGLEC10、SPEN、PCLO、TET2(例えば、TET2M66L)、MK167、FAT3、KRAS、REL(例えば、RELI354T)、HIST1H1E(例えば、HIST1H1EA47V)、KMT2C、KMT2D、及び/もしくはSF3B1における変異の1種以上を有する(もしくは有することが知られている)ヒト患者のリンパ腫の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を上記患者に投与することを含む、上記方法が提供される。
【0010】
いくつかの実施形態において、本明細書では、治療を必要とし、ZMYM3、KMT2D、及びFAT4における変異の1種以上を有する(または有することが知られている)ヒト患者のリンパ腫の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を上記患者に投与することを含む、上記方法が提供される。
【0011】
いくつかの実施形態において、上記患者はBCL2及び/またはBCL6における変異の1種以上をさらに有する。
【0012】
いくつかの実施形態において、上記リンパ腫は、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換濾胞性リンパ腫(tFL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、T細胞リンパ腫、またはマントル細胞リンパ腫(MCL)である。
【0013】
いくつかの実施形態において、上記リンパ腫は、緩徐進行性リンパ腫またはB細胞急性リンパ性白血病である。いくつかの実施形態において、上記リンパ腫は緩徐進行性リンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記緩徐進行性リンパ腫は濾胞性リンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記緩徐進行性リンパ腫はワルデンストレームマクログロブリン血症である。いくつかの実施形態において、上記緩徐進行性リンパ腫は辺縁帯リンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記リンパ腫はB細胞急性リンパ性白血病である。いくつかの実施形態において、上記リンパ腫は再発性または難治性濾胞性リンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記リンパ腫は形質転換濾胞性リンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記リンパ腫は再発性または難治性形質転換濾胞性リンパ腫である。
【0014】
いくつかの実施形態において、本明細書では、治療を必要とするヒト患者の進行性の慢性リンパ性白血病(U-CLL)また緩徐進行性の慢性リンパ性白血病(M-CLL)の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブ、または薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を上記患者に投与することを含む、上記方法が提供される。
【0015】
いくつかの実施形態において、本明細書では、治療を必要とし、NOTCH1、SETD2、SIGLEC10、SPEN、PCLO、TET2(例えば、TET2M66L)、MK167、FAT3、KRAS、REL(例えば、RELI354T)、HIST1H1E(例えば、HIST1H1EA47V)、KMT2C、KMT2D、及び/もしくはSF3B1における変異の1種以上を有する(もしくは有することが知られている)ヒト患者の慢性リンパ性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を上記患者に投与することを含む、上記方法が提供される。
【0016】
いくつかの実施形態において、本明細書では、治療を必要とし、SETD2、SIGLEC10、SPEN、PCLO、TET2(例えば、TET2M66L)、MK167、FAT3、KRAS、REL(例えば、RELI354T)、HIST1H1E(例えば、HIST1H1EA47V)、KMT2C、KMT2D、及び/もしくはSF3B1における変異の1種以上を有する(もしくは有することが知られている)ヒト患者の慢性リンパ性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を上記患者に投与することを含む、上記方法が提供される。
【0017】
いくつかの実施形態において、本明細書では、治療を必要とし、TET2(例えば、TET2M66L)、MK167、FAT3、KRAS、HIST1H1E(例えば、HIST1H1EA47V)、KMT2C、KMT2D、及び/もしくはSF3B1における変異の1種以上を有する(もしくは有することが知られている)ヒト患者の慢性リンパ性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を上記患者に投与することを含む、上記方法が提供される。
【0018】
いくつかの実施形態において、上記患者は、SYK、JAK1、JAK2、JAK3、TYK2、TP53、STAT(例えば、STAT6S86A)、A20(例えば、A20Q150R)及び/またはATMにおける変異の1種以上をさらに有する。
【0019】
いくつかの実施形態において、上記患者は、EP300、TP53、及び/またはBTKに変異を有さない。いくつかの実施形態において、上記患者は、EP300S697R、EP300C1247F、TP53N285K、TP53R273C、及び/またはBTKC481Sを有さない。
【0020】
いくつかの実施形態において、本明細書では、治療を必要とするヒト患者の濾胞性リンパ腫または緩徐進行性非ホジキンリンパ腫(iNHL)の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を上記患者に投与して、上記患者において約0.05μM~約3μMの定常状態最小血漿セルデュラチニブ濃度を達成及び維持することを含む上記方法が提供される。
【0021】
いくつかの実施形態において、本明細書では、治療を必要とするヒト患者の慢性リンパ性白血病または小リンパ球性リンパ腫の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を上記患者に投与して、上記患者において約0.05μM~約3μMの定常状態最小血漿セルデュラチニブ濃度を達成及び維持することを含む上記方法が提供される。
【0022】
いくつかの実施形態において、本明細書では、治療を必要とするヒト患者の辺縁帯リンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、慢性リンパ性白血病、または小リンパ球性リンパ腫の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を上記患者に投与して、上記患者において約0.05μM~約3μMの定常状態最小血漿セルデュラチニブ濃度を達成及び維持することを含む上記方法が提供される。
【0023】
いくつかの実施形態において、本明細書では、治療を必要とするヒト患者のリンパ腫の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物、及び有効量のMcl-1阻害剤または薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を上記患者に投与することを含む、上記方法が提供される。
【0024】
いくつかの実施形態において、本明細書では、本明細書に記載の治療方法におけるセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物の使用が提供される。
【0025】
いくつかの実施形態において、本明細書では、本明細書に記載の治療方法において使用するための医薬の製造におけるセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物の使用が提供される。
【0026】
いくつかの実施形態において、本明細書では、治療を必要とするヒト患者のリンパ腫の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物、及び有効量のリツキシマブを上記患者に投与することを含む、上記方法が提供される。
【0027】
いくつかの実施形態において、本明細書では、本明細書に記載の治療方法におけるセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物、及びリツキシマブの使用が提供される。
【0028】
いくつかの実施形態において、本明細書では、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物、及び有効量のリツキシマブを含む組成物が提供される。
【0029】
いくつかの実施形態において、本明細書では、本明細書に記載の治療方法において使用するための医薬の製造におけるセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物、及びリツキシマブの使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】セルデュラチニブに対する腫瘍反応、ならびにCLL/SLL及びFL患者における曝露との関連性を示す図である。
【
図2】腫瘍反応であって、SYK/JAK阻害と関連性をもつ場合の上記腫瘍反応を示す図である。
【
図3】炎症の血清マーカーの阻害が、CLL/SLLの患者における腫瘍反応と有意に相関することを示す図である。
【
図4】炎症の血清マーカーの阻害が、FLの患者における腫瘍反応と有意に相関することを示す図である。
【
図5A】セルデュラチニブによる治療後のCLL/SLLの患者における、炎症の血清マーカーの有意な阻害を示す図である。
【
図5B】セルデュラチニブによる治療後のFLの患者における、炎症の血清マーカーの有意な阻害を示す図である。
【
図6A】CLL/SLLの患者において生じた、セルデュラチニブによる治療に関連する血中のリンパ球絶対数(ALC)の増加を示す図である。
【
図6B】FLの患者において生じた、セルデュラチニブによる治療に関連する血中のリンパ球絶対数(ALC)の増加を示す図である。
【
図7A】リンパ節が52%縮小したCLLの患者における、セルデュラチニブによる治療に関連する腫瘍細胞表面活性化のマーカー及びホーミングマーカーの変化を示す図である。
【
図7B】リンパ節が59%縮小したCLLの患者における、セルデュラチニブによる治療に関連する腫瘍細胞表面活性化のマーカー及びホーミングマーカーの変化を示す図である。
【
図8】実施例1において投与を受けたそれぞれの患者の、セルデュラチニブの持続時間を示す図である。
【
図9】Aは、セルデュラチニブの存在下または非存在下における、IL-4あり/なしでの処理後の、進行性のCLL(U-CLL)細胞株のタンパク質発現を示す免疫ブロットを示す図である。Bは、セルデュラチニブの存在下または非存在下における、IL-4あり/なしでの処理後の、緩徐進行性のCLL(M-CLL)細胞株のタンパク質発現を示す免疫ブロットを示す図である。
【
図10】A~Gは、対照と比較した、1μM セルデュラチニブの存在下または非存在下における、IL-4あり/なしでの処理後のCLL細胞における、それぞれ、FOXP1、GAB1、SOCS1、PTPN22、SOCS3、CD79b、及びpSTAT6の発現の変化を示す免疫ブロット・デンシトメトリーをまとめた図である。A~Gのそれぞれにおいて、左から右へ向かう棒は、それぞれ、対照、IL-4処理のみ、セルデュラチニブ処理のみ、及びIL-4+セルデュラチニブを表す。
【
図11】A~Gは、対照と比較した、1μM セルデュラチニブの存在下または非存在下における、IL-4あり/なしでの処理後の進行性のCLL細胞における、それぞれ、FOXP1、GAB1、SOCS1、PTPN22、SOCS3、CD79b、及びpSTAT6の発現の変化を示す免疫ブロット・デンシトメトリーをまとめた図である。A~Gのそれぞれにおいて、左から右へ向かう棒は、それぞれ、対照、IL-4処理のみ、セルデュラチニブ処理のみ、及びIL-4+セルデュラチニブを表す。
【
図12】A~Gは、対照と比較した、1μM セルデュラチニブの存在下または非存在下における、IL-4あり/なしでの処理後の緩徐進行性のCLL細胞における、それぞれ、FOXP1、GAB1、SOCS1、PTPN22、SOCS3、CD79b、及びpSTAT6の発現の変化を示す免疫ブロット・デンシトメトリーをまとめた図である。A~Gのそれぞれにおいて、左から右へ向かう棒は、それぞれ、対照、IL-4処理のみ、セルデュラチニブ処理のみ、及びIL-4+セルデュラチニブを表す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本開示は、記載された特定の実施形態に限定されず、したがって当然に変化し得ることを理解されたい。また、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることから、本明細書で用いられる用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0032】
1.用語の定義
別段の定義がない限り、本明細書で用いられるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書においては、以下の用語は以下の意味を有する。
【0033】
本明細書及び添付の特許請求の範囲では、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示対象を包含することに留意されたい。したがって、例えば、「薬剤」への言及は複数の薬剤を包含する。
【0034】
本明細書では、用語「含む(comprising)」または「comprises」とは、本組成物及び方法が挙げられた要素を含むが、他のものを排除しないことを意味することを意図する。「本質的に~からなる」とは、組成物及び方法を規定するために用いられる場合、当該の組み合わせに対する、記載された目的にとってのいずれかの本質的な重要性をもつ他の要素を排除することを意味するものとする。したがって、本明細書で規定される要素から本質的になる組成物は、権利請求された基本的及び新規な特性(複数可)に実質的に影響を及ぼさない他の材料またはステップを除外しない。「~からなる」とは、他の成分の微量元素を超えるもの及び実質的な方法のステップは排除することを意味するものとする。これらの移行語のそれぞれによって規定される実施形態は、本開示の範囲内である。
【0035】
用語「約」とは、数値の指定の前に用いられる場合、例えば、範囲を含む量及び濃度は、(+)もしくは(-)10%、5%、または1%変動する可能性のある近似値を示す。
【0036】
本明細書では、用語「治療する」とは、腫瘍の増殖、拡大、転移、または発生を、予防する、治癒させる、逆転させる、減弱させる、緩和する、最小化する、抑制する、または停止させることをいう。
【0037】
本明細書では、用語「患者」とは、がんまたは腫瘍を有する対象をいい、上記がんまたは腫瘍は良性または悪性であってよい。特定の実施形態において、特許はヒトまたは動物である。
【0038】
本明細書では、用語「薬学的に許容される」とは、示された材料が、良識的に賢明な医師が、治療を受ける疾患または疾病及びそれぞれの投与経路を考慮して、患者に上記材料を投与することを回避する原因となる特性をもっていないことを指す。例えば、一般的に、かかる材料は本質的に無菌であることが要求される。
【0039】
本明細書では、用語「薬学的に許容される担体」とは、任意のサプリメントもしくは組成物、またはその成分を、ある器官もしくは体の一部から別の器官もしくは体の一部へ運搬または輸送することに関与する、またはがん性組織もしくは上記がん性組織に隣接する組織に薬剤を送達するための、液体もしくは固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、またはカプセル化材料などの薬学的に許容される材料、組成物、あるいはビヒクルをいう。
【0040】
本明細書では、用語「薬学的に許容される塩」とは、当該の塩の対イオンが該塩の医薬としての用量において当該の患者に対して無毒である、任意の酸付加塩または塩基付加塩をいう。多くの薬学的に許容される塩が製薬分野において周知である。本開示の化合物の薬学的に許容される塩がこれらの組成物に利用される場合、これらの塩は、好ましくは、無機または有機の酸及び塩基に由来する。かかる酸性塩の中には、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、ルコヘプタン酸塩(lucoheptanoate)、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、ウンデカン酸塩、ハロゲン化水素酸塩(hydrohalides)(例えば、塩酸塩及び臭化水素酸塩)、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、スルファミン酸塩、マロン酸塩、サリチル酸塩、メチレン-ビス-b-ヒドロキシナフトエ酸塩、ゲンチジン酸塩、イセチオン酸塩、ジ-p-トルオイル酒石酸塩、エタンスルホン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、キナ酸塩などが含まれる。薬学的に許容される塩基付加塩としては、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属塩基または従来の有機塩基に由来する塩基付加塩、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、N-メチルモルホリン、アンモニウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N-メチル-D-グルカミンなどの有機塩基との塩、ならびにアルギニン、リシンなどのアミノ酸との塩等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0041】
本明細書では、用語「製剤化された」または「製剤化」とは、1種以上の薬学的に活性な成分を含む異なる化学物質が組み合わされて剤形が製造されるプロセスをいう。特定の実施形態において、2種以上の薬学的に活性な成分を、単一の剤形もしくは組み合わせた投薬単位に共製剤化するか、または別個に製剤化し、続いて複合投薬単位に組み合わせてもよい。徐放性製剤は、長期間にわたって体内で治療薬をゆっくりと放出するように設計された製剤であり、一方、即時放出製剤は、短期間に体内で治療薬を迅速に放出するように設計された製剤である。
【0042】
本明細書では、用語「送達」とは、その所望の治療効果を安全に達成するために、必要に応じて体内で医薬組成物を輸送するための手法、製剤、技術、及びシステムをいう。いくつかの実施形態において、有効量の本組成物は、患者の血流中への送達のために製剤化される。
【0043】
略語:
ABVD ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、及びダカルバジン
AUC 曲線下面積
BEAM カルムスチン、エトポシド、シタラビン、及びメルファラン
BID 1日2回
CHOP シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾン
Cmax 最大(またはピーク)濃度
Cmin 最小(またはトラフ)濃度
CR 完全奏効
EPOCH エトポシド、プレドニゾン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、及びドキソルビシン
IC50 50%抑制濃度
mg ミリグラム
mL ミリリットル
ORR 全奏効率
PD 進行
pg ピコグラム
PR 部分奏効
QD 1日1回
SD 安定
SSCmin 定常状態Cmin
μL マイクロリットル
μM マイクロモル濃度
【0044】
2.治療方法
本明細書においては、セルデュラチニブによるリンパ腫の治療方法が提供される。
【0045】
セルデュラチニブは、小分子、ATP競合性の、SYKファミリーメンバー及びJAKファミリーメンバーの両方の可逆的阻害剤である。セルデュラチニブの化学名は4-(シクロプロピルアミノ)-2-((4-(4-(エチルスルホニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-カルボキサミドであり、式I:
【化2】
の化学構造を有する。
【0046】
T細胞リンパ腫の治療
いくつかの実施形態において、本明細書では、治療を必要とするヒト患者のT細胞リンパ腫(TCL)の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を上記患者に投与することを含む、上記方法が提供される。
【0047】
T細胞リンパ腫にはさまざまな形態があり、それらの一部は侵攻性(増殖が速い)であり、また一部は緩徐進行性(増殖が遅い)である。T細胞リンパ腫には、T細胞リンパ芽球性リンパ腫(T-LBL)などの未成熟T細胞リンパ腫、及び末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)などの成熟T細胞リンパ腫が含まれる。
【0048】
T細胞と呼ばれる成熟した白血球において発症する末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)は、生存期間の中央値が5年未満である侵攻型の非ホジキンリンパ腫(NHL)であり、一般的に、PTCLに相当するB細胞のリンパ腫と比較して予後が不良である。O’Connor, O.A., et al., Changing the Paradigms of Treatment in Peripheral T-cell Lymphoma: From Biology to Clinical Practice. Clin Cancer Res, 2014. 20(20):5240-5254;Swerdlow, S.H., et al., The 2016 revision of the World Health Organization classification of lymphoid neoplasms. Blood, 2016. 127(20):2375-2390;Gaulard, P., and de Leval, L., Pathology of Peripheral
T-Cell Lymphomas: Where Do We Stand? Seminars in Hematology, 2014. 51(1):5-16。一般的に、PTCLの患者は、B細胞NHLの患者と比較した場合に生存期間が短い。Swerdlow, S.H., et al., The 2016 revision of the World Health Organization classification of lymphoid neoplasms. Blood, 2016. 127(20):2375-2390;Vose, J.M., et.al,
International Peripheral T-Cell and Natural Killer/T-Cell Lymphoma Study: Pathology Findings and Clinical Outcomes. Journal of Clinical Oncology, 2008. 26(25):4124-4130;Gisselbrecht, C., et.al, Prognostic Significance of T-Cell Phenotype in Aggressive Non-Hodgkin’s Lymphomas. Blood, 1998. 92(1):76-82。
【0049】
PTCLの最先端の治療法は、転帰はB細胞悪性腫瘍において報告されている転帰よりも劣るが、一般的にはCHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン)もしくはエトポシドを含むCHO(E)P、または他の強力な化学療法である。大多数の患者は標準治療後に再発し、全生存期間(OS)は依然として短い。最先端の治療後に再発した、または最先端の治療に対して抵抗性のPTCL患者(ALCLを除く)の場合、OSの中央値は6ヶ月である。Mak, V., et.al., Survival of patients with peripheral T-cell lymphoma after first relapse or progression: spectrum of disease and rare long-term survivors. J Clin Oncol, 2013. 31(16):1970-1976。
【0050】
最先端の化学療法が奏功しない患者には限られた数の選択肢しか存在しない。米国では、ベリノスタット(HDAC阻害剤)、プララトレキサート(葉酸代謝拮抗剤)、及びロミデプシンが、再発性または難治性PTCLの患者に対して認可されているが、これらの全奏効率(ORR)は約25%と低く、完全奏効(CR)率は8~15%、奏効期間(DOR)の中央値は最長で12ヶ月である(表1を参照されたい)。
【表1】
【0051】
比較すると、治験におけるセルデュラチニブによる治療(例えば、30mg BID)では、47%のORRが達成され、CRは評価可能な患者の5名/15名(33%)で観測され、このことはPTCLの多様なサブタイプを表している。重要なことに、部分奏効(PR)及びCRが、プララトレキサート、ロミデプシン、ベリノスタット、及び治験中のPI3K阻害剤を含む複数の種類の治療に対して抵抗性の患者で生じた。
【0052】
セルデュラチニブの安全性プロファイルは予測可能かつ管理可能である。PTCL(n=16)の安全性データには、4種の治験薬関連の重篤な有害事象(SAE)が含まれ、該SAEは8名の患者においてグレード3~4であり、治療緊急有害事象(TEAE)によるPTCL患者の死亡または治験の中止はなかった。表2は、PTCL特許におけるセルデュラチニブ及びFDA認可の薬物の安全性データの比較を示す。
【表2】
【0053】
末梢性T細胞リンパ腫には、末梢性T細胞リンパ腫非特定型(PTCL-NOS)、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、濾胞性T細胞リンパ腫(FTCL)、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、腸症関連T細胞リンパ腫(EATL)、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、鼻性NK/T細胞リンパ腫、肝脾T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)などのさまざまなサブタイプが含まれ、末梢性T細胞リンパ腫は、結節性、節外性、及び白血病性の3つのカテゴリーに分類される。
【0054】
末梢性T細胞リンパ腫非特定型(PTCL-NOS)とは、PTCLの他のサブタイプのいずれにも当てはまらない一群の侵攻性疾患をいう。PTCL-NOSは最も一般的なPTCLサブタイプであり、すべてのPTCLの約4分の1を占めている。PTCL-NOSのほとんどの患者は、リンパ節に限局された疾患と診断される。肝臓、骨髄、胃腸管、及び皮膚などの、リンパ節の外側の部位も関与している場合がある。
【0055】
未分化大細胞リンパ腫(ALCL)は、すべての成人におけるT細胞リンパ腫の約12%~15%、かつすべての小児におけるリンパ腫の10%~30%を占める侵攻性T細胞リンパ腫である。ALCLは3種の型、すなわち、2種の全身性(リンパ節または臓器中に存在する)サブタイプ及び1種の非全身性型に分けることができる。上記全身性サブタイプは、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)陽性未分化大細胞リンパ腫(ALKタンパク質の異常な形態がリンパ腫細胞の表面上に存在する)またはALK陰性未分化大細胞リンパ腫(ALKタンパク質の異常な形態がリンパ腫細胞の表面上に存在しない)である。上記非全身型は皮膚上にのみ現れ、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫と呼ばれる。上記全身型は通常増殖が速い一方、非全身型は通常より増殖が遅い。
【0056】
血管免疫芽球性リンパ腫(AITL)は、米国のすべてのT細胞リンパ腫の15%~18%を占める侵攻性T細胞リンパ腫である。AITLの症状としては、高熱、皮膚発疹、寝汗、及び自己免疫性溶血性貧血(AIHA)及び免疫性血小板減少症(ITP)などの自己免疫疾患が挙げられる。これらの自己免疫疾患の結果として、体の免疫系が赤血球(AIHAの場合)及び血小板(ITPの場合)などの自身の細胞及び組織を認識せず、その結果これらを破壊する。I期のAITLは局在化しており、腫瘍を越えて広がってはいない。II期は近傍のリンパ節のみを冒す。III期では、冒されたリンパ節が横隔膜の上下両方に見られる。IV期では、骨、骨髄、皮膚、または肝臓などの、リンパ節を超えた1つ以上の臓器が冒される。
【0057】
皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)は、皮膚上に発生し、ほとんどの場合皮膚に限局される、一般的には増殖が遅い一群の癌である。皮膚T細胞リンパ腫の最も一般的な型は菌状息肉腫であり、これは皮膚の斑点またはプラークとして現れる。他の型としては、セザリー症候群、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫、及びリンパ腫様丘疹症が挙げられる。
【0058】
成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)は、ヒトT細胞リンパ球向性ウイルス1型(HTLV-1)ウイルスによる感染に関連する稀な形態のT細胞リンパ腫である。ウイルスをもつ人の約2パーセントがリンパ腫を発症する。ATLLには4種のサブタイプ、すなわち、2種の侵攻性のサブタイプ、リンパ腫型ATLL及び急性ATLL、通常は増殖が遅い慢性ATLL、及び最も増殖が遅い型であるくすぶり型ATLLがある。
【0059】
腸症型T細胞リンパ腫(EATL)は、腸に現れる非常に稀なT細胞リンパ腫のサブタイプであり、セリアック病と強い関連性がある。EATLには2種の型、すなわち、1型、古典的EATL、及び2型、単形性上皮向性腸管T細胞リンパ腫とも呼ばれる単形性EATLがある。
【0060】
肝脾T細胞リンパ腫(HSTL)は、細胞傷害性T細胞に由来する稀な節外性かつ全身性新生物である。HSLTには、2種の型、すなわち、ガンマ-デルタ(γδ)T細胞受容体型及びアルファ-ベータ(αβ)型がある。別のγδT細胞リンパ腫である原発性皮膚γδT細胞リンパ腫(PCGD-TCL)がある。これらのリンパ腫は、他のほとんどのTCLと侵攻性の経過及び不良な予後を共有する。
【0061】
T細胞リンパ芽球性リンパ腫(T-LBL)は増殖が速く、ほとんどの場合小児期に診断される。
【0062】
鼻性NK/T細胞リンパ腫は、一般的に鼻または上気道の内層に発生する、増殖が速いリンパ腫である。
【0063】
いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は侵攻性T細胞リンパ腫である。
【0064】
いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は緩徐進行性T細胞リンパ腫である。
【0065】
いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は未成熟T細胞リンパ腫である。
【0066】
いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は成熟T細胞リンパ腫である。
【0067】
いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は結節性T細胞リンパ腫である。
【0068】
いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は、節外性T細胞リンパ腫である。
【0069】
いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は白血病性T細胞リンパ腫である。
【0070】
いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は、末梢性T細胞リンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫非特定型、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、濾胞性T細胞リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、腸症関連T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫、T細胞白血病、鼻性NK/T細胞リンパ腫、肝脾T細胞リンパ腫、及び皮膚T細胞リンパ腫から選択される。
【0071】
いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は末梢性T細胞リンパ腫である。
【0072】
いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は末梢性T細胞リンパ腫非特定型である。
【0073】
いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は血管免疫芽球性T細胞リンパ腫である。
【0074】
いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は濾胞性T細胞リンパ腫である。
【0075】
いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は未分化大細胞リンパ腫である。
【0076】
いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は腸症関連T細胞リンパ腫である。
【0077】
いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は成人T細胞白血病/リンパ腫である。
【0078】
いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は皮膚T細胞リンパ腫である。
【0079】
いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は鼻性NK/T細胞リンパ腫である。
【0080】
いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は、再発性もしくは難治性T細胞リンパ腫、または本明細書に記載される任意のサブタイプである。いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は、BTK阻害剤、Bcl-2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)、及び/またはホスファチジルイノシトール3キナーゼ阻害剤(例えば、テナリシブ)による治療の後に再発するか、または該治療に対して抵抗性である。いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は、アルキル化剤、アントラサイクリン、抗CD20抗体、B細胞受容体(BCR)経路阻害剤、ベンダムスチン、ベリノスタット、ブレオマイシン、ボスチニブ、ブレンツキシマブ、カルムスチン、シタラビン、シクロホスファミド、ダカルバジン、ドキソルビシン、エトポシド、ゲムシタビン、オキシプラチン、高用量ステロイド、レナリドミド、メルファラン、イキサゾミブ、フルダラビン、フェンレチニド、プララトレキサート、プレドニゾン、R-CHEP、リツキシマブ、ロミデプシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、及びRP-6530の1種以上による治療の後に再発するか、または該治療に対して抵抗性である。いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は、CHOP、ブレンツキシマブ+リツキシマブ、リツキシマブ+CHOP、ゲムシタビン+オキシプラチン、ゲムシタビン、高用量ステロイド、BEAM、BEAM/R-CHEP、EPOCH、ABVD、レナリドミド、イキサゾミブ、ボスチニブ、フェンレチニド、プララトレキサート、ロミデプシン、ベリノスタット、及びテナリシブなどのPI3K阻害剤の1種以上による治療の後に再発するか、または該治療に対して抵抗性である。いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は、ベリノスタット、ブレンツキシマブ、ベドチン、プララトレキサート、ロミデプシン、及びPI3K阻害剤の1種以上による治療の後に再発するか、または該治療に対して抵抗性である。
【0081】
いくつかの実施形態において、セルデュラチニブは、第二選択治療、第三選択治療、第四選択治療、第五選択治療、第六選択治療、第七選択治療、第八選択治療、第九選択治療、第十選択治療、または第十一選択治療として投与される。
【0082】
いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は、T細胞リンパ腫を治療するための薬剤による前治療を受けていない(すなわち、治療未経験)
【0083】
いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫はT細胞非ホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は再発性または難治性T細胞非ホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は末梢性T細胞リンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は再発性または難治性末梢性T細胞リンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は、本明細書に記載されるT細胞リンパ腫の再発性または難治性サブタイプである。
【0084】
いくつかの実施形態において、上記患者は濾胞が関与するT細胞リンパ腫を有する。いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は、濾胞が関与する本明細書に記載されるT細胞リンパ腫のサブタイプである。いくつかの実施形態において、上記患者は濾胞が関与するAITLを有する。いくつかの実施形態において、上記患者は、濾胞が関与するPTCL-NOSを有する。いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は、濾胞が関与する本明細書に記載される再発性または難治性T細胞リンパ腫である。
【0085】
いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は、治療後にベースライン時の疾患から、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%縮小する。
【0086】
いくつかの実施形態において、セルデュラチニブによる治療後に、上記患者の疾患は少なくとも安定する。「疾患が安定する」とは、セルデュラチニブによる治療(単独でのまたはリツキシマブなどの別の薬剤との併用での)に対する反応であって、当該リンパ腫の程度または重篤度が(例えば、実質的に)低下も上昇もしない上記反応をいう場合がある。いくつかの実施形態において、上記患者は、セルデュラチニブによる治療後に少なくとも部分奏効を得る。いくつかの実施形態において、上記患者は、セルデュラチニブによる治療後に完全奏効を得る。いくつかの実施形態において、上記患者のセルデュラチニブに対する奏効の持続期間は、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約9ヶ月、または少なくとも約12ヶ月である。いくつかの実施形態において、上記患者は、セルデュラチニブに対する奏効の持続期間が少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約9ヶ月、または少なくとも約12ヶ月である、少なくとも部分奏効を得る。いくつかの実施形態において、上記患者は、セルデュラチニブに対する奏効の持続期間が少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約9ヶ月、または少なくとも約12ヶ月である完全奏効を得る。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブによる治療を受けている上記患者の少なくとも約30%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%の疾患は、少なくとも安定する。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブによる治療を受けている上記患者の少なくとも約30%または少なくとも約40%は、少なくとも部分奏効を得る。
【0087】
いくつかの実施形態において、上記T細胞リンパ腫は、単形性上皮向性腸管T細胞リンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記単形性上皮向性腸管T細胞リンパ腫は、治療後にベースライン時の疾患から、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、または少なくとも約90%縮小する。
【0088】
いくつかの実施形態において、セルデュラチニブの有効量は約30mg~約90mgの日用量である。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブの有効量は、1日1回または2回投与される、約40mg、約50mg、約60mg、または約70mg~の日用量である。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブの有効量は約35mg、1日2回である。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブの有効量は約30mg、1日2回である。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブの有効量は約25mg、1日2回である。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブの有効量は約20mg、1日2回である。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブの有効量は約30mg、1日2回であり、約25mg、1日2回まで低減される。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブの有効量は約20mg、1日2回までさらに低減される。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブの有効量は約15mg、1日2回までさらに低減される。
【0089】
いくつかの実施形態において、治療を必要とするヒト患者のT細胞リンパ腫(例えば、PTCL、PTCL-NOS、ALCL、AITL、CTCL、ATLL、EATL、HSTL、T-LBL、または鼻性NK/T細胞リンパ腫)の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を上記患者に投与することを含み、上記有効量が、1日当り約40mg~約80mgのセルデュラチニブまたは対応する量のセルデュラチニブの薬学的に許容される塩である、上記方法が提供される。
【0090】
いくつかの実施形態において、治療を必要とするヒト患者のT細胞リンパ腫(例えば、PTCL、PTCL-NOS、ALCL、AITL、CTCL、ATLL、EATL、HSTL、T-LBL、または鼻性NK/T細胞リンパ腫)の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を上記患者に投与することを含み、上記有効量が、投与当り約20mg~約40mgのセルデュラチニブを1日2回、または対応する量のセルデュラチニブの薬学的に許容される塩である、上記方法が提供される。いくつかの実施形態において、上記有効量は、投与当り約30mgのセルデュラチニブを1日2回、または対応する量のセルデュラチニブの薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態において、上記有効量は、投与当り約35mgのセルデュラチニブを1日2回、または対応する量のセルデュラチニブの薬学的に許容される塩である。
【0091】
いくつかの実施形態において、治療を必要とするヒト患者のT細胞リンパ腫(例えば、PTCL、PTCL-NOS、ALCL、AITL、CTCL、ATLL、EATL、HSTL、T-LBL、または鼻性NK/T細胞リンパ腫)の治療方法であって、上記患者が、BTK阻害剤、Bcl-2阻害剤、及び/もしくはホスファチジルイノシトール3キナーゼ阻害剤による治療の後に再発するか、または該治療に対して抵抗性であり、上記方法が、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を上記患者に投与することを含み、上記有効量が、投与当り約20mg~約40mgのセルデュラチニブを1日2回、または対応する量のセルデュラチニブの薬学的に許容される塩である、上記方法が提供される。いくつかの実施形態において、上記有効量は、投与当り約30mgのセルデュラチニブを1日2回、または対応する量のセルデュラチニブの薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態において、上記有効量は、投与当り約35mgのセルデュラチニブを1日2回、または対応する量のセルデュラチニブの薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態において、上記患者は、アルキル化剤、アントラサイクリン、抗CD20抗体、B細胞受容体(BCR)経路阻害剤、ベンダムスチン、ベリノスタット、ブレオマイシン、ボスチニブ、ブレンツキシマブ、カルムスチン、シタラビン、シクロホスファミド、ダカルバジン、ドキソルビシン、エトポシド、ゲムシタビン、オキシプラチン、高用量ステロイド、レナリドミド、メルファラン、イキサゾミブ、フルダラビン、フェンレチニド、プララトレキサート、プレドニゾン、R-CHEP、リツキシマブ、ロミデプシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、及びRP-6530の1種以上による治療の後に再発するか、または該治療に対して抵抗性である。いくつかの実施形態において、上記患者は、CHOP、ブレンツキシマブ+リツキシマブ、リツキシマブ+CHOP、ゲムシタビン+オキシプラチン、ゲムシタビン、高用量ステロイド、BEAM、BEAM/R-CHEP、EPOCH、ABVD、レナリドミド、イキサゾミブ、ボスチニブ、フェンレチニド、プララトレキサート、ロミデプシン、ベリノスタット、及びテナリシブなどのPI3K阻害剤の1種以上による治療の後に再発するか、または該治療に対して抵抗性である。いくつかの実施形態において、上記患者は、ベリノスタット、ブレンツキシマブ、ベドチン、プララトレキサート、ロミデプシン、及びPI3K阻害剤の1種以上による治療の後に再発するか、または該治療に対して抵抗性である。
【0092】
いくつかの実施形態において、セルデュラチニブは食後または空腹時に投与される。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブは、エソメプラゾール、オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール、デクスランソプラゾール、またはそれらの薬学的に許容される塩などのプロトンポンプ阻害剤と共に投与される。
【0093】
リンパ腫の治療
いくつかの実施形態において、本明細書では、治療を必要とするヒト患者の、Mcl-1、FOXP1、GAB1、SOCS1、及びSOCS3の1種以上を発現するリンパ腫の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を上記患者に投与することを含む、上記方法が提供される。いくつかの実施形態において、リンパ腫は、Mcl-1、FOXP1、GAB1、SOCS1、及びSOCS3の1種以上を、ベースラインを越えて発現する。いくつかの実施形態において、ベースラインはリンパ腫のないヒトにおける発現レベルである。いくつかの実施形態において、上記リンパ腫はB細胞リンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記リンパ腫はT細胞リンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記リンパ腫はホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記リンパ腫は非ホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記リンパ腫は、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換濾胞性リンパ腫(tFL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、辺縁帯リンパ腫、粘膜関連リンパ組織(MALT)、またはワルデンストレームマクログロブリン血症(WM)である。
【0094】
いくつかの実施形態において、本明細書では、治療を必要とし、FAT4、CCND3、MYOM2、ZMYM3、NOTCH1、KMT2D、TCF3、ARID1A、AXIN1、SYK、JAK1、JAK3、及び/またはTYK2における変異の1種以上を有する(または有することが知られている)ヒト患者のリンパ腫の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を上記患者に投与することを含む、上記方法が提供される。いくつかの実施形態において、上記リンパ腫はB細胞リンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記リンパ腫はT細胞リンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記リンパ腫はホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記リンパ腫は非ホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記リンパ腫は、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換濾胞性リンパ腫(tFL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、辺縁帯リンパ腫、粘膜関連リンパ組織(MALT)、またはワルデンストレームマクログロブリン血症(WM)である。いくつかの実施形態において、上記リンパ腫は、PTCL、FL、CLL、またはSLLである。いくつかの実施形態において、上記患者は、FAT4、CCND3、MYOM2、ZMYM3、KMT2D、TCF3、ARID1A、及び/またはAXIN1における変異の1種以上を有する。いくつかの実施形態において、上記患者は、ZMYM3、KMT2D、及びFAT4における変異の1種以上を有する。
【0095】
いくつかの実施形態において、本明細書では、治療を必要とし、FAT4、CCND3、MYOM2、ZMYM3、NOTCH1、KMT2D、TCF3、ARID1A、AXIN1、SYK、JAK1、JAK3、及び/またはTYK2における変異の1種以上を有する(または有することが知られている)ヒト患者の濾胞性リンパ腫の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を上記患者に投与することを含む、上記方法が提供される。
【0096】
いくつかの実施形態において、本明細書では、治療を必要とし、FAT4、CCND3、MYOM2、ZMYM3、KMT2D、TCF3、ARID1A、AXIN1、SYK、JAK1、JAK3、及び/またはTYK2における変異の1種以上を有する(または有することが知られている)ヒト患者の濾胞性リンパ腫の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を上記患者に投与することを含む、上記方法が提供される。
【0097】
いくつかの実施形態において、本明細書では、治療を必要とし、ZMYM3、KMT2D、FAT4、SYK、JAK1、JAK3、及び/またはTYK2における変異の1種以上を有する(または有することが知られている)ヒト患者の濾胞性リンパ腫の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を上記患者に投与することを含む、上記方法が提供される。
【0098】
いくつかの実施形態において、上記患者は、BCL2及び/またはBCL6における変異の1種以上をさらに有する。
【0099】
いくつかの実施形態において、上記濾胞性リンパ腫は再発性または難治性濾胞性リンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記濾胞性リンパ腫は形質転換濾胞性リンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記濾胞性リンパ腫は再発性または難治性形質転換濾胞性リンパ腫である。
【0100】
いくつかの実施形態において、本明細書では、治療を必要とし、NOTCH1、SETD2、SIGLEC10、SPEN、PCLO、TET2(例えば、TET2M66L)、MK167、FAT3、KRAS、REL(例えば、RELI354T)、HIST1H1E(例えば、HIST1H1EA47V)、KMT2C、KMT2D、及び/もしくはSF3B1における変異の1種以上を有する(または有することが知られている)ヒト患者のリンパ腫の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を上記患者に投与することを含む、上記方法が提供される。いくつかの実施形態において、上記リンパ腫はB細胞リンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記リンパ腫はT細胞リンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記リンパ腫はホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記リンパ腫は非ホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記リンパ腫は、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換濾胞性リンパ腫(tFL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、辺縁帯リンパ腫、粘膜関連リンパ組織(MALT)、またはワルデンストレームマクログロブリン血症(WM)である。いくつかの実施形態において、上記リンパ腫は、PTCL、FL、CLL、またはSLLである。いくつかの実施形態において、上記患者は、TET2(例えば、TET2M66L)、MK167、FAT3、HIST1H1E(例えば、HIST1H1EA47V)、KMT2C、KMT2D、及び/またはSF3B1における変異の1種以上を有する。いくつかの実施形態において、上記患者は、SYK、JAK1、JAK2、JAK3、TYK2、TP53、STAT(例えば、STAT6S86A)、A20(例えば、A20Q150R)及び/またはATMにおける変異の1種以上を有する。
【0101】
いくつかの実施形態において、本明細書では、治療を必要とし、NOTCH1、SETD2、SIGLEC10、SPEN、PCLO、TET2(例えば、TET2M66L)、MK167、FAT3、KRAS、REL(例えば、RELI354T)、HIST1H1E(例えば、HIST1H1EA47V)、KMT2C、KMT2D、及び/もしくはSF3B1における変異の1種以上を有する(もしくは有することが知られている)ヒト患者の慢性リンパ性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を上記患者に投与することを含む、上記方法が提供される。
【0102】
いくつかの実施形態において、本明細書では、治療を必要とし、SETD2、SIGLEC10、SPEN、PCLO、TET2(例えば、TET2M66L)、MK167、FAT3、KRAS、REL(例えば、RELI354T)、HIST1H1E(例えば、HIST1H1EA47V)、KMT2C、KMT2D、及び/もしくはSF3B1における変異の1種以上を有する(もしくは有することが知られている)ヒト患者の慢性リンパ性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を上記患者に投与することを含む、上記方法が提供される。
【0103】
いくつかの実施形態において、本明細書では、治療を必要とし、TET2(例えば、TET2M66L)、MK167、FAT3、HIST1H1E(例えば、HIST1H1E47V)、KMT2C、KMT2D、及び/もしくはSF3B1における変異の1種以上を有する(もしくは有することが知られている)ヒト患者の慢性リンパ性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を上記患者に投与することを含む、上記方法が提供される。
【0104】
いくつかの実施形態において、上記患者は、SYK、JAK1、JAK2、JAK3、TYK2、TP53、STAT(例えば、STAT6S86A)、A20(例えば、A20Q150R)、及び/またはATMにおける変異の1種以上をさらに有する。
【0105】
いくつかの実施形態において、上記患者は、EP300、TP53、及び/またはBTKにおける変異を有していない。いくつかの実施形態において、上記患者は、EP300S697R、EP300C1247F、TP53N285K、TP53R273C、及び/またはBTKC481Sを有していない。
【0106】
いくつかの実施形態において、上記CLLまたはSLLは、再発性もしくは難治性CLLまたはSLLである。
【0107】
いくつかの実施形態において、本明細書では、治療を必要とするヒト患者のリンパ腫(本明細書に記載される)の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物、及び有効量のMcl-1阻害剤または薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を上記患者に投与することを含む、上記方法が提供される。
【0108】
いくつかの実施形態において、Mcl-1阻害剤は、S63845、MIK665、483-LM、AZD5991、AMG176、またはStructure-Guided
Design of a Series of MCL-1 Inhibitors with High Affinity and Selectivity, Bruncko, et al., J. Med. Chem., 2015, 58 (5):2180-2194, Small Molecule Mcl-1 Inhibitors for the Treatment of Cancer, Belmar,
et al., Pharmacol. Ther., 2015, 145:76-84、もしくはSmall-Molecule Inhibitors of the Mcl-1 Oncoprotein, Chen, et al., Austin J. Anal. Pharm. Chem., 2014, 1(3)(それらは本記載をもってそれらの全体が援用される)に記載される化合物である。
【0109】
いくつかの実施形態において、Mcl-1阻害剤の有効量は、約0.01~200mg/kgである。いくつかの実施形態において、約0.01及び150mg/kgが投与されてもよい。他の実施形態において、0.05~100mg/kgの用量が投与されてもよい。上記日用量は、1日当りに投与されるMcl-1阻害剤の総量として記述される。Mcl-1阻害剤の日用量は、約0.1mg~2,000mg/日、約1~2,000mg/日、約1~1,000mg/日、約1~500mg/日、約10~150mg/日、約1~100mg/日、約1~50mg/日、約5~100mg/日、約10~125mg/日、約10~100mg/日、または約5~200mg/日であってよい。Mcl-1阻害剤の日用量は、すべて1回で(1日1回)、または数回、例えば1日を通して2回、3回、4回、5回、もしくはそれを超える回数で投与されてもよい。
【0110】
いくつかの実施形態において、本明細書では、治療を必要とするヒト患者のリンパ腫(本明細書に記載される)の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物、及び有効量のリツキシマブ(例えば、RITUXAN(登録商標)、MABTHERA(登録商標)、ZYTUX(登録商標))を上記患者に投与することを含む、上記方法が提供される。
【0111】
いくつかの実施形態において、上記リンパ腫は再発性または難治性リンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記リンパ腫はB細胞リンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記B細胞リンパ腫はホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記B細胞リンパ腫は非ホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記リンパ腫は濾胞性リンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記リンパ腫は、B細胞慢性リンパ性白血病(B-CLL)(慢性リンパ性白血病(CLL)としても知られている)である。いくつかの実施形態において、上記B細胞リンパ腫は小リンパ球性リンパ腫(SLL)である。いくつかの実施形態において、上記リンパ腫はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCLまたはDLBL)である。いくつかの実施形態において、上記リンパ腫は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換濾胞性リンパ腫(tFL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、及びマントル細胞リンパ腫(MCL)からなる群より選択される。
【0112】
いくつかの実施形態において、上記リンパ腫は濾胞性リンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記リンパ腫はPTCLである。いくつかの実施形態において、リツキシマブは、PTCLを有するヒト患者におけるウイルス感染症を管理するために同時投与される。
【0113】
いくつかの実施形態において、リツキシマブの有効量は約0.01~200mg/kgである。いくつかの実施形態において、約0.01及び150mg/kgのリツキシマブが投与されてもよい。他の実施形態において、0.05~100mg/kgの用量のリツキシマブが投与されてもよい。上記用量は、期間当りに投与されるリツキシマブの総量として記述される。リツキシマブの用量は、約0.1mg~2,000mg/期間、約1~2,000mg/期間、約1~1,000mg/期間、約1~500mg/期間、約10~150mg/期間、約1~100mg/期間、約1~50mg/期間、約5~100mg/期間、約10~125mg/期間、約10~100mg/期間、または約5~200mg/期間であってよい。リツキシマブの用量は、すべて1回で(期間あたり1回)、または数回、例えば上記期間を通して2回、3回、4回、5回、もしくはそれを超える回数で投与されてもよい。いくつかの実施形態において、上記期間は、(約)毎日、(約)2日毎、(約)3日毎、(約)4日毎、(約)5日毎、(約)6日毎、(約)毎週、(約)2週間毎、(約)3週間毎、(約)4週間毎、(約)1ヶ月毎、(約)2ヶ月毎、(約)3ヶ月毎、(約)4ヶ月毎、(約)5ヶ月毎、(約)6ヶ月毎、(約)7ヶ月毎、(約)8ヶ月毎、(約)9ヶ月毎、(約)10ヶ月毎、(約)11ヶ月毎、(約)毎年、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲である。
【0114】
用量
セルデュラチニブ投与の種々のレジメンを用いてもよい。例えば、セルデュラチニブは、1日1回投与または1日複数回投与のレジメンとして投与してもよい。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブは、1日に1回、2回、3回、または4回投与される。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブは、1日1回または1日2回投与される。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブは経口投与される。
【0115】
本明細書に記載のセルデュラチニブの具体的な量は、セルデュラチニブ遊離塩基、すなわち式Iの化合物の量をいう。ただし、セルデュラチニブの薬学的に許容される塩、共結晶、もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を、記載された量のセルデュラチニブを与える量で投与してもよいことが理解されよう。セルデュラチニブの薬学的に許容される塩の例としては、セルデュラチニブ酢酸塩、セルデュラチニブアジピン酸塩、セルデュラチニブアルギン酸塩、セルデュラチニブアスパラギン酸塩、セルデュラチニブ安息香酸塩、セルデュラチニブベンゼンスルホン酸塩、セルデュラチニブ重硫酸塩、セルデュラチニブ酪酸塩、セルデュラチニブクエン酸塩、セルデュラチニブ樟脳酸塩、セルデュラチニブ樟脳スルホン酸塩、セルデュラチニブシクロペンタンプロピオン酸塩、セルデュラチニブジグルコン酸塩、セルデュラチニブドデシル硫酸塩、セルデュラチニブエタンスルホン酸塩、セルデュラチニブエジシル酸塩、セルデュラチニブフマル酸塩、セルデュラチニブルコヘプタン酸塩、セルデュラチニブグリセロリン酸塩、セルデュラチニブヘミ硫酸塩、セルデュラチニブヘプタン酸塩、セルデュラチニブヘキサン酸塩、セルデュラチニブ塩酸塩、セルデュラチニブビス塩酸塩、セルデュラチニブ臭化水素酸塩、セルデュラチニブヨウ化水素酸塩、セルデュラチニブ2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、セルデュラチニブ乳酸塩、セルデュラチニブマレイン酸塩、セルデュラチニブメタンスルホン酸塩、セルデュラチニブビスメタンスルホン酸塩、セルデュラチニブ2-ナフタレンスルホン酸塩、セルデュラチニブナフタレン二硫酸塩、セルデュラチニブニコチン酸塩、セルデュラチニブシュウ酸塩、セルデュラチニブパモ酸塩、セルデュラチニブペクチン酸塩、セルデュラチニブ過硫酸塩、セルデュラチニブ3-フェニルプロピオン酸塩、セルデュラチニブピクリン酸塩、セルデュラチニブピバリン酸塩、セルデュラチニブプロピオン酸塩、セルデュラチニブコハク酸塩、セルデュラチニブ酒石酸塩、セルデュラチニブチオシアン酸塩、セルデュラチニブトシル酸塩、セルデュラチニブウンデカン酸塩、セルデュラチニブハロゲン化水素酸塩(例えば、セルデュラチニブ塩酸塩及びセルデュラチニブ臭化水素酸塩)、セルデュラチニブ硫酸塩、セルデュラチニブリン酸塩、セルデュラチニブ硝酸塩、セルデュラチニブスルファミン酸塩、セルデュラチニブマロン酸塩、セルデュラチニブサリチル酸塩、セルデュラチニブメチレン-ビス-b-ヒドロキシナフトエ酸塩、セルデュラチニブゲンチジン酸塩、セルデュラチニブイセチオン酸塩、セルデュラチニブジ-p-トルオイル酒石酸塩、セルデュラチニブエタンスルホン酸塩、セルデュラチニブシクロヘキシルスルファミン酸塩、セルデュラチニブキナ酸塩などの、無機酸または有機酸に由来するセルデュラチニブの薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0116】
セルデュラチニブまたはその塩は、非溶媒和の形態のみならず、水和の形態を含む溶媒和の形態で投与されてもよく、または別の化合物と共結晶を形成していてもよい。「水和物」とは、水分子と溶質の分子またはイオンとの結合によって形成される複合体をいう。「溶媒和物」とは、溶媒分子と溶質の分子またはイオンとの結合によって形成される複合体をいう。上記溶媒は、有機化合物、無機化合物、または両方の混合物であってもよい。溶媒和物は、水和物、半水和物、チャネル型水和物などを包含することを意図する。溶媒のいくつかの例としては、メタノール、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、及び水が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0117】
いくつかの実施形態において、セルデュラチニブは塩酸塩(セルデュラチニブHCl)として投与される。いくつかの実施形態において、上記セルデュラチニブHClは結晶形態である。いくつかの実施形態において、上記セルデュラチニブHClは、Cu-Kα放射を用いた回折計で測定した、8.7、15.9、及び20.0°の2θ(それぞれ±0.2°の2θ)のピークを含む粉末X線回折図によって特徴付けられる結晶形態(セルデュラチニブHCl形態I)である。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブHCl形態Iは、11.5、22.5、及び25.5°の2θ(それぞれ±0.2°の2θ)における1つ以上のピークによってさらに特徴付けられる。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブHCl形態Iは、約288℃で開始する吸熱を含む示差走査熱量測定曲線によってさらに特徴付けられる。
【0118】
より良好な有効性を達成するためには、セルデュラチニブの定常状態血漿最小濃度(SSCmin)が重要であることが見出された。本明細書に記載の用量などの所与の用量では、異なる患者において異なるSSCminが生じることが見出され、異なる疾患においてより良好な効力を達成するために必要なSSCminもまた異なることが見出された。したがって、特定の疾患に合わせて調整された、個々の患者において十分であるが過剰ではないSSCminを達成する個々の患者に合せた用量によって、副作用が最少化しつつ奏効が最大化することとなる。
【0119】
いくつかの実施形態において、治療有効量は1日当り少なくとも約5mgのセルデュラチニブである。いくつかの実施形態において、上記治療有効量は、少なくとも1日当り約10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、または100mgのセルデュラチニブである。いくつかの実施形態において、上記治療有効量は、投与当り少なくとも約10、20、30、40、または50mgのセルデュラチニブである。いくつかの実施形態において、上記治療有効量は、投与当り少なくとも約15mg、20mg、25mg、30mg、または35mgのセルデュラチニブであり、これが1日2回投与される。
【0120】
いくつかの実施形態において、上記治療有効量は、1日当り約100mg以下、95mg以下、90mg以下、85mg以下、80mg以下、または75mg以下のセルデュラチニブである。いくつかの実施形態において、上記治療有効量は、投与当り約90mg以下、80mg以下、70mg以下、60mg以下、55mg以下、または50mg以下のセルデュラチニブである。いくつかの実施形態において、上記治療有効量は、投与当り45mg以下、40mg以下、35mg以下、または30mg以下のセルデュラチニブであり、これが1日2回投与される。
【0121】
いくつかの実施形態において、上記治療有効量は、1日当り約10mg~200mg、約10mg~150mg、約25mg~150mg、約25~120mg、30mg~110mg、約50~120mg、約30~80mg、50mg~80mg、約40~50mg、または約80~100mgのセルデュラチニブである。
【0122】
いくつかの実施形態において、セルデュラチニブの日用量は、約30mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、または150mgである。
【0123】
いくつかの実施形態において、約30mg~約80mgのセルデュラチニブが1日1回投与される。いくつかの実施形態において、上記有効量は、約40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、または70mgのセルデュラチニブであり、これが1日1回投与される。
【0124】
いくつかの実施形態において、上記有効量は、投与当たり約15mg~約65mg、約25mg~約50mg、約25mg~約40mg、約30mg~約40mg、または約40mg~約50mgのセルデュラチニブであり、これが1日2回投与される。いくつかの実施形態において、約25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、または60mgのセルデュラチニブが1日2回投与される。いくつかの実施形態において、約45mgのセルデュラチニブが1日2回投与される。いくつかの実施形態において、約35mgのセルデュラチニブが1日2回投与される。
【0125】
いくつかの実施形態において、セルデュラチニブの有効量は、1日に約10mg~約45mgである。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブの有効量は、約15mg~約30mg、1日2回である。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブの有効量は、約15mg、20mg、25mg、または30mg、1日2回である。
【0126】
いくつかの実施形態において、セルデュラチニブは、(約、少なくとも、もしくは最大で)5回、6回、7回、8回、9回、10回、20回、30回、40回、50回、60回、70回、80回、90回、100回、またはこれらの値の任意の2つの間の回数もしくは回数の範囲で投与される。
【0127】
いくつかの実施形態において、本明細書では、治療を必要とするヒト患者の濾胞性リンパ腫または非ホジキンリンパ腫(iNHL)の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を上記患者に投与して、上記患者において約0.05μM~約3μMの定常状態最小血漿セルデュラチニブ濃度を達成及び維持することを含む、上記方法が提供される。いくつかの実施形態において、上記方法によって、治療を受けた患者において少なくとも部分奏効が達成される。
【0128】
いくつかの実施形態において、上記濾胞性リンパ腫は再発性または難治性濾胞性リンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記濾胞性リンパ腫形質転換濾胞性リンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記濾胞性リンパ腫は再発性または難治性形質転換濾胞性リンパ腫である。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物は、FL患者に少なくとも30週間、または少なくとも40週間、または少なくとも50週間投与される。
【0129】
いくつかの実施形態において、本明細書では、治療を必要とするヒト患者の、辺縁帯リンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、慢性リンパ性白血病、または小リンパ球性リンパ腫の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を上記患者に投与して、上記患者において約0.05μM~約3μMの定常状態最小血漿セルデュラチニブ濃度を達成及び維持することを含む、上記方法が提供される。いくつかの実施形態において、上記方法によって、治療を受けた患者において少なくとも部分奏効が達成される。いくつかの実施形態において、上記辺縁帯リンパ腫は再発性または難治性辺縁帯リンパ腫である。いくつかの実施形態において、上記ワルデンストレームマクログロブリン血症は再発性または難治性ワルデンストレームマクログロブリン血症である。いくつかの実施形態において、上記慢性リンパ性白血病または小リンパ球性リンパ腫は、再発性または難治性慢性リンパ性白血病または小リンパ球性リンパ腫である。
【0130】
いくつかの実施形態において、上記ヒト患者において達成及び維持される定常状態最小血漿セルデュラチニブ濃度は約0.7μM~約3μMである。いくつかの実施形態において、上記ヒト患者において達成及び維持される定常状態最小血漿セルデュラチニブ濃度は約0.05μM~約0.5μMである。いくつかの実施形態において、上記ヒト患者において達成される定常状態最小血漿セルデュラチニブ濃度は、(約、少なくとも、もしくは最大で)0.001μM、0.002μM、0.003μM、0.004μM、0.005μM、0.006μM、0.007μM、0.008μM、0.009μM、0.01μM、0.02μM、0.03μM、0.04μM、0.05μM、0.06μM、0.07μM、0.08μM、0.09μM、0.1μM、0.1μM、0.2μM、0.3μM、0.4μM、0.5μM、0.6μM、0.7μM、0.8μM、0.9μM、1.0μM、1.1μM、1.2μM、1.3μM、1.4μM、1.5μM、1.6μM、1.7μM、1.8μM、1.9μM、2.0μM、2.1μM、2.2μM、2.3μM、2.4μM、2.5μM、2.6μM、2.7μM、2.8μM、2.9μM、3.0μM、3.1μM、3.2μM、3.3μM、3.4μM、3.5μM、3.6μM、3.7μM、3.8μM、3.9μM、4.0μM、4.1μM、4.2μM、4.3μM、4.4μM、4.5μM、4.6μM、4.7μM、4.8μM、4.9μM、5.0μM、またはこれらの値の任意の2つの間の数値もしくは範囲である。
【0131】
いくつかの実施形態において、上記方法によって、治療を受けた患者のリンパ節が少なくとも30%縮小する。いくつかの実施形態において、上記方法によって、治療を受けた患者のリンパ節が少なくとも40%縮小する。いくつかの実施形態において、治療を受けた患者のリンパ節が少なくとも50%縮小する。
【0132】
定常状態最小血漿セルデュラチニブ濃度は、本明細書に記載されるかまたは当技術分野で公知の方法によって測定することができる。いくつかの実施形態において、上記患者の定常状態最小血漿セルデュラチニブ濃度は、セルデュラチニブが当該患者に1日、2日間、3日間、または1週間投与された後に測定される。いくつかの実施形態において、上記患者に投与される用量は、定常状態最小血漿セルデュラチニブ濃度が所望の範囲内となるように調整される。
【0133】
患者
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態において、上記患者は、セルデュラチニブではない薬物に対する耐性を有する。これらの薬物の非限定的な例は、抗CD20抗体、BCL-2阻害剤、BTK阻害剤、P13Kδ阻害剤、リツキシマブ、白金系薬物、代謝拮抗剤、イブルチニブ、イデラリシブ、フルダラビン(フルダラビンリン酸エステル、FLUDARA(登録商標))、アントラサイクリン、BCR経路阻害剤、ABT-199(ベネトクラクス)、トファシチニブ、または血液がんの治療に使用される別の化学療法剤である。化学療法剤の他の非限定的な例としては、アルキル化剤、細胞骨格破壊剤、エポチオロン、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、トポイソメラーゼIの阻害剤、トポイソメラーゼIIの阻害剤、ヌクレオチド類似体及び前駆体類似体、抗生物質、白金系薬剤、レチノイド、ビンカアルカロイド、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0134】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態において、上記患者は、抗CD20抗体、BCL-2阻害剤、BTK阻害剤、P13Kδ阻害剤、白金系薬物、代謝拮抗剤、アントラサイクリン、BCR経路阻害剤、または血液がんの治療に使用される別の化学療法剤に対する耐性を有する。いくつかの実施形態において、上記患者は、イブルチニブ、イデラリシブ、トファシチニブ、フルダラビン(フルダラビンリン酸エステル、FLUDARA(登録商標))、またはABT-199(ベネトクラクス)からなる群より選択される薬物に対する耐性を有する。いくつかの実施形態において、上記患者はイブルチニブに対する耐性を有する。
【0135】
いくつかの実施形態において、上記患者には過去に、血液癌を治療するための薬物が投与されていた。上記薬物の非限定的な例としては、アルキル化剤、抗CD20抗体、BCL-2阻害剤、BTK阻害剤、P13Kδ阻害剤、リツキシマブ、白金系薬物、代謝拮抗剤、イブルチニブ、イデラリシブ、トファシチニブ、フルダラルビン(フルダラビンリン酸エステル、FLUDARA(登録商標))、アントラサイクリン、BCR経路阻害剤、ABT-199(ベネトクラクス)、及び血液がんの治療に使用される他の薬剤が挙げられる。
【0136】
化学療法剤の他の非限定的な例としては、細胞骨格破壊剤、エポチオロン、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、トポイソメラーゼIの阻害剤、トポイソメラーゼIIの阻害剤、ヌクレオチド類似体及び前駆体類似体、抗生物質、白金系薬剤、レチノイド、ビンカアルカロイド、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0137】
いくつかの実施形態において、上記患者には、アルキル化剤、抗CD20抗体、BCL-2阻害剤、BTK阻害剤、P13Kδ阻害剤、白金系薬物、代謝拮抗剤、アントラサイクリン、BCR経路阻害剤、及び血液癌の治療に使用されるその他の薬剤からなる群より選択される薬物が投与されていた。いくつかの実施形態において、上記薬物は、リツキシマブ、イブルチニブ、イデラリシブ、トファシチニブ、フルダラルビン(フルダラビンリン酸エステル、FLUDARA(登録商標))、またはABT-199(ベネトクラクス)である。いくつかの実施形態において、上記薬物は、R-CHOP(リツキシマブ;シクロホスファミド;ドキソルビシン塩酸塩;(ビンクリスチン);プレドニゾン)である。いくつかの実施形態において、上記薬物は、R-CVP(リツキシマブ;シクロホスファミド;ビンクリスチン;プレドニゾン)である。いくつかの実施形態において、上記薬物はベバシズマブである。いくつかの実施形態において、上記薬物は、フルダラビンとリツキシマブの併用、ベンダムスチンとリツキシマブの併用、またはベバシズマブとリツキシマブの併用である。
【0138】
特定の実施形態において、上記患者は60歳以上であり、第一選択がん治療後に再発している。特定の実施形態において、上記患者は18歳以上であり、第二選択がん治療後に再発しているかまたは抵抗性である。特定の実施形態において、上記患者は、60歳以上であり、第一選択がん治療に対して原発性抵抗性である。特定の実施形態において、上記患者は70歳以上であり、前治療を受けていない。特定の実施形態において、上記患者は70歳以上であり、がん治療の恩恵を受ける適格性がない、及び/またはその可能性が低い。
【0139】
3.併用療法剤
一実施形態において、上記治療方法は、有効量の、上記癌の治療に有用な化学療法剤などの別の薬剤の投与をさらに含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブは、有効量の上記別の薬剤または薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物と同時投与される(同時にまたは逐次的に)。いくつかの実施形態において、上記別の薬剤は化学療法剤である。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブと同時投与される上記薬剤は、Mcl-1阻害剤である。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブと同時投与される上記薬剤はリツキシマブである。いくつかの実施形態において、上記薬剤はセルデュラチニブと同時にまたは逐次的に同時投与される。
【0140】
本開示の化合物は、がんなどの疾患の治療のための、1種以上の他の酵素/タンパク質/受容体の阻害剤と併用してもよい。がんの例としては、固形腫瘍及び血液癌などの液体腫瘍が挙げられる。例えば、本開示の化合物は、がんの治療用の、以下のキナーゼ、すなわち、Akt1、Akt2、Akt3、TGFβR、PKA、PKG、PKC、CaMキナーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ、MEKK、ERK、MAPK、mTOR、EGFR、HER2、HER3、HER4、INS-R、IGF-1R、IR-R、PDGFαR、PDGFβR、CSFIR、KIT、FLK-II、KDR/FLK-1、FLK-4、flt-1、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、c-Met、Ron、Sea、TRKA、TRKB、TRKC、FLT3、VEGFR/Flt2、Flt4、EphA1、EphA2、EphA3、EphB2、EphB4、Tie2、Src、Fyn、Lck、Fgr、Btk、Fak、SYK、FRK、JAK、ABL、ALK、及びB-Rafの1種以上の阻害剤と併用されてもよい。
【0141】
いくつかの実施形態において、本開示の化合物を、1種以上の以下のがん治療用の阻害剤と組み合わせてもよい。がんの治療のために本開示の化合物と組み合わせてもよい阻害剤の非限定的な例としては、FGFR阻害剤(FGFR1、FGFR2、FGFR3、もしくはFGFR4、例えば、AZD4547、BAY1187982、ARQ087、BGJ398、BIBF1120、TK1258、ルシタニブ、ドビチニブ、TAS-120、JNJ-42756493、Debiol347、INCB54828、INCB62079、及びINCB63904)、JAK阻害剤(JAK1及び/もしくはJAK2、例えば、ルクソリチニブ、バリシチニブ、もしくINCB39110)、IDO阻害剤(例えば、エパカドスタット及びNLG919)、LSD1阻害剤(例えば、GSK2979552、INCB59872、及びINCB60003)、TDO阻害剤、PI3Kデルタ阻害剤(例えば、INCB50797及びINCB50465)、PI3K-ガンマ選択的阻害剤などのPI3Kガンマ阻害剤、CSF1R阻害剤(例えば、PLX3397及びLY3022855)、TAM受容体チロシンキナーゼ(Tyro-3、Axl、及びMer)、血管新生阻害剤、インターロイキン受容体阻害剤、ブロモ及び余剰末端ファミリーメンバー阻害剤(例えば、OTX015、CPI-0610、INCB54329、及びINCB57643などのブロモドメイン阻害剤もしくはBET阻害剤)、ならびにアデノシン受容体アンタゴニスト、またはそれらの組み合わせが挙げられる。パノビノスタット及びボリノスタットなどのHDACの阻害剤。オナルツムズマブ(onartumzumab)、チバントニブ(tivantnib)、及びINC-280などのc-Metの阻害剤。イブルチニブなどのBTKの阻害剤。ラパマイシン、シロリムス、テムシロリムス、及びエベロリムスなどのmTORの阻害剤。ベムラフェニブ及びダブラフェニブなどのRafの阻害剤。トラメチニブ、セルメチニブ、及びGDC-0973などのMEKの阻害剤。Hsp90の阻害剤(例えば、タネスピマイシン)、サイクリン依存性キナーゼの阻害剤(例えば、パルボシクリブ)、PARPの阻害剤(例えば、オラパリブ)、及びPimキナーゼの阻害剤(LGH447、INCB053914、及びSGI-1776)の阻害剤もまた、本開示の化合物と併用してよい。
【0142】
本開示の化合物は1以上の免疫チェックポイント阻害剤と併用してもよい。例示的な免疫チェックポイント阻害剤としては、CD20、CD27、CD28、CD39、CD40、CD122、CD96、CD73、CD47、OX40、GITR、CSF1R、JAK、PI3Kデルタ、PI3Kガンマ、TAM、アルギナーゼ、CD137(4-1BBとしても知られる)、ICOS、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、LAG3、TIM3、VISTA、PD-1、PD-L1、及びPD-L2などの免疫チェックポイント分子に対する阻害剤が挙げられる。いくつかの実施形態において、上記免疫チェックポイント分子は、CD27、CD28、CD40、ICOS、OX40、GITR、及びCD137から選択される刺激性チェックポイント分子である。いくつかの実施形態において、上記免疫チェックポイント分子は、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、IDO、KIR、LAG3、PD-1、TIM3、及びVISTAから選択される抑制性チェックポイント分子である。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される化合物は、KIR阻害剤、TIGIT阻害剤、LAIR1阻害剤、CD160阻害剤、2B4阻害剤、及びTGFRベータ阻害剤から選択される1種以上の薬剤と併用してもよい。
【0143】
いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント分子の上記阻害剤は、抗PD1抗体、抗PD-L1抗体、または抗CTLA-4抗体である。
【0144】
いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント分子の上記阻害剤は、PD-1の阻害剤、例えば、抗PD-1モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、上記抗PD-1モノクローナル抗体は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ(MK-3475としても知られる)、ピジリズマブ、SHR-1210、PDR001、またはAMP-224である。いくつかの実施形態において、上記抗PD-1モノクローナル抗体はニボルマブまたはペンブロリズマブである。いくつかの実施形態において、上記抗PD-1抗体はペンブロリズマブである。いくつかの実施形態において、上記抗PD-1抗体はSHR-1210である。
【0145】
いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント分子の上記阻害剤は、PD-L1の阻害剤、例えば、抗PD-L1モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、上記抗PD-L1モノクローナル抗体は、BMS-935559、MEDI4736、MPDL3280A(RG7446としても知られる)、またはMSB0010718Cである。いくつかの実施形態において、上記抗PD-L1モノクローナル抗体はMPDL3280AまたはMEDI4736である。
【0146】
いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント分子の上記阻害剤は、CTLA-4の阻害剤、例えば、抗CTLA-4抗体である。いくつかの実施形態において、上記抗CTLA-4抗体はイピリムマブである。
【0147】
いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント分子の上記阻害剤は、CSF1Rの阻害剤、例えば、抗CSF1R抗体である。いくつかの実施形態において、上記抗CSF1R抗体はIMC-CS4またはRG7155である。
【0148】
いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント分子の上記阻害剤は、LAG3の阻害剤、例えば、抗LAG3抗体である。いくつかの実施形態において、上記抗LAG3抗体は、BMS-986016、LAG525、IMP321、またはGSK2831781である。
【0149】
いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント分子の上記阻害剤は、GITRの阻害剤、例えば、抗GITR抗体である。いくつかの実施形態において、上記抗GITR抗体は、TRX518、MK-4166、MK1248、BMS-986156、MEDI1873、またはGWN323である。
【0150】
いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント分子の上記阻害剤は、OX40の阻害剤、例えば、抗OX40抗体またはOX40L融合タンパク質である。いくつかの実施形態において、上記抗OX40抗体は、MEDI0562、MEDI6469、MOXR0916、PF-04518600、またはGSK3174998である。いくつかの実施形態において、上記OX40L融合タンパク質はMEDI6383である。
【0151】
いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント分子の上記阻害剤は、TIM3の阻害剤、例えば、抗TIM3抗体である。いくつかの実施形態において、上記抗TIM3抗体はMBG-453である。
【0152】
いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント分子の上記阻害剤は、CD20の阻害剤、例えば、抗CD20抗体である。いくつかの実施形態において、上記抗CD20抗体はオビヌツズマブまたはリツキシマブである。
【0153】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物は1種以上の代謝酵素阻害剤と併用してもよい。いくつかの実施形態において、上記代謝酵素阻害剤は、IDO1、TDO、またはアルギナーゼの阻害剤である。IDO1阻害剤の例としてはエパカドスタット及びNGL919が挙げられる。アルギナーゼ阻害剤の例はCB-1158である。
【0154】
本開示の化合物は二重特異性抗体と併用してもよい。いくつかの実施形態において、上記二重特異性抗体の1種のドメインは、PD-1、PD-L1、CTLA-4、GITR、OX40、TIM3、LAG3、CD137、ICOS、CD3、またはTGFβ受容体を標的とする。
【0155】
本開示の化合物は、1種以上の、がんなどの疾患の治療用の薬剤と併用してもよい。いくつかの実施形態において、上記薬剤は、アルキル化剤、プロテアソーム阻害剤、コルチコステロイド、または免疫調節剤である。アルキル化剤の例としては、ベンダムスチン、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、アルキルスルホナート、ニトロソ尿素及びトリアゼン、ウラシルマスタード、クロルメチン、シクロホスファミド(Cytoxan(商標))、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホラミン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、及びテモゾロミドが挙げられる。いくつかの実施形態において、上記プロテアソーム阻害剤はカルフィルゾミブである。いくつかの実施形態において、上記コルチコステロイドはデキサメタゾン(DEX)である。いくつかの実施形態において、上記免疫調節剤はレナリドミド(LEN)またはポマリドマイド(POM)である。
【0156】
本開示の化合物はさらに、例えば、化学療法、放射線療法、腫瘍標的療法、アジュバント療法、免疫療法、または外科手術による他のがんの治療方法と併用してもよい。免疫療法の例としては、サイトカイン治療(例えば、インターフェロン、GM-CSF、G-CSF、IL-2)、CRS-207免疫療法、がんワクチン、モノクローナル抗体、養子T細胞移入、腫瘍溶解性ウイルス療法、及びサリドマイドまたはJAK1/2阻害剤などを含む免疫調節小分子が挙げられる。上記化合物は、化学療法剤などの1種以上の抗がん剤との併用で投与してもよい。化学療法剤の例としては、アバレリクス、アビラテロン、アファチニブ、アフリベルセプト、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アルトレタミン、アナストロゾール、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、アキシチニブ、アザシチジン、ベバシズマブ、ベキサロテン、バリシチニブ、ビカルタミド、ブレオマイシン、bortezombi、ボルテゾミブ、ブリバニブ、ブパルリシブ、静注ブスルファン、経口ブスルファン、カルステロン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、セジラニブ、セツキシマブ、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロファラビン、クリゾチニブ、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダコミチニブ、ダクチノマイシン、ダルテパリンナトリウム、ダサチニブ、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デシタビン、デガレリクス、デニロイキン、デニロイキンジフチトクス、デオキシコホルマイシン、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドロロキシフェン、ドロスタノロンプロピオン酸エステル、エクリズマブ、エンザルタミド、エピポドフィロトキシン、エピルビシン、エルロチニブ、エスタラムスチン、エトポシドリン酸塩、エトポシド、エキセメスタン、フェンタニルクエン酸塩、フィルグラスチム、フロクスリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルタミド、フルベストラント、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゴセレリン酢酸塩、ヒストレリン酢酸塩、イブリツモマブチウキセタン、イダルビシン、イデラリシブ、イホスファミド、イマチニブメシル酸塩、インターフェロンアルファ2a、イリノテカン、ラパチニブ二トシル酸塩、レナリドミド、レトロゾール、ロイコボリン、ロイプロリド酢酸塩、レバミゾール、ロムスチン、メクロレタミン、メゲストロール酢酸エステル、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、メトキサレン、ミトラマイシン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ナンドロロンフェンプロピオン酸エステル、ナベルベン、ネシツムマブ、ネララビン、ネラチニブ、ニロチニブ、ニルタミド、ノフェツモマブ、オセレリン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、パニツムマブ、パゾパニブ、ペガスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド二ナトリウム、ペントスタチン、ピララリシブ、ピポブロマン、プリカマイシン、ポナチニブ、プレドニゾン、プロカルバジン、キナクリン、ラスブリカーゼ、レゴラフェニブ、レロキサフィン(reloxafine)、リツキシマブ、ルクソリチニブ、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、スニチニブ、スニチニブマレイン酸塩、タモキシフェン、テガフール、テモゾロミド、テニポシド、テストラクトン、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、トリプトレリン、ウラシルマスタード、バルルビシン、バンデタニブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ボリノスタット、及びゾレドロネートのいずれかが挙げられる。
【0157】
他の抗がん剤(複数可)としては、トラスツズマブ(ハーセプチン)などの抗体治療薬、CTLA-4(例えば、イピリムマブまたはトレメリムマブ)、4-1BBなどの共刺激分子に対する抗体、PD-1及びPD-L1に対する抗体、またはサイトカイン(IL-10、TGF-ベータ等)に対する抗体が挙げられる。がんまたは、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、及び寄生虫感染症などの感染症の治療のために本開示の化合物と併用してもよいPD-1及び/またはPD-L1に対する抗体の例としては、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、MPDL3280A、MEDI-4736、及びSHR-1210が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0158】
他の抗がん剤としては、細胞増殖性障害に関連するキナーゼの阻害剤が挙げられる。これらのキナーゼとしては、Aurora-A、CDK1、CDK2、CDK3、CDK5、CDK7、CDK8、CDK9、エフリン受容体キナーゼ、CHK1、CHK2、SRC、Yes、Fyn、Lck、Fer、Fes、Syk、Itk、Bmx、GSK3、JNK、PAK1、PAK2、PAK3、PAK4、PDK1、PKA、PKC、Rsk、及びSGKが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0159】
他の抗がん剤としては、CCR2及びCCR4を含むケモカイン受容体に対するアンタゴニストなどの免疫細胞遊走を遮断する抗がん剤も挙げられる。
【0160】
本開示の化合物はさらに、1種以上の抗炎症剤、ステロイド、免疫抑制剤、または治療用抗体と併用してもよい。
【0161】
式(I)もしくは本明細書に記載の式のいずれかの化合物、特許請求の範囲のいずれかに記載され、かつ本明細書に記載の化合物、またはそれらの塩は、がん性細胞、精製した腫瘍抗原(組換えのタンパク質、ペプチド、及び炭水化物分子を含む)、細胞、及び免疫刺激性サイトカインをコードする遺伝子でトランスフェクトされた細胞などの別の免疫原性因子と併用してもよい。使用できる腫瘍ワクチンの非限定的な例としては、gp100、MAGE抗原、Trp-2、MARTI、及び/もしくはチロシナーゼのペプチドなどの黒色腫抗原のペプチド、またはサイトカインGM-CSFを発現するようにトランスフェクトされた腫瘍細胞が挙げられる。
【0162】
式(I)もしくは本明細書に記載のいずれかの式の化合物、特許請求の範囲のいずれかに記載され、かつ本明細書に記載の化合物、またはそれらの塩は、がん治療用のワクチン接種プロトコルと併用してもよい。いくつかの実施形態において、上記腫瘍細胞はGM-CSFを発現するように形質導入されている。いくつかの実施形態において、腫瘍ワクチンは、ヒトパピローマウイルス(HPV)、肝炎ウイルス(HBV及びHCV)、ならびにカポジヘルペス肉腫ウイルス(KHSV)などのヒトのがんに関係するウイルス由来のタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、本開示の化合物は、腫瘍組織自体から単離された熱ショックタンパク質などの腫瘍特異的抗原と併用してもよい。いくつかの実施形態において、式(I)もしくは本明細書に記載のいずれかの式の化合物、特許請求の範囲のいずれかに記載され、かつ本明細書に記載の化合物、またはそれらの塩は、樹状細胞による免疫化と併用して、強力な抗腫瘍反応を活性化してもよい。
【0163】
本開示の化合物は、FeアルファまたはFeガンマ受容体発現エフェクター細胞を腫瘍細胞に向けて標的化する二重特異性大環状ペプチドと併用してもよい。本開示の化合物はまた、宿主の免疫応答性を活性化する大環状ペプチドと併用してもよい。
【0164】
本開示の化合物は、造血起源のさまざまな腫瘍の治療のために骨髄移植と併用してもよい。
【0165】
本開示の化合物との併用が企図される好適な抗ウイルス剤は、ヌクレオシド及びヌクレオチド逆転写酵素阻害剤(NRTI)、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、プロテアーゼ阻害剤、及び他の抗ウイルス薬を含んでいてもよい。
【0166】
好適なNRTIの例としては、ジドブジン(AZT)、ジダノシン(ddl)、ザルシタビン(ddC)、スタブジン(d4T)、ラミブジン(3TC)、アバカビル(1592U89)、アデホビルジピボキシル[ビス(POM)-PMEA]、ロブカビル(BMS-180194)、BCH-10652、エミリシタビン[(-)-FTC]、β-L-FD4(β-L-D4Dとも呼ばれ、β-L-2’,3’-ジクレオキシ-5-フルオロシチデンと命名される)、DAPD、((-)-β-D-2,6-ジアミノプリンジオキソラン)、及びロデノシン(FddA)が挙げられる。一般的な好適なNNRTIとしては、ネビラピン(BI-RG-587)、デラビラジン(BHAP、U-90152)、エファビレンツ(DMP-266)、PNU-142721、AG-1549、MKC-442(1-(エトキシメチル)-5-(1-メチルエチル)-6-(フェニルメチル)-(2,4(1H,3H)-ピリミジンジオン)、及び(+)-カラノリドA(NSC-675451)及びBが挙げられる。一般的な好適なプロテアーゼ阻害剤としては、サキナビル(Ro 31-8959)、リトナビル(ABT-538)、インジナビル(MK-639)、ネルフナビル(AG-1343)、アンプレナビル(141W94)、ラシナビル(BMS-234475)、DMP-450、BMS-2322623、ABT-378、及びAG-1549が挙げられる。他の抗ウイルス剤としては、ヒドロキシ尿素、リバビリン、IL-2、IL-12、ペンタフシド、及びYissum Project No.11607が挙げられる。
【0167】
2種以上の薬剤が患者に投与される場合、それらは、同時に、別個に、逐次的に、または組み合わせて(例えば、3種以上の薬剤に関して)投与してもよい。いくつかの実施形態において、上記別の薬剤は、以下に詳述される種別、すなわち、
シクロホスファミド(cytoxan)、メクロレタミン、メルファラン(alkeran)、クロラムブシル(leukeran)、チオペタ(thioplex)、ブスルファン(myleran)によって例示される多官能性アルキル化剤;
プロカルバジン(matulane)、ダカルバジン(dtic)、アルトレタミン(hexalen)、クロラムブシル、シスプラチン(platinol)、カルボプラチン、イフォサファミド、オキサリプラチンによって例示されるアルキル化薬;
メトトレキサート(MTX)、6-チオプリン(メルカプトプリン[6-mp]、チオグアニン[6-TG])、メルカプトプリン(purinethol)、チオグアニン、フルダラビンリン酸エステル、クラドリビン:(leustatin)、ペントスタチン、フルオロウラシル(5-Fu)、シタラビン(ara-C)、アザシチジンによって例示される代謝拮抗剤;
ビンブラスチン(velban)、ビンクリスチン(oncovin)、ビンデシン、ビノレルビン、ポドフィロトキシン(エトポシド(VP-16)及びテニポシド(VM-26))、カンプトテシン(トポテカン及びイリノテカン)、パクリタキセル(taxol)及びドセタキセル(taxotere)などのタキサンによって例示される植物アルカロイド、テルペノイド、及びトポイソメラーゼ阻害剤;
ドキソルビシン(アドリアマイシン、rubex、doxil)、ダウノルビシン、イダルビシン、ダクチノマイシン(cosmegen)、プリカマイシン(ミトラマイシン)、マイトマイシン:(ムタマイシン)、ブレオマイシン(ブレノキサン)によって例示される抗生物質;
エストロゲン及びアンドロゲン阻害剤(タモキシフェン及びフルタミド)、ゴナドトロピン放出ホルモンアゴニスト(ロイプロリド及びゴセレリン(Zoladex))、アロマターゼ阻害剤(アミノグルテチミド及びアナストロゾール(arimidex))によって例示されるホルモン剤;
アムサクリン、アスパラギナーゼ(El-spar)、ヒドロキシ尿素、ミトキサントロン(novantrone)、ミトタン(lysodren)、レチノイン酸誘導体、骨髄成長因子(サルグラモスチム及びフィルグラスチム)、アミフォスチンによって例示される種々の抗がん剤;
葉酸代謝を妨害する薬剤、例えばペメトレキセド;
DNA低メチル化剤、例えば、アザシチジン、デシタビン;
イニパリブ、オラパリブ、ベリパリブなどのポリ(アデノシン二リン酸[ADP]-リボース)ポリメラーゼ(PARP)経路阻害剤;
PI3K/Akt/mTOR経路阻害剤、例えば、エベロリムス;
ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、例えば、ボリノスタット、エンチノスタット(SNDX-275)、モセチノスタット(MGCD0103)、パノビノスタット(LBH589)、ロミデプシン、バルプロ酸;
サイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害剤、例えば、フラボピリドール、オロモウシン、ロスコビチン、ケンパウロン、AG-024322(Pfizer)、ファスカプリシン、リュビジン(ryuvidine)、プルバラノールA、NU2058、BML-259、SU9516、PD-0332991、P276-00;
熱ショックタンパク質(HSP90)阻害剤、例えば、ゲルダナマイシン、タネスピマイシン、アルベスピマイシン、ラジシコール(radicicol)、デグエリン(degielin)、BIIB021;
マウス二重微小染色体2(MDM2)阻害剤、例えば、cis-イミダゾリン、ベンゾジアゼピンジオン、スピロオキシインドール、イソキノリノン、チオフェン、5-デアザフラビン、トリプタミン;
未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害剤、例えば、アミノピリジン、ジアミノピリミジン、ピリドイソキノリン、ピロロピラゾール、インドロカルバゾール、ピロロピリミジン、ジアニリノピリミジン;
ベンズアミド、フタラジノン、三環式インドール、ベンズイミダゾール、インダゾール、ピロロカルバゾール、フタラジノン、またはイソインドリノンによって例示されるポリ[ADPリボース]ポリメラーゼ(PARP)阻害剤;
白金系薬剤;代謝拮抗剤;BCL-2阻害剤;BTK阻害剤;P13Kδ阻害剤;リツキシマブ、オビヌツズマブ、イブリツモマブチウキセタン、トシツモマブ、もしくベルツズマブなどの抗CD20抗体;またはそれらの組み合わせ;あるいは
ABT-199(ベネトクラクス)、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標)、MABTHERA(登録商標)、ZYTUX(登録商標))、イブルチニブ(IMBRUVICA(登録商標))、イデラリシブ(ZYDELIG(登録商標))、トファシチニブ、またはそれらの組み合わせ
のうちの1種から選択することができる。
【0168】
いくつかの実施形態において、他の化学療法剤は、Cohen et al., “A
clickable inhibitor reveals context-dependent autoactivation of p90 RSK,” Nat Chem Biol. 2007 Mar;3(3): 156-160、及び米国特許第7605241号に記載されているものなどのp90RSK阻害剤である。一態様において、上記p90RSK阻害剤は、デキサメタゾン、メルファラン、ドキソルビシン、ボルテゾミブ、レナリドミド、プレドニゾン、カルムスチン、エトポシド、シスプラチン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、BI-D1870、及びサリドマイドのうちの1種以上である。
【0169】
いくつかの実施形態において、セルデュラチニブ、または薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物は、エソマプラゾール、オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール、デクスランソプラゾール、またはそれらの薬学的に許容される塩などのプロトンポンプ阻害剤と共に投与してもよい。
【0170】
本明細書に記載の、セルデュラチニブと同時投与される上記薬剤の具体的な量は、遊離塩基としての同時投与される上記薬剤の量をいう。ただし、セルデュラチニブと同時投与される上記薬剤の薬学的に許容される塩、共結晶、もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を、記載された量の上記同時投与される薬剤を与える量で投与してもよいことを理解されたい。セルデュラチニブと同時投与される上記薬剤の薬学的に許容される塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、エジシル酸塩、フマル酸塩、ルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、ビス塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ビスメタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ナフタレン二硫酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、ウンデカン酸塩、ハロゲン化水素酸塩(例えば、塩酸塩及び臭化水素酸塩)、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、スルファミン酸塩、マロン酸塩、サリチル酸塩、メチレン-ビス-b-ヒドロキシナフトエ酸塩、ゲンチジン酸塩、イセチオン酸塩、ジ-p-トルオイル酒石酸塩、エタンスルホン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、キナ酸塩などの、無機酸または有機酸に由来するセルデュラチニブと同時投与される上記薬剤の薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0171】
上記同時投与される薬剤またはその塩は、非溶媒和の形態のみならず、水和の形態を含む溶媒和の形態で投与されてもよく、または別の化合物と共結晶を形成していてもよい。「水和物」とは、水分子と溶質の分子またはイオンとの結合によって形成される複合体をいう。「溶媒和物」とは、溶媒分子と溶質の分子またはイオンとの結合によって形成される複合体をいう。上記溶媒は、有機化合物、無機化合物、または両方の混合物であってもよい。溶媒和物は、水和物、半水和物、チャネル型水和物などを包含することを意図する。溶媒のいくつかの例としては、メタノール、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、及び水が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0172】
いくつかの実施形態において、セルデュラチニブと同時投与される上記薬剤(例えば、リツキシマブ)の有効量は、1日当り少なくとも約5mgである。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブと同時投与される上記薬剤の有効量は、少なくとも1日当り約10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、または100mgである。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブと同時投与される上記薬剤の有効量は、投与当り少なくとも約10、20、30、40、または50mgである。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブと同時投与される上記薬剤の有効量は、投与当り少なくとも約15mg、20mg、25mg、30mg、または35mgであり、これが1日2回投与される。
【0173】
いくつかの実施形態において、セルデュラチニブと同時投与される上記薬剤の有効量は、1日当り約100mg以下、95mg以下、90mg以下、85mg以下、80mg以下、または75mg以下である。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブと同時投与される上記薬剤の有効量は、投与当り約90mg以下、80mg以下、70mg以下、60mg以下、55mg以下、または50mg以下である。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブと同時投与される上記薬剤の有効量は、投与当り45mg以下、40mg以下、35mg以下、または30mg以下であり、これが1日2回投与される。
【0174】
いくつかの実施形態において、セルデュラチニブと同時投与される上記薬剤の有効量は、1日当り約10mg~200mg、約10mg~150mg、約25mg~150mg、約25~120mg、30mg~110mg、約50~120mg、約30~80mg、50mg~80mg、約40~50mg、または約80~100mgである。
【0175】
いくつかの実施形態において、セルデュラチニブと同時投与される上記薬剤の日用量は、約30mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、または150mgである。
【0176】
いくつかの実施形態において、約30mg~約80mgの上記薬剤が、1日1回セルデュラチニブと同時投与される。いくつかの実施形態において、上記有効量は、1日1回セルデュラチニブと同時投与される約40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、または70mgの上記薬剤である。
【0177】
いくつかの実施形態において、セルデュラチニブと同時投与される上記薬剤の有効量は、投与当り約15mg~約65mg、約25mg~約50mg、約25mg~約40mg、約30mg~約40mg、または約40mg~約50mgであり、これが1日2回投与される。いくつかの実施形態において、約25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、または60mgの上記薬剤が、1日2回セルデュラチニブと同時投与される。いくつかの実施形態において、約45mgの上記薬剤が、1日2回セルデュラチニブと同時投与される。いくつかの実施形態において、約35mgの上記薬剤が1日2回セルデュラチニブと同時投与される。
【0178】
いくつかの実施形態において、セルデュラチニブと同時投与される上記薬剤の有効量は、約30mg~約90mgの日用量である。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブと同時投与される上記薬剤の有効量は、1日1回または2回投与される、約40mg、約50mg、約60mg、または約70mg~の日用量である。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブと同時投与される上記薬剤の有効量は約35mg、1日2回である。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブと同時投与される上記薬剤の有効量は約30mg、1日2回である。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブと同時投与される上記薬剤の有効量は約25mg、1日2回である。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブと同時投与される上記薬剤の有効量は約20mg、1日2回である。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブと同時投与される上記薬剤の有効量は約30mg、1日2回であり、約25mg、1日2回まで低減される。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブと同時投与される上記薬剤の有効量は約20mg、1日2回までさらに低減される。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブと同時投与される上記薬剤の有効量は約15mg、1日2回までさらに低減される。
【0179】
いくつかの実施形態において、セルデュラチニブと同時投与される上記薬剤の有効量は約0.01~200mg/kgである。いくつかの実施形態において、約0.01及び150mg/kgの薬剤がセルデュラチニブと同時投与されてもよい。他の実施形態において、0.05~100mg/kgの用量のリツキシマブがセルデュラチニブと同時投与されてもよい。上記用量は、期間当りに投与されるリツキシマブの総量として記述される。セルデュラチニブと同時投与される上記薬剤の用量は、約0.1mg~2,000mg/期間、約1~2,000mg/期間、約1~1,000mg/期間、約1~500mg/期間、約10~150mg/期間、約1~100mg/期間、約1~50mg/期間、約5~100mg/期間、約10~125mg/期間、約10~100mg/期間、または約5~200mg/期間であってよい。リツキシマブの用量は、すべて1回で(期間あたり1回)、または数回、例えば上記期間を通して2回、3回、4回、5回、もしくはそれを超える回数で投与されてもよい。いくつかの実施形態において、上記期間は、(約)毎週、(約)2週間毎、(約)3週間毎、(約)4週間毎、(約)1ヶ月毎、(約)2ヶ月毎、(約)3ヶ月毎、(約)4ヶ月毎、(約)5ヶ月毎、(約)6ヶ月毎、(約)7ヶ月毎、(約)8ヶ月毎、(約)9ヶ月毎、(約)10ヶ月毎、(約)11ヶ月毎、(約)毎年、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲である。
【0180】
いくつかの実施形態において、リツキシマブはその添付文書に従って同時投与される。いくつかの実施形態において、リツキシマブは静脈内注射などによる注入によって投与される。いくつかの実施形態において、例えば、非ホジキンリンパ腫(NHL)の患者を治療するためのリツキシマブの有効量は375mg/m2である。いくつかの実施形態において、上記NHLは、再発性または難治性、低悪性度または濾胞性の、CD20陽性B細胞NHLである。いくつかの実施形態において、上記NHLは、例えば第一選択化学療法との併用での前治療を受けていない、濾胞性、CD20陽性の、B細胞NHLである。いくつかの実施形態において、上記患者は、例えば化学療法との併用でのリツキシマブにより完全奏効または部分奏効を達成しており、例えばセルデュラチニブとの併用でのリツキシマブを維持療法に使用してもよい。いくつかの実施形態において、上記NHLは、例えば、第一選択のシクロホスファミド、ビンクリスチン、及びプレドニゾン(CVP)化学療法後の、非進行性(安定を含む)、低悪性度、CD20陽性B細胞NHLである。いくつかの実施形態において、上記NHLは、例えば、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾン(CHOP)または他のアントラサイクリン系化学療法レジメンとの併用による前治療を受けていない、びまん性大細胞型B細胞、CD20陽性NHLである。いくつかの実施形態において、例えば、慢性リンパ性白血病(CLL)の患者を治療するためには、リツキシマブの有効量は、フルダラビン及びシクロホスファミド(FC)との併用で、1回目の周期で375mg/m2、2~6回目の周期で500mg/m2であり、これが28日毎に投与される。いくつかの実施形態において、リツキシマブの有効量は、例えば、イブリツモマブチウキセタンとの併用で、250mg/m2である。いくつかの実施形態において、例えばメトトレキサートとの併用におけるリツキシマブの有効量は、24週間毎にまたは臨床評価に基づいて(ただし16週間毎より早くはない)、2週間の間隔を空けた2回の1000mgの静脈内注入(1過程)である。いくつかの実施形態において、例えば、疾患制御を達成した患者を治療するためには、リツキシマブの有効量は、週に1回、4週間の375mg/m2(例えば、グルオコルチコイドとの併用で)、2週間の間隔を空けた2回の500mgの静脈内注入、その後に続く、臨床評価に基づいた6ヶ月毎の500mgの静脈内注入である。いくつかの実施形態において、リツキシマブの有効量は、グルココルチコイドの漸減過程との併用での、2週間の間隔を空けた2回の1000mgの静脈内注入、次いで、12ヶ月目及びその後の6ヶ月毎のまたは臨床評価に基づいた500mgの静脈内注入、及び再発時の1000mgの静脈内注入、その後の、前回の注入から16週間以降での注入である。
【0181】
いくつかの実施形態において、リツキシマブは、例えば、単回用量バイアル中の、100mg/10mL(10mg/mL)及び500mg/50mL(10mg/mL)溶液の剤形及び強度で投与される。
【0182】
いくつかの実施形態において、リツキシマブは、静脈内注入として375mg/m2の用量で投与される。いくつかの実施形態において、例えば、再発性または難治性、低悪性度または濾胞性、CD20陽性のB細胞NHLの患者を治療するためには、リツキシマブは、週1回で4回または8回投与される。いくつかの実施形態において、例えば、再発性または難治性、低悪性度または濾胞性、CD20陽性のB細胞NHLの患者を治療するためには、リツキシマブは、週1回で4回投与される。いくつかの実施形態において、例えば、前治療を受けていない、濾胞性、CD20陽性のB細胞NHLの患者を治療するためには、リツキシマブは、化学療法の各周期の1日目の投与で、最大で8回投与される。いくつかの実施形態において、完全奏効または部分奏効が達成される場合、リツキシマブの維持療法は、例えば化学療法との併用でのリツキシマブの投与の完了の8週間後に開始される。いくつかの実施形態において、リツキシマブの維持療法は、リツキシマブをセルデュラチニブと共に8週間毎に12回投与することを含む。いくつかの実施形態において、例えば、非進行性、低悪性度、CD20陽性のB細胞NHL(例えば、第一選択CVP化学療法後の)の患者を治療するためには、リツキシマブは、週に1回で4回、これが6ヶ月間隔で最大で16回投与される。いくつかの実施形態において、例えば、びまん性大細胞型B細胞NHLの患者を治療するためには、リツキシマブは、化学療法の各周期の1日目の投与で、最大で8回の注入が行われる。
【0183】
いくつかの実施形態において、例えば、慢性リンパ性白血病(CLL)の患者を治療するためには、リツキシマブは、FC化学療法の開始の前日に375mg/m2の用量で投与され、次いで、2~6回目の周期(28日毎)の1日目に500mg/m2の用量で投与される。
【0184】
いくつかの実施形態において、例えば、NHLの患者を治療するためには、リツキシマブは250mg/m2の用量で投与される。いくつかの実施形態において、リツキシマブは、インジウム-111-(In-111-)Zevalinの投与の4時間前、及びイットリウム-90-(Y-90-)Zevalinの投与の前4時間以内に投与される。いくつかの実施形態において、リツキシマブ及びイン-111-Zevalinは、RITUXAN及びY-90-Zevalinの投与の7~9日前に投与される。
【0185】
いくつかの実施形態において、リツキシマブの有効量は、当該疾患または適応症の治療に対して医師が決定する量である。
【0186】
いくつかの実施形態において、リツキシマブの有効量(例えば、1回目の周期の投与及びそれに続く周期の投与に関して)は、投与当りまたは数回の投与もしくは周期の期間当り、(約)100mg/m2、(約)110mg/m2、(約)120mg/m2、(約)130mg/m2、(約)140mg/m2、(約)150mg/m2、(約)160mg/m2、(約)170mg/m2、(約)180mg/m2、(約)190mg/m2、(約)200mg/m2、210mg/m2、220mg/m2、230mg/m2、240mg/m2、(約)250mg/m2、(約)260mg/m2、(約)270mg/m2、(約)280mg/m2、(約)290mg/m2、(約)300mg/m2、(約)310mg/m2、(約)320mg/m2、(約)330mg/m2、(約)340mg/m2、(約)350mg/m2、(約)360mg/m2、(約)370mg/m2、(約)375mg/m2、(約)380mg/m2、(約)390mg/m2、(約)400mg/m2、(約)410mg/m2、(約)420mg/m2、(約)430mg/m2、(約)440mg/m2、(約)450mg/m2、(約)460mg/m2、(約)470mg/m2、(約)480mg/m2、(約)490mg/m2、(約)500mg/m2、(約)510mg/m2、(約)520mg/m2、(約)530mg/m2、(約)540mg/m2、(約)550mg/m2、(約)560mg/m2、(約)570mg/m2、(約)580mg/m2、(約)590mg/m2、(約)600mg/m2、(約)610mg/m2、(約)620mg/m2、(約)630mg/m2、(約)640mg/m2、(約)650mg/m2、(約)660mg/m2、(約)670mg/m2、(約)680mg/m2、(約)690mg/m2、(約)700mg/m2、(約)710mg/m2、(約)720mg/m2、(約)730mg/m2、(約)740mg/m2、(約)750mg/m2、(約)760mg/m2、(約)770mg/m2、(約)780mg/m2、(約)790mg/m2、(約)800mg/m2、(約)810mg/m2、(約)820mg/m2、(約)830mg/m2、(約)840mg/m2、(約)850mg/m2、(約)860mg/m2、(約)870mg/m2、(約)880mg/m2、(約)890mg/m2、(約)900mg/m2、(約)910mg/m2、(約)920mg/m2、(約)930mg/m2、(約)940mg/m2、(約)950mg/m2、(約)960mg/m2、(約)970mg/m2、(約)980mg/m2、(約)990mg/m2、(約)1000mg/m2、あるいは、これらの値の任意の2つの間の数値または範囲である。
【0187】
いくつかの実施形態において、リツキシマブの投与当りの有効量は、3~5週間毎に最大で5~7回投与される約50mg~約1000mgである。いくつかの実施形態において、リツキシマブの有効量は、3~5週間毎に最大で6回投与される約100mg~約500mgである。いくつかの実施形態において、リツキシマブの有効量は、28日毎に最大で6回投与される約100mg~約500mgである。いくつかの実施形態において、リツキシマブの有効量(例えば、1回目の周期の用量及びその後の周期の用量について)は、投与当りまたは数回の投与もしくは周期の期間当り、(約)50mg、(約)100mg、(約)150mg、(約)200mg、(約)250mg、(約)300mg、(約)350mg、(約)400mg、(約)450mg、(約)500mg、(約)550mg、(約)600mg、(約)650mg、(約)700mg、(約)750mg、(約)800mg、(約)850mg、(約)900mg、(約)950mg、(約)1000mg、あるいは、これらの値の任意の2つの間の数値または範囲である。
【0188】
いくつかの実施形態において、リツキシマブの有効量は、週1回で約4回または8回の投与である。いくつかの実施形態において、リツキシマブの有効量は、週1回で約4回の投与である。いくつかの実施形態において、2回の連続する投与の間の期間は、(約)毎日、(約)2日毎、(約)3日毎、(約)4日毎、(約)5日毎、(約)6日毎、(約)毎週、(約)2週間毎、(約)3週間毎、(約)4週間毎、(約)1ヶ月毎、(約)2ヶ月毎、(約)3ヶ月毎、(約)4ヶ月毎、(約)5ヶ月毎、(約)6ヶ月毎、(約)7ヶ月毎、(約)8ヶ月毎、(約)9ヶ月毎、(約)10ヶ月毎、(約)11ヶ月毎、(約)12ヶ月、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲である。いくつかの実施形態において、上記投与回数または周期数は、(約、もしく最大で)2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲である。
【0189】
いくつかの実施形態において、1回目の周期の用量及びその後の周期の用量は同一である。いくつかの実施形態において、1回目の周期の用量及びその後の周期の用量は異なる。
【0190】
いくつかの実施形態において、リツキシマブの有効量は、約2週間の間隔を空けた2回の初期用量及びその後の6ヶ月毎の用量を含む。いくつかの実施形態において、リツキシマブの有効量は、約2週間の間隔を空けた2回の初期用量及びそれに続く12ヶ月目及びその後の6ヶ月毎の用量を含む。いくつかの実施形態において、リツキシマブの有効量は、1回分、2回分、3回分、4回分、5回分、6回分、7回分、8回分、9回分、または10回分などの、数回分の初期用量を含む。いくつかの実施形態において、2回の連続する初期用量の間の間隔は、(約)1日、(約)2日、(約)3日、(約)4日、(約)5日、(約)6日、(約)1週間、(約)2週間、(約)3週間、(約)4週間、(約)5週間、(約)6週間、(約)7週間、(約)8週間、(約)9週間、(約)10週間、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲である。いくつかの実施形態において、その後の用量は、(約)6ヶ月、(約)7ヶ月、(約)8ヶ月、(約)9ヶ月、(約)10ヶ月、(約)11ヶ月、(約)12ヶ月、(約)13ヶ月、(約)14ヶ月、(約)15ヶ月、(約)16ヶ月、(約)17ヶ月、(約)18か月後、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲の後に開始されて投与される。いくつかの実施形態において、上記その後の用量は、(約)1週間毎、(約)2週間毎、(約)3週間毎、(約)4週間毎、(約)5週間毎、(約)6週間毎、(約)7週間毎、(約)8週間毎、(約)9週間毎、(約)10週間毎、(約)11週間毎、(約)12週間毎、(約)13週間毎、(約)14週間毎、(約)15週間毎、(約)16週間毎、(約)17週間毎、(約)18週間毎、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲毎に投与される。いくつかの実施形態において、その後の用量は、(約)1回分、(約)2回分、(約)3回分、(約)4回分、(約)5回分、(約)6回分、(約)7回分、(約)8回分、(約)9回分、(約)10回分、(約)11回分、(約)12回分、(約)13回分、(約)14回分、(約)15回分、(約)16回分、(約)17回分、(約)19回分、(約)19回分、(約)20回分、またはこれら2つの値の間の数もしくは範囲である。
【0191】
いくつかの実施形態において、リツキシマブ(例えば、セルデュラチニブとの併用)が、リツキシマブ製品の終了後約8週間で完全奏効または部分奏効が開始した後の維持に使用される。いくつかの実施形態において、維持に使用されるリツキシマブは8週間毎に12回投与される。いくつかの実施形態において、リツキシマブは、リツキシマブ製品の終了後(約)1週間、(約)2週間、(約)3週間、(約)4週間、(約)5週間、(約)6週間、(約)7週間、(約)8週間、(約)9週間、(約)10週間、(約)11週間、(約)12週間、(約)13週間、(約)14週間、(約)15週間、(約)16週間、(約)17
週間、(約)18週間、(約)19週間、(約)20週間後、またはこれら2つの値の間の
数もしくは範囲の後の完全奏効または部分奏効の後の維持に使用される。いくつかの実施形態において、維持に使用されるリツキシマブは、(約)1週間毎、(約)2週間毎、(約
)3週間毎、(約)4週間毎、(約)5週間毎、(約)6週間毎、(約)7週間毎、(約)8
週間毎、(約)9週間毎、(約)10週間毎、(約)11週間毎、(約)12週間毎、(約)
13週間毎、(約)14週間毎、(約)15週間毎、(約)16週間毎、(約)17週間毎、(約)18週間毎、(約)19週間毎、(約)20週間毎、またはこれら2つの値の間の数
もしくは範囲毎に投与される。いくつかの実施形態において、維持に使用されるリツキシマブは、(約)1回分、(約)2回分、(約)3回分、(約)4回分、(約)5回分、(約)6回分、(約)7回分、(約)8回分、(約)9回分、(約)10回分、(約)11回分、(約)12回分、(約)13回分、(約)14回分、(約)15回分、(約)16回分、(約)17回分、(約)19回分、(約)19回分、(約)20回分、またはこれら2つの値の間の数もしくは範囲で投与される。
【0192】
いくつかの実施形態において、有効量のリツキシマブは、約100mg/10mL~約500mg/50mLでセルデュラチニブと同時投与される。いくつかの実施形態において、有効量のリツキシマブは、約100mg/10mL~約200mg/20mLでセルデュラチニブと同時投与される。いくつかの実施形態において、有効量のリツキシマブは、約200mg/20mL~約300mg/30mLでセルデュラチニブと同時投与される。いくつかの実施形態において、有効量のリツキシマブは、約300mg/30mL~約400mg/40mLでセルデュラチニブと同時投与される。いくつかの実施形態において、有効量のリツキシマブは、約400mg/40mL~約500mg/50mLでセルデュラチニブと同時投与される。
【0193】
いくつかの実施形態において、有効量のリツキシマブは、約5mg/mLの濃度でセルデュラチニブと同時投与される。いくつかの実施形態において、有効量のリツキシマブは、約10mg/mLの濃度でセルデュラチニブと同時投与される。いくつかの実施形態において、有効量のリツキシマブは、約15mg/mLの濃度でセルデュラチニブと同時投与される。いくつかの実施形態において、有効量のリツキシマブは、約5mg/mL~約15mg/mLの濃度でセルデュラチニブと同時投与される。いくつかの実施形態において、有効量のリツキシマブは、約5mg/mL~約10mg/mLの濃度でセルデュラチニブと同時投与される。いくつかの実施形態において、有効量のリツキシマブは、約10mg/mL~約15mg/mLの濃度でセルデュラチニブと同時投与される。いくつかの実施形態において、有効量のリツキシマブは、約15mg/mL~約20mg/mLの濃度で同時投与される。いくつかの実施形態において、有効量のリツキシマブ(または別の薬剤)は、約1mg/mL、2mg/mL、3mg/mL、4mg/mL、5mg/mL、6mg/mL、7mg/mL、8mg/mL、9mg/mL、10mg/mL、11mg/mL、12mg/mL、13mg/mL、14mg/mL、15mg/mL、16mg/mL、17mg/mL、18mg/mL、19mg/mL、20mg/mL、21mg/mL、22mg/mL、23mg/mL、24mg/mL、25mg/mL、26mg/mL、27mg/mL、28mg/mL、29mg/mL、30mg/mL、またはこれらの値の任意の2つの間の数値もしくは範囲の濃度でセルデュラチニブと同時投与される。
【0194】
いくつかの実施形態において、セルデュラチニブ及びセルデュラチニブと同時投与される薬剤(例えば、リツキシマブ)を含む組成物が提供される。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブと同時投与される薬剤とのモル比は、約300:1~約3:1である。いくつかの実施形態において、上記組成物は、セルデュラチニブ及びセルデュラチニブと同時投与される薬剤を、約9:1~約1:9のモル比で含む。いくつかの実施形態において、上記組成物は、セルデュラチニブ及びセルデュラチニブと同時投与される薬剤を、約2:1~約1:2のモル比で含む。いくつかの実施形態において、上記組成物は、セルデュラチニブ及びセルデュラチニブと同時投与される薬剤を、約2:1~約1:5のモル比で含む。いくつかの実施形態において、上記組成物は、セルデュラチニブ及びセルデュラチニブと同時投与される薬剤を、約1:1のモル比で含む。いくつかの実施形態において、上記組成物は、セルデュラチニブ及びセルデュラチニブと同時投与される薬剤を、約1:1、約1:2、約1:9、約2:1、または約9:1のモル比で含む。いくつかの実施形態において、上記組成物は、セルデュラチニブ及びセルデュラチニブと同時投与される薬剤を、(約、少なくとも、もしくは最大で)1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、20:1、30:1、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、100:1、またはこれらの値の任意の2つの間の数値もしくは範囲のモル比で含む。いくつかの実施形態において、上記組成物は、セルデュラチニブ及びセルデュラチニブと同時投与される薬剤を、(約、少なくとも、もしくは最大で)1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:20、1:30、1:40、1:50、1:60、1:70、1:80、1:90、1:100、またはこれらの値の任意の2つの間の数値もしくは範囲のモル比で含む。
【0195】
いくつかの実施形態において、セルデュラチニブと同時投与される薬剤(例えば、リツキシマブ)の有効量は、1回目の周期の用量及びその後の周期の用量を問わず、投与当りまたは数回の投与もしくは周期の期間当り、(約)100mg/m2、(約)110mg/m2、(約)120mg/m2、(約)130mg/m2、(約)140mg/m2、(約)150mg/m2、(約)160mg/m2、(約)170mg/m2、(約)180mg/m2、(約)190mg/m2、(約)200mg/m2、(約)210mg/m2、(約)220mg/m2、(約)230mg/m2、(約)240mg/m2、(約)250mg/m2、(約)260mg/m2、(約)270mg/m2、(約)280mg/m2、(約)290mg/m2、(約)300mg/m2、(約)310mg/m2、(約)320mg/m2、(約)330mg/m2、(約)340mg/m2、(約)350mg/m2、(約)360mg/m2、(約)370mg/m2、(約)375mg/m2、(約)380mg/m2、(約)390mg/m2、(約)400mg/m2、(約)410mg/m2、(約)420mg/m2、(約)430mg/m2、(約)440mg/m2、(約)450mg/m2、(約)460mg/m2、(約)470mg/m2、(約)480mg/m2、(約)490mg/m2、(約)500mg/m2、(約)510mg/m2、(約)520mg/m2、(約)530mg/m2、(約)540mg/m2、(約)550mg/m2、(約)560mg/m2、(約)570mg/m2、(約)580mg/m2、(約)590mg/m2、(約)600mg/m2、(約)610mg/m2、(約)620mg/m2、(約)630mg/m2、(約)640mg/m2、(約)650mg/m2、(約)660mg/m2、(約)670mg/m2、(約)680mg/m2、(約)690mg/m2、(約)700mg/m2、(約)710mg/m2、(約)720mg/m2、(約)730mg/m2、(約)740mg/m2、(約)750mg/m2、(約)760mg/m2、(約)770mg/m2、(約)780mg/m2、(約)790mg/m2、(約)800mg/m2、(約)810mg/m2、(約)820mg/m2、(約)830mg/m2、(約)840mg/m2、(約)850mg/m2、(約)860mg/m2、(約)870mg/m2、(約)880mg/m2、(約)890mg/m2、(約)900mg/m2、(約)910mg/m2、(約)920mg/m2、(約)930mg/m2、(約)940mg/m2、(約)950mg/m2、(約)960mg/m2、(約)970mg/m2、(約)980mg/m2、(約)990mg/m2、(約)1000mg/m2、またはこれらの値の任意の2つの間の数値もしくは範囲である。
【0196】
いくつかの実施形態において、セルデュラチニブと同時投与される薬剤(例えば、リツキシマブ)の有効量は、1回目の周期の用量及びその後の周期の用量を問わず、投与当りまたは数回の投与もしくは周期の期間当り、(約)50mg、(約)100mg、(約)150mg、(約)200mg、(約)250mg、(約)300mg、(約)350mg、(約)400mg、(約)450mg、(約)500mg、(約)550mg、(約)600mg、(約)650mg、(約)700mg、(約)750mg、(約)800mg、(約)850mg、(約)900mg、(約)950mg、1000mg、またはこれらの値の任意の2つの間の数値もしくは範囲である。
【0197】
いくつかの実施形態において、2回の連続する投与の間の期間は、(約)毎日、(約)2日毎、(約)3日毎、(約)4日毎、(約)5日毎、(約)6日毎、(約)毎週、(約)2週間毎、(約)3週間毎、(約)4週間毎、(約)1ヶ月毎、(約)2ヶ月毎、(約)3ヶ月毎、(約)4ヶ月毎、(約)5ヶ月毎、(約)6ヶ月毎、(約)7ヶ月毎、(約)8ヶ月毎、(約)9ヶ月毎、(約)10ヶ月毎、(約)11ヶ月毎、(約)12ヶ月、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲である。いくつかの実施形態において、上記投与回数または周期数は、(約、もしく最大で)2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲である。
【0198】
いくつかの実施形態において、セルデュラチニブと同時投与される薬剤(例えば、リツキシマブ)の有効量は、約1mg/mL、2mg/mL、3mg/mL、4mg/mL、5mg/mL、6mg/mL、7mg/mL、8mg/mL、9mg/mL、10mg/mL、11mg/mL、12mg/mL、13mg/mL、14mg/mL、15mg/mL、16mg/mL、17mg/mL、18mg/mL、19mg/mL、20mg/mL、21mg/mL、22mg/mL、23mg/mL、24mg/mL、25mg/mL、26mg/mL、27mg/mL、28mg/mL、29mg/mL、30mg/mL、またはこれらの値の任意の2つの間の数値もしくは範囲の濃度でセルデュラチニブと同時投与される。
【0199】
いくつかの実施形態において、セルデュラチニブと同時投与される薬剤(例えば、リツキシマブ)は、少なくとも、もしくは最大で、5回、6回、7回、8回、9回、10回、20回、30回、40回、50回、60回、70回、80回、90回、100回、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲で投与される。
【0200】
4.投与及び組成物
セルデュラチニブは、有効量のセルデュラチニブ及び少なくとも1種の薬学的に許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物で投与してもよい。
【0201】
担体の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ラクトース、グルコース、もしくはスクロース、またはある種のデンプンなどのさまざまな糖、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、ポリエチレングリコール、及び生理学的に適合性のある溶媒が挙げられる。生理学的に適合性のある溶媒の例としては、注射用水(WFI)の滅菌溶液、生理食塩水、及びデキストロースが挙げられる。
【0202】
好適な剤形は、一部には、使用目的または、例えば、経口投与、経皮投与、経粘膜投与、吸入、もしくは注射による(非経口)投与などの投与経路に依存する。かかる剤形は、セルデュラチニブを標的細胞に到達させる必要がある。他の因子としては、当技術分野において周知であるが、毒性及び、本化合物または本組成物がその効果を発現するのを遅延させる剤形などの考慮事項が挙げられる。
【0203】
セルデュラチニブは、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、筋肉内投与、経口投与、経粘膜投与、直腸投与、経皮投与、または吸入を含む種々の経路で投与することができる。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブは経口投与によって投与することができる。例えば、経口投与の場合、セルデュラチニブは、カプセル剤、錠剤などの従来の経口剤形、ならびにシロップ剤、エリキシル剤、及び濃縮滴下液剤(concentrated drops)などの液体製剤に製剤化することができる。
【0204】
吸入剤の場合、セルデュラチニブは、乾燥粉末または適宜の溶液、懸濁液、もしくはエアロゾルとして製剤化することができる。粉末剤及び溶液剤は、当技術分野で公知の適宜の添加剤を用いて製剤化することができる。例えば、粉末剤は、ラクトースまたはデンプンなどの適宜の粉末基剤を含んでいてもよく、溶液剤は、プロピレングリコール、滅菌水、エタノール、塩化ナトリウム、及び酸、アルカリ、及び緩衝塩などの他の添加剤を含んでいてもよい。かかる溶液剤または懸濁液剤は、スプレー、ポンプ、噴霧器、または吸入器などを介して吸入することによって投与することができる。セルデュラチニブはまた、他の吸入療法剤、例えば、フルチカゾンプロピオン酸エステル、ベクロメタゾンジプロピオン酸エステル、トリアムシノロンアセトニド、ブデソニド、及びモメタソンフロ酸エステルなどのコルチコステロイド;アルブテロール、サルメテロール、及びホルモテロールなどのベータアゴニスト;臭化イプラトロピウムまたはチオトロピウムなどの抗コリンアゴニスト;トレプロスチニル及びイロプロストなどの血管拡張剤;DNAアーゼなどの酵素;治療用タンパク質;免疫グロブリン抗体;一本鎖もしくは二本鎖DNAまたはRNA、siRNAなどのオリゴヌクレオチド;トブラマイシンなどの抗生物質;ムスカリン受容体アンタゴニスト;ロイコトリエンアンタゴニスト;サイトカインアンタゴニスト;プロテアーゼ阻害剤;クロモリンナトリウム;ネドクリルナトリウム;ならびにクロモグリク酸ナトリウムと併用してもよい。
【0205】
経口使用用の医薬製剤は、例えば、セルデュラチニブを固体賦形剤と混合し、任意選択で得られた混合物を粉砕し、この顆粒の混合物を、所望であれば適宜の助剤を添加した後に加工して、錠剤または糖衣錠のコアを得ることによって、得ることができる。好適な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、及び/またはポリビニルピロリドン(PVP:ポビドン)などの充填剤である。所望であれば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸、もしくはアルギン酸ナトリウムなどのアルギン酸の塩などの崩壊剤を添加してもよい。
【0206】
経口投与に用いることができる製剤としては、ゼラチン製の押嵌め式のカプセル剤(「ゲルキャップ」)、ならびにゼラチン及びグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤から製造される、軟質で密封されたカプセル剤が挙げられる。上記押嵌め式のカプセル剤は、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、及び/またはタルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、ならびに任意選択で安定剤との混合物中の活性成分を含有していてもよい。ソフトカプセルでは、セルデュラチニブは、脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコール(PEG)などの適宜の液体中に溶解または懸濁させてもよい。さらに、安定剤を添加してもよい。
【0207】
経口製剤に代えて、注射(非経口投与)、例えば、筋肉内注射、静脈内注射、腹腔内注射、及び/または皮下注射を用いてもよい。注射の場合、セルデュラチニブは、生理食塩水、ハンクス液、またはリンガー液などの生理学的に適合性のある緩衝液または溶液などの滅菌液体溶液中で製剤化される。さらに、セルデュラチニブは、固体形態に製剤化され、使用直前に再溶解するかまたは懸濁させてもよい。凍結乾燥形態も製造することができる。
【0208】
投与はまた、経粘膜的手段、局所的手段、経皮的手段、または吸入手段によるものであってもよい。経粘膜投与、局所投与、または経皮投与の場合、セルデュラチニブが浸透すべき障壁に対して好適な浸透剤が当該製剤に用いられる。かかる浸透剤としては、当技術分野で一般的に知られているが、例えば、経粘膜投与用には胆汁酸塩及びフシジン酸誘導体が挙げられる。さらに、浸透を促進するために界面活性剤を用いてもよい。経粘膜投与は、例えば、鼻スプレーまたは坐剤(直腸または膣投与)によって行うことができる。
【0209】
局所用組成物は、当技術分野で公知の適宜の担体を選択することにより、油剤、クリーム剤、ローション剤、軟膏などとして製剤化することができる。好適な担体としては、植物油または鉱油、白色ペトロラタム(白色の軟質パラフィン)、分岐鎖油脂、動物性脂肪、及び高分子量アルコール(C12超)が挙げられる。別の実施形態において、上記担体は本有効成分を溶解できるものである。乳化剤、安定剤、保湿剤、及び抗酸化剤、ならびに、所望であれば、着色剤または賦香剤が含まれていてもよい。局所塗布用のクリーム剤は、少量の溶媒(例えば、油)に溶解した活性成分を混合した、鉱油、自己乳化性蜜蝋、及び水の混合物から製剤化される。さらに、経皮的手段による投与は、有効成分及び任意選択で当技術分野において公知の1種以上の担体もしくは希釈剤を含浸した、経皮吸収パッチ剤または包帯などの包帯剤を含んでいてもよい。
【0210】
いくつかの実施形態において、セルデュラチニブ、または薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物は、食物摂取に関して制限なしに経口投与され、例えば、セルデュラチニブは食後または空腹時に投与してもよい。
【実施例0211】
実施例1
再発性/難治性B細胞悪性腫瘍の成人における第1相用量漸増試験において、セルデュラチニブを、1日1回(QD)及び1日2回(BID)のスケジュールを用い、逐次用量漸増コホートに対して経口投与した。慢性リンパ性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)の6名の患者、濾胞性リンパ腫(FL)の13名の患者、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の12名の患者、及びマントル細胞リンパ腫(MCL)の6名の患者から繰り返し撮像したCTスキャンを得た。有意な臨床反応が観測されたCLL/SLL及びFLの患者において、腫瘍反応とPDマーカーとの相関性を判定した。
【0212】
セルデュラチニブを、逐次用量コホート(sequential dose cohorts)に用量レベルを漸増させながら、最大耐用量(MTD)を確認するまで投与した。開始用量レベルは、28日間(周期1)、15mg PO QDであった(但し、単回投与の薬物動態学(PK)評価を実施した周期1の2日目及び3日目を除く)。セルデュラチニブの忍容性が良好である場合、患者は治験責任医師の裁量で、中止の判定基準が満たされるまで治療を受け続けた。
【0213】
薬力学的アッセイ用試薬
細胞シグナル伝達事象を誘導するために、以下の試薬を調達した。ヤギ抗ヒトIgD(IgG画分;Bethyl Laboratories Inc., Montgome
ry, TX)、ロバ抗ヒトIgM F(ab)’2(Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA)、及び組換えヒトIL-2、IL-4、IL-6、及びGM-CSF(R&D Systems, Minneapolis, MN)。Lyse/Fix緩衝液及びBD FACS/Lyse緩衝液(BD Biosciences, San Jose, CA)を使用して、それぞれ細胞内及び表面での抗体染色用の全血を調製した。細胞系譜は、フローサイトメトリーにより、抗体、すなわち、マウス抗ヒトCD3 APC-Cy7及びAlexafluor PE-CF594コンジュゲート、CD5 Alexafluor 700、CD14 APC、CD16 APC-Cy7、CD19 FITC及びPerCPコンジュゲート、CD20
PE-Cy7、ならびにCD56 FITC(BD Biosciences)を用いることによって識別した。細胞内リン酸化事象は、ウサギ抗ヒトpSYK Y525/526 PE及びpERK Y204 APC(Cell Signaling Technologies, Danvers, MA)、ならびにマウス抗ヒトpAKT S473 PE-CF594、pSTAT3 Y705 PE、pSTAT5 Y695PE、及びpSTAT6 Y641 PEコンジュゲート(BD Biosciences)を使用して検出した。CLL表面の表現型は、マウス抗ヒトCD69 PE、CD86 PE-CF594、CD5 Alexafluor 700、及びCXCR4 PerCP(BD Biosciences)に結合した細胞系譜マーカーを用いて監視した。
【0214】
生体分析、薬物動態学、及び薬力学
総セルデュラチニブ血漿濃度を測定するために、1日目の投与前ならびに投与の0.5、1、2、3、4、6、8、及び12時間後;8日目の投与前及び投与の2時間後;15日目の投与前;ならびに28日目(1回目の治療周期の終了日)の投与前及び投与の0.5、1、2、3、4、6、8、及び12時間後に、K2EDTA上に血液試料を採取した。ヒト血漿中のセルデュラチニブ濃度の測定用の液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)法は、Alturas Analytics, Inc.(Moscow, ID)が開発及び検証を行った。血漿PK解析法は、Coffey, G., et al., The novel kinase inhibitor PRT062070 (Cerdulatinib) demonstrates efficacy in models of autoimmunity and B-cell cancer. J Pharmacol Exp Ther, 2014. 351(3): p. 538-48に記載されている。クロマトグラフィーによる分離は、Phenomenex Synergi Polar-RPカラム(50×2.0mm、4μm)(Phenomenex, Torrance, CA, USA)上で行った。MS/MS分析は、TurboSprayイオン源を備えたSciex API-4000トリプル四重極質量分析計(Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)を使用して実施した。m/z 394→360のセルデュラチニブの生成イオンのピーク面積を、m/z 397→363の内部標準の生成イオンのピーク面積に対して測定した。アッセイ内精度(CV(%))及び正確度(バイアス(%))はそれぞれ0.8%~4.5%内及び-10.1%~7.8%内であり、アッセイ間精度(CV(%))及び正確度(バイアス(%))はそれぞれ2.0%~3.8%内及び-7.3%~6.0%内であった。
【0215】
PD評価のために、1日目の投与前及び再度投与の0.5、1、2、及び4時間後;8日目の投与前及び投与の2時間後;ならびに28日目の投与前に、リチウム-ヘパリンvacutainer管中に経時的な血液試料を採取した。1日目及び8日目のPD試料を使用して複数のアッセイを実施した。100μLの全血を2μLの抗ヒトIgD(IgG画分)及び10μgの抗ヒトIgMで、37℃にて10分間刺激し、pSYK Y525/526、pAKT S473、及びpERK Y204の誘導を測定することにより、投与前及び投与後に全血中のSYK媒介BCRシグナル伝達を測定した。同様に、全血を10ng/mLのIL-2(JAK1/3依存性)、IL-4(JAK1/3依存性)、IL-6(JAK1/TYK2依存性)、またはGM-CSF(JAK2依存性)で20分間刺激し、それぞれ、T細胞及びNK細胞におけるpSTAT5 Y694の誘導、B細胞、T細胞、NK細胞、及び単球におけるpSTAT6 Y641の誘導、単球、B細胞、及びT細胞におけるpSTAT3 Y705の誘導、ならびに単球におけるpSTAT5 Y694の誘導を測定した。これらのアッセイの技術的な詳細は、Coffey,
G., et al., J Pharmacol Exp Ther, 2014.
351(3): p. 538-48に記載されていた。CLL患者由来の血液試料のみを用いて、1日目及び28日目の投与前の腫瘍細胞表面のCD5、CD69、CD86、及びCXCR4の発現を監視した。推奨量の抗体を100μLの全血に直接適用し、室温で1時間インキュベートした。その後、4mLのBD Lyse/Fix試薬をこの血液に添加して赤血球を溶解し、残りの白血球を固定化し、その後洗浄及びFACS分析を行った。各アッセイについて、LSR II装置(BD Bioscience, San Jose, CA)を使用してデータを収集し、Flowjoソフトウェア(Flowjo LLC, Ashland, OR)を用いて解析した。データを、1日目の投与前の各パラメータの誘導に対して正規化し、投与後の阻害率を得た。
【0216】
炎症及び免疫機能のタンパク質マーカーの変化を測定するために、1、8、及び28日目の投与前に、血清を単離するための全血を採取した。血清試料を分離直後にドライアイス上で急速冷凍し、-80℃で保存した。試料を、多重化Luminexに基づく技術(Myriad RBM, Austin, TX)を用い、同社のImmunoMAP(40検体)及びInflammationMAP(45検体)プラットフォームを利用して分析した。健康なドナー由来の血清を対照として用いた。
【0217】
ベースラインでのCLL患者由来の末梢血B細胞を、RosetteSep B細胞単離キットを用い、製造元のプロトコル(Stem Cell Technologies, Vancouver, Canada)に従って単離した。細胞をリン酸緩衝生理食塩水で2回洗浄し、ペレットとしてドライアイス上で急速冷凍した。細胞ペレットを、ホルマリンで固定化し、パラフィン中に包埋したアーカイブ腫瘍切片と共に、the University of Chicago Medical CenterのDepartment of Genomic and Molecular Pathologyに送付し、ここで標準的な方法を使用してDNAを単離し、Hi-Seq2500を使用して次世代シーケンシング(NGS)に供した。Kadri, S., et al.,
Clinical Validation of a Next-Generation Sequencing Genomic Oncology Panel via Cross-Platform Benchmarking against Established Amplicon Sequencing Assays. J Mol Diagn, 2017. 19(1): p. 43-56を参照されたい。
【0218】
統計学的解析
統計言語R及びアクセサリパッケージggplot2(Wickham, H., Elegant Graphics for Data Analysis. 2016:
Springer-Verlag.)及びdrc (Ritz, C., et al., Dose-Response Analysis Using R. PLoS One, 2015. 10(12): p. e0146021)を使用してデータの解析を行った。細胞シグナル伝達アッセイについては、受容体誘導リン酸化事象の平均蛍光強度(MFI)を投与前の受容体誘導MFIのそれに正規化することによって阻害率を測定した。得られた相対的な活性を、上限及び下限を100%及び0%に設定した3パラメータ対数ロジスティック関数への非線形回帰によって分析した。血清中の免疫及び炎症マーカーの解析については、さまざまな濃度単位を共通の尺度pg/mLに変換した。検出限界未満及び検出限界を超える値は、それぞれ検出限界の半値及び上限に置き換えた。欠落した値については、当該治療群の各マーカーの中央値を入力した。すべての周期(周期1の1日目、周期1の8日目、及び周期2の1日目)における、健常者と患者の血清マーカーの間の統計的に有意な差を、対応のあるt検定によって検出した。Rにおいて実施される線形弁別解析を用いて、健常者及び患者の血清におけるバイオマーカーの一覧の発現の次元削減を行った。バイオマーカー及び腫瘍反応については、治療後のバイオマーカーの低下を治療前の当該バイオマーカーに正規化し、治療後の最小腫瘍面積と治療前の腫瘍面積の比を表す最大腫瘍反応(増殖または縮小)と相関付けた。最大腫瘍反応と特定のバイオマーカーの変化との間の関係の有意性は、スピアマンの順位相関及びp値を用いて評価した。
【0219】
定常状態のC
max及びAUCは腫瘍反応に明確な影響を与えないことが留意されたが、予備的な分析において、定常状態のC
min(SSC
min)が腫瘍反応に影響を及ぼすことが示唆された。用量漸増試験により、最大1μMのSSC
minが十分に忍容されることが明らかになった。CLL/SLL患者のほとんどは低用量コホートに属し、0.004~0.325μMのSSC
minを達成した(
図1)。この曝露において、5名中3名の患者が50%を超えるリンパ節の縮小を達成した。より高い曝露を達成した1名のCLL患者は、イブルチニブによる治療において侵攻性の再発が起きた後に研究に参加し、セルデュラチニブに反応しなかった。FL患者はセルデュラチニブに対して異なる反応を示すように思われ、0.729~1.219μMの範囲のSSC
minでの曝露において腫瘍反応がより明白であった(
図1)。このより高い曝露範囲では、6名の患者のうちの3名が部分奏効を達成した(形質転換FLの患者(グレード3B)である1名を含む)一方で、SSC
minがより低い場合には、2例の安定及び1例の進行という結果となった。
【0220】
腫瘍反応とSYK/JAK阻害との関係
さまざまな全血アッセイを用いて、患者に経口投与した後の標的阻害の効力及び選択性を測定した。BCR誘導SYK自己リン酸化(pSYK Y525/526)及びERK(pERK Y204)及びAKT(pAKT S473)への下流シグナル制御の高レベルの阻害が、忍容される曝露において観測された。同様に、IL-2、IL-4、及びIL-6シグナル伝達(JAK1、JAK3、及びTYK2依存性)が濃度依存的な形態で強力に阻害された。本発明者らは、JAKファミリー内での特異性を実証するために、患者の試料に対して更にGM-CSF刺激を実施し、これにより、JAK2依存性のSTAT5リン酸化が誘導される。セルデュラチニブは、前臨床データと一致して、SYK及びJAK2を除いたJAKファミリーメンバーの強力な阻害を示した。PMAに媒介されるB細胞pERK Y204の阻害は観測されず、これも作用の特異性を示している。
【0221】
実施したすべてのアッセイについてPK/PDの関係性を評価して、IC
50を見積もった。BCRシグナル伝達の測定値は、0.33~0.73μMの範囲のIC
50で阻害されていた。JAK/STATシグナル伝達の測定値は、細胞系譜に応じて0.19~1.11μMの範囲のIC
50で阻害されていた。全血アッセイにおける腫瘍容積の最大変化率とSYK及びJAKのシグナル伝達経路の阻害率との関係を
図2に示す。BCR誘導SYK自己リン酸化(pSYK Y525/526)の阻害は、Rが-0.79(p=0.02)で、腫瘍反応と有意に相関していた。pSYK Y525/526が50%を超えて阻害された5名の患者のうち4名が部分奏効を達成した。B細胞及び単球(データを組み合わせた)IL-4の阻害も腫瘍反応と有意に相関した(Rは-0.61;p=0.004)。ただし、高レベルでIL-4が阻害された数名の患者においては、腫瘍の大きさの減少はわずかであった。このことはT細胞IL-2シグナル伝達の阻害でも観測され、50%を超える当該経路の阻害が達成された数名の患者の腫瘍反応はわずかではあったが、上記阻害は腫瘍反応と有意に相関していた(Rは-0.53;p=0.05)。IL-6シグナル伝達の阻害と腫瘍反応の間に関連性はなかった。
【0222】
両方の患者群において、ベースラインにおいては高かったが、セルデュラチニブの影響を受けなかった血清マーカーは、HCC4、IL18、及びMIGであった。さらに、CLL/SLL患者のみについては、健康な対照と比較して、ベースラインにおいて、トロンボスポンジン、BDNF、DKK1、MPO(ミエロペルオキシダーゼ)、CD40、RANTES、MMP9、及びENA78が有意に低かった。これらのうち、MPO及びCD40の血清レベルはセルデュラチニブによる治療により正常化した。FL患者のみについては、CD40及びBDNFが、健常者と比較して、ベースラインにおいて低く、後者はセルデュラチニブによる治療により正常化した。
【0223】
侵攻性リンパ腫(DLBCL/MCL)において、血清炎症マーカーの限定的な阻害が観測された。
【0224】
次に、周期2の1日目(C2D1)において、腫瘍反応は炎症の血清マーカーの阻害率と関連性があった。CLL/SLL患者の腫瘍反応と血清CRP及びIP10の低下との間に有意な相関関係が観測された(
図3)。FL患者においては、腫瘍反応とMIR3β、MDC、IP10、β2M、及びAPRILの阻害との間に有意な相関性が存在した(
図4)。これらのタンパク質のベースライン血清濃度からは、治療に対する腫瘍反応が生じることは予測されなかった。これらのデータは、セルデュラチニブが全身性炎症を調節することができることを示しており、この全身性炎症は、いくつかのタンパク質に関して腫瘍反応と関連性があった。
【0225】
炎症のマーカーと腫瘍反応との関係
がん患者は多くの場合、血清タンパク質プロファイリングによって検出することができる根底にある炎症を呈する。これを評価し、全身性炎症に対するセルデュラチニブの効果を判定するために、患者から採取した連続的な血清試料の、炎症及び一般的な免疫機能に関連する血清タンパク質を分析した。90種のタンパク質の血清濃度を測定し、そのうちの31種が一貫して検出限界を下回っていた。
図5A及び
図5Bは、測定が可能であった残りの59種のタンパク質の分析を示している。ベースラインにおいては、CLL/SLL患者及びFL患者の炎症プロファイルはかなり異なっており、クラスター分析によって互いに及び健康な対照と区別することができ、これによりデータの妥当性に関する信頼性を得た。
【0226】
CLL/SLL患者及びFL患者の両方で、ベースライン(周期1の1日目;C1D1)において有意に高かった共通の血清マーカーは、vWF、MIR3β、CRP、HCC4、β2M、VCAM1、IL18、TNFR2、IP10、及びMIGであった(
図5A及び5B)。周期1の8日目(C1D8)及び周期2の1日目(C2D1)までに、これらのマーカーの数種において、健常者と比較して有意差がなくなり、セルデュラチニブによる治療によって炎症が正常化をしたことを示した。ほとんどの場合、炎症の血清マーカーの低下は、セルデュラチニブによる治療の最初の8日以内、周期1の8日目(C1D8)までに生じた。セルデュラチニブにより、CLL/SLL患者及びFL患者の両方において、MIR3β、CRP、及びVCAM1が有意に低下した。
【0227】
臨床反応
血中の絶対リンパ球数(ALC)の治療関連の増加が、CLL/SLL患者及びFL患者の両方で生じた(
図6A及び6B)。セルデュラチニブによる治療を受けた6名のCLL/SLL患者のうち、5名がALCを監視するのに十分な期間薬物を服用し続け、ALCの治療前と比較した上昇の倍率は0.3~10であった。これらの患者のうちの2名について、腫瘍細胞表面活性化のマーカー及びホーミングマーカーの治療関連の変化をさらに評価した(
図7A及び7B)。経時的なALCのプロット(
図6A及び6B)に示すように、治療の2回目の周期の開始(周期2の1日目;C2D1)までに、腫瘍細胞の末梢血中へのかなりの流動化があった。治療前(周期1の1日目;C1D1)に行い、周期2の1日目(C2D1)に再度行ったこれらの細胞のFACS分析により、表面活性化マーカーCD69及びCD86の発現低下、ならびにCD5発現の低下(BCRシグナル伝達の負の調節因子)及びCXCR4発現の亢進(リンパ組織への細胞ホーミングに関与)が明らかになった。これらのデータは、セルデュラチニブが腫瘍細胞を末梢中へと流動化し、かつ腫瘍細胞が二次リンパ器官に戻るのを防止することを示唆している。
【0228】
遺伝子異常を、1,212種のがん関連遺伝子のパネルであるOncoPlusを用いた次世代DNAシーケンシング(Kadri, S., et al., Clinical Validation of a Next-Generation Sequencing Genomic Oncology Panel via Cross-Platform Benchmarking against Established
Amplicon Sequencing Assays. J Mol Diagn, 2017. 19(1): p. 43-56)によって監視した。セルデュラチニブを投与する前の6名のCLL患者の末梢血から新たに採取した腫瘍試料、ならびに4名のFL患者及び1名のMCL患者由来のアーカイブ腫瘍生検試料を入手した。観測された変異の一覧を表3に詳述する。
【表3-1】
【表3-2】
【0229】
NOTCH1、ATM、TP53、及びKRASに変異を有するCLL患者において臨床活性が観測された。奏効のあった患者の1名は、TP53遺伝子座を含む17pの欠失を有していた。重要なことに、セルデュラチニブによる治療の1回目の周期内で進行したイブルチニブ再発CLLの2名の患者は、特有の3種の共通する変異、すなわち、TP53、EP300、及びBTKC481Sを共有していた。FLにおける遺伝子の相関性はより限定的であり、4名の患者に関するデータがあり、そのうち3名においては治療の最良の奏効として安定が得られ、1名は進行が生じた。曝露は第2相の用量によって得られる曝露(30mg BID、SSCminが約0.8μM)を十分に下回っているが、2名の、当該患者に関する遺伝情報が存在した、最良の奏効のあった患者は、ZMYM3、KMT2D、FAT4、BCL2、BCL6、及びSTAT6に変異を有していた。最後に、免疫組織化学によってMYC、BCL2、及びBCL6の発現の増加を示した形質転換FLの患者(「トリプルヒット」リンパ腫)において、強い臨床活性が観測された。
【0230】
FLの患者は、曝露の持続期間の中央値が、CLL/SLL及びaNHL(それぞれ11.2週間及び7.9週間)と比較して、最大の33.9週間であった。投与を受けた各患者に関するセルデュラチニブの継続時間を
図8に示す。
【0231】
BCRに対してより遠位のリン酸化事象、すなわちpERK Y204及びpAKT S473は、SYK Y525/526自己リン酸化部位と比較してより強力に阻害されると思われ、これはおそらくシグナル伝達経路が遮断されるSYK阻害の閾値を反映している。BCRシグナル伝達に対するセルデュラチニブのIC50は、ERK及びAKTの信頼区間の下限及び上限を反映して、経口投与後に0.17~0.74μMの範囲にあると推定された。B細胞におけるJAK/STAT経路の活性化を監視するために実施した2種のアッセイは、それぞれIL-4及びIL-6誘導pSTAT6 Y641及びpSTAT3 Y705であった。IL-4シグナル伝達の阻害は、平均IC50が1.08μM(CI:0.36~1.79μM)であり、患者間でかなり異なっていた。IL-6シグナル伝達は、平均IC50が0.22μM(CI:0.14-0.61)であり、患者全体を通してより一貫した効力で阻害が起こった。重要なことに、BCR媒介SYK Y525/526及びIL-4媒介pSTAT6 Y641の阻害は、どちらも腫瘍反応と有意に相関していた。これらの相関性は、提唱するセルデュラチニブの抗腫瘍活性の機序を支持している。
【0232】
上記用量漸増試験の間、ほとんどのSYK及びJAKシグナル伝達アッセイの完全な阻害が、忍容される曝露において達成可能であった。30mg、1日2回の選択した第2相の用量は約0.8μMのSSCminを目標とし、このSSCminは1日を通してほとんどの全血アッセイでSYK及びJAKの>50%の阻害を維持すると予想される。末梢血中で測定される曝露のピークとトラフの比は、患者においておおよそ2:1であり、このことは、上記第2相の用量が、1日を通してSYK/JAKシグナル伝達網のほぼ完全な阻害を達成することになることを示している。ただし、実際の腫瘍微小環境における曝露及び標的の阻害の程度は不明であり、したがって本発明者らが全血アッセイから推定した値よりも高いまたは低い場合があり得る。
【0233】
この治験に登録した患者は、さまざまな程度の炎症を示していた。炎症反応の性質は、疾患サブグループと健康で正常な被験者の間で十分に異なっており、その結果、クラスター解析によってそれらを区別することができた。腫瘍に対する免疫反応が機能しなかったことによって、現在腫瘍の増殖及び生存を支援している炎症環境が生じたと想定される場合には、これらの炎症シグナルを抑制することによって、腫瘍にとっての悪影響を与える可能性がある。セルデュラチニブは迅速(治療の第1週以内に)かつ有意に、数種の炎症のタンパク質マーカーの血清濃度を低下させた。さらに、治療の時間と共にこれらの血清タンパク質の数種が減少することは、腫瘍反応と有意に相関していた。FLにおいては、これらのタンパク質は、APRIL、β2M、IP10、MDC、及びMIR3βであった。これらのデータは、セルデュラチニブが抗腫瘍活性を発現する1つの機序が、腫瘍微小環境の組織化に関与する重要なシグナルの破壊によるものであることを示唆している。
【0234】
治療前に全血から単離した循環CLL腫瘍に加えて、4名のFL患者及び1名のMCL患者由来のホルマリン固定化アーカイブ腫瘍切片からもDNAを調製し、次世代シーケンシングに供した。この限られたデータセットから、薬理ゲノミクス上の関係性に対するヒントが得られた。セルデュラチニブが奏効しなかった2名のCLL患者は、治験への参加の前に、イブルチニブによる治療において再発があり、進行を呈していた。これらの患者は両方とも、EP300(一方の患者はSer697Arg、他方の患者はCys1247Phe)、TP53(一方はGlu285Lys、他方はArg273Cys)、及びBTK(両方共Cys48lSer)にミスセンス変異を有していた。興味深いことに、ベンダムスチン/リツキシマブによる治療における進行、イブルチニブによる治療における進行、及び最後の3種の治療法としてのR-CHOPによる4か月未満の奏効を含む、5種の前治療の後に再発した1名のFLの患者は、STAT二量体化ドメイン中に含まれるSTAT6(Ser86Ala)に対する新規の変異を含んでいた。この患者は、0.32~0.38μMのSSCmin~SSCmaxのセルデュラチニブ血清濃度を達成し、この血清濃度は第II相の曝露よりもかなり低いが、それでも6ヶ月を超える奏効の持続期間で、腫瘍容積の20%の減少を示した。最大のリンパ節の縮小があった3名のCLL患者に関連するさらなる変異は、NFkB2の成分であるREL(Ile354Thr)、DNAのメチル化状態を調節するジオキシゲナーゼであるTET2(Met66Leu)、NFkBの阻害剤であるA20(Glnl50Arg)、及びHIST1H1E(Ala47Val)であった。
【0235】
要約すると、第1相用量漸増試験のデータは、忍容性が高く、SYK及びJAKシグナル伝達経路の高レベルでの阻害につながる薬物レベルを達成する第2相の用量を特定し、かつ抗腫瘍活性の証拠を示した。CLL/SLL及びFLの患者におけるセルデュラチニブの安全性及び有効性を確立するための第2相試験が進行中である。
【0236】
実施例2
この検討は、再発性/難治性(r/r)B細胞及びT細胞リンパ腫の患者における、30mg BIDで経口投与されたセルデュラチニブの安全性ならびに有効性を確認することを意図していた。用量の低減は最低15mg BIDまで許容された。奏効はLugano分類の判定基準によって評価した。
【0237】
99名の患者が登録した(FL:36名、CLL/SLL:28名、PTCL:18名、辺縁帯リンパ腫:8名、侵攻性:5名、ワルデンストレームマクログロブリン血症:4名)(表4)。年齢の中央値は68歳(42~93歳)であり、前治療の中央値は3種(1~13種)である(表5)。30名の患者が、BTK阻害剤、PI3K阻害剤、またはBCL-2阻害剤による前治療を受けていた。グレードを問わず最も一般的なAEは、下痢(42%)、倦怠感(36%)、及び吐き気(32%)である。5%を超える患者に発生するグレード3以上のAEは、好中球減少(18%)、リパーゼ増加(15%)、肺炎(12%)、下痢(10%)、及び倦怠感(7%)である。5名の患者が治験薬に関連すると考えられるグレード5の感染症を経験している(CLLコホートの5名中3名)。目標PK範囲は、平均SSCminが約0.8μMで達成されている。
【0238】
CLL/SLLにおいて61%、FLにおいて49%、及びPTCLにおいて47%のORR(15名の患者中、5名のCR、2名のPR)が見られた(表6)。最初のPTCLの患者はCRを達成し、11か月で服薬している。奏効は概して2周期の治療後に生じた。持続性のあるPRが、BTK阻害剤による治療において再発が起きた患者(CLL:5ヶ月以上、WM:7ヶ月以上、FL:12ヶ月)、ベネトクラクスによる治療において再発が起きた患者(SLL:18ヶ月以上)、及びテナリシブによる治療において再発が起きた患者(PTCL:3ヶ月以上)において生じている。更新されたPK/PD、安全性、及び有効性が提示される予定である。
【0239】
患者のうちの18名は再発性/難治性PTCLの患者であり、該患者には、PTCL-NOS(7名)、AITL(6名)、ALCL(2名)、HSTCL(1名)、ガンマ-デルタTCL(1名)、及びEITL(1名)が含まれ、中央値の年齢は70歳[48~84歳]、28%が過去に移植を受けており、44%が最後に受けた治療に対して抵抗性である。11名の患者の臨床反応を評価し、3名が評価前に試験中止となり(2名は進行により、1名は同意を撤回)、4名の患者はまだ評価を受けていない。7名の患者において奏効が得られている(ORR 47%)。これらのうち、5名が2周期後にCRを達成し、2名がPRを、2名がSDを達成した。奏効の大部分はPTCL-NOS及びAITLで観測された。
【0240】
PTCLでのセルデュラチニブの奏効の持続性はまだ保留中であるが、奏効を得た最初の2名の患者(両方共CR)は、それぞれ10ヶ月及び6ヶ月の奏効持続期間(それぞれ12ヶ月及び8ヶ月の治療期間に相当)で現在も服薬している。CRを得た1名の患者は、同種移植に回され、周期2の後に打ち切りとなっていた。更に別の患者は標的病変の完全寛解を達成したが、新たな病変のために治療を中止した。
【0241】
重要なことに、CR及びPRは、CHOP、ブレンツキシマブ+リツキシマブ、リツキシマブ+CHOP、ゲムシタビン+オキシプラチン、ゲムシタビン、高用量ステロイド、レナリドミド、EPOCH、BEAM、BEAM/R-CHEP、ABVD、イキサゾミブ、ボスチニブ、フェンレチニド、プララトレキサート、ロミデプシン、ベリノスタット、及び治験中のPI3K阻害剤であるRP-6530を含む複数の種類の治療が奏効しなかった患者において生じた。セルデュラチニブによってCRを達成した1名のAITL患者は10種の異なる前治療を受けており、ロミデプシン、ボスチニブ、ブレンツキシマブ、及びゲムシタビン+オキシプラチンによる治療中にPDが生じていた。
【0242】
グレードを問わず最も一般的なAEは、下痢(33%)、倦怠感(22%)、リパーゼ増加(17%)、及び吐き気(17%)であった。2名以上の患者に生じたグレード3以上のAEは、好中球減少(4名)、下痢(3名)、リパーゼ増加(2名)、及び肺炎(2名)である。目標PK範囲は、平均SSC
minが約0.8μMで達成された。
【表4】
【表5-1】
【表5-2】
【表6】
【表7】
【0243】
両者のPTCL-NOSにおける完全奏効には濾胞の関与がある。
【0244】
30mg BIDのセルデュラチニブの用量は、多数の前治療を受けたPTCLを含むr/r B細胞NHL及びr/r T細胞NHLにおいて、良好な忍容性及び有効性を示している。
【0245】
実施例3
CellTiter Glo、EdU、及びカスパーゼ3アッセイを用いて、セルデュラチニブ単独及びベネトクラクスとの併用の効果を調べた。ビヒクル対照と比較した阻害率を測定した。96ウェル黒色プレート中で、FACSベースのアッセイ及びCellTiter Gloを用いてEdUの取り込み及びカスパーゼ3切断を行った。
【0246】
濾胞性リンパ腫(FL)細胞株SU-DHL6、DOHH2、またはWSU-FSCCLを、表示した濃度のベネトクラクスの存在下または非存在下、セルデュラチニブで24~72時間処理し、EdU、CellTiter-Glo、アネキシンV/PI、及びCellTiter-Gloによって分析した。
【0247】
全細胞溶解物を12%ゲル上での免疫ブロットに供し、確立されたプロトコルを使用し、表示した抗体を用いて探索した。4% PFAで細胞を固定化し、50% メタノールで透過処理した後、LSRII上でホスホフローサイトメトリーを実施した。ホスホ抗体染色は室温で1時間行った。
【0248】
セルデュラチニブはFL細胞株中で機能し、ホスホ(p)AKT及びpERKの基底発現、ならびに抗IgM媒介及び抗IgG媒介シグナル伝達を阻害することができた。
【0249】
セルデュラチニブはベネトクラクスと相乗作用して、MCL-1の下方制御によって部分的にCLL細胞のアポトーシスを誘導した。MCL-1の上方制御がベネトクラクスに対する重要な耐性機序であることを仮定すると、これは重要である。
【0250】
用いたアッセイに依らず常に、セルデュラチニブとベネトクラクスの併用によって、これらのFL株におけるより強力な増殖の抑止及びアポトーシスが生じた。
【0251】
セルデュラチニブがFL株におけるBcl-2の発現に与える影響は最小限であったが、Mcl-1の発現低下が生じ、この発現低下はWSU-FSCCL細胞において最も顕著であり、他の株では影響が最小限であった。BimはWSU細胞及びDHL6細胞の両方においてRNAレベルで増加した一方、Mcl-1 RNAレベルは、セルデュラチニブ単独及びベネトクラクスとの併用で変化なしのままであった。
【0252】
ヌードマウスにおける異種移植の検討を行い、セルデュラチニブとベネトクラクスの併用を評価した。ヌードマウスに106個のSU-DHL6細胞を皮下接種した。腫瘍が200mm3に達したところで、マウスを、4群、すなわち、ビヒクル、セルデュラチニブのみ、ベネトクラクスのみ、またはセルデュラチニブとベネトクラクスの併用の群に無作為に分割した。セルデュラチニブとベネトクラクスの併用によって、他の治療と比較して腫瘍増殖が優位に低下した。セルデュラチニブによる治療を受けた腫瘍においては、本発明者らのインビトロでのデータと一致して、Bim発現の増加が観測され、MCL-1に変化はなかった。
【0253】
実施例4
原発性CLLのケースを、イブルチニブ、イデラリシブ、エントスプレチニブ、PRT062607、またはセルデュラチニブ(すべて1μM)の存在下または非存在下で、IL-4/CD40あり/なしで処理した。10nMもしくは100nMのベネトクラクスまたは300nM及び1000nMのS63846を用いて併用試験を実施した。フローサイトメトリーを用い、アネキシンV/PIによって細胞生存率を評価し、免疫ブロットによってタンパク質発現の変化を評価した。
【0254】
CLL細胞をIL-4/CD40Lまたはビヒクル対照で処理し、Bcl-2ファミリータンパク質の発現を調べるために免疫ブロットを実施した。基底のMcl-1、Bcl-XL、及びBimタンパク質は、Bcl-2と比較して比較的低レベルで発現した。ただし、IL-4/CD40Lによる処理により、ビヒクル対照と比較して、Mcl-1及びBcl-XLの実質的かつ有意な増加が誘導された一方で、Bcl-2及びBimの発現は相対的に安定したままであった。イブルチニブ、イデラリシブ、エントスプレチニブ、PRT062607、またはセルデュラチニブで前処理したCLL細胞は、IL-4/CD40Lに誘導されるMcl-1及びBcl-XLの発現を有意に減少させたが、すべての場合において、セルデュラチニブは他のキナーゼ阻害剤と比較して、これらのタンパク質をより強力に阻害した。興味深いことに、すべてのBCRキナーゼ阻害剤による処理によって、当該RNAのレベル及びタンパク質レベルの両方でBim発現が増加した。しかし、同等の薬物濃度では、イデラリシブ及びイブルチニブと比較して、セルデュラチニブによる処理の後にBimがより高いレベルに誘導された。免疫沈降を用いて、BimのBcl-2及びMcl-1タンパク質との共局在を検討した。インビトロでのすべての上記CLLの場合、Bimは主にBcl-2と共局在し、Mcl-1とはより少ない程度でしか共局在しなかった。ベネトクラクス及びS63845は、セルデュラチニブを含むすべてのBCRキナーゼ阻害剤と相乗作用を示し、Bimを置換することにより高いレベルのCLL細胞死を誘導した。
【0255】
実施例5
非盲検、無作為化3期交差試験において、健康な被験者は30mgのセルデュラチニブを経口投与により服用した。3期間の治療において、空腹時に服用し、高脂肪食であり、プロトンポンプ阻害剤(PPI)エソマプラゾールを服用し、治療と治療の間に14日間のウォッシュアウトを設けた。セルデュラチニブによる治療後72時間まで、血液試料を採取した。PKエンドポイントは、曲線下面積(AUC)、最大濃度(Cmax)、Cmaxまでの時間(Tmax)、及び半減期(T1/2)であった。
【0256】
空腹時群、食後群、及びPPI群にはそれぞれ22名、24名、及び21名の被験者が存在した。食後群及びPPI群においては空腹時群と比較して、セルデュラチニブのAUC及びCmaxに対する有意な影響が見られず、T1/2は類似していた(表8)。セルデュラチニブを食後に服用した後では、Tmaxの中央値にわずかな遅延が見られた。
【0257】
セルデュラチニブの食物またはPPIへの曝露が多少増加したが、セルデュラチニブのPKに対する臨床的に関連のある影響は見られなかった。これらの予備検討での結果は、食物またはPPIにかかわらずセルデュラチニブを投与することができることを示唆している。
【表8】
【0258】
実施例6
U-CLL細胞及びM-CLL細胞を、1μM セルデュラチニブの存在下または非存在下で、10ng/mL IL-4のあり/なしで24時間処理した。免疫ブロットを、異なる処理間でのタンパク質の発現に用いた。
図9A及び9Bは、IL-4がGABA1、FOXP1、SOCS1、及びSOCS3のタンパク質発現を有意に増加させる一方で、セルデュラチニブによる治療がこの効果を抑制することを示している。
図10A~10G、
図11A~11G、及び
図12A~12Gは、タンパク質発現の変化の倍率を示す。
【0259】
実施例7
SYK/JAK二重阻害剤セルデュラチニブは、再発性/難治性濾胞性リンパ腫の患者における第2相試験において、単剤として及びリツキシマブとの併用で迅速かつ持続性のある腫瘍反応を示す
背景:
濾胞性B細胞リンパ腫(FL)は最も一般的な緩徐進行性リンパ腫であり、現在、最先端の環境においては、抗CD20モノクローナル抗体を単剤として、または化学療法剤(すなわち、CHOP、ベンダムスチン)との併用で用いて管理されている。現在の疾患病理学の理解に基づき、PI3Kの阻害を介してB細胞抗原受容体シグナル伝達を標的とするイデラリシブ、コパンリシブ、デュベリシブの最近の認可によって強調されている、数種の標的薬剤が再発性/難治性の(r/r)状況で研究されている。最近の進歩にもかかわらず、r/r FLの患者向けの、十分な忍容性がありかつ有効な治療上の選択肢が依然として必要とされている。
【0260】
SYKはBCRシグナル伝達(BTK及びPI3Kの上流)の重要な調節因子であり、エントスプレチニブを使用したその阻害は、B細胞悪性腫瘍における臨床活性を示している(Sharman et al, 2013 and 2014;Walker et
al, 2016)。重要なことに、FLの増殖が、オートクリンまたは微小環境由来のサイトカインによってさらに支援される場合がある。FL腫瘍微小環境の研究は、生存に必須の重要なIL-4シグナル伝達軸を示唆している。FL患者由来のリンパ節では、冒されていないリンパ節と比較して、JAK1/3経路の活性化を介して腫瘍を支援すると思われる高レベルのIL-4を発現する濾胞性ヘルパーT細胞の数が多い(Pangault et al, 2010)。
【0261】
セルデュラチニブは、r/r FLの治療用のSYK及びJAKファミリーキナーゼ(JAK1、JAK3、及びTYK2)の、経口の、可逆的ATP競合性二重阻害剤であり、単剤として使用した場合に、r/r FLにおけるORRが約45%であることを以前報告した。前臨床データはまた、ベネトクラクスとの相乗作用を示唆しており、この相乗作用はおそらくセルデュラチニブ媒介性のMCL-1発現の低下及び腫瘍によるBIMの誘導の結果である。さらに、異種移植研究により、セルデュラチニブがリツキシマブの抗腫瘍活性を妨害しないことが示されており、このことは、これらの2種の薬剤が臨床的に適切に組み合わされて、抗腫瘍活性を高める可能性があることを示唆している。ここで本発明者らは、セルデュラチニブを単剤として評価した第2a相用量拡大試験の最新の結果と、r/r FLにおいてセルデュラチニブをリツキシマブと併用した初期の結果を報告する。
【0262】
方法:これは第2a相用量拡大試験であり、再発性/難治性(r/r)B細胞リンパ腫の患者において、30mg BIDのセルデュラチニブを経口投与して実施した。用量の低減は最低15mg BIDまで許容された。セルデュラチニブによる治療及びセルデュラチニブとリツキシマブの併用による治療の奏効はLugano分類の判定基準によって評価した。
【0263】
合計40名の患者がシングルアームのセルデュラチニブによる治療コホートに登録され、11名の患者がセルデュラチニブとリツキシマブの併用コホートに登録された。年齢の中央値は64歳(42~81歳)であり、前治療の数の中央値は3種(1~8種)であった。50名(98%)の患者が抗CD20治療薬による前治療を受けており、8名(16%)の患者がPI3KまたはBTK阻害剤による前治療を受けていた。グレードを問わず最も一般的な有害事象(AE)は、下痢(47%)、吐き気(37%)、リパーゼ増加(29%)、及びアミラーゼ増加(22%)であった。5%を超える患者に生じるグレード3以上のAEは、リパーゼ増加(24%)、下痢(12%)、アミラーゼ増加(10%)、吐き気(8%)、高血圧(8%)、及び好中球減少(6%)である。グレード3以上の感染症が6名(12%)の患者で発生した。1名の患者には、可能性として治験薬に関連するグレード5の多臓器不全が見られた。アミラーゼ及びリパーゼの上昇は、概括的には腹痛及び膵炎との関連はなかった。併用コホートにおける安全性プロファイルは、単剤のセルデュラチニブで見られるプロファイルと類似しているように思われた。
【0264】
両方のコホートについて観測された奏効としては、シングルアームコホートにおける46%のORR(40名の患者のうち5名のCR及び13名のPR)、ならびに併用コホートにおける67%のORR(6名の患者のうち4名のPR)が含まれていた。奏効は通常2周期の治療後に生じた。シングルアームコホートにおいては奏効が持続し、10名の患者が1年を超えて服薬している。併用コホートのすべての患者が服薬を維持した(最長6ヶ月)。
【0265】
要約すると、第2a相の用量拡大試験のデータは、推奨される、30mg BIDのセルデュラチニブの第2相の用量が、多数の前治療を受けたr/r FLにおいて、忍容性及び有効性が良好であったことを示した。セルデュラチニブのリツキシマブとの併用は忍容性が高く、この併用により評価したすべての患者において腫瘍が縮小し、SDを達成した患者の両方が、最初の再スキャンでベースラインでの標的腫瘍において40%を超える縮小を示した。
【0266】
本明細書では、本開示を広範かつ概括的に説明してきた。概括的な開示の範囲内に入るより狭い種及び下位の概括的な群のそれぞれもまた、本開示の一部を形成する。これには、除外された要素が本明細書に具体的に記載されているかどうかに関わらず、当該の群からいずれかの主題を除去する但し書きまたは否定的な限定を伴う概括的な説明が含まれる。
【0267】
本明細書に記載のすべての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、それぞれが参照により個別に援用されているのと同程度に、それらの全体が明示的に援用される。矛盾がある場合には、定義を含む本明細書が優先される。
【0268】
本開示を上記の実施形態と共に説明してきたが、上述の説明及び例は、例証することを意図しており、本開示の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。本開示の範囲内の他の態様、利点、及び改変は、本開示が関係する当業者には明らかであろう。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
治療を必要とするヒト患者のT細胞リンパ腫の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を前記患者に投与することを含む、前記方法。
(項目2)
前記T細胞リンパ腫が再発性または難治性T細胞リンパ腫である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記T細胞リンパ腫が、T細胞リンパ腫を治療するための薬剤による前治療を受けていない、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記T細胞リンパ腫が、末梢性T細胞リンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫非特定型、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、濾胞性T細胞リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、腸症関連T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫、T細胞白血病、鼻性NK/T細胞リンパ腫、肝脾T細胞リンパ腫、及び皮膚T細胞リンパ腫から選択される、項目1~3のいずれか1項に記載の方法。
(項目5)
前記T細胞リンパ腫が再発性または難治性末梢性T細胞リンパ腫である、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記T細胞リンパ腫が末梢性T細胞リンパ腫非特定型である、項目1~3のいずれか1項に記載の方法。
(項目7)
前記T細胞リンパ腫が血管免疫芽球性リンパ腫である、項目1~3のいずれか1項に記載の方法。
(項目8)
前記T細胞リンパ腫が未分化大細胞リンパ腫である、項目1~3のいずれか1項に記載の方法。
(項目9)
前記T細胞リンパ腫が肝脾T細胞リンパ腫である、項目1~3のいずれか1項に記載の方法。
(項目10)
前記T細胞リンパ腫が腸症関連T細胞リンパ腫である、項目1~3のいずれか1項に記載の方法。
(項目11)
前記T細胞リンパ腫が皮膚T細胞リンパ腫である、項目1~3のいずれか1項に記載の方法。
(項目12)
前記皮膚T細胞リンパ腫が菌状息肉腫またはセザリー症候群である、項目11に記載の方法。
(項目13)
治療を必要とし、FAT4、CCND3、MYOM2、ZMYM3、NOTCH1、KMT2D、TCF3、ARID1A、AXIN1、SYK、JAK1、JAK3、及び/またはTYK2における変異の1種以上を有するヒト患者のリンパ腫の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を前記患者に投与することを含む、前記方法。
(項目14)
治療を必要とし、ZMYM3、KMT2D、FAT4、SYK、JAK1、JAK3、及び/またはTYK2における変異の1種以上を有するヒト患者のリンパ腫の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を前記患者に投与することを含む、前記方法。
(項目15)
前記患者が、BCL2及び/またはBCL6に1種以上の変異をさらに有する、項目13または14に記載の方法。
(項目16)
前記リンパ腫が再発性または難治性リンパ腫である、項目13~15のいずれか1項に記載の方法。
(項目17)
前記リンパ腫が緩徐進行性リンパ腫またはB細胞急性リンパ性白血病である、項目13~16のいずれか1項に記載の方法。
(項目18)
治療を必要とし、NOTCH1、SETD2、SIGLEC10、SPEN、PCLO、TET2、MK167、FAT3、KRAS、REL、HIST1H1E、KMT2C、KMT2D、及び/またはSF3B1における変異の1種以上を有するヒト患者のリンパ腫の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を前記患者に投与することを含む、前記方法。
(項目19)
治療を必要とし、SETD2、SIGLEC10、SPEN、PCLO、TET2、MK167、FAT3、KRAS、REL、HIST1H1E、KMT2C、KMT2D、及び/またはSF3B1における変異の1種以上を有するヒト患者のリンパ腫の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を前記患者に投与することを含む、前記方法。
(項目20)
治療を必要とし、TET2、MK167、FAT3、KRAS、HIST1H1E、KMT2C、KMT2D、及び/またはSF3B1における変異の1種以上を有するヒト患者のリンパ腫の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を前記患者に投与することを含む、前記方法。
(項目21)
前記患者が、SYK、JAK1、JAK2、JAK3、TYK2、TP53、STAT、A20、及び/またはATMにおける変異の1種以上をさらに有する、項目18~20のいずれか1項に記載の方法。
(項目22)
治療を必要とするヒト患者の濾胞性リンパ腫または緩徐進行性非ホジキンリンパ腫(iNHL)の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を前記患者に投与して、前記患者において約0.05μM~約3μMの定常状態最小血漿セルデュラチニブ濃度を達成及び維持することを含む、前記方法。
(項目23)
治療を必要とするヒト患者の慢性リンパ性白血病または小リンパ球性リンパ腫の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を前記患者に投与して、前記患者において約0.05μM~約3μMの定常状態最小血漿セルデュラチニブ濃度を達成及び維持することを含む、前記方法。
(項目24)
治療を必要とするヒト患者のリンパ腫の治療方法であって、前記リンパ腫が進行性慢性リンパ性白血病であり、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を前記患者に投与することを含む、前記方法。
(項目25)
治療を必要とし、Mcl-1、GABA1、FoxP1、SOCS1、及びSOCS3からなる群由来の少なくとも1種のタンパク質を正常なベースラインを超えて発現するヒト患者のリンパ腫の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物を前記患者に投与することを含む、前記方法。
(項目26)
有効量のリツキシマブを前記患者に投与することをさらに含む、項目1~25のいずれか1項に記載の方法。
(項目27)
治療を必要とするヒト患者のリンパ腫の治療方法であって、有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物、及び有効量のリツキシマブを前記患者に投与することを含む、前記方法。
(項目28)
前記リンパ腫が再発性または難治性リンパ腫である、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記リンパ腫がB細胞リンパ腫である、項目27または28に記載の方法。
(項目30)
前記リンパ腫が、非ホジキンリンパ腫(NHL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換濾胞性リンパ腫(tFL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、及びマントル細胞リンパ腫(MCL)からなる群より選択される、項目27~29のいずれか1項に記載の方法。
(項目31)
セルデュラチニブの前記有効量が1日に約10mg~約45mgである、項目1~30のいずれか1項に記載の方法。
(項目32)
セルデュラチニブの前記有効量が約15mg~約30mgを1日に2回である、項目1~31のいずれか1項に記載の方法。
(項目33)
セルデュラチニブの前記有効量が、約15mg、20mg、25mg、または30mgを1日に2回である、項目1~31のいずれか1項に記載の方法。
(項目34)
有効量のセルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩、共結晶、もしくは溶媒和物、及び有効量のリツキシマブを含む、組成物。
(項目35)
セルデュラチニブの前記有効量が約10mg~約45mgである、項目34に記載の組成物。
(項目36)
セルデュラチニブの前記有効量が約15mg~約30mgである、項目34に記載の組成物。