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特開2024-24104プレススルーパック材及びそれを用いたプレススルーパック
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  • 特開-プレススルーパック材及びそれを用いたプレススルーパック 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024104
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】プレススルーパック材及びそれを用いたプレススルーパック
(51)【国際特許分類】
   B65D 75/36 20060101AFI20240214BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240214BHJP
   B65D 77/20 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B65D75/36
B65D65/40 D
B65D77/20 L
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024002034
(22)【出願日】2024-01-10
(62)【分割の表示】P 2019162232の分割
【原出願日】2019-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】399054321
【氏名又は名称】東洋アルミニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 光則
(72)【発明者】
【氏名】東 直樹
(72)【発明者】
【氏名】川島 桂
(72)【発明者】
【氏名】菅野 圭一
(72)【発明者】
【氏名】古田 遼
(72)【発明者】
【氏名】白澤 大計
(72)【発明者】
【氏名】広部 元希
(57)【要約】
【課題】剥離及び模造製造の可能性がある後付けのホログラムシールに頼ることなく、偽造防止標識が付されたプレススルーパック材及びそれを用いたプレススルーパックを提供する。
【解決手段】基材と、前記基材の表面の少なくとも一部に積層された不透明下地層と、前記不透明下地層の表面の少なくとも一部に形成された着色金属顔料を含有する印刷層とが順に積層されており、
前記着色金属顔料は、金属顔料と、前記金属顔料の表面に形成された非晶質酸化珪素膜層と、前記非晶質酸化珪素膜層の表面の一部又は全体に担持された複数の金属粒子とを含有し、
前記不透明下地層の単位面積質量は0.5g/m以上3.0g/m以下であり、
前記印刷層の単位面積質量は1.0g/m以上3.5g/m以下である、
ことを特徴とするプレススルーパック材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の表面の少なくとも一部に積層された不透明下地層と、前記不透明下地層の表面の少なくとも一部に形成された着色金属顔料を含有する印刷層とが順に積層されており、
前記着色金属顔料は、金属顔料と、前記金属顔料の表面に形成された非晶質酸化珪素膜層と、前記非晶質酸化珪素膜層の表面の一部又は全体に担持された複数の金属粒子とを含有し、
前記不透明下地層の単位面積質量は0.5g/m以上3.0g/m以下であり、
前記印刷層の単位面積質量は1.0g/m以上3.5g/m以下である、
ことを特徴とするプレススルーパック材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレススルーパック材及びそれを用いたプレススルーパックに関し、特に偽造防止標識を有するプレススルーパック材及びそれを用いたプレススルーパックに関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤などの薬剤を個別に収容する包装体として、プレススルーパック(PTP、ブリスターパック等と呼称される)が一般的に用いられている。プレススルーパックは、薬剤を収容する収容容器と、これに蓋をする蓋材とから構成されており、収容容器側から薬剤を押して蓋材を突き破って薬剤を取り出す構成が採られている。
【0003】
近年、高価な薬剤や流通量の多い薬剤において、偽造薬剤の流通が懸念されているが、薬剤自体は外観から真偽を区別しにくいために、プレススルーパックに偽造防止のための標識などが付されている。例えば特許文献1には、プレススルーパック蓋材にホログラムシールを付して真偽を区別可能にしたプレススルーパックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-212811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、ホログラムシールを剥がして偽造薬剤の包装に流用したり、ユーザーが真のホログラムシールを十分に知らないことを利用して模造したホログラムシールを偽造薬剤の包装に使用したりする場合があり、偽造薬剤の流通を確実に抑制することは困難である。
【0006】
よって、本発明は、剥離及び模造製造の可能性がある後付けのホログラムシールに頼ることなく、偽造防止標識が付されたプレススルーパック材及びそれを用いたプレススルーパックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の着色金属顔料を含有する印刷層を形成したプレススルーパック材によれば上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
つまり、本発明は、下記のプレススルーパック材及びそれを用いたプレススルーパックに関する。
1.基材と、前記基材の表面の少なくとも一部に積層された不透明下地層と、前記不透明下地層の表面の少なくとも一部に形成された着色金属顔料を含有する印刷層とが順に積層されており、
前記着色金属顔料は、金属顔料と、前記金属顔料の表面に形成された非晶質酸化珪素膜層と、前記非晶質酸化珪素膜層の表面の一部又は全体に担持された複数の金属粒子とを含有し、
前記不透明下地層の単位面積質量は0.5g/m以上3.0g/m以下であり、
前記印刷層の単位面積質量は1.0g/m以上3.5g/m以下である、
ことを特徴とするプレススルーパック材。
2.前記金属粒子が、Cu,Ni及びAgからなる群から選択される少なくとも一種の元素を含有する、上記項1に記載のプレススルーパック材。
3.前記非晶質酸化珪素膜層の厚みが10nm以上1000nm以下である、上記項1又は2に記載のプレススルーパック材。
4.前記金属粒子の平均粒子径が50nm以下である、上記項1~3のいずれかに記載のプレススルーパック材。
5.上記項1~4のいずれかに記載のプレススルーパック材を薬剤の収容容器及び/又は蓋材に用いたプレススルーパック。
【発明の効果】
【0009】
本発明のプレススルーパック材は、偽造防止標識としての特定の着色金属顔料を含有する印刷層が印刷により形成されているために剥離することができず、また印刷層は視認する角度によって大きく呈色が変化(カラーシフト)するため、従来の後付けのホログラムシールに比べて偽造薬剤の流通に対する抑止力が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のプレススルーパックにおける印刷層の一例を示す模式図である。
図2】本発明で用いる着色金属顔料の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のプレススルーパック材及びそれを用いたプレススルーパックについて詳細に説明する。なお、以下の記載において、「A~B」の範囲は、特に断らない限り「A以上B以下」の範囲を意味する。
【0012】
本発明のプレススルーパック材は、基材と、前記基材の表面の少なくとも一部に積層された不透明下地層と、前記不透明下地層の表面の少なくとも一部に形成された着色金属顔料を含有する印刷層とが順に積層されており、
前記着色金属顔料は、金属顔料と、前記金属顔料の表面に形成された非晶質酸化珪素膜層と、前記非晶質酸化珪素膜層の表面の一部又は全体に担持された複数の金属粒子とを含有し、
前記不透明下地層の単位面積質量は0.5g/m以上3.0g/m以下であり、
前記印刷層の単位面積質量は1.0g/m以上3.5g/m以下である、
ことを特徴とする。
【0013】
上記特徴を有する本発明のプレススルーパック材は、偽造防止標識としての特定の着色金属顔料を含有する印刷層が印刷により形成されているために剥離することができず、また印刷層は視認する角度によって大きく呈色が変化(カラーシフト)するため、従来の後付けのホログラムシールに比べて偽造薬剤の流通に対する抑止力が大きい。
【0014】
(プレススルーパック材)
本発明におけるプレススルーパック材とは、プレススルーパックを構成する蓋材及び/又は収容容器である。プレススルーパック材が蓋材である場合には、後述する基材は蓋材を構成するものであって、後述する不透明下地層及び印刷層は、基材の収容容器と接着される面とは反対の面に備えることが好ましい。また、プレススルーパック材が収容容器である場合には、後述する基材は収容容器を構成するものであって、後述する不透明下地層及び印刷層は、基材の蓋材と接着される面とは反対の面に備えることが好ましい。
【0015】
すなわち、薬剤を収容したプレススルーパックの最外層側(収容した薬剤の位置を内側とした場合の一方及び/又は他方の外側)に不透明下地層と印刷層とが形成されていることにより、目視でプレススルーパックの真贋を確認することができる。特に収容容器側に
不透明下地層と印刷層とが形成されている場合には、薬剤を収容するポケットには不透明下地層と印刷層を設けず、その周囲のフランジ部に不透明下地層と印刷層とを設けることが好ましい。
【0016】
(基 材)
本発明において基材とは、プレススルーパック材のベースとなる材料である。
【0017】
本発明に用いる基材は、公知のプレススルーパック蓋材及び/又はプレススルーパック収容容器で使用されている材料を採用することができる。例えば、アルミニウム箔、銅箔、金箔、銀箔等の金属箔、紙、合成紙等の紙類、ナイロン、ポリエステル系フィルム、ポリオレフィン系フィルム等の樹脂フィルム等を単体又は2種以上の複合体で使用できる。また、前記の樹脂フィルムとして、着色樹脂フィルム等を用いることもできる。また、市販品のように、金属箔又は樹脂フィルムに予め種々の着色層、熱接着層等を積層したものも基材として用いることができる。
【0018】
また、本発明では、アルミニウム蒸着層などの金属蒸着層を含むシート又はフィルムも基材として採用できる。例えば、公知の蒸着法(PVD、CVD等)により樹脂フィルムなどの表面上に金属蒸着層を形成した積層フィルムを基材として採用することができる。樹脂フィルムとしては、ポリアミド(ナイロン)、ポリエチレン(特に高密度ポリエチレン)、ポリプロピレン(特に延伸ポリプロピレン)、塩化ビニル、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等が例示される。
【0019】
金属蒸着層の厚みは限定的ではないが、通常は200~1000Å程度が好ましい。また、金属蒸着させる樹脂フィルムの厚みは9~50μm程度が好ましい。
【0020】
本発明では、特にアルミニウム箔を基材として採用することが好ましい。アルミニウム箔を用いることにより、包装材料としての強度、バリアー性、保存性等を効果的に発揮することができる。
【0021】
アルミニウム箔は、公知又は市販のアルミニウム箔(アルミニウム合金箔も含む。以下同じ。)も使用することができる。また、アルミニウム箔の調質も限定的ではなく、例えば軟質箔、硬質箔又は半硬質箔のいずれでも用途又は要求特性に応じて適宜使い分けることができる。
【0022】
本発明では、アルミニウム箔としては、具体的には純アルミニウム(JIS(AA)1000系、例えば1N30、1070、1100等)、Al-Mn系(JIS(AA)3000系、例えば3003、3004等)、Al-Mg系(JIS(AA)5000系)、Al-Fe系(JIS(AA)8000系、例えば8021、8079等)等が例示できる。これらの中でも、例えばJIS等で規定される1N30、1070、1100、3003、8021、8079等の材質(組成)のアルミニウム箔を好適に用いることができる。
【0023】
また、アルミニウム箔は、必要に応じ、公知の方法で型付け、脱脂・洗浄、アンカーコート、オーバーコート、表面処理等を施すこともできる。
【0024】
アルミニウム箔の厚みは、限定的ではないが、通常は5~200μmとし、特に12~50μmが好ましい。かかる範囲内に設定することによって、より優れた耐水性(耐湿性)、強度、プレススルーパックの取扱性等を得ることができる。
【0025】
(不透明下地層)
基材の表面の少なくとも一部には不透明下地層が積層されている。
【0026】
本発明において不透明下地層とは、基材に積層される層であって、可視光が透過し難く基材が目視により視認され難くなる層である。また、後述する印刷層の下地となって印刷層を支持する層でもある。なお、不透明下地層は基材に直接積層されていてもよく、基材と不透明下地層との間に更に他の層(不透明下地層の形成を容易とするための下地層など)を介して積層されていてもよい。
【0027】
不透明下地層は不透明であればどの様な呈色を有してもよいが、例えば白着色層又は黒(墨)着色層であることが好ましい。不透明下地層が白着色層又は黒着色層であることによって、後述するように印刷層によるカラーシフトの視認が容易になる。
【0028】
不透明下地層は、基材の単位面積当たり固形分質量(「単位面積質量」ともいう)で0.5g/m以上3.0g/m以下の範囲(好ましくは0.5g/m以上2.0g/m以下の範囲)で積層される。この範囲であることによって、後述するように印刷層によるカラーシフトの視認性が良好となる。
【0029】
不透明下地層として適用される白着色層は、白ベタ(層)とも呼ばれ、酸化チタン等の顔料によって白色を呈している。白着色層で使用される顔料は、例えば酸化チタン、酸化亜鉛等の白色顔料を好適に用いることができるが、塗膜の光反射率の面でより優位という見地より、特に白色顔料として酸化チタンを用いることが好ましい。
【0030】
また、本発明では、本発明の効果を損なわない範囲(特に白色様の色味を呈する範囲)で、白色顔料以外の着色材を併用することもできる。このような着色材としては、例えばフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン系、キノフタレン系、ペリレン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、酸化鉄、マイカ、それらのカラーチップ顔料等が挙げられる。また、これらの顔料によって単独のベタ着色層として別途に積層することもできる。
【0031】
白着色層にはマトリックス樹脂(樹脂成分)が含まれていてもよい。すなわち、白着色層は、マトリックス樹脂中に白色顔料が分散した構造を有することが好ましい。
【0032】
このため、白着色層のマトリックス樹脂としては、白色顔料の効果を十分に引き出すために透明性樹脂を好適に採用することができる。このような樹脂としては、特に限定されないが、本発明では塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、ニトロセルロース系樹脂及びポリプロピレン系樹脂の少なくとも一種を好適に用いることができる。特に、本発明では、マトリックス樹脂として塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂を用いることが塗膜性能等の点で好ましい。
【0033】
白着色層中の白色顔料(特に酸化チタン)含有量は、例えば用いる白色顔料の種類等に応じて設定できる。特に、マトリックス樹脂中に白色顔料が分散している場合、その白色顔料の含有量は、通常20~60質量%程度とし、特に25~55質量%が好ましい。
【0034】
白着色層の形成方法は、例えば白色顔料を含む塗工液を塗布し、乾燥する工程を含む方法によって実施することができる。
【0035】
塗工液は、白色顔料と溶媒とを混合する方法のほか、白色顔料、溶媒及び樹脂成分を混合する方法によって調製することができる。
【0036】
溶媒としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン系溶剤、イソプロピルアルコール、変性エタノール等のアルコール系溶剤等の有機溶剤を挙げることができる。これらは一種又は2種以上で用いることができる。
【0037】
樹脂成分としては、マトリックス樹脂となる樹脂成分を使用すればよい。従って、本発明では、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、ニトロセルロース系樹脂及びポリプロピレン系樹脂の少なくとも一種を好適に用いることができる。その他にも、本発明の効果を妨げない範囲内で、例えばポリビニルブチラール樹脂、フェノール系樹脂、マレイン酸樹脂、アルキッド樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル樹脂、変性オレフィン系樹脂等も使用することができる。これらは一種又は2種以上で用いることができる。また、本発明では、公知又は市販のインキに含まれる有機バインダー成分を用いることもできる。
【0038】
また、塗工液中には、本発明の効果を妨げない範囲内で、例えば分散剤、界面活性剤、レベリング剤、表面調整剤、タレ止め剤、増粘剤、消泡剤、滑剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0039】
塗工液中の白色顔料の分散量は、形成された白着色層中の白色顔料の含有量が所定の範囲内となるように適宜設定すればよい。すなわち、固形分が白色顔料と樹脂成分となる場合は、樹脂成分との比率を調整しながら分散量を設定すればよい。
【0040】
本発明では、これらの各成分を均一に混合することにより塗工液を調製することができる。混合に際しては、公知又は市販のニーダー、ミキサー等を使用することもできる。樹脂成分を用いる場合、樹脂成分は有機溶剤に溶解してもよいし、分散してもよい。
【0041】
塗工液を塗布する方法は、特に限定されず、例えばグラビアロールコーター、オフセット印刷、フレキソ印刷、UV印刷、カーテンフローコーター等の方法により塗布(積層)することができる。また、スプレー等による塗布も実施することができる。
【0042】
塗布した後は、塗膜を乾燥することによって白着色層を得ることができる。乾燥方法は自然乾燥又は加熱乾燥のいずれであってもよい。加熱する場合は、例えば50~160℃程度とすればよい。また、塗工に際し、本発明では、所定の厚みを得るために、上記の塗布及び乾燥を2回以上繰り返すこともできる。
【0043】
黒(墨)着色層はカーボンブラック等の顔料によって黒色を呈している。黒着色層で使用される顔料は、例えばカーボンブラック、ペリレンプラック等の黒色顔料を好適に用いることができるが、塗膜の光反射率の面でより優位という見地より、特に黒色顔料としてカーボンブラックを用いることが好ましい。
【0044】
また、本発明では、本発明の効果を損なわない範囲(特に黒色様の色味を呈する範囲)で、黒色顔料以外の着色材を併用することもできる。このような着色材としては、例えばフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン系、キノフタレン系、ペリレン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、酸化鉄、マイカ、それらのカラーチップ顔料等を併用することもできる。また、これらの顔料によって単独のベタ着色層として別途に積層することもできる。
【0045】
黒着色層にはマトリックス樹脂(樹脂成分)が含まれていてもよい。すなわち、黒着色層は、マトリックス樹脂中に黒色顔料が分散した構造を有することが好ましい。
【0046】
このため、黒着色層のマトリックス樹脂としては、黒色顔料の効果を十分に引き出すために透明性樹脂を好適に採用することができる。このような樹脂としては、特に限定されないが、本発明では塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、ニトロセルロース系樹脂及びポリプロピレン系樹脂の少なくとも一種を好適に用いることができる。特に、本発明では、マトリックス樹脂として塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂を用いることが塗膜性能等の点で好ましい。
【0047】
黒着色層中の黒色顔料(特にカーボンブラック)含有量は、例えば用いる黒色顔料の種類等に応じて設定できる。特に、マトリックス樹脂中に黒色顔料が分散している場合、その黒色顔料の含有量は、通常10~70質量%程度とし、特に15~65質量%が好ましい。黒着色層の形成方法は白着色層と同様の手法を用いることができる。
【0048】
また、プレススルーパック蓋材に不透明下地層を設ける場合、通常は収容容器とシールされる面とは反対の面に備えられているが、基材の両面に備えられていてもよい。例えば、収容容器として透明の材料が用いられている場合には、プレススルーパック蓋材におけるプレススルーパック収容容器と接する側の面にも不透明下地層が備えられていれば、プレススルーパック容器側からも不透明下地層が視認可能となる。また、これによりその不透明下地層上に文字図柄層が形成された場合の視認性なども向上させることができる。
【0049】
また、白色顔料、黒色顔料等以外の着色材を併用することもできる。このような着色材としては、例えばフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン系、キノフタレン系、ペリレン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、酸化鉄、マイカ、それらのカラーチップ顔料等が挙げられる。また、これらの顔料によって単独のベタ着色層として別途に積層することもできる。
【0050】
(印刷層)
本発明における印刷層は、不透明下地層の表面の少なくとも一部に形成される層であり、後述する特定の着色金属顔料を含有する層である。印刷層は真偽の判別が可能な様に偽造防止標識として機能する層であり、特定の色味及びカラーシフト性を有することで消費者が真偽を識別可能になっている。
【0051】
印刷層の形状は特に限定されず、多角形、円形、略円形、不定形の形状や文字や記号の形状に形成されてもよい。また、基材の全面に不透明下地層が積層されている場合には、不透明下地層の全面に印刷層が積層されていてもよい。また、不透明下地層が基材の両面に積層されている場合には、印刷層も両面に積層されてもよい。
【0052】
印刷層は着色金属顔料のみから構成されていてもよいが、カラーシフト性に影響の無い範囲で、無機顔料、有機顔料等を含有してもよい。
【0053】
印刷層は、基材の単位面積当たり固形分質量(単位面積質量)で1.0g/m以上3.5g/m以下の範囲(好ましくは1.2g/m以上2.7g/m以下の範囲)で積層される。この範囲であることによって、後述するように印刷層によるカラーシフトの視認性が良好となる。
【0054】
着色金属顔料
本発明における着色金属顔料は、コアとなる金属顔料と、金属顔料の表面に形成された非晶質酸化珪素膜層と、非晶質酸化珪素膜層の表面の一部又は全体に担持された金属粒子とを含有する。かかる構造により偽造防止標識としてのカラーシフト性が発現できる。
【0055】
本発明の着色金属顔料では、金属粒子が金属顔料を全体的又は部分的に覆うように形成されていることにより、金属顔料からの反射光のうち金属粒子の層又は粒子間を抜けた反射光のみが可視光として認識される。その結果、金属顔料からの反射明度が弱められることになり、彩度、すなわち色が発現する。さらに金属顔料の表面からの反射光と金属粒子表面からの反射光との干渉により、彩度の高い干渉色が発現されるとともに、非晶質酸化珪素膜層の厚みが厚い場合には見る角度による色調の変化(カラーシフト性)が極めて大きくなる。なお、金属粒子が連続的に層状で存在する場合でも金属粒子層の厚さが光の透過できる厚さである限り、前記の干渉色を発現することができる。
【0056】
なお、詳細は後述するが、着色金属顔料は、コアとなる金属顔料と非晶質酸化珪素膜層との間には任意に下地層が形成されていてもよい。非晶質酸化珪素膜層と金属粒子との間には任意に中間層(金属層(中間層A)、及び/又は、酸化珪素以外の金属酸化物からなる金属酸化物層(中間層B))が形成されていてもよい。また、金属粒子の外側には耐候性被膜層(保護層)が形成されていてもよい。図2に示す着色金属顔料の一例の断面模式図では、コアとなる金属顔料1の表面に、非晶質酸化珪素層2、中間層3、金属粒子4、及び耐候性被膜層5が順に形成されている。
【0057】
中間層を形成する場合には、金属粒子を密着させて剥落を防止し、多様な色彩と変化に富む干渉色とを発現可能な着色金属顔料が安定的に得られ易くなる。中間層は、非晶質酸化珪素膜層の表面の全面に形成されることが好ましいが、非晶質酸化珪素膜層の表面の一部において中間層が形成されていない部分が含まれていても、本発明の効果を示す限り本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0058】
中間層は、金属層(中間層A)、及び/又は、酸化珪素以外の金属酸化物からなる金属酸化物層((中間層B)「金属酸化物層」ともいう)であることが好ましい。金属層及び金属酸化物層の両方からなる場合、その積層順序は特に限定されない。すなわち、非晶質酸化珪素膜層の表面に金属層が積層され、その金属層の表面に金属酸化物層が積層される構成であってもよいし、非晶質酸化珪素膜層の表面に金属酸化物層が積層され、その金属酸化物層の表面に金属層が積層される構成であってもよい。また、中間層は、金属層及び金属酸化物層のそれぞれを2層以上含むこともでき、その場合の積層順序も特に限定されない。
【0059】
以下、着色金属顔料の構成について詳細に説明する。
【0060】
金属顔料
コアとしての金属顔料としては、例えばアルミニウム、銅、亜鉛、チタン、鉄、ニッケル、クロム及びこれらの合金、或いは金属被覆フレーク状ガラス、その他の金属被覆無機顔料等が好ましく例示でき、このうちアルミニウムが意匠性の点で特に好ましく用いられる。アルミニウムを用いた場合、非晶質酸化珪素膜層を形成し、さらに金属粒子を担持することによって、干渉色を呈する多彩な着色金属顔料が得られる点で有利である。
【0061】
金属顔料の好ましい平均粒子径としては2~300μmの範囲内が例示できる。平均粒子径が2μm以上である場合、印刷層を形成するための塗膜に良好な仕上がり外観や良好な隠蔽力を与える着色金属顔料を得ることができる。また、300μm以下である場合、着色金属顔料の分散不良による塗膜仕上がり外観の低下を防止可能な着色金属顔料を得ることができる。該平均粒子径は5~100μmの範囲内とすることがより好ましい。なお、本明細書における金属顔料の平均粒子径は平均長径を意味し、このような平均粒子径はレーザー回折法により測定することができる。
【0062】
金属顔料の形状は、特に限定されず、球形、粒状、多角形、不定形、塊状、フレーク状
等各種の形状を取り得るが、良好な意匠性や多彩な色彩が得られるという観点から、フレーク状が好ましい。
【0063】
金属顔料の形状がフレーク状の場合、その好ましい厚み(平均厚み)としては、0.01~5μmの範囲内が例示できる。厚みが0.01μm以上である場合、塗膜の耐光性及び耐候性を損なうことなく仕上がり外観を良好に維持することが可能な着色金属顔料が得られる。また、5μm以下である場合、塗膜に良好な意匠性と多様な色彩を与える着色金属顔料を得ることができる。該厚みは、0.02~1μmの範囲内とすることがより好ましい。このような厚みは、水面拡散面積とコアとして用いる金属顔料の比重から算出することができる。
【0064】
このように、金属顔料の好ましい形状としては、フレーク状(すなわち鱗片状)であることが好ましく、平均粒子径Aと平均厚みBとの比A/Bが5~1000の範囲内であるものが好ましく例示できる。比A/Bが5以上である場合、塗膜の意匠性が良好で、より多彩な色彩の発現が可能である。また、1000以下である場合、着色金属顔料の製造時における金属顔料の変形や、樹脂組成物中での着色金属顔料の分散性の低下が生じ難い点で好ましい。比A/Bは、15~500の範囲内とすることがより好ましい。金属顔料の形状としては、フレーク状の中でも表面が平滑で丸みを帯びた端面を有する、いわゆるシルバーダラータイプと呼ばれるコイン状の形状が特に好ましい。
【0065】
本発明において使用される金属顔料は、例えばアトマイズ法粉末や、金属薄片を湿式ボールミル法(すなわちホール法)又は乾式ボールミル法で粉砕した粉末等として得られる。或いは、フィルム等に金属薄膜を蒸着した後、剥離及び粉砕することでも得られる。また、金属被覆フレーク状ガラスやその他の金属被覆顔料は、フレーク状ガラス、マイカ、アルミナ、シリカ、酸化チタン等のフレーク状、或いは粒状の無機基材に無電解めっき、蒸着、スパッタリング等の手法によりAg、Cu、Ni、Fe、Co、Cr、Snなどの単体或いは合金を層状に形成することによって得られる。
【0066】
下地層
金属顔料の表面は、非晶質酸化珪素膜層を形成する前に下地層が形成されていてもよい。下地層としては、モリブデン、リン、及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含む酸化物、水酸化物及び水和物のいずれかの単独膜又は混合物膜からなる層が例示できるが、これに限定されない。なお、このように金属顔料の表面に下地層が形成されている場合であっても、本発明においては、非晶質酸化珪素膜層は金属顔料の表面に形成されると表現するものとする。
【0067】
非晶質酸化珪素層
着色金属顔料は、金属顔料の表面に非晶質酸化珪素膜層が積層されている。この非晶質酸化珪素膜層は、金属顔料の表面の全面に形成されることが好ましいが、金属顔料の表面の一部において非晶質酸化珪素膜層が形成されていない部分が含まれていても、本発明の効果を示す限り本発明の範囲を逸脱するものではない。このような非晶質酸化珪素膜層は金属顔料の表面に直接形成されてもよいが、金属顔料の耐水性確保や非晶質酸化珪素膜層の密着性を向上させる観点からは金属顔料と非晶質酸化珪素膜層との間に前述の下地層を介在させることが好ましい。
【0068】
非晶質酸化珪素膜層の厚さは特に限定されないが、150nmを超え1000nm以下の範囲内であることが好ましい。150nmを超える層厚みとすれば、干渉作用を発現するための光路差が長くなるので、高い彩度及び大きな色調変化を呈する塗膜を形成することができる。厚みが1000nmを超えると非晶質酸化珪素膜層の形成に長時間を要し生産性が悪くなったり、着色金属顔料全体の厚みが大きくなるため非晶質酸化珪素膜層の平
滑性を損なうおそれがある。なお、非晶質酸化珪素膜層の厚みは、走査型電子顕微鏡を用いた断面観察により測定することができる。この場合、任意の着色金属顔料50個についてこのような測定を行ない、その平均値を非晶質酸化珪素膜層の厚みとする。
【0069】
非晶質酸化珪素膜層の形成方法としては、例えば金属顔料と、有機珪素化合物を含む溶液とを、塩基性又は酸性に保ちながらスラリー状態又はペースト状態で撹拌又は混練する方法等が採用でき、これにより金属顔料の表面、又は下地層が表面に形成された金属顔料の表面に非晶質酸化珪素膜層を形成することができる。
【0070】
上記の有機珪素化合物としては、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等及びそれらの縮合物、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-アミノエチル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が例示される。
【0071】
また、有機珪素化合物を含む溶液とするための珪素化合物を溶解させる溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、t-ブチルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、アセトン等の親水性溶剤を用いることが好ましい。また、該溶剤に、アルコキシシランを加水分解するのに充分な水をさらに配合することが望ましい。
【0072】
このように非晶質酸化珪素膜層は、金属顔料を分散させた親水性溶剤を主成分とする溶剤中で、有機珪素化合物を加水分解して非晶質酸化珪素を金属顔料上に析出させることにより、金属顔料の表面に形成することができる。
【0073】
なお、非晶質酸化珪素膜層の「非晶質」とは、X線回折法による結晶構造分析において酸化珪素に由来する明確な回折ピークが検出されない状態にあることをいう。
【0074】
中間層A(特に無電解めっき触媒層としての金属層について)
金属粒子が、水溶性金属塩を使用して無電解めっきにより形成される場合、金属層を中間層Aとして使用し、該無電解めっきの前処理として用いられる方法を用いて形成することができる。無電解めっきの前処理としては、一般的にキャタリスト(キャタライジングとも称する)-アクセレータ(アクセレーティングとも称する)法と、センシタイジング-アクチベーティング法があり、どちらの方法を用いてもよい。また、キャタリストのみ又はセンシタイジングのみを行ってもよい。
【0075】
キャタリスト-アクセレータ法とは、Sn(スズ)と、Pd(パラジウム),Pt(白金),Au(金)のいずれかとを含む混合溶液をキャタリストとし、非晶質酸化珪素膜層を形成した金属顔料を該キャタリストに浸漬して、該非晶質酸化珪素膜層の表面にPd,Pt,AuのいずれかとSnとの錯体化合物等を吸着させた後、硫酸、塩酸等の酸溶液又は水酸化ナトリウム、アンモニア等のアルカリ溶液をアクセレータとし、該アクセレータに上記の金属顔料を浸漬し、Snを除去してPd,Pt,Auのいずれかを活性化する方法である。
【0076】
センシタイジング-アクチベーティング法とは、Sn溶液をセンシタイジング液とし、非晶質酸化珪素膜層を形成した金属顔料を該センシタイジング液に浸漬して、該非晶質酸化珪素膜層の表面にSn化合物を吸着させた後、Pd,Pt,Auのいずれかを含む溶液をアクチベーティング液とし、Pd,Pt,Auのいずれかを該非晶質酸化珪素膜層の表
面に担持させる方法である。
【0077】
センシタイジング法とは、Sn溶液をセンシタイジング液とし、非晶質酸化珪素膜層を形成した金属顔料を該センシタイジング液に浸漬して、該非晶質酸化珪素膜層の表面にSn化合物を吸着させることにより該非晶質酸化珪素膜層の表面に担持させる方法である。
【0078】
無電解めっきの前処理として用いられる方法で形成される中間層Aの金属源としては、Sn,Pd,Pt,Auのいずれかを含む水溶性金属塩を使用することができる。具体的な金属塩としては、塩化錫、シュウ酸錫、硫酸錫、臭化錫、酢酸錫、ほう弗化錫、弗化錫、錫酸ナトリウム、錫酸カリウム、メタンスルホン酸錫、硫化錫、ケイ弗化錫、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、臭化パラジウム、水酸化パラジウム、硝酸パラジウム、酸化パラジウム、硫酸パラジウム、臭化金、塩化金、塩化白金、酸化白金等が例示できる。
【0079】
上記のような方法により、Sn,Pd,Pt,Au等の無電解めっき触媒層が中間層Aとして形成される。この後、中間層Aの表面に無電解めっきによって金属粒子を形成することができる。中間層Aが形成された金属顔料を無電解めっき溶液に浸漬すると、中間層Aの触媒活性により、めっき液中の還元剤が中間層Aの表面で酸化される。このとき放出される電子によって無電解めっき溶液中の金属イオンが還元され、中間層Aの表面に金属が析出し、金属粒子が生成する。
【0080】
このような中間層Aは、上記のように、Sn、Pd、Pt及びAuからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0081】
中間層Aの厚みは30nm以下とされることが好ましい。この場合、得られる着色金属顔料により良好な彩度と干渉色が付与される。中間層Aの厚みは、さらに0.1~10nmの範囲内とすることが好ましい。中間層Aの厚みは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)における300万倍程度の高倍率観察において、非晶質酸化珪素膜層と金属粒子との間に形成される金属の層として確認することができる。また、局部EDS(エネルギー分散型X線分光:Energy-dispersive X-ray spectroscopy)により元素の存在を確認することも可能である。中間層Aは、典型的には粒子の集合体が連続した層となり形成される。
【0082】
なお、中間層Aは非晶質酸化珪素膜層(又は後述の中間層B(金属酸化物層))の表面に均一に析出していても不均一に析出していてもよい。また、例えばTEMで観察できない程度に中間層Aの厚さが薄い場合であっても、中間層Aが析出している場合には金属粒子を緻密かつ均一に析出させることが可能である。
【0083】
中間層B(特に金属酸化物層について)
酸化珪素以外の金属酸化物からなる金属酸化物層(金属酸化物層)を中間層Bとして用いる場合に、この金属酸化物層は、非晶質酸化珪素膜層の表面の全面に形成されることが好ましいが、非晶質酸化珪素膜層の表面の一部において金属酸化物層が形成されていない部分が含まれていても、本発明の効果を示す限り本発明の範囲を逸脱するものではない。このような金属酸化物層が形成されることにより、後述の金属粒子と金属酸化物層との良好な吸着状態により、金属粒子を一定の間隔を隔てて緻密かつ均一に析出させ、彩度の高い干渉色を発現させることができる。
【0084】
このような金属酸化物層は、Mg(マグネシウム)、Sn(スズ)、Zn(亜鉛)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Fe(鉄)、Zr(ジルコニウム)、Ti(チタン)、及びCe(セリウム)からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素の酸化物を含むことが好ましく、中でも、Sn、Zn、Ti、Ceのいずれか一種の金属酸化物を含むことが好ましい。
【0085】
金属酸化物層の形成方法は特に限定されないが、例えば、金属酸化物層を構成する金属のアルコキシドをゾル-ゲル法により加水分解して非晶質酸化珪素膜層上に析出させる方法、金属酸化物層を構成する金属の金属塩溶液にアルカリを加えて金属酸化物を中和析出させる方法、有機溶媒中に有機金属化合物を溶解した溶液に非晶質酸化珪素膜層を形成した金属顔料を接触させ熱処理により酸化することにより非晶質酸化珪素膜層上に金属酸化物層を形成する方法等が好適である。
【0086】
加水分解して析出させる方法において使用される金属アルコキシドとしては、テトラエトキシ錫、テトラブトキシチタンなどが例示でき、該金属アルコキシドを分散させたコロイド溶液を好ましく使用することができる。また金属アルコキシドの加水分解触媒としては、アンモニア水、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ヒドラジン、尿素等が例示できる。
【0087】
中和析出させる方法において使用される金属塩としては、塩化錫、フッ化錫、塩化亜鉛、硫酸チタニル、硝酸セリウム、酢酸セリウム等が例示できる。また金属塩の中和剤としては、アンモニア水、水酸化ナトリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどが例示できる。また反応溶媒としては、水、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルプロピレングリコール、ブチルセロソルブなどが例示できる。
【0088】
有機金属化合物を使用する方法において使用される有機金属化合物としては、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸ジルコニウム、ジブチル錫ジラウレートなどの脂肪酸金属塩が例示され、有機金属化合物を溶解する溶媒としては、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、アセトン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルセロソルブなど、該有機金属化合物が溶解可能な、あらゆる有機溶剤が使用できる。有機金属化合物を分解して酸化させる熱処理温度としては200~500℃が好ましい。200℃未満では有機金属化合物を酸化することが困難となる場合がある。また、500℃超過では金属顔料の凝集を生じ易く、さらに発火の危険性が大きくなるおそれがある。
【0089】
また、後述する金属粒子が水溶性金属塩を使用して無電解めっきにより形成される場合、金属酸化物層(中間層B)の上に、該無電解めっきの前処理として一般的に用いられる、Sn、Pt、Au、Pd、Znなどを含む層(前述の中間層A)を形成してもよい。本発明における着色金属顔料においては、これらの中間層が形成される場合であっても、金属粒子が非晶質酸化珪素膜層を被覆するようにして形成されると表現するものとする。
【0090】
本発明においては、非晶質酸化珪素膜層上に無電解めっきの前処理としての金属層(中間層A)又は金属酸化物層(中間層B)を設けることにより、非晶質酸化珪素膜層上に選択的に金属粒子を付着させることができる。中間層Aと中間層Bとを形成する場合には、両層の界面は明確に区別できない場合もあり、その場合は中間層Aと中間層Bとの混合のような状態となっていてもよい。
【0091】
本発明において、中間層Bの厚みは30nm以下とすることが好ましい。この場合、得られる着色金属顔料により良好な彩度と干渉色が付与される。中間層Bの厚みは、さらに0.1~10nmの範囲内とすることが好ましい。なお、中間層Bは非晶質酸化珪素膜層の表面に均一に析出していても不均一に析出していてもよい。中間層Bが厚すぎる場合は得られる着色金属顔料の厚みも厚くなり、隠蔽力が低下する。また、薄すぎる場合には十分な効果が得られず、色調が安定しない。なお、中間層Bの厚みが厚い場合は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた断面観察により測定することができる。また、中間層Bの厚みが薄い場合にはX線光電子分光法(XPS)により金属顔料の表面分析を行うことにより
その存在を確認することができる。
【0092】
金属粒子
着色金属顔料においては、非晶質酸化珪素膜層の表面の一部又は全体に金属粒子が担持されている。中間層を形成した場合には、金属粒子は、中間層の表面の一部又は全体を被覆するように形成される。
【0093】
本発明では、金属粒子の表面からの反射光と、非晶質酸化珪素膜層及び金属粒子層を通過するコアである金属顔料表面からの反射光との間で干渉が生じて、彩度の高い干渉色を呈する着色金属顔料が得られる。
【0094】
金属粒子としては、例えばAl(アルミニウム)、Ti(チタン)、Cr(クロム)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Sn(スズ)、Pt(白金)、Au(金)及びこれらの合金の少なくとも一種を含む粒子が好ましく例示できる。金属粒子がこれらの金属及び金属合金から選ばれる一種以上を含む場合、彩度の高い干渉色を呈する着色金属顔料が得られる。特に好ましい金属粒子としては、Cu、Ni及びAgからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含む粒子が挙げられる。
【0095】
このような金属粒子は、その平均粒子径が50nm以下であることが好ましい。この場合、金属粒子が形成されている部位と該金属粒子が形成されていない部位とを有する着色金属顔料の場合でも表面形態が比較的平滑であり、仕上がり外観に優れるメタリック感を発揮し得る着色金属顔料が得られる。金属粒子の平均粒子径は30nm以下とすることがより好ましい。
【0096】
なお、金属粒子の平均粒子径の下限は特に限定されないが、1nm以上とすることが好ましい。1nm未満であると光が金属粒子を透過してしまうため、金属粒子層からの反射光が少なくなり、光干渉による着色効果が弱まるため、得られた着色金属顔料の彩度が低下する場合がある。なお、金属粒子が連続的に層状として存在する場合でも、光を透過できる厚みであれば、前述のような干渉色を発現できる。
【0097】
本発明の着色金属顔料において形成する金属粒子は、非晶質酸化珪素膜層を完全に覆うことなく、その一部を覆うように形成することが好ましいが、より高彩度の着色金属顔料が得られる点で、金属粒子同士の間隔が10nm以下であることが好ましい。この場合、10nm以下とされる金属粒子間の間隔が、上記でいう金属粒子によって被覆されていない部位に相当する。この場合、該間隔の下限値は0.1nm以上とすることが好ましい。
【0098】
また、金属粒子が非晶質酸化珪素膜層の上に2粒子以上重なって析出していてもよいが、単独粒子として1層で析出していることが好ましい。この場合、金属粒子からの反射光と、コアの金属顔料から反射し金属粒子間を抜けた反射光との干渉により彩度の高い干渉色が付与される。更に、各々の金属粒子が互いに接触することなく金属粒子担持層の上に析出していることが好ましい。最も典型的には、各々の金属粒子が互いに接触することなく、かつ金属粒子同士の間隔が10nm以下となるように非晶質酸化珪素膜層上に1層で析出していることが好ましい。
【0099】
なお、金属粒子の析出状態、平均粒子径及び金属粒子同士の間隔は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた断面観察により評価することができる。この場合、観察用の試料作製としては、金属粒子が形成された着色金属顔料の断面を、FIB(Focused Ion Beam)加工する方法が好ましい。この方法は、走査型イオン顕微鏡(SIM:Scanning Ion
Microscopy)像を見ながら加工箇所を決定できるため、試料中の特定の個所を加工する
ことができる。上記のような方法で加工を行ない、金属粒子の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて30~300万倍で観察する。
【0100】
金属粒子の形成方法は特に限定されないが、真空蒸着法、スパッタリング法、無電解めっき法などが好適である。これらの方法のうち、前述の無電解めっき法は金属粒子を上記のような所定の間隔を隔てて均一に析出させることができ、良好な彩度が得られるため、特に好適である。
【0101】
耐候性被膜層(保護層)
本発明の着色金属顔料は、金属粒子の上に耐候性被膜層がさらに形成されていてもよい。該耐候性被膜層としては、アルミニウム、珪素、及びセリウムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む酸化物、水酸化物、水和物の単独膜又は混合物膜、又は樹脂被覆層が例示される。耐候性被膜層の厚さは限定されないが、1~200nmの範囲内が好ましい。
【0102】
以上の通り、着色金属顔料の主な構成について説明したが、該着色金属顔料においては非晶質酸化珪素膜層の表面の一部又は全体に金属粒子が担持されていればよく、本発明の効果が損なわれない範囲で、前述したもの以外の層や粒状物等がさらに形成されていても構わない。
【0103】
(熱接着層)
プレススルーパック材には、最表面の少なくとも一部に、さらに熱接着層を備えてもよい。プレススルーパック材において熱接着層はヒートシール層とも呼ばれ、蓋材と収容容器とを熱接着し、内容物が密封されたプレススルーパック包装体を製造することができる。熱接着層は蓋材と収容容器のどちらか(又は両方)の接着面に形成すればよい。
【0104】
熱接着層としては、特に限定されず、ヒートシール性樹脂として各種の熱可塑性樹脂を含む材料を採用することができる。熱接着層を構成する樹脂成分としては、例えば高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖線状ポリエチレン、飽和ポリエステル、線状飽和ポリエステル、無延伸ポリプロピレン、塩素化ポリプロピレン、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタアクリル酸共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、アイオノマー、エチレン-エチルアクリレート-無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリエチレン、カルボン酸変性ポリプロピレン、カルボン酸変性エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、ポリスチレン等が挙げられる。また、これらは、市販品も使用することができる。例えば製品名「ボンダイン」住友化学工業株式会社製、製品名「メルセンM」東ソー株式会社製等の市販品が使用できる。
【0105】
熱接着層の厚みは限定的でないが、通常1~100μm程度とすることが好ましく、特に2~50μmとすることがより好ましい。また、熱接着層の形成量は、乾燥後質量で1~30g/m程度とすることが好ましい。
【0106】
熱接着層の形成方法としては、例えば1)樹脂成分を含む塗工液を塗布し、乾燥する工程を含む方法のほか、2)樹脂成分を用いて予め成形されたシーラントフィルムを積層する工程を含む方法等によって実施することができる。
【0107】
上記1)の方法において、塗工液としては、樹脂成分の溶液又は分散液に用いることができる。そのための溶媒としては、前記で示した各種の溶媒の一種又は2種以上を用いることができる。この場合の乾燥後塗布量を2~15g/m程度とすればよい。
【0108】
塗布方法は、例えばグラビアロールコーター、オフセット印刷、フレキソ印刷、UV印刷、カーテンフローコーター等の方法により塗布(積層)することができる。また、スプレー等による塗布も実施することができる。
【0109】
上記2)のシーラントフィルムとしては、例えばポリアミド(ナイロン)、ポリエチレン(特に高密度ポリエチレン)、ポリプロピレン(特に延伸ポリプロピレン)、塩化ビニル、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルムを好適に用いることができる。この場合における樹脂フィルムの厚みは9~50μm程度とすることが好ましい。これらのシーラントフィルム自体も市販品を使用することができる。
【実施例0110】
実施例1
厚み20μmのアルミニウム箔(1N30硬質材、東洋アルミニウム株式会社製)のツヤ面上に墨インキ(マトリックス樹脂として塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、固形分基準でカーボンブラック5質量%含有したもの)を全面に塗工することにより墨着色層を形成した。墨インキの塗工条件は、グラビア版を用いてグラビア印刷により乾燥後質量で1.2g/mとなるように設定した。
【0111】
次いで、墨着色層の上に、カラーシフトインキ(マトリックス樹脂として塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、顔料は金属顔料と、金属顔料の表面に形成された非晶質酸化珪素膜層と、非晶質酸化珪素膜層の表面の一部に担持された金属粒子からなる東洋アルミニウム株式会社製クロマシャインCPK-20Xを固形分基準で34.2質量%含有したもの)を用い、グラビア版を用いてグラビア印刷により乾燥後厚み約2μmとなるようにカラーシフトインキ層を設けた。
【0112】
次いで、カラーシフトインキ層を覆うように、マトリックス樹脂としてエポキシ樹脂を含んだ保護層用ニスをグラビア版を用いて塗布し、乾燥後質量で2g/mとなるよう保護層を設けた。
【0113】
その後、表面の実体温度約180℃で乾燥時間約10秒の条件で乾燥させた。これにより、墨着色層上に1.2g/mのカラーシフトインキ層が積層された状態とした。
【0114】
このようにして、アルミニウム箔(基材)/墨着色層(不透明下地層)/カラーシフトインキ層(印刷層)/保護層が順に積層されたPTP蓋材を作製した。
【0115】
なお、カラーシフトインキ層を肉眼で観察したところ、墨着色層が完全に遮蔽され、かつ目視する角度を塗布面に対し45度から90度へ変更することで色調が黄色から薄紅色へ変化することが確認された。
【0116】
実施例2
墨インキ上に1.5g/mのカラーシフトインキが積層された状態とした以外は実施例1と同様にPTP用蓋材を作製した。なお、カラーシフトインキ層を肉眼で観察したところ、墨着色層が完全に遮蔽され、かつ実施例1と同様に目視する角度を変更することで色調が変化することが確認された。
【0117】
実施例3
墨インキ上に1.8g/mのカラーシフトインキが積層された状態とした以外は実施例1と同様にPTP用蓋材を作製した。なお、カラーシフトインキ層を肉眼で観察したところ、墨着色層が完全に遮蔽され、かつ実施例1と同様に目視する角度を変更することで
色調が変化することが確認された。
【0118】
実施例4
墨インキ上に2.7g/mのカラーシフトインキが積層された状態とした以外は実施例1と同様にPTP用蓋材を作製した。なお、カラーシフトインキ層を肉眼で観察したところ、墨着色層が完全に遮蔽され、かつ実施例1と同様に目視する角度を変更することで色調が変化することが確認された。
【0119】
実施例5
墨インキ上に3.0g/mのカラーシフトインキが積層された状態とした以外は実施例1と同様にPTP用蓋材を作製した。なお、カラーシフトインキ層を肉眼で観察したところ、墨着色層が完全に遮蔽され、かつ実施例1と同様に目視する角度を変更することで色調が変化することが確認された。
【0120】
実施例6
墨インキの塗工条件を乾燥後質量で0.5g/mとなるように設定したことと、墨インキ上に2.7g/mのカラーシフトインキが積層された状態とした以外は実施例1と同様にPTP用蓋材を作製した。なお、カラーシフトインキ層を肉眼で観察したところ、墨着色層が完全に遮蔽され、かつ実施例1と同様に目視する角度を変更することで色調が変化することが確認された。
【0121】
実施例7
アルミニウム箔のツヤ面に白インキ(マトリックス樹脂として塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、固形分基準で酸化チタン51.2質量%含有したもの)を全面に乾燥後質量で2.0g/mとなるように塗布し白着色層(不透明下地層)を形成したことと、白インキ上に2.7g/mのカラーシフトインキが積層された状態とした以外は実施例1と同様にPTP用蓋材を作製した。なお、カラーシフトインキ層を肉眼で観察したところ、白着色層が完全に遮蔽され、かつ実施例1と同様に目視する角度を変更することで色調が変化することが確認された。
【0122】
実施例8
図1に示す様に、収容容器に印刷層を設けた場合の態様を示す。厚み45μmのアルミニウム箔(JIS-H4160該当の硬質材、東洋アルミニウム株式会社製)のツヤ面上に実施例1と同様に墨着色層とカラーシフトインキ層を設けた。
【0123】
次いで、アルミニウム箔のツヤ面にポリウレタン系ドライラミネート用接着剤(乾燥後質量3g/m)を用いて厚み25μmのナイロンフィルム(株式会社興人製「ボニールRX」)を積層し、アルミニウム箔の他方面にポリウレタン系ドライラミネート用接着剤(乾燥後質量3g/m)を用いて厚み60μmのポリ塩化ビニル系シーラントフィルムを積層した。
【0124】
このようにして、ポリ塩化ビニル系シ-ラントフィルム/アルミニウム箔(基材)/墨着色層(不透明下地層)/カラーシフトインキ層(印刷層)/ナイロンフィルム層が順に積層されたPTP容器材を作製した。
【0125】
なお、カラーシフトインキ層を肉眼で観察したところ、墨着色層が完全に遮蔽され、かつ実施例1と同様に目視する角度を変更することで色調が変化することが確認された。
【0126】
実施例9
墨インキ上に1.5g/mのカラーシフトインキが積層された状態とした以外は実施
例8と同様にPTP用容器材を作製した。なお、カラーシフトインキ層を肉眼で観察したところ、墨着色層が完全に遮蔽され、かつ実施例1と同様に目視する角度を変更することで色調が変化することが確認された。
【0127】
実施例10
墨インキ上に1.8g/mのカラーシフトインキが積層された状態とした以外は実施例8と同様にPTP用容器材を作製した。なお、カラーシフトインキ層を肉眼で観察したところ、墨着色層が完全に遮蔽され、かつ実施例1と同様に目視する角度を変更することで色調が変化することが確認された。
【0128】
実施例11
墨インキ上に2.7g/mのカラーシフトインキが積層された状態とした以外は実施例8と同様にPTP用容器材を作製した。なお、カラーシフトインキ層を肉眼で観察したところ、墨着色層が完全に遮蔽され、かつ実施例1と同様に目視する角度を変更することで色調が変化することが確認された。
【0129】
実施例12
墨インキ上に3.0g/mのカラーシフトインキが積層された状態とした以外は実施例8と同様にPTP用容器材を作製した。なお、カラーシフトインキ層を肉眼で観察したところ、墨着色層が完全に遮蔽され、かつ実施例1と同様に目視する角度を変更することで色調が変化することが確認された。
【0130】
実施例13
墨インキの塗工条件を乾燥後質量で0.5g/mとなるように設定したことと、墨インキ上に2.7g/mのカラーシフトインキが積層された状態とした以外は実施例8と同様にPTP用容器材を作製した。なお、カラーシフトインキ層を肉眼で観察したところ、墨着色層が完全に遮蔽され、かつ実施例1と同様に目視する角度を変更することで色調が変化することが確認された。
【0131】
実施例14
アルミニウム箔のツヤ面に白インキ(マトリックス樹脂として塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、固形分基準で酸化チタン51.2質量%含有したもの)を全面に乾燥後質量で2.0g/mとなるように塗布し白着色層(不透明下地層)を形成したことと、白インキ上に2.7g/mのカラーシフトインキが積層された状態とした以外は実施例8と同様にPTP用容器材を作製した。なお、カラーシフトインキ層を肉眼で観察したところ、白着色層が完全に遮蔽され、かつ実施例1と同様に目視する角度を変更することで色調が変化することが確認された。
【0132】
比較例1
墨インキ上に0.2g/mのカラーシフトインキが積層された状態とした以外は実施例1と同様にPTP用蓋材を作製した。なお、カラーシフトインキ層を肉眼で観察したところ、墨着色層が完全に遮蔽されておらず、実施例1と同様に目視する角度を変更しても色調の変化が確認されなかった。
【0133】
比較例2
墨インキ上に0.6g/mのカラーシフトインキが積層された状態とした以外は実施例1と同様にPTP用蓋材を作製した。なお、カラーシフトインキ層を肉眼で観察したところ、墨着色層が完全に遮蔽されておらず、実施例1と同様に目視する角度を変更しても色調の変化が確認されなかった。
【0134】
比較例3
墨インキ上に0.8g/mのカラーシフトインキが積層された状態とした以外は実施例1と同様にPTP用蓋材を作製した。なお、カラーシフトインキ層を肉眼で観察したところ、墨着色層が完全に遮蔽されておらず、実施例1と同様に目視する角度を変更しても色調の変化が確認されなかった。
【0135】
比較例4
墨着色層を除きアルミニウム箔上に1.2g/mのカラーシフトインキが積層された状態とした以外は実施例1と同様にPTP用蓋材を作製した。なお、カラーシフトインキ層を肉眼で観察したところ、実施例1と同様に目視する角度を変更しても色調の変化が確認されなかった。
【0136】
比較例5
墨着色層を除きアルミニウム箔上に2.7g/mのカラーシフトインキが積層された状態とした以外は実施例1と同様にPTP用蓋材を作製した。なお、カラーシフトインキ層を肉眼で観察したところ、実施例1と同様に目視する角度を変更しても色調の変化が確認されなかった。
【0137】
比較例6
墨インキの塗工条件を乾燥後質量で0.2g/mとなるように設定したことと、墨インキ上に0.8g/mのカラーシフトインキが積層された状態とした以外は実施例1と同様にPTP用蓋材を作製した。なお、カラーシフトインキ層を肉眼で観察したところ、実施例1と同様に目視する角度を変更しても色調の変化が確認されなかった。
【0138】
比較例7
墨インキの塗工条件を乾燥後質量で0.2g/mとなるように設定したことと、墨インキ上に2.7g/mのカラーシフトインキが積層された状態とした以外は実施例1と同様にPTP用蓋材を作製した。なお、カラーシフトインキ層を肉眼で観察したところ、実施例1と同様に目視する角度を変更しても色調の変化が確認されなかった。
【0139】
比較例8
アルミニウム箔のツヤ面に白インキ(マトリックス樹脂として塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、固形分基準で酸化チタン51.2質量%含有したもの)を全面に乾燥後質量で2.0g/mとなるように塗布し白着色層(不透明下地層)を形成したことと、白インキ上に0.8g/mのカラーシフトインキが積層された状態とした以外は実施例1と同様にPTP用蓋材を作製した。なお、カラーシフトインキ層を肉眼で観察したところ、実施例1と同様に目視する角度を変更しても色調の変化が確認されなかった。
【0140】
比較例9
墨インキ上に0.2g/mのカラーシフトインキが積層された状態とした以外は実施例8と同様にPTP用容器材を作製した。なお、カラーシフトインキ層を肉眼で観察したところ、墨着色層が完全に遮蔽されておらず、実施例1と同様に目視する角度を変更しても色調の変化が確認されなかった。
【0141】
比較例10
墨インキ上に0.6g/mのカラーシフトインキが積層された状態とした以外は実施例8と同様にPTP用容器材を作製した。なお、カラーシフトインキ層を肉眼で観察したところ、墨着色層が完全に遮蔽されておらず、実施例1と同様に目視する角度を変更しても色調の変化が確認されなかった。
【0142】
比較例11
墨インキ上に0.8g/mのカラーシフトインキが積層された状態とした以外は実施例8と同様にPTP用容器材を作製した。なお、カラーシフトインキ層を肉眼で観察したところ、墨着色層が完全に遮蔽されておらず、実施例1と同様に目視する角度を変更しても色調の変化が確認されなかった。
【0143】
比較例12
墨着色層を除きアルミニウム箔上に1.2g/mのカラーシフトインキが積層された状態とした以外は実施例8と同様にPTP用容器材を作製した。なお、カラーシフトインキ層を肉眼で観察したところ、実施例1と同様に目視する角度を変更しても色調の変化が確認されなかった。
【0144】
比較例13
墨着色層を除きアルミニウム箔上に2.7g/mのカラーシフトインキが積層された状態とした以外は実施例8と同様にPTP用容器材を作製した。なお、カラーシフトインキ層を肉眼で観察したところ、実施例1と同様に目視する角度を変更しても色調の変化が確認されなかった。
【0145】
比較例14
墨インキの塗工条件を乾燥後質量で0.2g/mとなるように設定したことと、墨インキ上に0.8g/mのカラーシフトインキが積層された状態とした以外は実施例8と同様にPTP用容器材を作製した。なお、カラーシフトインキ層を肉眼で観察したところ、実施例1と同様に目視する角度を変更しても色調の変化が確認されなかった。
【0146】
比較例15
墨インキの塗工条件を乾燥後質量で0.2g/mとなるように設定したことと、墨インキ上に2.7g/mのカラーシフトインキが積層された状態とした以外は実施例8と同様にPTP用容器材を作製した。なお、カラーシフトインキ層を肉眼で観察したところ、実施例1と同様に目視する角度を変更しても色調の変化が確認されなかった。
【0147】
比較例16
アルミニウム箔のツヤ面に白インキ(マトリックス樹脂として塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、固形分基準で酸化チタン51.2質量%含有したもの)を全面に乾燥後質量で2.0g/mとなるように塗布し白着色層(不透明下地層)を形成したことと、白インキ上に0.8g/mのカラーシフトインキが積層された状態とした以外は実施例8と同様にPTP用容器材を作製した。なお、カラーシフトインキ層を肉眼で観察したところ、実施例1と同様に目視する角度を変更しても色調の変化が確認されなかった。
【0148】
試験例1
実施例及び比較例によって得られたプレススルーパック材料について目視による外観評価を行った。結果を表1に示す。
【0149】
【表1】
【0150】
上記結果から示されるように、本発明のプレススルーパック材は、ホログラムシールを用いずとも偽造防止標識が付され、容易に真偽を判断することができる。また、ホログラムシールの様にプレススルーパックから剥がすことが出来ないため流用が出来ず、偽造防止標識となる金属顔料は製造条件によって大きく色味が変わるために、同一製品を模造することが困難である。従って、偽造薬剤の流通に対する抑止力が大きい。
【符号の説明】
【0151】
1.コアとなる金属顔料
2.非晶質酸化珪素膜層
3.中間層(金属層、及び/又は、酸化珪素以外の金属酸化物からなる金属酸化物層)
4.金属粒子
5.耐候性被膜層(保護層)
図1
図2