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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024111
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】三層砥石車
(51)【国際特許分類】
   B24D 7/18 20060101AFI20240214BHJP
   B24D 7/14 20060101ALI20240214BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20240214BHJP
   B24D 3/28 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B24D7/18 Z
B24D7/14
B24D3/00 320B
B24D3/28
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024002465
(22)【出願日】2024-01-11
(62)【分割の表示】P 2022512326の分割
【原出願日】2020-08-21
(31)【優先権主張番号】102019122711.9
(32)【優先日】2019-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】507248387
【氏名又は名称】アトランティック ゲゼルシャフト ミト ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】ウィーグナー, インゴルフ
(72)【発明者】
【氏名】レーリッチ, ペーター
(72)【発明者】
【氏名】コルシェルト, カルステン
(72)【発明者】
【氏名】ウェバー, マルコ
(57)【要約】
【課題】 従来技術より製造が安価であり、かつセラミックボールの磨のために特に好適である、少なくとも三層を有する砥石車を作る。
【解決手段】 回転軸(D)を有する円形の多層循環砥石車(1)であって、砥石車(1)が、内側層(2)と、内側層(2)に直接隣接した二つの外側層(3,4)とを含む少なくとも三つの略平坦な層を有し、それらのうち少なくとも内側層(2)がダイヤモンド研磨粒子をある割合で有するものにおいて、砥石車(1)がセラミックボールの研磨のためのものであること、略平坦な層が、回転軸(D)から外向きに、かつ回転軸(D)に対して直交する方向に延びるように配置されること、及び内側層(2)における研磨粒子中のダイヤモンドの割合が外側層(3,4)におけるその割合より大きいことを特徴とする。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(D)を有する円形の多層循環砥石車(1)であって、砥石車(1)が、内側層(2)と、内側層(2)に直接隣接した二つの外側層(3,4)とを含む少なくとも三つの略平坦な層を有し、それらのうち少なくとも内側層(2)がダイヤモンド研磨粒子をある割合で有するものにおいて、砥石車(1)がセラミックボールの研磨のためのものであること、略平坦な層が、回転軸(D)から外向きに、かつ回転軸(D)に対して直交する方向に延びるように配置されること、及び内側層(2)における研磨粒子中のダイヤモンドの割合が外側層(3,4)におけるその割合より大きいことを特徴とする砥石車。
【請求項2】
内側層(2)が、研磨粒子中に少なくとも50重量%の割合のダイヤモンドを有することを特徴とする請求項1に記載の砥石車。
【請求項3】
内側層(2)が、研磨粒子中に少なくとも75重量%の割合のダイヤモンドを有することを特徴とする請求項1に記載の砥石車。
【請求項4】
内側層(2)が、研磨粒子中に少なくとも90重量%の割合のダイヤモンドを有することを特徴とする請求項1に記載の砥石車。
【請求項5】
外側層(3,4)が、それぞれ研磨粒子中に90重量%未満の割合のダイヤモンドを有することを特徴とする請求項1又は4に記載の砥石車。
【請求項6】
外側層(3,4)が、それぞれ研磨粒子中に75重量%未満の割合のダイヤモンドを有することを特徴とする請求項1,3,4に記載の砥石車。
【請求項7】
外側層(3,4)が、それぞれ研磨粒子中に50重量%未満の割合のダイヤモンドを有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の砥石車。
【請求項8】
砥石車(1)が、研磨粒子を含む正確に三つの層(2,3,4)を有することを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の砥石車。
【請求項9】
外側層(3,4)が、同じ構造、特に同じ軸方向厚さを有することを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の砥石車。
【請求項10】
内側層(2)及び外側層(3,4)が合成樹脂結合で作られることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の砥石車。
【請求項11】
セラミックボールの研磨のための請求項1~10のいずれかに記載の砥石車(1)の使用。
【請求項12】
砥石車(1)が、外側で金属支持プレート(13)に結合されていることを特徴とする請求項11に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提文の特徴を有する砥石車、及びかかる砥石車の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
研磨材料の単一の均一層からなる砥石車は、一般に知られている。例えば、文献WO2006/079444A1は、セラミックボールの研磨のために合成樹脂で結合されたダイヤモンド含有研磨粒子の均一層を有する砥石車を示す。砥石車は、軸方向に作用され、研磨されるボールは、回転軸と同心円で配列された溝中を走る。
【0003】
多層砥石車はまた、例えば文献JP2003300166Aから知られている。そこでは、軸方向にサンドイッチ状に互いの上に配置された三つの層を有する砥石車が記載されている。砥石車は、半径方向の正確な切断のための研磨装置の部品である。特に良好な寸法精度は、相対的に粗い研磨粒子を有する中央層がダイヤモンドから作られ、二つの軸方向に隣接する外側層が微細な粒子サイズのダイヤモンドの研磨粒子から作られることで達成される。使用時には、二つの外側層の磨耗は、砥石車がそれ自身加工品の中心になるように砥石車の研磨周囲面を凸状にする。さらに、文献CN106944938は、三層砥石車を開示し、そこでは二つの外側層は、ある割合のダイヤモンド研磨粒子を含有し、中央又は内側層は、アルミナ及び合成樹脂を含有する。この設計は、砥石車の内側層を通した熱放散を改良する。
【0004】
全ての層において均一な又は等しい量のダイヤモンド研磨粒子を含有するマトリックスを有する砥石車は、製造するのに高価である。ダイヤモンド研磨粒子を含まない中央又は内側層を有する三層砥石車は、セラミックボールの研磨のために好適ではない。
【発明の概要】
【0005】
それゆえ、本発明の目的は、従来技術より製造が安価であり、かつセラミックボールの研磨のために特に好適である、少なくとも三層を有する砥石車を作ることである。
【0006】
これらの目的は、請求項1の特徴を有する砥石車、及びかかる砥石車の使用によって解決される。
具体的には、本願発明は、以下の[1]~[12]の構成を有する。
[1]内側層(2)と、内側層(2)に直接隣接した二つの外側層(3,4)とを含む少なくとも三つの略平坦な層を有し、それらのうち少なくとも内側層(2)がダイヤモンド研磨粒子をある割合で有する多層循環砥石車(1)において、内側層(2)における研磨粒子中のダイヤモンドの割合が外側層(3,4)におけるその割合より大きいことを特徴とする砥石車。
[2]内側層(2)が、研磨粒子中に少なくとも50重量%の割合のダイヤモンドを有することを特徴とする[1]に記載の砥石車。
[3]内側層(2)が、研磨粒子中に少なくとも75重量%の割合のダイヤモンドを有することを特徴とする[1]に記載の砥石車。
[4]内側層(2)が、研磨粒子中に少なくとも90重量%の割合のダイヤモンドを有することを特徴とする[1]に記載の砥石車。
[5]外側層(3,4)が、それぞれ研磨粒子中に90重量%未満の割合のダイヤモンドを有することを特徴とする[1]又は[4]に記載の砥石車。
[6]外側層(3,4)が、それぞれ研磨粒子中に75重量%未満の割合のダイヤモンドを有することを特徴とする[1],[3],[4]に記載の砥石車。
[7]外側層(3,4)が、それぞれ研磨粒子中に50重量%未満の割合のダイヤモンドを有することを特徴とする[1]~[4]のいずれかに記載の砥石車。
[8]砥石車(1)が、研磨粒子を含む正確に三つの層(2,3,4)を有することを特徴とする[1]~[7]のいずれかに記載の砥石車。
[9]外側層(3,4)が、同じ構造、特に同じ軸方向厚さを有することを特徴とする[1]~[8]のいずれかに記載の砥石車。
[10]内側層(2)及び外側層(3,4)が合成樹脂結合で作られることを特徴とする[1]~[9]のいずれかに記載の砥石車。
[11]ボールの研磨のための[1]~[10]のいずれかに記載の砥石車(1)の使用。
[12]砥石車(1)が、外側で金属支持プレート(13)に結合されていることを特徴とする[11]に記載の使用。
【0007】
砥石車は、一つの内側又は中央層及び少なくとも二つの外側層を与えられ、内側層は、内側層に直接隣接する二つの外側層より高い割合の研磨粒子中のダイヤモンドを有するので、均一な構造の砥石車、又はダイヤモンド含有量ではなく粒子サイズのみが異なるかかる砥石車と比較してダイヤモンド研磨粒子を節約することが可能である。さらに、かかる砥石車は、セラミックボールの研磨のために有利に使用されることができる。なぜなら必要なガイド溝が、ボールと接触する外側層に素早く形成され、内側層が優先的に、即ちもっぱら磨耗するように作用しなければならないからである。即ち、そのように実際の研磨プロセスをもたらさなければならないからである。
【0008】
有利には、少なくとも内側層は、合成樹脂で結合された研磨粒子を用いて設計される。もし内側層の各面側に直接隣接する二つの外側層が同じ研磨粒子を持つなら、そして特にこれらの二つの外側層が軸方向に同じ厚さを有するなら、さらに有利である。
【0009】
ボール研磨のために使用されるとき、新しい砥石車は、一つの外側面側で金属裏打ちプレートに結合されることが好ましい。裏打ちプレートに直接横たわる外側層は、そのとき、ボール研磨中の研磨又はガイド目的のために使用されない。しかしながら、この層を、同一設計を持つ他の外側層とは反対側に与えることが有利であることがわかった。なぜならこれは、砥石車全体の歪、特に製造時の内側層の歪を最小にするからである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の実施形態の一例を、図面を参照して以下記載する。
図1図1は、半径方向の三層砥石車の断面図である。
図2図2は、ボール研磨に使用するために作られたガイド溝を有する図1の砥石車である。
図3図3は、対応する装置におけるボール研磨のために使用する図1及び図2からの砥石車である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1では、本発明による砥石車1は、点状に断面で概略的に示されている。砥石車1は、内側層2を有し、それは、第一外側層3と第二外側層4の間にサンドイッチされている。内側層2は、二つの外側層3,4より研磨粒子中のダイヤモンドの割合が高い。例えば、内側層2は、研磨粒子中のダイヤモンドの割合が50重量%(wt%)、75重量%、又はさらに90重量%であることができる。この数字は、結合マトリックスのない研磨粒子中の割合である。好ましい実施形態では、研磨粒子はまた、100%ダイヤモンドからなることができる。研磨粒子の粒子サイズは、本発明では重要ではない。好適な粒子サイズは、従来技術から知られている。
【0012】
二つの外側層3,4は、本質的に同じ構造を有する。それらはまた、研磨粒子を含むが、ダイヤモンドを低量しか含まないか、又は全く含まない。従って、これらの二つの層中のダイヤモンドの含有量は、50重量%未満、特に25重量%未満、さらには10重量%未満であることができる。好ましい実施形態では、二つの外側層3,4は、製造プロセスにおいて避けられない不純物又は痕跡を除いてダイヤモンド研磨粒子を本質的に含まない。
【0013】
もし内側層2が100%のダイヤモンド研磨粒子で製造されないなら、必要な合計100%は、より安価な研磨粒子、例えば鋼玉石(Al)、特に高グレード鋼玉石、炭化ケイ素(SiC)、他の公知の研磨粒子で補うことができる。二つの外側層はまた、従来の研磨粒子を含む。特に、二つの外側層3,4がダイヤモンド研磨粒子を含まない実施形態では、研磨粒子の全てが鋼玉石、SiC、他の研磨粒子、又は望ましい非ダイヤモンド研磨粒子の混合物のような低コスト材料から選択される。
【0014】
内側層2及び外側層3,4は、合成樹脂結合でホットプレスすることによって製造される。研磨粒子と合成樹脂の比率は、従来技術で一般的なように、好適に選択される。本発明による砥石車の細孔容積は、3~10%であることが好ましい。
【0015】
二つの外側層3,4の本質的に同一の構造は、砥石車が製造中又は後に、例えば冷却段階に実際にひずまないことを確実にする。一つの側だけに付与された外側層を持つ砥石車の場合には、材料の異なる熱伝導及び熱容量のため、並びに材料の異なる熱膨張のために焼結ひずみが予想される。
【0016】
砥石車は、円形車であり、それは、軸Dに対して回転対称である。
【0017】
軸Dの方向の厚さは、用途に依存して選択されることができる。従って、砥石車及び個々の層2,3,4の寸法は、用途の状況に依存して選択可能である。砥石車はまた、研磨機のニーズに適応して選択されることができる。特に、外側層3,4の厚さは、内側層2の厚さより小さくすることができる。これらは、主に砥石車3を安定化するために役立つからである。セラミックボールのための送込み層として役立つ層3は、用途(即ち、使用時に研磨されるボール直径)のために適切な寸法にヒートプレス後に研磨される。
【0018】
図2は、図1からの砥石車1を同様に切断して点状の表示にして示す。ここで、図1の最初の状況と比較して、上方の外側層3がその後(ホットプレス後)、ガイド溝5を与えられていることが断面でわかる。ガイド溝5は、ボール研磨に使用するための砥石車1を作る。ガイド溝5は、同心の円周の溝であり、それらは、外側層3の外側面に配置され、回転軸Dに対して対称的にかつ同心で配列される。
【0019】
図3は、鉛直駆動軸を有する機械の上でのボール研磨のための本発明による砥石車1の使用を示す。図3は、側面図でボール研磨のための装置を概略的に示す。ここで、静止ガイド円板10が与えられ、それは、鋳鋼から作られることが好ましい。ガイド円板10は、その下側に円周ガイド溝11を有し、そこには研磨される複数のボール12が案内されている。下側から、裏打ちプレート13は、内側層2と二つの外側層3及び4とを配置された砥石車1を与えられ、それは、駆動軸15によって回転するように設定される。
【0020】
研磨のため、圧力Pが下側から静止ガイド円板10に及ぼされる。裏打ちプレート13は、ボール12がガイド溝11中で、そして特に砥石車1のガイド溝5中でも回転するように、駆動手段によって回転するように設定される。第一外側層3中のガイド溝がセラミックボールの研磨に対して何ら認識できるほどの貢献をまだ与えないが、ボール12が層3を通って自由に動いてダイヤモンド含有層2と接触するようになると有効な研磨プロセスが開始する。ガイド溝の異なる領域におけるスピード差は、研磨粒子がセラミックボールの表面に対して動くことを生じる。次いで研磨粒子は、ボールの表面の研磨を生じ、従って表面品質及びボール形状の改良をもたらす。
【0021】
本発明による砥石車は、鉛直駆動軸を有するボール研磨機、並びに水平駆動軸を有するボール研磨機に使用されることができる。
【0022】
これに関連して記載される砥石車の利点は、特にボール研磨のために使用されるとき、内側層2の全厚さが研磨プロセスのために使用されることができることである。安価な研磨粒子で製造される外側層は、ガイド溝5中のボールブランクの初期案内のため、そして裏打ちプレート13に砥石車を固定するためにのみ役立つ。支持層4は、研磨ダイヤモンド含有層3が貫通まで使用されることができ、従って単一層円板とは対照的に、廃棄されるダイヤモンド材料の減少が達成されるというさらなる効果を有する。もし両目的が単一層のダイヤモンド砥石車の場合にダイヤモンド層によって実施されるなら、ダイヤモンド研磨粒子の全体の消費は、高い割合のダイヤモンドを含有する内側層を有する、上で示された多層砥石車の場合より多い。さらに、ボールが動く層2が柔らかければ、一方では溝形成のプロセスが硬いダイヤモンド層中より有意に速く起こり、他方では低品質のボールバッチの数が減少されることに導く。
図1
図2
図3