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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024129
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】塑性加工用金型の冷却剤
(51)【国際特許分類】
   C10M 173/02 20060101AFI20240214BHJP
   C10M 103/06 20060101ALI20240214BHJP
   C10M 125/26 20060101ALI20240214BHJP
   C10M 129/44 20060101ALI20240214BHJP
   C10M 129/38 20060101ALI20240214BHJP
   C10M 129/48 20060101ALI20240214BHJP
   C10M 129/54 20060101ALI20240214BHJP
   C10M 105/22 20060101ALI20240214BHJP
   C10N 40/24 20060101ALN20240214BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
C10M173/02
C10M103/06 E
C10M125/26
C10M129/44
C10M129/38
C10M129/48
C10M129/54
C10M105/22
C10N40:24
C10N30:00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024004156
(22)【出願日】2024-01-15
(62)【分割の表示】P 2019188217の分割
【原出願日】2019-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000229597
【氏名又は名称】日本パーカライジング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】水野 淳也
(72)【発明者】
【氏名】内田 香織
(72)【発明者】
【氏名】青山 充
(57)【要約】
【課題】塑性加工用金型に対して有用な新規な冷却剤を提供する。
【解決手段】以下の成分A及び成分Bを水、水混和性有機溶媒、又は両者の混合物中に分散させた液である塑性加工用金型の冷却剤。成分A:一種又は二種以上のケイ酸塩含有鉱物;成分B:脂肪族カルボン酸及びその塩、脂肪族ヒドロキシ酸及びその塩、芳香族カルボン酸及びその塩、並びに、芳香族ヒドロキシ酸及びその塩よりなる群から選択される一種又は二種以上の化合物であって、炭素数が12~22である化合物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分A及び成分Bを水、水混和性有機溶媒、又は両者の混合物中に分散させた液である塑性加工用金型の冷却剤。
成分A:一種又は二種以上のケイ酸塩含有鉱物;
成分B:脂肪族カルボン酸及びその塩、脂肪族ヒドロキシ酸及びその塩、芳香族カルボン酸及びその塩、並びに、芳香族ヒドロキシ酸及びその塩よりなる群から選択される一種又は二種以上の化合物であって、炭素数が12~22である化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塑性加工用金型の冷却剤に関する。
【背景技術】
【0002】
金型を用いて塑性加工品を製造する際、金型が高温になる場合がある。金型は高温に晒されることで熱劣化を生じ、型寿命が短くなるという問題がある。塑性加工品の生産効率向上及び生産コスト低減の観点から、金型の熱劣化を防ぐことが望ましい。そこで、冷却剤を利用して金型を冷却する方法が従来提案されている。
例えば、特許文献1には、熱間プレス装置の金型内面に冷却剤を噴射する方法が開示されている。冷却剤としては冷却水が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-197295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、塑性加工用金型に対して有用な新規な冷却剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ケイ酸塩含有鉱物及び所定のカルボキシ基を有する炭化水素化合物を含有する冷却剤が、塑性加工用金型に対して優れた冷却効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は例示的に以下のように特定される。
[1]
以下の成分A及び成分Bを含有する塑性加工用金型の冷却剤。
成分A:一種又は二種以上のケイ酸塩含有鉱物;
成分B:脂肪族カルボン酸及びその塩、脂肪族ヒドロキシ酸及びその塩、芳香族カルボン酸及びその塩、並びに、芳香族ヒドロキシ酸及びその塩よりなる群から選択される一種又は二種以上の化合物。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、塑性加工用金型に対して有用な新規な冷却剤を提供することができる。従って、本発明は、塑性加工品の生産効率向上及び生産コスト低減に寄与することが期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、塑性加工用金型の冷却剤を含む本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、その本発明の趣旨から逸脱しない範囲で任意に変更可能であり、下記の実施形態に限定されない。
【0009】
本発明に係る塑性加工用金型の冷却剤は一実施形態において、以下の成分A及び成分Bを含有する。これにより、組成加工用金型に対して優れた冷却効果を発揮することができる。
成分A:一種又は二種以上のケイ酸塩含有鉱物;
成分B:脂肪族カルボン酸及びその塩、脂肪族ヒドロキシ酸及びその塩、芳香族カルボン酸及びその塩、並びに、芳香族ヒドロキシ酸及びその塩よりなる群から選択される一種又は二種以上の化合物
【0010】
<成分A>
成分Aとしては、一種又は二種以上のケイ酸塩含有鉱物が使用される。ケイ酸塩含有鉱物は、天然鉱物であっても、合成物であってもよい。ケイ酸塩含有鉱物としては、酸化アルミニウム及び/又は酸化マグネシウムを含有することが好ましい。更に、ケイ酸塩含有鉱物としては、含水鉱物であってもよいが、水和物であってもよい。ケイ酸塩含有鉱物としては、特に制限されるものではないが、例えば層状型ケイ酸塩含有鉱物及び網目構造型ケイ酸塩含有鉱物等が挙げられる。
【0011】
層状型ケイ酸塩含有鉱物はSiO4四面体が面状に結合しているものであれば特に制限されるものではなく、例えば、カオリナイト、カオリン、ハロイ石、アンチゴライト、単斜クリソタイル石、斜方クリソタイル石、リザード石、珪ニッケル鉱、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、葉ろう石、滑石、雲母(白雲母、絹雲母、金雲母、鉄雲母、黒雲母、トリリシオ雲母、ポリリシオ雲母、リチア雲母、チンワルド雲母、真珠雲母等)、イライト、海緑石、(クリノクロア石、スチルプノメレン等)、苦土蛭石、ガイロル石、オーケン石、葡萄石、フッ素魚眼石、水酸魚眼石、珪孔雀石等のフィロケイ酸塩鉱物が挙げられる。
【0012】
網目構造型ケイ酸塩含有鉱物はSiO4四面体が網目状に結合しているものであれば特に制限されるものではなく、例えば、正長石、サニディン、微斜長石、アノーソクレース、曹長石、灰沖積、ペタル石等の長石;カリ霞石、灰霞石、白榴石、方ソーダ石、藍方石、青金石、黝方石等の準長石;曹柱石、灰柱石等の柱石;アミチ沸石、方沸石、バレル沸石、ベルベルヒ沸石、ビキタ沸石、ボッグス沸石、ストロンチウムブリュースター沸石、重土ブリュースター沸石、灰菱沸石、ソーダ菱沸石、カリ菱沸石、キアヴェンナ石、カリ斜プチロル沸石、ソーダ斜プチロル沸石、灰斜プチロル沸石、コウルス沸石、灰ダキアルディ沸石、ソーダダキアルディ沸石、エディントン沸石、剥沸石、ソーダエリオン沸石、カリエリオン沸石、灰エリオン沸石、曹達フォージャス沸石、灰フォージャス沸石、苦土フォージャス沸石、苦土フェリエ沸石、カリフェリエ沸石、ソーダフェリエ沸石、ガロン沸石、ゴールト石、ギスモンド沸石、ソーダグメリン沸石、灰グメリン沸石、カリグメリン沸石、ゴビンス沸石、ゴナルド沸石、グーズクリーク沸石、ゴタルディ沸石、重土十字沸石、灰輝沸石、ストロンチウム輝沸石、ソーダ輝沸石、カリ輝沸石、シャンファ石、カリボルサイト濁沸石、灰レビ沸石、ソーダレビ沸石、ロヴダル石、マリコパ石、マッシィ沸石、メルリーノ沸石、中沸石、モンテソンマ沸石、モルデン沸石、ムティーナ沸石、ソーダ沸石、オフレ沸石、パハサパ石、パルテ沸石、曹達ポーリング沸石、カリポーリング沸石、カルシウムポーリング沸石、パーリアル沸石、ソーダ十字沸石、カリ十字沸石、灰十字沸石、ポルクス石、ロッジァン石、スコレス沸石、ステラ沸石、灰束沸石、ソーダ束沸石、テラノヴァ沸石、トムソン沸石、ツァーニック沸石、ツョルトナー沸石、ワイラケ沸石、ヴァイネベーネ石、ウィルヘンダーソン沸石、湯河原沸石、白榴石、アンモニウム白榴石、イネス石、ダンブリ石、ヘルバイト、デーナ石等の沸石(ゼオライト)等のテクトケイ酸塩鉱物が挙げられる。ゼオライトの結晶構造は、A型、X型、ベータ型、ZSM-5型、フェリエライト型、モルデナイト型、L型、Y型のいずれであってもよい。ケイ酸塩含有鉱物は一種を使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0013】
<成分B>
成分Bとしては、脂肪族カルボン酸及びその塩、脂肪族ヒドロキシ酸及びその塩、芳香族カルボン酸及びその塩、並びに、芳香族ヒドロキシ酸及びその塩よりなる群から選択される一種又は二種以上の化合物が使用される。
【0014】
脂肪族カルボン酸及び脂肪族ヒドロキシ酸としては、特に制限されるものではないが、例えば、炭素数が7~30の脂肪族カルボン酸及び脂肪族ヒドロキシ酸を使用することができ、炭素数が8~28の脂肪族カルボン酸及び脂肪族ヒドロキシ酸を使用することが好ましく、炭素数が12~22の脂肪族カルボン酸及び脂肪族ヒドロキシ酸を使用することがより好ましい。
【0015】
脂肪族カルボン酸とは、炭化水素中の一又は二以上の水素原子がカルボキシル基に置換された化合物を意味する。炭化水素は、一又は二以上の二重結合または三重結合を有していてもよい。脂肪族カルボン酸における炭素は、直鎖状、分岐鎖状、及び/又は環状に連結していてもよいが、直鎖状に連結していることが好ましい。環状に連結して構成される環は、例えば3員環、4員環、5員環及び6員環等であってもよいが、これらに制限されるものではない。環は非芳香族の環であれば特に制限はなく、飽和環でもよく、不飽和環でもよい。脂肪族カルボン酸は一種を使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
脂肪族カルボン酸としては、例えば、酪酸、ヘキサン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、イコサン酸、ドコサン酸、オクタコサン酸、2-エチルヘキサン酸、3,5,5-トリメチルへキサン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、シクロへキサン酸、4-メチルシクロヘキサンカルボン酸、カルボキシメチルシクロヘキサン、2-(カルボキシメチル)シクロへキサンアクリル酸、9-テトラデセン酸、2-ヘキサデセン酸、9-ヘキサデセン酸、9-オクタデセン酸、9,12-オクタデカンジエン酸、6,9,12-オクタデカントリエン酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等が挙げられる。
【0017】
脂肪族ヒドロキシ酸とは、上述した脂肪族カルボン酸における炭化水素中の一又は二以上の水素原子を水酸基に置換した化合物を意味する。脂肪族ヒドロキシ酸としては、例えば、2-ヒドロキシミリスチン酸、3-ヒドロキシミリスチン酸、2-ヒドロキシパルミチン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、2-ヒドロキシイコサン酸、3-ヒドロキシ-3-メチルヘキサン酸、4-ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、3-ヒドロキシ-4-メチルシクロヘキサン-1-カルボン酸等が挙げられる。脂肪族ヒドロキシ酸は一種を使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
芳香族カルボン酸及び芳香族ヒドロキシ酸としては、特に制限されるものではないが、例えば、炭素数が7~30の芳香族カルボン酸及び芳香族ヒドロキシ酸を使用することができ、炭素数が8~28の芳香族カルボン酸及び芳香族ヒドロキシ酸を使用することが好ましく、炭素数が12~22の芳香族カルボン酸及び芳香族ヒドロキシ酸を使用することがより好ましい。
【0019】
芳香族カルボン酸とは、芳香環を有する炭化水素化合物において、一又は二以上の水素原子がカルボキシル基に置換された化合物を意味する。芳香環は単環式及び二環式以上の多環式の何れでもよく、多環式の場合は、縮合環を有していてもよい。炭化水素は、一又は二以上の二重結合または三重結合を有していてもよい。芳香環に結合する炭化水素は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。芳香族カルボン酸は一種を使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
芳香族カルボン酸としては、例えば、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、3-フェニル-2-プロペン酸、4-メトキシケイ皮酸、p-エチル安息香酸、4-ビニル安息香酸等が挙げられる。
【0021】
芳香族ヒドロキシ酸としては、上述した芳香族カルボン酸において一又は二以上の水素原子を水酸基に置換した化合物が挙げられる。芳香族ヒドロキシ酸の例としては、モノヒドロキシ安息香酸(サリチル酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸)、ジヒドロキシ安息香酸(2-ピロカテク酸等)、トリヒドロキシ安息香酸(没食子酸等)、4-メチルサリチル酸、シナピン酸、マンデル酸、3-ヒドロキシ-2-フェニルプロパン酸、ヒドロキシケイ皮酸、3,4-ジヒドロキシケイ皮酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸等が挙げられる。芳香族ヒドロキシ酸は一種を使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
脂肪族カルボン酸塩、脂肪族ヒドロキシ酸塩、芳香族カルボン酸塩及び芳香族ヒドロキシ酸塩としては、それぞれ、上述した脂肪族カルボン酸、脂肪族ヒドロキシ酸、芳香族カルボン酸及び芳香族ヒドロキシ酸の金属塩が挙げられる。金属塩としては、限定的ではないが、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、バリウム塩等)、マグネシウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩が挙げられる。その他の塩として、スズ、鉄、銀、アンチモン、マンガン、アンモニウムの塩が挙げられる。これらの塩は一種を使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
冷却剤における成分Bの合計質量に対する成分Aの合計質量の比は、1.0以上35.5以下の範囲内であることが好ましく、2.0以上26.0以下の範囲内であることがより好ましく、3.0以上15.0以下の範囲内であることが更により好ましい。
【0024】
<溶媒>
本発明に係る冷却剤は一実施形態において、成分A及び成分Bを溶媒中に分散させた液として提供することができる。溶媒は水とすることができるが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;N,N’-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノへキシルエーテル等のエーテル系溶媒;1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン等のピロリドン系溶媒等の水混和性有機溶媒を使用することも可能である。水混和性有機溶媒を水と混合させる場合は、水混和性有機溶媒と水との総質量に対して50質量%以下であれば特に制限されるものではなく、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下であってもよい。
【0025】
<その他の成分>
本発明に係る冷却剤は一実施形態において、成分A、成分B及び溶媒の他に、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、限定的ではないが、例えば、樹脂成分、分散剤、界面活性剤等、既存の潤滑剤に使用されている添加剤を添加することが可能である。
【0026】
なお、冷却剤には、成分A、成分B及び溶媒以外に、シリカを含有しないことが好ましい。従って、本発明に係る冷却剤の一実施形態においては、シリカの含有濃度は冷却剤100質量%に対して、0.4質量%以下であり、0.2質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0質量%であることが最も好ましい。
【0027】
本発明に係る冷却剤は、そのまま使用してもよく、水等の溶媒で希釈して使用してもよい。冷却剤の希釈率は、加工対象、金型、及び冷却剤の金型への接触方法等によって適宜調整すればよいが、例えば1.0倍以上15倍以下の範囲内とすることができ、典型的には1.2倍以上10倍以下の範囲内とすることができる。
【0028】
<冷却剤の製造方法>
冷却剤は、溶媒に、成分A及び成分Bを、必要に応じて所望の添加剤を、混合することにより製造可能である。
【0029】
本実施形態において、上記冷却材は、金属材料を塑性加工する際に有用である。具体的には、塑性加工が施される金属材料、又は塑性加工するための金型に、冷却剤を接触させることにより、当該金型を用いた塑性加工を効率よく行うことができる。なお、冷却剤を前記金属材料又は前記金型に接触することにより皮膜を形成させてもよいし、液が付着している状態としてもよい。ここで、前記金属材料としては、特に制限されるものではないが、鉄、鋼、合金鋼(例:ステンレス鋼、クロムモリブデン鋼、ダイス鋼)、銅又は銅合金、アルミニウム又はアルミニウム合金、チタン又はチタン合金等の金属材料が挙げられる。塑性加工としては、限定的ではないが、鍛造、金属プレス、圧延加工、押出加工、伸線加工、引き抜き加工、絞り加工、スピニング加工及び曲げ加工が挙げられる。本発明に係る塑性加工品の製造方法は、金型温度が高温になりやすい温間加工及び熱間加工に好適に使用可能である。冷却剤の、前記金属材料又は前記金型への接触は、特に制限されるものではないが、例えば、浸漬法、フローコート法、スプレー法、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
【実施例0030】
以下に、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を比較例と共に示す。ただし、本発明は本実施例によって制限されるものではない。
【0031】
(1. 冷却剤の調製)
成分Aとして、表1に示すケイ酸塩含有鉱物又はシリカを用いた。成分Bとして、表1に示す各種脂肪族カルボン酸又はその塩、脂肪族ヒドロキシ酸の塩、芳香族ヒドロキシ酸を用いた。
【0032】
水に成分Aを添加して25℃で30分間撹拌した後、成分Bを添加して更に25℃で1時間撹拌することで、実施例1~16及び比較例1~5の冷却剤を調製した。各冷却剤の組成は表1及び表2に記載の通りである。
【0033】
(2.金型冷却試験)
上記で調製した各冷却剤に対して以下の金型冷却試験を行った。
<試験条件>
・円盤状金型サイズ:φ200mm×厚み20mm
・円盤状金型材質:SS400
・金型加熱温度:300℃
・スプレーガン:LPH-100 スプレーガン(アネスト岩田製)
・スプレーエア圧力:0.2MPa
・金型・スプレーガン間距離:200mm
・冷却剤噴霧量:5g
・金型温度測定方法:金型の上面中心から5mm深さの位置に金型の側面から熱電対を挿入し金型温度を測定
・ホットプレート:アズワン セラミックホットプレート(品番:CHP-250DF)
・均熱用アルミプレートサイズ:250mm×250mm×厚み10mm
<試験手順>
(1)ホットプレートの天板上に均熱用アルミプレートを載せ、更に円盤状金型を均熱用アルミプレートの上に載置した。
(2)金型温度が300℃になるようにホットプレートで加熱を開始した。
(3)金型温度が300℃になり安定したのを確認してから、以下の手順で金型の冷却を行った。
・所定量の冷却剤をスプレーガンに充填した。
・データロガーで金型温度の測定を開始した。
・ホットプレートの加熱を停止し、スプレーガンを用いて、金型の上面に向かって、上記の金型・スプレーガン間距離、スプレーエア圧力及び冷却剤噴霧量の条件で冷却剤を噴霧した。
・冷却剤の噴霧により金型温度がいったん降下し、再び上昇するのを確認してからデータロガーでの測定を終了した。
(4) 金型に付着した冷却剤を除去し、手順(2)に戻り、次の試験を行った。
【0034】
金型冷却試験後、データロガーの結果に基づき、各冷却剤の噴霧により金型温度がいったん降下したときの金型温度の最低値を確認し、金型温度の300℃からの最大降下量(℃)を求めた。各冷却剤の金型冷却性の評価は、金型温度の最大降下量に基づき次のように分類した。結果を表1及び表2に示す。
S:45℃以上
A:40℃以上45℃未満
B:35℃以上40℃未満
C:30℃以上35℃未満
D:30℃未満
【0035】
(3.リング圧縮試験法による摩擦係数の測定)
上記で調製した各冷却剤について、リング圧縮試験法により摩擦係数を測定した。
サイズが外径30mm×内径15mm×厚み10mmであり、材質がS45C球状化焼鈍材のリングを、マッフル炉にて1000℃に加熱し、5分間保持した。リングの温度は、リングに熱電対を溶接することにより測定した。
サイズがφ50.8mm×厚み10mmで、材質がSKD61(焼入れ)の平金型を上下1枚ずつ用意した。この上下金型を300℃に加熱した後、上下金型のリングとの接触面に、スプレーガン(LPH-100(アネスト岩田製))を用いて、スプレーエア圧力0.2MPa、噴霧時間2秒の条件で、各冷却剤を噴霧した。
次いで、1000℃に加熱した上記リングを冷却剤塗布後の上下金型の間に挟み、2000kNクランクプレス機(MSF200(福井機械製))を用いて加工速度30spm、圧縮率52%で圧縮した。
【0036】
圧縮後のリングの内径と厚みを測定して内径変化率を算出し、CAE解析ソフト(COLD FORM)を用いて、圧縮率-内径変化率の理論曲線にプロットして、各冷却剤の摩擦係数(μ)を求めた。各冷却剤の摩擦係数の評価は、次のように分類した。結果を表1及び表2に示す。
S:0.1未満
A:0.1以上0.14未満
B:0.14以上0.18未満
C:0.18上0.22未満
D:0.22以上
【0037】
【表1-1】
【0038】
【表1-2】
【0039】
【表2】