(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024142
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】飲料供給装置
(51)【国際特許分類】
A47J 31/36 20060101AFI20240215BHJP
A47J 31/46 20060101ALI20240215BHJP
G07F 13/06 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
A47J31/36 132
A47J31/46
G07F13/06 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126748
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】722012006
【氏名又は名称】サンデン・リテールシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 孝洋
(72)【発明者】
【氏名】海老原 由次
(72)【発明者】
【氏名】石井 勉
(72)【発明者】
【氏名】角田 貴也
【テーマコード(参考)】
3E047
4B104
【Fターム(参考)】
3E047AA03
3E047BA01
3E047EC05
3E047ED02
3E047ED03
3E047FA01
4B104AA16
4B104BA34
4B104BA56
4B104BA64
4B104EA31
(57)【要約】
【課題】抽出容器における原料の塊状化を抑制する。
【解決手段】飲料供給装置1は、原料供給部2と、水供給部3と、抽出容器4と、フィルタFと、ドリップパン5と、抽出容器4において抽出された飲料をフィルタF及びドリップパン5を介して吸引し吸引した飲料を吐出してカップCへ供給するポンプ7と、エアを抽出容器4に供給するエア供給部8と、制御部11と、を含む。制御部11は、水供給部3を作動させて抽出容器4への所定の水供給量の水を供給する水供給運転と、エア供給部8を作動させて抽出容器4の内部の水をエアにより攪拌させた状態で、原料供給部2を作動させて抽出容器4に所定の原料供給量の原料を供給する原料供給運転と、を実行するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水及び原料を用いて飲料を抽出する抽出容器と、
前記抽出容器に原料を供給する原料供給部と、
前記抽出容器に水を供給する水供給部と、
前記抽出容器において抽出された飲料を濾過するフィルタと、
前記フィルタを通過した飲料を受け入れるドリップパンと、
前記ドリップパンに接続された飲料供給路に設けられ、前記抽出容器において抽出された飲料を前記フィルタ及び前記ドリップパンを介して吸引し、吸引した所定の飲料供給量の飲料を吐出してカップへ供給するポンプと、
を含む、飲料供給装置であって、
前記ドリップパン及び前記フィルタを介してエアを前記抽出容器に供給するエア供給部と、
前記水供給部、前記原料供給部、前記ポンプ及び前記エア供給部の動作を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、
前記水供給部を作動させて前記抽出容器に所定の水供給量の水を供給する水供給運転と、前記エア供給部を作動させて前記抽出容器の内部の水をエアにより攪拌させた状態で、前記原料供給部を作動させて前記抽出容器に所定の原料供給量の原料を供給する原料供給運転と、を実行するように構成されている、
飲料供給装置。
【請求項2】
前記所定の原料供給量は、前記所定の飲料供給量の飲料の抽出に必要な全量より少ない量に設定されており、
前記制御部は、前記原料供給運転を複数回に分けて実行する、請求項1に記載の飲料供給装置。
【請求項3】
前記制御部は、複数回の前記原料供給運転のうちの前後する二回の原料供給運転の間において前記エア供給部を継続して作動させると共に、最後の前記原料供給運転の終了後に前記エア供給部を所定時間継続して作動させる、請求項2に記載の飲料供給装置。
【請求項4】
前記所定の水供給量は、前記所定の飲料供給量の飲料の抽出に必要な全量に設定されており、
前記制御部は、前記水供給運転を一回実行する、請求項2に記載の飲料供給装置。
【請求項5】
前記所定の水供給量は、前記所定の飲料供給量の飲料の抽出に必要な全量より少ない量に設定されており、
前記制御部は、前記水供給運転を複数回に分けて実行する、請求項2に記載の飲料供給装置。
【請求項6】
前記所定の水供給量及び前記所定の原料供給量は、それぞれ、前記所定の飲料供給量の飲料の抽出に必要な全量に設定されており、
前記制御部は、前記水供給運転及び前記原料供給運転のそれぞれを一回実行する、請求項1に記載の飲料供給装置。
【請求項7】
前記エア供給部は、前記ポンプとは別に設けられている、請求項1から6のいずれか一つに記載の飲料供給装置。
【請求項8】
前記ポンプは、正回転方向で作動することで前記抽出容器において抽出された飲料を吸引し、
前記エア供給部は、前記ポンプを逆回転方向で作動させることで実現され、請求項1から6のいずれか一つに記載の飲料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料を抽出してカップに提供する飲料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コーヒー豆を粉砕することで得られたコーヒー粉末(挽き豆ともいう)や緑茶などの茶葉を原料として用い、この原料と水とを抽出容器に供給して飲料を抽出し、この飲料をカップに供給する飲料供給装置が知られている。このような飲料抽出タイプの飲料供給装置として、特許文献1に開示された飲料供給装置が知られている。特許文献1の飲料供給装置では、抽出容器の底部開口は抽出容器において抽出された飲料を濾過するフィルタにより塞がれており、フィルタの下方にはフィルタを通過した飲料を受け入れるドリップパンが配置され、ドリップパンに接続された飲料供給路には、ポンプが設けられている。抽出容器の内部で抽出された飲料はフィルタによって濾過されつつドリップパンで受け入れられ、ドリップパンに受け入れられた飲料はポンプによって吸引されて飲料供給路を介してカップに供給される。
【0003】
そして、飲料抽出タイプの飲料供給装置では、抽出容器における飲料の抽出を促進するために、水及び原料が供給された抽出容器にドリップパン及びフィルタを介してエアを送り込む、混合運転がなされる場合がある。この混合運転(エア攪拌運転ともいう)では、抽出容器の内部の水と原料との混合液が、フィルタの上面から抽出容器の内部に噴出されたエアによって攪拌され、その結果、飲料の抽出が促進されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、飲料抽出タイプの飲料供給装置において、抽出容器に供給される水の量に対するコーヒー粉末(挽き豆ともいう)や茶葉などの原料の量の比率が一般的な飲料における比率よりも高い場合や、原料が抽出容器に短時間に多量に供給(投入)される場合や、原料の粒度が一般的な原料の粒度よりも細かい場合には、原料が大きな塊状になって抽出容器の内部で水面に浮いたり、水中に沈んだりしてしまうおそれがある。このように、原料が大きな塊状になると、混合運転がなされたとしても、抽出容器において水と原料との混合液の良好な攪拌が困難になり、その結果、抽出効率の低下を招くおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、このような実状に鑑み、原料が抽出容器において塊状になることを抑制することができる、飲料供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の一態様によると、水及び原料を用いて飲料を抽出する抽出容器と、前記抽出容器に原料を供給する原料供給部と、前記抽出容器に水を供給する水供給部と、前記抽出容器において抽出された飲料を濾過するフィルタと、前記フィルタを通過した飲料を受け入れるドリップパンと、前記ドリップパンに接続された飲料供給路に設けられ、前記抽出容器において抽出された飲料を前記フィルタ及び前記ドリップパンを介して吸引し、吸引した所定の飲料供給量の飲料を吐出してカップへ供給するポンプと、を含む、飲料供給装置が提供される。この飲料供給装置は、前記ドリップパン及び前記フィルタを介してエアを前記抽出容器に供給するエア供給部と、前記水供給部、前記原料供給部、前記ポンプ及び前記エア供給部の動作を制御する制御部と、を含む。前記制御部は、前記水供給部を作動させて前記抽出容器に所定の水供給量の水を供給する水供給運転と、前記エア供給部を作動させて前記抽出容器の内部の水をエアにより攪拌させた状態で、前記原料供給部を作動させて前記抽出容器に所定の原料供給量の原料を供給する原料供給運転と、を実行するように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、原料が抽出容器において塊状になることを抑制することができる、飲料供給装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る飲料供給装置の概略図である。
【
図2】フィルタ送り中の飲料供給装置の概略図である。
【
図3】飲料供給装置の動作の一例を説明するタイミングチャートである。
【
図4】飲料供給装置の動作の他の例を説明するタイミングチャートである。
【
図5】飲料供給装置の動作の他の例を説明するタイミングチャートである。
【
図6】飲料供給装置の動作の他の例を説明するタイミングチャートである。
【
図7】飲料供給装置の動作の他の例を説明するタイミングチャートである。
【
図8】変形例に係る飲料供給装置を説明するための概略図である。
【
図9】
図8に示す飲料供給装置の動作例を説明するタイミングチャートである。
【
図10】飲料供給装置のエア供給部の変形例を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
図1及び
図2は、本発明の一実施形態に係る飲料供給装置1の概略図である。飲料供給装置1は、例えば、コーヒー豆を粉砕することで得られるコーヒー粉末を原料とし、この原料と水を用いてレギュラーコーヒーを抽出し、抽出した所定の飲料供給量Qのコーヒー飲料をカップCに入れて提供する、カップ式のコーヒーサーバーに組み込まれている。
【0011】
本実施形態では、飲料供給装置1は、複数種類のコーヒー飲料の供給を選択的に行えるように構成されている。飲料供給装置1の図示しない装置本体の正面には、利用者が飲料の種類を選択するための選択スイッチ1aと、カップCが載置されるカップステーションSが設けられている。選択スイッチ1aは、利用者による選択結果に応じた識別信号を出力する。
【0012】
飲料供給装置1は、原料を供給する原料供給部2と、水(本実施形態では、湯水)を供給する水供給部3と、原料及び水(湯水)を受け入れる円筒状の抽出容器4と、抽出容器4の下方にフィルタFを介在させて配置されたドリップパン5と、フィルタFのフィルタ送り機構6と、ポンプ7と、エア供給部8と、バッファ部9と、流量計10と、制御部11と、を含む。
【0013】
原料供給部2は、コーヒー豆を収容するキャニスタ21を有している。キャニスタ21の下方には、原料モータ22によって駆動されることで、キャニスタ21から所定容量のコーヒー豆を繰り出す繰り出し機構23が設けられている。繰り出し機構23の下方には、繰り出し機構23によってキャニスタ21から繰り出されたコーヒー豆を粉末状に粉砕して抽出容器4に供給する、モータ駆動式のミル24が配置されている。したがって、原料供給部2は、原料モータ22及びミル24が駆動されることで、原料としてのコーヒー粉末を抽出容器4に供給することができる。
【0014】
原料供給部2は、例えば、キャニスタ21、原料モータ22、繰り出し機構23及びミル24からなる本体を複数個備えており、異なる種類の原料(本実施形態では、異なる豆種)を個別に収容して供給することができるようになっている。また、ミル24は、原料の種類(豆種)に応じて粒度を変更することができるようになっている。
【0015】
水供給部3は、所定温度の湯水(抽出湯とも言う)を沸かして貯蔵するタンク31を有している。タンク31の下部には、湯水の供給を制御するための給湯電磁弁32を介して、湯水を抽出容器4に供給する湯水供給路L1が接続されている。湯水供給路L1の先端部には、抽出容器4の上方においてその内部に向かって開口する複数の開口部(図示せず)が形成された抽出湯ノズル33が接続されている。したがって、水供給部3は、給湯電磁弁32が開弁されることで、タンク31に貯蔵されている湯水を抽出容器4に供給することができる。
【0016】
抽出容器4は、原料供給部2から供給されたコーヒー粉末、及び水供給部3から供給された湯水を受け入れ、受け入れた湯水及びコーヒー粉末を用いてコーヒー飲料を抽出する。抽出容器4は、例えば、一定の直径を有する円筒状に形成されている。抽出容器4の上端部は上方に向けて開口しており、この開口を介して水供給部3の抽出湯ノズル33から供給された湯水を受け入れ可能になっている。また、抽出容器4の底部は下方に向けて開口している。抽出容器4の底部とドリップパン5の上部との間には、抽出容器4において抽出されたコーヒー飲料を濾過するフィルタFが挟まれている。
【0017】
フィルタFは、抽出容器4の底部開口4aを塞ぐように配置されている。フィルタFは、特に限定されるものではないが、例えば、複数の繊維を絡み合わせて形成されている。フィルタFは所定のフィルタ厚みFtを有している。フィルタFは、薄く帯状に形成されており、ロール状に巻き回され得る。フィルタFの複数の繊維は、ランダムに配向されている。例えば、繊維は保水性を有しており、液体が毛細管現象などにより繊維の内部に浸透し得る。フィルタFとしては、繊維材からなる、例えば、紙フィルタや不織布フィルタなどが用いられる。
【0018】
ドリップパン5は、フィルタFを通過したコーヒー飲料を受け入れる容器である。ドリップパン5の上部は上方に向けて開口しており、この上部開口はフィルタFによって塞がれる。ドリップパン5の上部開口は、抽出容器4の底部開口4aに倣った形状をなしている。ドリップパン5は、図示しないドリップパン移動機構によって、
図1及び
図2に両矢印で示す上下方向に、移動可能に構成される。ドリップパン5の上部は、フィルタFを介在させた状態で抽出容器4の底部に対して圧接される。ドリップパン5の上面には、環状のシール部材5a(パッキン)が取り付けられる。ドリップパン5の上面には、フィルタFを支持しつつコーヒー飲料を通過させる金網などのメッシュ部材からなるフィルタ受部(図示せず)が配置される。ドリップパン5の下部に形成された飲料吸引ポート5bには、コーヒー飲料をドリップパン5からカップCまで搬送(供給)する、シリコンチューブなどの可撓性チューブからなる飲料供給路L2が接続される。なお、ドリップパン移動機構によってドリップパン5を移動させる代わりに、図示しない移動機構によって抽出容器4を上下方向に移動させるように構成されてもよい。
【0019】
フィルタ送り機構6は、ロール状に巻き回されたフィルタFを長手方向に送り出す装置である。具体的には、抽出容器4及びドリップパン5の一側方(図示の例では左方)には、未使用のフィルタFが巻き回されたロールR1と、ロールR1から引き出されたフィルタFをガイドするガイドローラR2と、がそれぞれ配置される。抽出容器4及びドリップパン5の他側方(図示の例では右方)には、フィルタFの送り出し方向(図示の例では時計回り方向)に回転してフィルタFを送り出すモータ駆動式の送りローラR3と、送りローラR3に向けてフィルタFを押圧する従動ローラR4と、がそれぞれ配置される。送りローラR3の下方には、送りローラR3によって送り出された使用済みのフィルタFを回収する回収ボックスBが配置される。抽出容器4とドリップパン5との間に挟持されたフィルタFは、
図2に示されるように、ドリップパン移動機構によってドリップパン5が下方に移動された後、送りローラR3によって送り出される。
【0020】
ポンプ7は、ドリップパン5に接続された飲料供給路L2の途中に設けられる。ポンプ7は、抽出容器4において抽出されたコーヒー飲料をフィルタF及びドリップパン5を介して吸引し、吸引した所定の飲料供給量Qのコーヒー飲料を吐出して飲料供給路L2を通じてカップCへ供給する。ポンプ7は、ドリップパン5の内部の圧力を減圧させることで抽出容器4の内部のコーヒー飲料のドリップパン5へのドリップを促進(誘発)させ、ドリップパン5に受け入れられたコーヒー飲料を吸引してカップCに吐出(供給)する。
【0021】
具体的には、ポンプ7は、チューブポンプからなる。ポンプ7は、中心にポンプ軸7aが挿通された環状のポンプケーシング7bを有する。ポンプケーシング7bの内部には、ポンプ軸7aに取り付けられた回転盤7cが回転可能に配置されている。また、ポンプケーシング7bの内壁と回転盤7cとの間には、飲料供給路L2の一部を構成するチューブが挿通されている。回転盤7cの外周であって、互いに周方向に等間隔に離間した複数位置(図示の例では3箇所)には、チューブを押圧するチューブローラ7dがそれぞれ配置されている。ポンプ7では、図示しないポンプモータによって回転盤7cが回転すると、各チューブローラ7dがチューブを押しつぶして閉塞しながら、その閉塞部分をチューブの長手方向に移動させる。したがって、ポンプ7は、互いに隣接する2つのチューブローラ7dの間でチューブ内に閉じ込められたコーヒー飲料又は空気を送り出すポンプ作用を発揮するチューブポンプからなる。回転盤7cを回転させるポンプモータは、回転方向を正回転方向Rと逆回転方向Lとに切り替え可能に構成されている。
【0022】
ポンプ7は、正回転方向Rで作動することで、抽出容器4において抽出されたコーヒー飲料を吸引すると共に吸引したコーヒー飲料を吐出してカップCに供給する。正回転方向Rとはドリップパン5の内部を負圧状態にする回転方向であり、逆回転方向Lとはドリップパン5の内部を加圧状態にする回転方向である。
【0023】
待機状態(初期状態)では、抽出容器4、ドリップパン5及び飲料供給路L2には、コーヒー飲料などの液体は残存しておらず、エアが充満しているだけであり、さらに、飲料供給路L2は停止しているポンプ7のチューブローラ7dによって塞がれている。そのため、抽出容器4で抽出された大半のコーヒー飲料は、ポンプ7が停止している状態では、フィルタFの上、つまり抽出容器4の内部に貯留されたままである。そして、抽出容器4において抽出されたコーヒー飲料のドリップパン5へのドリップは、ポンプ7の正回転方向Rでの作動により促進(誘発)される。
【0024】
エア供給部8は、ドリップパン5及びフィルタFを介してエアを抽出容器4に供給する(噴出させる)。本実施形態において、ポンプ7は、正回転時に抽出容器4(ドリップパン5)のコーヒー飲料を吸引してカップCに吐出(供給)する運転と、逆回転時にドリップパン5にエアを供給し、ドリップパン5及びフィルタFを介して抽出容器4にエアを供給する運転とを選択的に切替えて運転可能に構成されている。したがって、ポンプ7は、逆回転方向Lで作動することで、ドリップパン5及びフィルタFを介してエアを抽出容器4に供給するエア供給部8としても機能することができる。つまり、本実施形態では、エア供給部8は、ポンプ7を逆回転方向Lで作動させることで実現されており、ポンプ7はエア供給部8としての機能も有している。
【0025】
また、飲料供給装置1は、湯水及び原料が供給されている抽出容器4に、エアをドリップパン5及びフィルタFを介して供給する混合運転を実行可能に構成されている。この混合運転は、ポンプ7からの飲料吐出開始前に、抽出容器4における飲料の抽出を促進するために実行され、エア攪拌運転とも呼ばれる。具体的には、混合運転では、抽出容器の内部の湯水と原料との混合液が、フィルタFの上面から抽出容器4の内部に噴出されたエアによって攪拌される。その結果、原料が湯水の中で概ね均一に分散され、飲料の抽出が促進されるようになっている。この混合運転におけるエアは、エア供給部8(本実施形態ではポンプ7)により供給される。
【0026】
バッファ部9は、飲料供給路L2の下流の端部に接続され、コーヒー飲料を所定量受け入れるバッファとして機能する。バッファ部9は、下方に向けて開口する有底円筒形をなし、上方に位置する大径部91と、大径部91の下方に位置する小径部92と、が一体化された部材である。大径部91の側面には、円筒状の内周面の接線方向からコーヒー飲料が流入する流入口が形成され、ここに飲料供給路L2の下流の端部が接続されている。また、小径部92は、下方に向かうにつれて縮径する漏斗状に形成され、その下端面に下方に向けて開口する飲料吐出口が形成されている。したがって、バッファ部9に流入されたコーヒー飲料は、その内周面に沿って旋回しながら下方へと流れ、その飲料吐出口からカップCへと吐出される。本実施形態では、エア供給部8(逆回転方向Lで作動しているポンプ7)は、バッファ部9の飲料吐出口からエアを取り込み(吸引し)、取り込んだ(吸引した)エアを、飲料供給路L2を通じてドリップパン5に導く(吐出する)。
【0027】
流量計10は、飲料供給路L2を通じて流れるコーヒー飲料の流量、即ち、ドリップパン5からカップCへと供給されるコーヒー飲料の流量を計測し、その計測結果(計測値)に応じた計測信号を出力する。流量計10は、ドリップパン5とポンプ7との間に位置する飲料供給路L2に配置されている。流量計10の計測値は、単位時間当たりの流量又は積算流量である。流量計10の計測信号は、例えば、所定のサンプリング時間間隔で制御部11に入力される。
【0028】
制御部11は、原料供給部2、水供給部3、ポンプ7及びエア供給部8の動作を含む装置全体の動作を制御する電子デバイスである。制御部11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ、不揮発性メモリ、揮発性メモリ、入出力回路などを内蔵したマイクロコンピュータから構成されている。具体的には、制御部11のプロセッサは、不揮発性メモリに格納されたアプリケーションプログラムを実行することで、流量計10の計測信号を含む各種の信号に応じて、原料供給部2の原料モータ22及びミル24、水供給部3の給湯電磁弁32、フィルタ送り機構6の送りローラR3、ポンプ7(エア供給部8)の動作などをそれぞれ電子制御する。
【0029】
飲料供給装置1は、利用者の好みに応じて、前述のように複数種類のコーヒー飲料を供給することができるように構成されている。特に限定されるものではないが、本実施形態では、標準的な濃さ(抽出成分濃度)で且つ標準的な1杯分の標準容量のコーヒー飲料(以下、適宜に「標準コーヒー」という)の供給と、標準濃度よりも濃く且つ標準容量より少ない容量のコーヒー飲料(以下、適宜に、「少量高濃度コーヒー」という)の供給と、を選択的に行えるように構成されている。特に限定されるものではないが、標準コーヒーの供給では、例えば、150mlの湯水と10gのコーヒー粉末が抽出容器4に供給され、少量高濃度コーヒーの供給では、例えば、75mlの湯水と15gのコーヒー粉末が抽出容器4に供給される。少量高濃度コーヒーの抽出に要する水の全量は標準コーヒーの抽出に要する水の全量よりも極端に少ない上に、少量高濃度コーヒーの抽出の場合における水の全量に対する原料の全量の比率(=15/75)が標準コーヒーの抽出の場合における水の全量に対する原料の全量の比率(=10/150)よりも顕著に高い。
【0030】
ところで、飲料抽出タイプの飲料供給装置1において、少量高濃度コーヒーの場合などには、原料が大きな塊状になって抽出容器4の内部で水面に浮いたり、水中に沈んだりしてしまうおそれがある。このように、原料が大きな塊状になると、混合運転がなされたとしても、抽出容器4において水と原料との混合液の良好な攪拌が困難になるおそれがある。その結果、抽出効率の低下や飲料の品質の低下(例えば、所望の濃度の飲料を抽出することができなくなるといった、飲料品質の低下)を招くおそれがある。飲料供給装置1の制御部11は、原料の塊状化を抑制すべく以下の制御を実行する。
【0031】
制御部11は、水供給部3を作動させて抽出容器4への所定の水供給量Qwの水を供給する水供給運転を実行するように構成されている。そして、制御部11は、原料が抽出容器4において塊状になることを抑制すべく、エア供給部8を作動させて抽出容器4の内部の水をエアにより攪拌させた状態で、原料供給部2を作動させて抽出容器4に所定の原料供給量Qcの原料を供給する原料供給運転を実行するように構成されている。つまり、制御部11は、前記水供給運転と、前記原料供給運転と、を実行するように構成されており、飲料供給装置1は、原料供給運転において、抽出容器4の内部の湯水をエアによりバブリングさせた状態で、抽出容器4へ原料を投入(供給)するようになっている。
【0032】
制御部11は、原料供給運転において、例えば、水供給部3による水供給運転の開始後に(後述する
図3参照)又は水供給運転の開始と同時に(図示省略)、原料供給部2を作動させる。そして、制御部11は、原料供給運転において、例えば、原料供給部2を作動させる前に(後述する
図3参照)又は原料供給部2の作動と同時に(図示省略)、エア供給部8を作動させる。本実施形態では、この原料供給運転におけるエアを供給する(バブリングを発生させる)エア供給部8は、ポンプ7を逆回転方向で作動させることで実現される。なお、原料供給運転において、エア供給部8による抽出容器4へのエア供給は、水供給運転との関係では、水供給運転の開始前に開始されてもよいし、水供給運転の開始と同時に(後述する
図3参照)開始されてもよいし、水供給運転の開始後に開始されてもよい。
【0033】
本実施形態では、制御部11は、抽出容器4に原料を複数回に分け、少量ずつ供給させるように原料供給部2を作動させ、最終的に、所定の飲料供給量Qの飲料の抽出に必要な原料の全量が抽出容器4に供給されるように構成されている。つまり、原料供給運転における所定の原料供給量Qcは所定の飲料供給量Qの飲料の抽出に必要な全量より少ない量に設定されており、制御部11は原料供給運転を複数回に分けて実行する。特に限定されないが、制御部11は、原料を二回に分けて供給させるように原料供給部2を作動させる。後述する動作例では、一回目の供給の原料供給量Qcである第1原料供給量Qc1は二回目の供給の原料供給量Qcである第2原料供給量Qc2と同じ値に設定されている。但し、各回の供給の原料供給量Qcがそれぞれ異なる値に設定されてもよい。
【0034】
本実施形態では、制御部11は、湯水を複数回に分けることなく一度に供給させるように構成されている。つまり、水供給運転における所定の原料供給量Qcは所定の飲料供給量Qの飲料の抽出に必要な全量に設定されており、制御部11は水供給運転を一回実行する。
【0035】
制御部11には、飲料種別に応じた所定の飲料供給量Qのコーヒー飲料の抽出に必要なコーヒー粉末の全量が原料供給部2から抽出容器4に供給されるのに必要な時間である原料全量投入時間Tcと、所定の飲料供給量Qのコーヒー飲料の抽出に必要な湯水の全量が水供給部3から抽出容器4に供給されるのに必要な時間である抽出湯全量供給時間Twとがそれぞれ予め設定されている。同様に、制御部11には、第1原料供給量Qc1の原料供給、第2原料供給量Qc2の原料供給に要する時間として、第1原料供給時間Tc1、第2原料供給時間Tc2がそれぞれ予め設定されている。制御部11には、飲料種別(ここでは、標準コーヒー、少量高濃度コーヒー)毎に、各時間(Tc1、Tc2、Tw)が設定されている。
【0036】
本実施形態では、制御部11は、複数(ここでは、二回)の原料供給運転のうちの前後する二回の原料供給運転の間においてエア供給部8を継続して作動させる(ここでは、ポンプ7を逆回転方向で継続して作動させる)と共に、最後の原料供給運転の終了後にエア供給部を所定時間T3継続して作動させる(ここでは、ポンプ7を逆回転方向で継続して作動させる)。
【0037】
また、本実施形態では、流量計10の計測値は、ポンプ7によるカップCへのコーヒー飲料の供給運転(以下、適宜に、「飲料供給運転」という)が完了したか否かを判定するために用いられる。制御部11は、例えば、計測値が所定の閾値より小さい場合に、ポンプ7によるカップCへの飲料の供給運転を終了させる。
【0038】
次に、制御部11による飲料供給装置1の動作の制御について、利用者によって少量高濃度コーヒー(少湯量多豆量飲料)が選択された場合を一例に挙げて、
図1から
図3を参照して詳述する。
図3は、コーヒー飲料の供給指示があったことを契機として、制御部11がアプリケーションプログラムに従って実行する、飲料供給処理の一例のタイムチャートを示している。
【0039】
まず、待機時には、ドリップパン5は、
図2に示されるように、下位置にあり、抽出容器4と離間した状態にある。ここで、利用者が選択スイッチ1aにより少量高濃度飲料の供給を選択すると、選択スイッチ1aから制御部11に飲料識別信号が入力され、制御部11は動作開始信号をドリップパン移動機構に出力してドリップパン5を上位置に移動させ、フィルタFをドリップパン5と抽出容器4との間に挟持させる。この状態(初期状態)で、湯水及びコーヒー飲料は、抽出容器4、ドリップパン5及び飲料供給路L2に残存していない。続いて、制御部11は、上記動作開始信号を、給湯電磁弁32、原料モータ22、ミル24及びポンプ7に出力する。
【0040】
図3に示すように、制御部11からの動作開始信号により、水供給運転及び一回目の原料供給運転が開始される。制御部11は、水供給運転において、給湯電磁弁32を開弁された後、抽出湯全量供給時間Twが経過したときに、給湯電磁弁32を閉弁させる。これにより、所定の飲料供給量Qのコーヒー飲料の抽出に必要な湯水の全量が抽出容器4に供給される。
【0041】
制御部11は、水供給運転と一回目(最初)の原料供給運転を開始する。具体的には、制御部11は、例えば、水供給部3による水供給運転の開始後(
図3では、水供給運転中)に原料供給部2の作動を開始させ、原料供給部2を作動させる前に(
図3では、水供給運転の開始と同時に)エア供給部8の作動を開始させる。制御部11は、一回目の原料供給運転において、ポンプ7を逆回転方向Lで(エア供給部8を)作動させつつ、原料モータ22及びミル24の駆動モータを起動(ON)させる。このとき、ポンプ7は飲料供給路L2の下流側開口からエアを吸い込み、吸い込んだエアがドリップパン5の内部まで到達し、ドリップパン5の内部の圧力が増圧して、ドリップパン5の内部が加圧状態になる。その結果、ポンプ7からのエアがフィルタFのフィルタ上面から抽出容器4の内部に噴出し始める。これにより、抽出容器4の内部の湯水がエアにより攪拌(バブリング)した状態で、原料供給部2からのコーヒー粉がバブリングした湯水に投入(供給)され始める。このとき、コーヒー粉末は大きな塊状になることなく、バブリングした湯水中に分散される。制御部11は、原料モータ22及びミル24の駆動モータを起動させた後、第1原料供給量Qc1に応じた第1原料供給時間Tc1が経過したときに、原料モータ22及びミル24の駆動モータを停止(OFF)させる。これにより、第1原料供給量Qc1のコーヒー粉末が大きな塊状になることなく抽出容器4の内部のバブリングした湯水中の全体に分散され、一回目の原料供給運転が終了する。なお、
図3に示された例では、水供給運転は一回目の原料供給運転の終了前に終了しており、一回目の原料供給運転の後半部分では、コーヒー飲料の抽出に必要な湯水の全量が供給された状態で、原料が供給されている。つまり、少量の原料がバブリングした比較的に大容量の湯水に供給されている。
【0042】
制御部11は、一回目の原料供給後で且つ二回目の原料供給前に、抽出容器4における飲料の抽出を促進するための一回目の混合運転を実行する。具体的には、制御部11は、一回目の原料供給運転の終了後、ポンプ7の逆回転方向Lの作動を停止させることなく、二回目の原料供給運転までの所定時間T3’の間継続して作動させる。
【0043】
そして、制御部11は、二回目の原料供給運転を一回目と同様の手順で実行する。これにより、残りの第2原料供給量Qc2のコーヒー粉末が大きな塊状になることなく抽出容器4の内部のバブリングした湯水中の全体に分散され、二回目の原料供給運転が終了する。これにより、所定の飲料供給量Qの少量高濃度コーヒーの抽出に要する湯水の全量及びコーヒー粉末の全量が抽出容器4に供給される。
【0044】
制御部11は、二回目の原料供給後で且つポンプ7からの飲料吐出開始前に、飲料の抽出を促進するための二回目の混合運転を実行する。具体的には、制御部11は、二回目の原料供給運転の終了後、ポンプ7の逆回転方向Lの作動を停止させることなく、所定時間T3の間、ポンプ7(エア供給部8)による混合運転を継続させ、この時間T3が経過したときに、ポンプ7を停止させて二回目の混合運転を停止させる。これにより、所定の飲料供給量Qの少量高濃度コーヒーの抽出に要する湯水の全量及びコーヒー粉末の全量が抽出容器4において十分に撹拌混合され、少量高濃度コーヒーが抽出容器4において効率よく抽出される。
【0045】
さらに、制御部11は、例えば、ポンプ7による混合運転を停止させてから予め定めた時間経過したタイミングで、ポンプ7を正回転方向Rで作動させ、ポンプ7による飲料供給運転を開始させる。これにより、ドリップパン5の内部が大気圧より低い負圧状態になり、抽出容器4の内部の湯水とコーヒー粉末との混合液のうち、コーヒー粉末はフィルタFで捕獲され、コーヒー飲料のみがフィルタFで濾過されてドリップパン5にドリップされる。ドリップしたコーヒー飲料は、ポンプ7に吸い込まれ、ポンプ7から吐出され(飲料吐出開始)、バッファ部9へ圧送される。バッファ部9へ圧送されたコーヒー飲料は、バッファ部9から流出してカップCに注がれる。
【0046】
そして、制御部11は流量計10の計測値に基づいてポンプ7を停止させ、所定の飲料供給量Qの少量高濃度コーヒーのカップCへの供給を完了させ、飲料供給運転が終了する。具体的には、抽出容器4により抽出された少量高濃度コーヒーの全量がポンプ7によって吸引されカップCに供給されると(飲料供給完了)、流量計10の計測値は急激に低下する(又はゼロになる)。その結果、流量計10の計測値は急激に所定の閾値より小さくなり、制御部11は、計測値が閾値より低いと判定し、ポンプ7を停止させる。その後、制御部11はドリップパン移動機構によりドリップパン5を下位置に移動させる。これにより、飲料供給装置1は待機状態になる。
【0047】
以上のように、本実施形態による飲料供給装置1によれば、原料供給部2からのコーヒー粉がバブリングした湯水に投入(供給)されるので、原料が大きな塊状になって抽出容器4の内部で水面に浮いたり、水中に沈んだりしてしまうことが抑制される。つまり、飲料供給装置1は、原料が抽出容器4において塊状になることを抑制することができる。その結果、例えば、少量高濃度コーヒーの供給の場合であっても、原料の塊状化の発生が抑制され、混合運転により、抽出容器4において水と原料との混合液の良好な攪拌がなされ、抽出効率の低下を招くことなく、少量高濃度コーヒーが供給される。また、混合運転の際の攪拌不足の発生が確実に防止され、十分なエア攪拌が混合運転によりなされることで、コーヒー飲料の品質(味)の安定化も図られる。
【0048】
本実施形態では、エア供給部8はポンプ7を逆回転方向で作動させることで実現される。これにより、飲料供給装置1は、部品コストの増大を抑制しつつ、原料の塊状化の抑制を図ることができ、さらに、混合運転を実行することができる。
【0049】
本実施形態では、制御部11は、抽出容器4に原料を複数回に分け、少量ずつ供給させるように原料供給部2を作動させ、最終的に、所定の飲料供給量Qの飲料の抽出に必要な原料の全量が抽出容器4に供給されるように構成されている。これにより、コーヒー粉末の塊状化がより確実に抑制され、抽出効率の向上が図られる。なお、本実施形態では、原料は2回に分けて供給されているが、供給回数は2回に限定されるものではない。供給回数は、原料の粒度や種類、本実施形態ではコーヒー粉末(挽き豆)の粒度やコーヒー豆の種類に応じて、適切な回数に設定されればよい。供給回数は、粒度が細かいほど多い回数に設定され、油分が多いほど多い回数に設定される。
【0050】
本実施形態では、制御部11は、複数回の原料供給運転のうちの前後する二回の原料供給運転の間においてエア供給部8(ポンプ7)を継続して作動させると共に、最後の原料供給運転の終了後にエア供給部8(ポンプ7)を所定時間T3継続して作動させている。これにより、前後する二回の原料供給運転の間においても、混合運転が実行され、抽出効率のさらなる向上が図られる。
【0051】
本実施形態では、制御部11は、湯水を複数回に分けることなく一度に抽出容器4に供給させつつ、原料を少量ずつ複数回に分けて抽出容器4に供給させるように構成されている。これにより、複数回の原料供給運転のうちの最初の方(本実施形態では、1回目)の原料供給運転では、少量の原料がバブリングした比較的に大容量の湯水に供給されることになる。その結果、抽出容器4において原料の塊状化がより確実に抑制又は防止される。
【0052】
以下では、本実施形態の飲料供給装置1の変形例について、
図4から
図10などを参照して説明する。
図4から
図7は飲料供給装置1の動作の他の例を説明するタイミングチャートである。
図8は変形例に係る飲料供給装置1を説明するための概略図である。
図9は
図8に示す飲料供給装置1の動作例を説明するタイミングチャートである。
図10は飲料供給装置1のエア供給部8の変形例を説明するための概略図である。なお、
図9は、後述するフィルタ初期濡らし運転以外については
図3と同一のタイミングチャートを示している。
【0053】
本実施形態では、制御部11は、1回目(最初)の原料供給運転において原料供給部2の作動を、水供給運転の実行中に開始するように構成されているが、これに限らず、
図4に示されるように、水供給運転の終了後に開始するように構成されてもよい。これにより、原料供給部2からのコーヒー粉が、原料供給運転が水供給運転の実行中に開始される場合よりも大容量のバブリングした湯水に投入(供給)されるので、原料の塊状化がより確実に抑制又は防止される。なお、
図4の例(及び後述する
図6)では、制御部11は、エア供給部8(チューブポンプ)の作動を水供給運転の実行中に開始しているが、これに限らない。制御部11は、エア供給部8の作動を、水供給運転の開始と同時に開始してもよいし(
図3、後述する
図5及び
図7)、水供給運転の前に開始してもよいし(図示省略)、原料供給部2の作動と同時に開始してもよい(図示省略)。
【0054】
図5及び
図6に示されるように、制御部11は、湯水及び原料を複数回に分けることなく一度に供給させてもよい。この場合、制御部11は、原料供給運転において原料供給部2の作動を、
図5に示されるように水供給運転と実行中に開始するように構成されてもよいし、
図6に示されるように水供給運転の終了後に開始するように構成されてもよい。これらの場合、所定の水供給量Qw及び所定の原料供給量Qcはそれぞれ所定の飲料供給量Qのコーヒー飲料の抽出に必要な全量に設定されており、制御部11は水供給運転及び原料供給運転のそれぞれを一回実行する。これにより、水供給部3(給湯電磁弁32)や原料供給部2(原料モータ22、ミル24)のON・OFFの回数が減少し、各機器の高寿命化が図られ、さらには、飲料供給装置1の動作時間(動作開始から所定の飲料供給量Qのコーヒー飲料のカップCへの供給完了までの時間)が短縮され得る。
【0055】
また、湯水の全量に対する原料(コーヒー粉)の全量の比率が高い場合(少量高濃度コーヒーの供給の場合)に限らず、原料が抽出容器4に短時間に多量に供給(投入)される場合や、原料の粒度が一般的な原料の粒度よりも細かい場合にも、原料の塊状化が発生するおそれがある。このような場合においても、飲料供給装置1は好適である。
【0056】
本実施形態では、制御部11は、湯水を複数回に分けることなく一度に抽出容器4に供給しているが、これに限らず、
図7に示されるように、水供給運転についても複数回に分けて実行してもよい。例えば、飲料供給量Qが大容量であり、飲料供給量Qの飲料の抽出に必要な湯水の全量(
図7では、後述するQw1+Qw2)が多い場合などに好適である。この場合、制御部11は、抽出容器4に湯水及び原料を複数回に分け、少量ずつ供給させるように水供給部3及び原料供給部2を作動させ、最終的に、所定の飲料供給量Qの飲料の抽出に必要な湯水の全量及び原料の全量が抽出容器4に供給されるように構成されている。つまり、水供給運転における所定の水供給量Qw及び原料供給運転における所定の原料供給量Qcはそれぞれ所定の飲料供給量Qの飲料の抽出に必要な全量より少ない量に設定されており、制御部11は水供給運転及び原料供給運転のそれぞれを複数回実行する。特に限定されないが、制御部11は、湯水及び原料を二回に分けて供給させるように水供給部3及び原料供給部2を作動させる。
図7を参照すると、一回目の供給の水供給量Qwである第1水供給量Qw1は二回目の供給の水供給量Qwである第2水供給量Qw2と同じ値に設定されている。但し、各回の供給の水供給量Qwがそれぞれ異なる値に設定されてもよい。そして、制御部11には、原料全量投入時間Tcと、抽出湯全量供給時間Twと、第1原料供給時間Tc1と、第2原料供給時間Tc2とに加えて、第1水供給量Qw1の湯水供給に要する第1水供給時間Tw1と、第2水供給量Qw2の湯水供給に要する第2水供給時間Tw2とが、飲料種別毎に、予め設定されている。
【0057】
さらに、標準コーヒーや大容量のコーヒーなどの供給の際に、原料の塊状化が発生しない又は発生したとしても極微量である場合などには、原料供給運転の際に、エアを供給させなくてもよい。この場合、飲料供給装置1は、例えば、
図3、
図4及び
図7のタイムチャートの例では、一回目の原料供給運転と二回目の原料供給運転においてポンプ7を停止させればよく、
図5及び
図6のタイムチャートの例では、原料供給運転においてポンプ7を停止させればよい。
【0058】
また、原料の塊状化が発生しない又は発生したとしても極微量である場合などには、水供給運転が原料供給運転の後に実行されてもよい(つまり、湯後注ぎ方式でもよい)。この場合、制御部11は、例えば、第1原料供給量Qc1の原料の供給、第1水供給量Qw1の湯水の供給、第2原料供給量Qc2の原料の供給、第2水供給量Qw2の湯水の供給の順番で供給されるように、各要素(7、22、24、32)を作動させ、そして、第2水供給量Qw2の供給の完了後又は供給開始と同時に、混合運転を所定時間T3継続して実行し、その後、飲料供給運転を実行する。
【0059】
ところで、本願発明者は、飲料抽出を促進するための混合運転(エア攪拌運転)の際に、エアが噴出しない領域や、エア噴出量が他の部分よりも顕著に少ない領域が、繊維材からなるフィルタFの上面に存在し、フィルタFの上面からのエア噴出の均一性が良好でない場合があることに気づいた。エア噴出の不均一は混合運転におけるエア攪拌不足、ひいては、抽出容器4における飲料の抽出効率の低下などを招くおそれがある。本実施形態及び上記各変形例において、制御部11は、エア攪拌不足の発生を確実に防止すべく以下のフィルタ初期濡らし運転を実行してもよい。
【0060】
図8及び
図9の例では、制御部11は、エア攪拌不足の発生を確実に防止すべく、混合運転の前(ここでは水供給運転及び原料供給運転)の前に、フィルタFに対するフィルタ初期濡らし運転(フィルタイニシャライズ運転/フィルタ均し運転)を実行するように構成されている。コーヒー飲料の供給指示を示す信号が制御部11に入力されると、制御部11は、最初にフィルタ初期濡らし運転を実行するように構成されている。
【0061】
制御部11は、フィルタ初期濡らし運転において、水供給部3を第1の所定時間T1作動させて所定量の水であるフィルタ濡らし水を抽出容器4に供給すると共に、ポンプ7を第2の所定時間T2作動させて抽出容器4の内部のフィルタ濡らし水を吸引することによって、フィルタFのうちの抽出容器4の底部開口4aに対応する部分の全体におけるフィルタ上面(抽出容器4側)からフィルタ下面(ドリップパン5側)までの全体を濡らす。このフィルタ初期濡らし運転により、フィルタ濡らし水が、フィルタ厚みFtの全体に亘ってフィルタFの繊維に浸透してフィルタFの全体に行き渡ると共にその一部がフィルタFを通過する。その結果、フィルタFにおけるエアに対する通過抵抗がフィルタFの全体に亘って概ね均一になり、混合運転の際に、エアがフィルタ上面の全体から概ね均一に噴出し、混合運転の際のエア攪拌不足の発生が確実に防止される。そして、抽出容器4における原料と湯水が十分に攪拌され、コーヒー飲料の抽出が効果的に促進され、コーヒー飲料の抽出効率が従来よりも向上する。また、十分なエア攪拌が混合運転によりなされることでコーヒー飲料の味の安定化も図られる。
【0062】
また、フィルタ濡らし水は、例えば、
図8及び
図9に示されるように、カップC外に排出される。この場合、フィルタ濡らし水はコーヒー飲料を抽出するための湯水(抽出用湯水)の一部として利用されず、抽出用湯水はフィルタ濡らし水とは別に抽出容器4に供給される。そして、
図8に示されるように、飲料供給装置1は、フィルタ濡らし水を排出するための排出路L2aと、電磁駆動式の切替弁12と、排出タンク13と、を更に含む。排出路L2aは、飲料供給路L2におけるポンプ7とカップCとの間に位置する分岐点Xから分岐する配管である。切替弁12は、ポンプ7から吐出される流体の吐出先を、カップCと排出路L2aとの間で切り替える電磁弁である。切替弁12は、例えば、分岐点Xに設けられる3方弁である。排出路L2aは、分岐点Xから排出タンク13まで延在している。そして、制御部11は、フィルタ初期濡らし運転において、切替弁12を作動させてポンプ7により吸引したフィルタ濡らし水の吐出先を、排出路L2aに切り替えるように構成されている。
【0063】
具体的には、
図3のタイミングチャートを基本とした
図9に示されるように、フィルタ初期濡らし運転において、制御部11は、例えば、給湯電磁弁32を第1の所定時間T1開弁させてフィルタ濡らし水を抽出容器4に供給し、ポンプ7を正回転方向Rで第2の所定時間T2作動させてフィルタ濡らし水を吸引させ、切替弁12を排出路方向に作動させてフィルタ濡らし水の吐出先を排出路L2aに切り替える。この場合、第2の所定時間T2は、フィルタ濡らし水の全量をカップC外(ここでは排出タンク13)に排出可能な長さに設定される。
図9の例では、ポンプ7は給湯電磁弁32の開弁と同時に正回転方向Rで作動している。そして、制御部11は、フィルタ濡らし水の排出が完了した後に、抽出容器4への抽出用湯水及び原料の供給を開始させる。なお、
図9の例のフィルタ初期濡らし運転において、制御部11は、(1)フィルタ濡らし水の供給開始前からポンプ7を正回転方向Rで作動させてもよいし、(2)フィルタ濡らし水の供給完了後で且つ抽出用湯水及び原料の供給開始前においてポンプ7を正回転方向Rで作動させてもよい。また、制御部11は、
図4から
図7に示された各例や、
図3から
図7の例の原料供給運転においてポンプ7を前述のように停止させる各例のいずれにおいても、原料供給運転の前に初期濡らし運転を実行するように構成されてもよい。
【0064】
また、フィルタ初期濡らし運転が実行される場合において、フィルタ濡らし水(換言すると、フィルタ浸透水)は、外部へ排出されず、コーヒー飲料を抽出するための湯水(抽出用湯水)の一部として利用されてもよい。この場合、第1の所定時間T1は抽出湯全量供給時間Twよりも短い時間に設定され、フィルタ濡らし水の容量はドリップパン5の内部容積よりも大きい容量に設定され、第2の所定時間T2はフィルタ初期濡らし運転においてポンプ7により吸引したフィルタ濡らし水がポンプ7を超えてカップC側に吐出しないように設定される。そして、制御部11は、フィルタ初期濡らし運転において、ポンプ7により吸引したフィルタ濡らし水の一部を、ポンプ7を逆回転方向で作動させることにより抽出容器4に戻し、フィルタ濡らし運転を完了させ、このフィルタ濡らし運転の完了後に、残りの湯水についての水供給運転と原料供給運転を開始するように構成される。これにより、フィルタFのうちの抽出容器4の底部開口4aに対応する部分の全体がより確実にフィルタ上面からフィルタ下面の全体に亘って濡れると共にこの部分に対する通水がより確実になされることになり、混合運転におけるエア噴出の均一性が顕著に向上し、ひいては、抽出効率の更なる向上が図られる。また、本実施形態では、フィルタ濡らし水(フィルタ浸透水)は、コーヒー飲料を抽出するための湯水の一部としても利用されているので、フィルタ濡らし水が有効利用される。
【0065】
また、
図9の例では、制御部11は、フィルタ濡らし水と抽出用湯水とを区別すべく、給湯電磁弁32を開弁させた後、第1の所定時間T1が経過したときに給湯電磁弁32を閉弁させているが、これに限らない。例えば、図示省略するが、制御部11は、給湯電磁弁32を開弁させた後、第1の所定時間T1に抽出湯全量供給時間Twを加えた時間(=T1+Tw)が経過したときに給湯電磁弁32を閉弁させてもよい。また、前述のようにフィルタ濡らし水を抽出用湯水の一部として利用する場合(フィルタ初期濡らし運転において、ポンプ7により吸引したフィルタ濡らし水の一部を、ポンプ7を逆回転方向で作動させることにより抽出容器4に戻す場合)には、制御部11は、給湯電磁弁32を開弁させた後、抽出湯全量供給時間Twが経過したときに給湯電磁弁32を閉弁させてもよい。
【0066】
上記実施形態及び各変形例において、エア供給部8はポンプ7により実現されているが、これに限定されるものではない。例えば、
図10に示されるように、エア供給部8は、ポンプ7とは別に設けられてもよい。
【0067】
具体的には、
図10の例では、エア供給部8は、飲料供給路L2とは別に設けられたエア供給路L3を介してドリップパン5にエアを供給する。エア供給路L3の一端はエア供給部8に接続され、エア供給路L3の他端はドリップパン5に接続されている。そして、ドリップパン5は、飲料供給路L2が接続される飲料吸引ポート5bと、エア供給路L3が接続されるエア吐出ポート5cと、飲料吸引ポート5bの上方に設けられる蓋板5d1を有しエア吐出ポート5cから飲料吸引ポート5bへのエアの流入(逆流)を抑制するカバー部5dとを含む。
図10の例では、制御部11は、原料供給運転において、ポンプ7を逆回転方向Lで作動させる代わりに、エア供給部8を作動させるように構成されてもよい。また、制御部11は、エア供給部8を作動させることで、フィルタ初期濡らし運転におけるフィルタ濡らし水の抽出容器4への戻しや混合運転を実行するように構成されてもよい。これらの場合、ポンプ7の総動作時間が低減され、逆回転方向の動作が低減又は無くなり、モータ及びチューブへの負荷が低減され、ひいては、チューブポンプからなるポンプ7の高寿命化が図られる。
【0068】
また、本実施形態では、抽出容器4に供給される水は湯水であるが、これに限らず、冷水でもよい。
【0069】
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は上述の実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて更なる変形や変更が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0070】
1…飲料供給装置、2…原料供給部、3…水供給部、4…抽出容器、5…ドリップパン、7…ポンプ(チューブポンプ)、8…エア供給部、11…制御部、C…カップ、F…フィルタ、L2…飲料供給路、Q…所定の飲料供給量、Qw…所定の水供給量、Qw1…第1水供給量、Qw2…第2水供給量、Qc…所定の原料供給量、Qc1…第1原料供給量、Qc2…第2原料供給量