(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024143
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】飲料供給装置
(51)【国際特許分類】
A47J 31/36 20060101AFI20240215BHJP
G07F 13/06 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
A47J31/36 132
A47J31/36 119
G07F13/06 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126749
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】722012006
【氏名又は名称】サンデン・リテールシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 孝洋
(72)【発明者】
【氏名】海老原 由次
(72)【発明者】
【氏名】石井 勉
(72)【発明者】
【氏名】角田 貴也
【テーマコード(参考)】
3E047
4B104
【Fターム(参考)】
3E047AA03
3E047BA01
3E047EC05
3E047ED02
3E047ED03
3E047FA01
4B104AA16
4B104BA64
4B104BA73
4B104DA17
4B104DA45
4B104EA16
4B104EA17
(57)【要約】
【課題】原料から飲料を抽出して提供する飲料供給装置において、フィルタ交換時に原料滓が抽出容器の内面に付着して残ったり、抽出容器とドリップパンとの間から原料滓を含んだ洗浄湯が流出したりすることを抑制する。
【解決手段】飲料供給装置100は、コーヒー粉末からコーヒー飲料を抽出する抽出容器400、フィルタFを通過したコーヒー飲料を受け入れるドリップパン500、ドリップパン500で受け入れられたコーヒー飲料をカップCに供給するチューブポンプ700、抽出容器400とドリップパン500とを離接させるスライダ900、コントローラ1200を備えて構成されている。そして、コントローラ1200は、抽出容器400の内面への洗浄湯の給湯後、チューブポンプ700で抽出容器400の洗浄湯、コーヒー滓を吸引しながら、スライダ900で抽出容器400とドリップパン500とを切り離す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯を用いて原料から飲料を抽出する抽出容器と、
前記抽出容器において抽出された飲料を濾過するフィルタと、
前記フィルタを通過した飲料を受け入れるドリップパンと、
前記ドリップパンによって受け入れられた飲料をカップに供給するポンプと、
前記抽出容器と前記ドリップパンとを離接させるスライダと、
前記抽出容器の内面に沿って供給される湯を含む給湯終了後、前記ポンプによって前記フィルタを介して前記抽出容器の湯及び/又は飲料抽出後の原料滓を吸引しながら、前記スライダによって前記抽出容器と前記ドリップパンとを切り離すように構成されたコントローラと、
を備えた飲料供給装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記抽出容器に湯を複数回に分けて給湯し、
最後の給湯終了後に前記ポンプによって前記フィルタを介して前記抽出容器の湯及び/又は飲料抽出後の原料滓を吸引しながら、前記スライダによって前記抽出容器と前記ドリップパンとを切り離すように構成された、
請求項1に記載の飲料供給装置。
【請求項3】
前記抽出容器に抽出湯を供給する抽出湯供給部と、
前記抽出容器に洗浄湯を供給する洗浄湯供給部と、
を備え、
前記複数回に分けて供給される湯は抽出湯及び洗浄湯であり、
前記最後の給湯は洗浄湯である、
請求項2に記載の飲料供給装置。
【請求項4】
前記ドリップパンから前記カップへと供給される飲料の流量を測定する流量センサを更に備え、
前記コントローラは、前記流量センサの測定信号に応じて、前記ポンプによる前記カップへの飲料の供給が完了したか否かを判定するように更に構成された、
請求項1に記載の飲料供給装置。
【請求項5】
前記洗浄湯供給部は、前記抽出容器の内周面の接線方向から洗浄湯を供給する、
請求項3に記載の飲料供給装置。
【請求項6】
前記ポンプによって前記抽出容器から吸引した洗浄湯を破棄する排水タンクを更に備えた、
請求項3に記載の飲料供給装置。
【請求項7】
吸引した飲料及び/又は空気を前記抽出容器に送る他のポンプを備え、
前記コントローラは、前記抽出容器と前記ドリップパンとを切り離した後、吸引した飲料及び/又は空気を前記抽出容器に送るように構成された、
請求項1に記載の飲料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯を用いて原料から飲料を抽出して提供する飲料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、コーヒー豆をコーヒーミルで粉砕して得られたコーヒー粉末や緑茶などの茶葉を原料として、この原料と抽出湯を抽出容器に供給して飲料を抽出し、この飲料をカップに入れて利用者に供給する飲料供給装置が知られている。この種の飲料抽出タイプの飲料供給装置は、一般的に、抽出容器の下端部にフィルタを介してドリップパンが配置されている。そして、抽出容器の内部で抽出された飲料は、フィルタによって濾過されつつドリップパンで受け入れられて、このドリップパンに接続された飲料搬送路を介してカップへと供給される。
【0003】
抽出容器において飲料の抽出が完了した状態では、飲料を抽出した原料滓が抽出容器の内面に付着している可能性が高く、次回の飲料提供において古い原料滓が混ざることで品質が低下するおそれがある。このため、特開2006-190238号公報(特許文献1)に記載されているように、飲料の抽出が完了したときに洗浄湯を抽出容器の内面に供給して、抽出容器の表面に付着していた原料滓を洗い流す技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、抽出容器において飲料の抽出を完了した状態では、フィルタの上面に飲料抽出済みの原料滓が層状に堆積されている。この状態において、抽出容器の内面に付着した原料滓を洗い流すべく洗浄湯が供給されると、コーヒー豆の種類や粒度により、フィルタの上面に層状に堆積されている原料滓の上に洗浄湯の層が形成されたり、洗浄湯の一部が原料滓に吸収されるものの残部が原料滓の上に層状に残ったりする。そして、フィルタを送り出して交換すべく抽出容器からドリップパンを切り離すと、原料滓と洗浄湯とが自重と下方への移動により抽出容器から分離しようとすることから、原料滓が洗浄湯と共に流されず抽出容器の内面に付着して残ったり、抽出容器とドリップパンとの間から、原料滓を含んだ洗浄湯が周囲へと流出し、その周囲を原料滓で汚したりする原因となってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、フィルタ交換時に原料滓が抽出容器の内面に付着して残ったり、抽出容器とドリップパンとの間から原料滓を含んだ洗浄湯が流出したりすることを抑制した、飲料供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
飲料供給装置は、湯を用いて原料から飲料を抽出する抽出容器と、抽出容器において抽出された飲料を濾過するフィルタと、フィルタを通過した飲料を受け入れるドリップパンと、ドリップパンによって受け入れられた飲料をカップに供給するポンプと、抽出容器とドリップパンとを離接させるスライダと、コントローラと、を備えて構成されている。そして、コントローラは、抽出容器の内面に沿って供給される湯を含む給湯終了後、ポンプによってフィルタを介して抽出容器の湯及び/又は飲料抽出後の原料滓を吸引しながら、スライダによって抽出容器とドリップパンとを切り離すように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、湯を用いて原料から飲料を抽出して提供する飲料供給装置において、フィルタ交換時に原料滓が抽出容器の内面に付着して残ったり、抽出容器とドリップパンとの間から原料滓を含んだ洗浄湯が流出したりすることを抑制でき、その結果、ドリップパンの周囲を原料滓で汚すことも抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】飲料供給処理の一例を示すフローチャートである。
【
図3】飲料供給処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】飲料供給装置の動作を説明するタイミングチャートである。
【
図5】コーヒー飲料を抽出した直後の抽出容器の説明図である。
【
図6】洗浄湯によって抽出容器のコーヒー滓を洗い流した状態の説明図である。
【
図7】抽出容器からドリップパンを切り離した状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付された図面を参照し、本発明を実施するための実施形態について詳述する。
図1は、一例として挙げられる飲料供給装置100の概略を示している。飲料供給装置100は、例えば、コーヒー豆を粉末状に粉砕したコーヒー粉末からレギュラーコーヒーを抽出してカップCに入れて供給する、一般的なカップ式のコーヒーサーバーに組み込まれている。
【0011】
飲料供給装置100は、原料を供給する原料供給部200と、抽出湯を供給する抽出湯供給部300と、原料及び抽出湯が供給される円筒状の抽出容器400と、抽出容器400の下方にフィルタFを介在させて配置されたドリップパン500と、フィルタFのフィルタ供給機構600と、チューブポンプ700と、バッファ部800と、少なくともドリップパン500を上下方向に移動させるスライダ900と、抽出容器400の下部にエアを供給して噴出させるエア供給部1000と、流量センサ1100と、コントローラ1200と、を備えて構成されている。ここで、チューブポンプ700及びエア供給部1000がそれぞれ、ポンプ及び他のポンプの一例として挙げられる。
【0012】
原料供給部200は、コーヒー豆を収容するキャニスタ210を有している。キャニスタ210の下方には、原料モータ220によって駆動されることで、キャニスタ210から所定容量のコーヒー豆を繰り出す繰り出し機構230が設けられている。繰り出し機構230の下方には、繰り出し機構230によってキャニスタ210から繰り出されたコーヒー豆を粉末状に粉砕して抽出容器400へと供給する、図示しないモータで駆動されるコーヒーミル240が配置されている。従って、原料供給部200は、原料モータ220及びコーヒーミル240が駆動されることで、原料としてのコーヒー粉末を抽出容器400へと供給することができる。
【0013】
抽出湯供給部300は、所定温度の抽出湯を沸かして貯蔵するタンク310を有している。タンク310の下部には、抽出湯の供給を制御するための給湯電磁弁320を介して、抽出湯を抽出容器400へと供給する抽出湯供給路L1が接続されている。抽出湯供給路L1の先端部には、抽出容器400の上方においてその内部に向かって開口する複数の開口部(図示せず)が形成された抽出湯ノズル330が接続されている。従って、抽出湯供給部300は、給湯電磁弁320が開弁されることで、タンク310に貯蔵されている抽出湯を抽出容器400へと供給することができる。
【0014】
また、タンク310の下部には、洗浄湯として機能する抽出湯の供給を制御するための洗浄電磁弁340を介して、この抽出湯(洗浄湯)を抽出容器400に供給する洗浄湯供給路L2が接続されている。洗浄湯供給路L2の先端部には、抽出容器400の上部においてその内周面の接線方向から洗浄湯を噴出する洗浄湯ノズル350が接続されている。従って、抽出湯供給部300は、洗浄電磁弁340が開弁されることで、タンク310に貯蔵されている抽出湯を洗浄湯として抽出容器400に供給することができる。なお、抽出湯供給部300におけるタンク310、洗浄電磁弁340、洗浄湯供給路L2及び洗浄湯ノズル350の組み合わせが、洗浄湯供給部の一例として挙げられる。
【0015】
抽出容器400は、一定の直径を有する円筒形をなし、原料供給部200から供給されたコーヒー粉末、及び抽出湯供給部300から供給された抽出湯を受けて、抽出湯を用いてコーヒー粉末からコーヒー飲料を抽出する。抽出容器400の上端部は上方に向けて開口しており、この開口を介して抽出湯供給部300の抽出湯ノズル330から供給された抽出湯を受け入れ可能になっている。また、抽出容器400の下端部は下方に向けて開口しており、この下端部とドリップパン500の上端部との間には、抽出容器400において抽出されたコーヒー飲料を濾過するフィルタFが挟まれた状態で配置されている。ここで、フィルタFは、例えば、帯状の紙、不織布や合成繊維などで形成することができる。
【0016】
ドリップパン500は、フィルタFを通過したコーヒー飲料を受け入れる、上方に向けて開口する漏斗状の容器である。この開口は、抽出容器400の下端部の開口に倣った形状をなしている。ドリップパン500の上端部は、フィルタFを介在させた状態で、抽出容器400の下端部に対して圧接されている。また、ドリップパン500の上面には、フィルタFを支持しつつコーヒー飲料を通過させる、金網などのメッシュ部材からなるフィルタ受部(図示せず)が配置されている。ドリップパン500の下端部には、コーヒー飲料をカップCまで搬送する、シリコンチューブなどの可撓性チューブからなる飲料搬送路L3が接続されている。
【0017】
フィルタ供給機構600は、帯状に巻き回されたロール状のフィルタFを長手方向に送り出す装置である。具体的には、抽出容器400及びドリップパン500の一側方(図示の例では左方)には、未使用のフィルタFが巻き回されたロールR1と、ロールR1から引き出されたフィルタFをガイドするガイドローラR2と、が夫々配置されている。また、抽出容器400及びドリップパン500の他側方(図示の例では右方)には、フィルタFの供給方向(図示の例では時計回り方向)に回転してフィルタFを送り出す送りローラR3と、送りローラR3に向けてフィルタFを押圧する従動ローラR4と、が夫々配置されている。送りローラR3の下方には、送りローラR3によって送り出された使用済みのフィルタFを回収する回収ボックスBが配置されている。
【0018】
チューブポンプ700は、ドリップパン500からカップCへとコーヒー飲料を搬送する飲料搬送路L3の途中に配置されている。チューブポンプ700は、ドリップパン500の内部の圧力を減圧させることで、フィルタFを介して抽出容器400において抽出されたコーヒー飲料を吸引し、ドリップパン500によって受け入れられたコーヒー飲料をカップCへと供給する。なお、チューブポンプ700は、当業者にとって周知なポンプであるため、これ以上の説明は省略する。
【0019】
バッファ部800は、飲料搬送路L3の下流の端部に接続され、コーヒー飲料を所定量受け入れるバッファとして機能する。バッファ部800は、下方に向けて開口する有底円筒形をなし、上方に位置する大径部810と、大径部810の下方に位置する小径部820と、が一体化された部材である。大径部810の側面には、円筒状の内周面の接線方向からコーヒー飲料が流入する流入口が形成され、ここに飲料搬送路L3の下流の端部が接続されている。また、小径部820は、
図1から明らかなように、下方に向かうにつれて縮径する漏斗状に形成され、その下端面に下方に向けて開口する飲料供給口が形成されている。従って、バッファ部800に流入されたコーヒー飲料は、その内周面に沿って旋回しながら下方へと流れ、その飲料供給口からカップCへと供給される。
【0020】
スライダ900は、例えば、図示しないレールに沿って上下動する架台やパンタグラフ機構などを有し、フィルタFを介在させた状態で、抽出容器400の下端部に対してドリップパン500を離接させる。従って、スライダ900は、抽出容器400においてコーヒー飲料を抽出するときには、抽出容器400の下端部に向けてドリップパン500を上昇させて圧接させ、カップCへのコーヒー飲料の供給が完了したときには、抽出容器400の下端部から離れるようにドリップパン500を下降させてフィルタFを供給する準備に備える。
【0021】
エア供給部1000は、エアを圧縮して抽出容器400へと供給するエアポンプ1010を有している。エアポンプ1010は、ドリップパン500とチューブポンプ700との間に位置する飲料搬送路L3から分岐する分岐路L4に接続されている。分岐路L4の途中には、抽出容器400へとエアを供給しないときに分岐路L4を閉止する閉止電磁弁1020が配置されている。従って、エア供給部1000は、エアポンプ1010が作動、かつ閉止電磁弁1020によって分岐路L4が開通されると、分岐路L4、閉止電磁弁1020及び飲料搬送路L3を介してドリップパン500へとエアを供給し、その後、フィルタFを介して抽出容器400の内部へとエアを供給して噴出させる。なお、飲料搬送路L3の内部にはコーヒー飲料が満たされているが、エア供給部1000は、このコーヒー飲料をエアによってドリップパン500の内部へと押し戻すことができる吐出圧を有しているので、ドリップパン500へのエア供給、ひいては抽出容器400へのエア供給に支障が生じることはない。
【0022】
流量センサ1100は、ドリップパン500とチューブポンプ700との間に位置する飲料搬送路L3、より具体的には、分岐路L4の分岐点とチューブポンプ700との間に位置する飲料搬送路L3に配置されている。そして、流量センサ1100は、飲料搬送路L3を流れるコーヒー飲料の流量、即ち、ドリップパン500からカップCへと供給されるコーヒー飲料の流量を測定し、その測定結果に応じた測定信号を出力する。
【0023】
コントローラ1200は、飲料供給装置100の動作を制御する電子デバイスであって、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ、不揮発性メモリ、揮発性メモリ、入出力回路などを内蔵したマイクロコンピュータから構成されている。具体的には、コントローラ1200のプロセッサは、不揮発性メモリに格納されたアプリケーションプログラムを実行することで、流量センサ1100の測定信号を含む各種の信号に応じて、原料供給部200の原料モータ220及びコーヒーミル240、抽出湯供給部300の給湯電磁弁320及び洗浄電磁弁340、フィルタ供給機構600の送りローラR3、チューブポンプ700、スライダ900、及びエア供給部1000のエアポンプ1010及び閉止電磁弁1020の動作を夫々電子制御する。
【0024】
ここで、コントローラ1200による飲料供給装置100の制御について説明する。
図2及び
図3は、利用者によってコーヒー飲料の供給指示があったことを契機として、コントローラ1200のプロセッサがアプリケーションプログラムに従って実行する、飲料供給処理の一例のフローチャートを示している。なお、以下の説明では、簡略化のために「コントローラ1200のプロセッサ」を「コントローラ1200」と略記する。
【0025】
ステップ10(
図2及び
図3では「S10」と略記する。以下同様。)では、コントローラ1200が、フィルタFを介在させた状態で、抽出容器400の下端部に対してドリップパン500の上端部を圧接すべく、スライダ900を上昇させる。ここで、コントローラ1200は、例えば、リミットスイッチ、エンコーダ、時間制御などによって、スライダ900が上昇したか否かを判定することができる(以下同様)。
【0026】
ステップ11では、コントローラ1200が、原料供給部200のコーヒーミル240を第1の所定時間t1作動させる。ここで、第1の所定時間t1は、例えば、コーヒーミル240の作動が安定するまでに必要な時間、キャニスタ210から利用者が希望するサイズのカップCに応じた量のコーヒー豆が供給されるのに必要な時間などを考慮して適宜決定することができる。
【0027】
ステップ12では、コントローラ1200が、抽出湯供給部300の給湯電磁弁320を第2の所定時間t2作動させる。ここで、第2の所定時間t2は、利用者が希望するサイズのカップCに応じた量の抽出湯を供給するために必要な時間であって、例えば、抽出湯の量、抽出湯供給部300の能力などを考慮して適宜決定することができる。なお、利用者が希望するサイズのカップCの容量が抽出容器400の容量より多い場合、コントローラ1200は、抽出湯供給部300の給湯電磁弁320を複数回に分けて作動させるようにしてもよい。
【0028】
ステップ13では、コントローラ1200が、原料供給部200のコーヒーミル240の作動後、第3の所定時間t3経過したか否かを判定する。ここで、第3の所定時間t3は、コーヒーミル240の作動が安定するまでに必要な時間であって、例えば、コーヒーミル240の性能などを考慮して適宜決定することができる。そして、コントローラ1200は、コーヒーミル240の作動後に第3の所定時間t3経過したと判定すれば(Yes)、処理をステップ14へと進める。一方、コントローラ1200は、コーヒーミル240の作動後に第3の所定時間t3経過していないと判定すれば(No)、ステップ13の判定処理を再度実行する。
【0029】
ステップ14では、コントローラ1200が、原料供給部200の原料モータ220を第4の所定時間t4作動、即ち、原料供給部200の繰り出し機構230を第4の所定時間t4作動させる。ここで、第4の所定時間t4は、利用者が希望するサイズのカップCに応じた量のコーヒー豆がキャニスタ210からコーヒーミル240へと供給されるのに必要な時間であって、例えば、繰り出し機構230の性能などを考慮して適宜決定することができる。
【0030】
ステップ15では、コントローラ1200が、抽出湯供給部300の給湯電磁弁320の作動後、第5の所定時間t5経過したか否かを判定する。ここで、第5の所定時間t5は、抽出容器400においてコーヒー粉末からコーヒー飲料を抽出する準備ができるまでに必要な時間であって、例えば、原料供給部200及び抽出湯供給部300の性能などを考慮して適宜決定することができる。そして、コントローラ1200は、給湯電磁弁320の作動後に第5の所定時間t5経過したと判定すれば(Yes)、処理をステップ16へと進める。一方、コントローラ1200は、給湯電磁弁320の作動後に第5の所定時間t5経過していないと判定すれば(No)、ステップ15の判定処理を再度実行する。
【0031】
ステップ16では、コントローラ1200が、エア供給部1000のエアポンプ1010を第6の所定時間t6作動させる。ここで、第6の所定時間t6は、抽出容器400にエアを供給して噴出させることで、抽出容器400において抽出湯とコーヒー粉末の攪拌を促進するための時間であって、例えば、抽出湯の量、コーヒー粉末の量及び特性(コーヒー豆の特性)などを考慮して適宜決定することができる。なお、コントローラ1200は、エアポンプ1010を作動させている間、抽出容器400へのエア供給を可能にすべく、エア供給部1000の閉止電磁弁1020を開弁させることはいうまでもない。
【0032】
ステップ17では、コントローラ1200が、エア供給部1000のエアポンプ1010の作動を停止してから第7の所定時間t7経過したか否かを判定する。ここで、第7の所定時間t7は、抽出容器400に供給されたエアによって抽出湯とコーヒー粉末の攪拌が促進された結果、抽出容器400においてコーヒー飲料の抽出が完了するまでに必要な時間であって、例えば、抽出容器400の幾何学的形状、抽出湯及びコーヒー粉末の量などを考慮して適宜決定することができる。そして、コントローラ1200は、エアポンプ1010の作動を停止してから第7の所定時間t7経過したと判定すれば(Yes)、処理をステップ18へと進める。一方、コントローラ1200は、エアポンプ1010の作動を停止してから第7の所定時間t7経過していないと判定すれば(No)、ステップ17の判定処理を再度実行する。
【0033】
ステップ18では、コントローラ1200が、チューブポンプ700を作動させる。
ステップ19では、コントローラ1200が、流量センサ1100の測定信号を読み込み、飲料搬送路L3を流れるコーヒー飲料の流量が所定閾値未満になったか否かを判定する。ここで、所定閾値は、チューブポンプ700の作動によって、抽出容器400においてコーヒー粉末から抽出されたコーヒー飲料の全量又は略全量がカップCへと供給されたか否かを判定するための閾値であって、例えば、チューブポンプ700の性能及びカップCの容量などに応じて適宜決定することができる。そして、コントローラ1200は、コーヒー飲料の流量が所定閾値未満になったと判定すれば(Yes)、処理をステップ20へと進める。一方、コントローラ1200は、コーヒー飲料の流量が所定閾値以上のままであると判定すれば(No)、ステップ19の判定処理を再度繰り返す。
【0034】
ステップ20では、抽出容器400において抽出されたコーヒー飲料の全量又は略全量がカップCへと供給された結果、飲料搬送路L3を流れるコーヒー飲料の流量が減少して所定閾値未満になったので、コントローラ1200が、チューブポンプ700の作動を停止させる。
【0035】
ステップ21では、コントローラ1200が、抽出湯供給部300の洗浄電磁弁340を第8の所定時間t8作動させる。ここで、第8の所定時間t8は、洗浄湯として機能する所定量の抽出湯を抽出容器400へと供給するのに必要な時間であって、例えば、洗浄湯の供給量、抽出容器400の幾何学的形状などを考慮して適宜決定することができる。
【0036】
ステップ22では、コントローラ1200が、第9の所定時間t9待機する。ここで、第9の所定時間t9は、抽出容器400へと供給された洗浄湯によって、抽出容器400の内周面に付着していたコーヒー滓が洗い流されるまでに必要な時間であって、例えば、コーヒー粉末の特性、抽出容器の幾何学的形状などを考慮して適宜決定することができる。
【0037】
ステップ23では、コントローラ1200が、チューブポンプ700を作動させて抽出容器400内から原料滓及び/又は洗浄湯、空気を吸引しながら、スライダ900を下降させて抽出容器400からドリップパン500を切り離す。このとき、コントローラ1200は、チューブポンプ700を第10の所定時間t10作動させつつ、その作動開始からある程度の時間差をもってスライダ900を下降させるようにする。ここで、第10の所定時間t10の最初から所定時間の間は、抽出容器400からドリップパン500を切り離す前に、抽出容器400内の洗浄湯をコーヒー滓の層に吸収させ固液混合状態/コーヒー滓に対して洗浄湯が多い液状の洗浄湯富化状態とし、抽出容器400とコーヒー滓の層との間に十分な洗浄湯の層/膜を形成させ、コーヒー滓と洗浄湯とが一緒に流出しやすい状態とするために必要な時間である。その後、液体である洗浄湯を吸引することで、洗浄湯に混ざったコーヒー滓も吸引することができ、抽出容器400の下部内面にコーヒー滓が付着して残ることを抑止できる。第10の所定時間t10の残りの時間は、抽出容器400からドリップパン500を切り離したとき、これらの間からコーヒー滓を含んだ洗浄湯が周囲に流出しないようにするのに必要な時間であって、例えば、チューブポンプ700の性能、洗浄湯の量などを考慮して適宜決定することができる。また、コントローラ1200は、例えば、リミットスイッチ、エンコーダ、時間制御などによって、スライダ900が下降したか否かを判定することができる。
【0038】
ステップ24では、コントローラ1200が、フィルタ供給機構600を第11の所定時間t11作動させる。ここで、第11の所定時間t11は、フィルタ供給機構600の送りローラR3を作動させてフィルタFを送り出すのに必要な時間であって、例えば、抽出容器400及びドリップパン500の幾何学的形状、送りローラR3の送り出し性能などを考慮して適宜決定することができる。
【0039】
ステップ25では、コントローラ1200が、フィルタFを介在させた状態で、スライダ900を待機位置まで上昇させ、抽出容器400の下端部に対してドリップパン500の上端部を離隔した状態にする。
【0040】
かかる飲料供給処理によれば、飲料供給装置100は、
図4に示すようなタイミングチャートに従って動作する。なお、
図4に示すタイミングチャートは、飲料供給装置100の動作を時系列に説明する概略的なチャートであって、各構成要素の作動時間、作動タイミングなどは必ずしも図示のものでなくてもよいことを理解されたい。
【0041】
飲料供給処理が開始されると、最初に、スライダ900が上昇して、抽出容器400の下端部に対してドリップパン500の上端部が圧接される。このため、フィルタFを介在させた状態での抽出容器400とドリップパン500のシール性能が確保されて、ここに抽出湯及びコーヒー粉末を供給しても、抽出容器400とドリップパン500との間からコーヒー粉末を含んだ抽出湯が周囲に流出することを抑制できる。スライダ900の上昇が完了すると、原料供給部200のコーヒーミル240が第1の所定時間t1作動されるとともに、抽出湯供給部300の給湯電磁弁320が第2の所定時間t2作動される。コーヒーミル240の作動後に第3の所定時間t3経過するとコーヒーミル240の作動が安定するので、原料供給部200の繰り出し機構230が第4の所定時間t4作動し、所定容量のコーヒー豆がキャニスタ210からコーヒーミル240へと送り出されてコーヒー粉末に粉砕される。コーヒーミル240においてコーヒー豆を粉砕して得られたコーヒー粉末は、重力によって抽出容器400へと供給される。また、抽出湯供給部300の給湯電磁弁320が第2の所定時間t2作動することで、タンク310に貯蔵されている所定温度の抽出湯は、給湯電磁弁320及び抽出湯供給路L1を通って、抽出湯ノズル330の複数の開口部から抽出容器400へと供給される。
【0042】
抽出容器400へと抽出湯及びコーヒー粉末が供給されると、抽出容器400において抽出湯を用いてコーヒー粉末からコーヒー飲料が抽出されだす。この抽出過程において、抽出湯供給部300の給湯電磁弁320の作動後、要するに、抽出容器400への抽出湯の供給開始から第5の所定時間t5経過すると、エア供給部1000のエアポンプ1010及び閉止電磁弁1020が作動する。このため、エアポンプ1010から供給されるエアは、分岐路L4、閉止電磁弁1020、飲料搬送路L3、ドリップパン500及びフィルタFを介して抽出容器400へと供給されて噴出する。抽出容器400へと供給されて噴出されたエアは、抽出容器400に存在する抽出湯とコーヒー粉末の攪拌を促進し、例えば、コーヒー飲料の抽出効率を向上させることができる。
【0043】
エアポンプ1010の作動が停止してから第7の所定時間t7経過すると、抽出容器400におけるコーヒー飲料の抽出が完了したと見做せるため、チューブポンプ700が作動して抽出容器400からカップCへのコーヒー飲料の供給が開始される。そして、抽出容器400からカップCへと供給されるコーヒー飲料の流量が所定閾値未満になると、抽出容器400のコーヒー飲料の全量又は略全量がカップCへと供給されたと見做せるため、チューブポンプ700の作動が停止される。このとき、飲料供給装置100は、例えば、ランプなどによって利用者に対して飲料供給が完了したことを報知し、カップCを取り出してもよいことを認識させることができる。なお、利用者へのコーヒー飲料の提供が完了した状態では、
図5に示すように、抽出容器400においてフィルタFの上面には、コーヒー飲料が抽出されたコーヒー粉末、即ち、コーヒー滓が層をなして堆積されている。
【0044】
利用者に対する飲料の供給が完了すると、抽出湯供給部300の洗浄電磁弁340が第8の所定時間t8作動し、
図5に示すように、タンク310に貯蔵されている抽出湯が洗浄湯として、洗浄電磁弁340及び洗浄湯供給路L2を通って、洗浄湯ノズル350から抽出容器400へと供給される。この洗浄過程において、洗浄湯ノズル350が抽出容器400の上部においてその内周面の接線方向から洗浄湯を噴出するとともに、抽出容器400が一定の直径を有する円筒状をなしているため、抽出容器400の内周面に沿って旋回しながら下方に向けて流れる洗浄湯によって、その内周面に付着しているコーヒー滓を効率的に洗い流すことができる。そして、洗い流したコーヒー滓を含む洗浄湯は、
図6に示すように、抽出容器400においてフィルタFの上面に層状に堆積されているコーヒー滓の上方に洗浄湯の層を形成したり、洗浄湯の一部が原料滓に吸収されるものの残部が原料滓の上に層状に残ったりする。
【0045】
抽出容器400への洗浄湯の供給が終了すると、抽出容器400の内周面に付着していたコーヒー滓が洗浄湯によって洗い流されるまでの第9の所定時間t9待機した後、
図6に示すように、チューブポンプ700が第10の所定時間t10作動される。チューブポンプ700が作動すると、飲料搬送路L3、ドリップパン500及びフィルタFを介して、抽出容器400の内部に存在するコーヒー滓と液体、具体的には、洗浄湯とがフィルタFの抽出容器400側へと吸引されて、洗浄湯がコーヒー滓に吸収される。そして、チューブポンプ700が作動した状態において、
図7に示すように、スライダ900を下降させて抽出容器400からドリップパン500が切り離される。この状態では、フィルタFの上面に形成された洗浄湯を吸収したコーヒー滓の層は、チューブポンプ700が作動していることから引き続きフィルタFの抽出容器400側へと吸引される。そして、抽出容器400からドリップパン500を切り離すと、抽出容器400の洗浄湯を吸収したコーヒー滓との接面付近のコーヒー滓を含む洗浄湯が、スライダ900の下降に伴う表面張力による下方への誘引とチューブポンプ700の吸引とにより抽出容器400の内面から分離する。このため、抽出容器400の内面にコーヒー滓が残ることを抑制でき、さらに、抽出容器400とドリップパン500との間からコーヒー滓を含んだ洗浄湯が周囲へ流出することを抑制できる。また、抽出容器400とドリップパン500との間からコーヒー滓を含んだ洗浄湯が周囲へ流出し難くなることから、コーヒー滓がシール部に付着してシール不良が発生することを原因とする、コーヒー飲料の抽出不良も抑制することができる。
【0046】
チューブポンプ700を作動させながらスライダ900を降下させたら、フィルタ供給機構600の送りローラR3が第11の所定時間t11作動されて、抽出容器400においてコーヒー飲料を抽出した使用済みのフィルタFが送り出される。そして、抽出容器400に未使用のフィルタFが供給されるとともに、使用済みのフィルタFは、抽出容器400及びドリップパン500の他側方に配置された回収ボックスBへと回収される。フィルタFの交換が完了すると、スライダ900が待機位置まで上昇して、フィルタFを介在させた状態で、抽出容器400の下端部に対してドリップパン500の上端部が離隔して停止する。従って、次回の飲料供給に際して、初期化処理に要する時間を短縮することができる。
【0047】
このような動作を経て、飲料供給装置100は、カップCにコーヒー飲料を供給する。その後、利用者は、飲料供給装置100からカップCを取り出して、コーヒー飲料を楽しむことができる。
【0048】
ここで、チューブポンプ700を作動させて抽出容器400からドリップパン500へと吸引したコーヒー滓を含む洗浄湯は、カップCへと供給せず、飲料供給装置100の所定箇所に配置された排水タンクに廃棄するようにしてもよい。この場合、周知の電磁弁などを利用して、フィルタFを通過してドリップパン500へと吸引されたコーヒー滓を含んだ洗浄湯を排水タンクに導くようにすればよい。
【0049】
なお、当業者であれば、様々な上記実施形態の技術的思想について、その一部を省略したり、その一部を適宜組み合わせたり、その一部を周知技術に置換したりすることで、新たな実施形態を生み出せることを容易に理解できるであろう。
【0050】
その一例を挙げると、抽出容器400へのエア供給は、エア供給部1000に限らず、例えば、チューブポンプ700を逆転させて実現するようにしてもよい。また、飲料供給装置100によって供給される飲料は、コーヒー飲料に限らず、緑茶や紅茶などの茶葉から抽出された他の飲料であってもよい。さらに、抽出容器400からカップCへとコーヒー飲料を供給するチューブポンプ700の作動は、流量センサ1100の測定信号に限らず、ドリップパン500の内部の圧力を測定する圧力センサの測定信号に応じて停止するようにしてもよい。
【0051】
スライダ900は、少なくともドリップパン500を上下方向に移動させる代わりに、少なくとも抽出容器400を上下方向に移動させることで、フィルタFを介在させた状態で、抽出容器400とドリップパン500とを離接させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
100 飲料供給装置
200 原料供給部
300 抽出湯供給部(抽出供給部、洗浄湯供給部)
400 抽出容器
500 ドリップパン
700 チューブポンプ(ポンプ)
900 スライダ
1000 エア供給部(他のポンプ)
1100 流量センサ
1200 コントローラ
C カップ
F フィルタ