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特開2024-24154空調機能付キャリーバック台座、キャリーバックおよびキャリーバックの温度調節システム
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  • 特開-空調機能付キャリーバック台座、キャリーバックおよびキャリーバックの温度調節システム 図1
  • 特開-空調機能付キャリーバック台座、キャリーバックおよびキャリーバックの温度調節システム 図2
  • 特開-空調機能付キャリーバック台座、キャリーバックおよびキャリーバックの温度調節システム 図3
  • 特開-空調機能付キャリーバック台座、キャリーバックおよびキャリーバックの温度調節システム 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024154
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】空調機能付キャリーバック台座、キャリーバックおよびキャリーバックの温度調節システム
(51)【国際特許分類】
   A45C 11/00 20060101AFI20240215BHJP
   F25D 19/02 20060101ALI20240215BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
A45C11/00 D
F25D19/02 E
F25D11/00 101G
A45C11/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126778
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000191353
【氏名又は名称】新明工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173222
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100151149
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 幸城
(72)【発明者】
【氏名】竹中 孝洋
【テーマコード(参考)】
3B045
3L045
【Fターム(参考)】
3B045AA51
3B045CD03
3B045DA48
3B045GA01
3B045GB01
3B045GC01
3B045LA10
3B045LB01
3L045AA04
3L045BA02
3L045BA09
3L045CA02
3L045DA02
3L045EA01
3L045PA04
(57)【要約】
【課題】 軽量化を図った簡素な構成でありながらキャリーバック内部の空調を行うことができる空調機能付キャリーバック台座、キャリーバックおよびキャリーバックの温度調節システムを提供する。
【解決手段】
キャリーバック2の底面20に嵌合する形状の天面11と、キャリーバック2と嵌合した状態においてキャリーバック2内の空間22と連通する開口部12と、この開口部12を介してキャリーバック2内に設定温度となるように温度調節された空気を供給する温度調節部13と、この温度調節部13に電力を供給する電源部14とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリーバックの底面に嵌合する形状の天面と、
キャリーバックと嵌合した状態においてキャリーバック内の空間と連通する開口部と、
この開口部を介してキャリーバック内に設定温度となるように温度調節された空気を供給する温度調節部と、
この温度調節部に電力を供給する電源部とを備えることを特徴とする温調機能付キャリーバック台座。
【請求項2】
請求項1に記載の空調機能付キャリーバック台座の天面に嵌合する底面と、
この底面を空調機能付キャリーバック台座の天面に嵌合させた状態のみ前記開口部に連通連結され離間状態では閉鎖する開閉口と、
この開閉口に連通する収容空間と、
この収容空間を外部と隔離する閉状態および収容空間を解放する開状態に切り替える扉部とを備えることを特徴とするキャリーバック。
【請求項3】
キャリーバックと、空調機能付キャリーバック台座とからなるキャリーバックの温度調節システムであって、キャリーバックの底面に嵌合する形状の天面と、キャリーバックと嵌合した状態においてキャリーバック内の空間と連通する開口部と、この開口部を介してキャリーバック内に設定温度となるように温度調節された空気を供給する温度調節部と、この温度調節部に電力を供給する電源部とを備える温調機能付キャリーバック台座、および、空調機能付キャリーバック台座の天面に嵌合する底面と、この底面を空調機能付キャリーバック台座の天面に嵌合させた状態のみ前記開口部に連通連結され離間状態では閉鎖する開閉口と、この開閉口に連通する収容空間と、この収容空間を外部と隔離する閉状態および収容空間を解放する開状態に切り替える扉部とを備えるキャリーバックからなることを特徴とするキャリーバックの温度調節システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来より、犬や猫などのペットを連れて外出した時にペット用キャリーバック(ペット用クレート)を使用することがある。また、車両で移動するときには、ペットを車内で待たせることがあるが、ペットは汗をかくことがないので体温調節が難しく、暑さに耐えられないことがあった。とりわけ近年では、春先から気温が高くなることがあり、車内でペットを待たせてしまうことにより、ペットが熱中症になることが考えられる。
【0002】
そのため、車内の温度を調節するために車内のエアーコンディショナー(以下、エアコンという)を付けたままの状態で移動することがあったが、このとき車両はアイドリング状態を続ける必要があり、その間排気ガスを排出し続け、騒音を発生することにより環境に悪いだけでなく、エンジンをかけ続けるためにカギを車両に残したままで出かけるため、盗難リスクが増加するという問題があった。
【0003】
加えて、長時間エンジンを回転させ続けることにより、無駄な燃料を消費し、低回転動作を行い続けることによる不完全燃焼のため、エンジン内に燃えかすがたまるだけでなく潤滑油が行き渡らないことにより摺動部の裂傷が発生する可能性が高くなり、回転数が低いことにより発電量も少ないためエアコン稼働に必要な電力をバッテリから補充する必要が生じることに加え、異常に上昇した熱によって故障を招くという問題もあった。また、長時間エンジンをかけたままで移動させないで長時間放置すると、上記の様々な問題が発生するため、エンジンを自動停止させる制御がかかることも考えられる。
【0004】
そこで、多くの飼い主はペット用キャリーバックにペットを入れて外に連れて行くが、ペット用キャリーバックの中には密閉された容器のものであることにより、長時間ペットを入れておくことができないという問題もある。
【0005】
特許文献1、特許文献2には、扇風機を設けることによりペットの熱中症発生リスクを低減することができるペット用キャリーバックに関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-73534号公報
【特許文献2】実用新案登録第3230943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、特許文献2の発明のようなペット用キャリーバックでは、高速回転する扇風機を動物の近くに配置させることになるので、ペットが扇風機に接触することによる怪我を負う可能性や、耳障りな扇風機をペットが破損させる危険性があるだけでなく、扇風機を稼働させるための電力を供給するバッテリをペット用キャリーバックに搭載する必要があるため、それだけペット用キャリーバックが重くなることは避けられなかった。
【0008】
本発明は上述の事柄を考慮に入れてなされたものであり、軽量化を図った簡素な構成でありながらキャリーバック内部の空調を行うことができる空調機能付キャリーバック台座、キャリーバックおよびキャリーバックの温度調節システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、第1発明は、キャリーバックの底面に嵌合する形状の天面と、キャリーバックと嵌合した状態においてキャリーバック内の空間と連通する開口部と、この開口部を介してキャリーバック内に設定温度となるように温度調節された空気を供給する温度調節部と、この温度調節部に電力を供給する電源部とを備えることを特徴とする温調機能付キャリーバック台座を提供する(請求項1)。
【0010】
前記構成の空調機能付キャリーバック台座は、その天面がキャリーバックの底面に嵌合するので、キャリーバックを安定して据え置くことができる。キャリーバックを据え置いた状態では開口部がキャリーバック内の空間と連通するので、台座側からキャリーバック内に温度調節された空気を供給することが可能となる。
【0011】
温度調節部がキャリーバック内に設定温度になるように調節された空気を供給するので、キャリーバック内の空間がほぼ設定温度になる。このとき、温度調節部はキャリーバック内の容積だけを温度調節するので、温度調節部が必要とする電力を低く抑えることができ、それだけ電源部の容量を小さくして、可能な限りの軽量化を図ることができる。
【0012】
前記設定温度はキャリーバックに収容するものに合わせて固定的に設定された温度になるように温度制御を行なう制御部を備えるものであることにより可及的にシンプルに形成することができる。しかしながら、ダイヤルまたはボタン入力によって自在に入力可能な温度設定入力部と、この温度設定入力部によって設定された温度になるように調節する制御部を備えることにより、汎用性が向上する。
【0013】
温度調節部はペルティエ効果を用いた熱移動を行う熱電素子を備えた冷熱源を用いることにより可及的に小型化すると共に静音性に優れており、音に敏感な動物がストレスを感じることを軽減できる。しかしながら、逆カルノーサイクルを用いた熱移動を行うことができる冷凍機またはヒートポンプによる熱交換器を用いることにより、効率を向上して消費電力を削減することが好ましい。
【0014】
空調機能付キャリーバック台座を車両に搭載する場合、電源部は、二次電池と、エンジン稼働時に二次電池を充電する充電回路とを備えるものであることが好ましく、これによってエンジン稼働時に二次電池を充電しながら温度調節部がキャリーバック内の空気の温度調節を行い、エンジン停止時には二次電池に蓄えた電力を用いてキャリーバック内の空気の温度調節が可能である。他方、電源部として、燃料電池、太陽電池、乾電池のいずれかを用いて車両の電源に全く負荷をかけないようにすることも容易に考えられる。
【0015】
温度調節部および電源部を空調機能付キャリーバック台座側に設けることにより、これに嵌合するキャリーバックからは重量物とならざるを得ない部材を一切解除して、可及的に軽量化を図ることができ、キャリーバックを持って移動することを容易とする。
【0016】
開口部はキャリーバックを嵌合させた状態において温度調節部に温度調節を行わせるスイッチを備えるものであることが好ましく、これによってキャリーバック嵌合時にのみ、その内部の空間の温度調節を行うことが可能となり、エネルギー消費を削減することができる。
【0017】
また、前記開口部として、温度調節部によって温調された空気をキャリーバック内に導入させる導入開口部と、キャリーバック内の空気を温度調節部に吸引させる吸引開口部とを備えることが好ましく、これによって温度調節部は吸引した空気の温度を設定温度と比較してその差分を用いて設定温度となるように調節された空気を供給することにより温度調節を行うものであることが好ましい。加えて、吸引開口部を介して吸引した空気は除塵および脱臭機能を備えたエアフィルタを介して温度調節部に供給されることが好ましい。
【0018】
他方、キャリーバック側に温度センサを備える場合には、この温度センサを用いてキャリーバック内の空気の温度を計測可能であるから、開口部を導入開口部のみとして、設定温度と計測した温度の差分から必要に応じて温度調節した空気を導入可能とすることも考えられる。なお、温度センサは無線で測定温度を温度調節部に通信するものであることにより、キャリーバックに電気的な配線を設ける必要がなく、故障の発生を抑えることができて安全であるが、この温度センサは空調機能付キャリーバック台座にキャリーバックを嵌合させた状態で接続されるコネクタおよび電線を介して温度調節部に電気的に接続されたものであってもよい。
【0019】
第2発明は、第1発明の空調機能付キャリーバック台座の天面に嵌合する底面と、この底面を空調機能付キャリーバック台座の天面に嵌合させた状態のみ前記開口部に連通連結され離間状態では閉鎖する開閉口と、この開閉口に連通する収容空間と、この収容空間を外部と隔離する閉状態および収容空間を解放する開状態に切り替える扉部とを備えることを特徴とするキャリーバックを提供する。(請求項2)。
【0020】
上記構成の空調機能付キャリーバック台座に嵌合するキャリーバックは底面が空調機能付キャリーバック台座の天面に嵌合するので、キャリーバックを空調機能付キャリーバック台座に搭載させた状態で安定する。
【0021】
底面を空調機能付キャリーバック台座の天面に嵌合させた状態のみ前記開口部に連通連結され離間状態では閉鎖する開閉口を備えることにより、この開閉口および前記開口部を介して空調機能付キャリーバック台座に搭載したキャリーバック内の収容空間に、前記温度調節部によって調節された空気を供給することができる。
【0022】
前記収容空間を外部と隔離する閉状態および収容空間を解放する開状態に切り替える扉部は収容空間内にペットなどの収容物を収容空間内に収容できる。また、閉状態において収容空間内の空気を外界から隔離でき、温度調節部は収容空間内の少ない容量の空気の温度調節を行うだけであるから、より少ない電力で温度調節をすることが可能となる。
【0023】
なお、前記開閉口として、温度調節部からの温調された空気をキャリーバック内に導入させる導入開閉口と、キャリーバック内の空気を温度調節部に吸引させる吸引開閉口とを備えることが好ましく、これによってキャリーバック内の空気だけを温度調節して効率よく循環させて、設定温度に調節することが可能となる。
【0024】
他方、キャリーバックに、その収容空間内の空気の温度を測定する温度センサと、温度調節部から供給可能な空気の流量を超えない空気を放出可能とする放出空気窓とを備え、温度センサによって検出されるキャリーバック内の温度が設定温度になるように温度調節された空気を順次供給することも考えられる。
【0025】
さらに、キャリーバックを空調機能付キャリーバック台座から離間させた状態では、収容空間の換気を可能とする開閉可能な換気窓を備えることが好ましく、これによって搬送状態においてキャリーバック内に外気を導入可能として、極端な温度上昇を防止することも容易に考えられる。
【0026】
第3発明は、キャリーバックと、空調機能付キャリーバック台座とからなるキャリーバックの温度調節システムであって、キャリーバックの底面に嵌合する形状の天面と、キャリーバックと嵌合した状態においてキャリーバック内の空間と連通する開口部と、この開口部を介してキャリーバック内に設定温度となるように温度調節された空気を供給する温度調節部と、この温度調節部に電力を供給する電源部とを備える温調機能付キャリーバック台座、および、空調機能付キャリーバック台座の天面に嵌合する底面と、この底面を空調機能付キャリーバック台座の天面に嵌合させた状態のみ前記開口部に連通連結され離間状態では閉鎖する開閉口と、この開閉口に連通する収容空間と、この収容空間を外部と隔離する閉状態および収容空間を解放する開状態に切り替える扉部とを備えるキャリーバックからなることを特徴とするキャリーバックの温度調節システムを提供する。(請求項3)
【0027】
空調機能付キャリーバック台座にキャリーバックを嵌合した状態では、開口部と開閉口が連通連結されるので、温度調節部からキャリーバック内に設定温度となるように温度調節された空気を供給して、収容空間内の温度調節を行うことができる。空調機能付キャリーバック台座からキャリーバックを離間させた状態では開閉口が閉鎖するので、収容空間内の空気を外気から遮断することで収容空間内の温度の変化を抑えることができる。
【0028】
なお、空調機能付キャリーバック台座は複数設けてもよく、車両に搭載する空調機能付キャリーバック台座に加えて、移動中のキャリーバックを搭載するキャスター付の台車に搭載する空調機能付キャリーバック台座を設けることも考えられる。この場合、車両の空調機能付キャリーバック台座から台車上の空調機能付キャリーバック台座にキャリーバックを載せ替えることにより、キャリーバック内の収容空間の温度調整をほぼ継続して行うことが可能となる。
【0029】
上述したように、第1発明の空調機能付キャリーバック台座によれば、キャリーバック内の空気の温度調節をより小さな容量の電源部からの電力供給で行うことができ、設置スペースを必要最小限に抑えることができる。この空調機能付キャリーバック台座の上に置いたキャリーバック内の温度が設定温度に調節されるので、キャリーバック内にペットなどを収容するときにペットを熱中症から守ることができる。なお、ペット以外にも温度管理が必要な物品を収容することも可能であることは言うまでもない。
【0030】
第2発明の空調機能付キャリーバック台座に嵌合するキャリーバックは、可能な限り軽量化を図りながら、収容空間内の温度を設定温度程度に保つことができ、温度調節する収容空間を小さく限定することにより消費電力を抑えることができるので、車両に搭載した状態で車両に負荷をかけることなく収容空間内の温度調整を行うことができる。
【0031】
第3発明のキャリーバックの温度調節システムは、空調機能付キャリーバック台座にキャリーバックを嵌合した状態で収容空間内の温度調節を行うことができ、空調機能付キャリーバック台座から離間させた状態のキャリーバックは軽量であるから、ペットなどの収容物を容易に運搬することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の第1実施形態に係る空調機能付キャリーバック台座、キャリーバックおよびキャリーバックの温度調節システムの構成を示す図である。
図2図1の空調機能付キャリーバック台座、キャリーバックおよびキャリーバックの温度調節システムの別の状態を示す図である。
図3】第2実施形態に係る空調機能付キャリーバック台座、キャリーバックおよびキャリーバックの温度調節システムの構成を示す図である。
図4】第3実施形態に係る空調機能付キャリーバック台座、キャリーバックおよびキャリーバックの温度調節システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図1図2を用いて、本発明の第1実施形態にかかる空調機能付キャリーバック台座1、キャリーバック2およびキャリーバックの温度調節システム3の構成および動作を説明する。
【0034】
図1図2に示すように、本実施形態のキャリーバックの温度調節システム3は、キャリーバック2と空調機能付キャリーバック台座1とからなる。キャリーバック台座1はキャリーバック2の底面に嵌合する形状の天面11と、キャリーバック2と嵌合した状態においてキャリーバック内の空間と連通する開口部12と、この開口部12を介してキャリーバック内に設定温度となるように温度調節された空気を供給する温度調節部13と、この温度調節部13に電力を供給する電源部14とを備える。
【0035】
15は温度調節部13に介在させたエアーフィルタ、16はキャリーバック2の搭載状態を検知する搭載検知スイッチ、17は温度センサである。
【0036】
他方、キャリーバック2は空調機能付キャリーバック台座1の天面11に嵌合する底面20と、この底面20を空調機能付キャリーバック台座1の天面11に嵌合させた状態のみ前記開口部12に連通連結され離間状態では閉鎖する開閉口21と、この開閉口21に連通する収容空間22と、この収容空間22を外部と隔離する閉状態および収容空間22を解放する開状態に切り替える扉部23とを備える。
【0037】
前記空調機能付キャリーバック台座1の天面11にはキャリーバック2を搭載するときにガイドとなるだけでなく、キャリーバック2を搭載したときにその底面20に勘合することにより安定した状態を保つことができる凹凸が形成されており、搭載状態においては開口部12が開閉口21内に入る位置に形成されている。
【0038】
本実施形態の開口部12は、温度調節部13によって温度調節された空気をキャリーバック2内に導入させる導入開口部12Aと、キャリーバック2内の空気を温度調節部13に吸引させる吸引開口部12Bとを備え、キャリーバック2内の空気を循環させるものである。
【0039】
温度調節部13は前記吸引開口部12Bから吸引した空気を循環させるための送風機13Aと、外気を取り入れて循環させるための送風機13Bと、ペルティエ効果を用いた通電によって熱の移動を行うことができる熱電素子を備える冷熱源13Cと、前記搭載検知スイッチ16がキャリーバック2の搭載状態を検知するときに送風機13A、13Bを稼働させるとともに前記温度センサ17によって検出した収容空間22内の空気の温度が設定温度になるように、冷熱源13Cに通電を行う温度調節制御を行う制御部13Dとを備える。なお、13Eは冷熱側の放熱フィン、13Fは温熱側の放熱フィンである。
【0040】
本実施形態の前記電源部14はニッケル水素電池、鉛電池、Liイオン電池費などの二次電池であり、この電源部14の充電回路14Aと、図外の車両の電源部14に接続されて車両からの電力を入力する電源入力部14Bとを備える。
【0041】
前記エアフィルタ15はフィルター効果による空気の浄化と共に活性炭などによる消臭を行うことができるものであることが好ましく、また、外部から容易に交換可能であることが好ましい。
【0042】
前記キャリーバック2の底面20に形成された開閉口21は、前記導入開口部12Aおよび吸引開口部12Bに対応する位置にそれぞれ導入開閉口21Aおよび吸引開閉口21Bであり、キャリーバック2内には導入開口21Aから導入された空気を収容空間22の上方から吹き出させる吹出口21Dと、収容空間22の上部から空気を吸引する吸込口21Eとを備える。また、両開閉口21A,21Bには、図1に示す、キャリーバック2を温調機能付キャリーバック台座1に搭載した状態において、挿入された開口部12より連通状態となり、図2に示す、キャリーバック2を温調機能付キャリーバック台座1から離間させた状態においては閉鎖状態となる開閉蓋21Cを備える。
【0043】
他方、前記底面20にはキャリーバック2を温調機能付キャリーバック台座1から離間させた状態で床面に配置可能であると共に、前記開閉口21の下端が床面から浮いた状態を保つことができる程度の高さを有する脚部24を備える。
【0044】
前記扉部23は本実施例においては収容空間22内へのペットなどの収容物の出し入れを容易とするようにキャリーバック2の側面を大きく開く開口部を形成するものであることが好ましいが、本発明は扉部23の形状を図示したものに限定されるものではないことはいうまでもない。扉部23の閉状態において収容空間22を密閉可能とすることにより、閉状態においては収容空間22内の温度の急激な変化を防止できるので好ましいが、メッシュ状の生地を用いて形成された通気性に優れた素材の通気蓋を別途設けて、搬送時の通気性を高めてもよい。なお、25はキャリーバック2の取っ手である。
【0045】
上記構成の温調機能付キャリーバック台座1は車両に据え置いた状態で、車両のアクセサリ電源が通電状態において電源入力部14Bから得られる電力を用いて充電回路14Bが電源部14への充電を行い、アクセサリ電源の供給が途絶えた状態では電源部14に蓄えられた電力を用いて前記温度調節部13を稼働させることができる。
【0046】
図1に示すように、温調機能付キャリーバック台座1にキャリーバック2を搭載した状態では、搭載検知センサ16が脚部24に押されてキャリーバック2の搭載状態を検知し、制御部13Dは送風機13A,13Bに電力を供給してこれらを稼働させる。このとき、温度センサ17は収容空間22内の空気を吸引した部分に配置されているので、略収容空間22内の温度を検知していると判断でき、これが固定的に設定された設定温度(例えば25℃など、内容物に合わせて設定する)と比較して高い場合に冷熱源13Cを用いて熱の移動を行うことにより吹出口21Dから吹き出させる空気の温度を下げることにより、収容空間22内の温度調整を行ってほぼ設定温度に保つことができる。
【0047】
本発明のキャリーバックの温度調節システム3を用いることにより、ペットなどの収容物を収容空間22内に収容させた状態のキャリーバック2を温調機能付キャリーバック台座1に搭載させた状態では、車両のエンジンを止めた状態であっても、収容空間22内の温度を電源部14の電力が続く限りほぼ一定に保つことができる。従って、収容空間22内のペットが熱中症になることを防止できる。内容物として生鮮食品である場合には食料品の腐敗を防止できる。
【0048】
ペルチェ素子を用いた冷熱源13Cは音を立てることなく熱の移動をさせることができるので、とりわけペットなどの音に敏感な動物を収容するのに適している。また、キャリーバック2側には音の発生するファンや、ペットのいたずらによって容易に破損する部分がないので、耐久性にも優れている。
【0049】
また、収容空間22の容積が少ないので冷熱源13Cを用いて冷却する空気の容量が少ないため、消費電力を抑えることが可能である。従って、電源部14の容量を無駄に大きくする必要がなく、キャリーバックの温度調節システム3全体の軽量化を図ることができる。
【0050】
次に、図2に示すように、キャリーバック2を温調機能付キャリーバック台座1から離間させた状態においては、前記開閉口21A,21Bが蓋部21cによって閉じることにより、収容空間22は密閉状態になり、その内部の温度が外気によって急激に変化することはない。かつ、電源部14や充電部14Aに加えて温度調節部13など、比較的に重量物にならざるを得ないものが温調機能付キャリーバック台座1側に設けられているので、温調機能付キャリーバック台座1から離間した、キャリーバック2は極めて軽量であり、内容物の搬送を容易とすることができる。
【0051】
なお、キャリーバック2を温調機能付キャリーバック台座1から分離した状態で内容物を長時間搬送する場合には、扉部23に網戸のようなメッシュ状の通気部を形成し、収容空間22内の空気を外気と交換できるように構成することが好ましい。
【0052】
図3は、手押し車のように搬送を容易とする台車30に、別の温調機能付キャリーバック台座1Aを搭載した第2実施形態を示す図である。本実施形態ににおいて、第1実施形態と同じ符号を付した部材は、同一または同等の部材であるから、その詳細な説明を省略する。
【0053】
本実施形態の温調機能付キャリーバック台座1Aは、搬送を容易とする台車30に搭載された状態で設けられるものであり、温度調節部31に逆カルノーサイクルを用いた熱移動を行うことができる冷凍機31を用いている点において熱移動の効率化を図っている点と、制御部13Dに設定温度を入力するための温度設定ツマミ32を設けた点と、大容量の二次電池からなる電源部33を設けた点、および、開口部12Aから収容空間22内に導入する空気の温度を計測する温度センサ34を設けた点において異なっている。
【0054】
また、前記冷凍機31はフロンガスなどの冷媒を封入した高圧側管路31Aと、この高圧側管路31Aに連通連結された低圧側管路31Bと、冷媒を圧送可能なポンプ31Cと、熱交換用フィン31D,31Eとを備える。
【0055】
第2実施形態の温調機能付キャリーバック台座1Aでは温度設定ツマミ32によって制御部13Dに設定温度を設定可能であり、この目標温度に対して温度センサ17によって計測した温度がどの程度高いかに合わせて、開口部12Aから供給する空気の温度が設定温度より低くなるように調節された電力をポンプ31Cに供給する電力を調節することにより、消費電力をできるだけ抑えて目標温度を維持させることが可能となる。
【0056】
つまり、第1実施形態に示す車両内に固定的に搭載させた温調機能付キャリーバック台座1から、台車に搭載させた別の温調機能付キャリーバック台座1Aにキャリーバック1を載せ替えることにより、キャリーバック2内の収容空間22の温度を一定に保ち続けることが可能であり、かつ、キャリーバック2自体は軽量を保つことができる。
【0057】
なお、本実施形態における電源部33はバッテリパックとして、商用電源を用いて図外の充電器を用いて充電されるものであることが好ましいが、一次電池や燃料電池のようなものを用いてもよいことはいうまでもない。
【0058】
図4は、第3実施形態の温調機能付キャリーバック台座1Bおよびキャリーバック2Bの構成を示す図である。第3実施形態においても、すでに詳述した第1実施形態および第2実施形態と同じ符号を付した部材は、同一または同等の部材である。
【0059】
第3実施形態の温調機能付キャリーバック台座1Bおよびキャリーバック2Bにおいて、温度センサ41をキャリーバック2B側に設けることにより、収容空間22内の温度を直接的に計測している。また、42,43はキャリーバック2Bを温調機能付キャリーバック台座1Bに搭載した状態でのみ温度センサ41を制御部13Dに電気的に接続可能とするコネクタである。
【0060】
本実施形態のように構成することにより、収容空間22内の温度をより正確に計測できるので、適正な温度調整を必要な電力で行うことができ、それだけ電源部14の消費電力を抑えて、稼働時間を長くすることができる。
【0061】
上述の各実施形態において開口部12および開閉口21はいずれも収容空間22内に温度調節された空気を供給する導入側と、収容空間22からの吸引する吸引側を設けて、この収容空間22内の空気を循環させる例を示しているが、本発明はこの点に限定されるものではない。すなわち、キャリーバック2に空気抜き穴を形成することにより、温度調節部12から一方的に温度調節された空気を供給するようにして、構成の簡素化を図ってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1、1A、1B 温調機能付キャリーバック台座
2、2B キャリーバック
3 キャリーバックの温度調節システム
11 天面
12 開口部
13 温度調節部
14 電源部
20 底面
21 開閉口
22 収容空間
23 扉部
図1
図2
図3
図4