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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024158
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】振れ補正機能付き光学ユニット
(51)【国際特許分類】
   G03B 5/00 20210101AFI20240215BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20240215BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20240215BHJP
   H04N 23/55 20230101ALI20240215BHJP
   H04N 23/68 20230101ALI20240215BHJP
【FI】
G03B5/00 J
G03B30/00
G03B17/02
H04N5/225 400
H04N5/232 480
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126782
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100196140
【弁理士】
【氏名又は名称】岩垂 裕司
(72)【発明者】
【氏名】笠原 章吾
【テーマコード(参考)】
2H100
2K005
5C122
【Fターム(参考)】
2H100AA31
2H100BB05
2H100BB11
2H100CC07
2H100EE01
2K005AA01
2K005BA52
2K005CA04
2K005CA34
2K005CA44
2K005CA45
2K005CA53
5C122EA41
5C122EA54
5C122FB03
5C122GE05
5C122GE07
5C122GE11
5C122HA82
(57)【要約】
【課題】ジンバル機構の第1接続機構を構成する第1スラスト受け部材の溶接個所に加わる応力を低減させるとともに、第1接続機構の小型化および組立性の向上を図る。
【解決手段】振れ補正機能付き光学ユニット1は、球体152を保持する第1スラスト受け部材153を回転支持機構12に設けられたスラスト受け部材固定部640の平板部641に溶接して第1接続機構15を構成する。第1スラスト受け部材153は、+R2方向の縁に設けた第1腕部156および第2腕部157と、-R2方向の縁に設けた第3腕部158の3個所を平板部641に当接させ、平板部641から屈曲した第1爪部642を第1腕部156と第2腕部157の間に配置し、平板部641から屈曲した第2爪部643と第3爪部644の間に第3腕部158を配置する状態に組み立てられる。3個所の溶接個所は、面溶接により接合される。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラモジュールを備える可動体と、
前記可動体を前記カメラモジュールの光軸を中心として回転可能に支持する回転支持機構と、
前記回転支持機構を前記光軸と交差する第1軸回りに回転可能に支持するとともに、前記回転支持機構を前記光軸および前記第1軸と交差する第2軸回りに回転可能に支持するジンバル機構と、
前記ジンバル機構を介して前記可動体を支持する固定体と、を有し、
前記ジンバル機構は、ジンバルフレームと、前記ジンバルフレームおよび前記回転支持機構を前記第1軸回りに回転可能に接続する第1接続機構と、前記ジンバルフレームおよび前記固定体を前記第2軸回りに回転可能に接続する第2接続機構と、を備え、
前記第1接続機構は、
球体および前記球体が固定される第1スラスト受け部材と、前記回転支持機構において前記可動体の前記第1軸方向の両側に配置される金属製のスラスト受け部材固定部と、前記ジンバルフレームにおいて前記スラスト受け部材固定部に固定された前記第1スラスト受け部材と前記スラスト受け部材固定部との間に配置されて前記第1軸上で前記球体と点接触する第1軸側延設部と、を備え、
前記光軸に沿う方向を光軸方向とするとき、
前記第1スラスト受け部材は、
前記球体が固定される板部と、前記板部の前記第2軸方向の一方側の端から前記スラスト受け部材固定部の側に屈曲した第1側板部と、前記第1側板部における前記光軸方向に離れた2箇所から前記第2軸方向の一方側へ屈曲した第1腕部および第2腕部と、前記板部の前記第2軸方向の他方側の端から前記スラスト受け部材固定部の側に屈曲した第2側板部と、前記第2側板部から前記第2軸方向の他方側へ屈曲した第3腕部と、を備え、
前記スラスト受け部材固定部は、
前記板部と前記第1軸方向で対向し前記第1腕部、前記第2腕部、および前記第3腕部に当接する平板部と、前記平板部の前記第2軸方向の一方側の端から前記第1スラスト受け部材の側に屈曲して前記第1腕部と前記第2腕部との間に配置される第1爪部と、前記平板部の前記第2軸方向の他方側の端から前記第1スラスト受け部材の側に屈曲して前記第3腕部の前記光軸方向の両側に配置される第2爪部および第3爪部と、を備え、
前記第1腕部、前記第2腕部、および前記第3腕部は、それぞれ、前記平板部に対して面溶接により接合された溶接痕を備えることを特徴とする振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項2】
前記第1腕部と前記第2腕部は、前記第1スラスト受け部材の前記光軸方向の両端に配置され、
前記第3腕部は、前記第1スラスト受け部材の前記光軸方向の中央に配置されることを特徴とする請求項1に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項3】
前記溶接痕は、前記第1腕部、前記第2腕部、および前記第3腕部のそれぞれからはみ出さない位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項4】
前記第1スラスト受け部材は、前記スラスト受け部材固定部に対して前記第1軸方向で前記可動体とは反対側から固定され、
前記カメラモジュールの被写体側を前記光軸方向の一方側とし、前記カメラモジュールの反被写体側を前記光軸方向の他方側とするとき、
前記第1軸側延設部の前記光軸方向の他方側の先端には、前記第1軸方向で前記可動体とは反対側へ突出する突出部が設けられ、
前記第1スラスト受け部材は、前記板部の前記光軸方向の他方側の縁を前記光軸方向の一方側へ切り欠いた切欠き部を備え、
前記切欠き部に前記突出部が配置されることを特徴とする請求項1に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項5】
前記切欠き部の幅方向の両端には、幅方向の中央部分よりも深く切り欠いた逃げ部が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項6】
前記第1爪部、前記第2爪部、および前記第3爪部の前記第1軸方向の突出寸法は、前記第1スラスト受け部材の前記第1軸方向の高さよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項7】
前記第1スラスト受け部材は、前記板部を貫通する球体固定孔と、前記球体固定孔と前記光軸方向で並ぶ位置に設けられたガイド孔と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項8】
前記回転支持機構は、前記光軸を囲む第1環状板部を備える第1部材と、前記第1環状板部と前記光軸方向で重なる第2環状板部を備える第2部材と、前記第1環状板部に設けられた第1環状溝、および、前記第2環状板部に設けられた第2環状溝に挿入される複数の転動体と、を備え、
前記カメラモジュールの被写体側を前記光軸方向の一方側とし、前記カメラモジュールの反被写体側を前記光軸方向の他方側とするとき、
前記第2部材は、前記第2環状板部から前記第1軸方向の両側へ延びてから前記光軸方向の他方側へ延びる一対の第2延設部を備え、
前記スラスト受け部材固定部は、前記第2延設部の先端に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項9】
カメラモジュールを備える可動体と、
前記可動体を前記カメラモジュールの光軸と交差する第1軸回りに回転可能に支持するとともに、前記可動体を前記光軸および前記第1軸と交差する第2軸回りに回転可能に支持するジンバル機構と、
前記ジンバル機構を介して前記可動体を支持する固定体と、を有し、
前記ジンバル機構は、ジンバルフレームと、前記ジンバルフレームおよび前記可動体を前記第1軸回りに回転可能に接続する第1接続機構と、前記ジンバルフレームおよび前記固定体を前記第2軸回りに回転可能に接続する第2接続機構と、を備え、
前記第1接続機構は、
球体および前記球体が固定される第1スラスト受け部材と、前記可動体の前記第1軸方向の対角位置に設けられた金属製のスラスト受け部材固定部と、前記ジンバルフレームにおいて前記スラスト受け部材固定部に固定された前記第1スラスト受け部材と前記スラスト受け部材固定部との間に配置されて前記第1軸上で前記球体と点接触する第1軸側延設部と、を備え、
前記光軸に沿う方向を光軸方向とするとき、
前記第1スラスト受け部材は、
前記球体が固定される板部と、前記板部の前記第2軸方向の一方側の端から前記スラスト受け部材固定部の側に屈曲した第1側板部と、前記第1側板部における前記光軸方向に離れた2箇所から前記第2軸方向の一方側へ屈曲した第1腕部および第2腕部と、前記板部の前記第2軸方向の他方側の端から前記スラスト受け部材固定部の側に屈曲した第2側板部と、前記第2側板部から前記第2軸方向の他方側へ屈曲した第3腕部と、を備え、
前記スラスト受け部材固定部は、
前記板部と前記第1軸方向で対向し前記第1腕部、前記第2腕部、および前記第3腕部
に当接する平板部と、前記平板部の前記第2軸方向の一方側の端から前記第1スラスト受け部材の側に屈曲して前記第1腕部と前記第2腕部との間に配置される第1爪部と、前記平板部の前記第2軸方向の他方側の端から前記第1スラスト受け部材の側に屈曲して前記第3腕部の前記光軸方向の両側に配置される第2爪部および第3爪部と、を備え、
前記第1腕部、前記第2腕部、および前記第3腕部は、それぞれ、前記平板部に対して面溶接により接合された溶接痕を備えることを特徴とする振れ補正機能付き光学ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラモジュールを回転させて振れを補正する振れ補正機能付き光学ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末や移動体に搭載される光学ユニットの中には、携帯端末や移動体の移動時の撮影画像の乱れを抑制するために、カメラモジュールを備える可動体を、光軸回り、光軸と交差する第1軸回り、並びに光軸および第1軸と交差する第2軸回りに回転させるものがある。特許文献1には、この種の振れ補正機能付き光学ユニットが記載される。
【0003】
特許文献1の振れ補正機能付き光学ユニットは、カメラモジュールを備える可動体と、可動体を光軸回りに回転可能に支持する回転支持機構と、回転支持機構を介して可動体を第1軸回りおよび第2軸回りに回転可能に支持するジンバル機構と、回転支持機構およびジンバル機構を介して可動体を支持する固定体を有する。回転支持機構は、可動体に設けられた第1部材と、ジンバル機構に支持される第2部材とが円弧状断面の環状溝を備えており、光軸方向に対向する環状溝を球体が転動することにより、第1部材と第2部材が光軸回りに相対回転する。
【0004】
ジンバル機構は、ジンバルフレームと、ジンバルフレームの第1軸上の対角位置に配置される第1ジンバルフレーム受け部材と、ジンバルフレームの第2軸上の対角位置に配置される第2ジンバルフレーム受け部材を備える。第1ジンバルフレーム受け部材および第2ジンバルフレーム受け部材は、それぞれ、金属製の球体と、球体が固定されたスラスト受け部材(第1スラスト受け部材、第2スラスト受け部材)を備える。球体は、スラスト受け部材を介して第1軸上の対角位置および第2軸上の対角位置に保持されてジンバルフレームに点接触する。
【0005】
特許文献1の振れ補正機能付き光学ユニットでは、第1ジンバルフレーム受け部材は、回転支持機構の第2部材に固定される。第2部材は、第1軸方向に延びてから光軸方向に屈曲する第2延設部を備えており、第2延設部に第1スラスト受け部材が固定される。第1スラスト受け部材は、球体が固定される板部と、板部の側縁から屈曲した一対の腕部と、板部の下端から屈曲した足部を備えており、一対の腕部および足部が第2部材の第2延設部に溶接により固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-100781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、第1スラスト受け部材の足部と、ジンバルフレームの抜け防止用の突出部とが干渉することを回避するため、足部には、突出部を通すための孔部を設けており、第1スラスト受け部材の形状が複雑化している。また、足部を設けることにより第1スラスト受け部材の光軸方向のサイズが大型化している。ここで、本発明者らは、足部をなくすことにより形状の単純化および光軸方向のサイズ低減を図り、且つ、抜け防止用の突出部を通すスペースを確保することを検討したが、足部をなくした場合、溶接個所が2点となるので、2点を結んだ直線を軸として第1スラスト受け部材が傾くおそれがある。その結果、溶接個所に繰り返し応力が加わることになり、最終的には疲労破壊して第1スラ
スト受け部材が脱落するおそれがある。
【0008】
また、特許文献1では、第1スラスト受け部材を第2部材の第2延設部に溶接することによって構成される第1接続機構は、可動体と固定体との間の狭いスペースに配置されるため、落下などの衝撃が加わった際に、周囲の部品と衝突するおそれがある。衝突のリスクを下げるためには、第1接続機構の小型化が求められている。
【0009】
さらに、特許文献1では、第1スラスト受け部材を溶接する相手部材である第2部材の第2延設部に、第1スラスト受け部材を位置決めする構造が設けられていない。従って、組立性が悪いという問題がある。
【0010】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、ジンバル機構の第1スラスト受け部材を溶接により固定する構造において、溶接個所に加わる応力を低減させて疲労破壊による第1スラスト受け部材の脱落を抑制するとともに、第1接続機構の小型化および組立性の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の振れ補正機能付き光学ユニットは、カメラモジュールを備える可動体と、前記可動体を前記カメラモジュールの光軸を中心として回転可能に支持する回転支持機構と、前記回転支持機構を前記光軸と交差する第1軸回りに回転可能に支持するとともに、前記回転支持機構を前記光軸および前記第1軸と交差する第2軸回りに回転可能に支持するジンバル機構と、前記ジンバル機構を介して前記可動体を支持する固定体と、を有し、前記ジンバル機構は、ジンバルフレームと、前記ジンバルフレームおよび前記回転支持機構を前記第1軸回りに回転可能に接続する第1接続機構と、前記ジンバルフレームおよび前記固定体を前記第2軸回りに回転可能に接続する第2接続機構と、を備え、前記第1接続機構は、球体および前記球体が固定される第1スラスト受け部材と、前記回転支持機構において前記可動体の前記第1軸方向の両側に配置される金属製のスラスト受け部材固定部と、前記ジンバルフレームにおいて前記スラスト受け部材固定部に固定された前記第1スラスト受け部材と前記スラスト受け部材固定部との間に配置されて前記第1軸上で前記球体と点接触する第1軸側延設部と、を備え、前記光軸に沿う方向を光軸方向とするとき、前記第1スラスト受け部材は、前記球体が固定される板部と、前記板部の前記第2軸方向の一方側の端から前記スラスト受け部材固定部の側に屈曲した第1側板部と、前記第1側板部における前記光軸方向に離れた2箇所から前記第2軸方向の一方側へ屈曲した第1腕部および第2腕部と、前記板部の前記第2軸方向の他方側の端から前記スラスト受け部材固定部の側に屈曲した第2側板部と、前記第2側板部から前記第2軸方向の他方側へ屈曲した第3腕部と、を備え、前記スラスト受け部材固定部は、前記板部と前記第1軸方向で対向し前記第1腕部、前記第2腕部、および前記第3腕部に当接する平板部と、前記平板部の前記第2軸方向の一方側の端から前記第1スラスト受け部材の側に屈曲して前記第1腕部と前記第2腕部との間に配置される第1爪部と、前記平板部の前記第2軸方向の他方側の端から前記第1スラスト受け部材の側に屈曲して前記第3腕部の前記光軸方向の両側に配置される第2爪部および第3爪部と、を備え、前記第1腕部、前記第2腕部、および前記第3腕部は、それぞれ、前記平板部に対して面溶接により接合された溶接痕を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、第1スラスト受け部材は、3箇所の腕部をスラスト受け部材固定部の平板部に溶接して固定するので、溶接個所を結んだ軸を中心として傾くおそれが少ない。従って、溶接個所に加わる応力を低減させることができ、疲労破壊による脱落を抑制できる。また、溶接方法として面溶接を選択するので、3箇所の腕部を囲む溶接しろを広く確保する必要がない。従って、スラスト受け部材固定部を小型化でき、第1接続機構を小型化できるので、第1接続機構を配置するスペースが狭い場合でも、落下衝撃により部品同
士が衝突して脱落するおそれが少ない。あるいは、スラスト受け部材固定部を小型化した分、第1接続機構を囲む部品の肉厚を大きくして強度を高めることができる。さらに、スラスト受け部材固定部には、第1腕部と第2腕部の間、および、第3腕部の光軸方向の両側の3箇所に爪部を設けているので、爪部を介して第1スラスト受け部材を光軸方向および第2軸方向に位置決めできる。従って、第1接続機構の組立性の向上を図ることができる。
【0013】
本発明において、前記第1腕部と前記第2腕部は、前記第1スラスト受け部材の前記光軸方向の両端に配置され、前記第3腕部は、前記第1スラスト受け部材の前記光軸方向の中央に配置されることが好ましい。本発明者らは、3箇所の腕部をこのような配置にした場合に、溶接個所に加わる応力を低減できることを応力解析により確認している。
【0014】
本発明において、前記溶接痕は、前記第1腕部、前記第2腕部、および前記第3腕部のそれぞれからはみ出さない位置に設けられていることが好ましい。このようにすると、3箇所の腕部を囲む溶接しろが不要となる。従って、スラスト受け部材固定部を小型化でき、第1接続機構を小型化できるので、第1接続機構を配置するスペースが狭い場合でも、落下衝撃により部品同士が衝突して脱落するおそれを少なくすることができる。
【0015】
本発明において、前記第1スラスト受け部材は、前記スラスト受け部材固定部に対して前記第1軸方向で前記可動体とは反対側から固定され、前記カメラモジュールの被写体側を前記光軸方向の一方側とし、前記カメラモジュールの反被写体側を前記光軸方向の他方側とするとき、前記第1軸側延設部の前記光軸方向の他方側の先端には、前記第1軸方向で前記可動体とは反対側へ突出する突出部が設けられ、前記第1スラスト受け部材は、前記板部の前記光軸方向の他方側の縁を前記光軸方向の一方側へ切り欠いた切欠き部を備え、前記切欠き部に前記突出部が配置されることが好ましい。このようにすると、ジンバルフレームの第1軸側延設部が第1スラスト受け部材とスラスト受け部材固定部との間から抜ける方向の衝撃が加わった場合の抜け防止を図ることができる。
【0016】
本発明において、前記切欠き部の幅方向の両端には、幅方向の中央部分よりも深く切り欠いた逃げ部が設けられていることが好ましい。このようにすると、加工精度が低い場合に切欠き部の角部がR形状になって抜け防止用の突出部と干渉するおそれを少なくすることができる。
【0017】
本発明において、前記第1爪部、前記第2爪部、および前記第3爪部の前記第1軸方向の突出寸法は、前記第1スラスト受け部材の前記第1軸方向の高さよりも大きいことが好ましい。このようにすると、落下等の衝撃が加わった際に、他部品と第1スラスト受け部材との衝突を回避できるので、第1スラスト受け部材の脱落を抑制できる。
【0018】
本発明において、前記第1スラスト受け部材は、前記板部を貫通する球体固定孔と、前記球体固定孔と前記光軸方向で並ぶ位置に設けられたガイド孔と、を備えることが好ましい。このようにすると、組立工程において、ガイド孔を利用して第1スラスト受け部材を保持することができる。
【0019】
本発明において、前記回転支持機構は、前記光軸を囲む第1環状板部を備える第1部材と、前記第1環状板部と前記光軸方向で重なる第2環状板部を備える第2部材と、前記第1環状板部に設けられた第1環状溝、および、前記第2環状板部に設けられた第2環状溝に挿入される複数の転動体と、を備え、前記カメラモジュールの被写体側を前記光軸方向の一方側とし、前記カメラモジュールの反被写体側を前記光軸方向の他方側とするとき、前記第2部材は、前記第2環状板部から前記第1軸方向の両側へ延びてから前記光軸方向の他方側へ延びる一対の第2延設部を備え、前記スラスト受け部材固定部は、前記第2延
設部の先端に設けられていることが好ましい。このようにすると、回転支持機構としてベアリングを用いた場合に、カメラモジュールに対して光軸方向に重なる位置にベアリングを配置することができる。従って、回転支持機構をコンパクトに構成できる。また、光軸回りに相対回転する部材の一方(第2部材)をジンバル機構によって第1軸回りに回転可能に支持することができる。
【0020】
次に、本発明は、カメラモジュールを備える可動体と、前記可動体を前記カメラモジュールの光軸と交差する第1軸回りに回転可能に支持するとともに、前記可動体を前記光軸および前記第1軸と交差する第2軸回りに回転可能に支持するジンバル機構と、前記ジンバル機構を介して前記可動体を支持する固定体と、を有し、前記ジンバル機構は、ジンバルフレームと、前記ジンバルフレームおよび前記可動体を前記第1軸回りに回転可能に接続する第1接続機構と、前記ジンバルフレームおよび前記固定体を前記第2軸回りに回転可能に接続する第2接続機構と、を備え、前記第1接続機構は、球体および前記球体が固定される第1スラスト受け部材と、前記可動体の前記第1軸方向の対角位置に設けられた金属製のスラスト受け部材固定部と、前記ジンバルフレームにおいて前記スラスト受け部材固定部に固定された前記第1スラスト受け部材と前記スラスト受け部材固定部との間に配置されて前記第1軸上で前記球体と点接触する第1軸側延設部と、を備え、前記光軸に沿う方向を光軸方向とするとき、前記第1スラスト受け部材は、前記球体が固定される板部と、前記板部の前記第2軸方向の一方側の端から前記スラスト受け部材固定部の側に屈曲した第1側板部と、前記第1側板部における前記光軸方向に離れた2箇所から前記第2軸方向の一方側へ屈曲した第1腕部および第2腕部と、前記板部の前記第2軸方向の他方側の端から前記スラスト受け部材固定部の側に屈曲した第2側板部と、前記第2側板部から前記第2軸方向の他方側へ屈曲した第3腕部と、を備え、前記スラスト受け部材固定部は、前記板部と前記第1軸方向で対向し前記第1腕部、前記第2腕部、および前記第3腕部に当接する平板部と、前記平板部の前記第2軸方向の一方側の端から前記第1スラスト受け部材の側に屈曲して前記第1腕部と前記第2腕部との間に配置される第1爪部と、前記平板部の前記第2軸方向の他方側の端から前記第1スラスト受け部材の側に屈曲して前記第3腕部の前記光軸方向の両側に配置される第2爪部および第3爪部と、を備え、前記第1腕部、前記第2腕部、および前記第3腕部は、それぞれ、前記平板部に対して面溶接により接合された溶接痕を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、第1スラスト受け部材は、3箇所の腕部をスラスト受け部材固定部の平板部に溶接して固定するので、溶接個所を結んだ軸を中心として傾くおそれが少ない。従って、溶接個所に加わる応力を低減させることができ、疲労破壊による脱落を抑制できる。また、溶接方法として面溶接を選択するので、3箇所の腕部を囲む溶接しろを広く確保する必要がない。従って、スラスト受け部材固定部を小型化でき、第1接続機構を小型化できるので、第1接続機構を配置するスペースが狭い場合でも、落下衝撃により部品同士が衝突して脱落するおそれが少ない。あるいは、スラスト受け部材固定部を小型化した分、第1接続機構を囲む部品の肉厚を大きくして強度を高めることができる。さらに、スラスト受け部材固定部には、第1腕部と第2腕部の間、および、第3腕部の光軸方向の両側の3箇所に爪部を設けているので、爪部を介して第1スラスト受け部材を光軸方向および第2軸方向に位置決めできる。従って、第1接続機構の組立性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】振れ補正機能付き光学ユニットの斜視図である。
図2】振れ補正機能付き光学ユニットの分解斜視図である。
図3】カバーを外した振れ補正機能付き光学ユニットを被写体側から見た平面図である。
図4】カバーおよびベースを外した振れ補正機能付き光学ユニットの分解斜視図である。
図5図3のA-A位置で切断した振れ補正機能付き光学ユニットの断面図である。
図6図3のB-B位置で切断した振れ補正機能付き光学ユニットの断面図である。
図7】可動体および回転支持機構と、ジンバルフレームの分解斜視図である。
図8】可動体および回転支持機構の分解斜視図である。
図9】第1スラスト受け部材とスラスト受け部材固定部の斜視図である。
図10】第1スラスト受け部材とスラスト受け部材固定部の正面図および平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した振れ補正機能付き光学ユニットの実施形態を説明する。
【0024】
(全体構成)
図1は、振れ補正機能付き光学ユニット1の斜視図である。図2は、振れ補正機能付き光学ユニット1の分解斜視図である。図3は、カバー4を外した振れ補正機能付き光学ユニット1を被写体側から見た平面図である。図4は、カバー4およびベース5を外した振れ補正機能付き光学ユニット1の分解斜視図である。
【0025】
図1図2に示すように、振れ補正機能付き光学ユニット1は、カメラモジュール2を備える可動体10と、可動体10を外周側から囲む固定体11を備える。固定体11は、可動体10を外周側から囲む枠状のケース3と、ケース3にカメラモジュール2の被写体側から固定されるカバー4と、ケース3にカメラモジュール2の反被写体側から固定されて可動体10を反被写体側から覆うベース5を備える。また、振れ補正機能付き光学ユニット1は、可動体10から引き出されるフレキシブルプリント基板6と、ケース3の外周面に沿って引き回されるフレキシブルプリント基板7を備える。
【0026】
振れ補正機能付き光学ユニット1は、例えば、カメラ付き携帯電話機、ドライブレコーダー等の光学機器や、ヘルメット、自転車、ラジコンヘリコプター等の移動体に搭載されるアクションカメラやウエアラブルカメラ等の光学機器に用いられる。このような光学機器では、撮影時に光学機器の振れが発生すると、撮像画像に乱れが発生する。振れ補正機能付き光学ユニット1は、撮影画像が傾くことを回避するため、ジャイロスコープ等の検出手段によって検出された加速度や角速度、振れ量等に基づき、カメラモジュール2の傾きを補正する。
【0027】
カメラモジュール2は、レンズ2aと、レンズ2aの光軸L上に配置された撮像素子2bを備える(図5図6参照)。振れ補正機能付き光学ユニット1は、レンズ2aの光軸L回り、光軸Lと直交する第1軸回り、並びに、光軸Lおよび第1軸R1と直交する第2軸回りにカメラモジュール2を回転させて振れ補正を行う。
【0028】
以下の説明では、互いに直交する3軸をX軸、Y軸、Z軸とする。X軸に沿う方向をX軸方向とし、Y軸に沿う方向をY軸方向とし、Z軸に沿う方向をZ軸方向とする。また、X軸方向の一方側を-X方向、他方側を+X方向とする。Y軸方向の一方側を-Y方向、他方側を+Y方向とする。Z軸方向の一方側を-Z方向、他方側を+Z方向とする。カメラモジュール2の光軸Lに沿う方向を光軸方向とするとき、Z軸方向は、光軸方向と一致する。+Z方向は、カメラモジュール2の被写体側であり、光軸方向の一方側である。-Z方向は、カメラモジュール2の反被写体側であり、光軸方向の他方側である。第1軸R1および第2軸R2は、Z軸回り(光軸回り)で、X軸およびY軸に対して45度傾斜する。第1軸R1に沿う方向を第1軸方向とし、第2軸R2に沿う方向を第2軸方向とする
【0029】
振れ補正機能付き光学ユニット1は、可動体10をZ軸回り(光軸回り)に回転可能に支持する回転支持機構12と、ジンバル機構13とを有する。ジンバル機構13は、回転支持機構12を第1軸回りに回転可能に支持するとともに、回転支持機構12を第2軸回りに回転可能に支持する。可動体10は、回転支持機構12およびジンバル機構13を介して、第1軸回りおよび第2軸回りに回転可能な状態で固定体11に支持される。
【0030】
図3に示すように、ジンバル機構13は、ジンバルフレーム14と、ジンバルフレーム14と回転支持機構12とを第1軸回りに回転可能に接続する第1接続機構15を備える。第1接続機構15は、ジンバルフレーム14の第1軸方向の両側に設けられている。また、ジンバル機構13は、ジンバルフレーム14と固定体11とを第2軸回りに回転可能に接続する第2接続機構16を備える。第2接続機構16は、ジンバルフレーム14の第2軸方向の両側に設けられている。
【0031】
また、振れ補正機能付き光学ユニット1は、可動体10を第1軸回りおよび第2軸回りに回転させる振れ補正用磁気駆動機構20を備える。図3に示すように、振れ補正用磁気駆動機構20は、可動体10に対してX軸回りの駆動力を発生させる第1振れ補正用磁気駆動機構21と、可動体10に対してY軸回りの駆動力を発生させる第2振れ補正用磁気駆動機構22を備える。本形態では、第1振れ補正用磁気駆動機構21は、カメラモジュール2の-X方向に配置される。第2振れ補正用磁気駆動機構22は、カメラモジュール2の-Y方向に配置される。
【0032】
可動体10は、第1軸回りの回転および第2軸回りの回転を合成することにより、X軸回りおよびY軸回りに回転する。これにより、振れ補正機能付き光学ユニット1は、X軸回りのピッチング補正、およびY軸回りのヨーイング補正を行う。
【0033】
さらに、振れ補正機能付き光学ユニット1は、可動体10をZ軸回りに回転させるローリング補正用磁気駆動機構23を有する。図3に示すように、ローリング補正用磁気駆動機構23は、カメラモジュール2の-X方向および-Y方向の2箇所に配置される。
【0034】
(固定体)
図1図2に示すように、固定体11において、カバー4およびベース5は板状であり、非磁性の金属からなる。カバー4およびベース5の外周縁には、ケース3の側に略直角に屈曲したフック8が形成されている。ケース3は樹脂製である。カバー4およびベース5は、ケース3の外周面に設けられた突起9にフック8を係止することにより、ケース3に固定される。ジンバル機構13およびカメラモジュール2は、カバー4の開口部4aの内側に配置され、カバー4から+Z方向に突出する。
【0035】
図2図3に示すように、ケース3は、可動体10および回転支持機構12を外周側から囲む矩形の枠部18と、枠部18の+X方向に配置される矩形の配線収容部19を備える。枠部18は、X方向で対向する第1側板部181および第2側板部182と、Y方向で対向する第3側板部183および第4側板部184を備える。第1側板部181は第2側板部182の-X方向に位置する。第3側板部183は、第4側板部184の-Y方向に位置する。
【0036】
図4に示すように、枠部18は、第2側板部182の-Z方向の端縁を切り欠いた切欠き部185を備える。可動体10の-Z方向の端部分からは、撮像素子2bに接続されるフレキシブルプリント基板6が+X方向に引き出されている。フレキシブルプリント基板6は、切欠き部185を通って枠部18の+X方向に引き出され、配線収容部19に収容
される。フレキシブルプリント基板6は、配線収容部19の内側で複数回折り返された形状に引き回され、配線収容部19の外側へ引き出される。
【0037】
図4に示すように、ケース3の第3側板部183には、第1コイル固定孔183aが設けられている。第1コイル固定孔183aには、第1コイル21Cおよび第3コイル23C1が配置される。ケース3の第1側板部181には、第2コイル固定孔181aが設けられている。第2コイル固定孔181aには、第2コイル22Cおよび第4コイル23C2が配置される。第1コイル21Cおよび第2コイル22Cは、周方向に長い長円形の空芯コイルである。第3コイル23C1および第4コイル23C2は、Z軸方向に長い空芯コイルである。
【0038】
図3に示すように、第3側板部183に固定された第1コイル21Cと可動体10の-Y方向の側面に固定された第1磁石21MとはY方向で対向しており、第1振れ補正用磁気駆動機構21を構成する。また、第1側板部181に固定された第2コイル22Cと可動体10の-X方向の側面に固定された第2磁石22MとはX方向で対向しており、第2振れ補正用磁気駆動機構22を構成する。
【0039】
可動体10の-Y方向の側面には、第1磁石21Mと並んで第3磁石23M1が固定されており、第3磁石23M1は第3側板部183に固定された第3コイル23C1とY方向で対向する。また、可動体10の-X方向の側面には、第2磁石22Mと並んで第4磁石23M2が固定されており、第4磁石23M2は第1側板部181に固定された第4コイル23C2とX方向で対向する。第3磁石23M1と第3コイル23C1の組、および、第4磁石23M2と第4コイル23C2の組は、ローリング補正用磁気駆動機構23を構成する。
【0040】
第1コイル21C、第2コイル22C、第3コイル23C1、および第4コイル23C2は、フレキシブルプリント基板7に電気的に接続される。フレキシブルプリント基板7は、枠部18の外周面に固定される。フレキシブルプリント基板7は、枠部18における第3側板部183、第1側板部181、および第4側板部184の外周面に沿って引き回され、配線収容部19の側面へ延びる。
【0041】
フレキシブルプリント基板7には、第1コイル21Cの中心と重なる位置(図4参照)、および、第2コイル22Cの中心と重なる位置(図示省略)の2箇所に磁性板17が固定される。第1コイル21Cと重なる磁性板17と第1磁石21Mとは、可動体10をX軸回りの回転方向における基準角度位置に復帰させるための磁気バネを構成する。また、第2コイル22Cと重なる磁性板17と第2磁石22Mとは、可動体10をY軸回りの回転方向における基準角度位置に復帰させるための磁気バネを構成する。さらに、フレキシブルプリント基板7には、揺動位置センサおよび回転位置センサが配置される。振れ補正機能付き光学ユニット1は、これらのセンサの出力に基づき、可動体10のX軸回り、Y軸回り、Z軸回りの回転方向における角度位置を取得する。
【0042】
(ジンバル機構)
図5図6は、振れ補正機能付き光学ユニット1の断面図である。図5は、図3のA-A位置で切断した断面図であり、図6は、図3のB-B位置で切断した断面図である。図7は、可動体10および回転支持機構12と、ジンバルフレーム14の分解斜視図である。
【0043】
図3図6に示すように、枠部18の第2軸方向の対角位置には、それぞれ、ジンバルフレーム14と固定体11とを第2軸回りに回転可能に接続する第2接続機構16が設けられる。図4図6に示すように、枠部18の第2軸方向の対角位置に設けられた一対の
凹部161には、それぞれ、第2ジンバルフレーム受け部材162が固定される。第2ジンバルフレーム受け部材162は、球体163と、球体163が固定される第2スラスト受け部材164を備える。図6に示すように、第2ジンバルフレーム受け部材162を凹部161に固定することにより、球体163が第2軸R2上の位置で固定体11に支持される。ジンバル機構13を組み立てる際、第2ジンバルフレーム受け部材162の内周側にジンバルフレーム14を挿入して第2軸R2上で球体163に点接触させる。これにより、第2接続機構16が構成される。
【0044】
図3図5に示すように、可動体10に対して第1軸方向の両側には、それぞれ、ジンバルフレーム14と回転支持機構12とを第1軸回りに回転可能に接続する第1接続機構15が設けられる。図4図5に示すように、第1接続機構15は、可動体10に対して第1軸方向の両側において回転支持機構12に固定される第1ジンバルフレーム受け部材151を備える。図5に示すように、第1ジンバルフレーム受け部材151は、球体152と、球体152が固定される第1スラスト受け部材153を備える。第1スラスト受け部材153を回転支持機構12に固定することにより、球体152が第1軸R1上の位置で回転支持機構12によって支持される。ジンバル機構13を組み立てる際、第1ジンバルフレーム受け部材151の内周側にジンバルフレーム14を挿入して第1軸R1上で球体152に点接触させる。これにより、第1接続機構15が構成される。
【0045】
ジンバルフレーム14は、金属製の板バネからなる。図4図7に示すように、ジンバルフレーム14は、可動体10の+Z方向に位置するジンバルフレーム本体部140と、ジンバルフレーム本体部140から第1軸方向の両側に突出する一対の第1軸側延設部141と、ジンバルフレーム本体部140から第2軸方向の両側に突出する一対の第2軸側延設部142を備える。ジンバルフレーム14は、ジンバルフレーム本体部140の中央をZ軸方向に貫通する開口部143を備える。
【0046】
図5図7に示すように、一対の第1軸側延設部141のそれぞれは、ジンバルフレーム本体部140から第1軸方向の両側に延びる第1軸側延設部第1部分141aと、第1軸側延設部第1部分141aから屈曲して-Z方向へ延びる第1軸側延設部第2部分141bを備える。一対の第1軸側延設部第2部分141bのそれぞれは、第1軸R1上において、第1軸方向を可動体10の側に向かって内周側に窪む第1軸側凹曲面144を備える。また、第1軸側延設部第2部分141bの先端には、第1軸側凹曲面144の-Z方向に、外周側へ向かう方向(すなわち、第1軸方向で可動体10とは反対側)へ突出する突出部146を備える。
【0047】
図6図7に示すように、一対の第2軸側延設部142のそれぞれは、ジンバルフレーム本体部140から第2軸方向の両側に延びる第2軸側延設部第1部分142aと、第2軸側延設部第1部分142aから屈曲して-Z方向へ延びる第2軸側延設部第2部分142bを備える。一対の第2軸側延設部第2部分142bのそれぞれは、第2軸R2上において、第2軸方向を可動体10の側に向かって内周側に窪む第2軸側凹曲面147を備える。また、第2軸側延設部142は、第2軸側凹曲面147の+Z方向に、周方向の両側の縁を切り欠いた一対の切欠き148を備える。
【0048】
図4図7に示すように、回転支持機構12は、可動体10の第1軸方向の両側に配置される一対の第2延設部64を備えており、各第2延設部64の先端には、スラスト受け部材固定部640が設けられている。第1ジンバルフレーム受け部材151は、スラスト受け部材固定部640に溶接により固定される。従って、第1ジンバルフレーム受け部材151は、スラスト受け部材固定部640が設けられた第2部材55と同一金属からなる。例えば、第2部材55と第1ジンバルフレーム受け部材151は、いずれもSUSからなる。第1ジンバルフレーム受け部材151を構成する第1スラスト受け部材153およ
びスラスト受け部材固定部640の詳細な構成については後述する。
【0049】
ジンバル機構13を組み立てる際には、ジンバルフレーム14の第1軸側延設部第2部分141bを内周側に撓ませて第1ジンバルフレーム受け部材151の内周側に挿入する。これにより、第1軸側延設部第2部分141bは外周側へ付勢されるので、各第1軸側延設部第2部分141bの第1軸側凹曲面144と第1ジンバルフレーム受け部材151の球体152とは、接触した状態を維持できる。また、第1軸側延設部第2部分141bの先端に設けられた突出部146は、第1ジンバルフレーム受け部材151の-Z方向の縁よりも外周側に突出する(図5参照)。これにより、第1ジンバルフレーム受け部材151からジンバルフレーム14が+Z方向に抜けることが防止される。
【0050】
図4図7に示すように、第2スラスト受け部材164は、Z軸方向に延びる板部165と、板部165の-Z方向の端部から可動体10側へ屈曲した足部166と、板部165の周方向の両側の側縁から可動体10側へ屈曲した一対の腕部167を備える。板部165には球体163が溶接により固定される。また、足部166の周方向の両端から+Z方向へ屈曲した足部屈曲部168を備える。第2スラスト受け部材164をケース3の凹部161に固定する際、足部屈曲部168を周方向の中央に向けて撓ませながら第2スラスト受け部材164を凹部161に圧入する。
【0051】
ジンバル機構13を組み立てる際には、ジンバルフレーム14の第2軸側延設部第2部分142bを内周側に撓ませて第2ジンバルフレーム受け部材162の内周側に挿入する。これにより、第2軸側延設部第2部分142bは外周側へ付勢されるので、各第2軸側延設部第2部分142bの第2軸側凹曲面147と第2ジンバルフレーム受け部材162の球体163とは、接触した状態を維持できる。また、第2軸側延設部142の切欠き148が一対の腕部167の間に配置される。これにより、第2ジンバルフレーム受け部材162からジンバルフレーム14が+Z方向に抜けることが防止される。
【0052】
(可動体)
図8は、可動体10および回転支持機構12の分解斜視図である。図7図8に示すように、可動体10は、カメラモジュール2と、カメラモジュール2を保持する枠状のホルダ24と、ホルダ24に固定される金属製の第1部材25を備える。ホルダ24は樹脂製である。第1部材25は磁性金属からなり、回転支持機構12の一部を構成する。
【0053】
図7図8に示すように、第1部材25は、光軸Lを囲む第1環状板部26と、第1環状板部26から外周側へ突出しカメラモジュール2の外周側において-Z方向へ屈曲してホルダ24に接続される第1延設部27A、27Bを備える。第1環状板部26の内周部分には、プレス加工、切削加工などにより第1環状溝53が形成される(図5図6参照)。第1環状溝53は、+Z方向に凹む円弧状断面の溝である。第1部材25は、2箇所の第1延設部27A、および、2箇所の第1延設部27Bがそれぞれホルダ24に固定される。第1環状板部26は、カメラモジュール2の外周部分に+Z方向から重なる。
【0054】
図5図6図8に示すように、カメラモジュール2は、カメラモジュール本体部30Aと、カメラモジュール本体部30Aの中央から+Z方向に突出するカメラモジュール円筒部30Bを備える。カメラモジュール円筒部30Bにはレンズ2aが収容される。ホルダ24は、カメラモジュール本体部30Aを外周側から囲んでいる。カメラモジュール円筒部30Bは、第1部材25における第1環状板部26の内側を通って+Z方向に突出し、ジンバルフレーム14の開口部143に配置される。
【0055】
図8に示すように、ホルダ24は、Y方向に平行に延びる第1側壁31および第2側壁32と、X方向に平行に延びる第3側壁33および第4側壁34を備える。第1側壁31
は、第2側壁32の-X方向に位置する。第3側壁33は、第4側壁34の-Y方向に位置する。第2側壁32の-Z方向の端縁には、切欠き部32aが設けられている。撮像素子2bに接続されるフレキシブルプリント基板6は、カメラモジュール2の-Z方向の端部から、切欠き部32aを通って可動体10の+X方向へ引き出される。
【0056】
ホルダ24の第1側壁31には第1磁石21Mおよび第3磁石23M1が固定され、第3側壁33には第2磁石22Mおよび第4磁石23M2が固定される。第1磁石21Mおよび第2磁石22Mは、Z軸方向に2極着磁される。第3磁石23M1および第4磁石23M2は、周方向に2極着磁される。
【0057】
図3図8に示すように、ホルダ24の第1側壁31および第3側壁33の外周面には、それぞれ、内周側に凹む凹部40Aが形成されており、第1磁石21Mおよび第2磁石22Mは、凹部40Aに収容される。また、第1側壁31および第3側壁33の外周面には、凹部40Aに周方向で並ぶ位置に凹部40Bが形成されており、第3磁石23M1および第4磁石23M2は、凹部40Bに収容される。
【0058】
図3に示すように、各凹部40Aには、第1延設部27Aの-Z方向の先端部分が挿入され、接着剤により各凹部40Aに固定される。第1延設部27Aの先端部分は、第1磁石21Mおよび第2磁石22Mの径方向内側に挿入される。第1部材25は磁性金属であるため、第1延設部27Aの先端部分は、各磁石に対するヨークとして機能する。各凹部40Bには、第3磁石23M1および第4磁石23M2の径方向内側に、ヨークとして機能する磁性板41が挿入される。
【0059】
図3図7に示すように、ホルダ24の第2側壁32および第4側壁34には、-Z方向に凹む溝部42が形成されている。各溝部42には、第1延設部27Bの-Z方向の先端部分が挿入され、接着剤により溝部42に固定される。
【0060】
図8に示すように、ホルダ24は、第1軸方向の対角位置において第2軸方向に延びる第5側壁35および第6側壁36と、第2軸方向の対角位置において第1軸方向に延びる第7側壁37および第8側壁38を備える。図5図8に示すように、第5側壁35および第6側壁36には、第1軸方向に凹む凹部39が設けられている。凹部39は、第5側壁35および第6側壁36の第2軸方向の中央を-Z方向の端部から+Z方向に切り欠いた形状である。第5側壁35および第6側壁36の外周側には、回転支持機構12の第2延設部64が配置されており、各凹部39は、第2延設部64の先端に設けられたスラスト受け部材固定部640の下端部分と第1軸方向で対向する。凹部39は、スラスト受け部材固定部640に第1スラスト受け部材153を溶接して第1接続機構15を組み立てる工程において、部品を支持する治具を配置するスペースを確保するために設けられている。
【0061】
(回転支持機構)
図5図6図8に示すように、回転支持機構12は、光軸Lを中心とする第1環状溝53を備える第1部材25と、第1環状溝53とZ軸方向で対向する第2環状溝54を備える第2部材55を有する。第2部材55は、非磁性金属からなる。なお、第2部材55は、磁性金属であってもよい。第1部材25は、上記のようにホルダ24に固定される。第2部材55は、ジンバルフレーム14によって第1軸回りに回転可能に支持される。第1部材25と第2部材55とが光軸Lを中心として相対回転することにより、ジンバルフレーム14に対して可動体10が光軸回りに回転する。
【0062】
第2部材55は、光軸Lを囲む第2環状板部63と、第2環状板部63から第1軸方向の両側に突出してから-Z方向へ延びる一対の第2延設部64と、第2環状板部63から
第2軸方向の両側に突出する一対の第2突出板部65を備える。第2環状板部63の内周部分には、プレス加工、切削加工などにより第2環状溝54が形成される。第2環状溝54は、-Z方向に凹む円弧状断面の溝である。上述した第1ジンバルフレーム受け部材151が固定されるスラスト受け部材固定部640は、一対の第2延設部64の-Z方向の端部に設けられている。
【0063】
回転支持機構12は、第1環状溝53および第2環状溝54に挿入されて第1部材25と第2部材55との間で転動する複数の転動体56と、転動体56を転動可能に保持する環状のリテーナ57を備える。リテーナ57は、複数の転動体56のそれぞれを転動可能に保持する複数の球体保持穴58を備える。さらに、回転支持機構12は、第1環状溝53と第2環状溝54とをZ軸方向で接近させる力を付与する与圧機構59を備える。
【0064】
転動体56は、金属製、或いは、セラミックス製である。リテーナ57は樹脂製である。リテーナ57は、Z軸方向で第1環状板部26と第2環状板部63との間に位置する。本形態では、転動体56は球体である。回転支持機構12は6個の転動体56を備え、リテーナ57は、等角度間隔に設けられた6つの球体保持穴58を備える。転動体56は、球体保持穴58の内側に転動可能に保持されて、リテーナ57から-Z方向および+Z方向に突出する。
【0065】
図7図8に示すように、与圧機構59は、第2部材55における第2軸R2上の2箇所に配置される与圧用磁石68と、第1部材25における第2軸R2上の2箇所に設けられた第1突出板部69を備える。与圧用磁石68は、一対の第2突出板部65に固定される。各与圧用磁石68は周方向で2極着磁されている。第1突出板部69は、第1環状板部26から第2軸方向の両側の2方向に突出する。第2部材55に配置される2つの与圧用磁石68のそれぞれは、可動体10と回転支持機構12とを組み立てたときに、可動体10に設けられた2箇所の第1突出板部69と光軸方向に重なる。
【0066】
第1突出板部69が設けられた第1部材25は、磁性金属からなる。従って、与圧用磁石68の磁気吸引力により、各与圧用磁石68と光軸方向で重なる第1突出板部69が与圧用磁石68の側に吸引される。これにより、与圧機構59は、径方向で反対側の2箇所で、第1環状溝53と第2環状溝54とをZ軸方向で接近させる力を付与する。可動体10は、与圧機構59の磁気吸引力によって第2部材55に吸引され、Z軸回りに回転可能な状態で、第2部材55に支持される。
【0067】
回転支持機構12は、可動体10の光軸L回りの回転範囲を規制する回転規制機構70を備える。図7に示すように、回転規制機構70は、第1部材25に設けられた第1回転規制部71と、第2部材55に設けられた第2回転規制部72を備える。第2回転規制部72は、第2環状板部63から外周側へ突出する突出部である。本形態では、第1環状板部26から+X方向に突出して-Z方向に屈曲する第1延設部27Bが第1回転規制部71として機能する。第1回転規制部71(第1延設部27B)の周方向の中央には、第2回転規制部72よりも周方向の幅が大きい切欠き部73が設けられ、第2回転規制部72は、切欠き部73に配置される。これにより、第2部材55に対する可動体10の光軸L回りの回転範囲が規制される。
【0068】
(第1スラスト受け部材の固定構造)
図9は、第1スラスト受け部材153とスラスト受け部材固定部640の斜視図である。図10(a)は第1スラスト受け部材153とスラスト受け部材固定部640の正面図であり、図10(b)は第1スラスト受け部材153とスラスト受け部材固定部640の平面図である。以下の説明では、第2軸方向の一方側を+R2方向とし、第2軸方向の他方側を-R2方向とする(図7図9図10参照)。
【0069】
図7図9図10に示すように、スラスト受け部材固定部640は、第1軸R1に垂直な平板部641と、平板部641の+R2方向の縁から略直角に屈曲した第1爪部642と、平板部641の-R2方向の縁から略直角に屈曲した第2爪部643および第3爪部644を備える。第1爪部642は、平板部641のZ軸方向の略中央に配置される。第2爪部643と第3爪部644は、Z軸方向に離れた2箇所に設けられている。第2爪部643は、平板部641の+Z方向の端部に配置され、第3爪部644は、平板部641の-Z方向の端部に配置される。
【0070】
平板部641は、第1爪部642の+Z方向において+R2方向へ延びる第1腕部645、および、第1爪部642の-Z方向において+R2方向へ延びる第2腕部646と、第2爪部643と第3爪部644の間から-R2方向へ延びる第3腕部647を備える。第1腕部645、第2腕部646、および第3腕部647は、第1スラスト受け部材153が溶接される部位である。
【0071】
第1スラスト受け部材153は、球体152が固定される板部154と、板部154の+R2方向の端からスラスト受け部材固定部640の側に屈曲した第1側板部155Rと、第1側板部155Rから+R2方向へ屈曲した第1腕部156および第2腕部157と、板部154の-R2方向の端からスラスト受け部材固定部640の側に屈曲した第2側板部155Lと、第2側板部155Lから-R2方向へ屈曲した第3腕部158を備える。
【0072】
第1スラスト受け部材153は、板部154の-Z方向の縁を+Z方向へ切り欠いた切欠き部159を備える。ジンバル機構13を組み立てたとき、ジンバルフレーム14の第1軸側延設部141の先端に設けられた突出部146は、第1スラスト受け部材153の切欠き部159に配置される(図5参照)。これにより、落下衝撃が加わったとしても、突出部146が切欠き部159の縁に係止されて抜け止めされた状態となる。切欠き部159は、幅方向の両端の角部に幅方向の中央部分よりも深く切り欠いた逃げ部159aを設けた形状である。
【0073】
板部154のZ軸方向の略中央には、板部154を貫通する球体固定孔171が設けられている。球体152は、球体固定孔171の縁に溶接されることにより板部154に固定される。球体固定孔171の+Z方向には、球体固定孔171とZ軸方向で並ぶ位置を貫通するガイド孔172が設けられている。第1スラスト受け部材153を組み立てる際には、組立治具をガイド孔172に通すことにより、第1スラスト受け部材153を保持する。
【0074】
第1スラスト受け部材153において、第1腕部156と第2腕部157は、第1側板部155RにおいてZ軸方向に離れた2箇所に配置される。本形態では、第1腕部156は、第1側板部155Rの+Z方向の端部に配置され、第2腕部157は、第1側板部155Rの-Z方向の端部に配置される。第3腕部158は、第2側板部155LのZ軸方向の略中央に配置される。なお、第1腕部156、第2腕部157、および第3腕部158のZ方向の位置は適宜変更可能である。
【0075】
図9図10に示すように、第1スラスト受け部材153は、スラスト受け部材固定部640から突出する第1爪部642が第1腕部156と第2腕部157の間に挿入され、第2爪部643と第3爪部644の間に第3腕部158が挿入される状態に組み立てられる。これにより、第1スラスト受け部材153は、第1爪部642、第2爪部643、および第3爪部644によって第1腕部156、第2腕部157、および第3腕部158のZ軸方向の移動が規制されるため、Z軸方向に位置決めされる。また、第1スラスト受け
部材153の球体152を囲む部分(板部154、第1側板部155R、第2側板部155L)が第1爪部642、第2爪部643、および第3爪部644の間に嵌まることにより、第1スラスト受け部材153が第2軸方向に位置決めされるとともに、第1軸R1回りの傾きが規制される。
【0076】
図10(b)に示すように、第1爪部642、第2爪部643、および第3爪部644の第1軸方向の突出寸法H1は、第1スラスト受け部材153の第1軸方向の高さH2よりもわずかに長い。従って、第1スラスト受け部材153をスラスト受け部材固定部640に溶接した状態では、第1爪部642、第2爪部643、および第3爪部644の先端が、第1スラスト受け部材153の板部154の表面よりも突出した位置にある。
【0077】
第1スラスト受け部材153の第1腕部156、第2腕部157、および第3腕部158は、それぞれ、スラスト受け部材固定部640の第1腕部645、第2腕部646、および第3腕部647に対して第1軸方向に当接する。第1スラスト受け部材153をスラスト受け部材固定部640に溶接する際、第1腕部156と第1腕部645を重ね合わせて溶接する重ね継手溶接を行う。同様に、第2腕部157と第2腕部646、および第3腕部158と第3腕部647についても重ね継手溶接を行う。
【0078】
重ね継手溶接を行うにあたって、第1腕部156、第2腕部157、および第3腕部158の外縁を第1腕部645、第2腕部646、および第3腕部647に溶接する一般的な溶接方法ではなく、第1腕部156、第2腕部157、および第3腕部158の外縁よりも内側の位置を電極やレーザー等によりピンポイントで加熱し、加熱位置を中心として当接面同士を溶融させ一体化させて接合する溶接方法(以下、この溶接方法を面溶接と呼ぶ)を用いる。
【0079】
例えば、本形態では、第1腕部156、第2腕部157、および第3腕部158の中央を中心としてピンポイントで加熱して面溶接を行う。これにより、図10(a)に示すように、第1腕部156には、第1腕部156の中央を中心とする溶接痕Mが形成される。同様に、第2腕部157および第3腕部158にも、第2腕部157の中央を中心とする溶接痕M、および、第3腕部158の中央を中心とする溶接痕Mが形成される。一般的な重ね継手溶接では、重ねた部材の外縁を溶接するために、外縁上の位置を中心とする溶接痕が形成されるのに対して、面溶接を行う場合には、重ねた部材の外縁よりも内側の位置を中心とする溶接痕Mが形成される。第1腕部156、第2腕部157、および第3腕部158の中央と中心とする溶接痕Mは、第1腕部156、第2腕部157、および第3腕部158からはみ出さない位置に形成される。
【0080】
面溶接を行う際の加熱位置は、第1腕部156、第2腕部157、および第3腕部158の中央からずらすこともできる。その場合、溶接痕Mは、一部が第1腕部156、第2腕部157、および第3腕部158からはみ出すこともあるが、溶接痕Mの中心は第1腕部156、第2腕部157、および第3腕部158の外縁よりも内側であるため、一般的な溶接方法よりもはみ出し量は少ない。
【0081】
(本形態の主な作用効果)
以上のように、本形態の振れ補正機能付き光学ユニット1は、カメラモジュール2を備える可動体10と、可動体10をカメラモジュール2の光軸Lを中心として回転可能に支持する回転支持機構12と、回転支持機構12を光軸Lと交差する第1軸回りに回転可能に支持するとともに、回転支持機構12を光軸Lおよび第1軸R1と交差する第2軸回りに回転可能に支持するジンバル機構13と、ジンバル機構13を介して可動体10を支持する固定体11を有する。ジンバル機構13は、ジンバルフレーム14と、ジンバルフレーム14および回転支持機構12を第1軸回りに回転可能に接続する第1接続機構15と
、ジンバルフレーム14および固定体11を第2軸回りに回転可能に接続する第2接続機構16を備える。第1接続機構15は、球体152および球体152が固定される第1スラスト受け部材153と、回転支持機構12において可動体10の第1軸方向の両側に配置される金属製のスラスト受け部材固定部640と、ジンバルフレーム14においてスラスト受け部材固定部640に固定された第1スラスト受け部材153とスラスト受け部材固定部640との間に配置されて第1軸R1上で球体152と点接触する第1軸側延設部141を備える。第1スラスト受け部材153は、球体152が固定される板部154と、板部154の+R2方向の端からスラスト受け部材固定部640の側に屈曲した第1側板部155Rと、第1側板部155RにおけるZ軸方向(光軸方向)に離れた2箇所から+R2方向へ屈曲した第1腕部156および第2腕部157と、板部154の-R2方向の端からスラスト受け部材固定部640の側に屈曲した第2側板部155Lと、第2側板部155Lから-R2方向へ屈曲した第3腕部158を備える。スラスト受け部材固定部640は、板部154と第1軸方向で対向し第1腕部156、第2腕部157、および第3腕部158に当接する平板部641と、平板部641の+R2方向の端から第1スラスト受け部材153の側に屈曲して第1腕部156と第2腕部157との間に配置される第1爪部642と、平板部641の-R2方向の端から第1スラスト受け部材153の側に屈曲して第3腕部158のZ軸方向(光軸方向)の両側に配置される第2爪部643および第3爪部644を備える。第1腕部156、第2腕部157、および第3腕部158は、それぞれ、平板部641に対して面溶接により接合された溶接痕Mを備える。
【0082】
本形態によれば、第1接続機構15を構成する球体152を保持する第1スラスト受け部材153は、3箇所の腕部(第1腕部156、第2腕部157、第3腕部158)をスラスト受け部材固定部640の平板部641に溶接して固定する。このように、3点を溶接してすることにより、溶接個所を結んだ軸を中心として傾くおそれが少ない。従って、溶接個所に加わる応力を低減させることができるので、疲労破壊による脱落を抑制できる。また、溶接の方法として、部材の外縁を溶接する通常の溶接でなく、部材を重ねた部分を加熱して当接面同士を溶融させ一体化させる面溶接を行うので、3箇所の腕部を囲む溶接しろを広く確保する必要がない。従って、スラスト受け部材固定部640を小型化でき、第1接続機構15を小型化できるので、第1接続機構15を配置するスペースが狭い場合でも、落下衝撃により部品同士が衝突して第1スラスト受け部材153が脱落するおそれが少ない。あるいは、スラスト受け部材固定部640を小型化した分、第1接続機構15を囲む部品であるホルダ24の肉厚を大きくして強度を高めることができる。さらに、スラスト受け部材固定部640には、第1腕部156と第2腕部157の間、および、第3腕部158の光軸方向の両側の3箇所に爪部(第1爪部642、第2爪部643、第3爪部644)を設けているので、爪部を介して第1スラスト受け部材153をZ軸方向および第2軸方向に位置決めできる。従って、第1接続機構15の組立性の向上を図ることができる。
【0083】
本形態では、第1腕部156と第2腕部157は、第1スラスト受け部材153の光軸方向の両端に配置され、第3腕部158は、第1スラスト受け部材153の光軸方向の中央に配置される。本発明者らは、3箇所の腕部をこのような配置にした場合に、溶接個所に加わる応力を大きく低減できることを応力解析により確認している。
【0084】
応力解析の解析モデルとしては、比較例のモデルとして、+R2方向へ突出する第1腕部と、-R2方向へ突出する第2腕部の2箇所の腕部を溶接して2点の溶接により固定するモデルを用いた。比較例のモデルでは、第1腕部と第2腕部のZ軸方向の位置を同一とした。比較例のモデルでは、各溶接個所に加わる応力は11.2~17.2Mpaであったのに対して、本形態と同一形状の解析モデルでは、各溶接個所に加わる応力は4.7~5.8Mpaであった。従って、比較例と比べて半分以下に応力を抑制できることを確認できた。
【0085】
本形態では、3箇所の溶接痕Mは、第1腕部156、第2腕部157、および第3腕部158のそれぞれからはみ出さない位置に設けられている。従って、スラスト受け部材固定部640には、3箇所の腕部を囲む溶接しろが不要であるため、スラスト受け部材固定部640の第2軸方向の幅が小さく、小型化されている。よって、第1接続機構15の第2軸方向のサイズを小型化できるので、第1接続機構15を配置するスペースが狭いにもかかわらず、落下衝撃により部品同士が衝突して第1スラスト受け部材153が脱落するおそれが少ない。
【0086】
本形態では、第1スラスト受け部材153は、スラスト受け部材固定部640に対して第1軸方向で可動体10とは反対側から固定される。第1軸側延設部141の-Z方向の先端には、外周側(すなわち、第1軸方向で可動体10とは反対側)へ突出する突出部146が設けられている。第1スラスト受け部材153は、板部154の-Z方向の縁を+Z方向へ切り欠いた切欠き部159を備え、切欠き部159に突出部146が配置される。これにより、ジンバルフレーム14の第1軸側延設部141が第1スラスト受け部材153とスラスト受け部材固定部640との間から抜ける方向の衝撃が加わった場合の抜け防止を図ることができる。
【0087】
本形態では、切欠き部159の幅方向の両端には、幅方向の中央部分よりも深く切り欠いた逃げ部159aが設けられている。このように、角部を大きく切り欠く形状とすることで、加工精度が低い場合に切欠き部159の角部がR形状になって抜け防止用の突出部146と干渉するおそれを少なくすることができる。
【0088】
本形態では、第1爪部642、第2爪部643、および第3爪部644の第1軸方向の突出寸法H1は、第1スラスト受け部材153の第1軸方向の高さH2よりも大きい。従って、落下等の衝撃が加わった際に、他部品と第1スラスト受け部材153との衝突を回避することができるので、第1スラスト受け部材153の脱落を抑制できる。
【0089】
本形態では、第1スラスト受け部材153は、板部154を貫通する球体固定孔171と、球体固定孔171と光軸方向に並ぶ位置に設けられたガイド孔172を備える。従って、組立工程において、ガイド孔172を利用して第1スラスト受け部材153を保持することができる。
【0090】
本形態では、回転支持機構12は、光軸Lを囲む第1環状板部26を備える第1部材25と、第1環状板部26と光軸方向で重なる第2環状板部63を備える第2部材55と、第1環状板部26に設けられた第1環状溝53、および、第2環状板部63に設けられた第2環状溝54に挿入される複数の転動体56と、を備え、カメラモジュール2の被写体側を+Z方向とし、カメラモジュール2の反被写体側を-Z方向とするとき、第2部材55は、第2環状板部63から第1軸方向の両側へ延びてから-Z方向へ延びる一対の第2延設部64を備え、スラスト受け部材固定部640は、第2延設部64の先端に設けられている。従って、回転支持機構12としてベアリングを用いた場合に、カメラモジュール2に対して光軸方向に重なる位置にベアリングを配置することができる。従って、回転支持機構12をコンパクトに構成できる。また、光軸L回りに相対回転する部材の一方(第2部材55)をジンバル機構13によって第1軸R1回りに回転可能に支持することができる。
【0091】
(他の実施形態)
上記実施形態は、回転支持機構12およびジンバル機構13を備え、3軸の振れ補正を行う振れ補正機能付き光学ユニット1の形態であったが、本発明の第1接続機構15の構成は、可動体と固定体とをジンバル機構を介して接続した振れ補正機能付き光学ユニット
(すなわち、2軸の振れ補正を行う振れ補正機能付き光学ユニット)に適用可能である。
【0092】
すなわち、2軸の振れ補正機能付き光学ユニットは、カメラモジュールを備える可動体と、可動体をカメラモジュールの光軸と交差する第1軸回りに回転可能に支持するとともに、可動体を光軸および第1軸と交差する第2軸回りに回転可能に支持するジンバル機構と、ジンバル機構を介して可動体を支持する固定体と、を有し、ジンバル機構は、ジンバルフレームと、ジンバルフレームおよび可動体を第1軸回りに回転可能に接続する第1接続機構と、ジンバルフレームおよび固定体を第2軸回りに回転可能に接続する第2接続機構と、を備え、第1接続機構は、球体および球体が固定される第1スラスト受け部材と、可動体の第1軸方向の対角位置に設けられた金属製のスラスト受け部材固定部と、ジンバルフレームにおいてスラスト受け部材固定部に固定された第1スラスト受け部材とスラスト受け部材固定部との間に配置されて第1軸上で球体と点接触する第1軸側延設部と、を備え、光軸に沿う方向を光軸方向とするとき、第1スラスト受け部材は、球体が固定される板部と、板部の第2軸方向の一方側の端からスラスト受け部材固定部の側に屈曲した第1側板部と、第1側板部における光軸方向に離れた2箇所から第2軸方向の一方側へ屈曲した第1腕部および第2腕部と、板部の第2軸方向の他方側の端からスラスト受け部材固定部の側に屈曲した第2側板部と、第2側板部から第2軸方向の他方側へ屈曲した第3腕部と、を備え、スラスト受け部材固定部は、板部と第1軸方向で対向し第1腕部、第2腕部、および第3腕部に当接する平板部と、平板部の第2軸方向の一方側の端から第1スラスト受け部材の側に屈曲して第1腕部と第2腕部との間に配置される第1爪部と、平板部の第2軸方向の他方側の端から第1スラスト受け部材の側に屈曲して第3腕部の光軸方向の両側に配置される第2爪部および第3爪部と、を備え、第1腕部、第2腕部、および第3腕部は、それぞれ、平板部に対して面溶接により接合された溶接痕を備える。
【符号の説明】
【0093】
1…振れ補正機能付き光学ユニット、2…カメラモジュール、2a…レンズ、2b…撮像素子、3…ケース、4…カバー、4a…開口部、5…ベース、6、7…フレキシブルプリント基板、8…フック、9…突起、10…可動体、11…固定体、12…回転支持機構、13…ジンバル機構、14…ジンバルフレーム、15…第1接続機構、16…第2接続機構、17…磁性板、18…枠部、19…配線収容部、20…振れ補正用磁気駆動機構、21…第1振れ補正用磁気駆動機構、21C…第1コイル、21M…第1磁石、22…第2振れ補正用磁気駆動機構、22C…第2コイル、22M…第2磁石、23…ローリング補正用磁気駆動機構、23C1…第3コイル、23C2…第4コイル、23M1…第3磁石、23M2…第4磁石、24…ホルダ、25…第1部材、26…第1環状板部、27A、27B…第1延設部、30A…カメラモジュール本体部、30B…カメラモジュール円筒部、31…第1側壁、32…第2側壁、32a…切欠き部、33…第3側壁、34…第4側壁、35…第5側壁、36…第6側壁、37…第7側壁、38…第8側壁、39…凹部、40A、40B…凹部、41…磁性板、42…溝部、53…第1環状溝、54…第2環状溝、55…第2部材、56…転動体、57…リテーナ、58…球体保持穴、59…与圧機構、63…第2環状板部、64…第2延設部、65…第2突出板部、68…与圧用磁石、69…第1突出板部、70…回転規制機構、71…第1回転規制部、72…第2回転規制部、73…切欠き部、140…ジンバルフレーム本体部、141…第1軸側延設部、141a…第1軸側延設部第1部分、141b…第1軸側延設部第2部分、142…第2軸側延設部、142a…第2軸側延設部第1部分、142b…第2軸側延設部第2部分、143…開口部、144…第1軸側凹曲面、146…突出部、147…第2軸側凹曲面、151…第1ジンバルフレーム受け部材、152…球体、153…第1スラスト受け部材、154…板部、155R…第1側板部、155L…第2側板部、156…第1腕部、157…第2腕部、158…第3腕部、159…切欠き部、159a…逃げ部、161…凹部、162…第2ジンバルフレーム受け部材、163…球体、164…第2スラスト受け部材、165…板部、166…足部、167…腕部、168…足部屈曲部、171…球体固
定孔、172…ガイド孔、181…第1側板部、181a…第2コイル固定孔、182…第2側板部、183…第3側板部、183a…第1コイル固定孔、184…第4側板部、185…切欠き部、640…スラスト受け部材固定部、641…平板部、642…第1爪部、643…第2爪部、644…第3爪部、645…第1腕部、646…第2腕部、647…第3腕部、L…光軸、M…溶接痕、R1…第1軸、R2…第2軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10