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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024160
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】誘引装置および誘引方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/06 20060101AFI20240215BHJP
   F24F 13/08 20060101ALI20240215BHJP
   F24F 13/10 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
F24F13/06 A
F24F13/08 A
F24F13/10 A
F24F13/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126784
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】390022666
【氏名又は名称】協立エアテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】和田 一
(72)【発明者】
【氏名】中山 和樹
(72)【発明者】
【氏名】赤城 克斎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 隆矢
(72)【発明者】
【氏名】重松 拓也
(72)【発明者】
【氏名】木場 隆之
(72)【発明者】
【氏名】南部 健太
【テーマコード(参考)】
3L080
3L081
【Fターム(参考)】
3L080BA01
3L080BA07
3L080BA10
3L080BE03
3L081AA01
3L081AA02
3L081AA09
3L081AB02
3L081AB03
(57)【要約】
【課題】吹出口から供給する風量を30%程度増大させ、かつ、吹出口の結露を抑制することができる誘引装置を提供する。
【解決手段】第一の誘引装置10は、空調機ACまたはダクトから流入する空気(空調空気)に、周囲空間から誘引した空気(周囲空気)を混合して吹き出す誘引装置であって、空調機ACまたはダクトと接続する接続口100aと、混合した空気(混合空気)を吹き出す吹出口100bと、を有する筒状のケーシング100を備え、ケーシング100は、上流側にある接続口100a側から、下流側に向かって断面積が連続的に減少した部分を有する縮小部110と、縮小部110の下流側に連結され、縮小部110から下流側にある吹出口100b側に向かって断面積が連続的に増大した部分を有する拡大部120と、拡大部120の周壁を貫通する誘引口130と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機またはダクトから流入する空気に、周囲空間から誘引した空気を混合して吹き出す誘引装置であって、
前記空調機または前記ダクトと接続する接続口と、混合した空気を吹き出す吹出口と、を有する筒状のケーシングを備え、
前記ケーシングは、
上流側にある前記接続口側から、下流側に向かって断面積が連続的に減少した部分を有する縮小部と、
前記縮小部の下流側に連結され、前記縮小部から下流側にある前記吹出口側に向かって断面積が連続的に増大した部分を有する拡大部と、
前記拡大部の周壁を貫通する誘引口と、
を有する誘引装置。
【請求項2】
空調機またはダクトから流入する空気に、周囲空間から誘引した空気を混合して吹き出す誘引装置であって、
前記空調機または前記ダクトと接続する接続口を有する第一のケーシングと、前記第一のケーシングと連結する第二のケーシングであり、混合した空気を吹き出す吹出口を有する第二のケーシングと、を有する筒状のケーシングを備え、
前記第一のケーシングは、前記第二のケーシングと連結する連結口と、上流側にある前記接続口側から下流側にある当該連結口に向かって断面積が連続的に減少した部分を有する縮小部、または、上流側にある前記接続口側から下流側にある当該連結口に向かって断面積が連続的に減少した縮小部を含むノズルと、を有し、
前記第二のケーシングは、前記第一のケーシングと連結する連結口と、当該連結口から下流側にある前記吹出口側に向かって断面積が連続的に増大した部分を有する拡大部を有し、
前記第二のケーシングの連結口は、前記第一のケーシングの連結口よりも大きく開口している誘引装置。
【請求項3】
前記第二のケーシングは、連結する前記第一のケーシングに対して可動可能である請求項2に記載の誘引装置。
【請求項4】
前記ケーシング内の前記吹出口付近に、前記ケーシング内の壁面付近を流れるように混合した空気の流れる方向を定めるガイド部を備えた請求項1~3のいずれか1項に記載の誘引装置。
【請求項5】
前記ケーシング内の前記吹出口付近に、混合した空気の流れる方向を定める気流偏向部を備えた請求項4に記載の誘引装置。
【請求項6】
空調機またはダクトから流入する空気に、周囲空間から誘引した空気を混合して吹き出す誘引方法であって、
上流側にある接続口側から下流側に向かって断面積が連続的に減少した部分を有する縮小部と、前記縮小部の下流側に連結され、前記縮小部から下流側にある吹出口側に向かって断面積が連続的に増大した部分を有する拡大部と、を有する筒状のケーシングの、
前記接続口から、前記空調機または前記ダクトからの空気を流入させると共に、
前記拡大部の周壁を貫通する誘引口から、周囲空間の空気を誘引し、
前記流入させた空気と、前記誘引した空気とを前記ケーシング内で混合させ、前記吹出口から吹き出す誘引方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物流倉庫、ドーム球場、展示会場などといった大型設備の空調や換気に使用される空調機またはダクト(空調ダクト、換気ダクト)に接続され、空調機などから流入する空調空気に、周囲空間から誘引した空気を混合して吹き出す誘引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物流倉庫やドーム球場、展示会場など、大規模空間内を空調したり換気したりする場合、大型の空調設備(空調機、ダクト系統など)を用いて大風量を処理する必要がある。しかし、大規模空間の空調や換気を行うとなると、多大なエネルギーを消費するだけでなく、設備の導入コストやランニングコストなどが上昇してしまう。
【0003】
そのため、従来技術として、ダクトなどの周囲空間の空気を誘引して、空調空気に混合させる誘引機構を備えた設備(誘引装置)がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、温調手段により温度調整した空気を吹き出し口から空調対象域へ吹き出させるファンを設けた空気調整装置が記載されている。この空気調整装置には、ファンから吹き出し口へ至る送出風路に、ファンからの送出空気の流動により空調対象域の域内空気を誘引吸入してファンからの送出空気に混合させる誘引混合手段が設けられている。
【0005】
また、特許文献2には、コールドドラフトと結露を防止することを目的としたグリル型誘引吹出口が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平04-268130号公報
【特許文献2】特開2015-081721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の空気調整装置は、図1図3に示されるように天井内に隠蔽されるものである。また、当該空気調整装置は、誘引混合手段14の構成に吸入室形成ボックス16が含まれており(段落0020)、誘引部分がボックス内に収納されるものである。そのため、域内空気A2も、ファン送出空気A1に対して一方向(垂直方向)のみから誘引され、かつボックス内に存在する域内空気から誘引される。よって、効率的な周囲空気の誘引が出来ているとは言えず、物流倉庫などの大型設備で用いることには向いていない。
【0008】
また、特許文献2に記載のグリル型誘引吹出口は、グリル本体1の構造により周囲空気を誘引して空気噴出口より風下での結露発生を防止しているが、当該構造は複雑なものである(図2)。そして、当該グリル型誘引吹出口は、空調機からの供給空気を少風量化して室内などの被空調空間に給気する空調システムに用いられるものである(段落0002~0004)。よって、当該グリル型誘引吹出口は処理できる風量が限られており、大風量には対応できず、大規模空間の空調への適用は難しい。
【0009】
従って、本発明は、大風量を処理するために吹出口から供給する風量を増大させ、かつ、吹出口の結露を抑制することができる誘引装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る第一の誘引装置は、
空調機またはダクトから流入する空気に、周囲空間から誘引した空気を混合して吹き出す誘引装置であって、
前記空調機または前記ダクトと接続する接続口と、混合した空気を吹き出す吹出口と、を有する筒状のケーシングを備え、
前記ケーシングは、
上流側にある前記接続口側から、下流側に向かって断面積が連続的に減少した部分を有する縮小部と、
前記縮小部の下流側に連結され、前記縮小部から下流側にある前記吹出口側に向かって断面積が連続的に増大した部分を有する拡大部と、
前記拡大部の周壁を貫通する誘引口と、
を有する。
【0011】
このような構成とすれば、縮小部により、空調機等から供給される空調空気の流速が速くなるため、縮小部の下流側に連結される拡大部の誘引口から入り込む周囲空気の誘引が、より促進される。
同時に、誘引口から周囲空気が誘引されて混合されるため、空調機等が冷房運転の場合、吹出口から吹き出される混合後の空気の温度は、空調機またはダクトから流入する空気の温度よりも高くなる。
さらに、縮小部と拡大部は一体的に形成されているため、装置自体をシンプルな構造とすることができる。
【0012】
また、本発明に係る第二の誘引装置は、
空調機またはダクトから流入する空気に、周囲空間から誘引した空気を混合して吹き出す誘引装置であって、
前記空調機または前記ダクトと接続する接続口を有する第一のケーシングと、前記第一のケーシングと連結する第二のケーシングであり、混合した空気を吹き出す吹出口を有する第二のケーシングと、を有する筒状のケーシングを備え、
前記第一のケーシングは、前記第二のケーシングと連結する連結口と、上流側にある前記接続口側から下流側にある当該連結口に向かって断面積が連続的に減少した部分を有する縮小部と、を有し、
前記第二のケーシングは、前記第一のケーシングと連結する連結口と、当該連結口から下流側にある前記吹出口側に向かって断面積が連続的に増大した部分を有する拡大部を有し、
前記第二のケーシングの連結口は、前記第一のケーシングの連結口よりも大きく開口している。
【0013】
なお、本発明に係る第三の誘引装置は、
空調機またはダクトから流入する空気に、周囲空間から誘引した空気を混合して吹き出す誘引装置であって、
前記空調機または前記ダクトと接続する接続口を有する第一のケーシングと、前記第一のケーシングと連結する第二のケーシングであり、混合した空気を吹き出す吹出口を有する第二のケーシングと、を有する筒状のケーシングを備え、
前記第一のケーシングは、前記第二のケーシングと連結する連結口と、上流側にある前記接続口側から下流側にある当該連結口に向かって断面積が連続的に減少した縮小部を含むノズルと、を有し、
前記第二のケーシングは、前記第一のケーシングと連結する連結口と、当該連結口から下流側にある前記吹出口側に向かって断面積が連続的に増大した部分を有する拡大部を有し、
前記第二のケーシングの連結口は、前記第一のケーシングの連結口よりも大きく開口している。
【0014】
第二、第三の誘引装置のような構成とすれば、第二のケーシングの連結口は、第一のケーシングの連結口よりも大きく開口しているため、これらの連結部分には隙間(誘引口)が生じ、当該隙間から周囲空気が誘引される。そして、第一のケーシングが有する縮小部により空調機等から供給される空調空気の流速が速くなるため、当該隙間(誘引口)から入り込む周囲空気の誘引がより促進されたり、第一のケーシングは、上流側から下流側に向かって断面積が連続的に減少した縮小部を含むノズルを有しているため、当該ノズルが、空気が流れる方向を定める役割を果たし、当該隙間(誘引口)から下流側に連結される拡大部へ入り込む周囲空気の誘引がより促進される。
【0015】
同時に、当該隙間(誘引口)から周囲空気が誘引されて混合されるため、空調機等が冷房運転の場合、吹出口から吹き出される混合後の空気の温度は、空調機またはダクトから流入する空気の温度よりも高くなる。
さらに、第一のケーシングと第二のケーシングは別体であるため、それぞれのサイズ(本体寸法)など、装置(ケーシング)の構成を適宜設計することができる。
【0016】
特に、本発明に係る第二、第三の誘引装置において、前記第二のケーシングは、連結する前記第一のケーシングに対して可動可能であることが望ましい。
第二のケーシングは、第一のケーシングに対して可動可能であるため、第二のケーシングが有する吹出口の方向を変えることができる。
【0017】
また、本発明に係る第一~第三の誘引装置は、前記ケーシング内の前記吹出口付近に、前記ケーシング内の壁面付近を流れるように混合した空気の流れる方向を定めるガイド部を備えていることが望ましい。
ケーシング内の吹出口付近にガイド部を備えているため、混合された空気は、吹出口付近において、ケーシング内の壁面付近を流れて吹出口から吹き出される。
【0018】
さらに、本発明に係る第一~第三の誘引装置は、前記ケーシング内の前記吹出口付近に、混合した空気の流れる方向を定める気流偏向部を備えていることが望ましい。
ケーシング内の吹出口付近に気流偏向部を備えているため、混合された空気は気流偏向部により形成される流路に従って、吹出口へと流れる。
【0019】
一方、本発明に係る誘引方法は、
空調機またはダクトから流入する空気に、周囲空間から誘引した空気を混合して吹き出す誘引方法であって、
上流側にある接続口側から下流側に向かって断面積が連続的に減少した部分を有する縮小部と、前記縮小部の下流側に連結され、前記縮小部から下流側にある吹出口側に向かって断面積が連続的に増大した部分を有する拡大部と、を有する筒状のケーシングの、
前記接続口から、前記空調機または前記ダクトからの空気を流入させると共に、
前記拡大部の周壁を貫通する誘引口から、周囲空間の空気を誘引し、
前記流入させた空気と、前記誘引した空気とを前記ケーシング内で混合させ、前記吹出口から吹き出す。
【発明の効果】
【0020】
(1)本発明に係る第一の誘引装置によれば、かかる構成により、周囲空気の誘引がより促進されるため、誘引装置を介して供給する風量を30%程度増大させることができる。
同時に、吹出口から吹き出される混合後の空気の温度は、空調機またはダクトから流入する空気の温度よりも高くなるため、吹出口の結露を抑制することができる。
さらに、装置自体をシンプルな構造とすることができるため、メンテナンス性にも優れている。
【0021】
(2)また、本発明に係る第二、第三の誘引装置によれば、かかる構成により、第一のケーシングが有する縮小部により空調機等から供給される空調空気の流速が速くなり、隙間(誘引口)から入り込む周囲空気の誘引がより促進されるため、周囲空気の効率的な誘引が実現でき、誘引装置を介して供給される風量を30%程度増大させることができたり、ノズルが空気が流れる方向を定める役割を果たし、隙間(誘引口)から下流側に連結される拡大部へ入り込む周囲空気の誘引がより促進されるため、周囲空気の効率的な誘引が実現でき、誘引装置を介して供給される風量を30%程度増大させることができる。
【0022】
同時に、吹出口から吹き出される混合後の空気の温度は、空調機またはダクトから流入する空気の温度よりも高くなるため、吹出口の結露を抑制することができる。
さらに、それぞれのサイズ(本体寸法)など、装置(ケーシング)の構成を適宜設計することができるため、装置のコンパクト化を実現することができる。
【0023】
(3)なお、本発明に係る第二、第三の誘引装置において、前記第二のケーシングは、連結する前記第一のケーシングに対して可動可能である構成により、第二のケーシングは、第一のケーシングに対して可動可能であるため、第二のケーシングが有する吹出口の方向を変えることができ、混合された気体が吹き出される方向を自由に変えることができる。
【0024】
(4)加えて、本発明に係る第一~第三の誘引装置は、前記ケーシング内の前記吹出口付近に、前記ケーシング内の壁面付近を流れるように混合した空気の流れる方向を定めるガイド部を備えている構成により、混合された空気は、吹出口付近において、ケーシング内の壁面付近を流れて吹出口から吹き出されるため、吹出口の結露をより効果的に抑制することができる。
【0025】
(5)さらに、本発明に係る第一~第三の誘引装置は、前記ケーシング内の前記吹出口付近に、混合した空気の流れる方向を定める気流偏向部を備えている構成により、混合された空気は気流偏向部により形成される流路に従って吹出口へと流れるため、吹出口から吹き出される混合空気の吹き出し方向を、自由に調整することができる。
【0026】
一方、本発明に係る誘引方法によれば、本発明に係る第一の誘引装置と同様の作用効果を奏することができる。
【0027】
このように、本発明によれば、大風量を処理するために吹出口から供給する風量を30%程度増大させ、かつ、吹出口の結露を抑制することができる誘引装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第一の誘引装置の実施形態を示す図であり、(A)は概略平面図、(B)は概略左側面図、(C)は概略背面図、(D)は概略正面図である。
図2】本発明の第一の誘引装置の別の実施形態を示す図である。
図3】本発明の第一の誘引装置の動作を説明するための図である。
図4】気流偏向部としてルーバーを用いた場合の動作を説明するための図である。
図5】本発明の第二の誘引装置の実施形態を示す図であり、(A)は概略平面図、(B)は概略左側面図、(C)は概略背面図、(D)は概略正面図である。
図6】本発明の第二の誘引装置の動作を説明するための図である。
図7】本発明の第三の誘引装置の実施形態を示す図であり、(A)は概略平面図、(B)は概略左側面図、(C)は概略背面図、(D)は概略正面図である。
図8】本発明の第三の誘引装置の動作を説明するための図である。
図9】従来技術であるチャンバーを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。
【0030】
[第一の誘引装置]
図1は、本発明の第一の誘引装置の実施形態を示す図である。
また、図9は、従来技術であるチャンバーを説明するための図である。図9に示すように、従来技術として、空調機ACの吹出口に接続されるチャンバーCがある。チャンバーは、消音や空気の混合を目的として、空気を流す空調機やダクトなどの吹出口または途中に設けられる箱状の設備である。
【0031】
第一の誘引装置10(以下、単に「誘引装置10」と言う場合もある)も、図1(A)の概略平面図および図1(B)の概略左側面図に示すように、空調機ACの吹出口に接続される。また、図2に示すように、誘引装置10は、ダクトDの吹出口に接続され得る。つまり、誘引装置10は、空調機ACまたはダクトD(以下、「空調機等」と言う)の末端に取り付けられ、空調機等から流入する空気に、周囲空間から誘引した空気を混合して吹き出す装置である。以下、第一の誘引装置について説明すると共に、第一の誘引装置を用いた誘引方法についても説明する。
【0032】
誘引装置10は、図1(A),(B)に加え、図1(C)の概略背面図および図1(D)の概略正面図(図1(C),(D)においては、空調機ACは除いて記載している)に示すように、空調機等と接続する接続口100aと、混合した空気を吹き出す吹出口100bと、を有する筒状のケーシング100を備える。
【0033】
接続口100aは短管であり、短管部を空調機等の接続口(空調機等の接続口も短管)へ差し込み、短管周囲をビス止めした後、テープでのシール処理を行うことで接続する。
その他、接続口100aをフランジ状として、空調機等と接続口100aを、ボルトやナット、クリップなど(図示せず)を用いて接続することもできる。
【0034】
また、ケーシング100は、図1(B)に示すように、上流側にある接続口100a側から、下流側にある吹出口100b側に向かって断面積(流路断面積。後述する拡大部や、第二の誘引装置、第三の誘引装置などについても同じ)が連続的に減少した部分を有する縮小部110を有する。さらに、ケーシング100は、縮小部110の下流側に連結され、縮小部110から下流側に向かって断面積が連続的に増大した部分を有する拡大部120を有する。
【0035】
なお、ケーシング100内は、空調空気SA(図3参照)の流動方向に沿って起立状に配置された仕切り(仕切板)160によって、複数の流路に区画されている。例えば、本実施形態においては、図1(B),(C),(D)に示すように、2つの仕切り160により3つの流路に区画されている。仕切り160を設けることにより、誘引装置10内を流れる空気を整流させることができ、かつ誘引装置10自身を補強することができる。
【0036】
ここで、図3に示すように、縮小部110は上面壁材111および下面壁材112を対向配置して形成され、縮小部110の縮小角度R1(上面壁材111と下面壁材112との間の角度の挟角)は設計変更可能である。一方、拡大部120は上面壁材121および下面壁材122を対向配置して形成され、拡大部120の拡大角度L1(上面壁材121と下面壁材122との間の角度の挟角)も設計変更可能である。
【0037】
なお、ケーシング100は、縮小部110と拡大部120との境界部分(縮小部110の先端部110c近傍)が括れた形状をなしている(図1(B)参照)。
【0038】
そして、ケーシング100は、拡大部120の周壁を貫通する誘引口130を有する(図1(A)参照)。この誘引口130から、周囲空間の空気が誘引される。
図1(A)に示す実施形態においては、誘引口130が3ヶ所設けられているが、誘引口が拡大部の周壁に設けられる場所や誘引口のサイズなどは、適宜設計変更可能である。
【0039】
なお、誘引装置10は、ケーシング100内の吹出口100b付近に、ケーシング100内の壁面付近を流れるように混合した空気の流れる方向を定めるガイド部140を備える(図1(B)参照)。
【0040】
また、誘引装置10は、ケーシング100内の吹出口100b付近に、吹出口100bから吹き出す混合した空気の流れる方向を定める気流偏向部150を備える(図1(B)参照)。
【0041】
なお、図1,2に示す実施形態は、誘引装置10が空調機等に対して水平方向に接続されており、略水平方向に混合された空気を吹き出す形態が記載されているが、誘引装置10は、空調機等の形態や配置構成などに応じて、斜め方向や略垂直方向に接続される場合もある。その場合、混合された空気は、吹出口100bが向く方向に応じて斜め方向や略垂直方向に吹き出される。
【0042】
次に、図1(B)に空気の流れなどをさらに追記した図3に基づいて、誘引装置10の動作を説明する。
【0043】
まず、誘引装置10は、空調機等と接続される接続口100aから、空調空気SAが流れ込む。そして、空調空気SAは、縮小部110を通過して下流側にある吹出口100b側へ向かう際、縮小部110が有する下流側に向かって断面積が連続的に減少した部分によって流速が速くなる。そのため、縮小部110の下流側に連結される拡大部120の誘引口130から入り込む周囲空気AAの誘引がより促進される。
【0044】
また、誘引口130から誘引された周囲空気AAは、拡大部120内で空調空気SAと混合され、混合空気MAとして吹出口100bから吹き出される。
【0045】
このように、周囲空気AAの誘引がより促進されるため、誘引装置10を介して供給する風量は、元の風量(空調機等が吹き出す風量)よりも30%程度増大させることができる。
【0046】
同時に、誘引口130から周囲空気AAが誘引されて混合されるため、空調機等が冷房運転の場合(空調空気SAの温度が低い場合)、吹出口100bから吹き出される混合空気MAの温度は、空調空気SAの温度よりも高くなる。そのため、吹出口100bの結露を抑制することができる。
【0047】
[ガイド部]
ここで、図3に示すように、誘引装置10はガイド部140を備える。ガイド部140は、上述したようにケーシング100内の吹出口100b付近に、混合空気MAがケーシング100内の壁面付近にも流れるために、空気が流れる方向を定めるように設けられているので、混合空気MAの一部もケーシング100内の壁面付近を流れて、吹出口100bから吹き出される(図3の一点鎖線)。
【0048】
特に、空調機等が冷房運転の場合、吹出口の端(ケーシングの縁)付近は、空調機等から供給される冷やされた空気に冷やされるため、誘引された周囲空気が接触し、結露し易いところである。よって、ガイド部140を設けることで、より効果的に吹出口100bの結露を抑制することができる。
【0049】
[気流偏向部]
また、図3に示すように、誘引装置10は気流偏向部150を備える。気流偏向部150は、ケーシング100内の吹出口100b付近に、吹出口100bから吹き出す混合空気MAの流れる方向を定めるように設けられているので、混合空気MAは、気流偏向部150により形成される流路に従って吹出口100bへと流れる。
【0050】
例えば、気流偏向部150aのような構成の場合、混合空気MAは水平方向(図3における右方向)に吹き出される。一方、気流偏向部150bのような斜め下方向に傾けられた構成の場合、混合空気MAは斜め下方向(図3における右斜め下方向)に吹き出される。
このように、気流偏向部150により、吹出口100bから吹き出される混合空気MAの吹き出し方向を自由に調整することができる。
【0051】
なお、図4に示すように、気流偏向部150としてルーバー150cを用いることができる。具体的には、図4(A),(B)に示すように、並んだ羽板の向きを変えることで、吹出口100bから吹き出す混合空気MAの流れる方向を変えることができる。
【0052】
[第二の誘引装置]
次に、第二の誘引装置について説明する。
図5は、本発明の第二の誘引装置の実施形態を示す図であり、図6は、本発明の第二の誘引装置の動作を説明するための図である。以下、図5,6に基づいて、本発明の第二の誘引装置の実施形態を説明するが、第一の誘引装置と共通する部分については、図1図4中に示す符号と同符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0053】
第二の誘引装置20(以下、単に「誘引装置20」と言う場合もある)も、空調機等の吹出口に接続され、空調機等から流入する空気に、周囲空間から誘引した空気を混合して吹き出す装置である。空調機の記載は省いているが、図1(A)~(D)と対応するように、図5(A)に誘引装置20の概略平面図を、図5(B)に概略左側面図を、図5(C)に概略背面図を、図5(D)に概略正面図を、それぞれ示している。
【0054】
ここで、誘引装置10が、縮小部110と拡大部120とが一体的に形成されたケーシング100を備えるのに対して(図1(B),図3参照)、誘引装置20は、図5に示すように、空調機等と接続する接続口101aを有する第一のケーシング101と、第一のケーシング101と連結する第二のケーシング102と、を有する筒状のケーシングを備える。第二のケーシング102は、混合した空気を吹き出す吹出口102bを有する。
【0055】
また、第一のケーシング101は、第二のケーシング102と連結する連結口101bと、上流側にある接続口101a側から下流側にある連結口101bに向かって断面積が連続的に減少した部分を有する縮小部110とを有する。
【0056】
一方、第二のケーシング102は、第一のケーシング101と連結する連結口102aと、連結口102aから下流側に向かって断面積が連続的に増大した部分を有する拡大部120とを有する。
【0057】
なお、第二のケーシング102の連結口102aは、第一のケーシング101の連結口101bよりも大きく開口している(図5(B)参照)。
【0058】
第二のケーシング102の連結口102aは、第一のケーシング101の連結口101bよりも大きく開口しているため、図6に示すように、これらの連結部分には隙間(誘引口130a)が生じ、当該隙間から周囲空気AAが誘引される。
そして、第一のケーシング101が有する縮小部110により、空調機等から供給される空調空気SAの流速が速くなるため、誘引口130aから入り込む周囲空気AAの誘引がより促進される。
【0059】
このように、周囲空気AAの誘引がより促進されるため、誘引装置10と同様に、誘引装置20を介して供給する風量は、元の風量よりも30%程度増大させることができる。
【0060】
同時に、誘引口130aから周囲空気AAが誘引されて混合されるため、空調機等が冷房運転の場合、吹出口102bから吹き出される混合空気MAの温度は、空調空気SAの温度よりも高くなるため、吹出口102bの結露を抑制することができる。
【0061】
また、誘引装置20は、第二のケーシング102内に羽根部材170を有する。羽根部材170は、例えば羽根の形状をしており、混合空気MAを整流させるために設けられる。
【0062】
なお、図5,6において記載を省略しているが、図3に示すガイド部140や気流偏向部150を第二のケーシング102に設けることで、誘引装置20においても、上述したような作用効果を奏することができる。
【0063】
かつ、誘引装置20においては、装置のコンパクト化を実現することができる。
上述したように、第一のケーシング101と第二のケーシング102は別体であり、第二のケーシング102の連結口102aは、第一のケーシング101の連結口101bよりも大きく開口している(図5(B)参照)。そのため、誘引装置10の縮小部110の縮小角度R1と拡大部120の拡大角度L1(図3参照)と、誘引装置20の縮小部110の縮小角度R1と拡大部120の拡大角度L1(図5(B)参照)が等しいと仮定すれば、縮小部110と拡大部120が一続きで構成された誘引装置10と比較すると、誘引装置20の長さ寸法L(図5(B)参照)は誘引装置10の長さ寸法L(図3参照)よりも短縮することができる。
【0064】
このように、誘引装置20は第一のケーシング101や第二のケーシング102のサイズを適宜設計することができるため、装置のコンパクト化を実現することができ、利便性が向上する。後述する誘引装置30についても同様に、長さ寸法Lを短縮することができる(図7(B)参照)。
【0065】
[可動可能]
ここで、第二のケーシング102は、連結する第一のケーシング101に対して可動可能である。これにより、第二のケーシング102が有する吹出口102bの方向を変えることができる。
【0066】
例えば、図6(A),(B)に示す例のように、第二のケーシング102は、接続口101aの中心と吹出口102bの中心とを結ぶ軸に対して、上下方向に傾斜可能である構成とすることができる。
【0067】
このような構成とすることで、混合空気MAが水平方向(図6(A)における右方向)に吹き出されたり、混合空気MAが斜め下方向(図6(B)における右斜め下方向)に吹き出されたりと、吹出口102bから吹き出される混合空気MAの吹き出し方向を、自由に調整することができる。
【0068】
[第三の誘引装置]
次に、第三の誘引装置について説明する。
図7は、本発明の第三の誘引装置の実施形態を示す図であり、図8は、本発明の第三の誘引装置の動作を説明するための図である。以下、図7,8に基づいて、本発明の第三の誘引装置の実施形態を説明するが、第一,第二の誘引装置と共通する部分については、図1図6中に示す符号と同符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0069】
第三の誘引装置30(以下、単に「誘引装置30」と言う場合もある)も、空調機等の吹出口に接続され、空調機等から流入する空気に、周囲空間から誘引した空気を混合して吹き出す装置である。図5(A)~(D)と対応するように、図7(A)に誘引装置30の概略平面図を、図7(B)に概略左側面図を、図7(C)に概略背面図を、図7(D)に概略正面図を、それぞれ示している。
【0070】
また、誘引装置30が、誘引装置20と同様に、空調機等と接続する接続口101aを有する第一のケーシング101と、第一のケーシング101と連結する第二のケーシング102と、を有する筒状のケーシングを備え、第二のケーシング102は、混合した空気を吹き出す吹出口102bを有する。
【0071】
なお、誘引装置20と同様に、第二のケーシング102の連結口102aは、第一のケーシング101の連結口101bよりも大きく開口しているため、これらの連結部分には隙間(誘引口130a)が生じ、当該隙間から周囲空気AAが誘引される(図8参照)。
【0072】
ここで、誘引装置30は、図7(B)に示すように、第一のケーシング101が、上流側から下流側に向かって断面積が連続的に減少した縮小部(図示せず)を含むノズルNを有している。そして、ノズルNが、誘引装置10,20における縮小部110と同じように、空気が流れる方向を定める役割を果たすため、誘引口130aから入り込む周囲空気の誘引がより促進される。
【0073】
また、ノズルNは、空調空気SAを偏向方向へ誘導し得るものであり、ノズルNを設けることで、吹出口102bから吹き出す混合空気AAの気流偏向をより確実なものにすることができる。
なお、ノズルNは、可動可能な構成である。例えば、図8(A),(B)に示すように、第二のケーシング102が可動する幅(第二のケーシング102の回動角度)に連動するように、第一のケーシング101対して可動可能である。これにより、空調空気SAを任意の偏向方向へ誘導することができる。
【0074】
このように、周囲空気AAの誘引がより促進されるため、誘引装置10,20と同様に、誘引装置30を介して供給する風量は、元の風量よりも30%程度増大させることができる。
【0075】
なお、誘引装置30も、誘引装置20と同様に、第二のケーシング102は、連結する第一のケーシング101に対して可動可能である構成とすることができる。また、図7,8において記載を省略しているが、図3に示すガイド部140や気流偏向部150を第二のケーシング102に設けることで、誘引装置30においても、上述したような作用効果を奏することができる。
【0076】
以上のように説明した誘引装置10,20,30は本発明に係る誘引装置を例示するものであり、本発明の趣旨を逸脱しない限り、本発明の構成は例示したものに限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明に係る誘引装置等は、物流倉庫、ドーム球場、展示会場などといった大型設備の空調や換気に使用される空調機またはダクトなどに接続されて広く利用することができるため、産業上有用である。
【符号の説明】
【0078】
10 第一の誘引装置
20 第二の誘引装置
30 第三の誘引装置
100 ケーシング
100a 接続口
100b 吹出口
101 第一のケーシング
101a 接続口
101b 連結口
102 第二のケーシング
102a 連結口
102b 吹出口
110 縮小部
110c 先端部
111 上面壁材
112 下面壁材
120 拡大部
121 上面壁材
122 下面壁材
130,130a 誘引口
140 ガイド部
150,150a,150b,150c 気流偏向部
160 仕切り(仕切板)
170 羽根部材
N ノズル
AC 空調機
D ダクト
C チャンバー
L 長さ方向
R1 縮小角度
L1 拡大角度
SA 空調空気
AA 周囲空気
MA 混合空気
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9