(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024170
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】洗髪用容器、および可搬式洗髪器
(51)【国際特許分類】
A45D 19/00 20060101AFI20240215BHJP
A45D 19/04 20060101ALI20240215BHJP
A47K 1/04 20060101ALN20240215BHJP
【FI】
A45D19/00 A
A45D19/04
A47K1/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126801
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】521255288
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(72)【発明者】
【氏名】梶 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】立原 健一
【テーマコード(参考)】
3B040
【Fターム(参考)】
3B040AA03
(57)【要約】
【課題】 軽量で持ち運びやすい洗髪用容器を提供する。
【解決手段】 洗髪用容器1は、発泡樹脂製であり、被洗髪者の頭部を入れる第1の辺から内部に向かって低くなる斜面11を有し、斜面11の表面に樹脂シート14を備える。樹脂シート14に面ファスナー18が取り付けられており、面ファスナー18に対してクッション材40が着脱可能に取り付けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗髪用容器であって、
前記洗髪用容器は、発泡樹脂製であり、
被洗髪者の頭部を入れる側の辺部から内部に向かって低くなる斜面を有し、
前記斜面の表面に樹脂製部材または金属板を備える、洗髪用容器。
【請求項2】
前記斜面に貼着されたクッション材またはクッション取付部材を備える請求項1に記載の洗髪用容器。
【請求項3】
対向する側壁のそれぞれに形成された第1の排水口と第2の排水口とを有し、
洗髪用容器の底部の最も低い位置に前記第1の排水口と前記第2の排水口をつなぐ流路が形成されている請求項1に記載の洗髪用容器。
【請求項4】
前記排水口に設けられた排水ホースを取り付けるための樹脂製部材のホースアダプタを備える請求項3に記載の洗髪用容器。
【請求項5】
前記洗髪用容器の側壁の上部に、シャワーフックを取付けるための樹脂製または金属製の少なくとも一つの取付部を備える請求項3に記載の洗髪用容器。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の洗髪用容器と、
前記斜面に着脱可能に取り付けられたクッション材と、
給水用の水を入れる第1の容器と、
排水された水を入れる第2の容器と、
前記第1の容器から水を汲み上げて洗髪用の水を供給するためのシャワーホースおよびシャワーヘッドと、
前記シャワーの給水量を調整する制御ボックスと、
前記洗髪用容器からの排水を前記第2の容器へと運ぶ排水ホースと、
を備える可搬式洗髪器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病人や高齢者など要介護者の頭髪を洗うのに適した洗髪用容器、および、持ち運び可能な可搬式洗髪器に関する。
【背景技術】
【0002】
介護の現場では、病人や高齢者など要介護者の頭髪を洗うために、洗髪用容器が使用される。例えば、特許文献1は、可搬式の洗髪装置の発明を開示している。この洗髪装置は、プラスチック、金属等で構成されている。また、特許文献1に限らず、洗髪に用いる容器はプラスチック製であることが多い。
【0003】
訪問介護では、多くの荷物を持って移動することが多い。そのため、介護において使用する道具は軽量であることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記背景に鑑み、軽量で持ち運びやすい洗髪用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の洗髪用容器は、発泡樹脂製であり、被洗髪者の頭部を入れる側の辺部から内部に向かって低くなる斜面を有し、前記斜面の表面に樹脂製部材または金属板を備える。
【0007】
本発明の洗髪用容器は発泡樹脂製であるため、合成樹脂製の容器よりも軽量であり、容易に持ち運びができる。発泡樹脂は合成樹脂に比べて強度に劣る面があるが、本発明では被洗髪者の首から頭部を支える斜面の表面に、樹脂製部材または金属板を備え、強度を高めている。これにより、斜面に直接または間接に、被洗髪者の首または頭部を支える付属品等を貼着することができ、被洗髪者が心地よく使える軽量の洗髪用容器を実現できる。
【0008】
本発明の洗髪用容器は、前記斜面に貼着されたクッション材またはクッション取付部材を備える。この構成により、洗髪中に被洗髪者の頭部を心地よく支持することができる。
【0009】
本発明の洗髪用容器は、対向する側壁のそれぞれに形成された第1の排水口と第2の排水口とを有し、洗髪用容器の底部の最も低い位置に前記第1の排水口と前記第2の排水口をつなぐ流路が形成されている。
【0010】
このような構成とすることで、対向する側壁のそれぞれに排水口を有するので、いずれの方向からも排水することができる。例えば、排水用の容器を置くスペースがいずれの側にあっても対応可能である。また、洗髪用容器の底部の最も低い位置に第1の排水口と第2の排水口をつなぐ流路が形成されているので、第1の排水口と第2の排水口のいずれからも水を排出できる。
【0011】
本発明の洗髪用容器は、前記排水口に設けられた排水ホースを取り付けるための樹脂製部材のホースアダプタを備える。この構成により、ホースアダプタを発泡樹脂製の容器の本体とともにリサイクルすることができる。
【0012】
本発明の洗髪用容器は、その側壁の上部に、シャワーフックを取付けるための樹脂製または金属製の少なくとも一つの取付部を備える。これにより、取付部に取り付けたシャワーフックに、シャワーヘッドを掛けることができる。取付部を複数備える場合は、洗髪者は、シャワーヘッドを適切なシャワーフックに掛けることができる。また、取付部が樹脂製である場合は、発泡樹脂製の容器の本体とともにリサイクルすることができる。
【0013】
本発明の可搬式洗髪器は、上記の洗髪用容器と、前記斜面に着脱可能に取り付けられたクッション材と、給水用の水を入れる第1の容器と、排水された水を入れる第2の容器と、前記第1の容器から水を汲み上げて洗髪用の水を供給するためのシャワーホースおよびシャワーヘッドと、前記シャワーの給水量を調整する制御ボックスと、前記洗髪用容器からの排水を第2の容器へと運ぶ排水ホースとを備える。この構成により、可搬式洗髪器を容易に運搬することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、軽量で持ち運びしやすい洗髪用容器、および、可搬式洗髪器を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施の形態の洗髪用容器を示す斜視図である。
【
図2】(A)本実施の形態の洗髪用容器の側面図および上面図である。(B)(A)に示す洗髪用容器のX-X方向の断面図である。
【
図3】(A)クッション材を取り外した洗髪用容器の斜面図である。(B)面ファスナーを備えない洗髪用容器を示す斜視図である。
【
図5】底部に形成された流路の別の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態にかかる洗髪用容器について図面を参照しながら説明する。
図1は本実施の形態の洗髪用容器1を示す斜視図、
図2(A)は本実施の形態の洗髪用容器1の側面図および上面図、
図2(B)は
図2(A)におけるX-X断面を示す図である。
【0017】
洗髪用容器1は、
図2(A)に示すように上面視略正方形の形状を有し、周囲が比較的低い側壁10により囲まれた容器である。側壁10の高さは、限定されるものではないが、例えば5~15cm程度であることが好ましい。
【0018】
容器の4つの辺のうちの一つの辺は側壁10が切り欠かれた形状を有している。被洗髪者は、この辺から洗髪用容器1の内部に頭部を入れる。以下、説明の便宜上、被洗髪者側の辺を「第1の辺」という。また、第1の辺と対向する辺を「第2の辺」といい、横にある辺を第1の辺に向かって左側を「第3の辺」、右側を「第4の辺」という。なお、
図2(A)の側面図は、洗髪用容器1を第1の辺の側から見た図である。
【0019】
洗髪用容器1は、発泡スチロール製である。洗髪用容器1は、第1の辺から容器の内部に向かって低くなる斜面11を有している。この構成により、洗髪用容器1から被洗髪者側に水が流れ出にくくなる。また、斜面11は被洗髪者の首部および頭部を支える役割を有する。洗髪用容器1は、斜面11にクッション材40を備えている。
【0020】
洗髪用容器1の底部は、斜面11の終端において最も低くなっており、そこから第2の辺に向かって徐々に高くなっている。したがって、洗髪用容器1内の水は、斜面11の終端付近に集まる。
【0021】
第3の辺の側壁10と第4の辺の側壁10にはそれぞれ容器内の水を排出するための排水口12が形成されている。排水口12の位置は、洗髪用容器1の底部の最も低い位置に対応している。容器の底部には、2つの排水口12をつなぐ直線状の流路13が形成されている。これにより、容器内の水は、左右いずれかの排水口12から排出される。つまり、一方が閉栓している場合には、開栓している他方から水が排出される。排水口12が2つ設けられているのは、排水を貯める容器に近い方の排水口12から水を排出させることができるようにするためである。
【0022】
図2(B)は洗髪用容器1のX-X断面図、
図3(A)は、
図1の洗髪用容器1に取り付けられたクッション材40を除いた洗髪用容器1の斜視図である。斜面11の部分には、樹脂製部材である樹脂シート14がインサート成形により組み込まれている。樹脂シート14は、板状の樹脂製部材である。
図3(A)に示すように、樹脂シート14の上に面ファスナー18が例えば接着剤等によって固定されている。面ファスナー18は、クッション取付部材に該当する。
図3(A)に示す洗髪用容器1によれば、面ファスナー18を介して、着脱可能にクッション材40を固定することができる。これにより、クッション材40を容易に取り外して洗濯することができ、衛生的である。なお、クッション材40は、
図2(B)に示すように、斜面11を覆うようにコの字状に折れ曲げられた状態で固定される。
【0023】
排水口12には、排水ホースを取り付けるためのホースアダプタ15が取り付けられている。本実施の形態において、ホースアダプタ15はポリスチレン製である。ポリスチレン製のホースアダプタ15は、発泡スチロール製の容器本体と一緒にリサイクルすることができる。なお、ホースアダプタは、ポリスチレン製に限らず、ABS樹脂などの他の樹脂製部材であってもよい。
【0024】
また、第2の辺の側壁10の上部には、シャワーヘッド34を保持するシャワーフック35を取り付けるための取付部16が設けられている。取付部16は、左右に2つ設けられており、ユーザはシャワーヘッド34の位置を選ぶことができる。取付部16もまたリサイクルを考慮して、ポリスチレン製であることが望ましいが、ABS樹脂等の他の樹脂製部材や金属部材であってもよい。洗髪用容器1の第2の辺の外側には凹部17が形成されている。凹部17には、シャワーの給水量を制御するポンプ38の制御ボックス36が取り付けられる。
【0025】
図4は、本実施の形態の洗髪用容器1を使用した可搬式洗髪器の構成を示す図である。可搬式洗髪器は、洗髪用容器1と、折畳み式の給水用のバケツ31と、折畳み式の排水用のバケツ32と、シャワーホース33およびシャワーヘッド34と、シャワーの給水量を調整する制御ボックス36と、洗髪用容器1からの排水を排水用のバケツ32へと運ぶ排水用ホース37とを備える。
【0026】
洗髪用容器1は、被洗髪者が寝ているベッドに置かれる。洗髪用容器1には、被洗髪者の首及び頭部を支えるクッション材40が取り付けられている。
図4では、左側のホースアダプタ15に排水用ホース37が取り付けられ、排水は排水用バケツ32に導かれる。給水用バケツ31に入れられたシャワーホース33の端部にはポンプ38が取り付けられており、給水用バケツ31内の水を汲み上げる。給水量は、洗髪用容器1の第2の辺に取り付けられた制御ボックス36で操作を行うことにより調整できる。シャワーヘッド34はシャワーフック35に掛けられている。これにより、洗髪者は、シャワーヘッドの置く場所に困ることなく置くことができ、また、洗髪時に水を出したまま両手を使って洗髪することもできるし、洗髪後に手を洗うこともできる。
以上、本実施の形態の洗髪用容器1および可搬式洗髪器について説明した。
【0027】
第1の実施の形態の洗髪用容器1は発泡スチロール製なので、非常に軽量であり、持ち運びに便利である。洗髪にはある程度時間がかかるので、特に、病人や高齢者などの要介護者の首部などへの負担は大きい。被洗髪者の首部や頭部を支えるクッションを使うことが望ましい。ところが、発泡スチロールの表面にクッション材40、またはクッション材取付用の面ファスナー18を取り付けると、表面が傷んで劣化してしまうおそれがある。本実施の形態では、クッション材40を取り付ける斜面11に、容器の本体と共にインサート成形された樹脂シート14を備えているため、斜面11にクッション材40または面ファスナー18を貼着できる丈夫な構成である。これにより、軽量でありながら、被洗髪者にとって快適な洗髪が可能な洗髪用容器1を実現できる。
【0028】
以上、本発明の洗髪用容器および可搬式洗髪器について図面を参照して説明したが、本発明の洗髪用容器および可搬式洗髪器は上記した実施の形態に限定されるものではない。
上記した実施の形態では、クッション材40を着脱可能に取り付ける構成として面ファスナー18を使用したが、クッション材40を取り付ける構成はこれに限られない。また、斜面11に取り付ける支持部材はクッション材40に限られるものではない。
【0029】
図3(B)は、面ファスナー18を備えない洗髪用容器2の例を示す図である。斜面11に樹脂シート14が露呈している。
図3(B)に示す洗髪用容器2の場合には、樹脂シート14の上に、直接にクッション材を接着して固定してもよい。
【0030】
上記した実施の形態では、第1の排水口12と第2の排水口12をつなぐ流路として直線状の流路13の例を挙げたが、第1の排水口12と第2の排水口12を結ぶ流路は直線状でなくてもよい。
図5は、第1の排水口12と第2の排水口12を結ぶ流路の別の例を示す図である。
図5に示す流路20は紡錘形で、中央の方が排水口12付近よりも高くなっている。
【0031】
図5の洗髪用容器3は流路中央から排水口12へ傾斜がついているため、排水が排水口へと流出しやすくなる。また、流路の両端は各排水口12へ接続しているため、洗髪者は使用環境に応じて排水口12を選択できる。
【0032】
上記した実施の形態の洗髪用容器1では、斜面11に樹脂シート14がインサート成形される例を挙げたが、洗髪用容器1の内側面及び底部の全体や外側面等に樹脂シートをインサート成形してもよい。水に晒される部分に樹脂シートを設けることで、洗髪用容器1の耐久性を高めることができる。
【0033】
本実施の形態では、洗髪用容器の斜面にインサート成形する部材として樹脂シート14を使用した。しかし、インサート成形する部材は樹脂シート以外の樹脂製部材であってもよく、また、金属板であってもよい。
【0034】
本実施の形態の可搬式洗髪器は、上述したとおり洗髪用容器1が軽量なことに加え、給水用バケツ31、排水用バケツ32は折り畳み式なので、持ち運びが便利である。なお、本実施の形態では、給水用バケツ31及び排水用バケツ32は折り畳み式の容器としたが、必ずしも折り畳み式でなくてもよい。
【0035】
上記した実施の形態では、対向する第3の辺および第4の辺の各側壁10に排水口12が形成された例を挙げたが、排水口12は1つであってもよいし、また3つ以上であってもよい。排水口12が形成される位置も第3の辺、第4の辺の側壁10に限られない。制御ボックス36を取り付ける凹部17は、第2の辺に限られず、別の辺に形成されていてもよい。また、上記した実施の形態では、上面視略正方形の形状を有する洗髪用容器1を例としたが、形状は、上面視長方形でもよいし、楕円形等であってもよい。
【0036】
上記した実施の形態では、洗髪用容器1の材質として発泡スチロールを例としたが、材質は発泡スチロールに限定されることはなく、樹脂を発泡成形した発泡樹脂を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の洗髪用容器および可搬式洗髪器は、病人や高齢者など要介護者の頭髪を洗うのに用いる容器として有用である。
【符号の説明】
【0038】
1,2,3 洗髪用容器
10 側壁
11 斜面
12 排水口
13 流路
14 樹脂シート
15 ホースアダプタ
16 取付部
17 凹部
18 面ファスナー
20 流路
31 給水用バケツ
32 排水用バケツ
33 シャワーホース
34 シャワーヘッド
35 シャワーフック
36 制御ボックス
37 排水用ホース
38 ポンプ
40 クッション材