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  • 特開-エンドミル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024173
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】エンドミル
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/10 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
B23C5/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126809
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100192614
【弁理士】
【氏名又は名称】梅本 幸作
(74)【代理人】
【識別番号】100158355
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 明子
(72)【発明者】
【氏名】平上 賢造
【テーマコード(参考)】
3C022
【Fターム(参考)】
3C022KK03
3C022KK06
3C022KK28
(57)【要約】
【課題】本発明は、主にステンレス鋼を中心とする被削材、いわゆる難削材の溝加工を行う場合において、切りくずのかみ込みが起因してのびびり、バリ発生を抑制するエンドミルを提供することを課題とする。
【解決手段】
少なくとも、複数枚の底刃1と、長手方向に沿ってらせん状に形成された外周刃2と、外周刃2に隣接して形成されるすくい面3を備えたねじれ溝4と、を有するエンドミル10において、ねじれ溝4はすくい面3を備える第1ねじれ溝4aと、第1ねじれ溝4aに隣接して形成される第2ねじれ溝4bと、第2ねじれ溝4bに隣接してエンドミル10の回転方向前方側に形成される第3ねじれ溝4cと、から構成されており、エンドミル10の軸直角断面視において、すくい面3のすくい角αは9~11度の範囲とする。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、複数枚の底刃と、長手方向に沿ってらせん状に形成された外周刃と、前記外周刃に隣接して形成されるすくい面を備えたねじれ溝と、を有しており、隣接する前記底刃同士が成す角度は互いに異なり、かつ隣接する前記ねじれ溝のねじれ角が互いに異なるエンドミルにおいて、前記ねじれ溝は、前記すくい面を備える第1ねじれ溝と、前記第1ねじれ溝に隣接して形成される第2ねじれ溝と、前記第2ねじれ溝に隣接して前記エンドミルの回転方向前方側に形成される第3ねじれ溝と、から構成されており、前記エンドミルの軸直角断面視において、前記すくい面のすくい角は9~11度の範囲であることを特徴とするエンドミル。
【請求項2】
前記エンドミルの軸直角断面視において、前記外周刃と前記中心軸を結ぶ直線L0、前記第1ねじれ溝と前記第2ねじれ溝が交わる第1交差稜線R1、前記第2ねじれ溝と前記第3ねじれ溝が交わる第2交差稜線R2、とした場合において、前記第1交差稜線R1を起点とした前記直線L0に平行な直線L1と前記第2ねじれ溝の接線L11との成す角度βが6~10度の範囲であり、前記第2交差稜線R2を起点とした前記直線L0に平行な直線L2と前記第3ねじれ溝の接線L12との成す角度γが11~100度の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のエンドミル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にステンレス鋼を中心とする被削材、いわゆる難削材の溝加工を行うエンドミルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンドミルによる側面加工や溝加工などの切削加工において、被削材から発生する切りくずの擦過抑制と生成される切りくずの下にクーラント(冷却剤)溜まりを設けることでエンドミルから切りくず離れを促進する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4986854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で開示されたエンドミルは、ステンレス鋼を中心とする被削材を切削加工する場合に発生する切りくずの下にできる空間が狭くなり、切りくず排出性の効果が著しく低下する。
【0005】
そこで、本発明は主にステンレス鋼を中心とする被削材、いわゆる難削材の溝加工を行う場合において、切りくずのかみ込みが起因してのびびり、バリ発生を抑制するエンドミルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決するために、本発明のエンドミルは、少なくとも、複数枚の底刃と、長手方向に沿ってらせん状に形成された外周刃と、当該外周刃に隣接して形成されるすくい面を備えたねじれ溝と、を有しており、隣接する底刃同士が成す角度は互いに異なり、かつ隣接するねじれ溝のねじれ角も互いに異なるエンドミルにおいて、ねじれ溝は、すくい面を備える第1ねじれ溝、第1ねじれ溝に隣接して形成される第2ねじれ溝、第2ねじれ溝に隣接してエンドミルの回転方向前方側に形成される第3ねじれ溝から構成されており、エンドミルの軸直角断面視においてすくい面のすくい角は9~11度の範囲とする。
【0007】
また、外周刃と中心軸を結ぶ直線L0、第1ねじれ溝と第2ねじれ溝が交わる第1交差稜線、第2ねじれ溝と第3ねじれ溝が交わる第2交差稜線、とした場合において、第1交差稜線を起点として直線L0に平行な直線L1と第2ねじれ溝の接線L11との成す角度が6~10度の範囲であり、第2交差稜線を起点とした直線L0に平行な直線L2と第3ねじれ溝の接線L12との成す角度が11~100度の範囲としてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のエンドミルは、ステンレス鋼を中心とする被削材、いわゆる難削材の溝加工を行う場合においても、切りくずのかみ込みが起因してのびびり、バリ発生を抑制するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のエンドミル10の正面図である。
図2】本発明のエンドミル10の左側面図である。
図3図1に示すA-A線断面図である。
図4図3に示すB部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のエンドミルの一実施形態について図面を用いて説明する。本発明のエンドミル10の正面図を図1、左側面図を図2にそれぞれ示す。本発明のエンドミル10は、図1および図2に示す様に4枚の底刃1(1a,1b,1c,1d)およびそれら底刃の端部(最外周部)から連続的に形成されている4枚の外周刃2(2a,2b,2c,2d)をそれぞれ有している。これらのらせん状の4枚の外周刃2a,2b,2c,2dには、隣接して4条のねじれ溝4,4,4,4が形成されている。
【0011】
4枚の底刃1a,1b,1c,1dは、図2に示す様に隣接する底刃同士が成す角度(エンドミル10の中心軸Oから各底刃の最外周部を結ぶ2本の直線の中心角)θ1,θ2が互いに異なる、いわゆる不等分割の形態である。また、4枚の外周刃2a,2b,2c,2dは、図1に示す様に隣接するねじれ溝4,4同士のねじれ角θ11,θ12も互いに異なる、いわゆる不等リードの形態である。
【0012】
次に、エンドミル10を構成する特定の外周刃2bとそれに連なる溝4の形状について説明する。図1に示すエンドミル10のA-A線における断面図を図3図3の円B部分(外周刃2bおよびすくい面3b)の拡大図を図4にそれぞれ示す。本発明のエンドミル10は、図3および図4に示す様に各外周刃2a,2b,2c,2dの回転方向側(図面の反時計回り側)にねじれ溝4,4,4,4が形成されており、各外周刃2a,2b,2c,2dには、すくい面3a,3b,3c,3dが形成されている。
【0013】
図4に示す様に外周刃2bには中心軸O側に向かってねじれ溝4が形成されている。このねじれ溝4は、エンドミル10の外周側から中心軸O側に向かって第1ねじれ溝4a,第2ねじれ溝4b,第3ねじれ溝4cから構成されている。第1ねじれ溝4aは、第1ないし第3ねじれ溝4a,4b,4cの中でエンドミル10の最外周側に位置するねじれ溝であり、外周刃2bにより形成されるすくい面3bを有している。
【0014】
つまり、第1ねじれ溝4aは、外周刃2bにおけるエンドミル10の外接円C0の接線から垂直方向に延びる直線L0を基準として、エンドミル10の回転方向(図4の反時計回り方向)の後方側に開くように形成されている。また、当該すくい面3bのすくい角αは、図4に示す様に外周刃2bと中心軸Oの2点を結ぶ直線L0と外周刃2bの接線L10との成す角度として規定できる。
【0015】
第2ねじれ溝4bは、第1ねじれ溝4aと第3ねじれ溝4cの中間に位置するねじれ溝、すなわち
図4に示す様にエンドミル10の外周側には第1ねじれ溝4aと接続し、中心軸O側には第3ねじれ溝4cと接続しているねじれ溝である。言い換えると、第1ねじれ溝4aに連続して形成されており、外周刃2bにおけるエンドミル10の外接円C0の接線から垂直方向に延びる直線L0を基準としてエンドミル10の回転方向(図4の反時計回り方向)の後方側に開くように形成されている。
【0016】
また、第1ねじれ溝4aと第2ねじれ溝4bが交わる第1交差稜線R1において、当該第1交差稜線R1を起点とした直線L0に平行な直線L1と第2ねじれ溝4bの接線L11との成す角度βは6~10度の範囲である。
【0017】
第3ねじれ溝4cは、第1ないし第3ねじれ溝4a,4b,4cの中で最もエンドミル10の回転方向前方側に位置するねじれ溝であり、エンドミル10の外周側には第2ねじれ溝4bと接続している。すなわち、第2ねじれ溝4bに連続して形成されおり、外周刃2bにおけるエンドミル10の外接円C0の接線から垂直方向に延びる直線L0を基準としてエンドミル10の回転方向(図4の反時計回り方向)の前方側に開くように形成されている。
【0018】
また、第2ねじれ溝4bと第3ねじれ溝4cが交わる第2交差稜線R2において、当該第2交差稜線R2を起点とした直線L0に平行な直線L2と第3ねじれ溝4cの接線L12との成す角度γは11~100度の範囲である。
【0019】
本発明のエンドミルは、ねじれ溝を第1ないし第3ねじれ溝から構成し、特に第2ねじれ溝を外周刃から中心軸に向かって延びる直線に対して、エンドミルの回転方向の後方側に開くように形成したので、切削加工により発生する切りくずの直下にできる空間を確保し、連続的に発生する切りくずの排出性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0020】
1(1a,1b,1c,1d) 底刃
2(2a,2b,2c,2d) 外周刃
3 すくい面
4 ねじれ溝
10 エンドミル
L0 外周刃と中心軸を結ぶ直線
L1,L2 直線L0に平行な直線
L11,L12 接線
O 中心軸
R1 第1交差稜線
R2 第2交差稜線
α すくい角
β 直線L1と直線L11のなす角度
γ 直線L2と直線L12のなす角度
θ1,θ2 底刃同士のなす角度
θ11,θ12 ねじれ角

図1
図2
図3
図4