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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024175
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】車両制御システムおよび車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/10 20120101AFI20240215BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20240215BHJP
【FI】
B60W50/10
B60W60/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126818
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 祐介
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA29
3D241BA60
3D241CC02
3D241CC03
3D241CC08
3D241CC17
3D241CD11
3D241CE05
3D241DA12Z
3D241DA39Z
3D241DA52Z
3D241DB02Z
3D241DD11Z
(57)【要約】
【課題】利便性を向上させることが可能な車両制御システム等を提供する。
【解決手段】本開示の一実施の形態に係る車両制御システムは、少なくとも電気的な信号を用いて、車両の乗員による操作を受付ける操作受付部と、車両の自動運転制御を行うとともに、所定の場合には、自動運転制御が行われている自動運転モードから、操作受付部により受付けられた操作に基づく手動運転が行われる手動運転モードへと、遷移させる自動運転制御部と、を備えている。上記操作受付部に対する操作が受付けられていない無操作期間においては、操作受付部のインターフェース状態が、中立状態から変化しない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも電気的な信号を用いて、車両の乗員による操作を受付ける操作受付部と、
前記車両の自動運転制御を行うとともに、所定の場合には、前記自動運転制御が行われている自動運転モードから、前記操作受付部により受付けられた前記操作に基づく手動運転が行われる手動運転モードへと、遷移させる自動運転制御部と
を備え、
前記操作受付部に対する前記操作が受付けられていない無操作期間においては、前記操作受付部のインターフェース状態が、中立状態から変化しない
車両制御システム。
【請求項2】
少なくとも前記自動運転モードから前記手動運転モードへの遷移期間において、前記操作受付部のインターフェース状態が、前記中立状態に設定される
請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項3】
前記操作受付部のインターフェース状態が、前記車両の走行状態によらずに、前記中立状態に設定される
請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項4】
前記自動運転モードから前記手動運転モードへの遷移後においては、
前記操作受付部のインターフェース状態が、前記操作受付部に対する操作量に応じて、前記中立状態から変化する
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項5】
所定の情報を出力する情報出力部を、更に備え、
前記情報出力部は、前記所定の場合に、前記操作受付部に対する前記操作の実行を促す情報を、出力可能となっている
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項6】
車両制御システムを備え、
前記車両制御システムは、
少なくとも電気的な信号を用いて、車両の乗員による操作を受付ける操作受付部と、
前記車両の自動運転制御を行うとともに、所定の場合には、前記自動運転制御が行われている自動運転モードから、前記操作受付部により受付けられた前記操作に基づく手動運転が行われる手動運転モードへと、遷移させる自動運転制御部と
を有しており、
前記操作受付部に対する前記操作が受付けられていない無操作期間においては、前記操作受付部のインターフェース状態が、中立状態から変化しない
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両を制御する車両制御システム、および、そのような車両制御システムを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を制御する車両制御システムとして、各種の技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-207885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような車両制御システムでは、例えば、利便性を向上させることが求められている。利便性を向上させることが可能な車両制御システム、および、そのような車両制御システムを備えた車両を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施の形態に係る車両制御システムは、少なくとも電気的な信号を用いて、車両の乗員による操作を受付ける操作受付部と、車両の自動運転制御を行うとともに、所定の場合には、自動運転制御が行われている自動運転モードから、操作受付部により受付けられた操作に基づく手動運転が行われる手動運転モードへと、遷移させる自動運転制御部と、を備えている。上記操作受付部に対する操作が受付けられていない無操作期間においては、操作受付部のインターフェース状態が、中立状態から変化しない。
【0006】
本開示の一実施の形態に係る車両は、上記本開示の一実施の形態に係る車両制御システムを備えたものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一実施の形態に係る車両の概略構成例を表すブロック図である。
図2】比較例1に係る自動運転モード時のステアリングホイールの構成例を表す模式図である。
図3】比較例2に係る自動運転モード時のアクセルペダルおよびブレーキペダルの構成例を表す模式図である。
図4A】実施例1に係る自動運転モード時のステアリングホイールの構成例を表す模式図である。
図4B】実施例1に係る手動運転モード時のステアリングホイールの構成例を表す模式図である。
図5A】実施例2に係る自動運転モード時のアクセルペダルおよびブレーキペダルの構成例を表す模式図である。
図5B】実施例2に係る手動運転モード時のアクセルペダルおよびブレーキペダルの構成例を表す模式図である。
図6】実施例1,2に係る車両制御処理の一例を表す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(操作受付部のインターフェース状態を無操作期間で中立状態とする例)
2.変形例
【0009】
<1.実施の形態>
[構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る車両(車両1)の概略構成例を、ブロック図で表したものである。
【0010】
車両1は、駆動力源10、バッテリ11、車速センサ12、ステレオカメラ13、操作受付部14、アクセルペダルセンサ151、ブレーキペダルセンサ152、操舵角センサ153、車両制御部16および情報表示部17を、備えている。
【0011】
なお、操作受付部14、車両制御部16および情報表示部17が、本開示における「車両制御システム」の一具体例に対応している。
【0012】
(A.駆動力源10)
駆動力源10としては、車両1では図1に示したように、エンジン10a(内燃機関)およびモータ10b(電動モータ)が設けられている。すなわち、車両1は、エンジン10aおよびモータ10bを駆動力源10として有する、ハイブリッド自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)として構成されている。
【0013】
したがって、この車両1には、エンジン10aおよびモータ10bの双方を駆動力源としたハイブリッド走行と、エンジン10aのみを駆動力源としたエンジン走行と、モータ10bのみを駆動力源としたモータ走行と、の3種類の走行モードが設けられている。そして、車両1の走行条件等に応じて、これら3種類の走行モードが、随時切り換えて使用されるようになっている。
【0014】
(B.バッテリ11)
バッテリ11は、車両1において使用される電力を貯蔵するものであり、例えばリチウムイオン電池等の各種の2次電池を用いて構成されている。なお、このバッテリ11には、車両1の外部からの充電により得られる電力(充電電力)の他、例えば、モータ10bから供給される回生電力が貯蔵されるようになっている。
【0015】
(C.車速センサ12)
車速センサ12は、車両1の走行の際の速度(車速V)を検出するセンサである。この車速センサ12によって検出された車速Vは、図1に示したように、車両制御部16(後述する自動運転制御部163等)へと出力されるようになっている。
【0016】
(D.ステレオカメラ13)
ステレオカメラ13は、車両1の周囲状況(走行環境)を撮像して検出するもの(撮像装置)である。このステレオカメラ13は、例えば、2つのカメラ(右側カメラおよび左側カメラ)により構成されている。
【0017】
右カメラおよび左カメラはそれぞれ、例えば、レンズおよびイメージセンサを含んでいる。右カメラおよび左カメラは、例えば、車両1におけるフロントガラスの上部近傍に、車両1の幅方向に沿って所定距離だけ離間して、配置されている。これらの右カメラおよび左カメラは、互いに同期して撮像動作を行うようになっている。具体的には、右カメラは撮像画像IR(右画像)を生成し、左カメラは撮像画像IL(左画像)を生成する。このようにしてステレオカメラ13(右側カメラおよび左カメラ)によって得られた撮像画像IR,ILはそれぞれ、図1に示したように、車両制御部16(後述する車両認識部161や自動運転制御部163等)へと出力されるようになっている。
【0018】
(E.情報表示部17)
情報表示部17は、車両1の乗員(運転者など)へ向けて、各種の情報を出力(表示)するものである。この情報表示部17は、例えば、ヘッドアップディスプレイ(HUD:Head-Up Display)等を用いて構成されている。
【0019】
なお、このような情報表示部17は、本開示における「情報出力部」の一具体例に対応している。つまり、各種の情報を表示することで外部へ出力する代わりに、他の手法(例えば音声など)を用いて、各種の情報を外部へ出力するようにしてもよい。
【0020】
(F.操作受付部14および各種センサ)
操作受付部14は、図1に示したように、アクセルペダル141、ブレーキペダル142およびステアリングホイール143(ハンドル)を、有している。操作受付部14における各部材(アクセルペダル141、ブレーキペダル142およびステアリングホイール143)は、少なくとも電気的な信号を用いて(いわゆるバイワイヤ方式にて)、車両1の乗員(運転者など)による操作を受付けるようになっている。
【0021】
アクセルペダルセンサ151は、車両1の運転者によるアクセルペダル141の踏み込み量(アクセル開度Pa)を検出するセンサである。ブレーキペダルセンサ152は、車両1の運転者によるブレーキペダル142の踏み込み量(ブレーキ踏み込み量Pb)を検出するセンサである。操舵角センサ153は、車両1の運転者によるステアリングホイール143の操作量(操舵角θs)を検出するセンサである。
【0022】
なお、アクセルペダルセンサ151、ブレーキペダルセンサ152および操舵角センサ153によって検出された、アクセル開度Pa、ブレーキ踏み込み量Pbおよび操舵角θsはそれぞれ、図1に示したように、車両制御部16(後述する自動運転制御部163等)へと出力されるようになっている。
【0023】
(G.車両制御部16)
車両制御部16は、車両1における各種動作を制御したり、各種の演算処理を行ったりする部分である。具体的には、車両制御部16は、例えば、プログラムを実行する1または複数のプロセッサ(CPU:Central Processing Unit)と、これらのプロセッサに通信可能に接続される1または複数のメモリと、を含んで構成される。また、このようなメモリは、例えば、処理データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、および、プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)等により構成される。
【0024】
この車両制御部16は、図1に示した例では、車両認識部161、表示制御部162、自動運転制御部163(走行制御部)およびバッテリ制御部164を、有している。
【0025】
車両認識部161は、ステレオカメラ13(右カメラおよび左カメラ)からそれぞれ得られる撮像画像IR,ILに基づいて、所定の演算処理(画像認識処理)を行うことにより、車両1(自車両)とは異なる他車両を認識するものである。具体的には、車両認識部161は、例えば、車両1の前方を走行する先行車両を、他車両として認識するようになっている。
【0026】
表示制御部162は、情報表示部17における表示動作(各種の情報の表示動作)を制御するものである(図1参照)。
【0027】
自動運転制御部163は、車両1の走行動作を制御するものであり、車両1の走行に関する統括的な制御を行うようになっている。具体的には、自動運転制御部163は、車両1の自動運転制御(車両1における駆動系、制動系および操舵系の自動制御)を行う。そして、自動運転制御部163は、所定の場合には、自動運転制御が行われている自動運転モードM1から、操作受付部14により受付けられた操作に基づく手動運転が行われる手動運転モードM2へと、遷移(運転モードを移行)させるようになっている。
【0028】
なお、本実施の形態では、ここで言う「自動運転」とは、レベル2(いわゆる「ハンズオフ」運転が実現されるレベル)またはレベル3(いわゆる「アイズオフ」運転が実現されるレベル)以上の高度の自動運転レベルを意味している。
【0029】
このような自動運転制御部163は、図1に示した例では、エンジン制御部163aおよびモータ制御部163bを有している。
【0030】
エンジン制御部163aは、エンジン10aにおける各種動作を制御するものである(図1参照)。モータ制御部163bは、モータ10bにおける各種動作を制御するものである(図1参照)。具体的には、モータ制御部163bは、例えば、モータ10bによる車両1の車輪の駆動動作や、モータ10bにおける回生動作等を、制御するようになっている。
【0031】
また、自動運転制御部163は、例えば、上記した車両認識部161における他車両の認識結果(例えば、車両1と他車両との間の車間距離など)に基づいて、車両1の走行動作を制御するようになっている。具体的には、自動運転制御部163は、例えばそのような車間距離や前述した車速V等を増減することで、他車両(先行車両)に対する自動追従制御や、自動加減速制御(自動減速や自動加速の制御)等を、行うようになっている。
【0032】
バッテリ制御部164は、バッテリ11に対する各種制御(充電制御等)を行うものである(図1参照)。
【0033】
[動作および作用・効果]
続いて、本実施の形態における動作および作用・効果について、比較例(比較例1,2)と比較しつつ詳細に説明する。
【0034】
まず、一般に、前述したレベル2またはレベル3以上の高度の自動運転時には、ハンドオフやアイズオフによる自動運転が実現され、車両主導による自動運転の状態となる。このような高度の自動運転の際に、所定の場合には、一時的なオーバライド・ ハンドオーバ(一時的な運転者による操作)が、車両から運転者へと要求されるケースがある。具体的には、このような一時的な操作としては、例えば下記のように、実際の運転操作を伴うものが挙げられる。また、例えば下記のように、そのような実際の操作(運転操作)を伴わずに、車両への指示を出すだけの要求が、車両から運転者へと出されるケースもある。
【0035】
・運転操作を伴う操作の要求(例えば、自動運転制御部では、走行レーン間の区画線の位置を把握できない状況のため、運転操作によって車両の位置調整をしてほしい場合など)
・指示を出すだけの要求(例えば、この交差点を右折するのか、あるいは、直進するのかを、運転者からの指示によって、決めてほしい場合など)
がある。
【0036】
このようにして、上記した高度の自動運転の際には、車両(自動運転制御部)から乗員(運転者など)への判断や操作の要請があった場合にのみ、車両の状況を判断したり、実際に操作をしたりすることになる。ところが、上記したようなハンズオフやアイズオフでの自動運転の状況下では、その時点での操作受付部(ステアリングホイールやアクセルペダル、ブレーキペダルなど)のインターフェース状態を、車両の乗員がとっさに(直感的に)に把握したり操作したりするのが、困難であるケースが有り得る。その結果、例えば以下の比較例1,2にて具体的に説明するように、自動運転の際の利便性が損なわれるおそれがある。
【0037】
(A.比較例1,2)
ここで、図2は、比較例1に係るステアリングホイール103(自動運転モードM1時)の構成例を、模式的に表したものである。また、図3は、比較例2に係るアクセルペダル201およびブレーキペダル202(自動運転モードM1時)の構成例を、模式的に表したものである。なお、図2に示したステアリングホイール103では、車両の乗員(運転者など)が実際に操作する部分を抜粋して、模式的に示している。
【0038】
まず、図2に示した比較例1のステアリングホイール103では、自動運転モードM1に設定されていることで、以下のようになっている。すなわち、破線で示した中立状態(操舵角=0°の状態、初期状態)から、実線で示した状態(破線の矢印R1で示したように、例えば、操舵角=60°まで回転した状態)へと、ステアリングホイール103のインターフェース状態が変化している。ところが、上記した判断や操作の要請があった場合に、車両の乗員としては、このステアリングホイール103のインターフェース状態が、操舵角=60°の状態なのか、あるいは、操舵角=420°や操舵角=-120°の状態なのか、とっさに把握するのが困難であるケースが有り得る。
【0039】
また、図3に示した比較例2のアクセルペダル201およびブレーキペダル202においても、自動運転モードM1に設定されていることで、以下のようになっている。すなわち、破線で示した中立状態(アクセル開度,ブレーキ踏み込み量=0の状態、初期状態)から、実線で示した状態(破線の矢印S1で示した状態まで、アクセル開度やブレーキ踏み込み量が増加した状態)へと、アクセルペダル201やブレーキペダル202のインターフェース状態が変化している。ところが、上記した判断や操作の要請があった場合に、やはり車両の乗員としては、アクセルペダル201やブレーキペダル202のインターフェース状態を、とっさに把握するのが困難であるケースが有り得る。
【0040】
このようにして、比較例1,2の操作受付部(ステアリングホイール103、アクセルペダル201およびブレーキペダル202)では、自動運転モードM1時において、車両から乗員(運転者など)に対する判断や操作の要請があった場合に、以下のようになる。すなわち、車両の状況(自動運転モードM1時における操作受付部のインターフェース状態)を、車両の乗員がとっさに(直感的に)に把握したり操作したりするのが、困難であるケースが有り得る。その結果、これらの比較例1,2では、自動運転の際の利便性が損なわれるおそれがあると言える。
【0041】
(B.本実施の形態)
これに対して本実施の形態では、例えば以下説明する各実施例(実施例1,2)のように、操作受付部14に対する操作が受付けられていない無操作期間においては、操作受付部14のインターフェース状態が、上記比較例1,2の場合とは異なり、上記した中立状態から変化しないようになっている。
【0042】
具体的には、例えば、少なくとも、自動運転モードM1から手動運転モードM2への遷移期間(移行期間)においては、操作受付部14のインターフェース状態が、中立状態から変化しないようになっている。ただし、自動運転モードM1の期間中も常時、操作受付部14のインターフェース状態が、中立状態から変化しないようにしてもよい。言い換えると、操作受付部14のインターフェース状態が、車両1の走行状態(のみ)によらずに、中立状態に設定されるようになっている。このようにして本実施の形態では、操作受付部14のインターフェース状態が、(MRM(ミニマル・リスク・マヌーバ:Minimal Risk Maneuver)等の制御は別として、)不必要に変化しないようになっている。
【0043】
なお、このような操作受付部14での中立状態の設定は、例えば、事前の設定(静的な制御)であってもよいし、あるいは、自動運転制御部163によってその都度設定される(動的な制御)ようにしてもよい。
【0044】
ここで、図4Aは、実施例1に係るステアリングホイール143(自動運転モードM1時)の構成例を、模式的に表したものである。一方、図4Bは、実施例1に係るステアリングホイール143(手動運転モードM2時)の構成例を、模式的に表したものである。また、図5Aは、実施例2に係るアクセルペダル141およびブレーキペダル142(自動運転モードM1時)の構成例を、模式的に表したものである。一方、図5Bは、実施例2に係るアクセルペダル141およびブレーキペダル142(手動運転モードM2時)の構成例を、模式的に表したものである。なお、図4A図4Bに示したステアリングホイール143では、車両1の乗員(運転者など)が実際に操作する部分を抜粋して、模式的に示している。
【0045】
(自動運転モードM1時)
まず、図4Aに示した実施例1のステアリングホイール143では、上記した無操作期間としての自動運転モードM1の際に、以下のようになっている。すなわち、ステアリングホイール143のインターフェース状態が、中立状態(操舵角=0°の状態、初期状態)から変化しないようになっている。つまり、自動運転制御部163による自動運転制御によって、実際には、所定の操舵角に設定されている状況(例えば、左60°での旋回中)であっても、ステアリングホイール143のインターフェース状態が、中立状態のままに設定されている。
【0046】
また、図5Aに示した実施例2のアクセルペダル141およびブレーキペダル142においても、上記した無操作期間としての自動運転モードM1の際に、以下のようになっている。すなわち、アクセルペダル141およびブレーキペダル142のインターフェース状態がそれぞれ、中立状態(アクセル開度Pa,ブレーキ踏み込み量Pb=0の状態、初期状態)から変化しないようになっている。つまり、自動運転制御部163による自動運転制御によって、実際には、所定のアクセル開度やブレーキ踏み込み量に設定されている状況であっても、アクセルペダル141およびブレーキペダル142のインターフェース状態がそれぞれ、中立状態のままに設定されている。
【0047】
(手動運転モードM2時)
一方、本実施の形態では、自動運転モードM1から手動運転モードM2への遷移後(移行後)においては、以下のようになっている。すなわち、例えば以下の実施例1,2のように、操作受付部14のインターフェース状態が、この操作受付部14に対する(車両1の運転者等による実際の)操作量に応じて、上記した中立状態から変化するようになっている。
【0048】
まず、図5Aに示した実施例1のステアリングホイール143では、手動運転モードM2への遷移後に、例えば破線の矢印R2で示したように、ステアリングホイール143に対して運転者等による操作が行われた場合に、以下のようになる。すなわち、ステアリングホイール143への操作量(操舵角θs)に応じて、破線で示した中立状態から、実線で示した状態(操舵角θsまで回転した状態)へと、ステアリングホイール143のインターフェース状態が変化する。具体的には、例えば、車両1における現状の旋回量では不足の状況下で、車両1を更に左に寄せたい場合に、車両1の運転者等によってステアリングホイール143が実際に操作されたとすると、以下のようになる。すなわち、例えば、自動運転モードM1の際の操舵角(旋回量)が、60°に設定されていた場合において、手動運転モードM2への遷移後の操作量が20°であった場合、車両1全体での旋回量は、80°(=60°+20°)に相当することになる。
【0049】
また、図5Bに示した実施例2のアクセルペダル141およびブレーキペダル142においても、手動運転モードM2への遷移後に、例えば破線の矢印S2で示したように、アクセルペダル141やブレーキペダル142に対して運転者等による操作が行われた場合に、以下のようになる。すなわち、アクセルペダル141やブレーキペダル142への操作量(アクセル開度Paやブレーキ踏み込み量Pb)に応じて、破線で示した中立状態から、実線で示した状態(アクセル開度Pa,ブレーキ踏み込み量Pb>0まで増加した状態)へと、アクセルペダル141やブレーキペダル142のインターフェース状態が変化する。
【0050】
(車両制御処理の詳細)
続いて、図1図4A図4B図5A図5Bに加えて図6を参照して、本実施の形態の実施例1,2に係る車両制御処理の一例について、詳細に説明する。図6は、実施例1,2に係る車両制御処理の一例を、流れ図で表したものである。
【0051】
この図6に示した車両制御処理では、まず、自動運転制御部163によって車両1が自動運転モードM1に設定されると、操作受付部14のインターフェース状態が、前述した中立状態に設定される(ステップS11)。次に、自動運転制御部163は、前述したような、自動運転モードM1から手動運転モードM2への一時的な遷移が必要か否かについて、判定を行う(ステップS12)。ここで、手動運転モードM2への一時的な遷移は不要であると判定された場合(ステップS12:N)、このステップS12の判定が再度行われることになる。
【0052】
一方、手動運転モードM2への一時的な遷移が必要であると判定された場合(ステップS12:Y)、自動運転制御部163は、車両1を手動運転モードM2に設定することで、自動運転モードM1から手動運転モードM2への一時的な遷移が実行される(ステップS13)。なお、この手動運転モードM2では、前述したように、操作受付部14のインターフェース状態が、操作受付部14への操作量に応じて中立状態から変化することになる。
【0053】
続いて、自動運転制御部163は、前述した操作の要求(要請)が必要なのか否か(前述した指示のみの要求でよいのか否か)について、判定を行う(ステップS14)。ここで、そのような操作の要求は不要であると判定された場合(ステップS14;N)、所定の指示のみを要求が、車両1の乗員(運転者など)へと出力される(ステップS15)。具体的には、例えば、表示制御部162による表示制御に従って、情報表示部17が、所定の指示の実行を促す情報を、表示する。そして、車両1の乗員によって、そのような所定の指示のみが実行されると(ステップS16)、後述するステップS19へと進むことになる。
【0054】
一方、上記した操作の要求が必要であると判定された場合(ステップS14;Y)、そのような操作の要求が、車両1の乗員(運転者など)へと出力される(ステップS17)。具体的には、例えば、表示制御部162による表示制御に従って、情報表示部17が、操作受付部14に対する操作の実行を促す情報を、表示する。そして、車両1の乗員によって、そのような操作受付部14への操作が実行されると(ステップS18)、以下のステップS19へと進むことになる。
【0055】
このステップS19では、自動運転制御部163は、手動運転モードM2から自動運転モードM1へと戻ってもよい(上記した一時的な遷移から復帰する)のか否かについて、判定を行う。自動運転モードM1へと戻ってもよいと判定された場合には(ステップS19:Y)、前述したステップS11(自動運転モードM1の設定)へと戻ることになる。一方、自動運転モードM1へと戻るべきではないと判定された場合には(ステップS19:N)、前述したステップS14(操作の要求が必要か否かの判定)へと戻ることになる。なお、図6中に示したように、例えばこの場合において、その後は手動運転モードM2へと完全に移行するように、設定してもよい。
【0056】
以上で、図6に示した一連の処理(実施例1,2に係る車両制御処理)についての説明が、終了となる。
【0057】
(C.作用・効果)
このようにして本実施の形態では、操作受付部14に対する操作が受付けられていない無操作期間(例えば、少なくとも自動運転モードM1から手動運転モードM2への遷移期間)においては、操作受付部14のインターフェース状態が、中立状態から変化しないようになっている。
【0058】
これにより本実施の形態では、例えば、自動運転モードM1時において、車両1(自動運転制御部163)から乗員(運転者など)に対する判断や操作の要請があった場合に、以下のようになる。すなわち、そのような要請があった場合であっても、前述した比較例1,2等とは異なり、車両1の状況(自動運転モードM1時における操作受付部14のインターフェース状態)を、車両1の乗員が直感的に把握し易くなる。その結果、本実施の形態では、自動運転の際の利便性を向上させることが可能となる。
【0059】
また、例えば車両1の運転者によって、操作受付部14のインターフェース状態を見たり触ったりするなどして、車両1の状況を把握する時間が短くなることから、例えば、自動運転制御の普及に伴って今後想定される、運転者の運転スキルの低下に対応することもできる。つまり、例えば、運転スキルの低下に対応した特別な対応をする必要がなくなるため、制御バグの削減やコストダウンを図ることも可能となる。
【0060】
更に、本実施の形態では、自動運転モードM1から手動運転モードM2への遷移後においては、前述したように、操作受付部14のインターフェース状態が、操作受付部14に対する操作量に応じて、中立状態から変化することから、以下のようになる。すなわち、そのような手動運転モードM2への遷移後においては、操作受付部14に対する実際の操作量(手動による操作量)に応じて、インタフェース状態が中立状態から変化するため、運転者等による実際の操作量を直感的に把握することができ、自動運転の際の利便性を更に向上させることが可能となる。
【0061】
<2.変形例>
以上、実施の形態および実施例を挙げて本開示を説明したが、本開示はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0062】
例えば、車両1や操作受付部14、車両制御部16等における各部材の構成(形式、形状、配置、個数等)については、上記実施の形態等で説明したものには限られない。すなわち、これらの各部材における構成については、他の形式や形状、配置、個数等であってもよい。また、上記実施の形態等で説明した各種パラメータの値や範囲、大小関係等についても、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の値や範囲、大小関係等であってもよい。
【0063】
具体的には、例えば上記実施の形態等では、操作受付部14の一例として、アクセルペダル141、ブレーキペダル142およびステアリングホイール143を挙げて説明したが、これらの各部材には限られない。すなわち、操作受付部14において、これらの各部材に加えて(あるいは代えて)、例えば、シフトレバーやウィンカー(方向指示器)などが含まれるようにしてもよい。
【0064】
また、例えば、上記実施の形態等では、車両1や操作受付部14,車両制御部16において行われる各種処理について、具体例を挙げて説明したが、これらの具体例には限られない。すなわち、他の手法を用いて、これらの各種処理を行うようにしてもよい。
【0065】
更に、上記実施の形態等で説明した一連の処理は、ハードウェア(回路)で行われるようにしてもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行われるようにしてもよい。ソフトウェアで行われるようにした場合、そのソフトウェアは、各機能をコンピュータにより実行させるためのプログラム群で構成される。各プログラムは、例えば、上記コンピュータに予め組み込まれて用いられてもよいし、ネットワークや記録媒体から上記コンピュータにインストールして用いられてもよい。
【0066】
加えて、上記実施の形態では、車両1内に1つのモータ(モータ10b)が設けられている場合を例に挙げて説明したが、この例には限られない。すなわち、車両1内に、例えば複数(2つ以上)のモータが設けられているようにしてもよい。また、上記実施の形態では、ハイブリッド自動車(HEV)により構成された車両1を例に挙げて説明したが、この例には限られない。すなわち、例えば、電気自動車(EV:Electric Vehicle)やガソリン車により構成された車両についても、本開示を適用することが可能である。
【0067】
また、これまでに説明した各種の例を、任意の組み合わせで適用させるようにしてもよい。
【0068】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0069】
また、本開示は、以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
少なくとも電気的な信号を用いて、車両の乗員による操作を受付ける操作受付部と、
前記車両の自動運転制御を行うとともに、所定の場合には、前記自動運転制御が行われている自動運転モードから、前記操作受付部により受付けられた前記操作に基づく手動運転が行われる手動運転モードへと、遷移させる自動運転制御部と
を備え、
前記操作受付部に対する前記操作が受付けられていない無操作期間においては、前記操作受付部のインターフェース状態が、中立状態から変化しない
車両制御システム。
(2)
少なくとも前記自動運転モードから前記手動運転モードへの遷移期間において、前記操作受付部のインターフェース状態が、前記中立状態に設定される
上記(1)に記載の車両制御システム。
(3)
前記操作受付部のインターフェース状態が、前記車両の走行状態によらずに、前記中立状態に設定される
上記(1)または(2)に記載の車両制御システム。
(4)
前記自動運転モードから前記手動運転モードへの遷移後においては、
前記操作受付部のインターフェース状態が、前記操作受付部に対する操作量に応じて、前記中立状態から変化する
上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の車両制御システム。
(5)
所定の情報を出力する情報出力部を、更に備え、
前記情報出力部は、前記所定の場合に、前記操作受付部に対する前記操作の実行を促す情報を、出力可能となっている
上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の車両制御システム。
(6)
車両制御システムを備え、
前記車両制御システムは、
少なくとも電気的な信号を用いて、車両の乗員による操作を受付ける操作受付部と、
前記車両の自動運転制御を行うとともに、所定の場合には、前記自動運転制御が行われている自動運転モードから、前記操作受付部により受付けられた前記操作に基づく手動運転が行われる手動運転モードへと、遷移させる自動運転制御部と
を有しており、
前記操作受付部に対する前記操作が受付けられていない無操作期間においては、前記操作受付部のインターフェース状態が、中立状態から変化しない
車両。
【符号の説明】
【0070】
1…車両、10…駆動力源、10a…エンジン、10b…モータ、11…バッテリ、12…車速センサ、13…ステレオカメラ、14…操作受付部、141…アクセルペダル、142…ブレーキペダル、143…ステアリングホイール、151…アクセルペダルセンサ、152…ブレーキペダルセンサ、153…操舵角センサ、16…車両制御部、161…車両認識部、162…表示制御部、163…自動運転制御部、163a…エンジン制御部、163b…モータ制御部、164…バッテリ制御部、17…情報表示部、V…車速、IR,IL…撮像画像、Pa…アクセル開度Pa、Pb…ブレーキ踏み込み量、θs…操舵角(操作量)、M1…自動運転モード、M2…手動運転モード。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6