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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024189
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126839
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森島 憲太
(72)【発明者】
【氏名】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】竹村 雅幸
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC27
5H181EE02
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL15
(57)【要約】
【課題】他車両が自車両の走行レーンに実際に進入する前に、他車両の割り込みの可能性の有無を判定できる車両制御装置を得ること。
【解決手段】本発明の車両制御装置11は、自車両10の進行路に他車両30が侵入するか否かを判定する装置であって、車両前方の3次元形状の計測データを用いて他車両の直方体モデル42を生成し、直方体モデル42の側面42bの移動ベクトル45、46と自車両10の移動ベクトル51とが交差するか否かに応じて侵入の判定を行うことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の進行路への他車両の割り込みを判定する車両制御装置であって、
車両前方の3次元形状の計測データを用いて前記他車両の直方体モデルを生成し、該直方体モデルの側面の移動ベクトルと前記自車両の移動ベクトルとが交差するか否かに応じて前記割り込みを判定することを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記直方体モデルの側面の前端の移動ベクトルと後端の移動ベクトルの少なくとも一方が前記自車両の移動ベクトルと交差する場合に前記割り込みであると判定することを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記直方体モデルの側面の移動ベクトルと前記自車両の移動ベクトルを2次元平面上の線分に変換して線分同士が交差するか否かを判定し、該線分同士が交差する場合に前記割り込みであると判定することを特徴とする請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記自車両の移動ベクトルと前記直方体モデルの側面の移動ベクトルとの交差位置に応じて前記自車両の制御内容を決定することを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記自車両の前方を撮像した撮像画像から前記自車両の進行路を計算し、該計算した前記進行路の情報を用いて前記自車両の移動ベクトルを求めることを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記自車両の舵角から前記自車両の進行路を計算し、該計算した前記進行路の情報を用いて前記自車両の移動ベクトルを求めることを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項7】
ステレオカメラで作成した視差画像から算出した3次元形状の計測データを用いて前記他車両の直方体モデルを生成することを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自車両の進行路への他車両の割り込み判定を行う車両制御装置に関わる。
【背景技術】
【0002】
従来の直近での自車両の車線への他車両の割り込み判定は、他車両が自車両の走行レーンに実際に侵入したか否かにより判定し、侵入後のTTC(衝突余裕時間)の値によってドライバーへの警告や車両制動を行っていたが、他車両が自車両の走行レーンに侵入する前に割り込み判定を行い、ドライバーに警告をする有効な手段はなかった。
【0003】
特許文献1には、白線検出プログラムにより検出される自車線を区画する白線の内、少なくとも一方の白線が検出できなくなったことで他車両の割り込みを判定する技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-2083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、他車両が自車両の走行レーンを区画する白線を越えるまでは、割り込みを判定することができない。他車両が自車両の走行レーンに実際に侵入した後の対応では、近距離での割り込みに対して、警告等の制御に十分な時間が確保できないことが考えられる。また、特許文献1の技術では、道路に走行レーンを区画する白線がない場合や白線が不明瞭な場合には、他車両の割り込み判定を行うことができない。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、他車両が自車両の走行レーンに実際に侵入する前に、他車両の割り込みを判定できる車両制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の車両制御装置は、自車両の進行路への他車両の割り込みを判定する車両制御装置であって、車両前方の3次元形状の計測データを用いて前記他車両の直方体モデルを生成し、該直方体モデルの側面の移動ベクトルと前記自車両の移動ベクトルとが交差するか否かに応じて前記割り込みを判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、他車両が自車両の走行レーンに実際に侵入する前に、自車両の進行路への他車両の割り込みを判定できるので、早期の対応制御が可能になる。本発明に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、上記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の車両制御装置が搭載される車両の構成を説明する図。
図2】本実施形態における車両制御装置の機能ブロック図。
図3】自車両の前方を撮像した画像を画像処理した例を示す図。
図4】他車両の認識イメージを変換する例を説明する図。
図5】直線路での他車両の割り込みと移動ベクトルのイメージ例を示す図。
図6】自車両の直進時におけるベクトルが先行他車の移動ベクトルと交差又は非交差する状態を模式的に示す図。
図7】カーブでの他車両の割り込みと移動ベクトルのイメージ例を示す図。
図8】自車両のカーブ時におけるベクトルが先行他車両の移動ベクトルと交差又は非交差する状態を模式的に示す図。
図9】本実施形態の車両制御装置を対向車両に適用する場合の具体例を説明する図。
図10】自車両の直進時におけるベクトルが対向他車の移動ベクトルと交差又は非交差する状態を模式的に示す図。
図11】本実施形態の車両制御装置を対向車両に適用する場合の具体例を説明する図。
図12】自車両のカーブ時におけるベクトルが対向他車両の移動ベクトルと交差又は非交差する状態を模式的に示す図。
図13】対応制御が必要な割り込みか否かを判定するフローチャートの一例。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の車両制御装置が搭載される車両の構成を説明する図である。
自車両10は、先進運転システムまたは自動運転システムを備えた自動車である。自車両10には、車両制御装置11が搭載されている。車両制御装置11は、自車両の進行路への他車両の割り込みを判定し、その判定結果に基づいて自車両10の乗員に対する警告や自車両10の予防安全制御を行う機能を有している。
【0011】
車両制御装置11は、CPUとメモリと入出力インターフェースを有するECUによって構成されている。車両制御装置11の入力側には、カメラセンサ12と、車速センサ13と、舵角センサ14が接続され、出力側には、アクチュエータ15と、警報装置16が接続されている。
【0012】
カメラセンサ12は、車両前方の3次元形状を計測する測距センサである。カメラセンサ12は、例えばステレオカメラによって構成されており、一対のカメラによって自車両10の前方を撮像し、左右の撮像画像から視差画像を生成する。そして、視差画像から車両前方の3次元空間の形状を認識し、他車両を認識するなどの物体認識が行われる。カメラセンサ12は、毎フレームに画像を取り込み、エッジ検出等により物体認識を行う。カメラセンサ12は、ステレオカメラに限定されるものではなく、車両前方の3次元形状を計測可能なセンサであればよく、単眼カメラとレーザレーダの組み合わせや、LiDAR(Light detection and ranging)などの他のセンサを用いても良い。
【0013】
車速センサ13は、自車両10の車速を検出し、舵角センサ14は、自車両10の操舵角を検出する。アクチュエータ15は、車両制御装置11からの制御信号に応じて車両10のブレーキを操作する。警報装置16は、車内モニタと車内スピーカを有しており、車両制御装置11からの制御信号に応じて車内モニタに警報の表示を行い、また、車内スピーカから警報音を鳴らす。
【0014】
図2は、本実施形態における車両制御装置の機能ブロック図である。
車両制御装置11は、ECUのメモリに記憶されている所定のプログラムを実行することにより、内部機能として、進行路推定部101と、自車ベクトル計算部102と、ベクトル交差判定部103と、他車両直方体推定部104と、他車両ベクトル計算部105と、警告回避処理計算部106と、制御部107と、が具現化される。
【0015】
進行路推定部101は、自車両10の進行路を推定する。進行路推定部101は、カメラセンサ12、舵角センサ14、および車速センサ13などの各種センサからのデータを用いて進行路を計算する。例えば、自車両の前方を撮像した撮像画像から前記自車両の進行路を計算してもよく、また、自車両の舵角から前記自車両の進行路を計算してもよい。自車両10の進行路を推定する方法は、その他にレーン認識センサによる検出結果や、座標位置情報、地図情報を用いるなど、その他の従来公知の技術を用いてもよい。自車ベクトル計算部102は、自車両10の進行路と車速から自車両10の移動ベクトルを計算する。移動ベクトルの向きと長さは、計算時における車両の進行方向と車速或いはTTCによって規定される。
【0016】
他車両直方体推定部104は、カメラセンサ12から取得した視差画像を用いて他車両の直方体推定を行う。他車両直方体推定部104は、カメラセンサ12であるステレオカメラで作成した視差画像から算出した3次元形状の計測データを用いて他車両の直方体モデルを生成する。他車両直方体推定部104は、例えば、他車両が先行車両の場合、視差画像から他車両の側面を抽出し、側面と直角であることを前提に他車両の背面を探索する。そして、探索した他車両の側面と背面に対して直方体形状をフィッティングし、他車両の直方体モデルを作成する。他車両の直方体モデルは、他車両の全長と横幅と高さとほぼ同じ大きさの直方体によって擬似的に他車両を表したものある。
【0017】
他車両ベクトル計算部105は、他車両直方体推定部104によって推定された他車両の直方体モデルから他車両の移動ベクトルを計算する。他車両ベクトル計算部105は、カメラセンサ12によって撮像された撮像画像のフレーム間における直方体モデルの移動量から直方体モデルの側面の移動ベクトルを求めて、他車両の移動ベクトルとする。他車両ベクトル計算部105では、例えば、直方体モデルの側面の前端と後端における移動ベクトルをそれぞれ求め、他車両の移動ベクトルとする。
【0018】
ベクトル交差判定部103は、自車両10の移動ベクトルと他車両の移動ベクトルとから互いのベクトルの交差が発生するか否かの判定を行う。ベクトル交差判定部103は、自車両10の移動ベクトルと他車両の移動ベクトルを2次元平面上の線分に変換して、線分同士が交差する場合に、自車両10にて対応制御が必要となる他車両の割り込みと判定する。
【0019】
警告回避処理計算部106は、ベクトル交差判定部103によって他車両の割り込みと判定された場合に、自車両10の移動ベクトルに対する他車両の移動ベクトルの交差する位置を演算し、自車両10から交差が発生する位置までの距離を計算する。そして、自車両10から交差位置までの距離に応じて、対処すべきドライバーへの警告や減速等の制御内容を決定する。例えば、自車両10からベクトルの交差が発生する位置までの距離が比較的遠い場合には自車両10の乗員に警告を行い、距離が比較的近い場合には自車両10の乗員に対する警告と自車両10の減速の両方を行うように制御部107に指示する処理を行う。制御部107は、警告回避処理計算部106の処理の指示に対応してアクチュエータ15と警報装置16に制御信号を出力する。
【0020】
図3は、自車の前方を撮像した撮像画像を画像処理した例を示す図である。
図3に示す画像20は、道路21の走行レーン22を走行する自車両10から自車両10の前方を撮像した撮像画像であり、白線24を挟んで隣接車線23を走行する先行車両30が撮像されている。そして、画像20内には、他車両直方体推定部104によって推定された他車両30全体を囲む輪郭41と、輪郭41内の直方体モデル42とが表示されている。
【0021】
図4は、他車の認識イメージを変換する例を説明する図である。図4には、他車両30をカメラセンサ12で撮像して取り込んだ画像から他車両30の移動ベクトルを求めるための変換過程が示されている。
【0022】
他車両直方体推定部104は、カメラセンサ12から撮像画像が取り込まれると、図4(1)に示すように、エッジ検出等の画像処理により他車両30の全体を輪郭41として認識する。図4(1)は、撮像画像に表示される輪郭41を示している。次いで、直方体推定により、輪郭41内の他車両30を直方体モデル42にモデル化する。直方体モデル42は、他車両30を直方体形状にモデル化したものであり、図4(2)に示すように、他車両30の背面と側面に対応する背面42aと側面42bを有する。
【0023】
他車両ベクトル計算部105は、他車両直方体推定部104によって他車両30が直方体モデル42にモデル化されると、撮像画像のフレーム間のモデル移動量から他車両30の移動ベクトル45、46を計算する。図4(3)は、直方体モデル42を平面視したときの移動ベクトルを示すイメージ図である。他車両ベクトル計算部105は、直方体モデル42の側面42bの後端42cの移動ベクトル45と、直方体モデル42の側面42bの前端42dの移動ベクトル46を計算する。
【0024】
図5は、直線状の道路での他車の割り込みの例を示す図である。
図5には、自車両10が直線状の道路21の右レーン22を走行中に、他車両30が左レーン23から右レーン22に移動して自車両10の前方の進行路に割り込もうとしているシーンが示されている。図5に示すシーンでは、他車両30は、自車両10の進行路50に未だ侵入していないが、割り込もうとしている。この割り込みを、本実施形態の車両制御装置11で判定する。
【0025】
自車両10の進行路50は、道路21の右レーン22の上に直線状に延びる軌跡となり、他車両30の進行路31は、道路21の左レーン23から右レーン22に向かってS字状に延びる軌跡となる。自車両10と他車両30の移動ベクトル51、45、46のベクトル長は、検出すべき衝突余裕時間(Time to Collision:以下、TTCという)に対応している。TTCが1秒と2秒の場合ではベクトル長が2倍異なることになる。
【0026】
自車両10の移動ベクトル51は、図5に示す例では、自車両10の左側からの他車両30の割り込み判定を行うために、自車両10の前部左端から伸びている。自車両10の右側からの他車両30の割り込み判定に対しては、自車両10の前部右端に移動ベクトルを設定することになる。他車両30の移動ベクトル45、46は、直方体モデル42の右側後端と右側前端から伸びている。他車両30の移動ベクトルを後端と前端の両方に分けたのは、自車両10の前端が他車両30の側面に接近または衝突するのかを計算するためである。
【0027】
自車両10の進行路への他車両30の割り込みであるか否かは、自車両10の移動ベクトル51と、他車両30の移動ベクトル45、46とが互いに交差するか否かによって判断される。より詳しくは、自車両10の移動ベクトル51と他車両30の移動ベクトル45、46とを2次元平面上の線分に変換して、線分同士が交差している場合に、他車両30の割り込みであると判定する
【0028】
自車両10の移動ベクトル51が、他車両30の移動ベクトル45と46のうち、少なくとも一方と交差している場合、自車両10と他車両30との接近衝突の可能性があると判断され、自車両10の乗員への警告や自車両10の制動制御などの対応を必要とさせる、他車両30の割り込みと判断される。一方、自車両10の移動ベクトル51が他車両30の移動ベクトル45と46のいずれにも交差していない場合、自車両10と他車両30の距離が確保されており、接近衝突の可能性は低いと判断され、自車両10に警告や制動制御などの対応を必要とさせない、他車両30の通常の車線変更と判断される。
【0029】
図6は、図5に示す状況において、自車両の直進時におけるベクトルが先行他車の移動ベクトルと交差又は非交差する状態を模式的に示す図である。図6(1)のX-Y座標は、自車両10を座標中心とし、車幅方向をX軸、進行方向をY軸として表したものである。図6(1)に示す例の場合、自車両10の移動ベクトル51は、他車両30の移動ベクトル45と46のうち、移動ベクトル45と交差している。したがって、他車両30の割り込みと判断される。
【0030】
図6(2)は、自車両の移動ベクトルに対して他車両の移動ベクトルが交差する位置について説明する図である。警告回避処理計算部106では、自車両10と他車両30が接近衝突すると判断した場合に、自車両10の移動ベクトルに対する他車両30の移動ベクトル45、46の交差位置を演算し、自車両10から交差位置までの距離に応じて制御部107に指示する制御内容が決定される。
【0031】
自車両10の移動ベクトル51は、本実施形態では、3つの区分51a-51cが設定されている。これら3つの区分51a-51cは、自車両10に近い区分の方が衝突までの時間が短く、自車両10から離れるにしたがって衝突までの時間が長くなる。制御部107は、自車両10の移動ベクトル51に対する他車両30の移動ベクトル45の交差位置が自車両10から遠い区分51cのときは自車両10の乗員に警告を行い、一つ手前の区分51bのときは警告と自車両10の減速を行い、最も手前の区分51aのときは警告と自車両10を停車させる制御を行う。
【0032】
図7は、カーブでの他車の割り込みと移動ベクトルのイメージ例を示す図である。
図7には、右カーブの道路21の右レーン22を走行中の自車両10に対して、他車両30が左レーン23から右レーン22に移動して自車両10の前方に割り込もうとしているシーンが示されている。図7に示すシーンでは、他車両30は、自車両10の進行路50に未だ侵入していないが、割り込もうとしている。この割り込みを、本実施形態の車両制御装置11で判定する。
【0033】
自車両10の進行路50は、道路21の右レーン22の上で右にカーブしながら延びる軌跡となり、他車両30の進行路31は、道路21の左レーン23から右レーン22に向かって円弧状に延びる軌跡となる。
【0034】
自車両10の移動ベクトル51は、右レーン22に沿って斜めに延びており、他車両30の移動ベクトル45、46は、左レーン23から右レーン22に向かって斜めに延びている。これらの移動ベクトル51、45、46の各ベクトル長は、図5と同様に、車速に応じてその長さが設定され、TTCに対応している。自車両10の移動ベクトル51は、自車両10の左側からの他車両30の割り込み判定を行うために、自車両10の前部左端から伸びている。他車両30の移動ベクトル45、46は、直方体モデル42の右側後端と右側前端から伸びている。
【0035】
図8は、図7に示す状況において、自車両のカーブ時におけるベクトルが先行他車の移動ベクトルと交差又は非交差する状態を模式的に示す図である。図8(1)に示す例の場合、自車両10の移動ベクトル51は、他車両30の移動ベクトル45と46のうち、移動ベクトル45と交差している。したがって、他車両30の割り込みと判断される。
【0036】
図8(2)は、自車両の移動ベクトルに対して他車両の移動ベクトルが交差する位置について説明する図である。図6(2)と同様に、自車両10の移動ベクトルに対する他車両の移動ベクトルの交差位置を演算する。そして、自車両10から交差位置までの距離に応じて制御部107に指示する制御内容が決定される。
【0037】
図9図11は、他車両が対向車両の場合について説明する図である。
図9には、交差点を直進する自車両10に対して、対向車である他車両30が左折により自車両10の前方に割り込もうとしているシーンが示されている。
【0038】
自車両10の進行路50は、交差点の手前から走行レーン22に沿って直線状に延びる軌跡となり、他車両30の進行路31は、対向車線23の交差点手前から左に向かって円弧状の延びる軌跡となる。他車両30が左折する対向車両の場合、直方体モデル42へのモデル化は、視差画像から他車両30の車体右側の側面を抽出し、側面と直角であることを前提に他車両30の前面を探索する。そして、探索した他車両30の進行方向右側の側面と他車両30の前面に対して直方体形状をフィッティングし、他車両30の直方体モデル42を作成する。
【0039】
そして、他車両の直方体モデル42から他車両の側面の移動ベクトルを計算する。他車両ベクトル計算部105は、他車両30の進行方向右側の側面の前端と後端におけるそれぞれの移動ベクトル45、46を求める。そして、自車両10の移動ベクトル51と、他車両30の移動ベクトル45、46とが互いに交差するか否かが判断され、互いのベクトルが交差する場合に割り込みであると判定される。
【0040】
図10(1)に示す例の場合、自車両10の移動ベクトル51は、他車両30の移動ベクトル45と46のうち、移動ベクトル46と交差している。したがって、他車両30の割り込みと判断される。
【0041】
他車両30の割り込みと判定された場合に、図10(2)に示すように、自車両10の移動ベクトル51に対する他車両30の移動ベクトル46の交差位置を演算し、自車両10から交差位置までの距離に応じて制御部107に指示する制御内容が決定される。
【0042】
図11には、交差点を左折する自車両10に対して、対向車である他車両30が直進して自車両10の前方に他車両30が割り込もうとしているシーンが示されている。
【0043】
自車両10の進行路50は、走行レーン22から走行レーン26に交差点で左に曲がる軌跡となり、他車両の進行路31は交差点の手前から対向レーン23に沿って直線状に延びる軌跡となる。かかる場合の他車両30の直方体モデル42へのモデル化は、視差画像から他車両30の車体左側の側面を抽出し、側面と直角であることを前提に他車両の前面を探索する。そして、探索した他車両30の進行方向左側の側面と他車両30の前面に対して直方体形状をフィッティングし、他車両30の直方体モデル42を作成する。
【0044】
そして、他車両30の直方体モデル42から他車両30の側面の移動ベクトル45、46を計算する。他車両ベクトル計算部105は、他車両30の進行方向左側の側面の前端と後端におけるそれぞれの移動ベクトル45、46を求める。そして、自車両10の移動ベクトル51と、他車両30の移動ベクトル45、46とが互いに交差するか否かに基づいて判断され、互いのベクトルが交差する場合に割り込みであると判定される。
【0045】
図12(1)に示す例の場合、自車両10の移動ベクトル51は、他車両30の移動ベクトル45と46のうち、移動ベクトル46と交差している。したがって、自車両10と他車両30割り込みと判定される。
【0046】
他車両30の割り込みと判定された場合に、図12(2)に示すように、自車両10の移動ベクトル51に対する他車両30の移動ベクトル46の交差位置を演算し、自車両10から交差位置までの距離に応じて制御部107に指示する制御内容が決定される。
【0047】
図13は、本実施形態の車両制御装置による車両制御方法を説明するフローチャートである。
本フローでは、他車両30の割り込みか否かが判定され、その判定結果に応じた内容の車両制御が行われる。まず、車両制御装置11では、カメラセンサ12において物体認識が更新される毎に、割り込み認識の制御フローS401がコールされる。
【0048】
S402では、割り込みが問題になる一定範囲内に対象車両である他車両30が存在するか否かを判定し、一定範囲内に他車両30が存在しない場合には、フローを終了する。一定範囲内に他車両30が存在する場合には、S403で他車両30の直方体推定を行い、他車両30を直方体形状にモデル化した直方体モデル42を作成する。続けてS404で前フレームとの差分から他車両30の直方体モデル42の移動量を計算し、他車両30の直方体モデル42の移動ベクトルを求める。
【0049】
S405では、すべての対象車両の処理が終わったか判定し、処理すべき他車両30が残っていれば再度S403に分岐する。すべての対象車両についての移動ベクトルの計算が終了すると、S406で自車両10の舵角センサ14、車速センサ13、カメラセンサ12、レーン認識センサ等の検出結果に基づいて自車両10の移動ベクトルを求める。
【0050】
S407では、求めた自車両10の移動ベクトル51と他車両30の移動ベクトル45、46の交差判定を行い、交差が無い場合はフローを終了する。一方、自車両10の移動ベクトル51と他車両30の移動ベクトル45、46との交差がある場合は、S409で警告制動の指示を警報装置16やアクチュエータに出力し、フローを終了する。
【0051】
本実施形態の車両制御装置11によれば、他車両30をモデル化し、直方体モデル42の側面42bの移動ベクトル45、46と、自車両10の移動ベクトル51とが交差する場合に、衝突の可能性があるとして、警告や制動などの車両制御を行う。したがって、他車両30が実際に自車両10の走行レーンに侵入する前に、他車両30の割り込みを認識することができ、自車両10の前方への他車両30の割り込みに対して、早期の対応制御が可能となる。
【0052】
特に、自車両10の側方からの他車両30の割り込みは、センサにより自車両10が追跡できていない状況から急に目の前に現れるため、早期の対応制御が難しい。これに対し、本実施形態の車両制御装置11では、他車両30を直方体モデル42にモデル化して直方体モデル42の側面42bの移動ベクトルから割り込みを判断しているので、割り込みの判断を迅速かつ精確に行うことができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、前記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0054】
10:自車両、11:車両制御装置(ECU)、12:カメラセンサ、13:車速センサ、14:舵角センサ、15:アクチュエータ、16:警報装置、30:他車両、41:輪郭、42:直方体モデル、42a:直方体モデルの背面、42b:直方体モデルの側面、45:直方体モデルの側面後端の移動ベクトル、46:直方体モデルの側面前端の移動ベクトル、51:自車両の移動ベクトル、101:進行路推定部、102:自車ベクトル計算部、103:ベクトル交差判定部、104:他車両直方体推定部、105:他車両ベクトル計算部、106:警告回避処理計算部、107:制御部。
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