(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024195
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】媒体搬送装置及び媒体搬送方法
(51)【国際特許分類】
B65H 3/06 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
B65H3/06 350C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126848
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130535
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 明
(74)【代理人】
【識別番号】100183025
【弁理士】
【氏名又は名称】大角 孝一
(72)【発明者】
【氏名】森澤 僚一
(72)【発明者】
【氏名】小川 真史
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA01
3F343FB01
3F343FC01
3F343GA02
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343JA01
3F343KB05
3F343KB18
3F343LA04
3F343LC22
3F343LD29
3F343MB04
3F343MB14
(57)【要約】
【課題】載置部に複数枚重なった状態で載置された媒体を1枚ずつ搬送させる際に先行媒体に続く後続媒体を適切に載置部側に戻す。
【解決手段】給送ローラー251と、給送ローラー251とともに媒体Pを挟持して複数枚重なった媒体Pを分離する分離ローラー252と、駆動力を生成する駆動部210と、給送ローラー251に駆動力を伝達する伝達経路に設けられるワンウェイクラッチ部205と、を備え、ワンウェイクラッチ部205は給送ローラー251が媒体Pを逆給送方向F2に移動させる回転方向R2bに回転することを許容する許容状態とこれを許容しない規制状態とに切り換え可能であり、ワンウェイクラッチ部205を許容状態とし媒体Pが逆給送方向F2に移動する回転方向R3bに分離ローラー252を回転させることが可能に構成されている媒体搬送装置1。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体が載置される載置部と、
前記載置部から前記媒体を給送方向に給送する給送ローラーと、
前記媒体が前記載置部に向かう方向であって前記給送方向とは逆の逆給送方向に移動する回転方向に回転可能であって、前記給送ローラーとともに前記媒体を挟持して複数枚重なった前記媒体を分離する分離ローラーと、
前記給送ローラーと前記分離ローラーとを駆動させる駆動機構部と、
を備え、
前記駆動機構部は、駆動力を生成する駆動部と、前記給送ローラーに前記駆動力を伝達する伝達経路に設けられるワンウェイクラッチ部と、を有し、
前記ワンウェイクラッチ部は、前記給送ローラーが前記媒体を前記逆給送方向に移動させる回転方向に回転することを許容する許容状態と、前記給送ローラーが前記媒体を前記給送方向に移動させる回転方向にのみ回転することを許容する規制状態と、に切り換え可能であり、
前記駆動機構部は、前記ワンウェイクラッチ部を前記許容状態とし、前記媒体が前記逆給送方向に移動する回転方向に前記分離ローラーを回転させることが可能に構成されていることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の媒体搬送装置において、
前記給送方向において前記給送ローラーよりも上流に設けられ、前記載置部から前記給送ローラーに向かって前記媒体を搬送する搬送ローラーを備え、
前記駆動機構部は、前記搬送ローラーを前記媒体に当接する当接状態と前記媒体から離間する離間状態とに切り換える切換部を有し、前記搬送ローラーに前記駆動力を伝達可能であり、前記切換部の前記当接状態と前記離間状態との切り換え動作により前記ワンウェイクラッチ部を前記規制状態と前記許容状態とで切り換えることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項3】
請求項2に記載の媒体搬送装置において、
前記駆動機構部は、前記切換部が前記搬送ローラーを前記当接状態としたときに前記ワンウェイクラッチ部を前記規制状態とし、前記切換部が前記搬送ローラーを前記離間状態としたときに前記ワンウェイクラッチ部を前記許容状態とすることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の媒体搬送装置において、
前記ワンウェイクラッチ部は、スターラチェットを有することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項5】
請求項1に記載の媒体搬送装置において、
前記給送方向において前記給送ローラーよりも下流に設けられ、前記媒体と当接し前記媒体のスキューを補正するスキュー補正部を備え、
前記駆動機構部は、前記給送ローラーにより給送される前記媒体が前記スキュー補正部に当接したとき、前記ワンウェイクラッチ部を前記規制状態とするとともに、前記給送ローラーへの前記駆動力の伝達を遮断することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項6】
請求項5に記載の媒体搬送装置において、
前記給送方向において前記給送ローラーよりも上流に設けられ、前記載置部から前記給送ローラーに向かって前記媒体を搬送する搬送ローラーを備え、
前記駆動機構部は、前記搬送ローラーを前記媒体に当接する当接状態と前記媒体から離間する離間状態とに切り換える切換部を有し、前記搬送ローラーに前記駆動力を伝達可能であり、
前記スキュー補正部は、前記媒体を搬送する搬送ローラー対を有し、
前記切換部は、前記スキュー補正部によりスキューが補正された前記媒体が前記搬送ローラー対により搬送されるとき、前記搬送ローラーを前記当接状態から前記離間状態に切り換えることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の媒体搬送装置において、
前記給送方向において前記スキュー補正部の下流に設けられ、前記媒体に対して記録を行う記録部を備え、
前記駆動機構部は、前記記録部により記録が行われている前記媒体の前記給送方向における後端が前記給送ローラーと前記分離ローラーとの挟持位置を抜けるまで前記給送ローラーへの前記駆動力の伝達を継続することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項8】
媒体が載置される載置部と、
前記載置部から前記媒体を給送方向に給送する給送ローラーと、
前記媒体が前記載置部に向かう方向であって前記給送方向とは逆の逆給送方向に移動する回転方向に回転可能であって、前記給送ローラーとともに前記媒体を挟持して複数枚重なった前記媒体を分離する分離ローラーと、
前記給送ローラーと前記分離ローラーとを駆動させる駆動機構部と、
駆動力を生成する駆動部と、
前記給送ローラーに前記駆動力を伝達する伝達経路に設けられ、前記給送ローラーが前記媒体を前記逆給送方向に移動させる回転方向に回転することを許容する許容状態と、前記給送ローラーが前記媒体を前記給送方向に移動させる回転方向にのみ回転することを許容する規制状態と、に切り換え可能なワンウェイクラッチ部と、
を備える媒体搬送装置の媒体搬送方法であって、
前記給送ローラーと前記分離ローラーとで前記媒体を挟持して前記媒体を前記給送方向に給送する給送工程と、
前記ワンウェイクラッチ部を前記許容状態とし、前記媒体が前記逆給送方向に移動する回転方向に前記分離ローラーを回転させることで、前記媒体のうちの前記給送工程で搬送される先行媒体に続く前記媒体のうちの後続媒体を前記逆給送方向に戻す後続媒体戻し工程と、
を実行することを特徴とする媒体搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体搬送装置及び媒体搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、載置部に複数枚重ねて媒体を載置することができ、複数枚重ねられた媒体を1枚ずつ給送することが可能な媒体搬送装置が使用されている。このような媒体搬送装置のうち、先行媒体に続く後続媒体を載置部側に戻す媒体重送抑制動作が行われる構成のものがある。例えば、特許文献1には、媒体を給送するフィードローラーと、モーターと、モーターからフィードローラーへの駆動力の伝達をオン及びオフする電磁クラッチと、フィードローラーと対向する位置に設けられ先行媒体に続く後続媒体を載置部側に戻すリタードローラーと、を備える画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の画像形成装置は、電磁クラッチをオフにしてフィードローラーを自由回転可能な状態とし、リタードローラーを回転させることで後続媒体を載置部側に戻すことが可能な構成となっている。一方で、特許文献1の画像形成装置は、先行媒体がフィードローラーとリタードローラーとの挟持位置から抜けた後に、リタードローラーに媒体を載置部側に戻す方向に回転力が働くことが考えられる。リタードローラーにはスプリングを有するトルクリミッターが設けられている構成が多く、先行媒体がこの挟持位置から抜けることに伴ってスプリングバックが生じるためである。そしてこの回転力に伴い、自由回転可能な状態となったことでリタードローラーと対向するフィードローラーにも媒体を載置部側に戻す方向に働く回転力が働き、後続媒体が勢いよく載置部側に飛ばされる場合がある。このような、後続媒体が勢いよく載置部側に飛ばされるということを抑制するという観点のみにおいては、フィードローラーに一方向の回転のみを許容するワンウェイクラッチを設けることが考えられる。しかしながら、特許文献1の画像形成装置など従来の構成の媒体搬送装置においては、単にワンウェイクラッチを設けるということだけでは、リタードローラーによって後続媒体を載置部側に適切に戻す構成とすることが困難になるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための、本発明の媒体搬送装置は、媒体が載置される載置部と、前記載置部から前記媒体を給送方向に給送する給送ローラーと、前記媒体が前記載置部に向かう方向であって前記給送方向とは逆の逆給送方向に移動する回転方向に回転可能であって、前記給送ローラーとともに前記媒体を挟持して複数枚重なった前記媒体を分離する分離ローラーと、前記給送ローラーと前記分離ローラーとを駆動させる駆動機構部と、を備え、前記駆動機構部は、駆動力を生成する駆動部と、前記給送ローラーに前記駆動力を伝達する伝達経路に設けられるワンウェイクラッチ部と、を有し、前記ワンウェイクラッチ部は、前記給送ローラーが前記媒体を前記逆給送方向に移動させる回転方向に回転することを許容する許容状態と、前記給送ローラーが前記媒体を前記給送方向に移動させる回転方向にのみ回転することを許容する規制状態と、に切り換え可能であり、前記駆動機構部は、前記ワンウェイクラッチ部を前記許容状態とし、前記媒体が前記逆給送方向に移動する回転方向に前記分離ローラーを回転させることが可能に構成されていることを特徴とする。
【0006】
また、上記課題を解決するための、本発明の媒体搬送方法は、媒体が載置される載置部と、前記載置部から前記媒体を給送方向に給送する給送ローラーと、前記媒体が前記載置部に向かう方向であって前記給送方向とは逆の逆給送方向に移動する回転方向に回転可能であって、前記給送ローラーとともに前記媒体を挟持して複数枚重なった前記媒体を分離する分離ローラーと、前記給送ローラーと前記分離ローラーとを駆動させる駆動機構部と、駆動力を生成する駆動部と、前記給送ローラーに前記駆動力を伝達する伝達経路に設けられ、前記給送ローラーが前記媒体を前記逆給送方向に移動させる回転方向に回転することを許容する許容状態と、前記給送ローラーが前記媒体を前記給送方向に移動させる回転方向にのみ回転することを許容する規制状態と、に切り換え可能なワンウェイクラッチ部と、を備える媒体搬送装置の媒体搬送方法であって、前記給送ローラーと前記分離ローラーとで前記媒体を挟持して前記媒体を前記給送方向に給送する給送工程と、前記ワンウェイクラッチ部を前記許容状態とし、前記媒体が前記逆給送方向に移動する回転方向に前記分離ローラーを回転させることで、前記媒体のうちの前記給送工程で搬送される先行媒体に続く前記媒体のうちの後続媒体を前記逆給送方向に戻す後続媒体戻し工程と、を実行することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施例1に係るプリンターの内部構成を表す正面図。
【
図2】
図1のプリンターの駆動機構部を表す平面図であって、ワンウェイクラッチ部が規制状態にある状態を表す図。
【
図3】
図1のプリンターの駆動機構部を表す平面図であって、ワンウェイクラッチ部が許容状態にある状態を表す図。
【
図4】
図1のプリンターの駆動機構部を表す斜視図であって、ワンウェイクラッチ部が規制状態にある状態を表す図。
【
図5】
図1のプリンターの駆動機構部を表す斜視図であって、ワンウェイクラッチ部が許容状態にある状態を表す図。
【
図6】
図1のプリンターの駆動機構部のブロック図。
【
図7】
図1のプリンターのワンウェイクラッチ部を表す斜視図であって、ワンウェイクラッチ部が規制状態にある状態を表す図。
【
図8】
図1のプリンターのワンウェイクラッチ部を表す斜視図であって、ワンウェイクラッチ部が許容状態にある状態を表す図。
【
図9】
図7及び
図8のプリンターのワンウェイクラッチ部のスターラチェットを表す斜視図。
【
図10】
図7及び
図8のプリンターのワンウェイクラッチ部の係止部を表す斜視図。
【
図11】
図1のプリンターで実行可能な媒体搬送方法としての給送動作(媒体重送抑制動作)を説明するための概略図。
【
図12】
図1のプリンターで実行可能な媒体搬送方法としての給送動作(媒体重送抑制動作)のフローチャート。
【
図13】本発明の実施例2に係るプリンターの駆動機構部のブロック図。
【
図14】本発明の実施例3に係るプリンターの駆動機構部のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を概略的に説明する。
本発明の第1の態様に係る媒体搬送装置は、媒体が載置される載置部と、前記載置部から前記媒体を給送方向に給送する給送ローラーと、前記媒体が前記載置部に向かう方向であって前記給送方向とは逆の逆給送方向に移動する回転方向に回転可能であって、前記給送ローラーとともに前記媒体を挟持して複数枚重なった前記媒体を分離する分離ローラーと、前記給送ローラーと前記分離ローラーとを駆動させる駆動機構部と、を備え、前記駆動機構部は、駆動力を生成する駆動部と、前記給送ローラーに前記駆動力を伝達する伝達経路に設けられるワンウェイクラッチ部と、を有し、前記ワンウェイクラッチ部は、前記給送ローラーが前記媒体を前記逆給送方向に移動させる回転方向に回転することを許容する許容状態と、前記給送ローラーが前記媒体を前記給送方向に移動させる回転方向にのみ回転することを許容する規制状態と、に切り換え可能であり、前記駆動機構部は、前記ワンウェイクラッチ部を前記許容状態とし、前記媒体が前記逆給送方向に移動する回転方向に前記分離ローラーを回転させることが可能に構成されていることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、給送ローラーが媒体を逆給送方向に移動させる回転方向に回転することを許容する許容状態と、給送ローラーが媒体を給送方向に移動させる回転方向にのみ回転することを許容する規制状態と、に切り換え可能なワンウェイクラッチ部を備える。このため、先行媒体が給送ローラーと分離ローラーとの挟持位置から抜けた後に後続媒体が勢いよく載置部側に飛ばされることを抑制しつつ、先行媒体に続く後続媒体を適切に載置部側に戻すことができる。
【0010】
本発明の第2の態様に係る媒体搬送装置は、第1の態様において、前記給送方向において前記給送ローラーよりも上流に設けられ、前記載置部から前記給送ローラーに向かって前記媒体を搬送する搬送ローラーを備え、前記駆動機構部は、前記搬送ローラーを前記媒体に当接する当接状態と前記媒体から離間する離間状態とに切り換える切換部を有し、前記搬送ローラーに前記駆動力を伝達可能であり、前記切換部の前記当接状態と前記離間状態との切り換え動作により前記ワンウェイクラッチ部を前記規制状態と前記許容状態とで切り換えることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、駆動機構部は、搬送ローラーを媒体に当接する当接状態と媒体から離間する離間状態とに切り換える切換部を有し、搬送ローラーに駆動力を伝達可能であり、切換部の当接状態と離間状態との切り換え動作によりワンウェイクラッチ部を規制状態と許容状態とで切り換える。すなわち、搬送ローラーの状態を切り換える動力を使ってワンウェイクラッチ部の状態を切り換えることができる。このため、装置構成を簡易化することができる。
【0012】
本発明の第3の態様に係る媒体搬送装置は、第2の態様において、前記駆動機構部は、前記切換部が前記搬送ローラーを前記当接状態としたときに前記ワンウェイクラッチ部を前記規制状態とし、前記切換部が前記搬送ローラーを前記離間状態としたときに前記ワンウェイクラッチ部を前記許容状態とすることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、駆動機構部は、切換部が搬送ローラーを当接状態としたときにワンウェイクラッチ部を規制状態とし、切換部が搬送ローラーを離間状態としたときにワンウェイクラッチ部を許容状態とする。このため、先行媒体に続く後続媒体を載置部側に戻す際に搬送ローラーを離間状態とすることで、後続媒体の逆給送方向の先端が搬送ローラーに引っ掛かってジャムやスキューが発生することを抑制することができる。
【0014】
本発明の第4の態様に係る媒体搬送装置は、第1から第3のいずれか1つの態様において、前記ワンウェイクラッチ部は、スターラチェットを有することを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、ワンウェイクラッチ部は、スターラチェットを有する。このような構成とすることで、駆動機構部を小型化することができ、ひいては、装置を小型化することができる。
【0016】
本発明の第5の態様に係る媒体搬送装置は、第1から第4のいずれか1つの態様において、前記給送方向において前記給送ローラーよりも下流に設けられ、前記媒体と当接し前記媒体のスキューを補正するスキュー補正部を備え、前記駆動機構部は、前記給送ローラーにより給送される前記媒体が前記スキュー補正部に当接したとき、前記ワンウェイクラッチ部を前記規制状態とするとともに、前記給送ローラーへの前記駆動力の伝達を遮断することを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、駆動機構部は、給送ローラーにより給送される媒体がスキュー補正部に当接したとき、ワンウェイクラッチ部を規制状態とするとともに、給送ローラーへの駆動力の伝達を遮断する。このような構成とすることで、先行媒体がスキュー補正部に当接した後に該先行媒体に対して給送方向に給送する力が加わり続けて該先行媒体が損傷することやジャムが発生することを抑制することができる。
【0018】
本発明の第6の態様に係る媒体搬送装置は、第5の態様において、前記給送方向において前記給送ローラーよりも上流に設けられ、前記載置部から前記給送ローラーに向かって前記媒体を搬送する搬送ローラーを備え、前記駆動機構部は、前記搬送ローラーを前記媒体に当接する当接状態と前記媒体から離間する離間状態とに切り換える切換部を有し、前記搬送ローラーに前記駆動力を伝達可能であり、前記スキュー補正部は、前記媒体を搬送する搬送ローラー対を有し、前記切換部は、前記スキュー補正部によりスキューが補正された前記媒体が前記搬送ローラー対により搬送されるとき、前記搬送ローラーを前記当接状態から前記離間状態に切り換えることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、切換部は、スキュー補正部によりスキューが補正された媒体が搬送ローラー対により搬送されるとき、搬送ローラーを当接状態から離間状態に切り換える。すなわち、スキューが補正された媒体が搬送ローラー対により搬送されるときに搬送ローラーによる媒体の搬送を行わないようにする。このように、媒体の搬送に拘る搬送部の数を減らすことで搬送負荷を減らすことができる。
【0020】
本発明の第7の態様に係る媒体搬送装置は、第5または第6の態様において、前記給送方向において前記スキュー補正部の下流に設けられ、前記媒体に対して記録を行う記録部を備え、前記駆動機構部は、前記記録部により記録が行われている前記媒体の前記給送方向における後端が前記給送ローラーと前記分離ローラーとの挟持位置を抜けるまで前記給送ローラーへの前記駆動力の伝達を継続することを特徴とする。
【0021】
記録部により記録が行われている途中の状態で給送ローラーと分離ローラーとの挟持位置を抜ける前の媒体に給送ローラーへ駆動力の伝達が行われなくなると、単位時間当たりの搬送距離が急変する虞があり、記録品質が低下する虞がある。しかしながら、本態様によれば、駆動機構部は、記録部により記録が行われている媒体の給送方向における後端が給送ローラーと分離ローラーとの挟持位置を抜けるまで給送ローラーへの駆動力の伝達を継続する。このため、記録部により記録が行われている途中の状態で単位時間当たりの搬送距離が急変することを抑制でき、記録品質が低下することを抑制することができる。
【0022】
本発明の第8の態様に係る媒体搬送方法は、媒体が載置される載置部と、前記載置部から前記媒体を給送方向に給送する給送ローラーと、前記媒体が前記載置部に向かう方向であって前記給送方向とは逆の逆給送方向に移動する回転方向に回転可能であって、前記給送ローラーとともに前記媒体を挟持して複数枚重なった前記媒体を分離する分離ローラーと、前記給送ローラーと前記分離ローラーとを駆動させる駆動機構部と、駆動力を生成する駆動部と、前記給送ローラーに前記駆動力を伝達する伝達経路に設けられ、前記給送ローラーが前記媒体を前記逆給送方向に移動させる回転方向に回転することを許容する許容状態と、前記給送ローラーが前記媒体を前記給送方向に移動させる回転方向にのみ回転することを許容する規制状態と、に切り換え可能なワンウェイクラッチ部と、を備える媒体搬送装置の媒体搬送方法であって、前記給送ローラーと前記分離ローラーとで前記媒体を挟持して前記媒体を前記給送方向に給送する給送工程と、前記ワンウェイクラッチ部を前記許容状態とし、前記媒体が前記逆給送方向に移動する回転方向に前記分離ローラーを回転させることで、前記媒体のうちの前記給送工程で搬送される先行媒体に続く前記媒体のうちの後続媒体を前記逆給送方向に戻す後続媒体戻し工程と、を実行することを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、給送ローラーが媒体を逆給送方向に移動させる回転方向に回転することを許容する許容状態と、給送ローラーが媒体を給送方向に移動させる回転方向にのみ回転することを許容する規制状態と、に切り換え可能なワンウェイクラッチ部を備え、媒体重送抑制動作として、ワンウェイクラッチ部を許容状態とし、媒体が逆給送方向に移動する回転方向に分離ローラーを回転させることで、後続媒体を逆給送方向に戻す後続媒体戻し工程を実行する。このため、先行媒体が給送ローラーと分離ローラーとの挟持位置から抜けた後に後続媒体が勢いよく載置部側に飛ばされることを抑制しつつ、先行媒体に続く後続媒体を適切に載置部側に戻すことができる。
【0024】
[実施例1]
以下、本発明を具体的に説明する。最初に、本発明の媒体搬送装置であって記録装置でもある実施例1のインクジェットプリンター1について説明する。以下においてインクジェットプリンター1は、プリンター1と略称する。なお、各図において示すX-Y-Z座標系は直交座標系であって、Y軸方向が媒体Pの搬送方向と交差する方向、即ち媒体幅方向であり、また装置奥行き方向でもある。Y軸方向のうち+Y方向は装置前面から装置背面に向かう方向であり、-Y方向は装置背面から装置前面に向かう方向である。
【0025】
X軸方向は装置幅方向であり、プリンター1の操作者から見て+X方向が左側、-X方向が右側となる。Z軸方向は鉛直方向即ち装置高さ方向であり、+Z方向が上方向、-Z方向が下方向となる。以下では、媒体Pが送られていく方向を「下流」と言い、またその反対方向を「上流」と言う場合がある。また各図においては、媒体搬送経路を破線で示している。プリンター1において媒体Pは、破線で示す媒体搬送経路を通って搬送される。
【0026】
図1で表されるように、プリンター1は、装置本体2の筐体部16と、筐体部16に対してZ軸方向に延びる不図示の軸を回動軸として回動可能な扉部17と、を備えている。また、プリンター1は装置本体2の下部にプリント用紙などの媒体Pを収容する第1媒体カセット3を備えており、更に装置本体2の下側に増設ユニット6を連結可能に構成されている。増設ユニット6を連結した場合、第1媒体カセット3の下に第2媒体カセット4及び第3媒体カセット5が位置する。各媒体カセットから送り出された媒体Pは、プリンター1の内部において破線で示す媒体搬送経路を搬送される。
【0027】
各媒体カセットに対しては、収容された媒体Pを-X方向に送り出すピックローラーが設けられている。ピックローラー21、22、23は、それぞれ第1媒体カセット3、第2媒体カセット4、及び第3媒体カセット5に対して設けられたピックローラーである。また各媒体カセットに対しては、-X方向に送り出された媒体Pを、斜め上方向に給送する給送ローラー対が設けられている。給送ローラー対25、26、27は、それぞれ第1媒体カセット3、第2媒体カセット4、及び第3媒体カセット5に対して設けられた給送ローラー対である。なお、以下では「ローラー対」とは、特に説明しない限り後述するモーター210によって駆動される駆動ローラーと、この駆動ローラーに接して従動回転する従動ローラーとで構成されるものとする。
【0028】
第3媒体カセット5から送り出された媒体Pは、搬送ローラー対29、28によって反転ローラー39に送られる。また第2媒体カセット4から送り出された媒体Pは、搬送ローラー対28によって反転ローラー39に送られる。媒体Pは反転ローラー39と従動ローラー40とで挟持され、搬送ローラー対31へ送られる。第1媒体カセット3から送り出された媒体Pは、反転ローラー39を経ずに搬送ローラー対31へ送られる。ここで、搬送ローラー対31はスキュー補正部の役割をしている。なお、反転ローラー39の近傍に設けられた供給ローラー19及び分離ローラー20は、不図示の供給トレイから媒体Pを送り出すローラー対である。
【0029】
搬送ローラー対31から送り力を受ける媒体Pは、記録部の一例であるラインヘッド51と搬送ベルト13との間、つまりラインヘッド51と対向する記録位置に送られる。なお、以下では搬送ローラー対31から搬送ローラー対32までの媒体搬送経路を記録時搬送経路T1と称する。
【0030】
ラインヘッド51はヘッドユニット50を構成する。ラインヘッド51は、媒体Pの面に液体の一例であるインクを吐出して記録を実行する。ラインヘッド51は、インクを吐出するノズルが媒体幅方向の全域をカバーする様に構成されたインク吐出ヘッドであり、媒体幅方向への移動を伴わないで媒体幅全域に記録が可能なインク吐出ヘッドとして構成されている。但し、インク吐出ヘッドはこれに限られず、キャリッジに搭載されて媒体幅方向に移動しながらインクを吐出するタイプであってもよい。また、記録部として、例えば熱転写方式の記録部など、インク吐出ヘッド以外の構成のものを使用することも可能である。
【0031】
プリンター1は、液体収容部としてのインク収容部61、62、63、64を備えている。ラインヘッド51から吐出されるインクは、各インク収容部から、図示を省略するチューブを介してラインヘッド51へと供給される。各インク収容部は、着脱可能に設けられている。また、プリンター1は、ラインヘッド51から不図示のフラッシングキャップに向けてメンテナンスの為に吐出された、廃液としてのインクを貯留する廃液収容部11を備えている。
【0032】
搬送ベルト13は、プーリー14及びプーリー15に掛け回される無端ベルトであって、プーリー14及びプーリー15のうち少なくとも一方が不図示のモーターにより駆動されることで回転する。媒体Pは、搬送ベルト13のベルト面に吸着されつつラインヘッド51と対向する位置を搬送される。搬送ベルト13に対する媒体Pの吸着は、エアー吸引方式や静電吸着方式などの公知の吸着方式を採用できる。
【0033】
ラインヘッド51と対向する位置を通る記録時搬送経路T1は、水平方向及び鉛直方向に対して角度を成し、上向きに媒体Pを搬送する構成である。この上向きの搬送方向は、
図1において-X方向成分と+Z方向成分とを含む方向であり、このような構成により、プリンター1の水平方向寸法を抑制できる。
【0034】
ラインヘッド51により第1面に記録が行われた媒体Pは、搬送ベルト13の下流に位置する搬送ローラー対32により、更に上方向に送られる。搬送ローラー対32の下流にはフラップ41が設けられており、このフラップ41によって媒体Pの搬送方向が切り換えられる。媒体Pをそのまま排出する場合は、媒体Pの搬送経路はフラップ41によって上方の搬送ローラー対35に向かう様に切り換えられ、媒体Pは搬送ローラー対35によって排出トレイ8に向けて排出される。
【0035】
媒体Pの第1面に加えて更に該第1面とは反対の第2面に記録を行う場合、媒体Pの搬送方向は、フラップ41によって分岐位置K1に向けられる。そして媒体Pは分岐位置K1を通り、スイッチバック経路T2に入る。本実施例においてスイッチバック経路T2は分岐位置K1から上側の媒体搬送経路とする。スイッチバック経路T2には搬送ローラー対36、37が設けられている。スイッチバック経路T2に入った媒体Pは、搬送ローラー対36、37によって上方向に搬送され、そして媒体Pの後端エッジが分岐位置K1を通過したら、搬送ローラー対36、37の回転方向が切り換えられ、これにより媒体Pは下方向に搬送される。なお、「上方向」とは鉛直上方向のみを意味するのではなく、鉛直上方向のベクトル成分を含んでいればよい意味であり、「下方向」とは鉛直下方向のみを意味するのではなく、鉛直下方向のベクトル成分を含んでいればよい意味である。
【0036】
スイッチバック経路T2には、反転経路T3が接続している。本実施例において反転経路T3は、分岐位置K1から、搬送ローラー対33、34、並びに、反転ローラー39を通って合流地点S1での媒体搬送経路とする。分岐位置K1から下方向に搬送された媒体Pは搬送ローラー対33、34から送り力を受けて反転ローラー39に到達し、反転ローラー39によって湾曲反転され、搬送ローラー対31に向けて送られる。
【0037】
搬送ローラー対31などにより搬送されて再びラインヘッド51と対向する位置に送られた媒体Pは、既に記録が行われた第1面とは反対の第2面がラインヘッド51と対向する。これにより、媒体Pの第2面に対しラインヘッド51による記録が可能となる。ここで、第1媒体カセット3から搬送ローラー対31までの媒体搬送経路を給送経路T0と称する。
【0038】
次に、
図1に加え、
図2から
図12を参照して、本実施例のプリンター1の要部である駆動機構部100について説明する。駆動機構部100としての本実施例の駆動機構部100Aは、媒体Pが載置される載置部としての第1媒体カセット3に載置された媒体Pをラインヘッド51による記録位置まで搬送する領域における各ローラーの駆動及び位置の変更をする機構である。
図1で表されるように、本実施例のプリンター1は第1媒体カセット3から記録位置であるラインヘッド51と対向する位置までの距離が近い。このため、第1媒体カセット3から記録位置まで媒体Pを搬送する際に、ピックローラー21、給送ローラー対25、搬送ローラー対31及び搬送ベルト13のうちの複数の搬送部により同時に媒体Pが搬送されることとなる。本発明は、このように複数の搬送部により同時に媒体Pが搬送されることとなる例えば小型の媒体搬送装置において複数の搬送部により同時に媒体Pが搬送されることによる弊害を解決することが可能となっている。
【0039】
図6などで表されるように、本実施例の駆動機構部100Aは給送ローラー対25を備えている。ここで、給送ローラー対25は、第1媒体カセット3から媒体Pを
図1の給送方向F1に給送する給送ローラー251と、給送ローラー251とともに媒体Pを挟持して複数枚重なった媒体Pを分離する分離ローラー252と、を有している。給送ローラー251は、モーター210の駆動力により、
図11の左から2番目の図などで表されるように、媒体Pが給送方向F1に移動する回転方向である回転方向R2aに回転可能である。また、分離ローラー252は、モーター210の駆動力により、
図11の一番右の図で表されるように、媒体Pが第1媒体カセット3に向かう方向であって給送方向F1とは逆の逆給送方向F2に移動する回転方向R3bに回転可能である。ただし、分離ローラー252にはトルクリミッターが設けられており、トルクリミッターの上限を超えると、分離ローラー252は回転軸217の回転に従動しなくなる。
図11の左から2番目の図などで表されるように、給送ローラー251が回転方向R2aに回転するとトルクリミッターの上限を超える構成となっており、給送ローラー251の回転方向R2aの回転に従動して回転方向R3aに分離ローラー252は回転する。
【0040】
なお、
図6及び
図11などで表されるように、本実施例の駆動機構部100Aは、給送ローラー対25に加え、給送方向F1において給送ローラー251よりも上流に設けられ、第1媒体カセット3から給送ローラー251に向かって媒体Pを搬送する搬送ローラーとしいてのピックローラー21を有している。さらに、
図11で表されるように、本実施例の駆動機構部100Aは、スキュー補正部の役割を兼ねる搬送ローラー対31を構成するレジストローラー311と従動ローラー312とを有する。ここで、ピックローラー21は、モーター210の駆動力により、
図11の左から2番目の図などで表されるように、媒体Pが給送方向F1に移動する回転方向である回転方向R1に回転可能である。また、レジストローラー311は、
図11の左から4番目の図などで表されるように、モーター210の駆動力により、媒体Pが給送方向F1に移動する回転方向である回転方向R5に回転可能である。
【0041】
図6を参照してさらに詳細に説明すると、本実施例の駆動機構部100Aでは、モーター210をオンにすると、回転軸216に取り付けられた歯車211が回転し、回転軸216も歯車211の回転に伴って回転する。回転軸216には、歯車209及び歯車212が取り付けられており、回転軸216の回転に伴って歯車209及び歯車212も回転する。ただし、歯車209はクラッチCを有しており、クラッチCをオフにすることで回転軸216が回転している状態でも歯車209を回転させないようにすることができる。
【0042】
歯車212は、分離ローラー252の回転軸217に取り付けられた歯車213と噛み合う位置に配置されており、歯車212が回転すると歯車213も回転し、さらに、回転軸217及び分離ローラー252も回転する。回転軸217のモーター210をオンにすることに伴う回転方向は
図11における回転方向R4である。なお、
図11の1番右の図で表されるように、回転軸217の回転方向R4は分離ローラー252の回転方向R3bに対応する。
【0043】
ここで、上記のように、分離ローラー252にはトルクリミッターが設けられている。本実施例の駆動機構部100Aにおけるトルクリミッターは内部にコイルバネが収容されており、回転軸217が回転方向R4に回転すると分離ローラー252は回転方向R3bに供回りするが、分離ローラー252に外力が加わりこの外力がトルクリミッターの上限を超えるとトルクリミッターの内部のコイルバネが有効に働かなくなる。すなわち、給送ローラー251がモーター210の駆動力により回転方向R2aに回転すると、トルクリミッターの上限を超えることで、分離ローラー252は回転方向R3aに回転する。ただし、外力がなくなると、コイルバネが元の形状に戻ろうとしてスプリングバックし、分離ローラー252は回転方向R3bに回転する。
【0044】
媒体Pが給送ローラー251と分離ローラー252とで挟持された状態で分離ローラー252のコイルバネがスプリングバックすると、媒体Pは給送方向F1とは逆の逆給送方向F2に移動する。このようなことが生じると、記録中の媒体Pにおいて記録が乱れることや、スキュー補正の精度が低下することなどが生じる。そこで、本実施例の駆動機構部100Aでは、記録中の媒体Pの後端が、分離ローラー252を抜けるまで給送方向F1の下流にある搬送ローラー対31などとともに給送ローラー対25を用いてセパレート搬送を行うことで、トルクリミッターのスプリングバックによる記録の乱れなどを抑制する。複数の媒体Pを搬送する際、先行媒体P1と連続して後行媒体P2が給送される虞があるため、先行媒体P1の給送が終了してから後行媒体P2を給送する。このため、本実施例の駆動機構部100Aは、歯車209のクラッチCをオフにし、給送ローラー251を自由回転可能状態に切り換えることで、モーター210を駆動させたままの状態とするアクティブリタードにより先行媒体P1を給送方向F1に移動させるとともに後行媒体P2を一旦逆給送方向F2に移動させる構成としている。
【0045】
詳細には、本実施例の駆動機構部100Aは、
図2、
図3及び
図6で表されるように、給送ローラー251の回転軸215に、詳細は
図10で表される係止部203と詳細は
図9で表されるスターラチェット204とからなるワンウェイクラッチ部205を有している。そして、本実施例の駆動機構部100Aは、ワンウェイクラッチ部205をオンまたはオフすることで、ワンウェイクラッチ部205を、給送ローラー251が給送方向F1とは逆の逆給送方向F2に媒体Pが移動する
図11の一番右の図で表される回転方向R2bに回転することを規制する規制状態と、給送ローラー251が自由回転可能であり回転方向R2bの回転を許容する許容状態と、を切替える。さらには、給送ローラー251は、ワンウェイクラッチ部205が規制状態で媒体Pを所定量搬送し、レジストローラー311及びレジストローラー311に設けられたゲート部材311aに突当ててスキュー補正を行う。この際、歯車209のクラッチCはオフ状態であるが、回転軸215は、ワンウェイクラッチ部205が規制状態のため、トルクリミッターのスプリングバックによる逆給送方向F2に媒体Pが移動する媒体戻りが抑制され、スキュー補正精度の低下を抑制する。このように、本実施例の駆動機構部100Aは、ワンウェイクラッチ部205をオンまたはオフすることで、規制状態と許容状態とに切替え可能に構成されている。このことで、複数の媒体Pを搬送する際に先行媒体P1の給送が終了してから一旦戻した後行媒体P2を給送することが好適にできるとともに、記録中の媒体Pにおいて記録が乱れることとスキュー補正の精度が低下することとを抑制することができる。また、本実施例の駆動機構部100Aは、ワンウェイクラッチ部205をオンすることで規制状態とし、さらに、歯車209のクラッチCをオフすることで、モーター210の駆動を停止させることなく、トルクリミッターのスプリングバックによるスキュー補正の際の媒体戻りを抑制できる。
【0046】
また、
図2から
図6などで表されるように、本実施例の駆動機構部100Aは、ピックローラー21を有し、ピックローラー21の回転軸214に設けられた歯車206は、別の歯車を介して給送ローラー251との回転軸215に設けられた歯車207と係合している。このため、ピックローラー21と給送ローラー251とは連動して回転することができる。なお、
図6で表されるように、回転軸215には歯車209と係合する歯車208とワンウェイクラッチ部205とが設けられており、モーター210の駆動力は歯車209及び歯車208などを介して給送ローラー251とピックローラー21とに伝えられる。ただし、上記のように、歯車209はクラッチCを有しているので歯車209のクラッチCをオフすることでモーター210の駆動力を給送ローラー251とピックローラー21とに伝えないようにすることもできる。
【0047】
また、
図2から
図6などで表されるように、本実施例の駆動機構部100Aはソレノイド201を有している。また、
図2及び
図3で表されるように、ソレノイド201には軸部201aが取り付けられており、軸部201aにはワンウェイクラッチ部205の係止部203及びピック離間カム202が取り付けられている。そして、ソレノイド201が軸部201aを-Y方向に沿って移動させることで、
図2で表されるようにワンウェイクラッチ部205はオンとなり、
図4で表されるようにピック離間カム202が当接部218に接触しない位置まで下方に移動することでピック離間カム202はピックローラー21を媒体Pと接触可能な位置まで下方に移動させる。一方、ソレノイド201が軸部201aを+Y方向に沿って移動させることで、
図3で表されるようにワンウェイクラッチ部205はオフとなり、
図5で表されるようにピック離間カム202が当接部218に当接して当接部218とともに上方に移動することでピック離間カム202はピックローラー21を媒体Pと接触しない位置まで上方に移動させる。
【0048】
なお、本実施例の駆動機構部100Aにおいては、給送ローラー251とピックローラー21とはともに給送経路T0の上方に設けられている。このため、給送ローラー251とピックローラー21とを近傍に配置することが可能であり、このような構成であるため、ピックローラー21の離間機構であるピック離間カム202とワンウェイクラッチ部205とを同じアクチュエータであるソレノイド201で切替えることが容易となっており、プリンター1の小型化を可能にしている。
【0049】
ここで、
図7から
図10を参照して、ワンウェイクラッチ部205の詳細な構成について説明する。
図7及び
図8で表されるように、本実施例のワンウェイクラッチ部205は、
図9で表されるスターラチェット204と、
図10で表される係止部203と、を有している。
図7及び
図8で表されるように、スターラチェット204と係止部203とは、Y軸方向において対向しており、スターラチェット204の対向面204bの周囲近傍には+Y方向に突出した歯204aが形成され、係止部203の対向面203bの周囲近傍には-Y方向に突出した歯204aと係合する突起部203aが形成されている。
【0050】
ここで、係止部203は、ソレノイド201によりY軸方向に沿って移動可能な構成であるが、不図示のフレームなどと当接していることでY軸方向を回転軸としては回転しない構成となっている。一方、スターラチェット204は、
図7で表されるようにワンウェイクラッチ部205がオン状態の際、Y軸方向を回転軸として係止部203に対して回転方向R6aには自由回転可能であるが、係止部203に対して回転方向R6bには自由回転しない構成となっている。これは、歯204aは回転方向R6aにおいて+Y方向において徐々に低くなる構成であるとともに、突起部203aは-Y方向において徐々に高くなる構成であるためである。このため、スターラチェット204が係止部203に対して回転方向R6aに回転する際は歯204aが突起部203aに対して引っ掛からないが、スターラチェット204が係止部203に対して回転方向R6bに回転する際は歯204aが突起部203aに対して引っ掛かる。すなわち、ワンウェイクラッチ部205は、
図7で表されるようにオン状態の際に、スターラチェット204が係止部203に対して回転方向R6aのみのワンウェイのみに自由回転可能になる。なお、ワンウェイクラッチ部205は、
図8で表されるようにワンウェイクラッチ部205がオフ状態の際は、歯204aは突起部203aと接触していないので、スターラチェット204は係止部203に対して回転方向R6a及び回転方向R6bの両方に自由回転可能になる。
【0051】
次に、
図11及び
図12を参照して、本実施例のプリンター1で実行可能な媒体搬送方法としての給送動作の一例を説明する。モーター210をオンにしてアクティブリタードをオンにすることで本実施例の媒体搬送方法を開始すると、最初に、
図12で表されるように、ステップS110のピック当接工程を実行する。
【0052】
ステップS110のピックローラー当接工程では、ソレノイド201をオンにすることでピックローラー21を媒体Pに当接させる。なお、ソレノイド201がオンになることでワンウェイクラッチ部205がオンとなり、給送ローラー251は回転方向R2bに自由回転しない状態となる。
図11の一番左の図は、ステップS110のピックローラー当接工程の実行開始時の駆動機構部100Aの状態を表している。この状態においては、歯車209のクラッチCはオフとなっており、モーター210はオンとなっており、ワンウェイクラッチ部205はオンとなっており、レジストローラー311は回転していない状態となっており、回転軸217は回転方向R4に回転している状態となっている。なお、ピックローラー21及び給送ローラー251は回転していない状態となっており、給送ローラー251が回転方向R2bに自由回転しない状態となっていることで、給送ローラー251に当接する分離ローラー252も回転していない状態となっている。
【0053】
次に、ステップS120の1次給送工程では、歯車209のクラッチCをオンにする。すると、これに伴い、
図11の左から2番目の図で表されるように、ピックローラー21は回転方向R1に回転し、給送ローラー251は回転方向R2aに回転する。なお、回転軸217は回転方向R4に回転している状態となっているものの、分離ローラー252は、給送ローラー251の回転に伴って回転方向R3aに回転する。ステップS120の1次給送工程を実行することで媒体Pのうちの先行媒体P1が給送される。
【0054】
次に、ステップS130のスキュー補正工程では、
図11の左から3番目の図で表されるように、先行媒体P1の先端をレジストローラー311及びレジストローラー311に設けられたゲート部材311aに突き当ててスキュー補正を行う。本実施例のプリンター1は、不図示の媒体センサーを備えており、媒体センサーの検出結果を利用して先行媒体P1の先端が所定時間レジストローラー311及びゲート部材311aに突き当てられたと判断した後に歯車209のクラッチCをオフにする。歯車209のクラッチCがオフになったことに伴い、ピックローラー21及び給送ローラー251はモーター210の駆動力による回転をしていない状態となる。なお、ワンウェイクラッチ部205がオンとなっていることでワンウェイクラッチ部205は規制状態となっているため、給送ローラー251は回転方向R3bに自由回転しない状態となっており、給送ローラー251に当接される分離ローラー252は回転軸217が回転方向R4に回転している状態となっているにもかかわらず回転方向R3bには回転しない状態となっており、トルクリミッターのスプリングバックによる先行媒体P1の媒体戻りは抑制されている。このように、先行媒体P1の先端が所定時間レジストローラー311及びゲート部材311aに突き当てられることで、先行媒体P1の先端がレジストローラー311及びゲート部材311aに倣い、スキューが補正される。
【0055】
次に、ステップS140の2次給送工程では、
図11の左から4番目の図で表されるように、レジストローラー311を回転方向R5に回転させ、また、歯車209のクラッチCをオンにする。歯車209のクラッチCをオンにすることで、ピックローラー21は回転方向R1に回転し、給送ローラー251は回転方向R2aに回転する。また、分離ローラー252は給送ローラー251の回転に伴って回転方向R3aに回転する。ステップS140の2次給送工程を実行することで媒体Pのうちの先行媒体P1がさらに給送される。
【0056】
次に、ステップS150のピックローラー離間工程では、
図11の左から5番目の図で表されるように、ピックローラー21を媒体Pから離間させる。具体的には、ソレノイド201をオフにすることでピックローラー21を媒体Pから離間させる。なお、ソレノイド201がオフになることでワンウェイクラッチ部205がオフとなり、ワンウェイクラッチ部205は許容状態となる。ステップS150のピックローラー離間工程において、レジストローラー311が回転方向R5に回転することで媒体Pのうちの先行媒体P1はさらに給送されるが、この際、ピックローラー21による給送が行われなくなる。
【0057】
次に、ステップS160の分離ローラー抜け工程では、
図11の左から6番目の図で表されるように、先行媒体P1の後端が給送ローラー251と分離ローラー252との挟持位置を抜けるまでは、歯車209のクラッチCをオンにした状態を継続して先行媒体P1を給送する。ステップS160の分離ローラー抜け工程の開始前にはすでに、先行媒体P1の先端近くではもうすでに記録が開始されているが、記録中に先行媒体P1の給送ローラー251による給送が行われなくなって給送ローラー対25により先行媒体P1に対して記録中に逆給送方向F2に力が加わることが無いようにしている。記録中に給送ローラー対25により逆給送方向F2に力が加わると媒体Pの搬送速度が急に変化して記録される画像にバンド状のムラなどが発生する虞があるためである。なお、先行媒体P1の後端が給送ローラー251と分離ローラー252との挟持位置を抜けたことは、不図示の媒体センサーの検出結果などを利用することができる。
【0058】
最後に、ステップS170の媒体戻し工程では、
図11の一番右の図で表されるように、ステップS160の分離ローラー抜け工程において先行媒体P1に引き続いて給送方向F1に給送された後行媒体P2を、逆給送方向F2に戻す。具体的には、歯車209のクラッチをオフにする。歯車209のクラッチがオフになることでモーター210の駆動力は給送ローラー251に伝わらなくなる。一方、モーター210はステップS110からステップS170の間中ずっとオンになっているので、分離ローラー252の回転軸217は回転方向R4にずっと回転している状態となっている。モーター210の駆動力は給送ローラー251に伝わらなくなっているので、給送ローラー251から分離ローラー252に回転力は伝わらない。さらに、給送ローラー251は回転方向R3bに自由回転可能な状態となっている。一方、分離ローラー252の回転軸217は回転方向R4にずっと回転しているので回転軸217の回転に伴って分離ローラー252は回転方向R3bに回転し、これに伴って給送ローラー251は回転方向R2bに回転する。このため、給送ローラー251と分離ローラー252とで挟持されている状態の後行媒体P2は逆給送方向F2に戻る。なお、後行媒体P2を改めて給送する場合は、ステップS110からステップS170まで本フローチャートの各フローを繰り返す。
【0059】
上記のように、本実施例の駆動機構部100Aは、駆動力を生成する駆動部としてのモーター210と、給送ローラー251に駆動力を伝達する伝達経路に設けられるワンウェイクラッチ部205と、を有している。ここで、ワンウェイクラッチ部205は、給送ローラー251が媒体Pを逆給送方向F2に移動させる回転方向R2bに回転することを許容する許容状態と、給送ローラー251が媒体Pを給送方向F1に移動させる回転方向にのみ回転することを許容する規制状態と、に切り換え可能である。そして、本実施例の駆動機構部100Aは、ワンウェイクラッチ部205を許容状態とし、媒体Pが逆給送方向F2に移動する回転方向R3bに分離ローラー252を回転させることが可能に構成されている。本実施例の駆動機構部100Aは、このような構成であるため、先行媒体P1が給送ローラー251と分離ローラー252との挟持位置から抜けた後に後続媒体P2が勢いよく載置部側に飛ばされることを抑制しつつ、先行媒体P1に続く後続媒体P2を適切に第1媒体カセット3側に戻すことができる。
【0060】
なお、本実施例は上記のようにモーター210をオンすることに伴い分離ローラー252の回転軸217が媒体Pを逆給送方向F2に移動させる回転方向R4に回転し続けるアクティブリタードであるが、このような構成に限定されない。先行媒体P1に続く後続媒体P2を第1媒体カセット3側に戻す際に分離ローラー252を回転させるようにモーター210を駆動させる構成や、先行媒体P1に続く後続媒体P2を第1媒体カセット3側に戻す際に分離ローラー252を回転させるモーター210に対して分離ローラー252を接続させる構成、などとしてもよい。
【0061】
また、本実施例のプリンター1を使用して、媒体重送抑制動作として、ステップS120及びステップS140に対応し、給送ローラー251と分離ローラー252とで媒体Pを挟持して媒体Pを給送方向F1に給送する給送工程と、ステップS170に対応し、ワンウェイクラッチ部205を許容状態とし、媒体Pが逆給送方向F2に移動する回転方向R3bに分離ローラー252を回転させることで、媒体Pのうちの給送工程で搬送される先行媒体P1に続く媒体Pのうちの後続媒体P2を逆給送方向F2に戻す後続媒体戻し工程と、を実行する媒体搬送方法を実行することができる。このような媒体搬送方法を実行することで、先行媒体P1が給送ローラー251と分離ローラー252との挟持位置から抜けた後に後続媒体P2が勢いよく第1媒体カセット3側に飛ばされることを抑制しつつ、先行媒体P1に続く後続媒体P2を適切に第1媒体カセット3側に戻すことができる。
【0062】
また、上記のように、本実施例のプリンター1は、給送方向F1において給送ローラー251よりも上流に設けられ、第1媒体カセット3から給送ローラー251に向かって媒体Pを搬送する搬送ローラーとしてのピックローラー21を備えている。そして、本実施例の駆動機構部100Aは、ピックローラー21を媒体Pに当接する当接状態と媒体Pから離間する離間状態とに切り換える切換部としてのソレノイド201を有し、ピックローラー21に駆動力を伝達可能であり、ソレノイド201の当接状態と離間状態との切り換え動作によりワンウェイクラッチ部205を規制状態と許容状態とで切り換えることができる。すなわち、本実施例のプリンター1は、ピックローラー21の状態を切り換える動力を使ってワンウェイクラッチ部205の状態を規制状態と許容状態とに切り換えることができる。このため、本実施例のプリンター1は、装置構成を簡易化することができている。
【0063】
また、上記のように、本実施例の駆動機構部100Aは、
図2及び
図4に対応しソレノイド201がピックローラー21を当接状態としたときにワンウェイクラッチ部205を規制状態とし、
図3及び
図5に対応しソレノイド201がピックローラー21を離間状態としたときにワンウェイクラッチ部205を許容状態とする。このため、本実施例のプリンター1は、
図11の一番右の図で表されるように、先行媒体P1に続く後続媒体P2を第1媒体カセット3側に戻す際にピックローラー21を離間状態とすることで、後続媒体P2の逆給送方向F2の先端がピックローラー21に引っ掛かってジャムやスキューが発生することを抑制することができる。
【0064】
また、上記のように、本実施例の駆動機構部100Aのワンウェイクラッチ部205は、一方向の回転を許容し且つ他方向の回転を不能になるように係止する歯が設けられたスターラチェット204を有する。ワンウェイクラッチ部205をこのような構成とすることで、駆動機構部100を小型化することができ、プリンター1を小型化することができる。なお、本実施例のスターラチェット204は歯204aが回転軸215に沿う方向に突出する構成であるが、このような構成とすることで、スターラチェット204及び係止部203の両方において回転軸215と交差する方向において特に小型化することができる。
【0065】
また、上記のように、本実施例のプリンター1は、給送方向F1において給送ローラー251よりも下流に設けられ、媒体Pと当接し媒体Pのスキューを補正するスキュー補正部としての搬送ローラー対31を備えている。そして、本実施例の駆動機構部100Aは、給送ローラー251により給送される媒体Pが搬送ローラー対31のレジストローラー311及びゲート部材311aに当接したとき、
図11の左から3番目の図で表されるように、ワンウェイクラッチ部205を規制状態とするとともに、給送ローラー251へのモーター210からの駆動力の伝達を遮断する。このような構成とすることで、先行媒体P1がスキュー補正部に当接した後に該先行媒体P1に対して給送方向F1に給送する力が加わり続けて該先行媒体P1が損傷することやジャムが発生することを抑制することができる。
【0066】
また、上記のように、本実施例のプリンター1においては、スキュー補正部として媒体Pを搬送する搬送ローラー対31を有し、ソレノイド201は、搬送ローラー対31によりスキューが補正された媒体Pが搬送ローラー対31により搬送されるとき、
図11の左から5番目の図で表されるように、ピックローラー21を当接状態から離間状態に切り換える。すなわち、本実施例のプリンター1においては、スキューが補正された媒体Pが搬送ローラー対31により搬送されるときにピックローラー21による媒体Pの搬送を行わないようにする。このように、媒体Pの搬送に拘る搬送部の数を減らすことで搬送負荷を減らすことができる。なお、本実施例では、媒体Pが搬送ローラー対31により搬送開始されるタイミングに同期してピックローラー21を当接状態から離間状態に切り換えるが、これらのタイミングがずれていてもよい。
【0067】
また、上記のように、本実施例のプリンター1においては、給送方向F1において搬送ローラー対31の下流に設けられ、媒体Pに対して記録を行う記録部としてのラインヘッド51を備えている。そして、本実施例の駆動機構部100Aは、
図11の左から6番目の図で表されるように、ラインヘッド51により記録が行われている媒体Pの給送方向F1における後端が給送ローラー251と分離ローラー252との挟持位置を抜けるまで給送ローラー251へのモーター210からの駆動力の伝達を継続する。記録部により記録が行われている途中の状態で給送ローラー251と分離ローラー252との挟持位置を抜ける前の媒体Pに給送ローラー251へ駆動力の伝達が行われなくなると、単位時間当たりの搬送距離が急変する虞があり、記録品質が低下する虞がある。しかしながら、本実施例のプリンター1においては、駆動機構部100Aは、ラインヘッド51により記録が行われている媒体Pの給送方向F1における後端が給送ローラー251と分離ローラー252との挟持位置を抜けるまで給送ローラー251へのモーター210からの駆動力の伝達を継続する。このため、本実施例のプリンター1は、ラインヘッド51により記録が行われている途中の状態で単位時間当たりの搬送距離が急変することを抑制でき、記録品質が低下することを抑制することができる。
【0068】
[実施例2]
以下に、実施例2のプリンター1の駆動機構部100について
図13を参照して説明する。
図13は、実施例1のプリンター1における
図6に対応する図である。本実施例のプリンター1は、以下で説明する構成以外については、実施例1のプリンター1と同様である。詳細には、駆動機構部100の構成のみが実施例1のプリンター1と異なっており、さらに詳細には、実施例1の駆動機構部100Aに対してクラッチCを有する歯車の配置のみが実施例1の実施例1のプリンター1と異なっている。このため、本実施例のプリンター1は、下記の説明箇所以外については実施例1のプリンター1と同様の特徴を有している。そこで、
図13では上記実施例1と共通する構成部材は同じ符号で示し、詳細な説明は省略する。
【0069】
図6で表されるように、実施例1の駆動機構部100Aにおいては、給送ローラー251の回転軸215に取り付けられた歯車208と嵌合する歯車209のみにクラッチCが取り付けられていた。一方、
図13で表されるように、本実施例の駆動機構部100Bにおいては、モーター210からの駆動力を受ける歯車219にもクラッチCが取り付けられている。このため、本実施例の駆動機構部100Bは、モーター210を駆動しつつ、モーター210からの駆動力を分離ローラー252の回転軸217も受けないようにすることが可能である。このような構成とすることで、例えば、モーター210を駆動してプリンター1に設けられる複数のローラーのうちのいくつかを駆動しつつ、ピックローラー21及び給送ローラー251に加えて分離ローラー252も駆動させないようにすることができる。
【0070】
[実施例3]
以下に、実施例3のプリンター1の駆動機構部100について
図14を参照して説明する。
図14は、実施例1のプリンター1における
図6に対応する図である。本実施例のプリンター1は、以下で説明する構成以外については、実施例1のプリンター1と同様である。詳細には、駆動機構部100の構成のみが実施例1のプリンター1と異なっており、さらに詳細には、実施例1の駆動機構部100Aに対してクラッチCを有する歯車の配置のみが実施例1の実施例1のプリンター1と異なっている。このため、本実施例のプリンター1は、下記の説明箇所以外については実施例1のプリンター1と同様の特徴を有している。そこで、
図14では上記実施例1と共通する構成部材は同じ符号で示し、詳細な説明は省略する。
【0071】
図6で表されるように、実施例1の駆動機構部100Aにおいては、給送ローラー251の回転軸215に取り付けられた歯車208と嵌合する歯車209のみにクラッチCが取り付けられていた。一方、
図13で表されるように、本実施例の駆動機構部100Cにおいては、分離ローラー252の回転軸217に取り付けられる歯車213と嵌合する歯車220にもクラッチCが取り付けられている。このため、本実施例の駆動機構部100Bは、モーター210を駆動しつつ、モーター210からの駆動力を分離ローラー252の回転軸217も受けないようにすることが可能である。このような構成とすることでも実施例2の駆動機構部100Bと同様、例えば、モーター210を駆動してプリンター1に設けられる複数のローラーのうちのいくつかを駆動しつつ、ピックローラー21及び給送ローラー251に加えて分離ローラー252も駆動させないようにすることができる。
【0072】
本発明は上記において説明した各実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0073】
1…インクジェットプリンター(媒体搬送装置)、2…装置本体、3…第1媒体カセット(載置部)、4…第2媒体カセット、5…第3媒体カセット、6…増設ユニット、8…排出トレイ、11…廃液収容部、13…搬送ベルト、14…プーリー、15…プーリー、16…筐体部、17…扉部、19…供給ローラー、20…分離ローラー、21…ピックローラー(搬送ローラー)、22…ピックローラー、23…ピックローラー、25…給送ローラー対、26…給送ローラー対、27…給送ローラー対、28…搬送ローラー対、29…搬送ローラー対、31…搬送ローラー対(スキュー補正部)、32…搬送ローラー対、33…搬送ローラー対、34…搬送ローラー対、35…搬送ローラー対、36…搬送ローラー対、37…搬送ローラー対、39…反転ローラー、40…従動ローラー、41…フラップ、50…ヘッドユニット、51…ラインヘッド(記録部)、61…インク収容部、62…インク収容部、63…インク収容部、64…インク収容部、100…駆動機構部、100A…駆動機構部、100B…駆動機構部、100C…駆動機構部、201…ソレノイド(切替部)、201a…軸部、202…ピック離間カム、203…係止部、203a…突起部、203b…対向面、204…スターラチェット、204a…歯、204b…対向面、205…ワンウェイクラッチ部、206…歯車、207…歯車、208…歯車、209…歯車、210…モーター(駆動部)、211…歯車、212…歯車、213…歯車、214…回転軸、215…回転軸、216…回転軸、217…回転軸、218…当接部、219…歯車、220…歯車、251…給送ローラー、252…分離ローラー、311…レジストローラー、311a…ゲート部材、312…従動ローラー、C…クラッチ、K1…分岐位置、P…媒体、P1…先行媒体、P2…後行媒体、S1…合流地点、T0…給送経路、T1…記録時搬送経路、T2…スイッチバック経路、T3…反転経路