(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024202
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】シート製造装置
(51)【国際特許分類】
D04H 1/732 20120101AFI20240215BHJP
【FI】
D04H1/732
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126864
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】有賀 直人
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA08
4L047AB02
4L047AB06
4L047BA12
(57)【要約】
【課題】搬送ベルトからウェブを容易に剥がす。
【解決手段】シート製造装置は、繊維を含む材料を気流によって堆積させてウェブを形成する堆積部と、前記ウェブの一方面と接触して当該ウェブを保持する搬送ベルトを備えるウェブ搬送部と、前記ウェブ搬送部から供給される前記ウェブに対して加熱及び加圧のうち少なくとも一方の処理をすることでシートを形成するシート形成部と、前記ウェブ搬送部における前記シート形成部側に位置する端部に設けられ、前記ウェブに対して圧縮空気を噴射する空気噴射部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を含む材料を気流によって堆積させてウェブを形成する堆積部と、
前記ウェブの一方面と接触して当該ウェブを保持する搬送ベルトを備えるウェブ搬送部と、
前記ウェブ搬送部から供給される前記ウェブに対して加熱及び加圧のうち少なくとも一方の処理をすることでシートを形成するシート形成部と、
前記ウェブ搬送部における前記シート形成部側に位置する端部に設けられ、前記ウェブに対して圧縮空気を噴射する空気噴射部と、を備えたシート製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシート製造装置であって、
前記空気噴射部は、前記ウェブの前記搬送ベルトに接触している前記一方面に対して前記圧縮空気を噴射する、シート製造装置。
【請求項3】
請求項1に記載のシート製造装置であって、
前記搬送ベルトと対向するように設けられ、前記ウェブに水分を付与する加湿部を備える、シート製造装置。
【請求項4】
請求項1に記載のシート製造装置であって、
前記ウェブ搬送部は、前記搬送ベルトを駆動させる複数のローラーを有し、
前記複数のローラーは、前記複数のローラーの中で前記シート形成部に最も近い位置に設けられた出口側ローラーを含み、
前記空気噴射部は、前記出口側ローラーに隣接する位置に設けられる、シート製造装置。
【請求項5】
請求項4に記載のシート製造装置であって、
前記空気噴射部は、空気を圧縮する圧縮部と、圧縮された空気を排出するノズルとを有し、
前記ノズルは、前記出口側ローラーに隣接する位置であり、かつ前記搬送ベルトと対面する位置に設けられる、シート製造装置。
【請求項6】
請求項5に記載のシート製造装置であって、
前記空気噴射部は、前記ウェブの先端が前記出口側ローラーと対向する位置を通過するタイミングで、前記圧縮空気を前記ノズルから噴射する、シート製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、メッシュベルト上に繊維を含む材料を堆積させてウェブを形成する堆積部と、堆積部のウェブ搬送方向下流に配置され、ウェブを加湿する加湿部と、加湿部のウェブ搬送方向下流に配置され、ウェブをメッシュベルトから剥がしながら下流に搬送する搬送部と、搬送部のウェブ搬送方向下流に配置され、ウェブを加圧する加圧ローラーと、を含むシート製造装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記装置では、加湿部はウェブの一方面に向けて加湿を行い、搬送部では、ウェブの一方面に接触させて搬送を行う。しかしながら、搬送部は、より水分量が多い一方面に接触するため、搬送部にウェブが張り付いてしまい、ウェブを加圧ローラーに引き渡すことがでない、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
シート製造装置は、繊維を含む材料を気流によって堆積させてウェブを形成する堆積部と、前記ウェブの一方面と接触して当該ウェブを保持する搬送ベルトを備えるウェブ搬送部と、前記ウェブ搬送部から供給される前記ウェブに対して加熱及び加圧のうち少なくとも一方の処理をすることでシートを形成するシート形成部と、前記ウェブ搬送部における前記シート形成部側に位置する端部に設けられ、前記ウェブに対して圧縮空気を噴射する空気噴射部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】ウェブ搬送部の周辺の構成を示す一部拡大図。
【
図3】ウェブ搬送部及び空気噴射部を+Z方向に見た図。
【
図5A】ウェブ搬送部及び空気噴射部の作用を示す模式図。
【
図5B】ウェブ搬送部及び空気噴射部の作用を示す模式図。
【
図5C】ウェブ搬送部及び空気噴射部の作用を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
まず、シート製造装置1の構成について説明する。シート製造装置1は、シートSを形成する装置である。
図1に示すように、シート製造装置1は、例えば、供給部10と、粗砕部11と、解繊部20と、選別部40と、第1ウェブ形成部45と、回転体49と、混合部50と、堆積部60と、ウェブ搬送部80と、加湿部90と、空気噴射部100と、シート形成部110と、切断部120と、を含む。さらに、シート製造装置1は、上記各部の駆動機構を制御する制御部(プロセッサー)を備える。
【0008】
供給部10は、粗砕部11に原料を供給する。供給部10は、例えば、粗砕部11に原料を連続的に投入するための自動投入部である。供給部10によって供給される原料は、各種繊維を含む材料である。
【0009】
繊維としては、特に限定されず、広範な繊維材料を用いることができる。繊維としては、天然繊維(動物繊維、植物繊維)、化学繊維(有機繊維、無機繊維、有機無機複合繊維)などを例示できる。繊維は、更に詳しくは、セルロース、絹、羊毛、綿、大麻、ケナフ、亜麻、ラミー、黄麻、マニラ麻、サイザル麻、針葉樹、広葉樹等からなる繊維等が挙げられ、これらを単独で用いてもよいし、適宜混合して用いてもよいし、精製などを行った再生繊維として用いてもよい。
【0010】
繊維の原料としては、例えば、パルプ、古紙、古布等が挙げられる。また、繊維は、各種の表面処理がされていてもよい。また、繊維の材質は、純物質であってもよいし、不純物及びその他の成分など、複数の成分を含む材質であってもよい。また、繊維として、古紙やパルプシートなどを乾式で解繊した解繊物を用いてもよい。
【0011】
繊維の長さは、特に限定されないが、独立した1本の繊維で、その繊維の長手方向に沿った長さは、1μm以上5mm以下、好ましくは、2μm以上3mm以下、より好ましくは3μm以上2mm以下である。
【0012】
シート製造装置1では、加湿部90において水分を付与するので、水素結合を形成する能力のある繊維を用いると、形成されるシートSの機械的強度を高めることができる。そのような繊維としては、セルロースが挙げられる。
【0013】
シートSにおける繊維の含有量は、例えば、50質量%以上99.9質量%以下、好ましくは、60質量%以上99質量%以下、より好ましくは70質量%以上99質量%以下である。混合物を形成する際に配合を行うことで、このような含有量とすることができる。
【0014】
粗砕部11は、供給部10によって供給された原料を、大気中等の気中で裁断して細片にする。細片の形状や大きさは、例えば、数cm角の細片である。図示の例では、粗砕部11は、粗砕刃12を有し、粗砕刃12によって、投入された原料を裁断することができる。粗砕部11としては、例えば、シュレッダーを用いる。粗砕部11によって裁断された原料は、ホッパー14で受けてから管15を介して、解繊部20に移送される。
【0015】
解繊部20は、粗砕部11によって裁断された原料を解繊する。ここで、「解繊する」とは、複数の繊維が結着されてなる原料を、繊維1本1本に解きほぐすことをいう。解繊部20は、原料に付着した樹脂粒やインク、トナー、にじみ防止剤等の物質を、繊維から分離させる機能をも有する。
【0016】
解繊部20を通過したものを「解繊物」という。「解繊物」には、解きほぐされた繊維の他に、繊維を解きほぐす際に繊維から分離した樹脂粒や、インク、トナーなどの色剤や、にじみ防止材、紙力増強剤等の添加剤を含んでいる場合もある。解きほぐされた解繊物の形状は、ひも状である。解きほぐされた解繊物は、他の解きほぐされた繊維と絡み合っていない状態、すなわち独立した状態で存在してもよいし、他の解きほぐされた解繊物と絡み合って塊状となった状態、すなわちダマを形成している状態で存在してもよい。
【0017】
解繊部20は、乾式で解繊を行う。ここで、液体中ではなく、大気中等の気中において、解繊等の処理を行うことを乾式と称する。解繊部20としては、例えば、インペラーミルを用いる。解繊部20は、原料を吸引し、解繊物を排出するような気流を発生させる機能を有する。これにより、解繊部20は、自ら発生する気流によって、導入口22から原料を気流と共に吸引し、解繊処理して、解繊物を排出口24へと搬送することができる。解繊部20を通過した解繊物は、管16を介して、選別部40に移送される。なお、解繊部20から選別部40に解繊物を搬送させるための気流は、解繊部20が発生させる気流を利用してもよいし、ブロアー等の気流発生装置を設け、その気流を利用してもよい。
【0018】
選別部40は、解繊部20により解繊された解繊物を導入口42から導入し、繊維の長さによって選別する。選別部40は、例えば、ドラム部41と、ドラム部41を収容するハウジング部43と、を有する。ドラム部41としては、例えば、篩を用いる。ドラム部41は、網を有し、網の目開きの大きさより小さい繊維又は粒子、すなわち網を通過する第1選別物と、網の目開きの大きさより大きい繊維や未解繊片やダマ、すなわち網を通過しない第2選別物と、を分けることができる。例えば、第1選別物は、管17を介して、堆積部60に移送される。第2選別物は、排出口44から管18を介して、解繊部20に戻される。具体的には、ドラム部41は、モーターによって回転駆動される円筒の篩である。ドラム部41の網としては、例えば、金網、切れ目が入った金属板を引き延ばしたエキスパンドメタル、金属板にプレス機等で穴を形成したパンチングメタルを用いる。
【0019】
第1ウェブ形成部45は、選別部40を通過した第1選別物を、管17に搬送する。第1ウェブ形成部45は、例えば、メッシュベルト46と、張架ローラー47と、サクション機構48と、を有する。
【0020】
サクション機構48は、選別部40の開口を通過して空気中に分散された第1選別物をメッシュベルト46上に吸引することができる。第1選別物は、移動するメッシュベルト46上に堆積し、ウェブVを形成する。
【0021】
メッシュベルト46には、選別部40の開口を通過した第1選別物が堆積される。メッシュベルト46は、張架ローラー47によって張架され、第1選別物を通し難く空気を通す構成である。メッシュベルト46は、張架ローラー47が自転することによって移動する。メッシュベルト46が連続的に移動しながら、選別部40を通過した第1選別物が連続的に降り積もることにより、メッシュベルト46上にウェブVが形成される。
【0022】
サクション機構48は、メッシュベルト46の下方に設けられている。サクション機構48は、下方に向く気流を発生させることができる。サクション機構48によって、選別部40により空気中に分散された第1選別物をメッシュベルト46上に吸引することができる。これにより、選別部40からの排出速度を大きくすることができる。
【0023】
ウェブVは、選別部40及び第1ウェブ形成部45を経ることにより、空気を多く含み柔らかくふくらんだ状態に形成される。メッシュベルト46に堆積されたウェブVは、管17へ投入され、堆積部60へと搬送される。
【0024】
回転体49は、ウェブVを切断する。図示の例では、回転体49は、基部49aと、基部49aから突出している突部49bと、を有する。突部49bは、例えば、板状の形状を有する。図示の例では、突部49bは4つ設けられ、4つの突部49bが等間隔に設けられる。基部49aが方向Rに回転することにより、突部49bは、基部49aを軸として回転することができる。回転体49によってウェブVを切断することにより、例えば、堆積部60に供給される単位時間当たりの繊維量の変動を小さくすることができる。
【0025】
回転体49は、第1ウェブ形成部45の近傍に設けられる。図示の例では、回転体49は、ウェブVの経路において下流側に位置する張架ローラー47aの近傍に設けられる。回転体49は、突部49bがウェブVと接触可能な位置であって、ウェブVが堆積されるメッシュベルト46と接触しない位置に設けられる。これにより、メッシュベルト46が突部49bによって摩耗することを抑制することができる。突部49bとメッシュベルト46との間の最短距離は、例えば、0.05mm以上0.5mm以下である。これは、メッシュベルト46が損傷を受けずにウェブVを切断することが可能な距離である。
【0026】
混合部50は、例えば、選別部40を通過した第1選別物と、結着剤と、を混合する。混合部50は、例えば、結着剤を供給する結着剤供給部52と、第1選別物と結着剤とを搬送する管54と、ブロアー56と、を有する。図示の例では、結着剤は、結着剤供給部52からホッパー19を介して管54に供給される。管54は、管17に接続される。
【0027】
混合部50では、ブロアー56によって気流を発生させ、管54中において、第1選別物と結着剤とを混合させながら、搬送することができる。なお、第1選別物と結着剤とを混合させる機構は、特に限定されず、高速回転する羽根により攪拌するものであってもよいし、V型ミキサーのように容器の回転を利用するものであってもよい。
【0028】
結着剤供給部52としては、スクリューフィーダーや、ディスクフィーダーなどを用いる。
【0029】
結着剤供給部52から供給される結着剤は、例えば、澱粉またはデキストリンである。澱粉は、複数のα-グルコース分子がグリコシド結合によって重合した高分子である。澱粉は、直鎖状であってもよいし、分岐を含んでもよい。
【0030】
澱粉は、各種植物由来のものを用いることができる。澱粉の原料としては、トウモロコシ、小麦、米等の穀類、ソラマメ、緑豆、小豆等の豆類、ジャガイモ、サツマイモ、タピオカ等のイモ類、カタクリ、ワラビ、葛等の野草類、サゴヤシ等のヤシ類が挙げられる。
【0031】
また、澱粉として加工澱粉、変性澱粉を用いてもよい。加工澱粉としては、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化澱粉、酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸化澱粉、リン酸物エステル化リン酸架橋澱粉、尿素リン酸化エステル化澱粉、澱粉グリコール酸ナトリウム、高アミロースコーンスターチ等が挙げられる。また、変性澱粉としてのデキストリンは、澱粉を加工又は変性して得られるものを好適に用いることができる。
【0032】
シート製造装置1において、結着剤として澱粉またはデキストリンを用いることにより、水分が付与された後に加圧加熱されることで、結着剤の糊化、及び、繊維間の水素結合の少なくとも一方が生じ、シートSに十分な強度を持たせることができる。一方、繊維間の水素結合のみでシートSに十分な強度を持たせることができる場合は、結着剤を用いずにシートSを製造することもできる。結着剤を用いずにシートSを製造する場合、シート製造装置1は結着剤供給部52を備えていなくてもよい。
【0033】
シートSにおける澱粉またはデキストリンの含有量は、例えば、0.1質量%以上50質量%以下、好ましくは、1質量%以上40質量%以下、より好ましくは1質量%以上30質量%以下である。混合物を形成する際に配合を行うことで、このような含有量とすることができる。
【0034】
なお、結着剤供給部52では、結着剤に加え、製造されるシートSの種類に応じて、繊維を着色するための着色剤や、繊維の凝集や結着剤の凝集を抑制するための凝集抑制剤、繊維等を燃え難くするための難燃剤が含まれていてもよい。混合部50を通過した混合物は、管54を介して、堆積部60に移送される。
【0035】
堆積部60は、混合部50を通過した混合物を導入口62から導入し、絡み合った繊維をほぐして、空気中で分散させながら降らせる。これにより、堆積部60は、第2ウェブ形成部70に、混合物を均一性よく堆積させることができる。
【0036】
堆積部60は、例えば、ドラム部61と、ドラム部61を収容するハウジング部63と、を有する。ドラム部61としては、回転する円筒の篩を用いる。ドラム部61は、網を有し、混合部50を通過した混合物に含まれる、網の目開きの大きさより小さい繊維又は粒子を降らせる。ドラム部61の構成は、例えば、ドラム部41の構成と同じである。
【0037】
なお、ドラム部61の「篩」は、特定の対象物を選別する機能を有していなくてもよい。すなわち、ドラム部61として用いられる「篩」とは、網を備えたもの、という意味であり、ドラム部61は、ドラム部61に導入された混合物の全てを降らしてもよい。
【0038】
堆積部60は、第2ウェブ形成部70を備える。第2ウェブ形成部70は、ドラム部61を通過した混合物を堆積して、ウェブWを形成する。第2ウェブ形成部70は、例えば、第1メッシュベルト72と、張架ローラー74と、サクション機構76と、を有する。
【0039】
第1メッシュベルト72には、堆積部60の開口を通過した混合物が堆積される。第1メッシュベルト72は、張架ローラー74によって張架され、混合物を通し難く空気を通す構成である。第1メッシュベルト72は、張架ローラー74が自転することによって移動する。第1メッシュベルト72が連続的に移動しながら、堆積部60を通過した混合物が連続的に降り積もることにより、第1メッシュベルト72上にウェブWが形成される。
【0040】
サクション機構76は、第1メッシュベルト72の下方に設けられる。サクション機構76は、下方に向く気流を発生させることができる。サクション機構76によって、ドラム部61により空気中に分散された混合物を第1メッシュベルト72上に吸引することができる。これにより、堆積部60からの排出速度を大きくすることができる。さらに、サクション機構76によって、混合物の落下経路にダウンフローを形成することができ、落下中に繊維や結着剤が絡み合うことを防ぐことができる。
【0041】
以上のように、堆積部60を経ることにより、空気を多く含み柔らかくふくらんだ状態のウェブWが形成される。
【0042】
第1メッシュベルト72上におけるウェブWの搬送方向の下流側にはウェブ搬送部80が配置される。ウェブ搬送部80は、第1メッシュベルト72上のウェブWを、第1メッシュベルト72から剥がしてシート形成部110に向けて搬送する。
図2に示すように、ウェブ搬送部80は、搬送ベルトとしての第2メッシュベルト81と、複数のローラー82と、吸引部としてのサクション機構83と、を有する。第2メッシュベルト81は、複数のローラー82によって張架され、空気を通す構成となっている。第2メッシュベルト81は、ローラー82の自転により回転駆動可能に構成される。サクション機構83は、第2メッシュベルト81を挟んでウェブWに対して対向する位置に配置される。サクション機構83は、吸気ファン86(本実施形態では、第1吸気ファン86a、第2吸気ファン86b、第3吸気ファン86c)を備え、吸気ファン86の吸引力によって第2メッシュベルト81に上向きの気流を発生させる。この気流によってウェブWを吸引する。
【0043】
さらに詳細には、サクション機構83は、空気を吸引するための複数の吸引口84を有する。本実施形態の吸引口84は、第1吸引口84aと第2吸引口84bと第3吸引口84cとで構成される。第2吸引口84bは、第1吸引口84aに対して、第2メッシュベルト81の搬送方向において隣り合うように設けられる。本実施形態では、第2吸引口84bは、第1吸引口84aの-Y方向に配置される。第3吸引口84cは、第1吸引口に隣り合う位置(+Y方向)に設けられる。すなわち、本実施形態の第1吸引口84aは、第2メッシュベルト81の搬送方向において第2吸引口84bと第3吸引口84cとの間に位置する。
【0044】
また、サクション機構83は、第1吸引口84aに接続された第1吸引ダクト85aと、第2吸引口84bに接続された第2吸引ダクト85bと、第3吸引口84cに接続された第3吸引ダクト85cと、を有する。
第1吸引ダクト85aは、第1吸引口84aを形成する壁部によって区画された流路である。そして、第1吸引ダクト85aには第1吸気ファン86aが配置される。
また、各吸引口84は、
図3に示すように、+Z方向に見て、X軸に沿って延在する細長の板状部材と当該板状部材に形成された複数の貫通孔88とで構成される。第1吸気ファン86aの駆動によって複数の貫通孔88から第1吸引ダクト85aを通して空気が吸引される。
第2吸引ダクト85bは、第2吸引口84bを形成する壁部によって区画された流路である。そして、第2吸引ダクト85bには第2吸気ファン86bが配置される。第2吸気ファン86bの駆動によって複数の貫通孔88から第2吸引ダクト85bを通して空気が吸引される。
第3吸引ダクト85cは、第3吸引口84cを形成する壁部によって区画された流路である。そして、第3吸引ダクト85cには第3吸気ファン86cが配置される。第3吸気ファン86cの駆動によって複数の貫通孔88から第3吸引ダクト85cを通して空気が吸引される。
各吸引口84a,84b,84cに接続された各吸引ダクト85a,85b,85cに区分けすることで各吸引口84a,84b,84cにおける空気の吸引量を安定させることができる。
【0045】
また、第1吸気ファン86aと第2吸気ファン86bと第3吸気ファン86cとは個別に制御される。本実施形態では、第1吸気ファン86aの吸気量が第2吸気ファン86bの吸気量よりも大きくなるように制御される。また、第2吸気ファン86bの吸気量と第3吸気ファン86cの吸気量とはほぼ同じとなるように制御される。
【0046】
これにより、ウェブWを第1メッシュベルト72から剥がし、第1メッシュベルト72から剥がされたウェブWの上面である一方面Waを、第2メッシュベルト81に接触させることができる。そして、ウェブWの一方面Waが、第2メッシュベルト81に接触して、ウェブWが保持された状態で搬送される。
【0047】
ウェブ搬送部80の下方には加湿部90が配置される。加湿部90は、第2メッシュベルト81と対向するように配置される。加湿部90は、第2メッシュベルト81に接触しているウェブWの下面である他方面Wbに向けて水分を付与する。加湿部90では、水分として、加湿空気(例えば、水蒸気やミスト)をウェブWに付与する。
【0048】
図2に示すように、加湿部90は、水を貯留可能な容器91と、当該容器91の底部に配置された圧電振動子92と、を備える。容器91の上部には加湿空気を排出する排出口93が形成される。排出口93が、ウェブWの他方面Wb側に向くように容器91が配置される。圧電振動子92を駆動させることで、水中に超音波が発生し、容器91内にミスト(加湿空気)が発生する、発生したミストは容器91の排出口93を介してウェブWに供給される。ウェブWの下方から水分を付与することで、加湿部90やその付近に結露が発生した場合でも、水滴がウェブWに落下することがない。すなわち、例えば、ウェブWに対して上方から水分を付与した場合、加湿部90やその付近に水分が付着し、水滴として落下し、水滴がウェブWに付着するおそれがある。この場合、ウェブWに対する水分の付与が不均一となる。しかしながら、本実施形態では水滴の落下等が抑制され、シートSの品質に影響を及ぼすことを避けられる。
【0049】
また、
図4に示すように、加湿部90の排出口93は、-Z方向に見て、X軸に沿って延在する細長の矩形である。排出口93には金網94が配置され、容器91内へのごみ等の進入を抑制する。
【0050】
ここで、サクション機構83は、第2メッシュベルト81を挟んで加湿部90と対向する位置に配置される。そして、本実施形態では、第1吸引口84aと排出口93とが対向するように配置される。そして、第1吸引ダクト85aは加湿部90から排出された加湿空気を吸引する。これにより、排出口93から排出された加湿空気は、排出口93に対面して配置された第1吸引口84aから第1吸引ダクト85aを通じて吸引される。加湿空気はウェブWを介して第1吸引口84aに吸引されるので、ウェブWの厚み方向における水分量を均一化できる。
【0051】
また、第1吸引口84aと排出口93との各開口形状および大きさが同じである。具体的には、第1吸引口84a及び排出口93は平面視において矩形を成し、X軸に沿った寸法及びY軸に沿った寸法がほぼ同じである。
このため、例えば、排出口93から排出される加湿空気を、当該排出口93の大きさよりも大きい吸引口から吸引した場合、吸引口のうち、排出口93の周辺を含む他の領域の空気も吸引してしまう。このため、各吸引口における吸引抵抗がばらつき、排出口93直上のウェブWを通過する加湿空気の風量がばらついてしまう。本実施形態では、第1吸引口84aと第2吸引口84bと第3吸引口84cとは、それぞれ第1吸引ダクト85a、第2吸引ダクト85b、第3吸引ダクト85cに接続されており、それぞれ独立して機能する。そして、第1吸引口84aと排出口93との各開口形状と及び大きさを同じとすることで、排出口93直上のウェブWを通過する加湿空気の風量が一定となる。これにより、ウェブWの厚み方向における水分量が均一化され、面内のシートの強度のばらつきを抑え、シートの品質を確保することができる。
【0052】
また、第2吸引ダクト85b及び第3吸引ダクト85cは、吸気によってウェブWを第2メッシュベルト81に密着させる。従って、サクション機構83は、ウェブWを第1メッシュベルト72から剥がして第2メッシュベルト81に吸着させる機能と、ウェブWの厚さ方向に水分を付与する機能とを備える。従って、シート製造装置1の構成を簡素化できる。
【0053】
加湿部90において水分が付与されたウェブWの含水率は、好ましくは12質量%以上40質量%以下である。規定のウェブ含水率により、繊維間の水素結合を効果的に形成でき、シートSの強度を増加させることができる。
【0054】
ウェブ搬送部80及び加湿部90の下流にはシート形成部110が配置される。水分が付与されたウェブWは、シート形成部110へと搬送される。
【0055】
ここで、ウェブ搬送部80におけるシート形成部110側に位置する端部に空気噴射部100が設けられる。空気噴射部100は、ウェブWに対して圧縮空気を噴射する。
図2に示すように、空気噴射部100は、ウェブ搬送部80における複数のローラー82の中でシート形成部110に最も近い位置に設けられた出口側ローラー82aに隣接する位置に設けられる。さらに詳細には、空気噴射部100は、サクション機構83の搬送方向の下流端部と出口側ローラー82aとの間に配置される。これにより、第2メッシュベルト81からウェブWを効率よく剥がすことができる。
【0056】
空気噴射部100は、空気を圧縮する圧縮部(図示省略)と、圧縮された空気を排出するノズル101とを有する。ノズル101は、出口側ローラー82aに隣接する位置であり、かつ第2メッシュベルト81と対面する位置に設けられる。これにより、第2メッシュベルト81から剥がれたウェブWをシート形成部110に搬送させることができる。
ノズル101は、+Z方向に見て、X軸に沿って延在する細長の開口を有する(
図3)。ノズル101のX軸に沿った長さ寸法は、ウェブ搬送部80によって搬送されるウェブWのX軸に沿った長さ寸法とほぼ同じである。
そして、空気噴射部100は、ウェブWの第2メッシュベルト81に接触している一方面Waに対して圧縮空気を噴射する。ノズル101からウェブWのX軸に沿った方向の全体に対して圧縮空気が噴射される。
【0057】
ウェブ搬送部80の第2メッシュベルト81に接触しながら搬送されるウェブWは、加湿部90によって水分を付与されるので、第2メッシュベルト81に対する粘着力が高まり、第2メッシュベルト81にウェブWが張り付いてしまう。そして、第2メッシュベルト81から重力のみでウェブWが剥がれない場合、ウェブWがシート形成部110に円滑に搬送されず、ウェブWの搬送不良やウェブWに損傷が発生してしまう。
本実施形態によれば、シート形成部110の搬送方向の手前でウェブWに向けて圧縮空気を噴射することで、第2メッシュベルト81は下方に向けて押し圧される。これにより、ウェブWが第2メッシュベルト81から剥離され、ウェブWを円滑にシート形成部110に引き渡すことができる。従って、ウェブWの搬送不良やウェブの損傷を抑制できる。
【0058】
シート形成部110は、水分が付与され、第2メッシュベルト81から剥がされたウェブWに対して加熱及び加圧のうち少なくとも一方の処理を行うことでシートSを形成する。本実施形態のシート形成部110は、水分が付与されたウェブWを加圧すると同時に加熱する。これにより、ウェブWに含まれる水分が温度上昇した後に蒸発するとともに、ウェブWの厚さが薄くなって繊維密度が高められる。熱により水分と結着剤とが温度上昇し、圧力により繊維密度が高まることにより、結着剤が糊化し、その後水分が蒸発することにより糊化した結着剤を介して複数の繊維同士が結着する。さらに、熱により水分が蒸発し、圧力により繊維密度が高まることにより、水素結合によって複数の繊維が結着する。これにより、機械的強度がより良好なシート状のシートSを形成することができる。
【0059】
本実施形態のシート形成部110は、ウェブWを加圧加熱する加圧加熱部114を有する。加圧加熱部114は、例えば、加熱ローラー、熱プレス成形機を用いて構成できる。図示の例では、加圧加熱部114は、加熱ローラー対116で構成される。加熱ローラー対116では、ウェブWの温度が、60℃以上100℃以下となるように加熱する。また、加熱ローラー対116によって、ウェブWに対して圧力を加え、ウェブWを薄くし、ウェブWにおける繊維密度が高まる。ウェブWに加えられる圧力は、好ましくは0.1Mpa以上15MPa以下、より好ましくは0.2Mpa以上10MPa以下、さらに好ましくは0.4Mpa以上8MPa以下である。このような圧力の範囲であれば、繊維の劣化が抑制でき、製造したシートSを解繊した解繊物を原料にして再び強度の良好なシートSを製造することができる。
なお、加熱ローラー対116の数は、特に限定されない。加熱ローラー対116により、ウェブWに対して加圧及び加熱を同時に行うことができる。また、シート製造装置1の構成を簡素化できる。
また、シート形成部110は、加圧ローラーや搬送ベルト(例えば、メッシュベルト)を含む構成であってもよい。
【0060】
図1に示すように、切断部120は、シート形成部110によって形成されたシートSを切断する。図示の例では、切断部120は、シートSの搬送方向と交差する方向にシートSを切断する第1切断部122と、搬送方向に平行な方向にシートSを切断する第2切断部124と、を有する。第2切断部124は、第1切断部122を通過したシートSを切断する。
以上により、所定のサイズの単票のシートSが形成される。切断された単票のシートSは、排出受け部130に排出される。
【0061】
次に、ウェブ搬送部80及び空気噴射部100の作用について説明する。
図5Aに示すように、堆積部60によって第1メッシュベルト72上に堆積されたウェブWが搬送方向に沿って搬送される。そして、ウェブ搬送部80のサクション機構83によって第2メッシュベルト81に上向きの気流を発生させ、ウェブWを吸引する。具体的には、まず、第2吸引口84bからの吸気により、ウェブWは第1メッシュベルト72から剥がされ、ウェブWの一方面Waが第2メッシュベルト81に接触した状態で搬送される。
【0062】
次いで、
図5Bに示すように、ウェブ搬送部80によって搬送されるウェブWに対して加湿部90から水分(加湿空気)が付与される。すなわち、本実施形態では、ウェブWの搬送期間中にウェブWに水分が付与される。
加湿部90の排出口93から排出された加湿空気は、排出口93の上方に配置された第1吸引口84aから吸引される。加湿空気は、ウェブWを介して第1吸引口84aから吸引されるので、ウェブWの厚さ方向に均一して水分を付与することができる。
なお、第1吸引口84aからの吸気によって、ウェブWも吸引され、ウェブWの一方面Waが第2メッシュベルト81に接触した状態で搬送される。
【0063】
次いで、
図5Cに示すように、水分が付与されたウェブWは第3吸引口84cからの吸気により、ウェブWの一方面Waが第2メッシュベルト81に接触した状態で搬送される。その後、ウェブWは、水分の付与より粘着力が増すため、第2メッシュベルト81に密着した状態で搬送される。
次いで、空気噴射部100は、ウェブWの先端が出口側ローラー82aと対向する位置を通過するタイミングで、ウェブWの一方面Waに向けてノズル101から圧縮空気を噴射する。圧縮空気の噴射タイミングは、例えば、第2メッシュベルト駆動時間や検知センサー等により制御される。
これにより、シートWの先端が第2メッシュベルト81から剥がれ、下方に垂れ下がる。そして、第2メッシュベルト81から剥がされたウェブWの先端はシート形成部110の加熱ローラー対116にニップされる。ウェブWの先端が加熱ローラー対116にニップされた後に、圧縮空気の噴射を停止する。
なお、空気噴射部100から圧縮空気を噴射するタイミングは、シートSの製造条件等により適宜設定可能である。例えば、ウェブWの先端が出口側ローラー82aに到達する少し前から数秒間噴射してもよい。また、空気噴射部100から噴射する圧縮空気の圧力や噴射時間等は、適宜設定可能である。
【0064】
以上、本実施形態によれば、第2メッシュベルト81に接触して保持されたウェブWに圧縮空気を噴射することで、ウェブWが第2メッシュベルト81から剥離される。これにより、ウェブ搬送部80からシート形成部110にウェブWを円滑に引き渡すことができる。これにより、ウェブWの搬送不良やウェブWの損傷を抑制できる。
特に、水分が付与されたウェブWは、第2メッシュベルト81に粘着しやすいが、圧縮空気の噴射により容易に第2メッシュベルト81からウェブWを剥離することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…シート製造装置、10…供給部、11…粗砕部、12…粗砕刃、14…ホッパー、15,16,17,18…管、19…ホッパー、20…解繊部、22…導入口、24…排出口、40…選別部、41…ドラム部、42…導入口、43…ハウジング部、44…排出口、45…第1ウェブ形成部、46…メッシュベルト、47…張架ローラー、47a…張架ローラー、48…サクション機構、49…回転体、49a…基部、49b…突部、50…混合部、52…結着剤供給部、54…管、56…ブロアー、60…堆積部、61…ドラム部、62…導入口、63…ハウジング部、70…第2ウェブ形成部、72…第1メッシュベルト、74…張架ローラー、76…サクション機構、80…ウェブ搬送部、81…第2メッシュベルト、82…ローラー、82a…出口側ローラー、83…サクション機構、84…吸引口、84a…第1吸引口、84b…第2吸引口、84c…第3吸引口、85a…第1吸引ダクト、85b…第2吸引ダクト、85c…第3吸引ダクト、86…吸気ファン、86a…第1吸気ファン、86b…第2吸気ファン、86c…第3吸気ファン、88…貫通孔、90…加湿部、91…容器、92…圧電振動子、93…排出口、94…金網、100…空気噴射部、101…ノズル、110…シート形成部、114…加圧加熱部、116…加熱ローラー対、120…切断部、122…第1切断部、124…第2切断部、130…排出受け部、W…ウェブ、Wa…一方面、Wb…他方面、S…シート。