(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024213
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】カソードアセンブリ
(51)【国際特許分類】
C25C 7/02 20060101AFI20240215BHJP
C25C 3/08 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
C25C7/02 308Z
C25C3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126882
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】595009109
【氏名又は名称】SECカーボン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100174285
【弁理士】
【氏名又は名称】小宮山 聰
(72)【発明者】
【氏名】秋田 涼
(72)【発明者】
【氏名】小山 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】津田 拓也
【テーマコード(参考)】
4K058
【Fターム(参考)】
4K058AA14
4K058BA08
4K058BB05
4K058BB07
4K058BB09
4K058DD08
4K058EB01
4K058GB02
4K058GB11
(57)【要約】
【課題】コレクターバーが熱膨張した際、カソードブロックの溝の側面よりも底面に強い接触圧力が掛かるようにすることで、カソードブロック内の電流経路を最短化し、電力消費量を抑制できるカソードアセンブリを提供する。
【解決手段】カソードアセンブリ100は、底部に溝11が設けられた炭素製のカソードブロック10と、溝11内に配置された金属製のコレクターバー20と、溝11内に配置されたサポートバー30と、を備え、コレクターバー20は、溝11の底面10aに接触する第1の面20aと、第1の面20aの反対側の面である第2の面20bとを有し、サポートバー30は、第2の面20bに接触する面であって、第2の面20bに沿う形状を有する支持面(31a、32a)を有し、第2の面20b及び支持面(31a、32a)の各々は、コレクターバー20が幅方向に膨張したときコレクターバー20が高さ方向上側に移動するように傾斜している。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム製錬用の電解炉で使用されるカソードアセンブリであって、
底部に溝が設けられた炭素製のカソードブロックと、
前記溝内に配置された金属製のコレクターバーと、
前記溝内に配置されたサポートバーと、を備え、
前記コレクターバーは、前記溝の底面に接触する第1の面と、前記第1の面の反対側の面である第2の面とを有し、
前記サポートバーは、前記第2の面に接触する面であって、前記第2の面に沿う形状を有する支持面を有し、
前記電解炉に設置された状態において、前記コレクターバーが延びる方向を長さ方向とし、長さ方向及び高さ方向の両方に垂直な方向を幅方向とし、
前記第2の面及び前記支持面の各々は、前記コレクターバーが幅方向に膨張したとき前記コレクターバーが高さ方向上側に移動するように傾斜している、カソードアセンブリ。
【請求項2】
請求項1に記載のカソードアセンブリであって、
前記第2の面及び前記支持面の各々は、前記電解炉に設置された状態において、幅方向の内側から外側に向かって高さが高くなるように傾斜している、カソードアセンブリ。
【請求項3】
請求項2に記載のカソードブロックであって、
前記コレクターバーは、前記溝の側面と接触していない、カソードアセンブリ。
【請求項4】
請求項1に記載のカソードアセンブリであって、
前記第2の面及び前記支持面の各々は、前記電解炉に設置された状態において、幅方向の外側から内側に向かって高さが高くなるように傾斜している、カソードアセンブリ。
【請求項5】
請求項4に記載のカソードブロックであって、
前記コレクターバーは、幅方向に並んで配置された第1サブコレクターバー及び第2サブコレクターバーからなり、
前記第1サブコレクターバーと前記第2サブコレクターバーとが接触していない、カソードアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カソードアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム製錬用の電解炉の陰極(カソード)には、炭素製のカソードブロックが使用される。カソードブロックは、シェルと呼ばれる鉄製の箱に設置され、電解炉の炉底を構成する。カソードブロックはまた、電解浴に電子を供給する役割を担っている。
【0003】
カソードブロックには、金属製のコレクターバーを介して電子が供給される。以下、本明細書では、カソードブロックにコレクターバーを接続した組立体を「カソードアセンブリ」と呼ぶ。
【0004】
国際公開第2018/134754号には、炭素質材料からなるカソード本体と、金属材料からなる少なくとも一つのカソードコレクターバーとを備えるカソードアセンブリが開示されている。このカソードコレクターバーは、二つのバーエレメントを備えている。二つのバーエレメントの各々は、カソード本体のスロットの側面と接触する主側面と、テーパー面とを備えている。二つのテーパー面は、二つのバーエレメント間で接触ラインを形成する。
【0005】
特表2017-534770号公報には、炭素カソード内に組み立てられたカソード集電体アセンブリが開示されている。このカソード集電体アセンブリは、炭素カソードの下に配置される高導電性金属の集電バーを備える。この集電バーは、炭素カソードとの界面に、導電性のフレキシブルなフォイル又はシートを有する。
【0006】
国際公開第2021/240353号には、少なくとも一つのスロットを備える炭素質の材料からなるカソード本体と、このスロットに部分的に収納されるコレクターバーシステムとを備えるカソードアセンブリが開示されている。コレクターバーシステムは、二つの個別バーと、個別バーに取り付けられ、コレクターバーシステムの外側面がスロットの内側壁と強固に接触するようにする維持手段とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2018/134754号
【特許文献2】特表2017-534770号公報
【特許文献3】国際公開第2021/240353号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
コレクターバーは一般的に、カソードブロックに形成された溝(「カソードスロット」とも呼ばれる。)内に配置される。アルミニウム製錬用の電解炉の操業温度は約960℃であるが、このとき、溝内のコレクターバーが熱膨張し、溝の側面と強く接触する。溝の側面には強い接触圧力が掛かるため、その部分の接触抵抗が低くなる。操業時の電流はカソード電解面側からコレクターバーへと流れるが、溝側面とコレクターバーとの間の接触抵抗が低いため、この部分に電流が迂回して流れる。これによって、電力が余計に消費される。
【0009】
本発明の課題は、コレクターバーが熱膨張した際、カソードブロックの溝の側面よりも底面に強い接触圧力が掛かるようにすることで、カソードブロック内の電流経路を最短化し、電力消費量を抑制できるカソードアセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態によるカソードアセンブリは、アルミニウム製錬用の電解炉で使用されるカソードアセンブリであって、底部に溝が設けられた炭素製のカソードブロックと、前記溝内に配置された金属製のコレクターバーと、前記溝内に配置されたサポートバーと、を備え、前記コレクターバーは、前記溝の底面に接触する第1の面と、前記第1の面の反対側の面である第2の面とを有し、前記サポートバーは、前記第2の面に接触する面であって、前記第2の面に沿う形状を有する支持面を有し、前記電解炉に設置された状態において、前記コレクターバーが延びる方向を長さ方向とし、長さ方向及び高さ方向の両方に垂直な方向を幅方向とし、前記第2の面及び前記支持面の各々は、前記コレクターバーが幅方向に膨張したとき前記コレクターバーが高さ方向上側に移動するように傾斜している。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コレクターバーが熱膨張した際、カソードブロックの溝の側面よりも底面に強い接触圧力が掛かるようにすることで、カソードブロック内の電流経路を最短化し、電力消費量を抑制できるカソードアセンブリが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、アルミニウム製錬用の電解炉の一例の全体の構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態によるカソードアセンブリの構成を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2のカソードアセンブリを
図2とは異なる方向から(底面側から)見た斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3からカソードブロックを抜き出して示す図である。
【
図5】
図5は、
図4のカソードアセンブリを
図4のV―V線を通る面で切断した断面図(yz断面図)である。
【
図6A】
図6Aは、カソードアセンブリの組立手順を説明するための図である。
【
図6B】
図6Bは、カソードアセンブリの組立手順を説明するための図である。
【
図6C】
図6Cは、カソードアセンブリの組立手順を説明するための図である。
【
図6D】
図6Dは、カソードアセンブリの組立手順を説明するための図である。
【
図7】
図7は、コレクターバーが幅方向に膨張する様子を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、仮想的な比較例によるカソードアセンブリの構成を模式的に示す断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第一の実施形態によるカソードアセンブリの変形例の一つの構成を模式的に示す断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の第1の実施形態によるカソードアセンブリの変形例の他の一つの構成を模式的に示す断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の第2の実施形態によるカソードアセンブリの構成を模式的に示す斜視図である。
【
図13】
図13は、
図11のカソードアセンブリを
図11のXIII-XIII線を通る面で切断した断面図(yz断面図)である。
【
図15】
図15は、コレクターバーが幅方向に膨張する様子を模式的に示す断面図である。
【
図16】
図16は、本発明の第2の実施形態によるカソードアセンブリの変形例の構成を模式的に示す断面図である。
【
図17】
図17は、本発明の第3の実施形態によるカソードアセンブリの構成を模式的に示す斜視図である。
【
図18】
図18は、
図17のカソードアセンブリの構成から、サポートバーの本体部分を除いた構成を模式的に示す斜視図である。
【
図21】
図21は、コレクターバーが幅方向に膨張する様子を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
【0014】
[第1の実施形態]
[全体の構成]
図1は、アルミニウム製錬用の電解炉の一例である電解炉1の全体の構成を模式的に示す断面図である。
【0015】
電解炉1は、本発明の第1の実施形態によるカソードアセンブリ100を備えている。カソードアセンブリ100は、
図1の奥行き方向(y方向)に複数並べて配置されている。カソードアセンブリ100の各々は、カソードブロック10と、コレクターバー20と、サポートバー30とを備えている。カソードブロック10は、電解炉1の炉底を構成している。コレクターバー20とカソードブロック10とは電気的に接続されており、コレクターバー20の端部は電解炉1の外側に引き出されている。サポートバー30は、コレクターバー20を下方から支持している。カソードアセンブリ100の詳しい構成は後述する。
【0016】
電解炉1は、カソードアセンブリ100に加えて、アノード91、シェル92、ライニング93等を備えている。電解炉1の内部には、酸化アルミニウムを含む融液94が収容されている。コレクターバー20及びアノード91は、図示しない電源装置に電気的に接続されている。電源装置によって、カソードブロック10とアノード91との間に電圧が印加される。これによって融液94中の酸化アルミニウムが還元され、アルミニウム95が生成する。
【0017】
[カソードアセンブリ100の構成]
図2~
図5を参照して、カソードアセンブリ100の構成を説明する。
図2は、カソードアセンブリ100の構成を模式的に示す斜視図である。
図3は、カソードアセンブリ100を
図2とは異なる方向から(底面側から)見た斜視図である。
図4は、
図3からカソードブロック10を抜き出して示す図である。
図5は、カソードアセンブリ100を
図4のV―V線を通る面で切断した断面図(yz断面図)である。
【0018】
カソードアセンブリ100は、既述のとおり、カソードブロック10と、コレクターバー20と、サポートバー30とを備えている。カソードアセンブリ100はさらに、固定部材41(
図3及び
図5)や、スペーサー42(
図5)等を備えている。カソードアセンブリ100は例えば、アルミナ等の粉末が敷き詰められた床面F(
図5)の上に設置される。
【0019】
カソードブロック10は、炭素製である。「炭素製のカソードブロック」には、TiB
2やTiC等と炭素との複合材からなるカソードブロックも含まれる。カソードブロック10は、好ましくは黒鉛製である。カソードブロック10は、直方体形状であり、
図4に示すとおり、底部に溝11が設けられている。溝11は、カソードブロック10の底部に加えて、カソードブロック10の側面(
図2のx方向に垂直な面)においても開口している。すなわち溝11は、カソードブロック10をx方向に貫通している。溝11は、底面10a及び二つの側面10bを有している。
【0020】
溝11の底面10aは、水平面にほぼ水平な平面である。一方、二つの側面10bは、鉛直方向から傾斜している(
図5を参照。)。二つの側面10bは、より具体的には、カソードブロック10の底面(z方向下側)に近づくほど互いの間隔が小さくなるように傾斜している。傾斜角度は、例えば1~20°である。これによって、溝11はyz断面(コレクターバー20が延びる方向と垂直な断面)において、台形の形状を有している。この断面形状は、コレクターバー20及びサポートバー30が溝11から脱落するのを抑制できるため、好ましい形状である。もっとも、溝11の断面形状は任意である。溝11の断面形状は例えば、矩形であってもよい。すなわち、溝11の二つの側面10bは、水平面と垂直な面であってもよい。
【0021】
溝11内には、コレクターバー20及びサポートバー30が配置されている。
【0022】
コレクターバー20は、より具体的には、
図2及び
図3に示すように、x方向の両方の端部が溝11の外側に突き出るように溝11内に配置されている。このように、ある部材が「溝11内に配置されている」という場合、当該部材の少なくとも一部が溝11内に配置されていることを意味し、当該部材の他の一部が溝11の外側にはみ出している場合を含むものとする。
【0023】
コレクターバー20は、金属製である。コレクターバー20は、電気伝導率が高い金属からなることが好ましい。コレクターバー20は、例えば鉄若しくは銅、又はこれらの合金からなり、好ましくは銅又は銅合金からなる。
【0024】
コレクターバー20は、一方向に延びた形状を有している。以下、コレクターバー20が延びる方向(x方向)を長さ方向と呼ぶ。また、長さ方向及び高さ方向(カソードアセンブリ100が電解炉1に配置された状態における鉛直方向(z方向))の両方に垂直な方向(y方向)を幅方向と呼ぶ。コレクターバー20は、溝11が延びる方向と長さ方向とが平行になるように配置されている。
【0025】
図5に示すように、コレクターバー20は、カソードブロック10の溝11の底面10aと接触する上面(第1の面)20a、上面20aの反対側の面である下面(第2の面)20b、及び溝11の側面10bと対向する面である二つの外側面20cを有している。
【0026】
上面20aは、溝11の底面10aに沿った形状を有していることが好ましい。上面20aは、例えば水平面と平行な平面である。
【0027】
下面20bは、後述するサポートバー30の支持面(31a、32a)に接触している。下面20bは、支持面(31a、32a)に沿った形状を有している。下面20bはより具体的には、カソードアセンブリ100が組み上げられて電解炉1(
図1)に設置された状態において、幅方向の内側から外側に向かって高さが高くなるように傾斜している。下面20bの詳細は後述する。
【0028】
二つの外側面20cの各々と対応する溝11の側面10bとの間には、隙間c1が設けられている。すなわち、コレクターバー20は、溝11の側面10bと接触していない。二つの外側面20cは任意の形状であってよい。二つの外側面20cは例えば、水平面と垂直な平面である。
【0029】
サポートバー30は、溝11内において、コレクターバー20の下側に配置されている。サポートバー30は、一方向に延びた形状を有しており、溝11が延びる方向とサポートバー30が延びる方向とが平行になるように配置されている。
【0030】
図3では、サポートバー30の全体が溝11内に配置されているように図示しているが、この構成は例示であり、サポートバー30もコレクターバー20と同様に、一部が溝11からはみ出していてもよい。
【0031】
サポートバー30の長さ(x方向の寸法)は、カソードブロック10の長さと同程度であることが好ましいが、カソードブロック10の長さよりも短くてもよい。サポートバー30の長さは、好ましくはカソードブロック10の長さの30%以上であり、さらに好ましくは50%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。
【0032】
サポートバー30は、導電性を有していても有していなくてもよい。サポートバー30の材質は任意であるが、所定の強度と耐熱性とを備えているものが好ましい。サポートバー30は、例えば金属やセラミックスからなり、好ましくは鉄又は鉄合金からなる。
【0033】
サポートバー30は、幅方向に並んで配置された、第1サブバー(第1サブサポートバー)31と、第2サブバー(第2サブサポートバー)32とからなる。
【0034】
図5に示すように、第1サブバー31は、コレクターバー20の下面20bと接触するように配置される上面31a、上面31aの反対側の面である下面31b、溝11の側面10bと対向する面である外側面31c、及び第2サブバー32と対向する面である内側面31dを有している。同様に、第2サブバー32は、コレクターバー20の下面20bと接触するように配置される上面32a、上面32aの反対側の面である下面32b、溝11の側面10bと対向する面である外側面32c、及び第1サブバー31と対向する面である内側面32dを有している。
【0035】
コレクターバー20は、第1サブバー31の上面31a及び第2サブバー32の上面32aによって支持されている。以下、上面31a及び上面32aによって構成される面を「サポートバー30の支持面(31a、32a)」又は単に「支持面(31a、32a)」と呼ぶ。
【0036】
支持面(31a、32a)は、コレクターバー20の下面20bに沿う形状を有している。さらに、下面20b及び支持面(31a、32a)の各々は、コレクターバー20が幅方向に膨張したときコレクターバー20が高さ方向上側に移動するように傾斜している。
【0037】
本実施形態では、下面20b及び支持面(31a、32a)の各々は、カソードアセンブリ100が組み上げられて電解炉1(
図1)に設置された状態において、幅方向の内側から外側に向かって高さが高くなるように傾斜している。下面20b及び支持面(31a、32a)の各々は、より具体的には、幅方向の内側から外側に向かって高さが高くなるように、水平面から傾斜角αだけ傾斜している。傾斜角αは、特に限定されないが、例えば1~60°である。傾斜角αの下限は、好ましくは3°であり、さらに好ましくは5°であり、さらに好ましくは10°である。傾斜角αの上限は、好ましくは50°であり、さらに好ましくは45°であり、さらに好ましくは30°である。下面20b及び支持面(31a、32a)に傾斜を設けることによる効果の詳細は後述する。
【0038】
第1サブバー31の下面31b及び第2サブバー32の下面32bは、任意の形状であってよい。下面31b及び下面32bは、例えば水平面と平行な平面である。
【0039】
第1サブバー31の外側面31c及び第2サブバー32の外側面32cは、対応する溝11の側面10bと接触している。より正確には、外側面31cと側面10bとの間、及び外側面32cと側面10bとの間には、後述するスペーサー42が配置されており、外側面31c及び32cは、スペーサー42を間に介した状態で、対応する溝11の側面10bと接触している。外側面31c及び32cは、対応する溝11の側面10bに沿った形状であることが好ましい。
【0040】
第1サブバー31の内側面31dと第2サブバー32の内側面32dとの間には、隙間c2が設けられている。すなわち、第1サブバー31と第2サブバー32とは、互いに接触していない。内側面31d及び内側面32dは任意の形状であってよい。内側面31d及び内側面32dは例えば、水平面と垂直な平面である。
【0041】
第1サブバー31と第2サブバー32との間の隙間c2の大きさは、固定部材41によって固定されている。本実施形態では、
図3に示すように、複数の固定部材41がサポートバー30の長さ方向に沿って所定の間隔で配置されている。固定部材41の各々は、幅方向に延びた板状の形状を有しており、第1サブバー31の下面31b及び第2サブバー32の下面32bに接触している。固定部材41の各々は、幅方向の両端付近の二箇所において、ドリルビス411によってサポートバー30に固定されている。
【0042】
固定部材41は、導電性を有していても有していなくてもよい。固定部材41の材質は任意である。固定部材41は、例えば金属やセラミックスからなる。固定部材41は、コレクターバー20よりも熱膨張率が小さいことが好ましく、コレクターバー20及びサポートバー30のいずれよりも熱膨張率が小さいことがさらに好ましい。
【0043】
固定部材41とサポートバー30とを固定する位置(ドリルビス411を打ち込む位置)は、できるだけサポートバー30の幅方向の外側であることが好ましい。すなわち、固定部材41とサポートバー30とを固定する二つの位置の間の長さをできるだけ長くすることが好ましい。固定部材41とサポートバー30とを固定する二つの位置の間の長さは、好ましくはサポートバー30の幅の50%以上であり、さらに好ましくは75%以上である。
【0044】
上述のとおり、第1サブバー31の外側面31c及び第2サブバー32の外側面32cは、スペーサー42を間に介した状態で、対応する溝11の側面10bと接触している。また、第1サブバー31と第2サブバー32との間の隙間c2の大きさは、固定部材41によって固定されている。この構成によれば、サポートバー30がスペーサー42を間に介した状態で溝11の側面10bに挟まれることにより、サポートバー30の幅方向の位置が固定される。また、コレクターバー20が第1サブバー31の上面31a及び第2サブバー32の上面32aに挟まれることにより、コレクターバー20の幅方向の位置が固定される。これによって、コレクターバー20及びサポートバー30が溝11内に固定される。
【0045】
スペーサー42は、高温で軟化することによって、サポートバー30が熱膨張したときカソードブロック10が受ける応力を緩和する。スペーサー42は例えば、熱可塑性樹脂又は融点が650℃以下の金属からなるシート状の部材である。スペーサー42は、好ましくは熱可塑性樹脂のシートである。
【0046】
[カソードアセンブリ100の組立手順]
図6A~
図6Dを参照して、カソードアセンブリ100の組立手順を説明する。
図6A~
図6Dに示すように、カソードアセンブリ100の組立ては、カソードブロック10の底部が上向きになるように配置して行う。
【0047】
まず、
図6Aに示すように、溝11の底面10aの幅方向の中央付近にコレクターバー20を配置する。この際、コレクターバー20の上面20aが溝11の底面10aと接触するように配置する。
【0048】
次に、
図6Bに示すように、溝11の側面10bにスペーサー42を配置し、さらにコレクターバー20の上にサポートバー30を配置する。この際、サポートバー30の支持面(31a、32a)がコレクターバー20の下面20bと接触するように配置する。さらに、第1サブバー31及び第2サブバー32を幅方向の外側に寄せて、外側面31c及び外側面32cがスペーサー42を間に介して対応する溝11の側面10bに接触するようにする。
【0049】
次に、
図6Cに示すように、サポートバー30の上に複数の固定部材41を配置し、ドリルビス411を打ち込んでサポートバー30と複数の固定部材41とを固定する。
【0050】
これによって、
図6Dに示すように、カソードアセンブリ100が形成される。カソードアセンブリ100は、
図6Dから上下を反転した状態で電解炉1(
図1)に設置される。
【0051】
[カソードアセンブリ100の効果]
図7を参照して、カソードアセンブリ100の効果を説明する。
図7は、コレクターバー20が幅方向に膨張する様子を模式的に示す断面図である。コレクターバー20の二つの外側面20cと溝11の側面10bとの間には隙間c1が存在する。そのため、コレクターバー20を加熱したとき、コレクターバー20は、
図7に白抜きの矢印で模式的に示すように、幅方向の中心を起点として外側に向かって熱膨張する。
【0052】
コレクターバー20の下面20b及びサポートバー30の支持面(31a、32a)の各々は、幅方向の内側から外側に向かって高さが高くなるように傾斜している。そのため、コレクターバー20が幅方向の外側に膨張すると、支持面(31a、32a)の上をずり上がり、コレクターバー20が高さ方向(z方向)の上側に移動する。これによって、溝11の底面10aとコレクターバー20の上面20aとの間に強い接触圧力が掛かる。
【0053】
図8は、仮想的な比較例によるカソードアセンブリ900の構成を模式的に示す断面図である。カソードアセンブリ900は、カソードブロック910と、コレクターバー920とを備えている。カソードブロック910には溝911が形成されており、コレクターバー920は、溝911内に配置されている。
【0054】
カソードアセンブリ900では、コレクターバー920が幅方向に膨張することによって、溝911の側面とコレクターバー920の側面との間に強い接触圧力が掛かり、この部分の接触抵抗が低くなる。これによって、
図8に二点鎖線によって模式的に示すように、電流が迂回して流れ、電力が余計に消費される。
【0055】
これに対し、本実施形態によるカソードアセンブリ100の構成によれば、溝11の底面10aとコレクターバー20の上面20aとの間に強い接触圧力が掛かる。これによって、カソードブロック10の上部から底部に向かって最短経路で電流が流れる。これによって、カソード電圧降下を改善することができる。
【0056】
なお、コレクターバー20及びサポートバー30は、幅方向だけではなく、高さ方向にも熱膨張する。高さ方向の熱膨張も、底面10aと上面20aとの接触圧力の向上に寄与する。
【0057】
以上、本発明の第1の実施形態によるカソードアセンブリ100の構成を説明した。カソードアセンブリ100の構成によれば、コレクターバー20が熱膨張した際、カソードブロック10の溝11の側面10bよりも底面10aに強い接触圧力が掛かるようにすることで、カソードブロック10内の電流経路を最短化し、電力消費量を抑制することができる。
【0058】
上記では、サポートバー30が第1サブバー31及び第2サブバー32からなる場合を説明した。サポートバー30が一つの部品から構成されている場合、サポートバー30の幅と溝11の幅とを精度よく一致させることが好ましいが、そのような加工は、特に工業的な規模での生産では困難な場合がある。サポートバー30を第1サブバー31と第2サブバー32とに分割し、隙間c2の大きさを固定部材41によって調整することで、サポートバー30の幅の調整が容易になる。
【0059】
本実施形態ではまた、第1サブバー31と第2サブバー32とが互いに接触しないように配置されている。さらに、サポートバー30と固定部材41とは、サポートバー30の幅方向の外側でドリルビス411によって固定されている。この構成によれば、第1サブバー31及び第2サブバー32は、
図7に白抜きの矢印で模式的に示すように、ドリルビス411の位置を起点として、幅方向の外側から内側に向かって膨張する。これによって、固定部材41の熱膨張の影響をキャンセルできる。あるいは、第1サブバー31及び第2サブバー32が、固定部材41の熱膨張の量よりも大きく膨張することによって、コレクターバー20を高さ方向のより上側に移動させることができる。
【0060】
もっとも、コレクターバー20を溝11の側面10bよりも底面10aにより強く接触させるという効果は、サポートバー30が一つの部品から構成されている場合でも得られる。そのため、サポートバー30が第1サブバー31及び第2サブバー32からなることは必須ではなく、サポートバー30は一つの部品から構成されていてもよい。この場合、カソードアセンブリ100は、固定部材41を備えていなくてもよい。
【0061】
またスペーサー42も、コレクターバー20を溝11の側面10bよりも底面10aにより強く接触させるという観点からは必須ではない。そのためカソードアセンブリ100は、スペーサー42を備えていなくてもよい。
【0062】
上記では、コレクターバー20のx方向の両方の端部が溝11の外側に突き出ている場合を説明した。しかし、一つの溝11に二本のコレクターバー20を配置し、各々の一方の端部が溝11の外側に突き出るようにしてもよい。
【0063】
上記では、カソードブロック10に一つの溝11が形成されている場合を説明した。しかし、カソードブロック10に複数の溝を設けて、一つのカソードブロックに複数のコレクターバー20及びサポートバー30を配置するようにしてもよい。
【0064】
[カソードアセンブリ100の変形例1]
図9は、カソードアセンブリ100の変形例の一つであるカソードアセンブリ100Aの構成を模式的に示す断面図である。カソードアセンブリ100Aは、カソードアセンブリ100(
図5)のコレクターバー20に代えて、コレクターバー20Aを備えている。
【0065】
コレクターバー20Aは、幅方向に並んで配置された、第1サブバー(第1サブコレクターバー)21と、第2サブバー(第2サブコレクターバー)22とからなる。すなわち、カソードアセンブリ100(
図5)のコレクターバー20は一つの部品から構成されているのに対し、カソードアセンブリ100A(
図9)のコレクターバー20Aは二つの部品からなる。第1サブバー21と第2サブバー22とは、互いに接触した状態で配置されている。カソードアセンブリ100Aの構成によっても、カソードアセンブリ100の場合と同様の効果が得られる。
【0066】
コレクターバー20Aの材質によっては、大きいサイズの部品を調達することが困難な場合がある。カソードアセンブリ100Aの構成によれば、コレクターバー20Aを第1サブバー21と第2サブバー22とに分けることによって、部品の調達を容易にすることができる。コレクターバー20Aは、三つ以上の部品から構成されるようにしてもよい。
【0067】
[カソードアセンブリ100の変形例2]
図10は、カソードアセンブリ100の変形例の一つであるカソードアセンブリ100Bの構成を模式的に示す断面図である。カソードアセンブリ100Bは、カソードアセンブリ100A(
図9)と比較して、傾斜角αの大きさが異なっている。
【0068】
傾斜角αが大きいほど、コレクターバー20Aが熱膨張した際、コレクターバー20Aが高さ方向の上側に移動する量が大きくなる。そのため、傾斜角αが大きいほど、溝11の底面10aとコレクターバー20の上面20aとの間により強い接触圧力を掛けることができる。一方、傾斜角αが大きいほど、コレクターバー20Aの断面積が小さくなる。傾斜角αは、底面10aと上面20aとの間の接触圧力が大きくなる効果と、コレクターバー20Aの断面積が小さくなる効果とを考慮して決定することが好ましい。
【0069】
[第2の実施形態]
[カソードアセンブリ200の構成]
図11~
図13を参照して、本発明の第2の実施形態によるカソードアセンブリ200の構成を説明する。
図11は、カソードアセンブリ200の構成を模式的に示す斜視図である。
図11は、
図3と同様に、カソードアセンブリ200を底面側から見た斜視図である。
図12は、カソードアセンブリ200を
図11のXII-XII線を通る面で切断した断面図(yz断面図)であり、
図13は、カソードアセンブリ200を
図11のXIII-XIII線を通る面で切断した断面図(yz断面図)である。
【0070】
カソードアセンブリ200は、カソードアセンブリ100(
図3)のコレクターバー20及びサポートバー30に代えて、コレクターバー50及びサポートバー60を備えている。すなわち、カソードアセンブリ200は、カソードブロック10と、コレクターバー50と、サポートバー60とを備えている。カソードアセンブリ200はさらに、固定部材43及び間隔調整部材44を備えている。
【0071】
コレクターバー50は、幅方向に並んで配置された、第1サブバー(第1サブコレクターバー)51と、第2サブバー(第2サブコレクターバー)52とからなる。
【0072】
図12及び
図13に示すように、第1サブバー51は、溝11の底面10aと接触するように配置される上面51a、上面51aの反対側の面である下面51b、溝11の側面10bと対向する面である外側面51c、及び第2サブバー52と対向する面である内側面51dを有している。同様に、第2サブバー52は、溝11の底面10aと接触するように配置される上面52a、上面52aの反対側の面である下面52b、溝11の側面10bと対向する面である外側面52c、及び第1サブバー51と対向する面である内側面52dを有している。
【0073】
以下、上面51a及び上面52aによって構成される面(第1の面)を「コレクターバーの上面(51a、52a)」又は単に「上面(51a、52a)」と呼ぶ。同様に、下面51b及び下面52bによって構成される面(第2の面)を「コレクターバーの下面(51b、52b)」又は単に「下面(51b、52b)」と呼ぶ。
【0074】
上面(51a、52a)は、溝11の底面10aに沿った形状を有していることが好ましい。上面(51a、52a)は、例えば水平面と平行な平面である。
【0075】
下面(51b、52b)は、後述するサポートバー60の支持面(61a、62a)に接触している。下面(51b、52b)は、支持面(61a、62a)に沿った形状を有している。下面(51b、52b)はより具体的には、カソードアセンブリ200が組み上げられて電解炉に設置された状態において、幅方向の外側から内側に向かって高さが高くなるように傾斜している。下面(51b、52b)の詳細は後述する。
【0076】
第1サブバー51の外側面51c及び第2サブバー52の外側面52cの各々は、対応する溝11の側面10bと接触している。すなわち、コレクターバー50は、溝11の側面10bと接触している。第1サブバー51の外側面51c及び第2サブバー52の外側面52cの各々は、対応する溝11の側面10bに沿った形状を有していることが好ましい。
【0077】
第1サブバー51の内側面51dと第2サブバー52の内側面52dとの間には、隙間c3が設けられている。すなわち、第1サブバー51と第2サブバー52とは接触していない。内側面51d及び内側面52dは任意の形状であってよい。内側面51d及び内側面52dは例えば、水平面と垂直な平面である。
【0078】
サポートバー60は、幅方向に並んで配置された、第1サブバー(第1サブサポートバー)61と、第2サブバー(第2サブサポートバー)62とからなる。
【0079】
図12及び
図13に示すように、第1サブバー61は、コレクターバー50の下面(51b、52b)と接触するように配置される上面61a、上面61aの反対側の面である下面61b、溝11の側面10bと対向する面である外側面61c、及び第2サブバー62と対向する面である内側面61dを有している。同様に、第2サブバー62は、コレクターバー50の下面(51b、52b)と接触するように配置される上面62a、上面62aの反対側の面である下面62b、溝11の側面10bと対向する面である外側面62c、及び第1サブバー61と対向する面である内側面62dを有している。
【0080】
コレクターバー50は、第1サブバー61の上面61a及び第2サブバー62の上面62aによって支持されている。以下、上面61a及び上面62aによって構成される面を「サポートバー60の支持面(61a、62a)」又は単に「支持面(61a、62a)」と呼ぶ。
【0081】
支持面(61a、62a)は、コレクターバー50の下面(51b、52b)に沿う形状を有している。さらに、下面(51b、52b)及び支持面(61a、62a)の各々は、コレクターバー50が幅方向に膨張したときコレクターバー50が高さ方向上側に移動するように傾斜している。
【0082】
本実施形態では、下面(51b、52b)及び支持面(61a、62a)の各々は、カソードアセンブリ200が組み上げられて電解炉に設置された状態において、幅方向の外側から内側に向かって高さが高くなるように傾斜している。下面(51b、52b)及び支持面(61a、62a)の各々は、より具体的には、幅方向の外側から内側に向かって高さが高くなるように、水平面から傾斜角βだけ傾斜している。傾斜角βは、特に限定されないが、例えば1~60°である。傾斜角βの好ましい範囲は、カソードアセンブリ100(
図5)の傾斜角αの好ましい範囲と同様である。
【0083】
第1サブバー61の下面61b及び第2サブバー62の下面62bは、任意の形状であってよい。下面61b及び下面62bは、例えば水平面と平行な平面である。
【0084】
第1サブバー61の外側面61c及び第2サブバー62の外側面62cと対応する溝11の側面10bとの間には、隙間c4が設けられている。すなわち、サポートバー60は、溝11の側面10bと接触していない。外側面61c及び外側面62cは任意の形状であってよい。外側面61c及び外側面62cは例えば、水平面と垂直な平面である。
【0085】
第1サブバー61の内側面61dと第2サブバー62の内側面62dとの間には、隙間c5が設けられている。すなわち、第1サブバー61と第2サブバー62とは、互いに接触していない。内側面61d及び内側面62dは任意の形状であってよい。内側面61d及び内側面62dは例えば、水平面と垂直な平面である。
【0086】
第1サブバー61と第2サブバー62との間の隙間c5は、間隔調整部材44によって所定の大きさに調整された状態で維持されている。本実施形態では、複数の間隔調整部材44がサポートバー60の長さ方向に沿って所定の間隔で配置されている。間隔調整部材44は、例えばねじである。
図13に示すように、第1サブバー61にねじ穴611を設けてここに間隔調整部材44を挿入し、締結度合によって間隔調整部材44の突出度合いを調整することで、隙間c5の大きさを調整することができる。
【0087】
間隔調整部材44は、上記の構成に限定されない。間隔調整部材44は、隙間c5の大きさを調整できるものであればよい。もっとも、隙間c5の大きさを細かく制御できるという観点からは、ねじ機構を利用したものであることが好ましい。
【0088】
サポートバー60の高さ方向の下側には、固定部材43が配置されている。コレクターバー50及びサポートバー60は、溝11の底面10a及び固定部材43によって高さ方向の上下から挟まれることにより、高さ方向の位置が固定されている。
【0089】
本実施形態では、
図11に示すように、複数の固定部材43がサポートバー60の長さ方向に沿って所定の間隔で配置されている。固定部材43の各々は、幅方向に延びた板状の形状を有しており、第1サブバー61の下面61b及び第2サブバー62の下面62bに接触している。固定部材43の各々は、幅方向の両端付近において、ねじ431によってカソードブロック10の底面に固定されている。
【0090】
ねじ431を通すために固定部材43に空けておく貫通穴43aは、
図12に示すように、幅方向に延びた形状を有することが好ましい。これによって、固定部材43が幅方向に熱膨張した際に、カソードブロック10に加わる応力を低減することができる。また、高さ方向の熱膨張による影響を緩和するため、ねじ431の長さは長くすることが好ましい。一方、ねじ431が長すぎると、溝11の底面10aへの圧力が下がりすぎる場合がある。ねじ431の長さは、これらを考慮して適切な長さとすることが好ましい。また、ねじ穴12が破損するのを抑制するため、ねじ431として二条ねじ等の多条ねじを用いることが好ましい。
【0091】
固定部材43は、導電性を有していても有していなくてもよい。固定部材43の材質は任意である。固定部材43は、例えば金属やセラミックスからなる。固定部材43は、コレクターバー50よりも熱膨張率が小さいことが好ましく、コレクターバー50及びサポートバー60のいずれよりも熱膨張率が小さいことがさらに好ましい。
【0092】
上述のとおり、第1サブバー61と第2サブバー62との間の隙間c5は、間隔調整部材44によって所定の大きさに調整された状態で維持されている。また、サポートバー60の支持面(61a、62a)は、幅方向の外側から内側に向かって高さが高くなるように傾斜している。これによって、コレクターバー50の第1サブバー51は、サポートバー60の第1サブバー61から、幅方向の外側に抗力を受ける。同様に、コレクターバー50の第2サブバー52は、サポートバー60の第2サブバー62から、幅方向の外側に抗力を受ける。一方、第1サブバー51及び第2サブバー52は溝11の側面10bに接触しているため、幅方向の外側にも移動できない。この構成によって、コレクターバー50及びサポートバー60が溝11内に固定される。
【0093】
[カソードアセンブリ200の組立手順]
図14A~
図14Dを参照して、カソードアセンブリ200の組立手順を説明する。
図14A~
図14Dに示すように、カソードアセンブリ200の組立ては、カソードブロック10の底部が上向きになるように配置して行う。
【0094】
まず、
図14Aに示すように、溝11の底面10aに第1サブバー51及び第2サブバー52を配置する。この際、上面51a及び上面52aが溝11の底面10aに接触するように配置する。さらに、第1サブバー51及び第2サブバー52を幅方向の外側に寄せて、外側面51c及び外側面52cが対応する溝11の側面10bに接触するようにする。
【0095】
次に、
図14Bに示すように、第1サブバー51及び第2サブバー52の上に第1サブバー61及び第2サブバー62を配置する。この際、サポートバー60の支持面(61a、62a)がコレクターバー50の下面(51b、52b)と接触するように配置する。
【0096】
次に、
図14Cに示すように、サポートバー60の上に複数の固定部材43を配置し、ねじ431をねじ穴12に締め込んでカソードブロック10に固定する。その後、間隔調整部材44を緩めることによって、コレクターバー50及びサポートバー60を溝11内に固定する。
【0097】
これによって、
図14Dに示すように、カソードアセンブリ200が形成される。カソードアセンブリ200は、
図14Dから上下を反転した状態で電解炉に設置される。
【0098】
[カソードアセンブリ200の効果]
図15を参照して、カソードアセンブリ200の効果を説明する。
図15は、コレクターバー50が幅方向に膨張する様子を模式的に示す断面図である。第1サブバー51の外側面51c及び第2サブバー52の外側面52cは溝11の側面10bによって拘束されているのに対し、第1サブバー51と第2サブバー52との間には隙間c3が存在する。そのため、コレクターバー50を加熱したとき、コレクターバー50は、
図7に白抜きの矢印で模式的に示すように、幅方向の外側を起点として内側に向かって熱膨張する。
【0099】
コレクターバー50の下面(51b、52b)及びサポートバー60の支持面(61a、62a)の各々は、幅方向の外側から内側に向かって高さが高くなるように傾斜している。そのため、コレクターバー50が幅方向の内側に膨張すると、支持面(61a、62a)の上をずり上がり、コレクターバー50が高さ方向(z方向)の上側に移動する。これによって、溝11の底面10aとコレクターバー50の上面(51a、52a)との間に強い接触圧力が掛かる。
【0100】
本実施形態ではまた、第1サブバー61の外側面61c及び第2サブバー62の外側面62cが、対応する溝11の側面10bと接触しないように配置されている。この構成によれば、第1サブバー61及び第2サブバー62は、
図15に白抜きの矢印で模式的に示すように、幅方向の内側から外側に向かって膨張する。これによって、コレクターバー50を高さ方向のより上側に移動させることができる。
【0101】
以上、本発明の第2の実施形態によるカソードアセンブリ200の構成を説明した。カソードアセンブリ200の構成によれば、コレクターバー50が熱膨張した際、カソードブロック10の溝11の側面10bよりも底面10aに強い接触圧力が掛かるようにすることで、カソードブロック10内の電流経路を最短化し、電力消費量を抑制することができる。
【0102】
上記では、サポートバー60が第1サブバー61及び第2サブバー62からなる場合を説明した。サポートバー60を第1サブバー61と第2サブバー62とに分割し、隙間c5の大きさを間隔調整部材44によって調整することで、サポートバー60の幅の調整が容易になる。
【0103】
もっとも、コレクターバー50を溝11の側面10bよりも底面10aにより強く接触させるという効果は、サポートバー60が一つの部品から構成されている場合でも得られる。そのため、サポートバー60が第1サブバー61及び第2サブバー62からなることは必須ではなく、サポートバー60は一つの部品から構成されていてもよい。この場合、カソードアセンブリ200は、間隔調整部材44を備えていなくてもよい。
【0104】
[カソードアセンブリ200の変形例]
図16は、カソードアセンブリ200の変形例であるカソードアセンブリ200Aの構成を模式的に示す断面図である。カソードアセンブリ200Aは、カソードアセンブリ200(
図12)の固定部材43に代えて、一対の固定部材45を備えている。
【0105】
一対の固定部材45の各々は、断面がL字型の形状を有し、溝11の側面10bに接する部分と、第1サブバー61の下面61b又は第2サブバー62の下面62bに接する部分とを有している。固定部材45の各々は、溝11の側面10bに接する部分に突起部451を有している。溝11の側面10bに形成されたスリット13に突起部451を挿入することにより、固定部材45の高さ方向の位置が固定されている。コレクターバー50及びサポートバー60は、溝11の底面10a及び固定部材45によって高さ方向の上下から挟まれることにより、高さ方向の位置が固定されている。また、固定部材45、コレクターバー50及びサポートバー60は、溝11によって挟まれることにより、幅方向の位置が固定されている。この構成によって、コレクターバー50及びサポートバー60が溝11内に固定されている。
【0106】
カソードアセンブリ200Aの構成によっても、カソードアセンブリ200の場合と同様の効果が得られる。
【0107】
[第3の実施形態]
[カソードアセンブリ300の構成]
図17~
図19を参照して、本発明の第3の実施形態によるカソードアセンブリ300の構成を説明する。
図17は、カソードアセンブリ300の構成を模式的に示す斜視図である。
図17は、
図3及び
図11と同様に、カソードアセンブリ300を底面側から見た斜視図である。
図18は、カソードアセンブリ300の構成から、後述するサポートバー70の本体部分71を除いた構成を模式的に示す斜視図である。
図19は、カソードアセンブリ300を
図17のXIX-XIX線を通る面で切断した断面図(yz断面図)である。
【0108】
カソードアセンブリ300は、カソードアセンブリ200(
図11)のサポートバー60に代えて、サポートバー70を備えている。すなわち、カソードアセンブリ300は、カソードブロック10と、コレクターバー50と、サポートバー70とを備えている。カソードアセンブリ300はさらに、高さ保持部材46を備えている。
【0109】
サポートバー70は、本体部分71と、シート72とからなる。本体部分71は、セラミックスの粉末の固化物からなる。本体部分71は、好ましくはアルミナセメント等のセメントからなる。サポートバー70は、後述するように、コレクターバー50の下面(51a、52a)の上にシート72を配置し、その上に本体部分71の材料となるセメント等を充填して形成されたものである。
【0110】
シート72は、本体部分71の材料となるセメント等が第1サブバー51と第2サブバー52との隙間等に入り込まないようにするために配置される。シート72の材料は特に限定されない。シート72は、例えば熱可塑性樹脂からなる。シート72として熱可塑性樹脂を用いる場合、昇温時にシート72が軟化することで、カソードブロック10に区加わる応力を緩和する効果も得られる。
【0111】
図19に示すように、サポートバー70は、コレクターバー50の下面(51b、52b)と接触するように配置される支持面70a、支持面70aの反対側の面である下面70b、及び溝11の側面10bと対向する面である二つの外側面70cを有している。
【0112】
サポートバー70の支持面70aは、コレクターバー50の下面(51b、52b)に沿う形状を有している。さらに、下面(51b、52b)及び支持面70aの各々は、コレクターバー50が幅方向に膨張したときコレクターバー50が高さ方向上側に移動するように傾斜している。具体的には、下面(51b、52b)及び支持面70aの各々は、カソードアセンブリ300が組み上げられて電解炉に設置された状態において、幅方向の外側から内側に向かって高さが高くなるように傾斜している。
【0113】
サポートバー70の下面70bは、任意の形状であってよい。下面70bは、例えば水平面と平行な平面である。
【0114】
サポートバー70の二つの外側面70cは、対応する溝11の側面10bと接触している。すなわち、サポートバー70は、溝11の側面10bと接触している。
【0115】
高さ保持部材46は、サポートバー70の本体部分71の中に埋め込まれている。高さ保持部材46は、シート72が高温で軟化した際に、コレクターバー50の高さが低下しないように、コレクターバー50を高さ方向下側から支持する。
【0116】
本実施形態では、
図18に示すように、複数の高さ保持部材46がシート72の長さ方向に沿って所定の間隔で配置されている。高さ保持部材46の各々は、シート72の幅方向に延びた板状の形状を有している。高さ保持部材46の各々には、ねじ461が取り付けられている。ねじ461は、先端がシート72を貫通してコレクターバー50に接触するように配置されている。高さ保持部材46はサポートバー70の本体部分71の中に埋め込まれているため、高さ保持部材46及びねじ461の位置は固定されている。これによって、シート72が高温で軟化した際にコレクターバー50の高さが低下するのを抑制することができる。高さ保持部材46の材質は任意である。高さ保持部材46は、例えば金属やセラミックスからなる。
【0117】
高さ保持部材46は、上記の構成に限定されない。高さ保持部材46は、シート72が高温で軟化した際に、コレクターバー50の高さが低下しないように、コレクターバー50を高さ方向下側から支持できるものであればよい。
【0118】
[カソードアセンブリ300の組立手順]
図20A~
図20Dを参照して、カソードアセンブリ300の組立手順を説明する。
図20A~
図20Dに示すように、カソードアセンブリ300の組立ては、カソードブロック10の底部が上向きになるように配置して行う。
【0119】
まず、
図20Aに示すように、溝11の底面10aに第1サブバー51及び第2サブバー52を配置する。この際、上面51a及び上面52aが溝11の底面10aに接触するように配置する。さらに、第1サブバー51及び第2サブバー52を幅方向の外側に寄せて、外側面51c及び外側面52cが対応する溝11の側面10bに接触するようにする。
【0120】
次に、
図20Bに示すように、第1サブバー51及び第2サブバー52の上にシート72を配置する。
【0121】
次に、
図20Cに示すように、シート72の上に高さ保持部材46を配置する。この際、ねじ461の先端がシート72を貫通してコレクターバー50に接触するようにする。その後、シート72の上に、本体部分71の材料となるセメント等を充填してサポートバー70を形成する。
【0122】
これによって、
図20Dに示すように、カソードアセンブリ300が形成される。カソードアセンブリ300は、
図20Dから上下を反転した状態で電解炉に設置される。
【0123】
[カソードアセンブリ300の効果]
図21を参照して、カソードアセンブリ300の効果を説明する。
図21は、コレクターバー50が幅方向に膨張する様子を模式的に示す断面図である。第1サブバー51の外側面51c及び第2サブバー52の外側面52cは溝11の側面10bによって拘束されているのに対し、第1サブバー51と第2サブバー52との間には隙間が存在する。そのため、コレクターバー50を加熱したとき、コレクターバー50は、
図21に白抜きの矢印で模式的に示すように、幅方向の外側を起点として内側に向かって熱膨張する。
【0124】
コレクターバー50の下面(51b、52b)及びサポートバー70の支持面70aの各々は、幅方向の外側から内側に向かって高さが高くなるように傾斜している。そのため、コレクターバー50が幅方向の内側に膨張すると、支持面70aの上をずり上がり、コレクターバー50が高さ方向(z方向)の上側に移動する。これによって、溝11の底面10aとコレクターバー50の上面(51a、52a)との間に強い接触圧力が掛かる。
【0125】
以上、本発明の第3の実施形態によるカソードアセンブリ300の構成を説明した。カソードアセンブリ300の構成によれば、コレクターバー50が熱膨張した際、カソードブロック10の溝11の側面10bよりも底面10aに強い接触圧力が掛かるようにすることで、カソードブロック10内の電流経路を最短化し、電力消費量を抑制することができる。
【0126】
以上、本発明についての実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態のみに限定されず、発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0127】
1 電解炉
100、100A、100B、200、200A、300、900 カソードアセンブリ
10、910 カソードブロック
11、911 溝
10a 底面
11b 側面
20、50、920 コレクターバー
20a、(51a、52a) 上面(第1の面)
20b、(51b、52b) 下面(第2の面)
20c 外側面
30、60、70 サポートバー
(31a、32a)、(61a、62a)、70a 支持面
91 アノード
92 シェル
93 ライニング
94 融液
95 アルミニウム