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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024217
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】時計
(51)【国際特許分類】
   G04G 3/00 20060101AFI20240215BHJP
   G04G 21/00 20100101ALI20240215BHJP
【FI】
G04G3/00 E
G04G21/00 304P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126887
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直
【テーマコード(参考)】
2F002
【Fターム(参考)】
2F002AA12
2F002AB01
2F002AC01
2F002AC02
2F002BA06
2F002BB01
2F002CA06
(57)【要約】
【課題】緩急値を設定するロータリースイッチによって回路基板に加わる圧力が変化することを防止できて、時計精度の低下を抑制できる時計の提供。
【解決手段】時計は、回路基板上に形成される複数の論理緩急設定パターンと、論理緩急設定パターンと接触して導通可能な導通部を有し、回路基板に対して回転することで、導通部を回路基板上で摺動させて前記導通部と導通する論理緩急設定パターンを選択可能なロータリースイッチと、回路基板上の導通部の摺動領域において、論理緩急設定パターンが形成されていない箇所に形成されて導通部と接触可能なダミーパターンと、論理緩急設定パターンと接続され、導通部および論理緩急設定パターンの導通状態に基づいて論理緩急値を設定する論理緩急回路と、を備え、導通部は、論理緩急設定パターンに接触しない場合には、ダミーパターンに接触することを特徴とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板上に形成される複数の論理緩急設定パターンと、
前記論理緩急設定パターンと接触して導通可能な導通部を有し、前記回路基板に対して回転することで、前記導通部を前記回路基板上で摺動させて前記導通部と導通する前記論理緩急設定パターンを選択可能なロータリースイッチと、
前記回路基板上の前記導通部の摺動領域において、前記論理緩急設定パターンが形成されていない箇所に形成されて前記導通部と接触可能なダミーパターンと、
前記論理緩急設定パターンと接続され、前記導通部および前記論理緩急設定パターンの導通状態に基づいて論理緩急値を設定する論理緩急回路と、
を備え、
前記導通部は、前記論理緩急設定パターンに接触しない場合には、前記ダミーパターンに接触することを特徴とする時計。
【請求項2】
請求項1に記載の時計において、
前記導通部の摺動方向に沿った断面形状は曲線であることを特徴とする時計。
【請求項3】
請求項2に記載の時計において、
前記導通部が、前記論理緩急設定パターンおよび前記ダミーパターンの各パターンに跨がって配置される場合に、前記導通部の前記各パターン接触箇所から前記回路基板側に突出する先端までの突出量は、前記各パターンの厚さ寸法よりも小さい
ことを特徴とする時計。
【請求項4】
請求項1に記載の時計において、
前記ロータリースイッチは、前記回路基板に対して回転自在に設けられた回転軸部と、前記回転軸部から互いに反対方向に延出された一対のスイッチアームとを備え、
前記導通部は前記一対のスイッチアームにそれぞれ形成され、
前記ロータリースイッチの設定位置は、前記一対のスイッチアームに形成された各前記導通部が、前記論理緩急設定パターンおよび前記ダミーパターンのいずれかにそれぞれ接触する位置に設定されている
ことを特徴とする時計。
【請求項5】
請求項1に記載の時計において、
前記論理緩急設定パターンおよび前記ダミーパターンは、前記導通部の摺動領域において、同一円周上にそれぞれ形成され、
前記導通部は、前記ロータリースイッチの回転によって、前記論理緩急設定パターンおよび前記ダミーパターンに選択的に接触する
ことを特徴とする時計。
【請求項6】
請求項1に記載の時計において、
前記論理緩急設定パターンおよび前記ダミーパターンは、前記導通部の摺動領域において、円弧状に形成された第1接点部と、前記第1接点部の内周側に円弧状に形成された第2接点部とを備えており、
前記導通部は、前記ロータリースイッチの回転によって、前記第1接点部および前記第2接点部に跨がって配置されて前記論理緩急設定パターンおよび前記ダミーパターンに選択的に接触する
ことを特徴とする時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶等の振動子を有する時計に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水晶時計の歩度を調整する緩急スイッチ機構が開示されている。この緩急スイッチ機構は、ICに接続される複数のパターンを回路基板上に形成し、1つ以上のパターンにスイッチ部材を接触させてスイッチ部材に接触するパターンの組合せを選択することで、可変分周方式で歩度緩急を行っている。
この歩度緩急は、水晶時計の製造工程における調整工程で行われ、パターンの組合せが選択されると、その状態を維持するために、スイッチ部材をパターンにハンダやカシメ、固定リングを用いて固定していた。また、スイッチ部材をパターンに接触させない場合には、スイッチ部材を不要としていた。
【0003】
水晶等の振動子を基準信号源とする時計では、振動子のエージングにより歩度が年々変化するため、時計の精度を維持するためには、販売後のアフターサービスで歩度のエージング変化量を補正することが必要となる。しかしながら、前記特許文献1では、スイッチ部材をハンダ、カシメなどで固定しているため、アフターサービスでの歩度調整は考慮されていなかった。
このため、前記スイッチ部材を回転可能なロータリースイッチに変更することで、アフターサービスで歩度調整を行えるように構成することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭55-140187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロータリースイッチは、回路基板に対して回転可能に設けられたスイッチ部品を、ばねによって回路基板側に付勢し、スイッチ部品の導通部を、回路基板上のパターンに接触させて導通させるものである。このため、スイッチ部品を回転させた場合、導通部は回路基板上のパターン部分と、パターンが形成されていない部分とを摺動しながら移動する。
導通部が摺動する回路基板の表面と、パターンの表面とは高さが異なるため、歩度調整のために、導通部をパターン表面に接触させる場合と、導通部をパターンに接触させずに回路基板表面に接触させる場合とで、導通部から回路基板に加わる圧力が変化する。
振動子の振動は、微小ではあるが回路基板にも共振して伝わる。このため、回路基板に加わる圧力が変化すると振動子の振動にも影響を及ぼし、その結果、時計精度が低下する恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の時計は、回路基板上に形成される複数の論理緩急設定パターンと、前記論理緩急設定パターンと接触して導通可能な導通部を有し、前記回路基板に対して回転することで、前記導通部を前記回路基板上で摺動させて前記導通部と導通する前記論理緩急設定パターンを選択可能なロータリースイッチと、前記回路基板上の前記導通部の摺動領域において、前記論理緩急設定パターンが形成されていない箇所に形成されて前記導通部と接触可能なダミーパターンと、前記論理緩急設定パターンと接続され、前記導通部および前記論理緩急設定パターンの導通状態に基づいて論理緩急値を設定する論理緩急回路と、を備え、前記導通部は、前記論理緩急設定パターンに接触しない場合には、前記ダミーパターンに接触することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態の時計を示す正面図である。
図2】第1実施形態の時計を示すブロック図である。
図3】第1実施形態の時計のロータリースイッチを示す断面図である。
図4】第1実施形態の回路基板の要部を示す平面図である。
図5】第1実施形態のロータリースイッチを示す斜視図である。
図6】第1実施形態のロータリースイッチを示す平面図である。
図7】第1実施形態のロータリースイッチの導通部を示す拡大図である。
図8】第2実施形態の回路基板の要部を示す平面図である。
図9】変形例の回路基板の要部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本発明の第1実施形態の時計1を示す正面図であり、図2は時計1のブロック図である。
時計1は、図2に示すように、機械的エネルギー源としてのぜんまい2と、ぜんまい2のトルクを伝達するエネルギー伝達装置としての増速輪列3と、増速輪列3に連結されて時刻表示を行う時刻表示装置4と、前記増速輪列3を介して伝達されるトルクで駆動される発電機5と、整流回路6と、電源回路7と、水晶振動子8と、回転制御装置10とを備えた電子制御式機械時計である。
回転制御装置10は、SOI(Silicon on Insulator)プロセスによって製造されたICによって構成され、発振回路11、分周回路12、回転検出回路13、制動制御回路14、定電圧回路15および温度補償機能部20を備えて構成されている。
【0009】
時刻表示装置4は、図1に示すように、時針41、分針42、秒針43の各指針と、日車44と、各指針の目盛および日窓を備える文字板45とを備えて構成されている。また、文字板45には、ぜんまい2の巻き上げ残量を示すパワーリザーブ針46と、パワーリザーブ針46が指示する目盛47とが設けられている。
【0010】
発電機5は、図示を略すが、ローターと、ローターの回転に伴い誘起電力を発生するコイルとを備え、電気的エネルギーを供給する。ローターは、増速輪列3を介してぜんまい2によって駆動される。発電機5は、ローターが回転することで磁束が変化し、コイルに誘起電力を発生させて発電する。また、発電機5には、制動制御回路14で制御されるブレーキ回路が設けられている。ブレーキ回路は、発電機5の出力端子を短絡させてショートブレーキを掛けることで、発電機5を調速機としても機能させるものである。
発電機5には整流回路6が接続され、発電機5から供給された電気エネルギーは、整流回路6を介して、電源回路7の電源コンデンサーに充電され、電源コンデンサーの両端に発生する電圧(発電電圧)で回転制御装置10を駆動する。
整流回路6は、昇圧整流、全波整流、半波整流、トランジスター整流等からなり、発電機5からの交流出力を昇圧、整流して、電源回路7に充電供給するものである。
【0011】
[回転制御装置の構成]
次に、図2に示す発電機5のローターの回転を制御する回転制御装置10の構成について説明する。
発振回路11は、発振信号発生源である水晶振動子8を発振させる。そして、水晶振動子8の発振信号をフリップフロップからなる分周回路12に出力する。
【0012】
分周回路12は、前記発振信号を分周して、複数の周波数(たとえば、2kHz~8Hz)のクロック信号を作成し、制動制御回路14や温度補償機能部20に必要なクロック信号を出力する。ここで、分周回路12から制動制御回路14に出力されるクロック信号は、後述するように、ローターの回転制御の基準となる基準信号fs1である。
回転検出回路13は、発電機5に接続された図示しない波形整形回路とモノマルチバイブレーターとで構成され、発電機5のローターの回転周波数を表す回転検出信号FG1を出力する。
【0013】
制動制御回路14は、回転検出回路13から出力される回転検出信号FG1と、分周回路12から出力される基準信号fs1とを比較し、発電機5の調速を行うための制動制御信号を発電機5のブレーキ回路に出力する。なお、基準信号fs1は、通常運針時のローターの基準回転速度(例えば8Hz)に合わせた信号である。したがって、制動制御回路14は、ローターの回転速度(回転検出信号FG1)と基準信号fs1との差に応じて制動制御信号のデューティー比を変更し、ブレーキ回路によるブレーキ力を調整し、ローターの動きを制御する。
定電圧回路15は、電源回路7から供給される外部電圧を一定電圧(定電圧)に変換して供給する回路である。
【0014】
[温度補償機能部]
温度補償機能部20は、水晶振動子8等の温度特性を補償して発振周波数の変動を抑制するものであり、温度補償機能制御回路21と、温度補償回路30とを備える。
温度補償機能制御回路21は、所定のタイミングになると、温度補償回路30を動作させる。
温度補償回路30は、温度測定部である温度センサー31と、温度補正テーブル記憶部32と、個体差補正データ記憶部33と、演算回路35と、論理緩急回路36と、周波数調整制御回路37とを備える。
【0015】
温度センサー31は、時計1が使用されている環境の温度に応じた出力を演算回路35に入力する。
温度補正テーブル記憶部32は、理想的な水晶振動子8、および、理想的な温度センサー31の場合に、ある温度でどれだけ歩度を補正すればよいかが設定された温度補正テーブルを記憶している。
しかし、水晶振動子8や温度センサー31には製造による個体差が生じるため、あらかじめ製造や検査の工程で測定した、水晶振動子8の特性や、温度センサー31の特性を基に、どれだけ個体差を補正すれば良いかを設定した個体差補正データが個体差補正データ記憶部33に書き込まれている。
【0016】
演算回路35は、温度センサー31の出力(温度)と、温度補正テーブル記憶部32に記憶された温度補正テーブルと、個体差補正データ記憶部33に記憶された個体差補正データとを利用して、歩度の補正量を計算し、その結果を、論理緩急回路36および周波数調整制御回路37に出力する。
本実施形態では、論理緩急回路36および周波数調整制御回路37の2つの方法で歩度の調整を行っている。
【0017】
論理緩急回路36は、分周回路12の各分周段に所定のタイミングでセットもしくはリセット信号を入力することで、デジタル的にクロック信号の周期を長くしたり、短くしたりする回路である。
周波数調整制御回路37は、発振回路11の付加容量を調整することにより、発振回路11の発振周波数そのものを調整する回路である。
【0018】
論理緩急回路36には、回路基板50に形成された第1論理緩急設定パターン51、第2論理緩急設定パターン52、第3論理緩急設定パターン53が接続され、これらの論理緩急設定パターン51~53に導通可能なロータリースイッチ60が設けられている。
【0019】
[回路基板]
回路基板50は、図3に示すように、地板91の裏面つまり裏蓋側の面に配置されている。この回路基板50には、ICである回転制御装置10や、水晶振動子8等が取り付けられ、さらに、図4に示すように、回路基板50の端部には、論理緩急値を設定するために用いられる論理緩急設定パターン51~53と、ダミーパターン54とが形成されている。
【0020】
第1論理緩急設定パターン51は、パッド511と、配線部512と、接点部515とを備えている。
パッド511は、ICである回転制御装置10と平面的に重なる位置に形成され、回転制御装置10の各端子と電気的に導通する。配線部512は、パッド511と接点部515とを電気的に接続する。
接点部515は、回路基板50に形成された貫通孔55の周囲に環状扇形に形成されている。すなわち、接点部515は、貫通孔55を中心とし、中心角が約50度の2つの同心の円弧で内周側および外周側が区画された略環状扇形とされている。
【0021】
第2論理緩急設定パターン52は、パッド521と、第1配線部522と、第2配線部523と、第1接点部525と、第2接点部526とを備えている。
パッド521は、ICである回転制御装置10と平面的に重なる位置に形成され、回転制御装置10の各端子と電気的に導通する。第1配線部522は、パッド521と第1接点部525とを電気的に接続し、第2配線部523は、第1接点部525と第2接点部526とを電気的に接続する。第1配線部522は、配線部512にほぼ沿って形成されている。
第1接点部525は、接点部515と同様に、中心角が約50度の環状扇形とされている。第2接点部526は、第1接点部525に対して周方向に離れて配置され、中心角が約20度の環状扇形とされている。
第2配線部523は、第1接点部525および第2接点部526の外周に沿って円弧状に形成されている。
【0022】
第3論理緩急設定パターン53は、パッド531と、第1配線部532と、第2配線部533と、第1接点部535と、第2接点部536とを備えている。
パッド531は、ICである回転制御装置10と平面的に重なる位置に形成され、回転制御装置10の各端子と電気的に導通する。第1配線部532は、パッド531と第1接点部535とを電気的に接続し、第2配線部533は、第1接点部535と第2接点部536とを電気的に接続する。
第1接点部535は、接点部515と同様に、中心角が約50度の環状扇形とされている。第2接点部536は、第2接点部526と同様に、中心角が約20度の環状扇形とされている。
第2配線部533は、第1接点部535および第2接点部536の外周に沿って円弧状に形成されている。
【0023】
接点部515と第1接点部525との間には中心角約10度の溝が形成され、第2接点部526と第2接点部536との間には中心角約10度の溝が形成されている。
また、第1接点部525と第2接点部526とは中心角で約70度離れて形成され、第1接点部535と第2接点部536とは中心角で約40度離れて形成され、接点部515と第1接点部535とは中心角で約40度離れて形成されている。
【0024】
ダミーパターン54は、配線部542と、第1接点部545と、第2接点部546と、第3接点部547とを備えている。第1接点部545は、第2配線部523の内周側、つまり第1接点部525および第2接点部526の間に形成され、中心角が約50度の環状扇形とされている。第2接点部546は、第2配線部533の内周側、つまり第1接点部535および第2接点部536の間に形成され、中心角が約20度の環状扇形とされている。第3接点部547は、接点部515と第1接点部535との間に形成され、中心角が約20度の環状扇形とされている。
配線部542は、貫通孔55の外周に沿って円弧状に形成され、さらに第1接点部545、第2接点部546、第3接点部547に電気的に接続されている。この配線部542は、回路基板50に形成された貫通孔56の位置まで延長されている。
【0025】
以上に説明したように、第2論理緩急設定パターン52および第3論理緩急設定パターン53は、第1接点部525、535と、第2接点部526、536とが周方向に離れて形成され、その離間部分つまり各パターン51~53が形成されていない箇所にはダミーパターン54の第1接点部545、第2接点部546が形成されている。また、第1論理緩急設定パターン51の接点部515と、各パターン52,53のいずれか、本実施形態では第3論理緩急設定パターン53の第1接点部535との間にもダミーパターン54の第3接点部547が形成されている。これにより、第1論理緩急設定パターン51の貫通孔55を挟んだ反対側つまり点対称位置には、パターン52、53が形成され、第2論理緩急設定パターン52の貫通孔55を挟んだ反対側には、パターン51、53、54が形成され、第3論理緩急設定パターン53の貫通孔55を挟んだ反対側には、パターン51、52、54が形成され、ダミーパターン54の貫通孔55を挟んだ反対側には、パターン52、53、54が形成されている。
【0026】
回路基板50に形成される各パターン51~54は、回路基板50の表面に銅箔および金メッキを積層して形成されている。また、回路基板50上に銅箔によってパターンを形成した際には、ダミーパターン54は、論理緩急設定パターン51に導通されている。この状態で銅箔上に金メッキを形成する。その後、貫通孔56を加工してダミーパターン54と論理緩急設定パターン51とを分離している。これにより、各パターン51~54に金メッキを同時に形成することができ、各パターン51~54の製造効率を向上できる。
【0027】
[ロータリースイッチ]
ロータリースイッチ60は、図3に示すように、地板91に取り付けられた軸部材61と、軸部材61に回転自在に挿入された保持部品62と、保持部品62を回路基板50側に付勢するコイルばね63と、保持部品62に保持されるスイッチレバー70とを備えている。
地板91には、貫通孔911と、貫通孔911の文字板側の表面に形成された段部912とが形成されている。ロータリースイッチ60の軸部材61は、貫通孔911に圧入固定される固定軸部611と、前記段部912に当接されるフランジ部612とを備える。このため、軸部材61は、フランジ部612が段部912に当接される位置まで、固定軸部611を貫通孔911に圧入することで地板91に固定される。
【0028】
保持部品62は、円筒状に形成されて前記軸部材61に対して回転自在に取り付けられた回転軸部621と、回転軸部621の外周部分に形成されたフランジ部622とを備えて構成されている。軸部材61は回路基板50に固定されているため、回転軸部621つまり保持部品62は回路基板50に対して回転自在に設けられている。
【0029】
コイルばね63は、保持部品62のフランジ部622と、地板91と間隔を離して配置されて前記軸部材61の先端に対向配置される受け部品92との間に配置されている。受け部品92は、例えば耐磁部品や回路押さえ板で構成される。
なお、受け部品92の裏蓋側には、ぜんまい2を巻き上げる回転錘93が配置され、回転錘93の文字板側には、輪列受95が配置されている。
【0030】
スイッチレバー70は、図3および図5図6に示すように、回転軸部621の外周に嵌合される嵌合穴711が形成された基部71と、基部71から互いに反対方向に延出された一対のスイッチアーム72と、基部71から互いに反対方向に延出された操作アーム73とを備えて構成されている。スイッチレバー70は、回転軸部621に嵌合穴711を圧入固定することで、回転軸部621に保持される。なお、図6に示すように、スイッチアーム72と操作アーム73とは、互いに直交する方向に配置されているが、図3では互いに直交配置されるスイッチアーム72と操作アーム73を表示している。
【0031】
各スイッチアーム72は、回路基板50の表面に沿って配置され、スイッチアーム72の先端には回路基板50に向かって突出する導通部721が形成されている。導通部721の表面は球面状に形成されている。導通部721の表面が球面状であるため、図7に示すように、導通部721の摺動方向に沿った断面形状は曲線となる。
操作アーム73は、基部71から裏蓋側に延出され、さらに外周側に延出されている。操作アーム73の外周端部には、溝731が形成されている。輪列受95には、図3に示すように、操作アーム73の裏蓋側に配置され、図6に示すように、操作アーム73の移動軌跡に沿って円弧状に形成された目盛部951が形成されている。目盛部951には、30度間隔で6箇所に目盛952A~952Fが形成されている。さらに、輪列受95には、プラス記号と、マイナス記号も表記されている。
【0032】
このように構成されたロータリースイッチ60は、スイッチアーム72の操作アーム73を各目盛952A~952Fの位置に合わせることで、スイッチアーム72の導通部721を6箇所の位置に移動して各パターン51~54に選択的に接触させることができる。すなわち、導通部721はロータリースイッチ60のスイッチレバー70を回転することで、スイッチレバー70の回転軸つまり回転軸部621や軸部材61の中心軸を中心とする円周上を摺動し、この円周上を摺動する導通部721の摺動領域において、各パターン51~54は同一円周上にそれぞれ形成されている。このため、導通部721は、ロータリースイッチ60のスイッチレバー70の回転によって、各パターン51~54に選択的に接触する。そして、論理緩急回路36は、導通部721がどのパターン51~53と接触しているか、あるいは導通部721がダミーパターン54のみに接触してパターン51~53とは接触していないこと、つまり導通部721と論理緩急設定パターン51~53の導通状態を検出すると、表1に示すように、6段階で論理緩急ステップを調整する。
【0033】
【表1】
【0034】
表1において、パターンAS1は第1論理緩急設定パターン51を示し、パターンAS2は第2論理緩急設定パターン52を示し、パターンAS3は第3論理緩急設定パターン53を示す。ステップは論理緩急の設定値であるステップを示し、例えば、-2から±0にステップをプラス方向に変化させた場合は、論理緩急は進み方向に補正され、マイナス方向に変化させた場合は遅れ方向に補正される。また、表1において、「1」は各パターン51~53が「VDD接続」または「オープン」とされた状態を示し、「0」は各パターン51~54が「VSS接続」となっていることを示す。本実施形態では、スイッチアーム72の電位はVSSに設定されているので、導通部721が接触したパターン51~53は「VSS接続」つまり「0」となり、接触していないパターン51~53は「1」となる。
【0035】
ここで、裏蓋を外し、回転錘93をロータリースイッチ60と重なる位置から移動すると、ロータリースイッチ60が露出し、治具などを用いて裏蓋側に折り曲げられた操作アーム73を回動することができる。
そして、目盛用の溝731を最もプラス側の目盛952Aに合わせると、操作アーム73に対して直交する方向に延出されたスイッチアーム72の導通部721は、図4の位置721Aに移動し、第1論理緩急設定パターン51の接点部515および第3論理緩急設定パターン53の第2接点部536に接触する。このため、AS1つまり第1論理緩急設定パターン51と、AS3つまり第3論理緩急設定パターン53とが「0」となり、AS2つまり第2論理緩急設定パターン52が「1」となり、論理緩急回路36は、論理緩急値のステップを「+2」に設定する。
操作アーム73の溝731を目盛952Bに合わせると、スイッチアーム72の導通部721は、位置721Bに移動し、第2論理緩急設定パターン52の第1接点部525とダミーパターン54の第2接点部546に接触する。このため、AS2が「0」となり、AS1、AS3は「1」となり、論理緩急回路36は、論理緩急値のステップを「+1」に設定する。
操作アーム73の溝731を目盛952Cに合わせると、スイッチアーム72の導通部721は、位置721Cに移動し、第2論理緩急設定パターン52の第1接点部525と第3論理緩急設定パターン53の第1接点部535に接触する。このため、AS2およびAS3が「0」となり、AS1は「1」となり、論理緩急回路36は、論理緩急値のステップを「±0」に設定する。
【0036】
操作アーム73の溝731を目盛952Dに合わせると、スイッチアーム72の導通部721は、位置721Dに移動し、第3論理緩急設定パターン53の第1接点部535とダミーパターン54の接点部545に接触する。このため、AS3が「0」となり、AS1およびAS2は「1」となり、論理緩急回路36は、論理緩急値のステップを「-1」に設定する。
操作アーム73の溝731を目盛952Eに合わせると、スイッチアーム72の導通部721は、位置721Eに移動し、ダミーパターン54の第1接点部545および第3接点部547に接触する。このため、AS1、AS2、AS3は「1」となり、論理緩急回路36は、論理緩急値のステップを「-2」に設定する。
操作アーム73の溝731を目盛952Fに合わせると、スイッチアーム72の導通部721は、位置721Fの位置に移動し、第1論理緩急設定パターン51の接点部515と第2論理緩急設定パターン52の第2接点部526に接触する。このため、AS1およびAS2は「0」、AS3は「1」となり、論理緩急回路36は、論理緩急値のステップを「-3」に設定する。
したがって、操作アーム73の溝731が目盛952A~952Fに合う位置、つまり導通部721が位置721A~721Fに移動した位置は、ロータリースイッチ60による論理緩急値の設定位置である。
【0037】
回路基板50に形成される各パターン51~54間の間隔は、中心角で約10度であり、コイルばね63で回路基板50側に付勢されたスイッチレバー70の導通部721がパターン51~54上を摺動した場合に、導通部721が回路基板50の表面に接触しないように、導通部721の形状および寸法が設定されている。
すなわち、図7に示すように、各パターン51~54間の溝部分は幅寸法W1以上、幅寸法W2以下に設定されている。また、回路基板50の厚さ寸法はT1であり、各パターン51~54の厚さ寸法はT2である。すなわち、論理緩急設定パターン51~53と、ダミーパターン54とは同じ厚さ寸法T2とされている。
そして、導通部721が幅寸法W1の溝に配置された場合のパターン51~54の表面つまり導通部721の各パターン51~54との接触箇所から、導通部721における回路基板50側の先端までの突出量をH1、幅寸法W2の溝に配置された場合のパターン51~54の表面から導通部721における回路基板50側の先端までの突出量をH2とすると、T2>H2>H1に設定されている。このため、各パターン51~54間を導通部721が摺動しながら移動すると、導通部721は回路基板50の表面に接触する位置まで落ち込むことがなく、各パターン51~54間をスムーズに移動できる。
【0038】
[第1実施形態の作用効果]
第1実施形態の時計1によれば、ロータリースイッチ60のスイッチレバー70を回転することで、論理緩急の設定値を変更することができる。このため、水晶振動子8のエージングにより歩度が年々変化した場合でも、販売後のアフターサービスにおいて、裏蓋を外してスイッチレバー70を回転することで、歩度のエージング変化量を補正することができ、アフターサービスでの歩度調整作業を容易に行うことができる。
回路基板50に、論理緩急設定パターン51~53とダミーパターン54とを形成したので、ロータリースイッチ60の導通部721を論理緩急設定パターン51~53に接触させない場合には、ダミーパターン54に接触させることができる。このため、ロータリースイッチ60を緩急量の設定位置に移動した際に、導通部721は各パターン51~54のいずれかに必ず接触するため、いずれの設定位置に移動した場合でも回路基板50に加わる力を一定に保つことができる。このため、回路基板50に加わる力が変化することで水晶振動子8の振動に影響を及ぼすことを防止でき、時計精度の低下を防止できる。
【0039】
ロータリースイッチ60のスイッチレバー70は、スイッチアーム72が基部71つまり回転軸部621に対して互いに反対方向に延出され、操作アーム73が回転軸部621に対して互いに反対方向であり、かつ、スイッチアーム72の延出方向とは直交する方向に延出されている。すなわち、スイッチレバー70は、回転軸方向から見た平面視で点対称形状であるため、180度回転させた際には元の状態に戻るため、緩急値を設定する場合に、スイッチレバー70を一方向に回転し続けても設定できるし、両方向に回転しても設定でき、ロータリースイッチ60を容易に操作できて作業性を向上できる。
操作アーム73の先端は、回路基板50から裏蓋側に離間して設けられているので、裏蓋を外した際に作業者は操作アーム73を容易に操作でき、この点でもアフターサービスにおける歩度調整の作業性を向上できる。
【0040】
導通部721の摺動方向に沿った断面形状が曲線であるため、ロータリースイッチ60を回転させてパターン51~54上を摺動させた場合に、導通部721はパターン間をスムーズに移動できる。このため、アフターサービスなどで緩急値を変更する場合に、ロータリースイッチ60を容易に操作できて作業性を向上できる。
導通部721は、球面状に形成されているので、各パターン51~54上を摺動する際に、導通部721と各パターン51~54との接触面積を小さくでき、摺動抵抗を低減できる。
【0041】
導通部721と各パターン51~54とは、導通部721が2つのパターン51~54に跨がって配置される場合に、導通部721が回路基板50の表面に接触しないように形成されているので、導通部721がロータリースイッチ60の回転軸方向つまり回路基板50に対して近づいたり離れたりする方向の変動量を小さくできる。したがって、アフターサービスなどで緩急値を変更する場合に、導通部721はパターン51~54間をスムーズに移動でき、ロータリースイッチ60を容易に操作できて作業性を向上できる。
【0042】
ロータリースイッチ60は、一対のスイッチアーム72を備えているため、各スイッチアーム72の導通部721を、各パターン51~54から選択された2つのパターンに接触させたり、ダミーパターン54の2箇所に接触させることができる。このため、ロータリースイッチ60を回転させた際に、各導通部721が接触するパターン51~54の組合せを適宜設定することができ、省スペースでパターンの組合せを多くでき、緩急量の設定数も増やすことができる。すなわち、4つのパターン51~54が形成された回路基板50に対して、1本のスイッチアーム72を用いた場合、導通部721は各パターンに個別に接触するため、緩急値は4ステップしか設定できないが、本実施形態では、導通部721を2箇所で接触させることができ、緩急値を6ステップで設定できる。
また、ダミーパターン54を設けているので、一方の導通部721を論理緩急設定パターン51~53のいずれかに接触させた際に、他方の導通部721をダミーパターン54に接触させたり、両方の導通部721をダミーパターン54に接触させることができるので、スイッチアーム72が傾くことを防止でき、回路基板50に加わる圧力も一定にできて、時刻精度の低下を防止できる。
さらに、一対のスイッチアーム72はスイッチレバー70の回転軸に対して点対称に形成されているので、コイルばね63で保持部品62を回路基板50側に付勢した際に、一対の導通部721を各パターン51~54に接触させる力も各導通部721で均一になり、各導通部721を確実に各パターン51~54に接触させることができる。
【0043】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の時計について説明する。第2実施形態は、図8に示すように、第1実施形態とは異なる回路基板80を用いている。回路基板80には、第1論理緩急設定パターン81、第2論理緩急設定パターン82、第3論理緩急設定パターン83、ダミーパターン84が形成され、各パターン81~84は、回路基板80に形成された貫通孔85の周囲に半円状に、かつ、内周側および外周側の2重に並んで形成されている。
【0044】
第1論理緩急設定パターン81は、パッド811と、配線部812と、第1接点部815と、第2接点部816とを備えている。
パッド811は、ICである回転制御装置10と平面的に重なる位置に形成され、回転制御装置10の各端子と電気的に導通する。配線部812は、パッド811と各接点部815、816とを電気的に接続する。
第2論理緩急設定パターン82は、パッド821と、配線部822と、第1接点部825と、第2接点部826とを備えている。
パッド821は、ICである回転制御装置10と平面的に重なる位置に形成され、回転制御装置10の各端子と電気的に導通する。配線部822は、パッド821と各接点部825、826とを電気的に接続する。
第3論理緩急設定パターン83は、パッド831と、配線部832と、第1接点部835と、第2接点部836とを備えている。
パッド831は、ICである回転制御装置10と平面的に重なる位置に形成され、回転制御装置10の各端子と電気的に導通する。配線部832は、パッド831と各接点部835、836とを電気的に接続する。
ダミーパターン84は、配線部842と、第1接点部845、第2接点部846とを備えている。配線部842は、第1接点部845および第2接点部846を電気的に接続する。
【0045】
各パターン81~84の各接点部は貫通孔85を中心として、内外周の二重の半円弧状に配置されている。すなわち、第1接点部835、815、825、845は、これらの順序で外周側に半円弧状に配置され、第2接点部816、826、836、846は、これらの順序で内周側に半円弧状に形成され、各接点部は略半円状の範囲に形成されている。
【0046】
論理緩急設定パターン81の第2接点部816は第1接点部815の内周側に形成され、配線部812で互いに導通されている。第1接点部815は中心角約20度の範囲に形成され、第2接点部816は中心角約80度の範囲に形成されている。このため、第2接点部816は、第1接点部825および第1接点部835の内周側にも配置されている。
論理緩急設定パターン82の第1接点部825は、中心角約80度の範囲に形成され、第2接点部826は第1接点部825の内周側において中心角約20度の範囲に形成されている。
論理緩急設定パターン83の第1接点部835は、中心角約20度の範囲に形成されている。第2接点部836は、第1接点部835とは円周方向に離れた位置、すなわち、第1接点部825および第1接点部845の内周側の位置に、中心角約50度の範囲に形成されている。このため、配線部832は、貫通孔85の外周に円弧状に形成されて第1接点部835および第2接点部836を電気的に接続し、さらに第1接点部835をパッド831に電気的に接続している。
ダミーパターン84の第1接点部845は、中心角約50度の範囲に形成され、第2接点部846は第1接点部845の内周側において中心角約20度の範囲に形成されている。
したがって、各パターン81~84の第1接点部815、825、835、845と、第2接点部816、826、836、846とは、周方向の長さ寸法が異なり、これにより、同一パターンの第1接点部と第2接点部とが内外周に配置される箇所以外に、異なるパターンの第1接点部と第2接点部とが内外周に配置される箇所が設けられている。
【0047】
なお、配線部812と配線部822とは金メッキ形成時までは導通されており、その後、貫通孔86を形成することで分離されている。
【0048】
貫通孔85には、図示略のロータリースイッチが取り付けられている。ロータリースイッチは第1実施形態のロータリースイッチ60と同様の構成であるが、スイッチアームは1本のみが設けられた片足タイプである。このスイッチアームの導通部は、図8に示すように、第1接点部815、825、835、845および第2接点部816、826、836、846に跨がって配置される。換言すれば、各パターン81~84は、ロータリースイッチの導通部の摺動領域において、円弧状に形成された第1接点部815、825、835、845と、第1接点部815、825、835、845の内周側に円弧状に形成された第2接点部816、826、836、846とをそれぞれ備えており、導通部は、ロータリースイッチの回転によって、第1接点部815、825、835、845および第2接点部816、826、836、846に跨がって配置されて各パターン81~84に選択的に接触する。
すなわち、導通部が位置741Aに位置する場合は、第1接点部835および第2接点部816に接触し、位置741Bに位置する場合は、第1接点部815および第2接点部816に接触し、位置741Cに位置する場合は、第1接点部825および第2接点部816に接触する。また、導通部が位置741Dに位置する場合は、第1接点部825および第2接点部826に接触し、位置741Eに位置する場合は、第1接点部825および第2接点部836に接触し、位置741Fに位置する場合は、第1接点部845および第2接点部836に接触する。また、導通部が位置741Gに位置する場合は、第1接点部845および第2接点部846に接触する。
したがって、片足タイプのスイッチアームの導通部を各位置741A~741Gに位置させることで、導通部が接触する配線パターンの組合せが異なるため、第1実施形態と同様に論理緩急の補正ステップを変更できる。
【0049】
[第2実施形態の作用効果]
このような第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、ロータリースイッチで論理緩急値を変更できるため、アフターサービスで歩度調整を行うことができる。また、導通部は位置741A~741Gのいずれの場所にある場合でも、外周側の第1接点部と内周側の第2接点部とに接触するため、回路基板80に加わる圧力を一定にでき、時間精度の低下を防止できる。
さらに、回路基板80では、各パターン81~84を内外周に2重に形成し、導通部が内外の各パターンに跨がって接触するように形成したので、略半円状の範囲に各パターン81~84を形成して、緩急値を7ステップで調整することができる。また、ロータリースイッチのスイッチアームは1本のみ設ければよく、このスイッチアームも約180度の範囲、つまり位置741A~741Gの範囲で回動できればよい。このため、ロータリースイッチおよびパターン81~84をコンパクトに形成できる。
【0050】
[他の実施形態]
なお、本発明は前記各実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
例えば、前記各実施形態では、論理緩急設定パターン51~53、81~83と、ダミーパターン54、84とは、銅パターン上に金メッキを形成して同じ材質で構成していたが、これに限らない。すなわち、ダミーパターン54、84は、少なくとも論理緩急設定パターン51~53、81~83と同じ厚さ寸法に設定され、導通部721の摺動経路上に形成されていればよく、その材質は限定されない。ダミーパターン54、84の材質としては、例えば、金メッキがされていない下地の銅パターンのみでもよいし、金属板などの他部品を論理緩急設定パターン51~53、81~83と非接触で回路基板50上に貼り付けてもよく、さらにはレジスト材や絶縁板などの電気を通さない非導通の部品でもよい。なお、論理緩急設定パターン51~53、81~83、ダミーパターン54、84の各厚さ寸法は、完全に同一寸法に限定されず、各パターンに導通部721が接触した際に回路基板50、80に加わる力の変化を低減して力をほぼ一定に保つことができる範囲であれば、各厚さ寸法の差は許容できる。
【0051】
論理緩急設定パターン51~53、81~83や、ダミーパターン54、84は、少なくとも導通部721が接触可能な領域を備えていればよく、幅寸法や配線パターンは前記実施形態に限定されない。例えば、図9に示す回路基板50Bのように、ダミーパターン54Bの第1接点部545B、第2接点部546B、第3接点部547Bを、第1実施形態のダミーパターン54の第1接点部545、第2接点部546、第3接点部547に比べて幅寸法が小さいパターンで形成してもよい。すなわち、論理緩急設定パターン51~53、81~83や、ダミーパターン54、84、54Bは、導通部721が接触できるものであればよく、具体的な構成は適宜設定すればよい。なお、ダミーパターン54Bの配線部542Bは、配線部542と同様に、各接点部545B、546B、547Bを電気的に接続している。
また、第1実施形態の回路基板50では、一方の導通部721が論理緩急設定パターン51に接触し、他方の導通部721がダミーパターン54に接触する設定はないが、このような設定が可能となるように各パターン51~54を形成してもよい。
【0052】
ロータリースイッチとしては前記実施形態の構成に限定されない。例えば、操作アーム73はスイッチアーム72の先端部から裏蓋方向に延長して形成してもよい。
また、スイッチアーム72は、1本あるいは2本に限定されず、3本以上設けてもよいし、各スイッチアーム72に形成する導通部721の数も1つに限定されず、2つ以上設けてもよい。
例えば、回路基板50の一方の位置721A~721Fの内周側に、第4論理緩急設定パターンを円弧状に形成し、他方の位置721A~721Fの内周側に、ダミーパターンを円弧状に形成し、スイッチレバー70を半回転する範囲では3本目のスイッチアームの導通部、あるいは一方のスイッチアーム72の2つ目の導通部が、第4論理緩急設定パターンに接触し、スイッチレバー70をさらに半回転する範囲では前記導通部がダミーパターンに接触するように構成してもよい。この場合、一対の操作アーム73の溝731の形状や色を変えることで、3本目のスイッチアームの導通部が第4論理緩急設定パターンおよびダミーパターンのどちらに接触しているのかを区別すればよい。このように構成すれば、緩急量の設定ステップ数を2倍に増やすことができる。すなわち、スイッチアームの数や導通部の数が増えた場合でも、論理緩急値の設定位置において各導通部が必ず各パターンに接触して回路基板に加わる圧力が一定となるように構成すればよい。
【0053】
また、スイッチアーム72の導通部721としては、第1実施形態のように球面状に形成されたものに限定されない。例えば、導通部は摺動方向に沿った断面形状が曲線となるように、例えば半円筒状等に形成してもよく、特に、パターン間を摺動する際に移動がスムーズとなるように摺動方向に沿った断面が曲線となっていることが好ましい。
【0054】
[本開示のまとめ]
本開示の時計は、回路基板上に形成される複数の論理緩急設定パターンと、前記論理緩急設定パターンと接触して導通可能な導通部を有し、前記回路基板に対して回転することで、前記導通部を前記回路基板上で摺動させて前記導通部と導通する前記論理緩急設定パターンを選択可能なロータリースイッチと、前記回路基板上の前記導通部の摺動領域において、前記論理緩急設定パターンが形成されていない箇所に形成されて前記導通部と接触可能なダミーパターンと、前記論理緩急設定パターンと接続され、前記導通部および前記論理緩急設定パターンの導通状態に基づいて論理緩急値を設定する論理緩急回路と、を備え、前記導通部は、前記論理緩急設定パターンに接触しない場合には、前記ダミーパターンに接触することを特徴とする。
本開示の時計によれば、回路基板に、論理緩急設定パターンの他にダミーパターンを形成したので、ロータリースイッチの導通部を論理緩急設定パターンに接触させない場合には、導通部をダミーパターンに接触させることができ、導通部によって回路基板に加わる力の変化を低減して力をほぼ一定に保つことができ、時計精度の低下を防止できる。
【0055】
本開示の時計において、前記導通部の摺動方向に沿った断面形状は曲線であることが好ましい。
本開示の時計によれば、導通部の摺動方向に沿った断面形状が曲線であるため、ロータリースイッチを回転させてパターン上を摺動させた場合に、導通部はパターン間をスムーズに移動できる。このため、アフターサービスなどで緩急値を変更する場合に、ロータリースイッチを容易に操作できて作業性を向上できる。
【0056】
本開示の時計において、前記導通部が、前記論理緩急設定パターンおよび前記ダミーパターンの各パターンに跨がって配置される場合に、前記導通部の前記各パターン接触箇所から前記回路基板側に突出する先端までの突出量は、前記各パターンの厚さ寸法よりも小さいことが好ましい。
本開示の時計によれば、導通部が各パターン間を摺動しながら移動する際に、導通部がパターン間の溝部に落ち込んで回路基板表面に接触することがない。このため、導通部が一方のパターンから他方のパターンに移動する際に、導通部がロータリースイッチの回転軸方向つまり回路基板に対して近づいたり離れたりする方向の変動量を小さくでき、導通部はパターン間をより一層スムーズに移動できる。このため、アフターサービスなどで緩急値を変更する場合に、ロータリースイッチを容易に操作できて作業性を向上できる。
【0057】
本開示の時計において、前記ロータリースイッチは、前記回路基板に対して回転自在に設けられた回転軸部と、前記回転軸部から互いに反対方向に延出された一対のスイッチアームとを備え、前記導通部は前記一対のスイッチアームにそれぞれ形成され、前記ロータリースイッチの設定位置は、前記一対のスイッチアームに形成された各前記導通部が、前記論理緩急設定パターンおよび前記ダミーパターンのいずれかにそれぞれ接触する位置に設定されていることが好ましい。
本開示の時計によれば、ロータリースイッチは一対のスイッチアームを備えているため、各スイッチアームの導通部を各パターンの2箇所に接触させることができる。このため、ロータリースイッチを回転させた際に、各導通部が接触するパターンの組合せを適宜設定することができ、省スペースでパターンの組合せを多くでき、緩急量の設定数も増やすことができる。また、ダミーパターンを設けているので、例えば、一方の導通部を論理緩急設定パターンのいずれかに接触させた際に、他方の導通部をダミーパターンに接触させることができるので、スイッチアームが傾くことを防止でき、回路基板に加わる圧力も一定にできる。
【0058】
本開示の時計において、前記論理緩急設定パターンおよび前記ダミーパターンは、前記導通部の摺動領域において、同一円周上にそれぞれ形成され、前記導通部は、前記ロータリースイッチの回転によって、前記論理緩急設定パターンおよび前記ダミーパターンに選択的に接触することが好ましい。
本開示の時計によれば、各パターンを導通部の摺動領域において同一円周上にそれぞれ形成しているので、パターンの形状、配置を比較的シンプルにできて容易に製造できる。
【0059】
本開示の時計において、前記論理緩急設定パターンおよび前記ダミーパターンは、前記導通部の摺動領域において、円弧状に形成された第1接点部と、前記第1接点部の内周側に円弧状に形成された第2接点部とを備えており、前記導通部は、前記ロータリースイッチの回転によって、前記第1接点部および前記第2接点部に跨がって配置されて前記論理緩急設定パターンおよび前記ダミーパターンに選択的に接触することが好ましい。
本開示の時計によれば、各パターンに第1接点部、第2接点部を設け、導通部の摺動領域において、外周側に第1接点部を配置し、内周側に第2接点部を配置しているので、各パターンにおいて第1接点部と第2接点部との周方向の長さを異ならせ、同一パターンの第1接点部と第2接点部とが内外周に配置される箇所以外に、異なるパターンの第1接点部と第2接点部とが内外周に配置される箇所を形成でき、これによりロータリースイッチを回転することで、導通部が接触する第1接点部のパターンと、第2接点部のパターンとの組合せを選択できる。したがって、1つの導通部を摺動させることで、導通部に導通されるパターンの組合せを選択できる。
【符号の説明】
【0060】
1…時計、8…水晶振動子、10…回転制御装置、11…発振回路、12…分周回路、36…論理緩急回路、50、50B…回路基板、51…第1論理緩急設定パターン、52…第2論理緩急設定パターン、53…第3論理緩急設定パターン、54、54B…ダミーパターン、60…ロータリースイッチ、61…軸部材、62…保持部品、621…回転軸部、622…フランジ部、63…コイルばね、70…スイッチレバー、71…基部、72…スイッチアーム、73…操作アーム、80…回路基板、81…第1論理緩急設定パターン、82…第2論理緩急設定パターン、83…第3論理緩急設定パターン、84…ダミーパターン、91…地板、92…受け部品、95…輪列受、721…導通部、951…目盛部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9