IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-カートリッジ 図1
  • 特開-カートリッジ 図2
  • 特開-カートリッジ 図3
  • 特開-カートリッジ 図4
  • 特開-カートリッジ 図5
  • 特開-カートリッジ 図6
  • 特開-カートリッジ 図7
  • 特開-カートリッジ 図8
  • 特開-カートリッジ 図9
  • 特開-カートリッジ 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024218
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】カートリッジ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20240215BHJP
【FI】
B41J2/175 169
B41J2/175 151
B41J2/175 119
B41J2/175 161
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126888
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】小泉 義弘
(72)【発明者】
【氏名】長島 巧
(72)【発明者】
【氏名】大屋 瞬
(72)【発明者】
【氏名】水谷 忠弘
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA22
2C056KC04
2C056KC05
2C056KC06
(57)【要約】
【課題】印刷装置に装着できなくなる可能性を低減したカートリッジを提供すること。
【解決手段】印刷装置のカートリッジ装着部に装着されるカートリッジであって、カートリッジ装着部は、液体を受け入れる液体導入部と、非適合のカートリッジと干渉することにより非適合のカートリッジの装着のための移動を制限する制限機構と、を有し、カートリッジは、液体を収容する液体収容部と、液体導入部と接続して液体を供給する液体供給部と、制限機構との干渉を回避するための空間を形成する回避部と、を備える、カートリッジ。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置のカートリッジ装着部に装着されるカートリッジであって、
前記カートリッジ装着部は、液体を受け入れる液体導入部と、非適合のカートリッジと干渉することにより前記非適合のカートリッジの装着のための移動を制限する制限機構と、を有し、
前記カートリッジは、
前記液体を収容する液体収容部と、
前記液体導入部と接続して前記液体を供給する液体供給部と、
前記制限機構との干渉を回避するための空間を形成する回避部と、を備える、カートリッジ。
【請求項2】
請求項1に記載のカートリッジであって、
前記カートリッジ装着部は、さらに、前記液体導入部の軸方向と交差する方向における位置決めのための装置側位置決め部を有し、
前記カートリッジは、さらに、
前記装置側位置決め部と嵌め合わされるカートリッジ側位置決め部と、
前記カートリッジ側位置決め部および前記液体供給部を有する底壁と、を備える、カートリッジ。
【請求項3】
請求項2に記載のカートリッジであって、
前記カートリッジ側位置決め部は、前記底壁から突出している、カートリッジ。
【請求項4】
請求項2に記載のカートリッジであって、さらに、
前記印刷装置に装着された装着状態において、前記印刷装置の装置側端子と接触する回路基板を有する、カートリッジ。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか一項に記載のカートリッジであって、
前記カートリッジは、前記カートリッジ装着部に水平方向である挿入方向に挿入された挿入完了の後に、前記挿入方向の奥側を回転支点として、前記カートリッジのうち前記挿入方向の手前側部分を、重力方向成分を有する回転装着方向に移動させることで前記カートリッジ装着部に装着され、
前記制限機構は、前記装置側位置決め部よりも前記挿入方向の手前側にあり、
前記回避部の前記空間は、前記カートリッジ側位置決め部の前記手前側にあり、かつ、前記底壁の前記回転装着方向側にある、カートリッジ。
【請求項6】
請求項5に記載のカートリッジであって、さらに、
前記底壁と前記液体収容部を挟んで向かい合う上壁であって、前記挿入完了の後に、前記カートリッジ装着部の装置上壁と対向する上壁と、
前記カートリッジが前記回転装着方向に移動することで形成される、前記装置上壁と前記上壁により区画される空間領域に挿入され、前記挿入完了の後における、前記回転装着方向と反対方向への前記カートリッジの移動を制限するためのスペーサーと接続するための接続部と、を備える、カートリッジ。
【請求項7】
請求項6に記載のカートリッジであって、
前記スペーサーは、前記液体を収容可能なスペーサー液体収容部と、前記スペーサー液体収容部と連通する注入部とを有し、
前記接続部は、前記注入部が挿入される接続孔を有する、カートリッジ。
【請求項8】
請求項7に記載のカートリッジであって、
前記上壁は、前記挿入方向側の第1端部よりも前記挿入方向とは反対方向の第2端部が前記底壁に近い側に位置する上面傾斜面を含み、
前記接続部は、前記上面傾斜面に形成されている、カートリッジ。
【請求項9】
請求項5に記載のカートリッジであって、
前記印刷装置に装着された装着状態において、
前記カートリッジ側位置決め部は、前記制限機構と前記挿入方向に向かい合い、
前記底壁は、前記制限機構と前記回転装着方向に向かい合う、カートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カートリッジが着脱可能に装着される液体噴射装置がある(例えば、特許文献1)。この液体噴射装置では、カートリッジが液体噴射装置に挿入されることにより、カートリッジの液体供給口が液体噴射装置の液体導入部に接続される。また、この液体噴射装置では、適合しないカートリッジが挿入された場合、液体噴射装置に設けられた装置側識別部材と適合しないカートリッジとが干渉することにより、カートリッジのさらなる挿入が制限される。一方、適合するカートリッジが挿入されると、装置側識別部材とカートリッジに設けられたカートリッジ側識別部材とが嵌め合わされ、カートリッジは装置側識別部材と干渉せずに装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/098287号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のカートリッジでは、例えば落下による衝撃により、カートリッジ側識別部材が変形した場合、液体噴射装置に装着できなくなるおそれがある。このような課題は、適合しないカートリッジについての装着のための移動の制限が装置側識別部材により行われる場合に限られない。また、このような課題は、挿入により装着されるカートリッジに限られず、挿入後さらにカートリッジが移動されることにより装着されるカートリッジに共通する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、印刷装置のカートリッジ装着部に装着されるカートリッジが提供される。前記カートリッジ装着部は、液体を受け入れる液体導入部と、非適合のカートリッジと干渉することにより前記非適合のカートリッジの装着のための移動を制限する制限機構と、を有する。前記カートリッジは、前記液体を収容する液体収容部と、前記液体導入部と接続して前記液体を供給する液体供給部と、前記制限機構との干渉を回避するための空間を形成する回避部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】印刷システムの構成を示す斜視図。
図2】装着状態におけるカートリッジとカートリッジ装着部との断面図。
図3】カートリッジのカートリッジ装着部への装着過程を説明する図。
図4】カートリッジ装着部の斜視図。
図5】装置側端子部付近を示すカートリッジ装着部の部分拡大図。
図6】第1種カートリッジの第1斜視図。
図7】第1種カートリッジの第2斜視図。
図8】装着状態における液体供給部および液体導入部の拡大断面図。
図9】装着状態における異種カートリッジとカートリッジ装着部との断面図。
図10】回転制限部の位置変更を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.実施形態:
A-1.印刷システムの構成:
図1は、本開示の実施形態としての印刷システム1の構成を示す斜視図である。図1には、互いに直交する3つの空間軸であるXYZ軸が描かれている。X軸,Y軸,Z軸の矢印が向いている方向は、それぞれX軸,Y軸,Z軸に沿った正の方向を示している。X軸,Y軸,Z軸に沿った正の方向を、それぞれ+X方向,+Y方向,+Z方向とする。X軸,Y軸,Z軸の矢印が向いている方向と逆の方向が、それぞれX軸,Y軸,Z軸に沿った負の方向である。X軸,Y軸,Z軸に沿った負の方向を、それぞれ-X方向,-Y方向,-Z方向とする。X軸,Y軸,Z軸に沿った方向で正負を問わないものを、それぞれX方向,Y方向,Z方向とよぶ。+Y方向を手前側、-Y方向を奥側ともよぶ。これ以降に示す図及び説明についても同様である。
【0008】
印刷システム1は、液体噴射装置としての印刷装置10と、印刷装置10に液体であるインクを供給するカートリッジ4とを備える。
【0009】
本実施形態の印刷装置10は、インクを吐出ヘッド22から吐出するインクジェットプリンターである。この印刷装置10は、ポスター等の大判の用紙(A2~A0等)に印刷を行う大型のプリンターである。印刷装置10は、カートリッジ装着部6と、キャリッジ20と、吐出ヘッド22と、駆動機構30と、制御部31とを備える。
【0010】
カートリッジ装着部6には、複数のカートリッジ4がそれぞれ着脱可能に装着される。本実施形態では、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のインクに対応して4種類のカートリッジ4が1つずつ、すなわち合計4つのカートリッジ4がカートリッジ装着部6に装着される。ブラックのインクを収容するカートリッジ4をカートリッジ4Kとも呼び、イエローのインクを収容するカートリッジ4をカートリッジ4Yとも呼び、マゼンタのインクを収容するカートリッジ4をカートリッジ4Mとも呼び、シアンのインクを収容するカートリッジ4をカートリッジ4Cとも呼ぶ。本実施形態において、カートリッジ4C,4M,4Yは、互いに同じ外形形状を有する。そして、カートリッジ4Kは、カートリッジ4C,4M,4Yよりも多くの液体を収容可能に構成されている。よって、カートリッジ4C,4M,4Yを第1種カートリッジ4Aとも呼び、カートリッジ4Kを第2種カートリッジ4Bとも呼ぶ。
【0011】
印刷装置10は、+Y方向側の前面に交換用カバー13を有する。交換用カバー13の+Z方向側を+Y方向側である手前側に倒すと、カートリッジ装着部6の挿抜開口部674が現れて、カートリッジ4の着脱が可能となる。カートリッジ装着部6にカートリッジ4が装着されると、液体流通管としてのチューブ24を介してキャリッジ20に設けられた吐出ヘッド22にインクが供給可能となる。本実施形態では、水頭差を利用してカートリッジ4から吐出ヘッド22にインクが供給される。具体的には、液体貯留部699内のインクの液面と吐出ヘッド22との水頭差によってインクが吐出ヘッド22に供給される。なお、他の実施形態では、印刷装置10の図示しないポンプ機構によって、カートリッジ4内のインクを吸引することで、インクが吐出ヘッド22に供給されてもよい。なお、チューブ24は、インクの種類毎に設けられている。なお、カートリッジ4がカートリッジ装着部6に装着されて、液体としてのインクが印刷装置10に供給できる状態を「装着状態」とも呼ぶ。
【0012】
吐出ヘッド22には、インクの種類毎にノズルが設けられている。吐出ヘッド22は、ノズルから印刷用紙2に向かってインクを吐出して文字や画像等のデータを印刷する。なお、本実施形態では、印刷装置10は、カートリッジ装着部6がキャリッジ20の動きとは連動しない、いわゆる「オフキャリッジタイプ」と呼ばれるプリンターである。キャリッジ20にカートリッジ装着部6が設けられ、キャリッジ20と共にカートリッジ装着部6が移動する、いわゆる「オンキャリッジタイプ」と呼ばれるプリンターにも本開示は適用できる。
【0013】
制御部31は、印刷装置10の各部の制御や、カートリッジ4との信号の授受を行う。キャリッジ20は、吐出ヘッド22を印刷用紙2に対して相対的に移動させる。
【0014】
駆動機構30は、制御部31からの制御信号に基づいてキャリッジを往復移動させる。駆動機構30は、タイミングベルト32と、駆動モーター34とを備える。タイミングベルト32を介して駆動モーター34の動力をキャリッジ20に伝達することによって、キャリッジ20がX方向に沿った方向である主走査方向に往復移動する。また、印刷装置10は、印刷用紙2を+Y方向である副走査方向に移動させるための搬送機構を備える。印刷が行なわれる際には、搬送機構によって印刷用紙2が副走査方向に移動し、前面カバー11上に印刷完了後の印刷用紙2が出力される。
【0015】
本実施形態では、印刷システム1の使用状態において、印刷用紙2を搬送する副走査方向に沿った軸をY軸とし、重力方向に沿った軸をZ軸とし、キャリッジ20の移動方向に沿った軸をX軸とする。ここで、「印刷システム1の使用状態」とは、水平な面に印刷システム1が設置された状態をいう。また、本実施形態では、副走査方向を+Y方向、その逆方向を-Y方向とし、重力方向を-Z方向、反重力方向を+Z方向とする。X方向とY方向は水平方向に沿った方向である。また、印刷システム1を前面側から見たときに、右側から左側に向かう方向を+X方向とし、その逆方向を-X方向とする。また本実施形態では、装着のためにカートリッジ装着部6にカートリッジ4が挿入される挿入方向が-Y方向であり、カートリッジ4がカートリッジ装着部6から取り外される方向が+Y方向である。よって、カートリッジ装着部6のうち、-Y方向側を奥側とも呼び、+Y方向側を手前側とも呼ぶ。また、本実施形態では、複数のカートリッジ4の配列方向がX方向となる。
【0016】
A-2.装着状態におけるカートリッジ装着部とカートリッジ:
図2は、装着状態における、液体導入部642の中心軸CA1を通るYZ面を切断面とするカートリッジ4とカートリッジ装着部6との断面図である。図2に示すように、装着状態において、カートリッジ4は、別体の容器7と共に、カートリッジ装着部6の上方に配置された収容室61に収容される。
【0017】
カートリッジ装着部6は、収容室61の下方に配置された液体貯留部699と、液体導入部642とを有する。収容室61は、収容室底壁を形成する支持部材610を有する。主壁613は、支持部材610の底部を形成する。主壁613は、Y方向に平行である。支持部材610は、カートリッジ装着部6の第2装置壁62の近くに設けられている回転支点698を中心に、回転移動可能である。
【0018】
液体貯留部699は、図1に示すチューブ24を介して吐出ヘッド22と連通すると共に、液体導入部642と連通する。液体貯留部699には、大気を取り込むための、図示しない大気導入口が形成されている。液体導入部642は、筒状の部材であり、内部に液体を流通させる導入部流路682を有する。
【0019】
カートリッジ4がカートリッジ装着部6に装着された装着状態では、カートリッジ4の液体供給部442と、カートリッジ装着部6の液体導入部642とが接続される。これにより、カートリッジ4の液体収容部450に収容されたインクが、液体供給部442を介して液体導入部642に供給される。また、本実施形態では、液体供給部442から液体導入部642にインクが供給される一方で、液体貯留部699に収容された空気が気泡となって液体導入部642、液体供給部442を流通して液体収容部450に流通する。これにより、液体収容部450の気液交換が行われる。なお、他の実施形態では、カートリッジ4が液体収容部450と外部とを連通させる大気連通路を有し、この大気連通路を介して気液交換が行われてもよい。この場合、大気連通路は液体供給部442とは異なる位置に配置されており、例えば、液体収容部450を形成する壁に形成される。
【0020】
液体導入部642の中心軸CA1は、装着状態における液体供給部442の中心軸CA2と平行であり、Z方向に対して傾斜している。また、液体供給部442の中心軸CA2とは、液体供給部442が延びる方向に沿った方向である。
【0021】
カートリッジ装着部6の-Y方向における端部付近には、カートリッジ4と通信するための装置側端子部70が設けられている。カートリッジ4の装着状態では、カートリッジ4の回路基板50と、カートリッジ装着部6の装置側端子部70とが接触することで電気的に接続される。これにより、制御部31は、カートリッジ4と信号の授受を行うことができる。
【0022】
A-3.カートリッジの装着方法の概要:
図3は、カートリッジ4のカートリッジ装着部6への装着過程を説明する図である。図3に示すように、カートリッジ4がカートリッジ装着部6に装着される際には、まずカートリッジ4は、カートリッジ装着部6の挿抜開口部674から収容室61内に挿入方向D1である-Y方向に向かって挿入される。これにより、カートリッジ4の前壁42が位置決めされる。
【0023】
カートリッジ4の前壁42が位置決めされた挿入完了後に、カートリッジ4は、概ね回転支点698を中心として、後壁47が下方に移動するように、矢印に示す回転装着方向CD2に移動される。これにより、カートリッジ4の液体供給部442と、カートリッジ装着部6の液体導入部642とが接続される。
【0024】
次に、図2に示す容器7が、カートリッジ装着部6の上方の空いた空間である空間領域UPSに、挿入方向D1に挿入される。これにより、後に詳述するように、後述する装置側付勢部材683の付勢力およびカートリッジ側付勢部材487の付勢力によるカートリッジ4の上方への移動を制限して、液体供給部442と液体導入部642との接続を安定させることができる。
【0025】
なお、カートリッジ4が、カートリッジ装着部6から取り外れる場合には、上記の手順が逆行して行われる。すなわち、カートリッジ装着部6から容器7が引き出された後、カートリッジ4は、概ね回転支点698を支点として矢印に示す回転方向CD3に回転移動される。その後、カートリッジ4は、収容室61から引き出される。図2に示す状態のように、カートリッジ4の液体供給部442と、カートリッジ装着部6の液体導入部642とが接続される状態を装着状態とも呼ぶ。対して、カートリッジ4の液体供給部442と、カートリッジ装着部6の液体導入部642とが接続されていない状態を非装着状態とも呼ぶ。
【0026】
A-4.カートリッジ装着部の詳細構成:
図4は、カートリッジ装着部6の斜視図である。図5は、装置側端子部70付近を示すカートリッジ装着部6の部分拡大図である。図4および図5では、理解の容易のためにカートリッジ装着部6の一部の構成の図示は省略している。カートリッジ装着部6について、X方向を幅方向、Y方向を奥行方向、Z方向を高さ方向とも呼ぶ。以下において、特に状態についての記載がない場合には、カートリッジ4がカートリッジ装着部6に装着されていない初期配置状態のときのカートリッジ装着部6を前提に各要素について説明する。
【0027】
図4に示すように、カートリッジ装着部6は、カートリッジ4が収容される収容室61を形成する。収容室61は、略直方体形状である。収容室61のうちで、各カートリッジ4C,4M,4Y,4Kを収容する部分であるスロット61C,61M,61Y,61Kは、概ね各カートリッジ4C,4M,4Y,4Kの外観形状に対応している。本実施形態では、カートリッジ4Kは他のカートリッジ4C,4M,4Yに比べ、収容する液体の量を大きくするためにX方向の寸法が大きい。よって、本実施形態では、スロット61Kの幅は、他のスロット61C,61M,61Yの幅よりも大きい。
【0028】
図4に示すように、カートリッジ装着部6は、収容室61を形成する5つの装置壁62,63,65,66,67と、4つの支持部材610とを有する。本開示において「壁」とは、単一の壁に加え、複数の壁によって構成された壁を含む概念である。第2装置壁62は、収容室61の-Y方向側の壁を形成する。第2装置壁62は、印刷装置10の使用状態において、概ね垂直な壁である。
【0029】
第1装置壁67は、Y方向において第2装置壁62と対向する。第1装置壁67は、カートリッジ4を収容室61に挿入したり取り外したりする際に通過させる挿抜開口部674を形成する。装置上壁63は、収容室61の+Z方向側の壁を形成する。第1装置側壁65は、収容室61の+X方向側の壁を形成する。第2装置側壁66は、X方向において第1装置側壁65と対向し、収容室61の-X方向側の壁を形成する。第1装置側壁65および第2装置側壁66は、第2装置壁62と第1装置壁67と装置上壁63と交差する。
【0030】
支持部材610は、装着されるカートリッジ4の数に応じて4つ設けられている。支持部材610は、Z方向において装置上壁63と対向する。4つの支持部材610は、X方向に並んでいる。支持部材610は、Y方向に沿って延びる部材である。支持部材610は、装着部底壁としての主壁613と、第1支持側壁611と、第2支持側壁612と、装置側端子部70を有する。主壁613は、Z方向において装置上壁63と対向し、収容室61の-Z方向側の壁を形成する。装置上壁63および主壁613は、第2装置壁62と第1装置壁67と交差する。本開示において、「交わる」や「交差する」とは、(i)2つの要素が相互に交差し実際に交わる状態、(ii)一方の要素を延ばした場合に他方の要素に交わる状態、及び、(iii)相互の要素をそれぞれ延ばした場合に互いの要素が交わる状態、のいずれかの状態であることを意味する。
【0031】
主壁613のうち、第1装置壁67に近い端部には、開口部614が形成されている。開口部614は、主壁613の厚み方向に主壁613を貫通する。第1支持側壁611は、主壁613の+X方向側端部から反重力方向である+Z方向に立ち上がる。第2支持側壁612は、主壁613の-X軸方向側端部から+Z方向に立ち上がる。第1支持側壁611と第2支持側壁612とは、X方向において対向する。
【0032】
図4に示すように、装置側端子部70は、第2装置壁62の近くに配置されている。図5に示すように、装置側端子部70は、複数の装置側端子721を有する。装置側端子721は、導電性を有する金属の板部材である。装置側端子721は、制御部31と電気的に接続されている。図4に示すように、装置側端子部70の近傍に、装置側識別部材630が配置されている。装置側識別部材630は、装置側端子部70に比べて、+Y方向側である挿抜開口部674近くに位置する。
【0033】
図3に示すように、カートリッジ装着部6は、制限機構660を有する。制限機構660は、装置側位置決め部644よりも挿入方向D1の手前側にある。制限機構660は、回転制限部661と、装置当接部662とにより構成されている。回転制限部661は、4つの支持部材610に対応して、4つ設けられている。各回転制限部661は、各支持部材610に取り付けられている。回転制限部661は、液体導入部642の手前側に配置されている。装置当接部662は、カートリッジ装着部6に取り付けられている。装置当接部662は、装着されるカートリッジ4の数に応じて4つ設けられている。図3に示すように、装置当接部662の近傍に回転制限部661が配置されている。後述するように、回転制限部661は、非適合のカートリッジと干渉することにより、非適合のカートリッジの装着のための移動を制限する。
【0034】
図3に示すように、カートリッジ装着部6は、上記した構成に加え、4つの装置側位置決め部644を有する。装置側位置決め部644は、カートリッジ装着部6の+Y方向における端部に、装着されるカートリッジ4の数に対応して、4つ設けられている。
【0035】
装置側位置決め部644は、液体導入部642の手前側に配置されている。装置側位置決め部644は、略直方体形状である。カートリッジ4が有する中空のカートリッジ側位置決め部448の中空部に、カートリッジ装着部6が有する突起である装置側位置決め部644が入り込むことで、液体供給部442による液体供給部442の中心軸CA2と交差する動きが規制される。これにより、液体導入部642の軸方向である中心軸CA1と交差する方向における液体供給部442の液体導入部642に対する位置決めが行われる。
【0036】
A-5.カートリッジの詳細構成:
図6は、第1種カートリッジ4Aの第1斜視図である。図7は、第1種カートリッジ4Aの第2斜視図である。カートリッジ4について、Y方向は奥行方向、Z方向が高さ方向、X方向が幅方向である。カートリッジ4は、大容量の液体を収容し、外形が大きいカートリッジである。カートリッジ4の外形について、Y方向の寸法が最も大きく、Z方向の寸法、X方向の寸法の順に小さい。カートリッジ4を示す図について、X方向、Y方向、Z方向は、カートリッジ4のカートリッジ装着部6への挿入が完了した後の状態を基準としている。
【0037】
図6に示すように、第1種カートリッジ4Aの外形は、略直方体形状である。第1種カートリッジ4Aは、上記した、回路基板50と、カートリッジ側位置決め部448とに加え、液体収容体401と、回避部490とを備える。液体収容体401は、前壁42と、後壁47と、上壁43と、底壁44と、第1側壁45と、第2側壁46と、コーナー部89とを有する。各壁42,43,44,45,46,47は、各面42,43,44,45,46,47とも呼ぶ。前壁42と後壁47とは、挿入方向D1に沿ったY方向において対向する。後壁47のZ方向の長さは、前壁42とのZ方向の長さよりも短い。上壁43と底壁44とは、Z方向において対向する。Z方向は、液体供給部442の延びる方向に沿った中心軸CA2と平行である。第1側壁45と第2側壁46とはX方向において対向する。
【0038】
上壁43は、主面43aと、上面傾斜面43bと、接続面43cとを含む。主面43aは、3つの面43a,43b,43cのうちで最も大きい面である。主面43aは、前壁42から挿入方向D1の反対方向に沿って延びる。主面43aは、挿入方向D1に平行である。上面傾斜面43bは、主面43aから挿入方向D1の反対方向に沿って延びる。上面傾斜面43bは、挿入方向D1側の第1端部433pよりも挿入方向D1とは反対方向の第2端部433tが底壁44に近い側に位置するように、挿入方向D1に対して傾斜する。接続面43cは、上面傾斜面43bと後壁47とを繋ぐ。接続面43cは、カートリッジ4を回転装着方向CD2に回転移動させるために、利用者によって重力方向に向かって押される手前側部分として機能する。
【0039】
装着状態において、前壁42は、カートリッジ4がカートリッジ装着部6に挿入される挿入方向D1側に位置する。後壁47は、挿入方向D1と逆方向側に位置する。上壁43は、+Z方向側に位置し、前壁42と後壁47とに交差する。底壁44は、装着状態において重力方向側である-Z方向側に位置し、回転装着方向CD2の接続先端面を形成する。つまり、底壁44は、回転装着方向CD2側に位置する。底壁44は、前壁42と後壁47とに交差する。第1側壁45は+X方向側に位置し、第2側壁46は-X方向側に位置する。第1側壁45と第2側壁46とはそれぞれ、前壁42と後壁47と上壁43と底壁44とに交差する。コーナー部89は、前壁42と底壁44とが交差するコーナー部分に設けられている。コーナー部89は、内方に凹んだ凹形状を有する。
【0040】
図7に示すように、液体収容体401の内部空間が液体収容部450である。液体収容部450は、液体としてのインクを収容する。液体供給部442は、底壁44から突出する筒状部材である。液体供給部442は、液体収容体401と連通する。
【0041】
上壁43は、底壁44と液体収容部450を挟んで向かい合う。図2に示すように、上壁43は、挿入完了の後に、カートリッジ装着部6の装置上壁63と対向する。
【0042】
図6に示すように、上面傾斜面43bには、容器7と接続するための接続部410が設けられている。接続部410は、後述する容器7の注入部72が挿入される接続孔411を有する。接続孔411は、液体収容部450と連通する。接続孔411内には、液体収容部450内を気密に維持するための栓部材412が配置されている。栓部材412は、例えば、弾性部材であり、図示しない切れ目が形成されている。なお、他の実施形態では、接続部410は後壁47に形成されていてもよいし、後壁47と上面傾斜面43bの両方に形成されていてもよい。
【0043】
図7に示すように、回路基板50は、コーナー部89に配置されている。回路基板50は、複数のカートリッジ側端子521と、回路基板50の裏面に配置された図示しない記憶装置とを有する。複数のカートリッジ側端子521は、配線を介して記憶装置に電気的に接続されている。記憶装置には、カートリッジ4に関する情報、例えば、製造年月日や液体残量が記憶されている。装着状態において、複数のカートリッジ側端子521が対応する装置側端子721と接触することで電気的に接続される。これにより、印刷装置10の制御部31と、記憶装置とが電気的に接続され、データ通信が可能となる。
【0044】
カートリッジ側位置決め部448は、底壁44に配置されている。カートリッジ側位置決め部448は、底壁44のX方向、すなわち幅方向における中央に配置されている。カートリッジ側位置決め部448は、装置側位置決め部644と嵌め合わされて、液体供給部442の液体導入部642に対する位置決めを行う。カートリッジ側位置決め部448は、外形が四角柱状の中空の部材である。カートリッジ側位置決め部448は、底壁44から突出している。これにより、利用者は、目視することにより、カートリッジ側位置決め部448と装置側位置決め部644との位置合わせを容易に行うことができる。
【0045】
回避部490は、制限機構660との干渉を回避するための空間ASを形成する。回避部490の空間ASは、カートリッジ側位置決め部448の手前側、すなわち+Y方向側にあり、かつ、図2に示すように、底壁44の回転装着方向CD2側にある。
【0046】
A-6.容器の構成:
本実施形態において、図2に示す別体の容器7は、カートリッジ4に液体を補充する機能を有する。スペーサーとしての容器7は、挿入完了後に、カートリッジ4が回転装着方向CD2に移動することで形成される、装置上壁63とカートリッジ4の上壁43により区画される空間領域UPSに挿入される。容器7は、挿入完了の後における、回転装着方向CD2と反対方向、すなわち回転方向CD3へのカートリッジ4の移動を制限する。これにより、液体導入部642と、液体供給部442との接続を安定させることができる。
【0047】
容器7は、液体を収容するためのスペーサー液体収容部としての容器液体収容部750と、容器液体収容部750と連通する筒状の注入部72とを有する。注入部72の周囲は、上面傾斜面43bに対応した傾斜を有する面である。注入部72は、カートリッジ4の接続孔411に挿入されて、カートリッジ4と容器7とが接続される。これにより、栓部材412の切れ目が押し広げられ、注入部72の先端開口が液体収容部450内に配置される。容器液体収容部750の液体は、注入部72を経由して液体収容部450に供給される。
【0048】
A-7.液体供給部と液体導入部との詳細:
図8は、装着状態における、液体供給部442および液体導入部642の拡大断面図である。図8は、中心軸CA1および中心軸CA2を通るYZ平面を切断面とする断面図である。
【0049】
図8に示すように、液体供給部442は、液体収容部450と連通する供給部流路482を有する。液体供給部442は、液体収容部450の底壁である収容体底壁431に形成された流入開口部432に挿通されている。
【0050】
液体供給部442は、円筒形状のハウジング480内に、カートリッジ側弁機構484を備える。カートリッジ側弁機構484は、供給部流路482を開閉する。カートリッジ側弁機構484は、カートリッジ側弁座485と、カートリッジ側弁体486と、カートリッジ側付勢部材487とを有する。
【0051】
カートリッジ側弁座485は、円環状の部材である。カートリッジ側弁座485は、例えば、合成ゴムやエラストマーなどの弾性部材によって形成されている。カートリッジ側弁座485の外周面は、ハウジング480の内周面に対して気密に取り付けられている。カートリッジ側弁座485には、中心軸CA2に沿った方向に貫通する弁座挿入口485aが形成されている。装着時には、弁座挿入口485aに液体導入部642が挿入される。
【0052】
カートリッジ側弁体486は、液体供給部442に中心軸CA2に沿った軸方向に摺動可能に取り付けられている。カートリッジ側弁体486は、中心軸CA2に沿った方向に延びる棒状の部材である。カートリッジ側弁体486は、液体を供給する際の供給部流路482の液体の流通方向においてカートリッジ側弁座485よりも上流側に位置する。カートリッジ側弁体486は、非装着時に、弁座挿入口485aと当接して弁座挿入口485aを塞ぐ。これにより、カートリッジ側弁体486は閉弁状態となる。
【0053】
カートリッジ側付勢部材487は、カートリッジ側弁体486をカートリッジ側弁座485に向かう方向に付勢する。カートリッジ側付勢部材487は、例えば、圧縮コイルばねである。カートリッジ側付勢部材487において、一端はカートリッジ側弁体486に当接し、他端はハウジング480に当接する。
【0054】
液体導入部642は、カートリッジ4の装着状態において、液体供給部442に接続されて液体供給部442からの液体を受け入れる。液体導入部642は、液体供給部442から供給された液体が流通する導入部流路682を有する。導入部流路682は、液体貯留部699と連通している。
【0055】
液体導入部642は、中空の導入部本体680と、導入部流路682内に配置された装置側弁機構681とを備える。導入部本体680の先端部分は、円筒形状である。液体導入部642は、導入部本体680と、装置側弁機構681とを備える。導入部本体680は、中空であり、先端部分は円筒形状である。導入部本体680の内部に導入部流路682が形成されている。
【0056】
装置側弁機構681は、導入部流路682内に配置され、導入部流路682を開閉する。装置側弁機構681は、導入部本体680によって形成された装置側弁座687と、装置側弁体685と、装置側付勢部材683とを有する。装置側弁座687は、導入部本体680のうちで中心軸CA1に対して直交する方向に延びる部分である。装置側弁座687は、導入部流路682の一部である装置側弁孔689を有する。
【0057】
装置側弁体685は、中心軸CA1に沿った方向に延びる棒状の部材である。装置側弁体685は、導入部流路682内に位置し、導入部流路682を開閉する。装置側弁体685には、配置部686が形成されている。配置部686は、装置側弁体685の本体のうちで中心軸CA1と直交する方向の大きさが他の部分よりも大きい部分である。配置部686は、装置側弁座687と向かい合う。配置部686には、円環状の弾性部材であるシール部材688が取り付けられている。シール部材688は、エラストマーやゴムによって形成されている。液体導入部642と液体供給部442とが接続されていない状態では、シール部材688が装置側弁座687に気密に当接することで、装置側弁体685によって装置側弁座687の装置側弁孔689を塞ぐ。これにより、装置側弁体685は閉弁状態となる。
【0058】
装置側付勢部材683は、装置側弁体685を装置側弁座687に向かう方向に付勢する。装置側付勢部材683は、例えば、圧縮コイルばねである。装置側付勢部材683において、一端は配置部686に当接し、他端は台座684に当接する。台座684は、導入部本体680に取り付けられている。台座684には、中心軸CA1に延びるスリットが、周方向に間隔をあけて複数本、形成されている。このスリットを介して導入部流路682の液体が液体貯留部699に流入する。
【0059】
カートリッジ4が装着されると、カートリッジ側弁機構484は、液体導入部642に押されてカートリッジ側弁体486がカートリッジ側弁座485から離れることで開弁する。一方で、カートリッジ4が装着されると、装置側弁体685が、導入部本体680の装置側弁座687から離れることで開弁状態となる。そして、供給部流路482と導入部流路682とが接続される。装着状態において、液体収容部450に収容されている液体は、供給部流路482へ流入し、供給部流路482から、導入部流路682へ流れ、液体貯留部699へ供給される。カートリッジ側付勢部材487の付勢力と装置側付勢部材683の付勢力とにより、装着状態におけるカートリッジ4は、回転装着方向CD2と反対方向へ力を受ける。
【0060】
A-8.カートリッジの装着過程の詳細:
上記したように、カートリッジ4をカートリッジ装着部6に装着する際には、利用者は、まずカートリッジ4をカートリッジ装着部6の挿抜開口部674から収容室61内に挿入して挿入を完了する。挿入完了後に、利用者は、挿入方向D1の奥側を回転支点として、回転装着方向CD2にカートリッジ4を回転移動させる。具体的には、概ね回転支点698を支点として、カートリッジ4のうち挿入方向D1の手前側部分である後壁47付近を、重力方向成分を有する回転装着方向CD2に移動させる。ここで、利用者は、カートリッジ側位置決め部448と装置側位置決め部644とが嵌め合わされる位置にて、カートリッジ4を回転装着方向CD2に移動させる。カートリッジ側位置決め部448は、底壁44から突出しているため、利用者は、目視により、容易に位置合わせを行うことができる。カートリッジ4の装着状態では、回路基板50のカートリッジ側端子521と、装置側端子部70の装置側端子721とが接触し、液体供給部442と液体導入部642とが接続する。
【0061】
図2に示すように、カートリッジ4は、制限機構660との干渉を回避する回避部490を有する。これにより、制限機構660による、非適合のカートリッジの装着のための移動の制限を作用させずに、カートリッジ4をカートリッジ装着部6に装着することができる。なお、制限機構660の制限機能については、後述する。
【0062】
その後、空間領域UPSに容器7が挿入される。接続孔411に注入部72が挿入されることにより、カートリッジ4に容器7が接続される。これにより、回転装着方向CD2と反対方向へのカートリッジの移動を制限される。上記のように、液体供給部442のカートリッジ側付勢部材487の付勢力と、液体導入部642の装置側付勢部材683の付勢力とにより、装着状態において、カートリッジ4は、回転装着方向CD2とは反対方向に力を受ける。そこで、容器7が挿入されることにより、カートリッジ4の回転装着方向CD2とは反対方向への移動を制限し、液体供給部442と液体導入部642との接続を良好に維持することができる。
【0063】
A-9.制限機構の詳細:
図9は、装着状態における、液体導入部642の中心軸CA1を通るYZ面を切断面とする異種カートリッジ1400とカートリッジ装着部6との断面図である。図10は、回転制限部661の位置変更を説明する図である。制限機構660の機能について、カートリッジ4とは異なる種類の異種カートリッジ1400を用いて説明する。異種カートリッジ1400は、アダプター部402を備える点が、カートリッジ4とは異なる。異種カートリッジ1400について、カートリッジ4と同一の構成については同一の符号を付し、説明は適宜省略する。
【0064】
図9に示す異種カートリッジ1400は、カートリッジ4と同様の手順により、カートリッジ装着部6に装着される。すなわち、異種カートリッジ1400は、カートリッジ装着部6の挿抜開口部674から収容室61内に挿入方向D1である-Y方向に向かって、予め定められた挿入完了位置まで挿入される。次に、異種カートリッジ1400は、回転支点698を中心として、後壁47が下方に移動するように、矢印に示す回転装着方向CD2に移動される。挿入完了位置まで挿入される過程を挿入過程ともよぶ。回転装着方向CD2に移動される過程を回転過程ともよぶ。
【0065】
異種カートリッジ1400のアダプター部402は、液体収容体401の底壁44に、液体収容体401に嵌合によって取り付けられる。アダプター部402には、制限機構660による制限を解除するための解除部503が設けられている。解除部503は、アダプター部402の-Z方向の底面から-Z方向に突出している。
【0066】
図3図9とを比較してわかるように、異種カートリッジ1400のアダプター部402は、カートリッジ4の回避部490が形成する空間ASに相当する空間を占有している。
【0067】
図3図9とを比較してわかるように、装置当接部662に対する回転制限部661の相対位置は、異種カートリッジ1400の装着前と、装着後とで異なる。回転制限部661は、異種カートリッジ1400が回転装着方向CD2に回転移動するのに連動して、回転装着方向CD2に回転移動する。
【0068】
回転制限部661と装置当接部662とは、挿入過程が完了していない場合における異種カートリッジ1400の回転装着方向CD2への回転移動を制限するために設けられている。具体的には、異種カートリッジ1400が挿入完了位置まで挿入されていない状態において、回転制限部661と装置当接部662とが当接することにより、異種カートリッジ1400の回転装着方向CD2への回転移動が制限される。対して、異種カートリッジ1400が挿入完了位置まで挿入された状態では、回転制限部661は、異種カートリッジ1400の解除部503に押され、装置当接部662と当接しない位置に移動される。これにより、異種カートリッジ1400は、回転装着方向CD2への回転移動が可能となる。なお、上記の非適合のカートリッジとは、挿入完了位置まで挿入されていない異種カートリッジ1400や、カートリッジ装着部6と適合しないカートリッジをいう。
【0069】
図10に示すように、回転制限部661は、X方向を厚み方向とする平板部材である。回転制限部661は、第1回転制限部651および第2回転制限部652を有する。第1回転制限部651は、X方向から視た場合、概ねZ方向に延びる部分である。第2回転制限部652は、第1回転制限部651から-Y方向に突き出る部分である。第1回転制限部651のZ方向における中央付近には、厚み方向に回転ピン653が挿通されている。回転制限部661は、回転ピン653を支点として回動可能である。そして、回動することにより、回転制限部661は、実線で示す制限位置PO1と、二点破線で示す解除位置PO2とに移動可能である。回転制限部661は、図示しない付勢部材により付勢されることにより、解除部503に押されていない状態では、制限位置PO1に保たれる。
【0070】
装置当接部662は、異種カートリッジ1400が回転装着方向CD2へ回転移動する過程で、制限位置PO1の第2回転制限部652の先端が通る経路上に配置されている。このため、回転制限部661が制限位置PO1に位置している状態では、回転制限部661の第2回転制限部652の先端と、装置当接部662とが干渉するため、異種カートリッジ1400の回転装着方向CD2への回転移動が制限される。対して、異種カートリッジ1400が挿入完了位置まで挿入された状態では、第1回転制限部651の+Z方向における先端が異種カートリッジ1400の解除部503に押され、回転制限部661は、付勢部材の付勢力に抗して解除位置PO2に移動する。回転制限部661が解除位置PO2に位置している状態では、回転制限部661の第2回転制限部652の先端と、装置当接部662とは干渉しないため、異種カートリッジ1400は、回転制限部661を伴って、回転装着方向CD2へ回転移動することができる。具体的には、異種カートリッジ1400が挿入された後、アダプター部402の底面が、支持部材610の主壁613を押しながら回転装着方向CD2へ回転移動する。回転制限部661は、支持部材610に取り付けられているため、異種カートリッジ1400は、回転制限部661を伴って、回転装着方向CD2へ回転移動する。
【0071】
図2図9とを比較してわかるように、カートリッジ4の装着状態では、回避部490が形成する空間AS内に制限機構660の回転制限部661が位置する。つまり、異種カートリッジ1400の装着状態とは異なり、カートリッジ4の装着状態においても、回転制限部661は制限位置PO1に位置したままである。異種カートリッジ1400を装着するためには、上記のように、挿入完了後、回転制限部661を解除位置PO2に移動させることが必要となる。対して、カートリッジ4は、回避部490を有するため、制限機構660による非適合のカートリッジの装着のための移動の制限を作用させずに、カートリッジ4をカートリッジ装着部6に装着することができる。異種カートリッジ1400は、解除部503が変形した場合に、カートリッジ装着部6に装着できなくなる場合がある。この点、カートリッジ4は、回避部490を有することにより、カートリッジ装着部6に装着できなくなる可能性を低減することができる。なお、カートリッジ4は、装置側識別部材630と干渉する部材を有さないため、装置側識別部材630と干渉せずに装着することもできる。
【0072】
図2に示すように、装着状態において、カートリッジ側位置決め部448は、制限機構660と挿入方向D1に向かい合い、底壁44は、制限機構660と回転方向CD3に向かい合う。つまり、挿入方向D1について、底壁44は、制限機構660よりも、挿入方向D1の手前側まで延びている。よって、液体収容部450の容量を適切に確保することができる。
【0073】
以上説明した実施形態によれば、カートリッジ4は、液体収容部450と、液体供給部442と、回避部490とを備える。回避部490が備えられていることにより、カートリッジ4は、制限機構660との干渉を回避することができる。よって、制限機構660による制限を作用させずにカートリッジ4を装着することができる。
【0074】
また、カートリッジ4は、装置側位置決め部644と嵌め合わされるカートリッジ側位置決め部448と、カートリッジ側位置決め部448および液体供給部442を有する底壁44を備える。これにより、カートリッジ側位置決め部448を装置側位置決め部644と嵌め合わされることにより、液体導入部642と液体供給部442とを正規の位置で接続することができる。
【0075】
また、カートリッジ側位置決め部448は、底壁44から突出している。これにより、利用者は、目視により、カートリッジ側位置決め部448と装置側位置決め部644との位置合わせを行うことができる。よって、利用者は、カートリッジ4を容易に位置合わせすることができる。
【0076】
また、カートリッジ4は、装着状態において、装置側端子721と接触する回路基板50を有する。これにより、カートリッジ4は、印刷装置10と情報の授受を行うことができる。
【0077】
また、回避部490が形成する空間ASは、カートリッジ側位置決め部448の挿入方向D1の手前側にあり、かつ、底壁44の回転装着方向CD2側にある。これにより、回避部490をカートリッジ装着部6の態様と適切に適合させることができる。
【0078】
また、カートリッジ4は、カートリッジ4が回転装着方向CD2に移動することで形成される空間領域UPSに挿入される容器7と接続するための接続部410を備える。容器7が挿入されることにより、カートリッジ4の回転装着方向CD2と反対方向への移動が制限されるため、液体導入部642と液体供給部442との接続を良好に維持することができる。
【0079】
また、容器7は、容器液体収容部750と、注入部72とを有し、接続部410は、注入部72が挿入される接続孔411を有する。これにより、容器7を用いて、カートリッジ4に液体を補充することができる。接続部410は、上面傾斜面43bに形成されている。これにより、容器7を空間領域UPSに挿入する過程で、容易に接続部410に注入部72を接続することができる。
【0080】
また、装着状態において、カートリッジ側位置決め部448は、制限機構660と挿入方向D1に向かい合い、底壁44は、制限機構660と回転装着方向CD2に向かい合う。これにより、カートリッジ4の液体収容部450の容量を確保しつつ、制限機構660による制限を作用させずにカートリッジ4を装着することができる。
【0081】
B.他の実施形態:
B-1.他の実施形態1:
上記実施形態では、スペーサーとしての容器7は、容器液体収容部750を有する。他の形態として、スペーサーとして、容器液体収容部を有さず、液体を供給する機能を有していなくてもよい。スペーサーが空間領域UPSに挿入されることにより、カートリッジ4の位置を安定させることができる。
【0082】
B-2.他の実施形態2:
上記実施形態では、接続部410は、接続孔411を有し、接続孔411に容器7の注入部72が挿入されることにより接続される。接続部の他の形態として、孔形状ではなく、例えば、凹部や、凸部などの他の形状を有して実現されてもよい。接続部は、スペーサーと係合する形状を有することにより、接続部とスペーサーとは接続することができる。
【0083】
B-3.他の実施形態2:
本開示は、インクジェットプリンター及びそのインクカートリッジに限らず、インク以外の他の液体を噴射する任意の印刷装置及びそのカートリッジにも適用することができる。例えば、以下のような各種の印刷装置及びそのカートリッジに適用可能である。
(1)ファクシミリ装置等の画像記録装置
(2)液晶ディスプレイ等の画像表示装置用のカラーフィルターの製造に用いられる色材を噴射する印刷装置
(3)有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイや、面発光ディスプレイ(Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材を噴射する印刷装置
(4)バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む液体を噴射する印刷装置
(5)精密ピペットとしての試料印刷装置
(6)潤滑油の印刷装置
(7)樹脂液の印刷装置
(8)時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する印刷装置
(9)光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂液等の透明樹脂液を基板上に噴射する印刷装置
(10)基板などをエッチングするために酸性又はアルカリ性のエッチング液を噴射する印刷装置
(11)他の任意の微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッドを備える印刷装置
【0084】
なお、「液滴」とは、印刷装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう「液体」とは、印刷装置が噴射させることができるような材料であれば良い。例えば、「液体」は、物質が液相であるときの状態の材料であれば良く、粘性の高い又は低い液状態の材料、及び、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属のような液状態の材料も「液体」に含まれる。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなども「液体」に含まれる。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種の液体状組成物を包含するものとする。
【0085】
C.他の形態:
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、以下に記載する各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0086】
(1)本開示の第1形態によれば、印刷装置のカートリッジ装着部に装着されるカートリッジが提供される。前記カートリッジ装着部は、液体を受け入れる液体導入部と、非適合のカートリッジと干渉することにより前記非適合のカートリッジの装着のための移動を制限する制限機構と、を有する。前記カートリッジは、前記液体を収容する液体収容部と、前記液体導入部と接続して前記液体を供給する液体供給部と、前記制限機構との干渉を回避するための空間を形成する回避部と、を備える。この形態によれば、制限機構との干渉を回避することができるため、制限機構による制限を作用させずに装着することができる。
【0087】
(2)上記形態において、前記カートリッジ装着部は、さらに、前記液体導入部の軸方向と交差する方向における位置決めのための装置側位置決め部を有し、前記カートリッジは、さらに、前記装置側位置決め部と嵌め合わされるカートリッジ側位置決め部と、前記カートリッジ側位置決め部および前記液体供給部を有する底壁と、を備えてもよい。この形態によれば、装置側位置決め部とカートリッジ側位置決め部とを嵌め合わせることにより、液体導入部と液体供給部とを正規の位置で接続することができる。
【0088】
(3)上記形態において 前記カートリッジ側位置決め部は、前記底壁から突出していてもよい。この形態によれば、カートリッジ側位置決め部を目視することにより、装置側位置決め部とカートリッジ側位置決め部との位置決めを容易に行うことができる。
【0089】
(4)上記形態において、前記印刷装置に装着された装着状態において、前記印刷装置の装置側端子と接触する回路基板を有していてもよい。この形態によれば、カートリッジは、印刷装置と情報の授受を行うことができる。
【0090】
(5)上記形態において、前記カートリッジは、前記カートリッジ装着部に水平方向である挿入方向に挿入された挿入完了の後に、前記挿入方向の奥側を回転支点として、前記カートリッジのうち前記挿入方向の手前側部分を、重力方向成分を有する回転装着方向に移動させることで前記カートリッジ装着部に装着され、前記制限機構は、前記装置側位置決め部よりも前記挿入方向の手前側にあり、前記回避部の前記空間は、前記カートリッジ側位置決め部の前記手前側にあり、かつ、前記底壁の前記回転装着方向側にあってもよい。この形態によれば、カートリッジ装着部の態様と適切に適合させることができる。
【0091】
(6)上記形態において、前記底壁と前記液体収容部を挟んで向かい合う上壁であって、前記挿入完了の後に、前記カートリッジ装着部の装置上壁と対向する上壁と、前記カートリッジが前記回転装着方向に移動することで形成される、前記装置上壁と前記上壁により区画される空間領域に挿入され、前記挿入完了の後における、前記回転装着方向と反対方向への前記カートリッジの移動を制限するためのスペーサーと接続するための接続部と、を備えていてもよい。この形態によれば、スペーサーにより、カートリッジの回転装着方向と反対方向への移動が制限されるため、液体導入部と液体供給部との接続を良好に維持することができる。
【0092】
(7)上記形態において、前記スペーサーは、前記液体を収容可能なスペーサー液体収容部と、前記スペーサー液体収容部と連通する注入部とを有し、前記接続部は、前記注入部が挿入される接続孔を有していてもよい。この形態によれば、スペーサーを用いて、カートリッジに液体を補充できる。
【0093】
(8)上記形態において、前記上面は、前記挿入方向側の第1端部よりも前記挿入方向とは反対方向の第2端部が前記底壁に近い側に位置する上面傾斜面を含み、前記接続部は、前記上面傾斜面に形成されていてもよい。この形態によれば、スペーサーを空間領域に挿入する過程で、容易に接続部に注入部を接続することができる。
【0094】
(9)上記形態において、前記印刷装置に装着された装着状態において、前記カートリッジ側位置決め部は、前記制限機構と前記挿入方向に向かい合い、前記底壁は、前記制限機構と前記回転装着方向に向かい合ってもよい。この形態によれば、カートリッジの液体収容部の容量を確保しつつ、制限機構による制限を作用させずにカートリッジを装着することができる。
【0095】
本開示は、上記形態の他に、カートリッジの製造方法、印刷システムなどの形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0096】
1…印刷システム、2…印刷用紙、4,4C,4K,4M,4Y…カートリッジ、4A…第1種カートリッジ、4B…第2種カートリッジ、6…カートリッジ装着部、7…容器、10…印刷装置、13…交換用カバー、20…キャリッジ、22…吐出ヘッド、24…チューブ、30…駆動機構、31…制御部、32…タイミングベルト、34…駆動モーター、42…前壁、42…前面、43…上壁、43a…主面、43b…上面傾斜面、43c…接続面、44…底壁、45…第1側壁、46…第2側壁、47…後壁、50…回路基板、61…収容室、61C,61K,61M,61Y…スロット、62…第2装置壁、63…装置上壁、65…第1装置側壁、66…第2装置側壁、67…第1装置壁、70…装置側端子部、72…注入部、89…コーナー部、401…液体収容体、402…アダプター部、410…接続部、411…接続孔、412…栓部材、431…収容体底壁、432…流入開口部、433p…第1端部、433t…第2端部、442…液体供給部、448…カートリッジ側位置決め部、450…液体収容部、480…ハウジング、482…供給部流路、484…カートリッジ側弁機構、485…カートリッジ側弁座、485a…弁座挿入口、486…カートリッジ側弁体、487…カートリッジ側付勢部材、490…回避部、503…解除部、521…カートリッジ側端子、610…支持部材、611…第1支持側壁、612…第2支持側壁、613…主壁、614…開口部、630…装置側識別部材,642…液体導入部、644…装置側位置決め部、651…第1回転制限部、652…第2回転制限部、653…回転ピン、660…制限機構、661…回転制限部、662…装置当接部、674…挿抜開口部、680…導入部本体、681…装置側弁機構、682…導入部流路、683…装置側付勢部材、684…台座、685…装置側弁体、686…配置部、687…装置側弁座、688…シール部材、689…装置側弁孔、698…回転支点、699…液体貯留部、721…装置側端子、750…容器液体収容部、1400…異種カートリッジ、AS…空間、CA1,CA2…中心軸、CD2…回転装着方向、CD3…回転方向、D1…挿入方向、PO1…制限位置、PO2…解除位置、UPS…空間領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10