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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024219
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】流量推定システム
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/20 20060101AFI20240215BHJP
   F16T 1/48 20060101ALN20240215BHJP
【FI】
G01F1/20 D
F16T1/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126889
(22)【出願日】2022-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】時岡 良宜
【テーマコード(参考)】
2F030
【Fターム(参考)】
2F030CA04
2F030CA10
2F030CB05
2F030CC12
2F030CD08
2F030CE04
2F030CE09
2F030CF05
(57)【要約】
【課題】ドレントラップにおけるドレン流量の推定精度を向上させる。
【解決手段】流量推定システム100は、スチームトラップ2の現場Sにおいて、診断員が測定したスチームトラップ2の振動情報と、スチームトラップ2のドレン排出能力と、振動情報が測定されたときのスチームトラップ2の作動状態から診断員が判定したスチームトラップ2のドレン流量とを関連付けた第1現場データが蓄積されていく蓄積部21と、推定対象となるスチームトラップ2の振動情報を検出するプローブ18、蓄積部21の第1現場データと、プローブ18によって検出された振動情報と、推定対象となるスチームトラップ2のドレン排出能力とに基づいて推定対象となるスチームトラップ2のドレン流量を推定する推定部16を有する推定装置10とを備えている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
推定対象となるドレントラップのドレン流量を推定する流量推定システムであって、
ドレントラップの現場において、診断員が測定した該ドレントラップの振動情報と、該ドレントラップのドレン排出能力と、前記振動情報が測定されたときの該ドレントラップの作動状態から前記診断員が判定した該ドレントラップのドレン流量とを関連付けた第1現場データが蓄積されていく蓄積部と、
前記推定対象となるドレントラップの振動情報を検出する検出部、前記蓄積部の前記第1現場データと、前記検出部によって検出された振動情報と、前記推定対象となるドレントラップのドレン排出能力とに基づいて前記推定対象となるドレントラップのドレン流量を推定する推定部を有する推定装置とを備えている
ことを特徴とする流量推定システム。
【請求項2】
請求項1に記載の流量推定システムにおいて、
前記蓄積部の第1現場データにおける振動情報およびドレン排出能力を入力としドレン流量を出力とする教師データを用いて機械学習させた第1推定モデルを生成する学習部をさらに備え、
前記推定部は、前記検出部によって検出された振動情報と、前記推定対象となるドレントラップのドレン排出能力とを、前記学習部によって生成された前記第1推定モデルに入力することで、推定されるドレン流量を出力する
ことを特徴とする流量推定システム。
【請求項3】
請求項2に記載の流量推定システムにおいて、
前記蓄積部には、ドレントラップの現場において、ドレン排出能力が不明なドレントラップに対して診断員が測定した該ドレントラップの振動情報と、前記振動情報が測定されたときの該ドレントラップの作動状態から前記診断員が判定した該ドレントラップのドレン流量とを関連付けた第2現場データがさらに蓄積されていき、
前記学習部は、前記第2現場データにおける振動情報を入力としドレン流量を出力とする教師データを用いて機械学習させた第2推定モデルをさらに生成し、
前記推定部は、前記推定対象となるドレントラップのドレン排出能力が不明である場合には、前記検出部によって検出された振動情報を、前記学習部によって生成された前記第2推定モデルに入力することで、推定されるドレン流量を出力する
ことを特徴とする流量推定システム。
【請求項4】
請求項2に記載の流量推定システムにおいて、
ドレントラップの入口圧力と出口圧力との圧力差に応じて該ドレントラップのドレン排出能力が定められた能力特性を、該ドレントラップの型式ごとに有しており、
前記推定装置は、前記能力特性と、前記推定対象となるドレントラップの型式および前記圧力差とに基づいて、前記推定対象となるドレントラップのドレン排出能力を導出する導出部をさらに有し、
前記推定部は、前記検出部によって検出された振動情報と、前記導出部によって導出されたドレン排出能力とを、前記学習部によって生成された前記第1推定モデルに入力することで、推定されるドレン流量を出力する
ことを特徴とする流量推定システム。
【請求項5】
請求項2に記載の流量推定システムにおいて、
前記推定装置は、入力操作を受けて、前記推定部によって出力されたドレン流量を修正する修正部をさらに有し、
前記蓄積部は、前記修正部による修正後のドレン流量と、前記修正部による修正前のドレン流量を前記推定部が出力したときに前記第1推定モデルに入力された振動情報およびドレン排出能力とを関連付けて蓄積する
ことを特徴とする流量推定システム。
【請求項6】
請求項2に記載の流量推定システムにおいて、
前記蓄積部の第1現場データは、前記診断員が振動情報を測定したときの前記ドレントラップの所定時間内の作動回数も関連付けされており、
前記学習部の教師データは、前記蓄積部の第1現場データにおける振動情報、ドレン排出能力および作動回数を入力としドレン流量を出力とするものであり、
前記推定部は、前記検出部によって検出された振動情報と、前記推定対象となるドレントラップのドレン排出能力と、前記検出部が検出したときの前記推定対象となるドレントラップの所定時間内の作動回数とを、前記学習部によって生成された前記第1推定モデルに入力することで、推定されるドレン流量を出力する
ことを特徴とする流量推定システム。
【請求項7】
請求項2に記載の流量推定システムにおいて、
前記蓄積部の第1現場データは、前記診断員が振動情報を測定したときの前記ドレントラップの入口圧力も関連付けされており、
前記学習部の教師データは、前記蓄積部の第1現場データにおける振動情報、ドレン排出能力および入口圧力を入力としドレン流量を出力とするものであり、
前記推定部は、前記検出部によって検出された振動情報と、前記推定対象となるドレントラップのドレン排出能力と、前記検出部が検出したときの前記推定対象となるドレントラップの入口圧力とを、前記学習部によって生成された前記第1推定モデルに入力することで、推定されるドレン流量を出力する
ことを特徴とする流量推定システム。
【請求項8】
請求項2に記載の流量推定システムにおいて、
前記蓄積部の第1現場データは、前記ドレントラップの現場において前記ドレントラップのドレン流量を判定した前記診断員の熟練度を示す診断員レベルも関連付けされており、
前記学習部は、前記蓄積部の第1現場データのうち、所定の熟練度以上の診断員レベルが関連付けされた第1現場データを前記教師データとして選択する
ことを特徴とする流量推定システム。
【請求項9】
請求項2に記載の流量推定システムにおいて、
前記推定装置は、前記推定部によって出力されたドレン流量と、前記第1推定モデルの正解率を示す情報とを表示する表示部をさらに有している
ことを特徴とする流量推定システム。
【請求項10】
請求項1に記載の流量推定システムにおいて、
前記振動情報が測定されたときの前記ドレントラップの作動状態は、前記ドレントラップの作動音である
ことを特徴とする流量推定システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、流量推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ドレントラップなどの弁を通過する流体の流量を推定する装置が知られている。例えば特許文献1に開示されている推定装置は、弁の振動を検出して、予め記憶されている流量と振動との相関関係から、実際の流量を推定する。また、特許文献2に開示されている測定装置は、ドレントラップなどの弁の振動と蒸気漏洩量との関係から、弁の作動良否を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-196716号公報
【特許文献2】特開昭63-195498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述した特許文献1のような推定装置では、流量と振動の相関関係は、主として実験データに基づいて生成されていることから、データ量が少なく、特に、様々な環境条件に応じたデータが少ない。そのため、流量の推定精度は十分ではなく、推定精度を向上させたいという要望がある。また、特許文献2のような測定装置では、ドレン流量が多いときに発生する振動を検出した場合、正常にドレンが排出されている状態であるにも拘わらず、作動不良の(即ち、蒸気が漏れている)状態であると誤判定してしまう虞がある。このようなとき、ドレンの流量を把握することができれば、作動良否に関する誤判定を抑制することができる。このようなことからも、流量の高い推定精度が望まれる。
【0005】
本開示の技術は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ドレントラップにおけるドレン流量の推定精度を向上させることができる流量推定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の技術は、推定対象となるドレントラップのドレン流量を推定する流量推定システムである。流量推定システムは、蓄積部と、推定装置とを備えている。前記蓄積部は、ドレントラップの現場において、診断員が測定した該ドレントラップの振動情報と、該ドレントラップのドレン排出能力と、前記振動情報が測定されたときの該ドレントラップの作動状態から前記診断員が判定した該ドレントラップのドレン流量とを関連付けた第1
現場データが蓄積されていく。前記推定装置は、前記推定対象となるドレントラップの振動情報を検出する検出部、前記蓄積部の前記第1現場データと、前記検出部によって検出された振動情報と、前記推定対象となるドレントラップのドレン排出能力とに基づいて前記推定対象となるドレントラップのドレン流量を推定する推定部を有する。
【発明の効果】
【0007】
前記の流量推定システムによれば、ドレントラップにおけるドレン流量の推定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、流量推定システムの概略構成を示すブロック図である。
図2図2は、蓄積部における第1現場データおよび第2現場データの一例を示す図である。
図3図3は、第1推定モデルの入出力を示す概念図である。
図4図4は、第2推定モデルの入出力を示す概念図である。
図5図5は、推定装置によるドレン流量の推定動作を示すフローチャートである。
図6図6は、表示部における表示態様の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
本実施形態の流量推定システム100は、例えば蒸気システム等に設けられるスチームトラップ2におけるドレン流量を推定する。スチームトラップ2は、ドレントラップの一例であり、例えばドレン配管1に設けられている。スチームトラップ2は、ドレン配管1からドレンが流入してきた場合はそのドレンを下流側へ流出させる一方、ドレン配管1から蒸気が流入してきた場合はその蒸気の流出を阻止する、いわゆる自動弁である。
【0011】
図1に示すように、流量推定システム100は、推定装置10と、サーバ装置20とを備えている。推定装置10とサーバ装置20とは、ネットワークNを介して通信可能である。ネットワークNは、インターネットなどの広域通信ネットワークである。
【0012】
推定装置10は、スチームトラップ2におけるドレン流量、即ち、スチームトラップ2を通過しているドレン流量を推定する携帯用の装置である。具体的に、推定装置10は、装置本体11およびプローブ18を有している。
【0013】
プローブ18は、推定対象となるスチームトラップ2の振動情報(例えば、振動レベル)を検出する検出部の一例である。プローブ18は、例えばスチームトラップ2のケーシングに押し当てられることで、スチームトラップ2の振動情報を検出する。プローブ18は、ケーブル18aを介して装置本体11と接続されている。プローブ18によって検出された振動情報は、ケーブル18aを介して装置本体11に出力される。推定対象となるスチームトラップ2とは、ドレン流量が推定されるスチームトラップ2である。
【0014】
なお、装置本体11とプローブ18とは、一体に形成されていてもよい。また、装置本体11とプローブ18とは、Bluetooth(登録商標)等の無線通信規格によって無線で接続されていてもよい。
【0015】
装置本体11は、プローブ18によって検出された振動情報に基づいて、スチームトラップ2におけるドレン流量を推定する。装置本体11は、ネットワークNを介して サーバ装置20と通信可能である。具体的に、装置本体11は、入力部12と、記憶部13と、表示部14と、導出部15と、推定部16と、修正部17とを有している。
【0016】
入力部12は、ユーザである診断員からの入力操作を受け付ける。入力部12は、入力操作に応じた入力信号を出力する。入力部12は、例えば、入力キー、または後述する表示部14に重ね合わされるタッチパネルである。
【0017】
記憶部13は、各種プログラム及び各種データを記憶する、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体である。記憶部13は、ハードディスク等の磁気ディスク、CD-ROMおよびDVD等の光ディスク、または半導体メモリによって形成されている。記憶部13は、後述するサーバ装置20の学習部22で生成された第1推定モデルM1および第2推定モデルM2を記憶する。また、記憶部13は、後述する推定部16によって出力されたドレン流量等、および修正部17によって修正されたドレン流量も記憶する。
【0018】
また、記憶部13は、スチームトラップ2の能力特性Dを、スチームトラップ2の型式ごとに記憶する。能力特性Dは、スチームトラップ2の入口圧力と出口圧力との圧力差に応じて該スチームトラップ2のドレン排出能力が定められたものである。ドレン排出能力は、排出可能な最大ドレン流量である。能力特性Dは、例えば、ドレン排出能力が圧力差に応じて曲線的に変化する排出能力線図である。一般に、ドレン排出能力は、スチームトラップ2の圧力差が大きいほど大きい。
【0019】
表示部14は、推定部16によって出力されたドレン流量と、そのドレン流量の確信度を表示する。ドレン流量の確信度は、記憶部13に記憶されている第1推定モデルM1および第2推定モデルM2の正解率を示す情報の一例である。表示部14は、例えば、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイである。
【0020】
導出部15は、記憶部13に記憶されている能力特性Dと、推定対象となるスチームトラップ2の型式および圧力差とに基づいて、推定対象となるスチームトラップ2のドレン排出能力を導出する。推定対象となるスチームトラップ2の圧力差は、例えば、図1に示すように、推定対象となるスチームトラップ2の入口側のドレン配管1に設けられた第1圧力計3によって測定される入口圧力と、該スチームトラップ2の出口側のドレン配管1に設けられた第2圧力計4によって測定される出口圧力との差である。
【0021】
推定部16は、後述する蓄積部21の第1現場データに基づいて、プローブ18によって検出された振動情報と、推定対象となるスチームトラップ2のドレン排出能力とからドレン流量を推定する。具体的に、推定部16は、プローブ18によって検出された振動情報と、推定対象となるスチームトラップ2のドレン排出能力とを、学習部22によって生成された第1推定モデルM1に入力することで、推定されるドレン流量を出力する。より詳しくは、推定部16は、プローブ18によって検出された振動情報と、推定対象となるスチームトラップ2のドレン排出能力と、プローブ18が検出したときの推定対象となるスチームトラップ2の入口圧力とを、第1推定モデルM1に入力することで、推定されるドレン流量を出力する。
【0022】
さらに、推定部16は、蓄積部21におけるドレン排出能力が関連付けされていない第2現場データに基づいて、プローブ18によって検出された振動情報からドレン流量を推定する。具体的に、推定部16は、推定対象となるスチームトラップ2のドレン排出能力が不明である場合には、プローブ18によって検出された振動情報を、学習部22によって生成された第2推定モデルM2に入力することで、推定されるドレン流量を出力する。より詳しくは、推定部16は、推定対象となるスチームトラップ2のドレン排出能力が不明である場合には、プローブ18によって検出された振動情報と、プローブ18が検出したときの推定対象となるスチームトラップ2の入口圧力とを、第2推定モデルM2に入力することで、推定されるドレン流量を出力する。
【0023】
修正部17は、推定部16によって出力されたドレン流量を診断員の入力操作に応じて修正する。より詳しくは、修正部17は、診断員が判定したドレン流量が診断員によって入力部12から入力されることで、推定部16によって出力されたドレン流量を、入力部12から入力されたドレン流量に修正する。導出部15、推定部16および修正部17は、例えば、マイクロコンピュータまたはプロセッサと、各種半導体メモリとによって実現される。
【0024】
サーバ装置20は、現場Sで取得されたスチームトラップ2の振動情報やドレン流量を含む第1現場データおよび第2現場データを蓄積していく。さらに、サーバ装置20は、蓄積した第1現場データを用いて前述の第1推定モデルM1を生成および更新し、蓄積した第2現場データを用いて前述の第2推定モデルM2を生成および更新する。サーバ装置20は、例えば、クラウドサーバである。具体的に、サーバ装置20は、蓄積部21と、学習部22とを有している。
【0025】
蓄積部21は、スチームトラップ2の現場Sにおいて、診断員が測定したスチームトラップ2の振動情報と、該スチームトラップ2のドレン排出能力と、前記振動情報が測定されたときのスチームトラップ2の作動状態から診断員が判定したスチームトラップ2のドレン流量とを関連付けた第1現場データが蓄積されていく。スチームトラップ2の現場Sとは、スチームトラップ2が実際に設置されて稼働している場所である。
【0026】
また、蓄積部21には、スチームトラップ2の現場Sにおいて、ドレン排出能力が不明なスチームトラップ2に対して診断員が測定した該スチームトラップ2の振動情報と、前記振動情報が測定されたときのスチームトラップ2の作動状態から診断員が判定したスチームトラップ2のドレン流量とを関連付けた第2現場データが蓄積されていく。
【0027】
診断員は、各現場Sにおけるスチームトラップ2の点検時やメンテナンス時において、スチームトラップ2の作動状態を診断し、その診断結果を客先へ報告等している。例えば、診断員は、スチームトラップ2を診断するために、振動測定器によってスチームトラップ2の振動情報を測定する。また、診断員は、スチームトラップ2の作動状態からドレン流量を判定する。スチームトラップ2の作動状態は、例えば、スチームトラップ2の作動音や、ドレンの流れ状態である。スチームトラップ2の作動音は、例えば聴診器によって測定される。ドレンの流れ状態は、例えば、スチームトラップ2の下流に接続されているドレン配管1内を目視することで把握される。診断員は、これらのスチームトラップ2の作動状態からドレン流量を判定する。こうして、各現場Sにて取得されたスチームトラップ2に関する各種情報が第1現場データや第2現場データとして蓄積部21に逐次蓄積されていく。
【0028】
なお、ドレン流量は流量測定器によって測定することも考えられるが、流量測定器は高価であり、また流量測定器のドレン配管1等への取付作業が手間であることから、診断員によりドレン流量を判定することが効果的である。
【0029】
具体的に、蓄積部21の第1現場データは、図2に示すように、振動情報と、入口圧力と、ドレン排出能力と、ドレン流量とが関連付けされている。蓄積部21の第2現場データは、振動圧力と、入口圧力と、ドレン流量とが関連付けされている。つまり、第1現場データは、ドレン排出能力が関連付けされている現場データであり、第2現場データは、ドレン排出能力が関連付けされていない現場データである。入口圧力は、診断員が振動情報を測定したときのスチームトラップ2の流体圧力であり、例えば、入口側のドレン配管1に設けられている第1圧力計3によって測定されるドレン圧力である。
【0030】
ドレン流量は、数値ではなく、程度で表されている。より詳しくは、ドレン流量の程度は、ドレン排出能力(即ち、排出可能な最大ドレン流量)に対する割合で表される。この例では、ドレン流量の程度は、「大」「中」「小」の3段階で表される。例えば、「大」はドレン排出能力の90%よりも多いドレン流量を示し、「中」はドレン排出能力の10%以上90%以下のドレン流量を示し、「小」はドレン排出能力の10%未満のドレン流量を示す。なお、ドレン流量の程度は、2段階または4段階以上で表すようにしてもよい。
【0031】
さらに、蓄積部21の第1現場データおよび第2現場データは、現場Sにおいてスチームトラップ2のドレン流量を判定した診断員の熟練度を示す診断員レベルも関連付けされている。この例では、診断員レベルは、熟練度が高い順に「1」「2」「3」の3段階で表している。当然ながら、診断員の熟練度が高いほど、ドレン流量の判定精度は高い。なお、診断員レベルは、2段階または4段階以上で表すようにしてもよい。
【0032】
このように、振動情報やドレン流量、診断員レベル等を関連付けけした第1現場データおよび第2現場データのそれぞれは、スチームトラップ2の型式ごとに区分されている。この例では、「型式A」および「型式B」のそれぞれのスチームトラップ2が第1現場データとして区分され、「型式C」のスチームトラップ2が第2現場データとして区分されている。つまり、この例では、「型式A」および「型式B」のスチームトラップ2は能力特性が把握されているものであり、「型式C」のスチームトラップ2は能力特性が不明なものである。
【0033】
また、蓄積部21は、推定装置10の修正部17による修正後のドレン流量と、修正部17による修正前のドレン流量を推定部16が出力したときに第1推定モデルM1および第2推定モデルM2に入力された振動情報とを関連付けて蓄積する。つまり、この例では、推定装置10によって推定されたドレン流量が診断員の入力操作によって修正された場合は、修正後のドレン流量が第1現場データおよび第2現場データとして蓄積部21に蓄積される。そのため、推定装置10によって推定されたドレン流量が適切でないと診断員が判断した場合、診断員が判定したドレン流量が蓄積部21の現場データとして反映される。
【0034】
学習部22は、蓄積部21の第1現場データにおける振動情報およびドレン排出能力を入力としドレン流量を出力とする教師データを用いて機械学習させた第1推定モデルM1を生成する。また、学習部22は、蓄積部21の第2現場データにおける振動情報を入力としドレン流量を出力とする教師データを用いて機械学習させた第2推定モデルM2を生成する。具体的に、学習部22は、データ選択部23と、モデル生成部24とを有している。
【0035】
データ選択部23は、モデル生成部24が第1推定モデルM1および第2推定モデルM2を生成するために必要な教師データを、蓄積部21の第1現場データおよび第2現場データから選択して作成する。より詳しくは、データ選択部23は、蓄積部21の第1現場データにおける振動情報、ドレン排出能力および入口圧力を入力としドレン流量を出力とする教師データを、第1推定モデルM1用として作成する。また、データ選択部23は、蓄積部21の第2現場データにおける振動情報および入口圧力を入力としドレン流量を出力とする教師データを、第2推定モデルM2用として作成する。また、本実施形態では、データ選択部23は、モデル生成部24がスチームトラップ2の型式ごとに第1推定モデルM1および第2推定モデルM2を生成するために、スチームトラップ2の型式ごとに教師データを作成する。
【0036】
また、本実施形態では、データ選択部23は、蓄積部21の第1現場データ等のうち、所定の熟練度以上の診断員レベルが関連付けされた現場データを教師データとして選択する。例えば、蓄積部21の第1現場データ等のうち、診断員レベルが「2」以上の現場データを対象として教師データが作成される。そのため、全ての診断員レベル(この例では、診断員レベル「3」以上)の現場データを対象とする場合に比べて、ドレン流量に関して判定精度の高い教師データが作成される。
【0037】
モデル生成部24は、データ選択部23によって作成された教師データを用いて、機械学習させた第1推定モデルM1および第2推定モデルM2を生成する。第1推定モデルM1は、図3に示すように、振動情報、ドレン排出能力および入口圧力を入力とし、推定されるドレン流量を出力とする。第2推定モデルM2は、図4に示すように、振動情報および入口圧力を入力とし、推定されるドレン流量を出力とする。第1推定モデルM1および第2推定モデルM2は、ニューラルネットワークなどの公知の機械学習アルゴリズムを利用して、振動情報およびドレン排出能力等とドレン流量との関係を学習させる教師あり機械学習により生成される学習済みモデルである。
【0038】
学習部22では、例えば定期的に、データ選択部23によって各教師データが更新され、モデル生成部24によって第1推定モデルM1および第2推定モデルM2が更新される。
【0039】
以上のように構成された流量推定システム100では、診断員が推定装置10を操作することにより、推定装置10が、推定対象となるスチームトラップ2のドレン流量を推定する。推定装置10の記憶部13には、スチームトラップ2の型式ごとに能力特性Dが格納されている。また、記憶部13には、モデル生成部24によって生成された最新の第1推定モデルM1および第2推定モデルM2が格納されている。例えば、推定装置10は、ネットワークNを介してサーバ装置20から第1推定モデルM1等をダウンロードすることで、記憶部13に格納する。より詳しくは、記憶部13には、スチームトラップ2の各型式に対応する複数種の第1推定モデルM1および第2推定モデルM2が格納される。
【0040】
具体的に、推定装置10によるドレン流量の推定動作について、図5のフローチャートを参照しながら説明する。
【0041】
ステップS1では、現場Sにおいて、診断員が、型式、入口圧力および出口圧力を推定装置10に入力する。具体的に、診断員は、例えばドレン配管1に設けられている第1圧力計3および第2圧力計4に基づいて、推定対象となるスチームトラップ2の入口圧力および出口圧力を入力部12によって入力する。また、診断員は、推定対象となるスチームトラップ2の型式を入力部12によって入力する。
【0042】
続くステップS2では、導出部15が、ステップS1で入力された型式に対応する能力特性Dがあるか否かを判定する。推定対象となるスチームトラップ2の型式に対応する能力特性Dが記憶部13に格納されている場合は、導出部15は該能力特性Dがあると判定し、ステップS3へ移行する。
【0043】
ステップS3では、導出部15が、推定対象となるスチームトラップ2のドレン排出能力を導出する。具体的に、導出部15は、推定対象となるスチームトラップ2の型式に対応する能力特性Dを記憶部12から読み出す。また、導出部15は、ステップS1で入力された入口圧力および出口圧力の圧力差を算出する。そして、導出部15は、記憶部13から読み出した能力特性Dと、算出した圧力差とに基づいて、推定対象となるスチームトラップ2のドレン排出能力を導出する。これにより、入口圧力および出口圧力が測定されたときのスチームトラップ2の排出可能な最大ドレン流量が把握される。
【0044】
続くステップS4では、診断員が、推定対象となるスチームトラップ2の振動情報を推定装置10によって検出する。具体的に、診断員が推定装置10のプローブ18をスチームトラップ2のケーシングに押し当てることによって、プローブ18がスチームトラップ2の振動情報を検出する。プローブ18によって検出された振動情報は、装置本体11に出力される。
【0045】
続くステップS5では、推定部16が、推定対象となるスチームトラップ2のドレン流量を推定する。具体的に、推定部16は、入力部12によって入力されたスチームトラップ2の型式に対応する第1推定モデルM1を記憶部13から読み出す。そして、推定部16は、プローブ18から出力された振動情報、導出部15によって導出されたドレン排出能力、ステップS1で入力された入口圧力を、記憶部13から読み出した第1推定モデルM1に入力することで、推定されるドレン流量(詳しくは、ドレン流量の程度)を出力する。こうして、推定されるドレン流量が出力されると、ステップS8へ移行する。
【0046】
一方、ステップS2において、導出部15が、ステップS1で入力された型式に対応する能力特性Dは無いと判定すると、ステップS6へ移行する。つまり、推定対象となるスチームトラップ2の型式に対応する能力特性Dが記憶部13に格納されていない場合は、該能力特性Dは無いと判定される。
【0047】
ステップS6では、ステップS4と同様、診断員が、推定対象となるスチームトラップ2の振動情報を推定装置10によって検出する。つまり、プローブ18によってスチームトラップ2の振動情報が検出される。検出された振動情報は、装置本体11に出力される。
【0048】
続くステップS7では、推定部16が、推定対象となるスチームトラップ2のドレン流量を推定する。具体的に、推定部16は、入力部12によって入力されたスチームトラップ2の型式に対応する第2推定モデルM2を記憶部13から読み出す。そして、推定部16は、プローブ18から出力された振動情報、ステップS1で入力された入口圧力を、記憶部13から読み出した第2推定モデルM2に入力することで、推定されるドレン流量(詳しくは、ドレン流量の程度)を出力する。こうして、推定されるドレン流量が出力されると、ステップS8へ移行する。
【0049】
続くステップS8では、ステップS5またはステップS7で推定部16によって出力されたドレン流量の程度が、図6に示すように表示部14に表示される。本実施形態では、ドレン流量の程度は「大」であることが表示されている。また、このステップS8では、推定部16によって出力されたドレン流量(ドレン流量の程度)の確信度も表示部14に表示される。つまり、推定部16が記憶部13から読み出した第1推定モデルM1および第2推定モデルM2の正解率が表示部14に表示される。本実施形態では、確信度は「80%」であることが表示されている。
【0050】
続くステップS9では、修正部17が、診断員の修正指示があったか否かを判定する。診断員は、表示部14に表示されたドレン流量の程度が適切であると判断した場合はそのドレン流量の程度の修正指示を行わず、表示部14に表示されたドレン流量の程度が適切ではないと判断した場合はそのドレン流量の程度の修正指示を行う。
【0051】
具体的に、この例の表示部14には、前述したドレン流量の程度および確信度に加え、OKボタン14aおよび修正ボタン14bも表示される。OKボタン14aおよび修正ボタン14bは、タッチパネル式のボタンである。診断員は、表示部14に表示されたドレン流量の程度が適切であると判断した場合は、OKボタン14aを押す。つまり、診断員は、表示部14に表示されたドレン流量の程度が、診断員自身が判定したドレン流量の程度と同程度ある場合は、修正指示を行わずOKボタン14aを押す。そうすると、ステップS9において、修正部17は修正指示がなかったと判定し、ステップS10へ移行する。
【0052】
ステップS10では、記憶部13が、推定部16によって推定されたドレン流量等を記憶する。具体的に、推定部16が出力したドレン流量の程度と、ドレン流量の程度を推定部16が出力したときに第1推定モデルM1および第2推定モデルM2に入力された振動情報等とが関連付けられて、記憶部13に記憶される。より詳しくは、ステップS5からステップS8に移行した場合、第1推定モデルM1に入力された振動情報、ドレン排出能力および入口圧力と、第1推定モデルMが出力したドレン流量の程度と、診断員が入力した診断員レベルとが関連付けられて、記憶部13に記憶される。また、ステップS7からステップS8に移行した場合、第2推定モデルM2に入力された振動情報および入口圧力と、第2推定モデルMが出力したドレン流量の程度と、診断員が入力した診断員レベルとが関連付けられて、記憶部13に記憶される。こうして、推定部16によって推定されたドレン流量等が記憶されると、ステップS13へ移行する。
【0053】
また、診断員は、表示部14に表示されたドレン流量の程度が適切ではないと判断した場合は、修正ボタン14bを押す。つまり、診断員は、表示部14に表示されたドレン流量の程度が、診断員自身が判定したドレン流量の程度と異なる場合は、修正ボタン14bを押すことで修正指示を行う。そうすると、ステップS9において、修正部17は修正指示があったと判定し、ステップS11へ移行する。
【0054】
ステップS11では、修正部17が、表示部14に表示されたドレン流量の程度(即ち、推定部16によって出力されたドレン流量の程度)を修正する。具体的に、診断員は、自身が判定したドレン流量の程度を入力部12によって入力する。その際、診断員は、自身の診断員レベルも入力部12によって入力する。修正部17では、この診断員の入力操作を受けると、表示部14に表示されたドレン流量の程度が、診断員が入力部12によって入力したドレン流量の程度に修正される。
【0055】
続くステップS12では、記憶部13が、修正後のドレン流量等を記憶する。具体的に、修正後のドレン流量の程度と、修正前のドレン流量の程度を推定部16が出力したときに第1推定モデルM1および第2推定モデルM2に入力された振動情報等とが関連付けられて、記憶部13に記憶される。より詳しくは、ステップS5からステップS8に移行した場合、第1推定モデルM1に入力された振動情報、ドレン排出能力および入口圧力と、修正後のドレン流量の程度と、診断員が入力した診断員レベルとが関連付けられて、記憶部13に記憶される。また、ステップS7からステップS8に移行した場合、第2推定モデルM2に入力された振動情報および入口圧力と、修正後のドレン流量の程度と、診断員が入力した診断員レベルとが関連付けられて、記憶部13に記憶される。
【0056】
続くステップS13では、蓄積部21の第1現場データおよび第2現場データが更新される。ステップS10およびステップS12で記憶部13に記憶されたドレン流量の程度や振動情報等は、例えばネットワークNを介してサーバ装置20の蓄積部21に新たな第1現場データ等として蓄積される。そのため、蓄積部21の第1現場データおよび第2現場データが精度の高いデータとして更新される。特に、診断員レベルの高い診断員が修正した場合は、第1現場データ等がより高精度なデータとして更新される。こうしてステップS13が完了すると、ドレン流量の推定動作が終了する。
【0057】
このように、前記実施形態の流量推定システム100では、蓄積部21は、スチームトラップ2の現場Sにおいて、診断員が測定したスチームトラップ2の振動情報と、スチームトラップ2のドレン排出能力と、振動情報が測定されたときのスチームトラップ2の作動状態から診断員が判定したスチームトラップ2のドレン流量とを関連付けた第1現場データが蓄積されていく。推定装置10は、推定対象となるスチームトラップ2の振動情報を検出するプローブ18(検出部)、蓄積部21の第1現場データと、プローブ18によって検出された振動情報と、推定対象となるスチームトラップ2のドレン排出能力とに基づいて推定対象となるスチームトラップ2のドレン流量(ドレン流量の程度)を推定する推定部16を有する。この構成では、スチームトラップ2の各現場において取得した第1現場データに基づいてドレン流量を推定するため、蓄積部21には、様々な環境条件が加味された第1現場データが大量に蓄積される。そうした第1現場データに基づいてドレン流量を推定するため、ドレン流量(ドレン流量の程度)の推定精度を向上させることができる。特に、第1現場データとしてスチームトラップ2のドレン排出能力が含まれているので、推定精度をより向上させることができる。即ち、ドレン流量自体が同じであっても、スチームトラップ2のドレン排出能力によってドレン流量の程度は変わる。振動情報はドレン流量に依存して変化するところ、ドレン排出能力も第1現場データとして含めることで、推定精度がより向上する。したがって、例えば、経験の浅い診断員であっても容易に推定精度の高いドレン流量を得ることができる。
【0058】
また、前記実施形態の流量推定システム100は、蓄積部21の第1現場データにおける振動情報およびドレン排出能力を入力としドレン流量を出力とする教師データを用いて機械学習させた第1推定モデルM1を生成する学習部22をさらに備えている。そして、推定部16は、プローブ18によって検出された振動情報と、スチームトラップ2のドレン排出能力とを、第1推定モデルM1に入力することで、推定されるドレン流量を出力する。このように蓄積部21の第1現場データを教師データとして機械学習させた第1推定モデルM1を用いてドレン流量を推定するので、推定精度をより向上させることができる。
【0059】
また、蓄積部21には、ドレン排出能力が不明なスチームトラップ2に対して診断員が測定したスチームトラップ2の振動情報と、その振動情報が測定されたときのスチームトラップ2の作動状態から診断員が判定したスチームトラップ2のドレン流量とを関連付けた第2現場データがさらに蓄積されていく。学習部22は、第2現場データにおける振動情報を入力としドレン流量を出力とする教師データを用いて機械学習させた第2推定モデルM2をさらに生成する。そして、推定部16は、推定対象となるスチームトラップ2のドレン排出能力が不明である場合には、プローブ18によって検出された振動情報を、第2推定モデルM2に入力することで、推定されるドレン流量を出力する。この構成では、ドレン排出能力が関連付けされていない第2現場データに基づいて生成された第2推定モデルM2を用いてドレン流量が推定される。そのため、ドレン排出能力が不明なスチームトラップ2に対しても推定精度の高いドレン流量を得ることができる。
【0060】
また、前記実施形態の流量推定システム100は、スチームトラップ2の型式ごとに能力特性Dを有している。推定装置10は、能力特性Dと、推定対象となるスチームトラップ2の型式および圧力差とに基づいて、推定対象となるスチームトラップ2のドレン排出能力を導出する導出部15をさらに有している。そして、推定部16は、プローブ18によって検出された振動情報と、導出部15によって導出されたドレン排出能力とを、第1推定モデルM1に入力することで、推定されるドレン流量を出力する。この構成では、例えば推定対象となるスチームトラップ2の型式および圧力差を入力するだけで、ドレン排出能力を把握することができる。そのため、現場Sにおいて、容易に推定精度の高いドレン流量を得ることができる。
【0061】
また、前記実施形態の流量推定システム100において、蓄積部21の第1現場データは、診断員が振動情報を測定したときのスチームトラップ2の入口圧力も関連付けされている。学習部22の教師データは、蓄積部21の第1現場データにおける振動情報、ドレン排出能力および入口圧力を入力としドレン流量を出力とするものである。そして、推定部16は、プローブ18によって検出された振動情報と、推定対象となるスチームトラップ2のドレン排出能力と、プローブ18が検出したときの推定対象となるスチームトラップ2の入口圧力とを、第1推定モデルM1に入力することで、推定されるドレン流量を出力する。この構成では、振動情報を測定したときのスチームトラップ2の入口圧力も第1現場データとして加えるようにしたため、より現場Sの環境条件に即した第1現場データを蓄積していくことができる。したがって、ドレン流量(ドレン流量の程度)の推定精度をより向上させることができる。
【0062】
また、蓄積部21の第1現場データは、スチームトラップ2の現場Sにおいてスチームトラップ2のドレン流量を判定した診断員の熟練度を示す診断員レベルも関連付けされている。学習部22は、蓄積部21の第1現場データのうち、所定の熟練度以上の診断員レベルが関連付けされた第1現場データを教師データとして選択する。そのため、より熟練度の高い診断員の知見を反映した教師データを作成することができる。そのため、ドレン流量に関して精度の高い教師データひいては第1推定モデルM1を構築することができる。したがって、ドレン流量(ドレン流量の程度)の推定精度をより向上させることができる。
【0063】
また、推定装置10は、入力操作を受けて、推定部16によって出力されたドレン流量を修正する修正部17をさらに有している。蓄積部21は、修正部17による修正後のドレン流量と、修正部17による修正前のドレン流量を推定部16が出力したときに第1推定モデルM1に入力された振動情報およびドレン排出能力とを関連付けて蓄積する。この構成では、より熟練度の高い診断員の知見を蓄積部21の第1現場データに反映させることができる。そのため、蓄積部21の第1現場データが精度の高いデータとして更新されるので、高精度な第1推定モデルM1を生成、更新することができる。よって、ドレン流量(ドレン流量の程度)の推定精度をより向上させることができる。
【0064】
また、推定装置10は、推定部16によって出力されたドレン流量と、第1推定モデルM1の正解率を示す情報とを表示する表示部14をさらに有している。そのため、推定されたドレン流量およびその確信度を容易に視認することができる。したがって、装置の信頼度が高まる。
【0065】
また、前記実施形態の流量推定システム100において、振動情報が測定されたときのスチームトラップ2の作動状態は、スチームトラップ2の作動音である。振動情報だけではドレン流量を判定し難いところ、スチームトラップ2の作動音を考慮することで、ドレン流量を高精度に判定することができる。
【0066】
(その他の実施形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0067】
例えば、第1推定モデルM1用の教師データとしては、入口圧力を省略して振動情報およびドレン排出能力だけを入力とし、ドレン流量(ドレン流量の程度)を出力とするものであってもよい。第2推定モデルM2用の教師データとしては、入口圧力を省略して振動情報だけを入力とし、ドレン流量(ドレン流量の程度)を出力とするものであってもよい。
【0068】
また、蓄積部21には、第1現場データ等に加え、例えば、実験室で取得した各種情報も蓄積するようにしてもよい。
【0069】
また、第1現場データおよび第2現場データとして、入口圧力に代えて、作動回数を加えるようにしてもよい。具体的に、蓄積部21の第1現場データは、振動情報、作動回数、ドレン排出能力およびドレン流量(ドレン流量の程度)が関連付けされている。蓄積部21の第2現場データは、振動情報、作動回数およびドレン流量(ドレン流量の程度)が関連付けされている。作動回数は、診断員が振動情報を測定したときのスチームトラップ2の所定時間内の作動回数である。作動回数とは、スチームトラップ2がドレンを排出する動作の回数である。所定時間内の作動回数が多いほど、ドレン流量は増加する傾向にある。
【0070】
この場合、第1推定モデルM1用の教師データは、蓄積部21の第1現場データにおける振動情報、ドレン排出能力および作動回数を入力としドレン流量を出力とするものである。推定部16は、プローブ18によって検出された振動情報と、推定対象となるスチームトラップ2のドレン排出能力と、プローブ18が検出したときの推定対象となるスチームトラップ2の所定時間内の作動回数とを、学習部22によって生成された第1推定モデルM1に入力することで、推定されるドレン流量を出力する。また、推定部16は、プローブ18によって検出された振動情報と、プローブ18が検出したときの推定対象となるスチームトラップ2の所定時間内の作動回数とを、学習部22によって生成された第2推定モデルM2に入力することで、推定されるドレン流量を出力する。このような構成においても、ドレン流量の推定精度を向上させることができる。
【0071】
また、スチームトラップ2の入口圧力および作動回数の両方を第1現場データ等として採用するようにしてもよい。
【0072】
また、第1現場データ等として、診断員レベルを省略するようにしてもよい。
【0073】
また、第1現場データ等として、例えばスチームトラップ2の温度を加えるようにし、教師データの入力として前述の温度を加えるようにしてもよい。
【0074】
また、能力特性Dは、記憶部13ではなく、例えばサーバ装置20に格納されていてもよい。
【0075】
本開示の技術をまとめると、以下のようになる。
【0076】
[1] 流量推定システム100は、推定対象となるスチームトラップ2のドレン流量を推定する。流量推定システム100は、スチームトラップ2の現場Sにおいて、診断員が測定したスチームトラップ2の振動情報と、スチームトラップ2のドレン排出能力と、振動情報が測定されたときのスチームトラップ2の作動状態から前記診断員が判定したスチームトラップ2のドレン流量とを関連付けた第1現場データが蓄積されていく蓄積部21と、推定対象となるスチームトラップ2の振動情報を検出するプローブ18、蓄積部21の第1現場データと、プローブ18によって検出された振動情報と、推定対象となるスチームトラップ2のドレン排出能力とに基づいて推定対象となるスチームトラップ2のドレン流量を推定する推定部16を有する推定装置10とを備えている。
【0077】
この構成によれば、スチームトラップ2の各現場Sにおいて取得した第1現場データに基づいてドレン流量を推定するため、蓄積部21には、様々な環境条件が加味された第1現場データが大量に蓄積される。そうした第1現場データに基づいてドレン流量を推定するため、ドレン流量(ドレン流量の程度)の推定精度を向上させることができる。特に、第1現場データとしてスチームトラップ2のドレン排出能力が含まれているので、推定精度をより向上させることができる。即ち、ドレン流量自体が同じであっても、スチームトラップ2のドレン排出能力によってドレン流量の程度は変わる。振動情報はドレン流量に依存して変化するところ、ドレン排出能力も第1現場データとして含めることで、推定精度がより向上する。したがって、例えば、経験の浅い診断員であっても容易に推定精度の高いドレン流量を得ることができる。
【0078】
[2] [1]に記載の流量推定システム100において、蓄積部21の第1現場データにおける振動情報およびドレン排出能力を入力としドレン流量を出力とする教師データを用いて機械学習させた第1推定モデルM1を生成する学習部22をさらに備え、推定部16は、プローブ18によって検出された振動情報と、推定対象となるスチームトラップ2のドレン排出能力とを、学習部22によって生成された第1推定モデルM1に入力することで、推定されるドレン流量を出力する。
【0079】
この構成によれば、蓄積部21の第1現場データを教師データとして機械学習させた第1推定モデルM1を用いてドレン流量を推定するので、推定精度をより向上させることができる。また、ドレン流量の推定精度を向上させることができることから、前述した特許文献2のような測定装置では、ドレン流量を精度良く把握することができる。そのため、例えば、正常にドレンが排出されている状態であるにも拘わらず、作動不良の(即ち、蒸気が漏れている)状態であると誤判定してしまうことを抑制することができる。したがって、作動良否の判定精度を向上させることができる。
【0080】
[3] [1]または[2]に記載の流量推定システム100において、蓄積部21には、スチームトラップ2の現場において、ドレン排出能力が不明なスチームトラップ2に対して診断員が測定したスチームトラップ2の振動情報と、振動情報が測定されたときのスチームトラップ2の作動状態から前記診断員が判定した該スチームトラップ2のドレン流量とを関連付けた第2現場データがさらに蓄積されていき、学習部22は、第2現場データにおける振動情報を入力としドレン流量を出力とする教師データを用いて機械学習させた第2推定モデルM2をさらに生成し、推定部16は、推定対象となるスチームトラップ2のドレン排出能力が不明である場合には、プローブ18によって検出された振動情報を、学習部22によって生成された第2推定モデルM2に入力することで、推定されるドレン流量を出力する。
【0081】
この構成によれば、ドレン排出能力が関連付けされていない第2現場データに基づいて生成された第2推定モデルM2を用いてドレン流量を推定することができる。そのため、ドレン排出能力が不明なスチームトラップ2に対しても、推定精度の高いドレン流量を得ることができる。
【0082】
[4] [1]乃至[3]の何れか1つに記載の流量推定システム100において、スチームトラップ2の入口圧力と出口圧力との圧力差に応じてスチームトラップ2のドレン排出能力が定められた能力特性Dを、スチームトラップ2の型式ごとに有しており、推定装置10は、能力特性Dと、推定対象となるスチームトラップ2の型式および圧力差とに基づいて、推定対象となるスチームトラップ2のドレン排出能力を導出する導出部15をさらに有し、推定部16は、プローブ18によって検出された振動情報と、導出部15によって導出されたドレン排出能力とを、学習部22によって生成された第1推定モデルM1に入力することで、推定されるドレン流量を出力する。
【0083】
この構成によれば、例えば推定対象となるスチームトラップ2の型式および圧力差を入力するだけで、ドレン排出能力を把握することができる。そのため、現場Sにおいて、容易に推定精度の高いドレン流量を得ることができる。
【0084】
[5] [1]乃至[4]の何れか1つに記載の流量推定システム100において、推定装置10は、入力操作を受けて、推定部16によって出力されたドレン流量を修正する修正部17をさらに有し、蓄積部21は、修正部17による修正後のドレン流量と、修正部17による修正前のドレン流量を推定部16が出力したときに第1推定モデルM1に入力された振動情報およびドレン排出能力とを関連付けて蓄積する。
【0085】
この構成によれば、より熟練度の高い診断員の知見を蓄積部21の第1現場データに反映させることができる。そのため、蓄積部21の第1現場データが精度の高いデータとして更新されるので、高精度な第1推定モデルM1を生成、更新することができる。よって、ドレン流量(ドレン流量の程度)の推定精度をより向上させることができる。
【0086】
[6] [1]乃至[5]の何れか1つに記載の流量推定システム100において、蓄積部21の第1現場データは、診断員が振動情報を測定したときのスチームトラップ2の所定時間内の作動回数も関連付けされており、学習部22の教師データは、蓄積部21の第1現場データにおける振動情報、ドレン排出能力および作動回数を入力としドレン流量を出力とするものであり、推定部16は、プローブ18によって検出された振動情報と、推定対象となるスチームトラップ2のドレン排出能力と、プローブ18が検出したときの推定対象となるスチームトラップ2の所定時間内の作動回数とを、学習部22によって生成された第1推定モデルM1に入力することで、推定されるドレン流量を出力する。
【0087】
この構成によれば、振動情報を測定したときのスチームトラップ2の入口圧力も第1現場データとして加えるようにしたため、より現場Sの環境条件に即した第1現場データを蓄積していくことができる。したがって、ドレン流量(ドレン流量の程度)の推定精度をより向上させることができる。
【0088】
[7] [1]乃至[6]の何れか1つに記載の流量推定システム100において、蓄積部21の第1現場データは、診断員が振動情報を測定したときのスチームトラップ2の入口圧力も関連付けされており、学習部22の教師データは、蓄積部21の第1現場データにおける振動情報、ドレン排出能力および入口圧力を入力としドレン流量を出力とするものであり、推定部16は、プローブ18によって検出された振動情報と、推定対象となるスチームトラップ2のドレン排出能力と、プローブ18が検出したときの推定対象となるスチームトラップ2の入口圧力とを、学習部22によって生成された第1推定モデルM1に入力することで、推定されるドレン流量を出力する。
【0089】
この構成によれば、振動情報を測定したときのスチームトラップ2の入口圧力も第1現場データとして加えるようにしたため、より現場Sの環境条件に即した第1現場データを蓄積していくことができる。したがって、ドレン流量(ドレン流量の程度)の推定精度をより向上させることができる。
【0090】
[8] [1]乃至[7]の何れか1つに記載の流量推定システム100において、蓄積部21の第1現場データは、スチームトラップ2の現場Sにおいてスチームトラップ2のドレン流量を判定した診断員の熟練度を示す診断員レベルも関連付けされており、学習部22は、蓄積部21の第1現場データのうち、所定の熟練度以上の診断員レベルが関連付けされた第1現場データを教師データとして選択する。
【0091】
この構成によれば、そのため、より熟練度の高い診断員の知見を反映した教師データを作成することができる。そのため、ドレン流量に関して精度の高い教師データひいては第1推定モデルM1を構築することができる。したがって、ドレン流量(ドレン流量の程度)の推定精度をより向上させることができる。
【0092】
[9] [1]乃至[8]の何れか1つに記載の流量推定システム100において、推定装置10は、推定部16によって出力されたドレン流量と、第1推定モデルM1の正解率を示す情報とを表示する表示部14をさらに有している。
【0093】
この構成によれば、推定されたドレン流量およびその確信度を容易に視認することができる。したがって、装置の信頼度が高まる。
【0094】
[10] [1]乃至[9]の何れか1つに記載の流量推定システム100において、振動情報が測定されたときのスチームトラップ2の作動状態は、スチームトラップ2の作動音である。
【0095】
この構成によれば、振動情報だけではドレン流量を判定し難いところ、スチームトラップ2の作動音を考慮することで、ドレン流量を高精度に判定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
以上説明したように、本開示の技術は、流量推定システムについて有用である。
【符号の説明】
【0097】
100 流量推定システム
2 スチームトラップ(ドレントラップ)
10 推定装置
14 表示部
15 導出部
16 推定部
17 修正部
18 プローブ(検出部)
21 蓄積部
22 学習部
S 現場
D 能力特性
M1 第1推定モデル
M2 第2推定モデル

図1
図2
図3
図4
図5
図6